JP4144922B2 - 農薬粒剤の製造方法及び農薬粒剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は農薬粒剤の製造方法及び農薬粒剤に関する。農薬粒剤、農薬粉剤、農薬乳剤等、各種の農薬製剤が除草剤、殺虫剤、殺菌剤等として使用されている。なかでも近年では、散布時の作業性や安全性等の点で、農薬粒剤の使用が増えている。農薬粒剤は、農薬活性成分を含有しない所謂空玉を製作しておき、次いで該空玉に農薬活性成分を含浸させる方法により製造する場合と、担体、界面活性剤、農薬活性成分及び水、更に通常は賦形剤及び安定剤を含有する含水組成物を調製しておき、次いで該含水組成物を押出成形し、これと同時に又は別に造粒して、乾燥する方法により製造する場合とがある。農薬活性成分を含有する上記のような含水組成物を調製し、該含水組成物から押出成形を経て農薬粒剤を製造する場合、1)押出成形時における押出抵抗が小さく、したがって生産性が良いこと、2)押出成形して得られる造粒湿品が充分な強度を有し、その乾燥時や移送時に変形や破損等を生ぜず、したがって歩留まりが良いこと、3)製造した農薬粒剤から農薬活性成分が速やかに水中へ溶出し、したがって薬効が良いこと、以上の1)〜3)が要請される。本発明はかかる要請に同時に応える農薬粒剤の製造方法及び該製造方法によって得られる農薬粒剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、農薬活性成分を含有する上記のような含水組成物を調製し、該含水組成物から押出成形を経て農薬粒剤を製造する方法として、比較的大量の水を含有する含水組成物を調製する方法と、比較的小量の水を含有する減水された含水組成物を調製する方法とがある。しかし、比較的大量の水を含有する含水組成物を調製すると、そのような含水組成物を押出成形して得た造粒湿品の乾燥に膨大なエネルギーを要し、またその乾燥時にクラックや破損が生じ易く、したがって歩留まりが悪いため、現在では比較的小量の水を含有する減水された含水組成物を調製する方法が行なわれるようになっている。
【0003】
上記のような減水された含水組成物を調製する方法としては、1)担体としてタルク、クレー、ベントナイトのような鉱物質担体等を用い、また界面活性剤としてアルキルリン酸エステル塩を用いて減水された含水組成物を調製する方法(特開昭58−103302)、2)担体としてカオリナイト、パイロフィライトのような鉱物質担体等を用い、また界面活性剤としてα−スルホ脂肪酸エステル塩を用いて減水された含水組成物を調製する方法(特開平3−74305)、3)担体として炭酸カルシウムを用い、また界面活性剤としてジアルキルスルホサクシネート塩を用いて減水された含水組成物を調製する方法(特公昭63−45858、特開平4−69302)が提案されている。ところが、担体としてクレーを用いると、調製した含水組成物の押出成形時における押出抵抗が極端に大きく、したがって生産性が極めて低い。また担体としてタルクやベントナイトを用いると、調製した含水組成物の押出成形時における押出抵抗は小さく、したがって生産性は良いものの、得られる農薬粒剤から農薬活性成分が水中へ溶出し難く、したがって薬効が低い。更に担体として炭酸カルシウムを用い、これに界面活性剤としてα−スルホ脂肪酸エステル塩やジアルキルスルホサクシネート塩等のスルホン酸型アニオン界面活性剤を用いると、前述したクレーを用いる場合と同様に調製した含水組成物の押出成形時における押出抵抗が大きく、したがって生産性が低く、その上に該含水組成物を押出成形して得た造粒湿品の強度が低く、その乾燥時や移送時に変形や破損等を生じ、したがって歩留まりが低い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、比較的小量の水を含有する減水された含水組成物を調製しておき、次いで該含水組成物を押出成形する工程を経て農薬粒剤を製造する上記のような従来法では、1)押出成形時における押出抵抗を小さくすることによる生産性の向上、2)押出成形して得られる造粒湿品に充分な強度を持たせることによる歩留まりの向上、3)製造した農薬粒剤から農薬活性成分が速やかに水中へ溶出し易くすることによる薬効の向上、以上の1)〜3)を同時に充足できない点である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
しかして本発明者らは、上記課題を解決するべく研究した結果、担体として特定の担体を、また界面活性剤として特定の界面活性剤を、更に農薬活性成分として特定の農薬活性成分をそれぞれ用いて、かかる特定の担体に対して特定の界面活性剤及び水をそれぞれ所定割合で含有する含水組成物を調製し、この含水組成物を押出成形することが正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、担体、界面活性剤、農薬活性成分及び水を含有する含水組成物を調製し、該含水組成物を押出成形する工程を経て農薬粒剤を製造する方法において、担体として下記の担体Aを、また界面活性剤として下記の界面活性剤Bを、更に農薬活性成分として下記の農薬活性成分Cをそれぞれ用い、該担体A100重量部当たり該界面活性剤Bを0.1〜5重量部及び水を5〜10重量部の割合で含有する含水組成物を調製することを特徴とする農薬粒剤の製造方法に係る。
【0007】
担体A:比表面積が1000〜30000cm2/gであり、平均粒子径が0.7〜20μmであって、水分が0.2重量%以下である炭酸カルシウム粉体
【0008】
界面活性剤B:下記の式1で示される有機リン酸エステルから選ばれる一つ又は二つ以上
【0009】
【式1】
【0010】
式1において、
R:炭素数1〜18の炭化水素基
Y:オキシアルキレン単位の繰り返し数1〜100のポリオキシアルキレンジオールから水酸基を除いた残基
M:H又は1価の塩基
m、n:1又は2であって、m+n=3を満足する整数
【0011】
農薬活性成分C:オクタノール/水分配係数が104〜108である農薬活性成分又は20℃における水溶解度が1〜0.001ppmである農薬活性成分
【0012】
本発明で用いる担体Aは、比表面積が1000〜30000cm2/gであり、平均粒子径が0.7〜20μmであって、水分が0.2重量%以下である炭酸カルシウム粉体であるが、なかでも比表面積が1500〜8000cm2/gであり、平均粒子径が2.5〜15μmである炭酸カルシウム粉体が好ましい。担体Aとして用いる炭酸カルシウム粉体の嵩密度は特に制限されないが、0.50〜0.95g/mlの範囲のものが好ましい。本発明において嵩密度はJIS−K5101で規定された嵩密度を意味する。
【0013】
本発明で用いる界面活性剤Bは式1で示される有機リン酸エステルから選ばれる一つ又は二つ以上である。式1で示される有機リン酸エステルには、片末端を炭化水素基で封鎖したポリオキシアルキレンジオールの酸性リン酸エステルと、かかる酸性リン酸エステルを1価の塩基性化合物で中和したリン酸エステル塩とが包含される。
【0014】
式1において、Yはポリオキシアルキレンジオールから水酸基を除いた残基である。かかるポリオキシアルキレンジオールとしては、ポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシブチレンジオール、異なる2種以上のオキシアルキレン単位から構成されるポリオキシアルキレンジオール等が挙げられる。かかるポリオキシアルキレンジオールは、オキシアルキレン単位の繰り返し数1〜100のものとするが、1〜50のものとするのが好ましく、2〜10のものとするのが更に好ましい。なかでも、オキシアルキレン単位がオキシエチレン単位であり、その繰り返し数が2〜10であるポリオキシエチレンジオールが特に好ましい。
【0015】
以上例示したようなポリオキシアルキレンジオールの片末端を封鎖する炭化水素基は炭素数1〜18の炭化水素基である。かかる炭化水素基としては、1)メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ラウリル基、ステアリル基等のアルキル基、2)シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の単環飽和炭化水素基、3)フェニル基、ナフチル基等の芳香族基、4)オクチルフェニル基、ノニルフェニル基等のアルキル基で置換された置換フェニル基等が挙げられる。これらのうちでは、炭素数8〜12のアルキル基、特に直鎖アルキル基が好ましい。
【0016】
炭化水素基で片末端を封鎖したポリオキシアルキレンジオールの製造方法は特に制限されず、これには公知の方法が適用できる。例えば、アルコール又はフェノール1モルに対し塩基性触媒存在下に所定モル数の1,2−アルキレンオキサイドを逐次付加反応させて、アルキル基又はフェニル基で片末端を封鎖したポリオキシアルキレンジオールを得る方法が挙げられる。
【0017】
界面活性剤Bとして用いる有機リン酸エステルには、片末端封鎖のポリオキシアルキレンジオール1モルがリン酸とエステル結合した酸性リン酸モノエステル、片末端封鎖のポリオキシアルキレンジオール2モルがリン酸とエステル結合した酸性リン酸ジエステル及びこれらの酸性リン酸エステルを1価の塩基性化合物で中和したリン酸エステル塩が包含されるが、界面活性剤Bとしては酸性リン酸モノエステルと酸性リン酸ジエステルとの混合物或はこれらを1価の塩基性化合物で中和したリン酸モノエステル塩とリン酸ジエステル塩との混合物が好ましい。かかる有機リン酸エステルの製造方法も特に制限されず、これには公知の方法が適用できる。例えば、1)片末端封鎖のポリオキシアルキレンジオール2モルと、水1モルと、五酸化リン1モルとを反応させて酸性リン酸モノエステル2モルを得る方法、2)片末端封鎖のポリオキシアルキレンジオール3モルと五酸化リン1モルとを反応させて酸性リン酸モノエステル1モルと酸性リン酸ジエステル1モルとを得る方法、3)片末端封鎖のポリオキシアルキレンジオール2モルとオキシ塩化リン1モルとを反応させ、次いで加水分解して酸性リン酸ジエステル1モルを得る方法等がある。またリン酸エステル塩はかかる酸性リン酸モノエステルや酸性リン酸ジエステルを1価の塩基性化合物で中和することにより得られる。
【0018】
中和に用いる1価の塩基性化合物には、1)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、2)モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン等のアルカノールアミン、3)メチルジエタノールアミン、エチルモノエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン等のN−アルキル置換アルカノールアミン、4)トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の炭素数1〜4のアルキルアミン、5)モルホリン、ピリジン等の環状アミンが挙げられるが、なかでもアルカリ金属水酸化物が好ましく、アルカリ金属水酸化物としては水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
【0019】
本発明で用いる農薬活性成分Cは、その水溶性指標として、1)オクタノール/水分配係数が104〜108であるもの、又は2)20℃における水溶解度が1〜0.001ppmであるものである。かかる水溶性指標を有する農薬活性成分Cは実質的に水不溶性であり、これには以下に示すような殺虫剤、殺菌剤、除草剤が包含される。殺虫剤としては、2−(4−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル=3−フェノキシベンジル=エーテル(エトフェンプロックス)、(RS)−α−シアノ−3−フェノキシベンジル=(RS)−2,2−ジクロロ−1−1(4−エトキシフェニル)シクロプロパンカルボキシラート(シクロプロトリン)、N−tert−ブチル−N’−(4−エチルベンゾイル)−3,5−ジメチルベンゾヒドラジド(テブフェノジド)、2−tert−ブチルイミノ−3−イソプロピル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,3,5−チアジアジン−4−オン(ブプロフェジン)、1−[4−(2−クロロ−α,α,α−トリフルオロ−p−トリルオキシ)−2−フルオロフェニル]−3−(2,6−ジフルオロベンゾイル)尿素(フルフェノクスロン)等が挙げられる。
【0020】
また殺菌剤としては、1−(4−クロロベンジル)−1−シクロベンチル−3−フェニル尿素(ペンシクロン)、6−(3,5−ジクロロ−4−メチルフェニル)−3(2H)−ピリダジノン(ジクロメジン)等が挙げられる。
【0021】
更に除草剤としては、6−メチル−3[1−メチル−1−(3,5−ジクロルフェニル)エチル]−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン−4−オン、(RS)−2−(2,4−ジクロロ−m−トリルオキシ)プロピオンアニリド(クロメプロップ)、5−(2,4−ジクロロフェノキシ)−2−ニトロ安息香酸メチル(ビフェノックス)、O−3−tert−ブチルフェニル=6−メトキシ−2−ピリジル(メチル)チオカルバマート(ピリブチカルブ)、5−tert−ブチル−3−(2,4−ジクロロ−5−イソプロポキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾリン−2−オン(オキサジアゾン)、4−(2,4−ジクロロベンゾイル)−1,3−ジメチル−5−ピラゾリル−p−トルエンスルホネート(ピラゾレート)、2−[4−(2,4−ジクロロ−m−トルオイル)−1,3−ジメチルピラゾール−5−イルオキシ]−4’−メチルアセトフェノン(ベンゾフェナップ)等が挙げられる。
【0022】
以上例示したような農薬活性成分Cには常温で固状のものと液状のものとが包含されるが、常温で固状のものである場合には、それを平均粒子径0.1〜2μmの粉粒状として用いるのが好ましい。
【0023】
本発明では、以上説明した担体A、界面活性剤B、農薬活性成分C及び水を含有する含水組成物を調製する。含水組成物は、担体A100重量部当たり、界面活性剤Bを0.1〜5重量部及び水を5〜10重量部の割合で含有するものとするが、界面活性剤Bを0.5〜4重量部及び水を6〜8重量部の割合で含有するものとするのが好ましい。
【0024】
本発明では、含水組成物中の農薬活性成分Cの含有割合を特に制限せず、農薬活性成分Cの種類や物性によって任意にその含有割合を選択することができる。含水組成物は、担体A100重量部当たり、農薬活性成分Cを0.1〜25重量部の割合で含有するものとするのが通常であるが、5〜15重量部の割合で含有するものとするのが好ましい。
【0025】
本発明では、含水組成物を、下記の式2で求められる担体Aの空隙比容積VE(ml/g)に対して3〜15容量%の割合で水を含有するものとするのが特に好ましい。
【0026】
【式2】
【0027】
式2において、
ρ:担体Aの真密度
ρa:担体Aの嵩密度{但し、0.50≦ρa≦0.95(g/ml)}
【0028】
式2で求められる空隙比容積VE(ml/g)を有する担体Aとしては、上記のようにその嵩密度が0.50〜0.95g/mlの炭酸カルシウム粉体を用いるが、なかでもかかる嵩密度を有し、且つその比表面積が1500〜8000cm2/gであり、またその平均粒子径が2.5〜15μmである炭酸カルシウム粉体を用いるのが好ましい。
【0029】
前述したような含水組成物であって、式2で求められる担体Aの空隙比容積VE(ml/g)に対して3〜15容量%の割合で水を含有する含水組成物は、優れた粘弾特性、すなわち高い流動特性及び降伏特性を有するものとなり、その押出成形時における押出抵抗が小さく、したがって生産性が高く、その上に押出成形して得た造粒湿品の強度が高く、その乾燥時や移送時に変形や破損等を生ぜず、したがって歩留まりが高い、より合目的的なものとなる。
【0030】
本発明は含水組成物の調製方法を特に制限するものではないが、調製方法としては下記の1)〜3)の方法が有利に適用できる。1)農薬活性成分Cとして常温で固状のものを用いる場合には、これを予め平均粒子径0.1〜2μmの粉粒状とし、所定量の界面活性剤Bを溶解しておいた所定量の水中へ投入して機械的撹拌により分散させ、その分散液を所定量の担体Aに加えて混練することにより含水組成物を調製する方法。2)上記のような農薬活性成分Cの粉粒状物と所定量の担体Aとの混合物に、所定量の界面活性剤Bを溶解しておいた所定量の水溶液を投入して混練することにより含水組成物を調製する方法。3)農薬活性成分Cとして常温で液状のものを用いる場合には、これを所定量の界面活性剤Bを溶解しておいた所定量の水中へ投入して機械的撹拌により乳化させ、その乳化液を所定量の担体Aに加えて混練することにより含水組成物を調製する方法。以上のような含水組成物の調製に使用する混練機としては公知のものを適宜に使用することができ、これには例えば、リボンミキサー方式混合機、V型混合機、ロータリーミキサー、円錐型混合機、高速流動型混合機、連続ニ−ダー等が挙げられる。
【0031】
本発明で用いる含水組成物には、前記した担体A、界面活性剤B及び農薬活性成分C以外の固形分として賦形剤や安定剤等を適宜に選択して含有させることができる。かかる賦形剤としては公知の天然又は合成の水溶性高分子が挙げられ、また安定剤としては公知のpH緩衝剤が挙げられる。
【0032】
本発明では、かくして調製した含水組成物を押出成形する工程を経て農薬粒剤を製造する。押出成形したものを別に造粒し、その造粒湿品を通常は乾燥して、更に必要に応じて整粒することにより農薬粒剤を製造するが、押出成形と造粒とを同時に行なうこともできる。押出成形には、スクリュー型成形機、ロール型成形機、ブレード型成形機等、公知の押出成形機を使用できるが、いずれにしても、本発明の方法を適用するに際して、含水組成物の性状、押出成形機の種類、得られる造粒湿品に対して要求される機械的物性等により、押出成形機の運転条件、例えば押出圧力や速度等を適宜選択することはいうまでもない。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明に係る農薬粒剤の製造方法の実施形態としては、次の1)〜10)が好適例として挙げられる。
1)担体Aとして比表面積が3000cm2/gであり、平均粒子径が7.4μmであって、水分が0.2重量%である炭酸カルシウム粉体(T−1)を、また界面活性剤Bとしてジ[オクトキシ・ポリオキシエチレンジオール(m=4、mはオキシエチレン単位の繰り返し数、以下同じ)]・ハイドロジェンホスフェート/モノ[オクトキシ・ポリオキシエチレンジオール(m=4)]・ジハイドロジェンホスフェート=1/1(モル比)の混合物を水酸化カリウムで90重量%中和した有機リン酸エステル(P−1)を、更に農薬活性成分Cとしてシクロプロトリン(N−1)を、更にまた水、賦形剤及び安定剤を用いて、炭酸カルシウム粉体(T−1)100重量部当たり有機リン酸エステル(P−1)を2重量部及び水を7重量部の割合で含有する含水組成物を調製し、この含水組成物を押出成形する工程を経て農薬粒剤を製造する方法。
【0034】
2)有機リン酸エステル(P−1)の代わりにジ[ラウリルオキシ・ポリオキシエチレンジオール(m=8)]・モノハイドロジェンホスフェート/モノ[ラウリルオキシ・ポリオキシエチレンジオール(m=8)]・ジハイドロジェンホスフェート=1/1(モル比)の混合物を水酸化ナトリウムで50重量%中和した有機リン酸エステル(P−2)を用いた以外は前記1)と同じものを用いて、炭酸カルシウム粉体(T−1)100重量部当たり有機リン酸エステル(P−2)を3重量部及び水を6重量部の割合で含有する含水組成物を調製し、この含水組成物を押出成形する工程を経て農薬粒剤を製造する方法。
【0035】
3)有機リン酸エステル(P−1)の代わりにジ[オクチルオキシ・ポリオキシエチレン/オキシプロピレンジオール(m=6、n=2、nはオキシプロピレン単位の繰り返し数、以下同じ)]・モノハイドロジェンホスフェート/モノ[オクチルオキシ・ポリオキシエチレン/オキシプロピレンジオール(m=6、n=2]・ジハイドロジェンホスフェート=1/1(モル比)の混合物を水酸化カリウムで90重量%中和した有機リン酸エステル(P−3)を用いた以外は前記1)と同じものを用いて、炭酸カルシウム粉体(T−1)100重量部当たり有機リン酸エステル(P−3)を1重量部及び水を8重量部の割合で含有する含水組成物を調製し、この含水組成物を押出成形する工程を経て農薬粒剤を製造する方法。
【0036】
4)炭酸カルシウム粉体(T−1)の代わりに比表面積が1500cm2/gであり、平均粒子径が14.8μmであって、水分が0.2重量%である炭酸カルシウム粉体(T−2)を、また有機リン酸エステル(P−1)の代わりにジ[ヘキシルオキシ・ポリオキシエチレンジオール(m=14)]・モノハイドロジェンホスフェート/モノ[ヘキシルオキシ・ポリオキシエチレンジオール(m=14)]・ジハイドロジェンホスフェート=1/1(モル比)の混合物を水酸化カリウムで70重量%中和した有機リン酸エステル(P−4)を、更にシクロプロトリン(N−1)の代わりにペンシクロン(N−2)を用いた以外は前記1)と同様にして、農薬粒剤を製造する方法。
【0037】
5)炭酸カルシウム粉体(T−1)の代わりに比表面積が5000cm2/gであり、平均粒子径が4.4μmであって、水分が0.2重量%である炭酸カルシウム粉体(T−3)を、また、有機リン酸エステル(P−1)の代わりにジ[ステアリルオキシ・オキシエチレンジオール(m=1)]・モノハイドロジェンホスフェート/モノ[ステアリルオキシ・オキシエチレンジオール(m=1)]・ジハイドロジェンホスフェート=1/1(モル比)の混合物を水酸化ナトリウムで70重量%中和した有機リン酸エステル(P−5)を、更にシクロプロトリン(N−1)の代わりに6−メチル−3[1−メチル−1−(3,5−ジクロルフェニル)エチル]−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン−4−オン(N−3)を用いた以外は前記1)と同様にして、農薬粒剤を製造する方法。
【0038】
6)有機リン酸エステル(P−1)の代わりにジ[シクロヘキシルオキシ・ポリオキシエチレンジオール(m=18)]・モノハイドロジェンホスフェート/モノ[シクロヘキシルオキシ・ポリオキシエチレンジオール(m=18)]・ジハイドロジェンホスフェート=1/1(モル比)の混合物を水酸化カリウムで90重量%中和した有機リン酸エステル(P−6)を用いた以外は前記1)と同様にして、農薬粒剤を製造する方法。
【0039】
7)有機リン酸エステル(P−1)の代わりにジ[フェノキシ・ポリオキシエチレンジオール(m=25)]・モノハイドロジェンホスフェート/モノ[フェノキシ・ポリオキシエチレン(m=25)]・ジハイドロジェンホスフェート=1/1(モル比)の混合物をブチルエタノールアミンで70重量%中和した有機リン酸エステル(P−7)を用いた以外は前記1)と同様にして、農薬粒剤を製造する方法。
【0040】
8)有機リン酸エステル(P−1)の代わりにジ[ノニルフェニルオキシ・オキシエチレンジオール(m=8)]・モノハイドロジェンホスフェート/モノ[ノニルフェニルオキシ・オキシエチレンジオール(m=8)]・ジハイドロジェンホスフェート=1/1(モル比)の混合物をジブチルアミンで70重量%中和した有機リン酸エステル(P−8)を用いた以外は前記1)と同様にして、農薬粒剤を製造する方法。
【0041】
また本発明に係る農薬粒剤としては、次の9)が好適例として挙げられる。
9)前記1)〜8)におけるいずれかの含水組成物を押出成形し、造粒した後、乾燥し、整粒して得られる農薬粒剤。
【0042】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の構成及び効果を具体的にするが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、別に記載しない限り、部は重量部、また%は重量%を意味する。
【0043】
【実施例】
試験区分1(農薬粒剤の製造)
農薬粒剤(H−1)の製造
担体Aとして比表面積が3000cm2/gであり、平均粒子径が7.4μmであって、水分が0.2%である炭酸カルシウム粉体(T−1)1000部、農薬活性成分Cとしてオクタノール/水分配係数が1.55×104であるシクロプロトリン(N−1)の粉状物80部及び安定剤としてトリポリリン酸ナトリウム25部をとり、均一に混合した。これに界面活性剤Bとして表1に記載の有機リン酸エステル(P−1)を90%含有する水性液22部(固形分20部)、賦形剤としてアラビアガム(g−1)40部及び水68部から成る混合水性液を加え、均一に成るまで混練し、含水組成物(C−1)を調製した。この含水組成物(C−1)1020部を1.0mm径のスクリーンを装着したスクリュー型押出成形機(不二パウダル社製のDG−L1型)に供し、モーターのインバーター周波数20Hz、シャフトの回転数32rpmの条件で麺状に押出成形した。麺状の押出成形物を2〜4mmの長さに切断し、切断した造粒湿品を直ちに流動床乾燥機(不二パウダル社製のMDA−200型)に供して、温度50℃で15分間乾燥し、農薬粒剤(H−1)を得た。
【0044】
農薬粒剤(H−2)〜(H−8)、(HR−1)〜(HR−3)の製造
農薬粒剤(H−1)の製造と同様にして、農薬粒剤(H−2)〜(H−8)、(HR−1)〜(HR−3)を製造した。
【0045】
農薬粒剤(HR−4)の製造
有機リン酸エステル(P−1)を使用しないこと以外は含水組成物(C−1)と同様にして含水組成物(CR−4)を調製した。この含水組成物(CR−4)を用い、農薬粒剤(H−1)の製造と同様にして、農薬粒剤(HR−4)を製造した。
【0046】
農薬粒剤(HR−5)の製造
有機リン酸エステル(P−1)の代わりにジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩(r−1)を用いた以外は含水組成物(C−1)と同様にして含水組成物(CR−5)を調製した。この含水組成物(CR−5)を用い、農薬粒剤(H−1)の製造と同様にして、農薬粒剤(HR−5)を製造した。
【0047】
農薬粒剤(HR−6)の製造
有機リン酸エステル(P−1)の代わりにα−スルホラウリン酸メチルナトリウム塩(r−2)を用いた以外は含水組成物(C−1)と同様にして含水組成物(CR−6)を調製した。この含水組成物(CR−6)を用い、農薬粒剤(H−1)の製造と同様にして、農薬粒剤(HR−6)を製造した。
【0048】
農薬粒剤(HR−7)の製造
有機リン酸エステル(P−1)の代わりにナフタレンスルホン酸ナトリウム塩ホルマリン縮合物(r−3)を用いた以外は含水組成物(C−1)と同様にして含水組成物(CR−7)を調製した。この含水組成物(CR−7)を用い、農薬粒剤(H−1)の製造と同様にして、農薬粒剤(HR−8)を製造した。各農薬粒剤の製造に使用した場合の有機リン酸エステルの内容を表1にまとめて示し、また各農薬粒剤の内容を表2にまとめて示した。
【0049】
【表1】
【0050】
表1において、
P−3のオキシアルキレン単位:ランダム結合
M−1:ブチルエタノールアミン
M−2:ジブチルアミン
【0051】
【表2】
【0052】
表2において、
H−1〜H−8:本発明に係る農薬粒剤
使用量:部
WP:前記した式2のVEに対する水の充填率(容量%)
T−1:比表面積3000cm2/g、平均粒子径7.4μm、水分0.2%、ρ=2.71g/cm3、ρa=0.83g/cm3、VE=0.836cm3/gである炭酸カルシウム粉体(但し、ρ、ρa及びVEは前記した式2のそれぞれに相当する、以下同じ)
T−2:比表面積1500cm2/g、平均粒子径14.8μm、水分0.2%、ρ=2.71g/cm3、ρa=0.91g/cm3、VE=0.730cm3/gである炭酸カルシウム粉体
T−3:比表面積5000cm2/g、平均粒子径4.4μm、水分0.2%、ρ=2.71g/cm3、ρa=0.70g/cm3、VE=1.06cm3/gである炭酸カルシウム粉体
N−1:オクタノール/水分配係数が1.55×104であって、20℃における水溶解度が9.1×10-2ppmであるシクロプロトリン
N−2:オクタノール/水分配係数が4.79×104であって、20℃における水溶解度が0.3ppmであるペンシクロン
N−3:オクタノール/水分配係数が1.02×104であって、20℃における水溶解度が1.8×10-1ppmである6−メチル−3[1−メチル−1−(3,5−ジクロルフェニル)エチル]−5−フェニル−2,3−ジヒドロ−4H−1,3−オキサジン−4−オン
a−1:トリポリリン酸ナトリウム塩
g−1:アラビアガム
r−1:ジオクチルスルホサクシネートナトリウム塩
r−2:α−スルホラウリン酸メチルナトリウム塩
r−3:ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩ホルマリン縮合物
【0053】
試験区分2(評価)
1)生産性の評価
試験区分1において、押出成形時における押出成形機のモーターの電流量と軋み音の発生の有無とから次の基準で評価した。結果を表3にまとめて示した。
◎:モーターの電流量は平均1.6〜1.7アンペアで安定しており、押出し時の軋み音は全く無い
○:モーターの電流量は平均1.7〜2.0アンペアで安定しているが、押出し時の軋み音が僅に有る
△:モーターの電流量が平均2.0〜2.4アンペアと高く、押出し時の軋み音がかなり大きい
×:モーターの電流量が平均2.4アンペアを越えた過負荷運転となり、連続しては造粒できない
【0054】
2)保形性の評価
試験区分1において、押出成形機から麺状に押出成形した押出成形物の外観を次の基準で評価した。結果を表3にまとめて示した。
○:均一な円柱状で表面は平滑であり、保形性は良好
△:全体としては円柱状だが、円柱が不均一で、表面が粗く、保形性は不良
×:円柱状にならず、保形性は不良
【0055】
3)造粒湿品の強さの評価
試験区分1において、乾燥時に発生したダストの乾燥重量を測定すると共に、乾燥物を目的の農薬粒剤と破砕物とにロータップ篩分機(C.M.T.社製のA型)を用いて156タップ/分、290r.p.mの条件で5分間篩分し、篩分したものの乾燥重量を各々測定した。これらの測定値から下記の式3により破砕率を算出した。
【0056】
【式3】
破砕率(%)={(D+Tr)/(D+Tr+Tp)}×100
【0057】
式3において、
D:ダストの乾燥重量
Tp:目的の農薬粒剤の乾燥重量
Tr:破砕物の乾燥重量
【0058】
算出した破砕率から次の基準で評価した。結果を表3にまとめて示した。
◎:破砕率が5%未満
○:破砕率が5%以上10%未満
△:破砕率が10%以上15%未満
×:破砕率が15%以上
【0059】
4)農薬活性成分の溶出性の評価
ガラス製シャーレ(直径14.5cm、高さ10cm)に、乾燥後、目開き1mmの篩を通した利根土壌(砂壌土)100gを入れ、更に水500mlを静かに注水した。ここに、試験区分1で得た農薬粒剤16mgを表面投与した。12時間後、シャーレ中央部の表層より1cmの深さの部分から水溶液を1g採取し、これを試料とし、下記の条件で高速液体クロマトグラフィに供して、試料中の農薬活性成分の含量を分析した。そして分析値から下記の式4により農薬活性成分の溶出比を算出した。
【0060】
高速液体クロマトグラフィの条件
カラム:TOSOH TSK−GEL 80TM(東ソー社製)
カラム径:4.6mm、カラム長:150mm
カラム温度:35℃
溶離液:アセトニトリル/水=65/35(0.07%リン酸添加)
溶離液流量:1ml/分
検出器:UV(230nm)
【0061】
【式4】
溶出比(%)=(E×1000/F)×100
【0062】
式4において、
E:採取した試料に含まれる農薬活性成分の含量(mg/1g水)
F:20℃における農薬活性成分の水溶解度(ppm)
【0063】
算出した溶出比から次の基準で評価した。結果を表3にまとめて示した。
◎:溶出比が90%以上
○:溶出比が60%以上90%未満
△:溶出比が30%以上60%未満
×:溶出比が30%未満
【0064】
【表3】
【0065】
表3において、
*1:押出成形物ができなかったので評価しなかった
【0066】
【発明の効果】
既に明らかなように、以上説明した本発明には、押出成形時における押出抵抗を小さくすることによる生産性の向上、押出成形して得られる造粒湿品に充分な強度を持たせることによる歩留まりの向上、及び製造した農薬粒剤から農薬活性成分が速やかに水中へ溶出し易くすることによる薬効の向上を同時に充足できるという効果がある。
Claims (9)
- 担体、界面活性剤、農薬活性成分及び水を含有する含水組成物を調製し、該含水組成物を押出成形する工程を経て農薬粒剤を製造する方法において、担体として下記の担体Aを、また界面活性剤として下記の界面活性剤Bを、更に農薬活性成分として下記の農薬活性成分Cをそれぞれ用い、該担体A100重量部当たり該界面活性剤Bを0.1〜5重量部及び水を5〜10重量部の割合で含有する含水組成物を調製することを特徴とする農薬粒剤の製造方法。
担体A:比表面積が1000〜30000cm2/gであり、平均粒子径が0.7〜20μmであって、水分が0.2重量%以下である炭酸カルシウム粉体
界面活性剤B:下記の式1で示される有機リン酸エステルから選ばれる一つ又は二つ以上
【式1】
(式1において、
R:炭素数1〜18の炭化水素基
Y:オキシアルキレン単位の繰り返し数1〜100のポリオキシアルキレンジオールから水酸基を除いた残基
M:H又は1価の塩基
m、n:1又は2であって、m+n=3を満足する整数)
農薬活性成分C:オクタノール/水分配係数が104〜108である農薬活性成分又は20℃における水溶解度が1〜0.001ppmである農薬活性成分 - 担体Aが、比表面積が1500〜8000cm2/gであり、平均粒子径が2.5〜15μmである炭酸カルシウム粉体である請求項1記載の農薬粒剤の製造方法。
- 担体Aが、嵩密度が0.50〜0.95g/mlの炭酸カルシウム粉体である請求項1又は2記載の農薬粒剤の製造方法。
- 界面活性剤Bが、式1中のRが炭素数8〜12の直鎖アルキル基であり、Yがオキシエチレン単位の繰り返し数2〜10のポリオキシエチレンジオールから水酸基を除いた残基である場合の有機リン酸エステルである請求項1、2又は3記載の農薬粒剤の製造方法。
- 界面活性剤Bが、式1中のMがアルカリ金属である場合の有機リン酸エステルである請求項1、2、3又は4記載の農薬粒剤の製造方法。
- 界面活性剤Bが、式1中のmが1である場合の有機リン酸モノエステルと式1中のmが2である場合の有機リン酸ジエステルとの混合物である請求項1、2、3、4又は5記載の農薬粒剤の製造方法。
- 農薬活性成分Cが、常温で固状であり、平均粒子径が0.1〜2μmの粉粒状の農薬活性成分である請求項1、2、3、4、5又は6記載の農薬粒剤の製造方法。
- 請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の農薬粒剤の製造方法によって得られる農薬粒剤。
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