JP4122532B2 - プラズマアークを利用したセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料の製造方法 - Google Patents

プラズマアークを利用したセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマアークを利用したセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料及びその製造方法に係り、特に、航空、宇宙機器、エンジンなどのように高温強度・比強度が要求されるセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
Ti−Al系金属間化合物の一つであるTiAlは、優れた高温比強度を有するNi基超合金よりもはるかに密度が小さく、室温および高温における比強度に優れており、また、伸びも常温で2%程度あるためセラミックスに比べ延性に富んでおり、さらに、温度上昇に伴い延性が増加し、塑性加工も可能となるため、航空宇宙関係の機体構造材料やエンジン部品などに適用すると大幅な軽量化や性能向上が期待でき、次世代の軽量耐熱材料として注目されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、TiAlが未だ実用化されるに至らないのは、常温および中低温域における延性および靱性、形状付与のための熱間加工性、800℃以上の高温における耐酸化性に問題があるためである。
【0004】
また、TiAlを航空宇宙関係の機体構造材料に適用するには、さらなる軽量化が必要であり、そのためには、比強度の向上が必要であった。
【0005】
このような問題を改善するために、Ti−richにすることにより生ずるTiAlとTi3 Alとの層状組織(Lamellar(ラメラ)組織)が注目され、このラメラ組織をベースに第3元素(W、Moなど)を添加したり、強化繊維(SiC)や耐熱性のセラミックス(TiB2 、MoSi2 など)を複合化したりして、Ti−Al基複合材料の開発が進んでいる。
【0006】
特に、高温での安定性を考慮に入れると、Ti−Al基複合材料の強化相としては、TiAl中で熱力学的に安定なセラミックスであるTiB2 やTi2 AlNが有望視されており、XDプロセスなど自己燃焼合成を用いたin situ(その場)でのセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料製造法が検討されている。
【0007】
しかし、これらの製造方法を用いてセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料を作製すると、燃焼反応が激しすぎてセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料中に多数の空洞が生じるため、セラミックス分散強化Ti−Al基複合材料合成後に、さらにアーク溶解してインゴット状にするという稠密化プロセスを必要とし、複雑な製造プロセスによるコスト高を招く。
【0008】
そこで本発明は、上記課題を解決し、後処理に稠密化プロセスなどを必要としないセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために請求項1の発明は、Ti−Al基材料中にセラミックスが分散されたセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料の製造方法において、成型用基板と電極との間に電圧を印加すると共に、その電極の先端にプラズマ用ガスを供給してプラズマアークを発生させ、そのプラズマアーク中に、上記Ti−Al基材料の組成がTi−34mass%Al、Ti−Al基材料に分散されるTiB 2 粉末の体積含有率が3〜15vol%となるように混合したTi粉末、Al粉末、及びセラミックスの原料であるTiB 2 粉末の混合粉末をキャリアガス送給して上記成型用基板に溶着させると共に急冷し、マトリックスであるTi−34mass%Al基材料中に上記セラミックスであるTiB 2 粒子を3〜15vol%の体積含有率で均一に分散させたセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料をin situに形成することを特徴とするプラズマアークを利用したセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料の製造方法である
【0010】
請求項2の発明は、Ti−Al基材料中にセラミックスが分散されたセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料の製造方法において、成型用基板と電極との間に電圧を印加すると共に、その電極の先端にプラズマ用ガスを供給してプラズマアークを発生させ、そのプラズマアーク中に、上記Ti−Al基材料の組成がTi−32〜34mass%Alとなるように混合したTi粉末とAl粉末の混合粉末をN 2 ガスあるいはその混合ガスであるキャリアガスで送給して上記成型用基板に溶着させると共に急冷し、マトリックスであるTi−32〜34mass%Al基材料中に、セラミックスであるTi 2 AlN粒子を均一に分散させたセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料をin situに形成することを特徴とするプラズマアークを利用したセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料の製造方法である。
【0011】
請求項3の発明は、上記キャリアガスがArガスである請求項1記載のプラズマアークを利用したセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料の製造方法である
【0012】
請求項4の発明は、上記N 2 ガスあるいはその混合ガスであるキャリアガスが、N 2 ガス、あるいはAr+N 2 の混合ガスである請求項記載のプラズマアークを利用したセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料の製造方法である
【0013】
請求項5の発明は、上記TiB 2 粒子の体積含有率が5vol%である請求項1又は3記載のプラズマアークを利用したセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料の製造方法である
【0014】
請求項6の発明は、上記 2 ガスあるいはその混合ガスであるキャリアガスがAr+N 2 の混合ガスであり、キャリアガスのN 2 ガス分圧が30%である請求項2又は4記載のプラズマアークを利用したセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料の製造方法である。
【0015】
以上の構成によれば、プラズマ移行型アークプロセス(以後、PTAプロセスと呼ぶ)を用いて、マトリックスであるTi−Al基材料中にセラミックスを均一に分散させたため、後処理に稠密化プロセスなどを必要としないセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料を得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
実施の形態の製造方法により得られるセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料は、マトリックスであるTi−Al基材料中にセラミックスを均一に分散してなるものであり、かつ、所望の形状にin situで成形できるようにしたものである。
【0018】
実施の形態のプラズマアークを利用したセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料造に用いプラズマ移行型アーク溶接装置の概略図を図1に示す。図1における要部拡大図を図2に、図1における成型用基板の拡大図を図3に示す。
【0019】
図1、図2、および図3に示すように、プラズマ移行型アーク溶接装置20は、溶接トーチ9、成型用基板10、粉末供給手段6、ガスシリンダー11、および各種の制御手段で構成される。
【0020】
幅W、深さDの溝部10a、および冷却水WC をその内部に循環させるための冷却水管25a,25bを備えた成型用基板10の直上に設けられる溶接トーチ9は、電極21をインナーノズル22a、インナーノズル22b、シールドガスノズル23で、順次、囲繞してなるものである。
【0021】
電極21は、リレー手段8を介して、プラズマアーク電源2およびパイロットアーク電源3の陰極、高周波発振器4に接続されると共に、インナーノズル22aは、リレー手段8を介して、パイロットアーク電源3の陽極に接続されている。成型用基板10は、プラズマアーク電源2の陽極に接続されている。
【0022】
また、溶接トーチ9の内部には、電極21とインナーノズル22aとの間の空間にプラズマ用ガスGP を供給するプラズマ用ガス管13、インナーノズル22aとインナーノズル22bとの間の空間にキャリアガスGC を供給するキャリアガス管12、およびインナーノズル22bとシールドガスノズル23との間の空間にシールドガスGS を供給するシールドガス管14が導入されている。
【0023】
さらに、溶接トーチ9の外周部を囲繞(図示せず)する冷却水循環パイプ7a,7bは、リレー手段8を介して、冷却水循環手段7に接続されている。
【0024】
これらのプラズマ用ガス管13、キャリアガス管12、およびシールドガス管14は、ガスシリンダー11に接続されたガス調節手段5にそれぞれ接続されている。また、キャリアガス管12の中途部は、粉末供給手段6に接続されている。
【0025】
プラズマアーク電源2、パイロットアーク電源3、高周波発振器4、ガス調節手段5、粉末供給手段6、および冷却水循環手段7は、制御手段1にそれぞれ接続されている。
【0026】
次に、本実施の形態製造方法を説明する。
【0027】
図1、図2、図3に示すように、パイロットアーク電源3に接続されたプラズマ移行型アーク溶接装置20の溶接トーチ9におけるインナーノズル22aと電極(例えば、W電極)21との間に電圧を印加することによって、溶接トーチ9とインナーノズル22aとの間にパイロットアーク(図示せず)が発生する。
【0028】
次に、リレー手段8を切換えて、プラズマアーク電源2に接続された成型用基板10と電極21との間に電圧を印加すると共に、電極21とインナーノズル22aとの間の空間にプラズマ用ガスGP を供給することによって、電極21〜成型用基板10間にプラズマアークAP が発生する。この時、成型用基板10と電極21との間に電圧を印加する際に高周波発振器4から電極21に高周波を同時に発振することによって、プラズマアークAP の安定性を高めることができる。
【0029】
インナーノズル22aとインナーノズル22bとの間の空間に、粉末供給手段6から供給されるTiとAlの各金属粉末およびセラミックスの原料(例えば、TiB2粉末)を含んだキャリアガス(例えば、Arガス)GCをプラズマアークAP中に送給して、成型用基板10の溝部10aに溶着する。この際、インナーノズル22bとシールドガスノズル23との間の空間に、シールドガス(例えば、Arガス)GSを送給する。つまり、プラズマアークA P 中にキャリアガスG C と共に送給されるのは、Ti−Al基材料の組成がTi−34mass%Al、Ti−Al基材料に分散されるTiB 2 粉末の体積含有率が3〜15vol%となるように混合したTi粉末、Al粉末、及びセラミックスの原料であるTiB 2 粉末の混合粉末である。
【0030】
ここで、成型用基板10の内部には、冷却水管25a〜冷却水管25b〜冷却水管25a間を冷却水WC が循環しており、冷却された成型用基板10の溝部10aに、TiとAlの各金属粉末およびセラミックスの原料を含んだキャリアガスGC が溶着する。
【0031】
これによって、TiとAlの各金属粉末およびセラミックスの原料を含んだキャリアガスGCは急冷され、成型用基板10の溝部10aに、マトリックスであるTi−Al基材料中にセラミックスが均一分散したセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料24が、所望の厚さ・形状にin situで形成することができる。このセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料24は、マトリックスであるTi−34mass%Al基材料中に、セラミックスであるTiB 2 粒子が3〜15vol%の体積含有率で均一に分散されたものである。
【0032】
実施の形態においては、セラミックスとして、TiAl中で熱力学的に安定なTiB 2 挙げているが、特にこれに限定するものではなく、Ti 2 AlNであってもよい。
【0033】
また、本実施の形態においては、キャリアガスGCとしてArガスを挙げているが、特にこれに限定するものではなく、セラミックスとしてTi2AlNを用いる場合は、N2ガスまたはAr+N2の混合ガスを用いてもよい。この場合、前述したプラズマアークA P 中にキャリアガスG C と共に送給されるのは、Ti−Al基材料の組成がTi−32〜34mass%Alとなるように混合したTi粉末とAl粉末の混合粉末である。
【0034】
【実施例】
(実施例1)
粒径が149μm以下の純Ti粉末と粒径が149μm以下の純Al粉末を所定の組成(Ti−32、34、36mass%Al)となるように秤量し、これらの粉末中に、粒径が45〜150μm、密度が4.38g/cm3 、融点が3,063K、硬度が3,370HV のTiB2 粉末を体積含有率がそれぞれ3、5、7、10、15(vol%)となるように添加し、乳鉢で30min混合した。
【0035】
この混合粉末をArガスからなるキャリアガス中に送給し、PTAプロセスを用いて、図3に示したような成型用基板の溝部(幅10mm×深さ5mm)に、15種類のTiB2 セラミックス分散強化Ti−Al基複合材料(以後、32−3、5、7、10、15、34−3、5、7、10、15、および36−3、5、7、10、15と呼ぶ)を作製した。
【0036】
作製したTiB2 セラミックス分散強化Ti−Al基複合材料を長さ10mmに切断し、この試料を長手方向に平行に切断し、その切断面をエメリー研磨した後、アルミナによるバフ研磨を行い、その後、クロール紙液(フッ酸4.4%−硝酸26%水溶液)を用いて12sec腐食し、走査型電子顕微鏡(以下、SEMと呼ぶ)で表面観察を行った。
【0037】
SEMによる表面観察結果から、実施例1における32−3、5、7、10、15、34−3、5、7、10、15、および36−3、5、7、10、15の内、組織全域でラメラ組織を示すのは、34−3、5、7、10、15である。
【0038】
Ti−34mass%Alにおいては、組織全域がTi3 Al(α2 )+TiAl(γ)TiB2 の層状組織(ラメラ組織)を示しており、凝固・変態過程は以下のようになる。
【0039】
L→L+β(初晶)→L+α→α→α2 +γ
すなわち、Ti−34mass%Alである34−3、5、7、10、15がTiB2 セラミックス分散強化Ti−Al基複合材料として好ましい。
【0040】
TiB2 とTi−Alとの間では、共晶反応が起こると考えられており、両相は熱力学的に安定に共存すると考えられている。TiB2 の粒子形態は、初晶としてブロック状および針状のもの、二次晶としてフレーク状のもの、粒状および不定形の未溶融粒子のものとの3種類がある。
【0041】
マトリックスの粒径(ラメラ粒径)はTiB2 含有率により変化し、約3vol%のTiB2 粒子の複合化によりラメラ粒径は著しく微細化する。しかし、それ以上にTiB2 の含有率が増加してもラメラ粒径はほとんど変化しない。また、TiB2 粒子径は、TiB2 含有率により変化し、TiB2 含有率が約5vol%までは、粒子径の粗大化と未溶融粒子の凝集の影響は小さいが、それを越えると、その影響が顕著になってくる。
【0042】
また、ロックウェル硬度(ダイアモンド圧子、5点圧痕、荷重:1,471N、荷重保持時間:25sec)は、TiB2 含有率の増加に伴って単調上昇する。このロックウェル硬度のTiB2 含有率の増加による上昇は、TiB2 粒子変形拘束効果によるものである。
【0043】
次に、5種類のセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料(34−3、5、7、10、15)について、室温での引張特性を評価するために、常温引張強度試験を行った。
【0044】
常温引張試験片は、作製されたTiB2 セラミックス分散強化Ti−Al基複合材料から、放電加工機によって、JIS7号試験片に準拠して採取する。常温引張試験は、室温、大気中で行い、クロスヘッドスピードは0.5mm/minとした。
【0045】
常温におけるTi−34mass%Al中のTiB2 含有率と引張強度との関係を図4に示す。
【0046】
図4に示すように、TiB2 含有率の増加と共に引張強度は増大し、34−5において、最大値の514MPaを示す。しかし、その後は、TiB2 含有率の増加と共に引張強度は減少している。これは、TiB2 含有率が約5vol%を越えると、粒子径の粗大化と未溶融粒子の凝集の影響が顕著になってくるためである。
【0047】
よって、TiB2 によるセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料としては、34−5(5vol%TiB2 /Ti−34mass%Al)がより好ましい。
【0048】
次に、5vol%TiB2 /Ti−34mass%Alの高温での引張特性を評価するために、高温引張強度試験を行った。
【0049】
高温引張試験片は、作製されたTiB2 セラミックス分散強化Ti−Al基複合材料から、放電加工機によって、JIS7号試験片に準拠して採取する。高温引張試験は、973K、1,173K、および1,273Kで行い、クロスヘッドスピードは、治具の熱伝導による加熱を考慮し、試験時間を短縮するために1.0mm/minとした。
【0050】
Ti−34mass%Alおよび5vol%TiB2 /Ti−34mass%Alの温度と引張強度との関係を図5に示す。図中における黒菱印はTi−34mass%Alを、図中における▼印は5vol%TiB2 /Ti−34mass%Alを示している。
【0051】
図5に示すように、本発明によって得られたセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料である5vol%TiB2 /Ti−34mass%Alは、Ti−34mass%Alと比較して約1.5倍の引張強度を有し、特に、1,173Kの高温においても、やや低下はするものの常温と変わらぬ引張強度(約540MPa)を有している。
【0052】
ところが、1,273Kにおいては、Ti−34mass%Alと比較すると、引張強度の低下の度合が著しい。これは、5vol%TiB2 /Ti−34mass%Alの結晶粒径が、Ti−34mass%Alの結晶粒径よりも極めて微細であるため、粒界すべりによる粒界破壊がより顕著に現れたものと考えられる。
【0053】
それでも、常温(室温)におけるTi−34mass%Alの引張強度(約340MPa)を上回る引張強度(約360MPa)が得られている。すなわち、TiB2 の析出分散による強化効果は、1,273Kまで認められる。
【0054】
(実施例2)
粒径が149μm以下の純Ti粉末と粒径が149μm以下の純Al粉末を所定の組成(Ti−32、34、36mass%Al)となるように秤量し、乳鉢で30min混合した。
【0055】
この混合粉末をN2ガスまたはN2ガス+Arガスからなるキャリアガス中に送給し、このキャリアガスのN2 ガス分圧を0、10、30、50、100(%)と変化させ、PTAプロセスを用いて、図3に示したような成型用基板の溝部(幅10mm×深さ10mm)に、15種類のTi2AlNセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料(以後、32−0、10、30、50、100、34−0、10、30、50、100、および36−0、10、30、50、100と呼ぶ)を作製した。
【0056】
作製したTi2 AlNセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料を長さ10mmに切断し、この試料を長手方向に平行に切断し、その切断面をエメリー研磨した後、アルミナによるバフ研磨を行い、その後、クロール紙液(フッ酸4.4%−硝酸26%水溶液)を用いて12sec腐食し、SEMで表面観察を行った。
【0057】
SEMによる表面観察結果から、実施例2における32−0、10、30、50、100、34−0、10、30、50、100、および36−0、10、30、50、100の内、組織全域でラメラ組織を示すのは、32−0、10、30、50、100および34−0、10、30である。
【0058】
すなわち、Ti−32、34mass%Alである32−0、10、30、50、100および34−0、10、30がTi2 AlNセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料として好ましい。
【0059】
Ti−Al基複合材料中に析出する窒化物の形態としては、針状のものと塊状のものとの2種類に大別される。針状の析出窒化物は、Ti2 AlNであり、ラメラ組織を横切るように存在する。塊状の析出窒化物は、内側の相がTiN、外側の相がTi2 AlNである。どちらの析出窒化物も、マトリックス界面に反応層は見られず、析出窒化物はマトリックス中で熱力学的に安定に存在している。
【0060】
マトリックスの粒径(ラメラ粒径)はN2 ガス分圧により変化し、Ti−32、34、36mass%Alの全てにおいて、N2 ガス分圧が10%位でラメラ粒径は著しく微細化する。しかし、それ以上にN2 ガス分圧を増加させてもラメラ粒径はほとんど変化しない。
【0061】
析出窒化物は、N2 ガス分圧により変化し、Ti−32、34、36mass%Alの全てにおいて、N2 ガス分圧が大きくなるのに伴って析出窒化物の生成量も増加する。すなわち、キャリアガス中のN2 ガス分圧を変化させることによって、析出窒化物の生成量を制御することができる。
【0062】
析出窒化物の粒子径はN2 ガス分圧により変化し、N2 ガス分圧が30%位までは、粒子径の粗大化と未溶融粒子の凝集の影響は小さいが、N2 ガス分圧が30%を越えると、その影響が顕著になってくる。
【0063】
ロックウェル硬度(ダイアモンド圧子、5点圧痕、荷重:1,471N、荷重保持時間:25sec)は、N2 ガス分圧が30%位までは大きく上昇するが、それ以上になると硬度上昇の度合は緩やかになる。このロックウェル硬度のN 2 ガス分圧の増加による上昇は、析出窒化物粒子変形拘束効果によるものである。
【0064】
次に、Ti−32、34、36mass%Alにおいて、室温での引張特性を評価すべく、N2 ガス分圧を変化させた時の常温引張強度試験を行った。図中における黒丸印はTi−32mass%Alを、図中における▲印はTi−34mass%Alを、図中における■印はTi−36mass%Alを示している。
【0065】
常温引張試験片は、作製されたTiB2 セラミックス分散強化Ti−Al基複合材料から、放電加工機によって、JIS7号試験片に準拠して採取する。常温引張試験は、室温、大気中で行い、クロスヘッドスピードは0.5mm/minとした。
【0066】
常温におけるN2 ガス分圧と引張強度との関係を図6に示す。
【0067】
図6に示すように、N2 ガス分圧の増加と共に引張強度は増大し、32−30および34−30において、最大値の507MPaを示す。しかし、その後は、N2 ガス分圧の増加と共に引張強度は減少している。これは、N2 ガス分圧が30%を越えると、粒子径の粗大化と未溶融粒子の凝集の影響が顕著になってくるためである。
【0068】
よって、Ti2 AlNによるセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料としては、32−30および34−30(Ti−32mass%Al+30%N2 ガスおよびTi−34mass%Al+30%N2 ガス)がより好ましい。
【0069】
次に、Ti−34mass%Al+30%N2 ガスの高温での引張特性を評価するために、高温引張強度試験を行った。
【0070】
高温引張試験片は、作製されたTi2 AlNセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料から、放電加工機によって、JIS7号試験片に準拠して採取する。高温引張試験は、973K、1,173K、および1,273Kで行い、クロスヘッドスピードは、治具の熱伝導による加熱を考慮し、試験時間を短縮するために1.0mm/minとした。
【0071】
Ti−34mass%AlおよびTi−34mass%Al+30%N2 ガスの温度と引張強度との関係を図7に示す。図中における黒菱印はTi−34mass%Alを、図中における▼印はTi−34mass%Al+30%N2 ガスを示している。
【0072】
図7に示すように、本発明によって得られたセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料であるTi−34mass%Al+30%N2 ガスは、Ti−34mass%Alと比較して約1.5倍の引張強度を有し、特に、1,173Kの高温においても、やや低下はするものの常温と変わらぬ引張強度(約500MPa)を有している。
【0073】
ところが、1,273Kにおいては、Ti−34mass%Alと比較すると、引張強度の低下の度合が著しい。これは、Ti−34mass%Al+30%N2 ガスの結晶粒径が、Ti−34mass%Alの結晶粒径よりも極めて微細であるため、粒界すべりによる粒界破壊がより顕著に現れたものと考えられる。
【0074】
それでも、常温(室温)におけるTi−34mass%Alの引張強度(約340MPa)を上回る引張強度(約390MPa)が得られている。すなわち、窒化物の析出分散による強化効果は、1,273Kまで認められる。
【0075】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、マトリックスであるTi−34mass%Al基材料中にセラミックスであるTiB 2 粒子を3〜15vol%の体積含有率で均一に分散させてなる稠密なセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料、又はマトリックスであるTi−32〜34mass%Al基材料中に、セラミックスであるTi 2 AlN粒子を均一に分散させてなる稠密なセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料を、所望の形状にin situで成型できるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施の形態のセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料製造に用いる製造装置の概略を示す図である。
【図2】 図1における要部拡大図である。
【図3】 図1における成型用基板の拡大図である。
【図4】 Ti−34mass%AlにおけるTiB2含有率と引張強度との関係を示す図である。
【図5】 Ti−34mass%Alおよび5vol%TiB2/Ti−34mass%
Alにおける温度と引張強度との関係を示す図である。
【図6】 Ti−32、34、36mass%AlにおけるN2ガス分圧と引張強度との関係を示す図である。
【図7】 Ti−34mass%AlおよびTi−34mass%Al+30%N2ガスにおける温度と引張強度との関係を示す図である。
【符号の説明】
10 成型用基板
21 電極
25a,25b 冷却水管(冷却手段)
P プラズマ用ガス
C キャリアガス
P プラズマアーク

Claims (6)

  1. Ti−Al基材料中にセラミックスが分散されたセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料の製造方法において、成型用基板と電極との間に電圧を印加すると共に、その電極の先端にプラズマ用ガスを供給してプラズマアークを発生させ、そのプラズマアーク中に、上記Ti−Al基材料の組成がTi−34mass%Al、Ti−Al基材料に分散されるTiB 2 粉末の体積含有率が3〜15vol%となるように混合したTi粉末、Al粉末、及びセラミックスの原料であるTiB 2 粉末の混合粉末をキャリアガス送給して上記成型用基板に溶着させると共に急冷し、マトリックスであるTi−34mass%Al基材料中に上記セラミックスであるTiB 2 粒子を3〜15vol%の体積含有率で均一に分散させたセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料をin situに形成することを特徴とするプラズマアークを利用したセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料の製造方法
  2. Ti−Al基材料中にセラミックスが分散されたセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料の製造方法において、成型用基板と電極との間に電圧を印加すると共に、その電極の先端にプラズマ用ガスを供給してプラズマアークを発生させ、そのプラズマアーク中に、上記Ti−Al基材料の組成がTi−32〜34mass%Alとなるように混合したTi粉末とAl粉末の混合粉末をN 2 ガスあるいはその混合ガスであるキャリアガスで送給して上記成型用基板に溶着させると共に急冷し、マトリックスであるTi−32〜34mass%Al基材料中に、セラミックスであるTi 2 AlN粒子を均一に分散させたセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料をin situに形成することを特徴とするプラズマアークを利用したセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料の製造方法。
  3. 上記キャリアガスがArガスである請求項1記載のプラズマアークを利用したセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料の製造方法。
  4. 上記N 2 ガスあるいはその混合ガスであるキャリアガスが、N 2 ガス、あるいはAr+N 2 の混合ガスである請求項記載のプラズマアークを利用したセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料の製造方法。
  5. 上記TiB 2 粒子の体積含有率が5vol%である請求項1又は3記載のプラズマアークを利用したセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料の製造方法。
  6. 上記 2 ガスあるいはその混合ガスであるキャリアガスがAr+N 2 の混合ガスであり、キャリアガスのN 2 ガス分圧が30%である請求項2又は4記載のプラズマアークを利用したセラミックス分散強化Ti−Al基複合材料の製造方法。
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