JP4146936B2 - 水の生物化学的酸素要求量の測定方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水の生物化学的酸素要求量の測定方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、水質の改善方法として、下水や生活排水の処理のために活性汚泥法などの微生物処理法が広く利用されている。また、工業用排水処理設備を有する工場や、グリーストラップが設備されたレストランや食堂などにおける排水については、排水の水質に関する規制基準が満足されることが必要であり、そのために例えば活性炭、微生物製処理剤、微生物活性化剤の投入などの手段による排水の処理が行われている。
而して、このような排水処理がなされた後の水については、その排水処理の結果が満足すべきものであることを確認するために、水質を検査することが必要である。
【0003】
現在、排水のための水質の基準は水質汚濁防止法によって定められており、特に生活環境項目としては、pH(水素イオン濃度)、生物化学的酸素要求量(BOD)、化学的酸素要求量(COD)、浮遊物質量(SS)およびノルマルヘキサン抽出物質(油分)の含有量が重要なものであるが、これらのうち、特に生物化学的酸素要求量の測定は、大きな負担を強いられものとなっている。
【0004】
「生物化学的酸素要求量」とは、水中の例えば炭水化物、脂質、蛋白質などの有機物が、好気性微生物の生活による資化活動によって酸化分解されて安定した物質となるまでの間に消費される酸素量(単位:mg/リットル)である。従って、生物化学的酸素要求量の値が高いことは、汚濁物質としての有機物の含有量が多くて汚染度の高い水であることを意味する。
【0005】
或る検水の生物化学的酸素要求量の値は、好気性微生物の生活の前後において、当該検水における溶存酸素濃度、すなわち水中に溶け込んでいる酸素濃度(「DO」と略記される。単位:mg/リットル)を測定することによって求めることができ、この溶存酸素濃度の測定は、DO電極を有する溶存酸素濃度測定器を利用することによってリアルタイムで実行することができる。
そして、標準として定められているJIS K0102による測定方法によれば、生物化学的酸素要求量は、好気性微生物を投入して温度20℃で5日間放置したときに消費された酸素量で表されるものである。それは、信頼性の高い測定結果を得るために、好気性微生物の繁殖とその生活による有機物の分解を少なくとも5日間行わせることが必要だからである。
【0006】
しかしながら、このように5日間もの長い日数を要することは実際上きわめて不便であることから、短時間で生物化学的酸素要求量を求めることのできる「微生物電極による生物化学的酸素消費量測定器」の基準的条件がJIS K3602で制定された。
この測定装置の原理は、特定の微生物を固定した膜(「微生物膜」という。)を溶存酸素濃度測定器のDO電極に装着し、この微生物膜を通過する水中の有機物を当該微生物が資化することによって生じる当該微生物の呼吸活性の変化をDO電極によって検出するものであり、その原理は次のとおりである。
【0007】
微生物膜を流過する水中の有機物の含有量が少ないときには、微生物の呼吸量は少ないため、DO電極の応答には大きな変化は現れないが、有機物の含有量が多いときには、微生物膜の微生物がその有機物を資化するために呼吸量が多くなって多量の酸素(O2 )を消費することとなり、これにより、DO電極の検出電流の大きさが減少するが、例えば20分間程度の時間が経過すると定常状態になり、このときに有機物を含有しない清浄な水を流過させると、微生物の呼吸量が減少して検出電流の大きさが約30分間程度で回復する。
【0008】
然るに、以上の操作におけるDO電極の検出電流の経時的変化の態様は、水中の有機物の含有量に応じたものとなる。
従って、有機物濃度が既知である標準検液を微生物膜に流過させたときのDO電極の電流の変化を表す検量線を、種々の有機物濃度の標準検液について求めておけば、この標準検液についての検量線に対して、有機物濃度が未知の検水について同様の操作を行ったときに得られる結果を照合することにより、当該検水の有機物濃度を求めることができる。
以上のように、このいわば簡便型の測定方法によれば、標準検液についての測定に要する時間を別として、実際上、2時間以内という短い時間のうちに生物化学的酸素要求量を求めることができ、その点では有利な方法である。
【0009】
しかしながら、上記の方法には、次のような問題点がある。
(1)微生物膜の使用に伴って微生物の活性が低下し、その寿命は通常1ヶ月位であるために、微生物膜を頻繁に新しいものと交換することが必要であり、しかも、必ずしも信頼性の高い測定結果を得ることができない。
(2)微生物膜として、特定の種類の微生物を固定したものを用いることが必要とされているが、特定の種類の微生物が分泌する酵素は、その酸化分解し得る有機物の種類が特異的に特定されるものであり、それ以外の有機物の分解に寄与しない。然るに、実際に有機物の分解に関与する微生物は他種多様であり、結局、上記の簡便型の測定方法では、特定の有機物についての消費酸素量の情報が得られるに過ぎないため、測定結果は、この点でも信頼性の低いものである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来の生物化学的酸素要求量の測定方法では、長い時間と複雑な操作が要求され、あるいは信頼性の高い測定結果を得ることができない、という問題点がある。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、測定対象である検水について、その生物化学的酸素要求量を、短時間で、容易に、また高い信頼性で求めることのできる水の生物化学的酸素要求量の測定方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記の方法を簡便に実施することのできる水の生物化学的酸素要求量の測定装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の水の生物化学的酸素要求量の測定方法は、検水の溶存酸素濃度を監視しながら当該検水中で好気性微生物を或る時間だけ生活させる微生物生活工程と、検水に空気を供給して曝気させる曝気工程とを繰り返すことにより、当該好気性微生物の生活時間の経過に対する消費酸素量の積算値の変化の状態を求め、その結果から、当該好気性微生物の生活時間を延長した時点における合計の消費酸素量の予測値を、当該検水の生物化学的酸素要求量として求めることを特徴とする。
【0012】
本発明の水の生物化学的酸素要求量の測定装置は、検水を収容する容器と、この容器内の検水の溶存酸素濃度を監視する溶存酸素濃度測定器と、
前記容器内の検水に空気を供給する曝気機構と、
前記溶存酸素濃度測定器により得られる、検水に添加された好気性微生物の生活時間の経過に対する消費酸素量の積算値の変化の状態から、当該好気性微生物の生活時間を延長した時点における合計の消費酸素量の予測値を、当該検水の生物化学的酸素要求量として計算する処理機構と
を有することを特徴とする。
【0013】
【作用】
本発明の水の生物化学的酸素要求量の測定方法によれば、先行する微生物生活工程と後続の微生物生活工程との間に、検水に対する曝気工程が行われるため、その度に検水の溶存酸素濃度が十分に回復された状態となり、従って各微生物生活工程においては、必ず、好気性微生物の最も活発な生活(資化活動)が開始されることとなる。
そして、順次の微生物生活工程において検水中の有機物は次第に分解されていくので、好気性微生物の生活時間の経過に対する消費酸素量の積算値の変化の状態を求めることができるが、この消費酸素量の積算値は、当該好気性微生物の生活時間が長くなれば、含有される有機物が次第に減少していずれ消失することに対応して、いわば飽和するようになるものであるから、この飽和状態に至ったときの合計の消費酸素量を予測することができる。この合計の消費酸素量の予測値は、当該検水の生物化学的酸素要求量を表すものである。
【0014】
このような方法によれば、結局、曝気工程により、繰り返して行われる微生物生活工程がいわば加速的条件下で実行されることとなり、従って、十分に高い信頼性を有する結果が得られるに至るまで多数回にわたって微生物生活工程を繰り返す場合であっても、全体としてきわめて短い時間のうちに目的とする生物化学的酸素要求量を求めることができる。
【0015】
また、本発明の水の生物化学的酸素要求量の測定装置によれば、上記の測定方法が実行されることにより、短時間のうちに、検水について目的とする生物化学的酸素要求量を自動的に測定することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
図1は、本発明の水の生物化学的酸素要求量の測定方法の実施に用いられる装置の基本的構成を示す説明図、図2は、本発明の水の生物化学的酸素要求量の測定方法の実施における検水の溶存酸素濃度の経時的変化の一例を示す曲線図、図3は、図2で得られる消費酸素量の積算値の経時的変化を示す曲線図である。
【0017】
図1において、10は測定対象としての水すなわち検水Wを収容する上部開放型の容器であって、この容器10内には、検水W中で空気を発泡状に供給する曝気管12が配置され、この曝気管12には、容器10の外部に配設されたエアポンプ14から伸びるエアパイプ16が接続されている。
【0018】
また、検水Wを加熱するためのヒーター18が、例えば容器10の底部の外面に配設されると共に、検水Wを攪拌するための攪拌機、図の例ではマグネットスターラー20が配設される。22は、容器10内において、マグネットスターラー20によって作動される回転攪拌子である。
【0019】
また、溶存酸素濃度測定器を構成するDO電極24が、容器10内の検水W中に浸漬された状態で配置される。26は制御処理部であって、エアポンプ14の駆動を制御すると共に、DO電極24からの信号を受けて検水Wの溶存酸素濃度を測定し、そのデータを処理する機能を有する。
【0020】
以上のような装置において、先ず、ヒーター18により、容器10内の検水Wを例えば温度30℃に維持しておき、曝気管12より空気を容器10内の検水Wに供給すると共に攪拌機によって攪拌し、これによって検水Wを十分に曝気処理する。これにより、検水Wは、例えば溶存酸素濃度が飽和した状態となる。ここに水の飽和溶存酸素濃度は7.53mg/リットルである。
【0021】
この状態で、容器10内の検水Wに好気性微生物を添加する。この好気性微生物としては、特に制限されるものではなく、従来から有機物の酸化分解に有用なものとして知られているものを用いることができる。例えば、水処理や生ゴミの処理に使用される或る種の微生物製剤は、約20種類以上の微生物が胞子状で休眠状態で含有された粉体として入手されるが、この微生物製剤は、例えば10〜20時間以上の活性持続時間が得られ、しかも良好な保存性を有する。なお、微生物製剤の添加に際しては、通常、バイオリアクターを用いて処理することにより、微生物を覚醒させることが好ましい。
【0022】
微生物製剤は、検水Wについての溶存酸素濃度をDO電極24により常時監視した状態のままで、検水Wに添加される。
ここに、微生物製剤の添加量は、理論的にはすべての有機物が酸化分解されるに必要な量以上であればよいが、その最少量は不明であるから、過剰量の好気性微生物が添加されることとなる量とすることが必要であり、実際には大過剰量で微生物製剤を用いるのが好ましい。例えば、通常の排水の処理のためには200ppm程度の濃度で使用される微生物製剤の場合には、5000ppmのような大過剰量で使用するのが好ましい。
【0023】
検水Wの温度を厳密に30℃に維持しながら攪拌を続けると、微生物製剤として投入された好気性微生物の一部が生活を開始する。その結果、図2の曲線に示すように、最初7.53mg/リットルであった溶存酸素濃度は、好気性微生物の生活により酸素が消費されることによって時間の経過と共に低下し(線分a−b)、例えば15分間が経過した時点で例えば約5.0mg/リットル程度となる。
【0024】
DO電極24からの検出信号によってこの低下した溶存酸素濃度が制御処理部26で検出されると、この制御処理部26よりの信号により、エアポンプ14が駆動され、検水Wに曝気管12からの空気が泡状に供給され、これによって曝気工程が行われる。この曝気工程が開始されるまでの工程が、第1回目の微生物生活工程となる。
【0025】
この曝気工程が開始されると検水Wの溶存酸素濃度は直ちに上昇を開始し(線分b−c)、例えば数十秒間のうちに約7.0mg/リットル位までは速やかに復帰する。その時点でエアポンプ14の駆動を停止して1回の曝気工程を終了させ、攪拌のみを継続することにより、第2回目の微生物生活工程を開始させると、再び溶存酸素濃度が低下する(線分c−d)ので、第1回目の微生物生活工程と同様に、例えば約15分間を経過して約5.0mg/リットル程度となるまで第2回目の微生物生活工程を継続する。そして、その後、第2回目の曝気工程を行う(線分d−e)。
【0026】
以上のようにして、曝気工程を介して微生物生活工程を繰り返すことを、例えば全体で1時間の間、行う。
このような操作により、制御処理部26において、溶存酸素濃度の低下分の合計、すなわち消費酸素量の積算値の経時的変化を求めると、図3に示すような曲線(例えば曲線A)が得られる。
【0027】
この曲線は、図から明らかなように、時間の経過と共に積算値が増加する割合が減少して行く二次曲線状に変化するものであって、時間が或る程度以上延長された時点、例えば経過時間が120分間を超えた時点においては、ほとんど一定の飽和状態となるものであり、このことは、検水W中の有機物が好気性微生物によって次第に分解されて減少して行くからである。
【0028】
従って、この図3の曲線において外挿することによって得られる、長時間が経過した時点(延長された時点)での飽和状態における消費酸素量の積算値、すなわち消費酸素量の積算値の飽和値は、検水Wについての消費酸素量の合計であり、これは、生物化学的酸素要求量に相当するものである。しかも、この飽和値は、当該曲線におけるカーブの状態が一定であるため、数学的にあるいは解析学的に十分な信頼性をもって予測することが可能である。
【0029】
また、図3の曲線から判断されるように、経過時間が120分間を超える程になると、消費酸素量の積算値はほとんど飽和の状態となる。このことから、本発明では、微生物生活工程を合計で120分間継続すればきわめて高い信頼性で生物化学的酸素要求量を求めることができ、例えば合計の微生物生活工程が60分間程度であっても、合計の消費酸素量の予測値を相当に高い信頼性で求めることができる。
【0030】
以上のような方法によって、目的とする生物化学的酸素要求量を求めることができるが、本発明においては、検量線を作成しておいて、これを用いて簡便に生物化学的酸素要求量を求めることも可能である。
すなわち、有機物濃度が既知の標準検液を用いて上記の方法に従って消費酸素量の積算値の時間的変化を検出する作業を、有機物濃度の異なる複数の標準検液について行うことにより、種々の濃度で有機物を含有する標準検液について、図3に示されている状態の検量線を作成しておく。
【0031】
そして、実際の検水についての消費酸素量の積算値の時間的変化を同様にして求め、その結果を当該検量線と照合すると、例えば経過時間が60分間である時点の溶存酸素濃度の値(1時間値)を照合して、同等または近似する1時間値を示す標準検液を選べば、当該標準検液の生物化学的酸素要求量がそのまま当該検水の生物化学的酸素要求量となり、あるいは近似値として求められる。従って、高い信頼性をもって、当該検水についての合計の消費酸素量の予測値、すなわち生物化学的酸素要求量を求めることができる。
【0032】
図3の破線で示す曲線(イ)〜(ハ)は、有機物濃度が異なる3種類の標準検液について以上の操作によって得られた検量線であって、それぞれ、生物化学的酸素要求量が60mg/リットル、40mg/リットル、および20mg/リットルの標準検液についての消費酸素量の積算値の経時的変化を示すものである。
【0033】
以上の方法においては、各微生物生活工程の時間の長さは特に厳密に決定される必要はなく、検水Wにおける溶存酸素濃度がその飽和値から或る程度低下した時点で曝気工程が実行されればよく、通常、1回の微生物生活工程は5〜30分間、好ましくは10〜20分間程度である。
また、繰り返して行われる複数の微生物生活工程の時間長さが、各々同一であることも不要である。このことは、曝気工程が開始される時の溶存酸素濃度の値が制限的でないことを意味する。
更に、微生物生活工程の繰り返し回数も特に限定されるものではなく、通常は例えば3〜10回であればよい。この回数が多くなると測定結果の信頼性は高いものとなるが、当然のこととして長い時間が必要である。
【0034】
本発明の測定方法によれば、以上のようにして、きわめて容易な操作により、検水Wについての生物化学的酸素要求量を、例えば1〜2時間以内というきわめて短い時間で、しかも高い信頼性をもって求めることができる。
また、本発明では、容器10として上部開放型のものを用いることができるため、装置として簡単な構成のものを用いることができる。これは、曝気工程によって常に検水Wが溶存酸素濃度の高い状態に維持されるために、大気から検水Wに溶け込む酸素量を実際上無視することが可能だからである。
【0035】
また、本発明の測定装置によれば、制御処理部26からの指令信号によって微生物生活工程および曝気工程を自動的に繰り返すことができ、しかも制御処理部26においては、DO電極24からの信号を処理することにより、実際に曲線図を描くことなしに、上記の消費酸素量の積算値の飽和値、あるいは合計の消費酸素量の予測値を演算により求めることができ、更にその結果を例えば文字情報として表示部に表示させることができ、あるいは記録紙などの記録媒体に記録することも可能であるので、非常に便利である。
【0036】
本発明による水の生物化学的酸素要求量の測定装置においては、更に、化学的酸素要求量(COD)の測定装置、浮遊物質量(SS)測定装置、n−ヘキサン抽出物質の測定装置を一体的に組合せて総合的な水質検査装置として構成することが、実際上、便利である。
特に、化学的酸素要求量の測定を行うためには、予め、検水についての生物化学的酸素要求量を求めた上でこの生物化学的酸素要求量に基づいて、化学的酸素要求量の測定において検水に添加されるべき酸化剤の量の概略を知る必要がある。従って、本発明による水の生物化学的酸素要求量の測定装置を、化学的酸素要求量の測定装置と組合せることにより、好適な水質検査装置が得られる。
【0037】
具体的に説明すると、JIS K0102による化学的酸素要求量の測定においては、検水中の有機物量を推定して、すべての有機物を酸化させることのできる量よりも過剰量の過マンガン酸カリウム(KMnO4 )またはクロム酸カリウム(酸化剤)を検水に投与し、100℃で所定時間酸化処理した後、当該酸化剤と同一濃度で同一量のシュウ酸ナトリウム(Na2 C2 O4 )を添加すると、この状態では、有機物を酸化するために消費された酸化剤と同量のシュウ酸ナトリウムが残存しているので、これを再び当該酸化剤で滴定すれば、その滴定量からCOD値を求めることができる。
【0038】
この化学的酸素要求量の測定方法では、検水中の有機物量を予め推定しなければならない。
然るに、本発明の水の生物化学的酸素要求量の測定方法によれば、きわめて短い時間で検水の生物化学的酸素要求量を求めることができるので、その後に化学的酸素要求量の測定を行うようにすることにより、その測定をきわめて高い効率で実行することができる。通常、或る検水についての化学的酸素要求量の推定値は、生物化学的酸素要求量の2倍以下である。
【0039】
また、本発明による水の生物化学的酸素要求量の測定装置に組合せられる浮遊物質量測定装置は、検水中に浮遊する直径が1μm以上で2mm以下の水に不溶の物質の量(mg/リットル)を測定するものであり、例えば光学的方法で検出された検水の濁度を、標準濁度物質で基準化された溶液の濁度と照合する方式のものであることが好ましく、この場合には、測定装置全体を自動化することが容易である。
【0040】
更に、検水中に含まれる油分をヘキサンにより抽出して、その量(mg/リットル)を求めるn−ヘキサン抽出物質の測定装置は、例えば、検水中の油分を超音波振動子を使って乳化して濁度を測定し、乳化する以前の検水の濁度との差分から油分量を定量する構成とすることができる。
なお、本発明の水の生物化学的酸素要求量の測定装置またはこれを含む水質検査装置の検水収容容器に超音波振動子を配置する場合には、1つの測定項目についての測定が終了した時に、当該超音波振動子による緒音波によって、容器の内部および設けられた各種の機器、例えばDO電極などの洗浄を高い効率で行うことができるので好ましい。
【実施例】
【0041】
<実施例1>
この例は、検水として或る工業排水を用いたものである。
図1に示す構成の測定装置を用い、上方開放容器内に0.2リットルの検水を入れ、マグネットスターラーで攪拌しながらヒーターによって検水の温度を30℃に厳密に維持し、DO電極により溶存酸素濃度を検出したところ、7.5mg/リットルであった。
この状態で、DO電極による検水の溶存酸素濃度の監視を継続しながら、検水に微生物製剤「ハイポルカS」(四国化成工業(株)社製)を5000ppmとなる量で投入し、時間の経過(第1回目の微生物生活工程)と共に生ずる溶存酸素濃度の変化を記録した。
【0042】
時間が15分間経過したときに溶存酸素濃度が5.2mg/リットルとなり、この時点でエアポンプを駆動して曝気管より空気を30秒間検水に供給して第1回目の曝気工程を行ったところ、溶存酸素濃度は7.4mg/リットルに回復した。
次のそのままの状態で時間の経過(第2回目の微生物生活工程)と共に生ずる溶存酸素濃度の変化を記録したところ、更に15分間が経過したときに溶存酸素濃度が5.8mg/リットルとなり、この時点で再びエアポンプを駆動して曝気管より空気を30秒間検水に供給して第2回目の曝気工程を行わたところ、溶存酸素濃度は7.4mg/リットルに回復した。
【0043】
以上のような微生物生活工程と曝気工程を繰り返す操作を、合計時間が120分間を超えるまで行った。
図2にDO電極による溶存酸素濃度の検出値の時間による変化を示す。また、図3の曲線Aに、制御処理部において求められた消費酸素量の積算値の時間による変化を示す。
そして、曲線Aを外挿して求められた合計の消費酸素量の予測値は、50±1mg/リットルであった。
一方、対照のために、当該検水について、JIS K0102による測定方法によって生物化学的酸素要求量を測定したところ、50.0mg/リットルであった。
以上のことから、本発明の測定方法によれば、検水についての生物化学的酸素要求量を、2時間というきわめて短い所要時間で、しかもきわめて高い信頼性をもって求めることができることが理解される。
【0044】
【発明の効果】
本発明の水の生物化学的酸素要求量の測定方法によれば、測定対象である検水について、その生物化学的酸素要求量を、短時間で、容易に、また高い信頼性で求めることができる。
また、本発明の測定装置によれば、上記の水の生物化学的酸素要求量の測定を簡便にかつ自動的に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水の生物化学的酸素要求量の測定方法の実施に用いられる装置の基本的構成を示す説明図である。
【図2】本発明の水の生物化学的酸素要求量の測定方法の実施における検水の溶存酸素濃度の経時的変化を示す曲線図である。
【図3】図2で得られる消費酸素量の積算値の経時的変化を示す曲線図である。
【符号の説明】
10 容器
W 検水
12 曝気管
14 エアポンプ
16 エアパイプ
18 ヒーター
20 マグネットスターラー
22 回転攪拌子
24 DO電極
26 制御処理部
Claims (2)
- 検水の溶存酸素濃度を監視しながら当該検水中で好気性微生物を或る時間だけ生活させる微生物生活工程と、検水に空気を供給して曝気させる曝気工程とを繰り返すことにより、当該好気性微生物の生活時間の経過に対する消費酸素量の積算値の変化の状態を求め、その結果から、当該好気性微生物の生活時間を延長した時点における合計の消費酸素量の予測値を、当該検水の生物化学的酸素要求量として求めることを特徴とする水の生物化学的酸素要求量の測定方法。
- 検水を収容する容器と、この容器内の検水の溶存酸素濃度を監視する溶存酸素濃度測定器と、
前記容器内の検水に空気を供給する曝気機構と、
前記溶存酸素濃度測定器により得られる、検水に添加された当該好気性微生物の生活時間の経過に対する消費酸素量の積算値の変化の状態から、当該好気性微生物の生活時間を延長した時点における合計の消費酸素量の予測値を、当該検水の生物化学的酸素要求量として計算する処理機構と
を有することを特徴とする水の生物化学的酸素要求量の測定装置。
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