JP4132929B2 - 薄膜の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光記録媒体のアドレス信号が認識可能な程度に成膜後の反射率が高く、レーザーを用いた初期化を必要としない光情報記録媒体に関する。詳しくは、相変化記録材料成膜前に基板温度を上げ、結晶化度の高い記録膜を形成するための結晶化促進層を設ける光情報記録媒体の構成であって、結晶化促進層であるBiGeの極薄薄膜の製造方法およびその製造方法による光情報記録媒体に関するものであり、結晶膜を成膜する際の結晶化程度向上に関する分野、また、スパッタ収率が違う混合物の成膜を行なう分野に応用可能である。
【0002】
【従来の技術】
公知技術としては、特許第2892818号公報に記載の半導体レーザーを使った初期化方法、特開平10−112065号公報に記載のLD Arrayによる初期化、特許第2846129号公報に記載のフラッシュ・ランプを使った初期化方法、特開平10−188363号公報に記載の基板の吸収波長領域を減衰させるフィルターを介して光照射を行なう方法、WO98/47142号公報に記載の結晶化促進層として、BiおよびBi化合物を含む材料を用いてGeSbTe主成分の相変化記録層を結晶化させる技術等が挙げられる。前記WO98/47142号公報の請求項6に基板温度を45℃以上、基板変形温度以下とする項目があり、具体的な加熱方法として、基板または結晶化促進層に熱線を含む光を照射する方法が記載されている。ただ、加熱だけではPCなどのプラスチック基板は信号読み取りに障害となる変形を生ずる可能性があるということが記載されている。特開2000−215510号公報には結晶化促進層の膜厚を0.5〜2nmとすることが記載されており、特開2001−297490号公報には結晶化促進層の膜厚を0.5〜5nmとすることが記載されており、コリメートスパッタ方式により極薄膜を成膜することを特徴としている。
【0003】
社内公知技術としては、特願2001−028496号明細書が挙げられ、BiGe結晶化促進層の後に共晶組成近傍の組成のSbTe記録層を積層し、asdepo後の反射率が高い光ディスク・メディアを提案した。
【0004】
100Å以下の極薄い薄膜をスパッタリングで成膜しようとした場合、通常は投入電力を小さくして、さらに短時間で成膜することがよく行なわれる。しかし、この様な場合、放電が立ち難くなったり、短時間の成膜時間のために膜厚の制御性・再現性が悪くなったりすることが公知となっている。特に、膜厚が50Å以下の場合で、成膜時間が1秒以下になってしまう場合には装置制御的に確実な極薄膜の製造が困難となる。そこで、この様な極薄膜の製造方法として、コリメートスパッタを使用するなどの方法が特開2001−297490号公報に記載されている。この方法でも、単一の物質からなるターゲットからであれば組成のずれは生じないが、例えば複数の物質から形成されたターゲットから薄層の膜を得ようとした場合は、スパッタ収率の差に起因する薄膜と原材料ターゲットの組成のずれを生じてしまうことになる。
【0005】
さらに、スパッタ収率の差によるターゲット表面の組成変化が生じると、スパッタされ難い組成材料の表面比率が増加し、経時的に製造された薄膜の組成が変化していくという不具合点が生じる。特に、合金や化合物とならない混合物ターゲットではこの傾向は著しいものとなる。
スパッタ時の組成ずれが起こる原因は、入射イオンビームのもつエネルギー量や入射角度、被入射物質の重さや温度、表面結合エネルギーの違いによるものと考えられているが、これら要因の複合効果と考えられている。
【0006】
一方、この様な極薄膜を製造する要求は、近年盛んに利用されるようになった光学薄膜や光ディスクの製造に求められている。次に、この光ディスクの分野について説明する。
【0007】
記録型光ディスクのうち、相変化型記録ディスクは、一般にプラスチック基板/誘電体材料/カルコゲン系相変化記録媒体/誘電体材料/AlまたはAg系合金の冷却反射層のような、機能的には4層構成の膜構成を持っている。ここで用いられているカルコゲン系相変化記録媒体は熱履歴により結晶と非結晶の構造をとる。通常は、記録前に反射率の高い結晶状態となっていて、情報記録後は反射率の低い非結晶のマークを形成して記録している。生産工程上は各層の成膜プロセスが終了した時点では非結晶の状態であり、反射率が低く情報を書き込むためのアドレス情報が読み取れないので、レーザー光を照射することにより加熱し結晶状態に変化させて出荷される。この結晶化状態に変化させるプロセスは初期化プロセスと呼ばれている。
【0008】
初期化の方法には、特許第2892818号公報に記載の半導体レーザーによる方法が最も多用されている。ただし、この初期化プロセスは光情報媒体作製プロセス上他の工程と比べ時間が長くかかるので、初期化装置を数多く設置しなければならないなどの問題を抱えている。そこで、時間を短縮する方法として、特開平10−112065号公報に記載の半導体レーザー・アレイによる方法、特許第2846129号公報に記載のフラッシュランプによる方法等が挙げられる。この中で、ランプによる方法は基板を加熱してしまい、基板自体に変形を起こさせてしまう可能性があるので、特開平10−188363号公報に記載の基板の吸収波長領域を減衰させるフィルターを介して光照射を行なうという方法が取られている。
【0009】
特開2001−56960号公報、特開2000−260060号公報、特開2000−260060号公報、特開2000−339755号公報、特開2000−149322号公報、特開2000−57625号公報、特開2001−43565号公報、特開2001−209970号公報、特開2001−273673号公報等には初期結晶化を必要とすることなく製造直後からオーバーライト記録が可能な無初期化型相変化光記録媒体とするため、相変化記録膜と接して結晶化誘起層、結晶化促進層、ナノクリスタル構造を有するシード層、結晶化能向上層、結晶核生成層を設けることが記載されている。
最近の技術の進歩では、上記の様な初期化方法に代えて結晶化促進層の次に相変化記録層を積層する方式がWO98/47142号公報に記載されている。この結晶化促進層の膜厚は特開2000−215510号公報においては0.5〜2nm、特開2001−297490号公報においては0.5〜5nmと極薄薄膜であり、製造方法として再現性と均一性が問題となるものと予想される。
【0010】
また、そのような初期化レス型又は初期結晶化負担を軽減した相変化型光記録媒体を提供するため、特開2000−228029号公報には、相変化記録層が多結晶状態にあるとき、その多結晶を構成する結晶粒の粒径に対する個数の分布が少なくとも2つの異なる粒径において極大値を有するものとすることにより、結晶化を極めて迅速且つ確実に生ずるようにすることが記載されており、特開2000−268419号公報には、特に初期化せずともアズデポの非晶質状態に直接、実ドライブで高速に結晶スペースを形成することを可能とするため、基板と前記基板上に堆積された記録膜とを有する相変化記録媒体の製造方法において、基板上に前記記録膜を堆積している間または前記基板上に前記記録膜を堆積した後に、前記記録膜を室温よりも高い温度に昇温することにより、前記記録膜中に微細結晶核を生成させることが記載されており、特開平10−88338号公報には、相変化記録媒体の製造時のアーク放電(異常放電)が、ターゲットから放出される粒子の粗大化を招き、デイスク上に数μm径のスパッツ(粗大粒)を発生すること、これはRFスパッタリング方式に比較して成膜速度が高く、成膜時の内部応力や基板の温度上昇が少ない利点を持つDCスパッタリング方式において、スパッタされた後ターゲット上の侵食(エロ−ジョン)部分から非侵食部分に入射する原子と、導入ガスとが反応して絶縁物が形成され、この絶縁物上にプラスイオンの照射によりブラスの電荷が蓄積されていき、蓄積されたプラスの電荷が多量になると絶縁破壊に至るためであることが記載されている。
【0011】
また、特開2001−297490号公報には、 極薄い結晶化促進層を所定の膜厚で均一に、かつ再現性良く形成し、確実に初期化を不要にするため、結晶化促進層をコリメート板を用いたコリメートスパッタ方式を利用して成膜することにより、その成膜速度が遅いため、極薄い結晶化促進層を適切な時間かけて成膜することができ、極薄い結晶化促進層を所定の膜厚で均一に再現性良く形成して、確実に初期化を不要とし得る光情報記録媒体を製造することが記載され、特開2000−268420号公報には、記録膜をスパッタリングにより堆積する際にターゲットに印加する直流電圧Vdcとターゲット構成元素のスパッタ閾値電圧Vthとの関係をVth<Vdc≦10Vthとすることにより、ターゲットから放出するスパッタ粒子のエネルギを低下させて、基板に入射するスパッタ粒子のエネルギをも低下させ、スパッタ粒子の基板上での冷却速度が低下して気相から固相へ変化する際の結晶化時間を長くして微細な結晶核を生成し、このような微細結晶核の存在によって、光照射を1回するだけで完全に結晶化することができるようにすることが記載されており、特開2000−268401号公報には、アズデポで充分な初期結晶化時間のための徐冷が可能となるように熱伝導率を低く抑えることにより、初期結晶化工程不要とすることが記載されており、特開2000−353343号公報には、光記録媒体からなるターゲットと前記ターゲットに静止対向あるいは自転対向した構成に光ディスク基板を配置し、前記光ディスク基板上に前記ターゲットを直流電源を用いてマグネトロンスパッタリングすることにより光記録媒体を作製するスパッタリング装置において、前記スパッタリング用直流電源に、低周波のパルス電圧を重畳しながら放電させることにより、微小なグレイン構造単位を有する薄膜形成が可能となり、均質な非晶質薄膜の光記録媒体を成膜することが可能な製造方法を実現すること、及び、前記正電圧パルスに同期させて、基板にバイアス電圧を印加してもよいことが記載されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では、レーザー光を照射することで加熱して記録層の物性(結晶状態と非結晶状態)を変え記録マークを作り、状態の違いによる読み出しレーザーの反射率の違いを利用する相変化光ディスクに、結晶化促進効果を持つ材料を積層することにより、レーザー初期化プロセスを軽減するか、なくす方法のうち、結晶化促進層の精度の良い成膜方法を提供することを目的とする。
【0013】
【発明を解決するための手段】
すなわち、上記課題は本発明の(1)「パルス状の波形を有する直流放電スパッタリングにより、膜厚が100Å以下の薄膜を成膜する薄膜の製造方法であって、ターゲットは比抵抗が0.5Ωcm以下且つ融点差100℃以上である混合材料であり、カソード電圧の値が少なくとも144V以上であり、前記パルス状の波形の周波数は1Hz以上100kHz以下であり、且つ、成膜に有効な電圧を与える時間比率が全体の65%以上であることを特徴とする薄膜の製造方法」、(2)「前記混合材料を構成する元素がBi、In、Ge、Sb、Te、Seの中から選ばれることを特徴とする前記第(1)項に記載の薄膜の製造方法」、(3)「混合材料を構成する元素がBiとGeの混合材料から構成されることを特徴とする前記第(2)項に記載の薄膜の製造方法」、(4)「基板上に第一誘電体層、結晶化促進層、相変化記録層、第二誘電体層、反射層を順次積層する相変化型光情報記録媒体を製造する方法であって、前記結晶化促進層の成膜方法が前記第(1)項乃至前記第(3)項の何れかに記載の成膜方法で形成されたことを特徴とする光情報記録媒体の製造方法」によって解決される。
【0014】
膜厚が100Å以下の極薄い薄膜をスパッタリングで成膜する具体的な方法としては、パルス状の波形を有する直流放電スパッタリングにより成膜する方法が挙げられる。表1に示すように、一般的にDC(直流)カソードの方がRF(高周波)カソードより印可される電圧値が高く、そのため成膜速度も約2倍となるのが通常である。その理由は、スパッタする粒子の持つエネルギーが高いのとRFのように電極電圧が反転しないことによる。ターゲット表面からターゲット材料原子がスパッタされるためには、あるしきいエネルギー以上のエネルギーが必要であり、電圧値が高いということはスパッタされ難い物質をスパッタしようという場合に効果がある。
また、スパッタされるしきい値の境界域にあるRFでは、スパッタの分布が出てしまうような場合でも電圧が高いことによりスパッタされ、装置本来の均一性が保たれることになる。ただ、一方で成膜速度が速くなってしまうと成膜時間が短くなり、成膜時間の制御による誤差および放電状態の不安定性が増加する可能性が出てくる。そこで、電圧の印可をパルス化し、実際にスパッタが実行される時間を定期的にキャンセルするパルスDCスパッタが有効となる。またパルス化することで、自己トリガー的な働きを生じ放電が安定するという効果もある。DCでスパッタするには、ターゲットの比抵抗が0.5Ωcm以下であることが必須の条件となる。これ以上の比抵抗では、ターゲット表面がチャージアップしてしまうため安定したDC放電が難しい。
【0015】
【表1】
※装置:Balzerse社製Big Sprinter(8CH)
【0016】
特に、この様な成膜方法が有効と思われるターゲット材料としては、ターゲットに融点差がある混合材料がある場合が有効で、しかも融点差が100℃以上とある程度大きい場合が有効である。融点の違いの傾向はターゲット表面の表面結合エネルギーの違いの傾向と一致すると考えられる。さらに具体的な物質としては混合材料を構成する元素がBi、In、Ge、Sb、Te、Seの中から選ばれた材料である。さらにBiとGeの混合材料の場合は後に実施例で示すように結果が明らかである。特に、膜厚制御性に関して、RFスパッタでの膜厚均一性が±12%であるのに対し、パルスDCスパッタすることにより±3%に膜厚均一性が向上する。
【0017】
パルスDCスパッタの条件としては、カソード電圧値が少なくとも144V以上であることが必要であり、我々の実験では、137V以下では膜の付着が確認できなかった。137Vを越え144V未満は不安定な境界域であった。また、パルス状波形の周波数は1Hz以上100kHz以下であり、パルス状の波形を有する直流放電スパッタリング方法であって、カソードに成膜に有効な電圧を与える時間比率が全体の65%以上であることが必要である。
上記に説明したこの様な極薄膜の製造方法によると、膜厚均一性が向上することに加え、経時的な組成バラツキが軽減され膜のバラツキが小さくなる。
【0018】
次に、この技術を相変化型光情報記録媒体に適用する場合について説明する。
一般に、記録媒体は(透明)基板上に第一誘電体層、相変化記録層、第二誘電体層、反射層を順次積層して形成される。最近報告されているレーザー初期化を軽減またはなくすことができる、無初期化型の相変化型光情報記録媒体は、第一誘電体層と相変化記録層の間に、相変化型記録層の結晶化を容易にする結晶化促進層が積層される。この結晶化促進層としては、Bi又はBiを含む化合物あるいは混合物が知られている。Biは融点が比較的低いので、他の物質と組み合わせるとパルスDCスパッタを有効に用いることができる。すなわち、少なくとも融点差がある混合材料により構成された結晶化促進層と共晶系組成近傍の組成のSbTeを主成分とする相変化記録層により構成された光情報記録媒体が製造できる。この光情報記録媒体は記録開始前の反射率が記録後の反射率の60%以上となる。ここで、共晶系近傍組成SbTeとは70≦Sb≦80、20≦Te≦30を言う。
【0019】
でき上がった光情報記録媒体は、結晶化促進層をRFスパッタで形成されたものに比べて膜の均一性が良好で、組成バラツキが小さいため、面内の特性バラツキが改善される。特に、反射率バラツキ、保存寿命に関する面内バラツキが向上し、保存安定性が半径位置により変化しない。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例1
<パルスDCでの面内膜厚分布(±3%)>
ターゲットとしてBi又はBiGe(Bi30atomic%、Ge70atomic%)を用い、スパッタリングガスとしてArを30sccm導入し、投入電力0.1kWのパルスDCスパッタにて9秒間のスパッタを3回連続して繰り返し実施した。パルスの条件は、周波数100kHz、カソードとは逆電圧を印可する時間が2μsec、逆電圧の電圧値はカソード電圧の20%の値である。模式的に図2に波形を示す。スパッタ放電開始時、放電は安定していた。この場合のカソード電圧は235V〜237V、電流は400〜420mAであった。φ120の範囲で膜厚分布を測定し、図1の結果を得た。面内の膜厚バラツキは±3%であり、周辺に行くに従って膜厚が小さくなる傾向を持っていた。
面内膜厚分布のバラツキ±3%は装置の設計スペックであり、低電力投入によってもスペックが実現できていると言える。
一方、カソード電圧に関して、カソード電圧が印可される割合(Duty)により電圧および成膜状態がどう変わるかをチェックした。図6に示すようにカソード電圧はDutyが大きくなるにつれて上がる傾向を示し、電圧が上がるとともに成膜レートも向上した。2回同じ実験をしたが、カソード電圧が144V以上(duty65%に相当)の場合は確実に成膜されるが、144V未満の場合は成膜による膜厚増加が確認されず、成膜されていないことが判った。
【0021】
実施例2
<パルスDCでの組成変動(ターゲット元組成と一致する)>
実施例1で用いたものと同じBiGe(Bi30atomic%、Ge70atomic%)のターゲットを用い、Arを30sccm、投入電力0.1kWのパルスDCスパッタで連続的に成膜を行なった。そのときの薄膜のBiとGeの比率を大型試料用蛍光X線分析装置(理学電機 System 3272)によりFP(Fundamental Parameter)法で経時的な組成の測定を行なった。図4に示してあるように、ターゲット組成に対し若干ずれているが、ずれ量は安定時2%程度であり、ほぼターゲット組成を再現している。
【0022】
実施例3
<パルスDCでの反射率分布およびメディア特性>
基板として厚さが0.6mmの光情報記録媒体の溝情報を形成したNiスタンパを用い成形したポリカーボネートによるプラスチック基板を用いて、成膜室又は成膜用ターゲットを多数持つ多層成膜用のマグネトロンスパッタ装置により、光記録媒体の各層を順次成膜した。まず、第一誘電体層はZnS・SiO2とした。組成はZnS:80%、SiO2:20%(比率はモル比)である。膜厚は約2100Åである。次に、結晶化促進層としてパルスDCスパッタによりBiGe(Bi0.40Ge0.60)をターゲットとして25Åの厚みで形成し、次に相変化記録層としてSbTe(Sb0.78Te0.22、比率はモル比、結晶化温度は124℃)を120Åに形成した。このときの基板の温度は、それまでのプロセスと同一条件下でE−タイプフィルム状熱電対により測定したところ、相変化記録層成膜直前で45℃となっていた。
さらに、第二誘電体層を第一誘電体層と同組成のZnS・SiO2の混合膜として、120Åの膜厚で成膜した。次に、反射層のAg膜との第二誘電体層のカルコゲン成分との反応バリアー層としてSiCを40Å形成した後、最後に反射放熱層のAgを140nmの膜厚で成膜した。その後、紫外線樹脂によるオーバーコート層を形成し、0.6mmの溝なし基板と貼り合わせを行ない、1.2mm板厚の光情報媒体として完成させた。
【0023】
このように作製した光情報記録媒体の反射率を次の方法で測定した。
この光情報記録媒体の反射率を特性評価装置(パルステック工業株式会社製−RW自動評価システム DDU−1000)により波長650nmの半導体レーザーを使って評価した。まず、この光情報記録媒体を7mWの信号イレース・レーザー強度でイレースし、イレース前後の反射率の値とイレースしていない成膜直後の部分とを比べた。イレースしていない部分は信号イレース・レーザー強度でイレースした部分の半径値40mmのポイントで81%の反射率となった。
内周部25mmと外周部55mmも同様に比較したところ、それぞれ、82%、80%であった。この光情報記録媒体の反射率は、膜厚1400Åとしてガラスに成膜したAgスパッタ膜を87.7%基準の反射率比較対象として用いた場合の換算値として18.5%の反射率となった。また、初期の光情報記録媒体のジッターとモジュレーションを測定したところ、それぞれ6.3〜6.8%と64〜66%であった。
【0024】
実施例4
<パルスDCでの保存寿命>
実施例3で作製した光情報記録媒体の記録チェック後、この光情報記録媒体を80℃で85%RHの高温高湿槽に100時間保管し、再度ジッターとモジュレーションを測定した。面内の内周から25mm、40mm、55mmで測定したところ、それぞれジッターは7.0、7.1、7.3%であり、モジュレーションは63、62、61.5%であり、その変化が問題となるレベルではなかった。
【0025】
比較例1
<RFスパッタでの不具合(膜厚バラツキ±12%)を開示>
ターゲットとしてBiまたは、BiGe(Bi30atomic%、Ge70atomic%)を用い、スパッタリングガスとしてArを50sccm導入し、投入電力0.1kWのRFスパッタにて9秒間のスパッタを3回連続して繰り返し実施した。スパッタ放電開始時直後に0.2〜0.7秒の放電しない時間があり、放電は不安定であった。この場合のカソード電圧は58V〜60V、φ120の範囲で膜厚分布を測定し、図3の結果を得た。面内の膜厚バラツキは±12%であり、表面に凸の膜厚分布となっていて周辺に行くに従ってさらに膜厚が小さくなる傾向を持っていた。
また、スパッタガスの流量を下げていったところAr40sccmでは放電がさらに不安定になり、Ar30sccmにしたところこの投入電力値では放電が極めて起き難くなりスパッタされなかった。
一方、同じ装置を用い、投入電圧を1.5kWとして同様に放電をかけたところ、カソード電圧は398〜411Vまで上がり、放電開始時の放電しない時間もなく、面内膜厚バラツキも±3%と同装置本来の膜厚分布であった。
【0026】
比較例2
<RFスパッタでの不具合(組成比変動ターゲットと薄膜の組成比の違い)を開示>
比較例1で用いたと同じBiGe(Bi30atomic%、Ge70atomic%)のターゲットを用い、Arを50sccm、投入電力0.1kWのRFスパッタで連続的に成膜を行なった。そのときの薄膜のBiとGeの比率を大型試料用蛍光X線分析装置(理学電機 System 3272)によりFP(Fendamental Parameter)法で経時的な組成の測定を行なった。図5に示されているように、ターゲット組成に対し10atomic%程度ずれているのが判る。
【0027】
比較例3
<RFスパッタでの不具合(額縁初期化レスと組成比変動による再現性低下)を開示>
実施例3でBiGeのパルススパッタをRFスパッタにした他は全て同一の膜厚・条件により光情報記録媒体を製作し評価した。面内の反射率分布を次の半径値のポイントで内周部25mm、中央部40mm、外周部55mmにて比較した。実施例3で示したイレースパワーに対する比率ではそれぞれ、68%、81%、62%であった。また、ジッターとモジュレーションは、それぞれ、内周部25mm、中央部40mm、半径値で6.4〜7.5%、57〜65%であった。また、外周部55mmについては成膜直後では測定できなかった。外周部については、イレースパワーによりレーザー初期化を行なった。
【0028】
比較例4
<RFスパッタでの不具合(組成比変動による再現性低下保存寿命を満たさない)>
比較例3で製作したメディアを実施例4と同様に高温高湿槽に100時間保管し、再度ジッターとモジュレーションを測定した。面内の内周から25mm、40mmで測定したところ、それぞれジッターは7.5、7.1%であり、モジュレーションは59、62%であり、その変化が膜厚バラツキを反映するように変化した。また、半径位置55mmではマークが消失してしまい評価ができなかった。これは、Geが混入されないため、SbTeのみの組成に近くなったため保存安定性が低下したことによると思われる。
【0029】
【発明の効果】
以上、詳細且つ具体的な説明により明らかなように、本発明の前記第(1)項の作用効果として、比抵抗が0.5Ωcm以下であるためDCスパッタ可能であり、パルス状の波形を有する直流放電スパッタリングにより、極薄い100Å以下の膜厚でも膜厚・組成の再現性良く成膜することが可能である。前記第(2)項の作用効果として、パルスDC化することでカソード電圧がRFスパッタ時のカソード電圧より高くなるので、融点差がある混合材料ターゲットでも再現性の良い成膜ができる。前記第(3)項の作用効果として、RFスパッタでは融点差が大きくなればなるほど組成の解離が生じるが、パルスDC化するにより、融点差が100℃以上であるターゲットを用いた場合でも膜厚・組成の再現性良く成膜することが可能である。前記第(4)項の作用効果として、融点の低いBi、Inを含み、比較して融点の高いGe、Sb、Te、Seの中から選ばれた混合材料であっても、膜厚・組成の再現性良く成膜することが可能である。前記第(5)項の作用効果として、特に、融点差が大きいBiとGeから構成された混合材料でも、膜厚・組成の再現性良く成膜することが可能である。前記第(6)項の作用効果として、カソード電圧の値が少なくとも144V以上であることで、膜厚・組成の再現性良く成膜することが可能である。前記第(7)項の作用効果として、パルス状波形の周波数が1Hz以上100kHz以下であり、カソードに成膜に有効な電圧を与える時間比率が全体の65%以上であることにより、膜厚・組成の再現性良く成膜することが可能である。前記第(8)項の作用効果として、相変化型光情報記録媒体の結晶化促進層にパルスDCスパッタを導入することで、記録開始前の反射率が記録後の反射率の60%以上となるレーザー初期化が不要となるか軽微となる相変化型光情報記録媒体を提供できる。前記第(9)項の作用効果として、前記第(1)項乃至第(7)項の何れかに記載の成膜方法で形成することにより再現性の良好な結晶化促進層が形成でき、レーザー初期化が不要となるか軽微となる相変化型光情報記録媒体を提供できる。前記第(10)項の作用効果として、保存安定性が良好な相変化型光情報記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】パルスDCスパッタの場合の膜厚分布を表わす図である。
【図2】パルスの形状説明図である。
【図3】RFスパッタの場合の膜厚分布を表わす図である。
【図4】薄膜組成の経時変化(パルスDCスパッタの場合)を表わす図である。
【図5】薄膜組成の経時変化(RFスパッタの場合)を表わす図である。
【図6】Dutyを変化させた場合のカソード電圧値を表わす図である。
Claims (4)
- パルス状の波形を有する直流放電スパッタリングにより、膜厚が100Å以下の薄膜を成膜する薄膜の製造方法であって、ターゲットは比抵抗が0.5Ωcm以下且つ融点差100℃以上である混合材料であり、カソード電圧の値が少なくとも144V以上であり、前記パルス状の波形の周波数は1Hz以上100kHz以下であり、且つ、成膜に有効な電圧を与える時間比率が全体の65%以上であることを特徴とする薄膜の製造方法。
- 前記混合材料を構成する元素がBi、In、Ge、Sb、Te、Seの中から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の薄膜の製造方法。
- 混合材料を構成する元素がBiとGeの混合材料から構成されることを特徴とする請求項2に記載の薄膜の製造方法。
- 基板上に第一誘電体層、結晶化促進層、相変化記録層、第二誘電体層、反射層を順次積層する相変化型光情報記録媒体を製造する方法であって、前記結晶化促進層の成膜方法が請求項1乃至3の何れかに記載の成膜方法で形成されたことを特徴とする光情報記録媒体の製造方法。
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