JP4142556B2 - 窒化アルミニウム焼結体及びその製造方法、用途 - Google Patents

窒化アルミニウム焼結体及びその製造方法、用途 Download PDF

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Description

本発明は機械的特性に優れ、高熱伝導率を有する窒化アルミニウム焼結体及びその製造方法、用途に関する。
従来の回路基板は、半導体搭載用セラミックス基板の主面に導電性を有する金属回路をロウ材で接合し、金属回路の所定位置に半導体素子を搭載したものが用いられている。回路基板が高信頼性を持って動作するためには、半導体素子が発生する熱を放熱し、半導体素子の温度が過度に上昇しないようにすることが必要であり、セラミックス基板には、電気絶縁性に加えて、優れた放熱特性が要求される。近年、回路基板の小型化、パワーモジュールの高出力化が進む中、小型軽量化モジュールに関して、電気絶縁性が高く、高熱伝導性を有する窒化アルミニウム(以下、AlNと記載)焼結体を用いるセラミックス基板、並びにAlN基板の主面に金属回路を形成したセラミックス回路基板が注目されている。
セラミックス基板となるAlN焼結体は一般に以下の方法で製造される。即ち、AlN粉末に焼結助剤、有機バインダー、可塑剤、分散剤、離型剤等の添加剤を適量混合し、それを押出成形機やテープ成形法によって薄板状又はシート状に成形する。厚板状又は大型形状の場合はプレス成形されるのが一般的である。次いで、成形体を空気中、又は窒素等の不活性ガス雰囲気中で、350〜600℃に加熱して有機バインダーを除去した後(脱脂工程)、窒素等の非酸化性雰囲気中で、1800〜2000℃で4〜10時間保持し(焼成工程)、放冷すること(冷却工程)によって製造される。
AlN焼結体の熱伝導率を高めるには焼結体を緻密化することが必要であるが、AlNは共有結合性が強く、難焼結性材料であるため、緻密な焼結体を作製するに当たっては、焼結助剤として酸化イットリウム等の希土類酸化物を中心に、酸化カルシウム等のアルカリ土類金属酸化物等、従来より多くの焼結助剤が検討されている。
特開昭60−127267号公報 特開昭61−10071号公報 特開昭60−71575号公報
焼結助剤の作用としては、(1)AlN原料粉末に含まれる酸素と焼結助剤が反応して液相を生成し、AlN焼結体の緻密化を促進させるとともに、(2)熱伝導率を低下させる酸素や鉄、カルシウム等の不純物をAlN粒子界面と粒子間空隙に析出させ、AlN結晶粒子を高純度化することによって高熱伝導率を発現させる、ことが挙げられる。
ここで、粒子間空隙とは、AlN焼結体の研磨破面を走査型電子顕微鏡等で観察した際に見られる、AlN3粒子以上に挟まれている粒界相であり、粒子界面とは、相対するAlN2粒子間に形成される粒界相である。粒子間空隙と粒子界面における粒界相の存在比率は、AlN焼結体破面を研磨した後、走査型電子顕微鏡等で観察した画像をもとに、求めることができる。
焼結助剤、特に希土類酸化物を主とする焼結助剤の添加によるAlN焼結体の緻密化、及びAlN結晶粒子の高純度化により、AlN焼結体は高熱伝導性を発現するが、機械的特性、即ち、破壊靱性と抗折強度が不十分であるという課題があった。
抗折強度は破壊靱性と(1)式の関係があり、形状係数と欠陥寸法が一定と仮定すると、破壊靱性が低いと抗折強度も低下する。
Figure 0004142556
粒度分布が狭い均一性の高い粒子を有する焼結体は欠陥寸法が小さくなるため、高強度を得ることができるが、破壊靱性は向上しない。一方、粗大粒子と微細粒子を組み合せると、亀裂の進展経路の複雑化により見掛け破壊靱性の向上が可能であるが、粗大粒子が破壊起点となり抗折強度が低下するという課題がある。破壊靱性は亀裂の進展し難さを示す指標であり、高靭化するほど亀裂は進展せず、破壊、破損しにくい。
抗折強度が小さいと、AlN基板の主面に形成された金属回路層に半導体素子を実装する際、破損したり、半導体素子の繰り返し作動に伴う熱履歴により、金属回路接合部付近のAlN基板にクラックが発生し易くなる。また、AlN基板の熱伝導率が低いと、金属回路接合部付近の半田にクラックが発生しやすくなるため、耐熱サイクル特性及び信頼性が低下するという課題がある。特に最近では、パワーモジュール用セラミックス基板や半導体製造装置用治具等に関し、従来以上に厳しいヒートサイクルに晒されることが多くなっており、耐熱衝撃性と高熱伝導性を併せ持つAlN焼結体の開発が急務となっている。
本発明の目的は、従来と同等もしくはそれ以上の緻密性と高熱伝導性を保持したまま抗折強度を著しく高め、耐熱衝撃性を向上させたAlN焼結体及びその製造方法、それを用いたセラミックス基板、並びにセラミックス回路基板を提供することである。
即ち、本発明は、AlN粉末、TbO1.8、PrO1.8及びCeO2の群から選ばれる少なくとも一種以上の希土類酸化物を含む焼結助剤、並びに有機バインダーを含有してなる成形体に、加熱脱脂処理及び焼結処理を順次施して得られるAlN焼結体であり、焼結体の破面における粒内破壊率が最低でも40%、粒界破壊靱性が最低でも10J/m2、密度が最低でも3.1g/cm3、抗折強度が最低でも420MPa、破壊靱性が最低でも3.1MPam1/2であることを特徴とする該AlN焼結体であり、さらに、粒内破壊靭性が最低でも45J/m2、結晶粒子のC軸の格子定数が最低でも4.9785Å、熱伝導率が最低でも170W/mKである該AlN焼結体である。
また、a)酸素含有量が最大3質量%、鉄及びシリコンの含有量がそれぞれ最大50及び130ppmで、平均粒径が最大10μmのAlN粉末に、焼結助剤として平均粒径が最大1μmのTbO1.8、PrO1.8及びCeO2から選ばれる少なくとも一種以上の希土類酸化物を内割配合にて0.1〜10質量%、及び有機バインダーを外割配合にて0.5〜30質量%添加し、成形後、加熱脱脂処理を、残留炭素分が2.0質量%以下となるよう非酸化性雰囲気中で行い、c)焼結処理を、非酸化性雰囲気中にて、0.5℃/分以下の昇温速度で1600〜1850℃まで昇温し、0.5〜10時間保持した後、1000℃までの冷却速度を10℃/分以下とすることを特徴とする該AlN焼結体の製造方法であり、該AlN焼結体を用いたセラミックス基板であり、該セラミックス基板の一主面に金属回路を形成し、他の一主面に放熱板を形成してなるセラミックス回路基板である。
本発明により、従来と同等もしくはそれ以上の緻密性と高熱伝導性を保持したまま抗折強度を高め、耐熱衝撃性及び耐熱履歴性を向上させたAlN焼結体、並びにそのAlN焼結体を用いたセラミックス基板、セラミックス回路基板が得られる。
本発明に係るAlN焼結体の特徴は、組成の90%以上がAlNからなるモノリシックな組成であり、球状に近い多面体の粒子形状を保ちつつ、焼結助剤である希土類酸化物とAlNの表面酸化膜である酸化アルミニウムの反応相が粒子界面と粒子間空隙に析出して粒界を強化し、AlN焼結体の高強度化および高靱性化を達成するとともに、AlN結晶粒子の高純度化を行うことで、高熱伝導率化も併せて達成することである。従って、本発明によれば、AlN焼結体の電気的絶縁性を保ちながら、熱的及び機械的特性を改善することが可能である。
本発明に係るAlN焼結体は、焼結体の破面における粒内破壊率が最低でも40%、粒界破壊靱性が最低でも10J/m2であり、密度が最低でも3.1g/cm3、抗折強度が最低でも420MPa、破壊靱性が最低でも3.1MPam1/2であることが好ましい。 AlN焼結体は線形的な破壊挙動を示し、亀裂が進展する場合、多くの欠陥を有する粒界はAlN結晶粒子より転位密度が高く、粒子間結合の弱い粒子間空隙や粒子間界面を選択的に亀裂が進展するため、AlN焼結体の抗折強度は低い。しかし、本発明では粒子間空隙や粒子間界面を強化して、粒界破壊靭性を10J/m以上となるようにし、亀裂の進展経路を粒内にも向けて、臨界解放エネルギーを大きくすることで、AlN焼結体破面の粒内破壊率を40%以上とすることができる。その結果、AlN焼結体の破壊靱性は3.1MPam1/2以上となり、抗折強度を420MPa以上にすることが可能である。粒界破壊靭性が10J/m未満の場合、粒内破壊率は40%未満となるため、AlNの破壊靱性が3.1MPam1/2未満、抗折強度が420MPa未満となる。
粒界破壊靭性の算出方法を(2)〜(6)式に示す。この粒界破壊靭性の算出方法は『亀裂進展経路と破壊靭性に関する確率理論式』を用いて求めるものである。
R.Terao et al. J. Euro. Ceram. Soc., 22, 1051-59, 2002
セラミックスの粒内及び粒界破壊靭性は(2)〜(7)式に実験値である粒内破壊率,粒径,臨界エネルギー解放率を代入することにより算出できる。GICは臨界エネルギー解放率,GIC boundaryは粒界破壊靭性、GIC grainは粒内破壊靱性、fは粒内破壊率,dは粒径,d*は粒内破壊臨界粒径、定数p及びqはそれぞれ9.5×10及び8.5、AlN焼結体のヤング率及びポアソン比はそれぞれ280MPa及び0.25、Sgrainsは全粒子数、Sboundaryは粒界破壊した粒子数である。
Figure 0004142556
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AlN焼結体の高抗折強度化及び高靱化は粒界強化だけでなく、AlN焼結体の密度にも関連する。本発明においては、AlN焼結体の密度が3.1g/cm以上の場合、破壊靭性3.1MPam 1/2 以上および抗折強度420MPa以上が達成可能である。密度が3.1g/cm 未満であると体積欠損部が破壊源となり、強度劣化を引き起こすため、420MPa以上の抗折強度が得られない場合がある。
さらに、本発明は、粒内破壊靭性が最低でも45J/m2、AlN結晶粒子のC軸の格子定数が最低でも4.9785Å、熱伝導率が最低でも170W/mKであり、高抗折強度および高破壊靭性を同時に有することを特徴とするAlN焼結体である。
AlN焼結体の熱伝導率低下の主要因は、一般的に、酸素と窒素の置換によってAlN格子内に生じる格子欠陥によるものである。このとき、ウルツ鉱型結晶構造のAlNのC軸は短化する傾向にある。さらに、AlN格子内の格子欠陥により転位密度も増加するため、AlN結晶格子は弱化する。本発明では、AlN結晶粒子内から酸素等の不純物を除去し、高純度化させることで、AlNのC軸を4.9785Å以上、粒内破壊靭性を45J/m2以上とすることが可能であり、170W/mK以上の熱伝導率が得られる。C軸が4.9785Å未満の場合、粒内破壊靭性が45J/m2未満となり、熱伝導率は170W/mK未満となる。
本発明に係るAlN粉末は、直接窒化法、アルミナ還元法等の公知の方法で製造された粉末が使用できるが、酸素含有量が最大3質量%、鉄及びシリコン含有量がそれぞれ最大50及び130ppmであり、AlN粉末の平均粒径が最大でも10μmであることが好ましい。不純物含有量や平均粒径が上記の範囲を外れると、焼結が阻害されるとともに、AlN焼結体の熱伝導率や抗折強度、破壊靱性、電気絶縁性に悪影響を及ぼす場合がある。
本発明に係る焼結助剤は、平均粒径が最大1μmのTbO1.8、PrO1.8及びCeO2の群から選ばれる少なくとも一種以上の希土類酸化物を、AlN粉末に対して内割配合で0.1〜10質量%となるように配合することが好ましい。焼結助剤の配合量が0.1質量%未満では、液相の生成が不十分となるため緻密化が促進されず、密度を3.1g/cm3以上にすることができない場合がある。また、10質量%を超えると、緻密化速度が低下するため、気孔(体積欠損部)が生成して破壊源となり、抗折強度の低下を引き起こす場合がある。
AlN焼結体の焼結助剤に使用される希土類酸化物は、Y2O3やSm2O3等の3価の希土類金属からなる酸化物が一般的であるが、本発明に係るTbO1.8及びPrO1.8は約4価、CeO2は4価の希土類金属酸化物である。これらの焼結助剤とAlNの表面酸化膜である酸化アルミニウムとの反応相、即ち、TbAlO3、PrAlO3やCeAlO3等を粒子間空隙や粒子界面に析出させることで、粒界相を強化することが可能であり、中でもTbAlO3が粒界強化のために好ましい。この作用機構は完全に解明された訳ではないが、希土類金属イオンの価数を、従来の3+から約4+にすることにより、希土類金属イオン近傍の電子状態が安定化し、粒子間空隙や粒子界面における粒子間結合が強固になると推測している。本発明に係る焼結助剤は、二種以上を配合しても本発明のAlN焼結体の特性に悪影響はなく、むしろ二種以上配合することで焼結助剤と酸化アルミニウムの共晶温度が低下し、焼結温度の低下、即ち、省エネルギー化を図ることが可能な場合がある。
本発明では、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸、及びメタクリル酸からなる群より選ばれた一種又は二種以上を重合してなるポリマーを含む有機バインダーを用いることが好ましい。有機バインダーを用いる理由は、窒素等の非酸化性雰囲気中での脱脂処理において、他の有機バインダーよりも熱分解性が良く、残留炭素分の制御を容易に行うことができるからである。又、上記ポリマーのガラス転移温度は、−50〜0℃であることが好ましい。ポリマーのガラス転移温度が−50℃より低いと、十分な成形体強度が得られず、成型が困難となる場合があり、一方、ガラス転移温度が0℃より高いと成型体が硬く、脆いものとなり割れが発生しやすくなる場合がある。
有機バインダーの添加割合は、AlN粉末に対して外割配合で0.5〜30質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。0.5質量%より少ないと、十分な成形体強度が得られず、割れを生じる場合がある。一方、30質量%を超えると、脱脂処理に多大な時間がかかる上に、脱脂体の強度が低くなる場合がある。
本発明において、上記成形体の加熱脱脂処理後の残留炭素分は、2.0質量%以下が好ましく、0.2〜1.0質量%がより好ましい。残留炭素分が2.0質量%を超えると、過剰の炭素が焼結を阻害するため緻密な焼結体が得られなくなる場合がある。
AlN焼結体の製造方法は、例えば、AlN粉末に焼結助剤を所定量配合し、ボールミル等を用いて混合する。混合した粉末に有機バインダー及び必要に応じて例えば離型材や可塑剤等の各種添加剤を加え、造粒、整粒、混練等の処理を施して成形する。成形方法は特に限定されるものではなく、金型プレス成形、静水圧プレス成形、ドクターブレード、押出成形法等の中から、その所望形状に適した方法が採用可能である。加熱脱脂処理の条件は、窒素ガス等の非酸化性雰囲気中、温度350〜600℃で1〜20時間保持することが好ましい。これにより、焼結処理の際、AlN粒子と液相化した焼結助剤との濡れ性が著しく向上し、抗折強度420MPa以上、熱伝導率170W/mK以上のAlNを生産性良く製造することが可能となる。
有機バインダーを除去した成形体を焼成容器内に収容し、非酸化性雰囲気中、1600〜1850℃で焼結する。焼結方法は特に限定されないが、常圧焼結法やホットプレス法等が採用できる。焼成雰囲気は窒素ガスやアルゴンガス等の非酸化性雰囲気中で行うことが好ましい。焼結は、真空、減圧、及び加圧下で行うことも可能であるが、常圧下で行うのが一般的である。本発明で重要なことは、焼結助剤の反応によって液相生成量が増加する1500℃以上の昇温速度を少なくとも0.5℃/分以下にして焼結温度まで高めることである。昇温速度が0.5℃/分を超えると、焼結が不均一に進むため、粒界相組織にバラツキが生じ、AlN焼結体に反りが発生し、抗折強度が低下する場合がある。
本発明に係るAlN焼結体の焼結条件は、焼結温度1600〜1850℃、保持時間0.5〜10時間であり、冷却は、1000℃までの冷却速度が10℃/分以下である。焼結温度が1600℃未満の場合、焼結に必要な液相が十分生成せず、密度が3.1g/cm3以上にならない場合がある。一方、1850℃を超えると、AlN焼結体外部へ助剤が揮発するため表面が粗面化し、応力が掛かった際に、それが破壊源となり抗折強度が低下する場合がある。保持時間が0.5時間未満の場合、AlN結晶粒子内の高純度化が不十分となり、高熱伝導率が得られない場合があり、一方、10時間を超えると、粒子間空隙や粒子界面に存在する希土類元素が揮発するため、粒界相が弱化し、高強度化及び高靭化できない場合がある。また、1000℃までの冷却速度を10℃/分を超えた速度にすると、希土類アルミネート相がAlN粒子を包むため、熱伝導率の媒体であるフォノンの散乱が妨げられ、高い熱伝導率が得られない場合がある。
本発明のAlN焼結体は、機械的特性に優れ、且つ、高い熱伝導率を有するので、厳しい使用条件下で用いられる回路基板、例えばパワーモジュール用回路基板に好適な材料である。本発明のセラミックス回路基板は、AlN焼結体を用いた基板の一主面に金属回路、他の一主面に放熱板を形成してなるものである。
本発明に係るセラミックス基板の厚みは特に限定されるものではなく、例えば、放熱特性を重視する場合は0.3〜1.0mm程度、高電圧下での絶縁耐圧を著しく高めたい場合は1〜3mm程度のものが用いられるのが一般的である。
金属回路と金属放熱板の材質はAl、Cu、またはAl−Cu合金であることが好ましい。これらは単層ないしはこれを一層として含むクラッド等の積層体の形態で用いることが可能である。中でも、AlはCuよりも降伏応力が小さいため塑性変形し易く、ヒートサイクル等の熱応力負荷が掛かった際に、セラミックス基板に加わる熱応力を大幅に低減することができる。そのため、AlはCuよりも、金属回路とセラミックス基板間に発生する水平クラックが発生しにくく、より高信頼性モジュールの作製が可能である。
金属回路の厚みは、特に限定されるものではないが、電気的および熱的仕様からAl回路は0.4〜0.5mm、Cu回路は0.3〜0.5mmが一般的である。一方、放熱板は、半田付け時に反りを生じない厚みにすることが必要であり、例えば、Al放熱板は0.1〜0.4mm、Cu放熱板は0.15〜0.4mmが一般的である。
本発明に係るセラミックス回路基板は、板状のAlNまたは研削加工により板状に加工したAlN焼結体を基板とし、金属板を接合した後、エッチング等の手法により回路を形成させるか、或いは、予め形成した金属回路を、接合することにより製造することが可能である。板状のAlN焼結体または研削加工により板状に加工したAlN焼結体と金属板又は金属回路との接合は、例えば、Al−Cu、Ag、Cu、またはAg−Cu合金と、Ti、Zr、Hf等の活性金属成分を含むロウ材を介在させ、不活性ガスまたは真空雰囲気中で加熱する方法(活性金属法)により可能である。
表1に示すAlN粉末に、表1に示す焼結助剤を内割で添加し、さらにアクリル系樹脂の有機バインダーを外割で3質量%(固形分換算)添加し、エタノールを分散媒とした湿式ボールミルにより2時間混合、次に、エバポレータを用いて減圧下で乾燥させ、混合粉末を調製した。
この混合粉末を金型に挿入し、300MPaの圧力で静水圧成形を行い、8.76cm×5.84cm×0.15cm厚のグリーンシートを作製した。これを窒化ホウ素製の坩堝に充填し、常圧下、窒素雰囲気中にて、実験No.1〜20及び22〜35は、500℃で3時間保持して脱脂させ(脱脂条件A)、実験No.21は500℃で1時間保持して脱脂を行った(脱脂条件B)。次に、カーボンヒーター電気炉を用いて表1に記載した条件にて絶対圧力0.1MPa下で加熱焼結処理を施し、7.62cm×5.08cm×0.13cm厚の寸法のAlN焼結体を製造した。物性測定結果を表2に示す。
Figure 0004142556
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得られたAlN焼結体を回路基板として性能評価するため、実験No.1〜30では、金属回路と金属放熱板としてアルミニウム板を以下の方法にて接合した。
AlN焼結体の両主面に7.62cm×5.08cm×0.03cm厚のロウ合金箔を貼付け、さらに7.62cm×5.08cm×0.13cm厚のアルミニウム板を設置した。それを14枚積層したものを、カーボン治具にカーボンネジ締めにより設置した後、620℃で2時間保持し、接合体を作製した。得られた接合体の一主面には所定の形状の回路パターンを、もう一方の主面には放熱板パターンを形成させるべく、UV硬化型レジストインクをスクリーン印刷した後、UVランプを照射させてレジスト膜を硬化させた。次いで、レジスト塗布した部分以外を水酸化ナトリウム水溶液でエッチングした後、フッ化アンモニウム水溶液にてレジスト剥離し、アルミニウム回路AlN基板を作製した。

得られた回路基板の信頼性を評価するため熱履歴衝撃試験を実施し、1)剥がれ、膨れ等の外観確認、2)断面観察による、回路面又は放熱板面とAlN基板間の接合クラックの有無の確認、3)回路、放熱板部分を溶解後、インクテストによるAlN基板のクラック発生の有無の確認を行った。結果を表3に示す。ここで、接合クラック発生の有無は、熱履歴衝撃試験を実施し、2000サイクル未満にて、接合クラックが発生した場合を記号1、2000〜3000サイクルにて、接合クラックが発生した場合を記号2、3000サイクルでも接合クラックが発生しない場合を記号3とした。
Figure 0004142556
〈使用材料〉
AlN粉末:不純物含有量は鉄が40ppm、シリコンは100ppmであった。
焼結助剤:信越化学工業株式会社製、商品名『TerbiumOxide』、『CeriumOxide』、『PraseodymiumOxide』(平均粒径1.0μm)を使用した。
有機バインダー:ユケン工業株式会社製、商品名『セランダー』、主成分、水溶性アクリル酸エステル。ガラス転移温度−20℃。
アルミニウム板:三菱アルミニウム株式会社製、商品名「1085材」(対応JIS番号)。
ロウ合金箔:東洋精箔株式会社製、商品名「A2017R−H合金箔」(対応JIS番号)。
UV硬化型レジストインク:互応化学工業株式会社製、商品名『PER−27B−6』。
〈測定方法〉
残留炭素分:LECO 社製炭素測定器(型式 CS-400-SC-444)により測定。
密度:ブタノ―ルを用い、アルキメデス法により算出した((9)式)。
抗折強度:下部スパン30mm、クロスヘッド速度0.5mm/分の条件にて3点曲げ試験(JIS R1601)を行い、その破壊荷重を(8)式により求めた(n=10)。
粒内破壊率:AlN基板断面を観察し、約200個の粒子を対象にした時の粒内破壊した粒子面積の総和、粒界破壊した粒子面積の総和を(7)式に代入して算出した。
粒径:インターセプト法での粒径測定から求めた。
臨界エネルギー解放率:測定した破壊靱性を(6)式に代入して算出した。
破壊靭性:Surface Crack in Flexure法(ASTM、C1421−99)にて測定した。
熱伝導率:AlN基板表面にカーボンスプレー処理を施し、レーザーフラッシュ法にて測定した。
AlN結晶粒子内のc軸の格子定数:高出力X線回折装置を用い、Siを外部標準試料として測定した。
熱履歴衝撃試験:(−25℃、10分→室温、10分→125℃、10分→室温、10分)を1サイクルとして、3000サイクルのヒートサイクルに供試体を晒す試験。
Figure 0004142556
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実施例31〜35は金属回路と金属放熱板に銅板を以下の方法にて接合した以外は、実施例1と同様に行った。
Ag85質量%、Cu10質量%、Zr2質量%、TiH3質量%からなる混合粉末と、外割で30質量%テルピネオールを加えたペースト状混合液をAlN焼結体の両主面に塗布し、その両主面に7.62cm×5.08cm×0.05cm厚の無酸素銅板を貼付けた。それを14枚積層したものを、カーボン治具にカーボンネジ締めにより設置した後、850℃で2時間保持させてAlN焼結体を銅板で挟んだ接合体を作製した。接合体の一主面には所定の形状の回路パターンを、もう一方の主面には放熱板パターンを形成させるべく、UV硬化型レジストインクをスクリーン印刷した後、UVランプを照射させてレジスト膜を硬化させた。次いで、レジスト塗布した部分以外を塩化第2銅溶液でエッチングした後、フッ化アンモニウム水溶液にてレジスト剥離し、銅回路AlN基板を作製した。
〈使用材料〉
無酸素銅板:住友金属鉱山伸銅株式会社製、商品名『3100系』(対応JIS番号)。
表2及び表3より、本発明の実施例は、抗折強度420MPa以上、破壊靭性3.1MPam1/2以上、及び熱伝導率が170W/mK以上であり、熱履歴衝撃試験後に、接合クラック及び基板クラックが発生せず、回路基板として高い信頼性が得られることが分かる。
回路形成後の状態を示した説明図である。
符号の説明
1 金属回路
2 金属放熱板
3 AlN焼結体

Claims (5)

  1. 窒化アルミニウム粉末、TbO1.8、PrO1.8、CeO2の群から選ばれる少なくとも一種以上の希土類酸化物を含む焼結助剤、並びに有機バインダーを含有してなる成形体に、加熱脱脂処理及び焼結処理を順次施して得られる、焼結体の破面における粒内破壊率が最低でも40%、粒界破壊靭性が最低でも10J/mであり、密度が最低でも3.1g/cm、抗折強度が最低でも420MPa、破壊靭性が最低でも3.1MPam1/2、粒内破壊靱性が最低でも45J/m 、窒化アルミニウム結晶粒子のC軸の格子定数が最低でも4.9785Å、熱伝導率が最低でも170W/mKであることを特徴とする窒化アルミニウム焼結体。
  2. 酸素含有量が最大3質量%、鉄の含有量が最大50ppm、シリコンの含有量が最大130ppmであり、平均粒径が最大10μmの窒化アルミニウム粉末に、焼結助剤として平均粒径が最大1μmのTbO1.8、PrO1.8 及びCeO2の群から選ばれる少なくとも一種以上の希土類酸化物を内割配合にて0.1〜10質量%、及び有機バインダーを外割配合にて0.5〜30質量%添加し、成形後、加熱脱脂処理を、残留炭素分が2.0質量%以下となるよう非酸化性雰囲気中で行い、焼結処理を、非酸化性雰囲気中で、
    a)0.5℃/分以下の昇温速度で1600〜1850℃まで昇温し、
    b)0.5〜10時間保持した後、
    c)1000℃までの冷却速度を10℃/分以下
    で行うことを特徴とする窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
  3. 請求項記載の製造方法で得られる、焼結体の破面における粒内破壊率が最低でも40%、粒界破壊靭性が最低でも10J/mであり、密度が最低でも3.1g/cm 、抗折強度が最低でも420MPa、破壊靭性が最低でも3.1MPam1/2、粒内破壊靱性が最低でも45J/m、窒化アルミニウム結晶粒子のC軸の格子定数が最低でも4.9785Å、熱伝導率が最低でも170W/mKであることを特徴とする窒化アルミニウム焼結体。
  4. 請求項1又は請求項3記載の窒化アルミニウム焼結体を用いてなるセラミックス基板。
  5. 請求項記載のセラミックス基板の一主面に金属回路を形成し、他の一主面に放熱板を形成してなるセラミックス回路基板。
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