本発明の一実施の形態について図1から図13に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
図2は、本実施の形態に係る通信システム101の構成の概略を示す説明図である。図2に示すように、通信システム101は、インターネット等のWAN(wide area network;広域網)(通信ネットワーク)102に接続されている。このWAN102には、受信側端末103が接続されている。通信システム101は、送信側端末10から送信されたパケットを、WAN102を介して、受信側端末103へ転送する。
図2に示すように、通信システム101は、送信側端末10、アクセスポイント装置(中継装置)20、プロバイダサーバ(第1のネットワーク接続装置)30、クロスリンクサーバ(第2のネットワーク接続装置)40を備えて構成されている。そして、プロバイダサーバ30とクロスリンクサーバ40とは、WAN102を介して接続されている。
送信側端末10は、WAN102に接続されている受信側端末103へパケットを送信する。送信側端末10としては、複数のアクセスポイント装置20を切換ながらWAN102に接続する、PDA等の携帯型の情報端末装置が好適であるが、これに限るものではない。なお、本実施の形態では、送信側端末10とアクセスポイント装置20との間の通信を無線で行う場合について説明するが、有線であってもよい。
アクセスポイント装置20は、プロバイダサーバ30と接続するための接続機器である。すなわち、アクセスポイント装置20は、送信側端末10から受信したパケットを、接続用モデム(アダプタ)を介して、プロバイダサーバ30へ送信するように設定されている。アクセスポイント装置20としては、例えば、個人所有の無線アクセスポイントでもよいし、駅、ホテル、喫茶店等に設置された無線LAN(local area network)による接続端末であってもよい。すなわち、送信側端末10のユーザが管理するものでもよいし、プロバイダサーバ30の業者が設置したものでもよいし、他の者が設置したものであってもよい。
プロバイダサーバ30およびクロスリンクサーバ40は、WAN102への接続サービスを提供するいわゆるインターネットアクセスプロバイダ(IAP;internet access provider)である。
ここで、送信側端末10は、WAN102との接続サービスの契約が、クロスリンクサーバ40との間で結ばれているが、プロバイダサーバ30との間では結ばれていないものとする。また、クロスリンクサーバ40は、プロバイダサーバ30および/あるいはアクセスポイント装置20との間で、本発明が特徴とするパケット転送サービスにかかる契約が結ばれているものとする。
WAN102は、TCP/IP(transmission control protocol/internet protocol;伝送制御プロトコル/インターネット・プロトコル)による通信を行うインターネット等の通信ネットワークである。なお、使用するプロトコルはTCP/IPに限定されるものではなく、任意のプロトコルが選択可能である。
受信側端末103は、送信側端末10から送信されるパケットの宛て先の装置であり、例えばメールサーバやHTML(hypertext markup language)によるホームページを提供するサーバである。
図2の実線および破線の矢印は、装置間を伝送されるパケットの流れを示す。実線はカプセル化されたパケットの流れを示し、破線は非カプセル化されたパケットの流れを示す。
送信側端末10は、受信側端末103へ送信すべきデータ含むTCP/IPパケット(「内包パケット」とする)を生成する。また、送信側端末10は、この内包パケットをクロスリンクサーバ40へ送信するために、当該内包パケットをTCP/IPフォーマットでカプセル化したパケット(「カプセル化パケット」とする)を生成する。そして、送信側端末10は、このカプセル化パケットをアクセスポイント装置20へ送信する。
ここで、内包パケットは、クロスリンクサーバ40に接続されているアクセスポイント装置を経由して送信する場合と同じ内容、すなわち、送信元が送信側端末10であり、受信先が受信側端末103に設定されている。また、カプセル化パケットは、送信元が送信側端末10であり、クロスリンクサーバ40に設定されている。そして、プロバイダサーバ30は、クロスリンクサーバ40とのパケット転送サービスの契約により、クロスリンクサーバ40へのパケットを通過させるように設定されている。
よって、送信側端末10からのデータは、クロスリンクサーバ40までカプセル化パケットの形態で伝送され、クロスリンクサーバ40においてカプセル化パケットから内包パケットが取り出された後、内包パケットの形態で受信側端末103まで伝送される。
このように、通信システム101によれば、WAN102との接続サービスの契約が結ばれていないプロバイダサーバ30を経由して送信できる。しかも、利用するアクセスポイント装置20あるいはプロバイダサーバ30によらず、内包パケットおよびカプセル化パケットとも同じ内容である。したがって、送信側端末10の設定を変更する必要がないため、簡便に送信操作でユビキタスなネットワーク接続環境を利用することができる。しかも、既存のインフラをそのまま活用できる。
なお、本実施の形態では、プロバイダサーバ30から転送されたパケットをクロスリンクサーバ40がWAN102へ送信する場合について説明するが、プロバイダサーバ30およびクロスリンクサーバ40がともに相手の機能を備えていれば、クロスリンクサーバ40から転送されたパケットをプロバイダサーバ30がWAN102へ送信することもできる。これは、プロバイダサーバ30およびクロスリンクサーバ40が、パケット転送サービスの契約を相互に結んでいる場合に相当する。よって、プロバイダサーバ30の機能とクロスリンクサーバ40の機能とを備えた複数のIAPサーバが、このパケット転送サービスに参加することで、無線LANでのアクセスエリアが拡大し、充実したユビキタスなネットワーク接続環境を実現できる。
図3は、上記通信システム101の適用例を示す構成図である。送信側端末10は、インターネット等のWAN102に接続されているメールやホームページ等の受信側端末103と通信する際、従来と同様、WAN102への接続サービスの契約を結んでいるクロスリンクサーバ40(IAP)を介して、WAN102に接続することができる。そのためには、送信側端末10は、クロスリンクサーバ40に接続されている公開されたアクセスポイント20pに接続すればよい。もちろん、同じクロスリンクサーバ40に接続され、かつ、公開されているアクセスポイント(クールポイントを含む)から接続することもできる。
加えて、通信システム101では、送信側端末10のユーザがWAN102への接続サービスの契約を結んでいないプロバイダサーバ30q、30rに接続されたアクセスポイント装置20q、20rからWAN102に接続することもできる。具体的には、送信側端末10は、(1)クロスリンクサーバ40との間でパケット転送サービスを結んだプロバイダサーバ30qに接続された公開されたアクセスポイント装置20q、または、(2)クロスリンクサーバ40との間でパケット転送サービスを結んだアクセスポイント装置20rに接続する。
そして、送信側端末10は、本来の送信先である受信側端末103宛てのパケット(内包パケット)を、クロスリンクサーバ40宛てのパケットに包んで(カプセル化パケット)、アクセスポイント装置20q、20rへ送信する。アクセスポイント装置20q、20r、プロバイダサーバ30q、30rは、クロスリンクサーバ40との間でパケット転送サービスを結んでいるため、クロスリンクサーバ40宛てのパケットを通過させる。すなわち、送信側端末10が送信したパケット(カプセル化パケット)は、アクセスポイント装置20q、20r、プロバイダサーバ30q、30rを通った後、WAN102を介して、クロスリンクサーバ40に到達する。その後、クロスリンクサーバ40は、受信したカプセル化パケットから内包パケットを取り出し、本来の送信先である受信側端末103へ宛ててパケット(内包パケット)をWAN102に送信する。
よって、送信側端末10のユーザは、1つの接続設定で、どこのアクセスポイントでも同じように使うことができる。
また、クロスリンクサーバ40では、パケットをWAN102へ送信する過程で、パケット通過量をカウントして、ネットワーク利用者/インフラ提供者双方に対する費用請求/保障(キャッシュバック)を行う。
よって、プロバイダおよびアクセスポイントは、パケット転送サービスを他のプロバイダと結ぶことにより、適切な保障を得ることが可能となる。それゆえ、プロバイダおよびアクセスポイントには公開するメリットがあるため、タダ乗りを防止するために接続時にパスワードを要求するなどして契約していないユーザを排除するのではなく、他のプロバイダの利用者による利用を認めるように公開することを促す結果となる。したがって、どこでも接続できるユビキタスな通信環境の実現を促進することが可能となる。
このように、上記通信システム101によれば、ネットワークユーザにとっては、1つの接続形式でユビキタスなネットワークを利用できる。また、プロバイダにとっては、通過するパケットを監視することで、無線LANのタダ乗りを防止できる。また、アクセスポイント等のインフラ所有者にとっては、インフラの公開によりキャッシュバックを受けることが可能となる。
以下、通信システム101の構成の詳細を、(1)プロバイダサーバ30がクロスリンクサーバ40とパケット転送サービスを契約する場合、および、(2)アクセスポイント装置20がクロスリンクサーバ40とパケット転送サービスを契約する場合、について説明する。なお、図4は、通信システム101で用いる通信パケットのデータ構造の一例を示す説明図である。
(1)プロバイダサーバ30がクロスリンクサーバ40とパケット転送サービスを契約する場合
図1を参照しながら、クロスリンクサーバ40がプロバイダサーバ30と契約している場合の通信システム101の構成を説明する。なお、この構成では、通信システム101A、アクセスポイント装置20A、プロバイダサーバ30Aとして表記する。
送信側端末10は、WAN102に接続された受信側端末103宛ての内包パケットp1を含むカプセル化パケットp3をプロバイダサーバ30Aへ送信する。そのために、送信側端末10は、送受信部11、データ作成部12、パケット生成部13、カプセル化部14を少なくとも備えて構成されている。
データ作成部12は、メーラーやブラウザ等のアプリケーションでありWAN102に接続された受信側端末103に送信するデータf2を作成する。
パケット生成部13は、受信側端末103へ送信するデータf2を含む内包パケットp1を生成する。ここで、内包パケットp1およびカプセル化パケットp3のフォーマットは、WAN102で伝送可能なものであれば任意に選択できる。本実施の形態では、WAN102がインターネットである場合を想定して、TCP/IPパケットとして説明する。
図4に示すように、内包パケットp1は、データf2をTCP/IPボディとして、それにTCP/IPヘッダf1を付した形式である。特に、パケット生成部13では、TCP/IPヘッダf1に、送信元を示す送信側端末10のIPアドレスおよび送信先を示す受信側端末103のIPアドレスが記載されている。なお、内包パケットp1は、接続に関する補助情報等をさらに含んでいてもよい。
カプセル化部14は、パケット生成部13が生成した内包パケットp1をカプセル化してカプセル化パケットp3を生成する。具体的には、内包パケットp1であるTCP/IPパケットを、TCP/IPフォーマットに従ってカプセル化する。
図4に示すように、カプセル化パケットp3のデータf8(p2)は、内包パケットp1(f6)に加えて、パケットIDf3、端末情報f4、アクセスポイント情報(中継装置情報)f5を含んでいる。なお、カプセル化パケットp3は、接続に関する補助情報等をさらに含んでいてもよい。
パケットIDf3は、内包パケットp1を特定可能な識別情報である。なお、パケットIDf3は、パケットのタイプをも示すものであるため、パケットIDf3に基づいて、プロバイダ3およびクロスリンクサーバ40がカプセル化パケットp3を展開する必要があるか否かを判定できる。
端末情報f4は、カプセル化パケットp3の送信元である送信側端末10を、クロスリンクサーバ40が特定するための情報である。端末情報f4としては、送信側端末10を個別に識別可能なものであれば任意に選択できる(例えばMACアドレス)。ただし、送信側端末10のユーザがクロスリンクサーバ40とパケット転送サービスの契約を結んでいる場合、ユーザを特定可能なユーザIDを端末情報f4として利用してもよいし、ユーザIDを端末情報f4に付加してカプセル化してもよい。後述するように、端末情報f4によって送信側端末10を特定できれば装置ごとの課金が可能であるし、ユーザIDによって送信側端末10のユーザを特定できればユーザごとの課金が可能である。
アクセスポイント情報f5は、送信側端末10からプロバイダサーバ30Aまでの通信経路上に配設され、カプセル化パケットp3を中継する装置を、クロスリンクサーバ40が特定するための情報である。具体的には、アクセスポイント情報f5としては、プロバイダサーバ30Aに接続されているアクセスポイント装置20Aを特定可能な情報である。
カプセル化部14は、送信側端末10がアクセスポイント装置20Aとの接続確立時に、アクセスポイント装置20AからそのMACアドレスを取得し、これをアクセスポイント情報f5として利用する。ただし、アクセスポイント装置20Aのユーザがクロスリンクサーバ40とパケット転送サービスの契約を結んでいる場合、その契約番号等をアクセスポイント情報f5として利用してもよい。なお、アクセスポイント情報f5に基づいてアクセスポイント装置20Aの公開に対する補償(キャッシュバック)が可能であるが、定額制のキャッシュバックの場合にはアクセスポイント情報f5を省略できる。また、アクセスポイント装置20Aにおいて、端末情報f4に基づき通過させるカプセル化パケットp3をフィルタリングする構成については、(2)で説明する。
このように、カプセル化部14は、内包パケットp1を、パケットIDf3、端末情報f4、アクセスポイント情報f5と共にカプセル化する。なお、通信経路上での盗聴の危険性に鑑み、端末情報f4、アクセスポイント情報f5、内包パケットp1は、カプセル化に先立って暗号化されることが望ましい。この暗号化は、プロバイダサーバ30Aまたはクロスリンクサーバ40において内包パケットp1が取り出される際に復号化される。
さらに、カプセル化部14は、上記のようなデータf8をTCP/IPボディとして、それにTCP/IPヘッダf7を付した形式である。特に、カプセル化部14では、TCP/IPヘッダf7に、送信元を示す送信側端末10のIPアドレスおよび送信先を示すクロスリンクサーバ40(あるいはプロバイダサーバ30A)のIPアドレスが記載されている。ここで、送信先とは、カプセル化パケットp3から内包パケットp1を取り出してWAN102へ送信する装置である。
送受信部11は、アクセスポイント装置20Aの送受信部21との間でデータの送受信を行う。なお、本実施の形態では、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers;米国電気電子学会)802.xプロトコルに従った無線LANによる接続であるものとする。送受信部11は、WAN102に接続された受信側端末103宛ての内包パケットp1を含むカプセル化パケットp3を、アクセスポイント装置20A経由でプロバイダサーバ30Aへ送信する。
アクセスポイント装置20Aは、プロバイダサーバ30Aに接続された無線LANの接続装置である。アクセスポイント装置20Aは、送信側端末10との通信を確立して、受信したカプセル化パケットp3をプロバイダサーバ30Aへ中継する。そのために、アクセスポイント装置20Aは、送受信部21を少なくとも備えて構成されている。
また、アクセスポイント装置20Aは、受信したパケットの送信元が送信側端末10であり、かつ、送信先がクロスリンクサーバ40である場合に、当該パケットを通過させるようにフィルタリングを行ってもよい。なお、この構成については(2)で詳しく説明する。もちろん、アクセスポイント装置20Aは、受信したパケットの送信先がプロバイダサーバ30Aである場合には、当該パケットを通過させる。
プロバイダサーバ30Aは、送信側端末10が送信したカプセル化パケットp3を受信し、該カプセル化パケットp3をWAN102を介してクロスリンクサーバ40へ送信する。そのために、プロバイダサーバ30Aは、送受信部31、パケット取出部32、カプセル化部33、契約管理部34、契約情報DB(データベース)35を少なくとも備えて構成されている。
送受信部31は、アクセスポイント装置20Aの送受信部21との間、および、WAN102との間でデータの送受信を行う。
契約情報DB35は、第1に、WAN102との接続サービスの契約を結んでいるユーザおよび/あるいは装置を特定可能な識別情報を保持している。この識別情報は、送信側端末10のIPアドレスであってもよいし、カプセル化パケットp3に含まれる送信元を示す情報に基づいて直接的/間接的に取得可能な他の情報であってもよい。第2に、契約情報DB35は、パケット転送サービスの契約を結んでいるクロスリンクサーバ40のIPアドレスを保持している。
パケット取出部32は、契約管理部34の制御に従い、受信したカプセル化パケットp3から内包パケットp1を取り出す。この際、端末情報f4、アクセスポイント情報f5、内包パケットp1が暗号化されていれば、復号化する。
契約管理部34は、受信したカプセル化パケットp3のTCP/IPヘッダf7から送信側端末10のIPアドレスを取得し、これに基づき契約情報DB35を参照して、WAN102との接続サービスの契約を結んでいるユーザおよび/あるいは装置からのカプセル化パケットp3であるか否かを判定する。そして、接続サービスの契約を結んでいるユーザおよび/あるいは装置からのカプセル化パケットp3であれば、パケット取出部32に対して内包パケットp1を取り出させ、その内包パケットp1をWAN102へ送信する。
なお、契約管理部34は、受信したカプセル化パケットp3のTCP/IPヘッダf7から送信先のIPアドレスを取得し、それが自装置(プロバイダサーバ30A)のものであれば、内包パケットp1を取り出し、WAN102へ送信するようにしてもよい。
また、契約管理部34は、受信したカプセル化パケットp3がWAN102との接続サービスの契約を結んでいるユーザおよび/あるいは装置からのものではない場合、TCP/IPヘッダf7から送信先のIPアドレスを取得し、これに基づき契約情報DB35を参照して、パケット転送サービスの契約を結んでいるクロスリンクサーバ40へのカプセル化パケットp3であるか否かを判定する。そして、パケット転送サービスの契約を結んでいるクロスリンクサーバ40へのカプセル化パケットp3であれば、パケット取出部32に対して内包パケットp1を取り出させる。その後、カプセル化部33に対して、内包パケットp1を再度カプセル化させ、得られたカプセル化パケットp4をWAN102へ送信する。
ここで、カプセル化部33は、パケット取出部32がカプセル化パケットp3を展開して得られた、パケットIDf3、端末情報f4、アクセスポイント情報f5、内包パケットp1(f6)に、プロバイダ情報(接続装置情報)f10を追加してTCP/IPフォーマットに従ってカプセル化する。その際、プロバイダ情報f10を含めて暗号化してもよい。TCP/IPヘッダf9には、送信元として送信側端末10のIPアドレスが、受信先としてクロスリンクサーバ40のIPアドレスがそれぞれ記載される。
プロバイダ情報f10は、カプセル化パケットp3を転送したプロバイダサーバ30Aを、クロスリンクサーバ40が特定するための情報である。プロバイダ情報f10としては、クロスリンクサーバ40との間で結んだパケット転送サービスの契約の契約ID(加盟プロバイダID)等が利用できる。ただし、プロバイダ情報f10に基づいてプロバイダサーバ30Aの公開に対する補償(キャッシュバック)が可能であるが、定額制のキャッシュバックの場合にはプロバイダ情報10を省略できる。
クロスリンクサーバ40は、プロバイダサーバ30Aからカプセル化パケットp4を受信し、該カプセル化パケットp3から内包パケットp1を取り出して、該内包パケットp1をWAN102を介して受信側端末103へ送信する。そのために、クロスリンクサーバ40は、送受信部41、パケット取出部42、パケットカウント部43、契約管理部44、契約情報DB45A、課金清算部46、を少なくとも備えて構成されている。
送受信部41は、WAN102との間でデータの送受信を行う。
契約情報DB45Aは、後述するように、「接続契約者テーブル」(図8(a))、「アクセスポイント公開契約者テーブル」(図8(b))、「プロバイダ公開契約者テーブル」(図8(c))よりなる。
パケット取出部42は、契約管理部44の制御に従い、受信したカプセル化パケットp4から内包パケットp1を取り出す。この際、プロバイダ情報f10、端末情報f4、アクセスポイント情報f5、内包パケットp1が暗号化されていれば、復号化する。
契約管理部44は、受信したカプセル化パケットp43に含まれる端末情報f4に基づき契約情報DB45Aの「接続契約者テーブル」を参照して、WAN102との接続サービスの契約を結んでいるユーザおよび/あるいは装置からのカプセル化パケットp4であるか否かを判定する。そして、接続サービスの契約を結んでいるユーザおよび/あるいは装置からのカプセル化パケットp4であれば、パケット取出部42に対して内包パケットp1を取り出させ、その内包パケットp1をWAN102へ送信する。
パケットカウント部43は、内包パケットp1を取り出してWAN102へ送信するごとに、該カプセル化パケットp4に含まれる端末情報f4、アクセスポイント情報f5、プロバイダ情報f10に対応する「接続契約者テーブル」(図8(a))、「アクセスポイント公開契約者テーブル」(図8(b))、「プロバイダ公開契約者テーブル」(図8(c))の各欄のパケット数をカウントアップして更新する。
課金清算部46は、契約情報DB45Aの「接続契約者テーブル」(図8(a))、「アクセスポイント公開契約者テーブル」(図8(b))、「プロバイダ公開契約者テーブル」(図8(c))に基づいて、送信側端末10のユーザへの課金、アクセスポイント装置20Aおよびプロバイダサーバ30Aへの補償(キャッシュバック)の金額を計算する。
図8(a)に示すように、「接続契約者テーブル」には、「端末側ユーザID」に対応付けて、「個人管理(自宅)からの接続パケット数(A1)」、「プロバイダ内アクセスポイント経由の利用パケット数(A2)」、「契約公開されたアクセスポイント経由しての利用パケット数(A3)」が保持されている。
「接続契約者テーブル」は、クロスリンクサーバ40がWAN102への接続サービスの契約を結んでいるユーザが送信側端末10から送信したパケット数を管理する。「端末側ユーザID」は、ユーザの識別情報であり、端末情報f4から直接的あるいは間接的に取得できる。「個人管理(自宅)からの接続パケット数(A1)」は、自宅のアクセスポイント装置20を経由して送信されたパケット数である。「プロバイダ内アクセスポイント経由の利用パケット数(A2)」は、クロスリンクサーバ40に接続されたアクセスポイント装置20(図3では20p)を経由して送信されたパケット数である。「契約公開されたアクセスポイント経由しての利用パケット数(A3)」は、クロスリンクサーバ40がパケット転送サービスの契約を結んでいるプロバイダサーバ30に接続されたアクセスポイント装置20(図3では20q,20r)を経由して送信されたパケット数である。受信したカプセル化パケットp4が「個人管理(自宅)からの接続パケット数(A1)」、「プロバイダ内アクセスポイント経由の利用パケット数(A2)」、「契約公開されたアクセスポイント経由しての利用パケット数(A3)」のいずれかに該当するかは、該カプセル化パケットp4に含まれるアクセスポイント情報f5に基づいて決定できる。
図8(b)に示すように、「アクセスポイント公開契約者テーブル」には、「契約アクセスポイントID」に対応付けて、「所有者使用パケット数(B1)」、「公開したアクセスポイントを経由のパケット総数(B2)」、「同一プロバイダ間パケット数(B3)」が保持されている。
「アクセスポイント公開契約者テーブル」は、クロスリンクサーバ40がパケット転送サービスの契約を結んでいるアクセスポイント装置20を経由したパケット数を管理する。「契約アクセスポイントID」は、アクセスポイント装置20の識別情報であり、アクセスポイント情報f5から直接的あるいは間接的に取得できる。「所有者使用パケット数(B1)」は、アクセスポイント装置20の所有者が送信したパケット数である。「公開したアクセスポイントを経由のパケット総数(B2)」は、アクセスポイント装置20の所有者以外のユーザが送信したパケット数である。「同一プロバイダ間パケット数(B3)」は、プロバイダ自体がパケット転送サービスに加盟している場合で、かつ、自社(プロバイダ)契約のユーザの自社ネットワークに限定されるアクセスにおいて発信されたパケット数を示す。
ここで、「同一プロバイダ間パケット数(B3)」は、個々のプロバイダのクロスリンクでの接続において果す役割によって、数値として意味がある場合とない場合とがあり得る。具体的には、プロバイダ自体がパケット転送を行う場合、自社ネットワーク内部のパッケットは、この「同一プロバイダ間パケット数(B3)」分のパケットを無償として取り扱うことが可能になる。また、プロバイダ自体がパケット転送を行わない場合、「同一プロバイダ間パケット数(B3)」は数値としてカウントすることは意味を持たない。ただし、このように「同一プロバイダ間パケット数(B3)」をカウントする仕組みを当初から持つことで、プロバイダにとてもパケット転送サービスに加盟することでの“ネットワークのユビキダス化”が実現できると共に、自社ネットワーク内の個々のアクセスポイントユーザの個別解放によるプロバイダ自身の利益獲得チャンスの喪失を防ぐ効果が得られ、プロバイダ、アクセスポイント公開契約者、末端のアクセスポイントの接続契約者の3者にとって好ましい“タダ乗りの発生しない”ユビキタスな環境を実現する効果を生む。
受信したカプセル化パケットp4が「所有者使用パケット数(B1)」、「公開したアクセスポイントを経由のパケット総数(B2)」、「同一プロバイダ間パケット数(B3)」のいずれかに該当するかは、該カプセル化パケットp4に含まれる端末情報f4、アクセスポイント情報f5、プロバイダ情報f10に基づいて決定できる。
図8(c)に示すように、「プロバイダ公開契約者テーブル」には、「加盟プロバイダID」に対応付けて、「加盟プロバイダ内部使用パケット数(C1)」、「契約者の他プロバイダ内アクセスポイント使用パケット数(C2)」、「契約外ユーザ使用のパケット数(C3)」が保持されている。
「プロバイダ公開契約者テーブル」は、クロスリンクサーバ40がパケット転送サービスの契約を結んでいるプロバイダサーバ30が転送したパケット数を管理する。「加盟プロバイダID」は、プロバイダサーバ30の識別情報であり、プロバイダ情報f10から直接的あるいは間接的に取得できる。「加盟プロバイダ内部使用パケット数(C1)」は、パケット転送サービスに加盟しているプロバイダのネットワーク内で発生する、当該プロバイダの接続サービス加入者が、当該プロバイダのネットワーク内のIPアドレスのコンピュータに対して発信したパケット数である。「契約者の他プロバイダ内アクセスポイント使用パケット数(C2)」は、パケット転送サービスに加盟しているプロバイダのネットワーク内で発生する、当該プロバイダの接続サービス加入者が、当該プロバイダのネットワーク外のIPアドレスのコンピュータに対して発信したパケット数である。「契約外ユーザ使用のパケット数(C3)」は、パケット転送サービスに加盟しているプロバイダのネットワーク内で発生する、当該プロバイダの接続サービス加入者以外のパケット転送サービス契約者が発信したパケット数である。
受信したカプセル化パケットp4が「加盟プロバイダ内部使用パケット数(C1)」、「契約者の他プロバイダ内アクセスポイント使用パケット数(C2)」、「契約外ユーザ使用のパケット数(C3)」のいずれかに該当するかは、該カプセル化パケットp4に含まれる端末情報f4、プロバイダ情報f10に基づいて決定できる。なお、パケット転送サービスに加盟しているプロバイダの内部ユーザをプロバイダが取り出す方法をとった場合、テープルとしてC1の項目は必要なくなる。
なお、課金/補償の対象になるパッケット量は、上記説明では“発信したパッケット”と記載しているが、厳密には、“発信したパッケット数”と“発信したパケットに対して応答されたパケット数”の合計が1つの“発信したパッケット”としてカウントされ、課金の対象/補償の基準として扱われえる。
課金清算部46は、契約情報DB45Aの「接続契約者テーブル」(図8(a))、「アクセスポイント公開契約者テーブル」(図8(b))、「プロバイダ公開契約者テーブル」(図8(c))に基づいて、以下のように、送信側端末10のユーザへの課金、アクセスポイント装置20Aおよびプロバイダサーバ30Aへの補償(キャッシュバック)の金額を計算する。
・プロバイダサーバ30に対する請求額
C2×〔課金率〕−C3×〔返金率〕 あるいは 定額
・送信側端末10のユーザへの課金額
A1×〔通常の課金率〕+A2×〔モバイルの課金率〕
・アクセスポイント装置20への返金額
プロバイダサーバ30がパケット転送サービスに契約している場合
(B2−B3)×〔返金率〕
プロバイダサーバ30がパケット転送サービスに契約していない場合
B2×〔返金率〕
なお、通信システム101における課金清算方法には、次の4つの方式が可能である。
(a)量課制/使用率キャッシュバック方式(図10)
送信側端末10のユーザに対して、使用料に応じて課金する。一方、アクセスポイント装置20の所有者に対して、外部利用者のパケット使用量に応じてキャッシュバックする。
(b)量課制/定額キャッシュバック方式(図11)
送信側端末10のユーザに対して、使用料に応じて課金する。一方、アクセスポイント装置20の所有者に対して、アクセスポイントを公開していることに対する定額キャッシュバックを行う。
(c)定額使用料制/使用率キャッシュバック方式(図12)
送信側端末10のユーザに対して、定額課金する。一方、アクセスポイント装置20の所有者に対して、外部利用者のパケット使用量に応じてキャッシュバックする。
(d)定額使用料制/定額キャッシュバック方式(図13)
送信側端末10のユーザに対して、定額課金する。一方、アクセスポイント装置20の所有者に対して、アクセスポイントを公開していることに対する定額キャッシュバックを行う。
最後に、受信側端末103は、WAN102から内包パケットp1を受信する装置である。そのために、受信側端末103は、WAN102との間でデータの送受信を行う送受信部1031を少なくとも備えて構成されている。
以上の構成により、通信システム101Aは、次のように動作する。
フェイズ1:送信側端末10とアクセスポイント装置20Aとの間で、IEEE802.11xに基づくTCP/IPプロトコルによる接続が確立される。このとき、送信側端末10は、アクセスポイント装置20Aからアクセスポイント情報を取得する。
フェイズ2:パケット生成部13が生成したTCP/IPパケット(内包パケット)を、カプセル化部14がTCP/IPフォーマットに従ってカプセル化する(カプセル化パケット)。
フェイズ3:プロバイダサーバ30Aは、アクセスポイント装置20Aから受信したカプセル化パケットから端末情報を取り出す。また、カプセル化パケットのヘッダから、自装置宛のパケットか否かを判別する。そして、自装置宛のパケットである場合、端末情報に基づいて、WAN102への接続サービスの契約がある送信側端末10からのパケットであるか否かを判別する。WAN102への接続サービスの契約がある送信側端末10からのパケット(自社プロバイダ契約者のパケット)であれば、カプセルを解いて、送信側端末10が指定した受信側端末103へ宛ててWAN102へ送信する。
一方、自装置宛のパケットでない場合、端末情報に基づいて、パケット転送サービスの契約を結んでいるプロバイダサーバ30Aへのパケットであるか否かを判別する。パケット転送サービスの契約を結んでいるプロバイダサーバ30Aへのパケットであれば、カプセルを解かずにそのまま、カプセル化パケットのヘッダに指定されているクロスリンクサーバ40へ宛ててWAN102へ送信する。なお、使用率に基づくキャッシュバックを行う場合には、プロバイダサーバ30AのIDをヘッダについたパケット化を行う。
フェイズ4:クロスリンクサーバ40は、プロバイダサーバ30Aから受信したカプセル化パケットから端末情報を取り出す。また、カプセル化パケットのヘッダから、自装置宛のパケットか否かを判別する。そして、自装置宛のパケットである場合、端末情報に基づいて、WAN102への接続サービスの契約がある送信側端末10からのパケットであるか否かを判別する。WAN102への接続サービスの契約がある送信側端末10からのパケット(自社プロバイダ契約者のパケット)であれば、カプセルを解いて、送信側端末10が指定した受信側端末103へ宛ててWAN102へ送信する。
また、クロスリンクサーバ40は、カプセル化パケットからパケットを取り出す際に、パケット数を、送信側端末10ごと、アクセスポイント装置20Aごと、プロバイダサーバ30ごとにカウントする。そして、そのカウント数に応じて、転送したパケット数に応じた課金額およびキャッシュバック額を計算する。なお、課金/補償を定額制で行ってもよい。
図5は、通信システム101Aの詳細な動作を示すフローチャートである。なお、図中、カプセル化されたパケットの流れを実線で、非カプセル化されたパケットの流れを破線で示してある。
まず、送信側端末10が、アクセスポイント装置20Aへの接続(802.x)処理を行う(S11)。一方、アクセスポイント装置20Aは、送信側端末10からの802.xプロトコルでのリクエストを受け付け(S21)、802.xプロトコルでのアクセスを許可する(S22)。なお、アクセスを拒否した場合、次回の通信発生まで待機する(S23)。
送信側端末10は、アクセスポイント装置20Aとの接続を確立した後(S12でYES)、アクセスポイント装置20Aからアクセスポイント情報(例えばMAC(media access control)アドレス)を取得する(S13)。このとき、アクセスポイント装置20Aは、送信側端末10からのアクセスポイント情報のリクエストに対して、アクセスポイント情報を含むパケットを返信する(S24)。また、この後、アクセスポイント装置20Aは、送信側端末10からのパケットをプロバイダサーバ30Aへ中継する。
送信側端末10は、アクセスポイント装置20Aからアクセスポイント情報を取得した後(S14でYES)、端末情報やアクセスポイント情報等をアクセスキーとして本来の通信パケットに付加した上でカプセル化を行い、プロバイダサーバ30Aへ送信する(S15)。
このとき、プロバイダサーバ30Aは、カプセル化されたパケットからアクセスキーを取り出し(S31)、アクセスキーが有効であるか否かを判定する(S32)。アクセスキーが有効である場合(S32でYES)、送信側端末10のユーザが自社とWAN102への接続サービスの契約を結んでいるかを判別する(S33)。
送信側端末10のユーザが自社とWAN102への接続サービスの契約を結んでいる場合(S33でYES)、カプセル化されたパケットから本来のTCP/IPパケットを取り出し、WAN102へ送信する(S34)。
一方、送信側端末10のユーザが自社とWAN102への接続サービスの契約を結んでいない場合(S33でNO)、カプセル化されたままでパケットをクロスリンクサーバ40へ送信する(S34)。
クロスリンクサーバ40では、プロバイダサーバ30Aから受信したカプセル化されたパケットからプロバイダ情報と端末情報とを取り出し(S41)、プロバイダサーバ30Aおよび送信側端末10がパケット転送サービスの契約を結んでいる正規の接続であるかを判別する。正規の接続であれば(S42でYES)、課金のためにパケットのカウント処理を行い、端末情報、プロバイダ情報に基づいてデータを蓄積する(S43)。また、クロスリンクサーバ40は、カプセル化されたパケットの中から本来のTCP/IPパケットを取り出し、WAN102へ送信する。
なお、送信側端末10では、プロバイダサーバ30A、クロスリンクサーバ40においてパケットが送信されなかった場合(S35、S37、S45でNO)には、その旨の通知を受け(S16でNO)、接続不良処理を行う(S17)。
(2)アクセスポイント装置20がクロスリンクサーバ40とパケット転送サービスを契約する場合
図6を参照しながら、アクセスポイント装置20がプロバイダサーバ30と契約している場合の通信システム101の構成を説明する。なお、この構成では、通信システム101B、アクセスポイント装置20B、プロバイダサーバ30Bとして表記する。
通信システム101Bは、通信システム101A(図1)と比較して、カプセル化パケットp3を通過させるか否かの判定をアクセスポイント装置20Bで行い、プロバイダサーバ30Bは受信したパケットをTCP/IPヘッダd7の記載に従って、そのまま送信先に宛ててWAN102に送信する点が異なるのみである。よって、以下では、通信システム101Aと相違する点のみを説明する。
送信側端末10は、WAN102に接続された受信側端末103宛ての内包パケットp1を含むカプセル化パケットp3をプロバイダサーバ30Bへ送信する。そのために、送信側端末10は、送受信部11、データ作成部12、パケット生成部13、カプセル化部14を少なくとも備えて構成されている。
特に、カプセル化部14では、TCP/IPヘッダf7に、送信元を示す送信側端末10のIPアドレスおよび送信先を示すクロスリンクサーバ40のIPアドレスが記載されている。ここで、送信先とは、カプセル化パケットp3から内包パケットp1を取り出してWAN102へ送信する装置である。
アクセスポイント装置20Bは、プロバイダサーバ30Bに接続された無線LANの接続装置である。アクセスポイント装置20Bは、送信側端末10との通信を確立して、受信したカプセル化パケットp3をプロバイダサーバ30Bへ中継する。そのために、アクセスポイント装置20Bは、送受信部21、契約管理部22、契約情報DB23を少なくとも備えて構成されている。
契約情報DB23は、パケット転送サービスの契約を結んでいるクロスリンクサーバ40のIPアドレスを保持している。
契約管理部22は、TCP/IPヘッダf7から送信先のIPアドレスを取得し、これに基づき契約情報DB23を参照して、パケット転送サービスの契約を結んでいるクロスリンクサーバ40へのカプセル化パケットp3であるか否かを判定する。そして、パケット転送サービスの契約を結んでいるクロスリンクサーバ40へのカプセル化パケットp3であれば、そのままカプセル化パケットp3をWAN102へ送信する。
プロバイダサーバ30Bは、送信側端末10が送信したカプセル化パケットp3を受信し、該カプセル化パケットp3をWAN102を介してクロスリンクサーバ40へ送信する。そのために、プロバイダサーバ30Bは、送受信部31を少なくとも備えて構成されている。送受信部31は、受信したカプセル化パケットp3をTCP/IPヘッダd7の記載に従って、そのまま送信先に宛ててWAN102に送信する。
クロスリンクサーバ40は、プロバイダサーバ30Bからカプセル化パケットp3を受信し、該カプセル化パケットp3から内包パケットp1を取り出して、該内包パケットp1をWAN102を介して受信側端末103へ送信する。そのために、クロスリンクサーバ40は、送受信部41、パケット取出部42、パケットカウント部43、契約管理部44、契約情報DB45B、課金清算部46、を少なくとも備えて構成されている。
契約情報DB45Bは、後述するように、「接続契約者テーブル」(図9(a))、「アクセスポイント公開契約者テーブル」(図9(b))よりなる。
契約管理部44は、受信したカプセル化パケットp3に含まれる端末情報f4に基づき契約情報DB45Bの「接続契約者テーブル」を参照して、WAN102との接続サービスの契約を結んでいるユーザおよび/あるいは装置からのカプセル化パケットp3であるか否かを判定する。そして、接続サービスの契約を結んでいるユーザおよび/あるいは装置からのカプセル化パケットp3であれば、パケット取出部42に対して内包パケットp1を取り出させ、その内包パケットp1をWAN102へ送信する。
パケットカウント部43は、内包パケットp1を取り出してWAN102へ送信するごとに、該カプセル化パケットp3に含まれる端末情報f4、アクセスポイント情報f5に対応する「接続契約者テーブル」(図9(a))、「アクセスポイント公開契約者テーブル」(図9(b))の各欄のパケット数をカウントアップして更新する。
課金清算部46は、契約情報DB45Bの「接続契約者テーブル」(図9(a))、「アクセスポイント公開契約者テーブル」(図9(b))に基づいて、送信側端末10のユーザへの課金、アクセスポイント装置20Bへの補償(キャッシュバック)の金額を計算する。
図9(a)に示すように、「接続契約者テーブル」には、「端末側ユーザID」に対応付けて、「個人管理(自宅)からの接続パケット数(A1)」、「プロバイダ内アクセスポイント経由の利用パケット数(A2)」が保持されている。なお、図8(a)に示した「接続契約者テーブル」から「契約公開されたアクセスポイント経由しての利用パケット数(A3)」が省かれているのみであるため、詳細な説明は省略する。
図9(b)に示すように、「アクセスポイント公開契約者テーブル」には、「契約アクセスポイントID」に対応付けて、「所有者使用パケット数(B1)」、「公開したアクセスポイントを経由のパケット総数(B2)」が保持されている。なお、図8(b)に示した「アクセスポイント公開契約者テーブル」から「同一プロバイダ間パケット数(B3)」が省かれているのみであるため、詳細な説明は省略する。
課金清算部46は、契約情報DB45Bの「接続契約者テーブル」(図9(a))、「アクセスポイント公開契約者テーブル」(図9(b))に基づいて、以下のように、送信側端末10のユーザへの課金、アクセスポイント装置20Bへの補償(キャッシュバック)の金額を計算する。
・送信側端末10のユーザへの課金額
A1×〔通常の課金率〕+A2×〔モバイルの課金率〕
・アクセスポイント装置20への返金額
(B2−B1)×〔返金率〕
このように、通信システム101Bでは、プロバイダサーバ30を考慮しないため、通信システム101Aよりもシンプルに計算することが可能である。
以上の構成により、通信システム101Bは、次のように動作する。
フェイズ1:送信側端末10とアクセスポイント装置20Bとの間で、IEEE802.11xに基づくTCP/IPプロトコルによる接続が確立される。このとき、送信側端末10は、アクセスポイント装置20Bからアクセスポイント情報を取得する。
フェイズ2:送信側端末10のパケット生成部13が生成したTCP/IPパケット(内包パケット)を、カプセル化部14がTCP/IPフォーマットに従ってカプセル化する(カプセル化パケット)。
フェイズ3:アクセスポイント装置20Bは、送信側端末10から受信したカプセル化パケットから端末情報を取り出す。そして、アクセスポイント装置20Bは、カプセル化パケットのヘッダで指定されている宛て先がアクセスポイント装置20Bが直接接続されているプロバイダサーバ30Bである場合、すなわち、通常の場合、カプセル化パケットをプロバイダサーバ30Bへ転送する。また、パケット転送サービスの契約を結んでいるクロスリンクサーバ40宛のパケットである場合も、カプセル化パケットをプロバイダサーバ30Bへ転送する。それ以外のパケットは、転送しない。
プロバイダサーバ30Bは、アクセスポイント装置20Bから受信したカプセル化パケットをそのまま、カプセル化パケットのヘッダに指定されているクロスリンクサーバ40へ宛ててWAN102へ送信する。すなわち、プロバイダサーバ30Bは、カプセル化されたパケットも通常のパケットと同様に転送する。
フェイズ4:クロスリンクサーバ40は、プロバイダサーバ30Bから受信したカプセル化パケットから端末情報およびアクセスポイント情報を取り出す。そして、カプセルを解いて、送信側端末10が指定した受信側端末103へ宛ててWAN102へ送信する。
また、クロスリンクサーバ40は、カプセル化パケットからパケットを取り出す際に、パケット数を、送信側端末10ごと、アクセスポイント装置20Bごと、にカウントする。そして、そのカウント数に応じて、転送したパケット数に応じた課金額およびキャッシュバック額を計算する。
図7は、通信システム101Bの詳細な動作を示すフローチャートである。なお、図中、カプセル化されたパケットの流れを実線で、非カプセル化されたパケットの流れを破線で示してある。
まず、送信側端末10が、アクセスポイント装置20Bへの接続(802.x)処理を行う(S11)。一方、アクセスポイント装置20Bは、送信側端末10からの802.xプロトコルでのリクエストを受け付け(S21)、802.xプロトコルでのアクセスを許可する(S22)。なお、アクセスを拒否した場合、次回の通信発生まで待機する(S23)。
送信側端末10は、アクセスポイント装置20Bとの接続を確立した後(S12でYES)、アクセスポイント装置20Bからアクセスポイント情報(例えばMAC(media access control)アドレス)を取得する(S13)。このとき、アクセスポイント装置20Bは、送信側端末10からのアクセスポイント情報のリクエストに対して、アクセスポイント情報を含むパケットを返信する(S24)。また、この後、アクセスポイント装置20Bは、送信側端末10からのパケットをプロバイダサーバ30Bへ中継する。
送信側端末10は、アクセスポイント装置20Bからアクセスポイント情報を取得した後(S14でYES)、端末情報やアクセスポイント情報等をアクセスキーとして本来の通信パケットに付加した上でカプセル化を行い、アクセスポイント装置20B、プロバイダサーバ30B経由でクロスリンクサーバ40へ送信する(S15)。なお、この後、プロバイダサーバ30Bは、アクセスポイント装置20Bから受信したパケットをクロスリンクサーバ40へ宛ててWAN102へ送信する(S51)。
このとき、クロスリンクサーバ40は、カプセル化されたパケットからアクセスキーを取り出し(S61)、アクセスキーが有効であるか否かを判定する(S62)。アクセスキーが有効である場合(S62でYES)、プロバイダサーバ30Bから受信したカプセル化されたパケットから端末情報を取り出し(S63)、送信側端末10のユーザが自社とWAN102への接続サービスの契約を結んでいるかを判別する(S64)。
送信側端末10のユーザが自社とWAN102への接続サービスの契約を結んでいる場合(S64でYES)、カプセル化されたパケットから本来のTCP/IPパケットを取り出し、WAN102へ送信する(S66)。このとき、課金のためにパケットのカウント処理を行い、端末情報に基づいてデータを蓄積する(S65)。
なお、送信側端末10では、クロスリンクサーバ40においてパケットが送信されなかった場合(S67でNO)、その旨の通知を受け(S16でNO)、接続不良処理を行う(S17)。
上述のように、本実施の形態に係る通信システム101によれば、ユーザの持つネットワーク接続機器とネットワークインフラのTCP/IP通信を確立した後、実際の通信パケットをカプセル化して通信する。実際にインターネットにつなぐために、インターネットに対して発せられ、かつ、インターネットから帰ってくるTCP/IPパケットが、カプセル化されているため、正しく設定がなされていないパケットはインターネットにつながらない。よって、通信にタダ乗りすることが難しい。
また、通信システム101を実現するためには、通信パケットの改良、具体的にはプロトコルレイヤ以下にカプセル化したパケットを流す仕組みをつけるだけでよい。よって、本来のTCP/IPプロトコルに対する大幅な情報増加はありえない。また、ネットワークの基本的な接続(ハードウェア的な接続)は、従来のTCP/IP接続モデルを使うことができる。それゆえ、既存インフラが利用できるため、接続のための新規投資が必要ない。
また、送信側端末10において、カプセル化する際、送信側端末10を特定する端末情報をカプセル化したパケットに乗せる。そのため、クロスリンクサーバ40において、送信側端末10を識別できる。また、送信側端末10において、接続する際にアクセスポイント装置20から当該アクセスポイント装置20を特定するアクセスポイント情報を取得して、それをカプセル化したパケットに乗せる。そのため、クロスリンクサーバ40において、アクセスポイント装置20を識別できる。
さらに、プロバイダサーバ30において、カプセル化する際、プロバイダサーバ30を特定するプロバイダ情報をカプセル化したパケットに乗せる。そのため、クロスリンクサーバ40において、プロバイダサーバ30を識別できる。
よって、送信側端末10ごと、アクセスポイント装置20ごと、プロバイダサーバ30ごとに、パケット数をカウントできる。それゆえ、パケット転送サービスの利用実態を正確に記録できる。したがって、パケット転送サービスを利用してWAN102に接続したユーザに対して適切に課金するとともに、パケット転送サービスに加盟してパケットを転送したアクセスポイント装置20およびプロバイダサーバ30に対して適切に補償を与えることが可能となる。
以上より、本発明に係る通信システムによれば、複数のプロバイダとの個別契約を省略し、1社のプロバイダ契約でWANと接続することが可能となる。無線アクセスポイントの公開に対して適正に補償を与えることができ、しかもタダ乗りを防止できるため、無線アクセスポイントの所有者にインフラの公開を促すことができる。また、個人ユーザのインフラも、個人が直接的にクロスリンクサーバ40と契約することで、ネットワークに別のプロバイダ接続契約状態であっても、公開できる。よって、無線LANでのアクセスエリアが拡大する。それゆえ、ユビキタスなネットワーク接続環境が実現できる。
なお、上記の説明では、送信側端末10からWAN102への接続サービスの契約を結んでいるプロバイダサーバ30へ直接送信する場合も、カプセル化していたが、この接続形態は従来と同じであるため、カプセル化せずに送信してもよい。すなわち、カプセル化されていないパケットは、プロバイダサーバ30までは到達可能である。プロバイダサーバ30からWAN102に対しての接続は、プロバイダサーバ30の設定次第である。なお、上述したように、カプセル化されたパケットは、クロスリンクサーバ40まで行き、本来のパケットに戻されてWAN102へ送信される。
例えば、送信側端末10は、接続確立時に取得したアクセスポイント装置20のMACアドレスに応じて、通信経路を判別し、カプセル化するか否かを次のように切り替えてもよい。(1)通常利用する接続サービスの契約を結んだプロバイダサーバ30に接続されたアクセスポイント装置20を利用する場合(デフォルト)には、接続確立時に、取得したアクセスポイント情報に従って、カプセル化せずに送信する。(2)これに対して、接続サービスの契約を結んでいないプロバイダサーバ30に接続されたアクセスポイント装置20を利用する場合には、カプセル化して送信する。
ただし、アクセスポイント装置20を頻繁に切り換える場合には、常にカプセル化する処理に統一した方が、送信側端末10の構成を簡単にできる。
また、クロスリンクサーバ40では、カプセル化パケットからパケットを取り出す際、課金/キャッシュバックに必要な、端末情報、アクセスポイント情報を取得して管理する。
ここで、送信側端末10の使用者がアクセスポイント装置20の提供者のプロバイダと同じ場合、この両者が契約しているプロバイダ自体のサービスとしてパケット転送によるクロスリンク型接続を提供し、個人ユーザのアクセスポイントを公開できる仕組みを有する場合、この両者が契約しているプロバイダ内部でカプセル化パケットを取り出す処理を行うことで、直接プロバイダのネットワークからWAN102に対しパケットを送信することが可能となる。その結果、この両者が契約しているプロバイダのネットワークからクロスリンクサーバへのパケットの発信が減少できる。
そして、このクロスリンクサーバへのパケットの発信の低減は、WAN102のトラフィックの増加を防ぐ効果と共に、以下のような、WAN、クロスリンクサーバ、プロバイダ、ユーザ相互にとって有益な効果をもたらす。すなわち、クロスリンクサーバ40におけるカウント処理(パケットカウント部43)の負荷が軽減される。また、パケット転送サービスに加盟するプロバイダにとっても課金の基本であるクロスリンクサーバへのパケット数を削減できる。また、送信側端末10の使用者およびアクセスポイント装置20の提供者双方にとっても、発信したパケットに対する応答速度の向上とクロスリンクサーバでのパッケット数の計量から外れることでの課金処理の省略が可能となる。
また、会社などの場合、アクセスポイント装置20が、外部のプロバイダサーバ30を介さずに直接WAN102に接続されているネットワーク形態もある。この場合、本実施の形態にかかるパケット転送サービスは、クロスリンクサーバ40がアクセスポイント装置20と契約することで実現できる。すなわち、図6のプロバイダサーバ30B、図7のプロバイダサーバ30Bのステップを省略したものと理解できる。
最後に、通信システム101を構成する送信側端末10、アクセスポイント装置20、プロバイダサーバ30、クロスリンクサーバ40は、汎用のコンピュータ(パーソナルコンピュータ等を含む)をベースに構成できる。すなわち、上記の各装置は、それぞれ機能を実現するプログラム(送信側端末10の制御プログラム、アクセスポイント装置20の制御プログラム、プロバイダサーバ30の制御プログラム、クロスリンクサーバ40の制御プログラム)の命令を実行するCPU(central processing unit)、ブートロジックを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データベースを格納する不揮発性メモリやハードディスク等の記憶装置(記録媒体)、キーやボタンボードやマウス等の入力機器、モニタ、スピーカー等の出力機器、外部のネットワークに接続するネットワーク接続機器が、内部バスによって接続されて構成されている。
そして、通信システム101を構成する各装置の本発明に係る機能は、それを実現する制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を各装置に供給し、CPUが記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによって実現可能である。具体的には、図1および図6に示した各機能ブロックは、当該装置のメモリ(図示せず)に格納された所定のプログラムを、CPUなどが実行することにより実現される。なお、上記の各機能ブロックは、その一部あるいは全部をハードウェアロジックによって構成してもよい。
上記プログラムコードを供給するための記録媒体は、システムあるいは装置と分離可能に構成することができる。また、上記記録媒体は、プログラムコードを供給可能であるように固定的に担持する媒体であってもよい。そして、上記記録媒体は、記録したプログラムコードをコンピュータが直接読み取ることができるようにシステムあるいは装置に装着されるものであっても、外部記憶装置としてシステムあるいは装置に接続されたプログラム読み取り装置を介して読み取ることができるように装着されるものであってもよい。
例えば、上記記録媒体としては、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
また、上記プログラムコードは、コンピュータが記録媒体から読み出して直接実行できるように記録されていてもよいし、記録媒体から主記憶のプログラム記憶領域へ転送された後コンピュータが主記憶から読み出して実行できるように記録されていてもよい。
さらに、システムあるいは装置を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。そして、通信ネットワークとしては、特に限定されず、具体的には、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、具体的には、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された搬送波あるいはデータ信号列の形態でも実現され得る。
さらに、上述した機能は、上記記録媒体から読み出された上記プログラムコードが、コンピュータに装着された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行うことによっても実現できる。
本実施の形態は本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。