JP4123974B2 - 直噴火花点火式内燃機関 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、直噴火花点火式内燃機関に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、直噴火花点火式内燃機関では、特許文献1に示されるように、燃焼室の側部に配置される燃料噴射弁から2つの吸気弁の間を経由し燃焼室中心部側へ燃料を噴射している。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−294208号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、圧縮行程にて燃料噴射を行う成層運転モードに対し、吸気行程にて燃料噴射を行う均質運転モードでは、吸気弁がリフトしているため、噴射された燃料の一部が吸気弁と干渉することで、筒内での混合気形成を阻害する結果、機関の冷機・暖機状態に関わらず、筒内に液状燃料が多く存在するようになり、機関から排出される未燃燃料(HC)が多くなるという問題点があった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、吸気行程噴射時に吸気弁と干渉する燃料噴霧を減らして、未燃燃料の排出量を低減することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明は、片方の吸気弁を閉弁状態で停止可能な可変動弁装置を用い、吸気行程にて燃料噴射を行う運転モードの時に、片方の吸気弁を閉弁状態で停止させる片弁停止を行う構成とする。
また、吸気通路に通路断面積の一部を開閉して筒内流動を制御するエアモーションバルブを用い、機関の冷機時は、前記片弁停止を行う時に、エアモーションバルブを開き、機関の暖機後は、前記片弁停止を行う時に、エアモーションバルブを閉じる構成とする。
【0007】
【発明の効果】
本発明によれば、吸気行程噴射時に、片弁停止を行うことで、その片方の吸気弁には燃料噴霧が干渉しないため、燃料噴霧が干渉する吸気弁が1つとなり、吸気弁と干渉する燃料噴霧を約1/2にすることができるので、未燃燃料の排出量を大幅に低減可能となる。
また、機関の冷機時に片弁停止を行う時は、エアモーションバルブを開いて、開弁動作する吸気弁の弁傘部全体に空気流を吹き付けることで、その弁傘部に燃料を空気流に乗せいて吹き飛ばし、混合気形成に利用することができる。
また、機関の暖機後に片弁停止を行う時は、暖機後は吸気弁温度が高く、気化性が良好なため、エアモーションバルブを閉じて、筒内流動を強化することにより、燃料気化を促進し、より均質な混合気形成を図ることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態を示す内燃機関の平面レイアウト図、図2は同上内燃機関の要部断面図及びそのA矢視図ある。
【0009】
内燃機関の燃焼室1には、その上面(シリンダヘッド)側の略中央部に点火プラグ2が配置されている。そして、点火プラグ2を囲むように、2本ずつ吸気ポート3A、3B及び排気ポート4A、4Bが開口し、それぞれに吸気弁5A、5B及び排気弁6A、6Bが装着されている。
【0010】
燃料噴射弁7は、燃焼室1の吸気弁5A、5B側の側部に斜め下向きに(シリンダ軸に対して垂直な平面に対して所定角度θだけ傾斜して)配置され、2つの吸気弁5A、5Bの間を経由し燃焼室1中心部側へ燃料を噴射するようになっている。
【0011】
また、吸気ポート3A、3Bは、仕切板8により上下の分割ポートに分割されており、下側の分割ポートの上流側に、これを閉止可能で、閉止時に筒内流動を強化可能なエアモーションバルブ9が設けられている。本実施形態では、特にタンブル流動を強化するようになっているので、エアモーションバルブ9を、タンブル制御弁(TCV)9と称する。
【0012】
この内燃機関での運転モードには、成層運転モードと均質運転モードとがあり、成層運転モードでは、圧縮行程にて燃料噴射を行い、点火プラグ2の周囲に成層化された混合気塊を形成することで、全体としては極めてリーンな空燃比で成層燃焼を行わせる。これに対し、均質運転モードでは、吸気行程にて燃料噴射を行い、燃焼室1の全体に均質な混合気を形成することで、ストイキ又はリーン空燃比での均質燃焼を行わせる。
【0013】
ここで、圧縮行程噴射の場合は、吸気弁5A、5Bは閉じているため、燃料噴霧と吸気弁5A、5Bとの干渉は問題とならないが、吸気行程噴射の場合は、吸気弁5A、5Bがリフトしているため、燃料噴霧と吸気弁5A、5Bとの干渉が問題となる。
【0014】
そこで、本発明では、吸気行程にて燃料噴射を行う運転モード(均質運転モード)の時に、図2に示すように、片方の吸気弁5Aを閉弁状態(0リフト又は微小リフト)で停止させる片弁停止を行い、他方の吸気弁5Bのみの開閉動作により、機関を運転する。
【0015】
これにより、吸気行程噴射時に、燃料噴霧は吸気弁5Aとは干渉せず、吸気弁5Bのみと干渉し、吸気弁5Bのみに噴霧の付着が生じるようになる(図2参照)。従って、燃料噴霧の干渉量(付着量)は単純に1/2となり、未燃燃料(HC)の排出量を大幅に低減することができる。
【0016】
但し、片弁停止を行うと、吸入可能な最大空気量が制約されるので、片弁停止は、必要空気量が比較的少ない低回転・低負荷領域のときに行う(図3参照)。
また、片弁停止状態では、開弁動作する吸気弁5Bへの噴霧の付着を生じるが、このときにタンブル制御弁9を閉じると、空気流が吸気弁5Bの弁傘部の略半分のみに当たるようになり、図2のX部分に付着した噴霧を吹き飛ばすことができない。
【0017】
そこで、片弁停止状態では、タンブル制御弁9を開いて、開弁動作する吸気弁5Bの弁傘部全体に空気流を吹き付けることで、その弁傘部に付着した燃料を空気流に乗せて吹き飛ばし、混合気形成に利用することを可能とする。
【0018】
但し、機関の冷機時と暖機後とを比較すると、暖機後は、吸気弁温度が高く、気化性が良好なため、混合気形成にさほどの支障がない(HC排出量が少ない)ことから、暖機後は、片弁停止を行う時に、タンブル制御弁9を閉じて、筒内流動を強化することにより、燃料気化を促進し、より均質な混合気形成を図ることが、HC低減上得策となる。
【0019】
上記の制御を実現するため、吸気弁5A、5B(少なくとも片方の吸気弁5A)は、可変動弁装置(図4中の10)により、閉弁状態で停止可能としてある。この場合の可変動弁装置としては、カム駆動式で油圧によりカムを切換えることで0リフト(又は微小リフト)を得ることができるもの、偏心カムを用い油圧によりリフト量を任意に変化させることができるもの、あるいは、電磁駆動式で任意のリフト特性を得ることができるものを用いることができる。
【0020】
図4は制御系の構成図であり、点火プラグ2、燃料噴射弁7、タンブル制御弁(TCV)9などと共に、可変動弁装置10の作動を制御するエンジンコントロールユニット(ECU)11に、エンジン回転数Nを検出可能な回転数センサ12、負荷(例えばアクセル開度)Lを検出可能な負荷センサ13、エンジン冷却水温Twを検出可能な水温センサ14の信号を入力してある。
【0021】
図5はECU11にて実行される制御フローであり、均質運転モードにて片弁停止制御及びTCV制御のために実行される。
S1では、各種センサより、エンジン回転数N、負荷L、水温Twなどを読込む。
【0022】
S2では、水温Twを所定値と比較することで、冷機時(Tw≦所定値)か、暖機後(Tw>所定値)かを判別する。
冷機時(Tw≦所定値)の場合は、S3へ進み、片弁停止領域を決定するエンジン回転数及び負荷のしきい値Ns、Lsを、基準値N1、L1に設定する。ここで定められるN1以下、L1以下の領域は、片弁停止状態において吸入可能な最大空気量内で運転可能な領域である。
【0023】
暖機後(Tw>所定値)の場合は、S4へ進み、片弁停止領域を決定するエンジン回転数及び負荷のしきい値Ns、Lsを、前記基準値N1、L1より小さいN2、L2に設定する。当然に、N2<N1、L2<L1である。暖機後は、冷機時に対し、片弁停止領域を、より低回転・低負荷側の領域に縮小するためである。
【0024】
S5では、エンジン回転数Nがしきい値Ns以下で、かつ負荷Lがしきい値Ls以下の低回転・低負荷領域か否かを判定する。
低回転・低負荷領域でない場合は、S6へ進む。
【0025】
S6では、片弁停止を行わず、通常運転(両弁運転)を行う。尚、通常運転時のタンブル制御弁(TCV)の制御はエンジン性能の要求により決める。
低回転・低負荷領域の場合は、S7へ進む。
【0026】
S7では、片弁停止不能状態、すなわち、可変動弁装置への制御用油圧が得られないなどの理由で、片弁停止を実行できないフェイルセーフ時か否かを判定する。
【0027】
片弁停止不能状態でない場合は、S8へ進む。
S8では、片弁停止を行う条件であり、かつ片弁停止可能であるため、片弁停止を行う。燃料噴霧と吸気弁との干渉を抑制して、HC排出量を低減するためである。
【0028】
S8にて片弁停止を行う場合は、S9以降で片弁停止状態に見合ったタンブル制御弁(TCV)の制御を行う。
S9では、S2と同様、冷機時(Tw≦所定値)か、暖機後(Tw>所定値)かを判別する。もちろん、S2での判別結果を記憶保持しておいて、それに従えばよい。
【0029】
冷機時の場合は、S10へ進み、タンブル制御弁(TCV)を開く。詳しくは、タンブル制御弁が開いているか否かを判定し、開いていない場合にタンブル制御弁を開く。開弁動作している吸気弁の弁傘部全体に空気流を吹き付けるためである。
【0030】
暖機後の場合は、S11へ進み、タンブル制御弁(TCV)を閉じる。詳しくは、タンブル制御弁が閉じているか否かを判定し、閉じていない場合にタンブル制御弁を閉じる。暖機後は、筒内流動を強化することで、筒内の均質化を向上させ、燃焼を改善して、未燃HCを減らすことを重視するためである。
【0031】
S7での判定で、片弁停止不能状態、すなわち、可変動弁装置への制御用油圧が得られないなどの理由で、片弁停止を実行できないフェイルセーフ時の場合は、S12へ進み、片弁停止を禁止して、両弁運転を行う。そして、このときは、更に、S13へ進み、機関の冷機・暖機状態に関わらず、タンブル制御弁(TCV)を閉じることで、筒内流動を強化する。燃料噴霧と吸気弁との干渉を防止できないので、筒内流動を強化することにより、燃焼を改善し、未燃HCの低減を図るためである。
【0032】
本実施形態では、機関の暖機後は、冷機時に対し、片弁停止を行う領域を、より低回転・低負荷側の領域に縮小しているが、これは、暖機後は、燃料噴霧が吸気弁と干渉しても雰囲気温度が高く気化が十分可能なため、比較的高回転・高負荷寄りの領域では、片弁停止によるHC低減効果を得るよりも、両弁運転でタンブル制御弁により筒内ガス流動を強化することにより、ミキシング強化により燃焼性能を向上させ、筒内の未燃HCを低減することが有効であるからである。
【0033】
尚、図6には、制御例として、始動→ファーストアイドル→冷機時/低回転・低負荷運転→冷機時/高回転・高負荷運転→暖機後/低回転・低負荷運転→暖機後/高回転・高負荷運転と経過した場合の、片弁停止制御及びTCV制御の様子を示している。尚、この例では油圧式の可変動弁装置を用いることを前提としているため、始動後(油圧上昇後)より片弁停止を開始しているが、電磁式の可変動弁装置であれば、片弁停止を即開始可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態を示す内燃機関の平面レイアウト図
【図2】 同上内燃機関の要部断面図及びそのA矢視図
【図3】 均質運転モードでの領域別の設定を示す図
【図4】 制御系の構成図
【図5】 制御フローチャート
【図6】 制御タイムチャート
【符号の説明】
1 燃焼室
2 点火プラグ
3A、3B 吸気ポート
4A、4B 排気ポート
5A、5B 吸気弁
6A、6B 排気弁
7 燃料噴射弁
8 仕切板
9 タンブル制御弁(TCV)
10 可変動弁装置
11 エンジンコントロールユニット(ECU)
12 回転数センサ
13 負荷センサ
14 水温センサ
Claims (5)
- 燃焼室の側部に配置される燃料噴射弁から2つの吸気弁の間を経由し燃焼室中心部側へ燃料を噴射する直噴火花点火式内燃機関において、
片方の吸気弁を閉弁状態で停止可能な可変動弁装置を備え、吸気行程にて燃料噴射を行う運転モードの時に、片方の吸気弁を閉弁状態で停止させる片弁停止を行う一方、
機関の冷機・暖機状態を判別する手段を備えると共に、吸気通路に通路断面積の一部を開閉して筒内流動を制御するエアモーションバルブを備え、機関の冷機時は、前記片弁停止を行う時に、エアモーションバルブを開き、機関の暖機後は、前記片弁停止を行う時に、エアモーションバルブを閉じることを特徴とする直噴火花点火式内燃機関。 - 前記片弁停止を行う条件にて、前記片弁停止を実行できないフェイルセーフ時は、前記片弁停止を禁止すると共に、機関の冷機・暖機状態に関わらず、前記エアモーションバルブを閉じることを特徴とする請求項1記載の直噴火花点火式内燃機関。
- 前記片弁停止は、所定の低回転・低負荷領域の時にのみ行うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の直噴火花点火式内燃機関。
- 前記片弁停止を行う領域は、前記片弁停止状態で吸入できる最大空気量内で運転可能な領域であることを特徴とする請求項3記載の直噴火花点火式内燃機関。
- 機関の冷機・暖機状態を判別する手段を備え、機関の暖機後は、冷機時に対し、前記片弁停止を行う領域を、より低回転・低負荷側の領域に縮小することを特徴とする請求項3又は請求項4記載の直噴火花点火式内燃機関。
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