JP4133347B2 - シールド機能を備えた導電路及びシールド部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シールド機能を備えた導電路及びその導電路を構成するシールド部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば電気自動車においてインバータ装置やモータなどの機器間を接続する場合、シールド機能を備えた導電路が用いられる。この種の導電路としては、シールド電線の導体の端部に電線側端子を固着し、その電線側端子を、機器のシールドケース内に設けた機器側端子に接続するとともに、シールド電線のシールド層を導電性の接続部材を介してシールドケースに接続するようにしたものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
しかし、このような導電路では、電線側端子をシールドケース内に差し込む作業と接続部材をシールドケースに接続する作業を、夫々、端子の極数(即ち、シールド電線の本数)と同じ回数繰り返さなければならないため、手間がかかるという問題がある。
そこで、シールド層を有しない電線を用いてこれらの電線を編組線からなる可撓性を有する筒状のシールド部材で一括して覆い、各電線に、夫々、電線側端子を固着する構造のものが考えられる。この一括シールドタイプの導電路によれば、シールド機能部(シールド部材)をシールドケースに接続する作業が、電線の本数に拘わらず1回だけで済むため、作業性が向上する。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−26093号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記シールド部材は、複数本の金属細線を編み込んで柔軟に変形し得るようにすることにより、電線をシールド部材に挿通させる作業がし易くなったり、電線が曲げて配索されてもその配索経路に追従できるといった利点がある。しかしその反面、異物がシールド部材に当たったりすると、金属細線の隙間が容易に拡大し、隙間が拡大することによってシールド機能の低下を招くという欠点も有している。
【0006】
そのため、従来では、シールド部材への異物干渉防止のために、シールド部材をコルゲートチューブ等で覆うという外装手段が設けられている。しかしながら、金属細線の隙間が拡大した状態でコルゲートチューブに収容された場合には、異物の干渉は回避できても、シールド機能が損なわれたままになってしまう。
本願発明は上記事情に鑑みて創案され、シールド部材を構成する金属細線の隙間が拡大したままになるのを防止することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、複数本の電線と、複数本の金属細線をメッシュ状に編み込んだ筒状の編組線を有するシールド部材とを備えてなり、前記複数本の電線を前記シールド部材に挿通して前記シールド部材により一括して包囲するようにしたものであって、前記シールド部材には、弾性を有する材料からなり、且つ前記編組線に対し前記金属細線同士を連結する形態で一体化された弾性連結手段が設けられており、前記弾性連結手段が、導電性を有する材料からなるとともに、前記金属細線の隙間を含浸するか又は覆うように設けられており、前記隙間は、前記金属細線をメッシュ状に編み込んで形成された前記編組線の編み目であり、前記編組線の内周及び外周の両面は、前記弾性連結手段からなる弾性連結層により覆われている構成とした。
【0008】
請求項2の発明は、複数本の金属細線をメッシュ状に編み込んだ筒状の編組線を有し、複数本の電線が挿通されて前記電線を一括して包囲するシールド部材であって、弾性を有する材料からなり、前記編組線に対し前記金属細線同士を連結する形態で一体化された弾性連結手段を備えており、前記弾性連結手段が、導電性を有する材料からなるとともに、前記金属細線の隙間を含浸するか又は覆うように設けられており、前記隙間は、前記金属細線をメッシュ状に編み込んで形成された前記編組線の編み目であり、前記編組線の内周及び外周の両面は、前記弾性連結手段からなる弾性連結層により覆われている構成とした。
【0009】
尚、請求項1及び請求項2において弾性連結手段が金属細線の隙間を塞ぐ形態としては、弾性連結手段を金属細線の隙間に入り込ませて編組線に含浸させる形態や、弾性連結手段を編組線に含浸させずに編組線の表面に沿って層状に密着する形態とすることができる。
【0010】
【発明の作用及び効果】
[請求項1及び請求項2の発明]
電線の挿通作業や異物の干渉等のために編組線に外力が付与されて金属細線間の隙間が一時的に拡大しても、その外力が除去されると弾性連結手段により金属細線の隙間が狭まった状態に戻るので、金属細線の隙間が拡大したままになることが防止される。
【0011】
また、弾性連結手段が導電性を有するとともに金属細線の隙間を塞ぐように設けられているので、金属細線の密度を低くしてもシールド機能が発揮される。したがって、金属細線の密度低下に伴って使用量が少なくなった分だけ、コスト低減と軽量化を図ることが可能である。
【0012】
【発明の実施の形態】
[実施形態1]
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図5を参照して説明する。
【0013】
本実施形態のシールド機能を備えた導電路Aは、例えば電気自動車におけるインバータ装置やモータなどの機器間を接続する手段(ワイヤーハーネス)として用いられる。
機器10は、導電性のシールドケース11内に機器本体12及び機器本体12から延出させた3つの機器側端子13を収容したものである。機器側端子13は、バスバーと称される板状のものであって、上下方向に貫通するボルト孔14を有している。かかる3つの機器側端子13は、左右方向に所定の間隔を空けて水平に並列するように配置されている。また、シールドケース11の側壁には、各機器側端子13と対応するように円形の取付孔15が左右に3つ並んで形成されている。
【0014】
次に、導電路Aについて説明する。導電路Aは、複数の電線20、電線側端子25、外装体30、シールド部材35、及びシールドシェル40を備えて構成される。
電線20は、導体(図示せず)の外周を絶縁被覆21で包囲したものであって、シールド電線とは異なりこの電線20にはシールド層は設けられていない。各電線20の端末部には、夫々、電線側端子25が接続されている。
電線側端子25の前端部には、前後方向に長い平板状をなすとともに上下に貫通するボルト孔27を有する機器接続部26が形成されている。電線側端子25の後端部の電線圧着部(図示せず)には、電線20の導体が圧着により導通可能に接続されている。
【0015】
外装体30は、電線側端子25の電線圧着部、及び電線20の端末部を包囲するように樹脂モールドによって電線側端子25と一体に成形されている。外装体30の前端面からは機器接続部26が突出され、後端面からは電線20のうちの絶縁被覆21で覆われた部分が導出されている。外装体30の後端部外周は電線20と同心の円形部とされ、その外周面のシール溝31にはシールリング32が装着されている。
【0016】
シールド部材35は、複数本の金属細線36aをメッシュ状に編み込んだ筒状の編組線36と、同じく筒状をなす弾性連結材37(本発明の構成要件である弾性連結手段)とを備えて構成されており、この筒状のシールド部材35は、3本の電線20を一括して包囲している。
編組線36は、金属細線36aの有する可撓性により、径方向及び長さ方向に若干伸縮させることができるようになっている。尚、本実施形態では編組線36(シールド部材35)の端部がテーパ状に拡がるような形状となっているが、編組線36は全長に亘って一定の径となるようにしたものでもよい。
【0017】
この編組線36には、弾性を有する材料からなり、且つその編組線36に対し金属細線36a同士を連結する形態の弾性連結材37が一体化されている。この弾性連結材37は、編組線36の内周及び外周に沿っており、編組線36(シールド部材35)の全長に亘って連続するとともに周方向においても連続したシート状をなしている。弾性連結材37として、本実施形態ではシリコーンゴムが用いられている。また、この弾性連結材37は、シリコーンゴム内にカーボンファイバ(図示せず)を混在させたものであり、このカーボンファイバにより弾性連結材37は導電性を有している。
尚、シリコーンゴムの特性は、次の通りである。ゴム硬度は30〜70HS、体積抵抗率は100〜10−3Ω・cm、引張り強度は40kgf/cm2以上、耐熱温度は−40〜150℃である。
【0018】
弾性連結材37を編組線36に一体化させる際には、編組線36を受けパイプ38aに被せるとともに、その編組線36に外装パイプ38bを被せることにより、その両パイプ38a,38bの隙間に編組線36を収容する。このとき、両パイプ38a,38bの径方向の隙間は編組線36の厚さよりも大きい寸法とされる。そして、この両パイプ38a,38bの隙間に液体状のシリコーンゴムを注入し、そのシリコーンゴムを金属細線36aの隙間36bに染み込ませる。養生の後、シリコーンゴムが硬化したら編組線36と弾性連結材37とが一体化され、シールド部材35が完成する。このように一体化された状態では、弾性連結材37が、金属細線36aの隙間36bに充填されることによりその金属細線36a同士を連結する。弾性連結材37が硬化したら、両パイプ38a,38bの隙間からシールド部材35を抜き取ればよい。
【0019】
弾性連結材37は、弾性を有するシリコーンゴム製なので、編組線36が外力を受けて変形したときには、金属細線36a同士を連結した状態を保ったままで編組線36に追従して柔軟に変形することができるとともに、金属細線36aの隙間36bが拡大したときにも、金属細線36a同士を連結した状態を保ったままで金属細線36a間の隙間36bの拡大に追従して柔軟に変形することができる。
【0020】
編組線36に対する外力の付与が解除されると、金属細線36aを連結している弾性連結材37は、シリコーンゴムの有する弾性復元力により、編組線36を原形状に復元させることができるとともに、金属細線36a間の隙間36bを狭めて元に戻すことができる。
さらに、編組線36の内周と外周の両面には、いずれも、金属細線36aを含まないシリコーンゴムのみからなる単独の弾性連結層37a,37bが形成され、この弾性連結層37a,37bによって編組線36の内外両面が覆われていている。したがって、金属細線36aは外部に露出していない。
【0021】
シールドシェル40は、金属板材に深絞り加工を施すことによって成形した単一部品であり、全体として横長の略長円形(略楕円形)をなす筒部41と、この筒部41の前端縁から全周に亘って外側へ張り出す板状のフランジ部42と、このフランジ部42の左右両端部から斜め上外方へ面一状に延出する一対の取付部43とを有している。フランジ部42と取付部43の前面はシールドケース11の外壁面に対して面当たりするように当接され、取付部43には、シールドケース11の雌ネジ孔(図示せず)に対応するボルト孔44が形成されている。
【0022】
かかるシールドシェル40はシールド部材35の前端部に接続されている。即ち、シールド部材35の前端部を後方からシールドシェル40の筒部41に被せ、その外周側に筒部41よりも僅かに大きい略長円形のカシメリング45を嵌め、このカシメリング45をカシメ付ける。このカシメ付けにより、シールド部材35の前端部が筒部41とカシメリング45との間で挟み付けられた状態で固定される。これにより、シールド部材35の編組線36とシールドシェル40とが導電性を有する弾性連結材37の内周側の弾性連結層37aを介して導通可能に接続される。尚、3つの電線側端子25及び3本の電線20の端末部はシールドシェル40から前方へ導出されている。
【0023】
かかる導電路Aは、機器10に接続される。接続に際しては、各電線側端子25が、夫々、シールドケース11の各取付孔15に個別に差し込まれる。差し込まれた電線側端子25の機器接続部26はシールドケース11内で待ち受ける機器側端子13の上面に載せられ、双方のボルト孔14,27が対応する。そして、両ボルト孔14,27に貫通させたボルト(図示せず)にナット(図示せず)を螺合して締め付けると、両端子13,25が揺動規制状態に固定させるとともに導通可能に接続される。また、取付孔15内では、その内周と外装体30の外周との間がシールリング32によって防止される。
【0024】
端子13,25同士の接続が済んだら、シールドシェル40をシールドケース11に取り付ける。取り付けの際には、シールドシェル40のボルト孔44をシールドケース11の雌ネジ孔に対応させ、ボルト孔44に差し込んだボルト(図示せず)を雌ネジ孔に螺合して締め付けることにより、シールドシェル40がシールドケース11に固定されるとともに導通可能に接続される。以上により、シールド部材35がシールドシェル40を介してシールドケース11に接続され、機器10に対する導電路Aの取付けが完了する。
【0025】
上述のように本実施形態においては、シールド部材35に、弾性を有する材料からなり、且つ編組線36に対し金属細線36a同士を連結する形態で一体化された弾性連結材37を設けた。これにより、電線20の挿通作業や異物の干渉等のために編組線36に外力が付与されて金属細線36a間の隙間36bが一時的に拡大しても、その外力が除去されると弾性連結材37の弾性復元力により金属細線36aの隙間36bが狭まった状態に戻るので、金属細線36aの隙間36bが拡大したままになることが防止される。
【0026】
また、弾性連結材37には導電性が具備されているとともに、その弾性連結材37が金属細線36aの隙間36bを埋めるように編組線36に含浸されてているので、金属細線36aの密度を低くしてもシールド機能が発揮される。したがって、金属細線36aの密度低下に伴って使用量が少なくなった分だけ、コスト低減と軽量化を図ることが可能である。
[参考例2]
次に、参考例2を図6を参照して説明する。
【0027】
本参考例2は、シールド部材50を上記実施形態1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
本参考例2のシールド部材50では弾性連結材51が導電性を有していない。そこで、編組線36とシールドシェル40との導通を確保するため、金属細線36aを含まない弾性連結層51bが編組線36の外周側のみに形成され、編組線36のうちシールドシェル40に接触する内周面ではその全領域に亘って金属細線36aが露出されている。尚、かかるシールド部材50の製造に際しては、液体状態のシリコーンゴムを2つのパイプ38a,38bの隙間に注入するときに、編組線36を受けパイプ38aの外周に対して隙間が空かないように密着させた状態にしておく。
【0028】
[他の実施形態]
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0031】
(1)上記実施形態1ではシールド部材をシールドシェルの外周に被せた状態で接続するようにしたが、本発明によれば、シールド部材をシールドシェルの内周に沿わせた状態で接続してもよい。
【0032】
(2)上記実施形態1では弾性連結材としてシリコーンゴムを用いたが、本発明によれば、アクリルゴム、エラストマ、NBR、フッ素ゴムなどの弾性を有する材料としてもよい。
(3)上記実施形態1では弾性連結材を液体状にしておいて金属細線の隙間に染み込ませ、その後の養生により、弾性連結材を硬化させるようにしたが、本発明によれば、予め成形された硬化状態の弾性連結材をシールド部材の周面(内周面と外周面の双方の面)に接着剤で固着させてもよい。
つまり、弾性連結材が金属細線の隙間を塞ぐ形態としては、弾性連結手段を金属細線の隙間に入り込ませて編組線に含浸させる形態に限らず、弾性連結手段を編組線に含浸させずに編組線の表面に沿って層状に密着する形態とすることができる。
【0033】
(4)上記実施形態1では弾性連結材に導電性を具備させる手段としてカーボンファイバーを混在させたが、本発明によれば、カーボンファイバーに限らず、金属製繊維や、金属の粉体、金属の粒体、その他カーボンや金属以外の導電性の繊維、粉体、粒体等を混在させてもよい。
(5)上記実施形態1では各電線側端子を個別に機器に取り付ける場合について説明したが、本発明は、1つのハウジングに複数の電線側端子を一括して保持させ、複数の電線側端子をワンアクションで機器に取り付ける場合にも適用することができる。
【0034】
(6)上記実施形態1において、シールド部材にコルゲートチューブを外装し、異物が干渉しないように保護するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態1における端末シールド部材と電線側端子の斜視図
【図2】 導電路を機器に取り付けた状態をあらわす平面図
【図3】 編組線の構成をあらわす一部拡大図
【図4】 シールド部材の部分拡大断面図
【図5】 編組線、受けパイプ及び外装パイプの斜視図
【図6】 参考例2のシールド部材の部分拡大断面図
A…導電路
20…電線
35…シールド部材
36…編組線
36a…金属細線
36b…隙間
37…弾性連結材(弾性連結手段)
Claims (2)
- 複数本の電線と、
複数本の金属細線をメッシュ状に編み込んだ筒状の編組線を有するシールド部材とを備えてなり、
前記複数本の電線を前記シールド部材に挿通して前記シールド部材により一括して包囲するようにしたものであって、
前記シールド部材には、弾性を有する材料からなり、且つ前記編組線に対し前記金属細線同士を連結する形態で一体化された弾性連結手段が設けられており、
前記弾性連結手段が、導電性を有する材料からなるとともに、前記金属細線の隙間を含浸するか又は覆うように設けられており、前記隙間は、前記金属細線をメッシュ状に編み込んで形成された前記編組線の編み目であり、
前記編組線の内周及び外周の両面は、前記弾性連結手段からなる弾性連結層により覆われていることを特徴とするシールド機能を備えた導電路。 - 複数本の金属細線をメッシュ状に編み込んだ筒状の編組線を有し、複数本の電線が挿通されて前記電線を一括して包囲するシールド部材であって、
弾性を有する材料からなり、前記編組線に対し前記金属細線同士を連結する形態で一体化された弾性連結手段を備えており、
前記弾性連結手段が、導電性を有する材料からなるとともに、前記金属細線の隙間を含浸するか又は覆うように設けられており、前記隙間は、前記金属細線をメッシュ状に編み込んで形成された前記編組線の編み目であり、
前記編組線の内周及び外周の両面は、前記弾性連結手段からなる弾性連結層により覆われていることを特徴とするシールド部材。
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