JP4118535B2 - X線検査装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、X線、γ線等の放射線を用いる放射線検査装置、特に、非破壊検査用、医療用のX線検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、各種の散乱X線成分を除去する方法、装置が報告されている。例えば、X線検出器の検出画素ピッチと同一または整数分の1のグリッド周波数を持つX線グリッドを前記X線検出器面上に形成し、検出器面に対して斜めに入射する散乱線成分を除去する方法が報告されている(従来技術1:「特開平9−75332号公報」)。
【0003】
また、予め計測しておいた散乱X線の点広がり関数に基づいて、デコンボリューションフイルタを用いて散乱X線成分を除去する方法が報告されている(従来技術2:「M.Honda, et al., Med. Phys., 20(1), 56-69(1993)」)。
【0004】
また、被写体の前面に配置したX線スリットをスキャンすることにより、散乱X線成分を直接計測し、散乱X線成分を除去する装置が報告されている(従来技術3:「K.Doi, et al., Radiology, 161, 513-518(1986)」)。
【0005】
また、周期構造を有する原画像データに対してウェーブレット変換を施して縮小画像を得る場合に、モアレのない高画質な縮小画像を得る方法が報告されている(従来技術4:「特開平10−031737号公報」)。
【0006】
さらに、X線管と被写体の間にX線グリッドを配置し、X線の線質や線量の放射角度依存性を補正する方法が報告されている(従来技術5:「特開2000−245731号公報」)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
散乱X線成分は、場合によっては検出されたX線透過像の信号成分の50%以上を占め、非破壊検査用検査装置、医療用のX線検査検査装置のコントラストを低下させる。
【0008】
従来技術1では、X線グリッドを構成するX線透過材料が、散乱X線ばかりでなく直接X線も遮断してしまうため、X線検出器で検出される信号量が減少してしまうという課題を有していた。検出信号量を増加するためには、被写体に入射するX線量を増加する必要があり、その結果被写体のX線被曝量が増加するという課題を有していた。また、検出器への入射角度が小さい散乱X線を除去することができないこと、さらには、検出器前面にX線グリッドを形成することが困難であるというような課題を有していた。
【0009】
従来技術2では、一定の管電圧、均一な被写体に対して予め散乱X線の点広がり関数を計測して散乱X線補正を行なう。また、前記散乱X線補正は被写体の組成が均一であるという仮定のもとに行われる。しかし、実際の撮影では、被写体の組成、厚さは種々変化し、また管電圧も種々変化する。従って、散乱X線成分を完全に除去することができず、補正の精度が悪いという課題を有していた。
【0010】
従来技術3では、X線スリットをスキャンしながら撮影を行なうため、短時間の撮影やX線透視が行えないという課題を有していた。
【0011】
従来技術4では、高画質な観察用の縮小画像を得るが、原画像に含まれる散乱X線成分の除去については言及がない。
【0012】
従来技術5では、回転陽極X線管から放射されるX線の放射角度依存性が軽減されるため、均質で高品位なX線画像を得ることができるが、散乱X線成分の除去については言及がない。
【0013】
本発明の目的は、2次元X線検出器で検出された検査対象のX線透過像の画像から散乱X線成分を除去したX線画像を得ることができるX線検査方法及びX線検査装置を提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、検査対象のX線被曝量を減少すると同時に高品質のX線画像を得ることができるX線検査方法及びX線検査装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、X線源と検査対象の間にX線グリッドを配置し、検査対象のX線透過像を2次元X線検出器で検出する。検査対象へ入射するX線は、X線グリッドを通過したスリット状のX線である。検査対象を透過したX線は、スリット状の高周波成分(直接X線成分)と、検査対象により散乱された非スリット状の低周波成分(散乱X線成分)とを含んでいる。検査対象のX線透過像を2次元X線検出器で検出すると、直接X線成分は2次元X線検出器とX線グリッドとの間で干渉縞を生じるが、散乱X線成分は干渉縞を生じない。
【0016】
いま、X線源の焦点と2次元X線検器の検出面の中心とを結ぶ方向にほぼ直交する方向で、X線グリッドの位置を微小距離だけ変化させると、干渉縞の位相が変化する。このとき、干渉縞の振幅は、直接X線成分量を反映する。すなわち、X線グリッドの位置の変化に伴い、変化する信号成分は直接線成分であり、変化しない信号成分は散乱X線成分に相当する。
【0017】
以上より、検査対象のX線透過像の画像に含まれる散乱X線成分の分布画像(以下、散乱X線分布画像)を干渉縞の振幅から求めることができる。また、X線透過像から散乱X線分布画像を減算して直接X線分布画像を求めることができる。上記直接X線分布画像を求める作業を、以下では散乱X線補正と呼ぶ。
【0018】
干渉縞の振幅を求めるためには、計測画像を干渉縞成分の画像(以下、干渉縞画像)と、それ以外の成分の画像(以下、非干渉縞画像)とに分離する必要がある。干渉縞画像を得るためには、ほぼ180°異なる位相をもつ干渉縞が出現する2つのX線透過像を検出して、2つのX線透過像の差分画像を作成すればよい。一方、非干渉縞画像を得るためには、前記位相がほぼ180°異なる2つのX線透過像の加算画像を作成すればよい。ただし、2つのX線透過像の間で、位相がほぼ180°異なる干渉縞を出現させるためには、X線グリッドの位置の微小距離変化を正確に制御する必要がある。
【0019】
一方、位相がほぼ180°異なる2つのX線透過像は、以下の方法でも作成できる。以下の説明では、X線グリッドのグリッド密度は、直接X線成分が、2次元X線検出器とX線グリッドとの間で生じる干渉縞が発生しにくい(目立たないような)値とする。また、X線グリッド中のスリットが配列する方向をスリット配列方向と呼ぶ。
【0020】
X線透過像から、スリット配列方向に、1画素おきに画素を間引いて抽出した画像(以下、抽出画像)を作成する。1画素おきの抽出により、抽出画像中には干渉縞が発生する。抽出画像は2枚作成される。ただし、2枚の抽出画像は画素の抽出位置がスリット配列方向において互いに1画素ずらして作成される。このとき、2枚の抽出画像中に出現する干渉縞は、ほぼ180°異なる位相をもつ。従って、この2枚の抽出画像の差分をとり、干渉縞画像を作成することができる。また、干渉縞画像に基づき、散乱X線補正を行うことができる。
【0021】
散乱X線補正では、干渉縞の振幅に基づいて直接X線成分量を求める。干渉縞の振幅は直接X線成分量に比例し、その比率(以下、振幅比)は予め計測によって求められる。振幅比は、検査対象が置かれない状態で得られたエア画像を使用して求める。エア画像は、X線管の1又は複数の管電圧と、1又は複数の散乱X線除去率の異なるX線グリッドとの組合せにより検出された1又は複数のエア画像である。各エア画像に対して上記と同様の方法を用いて干渉縞画像を作成する。このとき、振幅比は直接X線成分量の干渉縞振幅に対する比として求められる。ただし、直接X線成分量はエア画像自体の信号量として求めることができる。
【0022】
振幅比はエア画像中の位置に応じて変化する。従って、振幅比の分布をキャリブレーション画像として作成し、メモリに保存しておく。キャリブレーション画像を作成するには、まず、エア画像に対して干渉縞画像を作成する。次に、前記干渉縞画像基づいて干渉縞の振幅分布画像を作成する。最後に、エア画像の各画素値を振幅分布画像の画素値で除算して作成した画像をキャリブレーション画像とする。
【0023】
キャリブレーション画像を用いて、任意のX線透過像に対して散乱線補正を行う手順は以下の通りである。まずX線透過像(元画像)に対して干渉縞画像を作成する。次に前記干渉縞画像に基づいて干渉縞の振幅分布画像を作成する。さらに、キャリブレーション画像をメモリから読み出し、前記キャリブレーション画像と前記振幅分布画像との積を前記X線透過像(元画像)から減算して散乱X線分布画像を求める。最後に、前記X線透過像(元画像)から前記散乱X線分布画像を減算して直接X線分布画像を作成する。
【0024】
キャリブレーション画像をメモリから読み出す場合には、X線透過像が検出された時の管電圧、X線グリッドの組合せに対応するキャリブレーション画像をメモリから読み出す。
【0025】
検査対象のほぼ同一部位が連続して検出される場合には、特定の時間間隔において、同一の散乱X線分布画像を用いて、複数のX線透過像の画像から散乱X線成分を除去することができる。
【0026】
以上の説明で使用するX線グリッドとしては、平行グリッド、又は焦点付きグリッドが使用でき、また、2枚の平行グリッド、又は焦点付きグリッドを交差させて重ねて配置するクロスグリッドが使用できる。
【0027】
以上説明したように、本発明では、簡単な演算処理により精度良く散乱X線補正を実行できる。
【0028】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
図1は、本発明の第1の実施例に係るX線検査装置の構成を説明するための図である。なお、図1において、紙面内における左右方向をy軸、紙面内における上下方向をz軸、紙面に対し垂直方向をx軸とする。
【0029】
本実施例1に係るX線検査装置は、X線管1、コリメータ2、X線グリッド3、平面型X線検出器4、支柱5、被検体(検査対象)6、寝台天板7、寝台8、モニタ9、コンソール10、臨床コンソール11、画像メモリ100、画像処理手段101、キャリブレーション画像保存メモリ102、散乱線画像保存メモリ103等により構成される。なお、上記各装置および機構は公知のものを用いる。以下では、X線管1、コリメータ2、X線グリッド3、および平面型X線検出器4で構成される系を撮影系と呼ぶ。
【0030】
撮影系は、支柱5に固定される。支柱5は図示しない傾斜機構によって、寝台天板7に対して傾斜することができる。ただし、傾斜方向はyz平面に平行な方向である。支柱5を傾斜することで、被検体6に対するX線の照射方向を自由に変えることができる。また寝台8は、公知の移動機構によって寝台天板7および寝台天板7の上に配置される被検体6の位置をx、yおよびz方向に移動することができる。更にX線グリッド3の支柱5に対するx、yおよびz方向の位置は、図示しない位置調節装置によって調節することができる。
【0031】
図1において、X線管1のX線発生点と平面型X線検出器4の入力面との距離は100cmである。また、平面型X線検出器4のX線入力面は1辺が204.8mmの正方形である。平面型X線検出器4の画素数は1024×1024ピクセルであり、各画素の1辺の大きさは200μmである。また、X線透視時における平面型X線検出器4の代表的なフレームレートは30[フレーム/秒]であるが、7.5または15[フレーム/秒]とすることも可能である。なお、平面型X線検出器4には、既知の直接型X線検出器あるいは間接型X線検出器を用いる。直接型検出器および間接型検出器の代表的な例としては、それぞれ「M. Choquette, et al., SPIE Vol.3977, 128-136(2000)」(以下、文献1)および「Tom J. C. Bruijns, et al., SPIE Vol.3977, 117-127(2000)」(以下、文献2)などが挙げられる。
【0032】
X線管1のX線発生点とX線グリッド3の入力面との距離は40cmである。X線グリッド3は既知のグリッドであり、X線吸収材料とX線透過材料の交互配置による多数のスリット形成される。X線グリッド3のスリット方向は一方向のみに形成されており、前記スリット方向がy軸に平行になるように支柱5に配置される。本X線グリッド3はX線吸収材料に鉛、X線透過材料に紙を使用しているが、これらの材料に限定されるものでなく、例えばタングステンとアルミニウム等でこれらを代用してもよい。グリッド比(格子比)は12:1、グリッド密度は70[本/cm]、鉛箔の厚さは50[μm]である。また、X線グリッド3は焦点を有しており、その焦点距離は40[cm]である。
【0033】
次に、本実施例1に係るX線検査装置の動作を説明する。本X線検査装置は、被検体6のX線透視画像およびX線撮影画像を取得し、これらの画像中に含まれる散乱線成分を除去した後にモニタ9に表示する。X線透視およびX線撮影時におけるX線の照射から、散乱線補正画像の表示に至るまでの手順は以下の通りである。
【0034】
まず、検者(操作者)は、コンソール10または臨床コンソール11を用いてX線透視または撮影の開始を指示し、X線管1からX線を放射する。次に被検体6を透過したX線は平面型X線検出器4によって検出され、直ちに画像メモリ100に記録される。更に画像処理手段101は、画像メモリ100に記録されたX線透過像中の散乱線成分のみを抽出し、散乱線画像保存メモリ103に保存する。最後に減算器104は、画像メモリ100に保存されたX線透過像から散乱線画像保存メモリ103に保存された散乱線成分画像を減算して散乱線補正画像を作成し、モニタ9に表示する。なおX線透視時には、検者によって透視終了の指示がなされるまで、上記一連の作業が繰り返し行われる。
【0035】
このとき、散乱線成分画像は画像メモリ100にX線透視像が入力される度に作成してもいいが、数フレーム毎(通常2〜30フレーム)に作成してもよい。数フレーム毎に散乱線成分画像を作成する場合は、次の散乱線成分画像が作成されるまでの間、同一の散乱線成分画像を用いて近似的に散乱線補正を行う。以下では、X線透視時におけるこのような近時的な補正方法を間引き補正と呼ぶ。被写体6の動きが平面型X線検出器4のフレームレートに対してそれ程大きくない場合、間引き補正を行うことができる。間引き補正を採用することにより、画像処理手段101に要求される処理速度を落とすことができるので、装置構成を簡略化することができる。
【0036】
上記散乱線成分の抽出には、キャリブレーション画像保存メモリ102に保存されたキャリブレーション画像を使用する。画像処理手段101による散乱線成分抽出演算、およびキャリブレーション画像の詳細については後述する。
【0037】
図2は、散乱X線除去の原理を説明するための図である。このうち、図2(A)は被検体6を透過する直接X線と平面型X線検出器4との関係を表す図であり、また図2(B)は被検体6の内部で散乱された散乱X線と平面型X線検出器4との関係を表す図である。
【0038】
まず、図2(A)において、X線発生点20から発生された一様なX線200は、X線グリッド3の内部のX線吸収材料21によって一部遮断される。従って、X線グリッド3透過後のX線はスリット状のX線201となる。以下では、このようなスリット状のX線201を変調X線と呼ぶ。変調X線201は、略矩形状のX線ビームであり、それ自身が高周波の信号成分をもつ。このため被検体6の内部を透過したX線(直接X線)は、平面型X線検出器4の画素22との間で干渉を起こし、干渉縞(モアレ)を発生する。一方、図2(B)において、被検体6の内部で散乱されたX線(散乱X線)202は、散乱によって高周波の信号成分が失われるため、画素22との間に干渉縞を発生しない。
【0039】
以上より、干渉縞は直接X線のみを反映し、干渉縞の振幅は直接X線成分量に比例することがわかる。従って、干渉縞の振幅を求めることによって、検出信号を直接線成分と散乱線成分に分離して散乱線補正を行うことができる。ただし、散乱線補正を行うには、以下の2つの課題を解決する必要がある。すなわち、干渉縞の振幅と直接X線成分の比を求めること(課題1)と、干渉縞の振幅を求めること(課題2)である。
【0040】
課題1に関しては、被検体6を配置しない状態で検出したX線透過像(以下、エア画像とする)を用いて干渉縞の振幅と直接線成分の比(以下、キャリブレーション比とする)を求めることができる。すなわち、エア画像に含まれる信号は直接線成分のみであるため、干渉縞の振幅を求めることができれば、キャリブレーション比を容易に求めることができる。
【0041】
課題2に関しては、例えばX線グリッド3の位置を水平方向に微小に移動しながら干渉縞の位相変化を観察することで干渉縞の振幅を求めることができる。ただし、上記方法はX線グリッド3の移動を高速かつ高精度に行うという、技術的な困難を伴う。このため、本実施例1では、画素の間引きサンプリングによって干渉縞の振幅を計測する方法を採用する。間引きサンプリングの詳細については後述する。
【0042】
図3は、X線グリッド3および平面型X線検出器4の位置関係を説明するための図である。X線発生点20からX線グリッド3の入力面までの距離をd、X線発生点20から平面型X線検出器4の入力面までの距離をDと表す。本実施例1におけるdの値は40[cm]、Dの値は100[cm]である。X線グリッド3のスリット方向は、y軸方向に平行になるように配置される。
【0043】
また、X線検出器4は、画素の配列がxおよびy方向に平行になるように配置する。画素配列のxおよびy方向の位置をそれぞれi、j方向とし、その位置を(i、j)(i、j=0、 1、 …、 1023)と表す。また、以下の説明では簡単のため、被検体6としてアクリルファントム30を用いる。ただし、アクリルファントム30はアクリル板および鉛棒31で構成される。鉛棒31はアクリル板の中心に、その長手方向がy方向と平行となるように配置される。
【0044】
図4は、平面型X線検出器4によるX線透過像の検出において、検出画素位置を説明するための図である。図4(A)に示されるように、X線検出器4のi、j方向の画素間隔をΔdで示す。ただし、本実施例1において、Δdは200[μm]である。X線透視およびX線撮影時には、全ての画素位置(i、j)においてX線を検出する。検出画像のプロファイルの一例を図4(B)に示す。ただし、図4(B)は、アクリルファントム30のi方向のプロファイルを示したものである。このとき、X線グリッド3の仕様および空間配置が、後述する方法に基づき適正に設定されていれば、図4(B)に示されるように、i方向のプロファイルに発生する干渉縞を小さく抑えることができる。図4(B)に示される信号は、図4(C)に示されるような直接X線成分と図4(D)に示されるような散乱X線成分が同時に検出されたものである。散乱線補正処理は、図4(B)に示される検出信号から図4(C)に示される直接X線成分を抽出する処理に相当する。
【0045】
図5は、直接X線成分および散乱X線成分の空間周波数分布と平面型X線検出器4のナイキスト周波数との関係を説明するための図である。直接X線の周波数成分500には、変調X線201の周波数特性、被検体6を透過する直接X線の周波数特性、および平面型X線検出器4の周波数応答の情報が含まれる。通常平面型X線検出器4の周波数応答は高周波になるに従い低下する。変調X線201の周波数特性はX線グリッド3の構造情報を表し、グリッドの周期に関する情報が多く含まれている。
【0046】
いま、グリッド密度をfg[本/cm]とすると、平面型X線検出器4の面上に投影される投影グリッド密度fdは、次式で表される。
【0047】
【数1】
………(数1)
(数1)より、fdの値は、fg、d、Dの値を変えることによって任意に設定することができる。図5には、fdの値を検出器のナイキスト周波数fqより僅かに低く設定した例が示される。周波数fdにおける周波数強度502は、fdがナイキスト周波数fqに近づくに従って小さくなる。これは平面型X線検出器4のボケにより、X線グリッド4の周期的な構造情報(以下、グリッド縞とする)が目立たなくなることを意味する。ここで、ナイキスト周波数fqと投影グリッド密度fdとの差を、ビート周波数fbとして、次式で定義する。
【0048】
【数2】
………(数2)
すなわち、X線透過像中に含まれるグリッド縞を目立たなくするためには、fbをできるだけ小さくすればよい。一方、散乱X線の周波数成分501には低周波成分の情報のみが含まれる。
【0049】
図6は、検出されたX線透過像に対する間引きサンプリングを説明するための図である。また、図7は、間引きサンプリング時におけるナイキスト周波数と直接X線成分および散乱X線成分の空間周波数分布との関係を説明するための図である。 図4(A)に説明したように、X線透過像は平面型X線検出器4の全画素を用いて検出する。すなわち、画素位置(i、j)において検出された信号量をf(i、j)とすると、X線透過像はf(i、j)(i、j=0〜N-1)と表すことができる。ただし、Nを平面型X線検出器4のi、j方向の画素数とした。本実施例1では、N=1024である。間引きサンプリングは、図6(A)および(C)に示されるように、f(i、j)中から、i方向に1画素おきに画素値を抽出して画像を作成する方法である。このとき、画素の抽出位置によって、以下の2種類の抽出画像を作成することができる。
【0050】
【数3】
………(数3)
【0051】
【数4】
………(数4)
f1(m、n)およびf2(m、n)のm方向のナイキスト周波数f'q(=1/(4Δd))は、f(i、j)のナイキスト周波数fq(=1/(2Δd))の半分となる。すなわち、f'q=fq/2である。図7に示されるように、間引きサンプリング時の直接X線成分500は、f'qを中心に線対称に折れ込んでエリアシングを発生する。図7中、702は直接X線成分500のエリアシングによる折り返し成分であり、また、701は散乱X線成分501のエリアシングによる折り返し成分である。
【0052】
この結果、投影グリッド密度fdの成分502が、周波数fbのビート成分702となって低周波数側に現れ、干渉縞を発生する。従って、抽出画像f1(m、n)およびf2(m、n)のm方向のプロファイルには干渉縞が含まれる(図6(B)および(D)参照)。
【0053】
上述のように、散乱線補正を行うためには上記干渉縞の振幅を計測すればよい。しかし、抽出画像f1(m、n)およびf2(m、n)には、それぞれ干渉縞信号の他に、被検体6の構造情報も含まれているため、干渉縞成分の振幅を正確に抽出するのは難しい。
【0054】
干渉縞成分の振幅を正確に抽出するためには、f1(m、n)およびf2(m、n)の差分画像s(m、n)を次式によって作成する。
【0055】
【数5】
………(数5)
(数3)および(数4)に示されるように、f1(m、n)およびf2(m、n)のf(i、j)に対するサンプリング位置は、i方向に互いに1画素ずつずれている。このため、f1(m、n)およびf2(m、n)中に含まれる干渉縞は、m方向に互いに180度位相がずれる。従って、差分画像s(m、n)は、図6(E)に示されるような干渉縞成分のみが含まれるため、s(m、n)から容易に干渉縞の振幅を求めることができる。
【0056】
図4〜図6を用いた説明においては、投影グリッド密度fdをナイキスト周波数fqよりビート周波数fb分だけ低い値に設定した(以下、非エリアシング設定と呼ぶ)。このとき、X線透過像f(i、j)中に現れるグリッド縞の周波数はfd=(fq−fb)であり、抽出画像f1(m、n)およびf2(m、n)中に現れる干渉縞の周波数はfbであった。上述のように、グリッド縞を目立たなくするためにはfbをできるだけ小さくする必要がある。しかし、このとき同時に干渉縞の周波数fbが小さくなり、その位置分解能が低下してしまう。このように、fbは大きくし過ぎても、小さくし過ぎてもいけない。通常、fbは、2〜5[本/cm]程度に設定するのが望ましい。
【0057】
図8は、投影グリッド密度の別の設定方法を説明するための図である。非エリアシング設定においては、投影グリッド密度fdをナイキスト周波数fqよりビート周波数fb分だけ低い値に設定した。これに対し、以下では投影グリッド密度fdをナイキスト周波数fqよりビート周波数fb分だけ高い値に設定する方法(以下、エリアシング設定とする)について説明する。エリアシング設定時には、全画素サンプリングにおいてもエリアシングが発生する。このとき、投影グリッド密度fdの周波数成分502は、エリアシングによって周波数(fq−fd)の成分702となって観察される(図8(A)参照)。
【0058】
周波数fq−fbという値は、非エリアシング設定の場合と同じ値であるが、エリアシング設定の場合、fqを中心とする折り返し成分としてグリッド縞が観察されているため、図5の場合よりスペクトル強度が小さくなる。すなわちエリアシング設定にすることで、非エリアシング設定の場合よりもグリッド縞を目立たなくすることができる。
【0059】
一方、間引きサンプリング時にも、投影グリッド密度fdにおける周波数成分502はエリアシングによって周波数fbの干渉縞成分として観察される。ただし、本干渉縞成分のスペクトル強度も、非エリアシング設定の場合に比べて小さくなるため、干渉縞振幅の測定精度が低下するという問題もある。以上のように、投影グリッド密度の設定はグリッド縞の抑制を優先するか、干渉縞振幅の測定精度の向上を優先するかによって、エリアシング設定か非エリアシング設定かを選択できる。
【0060】
なお、本実施例1ではグリッド密度fgを70[本/cm]、X線発生点−グリッド距離dを40[cm]、X線発生点−検出器距離Dを100[cm]としたので、数1より投影グリッド密度fdは28[本/cm]となる。一方、画素間隔Δdが200[μm]であるため、ナイキスト周波数fqは25[本/cm]である。従って、投影グリッド密度はエリアシング設定されており、そのビート周波数は3[本/cm]である。なお、投影グリッド密度fdを非エリアシング設定するためには、例えば上記設定においてdを31.4[cm]とすればよい。このとき投影グリッド密度fdは22[本/cm]となり、同じくビート周波数3[本/cm]の干渉縞が発生する。
【0061】
図9は、干渉縞画像に基づき干渉縞振幅の空間分布を導出する方法を説明するための図である。(数5)により得られた差分画像s(m、n)(m=0〜N/2-1、n=0〜N-1)は、干渉縞成分のみを含む干渉縞画像90である(図9中の(a))。干渉縞振幅分布演算手段1104は、干渉縞画像90に基づいて干渉縞の振幅分布画像95を求める手段であり、以下の演算手順からなる。
【0062】
まず、干渉縞ピーク検出手段91は、干渉縞画像90のm方向のプロファイルに対して干渉縞99のピーク位置(極大値および極小値)を検出する(図9中の(b))。上記m方向のピーク検出は、全てのn(=0〜N-1)の位置に対して行われる。次にピーク間画素補間手段92は、m方向に隣接する極大値同士および極小値同士を直線で結び、干渉縞99の上限包絡線96および下限包絡線97とする(図9中の(c))。
【0063】
また、上記補間値は、画素位置m(=0〜N/2-1)上の点のみならず、m方向に隣接する画素の中間位置においても求める。画素の中間位置において補間値を求めることで、間引きサンプリング後にN/2個となっていたm方向の画素数を再びNに戻すことができる。上記補間は全てのn(=0〜N-1)の位置に対して行われる。n方向の位置は全サンプリング画像のj方向の位置と一致するため、補間終了時には画素マトリックスを再び(i、j)(i、j=0〜N-1)に戻すことができる。上限包絡線96と下限包絡線97の差分98は、干渉縞99の振幅に相当する。
【0064】
従って、次に振幅演算手段93は全ての位置(i、j)(i、j=0〜N-1)において差分98を求め、各位置における干渉縞振幅分布とする(図9中の(d))。ただし、上記干渉縞分布は上記直線補間によって生じた高周波成分が含まれるため、2次元LPF(Low Pass Filter)94を用いて高周波成分を除去し、最終的な振幅分布画像A(i、j) を得る(図9中の(e))。2次元LPF94の例としては、既知の移動平均処理(移動平均をとる画素領域:2×2画素〜5×5画素程度)等が挙げられる。
【0065】
図10は、間引きサンプリングにおける別のサンプリング方法を説明するための図である。図6においては、間引きサンプリングとしてi方向に1画素おきに画素を抽出する方法を示したが、抽出の間隔を一般にk画素おき(1≦k)として拡張してもよい。一例として、図10には、2画素おきに抽出する例を示す。この場合、図10(A)〜(C)に示すような3種類の抽出方法が存在し、サンプリング位置がi方向に1画素シフトする毎に、間引きサンプリングによって発生する干渉縞の位相シフトが120度変化する。
【0066】
すなわち、図10(A)と(B)の間、および図10(B)と(C)の間における干渉縞の位相シフトは120度となる。また、図10(A)と(C)の間における干渉縞の位相シフトは240度である。いずれの場合も、両画像の差分画像を作成すると信号中の被写体の構造情報が取り除いて干渉縞のみを抽出することができる。
【0067】
また、差分をとる画像間の位相シフト量に応じて抽出される干渉縞の位相が変化するが、その振幅分布は変化しない。すなわち、上記図10(A)〜(C)の、どの組み合わせに対して差分画像を作成しても、後述する図11における干渉縞振幅分布演算手段1104によって最終的に得られる振幅分布画像A(i、j)には大差が生じない。ただし、差分によって被写体の構造情報を精度よく除去するには、差分画像間の画素抽出位置がなるべく近い方がよい。すなわち、画素抽出位置が隣接する2つの抽出画像を用いて差分を行うのが望ましい。一般に、k画素おきに間引きサンプリングを行ったとすると、画素抽出位置が隣接する2つの抽出画像間の位相シフト量qは、次式で表される。
【0068】
【数6】
………(数6)
差分画像中にはX線の量子ノイズが含まれており、干渉縞振幅の測定精度を劣化することがある。このため、間引きサンプリングを行う前に、元画像f(i、j)(i、j=0〜N-1)に対して移動平均処理を行って量子ノイズを軽減してもよい。i、j方向に移動平均をとる画素数を、それぞれ、2I+1、2J+1(I、J=0、1、2、…)とすると、移動平均後の画像fm(i、j)は、次式で計算される。
【0069】
【数7】
………(数7)
ただし、i方向の移動平均を行うと高周波成分が低下して、間引き画像中の干渉縞強度が低下する。このため、i方向の移動平均は行わないのが一般的である。一方、j方向には通常I=5〜10程度の範囲で移動平均をとる。
【0070】
上記移動平均処理、間引きサンプリング処理、振幅分布画像導出処理は、X線グリッド3のスリット方向がj方向に垂直であるものとして説明した。これに対し、X線グリッド3のスリット方向がi方向に配置されている場合には、上記全ての処理においてi方向とj方向を入れ替えればよい。また、X線グリッド3として格子状のスリットを有するものを使用した場合、上記全ての処理をi方向およびj方向の両方について行えばよい。
【0071】
以上、間引きサンプリングを用いて干渉縞の振幅分布画像を示したが、以下では、振幅分布画像を用いて散乱線補正を行う方法について説明する。
【0072】
X線透過像中のある画素値f(i、j)(I=0〜N-1)に含まれる直接線成分量をfd(i、j)とすると、fd(i、j)は同じ位置における干渉縞の振幅A(i、j)に比例する。従って、干渉縞の振幅と直接線成分量の比率(キャリブレーション比)を予め求めておくことで、直接線分布画像fd(i、j)を求めることができる。
【0073】
キャリブレーション比は、エア画像を用いて求めることができる。一般に、キャリブレーション比は平面型X線検出器4上の検出位置によって多少異なるため、その分布をキャリブレーション画像として求める。いま、キャリブレーション画像をr(i、j)で表すと、r(i、j)は次式で求められる。
【0074】
【数8】
………(数8)
ただし、fair(i、j)は被検体6を配置しない状態で計測したエア画像であり、Aair(i、j)はfair(i、j)に対して求めた振幅分布画像である。
【0075】
このとき、任意のX線透過像f(i、j)に対して、その直接線成分量を、次式で概算することができる.
【0076】
【数9】
………(数9)
ここで、(数9)の計算結果を直接線成分の概算値としたのは、fd'(i、j)中には高周波成分が欠如しているためである。なお、上記高周波成分の欠如は振幅分布画像A(i、j)中の高周波成分の欠如に起因し、A(i、j)中の高周波成分の欠如はピーク間画素補間手段92による補間処理に起因する。直接線成分概算値fd'(i、j)から正確な直接線分布画像fd(i、j)を得るためには、まず散乱線分布画像fs(i、j)を求め、次に元画像f(i、j)からfs(i、j)を減算すればよい。散乱線分布画像は、次式で求まる。
【0077】
【数10】
………(数10)
ただし、g(i、j)は2次元LPF(Low Pass Filter)であり、演算**は2次元畳み込み積分を表すものとする。(数10)において、右辺{ }内の計算結果は散乱線成分と、直接線の高周波成分を含む。このため、LPFを用いて高周波成分(直接線成分)を取り除き、散乱線成分のみを抽出する。LPFとしては通常のデジタルフィルタ、もしくは移動平均処理などを用いる。散乱線分布画像fs(i、j)が求まったら、直接線分布画像fd(i、j)は、次式で求めることができる。
【0078】
【数11】
………(数11)
以上、キャリブレーション画像を用いて散乱線補正を行う方法について説明した。なおキャリブレーション画像中におけるキャリブレーション比の変化が比較的小さい場合はr(i、j)=roとして近似してもよい。この場合、roには、例えばr(i、j)の平均値等を用いる。また、r(i、j)もしくはroの値は、X線管1の管電圧によって多少変化する。従って、予め数種類の管電圧に対してr(i、j)またはroを測定しておき、撮影または透視時の管電圧に応じてこれらを選択してもよい。
【0079】
図11は、キャリブレーション画像を求める手順を説明するためのブロック図である。キャリブレーション画像の作成は、まずエア画像の撮影から行う。エア画像の撮影によって、画像メモリ100にエア画像fair(i、j)が確保される。次に、移動平均演算手段1100を用いてi、j方向の移動平均を行う。なお、移動平均の計算には(数7)を用いる。
【0080】
次に、間引き画像作成手段1101および1102を用いて、抽出画像f1(m、n)およびf2(m、n)をそれぞれ作成する。なお、抽出画像の作成には、(数3)および(数4)を用いる。次に、減算器1103により抽出画像f1(m、n)およびf2(m、n)の差分がとられ、差分画像s(m、n)が作成される。次に、干渉縞振幅分布演算手段1104によって、エア画像に対する振幅分布画像Aair(i、j)が作成される。なお、干渉縞振幅分布演算手段1104による演算については、図9を用いて詳細を説明したので、ここでは説明を省略する。
【0081】
次に、除算器1105により振幅分布画像Aair(i、j)とfair(i、j)の比が計算され、キャリブレーション画像r(i、j)が作成される。最後にキャリブレーション画像r(i、 j)は、コンソール10から入力される管電圧の情報と共にキャリブレーション画像保存メモリ102に保存される。
【0082】
図12は、キャリブレーション画像に基づいて散乱線分布画像を求める手順を説明するためのブロック図である。まずX線透視像または撮影像f(i、j)が、画像メモリ100に確保される。引き続き行われる移動平均演算手段1100〜干渉縞振幅分布演算手段1104に至るまでの過程は、図11に示した上記キャリブレーション画像の作成手段と同一のため、説明を省略する。上記過程によって振幅分布画像A(i、 j)が作成される。
【0083】
次に、積算器1200は、振幅分布画像A(i、j)とキャリブレーション画像保存メモリ102に保存されたキャリブレーション画像r(i、j)を積算して、直接線成分概算画像f'd(i、j)を作成する。なお、本積算は上記(数9)の演算に相当する。また上記積算においては、元画像f(i、j)を作成した時の管電圧に最も近い管電圧で作成されたキャリブレーション画像r(i、j)が選択される。次に、減算器1201は元画像f(i、j)から直接線成分概算画像f'd(i、j)を減算し、引き続きLPF1202は上記減算画像の高周波成分を遮断して散乱線成分画像fs(i、j)を作成する。なお、上記減算器1201およびLPF1202による一連の作業は(数10)に相当する。最後に、散乱線成分画像fs(i、j)は散乱線画像保存メモリ103に保存される。
【0084】
以上示したように、本実施例1では間引きサンプリングによって作成した2枚の抽出画像に基づいて干渉縞の振幅分布を計測し、散乱線補正を行う。1枚のX線透過像から正確に干渉縞を得ることができるため、高速かつ高精度の散乱線補正を行うことができる。
【0085】
(実施例2)
図13は、本発明の第2の実施例に係るX線検査装置の構成を説明するための図である。
【0086】
以下、実施例1に係るX線検査装置との相違点のみについて説明すると、実施例1に係るX線検査装置ではX線管1、コリメータ2、およびX線グリッド3が被検体6の上面に配置されていた(以下、オーバーチューブ構成とする)のに対し、本実施例2に係るX線検査装置では、X線管1、コリメータ2、およびX線グリッド3が全て寝台天板7の下面に配置される(以下、アンダーチューブ構成とする)。
【0087】
オーバーチューブ構成の場合、X線グリッド3と被検体6との間の距離が狭いため被検体6が誤ってX線グリッド3に接触する可能性が高いという問題があったが、アンダーチューブ構成にすることで、X線グリッド3が被検体6に誤って接触してしまう危険を回避することができる。
【0088】
(実施例3)
図14は、本発明の第3の実施例に係るX線検査装置の構成を説明するための図である。本実施例3では、間引きサンプリングを用いずに干渉縞振幅分布を計測する。以下、実施例1に係るX線検査装置との相違点のみを説明する。
【0089】
本実施例3に係るX線検査装置はグリッド位置制御器1400を有する。グリッド位置制御器1400は、図示しない位置変動機構を用いてX線グリッド3の位置をx軸方向に高速に変動することができる。X線グリッド3のグリッド比は12:1、グリッド密度は117.5[本/cm]、鉛箔の厚さは40[μm]である。なお、上記位置変動機構は圧電材料等を用いて実現する。
【0090】
X線撮影時には、時間間隔Δtを隔ててパルス状のX線が2回放射される。また、上記2回のパルスX線の放射に同期して、平面型X線検出器4が2枚のX線撮影像を検出する。一方、X線透視時には、時間間隔Δt毎にパルスX線が継続的に放射される。また、上記パルスX線の放射に同期して平面型X線検出器4によるX線透視像の検出が継続的に行われる。上記撮影および透視におけるX線パルス間隔Δtの代表例は33.3[ms]であるが、66.6[ms]とすることも可能である。
【0091】
グリッド位置制御器1400は、撮影時および透視時における上記パルスX線の放射に同期してX線グリッド3のx軸方向の位置を変動する。なお、このときの変動量については後述する。
【0092】
図15は、本発明の実施例3において投影グリッド密度と平面型X線検出器4のナイキスト周波数との関係を説明するための図である。本実施例3に係るX線検査装置においては、X線透過像そのものに干渉縞を発生させる。このため、投影グリッド密度fdをナイキスト周波数fqの2倍の値に近づけるように設定する。いま、2fqとfdとの差をf'bとすると、X線透過像中にはエリアシングによって周波数f'bの干渉縞成分702が発生する。
【0093】
なお、本実施例3においては、X線グリッド3のグリッド密度を117.5[本/cm]、X線発生点−グリッド距離dを40[cm]、X線発生点−検出器距離Dを100[cm]とした。従って、(数1)より、投影グリッド密度fdは47[本/cm]となる。一方、画素間隔Δdが200[μm]であるため、ナイキスト周波数fqは25[本/cm]である。以上より、X線透過像中に発生する干渉縞の周波数f'bは、3[本/cm]となる。
【0094】
図16は、本発明の実施例3においてX線グリッドの微小変動を説明するための図である。上述ように、本実施例3に係るX線検査装置においては、X線パルス間隔Δtの間にX線グリッド3をx軸方向に微小移動させる。そして、その移動量はX線グリッド3を構成するX線吸収材料21の周期Δhによって規定される。
【0095】
まず、撮影時においてはX線パルスが2回照射され、2枚の撮影画像が計測される。このときグリッド位置制御器1400は、2回の撮影間でX線グリッド3の位置がx軸方向にΔh/2だけシフトするように、X線グリッド3の位置を制御する。すなわち、1回目の撮影時におけるX線グリッド3の位置を図16(A)とすると、2回目の撮影時におけるX線グリッドの位置は図16(B)である。
【0096】
一方、透視時においては、X線パルスが連続的に発生される。このためグリッド位置制御器1400は、X線パルスを発生するたびにX線グリッド3の位置が図16(A)→(B)→(A)→(B)→…となるようにX線グリッドを振動させる。
【0097】
上記X線グリッド3の位置変動に伴い、X線透過像中に発生する干渉縞の位相がx方向に180度シフトする。従って、位相が180度異なる干渉縞を有する2枚のX線透過像を得ることができる。これら2枚のX線透過像の差分画像用いて干渉縞を抽出し散乱線補正を行う方法については、実施例1において説明した方法と同一であるため説明を省略する。なお、X線透過像中の干渉縞成分を取り除くためには、上記2枚のX線透過像の加算画像を作成すればよい。本加算によりX線透過像中に含まれる干渉縞を相殺し、取り除くことができる。散乱線補正は、上記加算画像に対して行われる。
【0098】
(実施例4)
図17は、本発明の第4の実施例に係るX線検査装置の構成を説明するための図である。本実施例4は、実施例1で説明した間引きサンプリングに基づく散乱線補正方法を、X線CTに適用したものである。このため、X線透過像取得後の散乱線補正処理は実施例1で示した方法と同一であるため省略し、装置構成および撮影方法における相違点のみを説明する。
【0099】
本実施例4に係るX線検査装置は、X線管1、X線フィルタ12、コリメータ2、X線グリッド3、X線固体検出器4、被検体6、寝台天板7、回転板1701、ガントリ1700、モニタ9、コンソール10、画像メモリ100、画像処理手段101、キャリブレーション画像保存メモリ102、散乱線画像保存メモリ103、画像再構成手段1702等から構成される。なお、上記各装置および機構は公知のものを用いる。
【0100】
以下では、X線管1、X線フィルタ12、コリメータ2、X線グリッド3、およびX線検出器4で構成される系を撮影系と呼ぶ。撮影系は回転板1701に固定され、図示しない既知の駆動モータによって回転する。また、以下では、回転板1701の回転軸をZ軸とする。また、回転中心Oを原点とする水平および垂直方向の座標軸をそれぞれX軸、Y軸とする。回転板1701全体はガントリ1700によって支持されている。
【0101】
図17において、X線発生点20と回転板1701の回転中心Oとの距離は69[cm]、X線発生点20とX線グリッド3の入力面の距離は32[cm]、X線発生点20とX線検出器4の入力面との距離は107[cm]、X線検出器4の回転中心Oを中心とする有効視野は直径48[cm]、開口部1703の直径は70[cm]である。回転板1701の1回転のスキャンに要する時間の代表例は0.6秒である。X線検出器4はセラミックシンチレータ素子から構成される固体検出器であり、XY平面方向の素子数は896チャンネル、Z軸方向の素子数は64チャンネルである。前記各素子のXY面方向およびZ軸方向のサイズは、1[mm]である。また、各素子はX線発生点Sから略等距離の円弧上に配置される。回転板1701の1回転における撮影枚数の代表例は900枚であり、回転板1701の0.4度の回転毎に1回の撮影が行われる。
【0102】
撮影時には、X線検出器4で撮影された撮影画像が、図示しない既知のスリップリング機構を通して順次画像メモリ100に保存される。画像メモリ100に記録されたX線撮影像は、実施例1で説明した方法と同一の方法を用いて散乱線補正が行われた後に画像再構成手段1702に入力される。画像再構成手段1702は、公知の画像再構成アルゴリズムを用いて被検体6のCT断層像を作成し、モニタ9に表示する。
【0103】
図18は、本発明の実施例4に係るX線検査装置のX線グリッド3およびX線検出器4の位置関係を説明するための図である。X線グリッド3は、X線発生点20を中心とする円弧上にX線吸収材料およびX線透過材料が交互に配置され、スリットを形成する。また、上記スリットは、Z軸に平行な方向に配置される。本X線グリッド3のX線吸収材料には鉛、X線透過材料に紙を使用しているが、これらの材料に限定されるものでなく、例えばタングステンとアルミニウム等でこれらを代用してもよい。X線グリッド3のグリッド比は14:1、グリッド密度は27[本/cm]、鉛箔の厚さは100[μm]である。また、X線グリッド3は焦点を有しており、その焦点距離は40[cm]である。X線検出器4の画素は回転面方向の位置をi、回転軸(Z軸)方向の位置をjとするマトリクス状に配置されている。X線グリッド3のスリットはj方向に投影され、i軸方向の干渉縞を発生する。
【0104】
本実施例4では、グリッド密度fgを70[本/cm]、X線発生点−グリッド距離dを32[cm]、X線発生点−検出器距離Dを107[cm]としたので、(数1)より投影グリッド密度fdは8[本/cm]となる。一方、画素間隔Δdが1[mm]であるため、ナイキスト周波数fqは5[本/cm]である。従って、投影グリッド密度はエリアシング設定されており、そのビート周波数は3[本/cm]である。本干渉縞成分波形を用いて、実施例1で説明した間引きサンプリングを用いて散乱線補正を行うことができる。
【0105】
以上、実施例1〜4に基づいて本発明を具体的に説明した。従来の散乱線補正方法であるX線グリッド法では、グリッド比(格子比)の大きなX線グリッドを製作するのが物理的に困難であるため、散乱X線が完全に除去されることはなかった。一例として、グリッド密度60[本/cm]、グリッド比10:1、鉛箔の厚さ50[μm]のX線グリッドを用いて、厚さ30[cm]の水槽のX線撮影を行った場合(管電圧120[kV])、検出されるX線信号に占める散乱X線成分の割合(散乱線成分比)は約50%であった。
【0106】
これに対して、本発明を用いれば散乱線成分比を約5%程度に抑えることができるため、X線透過像の画質を大幅に改善することができる。また、従来のX線グリッド法ではX線グリッドをX線検出器と被検体の間に配置するため、被検体の無効被曝が発生するという問題があった。これに対して、本方法ではX線グリッドをX線源と被検体の間に配置するので上記無効被曝を解消し、上記X線グリッド法に比べて被検体の被曝量を30〜40%減少することが可能である。
【0107】
本発明は、上記実施例1〜4のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更しうることはいうまでもない。
【0108】
例えば、本実施例ではX線源としてX線管を使用したが、放射光などでこれを代用してもよい。また、X線以外の放射線、可視光線、紫外線、赤外線等に本方法を応用してもよい。さらには、本発明は、X線CT装置、X線透視撮影装置の他に、X線非破壊検査装置、X線手荷物検査装置等に適用することも可能である。
【0109】
最後に、本発明に基づくX線検査方法を以下に示す。
(1)本発明のX線検査方法は、X線を発生するX線源と検査対象の間にX線グリッドを配置して、前記検査対象に前記X線を照射して前記検査対象の透過像を2次元X線検出器により検出する工程と、所定の個数の画素の間隔をおいたサンプリング周波数で、前記X線グリッドのX線吸収体グリッドが配列する方向で前記透過像の画像から画素を抽出し、所定の角度だけ異なる位相をもつ干渉縞がそれぞれ出現する2つの抽出画像を求める工程と、前記2つの抽出画像の間の画素値の差分から干渉縞の振幅の分布を表わす振幅分布画像を求める工程と、前記振幅分布画像を用いて前記透過像の画像に含まれる散乱X線成分の分布を表わす散乱X線分布画像を求める工程と、前記透過像の画像の画素値から前記散乱X線分布画像の画素値を減算して、前記透過像の画像から前記散乱X線成分を除去する工程と有する。
(2)(1)X線検査方法において、前記透過像の画像の画素値から、前記透過像の画像に含まれる直接X線成分の分布を推定するために予め求めらている推定画像を記憶するメモリから読み出した前記推定画像の画素値と前記振幅分布画像の画素値との積を減算して、前記透過像の画像に含まれる散乱X線成分の分布を表わす散乱X線分布画像を求める工程と、前記透過像の画像の画素値から前記散乱X線分布画像の画素値を減算する工程とを有し、前記透過像の画像から前記散乱X線成分を除去する。
(3)(2)のX線検査方法において、前記X線源としてX線管が使用され、前記透過像が検出された時の前記X線管の管電圧、前記X線グリッドの組合せに対応する前記推定画像を前記メモリから読み出して、前記散乱X線成分を除去する。
(4)(2)のX線検査方法において、前記所定の個数の画素の間隔をおいた前記サンプリング周波数で、前記X線吸収体グリッドが配列する方向で、前記検査対象が置かれない状態で検出されたエア画像から画素を抽出し、前記所定の角度だけ異なる位相をもつ干渉縞がそれぞれ出現する2つのエア抽出画像を求める工程と、前記2つのエア抽出画像の間の画素値の差分から干渉縞の振幅の分布を表わすエア振幅分布画像を求める工程と、前記エア画像の前記X線グリッドを通過した直接X線成分の分布を表わすエア分布画像の画素値の前記エア振幅分布画像の画素値に対する比を画素値としてもつ前記推定画像を求める工程とを有し、前記推定画像を前記メモリに記憶する。
(5)(2)のX線検査方法において、前記X線源としてX線管を使用し、1又は複数の管電圧と、1又は複数の散乱X線除去率の異なる前記X線グリッドとの組合せにより、前記検査対象が置かれない状態で検出された1又は複数のエア画像に対して、前記所定の個数の画素の間隔をおいた前記サンプリング周波数で、前記X線吸収体グリッドが配列する方向で、前記エア画像から画素を抽出し、前記所定の角度だけ異なる位相をもつ干渉縞がそれぞれ出現する2つのエア抽出画像を求める工程と、前記2つのエア抽出画像の間の画素値の差分から干渉縞の振幅の分布を表わすエア振幅分布画像を求める工程と、前記エア画像の前記X線グリッドを通過した直接X線成分の分布を表わすエア分布画像の画素値の前記エア振幅分布画像の画素値に対する比を画素値としてもつ前記推定画像を求める工程とを有し、前記各エア画像に対して行ない、前記各エア画像に対する前記推定画像をメモリに記憶する。
(6)(2)のX線検査方法において、前記所定の個数が、1、2、3の何れかであることを特徴とするX線検査方法。
(7)(2)のX線検査方法において、前記所定の角度が、90°、120°、180°、240°、270°の何れかの近傍の角度である。
(8)(2)のX線検査方法において、予め求められている同一の前記推定画像を用いて、複数の前記透過像の画像から前記散乱X線成分を除去する。
(9)(2)のX線検査方法において、前記2次元X線検出器の検出面に於ける前記X線吸収体グリッドの配列の空間周波数と前記サンプリング周波数との差が、前記サンプリング周波数よりも小さい。
(10)(2)のX線検査方法において、前記2次元X線検出器の検出面に於ける前記X線吸収体グリッドの配列の空間周波数と前記X線検出器のナイキスト周波数との差が、前記ナイキスト周波数の半分の値よりも小さくなるように、前記空間周波数を設定、又は/及び、前記X線グリッドを配置する位置を設定する。
(11)(2)のX線検査方法において、前記X線吸収体グリッドが配列する方向で、前記透過像の画素の隣接する複数の画素の画素値を加算して得られる加算画像から、前記所定の個数の画素の間隔をおいた前記サンプリング周波数で画素を抽出して前記抽出画像を求める工程を有する。
(12)本発明のX線検査方法は、X線を発生するX線源と検査対象の間にX線グリッドを配置して、前記検査対象に前記X線を照射して前記検査対象の透過像を2次元X線検出器により検出する工程と、前記X線グリッドのX線吸収体グリッドが配列する方向で前記透過像の画像から画素を抽出し、所定の角度だけ異なる位相をもつ干渉縞がそれぞれ出現する2つの抽出画像を求める工程と、前記2つの抽出画像から求めた干渉縞の振幅の分布を表わす振幅分布画像を用いて、前記透過像の画像に含まれる散乱X線成分の分布を表わす散乱X線分布画像を求める工程と、前記透過像の画像の画素値から前記散乱X線分布画像の画素値を減算して、前記透過像の画像から前記散乱X線成分を除去する工程とを有する。
(13)本発明のX線検査方法は、X線を発生するX線源と検査対象の間にX線グリッドを配置して、前記検査対象に前記X線を照射して前記検査対象の透過像を2次元X線検出器により検出する工程と、nを整数として、前記2次元X線検出器の前記空間サンプリング周波数の(1/n)の空間サンプリング周波数で、前記透過像の画像の画素データをサンプリングして所定の逆転する位相をもつ干渉縞がそれぞれ出現する2つの抽出画像を求める工程と、前記2つの抽出画像の間の画素値の差分により干渉縞の振幅の分布を表わす振幅分布画像を求める工程と、前記振幅分布画像を用いて、前記透過像の画像に含まれる散乱X線成分の分布を表わす散乱X線分布画像を求める工程と、前記透過像の画像の画素値から前記散乱X線分布画像の画素値を減算して、前記透過像の画像から前記散乱X線成分を除去する。
(14)(13)のX線検査方法において、nは2、3、4の何れかである。
(15)本発明のX線検査方法は、X線を発生するX線源と検査対象との間に配置されたX線グリッドを通して前記検査対象に前記X線を照射する工程と、前記X線照射によって得られる前記検査対象の透過像をX線検出器により検出する工程と、前記検査対象の透過像中に発生する干渉縞の振幅に基づいて、前記透過像に含まれる散乱X線成分を抽出し、除去する工程とを有することを特徴とする。
【0110】
なお、以上のX線検査方法は、検査対象を人体とする医用のX線検査方法、人体を除く一般の検査対象を対象とする手荷物検査方法等の非破壊検査方法に適用可能であることは言うまでもない。
【0111】
【発明の効果】
本発明によれば、X線透過像中に含まれる散乱線成分を干渉縞の振幅に基づき直接抽出した後に除去するので、高精度の散乱線補正を行うことができる。また、X線グリッドをX線源と被検体の間に配置するため、被検体の無効被曝が解消され、被曝線量を抑えることができる。
【0112】
以上より、少ない被曝線量で高画質のX線撮影像、X線透視像、X線CT像等を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係るX線検査装置の構成を説明するための図。
【図2】散乱X線除去の原理を説明するための図。
【図3】X線グリッドおよび平面型X線検出器の位置関係を説明するための図。
【図4】平面型X線検出器によるX線透過像の検出において、検出画素位置を説明するための図。
【図5】直接X線成分および散乱X線成分の空間周波数分布と平面型X線検出器のナイキスト周波数との関係を説明するための図。
【図6】検出されたX線透過像に対する間引きサンプリングを説明するための図。
【図7】間引きサンプリング時におけるナイキスト周波数と直接X線成分および散乱X線成分の空間周波数分布との関係を説明するための図。
【図8】投影グリッド密度の別の設定方法を説明するための図。
【図9】干渉縞画像に基づき干渉縞振幅の空間分布を導出する方法を説明するための図。
【図10】間引きサンプリングにおける別のサンプリング方法を説明するための図。
【図11】キャリブレーション画像を求める手順を説明するためのブロック図。
【図12】キャリブレーション画像に基づいて散乱線分布画像を求める手順を説明するためのブロック図。
【図13】本発明の第2の実施例に係るX線検査装置の構成を説明するための図。
【図14】本発明の第3の実施例に係るX線検査装置の構成を説明するための図。
【図15】本発明の第3の実施例において投影グリッド密度と平面型X線検出器のナイキスト周波数との関係を説明するための図。
【図16】本発明の第3の実施例においてX線グリッドの微小変動を説明するための図。
【図17】本発明の第4の実施例に係るX線検査装置の構成を説明するための図。
【図18】本発明の第4の実施例に係るX線検査装置のX線グリッドおよびX線検出器の位置関係を説明するための図。
【符号の説明】
1…X線管、2…コリメータ、3…X線グリッド、4…平面型X線検出器、5…支柱、6…被検体、7…寝台天板、8…寝台、9…モニタ、10…コンソール、11…臨床コンソール、100…画像メモリ、101…画像処理手段、102…キャリブレーション画像保存メモリ、103…散乱線画像保存メモリ、1700…ガントリ、1701…回転板、1702…画像再構成手段、1703…開口部。
Claims (7)
- X線を発生するX線源と、検査対象を透過した前記X線から透過像を検出する2次元X線検出器と、前記X線源と前記検査対象の間に配置されるX線グリッドと、前記2次元X線検出器の出力の演算処理を行なう演算処理手段とを有し、前記演算処理手段は、所定の個数の画素の間隔をおいたサンプリング周波数で、前記X線グリッドのX線吸収体グリッドが配列する方向で前記透過像の画像から画素を抽出し、所定の角度だけ異なる位相をもつ干渉縞がそれぞれ出現する2つの抽出画像を求める演算と、前記2つの抽出画像の間の画素値の差分から干渉縞の振幅の分布を表わす振幅分布画像を求める演算と、前記振幅分布画像を用いて前記透過像の画像に含まれる散乱X線成分の分布を表わす散乱X線分布画像を求める演算と、前記透過像の画像の画素値から前記散乱X線分布画像の画素値を減算して、前記透過像の画像から前記散乱X線成分を除去する演算とを行なうことを特徴とするX線検査装置。
- X線を発生するX線源と、検査対象を透過した前記X線から透過像を検出する2次元X線検出器と、前記X線源と前記検査対象の間に配置されるX線グリッドと、前記2次元X線検出器の出力の演算処理を行なう演算処理手段とを有し、前記演算処理手段は、前記X線グリッドのX線吸収体グリッドが配列する方向で前記透過像の画像から画素を抽出し、所定の角度だけ異なる位相をもつ干渉縞がそれぞれ出現する2つの抽出画像を求める演算と、前記2つの抽出画像から求めた干渉縞の振幅の分布を表わす振幅分布画像を用いて、前記透過像の画像に含まれる散乱X線成分の分布を表わす散乱X線分布画像を求める演算と、前記透過像の画像の画素値から前記散乱X線分布画像の画素値を減算して、前記透過像の画像から前記散乱X線成分を除去する演算とを行なうことを特徴とするX線検査装置。
- X線を発生するX線源と、検査対象を透過した前記X線から透過像を予め設定された空間サンプリング周波数で検出する2次元X線検出器と、前記X線源と前記検査対象の間に配置されるX線グリッドと、前記2次元X線検出器の出力の演算処理を行なう演算処理手段とを有し、前記演算処理手段は、nを整数として、前記2次元X線検出器の前記空間サンプリング周波数の(1/n)の空間サンプリング周波数で、前記透過像の画像の画素データをサンプリングして所定の逆転する位相をもつ干渉縞がそれぞれ出現する2つの抽出画像を求める演算と、前記2つの抽出画像の間の画素値の差分により干渉縞の振幅の分布を表わす振幅分布画像を求める演算と、前記振幅分布画像を用いて、前記透過像の画像に含まれる散乱X線成分の分布を表わす散乱X線分布画像を求める演算と、前記透過像の画像の画素値から前記散乱X線分布画像の画素値を減算して、前記透過像の画像から前記散乱X線成分を除去する演算とを行なうことを特徴とするX線検査装置。
- X線を発生するX線源と、検査対象を透過した前記X線から透過像を検出するX線検出器と、前記X線源と前記検査対象との間に配置されたX線グリッドと、前記検査対象の透過像中に発生する干渉縞の振幅に基づいて、前記透過像に含まれる散乱X線成分を抽出し、除去する演算処理手段とを備えるよう構成したことを特徴とするX線検査装置。
- 請求項4に記載のX線検査装置において、前記検査対象を支持する検査対象支持手段を有し、前記検査対象支持手段の上面に前記検査対象が配置され、前記検査対象支持手段の下面に前記X線源が配置され、前記X線源と前記検査対象支持手段の下面の間に前記X線グリッドが配置されることを特徴とするX線検査装置。
- 請求項4に記載のX線検査装置において、前記X線源と前記2次元X線検出器の対から構成される撮影系を前記検査対象の周囲に回転する撮影系回転手段を有し、前記X線源と前記検査対象の間に前記X線グリッドが配置され、前記撮影系回転手段は前記撮影系に対する前記X線グリッドの位置を略一定に保持したまま前記撮影系を回転させて、前記検査対象に対して複数の方向から複数枚のX線透過像の撮影を行い前記検査対象のX線断層像を生成し表示することを特徴とするX線検査装置。
- 請求項4に記載のX線検査装置において、前記X線源と前記X線グリッドとが、前記検査対象の上面に配置されていることを特徴とするX線検査装置。
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