JP4121220B2 - 複合トレー容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙製容器と合成樹脂フィルムまたはシート(以下、単に「合成樹脂フィルム」という)とが積層された構造の複合トレー容器に関し、さらに詳しくは、使用後に紙製容器と合成樹脂フィルムとが容易に剥離可能な複合トレー容器に関する。本発明の複合トレー容器は、加工惣菜などの調理食品や半調理食品などの包装容器として好適であり、使用後には、紙基材と合成樹脂フィルムとを簡単に分離して廃棄物処理を行うことができる。
【0002】
【従来の技術】
従来、加工惣菜などの調理食品や半調理食品の包装容器として、プラスチック製トレー容器が汎用されている。ところが、プラスチック製品は、廃棄物処理や環境汚染の問題が深刻になっており、プラスチック製トレー容器についても、それに代替し得る環境に優しいトレー容器の開発が求められている。
【0003】
前記の要求に応えるものとして、組立式紙製容器の内面に合成樹脂フィルムを積層接着してなる複合トレー容器が開発されている(例えば、特開平10−114327号公報、特開平10−114342号公報)。紙基材だけからなる紙製トレー容器は、廃棄物処理や環境汚染問題は小さいものの、耐水性や耐油性に劣るため、水分や油分を含有する食品の包装には適していない。また、紙製トレー容器は、ガスバリヤー製に乏しく、食品の保存性に劣る。これに対して、前記の複合トレー容器は、紙製容器の内面に合成樹脂フィルム層があるため、耐水性や耐油性に優れており、ガスバリヤー性を付与することも可能である。しかも、該複合トレー容器は、紙基材を主体とし、合成樹脂フィルム層が薄いため、プラスチック製トレー容器に比べて、廃棄物処理や環境汚染の問題が著しく軽減されている。
【0004】
しかしながら、従来の複合トレー容器は、紙製容器と合成樹脂フィルムとを接着剤層を介して積層接着しているため、使用後に、紙基材と合成樹脂フィルムとを剥離することが困難であり、多くの場合、そのままの状態で廃棄され、処理されているのが実情である。従来、紙製容器と合成樹脂フィルムとを積層接着しているのは、次のような理由による。紙製容器は、型抜きした板紙を容器の形状に組み立てて形成されており、それ自体では形状保持性に劣っている。この紙製容器の内面に合成樹脂フィルムを積層するには、紙製容器を金型内に配置し、合成樹脂フィルムを真空成形及び/または圧空成形(シート成形法)により紙製容器の内面に密着させている。合成樹脂フィルムは、薄いものであるため、接着剤層を介して紙製容器と接着させないと、すぐに剥れてしまい、紙製容器の形状を保持させることもできなくなる。つまり、従来の複合トレー容器は、接着剤によって、紙製容器と合成樹脂フィルムとを積層接着させることにより、構造的一体性を保持している。
【0005】
図8に、従来の複合トレー容器の一例の断面図を示す。型抜きした板紙を容器の形状に組み立てて形成された紙製容器81の内面に、接着剤層82を介して合成樹脂フィルム83が積層接着されている。接着剤層は、通常、ホットメルトタイプやエマルジョンタイプの接着剤を予め板紙の片面に塗布することにより形成されている。合成樹脂フィルムに、熱により紙と接着するヒートシール性樹脂層を設けて、該ヒートシール性樹脂層面で紙製容器と接着させることもある。図8の複合トレー容器では、フランジ部が設けられており、該フランジ部の上面に蓋材84が接着されている。蓋材84は、通常、蓋材に設けたイージーピール性のシーラント層により、該フランジ部の合成樹脂フィルム面と接着されている。
【0006】
図8に示すような従来の複合トレー容器では、接着剤層82が存在しないと、合成樹脂フィルム83が簡単に剥れてしまうことが分かる。また、接着剤層82が存在しないと、容器内に内容物を充填後、容器のフランジ部で蓋材84を接着固定させることができない。従来の複合トレー容器は、蓋材を簡単に剥すことができるものの、紙製容器と合成樹脂フィルムの端部が切り揃えられているため、使用後に、紙製容器と合成樹脂フィルムを引き剥して分離することは、構造的にも困難であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、紙製容器と合成樹脂フィルム(シートを含む)とからなる複合トレー容器であって、使用中は構造的一体性を保持しながら、使用後には、僅かの外力を加えることにより、紙製容器と合成樹脂フィルムとを容易に剥離することができる複合トレー容器を提供することにある。
【0008】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究した結果、紙製容器の構造と合成樹脂フィルムの積層構造に工夫を加えることにより、接着剤を使用することなく、構造的一体性を保持した複合トレー容器の得られることを見いだした。より具体的に、紙製容器のフランジ板に内側に突出する爪部を形成し、かつ、合成樹脂フィルムの端部をフランジ板の外縁部で下方に折り曲げることにより、紙製容器と合成樹脂フィルムとが構造的に一体化した複合トレー容器を得ることができる。この複合トレー容器は、使用後、フランジ板の外縁部で下方に折り曲げた合成樹脂フィルムの端部を掴んで、紙製容器から容易に剥離することができる。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、多角形の底面板と、該底面板に連結して組み立てられ、該底面板に対してある角度をもって立ち上がっている複数の側壁板と、各側壁板の上端部が外側に延出したフランジ板とを備えた紙製容器の内面及びフランジ板上面に、合成樹脂フィルムまたはシートが積層された複合トレー容器において、
(1) 各フランジ板の側壁板との境界線上に、側壁板に凸状の切り込み入れることによって形成された内側に突出する少なくとも1つの爪部が設けられており、
(2) 合成樹脂フィルムまたはシートが接着剤層を介することなく紙製容器の内面及びフランジ板上面に積層され、かつ、
(3) 合成樹脂フィルムまたはシートの端部がフランジ板の外縁部で下方に折り曲げられている
ことを特徴とする複合トレー容器が提供される。
【0010】
本発明の複合トレー容器において、合成樹脂フィルムまたはシートの端部がフランジ板の外縁部で下方に折り曲げられていると共に、フランジ板の外縁部の全周またはその一部において、該端部がフランジ板の下面側にまで更に折り曲げられた折込部が設けられていることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
1.複合トレー容器の製造工程
本発明の複合トレー容器は、従来の製造工程に工夫を加えることにより、製造することができる。そこで、先ず、従来の複合トレー容器の製造工程について、図7を参照しながら説明する。図7に示すように、型抜きした板紙71を製函して、板紙のみからなる紙製トレー容器72を作成する。紙製トレー容器72は、開口部の全周にわたってフランジ部(フランジ板)が形成されている。製函された紙製トレー容器72を成形型74の成形金型73内に載置し、次いで、シート成形工程に送る。
【0012】
シート成形工程では、合成樹脂フィルム(またはシート)75をヒーター76で両面から加熱して軟化させた後、上型77の下部に移送する。軟化したフィルムをクランプで固定し、成形型74と上型77をフィルムに密着させる。上型77は、圧空ボックスとなっており、吹き込み口(図示せず)から圧縮空気を加えることにより、軟化したフィルムを紙製トレー容器72の内面とフランジ板上面に積層させる。成形金型73には通気孔(図示せず)が、また、成形型74の下部には通気管(図示せず)がそれぞれ設けられており、圧空成形時に紙製トレー容器72内部の空気が排気されるようになっている。空気の排気は、減圧にすることにより行ってもよい。すなわち、真空成形と圧空成形を組み合わせることができる。
【0013】
従来の製造方法では、紙製トレー容器72の内面側になる板紙の片面には、通常、予めホットメルトタイプまたはエマルジョンタイプなどの接着剤が塗布されており、シート成形工程では、熱成形と熱接着とが同時に行われる。合成樹脂フィルムにヒートシール性樹脂層を設けて、板紙への接着剤の塗布を省略することもある。しかし、従来の製造工程では、いずれにせよ紙製容器と合成樹脂フィルムとは、接着剤層を介して積層接着された構造を有していた。シート成形工程の後、積層品は、プレス成形工程に送られ、そこで、フランジ部周辺の不要な部分がトリミングされて、紙製容器と合成樹脂フィルムとが積層した構造を有する複合トレー容器78が得られる。本発明の複合トレー容器は、基本的には上記製造工程を利用して製造される。
【0014】
2.紙製容器
本発明では、紙製容器と合成樹脂フィルムとを接着剤層を介することなく積層するために、紙製容器の構造に工夫を加えている。具体的には、図1に示すような形状に型抜きした板紙を組み立てて、図2に示す紙製容器を作製する。この紙製容器は、矩形状の底面板1と、該底面板に連結されて組み立てられ、かつ該底面板に対してある角度をもって立ち上がっている一対の側壁板2,2及び一対の側壁板3,3と、これらの側壁板のそれぞれの上端部が外側にほぼ水平に延出したフランジ板4,4及び5,5とを備えている。
【0015】
側壁板の底面板に対する角度は、通常、鈍角である。強度補強の観点からは、各フランジ板の端部同士が部分的に重ね合わされた構造を有する紙製容器であってもよいが、この重ね合わせ部の段差により、蓋材との間に隙間が生じやすいので、蓋材による高度の密封性が要求される場合には、各フランジ板の端部同士が突き合わされた構造とすることが好ましい。ただし、用途によっては、蓋材による厳密なシール性が要求されないことがあり、そのような場合には、図6に示すように、フランジ板のコーナー部に板紙が欠けている構造の紙製容器であってもよい。図6には、板紙が欠けているコーナー部61と、フランジ板62とを有する複合トレー容器が示されている。
【0016】
図1及び2には、全体の形状が四角形の紙製容器を示したが、例えば、五角形や六角形、八角形などの四角形以外の多角形であってもよい。また、底面板が四角形であっても、側壁板の形状を変えることにより、開口部が五角形や六角形であるものも作ることができる。本発明では、多角形の底面板と、該底面板に連結して組み立てられ、該底面板に対してある角度をもって立ち上がっている複数の側壁板と、各側壁板の上端部が外側に延出したフランジ板とを備えた紙製容器であれば、使用することが可能である。
【0017】
本発明では、図1及び2に示すように、各フランジ板4,4及び5,5と側壁板との境界線7,7上で、フランジ板から容器の内側に突出する爪部6,6・・・・を形成する。このような爪部は、図1に示すように、前記境界線上で、側壁板側に爪部の形状をした凸状の切り込み入れることによって形成することができる。この凸状の切り込みは、製函時に境界線7,7が折り曲げられることにより、内側に突出した爪部6,6を形成する。板紙の型抜き時に、この境界線をミシン罫により形成することが好ましい。この爪部6,6は、各フランジ板に少なくとも1つ設けられていることが必要である。爪部の設置数は、複合トレー容器の大きさやフランジ板の長さにもよるが、好ましくは、各フランジ板ごとに2個以上であり、より好ましくは2〜10個、特に好ましくは2〜6個程度である。爪部の大きさは、その長さが通常3〜20mm、好ましくは5〜15mm程度であり、突出幅が通常0.5〜5mm、好ましくは1〜3mm程度である。爪部は、合成樹脂フィルムを係止する機能を果たすものであるから、その機能を十分に発揮することができ、同時に緊張による合成樹脂フィルムの破断を防ぐように、形状や個数などを設定する。爪部の各角部は、合成樹脂フィルムにピンホールが発生するのを防ぐために、丸くする(Rをとる)ことが望ましい。
【0018】
3.合成樹脂フィルムの積層構造
本発明の複合トレー容器は、フランジ部に内側に突出した爪部を設けた構造の紙製容器を用いて、図7に示す製造工程によってシート成形を行うことにより得ることができる。ただし、従来品と異なるのは、合成樹脂フィルムの端部をフランジ板の外縁部で下方に折り曲げ加工する点である。このような折り曲げ加工を行うには、例えば、成形金型(雌型)の外側に段差を設ける方法などがある。
【0019】
図3は、本発明の複合トレー容器の積層構造の一例を示す断面図である。紙製容器31の内面及びフランジ板35上面に、接着剤層を介することなく、合成樹脂フィルム38が積層されている。図3は、紙製容器の爪部を含むラインでの断面図である。合成樹脂フィルム38は、フランジ板35の外縁部で下方に折り曲げられて、折曲部39を形成している。合成樹脂フィルムの端部は、フランジ板の外縁部の全周またはその一部において、フランジ板の下面側にまで更に折り曲げて折込部40を形成することが好ましい。
【0020】
すなわち、図4(a)に示すように、合成樹脂フィルム42は、紙製容器41のフランジ板の外縁部で下方に折り曲げられ、更にフランジ板の下面側にまで折り曲げられて、折込部43を形成することができる。図4(b)に示すように、合成樹脂フィルム42は、その材質がリジッドな場合などには、単に、紙製容器41のフランジ板の外縁部で下方に折り曲げられた形状の折曲部44を形成していてもよい。折曲部44をフランジ板の下面側に傾斜させると、合成樹脂フィルムをより剥れ難くすることができる。しかし、合成樹脂フィルムの端部をフランジ板の下面側にまで折り曲げて折込部を形成すると、使用時に合成樹脂フィルムが確実に剥れ難くなるので好ましい。このような折込部は、フランジ板の外縁部の全周にわたって形成することができるが、図5に示すように、フランジ板の外縁部の一部に形成してもよい。図5には、爪部に対応するフランジ板の外縁部の一部に折込部51が設けられ、その他の部分52には、折込部が設けられていない場合が示されている。
【0021】
紙製容器のフランジ板に内側に突出した爪部を設け、かつ、シート成形時に合成樹脂フィルムの端部をフランジ板の外縁部で下方に折り曲げることにより、合成樹脂フィルムが剥れることなく、かつ、複合容器としての構造的一体性を保持することができる。フランジ板に爪部がないと、合成樹脂フィルムの端部に折り曲げ部を設けても、合成樹脂フィルムは、紙製容器の内面から簡単に剥れてしまう。また、爪部によって合成樹脂フィルムを係止することにより、爪部と折曲部との間でフランジ板上面の合成樹脂フィルムを緊張させることができ、それによって、合成樹脂フィルムが紙製容器から剥れないようにするとともに、蓋材をフランジ板上面で合成樹脂フィルムを介して接着させることができる。
【0022】
図3に示すような合成樹脂フィルムの積層構造を採用することにより、使用時には複合容器としての構造的一体性を保持することができ、使用後には、フランジ板の外縁部で下方に折り曲げた合成樹脂フィルムの折曲部39の端部を手で掴んで引っ張ることにより、合成樹脂フィルムを紙製容器から容易に剥離することができる。
【0023】
従来品では、一般に紙製容器のフランジ板の幅を少し大きめに作成しておき、シート成形工程で合成樹脂フィルムを積層接着した後、プレス工程でフランジ部周辺の不要な部分をトリミングして、フランジ板と合成樹脂フィルムの端部を切り揃えていた。本発明品を製造するには、紙製容器のフランジ板の幅を製品の幅と一致させ、かつ、プレス工程では、フランジ板の外縁部で下方に折り曲げた合成樹脂フィルムの先端部を少し残して、合成樹脂フィルムの不要な部分のみをトリミングすればよい。
【0024】
4.構成材料
紙容器は、一般に板紙を用いて作成されるが、断熱性などが要求される用途には、段ボールを使用することもできる。紙製容器を作製するのに使用する板紙の坪量は、通常150g/m2 以上、好ましくは190〜500g/m2 、より好ましくは250〜400g/m2 である。板紙の厚みは、通常0.1mm以上、好ましくは0.1〜1.2mm、よい好ましくは0.15〜1.0mmである。用途によっては、坪量及び厚みが前記範囲外のものであってもよい。板紙には、耐水性向上などの目的で、容器の外側になる片面に撥水加工やラミネート加工を施すことができる。板紙の容器の外側になる片面に印刷を施して、美粧化し、商品価値を高めることできる。板紙の容器の内面になる片面にも、所望により印刷を施すことができる。この印刷には、紫外線硬化型インクなどが好適に用いられる。板紙には、接着剤を塗布しない。
【0025】
断熱用途に用いる段ボールとしては、2枚のライナーの間に段形成した中芯をサンドイッチ状に貼り合わせた両面段ボールが好ましい。段ボール用ライナーの坪量は、通常160〜340g/m2 である。段ボール中芯の坪量は、通常115〜180g/m2 である。段ボールにも、板紙と同様に、撥水加工、ラミネート加工、印刷などを施すことができる。
合成樹脂フィルム(シートを含む)としては、特に限定されず、複合トレー容器の用途に応じて、フレキシブルなものからリジッドなものまで、あるいはガスバリヤー性を有するものからガスバリヤー性のないものまで、さらには単層フィルムから多層フィルムまで、種々のものを使用することができる。
【0026】
単層フィルムとしては、例えば、PP(ポリプロピレン)、A−PET(非晶性ポリエチレンテレフタレート)、HIPS(ハイインパクトポリスチレン)、PVC(塩化ビニル)、PC(ポリカーボネート)などのフィルムやシートが挙げられる。多層フィルムとしては、例えば、A−PET/CPP(A−PET/キャストポリプロピレン)、A−PET/EVOH(A−PET/エチレンビニルアルコール共重合体)、K−コートナイロン/CPP、HIPS/EVOH、PC/EVOH、PVC/EVOH、PO/EVOH/PO(ポリオレフィン/EVOH/ポリオレフィン)などの層構成の多層フィルムまたはシートが挙げられる。多層フィルムの各層間には、必要に応じて接着剤層を配置してもよい。
【0027】
複合トレー容器がガスバリヤー性を要求される場合には、ガスバリヤー性樹脂を単層フィルムとして、あるいは多層フィルムの構成層として使用することができる。ガスバリヤー樹脂としては、例えば、EVOH、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂、メタキシリレンジアミンアジバミド(MXナイロン、MXD−6ナイロン)などを挙げることができる。これらのガスバリヤー性樹脂の改質のために、マイナー成分を添加することができる。多層構成の場合、ガスバリヤー性樹脂層の層厚みは、一般に5〜25μmである。ガスバリヤー性樹脂層は、多層フィルム中では、2層以上に分割した、スプリットバリヤー層とすることもできる。
【0028】
包装材料分野などで一般にヒートシール性樹脂層と解される樹脂層を有する多層フィルムであっても、複合トレー容器の成形条件下で紙製容器と接着しないものは、該樹脂層が接着剤層として機能していないので、そのような多層フィルムも本発明の合成樹脂フィルムとして使用することができる。また、ヒートシール性樹脂層を有する多層フィルムやシートであっても、該ヒートシール性樹脂層を蓋材とのシール面として使用するなどして、ヒートシール性樹脂層面で紙製容器と接着させなければ、本発明の合成樹脂フィルムとして使用することができる。いずれにしても、シート成形(熱成形)時に、紙と積層する面が加熱接着することがない単層または多層フィルムやシートであれば、本発明の合成樹脂フィルムとして使用することができる。
【0029】
合成樹脂フィルムは、延伸フィルム及び未延伸フィルムの両方を使用することが可能であるが、シート成形性の観点から、多くの場合、未延伸フィルム(シート)が好ましく用いられる。合成樹脂フィルムの厚みは、通常0.1〜1mm、好ましくは0.15〜0.5mm程度である。ただし、複合トレー容器の用途によっては、これよりも薄いフィルムや厚いフィルムを使用することができる。本発明の複合トレー容器において、紙製容器と合成樹脂フィルムの重量比は、特に限定されないが、紙製容器の重量比が大きいことが、廃棄物処理や環境汚染の問題を緩和する上で好ましい。複合トレー容器における紙製容器(紙基材)の割合は、好ましくは50重量%超過、より好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。紙基材の割合は、多くの場合80重量%以上であり、その上限は90重量%程度である。ただし、本発明の複合トレー容器では、使用後に合成樹脂フィルムを容易に剥離することができるため、廃棄物処理の観点からは、紙基材の割合が前記よりも低いものであっても、問題なく使用することができる。
【0030】
5.蓋材
本発明の複合トレー容器は、蓋材と組み合わせて使用することができる。蓋材は、通常、複合トレー容器のフランジ部上面で合成樹脂フィルム層を介して積層接着される。フランジの構造並びにフランジ上の多層フィルムを平坦に形成することにより、蓋材による密封性を高めることができる。蓋材としては、少なくともガスバリヤー層とシール層とを有するものであることが好ましい。ガスバリヤー層としては、ガスバリヤー性樹脂層、蒸着膜、またはこれらの組み合わせなどから構成される。シール層は、通常、ヒートシール性樹脂から形成される。
【0031】
蓋材としては、内容物を見えるようにするために、透明性が要求される場合には、耐熱・透明ガスバリヤー性多層フィルムが使用される。蓋材には、防曇性を付与することができる。防曇剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステルなどの公知のフィルム用防曇剤を用いることができ、樹脂層への練り込みや表面塗布法により、蓋材に防曇性を付与することができる。内容物を見えるようにする必要がない場合や、紫外線の影響を受けたくない内容物の場合は、蓋材として、紙基材とガスバリヤー性多層フィルムとを積層一体化したものが使用される。また、内容物が見えるように、部分的に透明なフィルムやシートにより窓を形成した蓋材も使用することができる。所望により、これらの構造以外の蓋材を用いてもよい。蓋材による密封包装が必要ではない場合には、蓋材として、嵌合タイプの成形品を使用することができる。嵌合タイプの蓋材は、複合トレー容器のフランジ部の外周に嵌合させて蓋をすることができる形状のものである。
【0032】
蓋材は、一般に、密閉性と易開封性(イージーピール性)に配慮した易開封性シール層や易開封性シール機構を設けたものとすることが好ましい。蓋材には、模様や情報などを印刷することができる。印刷には、公知のフィルム用の表印刷法や裏印刷法が適用可能である。紙基材へは、例えば、紫外線硬化型インクを用いたオーバニス塗布した表印刷及び裏印刷が可能である。
【0033】
具体的な蓋材の構成例としては、以下のようなものを挙げることができる。
(1) 透明性が要求される場合(多層フィルム構成):
▲1▼蒸着PET/印刷//ONy//イージーピールシーラント
厚みの一例:12/印刷/5/15/5/60μm。シール層の厚みは、全層の40%以上であることが望ましい。イージーピールシーラントには、防曇性を付与することが好ましい。
▲2▼A−PET//EVOH//イージーピールシーラント
▲3▼PP//蒸着PET//PP/イージーピールシーラント
▲4▼PP//EVOH//イージーピールシーラント
【0034】
(2) 紙基材とガスバリヤー性多層フィルムを積層一体化したものの場合
紙基材の坪量としては、紙製容器の板紙のそれと同じか、それより小さいものが好ましく、通常150〜500g/m2 、好ましくは150〜300g/m2 であり、その厚みは、通常0.1〜1.2mm、好ましくは、0.1〜0.7mmである。蓋材の紙基材と貼り合わせる多層フィルムの例としては、次のようなものを挙げることができる。
▲1▼PE//EVOH//イージーピールシーラント
▲2▼PE//ONy//イージーピールシーラント
【0035】
なお、上記各例において、蒸着PETは、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にケイ素酸化物や酸化アルミニウムなどの蒸着膜が形成されたものであり、蒸着面は、多層フィルムの内側に配置される。ONyは、延伸ナイロンフィルムであり、A−PETは、非結晶性ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、PPは、ポリプロピレンフィルムであり、EVOHは、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルムであり、PEは、ポリエチレンフィルムである。//は、接着剤層があることを表す。
【0036】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。
[実施例1]
坪量(目付け)320g/m2 の板紙(厚み:0.3mm)を型抜きして、図1に示す型抜きした板紙を作製した。この板紙を製函して、図2に示す紙製容器を作成した。紙製トレー容器は、底面板が縦110mm×横150mm、開口部が縦120mm×横160mm、フランジ板の幅が10mm、側壁板の縦の長さが20mmであった。側壁板の底面板に対する角度は、105度であった。爪部の数は、図1に示すように、各フランジ板に2〜3個であった。爪部の形状は、長さが10mmで、突出幅が2mmであり、角にRをとったものである。
この紙製トレー容器を成形型の成形金型内に載置し、次いで、シート成形工程に送付した。シート成形工程では、図7に示すように、ロール状に巻回した多層シート〔層構成は、紙製容器と接触する側から、PP//EVOH//無水マレイン酸変性エチレン・アクリル酸エステル樹脂(融点=98℃、MFR=8)である。〕をヒーターで両面から加熱して軟化させた後、上型の下部に移送した。軟化したシートをクランプで固定し、成形型と上型を多層シートに密着させた。上型は、圧空ボックスとなっており、吹き込み口から圧縮空気を加えることにより、軟化した多層シートを紙製容器の内面とフランジ上面に積層させた。
【0037】
このシート成形時に、図3に示すように、多層シートの端部をフランジ板の外縁部で下方に折り曲げるとともに、フランジ板の外縁部の全周において、該端部をフランジ板の下面側にまで更に折り曲げて折込部を設けた。折込部の幅は、約1mmであった。次に、プレス成形工程に送付し、フランジ板周辺の不要な多層シートの部分をトリミングして、複合トレー容器を得た。トリミング後の前記折込部からの多層シート端部までの幅(耳部)は、約4mmであった。紙基材と多層フィルムとの重量比は、約8:2であった。
このようにして得られた複合トレー容器において、多層シートは、紙製容器の底面板及び側壁板に接着せずに、僅かな空間をおいて浮き上がっていた。しかしながら、フランジ板上では、爪部と折曲部(特に折込部)によって多層シートが緊張して係止されており、それによって、多層シートは、紙製容器から剥れないようになっていた。また、蓋材をフランジ板上面で多層シートを介して接着させることが可能であった。
【0038】
この複合トレー容器に、ジャム100gを80℃で熱間充填した後、蒸着PET/印刷/接着層/ONy/接着層/イージーピールシーラント層(PP+アイオノマーブレンド系)〔厚み構成は、12/印刷/5/15/5/60μm〕(内面防曇性を付与)の層構成を有する蓋材をフランジ板上でヒートシールした。ヒートシールに際して、真空ガス充填包装機を用いたラインで、混合ガス(窒素/炭酸ガス=90/10体積%)によりガス置換シールを行った。シール部は、完全に密封されていることが確認された。
この複合トレー容器は、食品包装に使用することが可能であり、使用中に多層シートの剥離等の問題は生じなかった。使用後に、前記折込部から約4mm幅で延びている多層シートの端部を手で掴んで引き剥したところ、容易に紙製容器から剥離することができた。
【0039】
[比較例1]
紙基材に予めホットメルトタイプの接着剤を10g/m2 塗布し、かつ、爪部を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして紙製容器を作製した。この紙製容器と多層シート(上同)を使用し、実施例1と同様にシート成形を行って複合トレー容器を作製した。ただし、常法に従って、紙製容器と多層シートを積層接着し、かつ、トリミング工程では、フランジ板と多層シートの端部を切り揃えた。
このようにして得られた複合トレー容器では、多層シートは、紙製容器の底面板、側壁板、及びフランジ板に接着していた。実施例1と同様にして、この複合トレー容器にジャムの充填と蓋材によるヒートシールを行ったところ、いずれも良好に行うことができた。しかし、使用後に、多層シートを引き剥そうとしたところ、フランジ板端部で多層シートを掴むこと自体が困難であり、また、接着剤により強固に接着しているため、多層シートを紙製容器から引き剥すことは困難であった。多層シートを無理に引き剥そうとすると、多層シートに紙が斑に付着していた。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、紙製容器と合成樹脂フィルムまたはシートとからなる複合トレー容器であって、使用中は構造的一体性を保持しながら、使用後には、僅かの外力を加えることにより、紙製容器と合成樹脂フィルムまたはシートとを容易に剥離することができる複合トレー容器が提供される。したがって、本発明の複合トレー容器は、廃棄物処理問題を改善することができる。本発明の複合トレー容器は、接着剤を使用する必要がないため、コスト低減に寄与することができる。さらに、従来品に比べて、紙基材と合成樹脂フィルムやシートとの収縮率の際に起因する容器の変形(例えば、フランジ部のソリ、底面や側面の膨らみ、全体のヒネリ)が防止される。合成樹脂フィルムまたはシートが爪部と折曲部(特に折返部)とで緊張下に係止されているため、また、底面部や側面部で合成樹脂フィルムやシートが紙製容器に接着せずに余裕があるため、包装品の衝撃強度が改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用する型抜きした板紙の一例を示す正面図である。
【図2】本発明で使用する紙製容器の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明の複合トレー容器の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の複合トレー容器の合成樹脂フィルムまたはシートの折り曲げ部の構造を示す断面図である。
【図5】本発明の複合トレー容器の一例を示す正面図である。
【図6】本発明の複合トレー容器の一例を示す正面図である。
【図7】複合トレー容器の製造工程を示す説明図である。
【図8】従来の複合トレー容器の断面図である。
【符号の説明】
1:底面板
2:側面板
3:側面板
4:フランジ板
5:フランジ板
6:爪部(凸状の切り込み)
7:境界線(ミシン罫)
31:紙製容器
38:合成樹脂フィルムまたはシート
35:フランジ板
36:爪部
39:折曲部
40:フランジ板下面側への折込部
41:紙製容器
42:合成樹脂フィルムまたはシート
43:折込部
44:折曲部
51:折込部
52:折曲部
61:板紙が欠けているコーナー部
62:板紙によるフランジ板
71:型抜きした板紙
72:製函された紙製容器
73:成形金型
74:成形型
75:合成樹脂フィルムまたはシート
76:ヒーター
77:上型
78:複合トレー容器
81:紙製容器
82:接着剤層
83:合成樹脂フィルムまたはシート
84:蓋材
Claims (2)
- 多角形の底面板と、該底面板に連結して組み立てられ、該底面板に対してある角度をもって立ち上がっている複数の側壁板と、各側壁板の上端部が外側に延出したフランジ板とを備えた紙製容器の内面及びフランジ板上面に、合成樹脂フィルムまたはシートが積層された複合トレー容器において、
(1) 各フランジ板の側壁板との境界線上に、側壁板に凸状の切り込み入れることによって形成された内側に突出する少なくとも1つの爪部が設けられており、
(2) 合成樹脂フィルムまたはシートが接着剤層を介することなく紙製容器の内面及びフランジ板上面に積層され、かつ、
(3) 合成樹脂フィルムまたはシートの端部がフランジ板の外縁部で下方に折り曲げられている
ことを特徴とする複合トレー容器。 - 合成樹脂フィルムまたはシートの端部がフランジ板の外縁部で下方に折り曲げられていると共に、フランジ板の外縁部の全周またはその一部において、該端部がフランジ板の下面側にまで更に折り曲げられた折込部が設けられている請求項1記載の複合トレー容器。
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