JP4119920B2 - 医療用複室容器 - Google Patents
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Description
収容室の区画手段としては、使用直前までは安定に各輸液成分を隔離でき、使用時(混合時)には容易に連通させ得ることが大切であり、このために種々の形態が工夫され提案されている。代表的なものは、(1)収容室間を外側からクランプで狭窄するもの(特開昭53−38189号、特開昭61−103823号、特開平1−160558号など)、(2)収容室間を容器外に露出したチューブで連結し、該チューブをクランプで狭窄するもの(実開昭57−76636号など)、(3)収容室間に用時連通可能な連通具をもつもの(特開昭57−52455号など)、(4)収容室間の隔壁部のシールを比較的安定でかつ混合時には容易に破断できる程度の接着強度としたもの(特開昭63−19149号(特公平6−26563号)、特開昭63−309263号、特開平1−240469号、特開平2−4671号、特開平2−57584号、特開平2−241457号、特開平2−255418号、特開平4−242647号、特開平5−31153号、特開平5−68702号など)、である。
これらのうちで操作性に富み実用性のあるのは、(4)のいわゆるイージリィピーラブルタイプの複室容器であり、最も注目されている。このタイプの技術的ポイントは製造時あるいは輸送時においては収容室間の隔壁シールが比較的安定で破断しにくく、使用時(混合時)には手、治具などで容易に破断され得る程度のシール強度を持ち、かつ外界(大気)とつながる境界部の破断シール強度は十分であることである。したがって、容器の内壁を形成する(すなわち該シール部を成形する)材質の選定が最重要となるのであるが、一般にはミクロ相分離構造を成形する材質例えばポリエチレンとポリプロピレンとの混合物、ポリエチレンと架橋ポリエチレンとの混合物など(これらはシール部の破断時にいわゆる凝集剥離を起こすタイプである)が使われる。
しかしながら、問題なのはこれらの材質が輸液容器としての材料の要件すなわち安全性、柔軟性、透明性、耐熱性(耐高圧蒸気滅菌性)などを満たすか否かであり、最も頻繁に行われるポリプロピレンとポリエチレンの混合物の適用は透明性と柔軟性に難がある。ポリプロピレンとポリエチレンを混合して得たシートは透明性が損なわれる。また、ポリプロピレンは剛性が高く(柔軟性に劣り)、比較的柔軟なポリエチレンを混合しても輸液容器として満足な柔軟性の領域には到達し難い。ポリプロピレンを柔軟化する有効な手段として他のモノマー(例えばエチレンやブテン−1)の共重合が知られているが、柔軟性を増すためにコモノマー量を多くすると、それから得られる容器(シート)の表面にべたつきの問題がある(低分子量成分や無定形成分に起因)。
なお、ここで述べた「ポリプロピレン」は不均一系チタン触媒で製造される通常の結晶性ポリプロピレンのことである。
(1) 相対する内壁面の一部が剥離可能な熱シールによって複数の収容室に区画されている医療用複室容器であって、前記医療用複室容器は、メタロセン系触媒で製造され、かつ融点が128〜134℃であり、メルトフローレイトが2.6〜3.0のポリプロピレンと、エチレン−プロピレンコポリマー、ブロック(ポリスチレン−エチレンブチレンコポリマー−ポリスチレン)コポリマー、ブロック(ポリスチレン−エチレンプロピレンコポリマー−ポリスチレン)コポリマー、ブロック(ポリスチレン−エチレンブチレンコポリマー−ポリエチレン)コポリマーのいずれかの熱可塑性エラストマーとの重合体組成物であり、かつ、前記ポリプロピレンと前記熱可塑性エラストマーとの重量比が、85:15〜65:35である重合体組成物のシート単独からなる医療用複室容器。
(2)前記熱可塑性エラストマーがエチレン−プロピレンコポリマーもしくはエチレン−ブテン−1コポリマーである(1)に記載の医療用複室容器。
(3)前記熱可塑性エラストマーがブロック(ポリスチレン−エチレンブチレンコポリマー−ポリスチレン)、ブロック(ポリスチレン−エチレンプロピレンコポリマー−ポリスチレン)もしくはブロック(ポリスチレン−エチレンブチレンコポリマー−ポリエチレン)である(1)に記載の医療用複室容器。
メタロセン系触媒で製造されるポリプロピレンは不均一系チタン触媒で製造される「通常」のポリプロピレン(以下PPと称す)に比し、均一系触媒の効果が発揮され、分子量分布が非常に狭く、ランダム性に富み均質な分子構造をとるので、透明性にすぐれ、低融点の場合でも低分子量物や不定形物(アタクチックポリマー)が非常に少ないのでべたつきが無く溶出成分も微量であることは周知の通りであり、比較的低融点のものが必然的に柔軟性に富むことも明らかであるが、特定の熱可塑性エラストマーとの組み合わせにおいて複室容器としての要件を十分満たすことが本発明によって見出されたのである。本発明におけるM−PP熱可塑性エラストマーとの重合体組成物がミクロ層分離構造を形成するのか、相溶系であるのかなどについては解明の余地があるが、M−PPと熱可塑性エラストマーとの分子間相互作用が適度なシール強度、透明性、柔軟性などと密接に結びついていると考えられている。
融点が140℃を超えると剛性が高くなり、柔軟性に乏しくなり、M−PPの特性が生きてこないからである。熱可塑性エラストマーはM−PPの柔軟剤として働くが、M−PPの剛性が高い領域では多量に添加することが必要となり、成形性の低下につながる。高圧蒸気滅菌時の温度(通常100〜121℃で行われる)をも考慮すると好ましい融点は120〜135℃である。この領域ではM−PPの曲げ弾性率は約4,000kg/cm2以下であり、比較的少量の熱可塑性エラストマーの添加で柔軟となり、しかも複室容器としての要件である良好なシール挙動を示す。そして成形性、成形物(容器シート)の力学的性質などを考慮すると、温度230℃、荷重2,160gにおけるMFR(メルトフローレイト)が0.3〜15より好ましくは0.5〜15であるのがよい。
(1)ブロック(ポリスチレン−エチレンブチレンコポリマー−ポリスチレン)(以下SEBSと称す):ポリスチレン−ポリブタジエン(1,2−結合体と1,4−結合体とのコポリマー)−ポリスチレン型のトリブロックコポリマー(SBS)への水素添加によって得られるブロックコポリマーである。M−PPとの親和性、得られるシートのイージリィーピーラブル性などを考慮すると、両端のポリスチレン部(S部)の合計がSEBS中の10〜40重量%さらに好ましくは12〜30重量%を占めるのがよい。また、エチレンブチレンコポリマー部(EB部)はEB部中のブチレン部の割合が20〜90重量%でさらに好ましくは30〜80重量%であるのがよい。そして、成形性、成形物の力学的性質などからSEBSは温度230℃、荷重2,160gにおけるMFRが0.5〜20さらに好ましくは1〜15のものが薦められる。
(2)ブロック(ポリスチレン−エチレンプロピレンコポリマー−ポリスチレン)(以下SEPSと称す):SEBSの場合とほぼ同様、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン型のトリブロックコポリマー(SIS)の水素添加で得られる。SEBSと同様の事柄を考慮すると、両端のポリスチレン部(S部)の合計がSEPS中の8〜40重量%さらに好ましくは10〜35重量%であるのがよく、MFRは0.5〜20さらに好ましくは1〜15のものがよい。
(4)ブロック(ポリスチレン−エチレンプロピレンコポリマー−ポリエチレン)(以下SEPEと称す):ポリスチレン−ポリ−1,4−イソプレン−ポリ−1,4−ブタジエン構造のトリブロックコポリマーの水素添加によって製造され得る。SEBSと同様の事柄を考慮すると、ポリスチレン部(S部)、エチレンプロピレンコポリマー部(EP部)およびポリエチレン部(E部)の重量割合は好ましくは5〜30:40〜80:10〜40さらに好ましくは8〜25:45〜75:12〜35であって、MFRがSEBSと同程度のものがよい。
(5)ブロック(ポリスチレン−ポリ−1,2−ポリイソプレン−ポリスチレン)もくしはその水素添加物:ポリスチレン含量が10〜50重量%さらに好ましくは15〜40重量%であって、MFRがSEBSと同程度のものがよい。
上記(1)〜(5)のスチレン系熱可塑性エラストマーのうち、(1)のSEBSと(2)のSEPSが最も汎用性に富む。
また、本発明の医療用複室容器は内壁面がM−PPと熱可塑性エラストマーとの重合体組成物であり、M−PPと熱可塑性エラストマーとの重合体組成物のシート単独からなる場合と、M−PPと熱可塑性エラストマーとの重合体組成物を内層(容器の内壁面)とし、他のポリマー(または重合体組成物)を外層あるいは中間層とする多層シートの場合がある。後者では容器のガス(水蒸気、酸素など)バリアー性、透明性、柔軟性、耐熱性、強度などの要求性能に応じて他のポリマー(または他の重合体組成物)と組み合わされるが、具体的に好ましい他のポリマー(または他の重合体組成物)の代表例を次に示す。
(ロ)結晶性ポリプロピレンまたはこれを主成分とする結晶性ポリプロピレン系コポリマー。(イ)の場合と同様Ziegler-Natta 系触媒(不均一チタン系触媒)もしくはメタロセン系触媒で製造される。特に後者の場合は柔軟性・透明性のよいポリマーが得られやすいという点ですぐれている。
との重合体組成物。
(ニ)エチレンビニルアルコールコポリマー、容器に酸素ガスバリアー性を付与する目的で用いられ得る。
また、本発明の医療用複室容器を形成するシートの厚さは全体で0.2〜0.6mmより好ましくは0.25〜0.45mmであるのが適当であり、複層の場合にはM−PPと熱可塑性エラストマーとの重合体組成物層は0.01mm以上好ましくは0.02mm以上であるのがよい。
本発明の複室容器は輸液剤におけるアミノ酸液とブドウ糖液の組み合わせ、あるいは、CAPDに用いる腹膜透析透析液における炭酸水素ナトリウム液とブドウ糖含有電解質液の組み合わせの如く、同一溶液内に存在すると変質が起こりやすい薬液の組み合わせに有効であり、さらには輸液のみならず血液分野にも適用され得るものである。
1)実験方法
(1)原料ポリマーの準備:使用した原料ポリマー(ペレット状)を表1に示す。なお、融点は示差走査熱量計を用い、10℃/分の昇温速度で測定した。
(4)複室容器の作製:(3)で得られたシートを300mm長に裁断し、中央部の巾7mmを温度120℃、圧力2kg/cm2、時間5秒の条件で熱シール後、片方の室にアミノ酸3wt/v%水溶液、もう一方の室にブドウ糖15wt/v%水溶液各400mlを入れ、両端を巾10mm、温度160℃、圧力4kg/cm2、時間5秒の条件で熱シールし、区画室が2個の薬液入り複室容器を作製した。
(5)高圧蒸気滅菌:(4)の容器を高圧蒸気滅菌機に入れ、窒素雰囲気中で、温度110℃、ゲージ圧1.8kg/cm2、時間30分の条件において滅菌し、室温まで冷却した。
(7)容器の柔軟性の評価:(5)の容器の48時間以上放置後のシートをダンベル状に裁断し、JISK7113に準じて引張弾性率を測定し、柔軟性の尺度とした。
(8)シール強度の測定:(5)の容器の48時間以上放置後のシートの中央部(仕切り部)および端部(周辺部)のシール部を切り取り、300mm/分の速度で180°剥離強度を測定した(表3中の剥離強度は15mm巾に換算した値である)。
(9)容器(シート)表面の調査:(5)の容器の48時間以上放置後の容器表面のべたつき状態を肉眼観察するとともに、手でさわって調べた。
(10)容器の仕切り部の破断性(連通性)の評価:(5)のシートを机の上
に寝かせて置き、一方の区画室側を手で押さえる程度で、仕切り部のシールが破断するか否か確認した(各例につき5回テスト)。
(11)溶出物試験:日本薬局方一般試験法「輸液用プラスチック試験法」に準じ、(3)で得られたシートについて試験を行った。
(1)重合体組成物の調製およびシートの押出成形は順調で、異物、発泡、ブロッキングなどは観察されず、均一性に富む重合体組成物ペレットおよびシートがいずれの場合も得られた。
(2)実施例1〜8のいずれの組成においても溶出物は日本薬局方に適合することが確認された。
(3)表3にシートの構成と高圧蒸気滅菌後の透明性(水中透過率)、柔軟性(引張弾性率)およびシール強度を示す。
本発明におけるM−PPと熱可塑性エラストマーとの重合体組成物を層成分として含む容器(シート)はいずれも透明性と柔軟性にすぐれていることがわかる。一方、比較的高融点のメタロセン系触媒で製造されたポリプロピレンを使用した場合は柔軟性に乏しい(比較例1)。
(4)M−PPの分子量分布の狭さを反映してか、容器(シート)表面にべたつき現象が発生せず、通常PP(比較例2)の欠点を解消している。すなわち、比較例2の場合は表面が濡れていると感じられるほどのべたつき状態であった。
(5)容器の仕切り部の破断性(連通性)は比較例を含めていずれも良好であり、容易に連通させることができた。表3のシール強度のデータもこれを裏付けている。
Claims (3)
- 相対する内壁面の一部が剥離可能な熱シールによって複数の収容室に区画されている医療用複室容器であって、前記医療用複室容器は、メタロセン系触媒で製造され、かつ融点が128〜134℃であり、メルトフローレイトが2.6〜3.0のポリプロピレンと、エチレン−プロピレンコポリマー、ブロック(ポリスチレン−エチレンブチレンコポリマー−ポリスチレン)コポリマー、ブロック(ポリスチレン−エチレンプロピレンコポリマー−ポリスチレン)コポリマー、ブロック(ポリスチレン−エチレンブチレンコポリマー−ポリエチレン)コポリマーのいずれかの熱可塑性エラストマーとの重合体組成物であり、かつ、前記ポリプロピレンと前記熱可塑性エラストマーとの重量比が、85:15〜65:35である重合体組成物のシート単独からなることを特徴とする医療用複室容器。
- 前記熱可塑性エラストマーが、エチレン−プロピレンコポリマーである請求項1に記載の医療用複室容器。
- 前記熱可塑性エラストマーがブロック(ポリスチレン−エチレンブチレンコポリマー−ポリスチレン)、ブロック(ポリスチレン−エチレンプロピレンコポリマー−ポリスチレン)もしくはブロック(ポリスチレン−エチレンブチレンコポリマー−ポリエチレン)である請求項1に記載の医療用複室容器。
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