JP4149709B2 - 電圧形インバータの制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電圧形インバータをパルス幅変調(PWM)制御方式で制御する制御装置に係り、特に電流の瞬時値の基準値への追従制御動作に基づいてPWM信号を生成する電流瞬時値制御型PWM制御方式を用いた電圧形インバータの制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来例として、“特開平10−174453号”を基本とし、一部に“特開2001−078465号”を用いたPWM制御装置による誘導電動機の電流制御装置の構成例を、図21に示す。
【0003】
図21において、1は直流電源、2は直流電源の出力電圧を平滑する平滑コンデンサ、3は直流電源1の出力する直流電圧を三相交流電圧に変換するインバータである。
【0004】
インバータ3は、U,V,W各相の上側の自己消弧型スイッチング素子SU,SV,SW、下側の自己消弧型スイッチング素子SX,SY,SZと、自己消弧型スイッチング素子SX,SY,SZのそれぞれに逆並列に接続されたダイオードとから構成されている。
【0005】
4は誘導電動機、5U,5V,5Wはインバータ3の出力電流を検出するホールCT、6はホールCT5U,5V,5Wからの出力信号を、制御回路で用いるレベルにスケーリングしてアナログまたはデジタルの電流検出値iu ,iv ,iw を出力する電流検出器である。
【0006】
図21では、三相電流検出値iu ,iv ,iw を、まとめてベクトルiと表記している。
【0007】
7は、誘導電動機4に流すべき電流基準ベクトルi* から、電流検出器6から出力される電流検出ベクトルiを減算し、電流偏差ベクトルΔiを出力するベクトル減算器であり、下記の(1)式の演算を行なう。
【0008】
このベクトル減算器7は、相電流基準から相電流検出を減算する減算器を、3個セットしたものである。
【0009】
Δiu =iu *−iu
Δiv =iv *−iv ………………………………………………(1)
Δiw =iw *−iw
8は、偏差ベクトルΔiから、その角度θΔ i を求めるベクトル角検出器である。
【0010】
このベクトル角検出器8は、偏差ベクトルのU,V,W座標成分Δiu ,Δiv ,Δiw を下記の(2)式に従い、3相2相変換して直交2相のxy座標の成分Δix ,Δiy に変換する。
【0011】
【数1】
【0012】
さらに、ベクトルにおける直交座標と極座標との関係式
【数2】
およびΔix ,Δiy の符号から、偏差ベクトルの角度θΔ i を求める。
【0013】
上記の(1)式の変換によれば、偏差ベクトルがU軸の正方向を向いている時、θΔ i =0である。
【0014】
10はスイッチングシーケンス回路、11はシーケンス起動回路である。
【0015】
スイッチングシーケンス回路10は、電流偏差ベクトルの角度θΔ i と、シーケンス起動回路11が出力するシーケンス起動信号とに基づいて動作し、スイッチング指令ベクトルSk を出力する。
【0016】
スイッチング指令ベクトルSk は、3相のスイッチング指令swu,swv,swwを成分とするベクトルでSk =(swu,swv,sww)である。
【0017】
スイッチング指令swu,swv,swwは、“1”または“ゼロ”の値をとり、“1”はインバータ3の正側素子をオン(インバータ3の負側素子はオフ)、“ゼロ”はインバータ3の正側素子をオフ(インバータ3の負側素子をオン)させるという意味である。
【0018】
また、Sk のkは、(swu,swv,sww)の値をそのまま書き並べて得られる二進数を、10進数に変換した値である。
【0019】
(swu,swv,sww)=(1,0,0)の時、そのまま書き並べると二進数“100”であり、10進数に変換すると“4”であるから、S4は(swu,swv,sww)=(1,0,0)を意味する。
【0020】
kの値としては、0〜7を取り得、スイッチング指令ベクトルS0〜S7が存在する。
【0021】
スイッチング指令Sk でインバータ3を運転した時の出力電圧ベクトルを、Vk で表わす。
【0022】
インバータ3の直流電圧がEdの時の電圧ベクトルVk は、表1の値をとり、図示すると図22のようになる。
【0023】
電圧ベクトルV0,V7は、3相全てが同電位で、どの線間をとっても電圧がゼロであるので、「ゼロ電圧ベクトル」と称し、それ以外の電圧ベクトルV1〜V6は大きさを持つので、「非ゼロ電圧ベクトル」と称する。
【0024】
また、電圧ベクトルV0,V7、スイッチングベクトルS0,S7を引っくるめて「ゼロベクトル」、その他のV1〜V6、S1〜S6を「非ゼロベクトル」と称することがある。
【0025】
また、S0〜S7とV0〜V7とは一対一で対応するので、S0〜S7について、電圧ベクトルであるかのような言い方をする場合がある。
【0026】
【表1】
【0027】
12は、スイッチングシーケンス回路10から出力されるPWM信号Sk (n)から、インバータ3を構成する6個のスイッチング素子SU,SV,SW、SX,SY,SZに与える信号を得るために、適宜、信号反転、デッドタイム処理等を行なう論理回路である。
【0028】
13は、論理回路12から与えられた信号を絶縁増幅して、スイッチング素子SU,SV,SW、SX,SY,SZに供給するゲート回路である。
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
電流瞬時値制御型のPWM方式では、交流の電流と電流基準とを瞬時値レベルで比較し、交流の電流が電流基準の値に従うように、インバータ3の出力電圧を制御する。
【0032】
非ゼロベクトルを出力している時の電流変化方向は、非ゼロベクトルの角度から所定の角度範囲内に収まるので、所望の電流変化を引き起こす非ゼロベクトルを選択することは容易である。
【0033】
しかしながら、ゼロベクトル出力中の電流変化方向は、負荷の誘起電圧に依存するため確定しない。
【0034】
従来例以前の電流制御型のPWM制御方式では、誘起電圧を直接・間接に検出する等により、所望の電流変化を生じさせるために、ゼロベクトルを利用しようとしている。
【0035】
従来例の“特開平10−174453号”の原理的特徴は、このゼロベクトルの取り扱いにある。
【0036】
この“特開平10−174453号”では、電流偏差を小さくするためには、非ゼロベクトルのみを用いる。
【0037】
電流偏差が十分に小さくなったら、ゼロベクトルへ移行して放置するのみである。
【0038】
電流がゼロベクトルで、どの方向へ変化しようが構わない。
【0039】
電流偏差の大きさを監視して、所定の大きさまで電流偏差が増加したら、再び非ゼロベクトルのみで、電流偏差が小さくなるように制御する。
【0040】
このような制御を繰り返し行なうと、ゼロベクトル出力中には電流偏差が増加し、非ゼロベクトル出力中に電流偏差が小さくなるという形で、定常状態が成立する。
【0041】
ゼロベクトル出力期間を、電流偏差の大きさで決める代わりに、非ゼロベクトル出力期間・ゼロベクトル出力期間を含めた周期が一定となるように制御すれば、変調周波数一定の制御を行なうことが可能となる。
【0042】
電流偏差を小さくするための制御は、第1の非ゼロベクトル→第2の非ゼロベクトル→ゼロベクトルという一連のシーケンスで行ない、これをスイッチングシーケンス回路10で行なう。
【0043】
ゼロベクトル出力期間の制御は、シーケンス起動回路11で行なう。
【0044】
スイッチングシーケンス回路10の詳細な構成例を、図23に示す。
【0045】
図23において、60は電流偏差ベクトル角θΔi 、PWM信号として出力中のスイッチング指令ベクトルSk (n)、およびSk (n)の前にPWM信号として用いていたベクトルSk (n−1)を入力し、次回出力変更時に選択すべきベクトルSk (n+1)を出力するベクトル選択テーブルである。
【0046】
ベクトル選択テーブル60の内容を、表2および表3に示す。
【0047】
表2はスイッチング指令Sk (n)がゼロベクトルの時に、表3はスイッチング指令Sk (n)が非ゼロベクトルの時に用いられるテーブルである。
【0048】
ゼロベクトルからの電圧ベクトル選択方法の一例を、図24に示す。
【0049】
出力中のゼロベクトルが、v0である場合は図24の(a)にしたがい、v7である場合は図24の(b)にしたがう。
【0050】
出力中のゼロベクトルがv0で、偏差ベクトルの角度θΔi =π/6であれば、1相のみのスイッチングで移行できる非ゼロベクトルV4,V2,V1の中から、偏差ベクトルと最も近い角度を持つ非ゼロベクトルV4が選択される。
【0051】
以上を、スイッチング指令についてテーブル化したのが、表2である。
【0052】
非ゼロベクトルからの電圧ベクトル選択方法としては、
(1)偏差ベクトルΔiとの角度差が最も少ない電圧ベクトルが出力中の電圧ベクトルであれば、出力中のベクトルと同じベクトルを選択する
(2)偏差ベクトルΔiとの角度差が最も少ない電圧ベクトルが出力中の電圧ベクトルのどちらか隣のベクトルに移っていれば、そのベクトルへ移行する
(3)出力中のベクトルと偏差ベクトルΔiとの角度差が±90度以上であれば、ゼロベクトルを選択する
である。
【0053】
V4からの移行の場合の選択方法の一例を、図25に示す。
【0054】
上記(3)の場合に、ゼロベクトルV0,v7のいずれを選択すべきかは、Sk (n−1)からSk (n)への移行に際して行なったスイッチングにより決定する。
【0055】
例えば、Sk (n)が同じS4であっても、Sk (n−1)がS5、S6等であれば、正側をオフしてS4へ移行しているから、Sk (n+1)としても同じく正側をオフするS0が選択される。
【0056】
しかしながら、Sk (n−1)がS0であれば、Sk (n+1)としてはS7が選択される。
【0057】
この場合には、S4からS7への移行によって、2相が同時にスイッチングすることになる。
【0058】
以上が、表3のベクトル選択論理である。
【0059】
上記(2)の通り、非ゼロベクトルから非ゼロベクトルへの移行は、隣のベクトルにしか行なわれないから、Sk (n)が非ゼロベクトルS4である時にSk (n−1)として用いられていた可能性のある非ゼロベクトルは、S5、S6のみである。
【0060】
また、表2から同じく、Sk (n−1)として用いられていた可能性のあるゼロベクトルは、S0のみである。
【0061】
従って、ルックアップテーブルのアドレス信号として用いられていても、実際にはあり得ない組合せもある。
【0062】
ルックアップテーブルには、そのようなアドレスにもデータが書き込まれている。
【0063】
表3では、あり得ないSk (n−1)の値については、「他」として表記している。
【0064】
ベクトル選択テーブル60には、表2および表3に示す内容が、一括して収められている。
【0065】
61,62は、ラッチ回路であり、クロックパルスの立ち上がりタイミングに、データ入力で出力を書き換える。
【0066】
ラッチ回路61のデータ入力には、ベクトル選択テーブル60からの出力信号Sk (n+1)が、ラッチ回路62のデータ入力には、ラッチ回路61からの出力信号Sk (n)が、それぞれ与えられる。
【0067】
ラッチ回路61からの出力Sk (n)、ラッチ回路62からの出力Sk (n−1)は、表2および表3の選択を行なうためのアドレス信号として、ベクトル選択テーブル60にフィードバックされる。
【0068】
シーケンス起動回路11からのシーケンス起動指令は、アンド回路65に与えられる。
【0069】
アンド回路65への他方の入力信号としては、不一致検出器66からの出力が与えられる。
【0070】
不一致検出器66は、PWM信号として出力中のスイッチング指令Sk (n)と、ベクトル選択テーブルの出力Sk (n+1)とが同じであるか否かをチェックし、異なる信号である場合に論理値“1”を出力する。
【0071】
アンド回路65からの出力信号は、オア回路67に与えられる。
【0072】
オア回路67には、アンド回路68からの出力信号も与えられている。
【0073】
アンド回路68は、ゼロベクトル検出器69からの出力信号と、上記不一致検出回路66からの出力信号とのアンドをとる。
【0074】
ゼロベクトル検出器69は、ラッチ回路62からの出力がS0、S7のいずれかであれば、論理値“1”を出力する。
【0075】
ゼロベクトル検出器70は、ベクトル選択テーブル60からの出力信号Sk (n+1)がゼロベクトルである場合に、論理値“1”を出力する。
【0076】
アンド回路65、アンド回路68、ゼロベクトル検出器70からの出力信号は、オア回路67にて論理和をとられ、その結果がアンド回路71の一方の入力信号として与えられる。
【0077】
アンド回路71への他方の入力端子には、図示しないクロック発生器からクロックパルスが与えられている。
【0078】
アンド回路71からの出力は、ラッチ回路61,62のクロック入力端子に与えられる。
【0079】
以上により、アンド回路71がラッチ回路61,62に対してラッチタイミング信号を出力するのは、
1)ベクトル選択テーブル60からの出力Sk (n+1)と、PWM信号として出力中のSk (n)とが異なる信号であり、かつシーケンス起動指令が与えられた時
2)ベクトル選択テーブル60からの出力Sk (n+1)がゼロベクトルである時
3)ベクトル選択テーブル60からの出力Sk (n+1)と、PWM信号として出力中のSk (n)とが異なる信号であり、かつラッチ回路62からの出力Sk (n−1)がゼロベクトルである時
である。
【0080】
シーケンス起動回路11の詳細な構成例を、図26に示す。
【0081】
シーケンス起動回路11は、電流偏差が所定許容誤差範囲に入っているか否か値を検出し、入っていなければスイッチングシーケンス回路10への起動信号を出力する許容誤差コンパレータと、スイッチング素子のスイッチング周波数が所定変調周波数となるように、スイッチングシーケンス回路10への起動信号を出力する変調周波数制御回路とから成っている。
【0082】
許容誤差コンパレータ40は、“特開2001−078465号”に基づいており、コンパレータ41u〜41wと、コンパレータ41x〜41zのそれぞれの一方の入力として与える許容誤差設定値42、倍率器43、アンド回路44u〜44z、NOT回路45u,45v,45w、オア回路46、アンド回路47、乗算器48u,48v,48w、加算器49、コンパレータ50、乗算器51から構成されている。
【0083】
コンパレータ41u〜41wは、許容誤差設定値42、倍率器43で与えられる比較レベルH/2と入力とを比較し、その結果、入力が比較レベルを上回っていたら、“1”を出力する。
【0084】
コンパレータ41x〜41zは、入力が比較レベル−H/2を下回っていたら“1”を出力する。
【0085】
図27は、許容誤差コンパレータ40の許容誤差領域を説明するための図である。
【0086】
図27のUVW座標は、電流基準を座標の原点としている。
【0087】
U相、V相、W相それぞれの点線は、電流偏差の成分ゼロの座標を示し、その両側のハッチング付きの線は、各相毎に持つ幅Hの帯状の許容誤差領域を示す。
【0088】
インバータ出力電圧が非ゼロベクトルの場合、電流iu はswu=0で減少し、swu=1で増加する。
【0089】
図27において、swu=0で電流iu が減少して、電流iu がU相の帯状領域より下側になると、iu <iu * −H/2、すなわちH/2<Δiu (=iu * −iu )であるので、コンパレータ41uからの出力が“1”となる。
【0090】
swu=0から、NOT回路45Uからの出力も“1”であるので、アンド回路44Uからの出力が“1”となって、電流偏差が許容誤差領域に収まらなくなったことを示す。
【0091】
しかしながら、swu=0の時に、swv,swwもゼロであると、全ての線間電圧がゼロであるので、電流変化方向は誘起電圧の位相で決まる。
【0092】
従って、誘起電圧の位相によっては、swu=0でも、電流iu は増加する。
【0093】
この時に、Δiu <−H/2となって、コンパレータ41xが“1”を出力しても、アンド回路44xからの出力は“1”とはならない。
【0094】
一方のコンパレータ41uからの出力は、ゼロであるので、アンド回路44uからの出力も“1”とはならない。
【0095】
こうなると、電流iu がどれのみ増加しても、U相のアンド回路44u,44xは反応しない。
【0096】
ただし、この時、iv ,iw のいずれかの電流は減少しているので、その相の電流偏差がH/2よりも大きくなって、その相のアンド回路(44v,44wのいずれか)が“1”を出力して、許容誤差領域に収まらなくなったことを示す。
【0097】
このように、3相の帯状領域が交差してできる六角形の内部が許容誤差領域となる場合と、六角形の外部の小三角形まで含んだ星型領域が許容誤差領域となる場合とがある。
【0098】
すなわち、オア回路46からの出力信号が示す許容誤差領域の広さは変化する。
【0099】
基準となる許容誤差領域の広さが変化するのでは、電流偏差の大きさを一定に制御することができない。
【0100】
そこで、許容誤差領域の大きさを一定とするために、半径Hの円形領域を用いる。
【0101】
乗算器48u,48v,48wで各相電流偏差を二乗し、加算器49で加算して、電流偏差ベクトルの長さの二乗を求め、乗算器51から出力される許容誤差Hの二乗とコンパレータ50で比較して、電流偏差が円形領域に含まれているか否かを判定する。
【0102】
円形領域の内部に含まれていれば、オア回路46が“1”を出力していても、許容するためにアンド回路47を用いる。
【0103】
電流偏差が円形領域に収まらず、かつ3相のうちのいずれかの相において電流偏差が帯状領域に収まらず、スイッチング条件も合致している時に、許容誤差コンパレータによるシーケンス起動指令が、アンド回路47から出力される。
【0104】
ここで、許容誤差領域を円形領域のみとすると、特定相のスイッチング信号のみが高速に変化し、スイッチング損失で素子を破壊する可能性がある。
【0105】
3相の帯状領域が交差してできる六角形や星型の領域は、円形領域に含まれてしまい、許容誤差領域としては機能しないが、円形領域の外に延びた帯状領域の幅Hは、スイッチング周波数の上限を制限するために機能している。
【0106】
これにより、スイッチング素子を、スイッチング損失による破壊から保護することができる。
【0107】
変調周波数制御回路52は、カウンタ53、コンパレータ54、周期設定値55、アンド回路56、ゼロベクトル検出器57、立ち下がり検出器58から構成されている。
【0108】
カウンタ53は、図示しないクロック発生器から与えられるクロックパルスをカウントし、カウント値をコンパレータ54に対して出力する。
【0109】
コンパレータ54は、カウント値と周期設定値55とを比較し、その結果、カウント値が周期設定値を上回ると、論理値“1”を出力する。
【0110】
コンパレータ54からの出力は、アンド回路56に入力される。
【0111】
ゼロベクトル検出器57は、PWM信号として出力中のSk (n)の成分swu,swv,swwをチェックし、3相とも“0”であるか、あるいは3相とも“1”である時に、論理値“1”を出力する。
【0112】
ゼロベクトル検出器57からの出力は、アンド回路56にてコンパレータ54からの出力とアンドをとられ、変調周波数によるシーケンス起動指令として、オア回路59に出力される。
【0113】
また、ゼロベクトル検出器57からの出力は、立ち下がり検出器58に与えられる。
【0114】
立ち下がり検出器58は、Sk (n)のゼロベクトルから非ゼロベクトルへの変化タイミングで、カウンタ53に対してカウント値のクリア信号を出力する。
【0115】
これにより、コンパレータ54、アンド回路56からの出力もゼロに戻る。
【0116】
アンド回路56は、前回のスイッチングシーケンスが終了するまで、シーケンス起動指令を待つために設けられている。
【0117】
変調周波数制御回路からの出力のみでスイッチングシーケンスを動かすと、電動機の回転数上昇と共に電流偏差が大きくなる。
【0118】
これは、スイッチングシーケンスが終了して、次回のスイッチングシーケンスを開始するまでの期間、すなわちゼロベクトルを出力している期間が、短くなることを意味する。
【0119】
従来例の場合、後述するように、スイッチングシーケンスに問題点があり、生成されるスイッチング信号のパルス間隔がまちまちで、高回転数ではスイッチングシーケンスが終了しないうちに、次のシーケンス起動指令が与えられることがある。
【0120】
スイッチングシーケンス回路10は、シーケンス起動指令が与えられた場合には、ベクトル選択テーブル60からの出力Sk (n+1)が、スイッチング信号Sk (n)と異なっていさえすれば、スイッチング信号をSk (n+1)の値に書き換えてしまう。
【0121】
スイッチングシーケンスが終了しないうちに、次のシーケンス起動指令が与えられると、スイッチングシーケンスが乱れ、電流波形が悪化してしまう。
【0122】
アンド回路56は、前回のスイッチングシーケンス終了まで、シーケンス起動指令の出力を遅延するもので、これにより、変調周波数制御回路からの出力のみでの動作周波数範囲を広げることができる。
【0123】
アンド回路56からの出力は、オア回路59で許容誤差コンパレータ40出力との論理和をとった後に、最終の起動指令としてスイッチングシーケンス回路10に与えられる。
【0124】
並列動作で、電流偏差が小さく許容誤差コンパレータ40の比較レベルに達しない場合には、変調周波数制御回路52のみがスイッチングシーケンス回路10に起動指令を与え、変調周波数が一定に制御される。
【0125】
許容誤差コンパレータ40の比較レベルよりも電流偏差が大きい場合には、許容誤差コンパレータ側から起動指令が出される毎に、変調周波数制御回路のカウンタ53がクリアされる。
【0126】
従って、周期設定値55よりも短い周期で、許容誤差コンパレータ側から起動指令が出力され続けると、変調周波数制御回路側からの起動指令は出力されなくなる。
【0127】
すなわち、並列動作時、変調周波数制御回路は、スイッチング周波数の下限リミットの機能を果たす。
【0128】
“特開平10−174453号”では、運転周波数の変化に応じて、パルス波形が自動的かつ安定に変化してゆくので、電動機の静止状態における変調周波数一定のPWM制御による運転から、定出力範囲の方形波1パルス運転まで、可変速駆動の広い運転周波数範囲を、本PWM方式のみでカバーすることができる、PI制御・デッドタイム補償・誘起電圧補償等の調整の必要な制御が不要、直流電圧変動・負荷電動機の定数変化に強い、非正弦波電流駆動が可能、電動機負荷のみにとどまらず、電圧形インバータ全般に適用可能である、等の特徴を有している。
【0129】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述したような従来の電圧形インバータの制御装置においては、以下のような課題がある。
【0130】
[第1の課題]
図28に、従来例によるシミュレーション波形の一例を示す。
【0131】
電流基準iu *、電流iu 、変調周波数制御回路からの出力TR、許容誤差コンパレータからの出力ER、アンド回路71からの出力(ラッチ回路61,62の動作クロック)RES、スイッチング信号swu,swv,sww、線間電圧波形Vuvを示している。
【0132】
図28の電流波形は、電流リップルの大きさが不均一で、スイッチング信号のパルス幅もまちまちである。
【0133】
これらの原因について、図29および図30に基づいて説明する。
【0134】
図29は、図30の動作説明に用いるベクトルの関係を示す図である。
【0135】
eで示したベクトルは誘起電圧、v4、v5は既に説明した非ゼロ電圧ベクトル、v0,v7はゼロ電圧ベクトルである。
【0136】
インバータ3が、電圧Vk を出力している時、インバータ3の負荷である誘起電動機4の電圧方程式は、
【数3】
であり、抵抗分を無視して変形すると
【0137】
【数4】
である。
【0138】
この式から、電流はベクトル(Vk −e)と同一方向に変化し、|Vk −e|/Lの速度で変化する。
【0139】
すなわち、インバータ3が電圧v4,v5を出力している時、電流は、図29に示すそれぞれ(v4−e),(v5−e)の方向に変化する。
【0140】
ゼロ電圧ベクトルv0、v7の出力中の電流は、−e方向に変化する。
【0141】
図30は、電流偏差の符号を逆にしたベクトル−Δiの軌跡を示す図である。
【0142】
電流偏差ベクトルの後端が図30の太線上を動き、電流偏差ベクトルの先端は常に座標の原点にある。
【0143】
言い換えれば、電流基準を原点とする座標空間(以後、電流基準座標と呼ぶ)における電流の軌跡である。
【0144】
本発明の説明で、電流の軌跡という言葉は、全て電流基準座標上における軌跡を指すものとする。
【0145】
図30では、説明の簡単のために、電流基準、誘起電圧は一定として、図29に示す電流変化方向を用いて電流軌跡を描いている。
【0146】
円は、許容誤差領域の境界である。
【0147】
また、ベクトル選択テーブル60が出力する信号を切り替える境界の電流偏差ベクトルの角度を点線で示しており、その角度の値0〜11π/6を付している。
【0148】
以下、許容誤差一定の起動指令により、スイッチングシーケンスが動いており、電流が座標の原点にある「電流偏差が0」の時刻t0で、スイッチングシーケンス回路がゼロベクトルSk (n)=S7を出力したところから、電流軌跡を追いながらスイッチングシーケンスの動作について説明する。
【0149】
電流ベクトルは、電圧(v7−e)=−eによって、図30のt1方向に変化する。
【0150】
電流偏差ベクトルΔi(=i* −i)は、電流ベクトルの先端から座標の原点(電流基準ベクトルの先端)へと伸びているから、時刻t0からt1の間、その角度θΔiは、5π/3<θΔi<11π/6である。
【0151】
この角度と、Sk (n)=S7であることから、ベクトル選択テーブル60は、表2に基づいて、Sk (n+1)=S5を出力している。
【0152】
時刻t1で、許容誤差領域の境界に達して、シーケンス起動回路11から起動信号が与えられる。
【0153】
Sk (n)=S7,Sk (n+1)=S5で、不一致検出回路66が論理値“1”を出力しているので、アンド回路65、オア回路67を介して、アンド回路71に論理値“1”が与えられ、クロックパルスによってラッチ回路61,62が動作して、Sk (n)=S5、Sk (n−1)=S7となる。
【0154】
ゼロベクトルから、第1の非ゼロベクトルS5に変化したことにより、電流は(v5−e)で変化するようになり、t2における位置まで変化していく。
【0155】
この間、5π/3<θΔi<11π/6であるので、ベクトル選択テーブル60は、表3からS5を出力している。
【0156】
Sk (n)=Sk (n+1)で、Sk (n+1)がゼロベクトルでもないことから、オア回路67からの出力が“ゼロ”であり、ラッチ回路61,62にはクロックパルスが与えられない。
【0157】
時刻t2にて、電流ベクトルが点線に達して、11π/6<θΔi<2πの領域に入ると、Sk (n+1)はS4となり、不一致検出回路66からの出力が“1”に変わる。
【0158】
Sk (n−1)がS7で、ゼロベクトル検出器69からの出力も“1”であるので、アンド回路68を介してオア回路67からの出力が“1”となり、ラッチ回路61,62に動作クロックが与えられる。
【0159】
Sk (n)=S4、Sk (n−1)=S5と変わる。
【0160】
時刻t2以降、第2の非ゼロベクトルS4により、電流は(v4−e)でt3の位置まで変化してゆく。
【0161】
θΔiが、11π/6よりも小さい領域に戻ると、Sk (n+1)=S5となる。
【0162】
さらに、途中で点線を超えて、θΔiは5π/3よりも小さくなるが、表3より、Sk (n+1)はS5のままである。
【0163】
この間、不一致検出回路66は“1”を出力しているが、Sk (n−1)、Sk (n+1)が共に非ゼロベクトルであるので、シーケンス起動指令が与えられない限り、ラッチ回路61,62にはクロックが与えられない。
【0164】
時刻t3にて、θΔiが3π/2よりも小さい領域に入って、Sk (n+1)=S0となると、ゼロベクトル検出回路70からの出力が“1”となり、オア回路67、アンド回路71を介して、ラッチ回路61,62に動作クロックが与えられる。
【0165】
Sk (n)=S0、Sk (n−1)=S4に変わる。
【0166】
時刻t3以降、電流は、時刻t0〜t1間と同様に、ベクトル−eで変化する。
【0167】
θΔiは、直ぐに3π/2よりも大きい領域に戻る。
【0168】
ベクトル選択テーブル60は、表2に基づいて、Sk (n+1)=S1を出力する。
【0169】
これで、不一致検出回路66は“1”を出力するが、Sk (n−1)、Sk (n+1)が共に非ゼロベクトルであるので、シーケンス起動指令が与えられない限り、ラッチ回路61,62にはクロックが与えられない。
【0170】
時刻t4にて、電流ベクトルが許容誤差領域から出ると、シーケンス起動回路10から起動指令が与えられ、ラッチ回路61,62が動作する。
【0171】
Sk (n)=S1、Sk (n−1)=S0となり、ベクトル選択テーブル60は、表3により、Sk (n+1)=S5を出力する。
【0172】
不一致検出回路66、ゼロベクトル検出器69が共に“1”を出力するので、アンド回路68からの出力が“1”となり、次のクロックt5にてラッチ回路61,62が動作し、Sk (n)=S5、Sk (n−1)=S1となる。
【0173】
Sk (n)=S1は、1クロックの間のみで直ぐにSk (n)=S5に変化する。
【0174】
以後、電流は(v5−e)で変化する。
【0175】
Sk (n−1)が非ゼロベクトルであるので、起動指令が与えられるか、あるいはSk (n+1)がゼロベクトルを出力するまで、ラッチ回路61,62は動作しない。
【0176】
時刻t6にて、θΔiがπ/6のラインを超えると、表3から、Sk (n+1)=S7を出力する。
【0177】
以上、t0〜t6の2回のスイッチングシーケンスで、スイッチングシーケンス回路からの出力Sk (n)は、
S7→S5→S4→S0→S1→S5→S7
と、インバータ3の3相とも正側素子をオンしている状態(S7)から、1相ずつ順に負側素子をオンしてS0まで移行し、次に1相ずつ正側素子をオンしてS7の状態まで戻って、3相全てについて1つのパルスを出力して元の状態に戻った。
【0178】
これは、三角波比較PWMの三角波一周期分に相当する。
【0179】
図30の電流軌跡には、シーケンス終了時点での軌跡がt3とt6とで2度現われているが、時刻t6よりも時刻t3における電流偏差の方がかなり大きい。
【0180】
すなわち、時刻t1から時刻t3までの非ゼロ電圧ベクトルは、時刻t4から時刻t6までの非ゼロ電圧ベクトルほどには、電流偏差を小さくすることに役立っていない。
【0181】
スイッチング回数の割に電流リップルが大きいのは、このためである。
【0182】
また、電流リップルが均一でないのも、時刻t3時点での電流の位置のばらつきが大きいためである。
【0183】
[第2の課題]
従来例のPWM制御論理には、逆パルスが出易い部分がある。
【0184】
図30のt0〜t6におけるPWM信号k (n)は、
S7→S5→S4→S0→S1→S5→S7
と、変化している。
【0185】
このスイッチング順序を、各相毎PWM信号に直した波形、および各相PWM信号の差をとって描いた線間電圧波形の一例を、図31に示す。
【0186】
各相信号は、どれも1パルスであるが、線間電圧波形では2つのパルスが現われる。
【0187】
ここで、線間電圧Vuv、Vvwでは、2つのパルスが同じ極性なのに、線間電圧波形Vwuのみは違った極性となっている。
【0188】
線間電圧の基本波の符号が変化するところでは、このようなパルスが出現して当然であるが、基本波の符号が変わらないのに出現するのは、高調波を増加させるのみである。
【0189】
この逆方向に出現するパルスを、以降逆パルスと称する。
【0190】
図28に示す従来例によるシミュレーション波形にも、逆パルスが現われている。
【0191】
PWM制御回路からの出力では、逆パルスの幅が狭くても、スイッチング素子に与える前に最小幅回路等でパルス幅を広げられることがあるので、たとえ幅が狭くても、逆パルスは極力出現しないようにしなければならない。
【0192】
逆パルスの原因は、従来例のスイッチングシーケンスで、第1の非ゼロベクトルを選択する時、ゼロベクトルから1相のスイッチングで移行できる非ゼロベクトルの中からしか選べないという制約を設けていることにある。
【0193】
S1を出力する必要はなかったのに、スイッチングシーケンスの制約から、1サンプリングの間のみ出力されてしまうのである。
【0194】
[第3の課題]
シーケンス起動回路11は、許容誤差一定コンパレータ40が出力するシーケンス起動指令と、変調周波数制御回路52が出力するシーケンス起動指令とを、オア回路59にて論理加算して出力している。
【0195】
まず、このシーケンス起動回路11によるパルスモードの変化について説明する。
【0196】
負荷電動機の回転数が低ければ、変調周波数一定の制御で電流偏差が許容誤差円の中に制御できるので、許容誤差コンパレータ側からシーケンス起動指令が出力されることはない。
【0197】
回転数が上昇すると、誘起電圧が高くなり、電流変化が速くなるので、電流偏差が大きくなる。
【0198】
この電流偏差が、許容誤差円に達する回転数以上では、許容誤差コンパレータ40側からシーケンス起動指令が出力されるようになり、電流偏差が許容誤差円内に収まるように制御される。
【0199】
この時、変調周波数制御回路52からのシーケンス起動指令が出力され続けていると、スイッチングシーケンス回路10は、両者からシーケンス起動指令を与えられ、許容誤差コンパレータ40単独で動作している時よりもパルス数が増加する。
【0200】
そこで、これを避けるために、ゼロベクトルから非ゼロベクトルへの変化タイミング(スイッチングシーケンスの開始タイミング)で、変調周波数制御回路のカウンタ53をクリアする。
【0201】
これにより、許容誤差コンパレータ側からの起動指令の周波数が、変調周波数制御回路41側の起動指令の周波数よりも高い場合には、変調周波数側からの起動指令は出力されなくなる。
【0202】
以上によって、回転数が高くなると、許容誤差コンパレータ40のみが起動指令を出力するようになる。
【0203】
許容誤差コンパレータ側の起動指令によるPWMでは、電流偏差を許容誤差範囲に収めようとしてPWM制御がなされる。
【0204】
回転数が上昇し、誘起電圧による電流変化が速くなると、スイッチング周波数も高くなる。
【0205】
ところが、さらに回転数が高くなると、電動機端子電圧と誘起電圧との差が少なくなるので、端子電圧による電流変化が遅くなって、電流が電流基準の変化に追従できなくなる。
【0206】
このため、電流偏差は非常に長く、ベクトルとなって許容誤差円の中に収まることがなくなる。
【0207】
電流偏差の角度変化は、ゆるやかになる。
【0208】
ゼロベクトルには移行しなくなり、隣の非ゼロベクトルとの間でスイッチングするのみとなる。
【0209】
スイッチング周波数は、ますます下がり、パルス数が少なくなる。
【0210】
ここで、変調周波数制御回路で、変調周波数が2kHzとなるように周期を設定している時、電動機の運転周波数が50Hzで、PWMのパルス数が5パルスであるとする。
【0211】
これならば、変調周波数制御回路側の周波数が高いのであるが、変調周波数制御回路側からの起動指令が出力されることはない。
【0212】
変調周波数制御回路のコンパレータ54からの出力が“1”となっても、ゼロベクトルが出力されないと、アンド回路56からの出力が“1”にならないからである。
【0213】
このため、高回転、少パルス時には、許容誤差コンパレータ側からの起動指令のみで、スイッチングシーケンスが動くことになる。
【0214】
このように、許容誤差コンパレータに基づくPWMでは、電流指令の大きさ、周波数によって、自動的にパルス数が変化する。
【0215】
特に、パルス数が少ない領域では、5パルス、7パルスのように、電流指令の周波数に同期したパルス波形が得られる。
【0216】
線間5パルスの場合の、電流基準座標における電流の軌跡を図32、U相電流と各相PWM信号、線間電圧の時間波形を図33にそれぞれ示す。
【0217】
負荷電動機の誘起電圧が高い高回転では、図32に示すように、電流を円形の許容誤差領域に収めることができなくなる。
【0218】
そのために、PWMは、スイッチング条件を加味した帯状領域に基づいて行なわれる。
【0219】
図32および図33に示すように、いずれかの相の電流偏差がゼロ近くになっている短期間に、許容誤差コンパレータ側からの起動による数回のスイッチングが集中して行なわれ、その後電流の変化方向が変わって、スイッチングしていた相の電流偏差は、それまでとは逆の方向に変化するようになる。
【0220】
図33の時刻t1、t3、t5では、swu=0であることによって、電流iu が許容誤差幅の負側の境界に達して、Δiu (iu *−iu )>H/2となる。
【0221】
この時には、AND回路44uが“1”を出力するので、起動指令でスイッチングシーケンス回路を動作させる。
【0222】
これにより、swu=1に変わる。
【0223】
同様に、時刻t2、t4では、swu=1であることによって、電流iu が正側境界に達して、アンド回路44xが“1”を出力して、スイッチングシーケンス回路を動作させ、これによりswu=0に変わる。
【0224】
ところが、t5後しばらくすると、電流変化方向が変わり、swu=1であるのに電流iu が減少し始める。
【0225】
電流iu が、負側境界に達してΔiu >H/2となり、コンパレータ41uからの出力が“1”に変わっても、swu=1であるため、AND回路44uからの出力は“1”とはならない。
【0226】
他の相についても、同様な状態になっており、電流偏差のどの相の成分も帯状領域に入ってもいないのに、許容誤差コンパレータは起動指令を出力しなくなる。
【0227】
そして、この起動指令を出力しない期間は、偏差ベクトルの角度で60度弱つづく。
【0228】
その後は、前記と同様の一連のスイッチングが、他の相で行なわれる。
【0229】
このように、全てのスイッチングが、帯状領域の幅Hに基づいて行なわれるので、パルスの最小幅も幅Hで決まる。
【0230】
7パルスから5パルスへとか、5パルスから3パルスへとかのように、パルス数が減少する時には、2つのパルスが消失するが、そのいずれのパルスも、幅Hによって決まる最小幅を持っている。
【0231】
この幅が広ければ、パルス数変化時の電圧の低次高調波成分の変化が大きく、電流波形がパルス数の影響を強く受ける。
【0232】
また、消失した2つのパルスによる電圧変化を補なうため、他の全てのパルスの幅が変化するために、パルス数にヒステリシスを持ってしまう。
【0233】
このパルス数変化時の電圧変化、パルス数のヒステリシスのいずれも問題である。
【0234】
パルスの幅が充分に狭くなった後に消失すれば、消失による電圧変化は小さくなり、他のパルスの幅の変化も小さくて済む。
【0235】
その結果として、パルス数のヒステリシスも小さくなる。
【0236】
従って、許容誤差領域の幅Hを小さくすれば、パルス幅を狭くすることはできる。
【0237】
しかしながら、これでは、全てのパルスの幅が狭くなり、パルス数が一挙に増加してしまうので好ましくない。
【0238】
本発明の目的は、電流リップルの大きさを、より均一でかつ小さくすることが可能な電圧形インバータの制御装置を提供することにある。
【0239】
また、本発明の目的は、逆パルスを従来よりも少なくすることが可能な電圧形インバータの制御装置を提供することにある。
【0240】
さらに、本発明の目的は、高回転・少パルス時のパルス数切り替わり時の電圧変化を従来よりも低減することが可能な電圧形インバータの制御装置を提供することにある。
【0241】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、複数の自己消弧形スイッチング素子を用いて構成される電圧形インバータの制御装置において、
請求項1に対応する発明では、インバータ出力電流の基準ベクトルと検出ベクトルとの偏差のベクトルの角度に基づいて、電圧ベクトルを選択する電圧ベクトル選択手段と、偏差ベクトルの角度とベクトル長の増減とに基づいて、電圧ベクトル選択手段により選択された電圧ベクトルに対応したスイッチング信号の出力タイミングを制御するタイミング制御手段とを備え、スイッチング信号に基づいて自己消弧素子を制御するようにしている。
【0242】
従って、請求項1に対応する発明の電圧形インバータの制御装置においては、以上のような手段を講じることにより、電流リップルの大きさを、より均一でかつ小さくすることができる。
【0243】
また、請求項2に対応する発明では、インバータ出力電流の基準ベクトルと検出ベクトルとの偏差のベクトルの、角度を検出する角度検出手段およびベクトル長の増減を検出する増減検出手段と、起動指令により起動され、角度検出手段と増減検出手段とにより検出された偏差ベクトルの角度とベクトル長の増減とに基づいて、非ゼロベクトルのスイッチング信号を出力、および切り替え制御し、かつ所定の終了条件が成立するとゼロベクトルのスイッチング信号を出力して一連のシーケンスを終了するスイッチングシーケンス発生手段と、スイッチングシーケンス発生手段に対して起動指令を出力するシーケンス起動手段とを備え、シーケンス起動手段からの起動指令の与え方に応じて、PWM制御としての動作モードを制御するようにしている。
【0244】
従って、請求項2に対応する発明の電圧形インバータの制御装置においては、以上のような手段を講じることにより、電流リップルの大きさを、より均一でかつ小さくすることができる。
【0245】
さらに、請求項3に対応する発明では、インバータ出力電流の基準ベクトルと検出ベクトルとの偏差のベクトルの、角度を検出する角度検出手段およびベクトル長の増減を検出する増減検出手段と、起動指令により起動され、角度検出手段と増減検出手段とにより検出された偏差ベクトルの角度とベクトル長の増減とに基づいて、非ゼロベクトルのスイッチング信号を出力、および切り替え制御し、かつ所定の終了条件が成立するとゼロベクトルのスイッチング信号を出力して一連のシーケンスを終了するスイッチングシーケンス発生手段と、電流偏差の状態とスイッチング信号との組合せ、あるいは所定周期に基づいて、スイッチングシーケンス発生手段に対して起動指令を出力するシーケンス起動手段とを備え、スイッチング信号に基づいて、自己消弧形スイッチング素子を制御するようにしている。
【0246】
従って、請求項3に対応する発明の電圧形インバータの制御装置においては、以上のような手段を講じることにより、電流リップルの大きさを、より均一でかつ小さくすることができる。
【0247】
一方、請求項4に対応する発明では、上記請求項2または請求項3に対応する発明の電圧形インバータの制御装置において、スイッチングシーケンス発生手段としては、スイッチング信号の出力履歴を保持する履歴保持部と、ゼロベクトルのスイッチング信号を出力している時は、スイッチング信号の出力履歴と偏差ベクトルの角度とに基づいて、六つの非ゼロベクトルのうちの1つを選択し、また非ゼロベクトルのスイッチング信号を出力している時は、偏差ベクトルと最も角度差の少ない非ゼロベクトルが出力中の非ゼロベクトルあるいはそれに隣接した非ゼロベクトルである場合には、当該最も角度差の少ない非ゼロベクトルを選択し、偏差ベクトルと最も角度差の少ない非ゼロベクトルが上記のいずれでもない場合には、2つのゼロベクトルのうちのいずれかを履歴保持部により保持されている出力履歴から選択するベクトル選択部と、ベクトル選択部からの出力信号と履歴保持部により保持されている出力履歴と外部からの起動指令とベクトル長の増減検出結果とに基づいて、スイッチング信号をその時点でベクトル選択部が出力するベクトルに対応した信号に変更するか否かを制御する論理演算部とから成っている。
【0248】
従って、請求項4に対応する発明の電圧形インバータの制御装置においては、以上のような手段を講じることにより、電流リップルの大きさを、さらにより均一でかつ小さくすることができる。
【0249】
また、請求項5に対応する発明では、上記請求項2または請求項3に対応する発明の電圧形インバータの制御装置において、スイッチングシーケンス発生手段としては、スイッチング信号の出力履歴を保持する履歴保持部と、履歴保持部が出力する履歴信号と偏差ベクトルの角度とに基づいて、電圧ベクトルを選択するベクトル選択部と、ベクトル選択部からの出力がゼロベクトルである場合には、直ちにあるいは電流偏差ベクトルの増加を増減検出信号が示した時点で、またベクトル選択部からの出力がゼロベクトルでない場合には、出力履歴保持部により保持されている前回値がゼロベクトルで、出力中のスイッチング信号のベクトルとベクトル選択部が出力するベクトルとが異なり、さらに電流偏差ベクトルの増加を増減検出信号が示した時点で、あるいは出力中のスイッチング信号のベクトルとベクトル選択部が出力するベクトルとが異なりかつ外部から起動指令が与えられた時点で、当該時点でのベクトル選択部が出力するベクトルに対応したスイッチング信号を出力する論理演算部とから成っている。
【0250】
従って、請求項5に対応する発明の電圧形インバータの制御装置においては、以上のような手段を講じることにより、電流リップルの大きさを、さらにより均一でかつ小さくすることができる。
【0251】
以上により、電流リップルの大きさを、より均一でかつ小さくすることが可能な電圧形インバータの制御装置を得ることができる。
【0252】
一方、請求項6に対応する発明では、上記請求項2に対応する発明の電圧形インバータの制御装置において、スイッチングシーケンス発生手段としては、スイッチングシーケンス発生手段の出力がゼロベクトルで、出力履歴保持部が保持する前回値からゼロベクトルへの移行に際して、1相のスイッチングしか必要としなかった場合には、前回値の非ゼロベクトルおよびそれに隣接した2つの非ゼロベクトルの3つベクトルの中から、また2相のスイッチングを必要とした場合には、隣接した2つの非ゼロベクトルの中から、偏差ベクトルの角度に基づいてベクトルを選択するベクトル選択部を有するものとしている。
【0253】
従って、請求項6に対応する発明の電圧形インバータの制御装置においては、以上のような手段を講じることにより、逆パルスを従来よりも少なくすることができる。
【0254】
また、請求項7に対応する発明では、上記請求項4または請求項5に対応する発明の電圧形インバータの制御装置において、スイッチングシーケンス発生手段としては、ベクトル選択部がゼロベクトルを出力している場合には、直ちにあるいは偏差ベクトルの増加を増減検出信号が示した時点で、出力履歴保持部により保持されている前回値がゼロベクトルでかつゼロベクトルから出力中のスイッチング信号に移行するに際して、1相のスイッチングしか必要としなかった場合には、ベクトル選択部が出力するベクトルが出力中のスイッチング信号によるベクトルと一致しなくなりかつ偏差ベクトルの増加を増減検出信号が示した時点で、またそれ以外の場合には、ベクトル選択部が出力するベクトルが出力中のスイッチング信号によるベクトルとベクトル選択部が出力するベクトルとが一致しなくなりかつ外部から起動指令が与えられた時点で、当該時点でのベクトル選択部からの出力に対応したスイッチング信号を出力する論理演算部を有するものとしている。
【0255】
従って、請求項7に対応する発明の電圧形インバータの制御装置においては、以上のような手段を講じることにより、逆パルスを従来よりもさらに少なくすることができる。
【0256】
さらに、請求項8に対応する発明では、上記請求項2または請求項3に対応する発明の電圧形インバータの制御装置において、スイッチングシーケンス発生手段としては、スイッチング信号の出力履歴を保持する履歴保持部と、ゼロベクトルのスイッチング信号を出力している時は、スイッチング信号の出力履歴と偏差ベクトルの角度とに基づいて、六つの非ゼロベクトルのうちの1つを選択し、また非ゼロベクトルのスイッチング信号を出力している時は、偏差ベクトルと最も角度差の少ない非ゼロベクトルが出力中の非ゼロベクトルあるいはそれに隣接した非ゼロベクトルである場合には、当該最も角度差の少ない非ゼロベクトルを選択し、偏差ベクトルと最も角度差の少ない非ゼロベクトルが前記のいずれでもない場合には、2つのゼロベクトルのうちのいずれかを履歴保持部により保持されている出力履歴から選択するベクトル選択部と、ベクトル選択部からの出力がゼロベクトルである場合には、直ちにあるいは電流偏差ベクトルの増加を増減検出信号が示した時点で、またベクトル選択部からの出力がゼロベクトルでない場合には、出力履歴保持部により保持されている前回値がゼロベクトルで、出力中のスイッチング信号のベクトルとベクトル選択部が出力するベクトルとが異なり、さらに電流偏差ベクトルの増加を増減検出信号が示した時点で、あるいは出力中のスイッチング信号のベクトルとベクトル選択部が出力するベクトルとが異なりかつ外部から起動指令が与えられた時点で、当該時点でのベクトル選択部が出力するベクトルに対応したスイッチング信号を出力する論理演算部とから成っている。
【0257】
従って、請求項8に対応する発明の電圧形インバータの制御装置においては、以上のような手段を講じることにより、逆パルスを従来よりもさらに少なくすることができる。
【0258】
以上により、逆パルスを従来よりも少なくすることが可能な電圧形インバータの制御装置を得ることができる。
【0259】
一方、請求項9に対応する発明では、上記請求項2または請求項3に対応する発明の電圧形インバータの制御装置において、シーケンス起動手段としては、各相の電流偏差の所定量±H/2とスイッチング信号の符号とに基づく第1の許容誤差領域と、電流偏差ベクトルの長さの所定量Hに基づく第2の許容誤差領域との論理和で得られる領域に、電流偏差が含まれているか否かの比較結果に基づいて、第1の起動指令を出力する許容誤差比較判定部と、時間を測定して所定時間が経過する毎に信号を出力し、許容誤差比較判定部からの第1の起動指令により初期化されるタイマーと、タイマーからの出力信号によりセットされて第2の起動信号を保持し、スイッチングシーケンス発生手段がスイッチング信号を変更する度にリセットされるフリップフロップとから成り、第1の起動指令と第2の起動指令との論理和で、スイッチングシーケンス発生手段に対して起動指令を与えるようにしている。
【0260】
従って、請求項9に対応する発明の電圧形インバータの制御装置においては、以上のような手段を講じることにより、高回転・少パルス時のパルス数切り替わり時の電圧変化を従来よりも低減することができる。
【0261】
また、請求項10に対応する発明では、上記請求項2または請求項3に対応する発明の電圧形インバータの制御装置において、シーケンス起動手段としては、各相の電流偏差の所定量±H/2とスイッチング信号の符号とに基づく第1の許容誤差領域と、電流偏差ベクトルの長さの所定量Hに基づく第2の許容誤差領域との論理和で得られる領域に、電流偏差が含まれているか否かの比較結果に基づいて、第1の起動指令を出力する許容誤差比較判定部と、時間を測定して所定時間が経過する毎に信号を出力し、許容誤差比較判定部からの第1の起動指令、および第2の起動指令の立ち下がりタイミング検出信号で初期化されるタイマーと、タイマーからの出力信号によりセットされて前記第2の起動信号を保持し、スイッチングシーケンス発生手段がスイッチング信号を変更する度にリセットされるフリップフロップおよび第2の起動指令の立ち下がりタイミングを検出する立ち下がり検出部とから成り、第1の起動指令と第2の起動指令との論理和で、スイッチングシーケンス発生手段に対して起動指令を与えるようにしている。
【0262】
従って、請求項10に対応する発明の電圧形インバータの制御装置においては、以上のような手段を講じることにより、高回転・少パルス時のパルス数切り替わり時の電圧変化を従来よりも低減することができる。
【0263】
以上により、高回転・少パルス時のパルス数切り替わり時の電圧変化を従来よりも低減することが可能な電圧形インバータの制御装置を得ることができる。
【0264】
【発明の実施の形態】
最初に、本発明の実施の形態を説明するに先立って、本発明の考え方について説明する。
【0265】
まず、第1の発明の考え方について述べる。
【0266】
前記図30の時刻t2でS5を出力し続けていれば、しばらくの間は電流偏差は減少し続けたのに、時刻t2でS4に切り替えたために、電流変化が望ましい方向からそれている。
【0267】
その後の時刻t2〜t3間では、S4からゼロベクトルへ移行するタイミングを変えても、電流偏差をあまり小さくすることはできない。
【0268】
この電流偏差を効果的に小さくするためには、第1の非ゼロベクトル(S5)から第2の非ゼロベクトル(S4)への移行タイミングを変えなければならない。
【0269】
そして、この第1の非ゼロベクトルから第2の非ゼロベクトルへの移行タイミング決定の判定基準として、「電流偏差ベクトルの長さの変化」に着目する。
【0270】
すなわち、時刻t2では、第1の非ゼロベクトルによって偏差ベクトルが短くなっているので、第2の非ゼロベクトルに移行する必要はない。
【0271】
偏差ベクトルの最短点を電流が行きすぎて、偏差ベクトルが長くなり始めた時点で、第2の非ゼロベクトルに切り替えればよい。
【0272】
このために、Sk (n+1)の選択は、従来と同様にθΔiによって行なうが、Sk (n+1)の値でSk (n)を書き換えるタイミングは、電流偏差ベクトルの長さの増減によって決定することにする。
【0273】
図34は、これによって電流基準座標における電流の軌跡がどのように変わるかを説明するための図であり、時刻t0から時刻t1までは、前記図30と同じである。
【0274】
S5からS4に切り替わる時点t2を、電流偏差ベクトルの最短点に変更している。
【0275】
この時点は、時刻t1以降の電流の軌跡の直線に、座標の原点から垂線を落とすことにより、作図で求められる。
【0276】
最短点t2での偏差ベクトルの角度は、0<θΔi<π/6であるから、表3よりS4に移行し、Sk (n)=S4、Sk (n−1)=5となる。
【0277】
第2の非ゼロベクトルS4は、出力中の電圧ベクトルと電流偏差ベクトルとのなす角度が±90度以上離れるまで、出力され続ける。
【0278】
v4の角度は0度であるので、図34ではθΔiが3π/2となる時刻t3にて角度差が90度となり、ゼロベクトルv0に移行する。
【0279】
許容誤差領域の境界に達する時刻t4まで、−eによって電流変化する。
【0280】
時刻t4における偏差ベクトルの角度は、5π/3<θΔi<11π/6であり、表2から、第1の非ゼロベクトルとしてS4が選ばれる。
【0281】
S4も、電流偏差ベクトルが最短となる時刻t5まで出力された後、第2の非ゼロベクトルS5に切り替えられる。
【0282】
時刻t6にて、ゼロベクトルに移行して、1パルス分(三角波1周期相当分)のスイッチングを終了する。
【0283】
図34に示すようなスイッチングシーケンスを実現するための移行タイミングを得る最も直接的な手段としては、制御サンプリング毎に、電流偏差ベクトルの長さを求め、記憶し、前回記憶した電流偏差ベクトルの長さと比較することである。
【0284】
同じ移行タイミングは、電流の軌跡と電流偏差ベクトルとのなす角に基づいても検出することができる。
【0285】
電流が基準に近づく過程では、電流の軌跡と電流偏差ベクトルとのなす角は90度以下であり、最短ポイントで90度となり、電流が遠ざかり始めると90度以上となる。
【0286】
電流偏差ベクトルの角度は既に求めて使用しているので、電流の軌跡の角度、すなわち電流ベクトルの前回値と今回値との差分を求め、その角度を検出して電流偏差ベクトルとの差をとればよい。
【0287】
電流ベクトルも検出しているから、演算のみの問題である。
【0288】
同じ移行タイミングは、電流偏差ベクトルの角度変化量からも検出できる。
【0289】
図34において、時刻t1から時刻t2の間、電流は直線上を一定速度で移動している。
【0290】
その時の電流偏差ベクトルの角度変化は、電流偏差ベクトルの長さが短いほど大きくなる。
【0291】
従って、制御サンプリング毎に検出する電流偏差ベクトルの角度θΔiの前回値との差分Δθをも求めて記憶しておき、この差分Δθが前回値よりも小さくなったら、移行タイミングとすればよい。
【0292】
次に、第2の発明の考え方について述べる。
【0293】
前記図22の電圧ベクトルで見ると、V4とV1とは120度角度が離れている。
【0294】
従来例では、(ゼロベクトル)→第1の非ゼロベクトル→第2の非ゼロベクトル→ゼロベクトルというスイッチングシーケンスの中では、図22で隣り合った2つの非ゼロ電圧ベクトルとゼロ電圧ベクトルとのみを用いるという制約を設けているが、1つのスイッチングシーケンスと次のスイッチングシーケンスとの間には制約を設けていない。
【0295】
このために、120度離れたベクトルが出現していたのである。
【0296】
そこで、継続するPWMシーケンス間でも、ゼロベクトルから非ゼロベクトルへ移行するスイッチングシーケンスの開始時点において、前回のシーケンスの第2の非ゼロベクトル、あるいはそれに隣接した非ゼロベクトルの中からしかベクトルを選択できないという制約を設ける。
【0297】
ただし、前回出力していた非ゼロベクトルに隣接した非ゼロベクトルに移行する場合には、2相のスイッチングが必要になる。
【0298】
例えば、S4からS0に移行してシーケンスを終了している場合に、次のシーケンスをS6で開始する場合には、U相、V相の2相が同時スイッチングする。
【0299】
この時、前記図23の回路では、Sk (n−1)がゼロベクトルであるかどうかのみで、第1、第2いずれの非ゼロベクトルであるかを識別しているため、S6が第1の非ゼロベクトルとして扱われてしまう。
【0300】
このままでは、S6に隣接するS4、S2のいずれかのベクトルに、さらに移行してしまう可能性がある。
【0301】
従来例では、シーケンス開始時は、必ず1相スイッチングで移行できるベクトルしか選択しないので、図23に示すような回路でよかったが、2相の同時スイッチングを行なう場合には、ゼロベクトルから直ぐに第2の非ゼロベクトルへ移行したものとして扱うべきである。
【0302】
このために、前記ゼロベクトル検出器69の代わりに、Sk (n−1)がゼロベクトルであり、かつSk (n)が、Sk (n−1)から1相のスイッチングで移行できるベクトルである時にのみ、第1の非ゼロベクトルとする識別回路を設ける。
【0303】
次に、第3の発明の考え方について述べる。
【0304】
本発明では、パルスの位置を電圧の基本波成分への影響が少ない端部へ移動すること、併せて、狭幅のパルスを出力可能とすることを合わせて行なう。
【0305】
このために、許容誤差幅のみでなく、タイマーを併用して起動指令を出力させる。
【0306】
許容誤差領域によるPWMでは、電流偏差の変化速度が変わると、それに合わせてパルス幅を変化させて、電流偏差を同一の領域に収める。
【0307】
電流変化速度の遅い非ゼロベクトルは長時間出力され、電流変化速度の速い非ゼロベクトルは短時間しか出力されない。
【0308】
図33を見ると、時刻t1〜時刻t2間、時刻t3〜時刻t4間は広く、時刻t2〜時刻t3間、時刻t4〜時刻t5間は狭い。
【0309】
また、時刻t1〜時刻t2間と時刻t3〜時刻t4間とを見比べると、時刻t3〜時刻t4間の方が広い。
【0310】
一方、時刻t1〜時刻t3間と時刻t3〜時刻t5間とを比べると、広さは余り変わらない。
【0311】
この間、電流偏差は、図32に示すように、一定の許容誤差幅の間を行き来している。
【0312】
上記のパルス幅の関係は、許容誤差幅の行きと帰りとで費やす時間は違うが、往復の時間はそれほど変わらないということを示している。
【0313】
そこで、タイマーで、スイッチングしてからの時間を測定し、所定時間が経過したら起動指令を出力させることにする。
【0314】
タイマーの所定時間を、時刻t1〜時刻t2の時間よりも長く、時刻t3〜時刻t4の時間よりも短く設定してあれば、時刻t1から時刻t3までのスイッチングはそのままで、時刻t4のみが時刻t3に近づき、時刻t3〜時刻t4の時間が短縮される。
【0315】
時刻t4のスイッチングは、電流偏差が許容誤差のみ変化する前に行なわれることになるので、反対側に戻るまでの時間t4〜t5も短縮される。
【0316】
これによって、時刻t4〜時刻t5間のパルスを前方に移動して時刻t3に近づけ、かつ時刻t4〜時刻t5の時間を短くすることができる。
【0317】
パルスが前方に移動すると、電圧の基本波成分への影響が小さくなる。
【0318】
パルス幅も狭くなるので、時刻t4〜時刻t5のパルスが消失した時の電圧への影響は、双方の効果により軽減される。
【0319】
許容誤差幅Hを狭くすると、スイッチング回数が一挙に増加してしまうが、この方法によれば、消失に近づいているパルスの幅のみを選択的に狭くすることができるので、スイッチング回数の増加は僅かである。
【0320】
このタイマーは、新たに追加しても構わないが、変調周波数制御回路のタイマーで兼ねることができる。
【0321】
変調周波数制御回路は、電動機の制御で言えば、低回転数領域で動作し、ある程度回転数が高くなると動作しなくなり、代わりに許容誤差コンパレータ側が動作するようになる。
【0322】
さらに回転数が高くなって、パルス数が少なくなる領域で、新しいタイマーは用いられる。
【0323】
2つのタイマーが同時に動作する必要はない。
【0324】
ただし、1つのタイマーで兼ねる場合には、高回転でも変調周波数制御回路側からの起動信号が出力できるようにするために、アンド回路56を省略しなければならない。
【0325】
アンド回路56は、変調周波数一定の制御時の高回転における電流波形の悪化を避けるために設けられているので、高回転では許容誤差一定の制御に切り替えてしまうようにすれば、省略することができる。
【0326】
今回同時に提案している第1の発明によって、電流波形が著しく改善されるので、アンド回路56を省いても、前述した従来例よりも高い回転数まで、変調周波数一定の制御で電流制御を行なうことが可能となる。
【0327】
また、スイッチング信号の変化毎にタイマーをクリアすると、変調周波数一定のPWMができなくなるので、タイマー出力を従来のレベルからパルスに変更し、当該パルスでフリップフロップをセットさせることにし、フリップフロップ出力をタイマー側からの起動指令とする。
【0328】
スイッチング信号の変化毎には、タイマーをクリアする代わりに、フリップフロップをリセットさせる。
【0329】
前述した従来例では、変調周波数制御回路のカウンタを、スイッチングシーケンスの開始タイミング(ゼロベクトルから非ゼロベクトルへの変化タイミング)でクリアしているが、この方法では高回転でクリア信号が出ない。
【0330】
前述した従来例では、低回転域でしか変調周波数制御を使用しなかったので、これでよかったのであるが、本発明では、高回転でもタイマーをクリアする必要がある。
【0331】
このため、許容誤差コンパレータ側の起動指令によるタイマークリア、または許容誤差コンパレータ側の起動指令とタイマー側の起動指令(フリップフロップ出力)との論理和によるクリアに変更する。
【0332】
以下、上記のような考え方に基づく本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0333】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態による電圧形インバータの制御装置を適用した誘導電動機の電流制御装置の構成例を示すブロック図であり、前述した従来例と同一構成要素には同一符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分についてのみ述べる。
【0334】
図1において、ベクトル角検出器8は、前述した従来例のように、電流偏差成分から演算で求めてもよいのであるが、正弦波関数の演算は、マイコンの負担が大きく、他の処理を行なう時間が犠牲になる。
【0335】
図2は、高速に角度を検出するためのベクトル角検出器8の構成例を示すブロック図である。
【0336】
図2に示すように、コンパレータ20u,20v,20w,20uw,20vu,20wuと、減算器21uw,21vu,21wuと、論理回路22とから構成されている。
【0337】
コンパレータ20u,20v,20wは、それぞれ相電流の偏差Δiu ,Δiv ,Δiw をゼロレベルと比較して、ゼロよりも大きければ論理値“1”を出力する。
【0338】
一方、コンパレータ20uw,20vu,20wuは、それぞれ減算器21uw,21vu,21wvで相電流の差を取った結果Δiu −Δiw 、Δiv −Δiu 、Δiw −Δiv をゼロと比較して、ゼロよりも大きければ、論理値“1”を出力する。
【0339】
これにより、コンパレータ20uw,20vu,20wuは、それぞれΔiu >Δiw 、Δiv >Δiu 、Δiw >Δiv の時に、論理値“1”を出力する。
【0340】
このコンパレータ出力と電流偏差ベクトルの角度との関係を、図3に示す。
【0341】
電流偏差ベクトルの3相成分が最上段の波形である時、その角度θΔiは、コンパレータ20u,20v,20w,20uw,20vu,20wuからの出力の組合せから、図3の関係に基づいて求めることができる。
【0342】
図2の論理回路22は、当該演算を行なうものであり、下記の式に基づいて、QN=Q0〜Q11の12bit信号を出力する。
【0343】
QNのNは、図3において角度範囲の上に記した0〜11の値である。
【0344】
下記の式のUGOは、Δiu >0の時に“1”となるコンパレータ20uからの出力信号で、VGO、WGOも同様に、コンパレータ20v,20wからの出力信号、UGWはΔiu >Δiw の時に“1”となるコンパレータ20uwからの出力信号で、VGU、WGVも同様に、コンパレータ20vu,20wvからの出力信号である。
【0345】
Q0=UG0* /VG0* /WG0* /UGW* /VGU* /WGV
Q1=UG0* VG0* /WG0* UGW* /VGU* /WGV
Q2=UG0* VG0* /WG0* UGW* VGU* /WGV
Q3=/UG0* VG0* /WG0* UGW* VGU* /WGV
Q4=/UG0* VG0* /WG0* /UGW* VGU* /WGV
Q5=/UG0* VG0* /WG0* /UGW* VGU* /WGV
Q6=/UG0* VG0* WG0* /UGW* VGU* WGV
Q7=/UG0* /VG0* WG0* /UGW* VGU* WGV
Q8=/UG0* /VG0* WG0* /UGW* /VGU* WGV
Q9=UG0* /VG0* WG0* /UGW* /VGU* WGV
Q10=UG0* /VG0* WG0* UGW* /VGU* WGV
Q11=UG0* /VG0* WG0* UGW* /VGU* WGV
また、論理回路22は、下記の式のLE信号も出力する。
【0346】
LE=Q0+Q1+Q2+Q3+Q4+Q5+Q6+Q7+Q8+Q9+Q10+Q11
上記の式から、電気角θΔiが0〜π/6の時には、Q0のみが“1”となる。
【0347】
また、他も同様であり、12個の出力信号のうち1個のみが論理値“1”を出力する。
【0348】
ここで、論理回路22には、6個の信号が入力されているので、その組合せによる状態数は64である。
【0349】
これに対して、電気角検出として有効なのは、12状態でしかない。
【0350】
LE信号は、論理回路22からの出力信号が有効なデータである時にのみ“1”を出力して、電流検出の誤差、電流検出信号に乗ったノイズ等により、論理回路22が不正なデータを出力した時に、そのデータを捨てるために用いられる。
【0351】
エンコーダ23は、12ビットの信号Q0〜Q11から電気角に応じた4ビットの電気角信号θΔi=0〜11を出力する。
【0352】
ラッチ回路24は、エンコーダ23からの出力を、クロックパルスによってラッチする。
【0353】
アンド回路25は、論理回路22から出力されるLE信号と、図示しないクロックパルス発生器から与えられるクロックとのアンドをとり、ラッチ回路24にクロックを与える。
【0354】
ベクトル角検出器8として、図2の方式をソフト化すれば、高速に検出できるので、マイコンの負担を軽くすることができる。
【0355】
ハード化してしまえば、さらに高速に検出できるので、制御サンプリングを速くして、パルス幅制御の分解能を高くすることができる。
【0356】
増減検出回路9の構成例を、図4に示す。
【0357】
図4において、乗算器30u,30v,30wで電流偏差の各相成分Δiu ,Δiv ,Δiw の二乗を求め、加算器31にて3相分を加算すると、電流偏差ベクトルの長さの二乗が求められる。
【0358】
ラッチ回路32にて、加算器31からの出力をラッチし、コンパレータ33に与える。
【0359】
コンパレータ33への他方の入力としては、加算器31からの出力が与えられているので、コンパレータ33は、電流偏差ベクトルの長さの二乗を前回値と比較して、増減検出信号INCを出力する。
【0360】
この増減検出信号INCは、ベクトル長が増加していれば、“1”の論理値信号である。
【0361】
【表4】
【0362】
偏差ベクトル角θΔ i とベクトル長増加信号Incは、スイッチングシーケンス回路10aに入力される。
【0363】
スイッチングシーケンス回路10aは、電流偏差ベクトル角θΔ i に基づいて、電圧ベクトルを選択するという点では、前述した従来例と同様であるが、選択した電圧ベクトルへの移行タイミングの決定にベクトル長増加信号Incを用いる点(第1の発明に相当)が大きく異なっている。
【0364】
また、逆パルスが出現し難くなるように、ベクトル選択テーブルも改められている(第2の発明に相当)。
【0365】
なお、スイッチングシーケンス回路10aの詳細な動作は、全体の構成要素について説明した後に述べる。
【0366】
電流偏差ベクトルは、シーケンス起動回路11aにも入力される。
【0367】
シーケンス起動回路11aの詳細な構成例を、図5に示す。
【0368】
図5において、許容誤差コンパレータ40の構成は、前述した従来例と全く同じである。
【0369】
変調周波数制御回路52aは、タイマーカウンタ53aと、周期設定値55と、RSフリップフロップ63とから構成されている。
【0370】
タイマーカウンタ53aは、図示しないクロック発生器から与えられるクロックパルスで動作して、ゼロから周期設定値55まで繰り返しカウントを行ない、周期設定値に達した時点でパルスを出力する。
【0371】
許容誤差コンパレータ40からの出力“1”で、タイマーカウンタ53aはクリアされ、ゼロからカウントし始める。
【0372】
RSフリップフロップ63は、タイマーカウンタ53aからの出力パルスでセットされ、スイッチングシーケンス回路10aからフィードバックされるスイッチング動作信号によってリセットされる。
【0373】
許容誤差コンパレータ40からの出力信号ERと、変調周波数制御回路52aからの出力TRとは、オア回路59にて論理和をとられ、起動指令として、スイッチングシーケンス回路10aに与えられる。
【0374】
スイッチングシーケンス回路10aの詳細な構成例を、図6に示す。
【0375】
図6において、61,62、65〜67、70,71は、前述した従来例と同一構成要素であるので、ここではその説明を省略する。
【0376】
60aは、ベクトル選択テーブルであるが、テーブルの内容が、前述した従来例とは異なる。
【0377】
前述した従来例の図24に相当するゼロベクトルからの選択論理の一例を、図7に示す。
【0378】
図7(a)は前回のシーケンスがv4→v0で終了していた場合に用い、図7(b)は前回のシーケンスがv4→v7で終了していた場合に用いる。
【0379】
ゼロベクトル移行前に出力していた非ゼロベクトル、およびその両側に隣接する2つの非ゼロベクトルの、合計3つのベクトルが選択候補である。
【0380】
(1)前回のシーケンスで、第2の非ゼロベクトルからゼロベクトルへ移行していた時、すなわち1相のスイッチングでゼロベクトルへ移行していた時には、電流偏差ベクトルと元の非ゼロベクトルとの角度差が±60度以内なら、元の非ゼロベクトルを選択し、それ以外の時には、元の非ゼロベクトルに隣接した2つの非ゼロベクトルのうち、電流偏差ベクトルとの角度差の少ない非ゼロベクトルを選択する。
【0381】
図7(a)に、この関係を図示する。
【0382】
(2)前回のシーケンスで、第1の非ゼロベクトルからゼロベクトルへ移行していた時、すなわち2相の同時スイッチングでゼロベクトルへ移行していた場合には、元の非ゼロベクトルに隣接した2つの非ゼロベクトルのうち、電流偏差ベクトルとの角度差の少ない非ゼロベクトルを選択する。
【0383】
図7(b)に、この関係を図示する。
【0384】
上記のうち、(1)のv0→v5、v0→v6のベクトル移行では、2相の同時スイッチングが行なわれる。
【0385】
上記(2)は、あるスイッチングシーケンスで2相の同時スイッチングが行なわれた場合、直後のスイッチングシーケンスでは2相の同時スイッチングを許可しないという制約を持たせるための論理である。
【0386】
前述した第2の発明の考え方では、単に、ゼロベクトルから非ゼロベクトルへ移行する時には、前回のシーケンスでゼロベクトルへ移行する前に使用していた非ゼロベクトルと、その両隣の非ゼロベクトルの中から選択する、と説明した。
【0387】
しかしながら、これのみでは、2相の同時スイッチングが頻繁に生じ易くなり、前述した従来例にはない新たな問題を生じる可能性がある。
【0388】
このため、上記のように、元の非ゼロベクトルに戻ることを許可する場合と、禁止する場合とに分けている。
【0389】
これらの詳細については、作用のところで説明する。
【0390】
非ゼロベクトルからの移行に関しては、前述した従来例と同じである。
【0391】
以上を一括して、表4に示す。
【0392】
ベクトル選択テーブル60aは、Sk (n)、Sk (n−1)、θΔiでアドレスされ、該当するSk (n+1)の値を出力する。
【0393】
本実施の形態のベクトル角検出器8は、0〜11でθΔiの領域信号を出力するので、表4もそれに対応させて、電流偏差の角度範囲毎に12列で示している。
【0394】
68aは、前述した従来例の68では2入力であったアンド回路を3入力とし、電流増減検出信号INCを入力信号として追加している。
【0395】
69aは、従来例のゼロベクトル検出器69に代わるもので、出力中のスイッチング信号Sk (n)が、第1の非ゼロベクトルであるか否かを検出するための論理回路である。
【0396】
この第1の非ゼロベクトル検出の論理回路の詳細な構成例を、図8に示す。
【0397】
図8において、80〜83、85〜89、91はアンド回路、84,90,92はオア回路である。
【0398】
アンド回路80〜83、85〜89、91の入力端子の円は、ローレベルアクティブであることを示す。
【0399】
アンド回路80は、Sk (n−1)=S7の時にのみ、“1”を出力する。
【0400】
アンド回路81,82,83は、それぞれSk (n)がS6,S5,S3の時に、“1”を出力する。
【0401】
オア回路84にて、アンド回路81,82,83からの出力のアンドをとり、オア回路84からの出力とアンド回路80からの出力とのアンドを、アンド回路85にてとる。
【0402】
これにより、アンド回路85は、現在、スイッチングシーケンス回路10aが非ゼロベクトルS6,S5,S3のいずれかを出力しており、それ以前にはゼロベクトルS7を出力していた場合にのみ、“1”を出力する。
【0403】
すなわち、ゼロベクトルS7から1相のみのスイッチングで移行できる非ゼロベクトルS6,S5,S3のいずれかへ移行した時にのみ、論理値“1”を出力する。
【0404】
同様に、アンド回路91は、ゼロベクトルS0から1相のみのスイッチングで移行できる非ゼロベクトルS4,S2,S1のいずれかへ移行した時にのみ、論理値“1”を出力する。
【0405】
アンド回路85,91からの出力は、オア回路92にて論理和をとって、論理回路69aからの出力信号とする。
【0406】
なお、本発明のPWM制御回路には、さまざまな用途に対応するための変更可能な設定として、変調周波数制御回路の周期設定値と、許容誤差の設定値とがあるが、これらは図示しない上位制御回路から設定されるものとする。
【0407】
次に、以上のように構成した本実施の形態による電圧形インバータの制御装置の作用について説明する。
【0408】
(第1の発明に対応する実施の形態の作用)
前記第1の発明の考え方の箇所で説明したのと同様に、電流が図9の電流基準座標の原点にある時刻t0で、スイッチングシーケンス回路がゼロベクトルSk (n)=S7を出力したところから、電流軌跡を追いながらスイッチングシーケンスの作用を説明する。
【0409】
電圧ベクトルの関係も、図29に示す通りであるとする。
【0410】
時刻t0からt1までは、図30と同じで、電流は(v7−e)=−eによって変化する。
【0411】
偏差ベクトル角は、図9からその間5π/3<θΔi<11π/6である。
【0412】
Sk (n−1)=S5であるとすると、ベクトル選択テーブル60aは、表4に基づいて、Sk (n+1)=S5を出力している。
【0413】
Sk (n+1)がゼロベクトルでないので、ゼロベクトル検出器70からの出力は0、Sk (n−1)がゼロベクトルでないので、論理回路69aからの出力もゼロである。
【0414】
このため、オア回路67の残る入力信号、アンド回路65からの出力が“1”にならないと、ラッチ回路61,62は動作しない。
【0415】
アンド回路65への一方の入力である不一致検出回路66からの出力は、Sk (n)=S7、Sk (n+1)=S5から“1”であるので、他方の入力である起動指令が“1”となればよい。
【0416】
時刻t1にて、シーケンス起動回路11aの許容誤差コンパレータ側が起動指令を出力すると、オア回路64、アンド回路65、オア回路67、アンド回路71を介して、ラッチ回路61,62が動作し、Sk (n)=S5、Sk (n−1)=S7となって、スイッチングシーケンスが開始される。
【0417】
スイッチングシーケンス回路10aは、第1の非ゼロベクトルとしてS5を出力する。
【0418】
この時点t1で、偏差ベクトル角は急には変化できないので、π/3<θΔi<11π/6の範囲にあり、ベクトル選択テーブル60aは、表4よりSk (n+1)=S5を出力している。
【0419】
Sk (n+1)=Sk (n)であるので、不一致検出回路66からの出力は“0”となり、アンド回路65によって外部からの起動指令は受付けられなくなる。
【0420】
一方、Sk (n−1)=S7、Sk (n)=S5であるので、論理回路69aは、第1の非ゼロベクトルの識別信号として、論理値“1”を出力する。
【0421】
電流は、第1の非ゼロベクトルによって決まる電圧(v5−e)によって、図9の時刻t1〜時刻t2間の軌跡に従って変化する。
【0422】
途中で点線を超え、偏差ベクトル角が11π/6<θΔi<2πの領域に入ると、ベクトル選択テーブル60aからの出力がS5からS4に変化し、不一致検出回路66は、“1”を出力する。
【0423】
この時点で、アンド回路68aの3入力のうち、2つは既に“1”となっているが、残る1入力は、増減検出信号INCで電流偏差がまだ短くなっているため、ゼロである。
【0424】
時刻t2で、電流偏差が増加に転じてINCが“1”になると、アンド回路68aが“1”を出力して、ラッチ回路61,62が動作する。
【0425】
この時点で、偏差ベクトル角は0<θΔi<π/6の領域にあり、表4よりベクトル選択テーブル60aが出力するSk (n+1)はS4であるので、Sk (n)=S4、Sk (n−1)=S5となる。
【0426】
スイッチングシーケンス回路は、第2の非ゼロベクトルS4を出力する。
【0427】
偏差ベクトル角は、0<θΔi<π/6の範囲にあるので、表4よりSk (n+1)=S4で不変である。
【0428】
電流は、非ゼロベクトルS4によって決まる電圧(V4−e)によって、図9の時刻t2〜時刻t3間の軌跡に従って変化する。
【0429】
時刻t2において、Sk (n+1)=Sk (n)であるので、不一致検出回路66からの出力は“0”、Sk (n−1)=S5であるので、論理回路69aからの出力も“0”、Sk (n+1)=S4であるので、ゼロベクトル検出回路70からの出力も“0”である。
【0430】
論理回路69aからの出力が“0”となると、外部からシーケンス起動指令が与えられない限り、ゼロベクトル検出回路70が“1”を出力するまでの間、スイッチングシーケンス回路10aは、第2の非ゼロベクトルを出力し続ける。
【0431】
(V4−e)による電流変化で、電流偏差ベクトルの角度は、0<θΔi<π/6の領域から11π/6<θΔi<2πの領域、5π/3<θΔi<11π/6の領域、3π/2<θΔi<5π/3の領域へと移っていく。
【0432】
この途中で、ベクトル選択テーブル60aからの出力は、S4からS5に変化する。
【0433】
これにより、不一致検出回路66からの出力は“1”となるが、電流偏差が許容誤差円の中に入っており、起動指令が与えられないので、ラッチ回路61,62が動作することはない。
【0434】
時刻t3にて、偏差ベクトル角が3π/2よりも小さくなると、ベクトル選択テーブル60aは、表4よりS0を出力する。
【0435】
これにより、ゼロベクトル検出器70が“1”を出力して、オア回路67、アンド回路71を介して、ラッチ回路61,62が動作し、Sk (n)=S0、Sk (n−1)=S4となる。
【0436】
ベクトル選択テーブル60aは、表4よりS5を出力する。
【0437】
Sk (n+1)=S5であるので、ゼロベクトル検出器70からの出力は“0”、Sk (n−1)=S4であるので、論理回路69aからの出力もゼロである。
【0438】
不一致検出回路66のみが、“1”を出力する。
【0439】
スイッチングシーケンス回路10aは、ゼロベクトルS0を出力してシーケンスを終了する。
【0440】
この後、スイッチングシーケンスが開始されるのは、電流偏差の大きさが許容誤差円に達する時刻t4においてである。
【0441】
時刻t4において、電流偏差ベクトルの角度が5π/3<θΔi<11π/6の領域に入っており、表4よりベクトル選択テーブル60aがS4を出力しているので、スイッチングシーケンスは、第1の非ゼロベクトルとしてS4を出力して開始される。
【0442】
S4も、電流偏差ベクトルが最短となる時刻t5まで出力された後、第2の非ゼロベクトルS5に切り替えられる。
【0443】
時刻t6にて、ゼロベクトルに移行して、三角波1周期相当分のスイッチングを終了する。
【0444】
以上、本実施の形態によって得られた図9の電流軌跡を、従来の図30と比較する。
【0445】
いずれも、許容誤差一定の制御であるので、電流リップルの大きさは同じのはずである。
【0446】
しかしながら、図9では、三角波半周期相当のスイッチング毎に電流が原点付近に戻っている。
【0447】
時刻t1〜時刻t3間の非ゼロ電圧ベクトルで、電流偏差を効果的に小さくできるようになるので、時刻t3での電流偏差が、図30よりも小さくなっているのである。
【0448】
この結果、ゼロベクトルS0を出力しているt3〜t4の電流軌跡は、図9の方が長くなっている。
【0449】
最初の時刻t0〜t1間の長さは同じであるので、三角波一周期相当のスイッチングを行なう期間において、ゼロベクトルを出力している期間が長くなったことになる。
【0450】
すなわち、電流リップルを同じ大きさに制御する時のスイッチングの周期が長くなっている。
【0451】
従って、同一スイッチング周波数であれば、図9の方が電流リップルは小さくなる。
【0452】
また、各スイッチングシーケンスの最後で、ほぼ原点近くまで戻ることから、時刻t6以降の次のサイクルでも、ほぼ同様な軌跡を描くことが期待でき、電流リップルの均一度を高めることができる。
【0453】
(変形例1)
電流偏差ベクトルの最短ポイントのタイミングは、電流基準座標における電流の変化方向と電流偏差ベクトルとのなす角からも検出することができる。
【0454】
図9から、電流の変化方向と偏差ベクトルのなす角は、最短ポイントでは90度となり、電流が基準に近づく過程では90度よりも小さく、遠ざかり始めると90度よりも大きい。
【0455】
電流基準座標における電流の変化方向は、電流偏差の逆方向ベクトルの今回値−Δin=−(in* −in)から、前回値−Δin−1=−(in−1* −in−1)を減じて得られるベクトル、Δin−1−Δinの角度を求めればよい。
【0456】
本実施の形態では、電流偏差ベクトルの角度を電気角30度毎の領域信号として求めているが、本変形例では、電気角をより細かく検出できることが必要になる。
【0457】
このため、電流の変化方向、電流偏差ベクトルの角度とも、前述した従来例の角度検出方式に従って、ベクトルの成分の符号と(2)式とから演算で求める。
【0458】
本変形例では、電流変化方向を求める演算が必要となる代わりに、電流偏差ベクトルの長さを求める演算が不要となる。
【0459】
得られるタイミングは、本実施の形態と同じである。
【0460】
(変形例2)
同じ移行タイミングは、電流偏差ベクトルの角度変化量からも検出することができる。
【0461】
図9において、時刻t1から時刻t2の間、電流は直線上を一定速度で移動している。
【0462】
その時の電流偏差ベクトルの角度変化は、電流偏差ベクトルの長さが短いほど大きくなる。
【0463】
従って、制御サンプリング毎に検出する電流偏差ベクトルの角度θΔiの前回値との差分Δθをも求めて記憶しておき、Δθが前回値よりも小さくなったら、移行タイミングとすればよい。
【0464】
本変形例も、電流偏差ベクトルの長さに関連した演算なしで、本実施の形態と同一のタイミングを得ることができる。
【0465】
代わりに、電流偏差ベクトルの角度変化量の演算が必要となるが、前述した従来例のように、(2)式に基づいて偏差ベクトル角を高い分解能で検出している場合、その検出結果を保存しておき、次の制御タイミングでの検出結果と比較するのみで、移行タイミングを検出することができる。
【0466】
(変形例3)
本実施の形態では、第1の非ゼロベクトルから第2の非ゼロベクトルへの移行時のみ、ベクトルの長さの増減からタイミングを決めているが、第2の非ゼロベクトルからゼロベクトルへの移行時も、ベクトルの長さの増減でタイミングを決めてよい。
【0467】
このためには、図6におけるゼロベクトル検出器70とオア回路67との間にアンド回路を追加し、増減検出信号INCによってゼロベクトル検出器70からの出力信号をゲートすればよい。
【0468】
第2の非ゼロベクトルと偏差ベクトルとの角度差でゼロベクトルに移行させる実施の形態の方法は、電流偏差の最短点よりも若干早めにゼロベクトルへ移行する傾向があるので、理論的には本変形例の方が、より電流偏差を小さくすることができる。
【0469】
(第2の発明に対応する実施の形態の作用)
図30の場合について、スイッチングシーケンスを最初から行なうと、前記第1の発明の考え方の箇所で説明したように図9となり、逆パルスが出現しなくなってしまうので、何らかの原因で、電流が図30における時刻t3の位置まで変化して、ゼロベクトルに移行したとして、その後の作用を図10に基づいて説明する。
【0470】
図10の軌跡において、時刻t0を付した位置は、図30では時刻t3を付した位置に相当する。
【0471】
図10の時刻t0において、第2の非ゼロベクトルS4からゼロベクトルS0へ移行すると、電流はv0−e=−eにて変化し、時刻t1にて許容誤差円の境界に達する。
【0472】
表4で、Sk (n)=S0、Sk (n−1)=S4の行を見ると、ベクトル選択テーブル60aは、電気角に応じて元の非ゼロベクトルS4あるいは当該元の非ゼロベクトルS4に隣接する非ゼロベクトルS5,S6を出力する。
【0473】
時刻t1での電流偏差ベクトルの角度は、3π/2<θΔi<5π/3の領域にあるので、表4よりベクトル選択テーブル60aは、Sk (n+1)としてS5を出力している。
【0474】
従って、時刻t1にて直ぐにSk (n)=S5に移行する。
【0475】
Sk (n−1)はS0になるが、ベクトル選択テーブル60aからの出力は、表4よりSk (n+1)=S5のままである。
【0476】
従って、不一致検出回路66からの出力は“0”、ゼロベクトル検出器70からの出力は“0”である。
【0477】
また、Sk (n−1)=S0であるので、図8のアンド回路86は“1”を出力するが、Sk (n)=5であるので、アンド回路87〜89は全て“0”を出力している。
【0478】
従って、論理回路69aからの出力もゼロである。
【0479】
すなわち、出力中のSk (n)=S5は、第1の非ゼロベクトルではないという信号を出力している。
【0480】
これらにより、オア回路67への入力は全てゼロである。
【0481】
電流は、v5−eで図10の時刻t2の位置まで変化してゆく。
【0482】
途中、図10で点線を付したベクトル選択の境界を超え、3π/2<θΔi<5π/3の領域から、5π/3<θΔi<11π/6の領域、11π/6<θΔi<2πの領域、0<θΔi<π/6の領域へと移ってゆく。
【0483】
5π/3<θΔi<11π/6の領域から11π/6<θΔi<2πの領域へ移った時に、ベクトル選択テーブル60aからの出力がS4に変化する。
【0484】
これにより、不一致検出回路66は“1”を出力するが、電流偏差が許容誤差円の中にあり、シーケンス起動指令が与えられないので、ラッチ回路61,62は動作せず、電流はそのまま変化を続ける。
【0485】
時刻t2にて、π/6<θΔi<π/3の領域まで移ると、ベクトル選択テーブル60aがS7を出力し、ゼロベクトル検出器70が“1”を出力する。
【0486】
これにより、ラッチ回路61,62が動作し、Sk (n)=S7、Sk (n−1)=S5となる。
【0487】
電流は、V7−e=−eにて変化し、時刻t3にて許容誤差円の境界に達する。
【0488】
以後、第1の発明に対応する実施の形態の作用の箇所で既に説明したように、スイッチングシーケンスが動作し、電流は、図10の時刻t8における位置まで変化してゆく。
【0489】
何らかの原因で、電流偏差が図10の時刻t0のように、比較的誤差の大きいところでスイッチングシーケンスが終了した場合、前述した従来例では、スイッチング回数の少ないベクトル移行を優先するという余計な制限を加えていたために、必要のない逆パルスを出力していたが、本第2の発明に対応する作用によれば、2相の同時スイッチングによって、逆パルスを出力することなく、電流偏差を座標の原点(基準)の近くまで引き戻し、次のスイッチングシーケンスでは、正常な動作に復することができる。
【0490】
図10では、前記第2の発明の考え方の箇所で説明した第1の非ゼロベクトルの選択方法のうち、図7の(a)で示した方法しか使用されていない。
【0491】
ここで、図7(b)の選択方法の必要性について、図11および図12を用いて説明する。
【0492】
図11は、負荷の誘起電圧ベクトルeとインバータの電圧ベクトルv4との角度が近接している場合の電圧の関係図である。
【0493】
図11に示すように、誘起電圧がインバータの出力可能な非ゼロ電圧ベクトルのいずれかと近い角度を持っている時には、インバータの3相出力のうちの2相のパルスがほとんど同じ幅となる。
【0494】
第1の非ゼロベクトルによって、電流が電流基準へ向かってほとんど直進し、僅かにそばを通り抜けた場合、電流偏差ベクトルの長さが非常に短いために、偏差ベクトルは短時間に急回転する。
【0495】
もしも、制御サンプリングの1サイクルの間に、出力電圧ベクトルと偏差ベクトルとの角度差が±30度以内から±90度以上に急変すると、第2の非ゼロベクトルを介さず、直接ゼロベクトルへ移行することになる。
【0496】
このような場合の現象について、図11に示す電圧関係を用いて、図12に示す電流軌跡(電流基準座標における電流軌跡)を追いながら説明する。
【0497】
まず、ゼロベクトルから非ゼロベクトルへ移行する時、「前回のシーケンスでゼロベクトルへ移行する前に出力していた非ゼロベクトルとその両隣の非ゼロベクトルの中から、単に電流偏差ベクトルと最も近い角度をもつベクトルを選択する」という論理を用いてみる。
【0498】
図12の時刻t0において、ゼロベクトルS0を出力し、電圧V0−eによって時刻t1まで電流偏差が増加し、時刻t1にてSk (n)=S0から非ゼロベクトルS4に変化したとする。
【0499】
この後、v4−eで電流は変化するが、サンプリング時間との関係で時刻t2では、電流偏差ベクトルの角度θΔiが3π/2よりも小さくなり、非ゼロベクトルv4との角度差が90度以上になるものとする。
【0500】
偏差ベクトルの角度から、第2の非ゼロベクトルには移行せず、直接ゼロベクトルへ移行する。
【0501】
Sk (n−1)=S0であることから、時刻t2ではS7に変わる。
【0502】
ここで、2相の同時スイッチングが行なわれる。
【0503】
その後、v7−eにより電流が変化して、時刻t3で許容誤差円に達する。
【0504】
ここで、電流偏差ベクトルの角度θΔiは、11π/6<θΔi<2πであるので、先の電流偏差の角度のみから非ゼロベクトルを決定するという論理によれば、v4が選ばれる。
【0505】
ここでも、2相の同時スイッチングが行なわれる。
【0506】
2相の同時スイッチングを行なった非ゼロベクトルは、第2の非ゼロベクトルとして扱うことにするので、電流偏差ベクトルの角度θΔiが3π/2よりも小さくなる時刻t4まで、電流はv4−eで変化する。
【0507】
Sk (n−1)=S7、Sk (n)=S4であるので、時刻t4にてSk (n)はS0に変化する。
【0508】
ここでは、1相のみのスイッチングが行なわれる。
【0509】
時刻t5までv0−eにて電流変化し、再び非ゼロベクトルに移行するが、この時も、電流偏差ベクトルの角度のみから、元の非ゼロベクトルS4が選ばれる。
【0510】
この後、v4−eで電流変化する。
【0511】
時刻t6において、電流偏差の最短点を行きすぎたことを検出できたとすると、図12に示すように第2の非ゼロベクトルv5に変化し、v5−eにて時刻t7まで変化した後にゼロベクトルへ移行する。
【0512】
しかしながら、サンプリングの関係で、時刻t6においてv5に変化することができないままに、電流偏差ベクトルの角度θΔiが3π/2よりも小さくなってしまった場合には、また2相の同時スイッチングが行なわれてしまうことになり、図12よりも電流偏差はさらに増加する。
【0513】
図12では、非ゼロベクトルとしてv4のみしか用いないスイッチングシーケンスが何度も繰り返され、スイッチングシーケンスの終了時点t2、t4、t6における電流偏差が少しずつ大きくなっている。
【0514】
しかも、2相の同時スイッチングが繰り返し行われて、スイッチング周波数は高くなっている。
【0515】
以上のような問題点を回避するために、第2の発明に対応する実施の形態の作用では、
(1)前回のシーケンスで、第2の非ゼロベクトルからゼロベクトルへ移行していた時、すなわち1相のスイッチングでゼロベクトルへ移行していた時には、電流偏差ベクトルと元の非ゼロベクトルとの角度差が±60度以内ならば元の非ゼロベクトルを選択し、それ以外の時には、元の非ゼロベクトルに隣接した2つの非ゼロベクトルのうち、電流偏差ベクトルとの角度差の少ない非ゼロベクトルを選択する
(2)前回のシーケンスで、第1の非ゼロベクトルからゼロベクトルへ移行していた時、すなわち2相の同時スイッチングでゼロベクトルへ移行していた場合には、元の非ゼロベクトルに隣接した2つの非ゼロベクトルのうち、電流偏差ベクトルとの角度差の少ない非ゼロベクトルを選択する
ようにしている。
【0516】
本第2の発明に対応する実施の形態の作用における非ゼロベクトルからのスイッチングでは、本来、1相ずつ順番にスイッチングしてベクトル移行することを意図しており、2相の同時スイッチングが行なわれるのは、制御サンプリング間の電流偏差の角度変化が大きすぎた場合のみである。
【0517】
上記(2)は、本来、前回の第2の非ゼロベクトルを基に、次のスイッチングシーケンスの第1の非ゼロベクトルを選択すべきであるが、意図しない2相同時スイッチングが生じたためにそれができない場合には、前回の第1の非ゼロベクトルに隣接する2つのベクトルのうちのいずれかを選択する。
【0518】
この2つのベクトルのいずれかが、本来第2の非ゼロベクトルとして出力するはずのベクトルだからであり、そのいずれであるかを電流偏差ベクトルの角度で判定する。
【0519】
すなわち、図12の時刻t2では、第1の非ゼロベクトルS4からゼロベクトルS7で移行しているので、上記(2)に相当する。
【0520】
従って、時刻t3では、S4ではなくS5が選択され、時刻t′4の位置まで変化したところで、電流偏差が増加に転じることから第2の非ゼロベクトルS4に変化し、時刻t′5までv4−eによって電流は変化していく。
【0521】
時刻t′5の時点での電流偏差は、既に時刻t4、t6時点での電流偏差よりも小さく、しかもスイッチング回数は2回でしかない。
【0522】
ゼロベクトルから非ゼロベクトルへの移行時の選択を、上記(1)、(2)のように場合分けすることによって、少ないスイッチング回数で電流偏差を効果的に小さくすることができる。
【0523】
第1の非ゼロベクトルからゼロベクトルへの2相同時スイッチングは、許容誤差円を非常に小さく設定した場合や、負荷電動機の運転周波数が低いところで変調周波数一定の制御を行なっている場合等、非常に狭い幅のパルス幅制御が要求されているのに対し、それのみの制御分解能を制御回路が持たない場合に多く生じる。
【0524】
このような場合にも、本第2の発明に対応する実施の形態の作用によれば、図12の時刻t3〜時刻t6間のような異常なパルスを発生してスイッチング周波数が高くなり、しかも電流偏差を小さく制御できない、という不都合を避けることができる。
【0525】
従って、本第2の発明に対応する実施の形態の作用により、同一制御サンプリングでより小さな許容誤差円まで逆パルスを出さない、あるいは電動機のより低回転数まで逆パルスを出さないPWM制御を行なうことが可能となる。
【0526】
(第3の発明に対応する実施の形態の作用)
第3の発明に対応する実施の形態の作用について、図5および図6の回路構成図、図13のベクトル軌跡と、それに対応する図14の時間波形を参照しながら説明する。
【0527】
図14では、電流基準iu *、電流iu 、タイマーカウンタ53aのカウント値、変調周波数制御回路からの出力TR、許容誤差コンパレータからの出力ER、フリップフロップ63のリセット入力RES、スイッチング信号swu,swv,sww、線間電圧波形Vuvの波形を示している。
【0528】
RESは、スイッチングシーケンスからの出力Sk (n)が変化する毎に、“1”となる信号である。
【0529】
高回転・少パルス数領域では、図13に示すように、電流偏差ベクトルの長さが、常に許容誤差円の半径よりも大きいという状態になっている。
【0530】
このため、図5のコンパレータ50が常に“1”を出力しているので、帯状領域の判定を行なうオア回路46が“1”を出力しさえすれば、許容誤差コンパレータ側の起動指令ERが出力される。
【0531】
タイマーカウンタ53aは、ゼロから周期設定値55まで繰り返しカウントを行ない、周期設定値に達する度に“1”のパルスを出力する。
【0532】
タイマーカウンタ53aからの出力によりセットされるフリップフロップ63からの出力(変調周波数一定の起動指令)TRは、オア回路59で許容誤差コンパレータ側の起動指令ERとの論理和をとられ、起動指令としてスイッチングシーケンス回路10aへ出力される。
【0533】
タイマーカウンタ53aは、アンド回路47からの出力によりゼロクリアされる。
【0534】
図14において、時刻t1では、PWM信号がswu=0,swv=0,sww=1(Sk (n)=S1)である時に、U相電流が電流基準に達している。
【0535】
この時、図13から、偏差ベクトルの角度θΔiが3π/2よりも大きくなるので、ベクトル選択テーブル60aからの出力がS1からS5に変わる。
【0536】
Sk (n)=S1、Sk (n+1)=S5となるので、不一致検出回路66が“1”を出力する。
【0537】
図14に示すように、時刻t1では、タイマー側からの起動指令TRが既に“1”になっているので、不一致検出回路66が“1”を出力すると、オア回路67a、アンド回路71を介して、ラッチ回路61,62が動作し、Sk (n)=S5、Sk (n−1)=S1となる。
【0538】
これにより、フリップフロップ63がリセットされて、TRはゼロとなる。
【0539】
この時、タイマー53aはクリアされない。
【0540】
表4から、Sk (n)の値がS1からS5に変わった時点では、ベクトル選択テーブル60aからの出力Sk (n+1)はS5のままであるので、不一致検出回路66からの出力はいったん“0”に変わる。
【0541】
しかしながら、電流変化方向が変わるために、偏差ベクトルの角度は直ぐに3π/2よりも小さくなる。
【0542】
Sk (n+1)はS1となって、不一致検出回路66からの出力は“1”に戻る。
【0543】
時刻t2にて、電流iu が許容誤差幅に達して(iu >iu *+H/2)となると、許容誤差コンパレータ側のオア回路46からの出力が“1”となり、許容誤差コンパレータ側からの起動指令ERが出力される。
【0544】
これにより、Sk (n)=S1、Sk (n−1)=S5となる。
【0545】
この時には、フリップフロップ63がリセットされると同時に、タイマーカウンタ53aがクリアされる。
【0546】
以下、時刻t5までは、タイマーカウンタ53aが設定周期までカウントしないうちに、電流偏差が許容誤差幅に達して起動指令ERが出力され、S1とS5とが交互に出力され、その都度タイマーカウンタ53aがクリアされている。
【0547】
しかしながら、swu=1の期間の電流変化は、徐々にゆるやかになっており、時刻t6で、電流偏差が許容誤差の境界に達しないうちに、タイマーカウンタ53aが設定周期までのカウントを終了する。
【0548】
これにより、タイマー側からの起動指令TRが出力される。
【0549】
時刻t7で、電流偏差が許容誤差領域の反対側の境界に戻り、Sk (n)=S5、Sk (n+1)=S5となる。
【0550】
時刻t7以後、しばらくすると電流変化方向が変わる。
【0551】
U相電流が帯状領域から出てしまっても、電流偏差の符号がこれまでと逆であるので、起動指令ERは出力されない。
【0552】
こうなると、タイマーカウンタ53aがクリアされない期間が長く続くので、タイマーカウンタ53aは確実に周期設定値までカウントを続けることになる。
【0553】
時刻t8にて、タイマー側からの起動指令TRが出力されるが、Sk (n)=S5、Sk (n+1)=S5で、不一致検出回路66からの出力がゼロであるので、ラッチ回路61,62は動作しない。
【0554】
偏差ベクトルの角度が、11π/6よりも大きくなった時刻t9で、時刻t1と同様に、ラッチ回路61,62が動作し、Sk (n)=S4、Sk (n−1)=S5となる。
【0555】
以後、同様にしてPWMが行なわれる。
【0556】
以上のように、本第3の発明に対応する実施の形態の作用により、時刻t2から時刻t5までは、前述した従来例と同様に、許容誤差に基づいてスイッチングされるが、時刻t6では、タイマーによるスイッチングが行なわれる。
【0557】
時刻t6では、電流偏差は許容誤差の境界に達していない。
【0558】
このため、電流が許容誤差領域の反対側の境界に戻るまでの時間t6〜時刻t7も短くなり、許容誤差による場合よりもパルス幅が狭くなる。
【0559】
線間電圧波形で見ると、時刻t6〜時刻t7のパルスは最内に位置し、パルス数が減少する時に消失するパルスである。
【0560】
当該パルスを前方に移動することによって、このパルスの線間電圧の基本波成分への影響を小さくし、パルス幅を狭くすることによってパルスが消失する時の電圧変化量を小さくしている。
【0561】
このシミュレーション波形を、図15に示す。
【0562】
図15では、図14に示す信号の他に、電流偏差ベクトルの角度θΔiの波形も示している。
【0563】
ベクトル選択テーブル60aからの出力変化を待つ時間が長いため、変調制御回路からの出力(フリップフロップ63からの出力)TRには、“1”の期間が多い。
【0564】
この方式では、時刻t1でのような電気角60度毎の一連のスイッチングの最初のタイミングでは、タイマーをクリアしない。
【0565】
このため、変調制御回路からの出力TRがリセットされてゼロに戻った直後に、タイマーカウンタ53aが設定周期に達して、変調制御回路からの出力TRが再度“1”になる場合がある。
【0566】
このため、電気角60度毎の最初のパルスは、必ずしもH/2で決まる幅ではなく、非常に幅の狭いパルスが出力され得る。
【0567】
この狭幅パルスは、電気角60度毎の最初のタイミングで、タイマーをクリアしていないことで生じるものである。
【0568】
狭幅パルスの前端は偏差ベクトルの角度で、後端はタイマーで、いずれも許容誤差と関係なくタイミングが定まることから、パルス数のヒステリシスの軽減に役立つ。
【0569】
この方式では、タイマーカウンタ53aが設定周期に達して、変調制御回路からの出力TRを出力する場合にも、非ゼロベクトルの移行(スイッチング)が無条件に行なわれるわけではない。
【0570】
電流偏差ベクトルの角度により、ベクトル選択テーブル60aからの出力変化が生じたこと、すなわち電流偏差を小さくするのに最も有効なベクトルが変化したことを確認し、必要な場合には変化を待ってから、移行が行なわれる。
【0571】
従って、このような高回転少パルス数領域で、タイマーによりパルス幅が変化する場合にも、電流波形は極めて安定である。
【0572】
前述した従来例では、許容誤差の設定Hでパルスの最小幅が決まるので、本第3の発明に対応する実施の形態の作用のようには、電流の微調整を行なうことができない。
【0573】
また、パルスを電圧波形の端部に位置させる限界も、許容誤差の設定で決まっていたことから、パルス数による電圧の基本波成分の変化も、本第3の発明に対応する実施の形態の作用の場合よりは大きい。
【0574】
本第3の発明に対応する実施の形態の作用により、スイッチング回数の異常な増加をさけながら、非常に幅の狭いパルスを出力することが可能となる。
【0575】
同時に、電圧波形の端部でスイッチングを集中して行なうことで、低次高調波の低減に効果的で、基本波成分への影響が軽微なPWM波形を得ることができ、パルス数変化時の電圧変化を軽減することが可能となる。
【0576】
(変形例)
図16に、シーケンス起動回路の変形例を示す。
【0577】
すなわち、前記図5の回路に、立ち下がり検出回路80を付加した構成としている。
【0578】
図5の回路では、変調制御回路からの出力TRがゼロに戻った直後に、タイマーカウンタ53aが設定周期に達して後、再び変調制御回路からの出力TRを“1”にする場合があったが、図16に示す回路では、フリップフロップ63がリセットされると同時に、立ち下がり検出回路がパルスを出力して、タイマーカウンタ53aをクリアする。
【0579】
変調制御回路からの出力TRTRがゼロになった直後に、再度“1”になるということがなくなり、設定周期の時間が確保される。
【0580】
実際の動作としては、電気角60度毎の最初のパルスの幅がH/2に等しくなることが多い。
【0581】
このシミュレーション波形を、図17に示す。
【0582】
図15より、パルス幅の揃ったほぼ同一の繰り返し波形が得られる。
【0583】
図16の回路でも、前述した従来例よりは、狭い幅のパルスを出力することができ、しかも図15の回路よりも安定なPWM波形を得ることができる。
【0584】
(変形例)
前記第3の発明の考え方の箇所で説明したように、変調周波数制御用と高回転・少パルス時用とに、それぞれタイマーを持っても構わない。
【0585】
この場合には、異なる周期設定値を持ったもう1個のタイマーカウンタからの出力と、2つのタイマーカウンタからの出力とを切り替える切替器を設ければよい。
【0586】
この切替器への切り換え信号は、上位制御回路から与える。
【0587】
通常は、変調周波数制御用のタイマーカウンタを用い、高回転・少パルス時のみ専用のタイマーカウンタに切り替える。
【0588】
タイマーカウンタのクリア信号も、変調周波数制御用の場合と同様に、ERを用いればよい。
【0589】
上述したように、第1乃至第3の発明に対応する実施の形態による電圧形インバータの制御装置では、以下のような効果を得ることができる。
【0590】
(第1の発明に対応する実施の形態の効果)
本第1の発明に対応する実施の形態によるシミュレーション結果を、図18〜図20に示す。
【0591】
図18は、前述した従来例のシミュレーション結果(図28)と同一条件で、許容誤差一定の制御を行なっている。
【0592】
前述した従来例の図28では、パルスの配置が不均一で、パルス幅の変化の仕方も一様でないのに対して、本第1の発明に対応する実施の形態の図18では、パルスが均等に配置されるようになり、パルス幅も位相に応じて連続的に変化させることができる。
【0593】
また、線間電圧波形で対になるパルスの幅も、図18の方が揃っている。
【0594】
この結果、電流基準の一周期当たりのスイッチング信号のパルス数が、図28では70パルス弱であったのに対して、図18では45パルス程度と格段に少ないパルス数で済むようになる。
【0595】
さらに、パルス幅が揃ったことにより、従来よりも高い運転周波数まで変調周波数一定の制御を行なうことができる。
【0596】
これらは、前述した従来例では、2度のスイッチングシーケンスの最初と2度目とで、ゼロベクトル移行時のベクトル空間における電流偏差の位置がばらばらであったのに対して、本第1の発明に対応する実施の形態によって、それぞれのスイッチングシーケンスにおいて、電流偏差がベクトル空間でほぼ同じ位置を占めてからゼロベクトルに移行するようになることの効果である。
【0597】
本第1の発明に対応する実施の形態のスイッチングシーケンス回路は、偏差ベクトルの角度に基づいて次に移行すべきスイッチング信号を選択し、偏差ベクトルが出力中のスイッチング信号による極小値を過ぎたことを検出して、先に選択したスイッチング信号に出力を切り替える。
【0598】
電流偏差ベクトルの角度、ベクトル長の極小値は、いずれも電流偏差の相対量であり、電流偏差の大きさそのものではない。
【0599】
この2つの量に基づいて、非ゼロベクトルを選択し、スイッチングして、必ず電流偏差が減少する方向に電流を変化させる、というのみである。
【0600】
従って、PWM制御動作の態様は、外部からの起動指令の与え方次第でどうにでもなる。
【0601】
電流偏差を許容誤差範囲に収めたければ、電流偏差が許容誤差よりも大きくなった時点で起動指令を与えればよいし、スイッチング周波数を所定周波数としたい場合には、一定周期で起動指令を与えればよい。
【0602】
スイッチングシーケンスが終了しないうち、すなわち非ゼロベクトル出力中に起動指令が与えられた場合には、その時点での電流偏差ベクトルの角度から、隣合った非ゼロベクトル間でのPWMや、次々に隣の非ゼロベクトルに移行させるので、
(a)電流基準や負荷の急変により、電流偏差が許容誤差に収まらなくなる過渡状態時には、許容誤差による起動指令が出力されている間、電流偏差ベクトルの角度に基づいて必要な非ゼロベクトルを出力し続けるので、電流を急速に基準に追従させることが可能となる。
【0603】
(b)電動機の高回転時のように、負荷の誘起電圧が高く、電流偏差が許容誤差に収まらなくなる場合には、隣り合った非ゼロベクトル間のスイッチングで、少パルスのPWMや1パルス方形波を実現することが可能となる。
【0604】
dp軸電流制御と三角波比較PWMとの組合せでは、正弦波電流の制御しか行なえないのに対して、本第1の発明に対応する実施の形態によれば、120度方形波の電流制御も、上記(a)から可能となる。
【0605】
(第2の発明に対応する実施の形態の効果)
線間電圧の基本波の符号が変わるゼロボルト付近では、低電圧を出力するために、線間電圧に非常に幅の狭いパルスを出力しなければならない。
【0606】
この時、必要なパルス幅の相による違いは非常にわずかでしかなく、制御が難しい。
【0607】
このため、図28では、線間電圧波形に逆パルスが多数出現している。
【0608】
これに対して、図18では、線間電圧ゼロボルト付近でも、逆パルスが出ていない。
【0609】
これは、2つの相のスイッチング信号が全く同じ幅となり、線間電圧にパルスとして現われなくなったためで、本第2の発明に対応する実施の形態により、ゼロベクトルから第2の非ゼロベクトルへ直接移行したことの効果である。
【0610】
図19は許容誤差一定の起動指令と変調周波数一定の起動指令とが混在する周波数、図20は変調周波数一定の起動指令のみによって動作する周波数まで、電流基準の周波数を下げた場合のシミュレーション結果である。
【0611】
本第2の発明に対応する実施の形態により、このような低周波数でも逆パルスが出なくなっている。
【0612】
(第3の発明に対応する実施の形態の効果)
高回転少パルス時において、前述した従来例(図32、図33)では、許容誤差で決まる幅よりも狭い幅のパルスは出力できないため、パルス数による電圧の基本波成分の変化が大きい。
【0613】
また、同じ原因で、パルス数にヒステリシスを持ってしまっている。
【0614】
このため、負荷の状態が同じであり、電流基準も同じであるのに、パルス数によって電流波形が異なるという結果を生じている。
【0615】
これに対して、本第3の発明に対応する実施の形態では、図13乃至図17を用いて説明したように、パルス数の減少時に消失するであろう電圧波形の内側のパルスのみについて、選択的にその幅を狭め、かつその位置を前方にずらして、スイッチング回数の大幅な増加なしに、パルス数切り替わり時の電圧変化を小さくすることができる。
【0616】
従って、パルス数切り替わり時の電流波形の相違が小さく、パルス数のヒステリシスも小さい。
【0617】
電流瞬時値比較に基づくので、このような少パルス時にも、電流波形は極めて安定している。
【0618】
図18乃至図20から、許容誤差一定の制御と変調周波数一定の制御とが自動的に切り替わることがわかる。
【0619】
特に、図19では、2つの制御モードがランダムに切り替わっているにもかかわらず、パルス幅の急峻な変化がなく、電流も一様に制御される。
【0620】
本第1の発明に対応する実施の形態(図5)のシーケンス起動回路によって、変調周波数一定から許容誤差一定の制御へと自動的に切り替わり、かつ許容誤差一定の制御内でも、通常のPWM波形から高回転少パルス時の7パルス、5パルス、3パルス等の波形、さらには方形波と、自動的にパルス数を変化させ、しかもパルス数変化時の電圧変化の少ないPWM制御を行なうことができる。
【0621】
(その他の実施の形態)
尚、本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で、種々に変形して実施することが可能である。
上記各実施の形態では、電動機の電流制御を例にとって説明してきたが、本発明は電動機制御用のインバータに限定されるものではない。
【0622】
すなわち、誘起電圧検出を必要としないことから、電流瞬時値制御を行なう電圧形インバータ全般に適用することができるPWM制御である。
【0623】
また、各実施の形態は可能な限り適宜組合わせて実施してもよく、その場合には組合わせた作用効果を得ることができる。
さらに、上記各実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合わせにより、種々の発明を抽出することができる。
例えば、実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題(の少なくとも1つ)が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果(の少なくとも1つ)が得られる場合には、この構成要件が削除された構成を発明として抽出することができる。
【0624】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の電圧形インバータの制御装置によれば、電流リップルの大きさを、より均一でかつ小さくすることが可能となる。
【0625】
また、本発明の電圧形インバータの制御装置によれば、逆パルスを従来よりも少なくすることが可能となる。
【0626】
さらに、本発明の電圧形インバータの制御装置によれば、高回転・少パルス時のパルス数切り替わり時の電圧変化を従来よりも低減することが可能となる。
【0627】
以上により、以下のような種々の波及効果を得ることができる。
【0628】
(a)パルスモードが、自動的かつ連続的に変化して、インバータの運転周波数範囲の全てをカバーすることができる。
【0629】
(b)電流応答を速くすることができる。
【0630】
定常状態では、変調周波数一定の制御を行なっている場合にも、電流偏差が大きくなると、許容誤差一定の制御に移行して、高速に電流を追従させることができる。
【0631】
従って、GTOインバータ等で、スイッチング素子が低速なため、数百Hzの変調周波数で使用している場合にも、高速な電流制御を行なうことが可能となる。
【0632】
(c)直流電圧変動・負荷の定数変化に強い。
【0633】
電気自動車等のような、電圧変動の大きなバッテリを電源として用いる制御装置に適する。
【0634】
(d)PI制御、デッドタイム補償、誘起電圧補償等の調整の必要な補償制御を不要とすることができる。
【0635】
よって、調整レスにより、装置を安価に実現することができる。
【0636】
(e)非正弦波電流制御を行なうことが可能となる。
【0637】
方形波電流制御による高トルク出力が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電圧形インバータの制御装置を適用した誘導電動機の電流制御装置の一実施の形態を示すブロック図。
【図2】同一実施の形態におけるベクトル角検出器8の構成例を示すブロック図。
【図3】同一実施の形態におけるコンパレータ出力と電流偏差ベクトルの角度との関係を示す図。
【図4】同一実施の形態における増減検出回路9の構成例を示すブロック図。
【図5】同一実施の形態におけるシーケンス起動回路11aの詳細な構成例を示すブロック図。
【図6】同一実施の形態におけるスイッチングシーケンス回路10aの詳細な構成例を示すブロック図。
【図7】同一実施の形態におけるゼロベクトルからの選択論理の一例を示す図。
【図8】同一実施の形態における第1の非ゼロベクトル検出の論理回路の詳細な構成例を示すブロック図。
【図9】第1の発明に対応する実施の形態の作用を説明するための図。
【図10】第2の発明に対応する実施の形態の作用を説明するための図。
【図11】図12の電流基準座標における電流軌跡を描くための電圧ベクトルの関係を示す図。
【図12】第2の発明に対応する実施の形態の非ゼロベクトルの選択方法の必要性を示すための補足説明図。
【図13】第3の発明に対応する実施の形態の作用を説明するための電流基準座標における電流軌跡図。
【図14】図13に対応する時間波形を示す図。
【図15】第3の発明に対応する実施の形態の作用と効果を説明するためのシミュレーション結果を示す図。
【図16】シーケンス起動回路の変形例を示す構成図。
【図17】第3の発明に対応する実施の形態の変形例の作用と効果を説明するためのシミュレーション結果を示す図。
【図18】第1および第2の発明に対応する実施の形態の効果を説明するためのシミュレーション結果を示す図。
【図19】第1および第2の発明に対応する実施の形態の効果を説明するためのシミュレーション結果を示す図。
【図20】第1および第2の発明に対応する実施の形態の効果を説明するためのシミュレーション結果を示す図。
【図21】従来のPWM制御装置による誘導電動機の電流制御装置の構成例を示すブロック図。
【図22】インバータの出力可能な電圧ベクトルの説明図。
【図23】従来のスイッチングシーケンス回路10の詳細な構成例を示すブロック図。
【図24】従来のゼロベクトルからの電圧ベクトル選択方法の一例を説明するための図。
【図25】従来の非ゼロベクトルからの電圧ベクトル選択方法の一例を説明するための図。
【図26】従来のシーケンス起動回路11の詳細な構成例を示すブロック図。
【図27】許容誤差コンパレータ40の許容誤差領域を説明するための図。
【図28】第1、第2の課題を説明するための従来例によるシミュレーション波形を示す図。
【図29】図30の動作説明に用いる電圧ベクトルの関係を示す図。
【図30】第1の課題を説明するための従来例による電流軌跡(電流基準座標)を示す図。
【図31】第2の課題の逆パルスを説明するためのパルス波形図。
【図32】第3の課題を説明するための従来例による電流軌跡(電流基準座標)を示す図。
【図33】図32に対応する時間波形を示す図。
【図34】第1の発明の考え方を説明するための電流軌跡(電流基準座標)を示す図。
【符号の説明】
1…直流電源、
2…平滑コンデンサ、
3…インバータ、
4…誘導電動機、
5U,5V,5W…ホールCT、
6…電流検出器、
7…ベクトル減算器、
8…ベクトル角検出器、
9…ベクトル長増減検出回路、
10…スイッチングシーケンス回路、
10a…スイッチングシーケンス回路、
11…シーケンス起動回路、
11a…シーケンス起動回路、
12…論理回路、
13…ゲート回路、
20u,20v,20w,20uw、20vu、20wv…コンパレータ、
21uw、21vu、21wv…減算器、
22…論理回路、
23…エンコーダ、
24…ラッチ回路、
25…アンド回路、
40…許容誤差コンパレータ、
41u,41v,41w,41x,41y,41w…コンパレータ、
42…許容誤差設定値、
43…倍率器、
44u,44v,44w,44x,44y,44w…アンド回路、
45u,45v,45w…NOT回路、
46…オア回路、
47…アンド回路、
48u,48v,48w…乗算器、
49…加算器、
50…コンパレータ、
51…乗算器、
52…変調周波数制御回路、
53…カウンタ、
54…コンパレータ、
55…周期設定値、
56…アンド回路、
57…ゼロベクトル検出器、
58…立ち下がり検出回路、
59…オア回路、
60…ベクトル選択テーブル、
61…ラッチ回路、
62…ラッチ回路、
65…アンド回路、
66…不一致検出器、
67…オア回路、
68…アンド回路、
69…ゼロベクトル検出器、
70…ゼロベクトル検出器、
71…アンド回路。
Claims (10)
- 複数の自己消弧形スイッチング素子を用いて構成される電圧形インバータの制御装置において、
インバータ出力電流の基準ベクトルと検出ベクトルとの偏差のベクトルの角度に基づいて、電圧ベクトルを選択する電圧ベクトル選択手段と、
前記偏差ベクトルの角度とベクトル長の増減とに基づいて、前記電圧ベクトル選択手段により選択された電圧ベクトルに対応したスイッチング信号の出力タイミングを制御するタイミング制御手段とを備え、
前記スイッチング信号に基づいて前記自己消弧素子を制御するようにしたことを特徴とする電圧形インバータの制御装置。 - 複数の自己消弧形スイッチング素子を用いて構成される電圧形インバータの制御装置において、
インバータ出力電流の基準ベクトルと検出ベクトルとの偏差のベクトルの、角度を検出する角度検出手段およびベクトル長の増減を検出する増減検出手段と、
起動指令により起動され、前記角度検出手段と増減検出手段とにより検出された偏差ベクトルの角度とベクトル長の増減とに基づいて、非ゼロベクトルのスイッチング信号を出力、および切り替え制御し、かつ所定の終了条件が成立するとゼロベクトルのスイッチング信号を出力して一連のシーケンスを終了するスイッチングシーケンス発生手段と、
前記スイッチングシーケンス発生手段に対して起動指令を出力するシーケンス起動手段とを備え、
前記シーケンス起動手段からの起動指令の与え方に応じて、PWM制御としての動作モードを制御するようにしたことを特徴とする電圧形インバータの制御装置。 - 複数の自己消弧形スイッチング素子を用いて構成される電圧形インバータの制御装置において、
インバータ出力電流の基準ベクトルと検出ベクトルとの偏差のベクトルの、角度を検出する角度検出手段およびベクトル長の増減を検出する増減検出手段と、
起動指令により起動され、前記角度検出手段と増減検出手段とにより検出された偏差ベクトルの角度とベクトル長の増減とに基づいて、非ゼロベクトルのスイッチング信号を出力、および切り替え制御し、かつ所定の終了条件が成立するとゼロベクトルのスイッチング信号を出力して一連のシーケンスを終了するスイッチングシーケンス発生手段と、
電流偏差の状態と前記スイッチング信号との組合せ、あるいは所定周期に基づいて、スイッチングシーケンス発生手段に対して起動指令を出力するシーケンス起動手段とを備え、
前記スイッチング信号に基づいて、前記自己消弧形スイッチング素子を制御するようにしたことを特徴とする電圧形インバータの制御装置。 - 前記請求項2または請求項3に記載の電圧形インバータの制御装置において、
前記スイッチングシーケンス発生手段としては、
前記スイッチング信号の出力履歴を保持する履歴保持部と、
前記ゼロベクトルのスイッチング信号を出力している時は、前記スイッチング信号の出力履歴と前記偏差ベクトルの角度とに基づいて、六つの非ゼロベクトルのうちの1つを選択し、また前記非ゼロベクトルのスイッチング信号を出力している時は、前記偏差ベクトルと最も角度差の少ない非ゼロベクトルが出力中の非ゼロベクトルあるいはそれに隣接した非ゼロベクトルである場合には、当該最も角度差の少ない非ゼロベクトルを選択し、前記偏差ベクトルと最も角度差の少ない非ゼロベクトルが前記のいずれでもない場合には、2つのゼロベクトルのうちのいずれかを前記履歴保持部により保持されている出力履歴から選択するベクトル選択部と、
前記ベクトル選択部からの出力信号と前記履歴保持部により保持されている出力履歴と外部からの起動指令と前記ベクトル長の増減検出結果とに基づいて、前記スイッチング信号をその時点で前記ベクトル選択部が出力するベクトルに対応した信号に変更するか否かを制御する論理演算部と、
から成ることを特徴とする電圧形インバータの制御装置。 - 前記請求項2または請求項3に記載の電圧形インバータの制御装置において、
前記スイッチングシーケンス発生手段としては、
前記スイッチング信号の出力履歴を保持する履歴保持部と、
前記履歴保持部が出力する履歴信号と前記偏差ベクトルの角度とに基づいて、電圧ベクトルを選択するベクトル選択部と、
前記ベクトル選択部からの出力がゼロベクトルである場合には、直ちにあるいは電流偏差ベクトルの増加を増減検出信号が示した時点で、また前記ベクトル選択部からの出力がゼロベクトルでない場合には、前記出力履歴保持部により保持されている前回値がゼロベクトルで、出力中のスイッチング信号のベクトルと前記ベクトル選択部が出力するベクトルとが異なり、さらに電流偏差ベクトルの増加を増減検出信号が示した時点で、あるいは出力中のスイッチング信号のベクトルと前記ベクトル選択部が出力するベクトルとが異なりかつ外部から起動指令が与えられた時点で、当該時点での前記ベクトル選択部が出力するベクトルに対応したスイッチング信号を出力する論理演算部と、
から成ることを特徴とする電圧形インバータの制御装置。 - 前記請求項2に記載の電圧形インバータの制御装置において、
前記スイッチングシーケンス発生手段としては、
スイッチングシーケンス発生手段の出力がゼロベクトルで、出力履歴保持部が保持する前回値から前記ゼロベクトルへの移行に際して、1相のスイッチングしか必要としなかった場合には、前記前回値の非ゼロベクトルおよびそれに隣接した2つの非ゼロベクトルの3つベクトルの中から、また2相のスイッチングを必要とした場合には、前記隣接した2つの非ゼロベクトルの中から、前記偏差ベクトルの角度に基づいてベクトルを選択するベクトル選択部を有することを特徴とする電圧形インバータの制御装置。 - 前記請求項4または請求項5に記載の電圧形インバータの制御装置において、
前記スイッチングシーケンス発生手段としては、
前記ベクトル選択部がゼロベクトルを出力している場合には、直ちにあるいは偏差ベクトルの増加を増減検出信号が示した時点で、前記出力履歴保持部により保持されている前回値がゼロベクトルでかつ前記ゼロベクトルから出力中のスイッチング信号に移行するに際して、1相のスイッチングしか必要としなかった場合には、前記ベクトル選択部が出力するベクトルが出力中のスイッチング信号によるベクトルと一致しなくなりかつ前記偏差ベクトルの増加を増減検出信号が示した時点で、またそれ以外の場合には、前記ベクトル選択部が出力するベクトルが出力中のスイッチング信号によるベクトルと前記ベクトル選択部が出力するベクトルとが一致しなくなりかつ外部から起動指令が与えられた時点で、当該時点での前記ベクトル選択部からの出力に対応したスイッチング信号を出力する論理演算部を有することを特徴とする電圧形インバータの制御装置。 - 前記請求項2または請求項3に記載の電圧形インバータの制御装置において、
前記スイッチングシーケンス発生手段としては、
前記スイッチング信号の出力履歴を保持する履歴保持部と、
前記ゼロベクトルのスイッチング信号を出力している時は、前記スイッチング信号の出力履歴と前記偏差ベクトルの角度とに基づいて、六つの非ゼロベクトルのうちの1つを選択し、また前記非ゼロベクトルのスイッチング信号を出力している時は、前記偏差ベクトルと最も角度差の少ない非ゼロベクトルが出力中の非ゼロベクトルあるいはそれに隣接した非ゼロベクトルである場合には、当該最も角度差の少ない非ゼロベクトルを選択し、前記偏差ベクトルと最も角度差の少ない非ゼロベクトルが前記のいずれでもない場合には、2つのゼロベクトルのうちのいずれかを前記履歴保持部により保持されている出力履歴から選択するベクトル選択部と、
前記ベクトル選択部からの出力がゼロベクトルである場合には、直ちにあるいは電流偏差ベクトルの増加を増減検出信号が示した時点で、また前記ベクトル選択部からの出力がゼロベクトルでない場合には、前記出力履歴保持部により保持されている前回値がゼロベクトルで、出力中のスイッチング信号のベクトルと前記ベクトル選択部が出力するベクトルとが異なり、さらに電流偏差ベクトルの増加を増減検出信号が示した時点で、あるいは出力中のスイッチング信号のベクトルと前記ベクトル選択部が出力するベクトルとが異なりかつ外部から起動指令が与えられた時点で、当該時点での前記ベクトル選択部が出力するベクトルに対応したスイッチング信号を出力する論理演算部と、
から成ることを特徴とする電圧形インバータの制御装置。 - 前記請求項2または請求項3に記載の電圧形インバータの制御装置において、
前記シーケンス起動手段としては、
各相の電流偏差の所定量±H/2と前記スイッチング信号の符号とに基づく第1の許容誤差領域と、電流偏差ベクトルの長さの所定量Hに基づく第2の許容誤差領域との論理和で得られる領域に、前記電流偏差が含まれているか否かの比較結果に基づいて、第1の起動指令を出力する許容誤差比較判定部と、
時間を測定して所定時間が経過する毎に信号を出力し、前記許容誤差比較判定部からの第1の起動指令により初期化されるタイマーと、
前記タイマーからの出力信号によりセットされて第2の起動信号を保持し、前記スイッチングシーケンス発生手段がスイッチング信号を変更する度にリセットされるフリップフロップとから成り、
前記第1の起動指令と第2の起動指令との論理和で、前記スイッチングシーケンス発生手段に対して起動指令を与えるようにしたことを特徴とする電圧形インバータの制御装置。 - 前記請求項2または請求項3に記載の電圧形インバータの制御装置において、
前記シーケンス起動手段としては、
各相の電流偏差の所定量±H/2とスイッチング信号の符号とに基づく第1の許容誤差領域と、電流偏差ベクトルの長さの所定量Hに基づく第2の許容誤差領域との論理和で得られる領域に、前記電流偏差が含まれているか否かの比較結果に基づいて、第1の起動指令を出力する許容誤差比較判定部と、
時間を測定して所定時間が経過する毎に信号を出力し、前記許容誤差比較判定部からの第1の起動指令、および第2の起動指令の立ち下がりタイミング検出信号で初期化されるタイマーと、
前記タイマーからの出力信号によりセットされて前記第2の起動信号を保持し、前記スイッチングシーケンス発生手段がスイッチング信号を変更する度にリセットされるフリップフロップおよび前記第2の起動指令の立ち下がりタイミングを検出する立ち下がり検出部とから成り、
前記第1の起動指令と第2の起動指令との論理和で、前記スイッチングシーケンス発生手段に対して起動指令を与えるようにしたことを特徴とする電圧形インバータの制御方法及び制御装置。
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