JP4141238B2 - 挽き肉加工食品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、挽き肉加工食品およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
ハンバーグ、ミートボールなどの挽き肉加工食品は、一般にミンチ肉と玉葱などの具材からなる練り肉生地に調味料で味付けし、パン粉等で生地の硬さを調節し、成型した後、焼成および蒸しにより加熱して製品化される。このような挽き肉加工食品は、加熱調理により肉汁のドリップが起こり、旨味成分が流出し、食感が固くなり、歩留まりが減少するため、全体として商品価値を低下させる。
また、調理時から時間が経過し、製品が冷えた状態では食感はさらに固くなり、また、凍結解凍により食感が損なわれ好ましくない。
【0003】
これらの問題を解決する手法として、従来大豆蛋白や乳たん白等の蛋白を生地に添加する方法、パルプを生地に添加する方法あるいは加工澱粉やカラギーナン、グァーガム等の増粘多糖類を生地に添加する方法が提案されているが、これらの方法では効果を得るだけの使用量では風味、食感が悪くなり問題の解決に十分ではなかった。例えば、蛋白を添加する方法では蛋白独特の風味が付くし、パルプを添加する方法では肉本来の食感とは異なるものとなるし、また、加工澱粉やカラギーナン、グァーガム等の増粘多糖類を添加する方法では加工澱粉や増粘多糖類独特の“ぬるみ”や“糊っぽさ”があり、また、加熱調理時にはそれらが溶出するのでその効果が十分ではない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ハンバーグなどの挽き肉加工食品を製造する際、練り肉生地にガラクトキシログルカンの側鎖ガラクトースを酵素的に部分除去した可逆的熱応答性ガラクトキシログルカンを添加することにより、加熱時のドリップを防止して歩留まりを向上させ、ジューシーな食感となる。また、冷えた状態でソフト感を保ち、凍結解凍により食感を損なわない挽き肉加工食品の製造を可能とするものである。
【0005】
本明細書中では、上記「ガラクトキシログルカンの側鎖ガラクトースを酵素的に部分除去して製造される可逆的熱応答性ガラクトキシログルカン」は以下、単に「可逆的熱応答性ガラクトキシログルカン」と略称することもある。
【0006】
ガラクトキシログルカンは双子葉,単子葉植物など高等植物の細胞壁(一次壁)に存在する天然多糖である。ガラクトキシログルカンはグルコース、キシロースおよびガラクトースを構成糖とし、主鎖はグルコースがβ−1,4結合し、側鎖にキシロース、そのキシロースにさらにガラクトースが結合している。ガラクトキシログルカンは、タマリンドをはじめ、大豆、緑豆、インゲンマメ、イネ、オオムギ、リンゴなどから抽出される。ガラクトキシログルカンとしては、いかなるガラクトキシログルカンでもよいが、その含有率が高く、入手も容易なタマリンド種子由来のガラクトキシログルカン〔タマリンド種子ガム:商品名「グリロイド」大日本製薬(株)製〕が好ましい。
【0007】
ガラクトキシログルカンは単独ではゲル化しないが、糖あるいはアルコールの共存下ではゲル化することが知られている。また、ガラクトキシログルカンの側鎖ガラクトースを酵素で一定の割合で部分除去して製造されるガラクトキシログルカンは可逆的熱応答性ゲルの挙動を示すことが知られている。すなわち、当該ガラクトキシログルカンは可逆的にゾル化/ゲル化する熱相転移性を有し、特に低温側の転移温度では可逆的に加熱によりゲル化し、冷却によりゾル化する「可逆的熱ゲル化剤」である(特開平8−283305号公報)。
【0008】
本発明に用いる可逆的熱応答性ガラクトキシログルカンは特開平8−283305号公報記載の「可逆的熱ゲル化剤」と同一物であり、したがって、当該公報に記載の方法により製造することができる。すなわち、ガラクトキシログルカンの側鎖ガラクトースを酵素的に部分分解して製造することができ、より詳しくは、基質のガラクトキシログルカン水溶液に市販もしくは精製β−ガラクトシダーゼを至適の反応温度、pH、濃度などの条件下で反応させ、反応時間に応じて側鎖ガラクトースを一定の割合で部分除去して製造することができる。反応時間は基質の濃度、酵素濃度、殊にpHに依存するので、反応時間を適宜調整することができる。
【0009】
可逆的熱応答性ガラクトキシログルカンは、当該公報の記載によれば、熱によるゾル−ゲル相転移は低温側と高温側の2箇所にあり、低温側の転移温度以下および高温側の転移温度以上ではゾル化し、両転移温度間ではゲル化するという性質を有する。特に、両転移温度領域では可逆的な熱応答性を示す。例えば、基質のガラクトキシログルカンの2%水溶液を酵素反応して製造される、側鎖ガラクトースの除去率が40%の可逆的熱応答性ガラクトキシログルカンの2%水溶液は、30℃と90℃でゾル−ゲル相転移が起こり、30℃以下および90℃以上ではゾルであり、30−90℃の範囲ではゲルである。また、側鎖ガラクトースの除去率が44%の可逆的熱応答性ガラクトキシログルカンの2%水溶液は20−100℃の範囲でゲルである。
【0010】
ゾル−ゲル相転移温度は、側鎖ガラクトースの除去率および得られた可逆的熱応答性ガラクトキシログルカンの水溶液の濃度によって変化する。ガラクトース除去率が高くなるにつれて、また、得られた可逆的熱応答性ガラクトキシログルカンの水溶液の濃度が高くなるにつれて、相転移温度は低温側ではより低下し、高温側ではより高くなり、ゲル化の温度領域が拡大する。また、かかるゾル−ゲル相転移温度は塩,糖の添加によってもその影響を受け、例えば食塩の添加では上昇傾向、砂糖の添加では下降傾向が認められる。したがって、塩、糖を添加することにより転移温度を制御することもできる。
【0011】
本発明はこのような特性を有するガラクトキシログルカンの挽き肉加工食品への使用である。かかるガラクトキシログルカンは側鎖ガラクトースの除去率が30−65%であり、より好ましくは35−55%である。その使用量は挽き肉加工食品全量に対し0.05−5重量%であり、好ましくは0.1−3重量%である。0.05重量%未満であると効果が乏しく、5重量%より多いと食感が損なわれる。その使用量は食品の水分量や食感によって適宜調整することができる。
【0012】
本発明に使用される可逆的熱応答性ガラクトキシログルカンは粉末としてまたは水溶液として製造され、いずれの形態でも使用できる。また、粉末にせず反応物そのものを用いることもできる。粉末として製造されたときは、粉末をそのまま使用することもできるが、予めその粉末を水に溶解させ水溶液として用いることもできる。
【0013】
また、本発明に用いる可逆的熱応答性ガラクトキシログルカンは単独で使用することができるが、食品に汎用される他の天然多糖や食品素材、例えばキサンタンガム、タマリンド種子ガム、グアーガム、ジェランガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、ゼラチン、乳蛋白等と併用することもできる。
【0014】
本願発明の挽き肉加工食品は、常温、冷蔵、冷凍で流通される挽き肉加工食品であり、具体的にはハンバーグ、ミートボール、ソーセージ、つくね、メンチカツ、コロッケなどであり、中華まんじゅうなどの***食品以外のものをいう。
【0015】
【発明の効果】
ハンバーグなどの挽き肉加工食品を製造する際、練り肉生地に可逆的熱応答性ガラクトキシログルカンを加えると、加熱時のドリップが抑えられ、そのことにより、歩留まりが向上し、さらに風味も良く、肉本来のジューシーな食感がえられる。また、冷えた状態でもソフト感を保ち、凍結解凍後の再加熱によっても食感が損なわれない。
【0016】
【実施例】
以下に参考例及び実施例を挙げ、本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の技術分野における通常の技術を用いる改変が可能である。また、参考例及び実施例で使用したガラクトキシログルカンはタマリンド種子ガム由来のものであり、市販品として入手することができる〔商品名「グリロイド3S」大日本製薬(株)製〕。
【0017】
参考例1 可逆的熱応答性ガラクトキシログルカンの水溶液の調製
【0018】
(1) 可逆的熱応答性ガラクトキシログルカンは、ガラクトキシログルカンを用いて、特開平8−283305号公報記載の方法に従って製造した。すなわち、基質のガラクトキシログルカンの1%水溶液に、市販のβ−ガラクトシダーゼ「ラクターゼY−AO」〔(株)ヤクルト本社製:Aspergillus oryzae由来〕を精製して得た精製酵素β−ガラクトシダーゼを用い、酵素濃度2.4×10-5重量%、pH5.6、50℃で約20時間酵素反応させた後、100℃、20分間加熱して酵素を失活させた後、室温に戻し、等容量のエタノールを加え、1時間放置した。沈殿物を吸引濾過により回収し、乾燥した後粉砕、篩過して粉末の可逆的熱応答性ガラクトキシログルカン(ガラクトースの除去率約44%)を得た。
【0019】
(2) 上記粉末の可逆的熱応答性ガラクトキシログルカン(3g)を攪拌下、水(97g)に分散させ、氷冷しながら3時間攪拌、溶解して可逆的熱応答性ガラクトキシログルカンの3重量%水溶液(100g)を調製した。以下、可逆的熱応答性ガラクトキシログルカンの3重量%水溶液を単に「参考例1の3%水溶液」と略称する。
【0020】
実施例1 ハンバーグ
【0021】
表1の処方でハンバーグを製造した。すなわち、粒状タンパクおよび可逆的熱応答性ガラクトキシログルカンを除く原材料を混合した後、戻し水に浸積した粒状タンパクおよび可逆的熱応答性ガラクトキシログルカンを順次加え混合した。次いで、成型したものを片面1分ずつ両面加熱した後10分間蒸し、歩留まりを測定した後冷凍した。次に、これをレンジで加熱した後、食感を評価し、結果を表2に示した。
【0022】
表2に示したように、発明群は対照群と比較して歩留まりが良く、ジューシーでソフトな食感であった。また、冷めてもジューシーでソフトな食感を保持していた。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
実施例2 ミートボール
【0026】
表3の処方でミートボールを製造した。すなわち、可逆的熱応答性ガラクトキシログルカンを除く原材料を定法に従って混合した後、可逆的熱応答性ガラクトキシログルカンを加え混合し、成型したものを10分間蒸し150℃に調整したフライヤーで2分間揚げた後、放冷、冷凍し、これをレンジで加熱して、食感を評価した。結果を表4に示した。
【0027】
表4に示したように、発明群は対照群と比較して歩留まりが良く、ジューシーでソフトな食感であった。
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】
実施例3 ソーセージ
【0031】
表5の処方で、常法に従って(乾燥:60℃20分、スモーク:65℃10分、蒸煮:75℃30分)ソーセージを試作した。結果を表6に示した。
【0032】
表6に示したように、発明群は対照群と比較して、弾力があり、ジューシーな食感であった。
【0033】
【表5】
【0034】
【表6】
Claims (5)
- 挽き肉加工食品の製造において、以下の工程を含むことを特徴とする挽き肉加工食品の製造方法:
工程1.原材料を混合する工程、
工程2.工程1に引き続いて、タマリンド種子ガム由来のガラクトキシログルカンの側鎖ガラクトースを微生物由来の精製β−ガラクトシダーゼを用いて部分的に除去して製造される可逆的熱ゲル化剤を添加し、混合する工程。 - 微生物由来の精製β−ガラクトシダーゼが、Aspergillus orizae由来の精製β−ガラクトシダーゼである請求項1に記載の挽き肉加工食品の製造方法。
- 側鎖ガラクトースの除去率が30−65%の可逆的熱ゲル化剤である請求項1または2に記載の挽き肉加工食品の製造方法。
- 可逆的熱ゲル化剤を挽き肉加工食品の全量に対し0.05−5重量%添加する請求項1−3のいずれか1項に記載の挽き肉加工食品の製造方法。
- 挽き肉加工食品が、ハンバーグ、ミートボール、ソーセージ、つくね、メンチカツまたはコロッケである請求項1−4のいずれか1項に記載の挽き肉加工食品の製造方法。
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