JP4111805B2 - X線分析装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)や分析電子顕微鏡などの電子励起により試料の分析を行うX線分析装置の技術分野に属し、特に、所望のX線分析空間分解能を簡単かつ精度よく実現できるX線分析装置の技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、EPMAや分析電子顕微鏡などの電子励起により試料の分析を行うX線分析装置においては、加速電圧を下げると電子の拡散領域が小さくなり微小な領域を分析することができる。その場合、加速電圧が分析に用いる特性X線の臨界励起電圧に近づくとX線強度が急激に低下し、この傾向は加速電圧がこの臨界励起電圧に近づくつれて顕著となる。そのため、加速電圧を下げてX線強度が低下する分を補うように照射電流を上げる必要がある。
【0003】
しかし、加速電圧を下げてX線強度が低下する分を補うように照射電流を上げると、プローブ径が大きくなり、この傾向は加速電圧を下げるほど顕著になる。すなわち、目的とする分析の最適条件は、加速電圧を下げることによりX線発生領域が小さくなる効果と、照射電流を上げることによりプローブ電流が大きくなる効果との兼ね合いで決まる。したがって、目的とする分析の最適条件を求めるためには、加速電圧と照射電流とによって決まる最小プローブ径および加速電圧に対するX線発生領域を知る必要がある。
【0004】
従来、X線分析装置においては、加速電圧と照射電流とによって決まる最小プローブ径は、カタログ等に記載されている限られた条件でのグラフなどから読み取っており、また、X線発生領域を推定するデータは、ノモグラフ化されたデータから読み取るか、モンテカルロシミュレーションソフトを用いてその都度計算して求めている。そして、従来のX線分析装置では、所望の分析領域を与える条件を、各種条件で得られる前述の最小プローブ径とX線発生領域のデータとの2つを考慮して推定している(例えば、特許文献1等を参照)。
【特許文献1】
特開2002−62270号公報(段落番号[0002]、[0003])
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、X線分析装置の加速電圧と照射電流とによって決まる最小プローブ径は、カタログ等に記載されている限られた条件でのグラフなどから読み取るため、最小プローブ径を確実に求めることは難しい。また、この最小プローブ径は計算でも求められる。図6に、あるX線分析装置の加速電圧と照射電流とによって決まる最小プローブ径を計算で求めた一例を示す。しかし、このプローブ径は装置によって異なるため、計算式や装置のパラメータが分からないと一般には計算できない。また、プローブ径は実測でも求めることができるが、多くの条件でプローブ径を測定するには多くの手間がかかるという問題がある。
【0006】
また、X線発生領域を推定するためには、従来、測定に用いる特性X線の臨界励起電圧を調べてノモグラフ化されたデータから読み取ったり、その都度モンテカルロシミュレーションソフトを使って計算したりしているが、これらの方法でX線発生領域を推定することは面倒であるという問題がある。なお、図7に、Castaingによって与えられたX線発生領域を推定する式を基にした「実効的」X線発生領域の例を示す。Castaingによって与えられたX線発生領域は全発生X線のうち、99%が発生する大きさを示す。発生するX線は電子線の中心に近い部分ほど割合が大きいので、ここで示した例では、式から直接計算される大きさの30%を「実効的」領域とした。分析の目的により、「実効的」領域を決めるのに30%より大きくしても小さくしてもよい。図7に示すデータでは、Al中のAl−KαとFe−Kαを例に取り、「実効的」X線発生領域の例を示している。
なお、X線発生領域を推定するのに用いる式は、Castaingの提唱した式に限定される必要はなく、他に提唱されている式、あるいはそれらの改良された式を用いてもよいことは言うまでもない。
【0007】
最終的には、いくつかの条件で求めた最小プローブ径とX線発生領域のデータとを考慮して所望の空間分解能を得るための条件を探し出す必要があり、熟練者であっても時間と手間が更に一層かかるという問題がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、熟練者でなくとも最適な分析条件を精度良く、簡単にかつ素早く求めることのできるX線分析装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、本発明のX線分析装置は、電子ビームを細く絞り電子プローブとして試料に照射し、試料から発生した特性X線を検出して分析を行うX線分析装置であって、所望の空間分解能を得るための最適な加速電圧を決定する分析条件決定手段を備え、この分析条件決定手段が、プローブ電流をパラメータとした装置の加速電圧と各加速電圧における最小プローブ径Dpの関係を表す第1のデータと、特性X線種に応じた加速電圧と、推定したX線発生領域のうち、分析の目的により実効領域とされた実効的X線発生領域Dxとの関係を表す第2のデータとを記憶する記憶手段と、特性X線種を指定する手段と、プローブ電流を指定する手段と、指定されたプローブ電流における前記第1のデータと指定された特性X線種における前記第2のデータを加速電圧をそろえて加算して得られる加速電圧に応じた最小プローブ径Dpと実効的X線発生領域Dxの加算値(Dp+Dx)を示す第3のデータに基づいて加算値(Dp+Dx)の最小値を与える加速電圧値を求める演算手段を備えることを特徴としている。
【0010】
また、本発明のX線分析装置は、電子ビームを細く絞り電子プローブとして試料に照射し、試料から発生した特性X線を検出して分析を行うX線分析装置であって、プローブ電流をパラメータとした電子プローブの加速電圧と各加速電圧における最小プローブ径Dpの関係を表す第1のデータと、特性X線種に応じた加速電圧と推定したX線発生領域のうち、分析の目的により実効領域とされた実効的X線発生領域Dxとの関係を表す第2のデータとを加速電圧をそろえて加算して得られる加速電圧に応じた最小プローブ径Dpと実効的X線発生領域Dxの加算値(Dp+Dx)を示す第3のデータに基づき、プローブ電流をパラメータとした加速電圧と前記加算値(Dp+Dx)との関係を示すグラフを表示するようにしたことを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明にかかるX線分析装置の実施の形態の一例で、EPMAに適用した例を示す図である。
【0012】
図1に示すように、この例のEPMAは、従来のEPMAと同様に、電子線を放射する電子銃1と、この電子線を集束する集束レンズ2と、電子線を分析試料(以下、単に試料ともいう)11に収束する対物レンズ3と、電子線の分析試料11に当てる位置を操作する電子線偏向コイル4と、電子線を発生しかつ発生した電子線を制御するために、電子銃1、集束レンズ2、対物レンズ3、および電子線偏向コイル4を制御する電子線発生・制御回路5と、電子線の照射で試料11から発生または反射する二次電子や反射電子等の電子を検出する電子検出器6と、電子検出器6からの電子の検出信号を処理する電子線信号処理系7と、電子線発生・制御回路5および後述するX線分光器制御・信号処理回路10を制御するとともに、電子線信号処理系7およびX線分光器制御・信号処理回路10からの出力信号に基づいて電子像信号を出力する、電子線走査および電子像信号の陰極線管16への表示のための制御・演算処理装置8と、試料から発生するX線を分光し検出するためのX線分光器9と、X線分光器9を制御しかつX線分光器9からのX線の検出信号を出力する分光器制御・信号処理回路10と、試料ステージおよびこの試料ステージ駆動機構12と、試料ステージ駆動機構12の制御ユニット13と、EPMAの制御・演算処理装置(CPU)14と、プローブ径・X線発生領域の情報を記憶したデータベース15と、CPU14に付属する陰極線管16と、入力機器(マウス、キーボード等)17とから構成されている。
【0013】
図2に示すように、CPU14内には、入力機器17からの入力情報に基づいてデータベース15からデータを読みとるデータ読取手段14aと、データ読取手段14aで読みとったデータに基づいてプローブ径Dpを計算するプローブ径(Dp)計算手段14bと、データ読取手段14aで読みとったデータに基づいてX線発生領域(Dx)を計算するX線発生領域計算手段14cと、計算された(Dp+Dx)の最小値を計算しかつ計算した最小値を与える加速電圧を決定する加速電圧決定手段14dと、決定した加速電圧の結果を陰極線管16に表示させる結果(加速電圧)表示制御手段14eとが設けられている。
【0014】
また、この例のEPMAにおけるデータベース15には、以下のような情報が格納されている。
(1) 検出可能な特性X線種と各特性X線種の臨界励起電圧の情報、
(2) 図6に示す照射電流(プローブ電流)をパラメータとしたEPMAの加速電圧と最小プローブ径Dpの関係を表すデータ、
(3) 図7に示すような特性X線種に応じたEPMAの加速電圧とX線発生領域Dxの関係曲線を、平均原子番号、平均原子量と平均密度の情報および特性X線種の臨界励起電圧の情報から計算により求めるための計算式。
【0015】
そして、データ読取手段14a、プローブ径(Dp)計算手段14b、X線発生領域(Dx)計算手段14c、(Dp+Dx)の最小値を与える加速電圧を決定する加速電圧決定手段14d、結果(加速電圧)表示制御手段14e、およびデータベース15によりなる、最適分析条件決定手段18がCPU14内に構成されている。
【0016】
一方、この例のX線分析装置におけるCPU14には、図3に示すように所望の空間分解能を得るための最適な分析条件を得るフローが準備されている。そして、この例のX線分析装置においては、図3に示すフローにしたがって、所望の空間分解能を得るための最適な分析条件を得るようにしている。
【0017】
試料11の分析にあたり、最適な分析条件を得るために、図3に示すようにまずステップS1で、試料情報の入力処理が行われる。すなわち、入力機器17を用いて試料11の分析部位に関する情報(平均原子番号A、平均原子量Zと平均密度ρの情報)が入力される。なお、平均原子番号Aと平均原子量Zの情報は、定数で近似することも実用上可能であるので、その場合には、データベース15にその定数を格納しておけば、必ずしもその都度入力する必要はなく、平均密度ρの情報のみを入力するようにしてもよい。また、平均原子番号A、平均原子量Zと平均密度ρの情報を数値で実際に入力するのではなく、鉄、アルミニウム合金等の代表的な測定対象物質名を選択指示すると、それらの物質を代表する平均原子番号、平均原子量と平均密度が入力されるようにしてもよい。その場合には、データベース15内に鉄、アルミニウム合金等の代表的な測定対象物質名毎に平均原子番号、平均原子量と平均密度の情報を記述したテーブルを格納しておき、例えば、鉄が指定されたらそのテーブルから鉄の平均原子番号A、平均原子量Zと平均密度ρの情報を読み出すようにすればよい。このような簡便な入力方法を採用すれば、経験の浅いオペレータであっても簡単かつ正確に試料情報を入力することができる。
【0018】
次に、ステップS2で、特性X線種情報の入力処理が行われる。すなわち、入力機器17を用いて特性X線種の情報(例えば、AlのKα線)が入力され、続いて、ステップS3で同様にして、分析目的や特性X線種の感度に応じて必要照射電流量(例えば、300nA)が入力されるとともに、ステップS4で同様にして、所望とする空間分解能(例えば、1000nm)が入力される。
【0019】
ステップS1ないしS4における所定のデータの入力が終わると、ステップS5でCPU14のデータ読取手段14aは、これらの入力された情報に基づいてデータベース15から必要なデータを読み出す。次に、ステップS6でプローブ径Dpの計算処理が行われる。すなわち、プローブ径(Dp)計算手段14bは、データベース15から読み出された図6の加速電圧−最小プローブ径(Dp)のデータから、入力されたプローブ電流300nAの曲線Dp300を選択して抜き出す(図4)。
【0020】
次に、ステップS7で実効的X線発生領域Dxの計算処理が行われる。すなわち、X線発生領域(Dx)計算手段14cは、データベース15に格納されている前述の(3)の計算式に基づいて、測定すべき特性X線種についてX線発生領域(Dx)の計算を行う。先に述べたように、この計算には特性X線種の臨界励起電圧Ec、分析部位についての平均原子番号A、平均原子量Zと平均密度ρの各情報が必要である。
【0021】
臨界励起電圧Ecの情報は、ステップS2で入力された測定すべき特性X線種の情報(例えば、Al−Kα)に基づいて、データベース15に記憶されている前述の(1)の特性X線種の臨界励起電圧の情報から、Al−Kα線の臨界励起電圧Ec=1.55kVが読み出される。また、平均原子番号A、平均原子量Zと平均密度ρの情報は、ステップS1で入力されているものが用いられる。
X線発生領域(Dx)計算手段14cは、所定数の加速電圧値について前述の計算を行い、その結果として、図7における上の曲線に相当するAl−Kαについての加速電圧−X線発生領域(Dx)のデータDx(Al−Kα)を得る(図4)。
【0022】
次いで、加速電圧決定手段14dは、求められた2つのデータDp300およびDx(Al−Kα)を加速電圧の軸を合わせて加算し、図4において実線で示されるDp300+Dx(Al−Kα)のデータを得る。更に、加速電圧決定手段14dは、Dp300+Dx(Al−Kα)のデータに基づいて、分析領域の最小値(800nm)と、その最小値を与える加速電圧値(この例では、10kV)を求める。
【0023】
そして、ステップS9でその結果の表示処理が行われる。すなわち、求められた(Dp+Dx)の最小値を与える加速電圧値10kVがその最小値(800nm)とともに陰極線管16に表示される。最後に、ステップS10で再計算を行う必要があるか否かの判断処理が行われ、再計算を行う必要があると判断されると、ステップS1に移行し、ステップS1以下の各処理が再び繰り返される。再計算を行う必要がある場合とは、前述の(Dp+Dx)の最小値がステップS4で入力された所望とする空間分解能を満たさない場合や、求められた加速電圧が小さ過ぎて、X線の分析が確実に行われない場合等である。
ステップS10で再計算を行う必要がないと判断されると、ステップS11において最適分析条件に装置を設定した状態で分析が行われる。
【0024】
このようにして、この例のEPMAによれば、あらかじめ分析に用いる特性X線種、少なくとも試料の平均密度ρおよびプローブ電流値を与えれば、例えば図4に示される(Dx+Dp)のデータが作成され、そのデータに基づいて(Dx+Dp)の最小値を与える最適な加速電圧を精度よくかつ簡単に求めることができる。
そして、ユーザーは、EPMAの加速電圧を求められた値に設定した上で、EPMAによるX線分析を所望の空間分解能で実施することができる。なお、このような加速電圧の設定を自動的に行うようにすれば、ユーザーの負担を更に少なくすることができる。
【0025】
図5は、本発明にかかるX線分析装置の実施の形態の他の例を示す部分構成図であり、図8はその動作を説明するためのフロー図である。なお、前述の例と同じ構成要素には同じ符号を付すことで、その詳細な説明は省略する。
この例のEPMAでは、図1に示されるEPMAのCPU14内に、図5に示される分解能情報計算手段19が設けられている。分解能情報計算手段19は、データ読取手段14a、プローブ径グラフデータ保持手段14b′、X線発生領域(Dx)計算手段14c、加算手段14d′、結果表示制御手段14eから構成されている。
そして、この例のEPMAでは、図10に示されるフローに従って分解能情報を計算し、その計算結果をグラフとして表示する。
なお、前述の例と同様に、この例のEPMAにおけるデータベース15にも、以下のような情報が格納されている。
(1) 検出可能な特性X線種と各特性X線種の臨界励起電圧の情報、
(2) 図6に示す照射電流(プローブ電流)をパラメータとしたEPMAの加速電圧と最小プローブ径Dpの関係を表すデータ、
(3) 図7に示すような特性X線種に応じたEPMAの加速電圧とX線発生領域Dxの関係曲線を、平均原子番号、平均原子量と平均密度の情報および特性X線種の臨界励起電圧の情報から計算により求めるための計算式。
【0026】
そして、試料11の分析にあたり、図8に示されるフローに従い、まず、ステップS11で入力機器17を用いて試料情報の入力処理が行われる。すなわち、入力機器を17を用いて試料11の分析部位に関する情報(平均原始番号A、平均原子量Zと平均密度ρの情報)が入力される。なお、これらの情報については、先の例でも述べたように、簡便な入力方法を採用することが可能である。
【0027】
次に、ステップS12で特性X線種情報が入力される。次に、ステップS13でCPU14のデータ読取手段14aは、これらの入力された情報に基づいてデータベース15から必要なデータを読み出す。次に、ステップS14でプローブ径(Dp)のデータが保持される。すなわち、プローブ径(Dp)保持手段14b′は、データベース15から読み出された図6の加速電圧−最小プローブ径(Dp)データを保持する。
【0028】
次に、ステップS15で実効的X線発生領域Dxの計算処理が行われる。すなわち、第1の例におけるステップS7とまったく同様に、X線発生領域(Dx)計算手段14cは、データベース15に格納されている前述の(3)の計算式に基づいて、測定すべき特性X線種についてX線発生領域(Dx)の計算を行う。前述したように、この計算には特性X線種の臨界励起電圧Ec、分析部位についての平均原子番号A、平均原子量Zと平均密度ρの各情報が必要である。
【0029】
臨界励起電圧Ecの情報は、ステップS12で入力された測定すべき特性X線種の情報(例えば、Al−Kα)に基づいて、データベース15に記憶されている前述の(1)の特性X線種の臨界励起電圧の情報から、Al−Kα線の臨界励起電圧Ec=1.55kVが読み出される。また、平均原子番号A、平均原子量Zと平均密度ρの情報は、ステップS11で入力されているものが用いられる。
X線発生領域(Dx)計算手段14cは所定数の加速電圧値について前述の計算を行い、その結果として、図7における上の曲線に相当するAl−Kαについての加速電圧−X線発生領域(Dx)のデータDx(Al−Kα)を得る。
【0030】
次いで、このデータDx(Al−Kα)とプローブ径(Dp)保持手段14b′に保持されている図6の加速電圧−最小プローブ径(Dp)データとの加算がステップS16において行われ、その結果がステップS17において表示装置の画面に表示される。この加算は加速電圧の軸を合わせて行われ、その結果、図9(a)に示す加算データDx(Al−Kα)+(Dp)が得られてグラフとして表示される。この加算データは、X線発生領域(Dx)と最小プローブ径(Dp)を加算したもので、実際に分析される分析領域の大きさを表すものである。図9(a)からわかるように、プローブ電流をパラメータとし、加速電圧に対する分析領域の関係を表しており、図9(a)におけるプローブ電流値300nAの曲線が図4において実線で示されるDp300+Dx(Al−Kα)の曲線に該当する。
【0031】
また、図9(b)はステップS12で特性X線種としてFe−Kαを入力した場合に、前述と同様なステップを経て得られたグラフを表したものである。
オペレータは、このグラフから希望のプローブ電流を選択した場合、加速電圧をどの値に選定すると、どの程度の分析領域の大きさになるかを即座に判断することができ、併せてそのプローブ電流で最小の分析領域を与える加速電圧を知ることができ、目的にあった加速電圧を選択して設定することができる。
【0032】
なお、前述した2つの例では、データベースに図6に示す照射電流(プローブ電流)をパラメータとしたEPMAの加速電圧と最小プローブ径Dpの関係を表すデータを記憶し、図7に示すような特性X線種に応じたEPMAの加速電圧とX線発生領域Dxの関係曲線を計算により求めるための計算式を記憶するようにしたが、どちらについても、データを直接記憶してもデータを作成するための計算式を記憶してもよいことは言うまでもない。
【0033】
この例のEPMAによれば、最適な分析条件でEPMAによる分析を自動的に、高精度にかつ効率よく行うことができる。
この例のEPMAの他の構成および他の作用効果は前述の例と同じである。
【0034】
なお、前述の各例では、本発明のX線分析装置をEPMAに適用して説明しているが、本発明はこれに限定されることなく、例えば、分析電子顕微鏡などの電子励起により試料の分析を行う他のX線分析装置にも適用することができる。
【0035】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明にかかるX線分析装置によれば、加速電圧に対するプローブ径のデータおよび加速電圧に対するX線発生領域のデータを予めデータベースに準備するか、または加速電圧と照射電流によって決まる最小プローブ径とX線発生領域とを直ちに計算できるパラメータのデータを予めデータベースに準備し、分析に用いる特性X線種、試料情報(試料の平均原子番号、平均原子量、平均密度)、必要とする照射電流値および所望の空間分解能を与えることにより、データベースに準備されたデータに基づいて最小プローブ径と推定したX線発生領域のうち、分析の目的により実効領域とされた実効的X線発生領域のデータとをそれぞれ計算するとともにこれらを足し合わせた値の最小値を計算しているので、計算された最小値を与える最適な加速電圧を精度良く、簡単かつ素早く求めることができ、求めた加速電圧によって最適な分析条件を設定できる。したがって、設定した最適分析条件で試料分析を簡単にかつ高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかるX線分析装置の実施の形態の一例で、EPMAに適用した例を模式的に示す図である。
【図2】 図1に示すX線分析装置の最適分析条件設定手段を模式的に示す図である。
【図3】 最適分析条件を得るためのフローを示す図である。
【図4】 最小プローブ径Dp(nm)とX線発生領域Dx(nm)とを足し合わせた(Dp+Dx)(nm)を示す図である。
【図5】 本発明にかかるX線分析装置の実施の形態の他の例を示す部分構成を模式的に示す図である。
【図6】 X線分析装置の加速電圧と照射電流とによって決まる最小プローブ径を計算で求めた一例を示す図である。
【図7】 Castaingによって与えられたX線発生領域を推定する式を基にした「実効的」X線発生領域の例を示す図である。
【図8】 本発明の他の実施例のフローを示す図である。
【図9】 他の実施例として、最小プローブ径Dp(nm)とX線発生領域Dx(nm)とを足し合わせた(Dp+Dx)(nm)を示す図である。
【符号の説明】
8…制御・演算処理装置、9…X線分光器、10…分光器制御・信号処理回路、11…分析試料、14…制御・演算処理装置(CPU)、15…データベース、16…陰極線管、17…入力機器(マウス、キーボード等)、18…最適分析条件設定手段、19…分解能情報計算手段
Claims (7)
- 電子ビームを細く絞り電子プローブとして試料に照射し、試料から発生した特性X線を検出して分析を行うX線分析装置であって、所望の空間分解能を得るための最適な加速電圧を決定する分析条件決定手段を備え、
この分析条件決定手段は、プローブ電流をパラメータとした装置の加速電圧と各加速電圧における最小プローブ径Dpの関係を表す第1のデータと、特性X線種に応じた加速電圧と、推定したX線発生領域のうち、分析の目的により実効領域とされた実効的X線発生領域Dxとの関係を表す第2のデータとを記憶する記憶手段と、特性X線種を指定する手段と、プローブ電流を指定する手段と、指定されたプローブ電流における前記第1のデータと指定された特性X線種における前記第2のデータを加速電圧をそろえて加算して得られる加速電圧に応じた最小プローブ径Dpと実効的X線発生領域Dxの加算値(Dp+Dx)を示す第3のデータに基づいて加算値(Dp+Dx)の最小値を与える加速電圧値を求める演算手段を備えることを特徴とするX線分析装置。 - 前記分析条件決定手段で決定された加速電圧値を表示する手段を更に備えたことを特徴とする請求項1記載のX線分析装置。
- 前記分析条件決定手段で決定された加速電圧値を装置の加速電圧として設定する加速電圧設定手段を更に備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のX線分析装置。
- 前記第2のデータは、少なくとも試料の平均密度に関する情報及び指定された特性X線種の最低励起電圧の情報に基づき所定の計算により求められることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のX線分析装置。
- 電子ビームを細く絞り電子プローブとして試料に照射し、試料から発生した特性X線を検出して分析を行うX線分析装置であって、
プローブ電流をパラメータとした電子プローブの加速電圧と各加速電圧における最小プローブ径Dpの関係を表す第1のデータと、特性X線種に応じた加速電圧と、推定したX線発生領域のうち、分析の目的により実効領域とされた実効的X線発生領域Dxとの関係を表す第2のデータとを加速電圧をそろえて加算して得られる加速電圧に応じた最小プローブ径Dpと実効的X線発生領域Dxの加算値(Dp+Dx)を示す第3のデータに基づき、プローブ電流をパラメータとした加速電圧と前記加算値(Dp+Dx)との関係を示すグラフを表示するようにしたことを特徴とするX線分析装置。 - 前記第1のデータは記憶手段に格納されており、前記第2のデータは、少なくとも試料の平均密度に関する情報及び分析すべき特性X線種の最低励起電圧に関する情報に基づき所定の計算により求められることを特徴とする請求項5記載のX線分析装置。
- プローブ電流を指示する手段を備え、この指示手段により指示されたプローブ電流に対応する曲線を他の曲線と区別して表示するようにしたことを特徴とする請求項5又は6記載のX線分析装置。
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