JP4134306B2 - カーボンナノチューブ/ポリマー複合体及びその製法 - Google Patents

カーボンナノチューブ/ポリマー複合体及びその製法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ナノテクノロジーおよび材料科学の技術分野に属し、特に、カーボンナノチューブを利用する新規な複合材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
カーボンナノチューブは、金属的な性質から半導体としての性質を含む多様で優れた電気的特性を有し、また、大きな表面積や機械強度特性などから、電気電子材料から高性能樹脂補強材などに至る各種の分野において、次世代先端材料として注目が集まり、世界的な規模で実用化研究が進行中である。
【0003】
カーボンナノチューブを実用化するための1つの手段は、その特性を活かしながら、他の物質と複合化することであるが、カーボンナノチューブは各種のポリマー(有機高分子)などとの親和性が低く、このことがカーボンナノチューブに由来する新しい材料の開発の障壁となっている。カーボンナノチューブの表面を化学処理して、他の物質との親和性を改良する試みも提案されているが、その処理によりカーボンナノチューブの特性が損なわれる問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、カーボンナノチューブの特性を活かした複合材料を製造する新しい技術を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、研究を重ねた結果、重合性のイオン性液体を調製し、これを利用することにより、電気的特性や機械的特性に優れたカーボンナノチューブ由来の複合材料が得られることを発見し、本発明を導き出した。
【0006】
かくして、本発明は、重合性部位を介して重合したイオン性液体と、カーボンナノチューブとから構成されることを特徴とするカーボンナノチューブ/ポリマー複合体を提供するものである。
【0007】
本発明に従えば、さらに、上記のカーボンナノチューブ/ポリマー複合体を製造する方法であって、重合性部位を有するイオン性液体の存在下にカーボンナノチューブをせん断力を加えて細分化することにより、カーボンナノチューブと重合性部位を有するイオン性液体とから成るゲル状組成物を調製する工程、および、該ゲル状組成物中のイオン性液体をその重合性部位を介して重合させる工程、を含むことを特徴とする方法が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に従えば、イオン性液体に重合性部位を導入し、この重合性部位を有するイオン性液体を用いてカーボンナノチューブとゲル状組成物を調製した後、in situでイオン性液体成分を重合させて、カーボンナノチューブとポリマーとから成る複合材料が得られる。
【0009】
ここで、イオン性液体(ionic liquid)とは、よく知られているように、常温溶融塩または単に溶融塩などとも称されるものであり、常温(室温)を含む幅広い温度領域で溶融状態を呈する塩である。
本発明において用いられる重合性部位を有するイオン性液体としては、イオン性液体として従来より知られた塩に重合性部位を導入した各種の化合物が使用可能であるが、好ましい例として、下記の一般式(I)〜(IV)で表わされるカチオン(Q)(好ましくは、第4級アンモニウムイオン)と、アニオン(X)より成るものを挙げることができる。
【0010】
【化1】
Figure 0004134306
【0011】
【化2】
Figure 0004134306
【0012】
【化3】
Figure 0004134306
【0013】
【化4】
Figure 0004134306
【0014】
上記の式(I)〜(IV)において、R1は、重合性官能基(後述)を有する炭素数10以下のアルキル基(エーテル結合を含んでいてもよい)を表わす。上記の式(I)、(III)および(IV)において、Rは、一般に、炭素数1〜6のアルキル基または水素原子を表わし、式(I)において好ましいアルキル基はメチル基である。式(I)において、Rで表わされるアルキル基の炭素数は、R1の炭素数と異なっていることが好ましい。式(III)および(IV)において、mは1から4の整数である。
【0015】
アニオン(X)としては、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)炭素酸のイオンより選ばれた少なくとも1種が例示できる。
【0016】
上記の式(I)〜(IV)のR1に含まれるような重合性官能基とは、光照射または加熱、重合開始剤や触媒等の公知方法により活性化されて重合反応を呈する光重合性官能基または熱重合性官能基あるいは重付加官能基であり、好ましいものとして、例えば、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、アクリルアミド基、エポキシ基、イソシアナート基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
以上に述べたような重合性部位を有するイオン性液体は、既知の反応を工夫することによって合成することができる。すなわち、一般的には、イオン性液体の基本構造(例えば、イミダゾール構造やピリジン構造)を有する化合物にR1Zで表わされる試薬を反応させることにより、重合性部位を有するイオン性液体のカチオン(Q)部分を含む中間化合物をZの塩として合成した後、アニオン(X)部分を含む試薬を用いて、ZとXとのアニオン交換反応を行えばよい(後述の実施例参照)。ここで、反応試薬R1ZにおけるR1は、式(I)〜(IV)に関連して既述したのと同じであり、重合性官能基を有する炭素数10以下のアルキル基(エーテル結合を含んでいてもよい)を表わし、また、Zは、例えば、ハロゲン原子、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基等を表わす。ただし、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基やトリフルオロアセトキシ基の場合は、直接イオン性液体が得られる。
【0018】
本発明に従い、カーボンナノチューブとイオン性液体に由来するポリマーとから成るカーボンナノチューブ/ポリマー複合体を製造するには、先ず、上述したような重合性部位を有するイオン性液体の存在下にカーボンナノチューブをせん断力を加えながら細分化する。
この細分化工程において、せん断力を付与する手段は特に限定されるものではなく、例えば、実験室におけるような小規模の製造の場合は手動または自動の乳鉢ですり潰すことによってもよく、また、多量の製造を目的とする場合には、ボールミル、ローラーミル、振動ミルなどの高せん断力を付与することができる湿式粉砕装置を使用することができる。さらに、ニーダータイプの混練機も使用可能である。細分化に要する時間も特に限定されるものではなく、用途に応じて必要な細分化に応じて適宜変更できるが、一般的には5分間〜1時間程度である。このような細分化工程により、カーボンナノチューブとイオン性液体とから成る黒色のゲル状組成物が得られる。このゲル状組成物はそのまま重合工程に供してもよいが、必要に応じて遠心分離にかける。この遠心分離操作により、ゲル状組成物の形成に関与しない余剰のイオン性液体が除去される。
【0019】
以上のようなゲル状組成物を得るには、1.カーボンナノチューブと、2.イオン性液体とを、3.せん(剪)断力下に細分化する、という3要素が必須であり、そのうちの1要素が欠けても所望のゲル状組成物を得ることはできない。すなわち、(1)カーボンナノチューブとイオン性液体をせん断力を加えることなく、単に攪拌混合するだけではゲル状組成物は生成しない。(2)また、同じ炭素系材料でも、カーボンナノチューブではなく、グラファイト、C60、活性炭などではゲル状組成物は生成しない。(3)さらに、通常の有機溶媒やイオン性液体の前駆体を用いてカーボンナノチューブをせん断力下に細分化してもゲル状組成物は得られない。
【0020】
本発明に従いカーボンナノチューブ/ポリマー複合体を製造するには、以上のようにして得られたカーボンナノチューブと重合性部位を有するイオン性液体とから成るゲル状組成物を重合工程に供する。すなわち、イオン性液体の重合性部位が熱重合性官能基から成る場合はゲル状組成物を加熱し、また、イオン性液体の重合性部位が光重合性官能基から成る場合にはゲル状組成物に光照射するか、あるいは、重合性官能基の種類に応じて加熱と光照射の両方を行なうことにより、重合性部位を介してイオン性液体を重合させる。重合はバルク重合(塊状重合)、すなわち、カーボンナノチューブとイオン性液体とから成るゲル状組成物をそのまま加熱および/または光照射することによって実施することができる。また、重合は、一般に、当該分野でよく知られた各種の重合開始剤〔例えば、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)など〕の存在下に行なう。
【0021】
本発明が適用されるカーボンナノチューブは、よく知られているように、グラフェンシートが筒形に巻いた形状から成る炭素系材料であり、その周壁の構成数から単層ナノチューブ(SWCNT)と多層ナノチューブ(MWCNT)とに大別され、また、グラフェンシートの構造の違いからカイラル(らせん)型、ジグザグ型、およびアームチェア型に分けられるなど各種のものが知られている。本発明は、このような所謂カーボンナノチューブと称されるものであれば、いずれのタイプのカーボンナノチューブにも適用することができるが、一般的には、アスペクト比が大きい(すなわち、細くて長い)単層ナノチューブがゲルを形成し易く、したがって、本発明はSWCNTからゲル状組成物を得るのに特に適している。実用に供されるカーボンナノチューブの好適な例として、一酸化炭素を原料とし比較的量産が可能なHiPco SWCNT(Carbon Nanotechnologies社から入手できる)が挙げられるが、勿論、これに限定されるものではない。
【0022】
カーボンナノチューブとイオン性液体の比率は、簡単な試験により知ることができ、細分化工程後、遠心分離に供したときに黒色のゲル状組成物から透明なイオン性液体が分離されるような充分量のイオン性液体をカーボンナノチューブに対して用いる。カーボンナノチューブとイオン性液体の種類にもよるが、一般的には、重量比で、カーボンナノチューブに対して20倍以上のイオン性液体を使用する。
【0023】
また、カーボンナノチューブの純度が悪くなる程、ゲル形成能が低下するので、使用するカーボンナノチューブは合成時の触媒残存物のような不純物が可及的に少ないものが好ましい。一般的には、純度70%程度以上のカーボンナノチューブを用いるとゲル形成が効率的に行なわれるので好ましいが、カーボンナノチューブの純度は用途に応じて高純度のものから比較的低い純度のものまで適宜選択することができる。
以上のようにして得られる本発明のカーボンナノチューブ/ポリマー複合体は、例えば、電気伝導度が高く、また、動的硬度においても優れており(後述の実施例参照)、カーボンナノチューブの特性が活かされた複合材料である。
【0024】
このように本発明に従えば電気的特性や機械的特性に優れた複合材料が得られるメカニズムについては未だ不明の点もあるが、各種の分析結果も考慮すると、次のように理解される。
(1)せん断力下における細分化処理は、カーボンナノチューブの化学的変性を引き起こすことはなく、カーボンナノチューブの相互のからみ合いを減少させて、その束を細くする物理的形状変化をもたらす。
(2)ゲルの形成は、カーボンナノチューブのからみ合いに因るものではなく、からみ合いの減少したカーボンナノチューブの表面に「カチオン−π」相互作用により結合したイオン性液体の分子がイオン結合を介して配列し、カーボンナノチューブの束どうしを結びつけることにより、形成される架橋構造(三次元網目構造)に起因するものと推測される。
そして、重合性部位を介してイオン性液体が重合すると、この架橋構造が強化されるとともに、イオン性液体のポリマーがカーボンナノチューブの表面を緊密にコーティング(被覆)する。
【0025】
かくして、重合性部位を介して重合されたイオン性液体のポリマーと、カーボンナノチューブとから構成される本発明のカーボンナノチューブ/ポリマー複合体は、電気伝導度が高く硬度などの機械的特性も優れているので、そのまま、例えば、各種の電気・電子製品素材、建築素材、医療材料などへの応用展開が期待される。
【0026】
さらに、本発明の複合材料の顕著な特徴の一つは、カーボンナノチューブ自体に対しては親和性の乏しい他のポリマー(例えばポリメチルメタクリレート)と併用することにより他のポリマーを補強したり、あるいは、他のポリマーと複合化して使用することもできる。これは、カーボンナノチューブを覆うイオン性液体のポリマーがカーボンナノチューブと他のポリマーとのバインダーとして機能するためと考えられる。かくして、そのような他のポリマーと併用される本発明の複合体は、カーボンナノチューブと他のポリマーの双方の特性を活かした新しいタイプの素材として多くの分野における応用が期待される。
【0027】
他のポリマーと併用する方法としては、重合性部位を介してイオン性液体を重合するに際して、イオン性官能基を有しない通常の重合性官能基を有する化合物を共存させて共重合する方法、或は重合性部位を介して重合したイオン性液体とカーボンナノチューブから構成されるカーボンナノチューブ/ポリマー複合体中でイオン性官能基を有しない通常の重合性官能基を有する化合物を重合させる方法、または通常のポリマーと混合する等種々の方法が挙げられる。
【0028】
【実施例】
以下に、本発明の特徴をさらに具体的に示すために実施例を記すが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
なお、以下の記述において、Meとはメチル基、Etとはエチル基を表わす。また、以下の実施例に関連して図に示す化学構造式においては、慣用的な表現に従い炭素原子や水素原子を省略して示していることがある。
【0029】
実施例1:重合性部位を有するイオン性液体の合成
本発明のカーボンナノチューブ/ポリマー複合体の原料となる重合性部位を有するイオン性液体を次のように合成した。
4−ブロモブチルアクリレート 重合性部位を導入する反応試薬となる4−ブロモブチルアクリレートを以下のように合成した〔図1の反応式(I)参照〕:4−ブロモ−1−ブタノール(8.45 g, 55.2 mmol)とアクリロイルクロリド(5.24g,57.9 mmol)を溶かした無水ジクロロメタン溶液(50 mL)に、アルゴン雰囲気下0℃で、トリエチルアミン(12.0 mL, 86.1 mmol)を添加し、0℃において4時間攪拌した後、反応混合物を濾過した。濾液をジクロロメタンで稀釈し、水および塩水で洗い、さらに無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、室温で減圧下に溶媒を留去した。残渣を真空蒸留(1.1 Torr,54〜57 ℃)に供して、無色液体として4−ブロモブチルアクリレート(6.28g,収率55%)を得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ= 6.41(dd, J = 17.5, 1.5 Hz, 1H), 6.12(dd, J = 17.5, 10.5 Hz, 1H), 5.84(dd, J = 10.5, 1.5 Hz, 1H), 4.20(t, J = 6.5 Hz, 2H), 3.45(t, J = 6.5 Hz, 2H), 2.00−1.94(m, 2H), 1.88−1.82(m, 2H)
【0030】
1−(4−アクリロイルオキシブチル)−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート 重合性部位を有するイオン性液体として標記化合物(以下、ABMIPF6と略記する)を以下のように合成した〔図1の反応式(II)および(III)参照〕:1−メチルイミダゾール(1.55 g, 18.9 mmol)と4−ブロモブチルアクリレート(3.91 g, 18.9 mmol)を溶かした無水アセトニトリル(28 mL)をアルゴン雰囲気下85 ℃に加熱した。16時間後、反応溶媒を室温で減圧下に留去し、残渣を脱イオン水(300 mL)に溶かした。
得られた溶液に、ヘキサフルオロリン酸カリウム(4.01g, 21.57 mmol)の水溶液を0 ℃で滴下添加し、混合液を0 ℃で攪拌した。2.5時間後、反応混合物を室温まで加温した後、ジクロロメタンで数回抽出した。抽出液をまとめて、水および塩水で洗い、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、室温で減圧下に蒸発させたところ、オイル状の残渣が得られた。この残渣を減圧下に70 ℃で24時間さらに乾燥することによって、黄色の粘性液体としてABMIPF6〔図1(III)の1の化合物〕を得た(4.38 g, 収率66%)。
1H NMR (500 MHz, DMSO) δ= 9.08(s, 1H), 7.75(dd, J = 1.5, 1.5 Hz, 1H), 7.68(dd, J = 1.5, 1.5 Hz, 1H), 6.32(dd, J = 17.5, 1.5 Hz, 1H), 6.16(dd, J = 17.5, 10.5 Hz, 1H), 5.94(dd, J = 10.5, 1.5 Hz, 1H), 4.19(t, J = 7.5 Hz, 2H), 4.12(t, J = 6.5 Hz, 2H), 3.83(s, 3H), 1.88−1.82(m, 2H), 1.63−1.57(m, 2H); 13C NMR (125 MHz, DMSO) δ= 165.25, 136.40, 131.34, 128.09, 123.48, 122.04, 63.29, 48.33, 35.71, 26.11, 24.81; IR (KBr) 3170, 2965, 1718, 1576, 1412, 1298, 1279, 1204, 1169, 841, 558 cm-1; MALDI-TOF-MS:m/z実測値 209.23 ([M+]計算値、C11H17O2N2として:209.27).
ヘキサフルオロリン酸カリウムの代わりに、テトラフルオロホウ酸ナトリウムを用いて同様の操作を行なうことにより、イオン性液体1−(4−アクリロイルオキシブチル)−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート〔図1(III)の2の化合物〕が得られる。
【0031】
実施例2:ゲルの調製と重合
実施例1で合成したイオン性液体からゲル調製工程と重合工程を経て次のようにカーボンナノチューブ/ポリマー複合体を製造した〔図1の反応式(IV)参照〕:単層カーボンナノチューブ(HiPco:Carbon Nanotechnologies社製, 純度95%以上)102 mgと、重合性部位を有するイオン性液体ABMIPF6 (2.56 g, 7.23 mmol)を自動乳鉢に加えて、室温で30分間磨り潰して黒色のゲル状組成物を得た。このゲル状組成物とAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)(15 mg, 0.091 mmol)とをテフロン(登録商標)容器に入れ、アルゴン雰囲気下で75 ℃に加熱することにより重合反応を行わせたところ、反応時間10時間で転化率90% に達し、黒色塊状のカーボンナノチューブ(SWCNT)/ポリマー(ABMIPF6ポリマー)複合体を得た。
1H NMR (500 MHz, DMSO) δ= 8.96(br s, 1H), 7.64(br, 2H), 4.12(br, 2H), 3.83 (br, 5H), 2.13(br, 1H), 1.78(br, 3H), 1.49(br, 3H); IR (KBr) 3173, 2966, 1734, 1577, 1169, 842, 557 cm-1
【0032】
実施例3:複合体の電気伝導度測定
実施例2の方法で作製されSWCNTが3.8重量%混合されたカーボンナノチューブ/ポリマー複合体を用いて1.8 cm×1.8 cm、厚さ0.68 mmに圧縮成形(下記の実施例4の動的硬度測定に用いた試料と同様に加工)した試料を用い二端子法で電気伝導度(絶縁抵抗)を測定した。測定の詳細は下記のとおりである。
測定装置:ULTRA-HIGH RESISTANCE METER R8340A型, (株) アドバンテスト社製。
印加電圧:DC1,2,3 V.
試験雰囲気:23±2 ℃, 50±5% RH.
測定方法:厚み方向(体積)で測定.
荷重:20, 100 g使用.
主電極径:荷重20 gの場合14.8 mm, 荷重100 gの場合24.5 mm.
結果を下記の表1に示す。表に示されるように電気伝導度の高い材料が得られている。
【0033】
【表1】
Figure 0004134306
【0034】
実施例4:複合体の動的硬度測定
実施例2で作製されたカーボンナノチューブ/ポリマー複合体(SWCNT含有量3.8重量%)について動的硬度(押込硬度)を測定した。対照試料として、実施例1で調製された重合性部位を有するイオン性液体(ABMIPF6)を本発明に従いカーボンナノチューブと複合化することなく、下記の参考例のように単に重合化して得られたポリマー(以下、単に対照ポリマーという)についても同様に動的硬度を測定した。
測定方法の詳細は以下のとおりである:テフロン(登録商標) 製成形機を用い、200 ℃で2分間、カーボンナノチューブ/ポリマー複合体および対照ポリマーを圧縮成形することによりシート(厚さ0.6 mm, 面積1 cm2)にした後、小片に切断した。各試料について、115°のダイアモンド四角錐圧子を備えるSimadzu Dynamic Ultra Micro Hardnes TesterモデルDUH-201Sを用いて23±2 ℃における動的硬度を測定した。
動的硬度の値(DHT115)は、式DHT115=3.8584P/h2により算出し、各試料について3つの異なる測定点に基づく値の平均を[DHT115]aveとした。Pは押込荷重(mN)であり、hは押込深さ(μm)である。結果を図2に示している。重合化したイオン性液体とカーボンナノチューブとが複合化した本発明の複合体は、対照ポリマーに比べて動的硬度が著しく向上する(約4倍)ことが理解される。
【0035】
参考例:対照ポリマーの合成
実施例4で用いた対照ポリマーは、次のように合成した〔図1の反応式(V)参照〕:テフロン(登録商標) 製容器にABMIPF6(1.51g, 4.26 mmol)および AIBN(10 mg, 0.061 mmol)を入れ、アルゴン雰囲気下に70〜75 ℃に加熱することにより重合反応を行わせたところ、反応時間10時間で転化率93%に達し、透明な粘性体が得られた。
1H NMR (500 MHz, DMSO)δ=8.96(s, 1H), 7.65(s, 1H), 7.61(s, 1H), 4.12(br t, 2H), 3.91(br, 2H), 3.83(br s, 3H),2.13(br, 1H), 1.78(br, 3H), 1.49(br, 3H); IR (KBr) 3173, 2966, 1735, 1577, 1170, 839, 557 cm-1
【0036】
実施例 5 :他のポリマーと併用されたカーボンナノチューブ/ポリマー複合体の製造‐その 1
実施例1と同一条件で調整されたゲル状組成物にメチルメタクリレート (MMA)(0.72 g, 7.2 mmol) を混合し、その上にAIBN (25 mg, 0.15 mmol)を使用する以外は実施例2と同一条件で重合反応をおこさせたところ、転化率93%で黒色塊状のカーボンナノチューブ(SWCNT)/ポリマー(ABMIPF6とMMAとの併用コポリマー)複合体を得た。得られた複合体を圧縮成型したところSWCNTが分散した強靭な成型体が得られた。
【0037】
実施例6:他のポリマーと併用されたカーボンナノチューブ/ポリマー複合体の製造‐その2
実施例2と同一条件で調整された黒色塊状のカーボンナノチューブ(SWCNT)/ポリマー(ABMIPF6)複合体にMMA (0.72 g, 7.2 mmol)およびAIBN (18 mg, 0.11 mmol)を加えてよく混合し、テフロン(登録商標)容器にいれ、アルゴン雰囲気下で75℃に加熱することによりMMAの重合反応を行わせたところ、反応時間8時間で転化率92%に達し、黒色塊状のポリメチルメタクリレートと併用されたカーボンナノチューブ/ポリマー(ABMIPF6)複合体を得た。得られた複合体を圧縮成型したところSWCNTが分散した強靭な成型体が得られた。
【0038】
【発明の効果】
以上の記述から明らかなように、本発明に従えば、イオン性液体とその重合化を利用することにより簡便な手法で、電気的特性や機械的特性に優れたカーボンナノチューブ由来の新しい複合材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカーボンナノチューブ/ポリマー複合体を製造する各工程における反応式を示す。
【図2】本発明のカーボンナノチューブ/ポリマー複合体について実施した動的硬度の測定結果を示す。

Claims (4)

  1. 重合性部位を介して重合したイオン性液体と、カーボンナノチューブとから構成されることを特徴とするカーボンナノチューブ/ポリマー複合体。
  2. カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ/ポリマー複合体。
  3. 他のポリマーと併用されることを特徴とする請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ/ポリマー複合体。
  4. 請求項1のカーボンナノチューブ/ポリマー複合体を製造する方法であって、重合性部位を有するイオン性液体の存在下にカーボンナノチューブをせん断力を加えて細分化することにより、カーボンナノチューブと重合性部位を有するイオン性液体とから成るゲル状組成物を調製する工程、および、該ゲル状組成物中のイオン性液体をその重合性部位を介して重合させる工程、を含むことを特徴とする方法。
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