JP4134362B2 - 液晶配向剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶配向剤に関する。さらに詳しくは、ラビング処理を行わずに、直線偏光された放射線の照射によって液晶配向能を付与することが可能な液晶配向膜の形成に用いられる、液晶配向剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、正の誘電異方性を有するネマチック型液晶を、液晶配向膜を有する透明電極付き基板でサンドイッチ構造にし、液晶分子の長軸が基板間で90度以上連続的に捻れるようにしてなるTN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型液晶セルを有する液晶表示素子が知られている。
【0003】
前記、液晶セルにおける液晶を配向させる手段には、基板表面に有機膜を形成し、次いでその有機膜表面をレーヨンなどの布材で一方向にこすることにより液晶配向能を付与する(ラビング処理を施す)という方法、基板表面に酸化珪素を斜方蒸着する方法、ラングミュア・ブロジェット法(LB法)を用いて長鎖アルキル基を有する単分子膜を形成する方法などがあるが、処理する基板のサイズに制約があったり、液晶の配向均一性が不十分なため、工業的には処理時間や処理コストの面で有利なラビング処理による液晶の配向が一般的である。
しかし、液晶の配向をラビング処理によって行うと、その工程中にほこりが発生したり、静電気が発生しやすいという問題点がある。静電気が発生すると、配向膜表面にほこりが付着し、表示不良が発生する原因となり、また、TFT(thin film transistor)素子を有する基板の場合、発生した静電気によってTFT素子の回路破壊が起こり、歩留まり低下の原因ともなる。さらに、今後ますます高精彩化される液晶表示素子においては、画素の高密度化にともなう基板表面の凹凸のため、ラビング処理の均一性が問題になる。
液晶セルにおける液晶を配向させる別の手段は、基板表面に形成したポリビニルシンナメート、ポリ(4’−メタクリロイロキシカルコン)などの有機膜に直線偏光された紫外線を照射することにより、液晶配向能を付与することである。この方法によれば、静電気やほこりを発生することなく、均一な液晶配向を実現できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この方法を用いると、短波長の紫外線照射により配向膜の光劣化が起こり、液晶セルの電気特性の低下を招くことがある。配向膜の光劣化を引き起こすことなく液晶配向能を付与するためには、光劣化の原因となる320nmより短波長の成分を含まない紫外線を照射することが好ましい。他方、320nmより長波長の成分のみからなる紫外線を用いた場合、得られた配向膜中での光反応が十分進行しないために、液晶配向能の安定性および耐熱性が十分でないという問題があった。
本発明の目的は、320nmより長波長の直線偏光された紫外線の照射により耐熱性に優れた液晶配向膜を形成する方法に用いられる液晶配向剤を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明における液晶配向剤は、(イ)テトラカルボン酸二無水物と(ロ)ジアミン化合物とを反応させて得られたポリアミック酸をイミド化させたポリイミドからなり、上記ジアミン化合物の少なくとも一部が2,3−ジアミノカルコン、2,4−ジアミノカルコン、3,4−ジアミノカルコン、3,5−ジアミノカルコン、4−(2,4−ジアミノフェノキシ)カルコン、4−(3,5−ジアミノフェノキシ)カルコンまたは下記式(IV)
【化5】
ここで、A 1 およびA 2 は2価の芳香族基を表わし、nは1〜10の整数を表わす
で表わされる化合物であることを特徴としそして直線偏光された紫外線により配向される液晶配向膜を形成するために用いられる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
液晶配向剤
本発明の液晶配向剤は、放射線に官能する構造を有するポリイミド重合体からなる。ここでいう”官能”とは、放射線の照射を受けると、光励起反応によってエネルギー準位が高まり、次いでエネルギーを放出して安定状態に戻ることを意味する。このような構造は、共役エノン構造(以下、「特定構造」ともいう)であり、上記式(IV)中にみられる。
【0011】
前記ポリイミドは、
(イ)テトラカルボン酸二無水物と、
(ロ)ジアミン化合物
とを反応させ、中間体のポリアミック酸を経て得られる。本発明において用いられるポリイミドは、(ロ)ジアミン成分に、上記特定構造を有する化合物が用いられる。テトラカルボン酸二無水物成分(イ)としては、特定構造を有するテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
【0012】
特定構造を有するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば2,2’−ビス(4−カルコニルオキシ)−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’−ビス(4−カルコニルオキシ)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(4−カルコニルオキシ)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(4−カルコニルオキシ)−2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6,6’−ビス(4−カルコニルオキシ)−2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、5,5’−ビス(4−カルコニルオキシ)−2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(4−カルコニルオキシ)−3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’−ビス(4−カルコニルオキシ)−4,4’,5,5’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(4−カルコニルオキシ)−4,4’,5,5’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(4−カルコニルオキシ)−2,2’,3,3’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、6,6’−ビス(4−カルコニルオキシ)−2,2’,3,3’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、5,5’−ビス(4−カルコニル)−2,2’,3,3’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、などが挙げられる。
特定構造を有するジアミン化合物は、2,3−ジアミノカルコン、2,4−ジアミノカルコン、3,4−ジアミノカルコン、3,5−ジアミノカルコン、4−(2,4−ジアミノフェノキシ)カルコン、4−(3,5−ジアミノフェノキシ)カルコンまたは下記式(IV)で表される化合物である。
【0013】
【化3】
【0014】
(式中、A1 およびA2 は2価の芳香族基を表し、nは1〜10の整数を表す。)
【0015】
これらのうち、上記式(IV)で表される化合物が好ましい。上記式(IV)中、CnH2n+1−で表されるアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、直鎖状のものがより好ましい。A1 およびA2 で表される2価の芳香族基としては、例えばフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、ビナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基;ピレン、クリセン、ナフタセンなどの多環芳香族化合物から水素原子2個を除いた有機基などが挙げられる。
上記式(II)で表される化合物の具体例としては、4−(3,5−ジアミノフェノキシ)−4’−イソプロピルカルコン、4−(3,5−ジアミノフェノキシ)−4’−ペンチルカルコン、4−(3,5−ジアミノフェノキシ)−4’−ペンチルカルコン、4−(3,5−ジアミノフェノキシ)−4’−オクチルカルコン、4−(2,4−ジアミノフェノキシ)−4’−ペンチルカルコン、4−(2,4−ジアミノフェノキシ)−4’−オクチルカルコン、4−(3,5−ジアミノベンゾイロキシ)−4’−ペンチルカルコン、4’(4−ペンチルフェニル)−4(3,5−ジアミノフェノキシ)カルコンが特に好ましい。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0016】
本発明において用いられるポリイミドには、本発明の効果を損なわない程度に他のテトラカルボン酸二無水物および/またはジアミン化合物を併用することができる。
【0017】
他のテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物などの脂肪族および脂環式テトラカルボン酸二無水物;
【0018】
ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。
【0019】
これらのうち、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0020】
他のジアミン化合物としては、例えばp−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4.4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニルなどの芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェンなどのヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;
【0021】
1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6.2.1.02,7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などの脂肪族および脂環式ジアミン;ジアミノヘキサメチルジシロキサンなどのジアミノオルガノシロキサンが挙げられる。
【0022】
これらのうち、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニルが好ましい。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0040】
溶剤
本発明の液晶配向剤は、前記の放射線に官能する構造を含有するポリイミド重合体の溶液から成る。この際用いられる溶剤としては、該重合体を溶解し得る有機溶剤であれば特に制限はない。例えば、ポリイミドを用いる場合には、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒を例示することができる。これらは、単独または2種以上の溶剤を組み合わせて使用できる。なお、前記溶剤には、用いられる重合体の貧溶媒を、重合体が析出しない範囲で併用することができる。
【0041】
その他の添加剤
本発明において用いられる液晶配向剤は、プレチルト角の安定化及び塗膜強度アップのために、種々の熱硬化性の架橋剤を含有することもできる。熱硬化架橋剤としては、多官能エポキシ含有化合物が有効であり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルジアミン系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂などが使用できる。市販品では、例えばエポライト400E、同3002(共栄社油脂化学工業(株)製)、エピコート828、同152、エポキシノボラック180S(油化シェルエポキシ(株)製)などを挙げることができる。
さらに、前述の多官能エポキシ含有化合物を使用する際、架橋反応を効率良く起こす目的で、1−ベンジル−2−メチルイミダゾールなどの塩基触媒を添加することができる。
【0042】
また、本発明の液晶配向剤は、基板との接着性を改善する目的で、官能性シラン含有化合物を含有することができる。官能性シラン含有化合物としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシイシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができ、さらに特開昭63ー291922号公報記載のテトラカルボン酸二無水物とアミノ基含有シラン化合物との反応物などを挙げることができる。
【0043】
液晶配向膜
本発明の液晶配向剤を用いて液晶配向膜を形成する方法としては、例えば次の方法が挙げられる。まず、透明導電膜が設けられた基板の透明導電膜側に、本発明の液晶配向剤をロールコーター法、スピンナー法、印刷法等により塗布し、40〜200℃の温度で加熱して塗膜を形成させる。塗膜の膜厚は、通常0.001〜1μm、好ましくは0.005〜0.5μmである。
前記基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラス等のガラス、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート等のプラスチックフィルム等からなる透明基板を用いることができる。
前記透明導電膜としては、SnO2 からなるNESA膜、In2 O3 −SnO2 からなるITO膜等を用いることができ、これらの透明導電膜のパターニングには、フォト・エッチング法、予めマスクを用いる方法等が用いられる。
液晶配向剤の塗布に際しては、基板及び透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板及び透明導電膜上に、予め官能性シラン含有化合物、チタネート等を塗布することもできる。
【0044】
次いで、前記塗膜に直線偏光した放射線を照射し、場合によってはさらに150〜250℃の温度で加熱処理を行い、液晶配向能を付与する。放射線としては、150nm〜800nmの波長を有する紫外線および可視光線を用いることができるが、320nm〜450nmの波長を有する紫外線が好ましい。
前記光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザー等が使用できる。
前記の好ましい波長領域の紫外線は、フィルター、回折格子等を前記光源と併用する等の手段によりにより得ることができるが、簡便には、偏光板としてパイレックスガラス製偏光板など320nmより短い波長の紫外線を透過しないものを、前記光源とともに用いても良い。
【0045】
液晶表示素子
本発明の液晶配向剤を用いて形成される液晶表示素子は、前記液晶配向膜が形成された基板を、その2枚を液晶配向膜を照射した直線偏光放射線の偏光方向が所定の角度となるよう対向させ、基板の間の周辺部をシール剤でシールし、液晶を充填し、充填孔を封止して液晶セルを構成する。次いで、液晶セルを、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで冷却して、注入時の流動配向を除去することが望ましい。
そして、その両面に偏光板の偏光方向がそれぞれ基板の液晶配向膜を照射した直線偏光放射線の偏光方向と所定の角度を成すように偏光板を張り合わせることにより、液晶表示素子とする。液晶配向膜が形成された2枚の基板における、照射した直線偏光放射線の偏光方向の成す角度および、それぞれの基板と偏光板との角度を調整することにより、TN型またはSTN型液晶セルを有する液晶表示素子を任意に得ることができる。
前記シール剤としては、例えば硬化剤およびスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有したエポキシ樹脂等を用いることができる。
前記液晶としては、ネマティック型液晶、スメクティック型液晶などを用いることができる。TN型液晶セルの場合、ネマティック型液晶を形成させるものが好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶等が用いられる。またSTN型液晶セルの場合、前記液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネート等のコレステリック液晶や商品名C−15,CB−15(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤等をさらに添加して使用することもできる。さらに、p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメート等の強誘電性液晶も使用することができる。
液晶セルの外側に使用される偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させたH膜と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、又はH膜そのものからなる偏光板等を挙げることができる。
【0046】
【作用】
本発明の液晶配向剤を用い、前記方法により液晶配向膜を形成すれば、従来の光配向法において引き起こされる配向膜の光劣化が起こらないので、電気特性の優れた液晶配向膜が形成できる。
【0047】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0048】
合成例1
ポリアミック酸の重合
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物0.1モル(22.4g)と4’(4−ペンチルフェニル)−4(3,5−ジアミノフェノキシ)カルコン0.1モル(47.6g)をN−メチル−2−ピロリドン400gに溶解させ、60℃で6時間反応させた。
次いで、反応混合物を大過剰のメタノールに注ぎ、反応生成物を沈澱させた。その後、メタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させて、ポリアミック酸(以下、「重合体1a」という)62gを得た。
イミド化反応
得られた重合体1a15.0gにN−メチル−2−ピロリドン300g、ピリジン8.2gおよび無水酢酸9.6gを添加し、120℃で4時間イミド化反応をさせた。
次いで、反応混合液を大過剰のメタノールに注ぎ、反応生成物を沈澱させた。その後メタノールで洗浄し減圧下で15時間乾燥させて、ポリイミド(以下、「重合体1b」という)10.5gを得た。
【0049】
合成例2
ポリアミック酸の重合
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物0.1モル(22.4g)とp−フェニレンジアミン0.05モル(5.4g)および4(3,5−ジアミノフェノキシ)カルコン0.05モル(16.5g)をN−メチル−2−ピロリドン350gに溶解させ、60℃で6時間反応させた。
次いで、反応混合物を大過剰のメタノールに注ぎ、反応生成物を沈澱させた。その後、メタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させて、ポリアミック酸(以下、「重合体2a」という)43gを得た。
イミド化反応
得られた重合体2a20.0gにN−メチル−2−ピロリドン320g、ピリジン8gおよび無水酢酸10gを添加し、120℃で4時間イミド化反応をさせた。
次いで、反応混合液を大過剰のメタノールに注ぎ、反応生成物を沈澱させた。その後メタノールで洗浄し減圧下で15時間乾燥させて、ポリイミド(以下、「重合体2b」という)15.0gを得た。
【0052】
比較合成例1
ポリアミック酸の重合
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物0.1モル(22.4g)とp−フェニレンジアミン0.1モル(10.8g)をN−メチル−2−ピロリドン300gに溶解させ、60℃で6時間反応させた。
次いで、反応混合物を大過剰のメタノールに注ぎ、反応生成物を沈澱させた。その後、メタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させて、ポリアミック酸(以下、「重合体Aa」ともいう)27.4gを得た。
イミド化反応
得られた重合体Aa20.0gにN−メチル−2−ピロリドン380g、ピリジン9.5gおよび無水酢酸12.3gを添加し、120℃で4時間イミド化反応をさせた。
次いで、反応混合液を大過剰のメタノールに注ぎ、反応生成物を沈澱させた。その後メタノールで洗浄し減圧下で15時間乾燥させて、ポリイミド(以下、「重合体Ab」という)15.3gを得た。
【0053】
比較合成例2
ポリアミック酸の重合
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物0.1モル(22.4g)と4(4−ペンチルフェニル)−4’(3,5−ジアミノフェノキシ)カルコン0.1モル(47.6g)をN−メチル−2−ピロリドン400gに溶解させ、60℃で6時間反応させた。
次いで、反応混合物を大過剰のメタノールに注ぎ、反応生成物を沈澱させた。その後、メタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させて、ポリアミック酸(以下、「重合体Ba」という)65gを得た。
イミド化反応
得られた重合体Ba15.0gにN−メチル−2−ピロリドン300g、ピリジン8.2gおよび無水酢酸9.6gを添加し、120℃で4時間イミド化反応をさせた。
次いで、反応混合液を大過剰のメタノールに注ぎ、反応生成物を沈澱させた。その後メタノールで洗浄し減圧下で15時間乾燥させて、ポリイミド(以下、「重合体Bb」という)11.5gを得た。
【0054】
実施例2
合成例2で得られた重合体2bを用いた以外は、実施例1と同様に液晶表示素子を作製したところ、いずれも液晶の配向性は良好であった。実施例1と同様の条件で電圧を印加したところ、印加した電圧のON−OFFに応答して、液晶表示素子の明暗の変化が観察された。
【0055】
実施例2〜4
合成例2〜4で得られた重合体2b〜4bを用いた以外は、実施例1と同様に液晶表示素子を作製したところ、いずれも液晶の配向性は良好であった。実施例1と同様の条件で電圧を印加したところ、印加した電圧のON−OFFに応答して、液晶表示素子の明暗の変化が観察された。
【0056】
参考例
合成例1で得られた重合体1bを用いて、実施例1と同様に基板上に薄膜を形成した。
この薄膜に、ナイロン製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロールの回転数500rpm、ステージの移動速度1cm/秒でラビング処理を行った。
次に、一対のラビング処理された基板の液晶配向膜を有するそれぞれの外縁に、直径17μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷塗布した後、一対の基板を液晶配向膜面が相対するように、しかもラビング方向が直交するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。
次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマティック型液晶(メルク社製、ZLI−1565)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くためこれを150℃に加熱した後、室温まで徐冷し、基板の外側の両面に偏光板を、偏光板の偏光方向がそれぞれの基板の液晶配向膜のラビング方向と一致するように張り合わせ、液晶表示素子を作製したところ、液晶の配向性は良好であった。電圧5Vを印加したところ、印加した電圧のON−OFFに応答して、液晶表示素子の明暗の変化が観察された。
【0057】
比較例1〜2
比較合成例1〜2で得られた重合体AbまたはBbを用いて、実施例1と同様に基板上に薄膜を形成し、直線偏光紫外線を照射して液晶配向膜を作成し、それを用いて液晶表示素子を作製したところ、液晶の配向は観察されなかった。
【0058】
【発明の効果】
本発明の液晶配向剤を用いた液晶配向膜の形成方法によれば、従来の光配向法において引き起こされる配向膜の光劣化が起こらないので、電気特性の優れた液晶配向膜が形成できる。また、本発明の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜は面内均一性に優れているため、TN型、STN型等の表示用として用いた場合に高い表示品位を持つ液晶表示素子が得られ、種々の装置に有効に使用でき、例えば卓上計算機、腕時計、置時計、係数表示板、ワードプロセッサ、パーソナルコンピューター、液晶テレビなどの表示装置に好適に用いられる。
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