JP4116929B2 - 加工部耐食性に優れた高光沢プレコート金属板 - Google Patents

加工部耐食性に優れた高光沢プレコート金属板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレス成形後の耐食性に優れた表面処理金属板に関するものであり、家電用、建材用、土木用、機械用、自動車用、家具用、容器用等において、特に環境上問題があるとされている6価クロムを用いずに、プレス成形時の塗膜密着性と防錆効果を発揮することを特徴とする。
【0002】
【従来の技術】
家電用、建材用、自動車用等に、従来の加工後塗装されていたポスト塗装製品に代わって、着色した塗膜を被覆したプレコート金属板が使用されるようになってきている。この金属板は、金属用前処理を施した金属板に塗料を被覆したもので、塗料を塗装した後に切断しプレス成形されて使用されることが一般的である。そのため、塗膜が被覆されていない金属が露出する切断端面部の耐食性とプレス加工時の塗膜剥離がプレコート金属板の問題点となっていたが、金属用前処理としてクロメート処理を施し、且つ塗膜中に6価クロム系の防錆顔料を含有することでこれらの問題点が解決され、現在では汎用的に使用されている。しかし、6価クロムは環境負荷物質であるため、6価クロムを排除する動きが近年盛んである。
【0003】
化成処理の技術としては、特開平9-828291号公報、特開平10-251509号公報、特開平10-337530号公報、特開2000-17466号公報、特開2000-248385号公報、特開2000-273659号公報、特開2000-282252号公報、特開2000-265282号公報、特開2000-167482号公報等が開示されている。
【0004】
一方、特開平9-12931号公報では、6価クロム系防錆顔料の代わりにリン酸系防錆顔料とイオン交換シリカ系防錆顔料とを併用したポリエステル系並びにエポキシ系の塗料により切断端面部の耐食性に優れたプレコート鋼板を提供する技術が開示されている。
【0005】
その一方で、プレコート鋼板の性能として、光沢や鮮映性の高い塗膜が要求される。前述の特開平9-12931号公報の実施例に例示されているプレコート鋼板では、高光沢のプレコート鋼板を得ることは困難であり、更には、加工部の耐食性に劣る。特開昭62-116138号公報、特開平2-205201号公報、特開平7-150326号公報、特開昭58-61292号公報等では、粗度調整した圧延ロールにてプレコート鋼板やその原板を圧延加工することで、プレコート鋼板の塗装後鮮映性を向上させる技術が開示されている。しかし、プレコート鋼板やその原板粗度を圧延ロールにて調整すると、製造工程が増えることによるコストアップや作業効率の低下の問題が発生する。
【0006】
特開平1-304934号公報では、金属板上に数平均分子量5000〜70000のエポキシ変成ポリエステル樹脂にアミノ樹脂を配合した下塗り塗料と数平均分子量2000〜10000のポリエステル樹脂に架橋速度の異なる2種以上のアミノ樹脂を配合した上塗り塗料を形成させることで高鮮映性を得る技術が開示されている。しかし、上塗り塗料に分子量の低い塗料を適用すると、密着曲げや深絞り成形等の厳しい加工性が施されると塗膜にクラックが入り易く、更にはこの塗膜のクラック部から腐食が発生し易いため、加工部耐食性が劣る。
【0007】
特開平10-66931号公報には、金属板に有機塗料を塗布し、更にその上にクリヤー樹脂を含む溶液を塗布することで塗膜に鮮映性を付与する技術が開示されている。しかし、この様に乾燥前の塗料上にクリヤー樹脂を含む溶液を均一に且つ安定的に塗布することは困難である。その一方で、乾燥後の塗膜上にクリヤー塗料等を塗布乾燥させることは容易であるが、この場合、外観意匠性と耐食性を両立するために防錆力を付与した下塗り塗装、着色を施した中塗り塗装、上塗りであるクリヤー塗装と3層以上の塗装を施さなければならない。しかし、プレコート鋼板を製造する連続塗装ラインでは、2回塗装2回焼付(一般に2コート2ベイクと呼ばれる)が一般的であり、3層以上の塗装を施すことは困難である。2コート2ベイク方式で上塗りクリヤータイプの塗装を施す場合は、防錆塗膜層を省略して、着色を施した下塗り塗装として、上塗り塗装にトップクリヤーを施すことが一般的であるが、防錆塗膜層を省力しているために耐食性に劣る。このようなタイプの場合、着色層に防錆顔料を添加することが一般的であるが、従来の6価クロム系防錆顔料は黄色系であるため、塗膜中に着色顔料と共に添加すると、目的の色がでにくい欠点を有していた。
【0008】
【特許文献1】
特開平9-828291号公報
【特許文献2】
特開平10-251509号公報
【特許文献3】
特開平10-337530号公報
【特許文献4】
特開2000-17466号公報
【特許文献5】
特開2000-248385号公報
【特許文献6】
特開2000-273659号公報
【特許文献7】
特開2000-282252号公報
【特許文献8】
特開2000-265282号公報
【特許文献9】
特開2000-167482号
【特許文献10】
特開平9-12931号公報
【特許文献11】
特開昭62-116138号公報
【特許文献12】
特開平2-205201号公報
【特許文献13】
特開平7-150326号公報
【特許文献14】
特開昭58-61292号公報
【特許文献15】
特開平1-304934号公報
【特許文献16】
特開平10-66931号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術における上記問題点を解決し、6価クロムを含まなくても加工部耐食性に優れ、さらに、高光沢高鮮映性を有する2コート2ベークのプレコート金属板を提供することをその課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、6価クロムを含まない化成処理を施した亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板上に、防錆顔料としてトリポリリン酸二水素アルミニウムカルシウムイオン交換シリカと着色顔料とを含むベース塗膜層を施し、更にその上にクリヤー塗膜層を施すことで、加工性(特にプレスによる深絞り加工性)に優れ、且つ、6価クロムを用いずに加工部耐食性に優れた高光沢プレコート金属板を得ることができることを見出した。本発明は、かかる知見を基に完成させたものであって、本発明がその要旨とするところは、以下の通りである。
(1) 亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板の片面もしくは両面上に、6価のクロムを含まない化成処理層、その上に、バインダー樹脂と(a)着色顔料を必須成分として含み、且つ防錆顔料として(b)トリポリリン酸二水素アルミニウム又は(c)カルシウムイオン交換シリカの一方又は双方を含むベース塗膜層、更にその上にクリヤー塗膜層を有する金属板であって、前記ベース塗膜層中のバインダー樹脂固形分100質量部に対し、(b)の添加量が0〜50質量部、(c)の添加量が0〜50質量部、且つ(b)と(c)の合計添加量が1〜50質量部であると共に、(a)、(b)、(c)の合計添加量がバインダー樹脂固形分100質量部に対し1質量部超300質量部以下であることを特徴とする加工部耐食性に優れた高光沢プレコート金属板。
) 前記ベース塗膜層のバインダー樹脂又はクリヤー塗膜層の樹脂の一方又は双方が、両端に官能基を有する直鎖状重合体である樹脂と2官能化合物からなる塗料組成物を加熱によって直鎖上重合体の更なる直鎖状重合反応を促進させて成膜させてなる樹脂である(1)記載の高光沢プレコート金属板。
) 前記金属板の表面粗度Raが1.0以下である(1)記載の高光沢プレコート金属板。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板の片面もしくは両面上に、6価のクロムを含まない化成処理層、その上に、バインダー樹脂と(a)着色顔料を必須成分として含み、且つ防錆顔料として(b)トリポリリン酸二水素アルミニウム又は(c)カルシウムイオン交換シリカの一方又は双方を含むベース塗膜層、更にその上にクリヤー塗膜層を有するプレコート金属板であって、前記ベース塗膜層中のバインダー樹脂固形分100質量部に対し、(b)の添加量が0〜50質量部、(c)の添加量が0〜50質量部、且つ(b)と(c)の合計添加量が1〜50質量部であると共に、(a)、(b)、(c)の合計添加量がバインダー樹脂固形分100質量部に対し1質量部超300質量部以下であることを特徴とする加工部耐食性に優れた高光沢プレコート金属板によって達せられる。
【0013】
本願発明は、亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板を用いる。
【0014】
ッケルを含む合金めっきを施した金属板(例えば亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板)は、熱反射性に優れる
【0015】
鉛−ニッケル合金めっき鋼板は、加工部の耐食性に優れる。亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板とは、めっき層にニッケルを1〜30質量%、好ましくは5〜15質量%含む亜鉛系合金めっき鋼板のことであり、新日本製鐵社製の「ジンクライト」(新日本製鐵の登録商標)等を使用することができる。
【0016】
更に、本発明に用いる亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板の表面粗度Raが1.0以下であると、プレコート金属板の塗装後鮮映性が向上するためより好適である。亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板の表面粗度は、表面粗度を調整した調質圧延ロールにて亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板を圧延することや、板にめっきを施した後に表面粗度を調整した調質圧延ロールにて圧延する、もしくは、めっきを施す前の板原板に表面粗度を調整した調質圧延ロールにて圧延した後にめっきすることで、粗度を調整することができる。ここで、Raとは、JIS.B.0601.3に記載された算術平均粗さ(Ra)のことである。
【0017】
亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板上に処理する化成処理は、6価クロム含まないものであることを特徴とする。6価クロムは、環境負荷物質であるため、これを含むものは不適である。6価クロムを含まない化成処理としては、一般に公知のもの、電解クロメート処理、反応クロメート処理、リン酸亜鉛系処理、ジルコニア系処理、チタニア系処理、シランカップリング系処理を使用することができ、具体例としては、特開平9−828291号公報、特開平10−251509号公報、特開平10−337530号公報、特開2000−17466号公報、特開2000−248385号公報、特開2000−273659号公報、特開2000−282252号公報、特開2000−265282号公報、特開20000−167482号公報、等に記載された技術や、日本パーカライジング社製のクロムを含まない化成処理「CT−E300」や「CT−E200」、日本ペイント社製の3価クロム型化成処理「サーフコートNRC1000」等を使用することができる。なお、電解クロメート処理や反応クロメート処理は、処理過程において6価クロムを含む処理液を用いるが、処理過程で行われる還元反応において、全ての6価クロムが3価クロムとなるため、これを施したプレコート金属板には最終的に6価クロムが含まれないため、本発明ではこれらも6価クロムを含まない化成処理と言える。
【0018】
本発明のプレコート金属板は、化成処理を施した亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板上に、バインダー樹脂とトリポリリン酸二水素アルミニウムカルシウムイオン交換シリカ、着色顔料を含むベース塗膜層を形成することを特徴とする。
【0019】
本発明のベース塗膜層は、バインダー樹脂として一般に公知のプレコート金属板用塗料に、トリポリリン酸二水素アルミニウムカルシウムイオン交換シリカ、着色顔料を添加したものを成膜させることで形成できる。
【0020】
本発明のベース塗膜層中にはトリポリリン酸二水素アルミニウムが含まれる。トリポリリン酸二水素アルミニウムを含まないと塗膜密着性が劣り、プレス加工時に塗膜がプレス金型によって擦り取られる(一般に型かじりとも呼ばれる)恐れがある。さらに、トリポリリン酸二水素アルミニウムは薄い白色であるため、ベース塗膜を着色顔料で色付けする際に色調に悪影響を及ぼさないため好適である。トリポリリン酸二水素アルミニウムの添加量は塗膜のバインダー樹脂固形分100質量部に対し0〜50質量部にする必要があり、50質量部超ではベース塗膜の色調が調整できなくなるため、不適である。
【0021】
本発明のベース塗膜層中にはカルシウムイオン交換シリカが含まれる。カルシウムイオン交換シリカは、シリカ表面にカルシウムイオンを吸着したようなタイプのもので、グレイス社製の「シールデックス」(グレイス社の登録商標)等を使用することができる。カルシウムイオン交換シリカは、耐食性に優れる上、薄い白色であるため、ベース塗膜を着色顔料で色付けする際に色調に悪影響を及ぼさないため好適である。カルシウムイオン交換シリカの添加量は、バインダー樹脂固形分100質量部に対し0〜50質量部にする必要があり、50質量部超ではベース塗膜の色調が調整できなくなるため不適である。
【0022】
更に、トリポリリン酸二水素アルミニウムカルシウムイオン交換シリカとの合計の添加量が塗膜のバインダー樹脂固形分100質量部に対し1〜50質量部にする必要がある。1質量部未満では、耐食性や密着性が劣り、50質量部超ではベース塗膜の色調が調整できなくなるため不適である。
【0023】
本発明のベース塗膜中には前記トリポリリン酸二水素アルミニウムカルシウムイオン交換シリカについては、どちらか一方が含まれていれば良いが、トリポリリン酸二水素アルミニウムカルシウムイオン交換シリカの双方が含まれていると、耐食性や加工性密着性がより向上し、より好適である。
【0024】
本発明のベース塗膜層中に含まれる着色顔料は、一般に公知の着色顔料を使用することができる。例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、硫酸バリウム(BaSO4)、アルミナ(Al2O3)、カオリンクレー、カーボンブラック、酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4)等の無機顔料や、有機顔料等を使用することができる。着色顔料の添加量は、特に規定するものではなく、求める色調を得るのに必要な量を添加できる。しかし、リン酸アルミ系顔料とシリカ系防錆顔料と全着色顔料との合計は、塗膜のバインダー樹脂固形分100質量部に対し1質量部超300質量部以下にする必要がある。1質量部以下では、耐食性や密着性が劣り、300質量部超では塗膜の加工性が劣るため不適である。
【0025】
バインダー樹脂としてのプレコート金属板用塗料とは、溶剤中にバインダー成分である有機物や無機物が溶解もしくは分散しているものであり、熱を加えて短時間(5〜400秒)で成膜可能な塗料のことである。ベース塗膜に用いるバインダー樹脂成分は特に規定するものではなく、一般に塗料用バインダー樹脂として公知のもの、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂等の一般に公知の塗料用樹脂等を使用することができる。これらの樹脂には、硬化剤としてイソシアネートやメラミン樹脂等を添加しても良い。
【0026】
本発明者らがこれまでに得た知見によれば、メラミン硬化型ポリエスエル系、イソシアネート硬化型ポリエステル系の樹脂をバインダー成分として用いると、塗膜の加工性に優れ好適であり、特に、次のものが好適であるが、これらは一例であり、これらに限定されるものではない。
【0027】
メラミン硬化型ポリエスエル系の場合、ポリエステル樹脂の分子量は、数平均分子量で2000〜30000が好適であり、ポリエステル樹脂のTgは-10〜130℃が好適であり、メラミン樹脂の添加量は、ポリエステル樹脂100質量部に対して5〜70質量部が好適である。
【0028】
ポリエステル樹脂の分子量が2000未満では塗膜の加工性が低下し、30000超では、樹脂が溶剤に溶解したときに粘度が高すぎるため塗装しにくくなる恐れがある。ポリエステル樹脂のTgが-10℃未満では塗膜が成膜しない恐れがあり、130℃超では塗膜が硬すぎるため、加工性が低下する恐れがある。メラミン樹脂の添加量がポリエステル100質量部に対して5質量部未満であると、塗膜が未硬化となる恐れがあり、70質量部超では、塗膜が硬くなりすぎて加工性が低下する恐れがある。
【0029】
使用するポリエステル樹脂は、一般に市販されているもの、例えば、東洋紡績社製の「バイロンTM」や、住化バイエルウレタン社製「デスモフェンTM」等を使用することができる。使用するメラミン樹脂も、一般に市販されているもの、例えば、三井サイテック社製「サイメルTM」、「マイコートTM」、大日本インキ化学工業社製「ベッカミンTM」、「スーパーベッカミンTM」等を使用することができる。
【0030】
イソシアネート硬化型ポリエステル系の場合、ポリエステル樹脂の分子量は、数平均分子量で2000〜30000が好適であり、ポリエステル樹脂のTgは-10〜70℃が好適であり、イソシアネートの添加量は、[イソシアネートのNCO基当量]/[ポリエステル樹脂のOH基当量]=0.8〜1.2であると好適である。
【0031】
[イソシアネートのNCO基当量]/[ポリエステル樹脂のOH基当量]の値が0.8未満もしくは1.2超では、塗膜生成時に塗膜が未硬化となりやすい。ポリエステル樹脂の分子量が2000未満では塗膜の加工性が低下し、30000超では、樹脂が溶剤に溶解したときに粘度が高すぎるため、塗装しにくくなる恐れがある。ポリエステル樹脂のTgが-10℃未満では、塗膜が成膜しない恐れがあり、70℃超では塗膜が硬すぎるため、加工性が低下する恐れがある。
【0032】
使用するポリエステル樹脂は、一般に市販されているもの、例えば、東洋紡績社製の「バイロンTM」、住化バイエルウレタン社製「デスモフェンTM」等を使用することができる。
【0033】
使用するイソシアネートも、一般に市販されているもの、例えば、住化バイエルウレタン社製「スミジュールTM」、「デスモジュールTM」、三井武田ケミカル社製「タケネート」(三井武田ケミカル社の登録商標)等を使用することができる。
【0034】
本発明プレコート金属板は、トリポリリン酸二水素アルミニウムカルシウムイオン交換シリカと着色顔料とを含むベース塗膜層上にクリヤー塗膜を形成することを特徴とする。クリヤー塗膜は、ベース塗膜と同様の一般に公知のプレコート金属板用塗料を使用することができる。一般には、有機樹脂のみを溶剤に溶融もしくは分散させ、成膜したときに透明となるものである。クリヤー塗膜に用いる有機樹脂は、ベース塗膜のバインダーとして例示したものを使用することができ、特にベース樹脂のバインダーとして例示したメラミン硬化型ポリエスエル系、イソシアネート硬化型ポリエステル系の樹脂であるとより好適である。また、成膜したとき透明性が担保できる範囲であれば、僅かな着色顔料や防錆顔料等を添加しても良い。クリヤー塗料中には、必要に応じて一般に公知の界面活性剤、ワックス、スリップ材、レベリング材、消胞剤等の添加剤を添加することができる。特にクリヤー塗膜層にワックスを添加すると、プレコート鋼板表面の摩擦係数が低くなり、プレス成形性が向上するためより好適である。塗膜の透明性については特に規定するものではなく、ベース塗膜の色彩が透けて見えなければならない。樹脂の種類や添加剤の種類や添加量によって透明性は異なるため、必要に応じてこれらを選定する必要がある。
【0035】
また、本発明のプレコート金属板に塗装するベース塗膜層のバインダー樹脂又はクリヤー塗膜の樹脂が、両端に官能基を有する直鎖状重合体である樹脂と2官能化合物からなる塗料組成物を加熱によって直鎖上重合体の更なる直鎖状重合反応を促進させて成膜させるタイプのものであると、加工部の耐食性が向上し、更に好適である。このように焼付過程で直鎖状重合反応を促進させて成膜させた塗膜は、見かけ上、高分子の熱可塑型塗膜となる。そのため、これらの塗膜を被覆したプレコート鋼板を加工すると、加工部で塗膜樹脂中の分子鎖のズレが発生し、加工により伸張された塗膜の内部応力が架橋された熱硬化型塗膜と比べて緩和し易くなる。そのため、直鎖重合を促進させた塗膜を塗装したプレコート鋼板は加工部での塗膜内部応力が一般の熱硬化性塗膜の時と比べて小さくなるため、加工部の耐食性がより向上するものと推定される。
【0036】
両端に官能基を有する2官能の直鎖状重合体は、一般に公知の直鎖状ポリエステル、直鎖状エポキシ、直鎖状アクリル等を使用することができる。例えば、直鎖状ポリエステルの場合、大日本インキ化学工業社製の「ベッコライトTM M-6207-40」、「ベッコライトTM 57-206-40」、東洋紡社製の「バイロンTM 600」、「バイロンTM 290」等を、直鎖状エポキシ樹脂の場合、大日本インキ化学工業社製の「エピクロンTM 7050-40S」、ジャパンエポキシレジン社製の「エピコート1007」、「エピコート1009」等を、直鎖状アクリル樹脂の場合、三菱レイヨン社製の「LR-635」や大日本インキ化学工業社製の「アクリディックTM A-405」等を使用することができる。
【0037】
両端に官能基を有する直鎖状重合体と反応し得る2官能化合物としては、ジイソシアネート化合物、ジカルボキシル基化合物が挙げられる。ジイソシアネート化合物としては、キシレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等がある。また、ポリエステルポリオール、アクリルポリオールの両端を前述のジイソシアネート又はヘキサメチレンジアミン、ポリエステルポリオールジカルボン酸、グリシジル変性アクリル樹脂等で変性した樹脂等が挙げられる。ジイソシアネート化合物としては、ブロック化イソシアネート化合物でも良い。
【0038】
両端に官能基を有する2官能の直鎖状重合体と2官能化合物との比率は、2官能化合物/直鎖状重合体の官能基比で0.5〜10が好適である。0.5未満もしくは10超であると、直鎖重合反応が促進しない恐れがある。両端に官能基を有する直鎖状重合体である樹脂と2官能化合物からなる塗料組成物については、特開2002-249725号公報に記載の技術を使用することができる。
【0039】
本発明のベース塗膜やクリヤー塗膜の塗装方法は、一般に公知の塗布方法、例えば、ロールコート、カーテンフローコート、ローラーカーテンコート、ダイコート、エアースプレー、エアーレススプレー、電着塗装、粉体塗装、浸漬、バーコート、刷毛塗りなどで行うことができる。ただし、ロールコートやカーテンフローコート、ローラーカーテンコートを完備した一般的コイルコーティングライン、シートコーティングラインと呼ばれる連続塗装ラインで塗装すると、塗装作業効率が良く大量生産が可能であるため、より好適である。塗料の乾燥焼付方法は、熱風オーブン、直火型オーブン、塩赤外線オーブン、誘導加熱型オーブン等の一般に公知の乾燥焼付方法を用いることができる。塗料が紫外線硬化型塗料の場合は一般に公知の紫外線照射装置、電子線硬化型塗料の場合は一般に公知の電子線照射装置を使用することができる。
【0040】
本発明のプレコート金属板の塗膜厚は、特に限定するものではないが、ベース塗膜が乾燥膜厚にして10μm以上、ベース塗膜と上塗りクリヤー塗膜との合計膜厚が20μm以上であると、光沢や鮮映性、色調が向上し、より好適である。ベース塗膜の膜厚が10μm未満であると、塗膜の隠蔽性が劣り、色調が悪くなる恐れがある。ベース塗膜と上塗りクリヤー塗膜との合計膜厚が20μm未満であると、光沢や鮮映性が低下する恐れがある。これらの塗膜の上限は、特に規定するものではないが、膜厚が厚すぎると塗装焼付の工程でワキと呼ばれる塗装欠陥が発生したり、均一膜厚で塗装しにくい等の問題が発生する恐れがあるので、ベース塗膜及び上塗りクリヤー塗膜の各塗膜の膜厚は100μm以下が好ましい。
【0041】
また、本発明のプレコート金属板は、本発明の塗膜を両面に施しても良いし、片面に施しても良い。片面にのみ本発明の塗膜を施した場合、他方の面には一般に公知のプレコート鋼板用塗膜を被覆しても良い。
【0042】
【実施例】
以下、実験に用いた供試材について詳細を説明する。
【0043】
まず、次に示す2種類のクリヤー塗料を作製した。
クリヤー塗料 -1
東洋紡社製の非晶性ポリエステル樹脂である「バイロンTM 270」を、有機溶剤(質量比でシクロヘキサノン:ソルベッソ150=1:1に混合したものを使用)に、樹脂固形分濃度が30質量%となるように溶解した。次に、硬化剤として三井サイテック社製のメラミン樹脂「サイメルTM 303」を添加した。メラミン樹脂の添加量は、樹脂固形分の質量比で、ポリエステル樹脂固形分:メラミン樹脂固形分=85:15となるように添加した。さらに、このポリエステル樹脂とメラミン樹脂の混合溶液に、三井サイテック社製の酸性触媒「キャタリストTM 600」を0.5質量%添加し、これらを攪拌することで、クリヤー塗料を得た。
クリヤー塗料 -2
東洋紡社製の直鎖型非晶性ポリエステル樹脂である「バイロンTM 600」を、有機溶剤(質量比でシクロヘキサノン:ソルベッソ150=1:1に混合したものを使用)に、樹脂固形分濃度が30質量%となるように溶解した。次に、2官能化合物である住化バイエルウレタン社製のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)「スミジュールTM BL3175」を、HDIのNCO基/ポリエステル樹脂のOH基の比で1.0となるように添加した。更に、反応触媒として、三井武田ケミカル社製の「タケネートTK-1」を添加し、攪拌することでクリヤー塗料を得た。
【0044】
次に、ベース塗料の作製方法を示す。上記2種のクリヤー塗料を用いて、テイカ社製のトリポリリン酸二水素アルミニウム「K-WHITE#105」(以下、リン酸アルミと称す)、グレイス社製のカルシウムイオン交換シリカ「シールデックスC303」(以下、Caシリケートと称す)、石原産業社製の白色の着色顔料「タイペークCR95」(以下、着色顔料と称す)を添加し、攪拌することでベース塗料を得た。なお、作製した塗料の詳細を表1に記載する。
【0045】
【表1】
Figure 0004116929
【0046】
また、比較として、次に示す市販のプレコート鋼板用塗料も使用した。
市販プライマー塗料
日本ファインコーティング社製プライマー塗料「FL641プライマー」(塗膜中にクロム酸ストロンチウムを10質量%含むものを使用)
市販トップ塗料
日本ファインコーティング社製「FL100HQ」(酸化チタンのみにて白色に着色したもので、その他の添加顔料を含まないものを使用)
以下、実験に用いたプレコート金属板について詳細を説明する。
【0047】
新日本株式会社製の亜鉛-ニッケル合金めっき鋼板「ジンクライト」(以下、ZLと称す)を原板として準備した。板厚は0.6mmのものを使用した。また、電気めっきラインにてめっきする前の工程にて、焼鈍した冷延鋼板に表面の粗度を調整した圧延ロールにて調質圧延を施すことで、亜鉛-ニッケル合金めっき鋼板の表面粗度を変えた材料も準備した。本実験で用いた亜鉛-ニッケル合金めっき鋼板のめっき付着量は片面20g/m2、めっき層中のニッケル量は12%であった。
【0048】
更に、原板として新日本製鐵株式会社製の溶融亜鉛めっき鋼板「シルバージンク」(以降、GIと称す)とも準備した。「シルバージンク」(新日本製鐵の登録商標)は、板厚0.6mm、亜鉛付着量Z08(片面20g/m2)のものを用いた。化成処理は施していない未処理材を用いた。また、必要に応じて、既にめっきを施したGIを調整した圧延ロールにて調質圧延を施すことで、GIの表面粗度を変えた材料も準備した。
【0049】
次に、準備した原板を必要に応じてFC-4336(日本パ−カライジング製)の2質量%濃度、50℃温度の水溶液にてスプレー脱脂し、水洗後、乾燥した後に電解クロメート処理、ノンクロメート処理、3価クロム処理、6価クロム処理を行った。電解クロメート処理は、クロム酸50g/L、硫酸0.3g/Lの浴中で、電流密度10A/dm2で所定の電気量を通電して、電解型クロメート処理を施し、水洗した後、熱風乾燥炉を用いて到達板温80℃で乾燥することで、処理した。電解クロメート処理の付着量はクロム付着量で15mg/m2とした。また、ノンクロメート処理、3価クロム処理、6価クロム処理は、それぞれの処理液をロールコーターにて塗布し、熱風オーブンにて乾燥させた。熱風オーブンでの乾燥条件は、鋼板の到達板温で60℃とした。
【0050】
なお、ノンクロメート処理液は日本パーカライジング社製の「CT-E300」を使用し、全固形分付着量として50mg/m2となるように塗布した。3価クロム処理液は日本ペイント社製の「サーフコートNRC1000」を使用し、クロム付着量として50mg/m2となるように、6価クロム処理液は日本パーカライジング社製の「ZM1300AN」を使用し、クロム付着量として50mg/m2となるようにした。
【0051】
次に、化成処理を施した金属板の片方の面にベース塗料を(以降こちらの面を表面と称す)、他方の面に裏面塗料を(以降、こちらの面を裏面と称す)ロールコーターにて塗装し、熱風を吹き込んだ誘導加熱炉にて金属板の到達板温が210℃となる条件で乾燥硬化することでベース塗膜層を得た。そして乾燥焼付後に、塗装された金属板へ水をスプレーにて拭きかけ、水冷した。更に、表面のベース塗膜層の上に、クリヤー塗料をローラーカーテンコーターにて塗装し、熱風を吹き込んだ誘導加熱炉にて金属板の到達板温が230℃となる条件で乾燥硬化させることでクリヤー塗膜層を得た。そして、乾燥焼付後に、塗装された金属板へ水をスプレーにて吹きかけ、水冷することで、プレコート金属板サンプルを得た。また、比較材として、6価クロム処理を施した金属板上に市販プライマー塗料を前記ベース塗料と同条件で塗装焼き付けし、更にその上に、市販トップ塗料と表1中の塗料-13をトップ塗料としてクリヤー塗料と同条件で塗装焼付したプレコート金属板も作製した。
【0052】
なお、表2に、作製したプレコート金属板の詳細を記載する。また、裏面塗料は、全てのサンプルにおいて日本ペイント社製の「FL100HQ」(グレー色に着色したもの)を乾燥膜厚にして5μm塗装した。
【0053】
【表2】
Figure 0004116929
【0054】
以下、作製したプレコート金属板の評価方法の詳細を記載する。
1. 光沢測定
JIS.K.5400.7.6に準じて作製したプレコート金属板の表面の光沢度を測定した。測定条件は入射角及び受光角を20°とした。更に、測定した値が80%のものを○、60%以上80%未満のものを△、60%未満のものを×と評価した。
2. 鮮映性測定
携帯用鮮明度光沢度計「PGD」(東京光電社製)にてGd値を測定した。更に、測定したGd値が0.3以上のものを○、0.1以上0.3未満のものを△、0.1未満のものを×と評価した。
3. 色調測定
JIS.K.5400.7.4.2に準じて色の計測を行った。本実験では、全てのプレコート金属板サンプルを白色に着色しているため、白色度の指標であるL値に着目し、L値が90以上のものを○、70以上90未満のものを△、70未満のものを×と評価した。
4. 塗膜加工密着性試験
作製したプレコート金属板を、180°折り曲げ加工(密着曲げ加工)し、加工部の塗膜を目視で観察し、塗膜の割れの有無を調べた。なお、180°折り曲げを行う際には、プレコート金属板の表面が曲げの外側となるように折り曲げ、さらに曲げの内側にはプレコート金属板と同じ板厚のスペーサーを2枚挟んだ状態で密着曲げを行った(一般に2T曲げとして知られている)。また、加工部に粘着テープを貼り付け、これを勢い良く剥離したときの塗膜の残存状態を目視にて観察した。
【0055】
塗膜割れ及び剥離の評価は、塗膜割れや剥離の全くない時を○、塗膜に僅かな亀裂や剥離が認められる時を△、塗膜に明確な大きな割れや剥離がある時を×として評価した。
5. ビードによる塗膜かじり試験
プレコート金属板をプレス成形したときに、プレス金型でプレコート金属板の塗膜をかじることによって発生する塗膜の剥離を再現する試験方法である「ビードによる塗膜かじり試験法」(公開技報95-1078)を実施した。まず、作製したプレコート金属板を30mm(幅)×300mm(長さ)の試験片に切り出し、この試験片を平面の金型と半径4mmRのビードを設けた金型とで挟み込む。この際に試験片の表面(評価面)に金型のビードが押し付けられるように挟み込み、さらに1tの荷重を加えて金型のビード部をプレコート金属板の評価面に押し付けた。この状態で、プレコート金属板を200mm/minの速度で引き抜き、ビードにて擦られたプレコート金属板の評価面の塗膜剥離状態を目視にて観察し、評価した。
【0056】
評価は、塗膜が全く剥離していない場合を◎、極部分的に剥離している場合を○、ビードで擦られた部分の面積率にして20%程度以上が剥離している場合を△、全面剥離している場合を×とした。
6. 耐食性試験
作製したプレコート金属板を油圧式エリクセンタイプの20tプレス加工試験機を用いて円筒絞り試験した。円筒絞り試験は、ポンチ径φ50mm、ポンチ肩R3mm、ポンチコーナーR3mm、ダイス肩R3mm、絞り比2.0、しわ押さえ圧1tの条件で行い、金属板が金型から絞り抜けるまで加工を行った。なお、本試験においては、市販の潤滑油を金属板に塗布した条件でプレス加工を行い、また、加工材カップの外側が表面となるように加工した。さらに、これら絞り加工を施したプレコート鋼板加工材をJIS.Z.2371に準じて塩水を120時間噴霧した。なお、プレス加工されたサンプルの切断端面は特にシール等はせずに、切断端面が露出する状態で腐食試験を行った。また、塩水は加工材のカップ外側に噴霧した。耐食性試験後の加工サンプル表面の端面部からの腐食程度を観察し、評価した。端面部の評価基準は、加工端面からの最大赤錆発生幅及び最大膨れ幅が2mm以下の場合◎、2mm超3mm以下の場合○、3mm超4mm以下の場合○△、4mm超5mm以下の場合△、5mm超の場合×と評価した。
7. 6価クロム含有量の測定
作成したプレコート金属板に6価クロムが含まれるか否かを判定するために、次の方法にて評価を行った。
【0057】
まず、作製したプレコート金属を50mm×50mmサイズに切断し、試験片を作製した。次に、ビーカーにイオン交換水を500ml入れ、ヒーターにて沸騰させ、この沸騰水中に試験片を30分間浸漬した。そして、試験片を取り出した残溶液中に含まれるクロム濃度をJIS.K.0102のジフェニルカルバジド吸光光度法に準じて測定した。そして、得られたクロム濃度から、作製した試験片から沸騰水中に溶出したクロムトータル量を算出し、これを試験片に含まれるトータル6価クロム量とした。更に、算出したトータル6価クロム量を試験片の面積(2500mm2)で割ることで、作製したプレコート金属板の面積当たりに含まれる6価クロム量を算出し、そして、この6価クロム含有量が0.3mg/m2以下の場合は○(6価クロムを含まない)と評価し、0.3mg/m2超の場合は×(6価クロムを含む)と評価した。
【0058】
【表3】
Figure 0004116929
【0059】
以下、評価結果について詳細を記載する。表3に作製したプレコート金属板の評価結果を示す。本発明のプレコート金属板(本発明例No.1〜16、19〜22)は、高光沢、鮮映性、色調に優れ、更には加工性、加工後の耐食性に優れる。更に、プレコート金属板に塗装した塗膜のバインダー樹脂又はクリヤー塗膜の樹脂が、両端に官能基を有する直鎖状重合体である樹脂と2官能化合物からなる塗料組成物を加熱によって直鎖状重合体の更なる直鎖状重合反応を促進させて成膜させたものであると、加工部の耐食性が更に向上し、より好適である(本発明例No.1、13、14と本発明例No.8、16との比較)。この直鎖重合体の直鎖重合反応を促進させたタイプの皮膜は、ベース塗膜、クリヤー塗膜のいずれか一方への適用で、加工部耐食性に効果を発揮するが、ベース塗膜、クリヤー塗膜の双方に適用すると加工部耐食性が更に向上するため、より好適である(本発明例No.1、13、14と本発明例No.8、16と本発明例No.21、22との比較)。また、本発明のプレコート金属板の原板に用いる亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板の表面粗度Raが1.0超のもの(本発明例No.10)は光沢や鮮映性が少し低下するため、原板に用いる亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板の粗度Raは1.0以下がより好適である。本発明の如く亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板を使用すると、耐食性が良好である(本発明例No.1、9、10と参考例No.17、18との比較)。また、本発明のプレコート金属板で、下塗り塗膜の膜厚を8μmとし、且つ下塗り塗膜と上塗り塗膜との合計膜厚を18μmとしたもの(本発明例No.12)は、若干光沢、鮮映性、色調が劣るため、下塗り塗膜の膜厚を10μm以上とし、且つ下塗り塗膜と上塗り塗膜との合計膜厚を20μm以上とすることがより好ましい。
【0060】
プレコート金属板のベース塗膜中にトリポリリン酸二水素アルミニウム又はカルシウムイオン交換シリカのどちらか一方しか添加されていないもの(本発明例No.19、20)は、ビードカジリ性や耐食性が低下するため、トリポリリン酸二水素アルミニウムカルシウムイオン交換シリカの双方を含むものの方がより好ましい。
【0061】
プレコート金属板のベース塗膜中に含まれるトリポリリン酸二水素アルミニウムの添加量や、カルシウムイオン交換シリカのどちらか一方の添加量もしくは両方の合計添加量が、ベース塗膜のバインダー樹脂100質量部に対して50質量部超のもの(比較例No.22、23、24)は、色調に劣るため不適である。プレコート金属板のベース塗膜中に含まれるトリポリリン酸二水素アルミニウムカルシウムイオン交換シリカと着色顔料との合計添加量がベース塗膜のバインダー樹脂100質量部に対して300質量部超のもの(比較例No.25)は、加工性に劣るため不適である。また、6価クロムを含む化成処理を用いたプレコート金属板は、環境負荷物質であるクロムが溶出し易いため、不適である。なお、6価クロムを含まない化成処理であれば、ノンクロメート化成処理、3価クロム化成処理、電解クロメート化成処理のいずれでも良く、光沢、鮮映性、色調、加工性、ビードかじり性、加工部耐食性等の諸性能は好適である(本発明例No.1とNo.13とNo.14との比較、もしくは本発明例No.8とNo.15とNo.16との比較)。
【0062】
【発明の効果】
本発明により、環境上の影響が懸念される6価クロムを使用せずに、高光沢、高鮮映性を有し、且つ、塗膜の加工密着性、耐食性に優れ、プレス成形に非常に適した高意匠性プレコート金属板を提供することが可能となった。従って、本発明は工業的価値の極めて高い発明であるといえる。

Claims (3)

  1. 亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板の片面もしくは両面上に、6価のクロムを含まない化成処理層、その上に、バインダー樹脂と(a)着色顔料を必須成分として含み、且つ、防錆顔料として(b)トリポリリン酸二水素アルミニウム又は(c)カルシウムイオン交換シリカの一方又は双方を含むベース塗膜層、更にその上にクリヤー塗膜層を有するプレコート金属板であって、前記ベース塗膜層中のバインダー樹脂固形分100質量部に対し、(b)の添加量が0〜50質量部、(c)の添加量が0〜50質量部、且つ(b)と(c)の合計添加量が1〜50質量部であると共に、(a)、(b)、(c)の合計添加量がバインダー樹脂固形分100質量部に対し1質量部超300質量部以下であることを特徴とする加工部耐食性に優れた高光沢プレコート金属板。
  2. 前記ベース塗膜層のバインダー樹脂又はクリヤー塗膜層の樹脂の一方又は双方が、両端に官能基を有する直鎖状重合体である樹脂と2官能化合物からなる塗料組成物を加熱によって直鎖状重合体の更なる直鎖状重合反応を促進させて成膜させてなる樹脂である請求項1記載の高光沢プレコート金属板。
  3. 前記金属板の表面粗度Raが1.0以下である請求項1記載の高光沢プレコート金属板。
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