JP4111655B2 - 情報記録再生装置及び情報再生装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プローブ顕微鏡を応用した情報記録再生装置及び情報再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、情報記録再生装置或いは情報再生装置として、プローブ顕微鏡を応用して高密度化を図ったものがある。この場合、光プローブ形状に製造誤差や経時変化などがあると、光プローブと記録媒体との間隔を一定に維持できず、所定の記録密度を得ることが困難となる。そこで、光プローブの形状のばらつきや経時変化などの光プローブの分解能を変化させる原因があっても、所定の記録密度を維持できるようにした高密度情報記録再生装置が、例えば、特開平10−172172号公報により提案されている(第1の従来例)。
【0003】
この第1の従来例によれば、図18に示すように、記録媒体1上に異なる周期Λ1,Λ2を有する周期パターン2,3を設け、これらの周期パターン2,3を光プローブ4で検出し、得られる信号を周波数分析して比較し、光プローブ4と記録媒体1との間隔Hを検出するようにしている。5は半導体レーザ、6はレンズである。また、光プローブ4は、コア7aを有する光ファイバ7の先端の突起7b部分により形成され、金属膜8で覆われている。9は光検出器である。
【0004】
このような構成によれば、周期パターン2,3を光プローブ4が走査した時の光量変化の基本波成分Iの大きさは、記録媒体1と光プローブ4との間隔Hが小さい場合には図19中にH:小で示すようになり、間隔Hが大きい場合には図19中にH:大で示すようになる。即ち、距離Hが大きいと高い空間周波数Kの成分が小さくなることから、これらの周期パターン2,3を走査して光量変化の基本成分の差をとることにより、光プローブ4と周期パターン2,3(従って、記録媒体1)との距離Hを測定できる。
【0005】
ここに、周期パターン2,3の空間周波数K1,K2は、
K1=2π/Λ1, K2=2π/Λ2
から求められる。
【0006】
また、先端から光を放つ光ファイバをプローブとして用いた情報記録再生装置の提案例もある(第2の従来例)。この第2の従来例について図20ないし図22を参照して説明する。まず、先端から光を放つ光ファイバをプローブ11とし、図20に示すようにスライダ12に載せる。スライダ12は例えば基板13と記録層,保護層14等からなる記録媒体15と接触しないフライングスライダでもよいし、接触するコンタクトスライダでもよい。ここでは、サスペンション16、アーム17及びアームモータ(図示せず)を介して、記録媒体15を回転させるためのスピンドルモータと同一の基板に固定されている。ただし、スライダ12はアームモータにより記録媒体15のトラッキング方向に移動可能とされている。これらのスライダ12の働きにより記録媒体15が回転中は、記録媒体15とプローブ11の先端との距離は安定して数十nmに保たれる。
【0007】
記録媒体15表面或いは表面近傍には図21に示すように円周方向(トラック方向)にマークピット18が並んでおり、情報が書き込まれている。記録媒体15は回転するので、マークピット18の中心線上にプローブ11の先端が来るようにプローブ11をトラッキングさせないと、正しい情報の書き込み又は読み出しができない。
【0008】
図22は図20に示したプローブ11付近を半径方向に断面し拡大して示す断面構造図である。コア19aとクラッド19bとを有する光ファイバ構造のプロ−ブ11は、その上端根元側はコモン電極20部分を介してスライダ12に固定され、記録媒体15に対向する先端11a側は自由になっている、いわゆる片持ち梁構造とされている。先端11aがエッチングなどにより細く先鋭化されている。先端11aの小さな開口からのみ光が出るように遮光金属膜21がプローブ11周辺に全面的に被覆されている。この開口は光ファイバ中を伝播する光の波長以下の開口径になっており、この開口からいわゆる近接場光(“エバネッセント光”とも言う)を発する。また、この提案例では、片持ち梁構造を持つプローブであればよいので、特に近接場光を発するプローブに限らず、開口径が使用する波長より大きいもの、例えば、内部集光型プローブでもよい。この光により記録媒体15に対する情報の書き込み又は読み出しを行う。プローブ11に被覆されている遮光金属膜21は接地されている。
【0009】
また、スライダ12が使用されるときの記録媒体15の半径方向(トラッキング方向)に、プローブ11を挟むように一対の電極22,23が設けられている。これらの電極22,23はスライダ12内に固定されている。これらの電極22,23とプローブ11のコモン電極20(遮光金属膜21)との間に各々別々の電圧V1,V2を印加する。これにより、電極24又は25とプローブ11との間に静電引力が働き、プローブ11は片持ち梁となりその先端11aが記録媒体15の半径方向にスイングする。これにより、トラッキングに必要なプローブ11の先端11aの移動(アクチュエーション)が行われる。
【0010】
図22において、▲1▼の方向にプローブ11の先端11aを動かすときは電極22にのみ電圧V1を印加し、電極23には電圧V2を印加しない。また、▲2▼の方向にプローブ11の先端11aを動かすときは、その逆であり、電極23にのみ電圧V2を印加し、電極22には電圧V1を印加しない。この時の▲1▼の方向の静電引力F1は(1)式、▲2▼の方向の静電引力F2は(2)式で表される。
【0011】
【数1】
Figure 0004111655
【0012】
これらの式中、C1,C2はプローブ11と電極22,23との間の各々の静電容量、S1,S2は静電容量C1,C2の等価的面積、d1,d2はプローブ11と電極22,23との間の各々の距離、εaは空気の誘電率を表す。また、静電容量C1,C2は、
1 =εa・S1/d1 …………(3)
2 =εa・S2/d2 …………(4)
のように仮定した。
【0013】
これより、静電引力は電圧の2乗に比例し、距離の2乗に反比例する。
【0014】
プローブ11の先端11aを動かすための電圧の印加方法として、上記のように移動させたい方向の電極にのみ電圧を印加する方法の他に、両方の電極22,23にバイアス電圧Vbと制御電圧ΔVとを重畳させて同時に印加させる方法がある。即ち、
1 =Vb+ΔV ………(5)
2 =Vb−ΔV ………(6)
で示すような電圧V1,V2を印加し、制御電圧ΔVを変動させることにより、プローブ11の先端11aを動かす。
【0015】
従って、プローブ11に働く力Fは(7)式で示される。
【0016】
【数2】
Figure 0004111655
【0017】
ただし、
1 =S2 ………(8)
1 ≒d2 =d ………(9)
と仮定した。
【0018】
このようにすると静電引力は制御電圧ΔVに比例するので、制御しやすくなる。
【0019】
また、第3の従来例として図23に示すような提案例がある。まず、レーザ光源31は連続発振(CW)しており、その光はカップリングレンズ32により光ファイバ33の端面に集光されてそのコア内に入る。その光は先端が先鋭化されている光ファイバ33の先端のごく近傍(数十nm)に近接場光として存在する。また、この提案例では、片持ち梁構造を持つプローブであればよいので、特に近接場光を発するプローブに限らず、開口径が使用する波長より大きいもの、例えば、内部集光型プローブでもよい。従って、光ファイバ先端近傍に存在する光は特に近接場光のみに限られるものではなく、内部集光型プローブ先端から発する伝播光でもよいし、或いは、伝播光と近接場光とが混在した光でもよい。記録媒体34はスピンドルモータ35により回転される。記録媒体34の表面には透過率のコントラストを持つ領域(マーク)により情報が記録されている。プローブ36として機能する光ファイバ33の先端を記録媒体34の表面から数十nm以下の距離に近づけると、プローブ36の先端から染み出している近接場光は記録媒体34に伝播し、先のマークの透過率に対応したパワーを持つ透過光が記録媒体34のプローブ36とは反対側に出てくる。この光はカップリングレンズ37を通してフォトマルチプライア(PMT)38に入る。PMT38は入射した光を電気信号に変換し、この信号はプリアンプ39で増幅された後、2値化回路40でデジタル情報に変換され、コンピュータ41に入力され、記録媒体34上の情報が読み取られる。記録媒体34はプローブ36と相対運動をしているので、円周方向(トラック方向)に並んでいるマークに記録されている情報が時系列にコンピュータ41に貯えられていく。
【0020】
記録媒体34が書き込み可能なものであれば、同じようにデータを書き込むこともできる。必要な書き込みパルスがコンピュータ41によりLDドライバ42に与えられ、これがレーザ光源31を駆動して、記録媒体34の表面に情報を書き込んでいく。
【0021】
この際、記録媒体34の表面とプローブ36の先端との間隔は数十nmにしなければならない。実際の記録媒体34は凹凸があり、記録媒体34も回転に伴い面ぶれを起こして上下動するのが普通なので、この間隔を一定にするように制御を行う必要がある。この制御のために、記録媒体34の表面とプローブ36の先端に原子間力に基づくシアフォースや静電引力を利用する。
【0022】
ここに、プローブ36は水晶振動子43の片方の片持ち梁に接着されている。水晶振動子43はL字型のホルダ44を介して積層圧電素子45に接続されている。積層圧電素子45は耐摺動パッド46の上に接続されている。耐摺動パッド46は記録媒体34の表面に接触している。記録媒体34が回転すると、記録媒体34上を耐摺動パッド46が摺動し、記録媒体34とプローブ36との間で相対運動が生じる。積層圧電素子45は電圧を印加するとZ方向に伸び縮みするので、プローブ36と記録媒体34の表面との間の距離を変えることができる。
【0023】
水晶振動子43は圧電素子47によりその共振周波数で加振される。記録媒体34の表面がプローブ36の先端に近づくと、記録媒体34の表面とプローブ36の先端との間に原子間力に基づくシアフォースや静電引力が働く。この力が記録媒体34の表面とプローブ36の先端との間のばねとして働き、この振動系全体の共振周波数が変化する。しかし、圧電素子47により、加振されている周波数は以前と変わらないので、振動系全体は共振状態から外れ、これにより振動の振幅は小さくなる。水晶振動子43に生じる電圧は差動増幅器48で増幅され、ロックインアンプ49に入力される。ロックインアンプ49は振動周波数に同期して水晶振動子の振幅を直流電圧に増幅・変換する。ロックインアンプ49の出力はA/D変換器51を介してコンピュータ41に取り込まれる。コンピュータ41はプローブ36と記録媒体34の表面との間の所望の距離に対応する基準値との差から、プローブ36と記録媒体34の表面との間の距離を制御する数値を計算し、出力する。D/A変換器52でこの出力値がアナログ電圧に変換された後、パワーアンプ53により増幅されて、積層圧電素子45に入力される。これにより、プローブ36と記録媒体34の表面との間の距離がコンピュータ41により制御される。
【0024】
ここに、耐摺動パッド46も含めてその上に搭載されている物全体をスライダ54と呼ぶ。スライダ54は図示しないサスペンション、アーム、アームモータを介してスピンドルモータ35が固定されている基板に固定されている(図20に示した構成参照)。但し、スライダ54はアームモータによりトラッキング方向には移動できる。また、サスペンションによりZ方向に上下動可能とされている。しかし、サスペンションによりスライダ54は適当な力で記録媒体34表面に押し付けられており、耐摺動パッド46は記録媒体34表面に接触している。
【0025】
以上のような情報記録再生装置が待機状態にある時は、プローブ36と記録媒体34とが接触しないようにプローブ36は記録媒体34から遠くに離しておく。よって、上述したように書き込み或いは読み取り動作を始める前に、プローブ36を記録媒体34表面に近づける作業が必要となる。
【0026】
この際、上述したようにプローブ36と記録媒体34表面との間の距離をシアフォースのみで知ろうとすると、両者間の距離が数十nmに近づくまで、記録媒体34表面へのプローブ36の接近を知ることができない。これにより衝突が生じ易い。そこで、第3の従来例による提案では、プローブ36と記録媒体34表面との間に電位差を生じさせることによりこれを解決するようにしている。
【0027】
その前提として、プローブ36はその先端まで導電性の物であることと記録媒体34もまた導電性の物であることが必要である。近接場光測定に用いられる光ファイバ33を利用したプローブ36は、クラッドからの光の放出がノイズとなるので、これを防ぐために、クラッド上に金属コートが施されているので、一般的に前者の条件は満たしている。また、記録媒体34も光磁気材料、相変化材料などは導体又は半導体であり比抵抗が低いので、多くの場合、後者の条件も満たしている。
【0028】
このような前提の下、コンピュータ41で切換え制御可能なスイッチ55を設ける。まず、スイッチ55により電圧Vaの電源56をプローブ36の金属遮光膜に接続する。金属膜は光ファイバ33全体に付着させることができるので、光ファイバ33(プローブ36)の根元に電源56を接続することでプローブ36の先端に電圧Vaを印加することができる。記録媒体34はスピンドルモータ35の軸を介して、基準電位(接地)に接続させておく。
【0029】
このようにしておくと光ファイバ33(プローブ36)先端の金属膜と記録媒体34表面間に電圧Vaが印加される。従って、両者間に静電引力が働く。静電引力は電圧Vaの2乗に比例し、プローブ36と記録媒体34表面との間の距離dの2乗に逆比例する。一方、原子間力、即ちシアフォースはプローブ36と記録媒体34表面との間の距離dの指数関数で減少する。従って、静電引力は距離dに対する減衰がシアフォースに比べて遥かに緩やかであるため、プローブ36と記録媒体34表面間の距離dが大きくても両者の接近を水晶振動子43の振幅の減少として捉えることができる。この距離dは電圧Vaの値にもよるが、数十Vの場合、プローブ36と記録媒体34表面間の距離が数十μm程度でも水晶振動子43の振幅減少を捉えることができる。どの程度のプローブ36と記録媒体34表面間の距離から、両者の接近を捉えるかは、電圧Vaにより調整可能である。より遠くから両者の接近を捉えたい場合は電圧Vaを大きくすればよい。
【0030】
待機時は、スライダ54は記録媒体34上に接触している。この時、スピンドルモータ35は回転又は停止しているが、プローブ36と記録媒体34表面とが接触する危険性を考えると停止している方が好ましい。
【0031】
書き込み・読み取りを行う前に、プローブ36と記録媒体34との間に電圧Vaを印加した状態で、圧電素子47により水晶振動子43、プローブ36を共振周波数で加振し、水晶振動子43の出力からプローブ36の振動振幅を常に監視しつつ、ランプレートの速い電圧を積層圧電素子45に印加して速いスピードで、プローブ36を記録媒体34表面に近づける。振幅が小さくなったところで、積層圧電素子45の電圧をホールドしてプローブ36と記録媒体34表面とを接近させることを停止する。さらにプローブ36と記録媒体34との間の電位差をなくし、ランプレートの遅い電圧を積層圧電素子45に印加して遅いスピードで微動のアクチュエータ(圧電素子など)により、プローブ36の先端と記録媒体34表面との間の距離が所望の距離になるように両者を接近させ、この後、書き込み・読み取りを始める。
【0032】
一例として、待機時は、プローブ36の先端と耐摺動パッド46の表面(パッドは記録媒体34表面に接触するので、記録媒体34表面と同じ高さになる)が約0.5μmになるように予めスライダ54を作製しておく。そして、例えば、電圧Vaを2V程度とし、水晶振動子43の出力からプローブ36の振動振幅を常に監視しつつ、ランプレートの速い電圧を積層圧電素子45に印加して速いスピードでプローブ36と記録媒体34表面とを接近させる。
【0033】
プローブ36と記録媒体34表面との間の距離が200nm位になると、プローブ36と記録媒体34表面との間の静電引力により水晶振動子43の振動振幅が小さくなる。これをコンピュータ41が捉えて積層圧電素子45の電圧をホールドしてプローブ36と記録媒体34表面とを接近させることを停止する。200nm程度からプローブ36と記録媒体34表面との接近を検知し停止させれば、検知から停止までの間のオーバーランによりプローブ36と記録媒体34表面とが衝突することはない。従って、比較的速い速度(約0.1μm/s)で最初のアプローチを行うことができる。
【0034】
さらに、今度はスイッチ55を接地側に切換える。これにより、プローブ36と記録媒体34表面との間の電位差はなくなり、両者には静電引力は働かなくなる。この後、ランプレートの遅い電圧を積層圧電素子45に印加して遅いスピード(約10nm/s)でプローブ36の先端と記録媒体34表面とを接近させていく。数十nm程度までプローブ36と記録媒体34表面とが接近すると、プローブ36と記録媒体34表面との間のシアフォースにより水晶振動子43の振動振幅が小さくなる。所望の距離まで両者が近づいたところで、これをコンピュータ41が捉えて積層圧電素子45の変位を停止する。この時はアプローチの速度が前の段階より遅くなっているので、オーバーランが少なくなる。従って、停止時のプローブ36と記録媒体34表面との間の距離が小さくなっても両者が衝突することはない。この後、書き込み・読み取りを始める。
【0035】
このように、プローブ36と記録媒体34表面との間の距離が大きい時は速いスピードで両者を接近させつつ、静電引力を用いてプローブ36と記録媒体34表面との間の距離が大きい段階から両者の接近を捉えることにより衝突を防ぐことができる。プローブ36と記録媒体34表面との間の電位差と接近速度とを段階的に小さくすることで、以上のシーケンスを行うことができる。最後のアプローチでは両者間の電圧印加をなくしてシアフォースによるプローブ36と記録媒体34表面との間の距離検出を行ってアプローチを終了する。
【0036】
シアフォースだけのプローブ36と記録媒体34表面との間の距離検出の場合は、数十nmに接近してからでないと両者の接近を検知できないので、アプローチの最初から数十nm/sなる非常にゆっくりとした速度でアプローチを行う必要があり、書き込み・読み取り動作の開始までに非常に時間がかかった。しかし、第3の従来例による方法により、プローブ36と記録媒体34表面との間の距離に対応した接近速度を選ぶことができるので、書き込み・読み取り開始までの時間を短縮することができる。
【0037】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、第2の従来例による場合、電極22,23に印加する電圧V1,V2は(5)(6)式で示したようにプローブ11をトラッキング方向に移動させるための制御電圧ΔVとバイアス電圧Vbとを重畳させた電圧となっている。この場合、制御電圧ΔV或いはバイアス電圧Vbはフローティングとなるため、電位の安定など回路構成上困難が伴ってしまう。
【0038】
そこで、本発明は、プローブをトラッキングさせるための制御電圧の安定性を向上させ得る上に回路構成も単純化させ得る情報記録再生装置及び情報再生装置を提供することを第1の目的とする。
【0039】
また、第2の従来例によれば、電極22,23に電圧を印加する方法として、プローブ11を移動させたい方向の電極22又は23のみに電圧を印加する方法と、両方の電極22,23にバイアス電圧Vbと制御電圧ΔVとを重畳させて印加する方法とが示されており、後者の方が制御性がよいといえる。しかし、装置として求められるのは制御性だけでなく、できるだけ低電圧で駆動できることが望まれる。特に高周波での応答性が求められる制御電圧に関しては、低電圧である方が高速な回路を実現しやすい。
【0040】
そこで、本発明は、制御性のみでなく制御電圧の低電圧化を確実にできる条件を特定し、回路の負担(コスト、消費電力、サイズ)を低減させ得る情報記録再生装置及び情報再生装置を提供することを第2の目的とする。
【0041】
さらに、第3の従来例による場合、記録媒体34に対する素早いアプローチを達成するためにプローブ36に直流電圧Vaを印加させるようにしている。また、第2の従来例では、プローブ11をトラッキングさせるための電極22又は23と、プローブ11との間にバイアス電圧Vbを印加させるようにしている。これは制御電圧ΔVの低電圧化や電圧に対するプローブ11の動きに直線性を持たせるためである。このため、第3の従来例のように素早いアプローチを達成するためにプローブ36に直流電圧Vaを印加すると適切なバイアス条件から外れてしまう。
【0042】
さらに、第1の従来例においては、プローブ4先端と記録媒体1表面の距離を測定するために記録媒体1に空間周波数の異なるパターン2,3を設ける必要があり、記録密度が低くなってしまう。また、得られた信号を周波数分析する必要があり、これらの処理に時間がかかり、充分なスピードで、距離を制御することができない。
【0043】
そこで、本発明は、第2の目的による制御性の向上と制御電圧の低電圧化と、プローブ先端と記録媒体との間の衝突が少なく、かつ、アプローチの動作速度の高速化とを同時に実現し、さらには、特別な波長や記録媒体上に設けるパターンや、時間のかかる信号処理なども必要としない情報記録再生装置及び情報再生装置を提供することを第3の目的とする。
【0044】
さらには、本発明は、特別なパターンを記録媒体に作製したり、信号処理時間が長くなるなどの不具合を伴うことなく、トラッキングの制御性の向上と制御電圧の低電圧化と、プローブ先端と記録媒体との間の衝突の回避と、動作速度の高速化とを同時に実現し得る情報記録再生装置及び情報再生装置を提供することを第4の目的とする。
【0045】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、プローブから記録媒体に与えるエネルギーにより前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、これらの電極に前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧を印加する制御電圧印加手段と、前記プローブに前記制御電圧とは独立したバイアス電圧を印加するバイアス電圧印加手段と、を備える。
【0046】
従って、バイアス電圧は制御電圧とは独立した電圧であり、かつ、これらの電圧の基準電圧を共通にとれるので、制御電圧の安定性が増し、回路構成も単純化できる。
【0047】
請求項2記載の発明は、プローブから記録媒体に与えるエネルギーにより前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、これらの電極と前記プローブとの間に、前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧とこの制御電圧とは独立したバイアス電圧とを重畳して印加する電圧印加手段とを備え、前記バイアス電圧の電圧値が、このバイアス電圧を印加しない場合に前記プローブが所望の力を受けるために必要な制御電圧の電圧値の1/4より大きな値に設定されている。
【0048】
従って、バイアス電圧の電圧値を適正に設定することで、静電引力の直線性を向上させ得る上に、トラッキングのための制御電圧を低電圧化させることができ、この制御電圧を出力する回路の負担を低減させることができる。
【0049】
請求項3記載の発明は、プローブから記録媒体に与えるエネルギーにより前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、これらの電極に、前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧と、この制御電圧とは独立したバイアス電圧と、前記プローブを前記記録媒体に接近させるための接近用電圧とを重畳して印加する重畳電圧印加手段と、前記プローブを前記記録媒体に接近させる時のみ前記プローブに前記接近用電圧を印加する接近用電圧印加御手段と、を備える。
【0050】
従って、プローブを記録媒体に接近させる時のみプローブに対して接近用電圧を印加することによりアプローチ動作の高速化を図ることができ、このために特別なパターンを用いる必要がなく、かつ、信号処理時間が長くなることもなく、この際、電極に対しては制御電圧とバイアス電圧と接近用電圧とが重畳して印加されるが、接近用電圧の増減に対して電極に対する印加電圧が同じ値で連動するので、制御電圧とバイアス電圧とによる電位差に影響を及ぼすことがなく、トラッキング動作に関する制御性の向上とその制御電圧の低電圧化を図ることができる。
【0051】
請求項4記載の発明は、プローブと記録媒体との間での一方から他方への作用により前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、これらの電極に前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧を印加する制御電圧印加手段と、前記プローブに前記制御電圧とは独立したバイアス電圧を印加するバイアス電圧印加手段と、を備える。ここに、「プローブと記録媒体との間での一方から他方への作用」とは、プローブから記録媒体への作用或いは記録媒体からプローブへの作用を意味する。
【0052】
従って、バイアス電圧は制御電圧とは独立した電圧であり、かつ、これらの電圧の基準電圧を共通にとれるので、制御電圧の安定性が増し、回路構成も単純化できる。
【0053】
請求項5記載の発明は、プローブと記録媒体との間での一方から他方への作用により前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、これらの電極と前記プローブとの間に、前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧とこの制御電圧とは独立したバイアス電圧とを重畳して印加する電圧印加手段とを備え、前記バイアス電圧の電圧値が、このバイアス電圧を印加しない場合に前記プローブが所望の力を受けるために必要な制御電圧の電圧値の1/4より大きな値に設定されている。ここに、「プローブと記録媒体との間での一方から他方への作用」とは、プローブから記録媒体への作用或いは記録媒体からプローブへの作用を意味する。
【0054】
従って、バイアス電圧の電圧値を適正に設定することで、静電引力の直線性を向上させ得る上に、トラッキングのための制御電圧を低電圧化させることができ、この制御電圧を出力する回路の負担を低減させることができる。
【0055】
請求項6記載の発明は、プローブと記録媒体との間での一方から他方への作用により前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、これらの電極に、前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧と、この制御電圧とは独立したバイアス電圧と、前記プローブを前記記録媒体に接近させるための接近用電圧とを重畳して印加する重畳電圧印加手段と、前記プローブを前記記録媒体に接近させる時のみ前記プローブに前記接近用電圧を印加する接近用電圧印加手段と、を備える。ここに、「プローブと記録媒体との間での一方から他方への作用」とは、プローブから記録媒体への作用或いは記録媒体からプローブへの作用を意味する。
【0056】
従って、プローブを記録媒体に接近させる時のみプローブに対して接近用電圧を印加することによりアプローチ動作の高速化を図ることができ、このために特別なパターンを用いる必要がなく、かつ、信号処理時間が長くなることもなく、この際、電極に対しては制御電圧とバイアス電圧と接近用電圧とが重畳して印加されるが、接近用電圧の増減に対して電極に対する印加電圧が同じ値で連動するので、制御電圧とバイアス電圧とによる電位差に影響を及ぼすことがなく、トラッキング動作に関する制御性の向上とその制御電圧の低電圧化を図ることができる。
【0057】
請求項7記載の発明は、プローブと記録媒体との間に流れるトンネル電流により前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、これらの電極に前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧を印加する制御電圧印加手段と、前記プローブに前記制御電圧とは独立したバイアス電圧を印加するバイアス電圧印加手段と、を備える。
【0058】
従って、バイアス電圧は制御電圧とは独立した電圧であり、かつ、これらの電圧の基準電圧を共通にとれるので、制御電圧の安定性が増し、回路構成も単純化できる。
【0059】
請求項8記載の発明は、プローブと記録媒体との間に流れるトンネル電流により前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、これらの電極と前記プローブとの間に、前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧とこの制御電圧とは独立したバイアス電圧とを重畳して印加する電圧印加手段とを備え、前記バイアス電圧の電圧値が、このバイアス電圧を印加しない場合に前記プローブが所望の力を受けるために必要な制御電圧の電圧値の1/4より大きな値に設定されている。
【0060】
従って、バイアス電圧の電圧値を適正に設定することで、静電引力の直線性を向上させ得る上に、トラッキングのための制御電圧を低電圧化させることができ、この制御電圧を出力する回路の負担を低減させることができる。
【0061】
請求項9記載の発明は、プローブと記録媒体との間に流れるトンネル電流により前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、これらの電極に、前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧と、この制御電圧とは独立したバイアス電圧と、前記プローブを前記記録媒体に接近させるための接近用電圧とを重畳して印加する重畳電圧印加手段と、前記プローブを前記記録媒体に接近させる時のみ前記プローブに前記接近用電圧を印加する接近用電圧印加手段と、を備える。
【0062】
従って、プローブを記録媒体に接近させる時のみプローブに対して接近用電圧を印加することによりアプローチ動作の高速化を図ることができ、このために特別なパターンを用いる必要がなく、かつ、信号処理時間が長くなることもなく、この際、電極に対しては制御電圧とバイアス電圧と接近用電圧とが重畳して印加されるが、接近用電圧の増減に対して電極に対する印加電圧が同じ値で連動するので、制御電圧とバイアス電圧とによる電位差に影響を及ぼすことがなく、トラッキング動作に関する制御性の向上とその制御電圧の低電圧化を図ることができる。
【0063】
請求項10記載の発明は、プローブと記録媒体との間に働くシアフォースにより前記記録媒体に対する情報の再生を行う情報再生装置において、前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、これらの電極に前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧を印加する制御電圧印加手段と、前記プローブに前記制御電圧とは独立したバイアス電圧を印加するバイアス電圧印加手段と、を備える。
【0064】
従って、バイアス電圧は制御電圧とは独立した電圧であり、かつ、これらの電圧の基準電圧を共通にとれるので、制御電圧の安定性が増し、回路構成も単純化できる。
【0065】
請求項11記載の発明は、プローブと記録媒体との間に働くシアフォースにより前記記録媒体に対する情報の再生を行う情報再生装置において、前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、これらの電極と前記プローブとの間に、前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧とこの制御電圧とは独立したバイアス電圧とを重畳して印加する電圧印加手段とを備え、前記バイアス電圧の電圧値が、このバイアス電圧を印加しない場合に前記プローブが所望の力を受けるために必要な制御電圧の電圧値の1/4より大きな値に設定されている。
【0066】
従って、バイアス電圧の電圧値を適正に設定することで、静電引力の直線性を向上させ得る上に、トラッキングのための制御電圧を低電圧化させることができ、この制御電圧を出力する回路の負担を低減させることができる。
【0067】
請求項12記載の発明は、プローブと記録媒体との間に働くシアフォースにより前記記録媒体に対する情報の再生を行う情報再生装置において、前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、これらの電極に、前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧と、この制御電圧とは独立したバイアス電圧と、前記プローブを前記記録媒体に接近させるための接近用電圧とを重畳して印加する重畳電圧印加手段と、前記プローブを前記記録媒体に接近させる時のみ前記プローブに前記接近用電圧を印加する接近用電圧印加手段と、を備える。
【0068】
従って、プローブを記録媒体に接近させる時のみプローブに対して接近用電圧を印加することによりアプローチ動作の高速化を図ることができ、このために特別なパターンを用いる必要がなく、かつ、信号処理時間が長くなることもなく、この際、電極に対しては制御電圧とバイアス電圧と接近用電圧とが重畳して印加されるが、接近用電圧の増減に対して電極に対する印加電圧が同じ値で連動するので、制御電圧とバイアス電圧とによる電位差に影響を及ぼすことがなく、トラッキング動作に関する制御性の向上とその制御電圧の低電圧化を図ることができる。
【0069】
請求項13記載の発明は、プローブから記録媒体に与えるエネルギーにより前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、前記プローブを前記記録媒体に接近させる時には、前記プローブには前記接近用電圧を印加し前記電極には接地電圧又は前記接近用電圧を印加する接近時電圧印加手段と、前記プローブを前記記録媒体に接近させた後には、前記プローブと前記電極との間の電位差が前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧と、この制御電圧とは独立したバイアス電圧とが重畳された電圧になるように電圧を印加する接近後電圧印加手段と、を備える。
【0070】
従って、特別なパターンを記録媒体に作製したり、信号処理時間が長くなるなどの不具合を伴うことなく、トラッキングの制御性の向上と制御電圧の低電圧化と、プローブ先端と記録媒体との間の衝突の回避と、動作速度の高速化とを同時に実現し得る。
【0071】
請求項14記載の発明は、プローブと記録媒体との間での一方から他方への作用により前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う記録再生装置において、前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、前記プローブを前記記録媒体に接近させる時には、前記プローブには前記接近用電圧を印加し前記電極には接地電圧又は前記接近用電圧を印加する接近時電圧印加手段と、前記プローブを前記記録媒体に接近させた後には、前記プローブと前記電極との間の電位差が前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧と、この制御電圧とは独立したバイアス電圧とが重畳された電圧になるように電圧を印加する接近後電圧印加手段と、を備える。ここに、「プローブと記録媒体との間での一方から他方への作用」とは、プローブから記録媒体への作用或いは記録媒体からプローブへの作用を意味する。
【0072】
従って、特別なパターンを記録媒体に作製したり、信号処理時間が長くなるなどの不具合を伴うことなく、トラッキングの制御性の向上と制御電圧の低電圧化と、プローブ先端と記録媒体との間の衝突の回避と、動作速度の高速化とを同時に実現し得る。
【0073】
請求項15記載の発明は、プローブと記録媒体との間に流れるトンネル電流により前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う記録再生装置において、前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、前記プローブを前記記録媒体に接近させる時には、前記プローブには前記接近用電圧を印加し前記電極には接地電圧又は前記接近用電圧を印加する接近時電圧印加手段と、前記プローブを前記記録媒体に接近させた後には、前記プローブと前記電極との間の電位差が前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧と、この制御電圧とは独立したバイアス電圧とが重畳された電圧になるように電圧を印加する接近後電圧印加手段と、を備える。
【0074】
従って、特別なパターンを記録媒体に作製したり、信号処理時間が長くなるなどの不具合を伴うことなく、トラッキングの制御性の向上と制御電圧の低電圧化と、プローブ先端と記録媒体との間の衝突の回避と、動作速度の高速化とを同時に実現し得る。
【0075】
請求項16記載の発明は、プローブと記録媒体との間に働くシアフォースにより前記記録媒体に対する情報の再生を行う情報再生装置において、前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、前記プローブを前記記録媒体に接近させる時には、前記プローブには前記接近用電圧を印加し前記電極には接地電圧又は前記接近用電圧を印加する接近時電圧印加手段と、前記プローブを前記記録媒体に接近させた後には、前記プローブと前記電極との間の電位差が前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧と、この制御電圧とは独立したバイアス電圧とが重畳された電圧になるように電圧を印加する接近後電圧印加手段と、を備える。
【0076】
従って、特別なパターンを記録媒体に作製したり、信号処理時間が長くなるなどの不具合を伴うことなく、トラッキングの制御性の向上と制御電圧の低電圧化と、プローブ先端と記録媒体との間の衝突の回避と、動作速度の高速化とを同時に実現し得る。
【0077】
【発明の実施の形態】
本発明の第一の実施の形態を図1に基づいて説明する。本実施の形態は、基本的には図20ないし図22に示した情報記録再生装置に準ずるものであり、同一部分は同一符号を付して示す。
【0078】
コア19aとクラッド19bとを有する光ファイバ構造のプロ−ブ11は、その上端根元側はコモン電極20部分を介してスライダ12に固定され、記録媒体15に対向する先端11a側は自由になっている、いわゆる片持ち梁構造とされている。先端11aはエッチングなどにより細く先鋭化されている。先端11aの小さな開口からのみ光が出るように遮光金属膜21がプローブ11周辺に全面的に被覆されている。この開口は光ファイバ中を伝播する光の波長以下の開口径になっており、この開口からいわゆる近接場光を発する。もっとも、このような近接場光を発するプローブ以外のプローブの場合であっても、同様な構造を取るプローブの場合であれば適用できる。例えば、開口径が使用する波長より大きい内部集光型プローブでもよい。この光により記録媒体15に対する情報の書き込み又は読み出しを行う。プローブ11に被覆されている遮光金属膜21と接地との間にはバイアス電圧Vbを印加するバイアス電圧印加手段としての電源61が接続されている。このバイアス電圧Vbは正負何れであってもよい。
【0079】
また、スライダ12が使用されるときの記録媒体15の半径方向(トラッキング方向)に、プローブ11を挟むように一対の電極22,23が設けられている。これらの電極22,23はスライダ12内に固定されている。これらの電極22,23とプローブ11のコモン電極20(遮光金属膜21)との間に各々別々の電圧V1,V2を印加する。この電圧V1,V2を生成するため、電極22,23と接地との間には、各々電圧V1e,V2eなる制御電圧印加手段としての電源62,63が接続されている。従って、電圧V1,V2は電源61によるバイアス電圧Vbと電源62,63による電圧V1e,V2eとの重畳電圧として印加されるもので、これらの電源61,62,63が電圧印加手段として作用する。ここに、これらの電源61,62,63の基準電圧は接地で共通されている。
【0080】
これにより、電極22又は23とプローブ11との間に静電引力が働き、プローブ11は片持ち梁となりその先端11aが記録媒体15の半径方向にスイングする。これにより、トラッキングに必要なプローブ11の先端11aの移動が行われる。
【0081】
図1において、▲1▼の方向の静電引力F1は(10)式、▲2▼の方向の静電引力F2は(11)式で表される。
【0082】
【数3】
Figure 0004111655
【0083】
これらの式中、C1,C2はプローブ11と電極22,23との間の各々の静電容量、S1,S2は静電容量C1,C2の等価的面積、d1,d2はプローブ11と電極22,23との間の各々の距離、εaは空気の誘電率を表す。また、静電容量C1,C2は、
1 =εa・S1/d1 …………(12)
2 =εa・S2/d2 …………(13)
のように仮定した(即ち、(3)(4)式と同じ仮定である)。
【0084】
これより、静電引力は電圧の2乗に比例し、距離の2乗に反比例する。
【0085】
ここに、電源62,63による電圧V1e,V2eを(14)(15)式のような電圧とし、
1e=−ΔV ………(14)
2e=+ΔV ………(15)
これらの電圧ΔVを変動させることで、プローブ11の先端11aを動かす。この場合に電極22とプローブ11との間の電位差V1、電極23とプローブ11との間の電位差V2は、
1 =Vb+ΔV ………(16)
2 =Vb−ΔV ………(17)
で示すになる。
【0086】
従って、プローブ11に働く力Fは(18)式で示される。
【0087】
【数4】
Figure 0004111655
【0088】
ただし、
1 =S2 ………(19)
1 ≒d2 =d ………(20)
と仮定した。
【0089】
このようにすると静電引力は制御電圧ΔVに比例するので、制御しやすくなる。
【0090】
ここに、本実施の形態によれば、バイアス電圧Vbは制御電圧ΔV用の電圧V1e,V2eとは独立に設けられた電圧であり、かつ、これらの基準電圧は接地(GND)で共通であるので、電位の安定性が前述した第2の従来例の場合に比べて増し、また、回路構成も単純になる。
【0091】
本発明の第二の実施の形態を図1に基づいて説明する。構成については、第一の実施の形態で説明したので、説明を省略する。
【0092】
まず、▲1▼の方向にプローブ11を動かすときは電圧V1eのみを印加し、電圧V2eは印加しない。また、▲2▼の方向にプローブ11を動かすときは、その逆である。この時の▲1▼方向の静電引力F1は(21)式、▲2▼方向の静電引力F2は(22)式で表される。
【0093】
【数5】
Figure 0004111655
【0094】
これらの式中、C1,C2はプローブ11と電極22,23との間の各々の静電容量、S1,S2は静電容量C1,C2の等価的面積、d1,d2はプローブ11と電極22,23との間の各々の距離、εaは空気の誘電率を表す。また、静電容量C1,C2は、
1 =εa・S1/d1 …………(23)
2 =εa・S2/d2 …………(24)
のように仮定した(即ち、(3)(4)式と同じ仮定である)。
【0095】
これより、静電引力は電圧の2乗に比例し、距離の2乗に反比例する。
【0096】
ここで、▲1▼の方向に動く場合を考えると、電圧V2eは印加しない。また、d1=d2=d,S1=S2=Sと書き直すものとする。プローブ11を制御するために、ダイナミックに変化する電圧をVaとすると、
1e=Va
となり、プローブ11に働く力Fは(21)式だけとなるので、(25)式で表される。
【0097】
【数6】
Figure 0004111655
【0098】
次に、図1に示すように、電極22,23とプローブ11との間にバイアス電圧Vbがあり、各々の電極22,23に印加されるプローブ11を制御する制御電圧V1e,V2eが極性が異なり絶対値が同じ電圧の場合を考える。即ち、V1e=−Va,V2e=+Vaとすると、▲1▼方向の静電引力F1は(26)式、▲2▼方向の静電引力F2は(27)式で表される。
【0099】
【数7】
Figure 0004111655
【0100】
両方の静電引力を合わせてプローブ11に働く力Wは、(28)式で表される。
【0101】
【数8】
Figure 0004111655
【0102】
ここに、W>Fを満足するための条件は、(29)式で表される。
【0103】
【数9】
Figure 0004111655
【0104】
よって、バイアス電圧Vbは、制御電圧Vaに対して
b>Va/4 ………(30)
を満たせばよいこととなる。
【0105】
即ち、プローブ11の位置を制御する制御電圧Vaの1/4以上のバイアス電圧Vbを印加すると、このバイアス電圧Vbを印加しないで制御電圧Vaだけをダイナミックに変化させてプローブ11を動かすための制御を行う場合の力よりも、バイアス電圧Vbを印加した上で制御電圧Vaをダイナミックに変化させてプローブ11を動かすための制御を行う場合の力の方が大きくなる。逆に言うと、(30)式の条件を満たせば、同じ力を得るのにより低電圧の制御電圧Vaで済むことになる。この制御電圧Vaはプローブ11のトラッキングを行うために高速に変動しなければいけないので、この電圧値が小さくなることで駆動回路の負担を小さくすることができる。また、バイアス電圧Vbは単なる直流電圧なので、高電圧な回路を構成することは制御電圧Vaを高電圧にする場合よりも遥かに簡単である。
【0106】
このように、本実施の形態によれば、(30)式の条件を満たすようにバイアス電圧Vbの電圧値を設定したので、このバイアス電圧Vbを印加する効果として、電圧に対する静電引力の直線性が良くなるだけでなく、駆動回路の負担を軽減させ得る効果を持つ。この結果、プローブ11をトラッキングさせるためにダイナミックに変動する制御電圧Vaの電圧を低電圧化できることにより、制御電圧Vaを出力する回路の負担(コスト、消費電力、サイズ)を低減させることができる。
【0107】
本発明の第三の実施の形態を図2及び図3に基づいて説明する。本実施の形態は、基本的には図23及び図1に示した情報記録再生装置に準ずるものであり、同一部分は同一符号を用いて示す。
【0108】
まず、レーザ光源31は連続発振しており、その光はカップリングレンズ32により光ファイバ33の端面に集光されてそのコア内に入る。その光は先端が先鋭化されている光ファイバ33の先端のごく近傍(数十nm)に近接場光として存在する。記録媒体34はスピンドルモータ35により回転される。記録媒体34の表面には透過率のコントラストを持つ領域(マーク)により情報が記録されている。プローブ36として機能する光ファイバ33の先端を記録媒体34の表面から数十nm以下の距離に近づけると、プローブ36の先端から染み出している近接場光は記録媒体34に伝播し、先のマークの透過率に対応したパワーを持つ透過光が記録媒体34のプローブ36とは反対側に出てくる。この光はカップリングレンズ37を通してフォトマルチプライア(PMT)38に入る。PMT38は入射した光を電気信号に変換し、この信号はプリアンプ39で増幅された後、2値化回路40でデジタル情報に変換され、コンピュータ41に入力され、記録媒体34上の情報が読み取られる。記録媒体34はプローブ36と相対運動をしているので、円周方向(トラック方向)に並んでいるマークに記録されている情報が時系列にコンピュータ41に貯えられていく。
【0109】
記録媒体34が書き込み可能なものであれば、同じようにデータを書き込むこともできる。必要な書き込みパルスがコンピュータ41によりLDドライバ42に与えられ、これがレーザ光源31を駆動して、記録媒体34の表面に情報を書き込んでいく。
【0110】
この際、記録媒体34の表面とプローブ36の先端との間隔は数十nmにしなければならない。実際の記録媒体34は凹凸があり、記録媒体34も回転に伴い面ぶれを起こして上下動するのが普通なので、この間隔を一定にするように制御を行う必要がある。この制御のために、本実施の形態でも、記録媒体34の表面とプローブ36の先端に原子間力に基づくシアフォースや静電引力を利用する。
【0111】
ここに、プローブ36は水晶振動子43の片方の片持ち梁に接着されている。水晶振動子43はL字型のホルダ44を介して積層圧電素子45に接続されている。積層圧電素子45は耐摺動パッド46の上に接続されている。耐摺動パッド46は記録媒体34の表面に接触している。記録媒体34が回転すると、記録媒体34上を耐摺動パッド46が摺動し、記録媒体34とプローブ36との間で相対運動が生じる。積層圧電素子45は電圧を印加するとZ方向に伸び縮みするので、プローブ36と記録媒体34の表面との間の距離を変えることができる。
【0112】
水晶振動子43は圧電素子47によりその共振周波数で加振される。記録媒体34の表面がプローブ36の先端に近づくと、記録媒体34の表面とプローブ36の先端との間に原子間力に基づくシアフォースや静電引力が働く。この力が記録媒体34の表面とプローブ36の先端との間のばねとして働き、この振動系全体の共振周波数が変化する。しかし、圧電素子47により、加振されている周波数は以前と変わらないので、振動系全体は共振状態から外れ、これにより振動の振幅は小さくなる。水晶振動子43に生じる電圧は差動増幅器48で増幅され、ロックインアンプ49に入力される。ロックインアンプ49は振動周波数に同期して水晶振動子の振幅を直流電圧に増幅・変換する。ロックインアンプ49の出力はA/D変換器51を介してコンピュータ41に取り込まれる。コンピュータ41はプローブ36と記録媒体34の表面との間の所望の距離に対応する基準値との差から、プローブ36と記録媒体34の表面との間の距離を制御する数値を計算し、出力する。D/A変換器52でこの出力値がアナログ電圧に変換された後、パワーアンプ53により増幅されて、積層圧電素子45に入力される。これにより、プローブ36と記録媒体34の表面との間の距離がコンピュータ41により制御される。
【0113】
ここに、耐摺動パッド46も含めてその上に搭載されている物全体をスライダ54と呼ぶ。スライダ54は図示しないサスペンション、アーム、アームモータを介してスピンドルモータ35が固定されている基板に固定されている(図20に示した構成参照)。但し、スライダ54はアームモータによりトラッキング方向には移動できる。また、サスペンションによりZ方向に上下動可能とされている。しかし、サスペンションによりスライダ54は適当な力で記録媒体34表面に押し付けられており、耐摺動パッド46は記録媒体34表面に接触している。
【0114】
一方、プローブ36の先端を記録媒体34のマーク列(トラック)にトラッキングさせるためには、トラッキングアクチュエータが必要となる。このトラッキングのために、第一又は二の実施の形態で説明したように、静電引力を利用するものである。従って、プローブ36付近の構成としては、図1に示したプローブ11の場合と同様な構成とされている。即ち、プローブ36をトラッキング方向に挟むように一対の電極22,23が設けられ、これらの電極22,23に電圧を印加してプローブ36と電極22又は23との間に働く力でプローブ36の先端36aを曲げてトラッキングを行う。
【0115】
図3は、電極22,23部分周辺をトラッキング方向に断面し拡大して示す断面構造図である。これらの電極22,23には、各々重畳電圧印加手段として作用する3入力加算アンプ71a,71bの出力側が接続されている。加算アンプ71aの入力側にはプローブ36に選択的に印加させるための接近用電圧Vap又は接地電圧とバイアス電圧Vbと制御電圧−Vaとの電源72,73,74が接続され、加算アンプ71bの入力側には接近用電圧Vap又は接地電圧とバイアス電圧Vbと制御電圧+Vaとの電源72,73,75が接続されている。従って、一方の電極22に印加される電圧V1eはプローブ36に印加される接近用電圧Vap又は接地電圧とバイアス電圧Vbと制御電圧−Vaとが重畳された電圧となる。他方の電極23に印加される電圧V2eはプローブ36に印加される接近用電圧Vap又は接地電圧とバイアス電圧Vbと制御電圧+Vaとが重畳された電圧となる。プローブ36のトラッキングは制御電圧+Va,−Vaを変化させることにより行う。制御電圧+Va,−Vaから独立させたバイアス電圧Vbを重畳させて印加させるのは、第一、二の実施の形態で説明したように制御電圧+Va,−Vaに対する静電引力の直線性の向上と、低電圧化を図るためである。また、プローブ36には接近用電圧Vap又は接地電圧が印加される。何れの電圧を印加するかについては、後述する。
【0116】
以上のような情報記録再生装置が待機状態にある時は、プローブ36と記録媒体34とが接触しないようにプローブ36は記録媒体34から遠くに離しておく。よって、上述したように書き込み或いは読み取り動作を始める前に、プローブ36を記録媒体34表面に近づける作業が必要となる。
【0117】
この際、上述したようにプローブ36と記録媒体34表面との間の距離をシアフォースのみで知ろうとすると、両者間の距離が数十nmに近づくまで、記録媒体34表面へのプローブ36の接近を知ることができない。これにより衝突が生じ易い。そこで、本実施の形態では、第3の従来例による提案の場合と同様に、プローブ36と記録媒体34表面との間に電位差を生じさせることによりこれを解決している。
【0118】
その前提として、プローブ36はその先端まで導電性の物であることと記録媒体34もまた導電性の物であることが必要である。近接場光測定に用いられる光ファイバ33を利用したプローブ36は、クラッド19bからの光の放出がノイズとなるので、これを防ぐために、クラッド19b上に金属コートが遮光金属膜21として施されているので、一般的に前者の条件は満たしている。また、記録媒体34も光磁気材料、相変化材料などは導体又は半導体であり比抵抗が低いので、多くの場合、後者の条件も満たしている。
【0119】
このような前提の下、コンピュータ41で切換え制御可能なスイッチ76を設け、電源72側と接地側とを切換え自在とする。この電源72により接近用電圧印加手段が構成されている。まず、スイッチ76により接近用電圧Vapの電源72をプローブ36の遮光金属膜21(コモン電極20)に接続する。遮光金属膜21は光ファイバ33全体に付着させることができるので、光ファイバ33(プローブ36)の根元に電源72を接続することでプローブ36の先端に接近用電圧Vapを印加することができる。記録媒体34はスピンドルモータ35の軸を介して、基準電位(接地)に接続させておく。
【0120】
このようにしておくと光ファイバ33(プローブ36)先端の遮光金属膜21と記録媒体34表面間に接近用電圧Vapが印加される。従って、両者間に静電引力が働く。このとき、プローブ36と記録媒体34表面との間の距離dが20nm以下にならないと、原子間力、即ちシアフォースは十分に働かない。しかるに、静電引力は接近用電圧Vapの2乗に比例し、プローブ36と記録媒体34表面との間の距離dの2乗に逆比例するので、シアフォースより遥かに離れた位置から働く。従って、静電引力は距離dに対する減衰がシアフォースに比べて遥かに緩やかであるため、プローブ36と記録媒体34表面間の距離dが大きくても両者の接近を水晶振動子43の振幅の減少として捉えることができる。この距離dは接近用電圧Vapの値にもよるが、数十Vの場合、プローブ36と記録媒体34表面間の距離が数十μm程度でも水晶振動子43の振幅減少を捉えることができる。どの程度のプローブ36と記録媒体34表面間の距離から、両者の接近を捉えるかは、接近用電圧Vapにより調整可能である。より遠くから両者の接近を捉えたい場合は接近用電圧Vapを大きくすればよい。
【0121】
この場合、本実施の形態によれば、電極22,23に印加する電圧V1e,V2eはプローブ36に対する接近用電圧Vapの増減に対して同じ値で連動するので、プローブ36と電極22,23との間の電位差はプローブ36に対する接近用電圧Vapの増減に無関係である。従って、プローブ36と電極22,23との間の電位差はバイアス電圧Vbと制御電圧−Va,+Vaとのみにより決まるので、プローブ36のトラッキング動作に接近用電圧Vapは影響しない。
【0122】
待機時は、スライダ54は記録媒体34上に接触している。この時、スピンドルモータ35は回転又は停止しているが、プローブ36と記録媒体34表面とが接触する危険性を考えると停止している方が好ましい。
【0123】
書き込み・読み取りを行う前に、プローブ36と記録媒体34との間に接近用電圧Vapを印加した状態で、圧電素子47により水晶振動子43、プローブ36を共振周波数で加振し、水晶振動子43の出力からプローブ36の振動振幅を常に監視しつつ、ランプレートの速い電圧を積層圧電素子45に印加して速いスピードで、プローブ36を記録媒体34表面に近づける。振幅が小さくなったところで、積層圧電素子45の電圧をホールドしてプローブ36と記録媒体34表面とを接近させることを停止する。さらにプローブ36と記録媒体34との間の電位差をなくし、ランプレートの遅い電圧を積層圧電素子45に印加して遅いスピードで微動のアクチュエータ(圧電素子など)により、プローブ36の先端と記録媒体34表面との間の距離が所望の距離になるように両者を接近させ、この後、書き込み・読み取りを始める。
【0124】
一例として、待機時は、プローブ36の先端と耐摺動パッド46の表面が約0.5μmになるように予めスライダ54を作製しておく。そして、例えば、接近用電圧Vapを2V程度とし、水晶振動子43の出力からプローブ36の振動振幅を常に監視しつつ、ランプレートの速い電圧を積層圧電素子45に印加して速いスピードでプローブ36と記録媒体34表面とを接近させる。
【0125】
プローブ36と記録媒体34表面との間の距離が200nm位になると、プローブ36と記録媒体34表面との間の静電引力により水晶振動子43の振動振幅が小さくなる。これをコンピュータ41が捉えて積層圧電素子45の電圧をホールドしてプローブ36と記録媒体34表面とを接近させることを停止する。200nm程度からプローブ36と記録媒体34表面との接近を検知し停止させれば、検知から停止までの間のオーバーランによりプローブ36と記録媒体34表面とが衝突することはない。従って、比較的速い速度(約0.1μm/s)で最初のアプローチを行うことができる。
【0126】
さらに、今度はスイッチ76を接地側に切換える。これにより、プローブ36と記録媒体34表面との間の電位差はなくなり、両者には静電引力は働かなくなる。この後、ランプレートの遅い電圧を積層圧電素子45に印加して遅いスピード(約10nm/s)でプローブ36の先端と記録媒体34表面とを接近させていく。数十nm程度までプローブ36と記録媒体34表面とが接近すると、プローブ36と記録媒体34表面との間のシアフォースにより水晶振動子43の振動振幅が小さくなる。所望の距離まで両者が近づいたところで、これをコンピュータ41が捉えて積層圧電素子45の変位を停止する。この時はアプローチの速度が前の段階より遅くなっているので、オーバーランが少なくなる。従って、停止時のプローブ36と記録媒体34表面との間の距離が小さくなっても両者が衝突することはない。この後、書き込み・読み取りを始める。
【0127】
このように、プローブ36と記録媒体34表面との間の距離が大きい時は速いスピードで両者を接近させつつ、静電引力を用いてプローブ36と記録媒体34表面との間の距離が大きい段階から両者の接近を捉えることにより衝突を防ぐことができる。プローブ36と記録媒体34表面との間の電位差と接近速度とを段階的に小さくすることで、以上のシーケンスを行うことができる。最後のアプローチでは両者間の電圧印加をなくしてシアフォースによるプローブ36と記録媒体34表面との間の距離検出を行ってアプローチを終了する。
【0128】
シアフォースだけのプローブ36と記録媒体34表面との間の距離検出の場合は、数十nmに接近してからでないと両者の接近を検知できないので、アプローチの最初から数十nm/sなる非常にゆっくりとした速度でアプローチを行う必要があり、書き込み・読み取り動作の開始までに非常に時間がかかった。しかし、本実施の形態によれば、第3の従来例による場合と同様に、プローブ36と記録媒体34表面との間の距離に対応した接近速度を選ぶことができるので、書き込み・読み取り開始までの時間を短縮することができる。
【0129】
具体的には、積層圧電素子45としては数十Vで500μm程度の変位を得るために、厚さ2mm程度で20〜30層程度の積層数のものを用いる。電圧を印加すると積層圧電素子の厚さが増えるタイプのものでもよいが、待機時や、電源オフ時にプローブ36と記録媒体34表面との間の距離が大きくなるようにするために、電圧を印加すると厚みが減るタイプを用いることが好ましい。
【0130】
なお、本実施の形態では、最後のアプローチで、プローブ36と記録媒体34表面間の電位差をなくすようにしたが、これに限られない。例えば、最後のアプローチにおいて、一つ前のアプローチ段階での接近用電圧Vapよりもさらに電圧値を下げ、接近用電圧Vapを印加したままで静電引力を働かせ、アプローチを終了させるようにしてもよい。そして、接近用電圧Vapを印加し、静電引力を検出しながらプローブ36と記録媒体34表面間の距離を一定に保ちながら記録媒体34への書き込み・読み取りを行わせることができる。また、最後のアプローチにおいて、一つ前のアプローチの段階での電圧よりも更に電圧を下げなくても同様の動作を行うことができる。
【0131】
このように、本実施の形態によれば、素早いアプローチを実現するためにプローブ36に印加する接近用電圧Vapが、バイアス電圧Vbと制御電圧−Va,+Vaによるトラッキング制御電圧の低電圧化、トラッキング制御電圧に対する直線性の向上に影響を及ぼすことがない。従って、素早いアプローチとトラッキング制御電圧の低電圧化、トラッキング制御電圧に対する直線性の向上とを両立させることができる。また、素早いアプローチを実現するために、第1の従来例の如く特別なパターンを用いる必要がなく、かつ、信号処理時間が長くなることもない。
【0132】
なお、これらの第一ないし第三の実施の形態では、記録媒体15,34としてデータ列が円周状に並ぶ円盤状のディスクを想定したが、これに限らず、データ列が直線状に並ぶカード上の記録媒体であってもよい。
【0133】
本発明の第四の実施の形態を図4及び図5に基づいて説明する。本実施の形態は、基本的には、前述した第一の実施の形態の情報記録再生装置の場合と同様であるが、光ファイバ構造のプローブ11に代えて、導電性のプローブ81が用いられている。
【0134】
先端81aが非常に鋭利に、例えばその曲率半径が100nm以下に形成された導電性のプロ−ブ81は、その上端根元側はコモン電極20部分を介してスライダ12に固定され、記録媒体82に対向する先端81a側は自由になっている、いわゆる片持ち梁構造とされている。先端81aはエッチングや電解研磨法などにより細く先鋭化されている。このプローブ81と記録媒体82との間に所定のバイアス電圧Vbを印加し、プローブ81の先端81aと記録媒体82の表面との間の距離が10nm以下になると、両者間にトンネル電流が流れる。
【0135】
記録媒体82としては、例えば、記録層83の抵抗が低い材料で形成され、その下地に導電性の薄膜或いは基板による導電層84を有する構成が考えられる。図5に記録媒体82の構成例を示す。記録層83はとしては相変化材料が挙げられる。例えば、GeTeSb薄膜或いはAgInSbTe薄膜が考えられる。これらの膜をスパッタリング法などで成膜した場合、その膜はアモルファス相になる。この膜に、前述した方法によりトンネル電流を流す。すると、電流の流れたところでジュール熱が発生し、その部分が多結晶化する。このようにしてアモルファス相のフィールドに多結晶相のマークを書くことができる。このマークの有無により情報を書き込むことができる。これらの膜が多結晶相の場合の比抵抗とアモルファス相の場合の比抵抗が異なる。従って、プローブ81の先端81aと記録層83の表面との距離が一定であっても、抵抗値が異なるので、多結晶層の上にプローブ81の先端81aがある場合のトンネル電流の方がアモルファス層のそれよりも大きくなる。この電流値はバイアス電圧Vbと導電性のプローブ81との間に設けた電流計85により測定することができる。これにより書き込んだマークを読み取ることができる。なお、読み取る時の電流は書き込む時の電流よりも少なくした方がよい。
【0136】
別な方法としては、スパッタリング法による成膜後の記録層83を1回別な方法で全面多結晶化し、前述の場合と同じ方法で、多結晶のフィールドにアモルファス相のマークを書き込み、読み取るようにすることもできる。また、記録層83の材料としてはキノン環とヒドロキノン環を両端に有する有機分子であってもよい(1994年第55回応用物理学界学術講演会における発表20p-Q-9に記載)。
【0137】
プローブ81と記録媒体82の導電層84及び接地との間にはバイアス電圧Vbを印加するバイアス電圧印加手段としての電源61が接続されている。このバイアス電圧Vbは正負何れであってもよい。
【0138】
また、スライダ12が使用されるときの記録媒体82の半径方向(トラッキング方向)に、プローブ81を挟むように一対の電極22,23が設けられている。これらの電極22,23はスライダ12内に固定されている。これらの電極22,23とプローブ81のコモン電極20(導電性のプローブ81自身)との間に各々別々の電圧V1,V2を印加する。この電圧V1,V2を生成するため、電極22,23と接地との間には、各々電圧V1e,V2eなる制御電圧印加手段としての電源62,63が接続されている。従って、電圧V1,V2は電源61によるバイアス電圧Vbと電源62,63による電圧V1e,V2eとの重畳電圧として印加されるもので、これらの電源が電圧印加手段として作用する。ここに、これらの電源61,62,63の基準電圧は接地で共通されている。
【0139】
これにより、電極22又は23と導電性のプローブ81との間に静電引力が働き、導電性のプローブ81は片持ち梁となりその先端81aが記録媒体82の半径方向にスイングする。これにより、トラッキングに必要なプローブ81の先端81aの移動が行われる。
【0140】
図4における、▲1▼の方向の静電引力F1は前述した(10)式、▲2▼の方向の静電引力F2は前述した(11)式で表される。これより、静電引力は電圧の2乗に比例し、距離の2乗に反比例することが分かる。ここに、電源62,63による電圧V1e,V2eを前述した(14)(15)式のような電圧とし、これらの電圧ΔVを変動させることで、導電性のプローブ81の先端81aを動かす。この場合に各々の電極22,23と導電性のプローブ81との間の電位差V1,V2は、前述した(16)(17)式で示すになる。従って、導電性のプローブ81に働く力Fは前述した(18)式で示される。このようにすると静電引力は制御電圧ΔVに比例するので、制御しやすくなる。
【0141】
ここに、本実施の形態によれば、バイアス電圧Vbは制御電圧ΔV用の電圧V1e,V2eとは独立に設けられた電圧であり、かつ、これらの基準電圧は接地(GND)で共通であるので、電位の安定性が前述した第2の従来例の場合に比べて増し、また、回路構成も単純になる。
【0142】
また、バイアス電圧Vbは、静電引力が制御電圧ΔVに比例し、制御しやすくするためと、記録媒体82と導電性のプローブ81との間にトンネル電流を流すための両方の役目がある。両者の役目が両立するように電圧或いはプローブ81の形状・寸法を定める必要がある。
【0143】
本発明の第五の実施の形態を図4及び図5に基づいて説明する。構成については、第四の実施の形態で説明したので、説明を省略する。
【0144】
まず、▲1▼の方向に導電性のプローブ81を動かすときは電圧V1eのみを印加し、電圧V2eは印加しない。また、▲2▼の方向に導電性のプローブ81を動かすときは、その逆である。この時の▲1▼方向の静電引力F1は前述した(21)式、▲2▼方向の静電引力F2は前述した(22)式で表される。これより、静電引力は電圧の2乗に比例し、距離の2乗に反比例することが分かる。
【0145】
ここで、▲1▼の方向に動く場合を考えると、電圧V2eは印加しない。また、d1=d2=d,S1=S2=Sと書き直すものとする。プローブ81を制御するために、ダイナミックに変化する電圧をVaとすると、
1e=Va
となり、導電性のプローブ81に働く力Fは前述した(21)式だけとなるので、前述した(25)式で表される。
【0146】
次に、図4に示すように、電極22,23とプローブ81との間にバイアス電圧Vbがあり、各々の電極22,23に印加されるプローブ81を制御する制御電圧V1e,V2eの極性が異なり絶対値が同じ電圧の場合を考える。即ち、V1e=−Va,V2e=+Vaとすると、▲1▼方向の静電引力F1は前述した(26)式、▲2▼方向の静電引力F2は前述した(27)式で表される。両方の静電引力を合わせて導電性のプローブ81に働く力Wは、前述した(28)式で表される。
【0147】
よって、バイアス電圧Vbは、制御電圧Vaに対して前述した(30)式、即ち、
b>Va/4……(30)
を満たせばよいこととなる。
【0148】
即ち、導電性のプローブ81の位置を制御する制御電圧Vaの1/4以上のバイアス電圧Vbを印加すると、このバイアス電圧Vbを印加しないで制御電圧Vaだけをダイナミックに変化させて導電性のプローブ81を動かすための制御を行う場合の力よりも、バイアス電圧Vbを印加した上で制御電圧Vaをダイナミックに変化させて導電性のプローブ81を動かすための制御を行う場合の力の方が大きくなる。逆に言うと、前述した(30)式の条件を満たせば、同じ力を得るのにより低電圧の制御電圧Vaで済むことになる。この制御電圧Vaはプローブ81のトラッキングを行うために高速に変動しなければいけないので、この電圧値が小さくなることで駆動回路の負担を小さくすることができる。また、バイアス電圧Vbは単なる直流電圧なので、高電圧な回路を構成することは制御電圧Vaを高電圧にする場合よりも遥かに簡単である。
【0149】
このように、本実施の形態によれば、前述した(30)式の条件を満たすようにバイアス電圧Vbの電圧値を設定したので、このバイアス電圧Vbを印加する効果として、電圧に対する静電引力の直線性が良くなるだけでなく、駆動回路の負担を軽減させ得る効果を持つ。この結果、導電性のプローブ81をトラッキングさせるためにダイナミックに変動する制御電圧Vaの電圧を低電圧化できることにより、制御電圧Vaを出力する回路の負担(コスト、消費電力、サイズ)を低減させることができる。
【0150】
本発明の第六の実施の形態を図6及び図7に基づいて説明する。本実施の形態は、基本的には、前述した図4、図5及び図23で示した情報記録再生装置の場合と同様であり、同一部分は同一符号を用いて示す。
【0151】
前述した第四の実施の形態で述べたような導電性で、先端81aが非常に鋭く加工されたプローブ81には、電流計86とスイッチ87とを介して電源88による接近用電圧Vap或いはパルス電圧源89によるパルス電圧又は接地電位が印加されるようになっている。記録媒体82はスピンドルモータ35により回転される。記録媒体82の表面には比抵抗のコントラストを持つ領域(マーク)により情報が記録されている。導電性のプローブ81の先端81aを記録媒体82の表面から十nm以下の距離に近づけると、プローブ81の先端81aから記録媒体82にトンネル電流が流れる、これにより、前述のマークの比抵抗に対応したトンネル電流値が電流計86により検出される。この出力は、2値化回路90でデジタル情報に変換され、コンピュータ41に入力され、記録媒体82上の情報が読み取られる。記録媒体82は導電性のプローブ81と相対運動をしているので、円周方向(トラック方向)に並んでいるマークに記録されている情報が時系列にコンピュータ41に貯えられていく。
【0152】
記録媒体82が書き込み可能なもの、即ち、前述した実施の形態で述べたようなトンネル電流値により、記録層83の比抵抗が変化するようなものであれば、同じようにデータを書き込むこともできる。必要な書き込みパルス信号がコンピュータ41によりパルス電圧源89に与えられ、これがパルス電圧源89を駆動して、導電性のプローブ81の先端から記録媒体82の表面にトンネル電流を流し、このジュール熱により記録媒体82の記録層83の比抵抗を変化させ、情報を書き込んでいく。
【0153】
この際、記録媒体82の表面と導電性のプローブ81の先端との間隔は十nm以下にしなければならない。実際の記録媒体82は凹凸があり、記録媒体82も回転に伴い面ぶれを起こして上下動するのが普通なので、この間隔を一定にするように制御を行う必要がある。この制御のために、本実施の形態でも、記録媒体82の表面と導電性のプローブ81の先端81aに原子間力に基づくシアフォースや静電引力を利用する。
【0154】
ここに、導電性のプローブ81は水晶振動子43の片方の片持ち梁に接着されている。水晶振動子43はL字型のホルダ44を介して積層圧電素子45に接続されている。積層圧電素子45は耐摺動パッド46の上に接続されている。耐摺動パッド46は記録媒体82の表面に接触している。記録媒体82が回転すると、記録媒体82を耐摺動パッド46が摺動し、記録媒体82とプローブ81との間で相対運動が生じる。積層圧電素子45は電圧を印加するとZ方向に伸び縮みするので、プローブ81と記録媒体82の表面との間の距離を変えることができる。
【0155】
水晶振動子43は圧電素子47によりその共振周波数で加振される。記録媒体82の表面がプローブ81の先端81aに近づくと、記録媒体82の表面とプローブ81の先端81aとの間に原子間力に基づくシアフォースや静電引力が働く。この力が記録媒体82の表面とプローブ81の先端81aとの間のばねとして働き、この振動系全体の共振周波数が変化する。しかし、圧電素子47により、加振されている周波数は以前と変わらないので、振動系全体は共振状態から外れ、これにより振動の振幅は小さくなる。水晶振動子43に生じる電圧は差動増幅器48で増幅され、ロックインアンプ49に入力される。ロックインアンプ49は振動周波数に同期して水晶振動子43の振幅を直流電圧に増幅・変換する。ロックインアンプ49の出力はA/D変換器51を介してコンピュータ41に取り込まれる。コンピュータ41は導電性のプローブ81と記録媒体82の表面との間の、所望の距離に対応する基準値との差から、プローブ81と記録媒体82の表面との間の距離を制御する数値を計算し、出力する。D/A変換器52でこの出力値がアナログ電圧に変換された後、パワーアンプ53により増幅されて、積層圧電素子45に入力される。これにより、プローブ81と記録媒体82の表面との間の距離がコンピュータ41により制御される。
【0156】
ここに、耐摺動パッド46も含めてその上に搭載されている物全体をスライダ54と呼ぶ。スライダ54は図示しないサスペンション、アーム、アームモータを介してスピンドルモータ35が固定されている基板に固定されている(図20に示した構成参照)。但し、スライダ54はアームモータによりトラッキング方向には移動できる。また、サスペンションによりZ方向に上下動可能とされている。しかし、サスペンションによりスライダ54は適当な力で記録媒体82の表面に押し付けられており、耐摺動パッド46は記録媒体82の表面に接触している。
【0157】
一方、導電性のプローブ81の先端81aを記録媒体82のマーク列(トラック)にトラッキングさせるためには、トラッキングアクチュエータが必要となる。このトラッキングのために、第四又は第五の実施の形態で説明したように、静電引力を利用するものである。従って、プローブ81付近の構成としては、図4に示した導電性のプローブ81の場合と同様な構成とされている。即ち、導電性のプローブ81をトラッキング方向に挟むように一対の電極22,23が設けられ、これらの電極22,23に電圧を印加してプローブ81と電極22,23との間に働く力で導電性のプローブ81の先端81aを曲げてトラッキングを行う。
【0158】
図7は、電極22,23部分周辺をトラッキング方向に断面し拡大して示す断面構造図である。これらの電極22,23には、各々重畳電圧印加手段として作用する3入力加算アンプ71a,71bの出力側が接続されている。一つの加算アンプ71aの入力側にはプローブ81に選択的に印加させるための接近用電圧Vap又は接地電圧とバイアス電圧Vbと制御電圧−Vaとの電源72,73,74が接続され、もう一方の加算アンプ71bの入力側には接近用電圧Vap又は接地電圧とバイアス電圧Vbと制御電圧+Vaとの電源72,73,75が接続されている。従って、一方の電極22に印加される電圧V1eは導電性のプローブ81に印加される接近用電圧Vap又は接地電圧とバイアス電圧Vbと制御電圧−Vaとが重畳された電圧となる。他方の電極23に印加される電圧V2eはプローブ81に印加される接近用電圧Vap又は接地電圧とバイアス電圧Vbと制御電圧+Vaとが重畳された電圧となる。導電性のプローブ81のトラッキングは制御電圧+Va,−Vaを変化させることにより行う。制御電圧+Va,−Vaから独立させたバイアス電圧Vbを重畳させて印加させるのは、第一、第二の実施の形態で説明したように制御電圧+Va,−Vaに対する静電引力の直線性の向上と、低電圧化を図るためである。また、導電性のプローブ81には接近用電圧Vap又は接地電圧が印加される。何れの電圧を印加するかについては、後述する。
【0159】
以上のような情報記録再生装置が待機状態にある時は、導電性のプローブ81と記録媒体82とが接触しないようにプローブ81は記録媒体82から遠くに離しておく。よって、上述したように書き込み或いは読み取り動作を始める前に、導電性のプローブ81を記録媒体82表面に近づける作業が必要となる。
【0160】
この際、上述したように導電性のプローブ81と記録媒体82表面との間の距離をシアフォースのみで知ろうとすると、両者間の距離が数十nmに近づくまで、記録媒体82表面へのプローブ81の接近を知ることができない。これにより衝突が生じ易い。そこで、本実施の形態では、第3の従来例による提案の場合と同様に、導電性のプローブ81と記録媒体82表面との間に電位差を生じさせることによりこれを解決している。
【0161】
その前提として、プローブ81はその先端81aまで導電性の物であることと記録媒体82もまた導電性の物であることが必要である。前者の条件は当然、満たしている。また、記録媒体82も光磁気材料、相変化材料などは導体又は半導体であり比抵抗が低いので、多くの場合、後者の条件も満たしている。
【0162】
このような前提の下、コンピュータ41で切換え制御可能なスイッチ87を設け、接近用電圧Vapの電源88側と接地側とパルス電圧源89側とを切換え自在とする。この接近用電圧Vapの電源88により接近用電圧印加手段が構成されている。まず、スイッチ87により接近用電圧Vapの電源88を導電性のプローブ81に接続する。このプローブ81の根元に電源88を接続することでプローブ81の先端81aに接近用電圧Vapを印加することができる。記録媒体82の導電層84はスピンドルモータ35の軸を介して、基準電位(接地)に接続させておく。
【0163】
このようにしておくと導電性のプローブ81と記録媒体82表面間に接近用電圧Vapが印加される。従って、両者間に静電引力が働く。このとき、プローブ81と記録媒体82表面との間の距離dが20nm以下にならないと、原子間力、即ちシアフォースは十分に働かない。しかるに、静電引力は接近用電圧Vapの2乗に比例し、導電性のプローブ81と記録媒体82表面との間の距離dの2乗に逆比例するので、シアフォースより遥かに離れた位置から働く。従って、静電引力は距離dに対する減衰がシアフォースに比べて遥かに緩やかであるため、導電性のプローブ81と記録媒体82表面との間の距離dが大きくても両者の接近を水晶振動子43の振幅の減少として捉えることができる。この距離dは接近用電圧Vapの値にもよるが、数十Vの場合、導電性のプローブ81と記録媒体82表面との間の距離が数十μm程度でも水晶振動子43の振幅減少を捉えることができる。どの程度のプローブ81と記録媒体82表面との間の距離から、両者の接近を捉えるかは、接近用電圧Vapにより調整可能である。より遠くから両者の接近を捉えたい場合は接近用電圧Vapを大きくすればよい。
【0164】
この場合、本実施の形態によれば、電極22,23に印加する電圧V1e,V2eは導電性のプローブ81に対する接近用電圧Vapの増減に対して同じ値で連動するので、プローブ81と電極22,23との間の電位差はプローブ81に対する接近用電圧Vapの増減に無関係である。従って、プローブ81と電極22,23との間の電位差はバイアス電圧Vbと制御電圧−Va,+Vaとのみにより決まるので、導電性のプローブ81のトラッキング動作に接近用電圧Vapは影響しない。
【0165】
待機時は、スライダ54は記録媒体82上に接触している。この時、スピンドルモータ35は回転又は停止しているが、導電性のプローブ81と記録媒体82表面とが接触する危険性を考えると停止している方が好ましい。
【0166】
書き込み・読み取りを行う前に、導電性のプローブ81と記録媒体82との間に接近用電圧Vapを印加した状態で、圧電素子47により水晶振動子43、導電性のプローブ81を共振周波数で加振し、水晶振動子43の出力からプローブ81の振動振幅を常に監視しつつ、ランプレートの速い電圧を積層圧電素子45に印加して速いスピードで、プローブ81を記録媒体82表面に近づける。振幅が小さくなったところで、積層圧電素子45の電圧をホールドしてプローブ81と記録媒体82表面とを接近させることを停止する。さらにプローブ81と記録媒体82との間の電位差をなくし、ランプレートの遅い電圧を積層圧電素子45に印加して遅いスピードで微動のアクチュエータ(圧電素子など)により、プローブ81の先端81aと記録媒体82表面との間の距離が所望の距離になるように両者を接近させ、この後、書き込み・読み取りを始める。
【0167】
一例として、待機時は、導電性のプローブ81の先端81aと耐摺動パッド46の表面が約0.5μmになるように予めスライダ54を作製しておく。そして、例えば、接近用電圧Vapを2V程度とし、水晶振動子43の出力からプローブ81の振動振幅を常に監視しつつ、ランプレートの速い電圧を積層圧電素子45に印加して速いスピードでプローブ81と記録媒体82表面とを接近させる。
【0168】
プローブ81と記録媒体82表面との間の距離が200nm位になると、導電性のプローブ81と記録媒体82表面との間の静電引力により水晶振動子43の振動振幅が小さくなる。これをコンピュータ41が捉えて積層圧電素子45の電圧をホールドしてプローブ81と記録媒体82表面とを接近させることを停止する。200nm程度からプローブ81と記録媒体82表面との接近を検知し停止させれば、検知から停止までの間のオーバーランによりプローブ81と記録媒体82表面とが衝突することはない。従って、比較的速い速度(約0.1μm/s)で最初のアプローチを行うことができる。
【0169】
さらに、今度はスイッチ87を接地側に切換える。これにより、導電性のプローブ81と記録媒体82表面との間の電位差はなくなり、両者には静電引力は働かなくなる。この後、ランプレートの遅い電圧を積層圧電素子45に印加して遅いスピード(約10nm/s)でプローブ81の先端81aと記録媒体82表面とを接近させていく。
【0170】
数十nm程度までプローブ81と記録媒体82表面とが接近すると、プローブ81と記録媒体82表面との間のシアフォースにより水晶振動子43の振動振幅が小さくなる。所望の距離まで両者が近づいたところで、これをコンピュータ41が捉えて積層圧電素子45の変位を停止する。この時はアプローチの速度が前の段階より遅くなっているので、オーバーランが少なくなる。従って、停止時のプローブ81と記録媒体82表面との間の距離が小さくなっても両者が衝突することはない。この後、書き込み・読み取りを始める。書き込みを行う時は、スイッチ87により導電性のプローブ81とパルス電圧源89とを接続し、パルス電圧に基づくトンネル電流が導電性のプローブ81から記録媒体82の記録層83に流れるようにする。これにより、電流が流れた部分の比抵抗の変化が生じる。例えば記録層83が相変化材料の場合、アモルファス相のフィールドに多結晶相のマークを書くことができるし、或いは多結晶のフィールドにアモルファス相のマークを書き込むことができる。マークを読み取る時は電源8による接近用電圧Vapを印加する。しかし、この電圧値はアプローチの時の電圧値とは異なる、読み取りに適したトンネル電流値を得られ電圧値にする必要がある。即ち、読み取りのトンネル電流により記録マークの相状態が変化しないような電圧値にする必要がある。一般的にはアプローチの時の電圧よりも小さい値にする。
【0171】
このように、導電性のプローブ81と記録媒体82表面との間の距離が大きい時は速いスピードで両者を接近させつつ、静電引力を用いてプローブ81と記録媒体82表面との間の距離が大きい段階から両者の接近を捉えることにより衝突を防ぐことができる。プローブ81と記録媒体82表面との間の電位差と接近速度とを段階的に小さくすることで、以上のシーケンスを行うことができる。最後のアプローチでは両者間の電圧印加をなくしてシアフォースによるプローブ81と記録媒体82表面との間の距離検出を行ってアプローチを終了する。
【0172】
シアフォースだけの導電性のプローブ81と記録媒体82表面との間の距離検出の場合は、数十nmに接近してからでないと両者の接近を検知できないので、アプローチの最初から数十nm/sなる非常にゆっくりとした速度でアプローチを行う必要があり、書き込み・読み取り動作の開始までに非常に時間がかかった。しかし、本実施の形態によれば、第3の従来例による場合と同様に、導電性のプローブ81と記録媒体82表面との間の距離に対応した接近速度を選ぶことができるので、書き込み・読み取り開始までの時間を短縮することができる。
【0173】
具体的には、積層圧電素子45としては数十Vで500μm程度の変位を得るために、厚さ2mm程度で20〜30層程度の積層数のものを用いる。電圧を印加すると積層圧電素子の厚さが増えるタイプのものでもよいが、待機時や、電源オフ時にプローブ81と記録媒体82表面との間の距離が大きくなるようにするために、電圧を印加すると厚みが減るタイプを用いることが好ましい。
【0174】
なお、本実施の形態では、最後のアプローチで、導電性のプローブ81と記録媒体82表面間の電位差をなくすようにしたが、これに限られない。例えば、最後のアプローチにおいて、一つ前のアプローチ段階での接近用電圧Vapよりもさらに電圧値を下げ、接近用電圧Vapを印加したままで静電引力を働かせ、アプローチを終了させるようにしてもよい。そして、接近用電圧Vapを印加し、静電引力を検出しながら導電性のプローブ81と記録媒体82表面間の距離を一定に保ちながら記録媒体82への書き込み・読み取りを行わせることができる。また、最後のアプローチにおいて、一つ前のアプローチの段階での電圧よりも更に電圧を下げなくても同様の動作を行うことができる。
【0175】
このように、本実施の形態によれば、素早いアプローチを実現するために導電性のプローブ81に印加する接近用電圧Vapが、バイアス電圧Vbと制御電圧−Va,+Vaによるトラッキング制御電圧の低電圧化、トラッキング制御電圧に対する直線性の向上に影響を及ぼすことがない。従って、素早いアプローチとトラッキング制御電圧の低電圧化、トラッキング制御電圧に対する直線性の向上とを両立させることができる。また、素早いアプローチを実現するために、第1の従来例の如く特別なパターンを用いる必要がなく、かつ、信号処理時間が長くなることもない。
【0176】
なお、これらの第四ないし第六の実施の形態では、記録媒体としてデータ列が円周状に並ぶ円盤状のディスクを想定したが、これに限らず、データ列が直線状に並ぶカード上の記録媒体であってもよい。
【0177】
本発明の第七の実施の形態を図8及び図9に基づいて説明する。本実施の形態は、基本的には、前述した第四の実施の形態の情報記録再生装置の場合と同様であるが、再生専用の情報再生装置に適用されており、同一部分は同一符号を用いて示す。
【0178】
先端91aが非常に鋭利に、例えばその曲率半径が100nm以下の導電性のプロ−ブ91は、その上端根元側はコモン電極20部分を介してスライダ12に固定され、記録媒体92に対向する先端91a側は自由になっている、いわゆる片持ち梁構造とされている。先端91aはエッチングや電解研磨法などにより細く先鋭化されている。このプローブ91は、プローブ91全体が導電性物質で構成されている必要はない。例えば非導電性の先鋭化された針に導電性物質をスパッタなどによりコートしたものでもよい。先端91a部分も前述した第一の実施の形態(図1)のプローブ11のように、先端の一部に非導電性材料が露出していてもよい。
【0179】
本実施の形態の構成で記録媒体92の情報を読み取る動作を図9で説明する。このプローブ91は図示しない水晶振動子に接続され、水晶振動子は図示しない圧電素子に接続されている。スライダ12全体は探針-記録媒体間制御用圧電素子(以下、距離制御用圧電素子)93に接続され、これによりプローブ91は記録媒体92に対して上下移動が可能である。記録媒体92は基板94と記録層95とからなり、記録層95上には記録した情報に対応したピット(窪み)96が形成されている。これは突起であってもよい。記録層95は電荷が帯電しないように導電性材料や半導電性材料であることが好ましい。
【0180】
水晶振動子は圧電素子によりその共振周波数で加振される。記録媒体92の表面がプローブ91の先端91aに近づくと、記録媒体92の表面とプローブ91の先端91aとの間に原子間力に基づくシアフォースが働く。この力が記録媒体92の表面とプローブ91の先端91aとの間のばねとして働き、この振動系全体の共振周波数が変化する。しかし、圧電素子により、加振されている周波数は以前と変わらないので、振動系全体は共振状態から外れ、これにより振動の振幅は小さくなる。水晶振動子に生じる電圧は図示しない差動増幅器で増幅され、図示しないロックインアンプに入力される。ロックインアンプは振動周波数に同期して水晶振動子の振幅を直流電圧に増幅・変換する。ロックインアンプの出力は図示しないA/D変換器を介して図示しないコンピュータに取り込まれる。コンピュータはプローブと記録媒体の表面との間の、所望の距離に対応する基準値との差から、プローブと記録媒体の表面との間の距離を制御する数値を計算し、出力する。図示しないD/A変換器でこの出力値がアナログ電圧に変換された後、図示しないパワーアンプにより増幅されて、積層圧電素子に入力される。これにより、プローブ91と記録媒体92の表面との間の距離がコンピュータにより一定に制御される。プローブ91の先端91aと記録媒体92が相対的に移動(走査)すると時系列に記録ピット96がプローブ91の先端91aの下にくる。記録ピット96のところではプローブ91の先端91aと記録媒体92表面の距離が大きくなるので、これを一定にしようとコンピュータがパワーアンプ97を介して距離制御用圧電素子93を制御する。コンピュータが距離制御用圧電素子93を制御する信号から記録媒体92表面の凹凸の情報を得ることができる。即ち、記録された情報を知ることができる。
【0181】
また、別な方法で記録媒体状の情報を読み取ることができる。即ち、図9に示したような所謂フィードバック制御は行わない。すると、走査が行われると、プローブ91の先端91aと記録媒体92との間の距離が、記録ピット96がプローブ91の先端91aの下にきた時は距離が大きくなり、それ以外のところでは小さくなるようにする。これにより、記録ピット96がプローブ91の先端91aの下にきた時は水晶振動子(従って、プローブ91)の振幅は大きくなり、それ以外のところでは小さくなる。この振幅を増幅するロックインアンプの出力から記録媒体92表面の凹凸の情報を得ることができる。即ち、記録された情報を知ることができる。なお、このピットはCD−ROM作製に使われているスタンパにより作製することができる。
【0182】
図9においても各電圧Vb、V1e、V2eの接続関係は第四の実施の形態の場合と同じである。従って、このような構成により、第四の実施の形態と同じようにトラッキング動作を行う静電引力が制御電圧ΔVに比例するので、制御しやすくなる。さらに、バイアス電圧Vbは制御電圧ΔV用の電圧V1e,V2eとは独立に設けられた電圧であり、かつ、これらの基準電圧は接地(GND)で共通であるので、電位の安定性が前述した第2の従来例の場合に比べて増し、また、回路構成も単純になる。
【0183】
また、本実施の形態に関しても、前述した第五の実施の形態の場合と同様に、前述した(30)式の条件を満たすようにバイアス電圧Vbと制御電圧Vaとの関係を設定することが望ましい。即ち、プローブ91の位置を制御する制御電圧Vaの1/4以上のバイアス電圧Vbを印加すると、このバイアス電圧Vbを印加しないで制御電圧Vaだけをダイナミックに変化させてプローブ91を動かすための制御を行う場合の力よりも、バイアス電圧Vbを印加した上で制御電圧Vaをダイナミックに変化させてプローブ91を動かすための制御を行う場合の力の方が大きくなる。逆に言うと、前述した(30)式の条件を満たせば、同じ力を得るのにより低電圧の制御電圧Vaで済むことになる。この制御電圧Vaはプローブ91のトラッキングを行うために高速に変動しなければいけないので、この電圧値が小さくなることで駆動回路の負担を小さくすることができる。また、バイアス電圧Vbは単なる直流電圧なので、高電圧な回路を構成することは制御電圧Vaを高電圧にする場合よりも遥かに簡単である。このように前述した(30)式の条件を満たすようにバイアス電圧Vbの電圧値を設定することで、このバイアス電圧Vbを印加する効果として、電圧に対する静電引力の直線性が良くなるだけでなく、駆動回路の負担を軽減させ得る効果を持つ。この結果、プローブ91をトラッキングさせるためにダイナミックに変動する制御電圧Vaの電圧を低電圧化できることにより、制御電圧Vaを出力する回路の負担(コスト、消費電力、サイズ)を低減させることができる。
【0184】
本発明の第八の実施の形態を図10及び図11に基づいて説明する。本実施の形態は、基本的には、前述した図6及び図7で示した情報記録再生装置の場合と同様であり、同一部分は同一符号を用いて示す。
【0185】
前述したような導電性で、先端81aが非常に鋭く加工されたプローブ81には、スイッチ87を介して接近用電圧Vapの電源88或いは接地電位が印加されるようになっている。記録媒体82はスピンドルモータ35により回転される。記録媒体82上には記録した情報に対応したピット(窪み)が形成されている。これは突起であってもよい。導電性のプローブ81の先端81aを記録媒体82の表面から数十nm以下の距離に近づけると、先に述べたシアフォースの働きで水晶振動子43(従って、プローブ81)の振動振幅が小さくなる。この振動振幅を一定にしようとして積層圧電素子45を制御する。この制御信号、或いは水晶振動子43の振動振幅を増幅したロックインアンプ49の出力がプローブ81直下のピットの有無により変化する。この出力は、2値化回路でデジタル情報に変換され、コンピュータ41に入力され、記録媒体82上の情報が読み取られる。記録媒体82は導電性のプローブ81と相対運動をしているので、円周方向(トラック方向)に並んでいるマークに記録されている情報が時系列にコンピュータ41に貯えられていく。
【0186】
この際、記録媒体82の表面と導電性のプローブ81の先端81aとの間隔は十nm以下にしなければならない。実際の記録媒体82は凹凸があり、記録媒体82も回転に伴い面ぶれを起こして上下動するのが普通なので、この間隔を一定にするように制御を行う必要がある。この制御のために、本実施の形態でも、記録媒体82の表面とプローブ81の先端81aに原子間力に基づくシアフォースや静電引力を利用する。
【0187】
ここに、導電性のプローブ81は水晶振動子43の片方の片持ち梁に接着されている。水晶振動子43はL字型のホルダ44を介して積層圧電素子45に接続されている。積層圧電素子45は耐摺動パッド46の上に接続されている。耐摺動パッド46は記録媒体82の表面に接触している。記録媒体82が回転すると、記録媒体82を耐摺動パッド46が摺動し、記録媒体82とプローブ81との間で相対運動が生じる。積層圧電素子45は電圧を印加するとZ方向に伸び縮みするので、プローブ81と記録媒体82の表面との間の距離を変えることができる。
【0188】
水晶振動子43は圧電素子47によりその共振周波数で加振される。記録媒体82の表面が導電性のプローブ81の先端81aに近づくと、記録媒体82の表面と導電性のプローブ81の先端81aとの間に原子間力に基づくシアフォースや静電引力が働く。この力が記録媒体82の表面とプローブ81の先端81aとの間のばねとして働き、この振動系全体の共振周波数が変化する。しかし、圧電素子47により、加振されている周波数は以前と変わらないので、振動系全体は共振状態から外れ、これにより振動の振幅は小さくなる。水晶振動子43に生じる電圧は差動増幅器で増幅され、ロックインアンプ49に入力される。ロックインアンプ49は振動周波数に同期して水晶振動子43の振幅を直流電圧に増幅・変換する。ロックインアンプ49の出力はA/D変換器51を介してコンピュータ41に取り込まれる。コンピュータ41はプローブ81と記録媒体82の表面との間の所望の距離に対応する基準値との差から、プローブ81と記録媒体82の表面との間の距離を制御する数値を計算し、出力する。D/A変換器52でこの出力値がアナログ電圧に変換された後、パワーアンプ53により増幅されて、積層圧電素子45に入力される。これにより、プローブ81と記録媒体82の表面との間の距離がコンピュータ41により制御される。
【0189】
ここに、耐摺動パッド46も含めてその上に搭載されている物全体をスライダ54と呼ぶ。スライダ54は図示しないサスペンション、アーム、アームモータを介してスピンドルモータ35が固定されている基板に固定されている(図20に示した構成参照)。但し、スライダ54はアームモータによりトラッキング方向には移動できる。また、サスペンションによりZ方向に上下動可能とされている。しかし、サスペンションによりスライダ54は適当な力で記録媒体表面に押し付けられており、耐摺動パッド46は記録媒体82表面に接触している。
【0190】
一方、導電性のプローブ81の先端81aを記録媒体82のマーク列(トラック)にトラッキングさせるためには、トラッキングアクチュエータが必要となる。このトラッキングのために、前述の第七の実施の形態で説明したように、静電引力を利用するものである。従って、プローブ81付近の構成としては、図5に示した導電性プローブの場合と同様な構成とされている。即ち、導電性プローブをトラッキング方向に挟むように一対の電極22,23が設けられ、これらの電極22,23に電圧を印加してプローブ81と電極22,23との間に働く力でプローブ81の先端81aを曲げてトラッキングを行う。
【0191】
図11は、電極22,23部分周辺をトラッキング方向に断面し拡大して示す断面構造図である。これらの電極22,23には、各々重畳電圧印加手段として作用する3入力加算アンプ71a,71bの出力側が接続されている。一つの加算アンプ71aの入力側にはプローブ81に選択的に印加させるための接近用電圧Vap又は接地電圧とバイアス電圧Vbと制御電圧−Vaとの電源72,73,74が接続され、もう一方の加算アンプ71bの入力側には接近用電圧Vap又は接地電圧とバイアス電圧Vbと制御電圧+Vaとの電源72,73,75が接続されている。従って、一方の電極22に印加される電圧V1eは導電性のプローブ81に印加される接近用電圧Vap又は接地電圧とバイアス電圧Vbと制御電圧−Vaとが重畳された電圧となる。他方の電極に印加される電圧V2eはプローブ81に印加される接近用電圧Vap又は接地電圧とバイアス電圧Vbと制御電圧+Vaとが重畳された電圧となる。導電性のプローブ81のトラッキングは制御電圧+Va,−Vaを変化させることにより行う。制御電圧+Va,−Vaから独立させたバイアス電圧Vbを重畳させて印加させるのは、前述の第一、第二の実施の形態で説明したように制御電圧+Va,−Vaに対する静電引力の直線性の向上と、低電圧化を図るためである。また、導電性のプローブ81には接近用電圧Vap又は接地電圧が印加される。何れの電圧を印加するかについては、後述する。
【0192】
以上のような情報記録再生装置が待機状態にある時は、導電性のプローブ81と記録媒体82とが接触しないようにプローブ81は記録媒体82から遠くに離しておく。よって、上述したように書き込み或いは読み取り動作を始める前に、プローブ81を記録媒体82表面に近づける作業が必要となる。
【0193】
この際、上述したようにプローブ81と記録媒体82表面との間の距離をシアフォースのみで知ろうとすると、両者間の距離が数十nmに近づくまで、記録媒体82表面へのプローブ81の接近を知ることができない。これにより衝突が生じ易い。そこで、本実施の形態では、第3の従来例による提案の場合と同様に、導電性のプローブ81と記録媒体82表面との間に電位差を生じさせることによりこれを解決している。
【0194】
その前提として、導電性のプローブ81はその先端81aまで導電性の物であることと記録媒体82もまた導電性の物であることが必要である。前者の条件は当然、満たしている。また、記録媒体82も光磁気材料、相変化材料などは導体又は半導体であり比抵抗が低いので、多くの場合、後者の条件も満たしている。
【0195】
このような前提の下、コンピュータ41で切換え制御可能なスイッチ87を設け、接近用電圧Vapの電源88側と接地側とを切換え自在とする。この接近用電圧Vapの電源88により接近用電圧印加手段が構成されている。まず、スイッチ87により接近用電圧Vapの電源88を導電性のプローブ81に接続する。このプローブ81の根元に接近用電圧Vapの電源88を接続することで導電性のプローブ81の先端81aに接近用電圧Vapを印加することができる。記録媒体82の導電層84はスピンドルモータ35の軸を介して、基準電位(接地)に接続させておく。
【0196】
このようにしておくと導電性のプローブ81と記録媒体82表面間に接近用電圧Vapが印加される。従って、両者間に静電引力が働く。このとき、プローブ81と記録媒体82表面との間の距離dが20nm以下にならないと、原子間力、即ちシアフォースは十分に働かない。しかるに、静電引力は接近用電圧Vapの2乗に比例し、プローブ81と記録媒体82表面との間の距離dの2乗に逆比例するので、シアフォースより遥かに離れた位置から働く。従って、静電引力は距離dに対する減衰がシアフォースに比べて遥かに緩やかであるため、プローブ81と記録媒体82表面間の距離dが大きくても両者の接近を水晶振動子43の振幅の減少として捉えることができる。この距離dは接近用電圧Vapの値にもよるが、数十Vの場合、プローブ81と記録媒体82表面間の距離が数十μm程度でも水晶振動子43の振幅減少を捉えることができる。どの程度のプローブ81と記録媒体82表面間の距離から、両者の接近を捉えるかは、接近用電圧Vapにより調整可能である。より遠くから両者の接近を捉えたい場合は接近用電圧Vapを大きくすればよい。
【0197】
この場合、本実施の形態によれば、電極22,23に印加する電圧V1e,V2eは導電性のプローブ81に対する接近用電圧Vapの増減に対して同じ値で連動するので、プローブ81と電極22,23との間の電位差はプローブ81に対する接近用電圧Vapの増減に無関係である。従って、プローブ81と電極22,23との間の電位差はバイアス電圧Vbと制御電圧−Va,+Vaとのみにより決まるので、プローブ81のトラッキング動作に接近用電圧Vapは影響しない。
【0198】
待機時は、スライダ54は記録媒体82上に接触している。この時、スピンドルモータ35は回転又は停止しているが、プローブ81と記録媒体82表面とが接触する危険性を考えると停止している方が好ましい。
【0199】
書き込み・読み取りを行う前に、導電性のプローブ81と記録媒体82との間に接近用電圧Vapを印加した状態で、圧電素子47により水晶振動子43、プローブ81を共振周波数で加振し、水晶振動子43の出力からプローブ81の振動振幅を常に監視しつつ、ランプレートの速い電圧を積層圧電素子45に印加して速いスピードで、プローブ81を記録媒体82表面に近づける。振幅が小さくなったところで、積層圧電素子45の電圧をホールドしてプローブ81と記録媒体82表面とを接近させることを停止する。さらに、導電性のプローブ81と記録媒体82との間の電位差をなくし、ランプレートの遅い電圧を積層圧電素子45に印加して遅いスピードで微動のアクチュエータ(圧電素子など)により、プローブ81の先端81aと記録媒体82表面との間の距離が所望の距離になるように両者を接近させ、この後、書き込み・読み取りを始める。
【0200】
一例として、待機時は、プローブ81の先端81aと耐摺動パッド46の表面が約0.5μmになるように予めスライダ54を作製しておく。そして、例えば、接近用電圧Vapを2V程度とし、水晶振動子43の出力からプローブ81の振動振幅を常に監視しつつ、ランプレートの速い電圧を積層圧電素子45に印加して速いスピードで導電性のプローブ81と記録媒体82の表面とを接近させる。
【0201】
プローブ81と記録媒体82表面との間の距離が200nm位になると、プローブ81と記録媒体82表面との間の静電引力により水晶振動子43の振動振幅が小さくなる。これをコンピュータ41が捉えて積層圧電素子45の電圧をホールドしてプローブ81と記録媒体82表面とを接近させることを停止する。200nm程度からプローブ81と記録媒体82表面との接近を検知し停止させれば、検知から停止までの間のオーバーランによりプローブ81と記録媒体82表面とが衝突することはない。従って、比較的速い速度(約0.1μm/s)で最初のアプローチを行うことができる。
【0202】
さらに、今度はスイッチ87を接地側に切換える。これにより、導電性のプローブ81と記録媒体82表面との間の電位差はなくなり、両者には静電引力は働かなくなる。この後、ランプレートの遅い電圧を積層圧電素子45に印加して遅いスピード(約10nm/s)でプローブ81の先端81aと記録媒体82表面とを接近させていく。
【0203】
数十nm程度までプローブ81と記録媒体82表面とが接近すると、プローブ81と記録媒体82表面との間のシアフォースにより水晶振動子43の振動振幅が小さくなる。所望の距離まで両者が近づいたところで、これをコンピュータ41が捉えて積層圧電素子45の変位を停止する。この時はアプローチの速度が前の段階より遅くなっているので、オーバーランが少なくなる。従って、停止時のプローブ81と記録媒体82表面との間の距離が小さくなっても両者が衝突することはない。この後、読み取りを始める。
【0204】
このように、プローブ81と記録媒体82表面との間の距離が大きい時は速いスピードで両者を接近させつつ、静電引力を用いてプローブ81と記録媒体82表面との間の距離が大きい段階から両者の接近を捉えることにより衝突を防ぐことができる。プローブ81と記録媒体82表面との間の電位差と接近速度とを段階的に小さくすることで、以上のシーケンスを行うことができる。最後のアプローチでは両者間の電圧印加をなくしてシアフォースによるプローブ81と記録媒体82表面との間の距離検出を行ってアプローチを終了する。
【0205】
シアフォースだけのプローブ81と記録媒体82表面との間の、距離検出の場合は、数十nmに接近してからでないと両者の接近を検知できないので、アプローチの最初から数十nm/sなる非常にゆっくりとした速度でアプローチを行う必要があり、書き込み・読み取り動作の開始までに非常に時間がかかった。しかし、本実施の形態によれば、第3の従来例による場合と同様に、プローブ81と記録媒体82表面との間の距離に対応した接近速度を選ぶことができるので、書き込み・読み取り開始までの時間を短縮することができる。
【0206】
具体的には、積層圧電素子45としては数十Vで500μm程度の変位を得るために、厚さ2mm程度で20〜30層程度の積層数のものを用いる。電圧を印加すると積層圧電素子45の厚さが増えるタイプのものでもよいが、待機時や、電源オフ時にプローブ81と記録媒体82表面との間の距離が大きくなるようにするために、電圧を印加すると厚みが減るタイプを用いることが好ましい。
【0207】
なお、本実施の形態では、最後のアプローチで、導電性のプローブ81と記録媒体82表面間の電位差をなくすようにしたが、これに限られない。例えば、最後のアプローチにおいて、一つ前のアプローチ段階での接近用電圧Vapよりもさらに電圧値を下げ、接近用電圧Vapを印加したままで静電引力を働かせ、アプローチを終了させるようにしてもよい。そして、接近用電圧Vapを印加し、静電引力を検出しながらプローブ81と記録媒体82表面間の距離を一定に保ちながら記録媒体82への読み取りを行わせることができる。また、最後のアプローチにおいて、一つ前のアプローチの段階での電圧よりも更に電圧を下げなくても同様の動作を行うことができる。
【0208】
このように、本実施の形態によれば、素早いアプローチを実現するために導電性のプローブ81に印加する接近用電圧Vapが、バイアス電圧Vbと制御電圧−Va,+Vaによるトラッキング制御電圧の低電圧化、トラッキング制御電圧に対する直線性の向上に影響を及ぼすことがない。従って、素早いアプローチとトラッキング制御電圧の低電圧化、トラッキング制御電圧に対する直線性の向上とを両立させることができる。また、素早いアプローチを実現するために、第1の従来例の如く特別なパターンを用いる必要がなく、かつ、信号処理時間が長くなることもない。
【0209】
なお、これらの第七及び第八の実施の形態では、記録媒体82としてデータ列が円周状に並ぶ円盤状のディスクを想定したが、これに限らず、データ列が直線状に並ぶカード上の記録媒体であってもよい。
【0210】
本発明の第九の実施の形態を図12に基づいて説明する。本実施の形態は、構造的には第一の実施の形態で説明した情報記録再生装置に準ずるものであり、同一部分は同一符号を付して示す。
【0211】
本実施の形態においては、プローブ11のコモン電極20(遮光金属膜21)と接地との間にはバイアス電圧Vbの電源61と接近用電圧Vapの電源72とがコンピュータにより切換え可能なスイッチ100により選択自在に接続されている。一方、一対の電極22,23に関して、電極22と接地との間には制御電圧−Vaの電源74と接地とがコンピュータにより切換え可能なスイッチ101により選択自在に接続され、電極23と接地との間には制御電圧+Vaの電源75と接地とがコンピュータにより切換え可能なスイッチ102により選択自在に接続されている。ここに、これらのスイッチ100,101,102はプローブ11を記録媒体34に接近させる時と接近させた後とで切換えられるもので、これらの電源61,72,74,75とスイッチ100,101,102とにより、接近時電圧印加手段と接近後電圧印加手段とが構成されている。
【0212】
このような構成において、プローブ11を記録媒体34にアプローチさせる時には、スイッチ100の切換えによりプローブ11には接近用電圧Vapを印加し、電極22,23にはスイッチ101,102の切換えにより接地電圧を印加する。そして、アプローチ完了後は、スイッチ100の切換えによりプローブ11にはバイアス電圧Vbを印加し、電極22,23にはスイッチ101,102の切換えによりトラッキング制御電圧±Vaを印加する。
【0213】
このようにすることで、アプローチ時はプローブ11の先端11aと記録媒体34との間の静電引力により遠方から両者の接近を検知するに適した接近用電圧Vapを設定することができる。また、バイアス電圧Vbはトラッキング制御電圧±Vaに必要とされるダイナミックレンジ(ダイナミックに変動しなければいけない電圧値幅)が小さくなるように設定することができる。これらの電圧Vap,Vbは独立に設定することができるので、各々の最適値を選ぶことができる。
【0214】
本発明の第十の実施の形態を図13に基づいて説明する。本実施の形態は、基本的には前述の第九の実施の形態で説明した情報記録再生装置に準ずるものであり、同一部分は同一符号を付して示す。本実施の形態では、電源72とスイッチ101,102の非電源側端子との間が接続されている。即ち、電極22,23に対しても電源72が接続可能とされている。
【0215】
このような構成において、プローブ11を記録媒体34にアプローチさせる時には、スイッチ100の切換えによりプローブ11には接近用電圧Vapを印加し、電極22,23にもスイッチ101,1021の切換えにより接近用電圧Vapを印加する。アプローチ完了後は、スイッチ100の切換えによりプローブ11にはバイアス電圧Vbを印加し、電極22,23にはスイッチ101,102の切換えによりトラッキング制御電圧±Vaを印加する。
【0216】
このようにすることで、アプローチ時はプローブ11の先端11aと記録媒体34間の静電引力により遠方から両者の接近を検知するに適した接近用電圧Vapを設定することができる。また、バイアス電圧Vbはトラッキング制御電圧±Vaに必要とされるダイナミックレンジ(ダイナミックに変動しなければいけない電圧値幅)が小さくなるように設定することができる。これらの電圧Vap,Vbは独立に設定することができるので、各々の最適値を選ぶことができる。また、図12に示した例では、アプローチ時にプローブ11と電極22,23との間に接近用電圧Vapの電位差がある。従って、アプローチ時に外部からの衝撃などでプローブ11がどちらかの電極22又は23に接近し、この電位差による静電引力によりプローブ11が電極22又は23に引き込まれることがある。本実施の形態によれば、アプローチ時のプローブ11と電極22,23との間の電位差はないので、このようなことはない。
【0217】
本発明の第十一の実施の形態を図14に基づいて説明する。本実施の形態は、構造的には第一の実施の形態で説明した情報記録再生装置に準ずるものであり、同一部分は同一符号を付して示す。
【0218】
本実施の形態においては、プローブ11のコモン電極20(遮光金属膜21)と接地との間には接近用電圧Vapの電源72と接地とがコンピュータにより切換え可能なスイッチ103により選択自在に接続されている。一方、一対の電極22,23に関して、電極22と接地との間は制御電圧−Vaの電源74とバイアス電圧Vbの電源61との2入力加算アンプ104による重畳電圧と接地電圧とがコンピュータにより切換え可能なスイッチ105により選択自在に接続され、電極23と接地との間は制御電圧+Vaの電源75とバイアス電圧Vbの電源61との2入力加算アンプ106による重畳電圧と接地電圧とがコンピュータにより切換え可能なスイッチ107により選択自在に接続されている。ここに、これらのスイッチ103,105,107はプローブ11を記録媒体34に接近させる時と接近させた後とで切換えられるもので、これらの電源61,72,74,75とスイッチ103,105,107と2入力加算アンプ104,106とにより、接近時電圧印加手段と接近後電圧印加手段とが構成されている。
【0219】
このような構成において、プローブ11を記録媒体34にアプローチさせる時には、スイッチ103の切換えによりプローブ11には接近用電圧Vapを印加し、電極22,23にはスイッチ105,107の切換えにより接地電圧を印加する。アプローチ完了後は、スイッチ103の切換えによりプローブ11には接地電圧を印加し、電極22,23にはスイッチ105,107の切換えによりトラッキング制御電圧±Vaとバイアス電圧Vbとを重畳した電圧を印加する。
【0220】
このようにすることで、アプローチ時はプローブ11の先端11aと記録媒体34との間の静電引力により遠方から両者の接近を検知するに適したアプローチ電圧Vapを設定することができる。また、バイアス電圧Vbはトラッキング制御電圧±Vaに必要とされるダイナミックレンジ(ダイナミックに変動しなければいけない電圧値幅)が小さくなるように設定することができる。これらの電圧Vap,Vbは独立に設定することができるので、各々の最適値を選ぶことができる。
【0221】
本発明の第十二の実施の形態を図15に基づいて説明する。本実施の形態は、基本的には前述の第十一の実施の形態で説明した情報記録再生装置に準ずるものであり、同一部分は同一符号を付して示す。本実施の形態では、電源72とスイッチ105,107の非電源側端子との間が接続されている。即ち、電極22,23に対しても電源72が接続可能とされている。
【0222】
このような構成において、プローブ11を記録媒体34にアプローチさせる時には、スイッチ103の切換えによりプローブ11には接近用電圧Vapを印加し、電極22,23にもスイッチ105,107の切換えにより接近用電圧Vapを印加する。アプローチ完了後は、スイッチ103の切換えによりプローブ11には接地電圧を印加し、電極22,23にはスイッチ105,107の切換えによりトラッキング制御電圧±Vaとバイアス電圧Vbとを重畳した電圧を印加する。
【0223】
このようにすることで、アプローチ時はプローブ11の先端11aと記録媒体34との間の静電引力により遠方から両者の接近を検知するに適したアプローチ電圧Vapを設定することができる。また、バイアス電圧Vbはトラッキング制御電圧±Vaに必要とされるダイナミックレンジ(ダイナミックに変動しなければいけない電圧値幅)が小さくなるように設定することができる。これらの電圧Vap,Vbは独立に設定することができるので、各々の最適値を選ぶことができる。また、図14に示した例では、アプローチ時にプローブ11と電極22,23との間に接近用電圧Vap分の電位差がある。従って、アプローチ時に外部からの衝撃などでプローブ11がどちらかの電極22又は23に接近し、この電位差による静電引力によりプローブ11が電極22又は23に引き込まれることがある。本実施の形態によれば、アプローチ時のプローブ11と電極22,23との間の電位差はないので、このようなことはない。
【0224】
本発明の第十三の実施の形態を図16に基づいて説明する。本実施の形態は、構造的には第四の実施の形態で説明した情報記録再生装置に準ずるものであり、同一部分は同一符号を付して示す。即ち、プローブとして光ファイバを用いていない導電性のプローブ81を用いた場合への適用例である。
【0225】
本実施の形態においては、導電性のプローブ81のコモン電極20と接地との間には電流計85を介してバイアス電圧Vbの電源61と接近用電圧Vapの電源72とがコンピュータにより切換え可能なスイッチ110により選択自在に接続されている。一方、一対の電極22,23に関して、図12で説明した場合と同様に、電極22と接地との間には制御電圧−Vaの電源74と接地とがコンピュータにより切換え可能なスイッチ101により選択自在に接続され、電極23と接地との間には制御電圧+Vaの電源75と接地とがコンピュータにより切換え可能なスイッチ102により選択自在に接続されている。ここに、これらのスイッチ110,101,102はプローブ11を記録媒体34に接近させる時と接近させた後とで切換えられるもので、これらの電源61,72,74,75とスイッチ100,101,102とにより、接近時電圧印加手段と接近後電圧印加手段とが構成されている。
【0226】
即ち、プローブ81とこのプローブ81に電圧を印加する電源61又は72との間にプローブ81から記録媒体82に流れるトンネル電流を測定する電流計85を設けている点以外は、図12に示した場合と同じであり、プローブ81及び電極22,23への電圧印加方法及びその効果も特に説明しないが同様である。
【0227】
また、用いているプローブ81と電流計85以外はそのままにして、プローブ81と電極22,23への電圧印加方法を図13ないし図15に示した場合と同様な構成にすることができる。その電圧印加方法及びその効果も特に説明しないが同様である。
【0228】
本発明の第十四の実施の形態を図17に基づいて説明する。本実施の形態は、構造的には第七の実施の形態で説明した情報再生装置に準ずるものであり、図8及び図9に示した部分と同一部分は同一符号を付して示す。即ち、プローブとして光ファイバを用いていない導電性のプローブ91を用いた場合への適用例でありアフォースを検出するための図示しない水晶振動子がプローブ91に接続されている。また、特に必須ではないが、得られたシアフォース信号からプローブ91の先端91aと記録媒体表面間の距離を一定にするための距離制御用圧電素子93とこれをドライブするパワーアンプ97を設けている。パワーアンプ97はシアフォースの信号に基づきコンピュータからの制御信号により制御されている。この制御信号はアナログ回路で構成される帰還制御回路からの信号であってもよい。
【0229】
プローブ91及び電極22,23への電圧印加方法及びその効果は、前述の図12や図16で説明した場合と同じであるので、省略する。
【0230】
また、用いているプローブ91、水晶振動子、距離制御用圧電素子93、パワーアンプ97と制御信号以外はそのままにして、プローブ91と電極22,23への電圧印加方法を図13ないし図15に示した場合と同様な構成にすることができる。その電圧印加方法及びその効果も特に説明しないが同様である。
【0231】
なお、前述した各実施の形態においては、記録材料として光や電流等で生じる熱により相変化を生じ、その反射率や抵抗値が変わる相変化材料や有機材料を挙げたが、特にこれに限定されることはなく、例えば光や電流等により記録層の表面に突起又は窪みができるような材料であってもよい。或いは元々記録層表面にある凹凸が書き込むことにより消えるようなものでもよい。
【0232】
或いは、プローブ先端に、原子や分子を吸着させて、これを所望の記録媒体状の場所に運んだ後、前記原子や分子を記録媒体表面に載せることにより記録媒体に情報を書き込む方法にも本発明を適用することができる。
【0233】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、プローブから記録媒体に与えるエネルギーにより記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向にプローブを挟むように設けられた一対の電極にプローブ先端をトラッキング方向に変位させるための制御電圧を印加する制御電圧印加手段と、プローブに制御電圧とは独立したバイアス電圧を印加するバイアス電圧印加手段とを備えるので、バイアス電圧は制御電圧とは独立した電圧であり、かつ、これらの電圧の基準電圧を共通にとれるので、制御電圧の安定性を向上させ、回路構成も単純化させることができる。
【0234】
請求項2記載の発明によれば、プローブから記録媒体に与えるエネルギーにより記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、バイアス電圧の電圧値を、このバイアス電圧を印加しない場合にプローブが所望の力を受けるために必要な制御電圧の電圧値の1/4より大きな値となるように適正に設定したので、静電引力の直線性を向上させ得る上に、トラッキングのための制御電圧を低電圧化させることができ、この制御電圧を出力する回路の負担を低減させることができる。
【0235】
請求項3記載の発明によれば、プローブから記録媒体に与えるエネルギーにより記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、プローブを記録媒体に接近させる時のみプローブに対して接近用電圧を印加することによりアプローチ動作の高速化を図ることができ、このために特別なパターンを用いる必要がなく、かつ、信号処理時間が長くなることもなく、この際、電極に対しては制御電圧とバイアス電圧と接近用電圧とが重畳して印加されるが、接近用電圧の増減に対して電極に対する印加電圧が同じ値で連動するので、制御電圧とバイアス電圧とによる電位差に影響を及ぼすことがなく、トラッキング動作に関する制御性の向上とその制御電圧の低電圧化を図ることができる。
【0236】
請求項4記載の発明によれば、プローブと記録媒体との間での一方から他方への作用により記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向にプローブを挟むように設けられた一対の電極にプローブ先端をトラッキング方向に変位させるための制御電圧を印加する制御電圧印加手段と、プローブに制御電圧とは独立したバイアス電圧を印加するバイアス電圧印加手段とを備えるので、バイアス電圧は制御電圧とは独立した電圧であり、かつ、これらの電圧の基準電圧を共通にとれるので、制御電圧の安定性を向上させ、回路構成も単純化させることができる。
【0237】
請求項5記載の発明によれば、プローブと記録媒体との間での一方から他方への作用により記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、バイアス電圧の電圧値を、このバイアス電圧を印加しない場合にプローブが所望の力を受けるために必要な制御電圧の電圧値の1/4より大きな値となるように適正に設定したので、静電引力の直線性を向上させ得る上に、トラッキングのための制御電圧を低電圧化させることができ、この制御電圧を出力する回路の負担を低減させることができる。
【0238】
請求項6記載の発明によれば、プローブと記録媒体との間での一方から他方への作用により記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、プローブを記録媒体に接近させる時のみプローブに対して接近用電圧を印加することによりアプローチ動作の高速化を図ることができ、このために特別なパターンを用いる必要がなく、かつ、信号処理時間が長くなることもなく、この際、電極に対しては制御電圧とバイアス電圧と接近用電圧とが重畳して印加されるが、接近用電圧の増減に対して電極に対する印加電圧が同じ値で連動するので、制御電圧とバイアス電圧とによる電位差に影響を及ぼすことがなく、トラッキング動作に関する制御性の向上とその制御電圧の低電圧化を図ることができる。
【0239】
請求項7記載の発明によれば、プローブと記録媒体との間に流れるトンネル電流により記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向にプローブを挟むように設けられた一対の電極にプローブ先端をトラッキング方向に変位させるための制御電圧を印加する制御電圧印加手段と、プローブに制御電圧とは独立したバイアス電圧を印加するバイアス電圧印加手段とを備えるので、バイアス電圧は制御電圧とは独立した電圧であり、かつ、これらの電圧の基準電圧を共通にとれるので、制御電圧の安定性を向上させ、回路構成も単純化させることができる。
【0240】
請求項8記載の発明によれば、プローブと記録媒体との間に流れるトンネル電流により記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、バイアス電圧の電圧値を、このバイアス電圧を印加しない場合にプローブが所望の力を受けるために必要な制御電圧の電圧値の1/4より大きな値となるように適正に設定したので、静電引力の直線性を向上させ得る上に、トラッキングのための制御電圧を低電圧化させることができ、この制御電圧を出力する回路の負担を低減させることができる。
【0241】
請求項9記載の発明によれば、プローブと記録媒体との間に流れるトンネル電流により記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、プローブを記録媒体に接近させる時のみプローブに対して接近用電圧を印加することによりアプローチ動作の高速化を図ることができ、このために特別なパターンを用いる必要がなく、かつ、信号処理時間が長くなることもなく、この際、電極に対しては制御電圧とバイアス電圧と接近用電圧とが重畳して印加されるが、接近用電圧の増減に対して電極に対する印加電圧が同じ値で連動するので、制御電圧とバイアス電圧とによる電位差に影響を及ぼすことがなく、トラッキング動作に関する制御性の向上とその制御電圧の低電圧化を図ることができる。
【0242】
請求項10記載の発明によれば、プローブと記録媒体との間に働くシアフォースにより記録媒体に対する情報の再生を行う情報再生装置において、記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向にプローブを挟むように設けられた一対の電極にプローブ先端をトラッキング方向に変位させるための制御電圧を印加する制御電圧印加手段と、プローブに制御電圧とは独立したバイアス電圧を印加するバイアス電圧印加手段とを備えるので、バイアス電圧は制御電圧とは独立した電圧であり、かつ、これらの電圧の基準電圧を共通にとれるので、制御電圧の安定性を向上させ、回路構成も単純化させることができる。
【0243】
請求項11記載の発明によれば、プローブと記録媒体との間に働くシアフォースにより記録媒体に対する情報の再生を行う情報再生装置において、バイアス電圧の電圧値を、このバイアス電圧を印加しない場合にプローブが所望の力を受けるために必要な制御電圧の電圧値の1/4より大きな値となるように適正に設定したので、静電引力の直線性を向上させ得る上に、トラッキングのための制御電圧を低電圧化させることができ、この制御電圧を出力する回路の負担を低減させることができる。
【0244】
請求項12記載の発明によれば、プローブと記録媒体との間に働くシアフォースにより記録媒体に対する情報の再生を行う情報再生装置において、プローブを記録媒体に接近させる時のみプローブに対して接近用電圧を印加することによりアプローチ動作の高速化を図ることができ、このために特別なパターンを用いる必要がなく、かつ、信号処理時間が長くなることもなく、この際、電極に対しては制御電圧とバイアス電圧と接近用電圧とが重畳して印加されるが、接近用電圧の増減に対して電極に対する印加電圧が同じ値で連動するので、制御電圧とバイアス電圧とによる電位差に影響を及ぼすことがなく、トラッキング動作に関する制御性の向上とその制御電圧の低電圧化を図ることができる。
【0245】
請求項13記載の発明によれば、プローブから記録媒体に与えるエネルギーにより記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、特別なパターンを記録媒体に作製したり、信号処理時間が長くなるなどの不具合を伴うことなく、トラッキングの制御性の向上と制御電圧の低電圧化と、プローブ先端と記録媒体との間の衝突の回避と、動作速度の高速化とを同時に実現することができる。
【0246】
請求項14記載の発明によれば、プローブと記録媒体との間での一方から他方への作用により記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う記録再生装置において、特別なパターンを記録媒体に作製したり、信号処理時間が長くなるなどの不具合を伴うことなく、トラッキングの制御性の向上と制御電圧の低電圧化と、プローブ先端と記録媒体との間の衝突の回避と、動作速度の高速化とを同時に実現することができる。
【0247】
請求項15記載の発明によれば、プローブと記録媒体との間に流れるトンネル電流により記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う記録再生装置において、特別なパターンを記録媒体に作製したり、信号処理時間が長くなるなどの不具合を伴うことなく、トラッキングの制御性の向上と制御電圧の低電圧化と、プローブ先端と記録媒体との間の衝突の回避と、動作速度の高速化とを同時に実現することができる。
【0248】
請求項16記載の発明によれば、プローブと記録媒体との間に働くシアフォースにより記録媒体に対する情報の再生を行う情報再生装置において、特別なパターンを記録媒体に作製したり、信号処理時間が長くなるなどの不具合を伴うことなく、トラッキングの制御性の向上と制御電圧の低電圧化と、プローブ先端と記録媒体との間の衝突の回避と、動作速度の高速化とを同時に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一,二の実施の形態のプローブ付近を半径方向に断面し拡大して示す断面構造図である。
【図2】本発明の第三の実施の形態による情報記録再生装置の構成をブロック的に示す構成図である。
【図3】プローブ付近を半径方向に断面し拡大して示す断面構造図である。
【図4】本発明の第四,五の実施の形態のプローブ付近を半径方向に断面し拡大して示す断面構造図である。
【図5】記録媒体を含めてそのプローブ付近を半径方向に断面し拡大して示す断面構造図である。
【図6】本発明の第六の実施の形態による情報記録再生装置の構成をブロック的に示す構成図である。
【図7】そのプローブ付近を半径方向に断面し拡大して示す断面構造図である。
【図8】本発明の第七の実施の形態のプローブ付近を半径方向に断面し拡大して示す断面構造図である。
【図9】記録媒体を含めてそのプローブ付近を半径方向に断面し拡大して示す断面構造図である。
【図10】本発明の第八の実施の形態による情報記録再生装置の構成をブロック的に示す構成図である。
【図11】そのプローブ付近を半径方向に断面し拡大して示す断面構造図である。
【図12】本発明の第九の実施の形態のプローブ付近を半径方向に断面し拡大して示す断面構造図である。
【図13】本発明の第十の実施の形態のプローブ付近を半径方向に断面し拡大して示す断面構造図である。
【図14】本発明の第十一の実施の形態のプローブ付近を半径方向に断面し拡大して示す断面構造図である。
【図15】本発明の第十二の実施の形態のプローブ付近を半径方向に断面し拡大して示す断面構造図である。
【図16】本発明の第十三の実施の形態のプローブ付近を半径方向に断面し拡大して示す断面構造図である。
【図17】本発明の第十四の実施の形態のプローブ付近を半径方向に断面し拡大して示す断面構造図である。
【図18】第1の従来例によるプローブ付近の構成を示す側面図である。
【図19】そのパターン走査に伴う空間周波数Kと光量変化の基本波成分Iとの関係を示す特性図である。
【図20】第2の従来例による情報記録再生装置の構成を示す概略側面図である。
【図21】そのマークピット走査の様子を示す模式的斜視図である。
【図22】プローブ付近を半径方向に断面し拡大して示す断面構造図である。
【図23】第3の従来例による情報記録再生装置の構成をブロック的に示す構成図である。
【符号の説明】
11 プローブ
15 記録媒体
22,23 電極
34 記録媒体
36 プローブ
61 バイアス電圧印加手段
62,63 制御電圧印加手段
71a,71b 重畳電圧印加手段
72 接近用電圧印加手段
81 プローブ
82 記録媒体
91 プローブ
92 記録媒体

Claims (16)

  1. プローブから記録媒体に与えるエネルギーにより前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、
    前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、
    これらの電極に前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧を印加する制御電圧印加手段と、
    前記プローブに前記制御電圧とは独立したバイアス電圧を印加するバイアス電圧印加手段と、
    を備えることを特徴とする情報記録再生装置。
  2. プローブから記録媒体に与えるエネルギーにより前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、
    前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、
    これらの電極と前記プローブとの間に、前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧とこの制御電圧とは独立したバイアス電圧とを重畳して印加する電圧印加手段とを備え、
    前記バイアス電圧の電圧値が、このバイアス電圧を印加しない場合に前記プローブが所望の力を受けるために必要な制御電圧の電圧値の1/4より大きな値に設定されている、
    ことを特徴とする情報記録再生装置。
  3. プローブから記録媒体に与えるエネルギーにより前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、
    前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、
    これらの電極に、前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧と、この制御電圧とは独立したバイアス電圧と、前記プローブを前記記録媒体に接近させるための接近用電圧とを重畳して印加する重畳電圧印加手段と、
    前記プローブを前記記録媒体に接近させる時のみ前記プローブに前記接近用電圧を印加する接近用電圧印加手段と、
    を備えることを特徴とする情報記録再生装置。
  4. プローブと記録媒体との間での一方から他方への作用により前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、
    前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、
    これらの電極に前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧を印加する制御電圧印加手段と、
    前記プローブに前記制御電圧とは独立したバイアス電圧を印加するバイアス電圧印加手段と、
    を備えることを特徴とする情報記録再生装置。
  5. プローブと記録媒体との間での一方から他方への作用により前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、
    前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、
    これらの電極と前記プローブとの間に、前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧とこの制御電圧とは独立したバイアス電圧とを重畳して印加する電圧印加手段とを備え、
    前記バイアス電圧の電圧値が、このバイアス電圧を印加しない場合に前記プローブが所望の力を受けるために必要な制御電圧の電圧値の1/4より大きな値に設定されている、
    ことを特徴とする情報記録再生装置。
  6. プローブと記録媒体との間での一方から他方への作用により前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、
    前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、
    これらの電極に、前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧と、この制御電圧とは独立したバイアス電圧と、前記プローブを前記記録媒体に接近させるための接近用電圧とを重畳して印加する重畳電圧印加手段と、
    前記プローブを前記記録媒体に接近させる時のみ前記プローブに前記接近用電圧を印加する接近用電圧印加手段と、
    を備えることを特徴とする情報記録再生装置。
  7. プローブと記録媒体との間に流れるトンネル電流により前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、
    前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、
    これらの電極に前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧を印加する制御電圧印加手段と、
    前記プローブに前記制御電圧とは独立したバイアス電圧を印加するバイアス電圧印加手段と、
    を備えることを特徴とする情報記録再生装置。
  8. プローブと記録媒体との間に流れるトンネル電流により前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、
    前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、
    これらの電極と前記プローブとの間に、前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧とこの制御電圧とは独立したバイアス電圧とを重畳して印加する電圧印加手段とを備え、
    前記バイアス電圧の電圧値が、このバイアス電圧を印加しない場合に前記プローブが所望の力を受けるために必要な制御電圧の電圧値の1/4より大きな値に設定されている、
    ことを特徴とする情報記録再生装置。
  9. プローブと記録媒体との間に流れるトンネル電流により前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、
    前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、
    これらの電極に、前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧と、この制御電圧とは独立したバイアス電圧と、前記プローブを前記記録媒体に接近させるための接近用電圧とを重畳して印加する重畳電圧印加手段と、
    前記プローブを前記記録媒体に接近させる時のみ前記プローブに前記接近用電圧を印加する接近用電圧印加手段と、
    を備えることを特徴とする情報記録再生装置。
  10. プローブと記録媒体との間に働くシアフォースにより前記記録媒体に対する情報の再生を行う情報再生装置において、
    前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、
    これらの電極に前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧を印加する制御電圧印加手段と、
    前記プローブに前記制御電圧とは独立したバイアス電圧を印加するバイアス電圧印加手段と、
    を備えることを特徴とする情報再生装置。
  11. プローブと記録媒体との間に働くシアフォースにより前記記録媒体に対する情報の再生を行う情報再生装置において、
    前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、
    これらの電極と前記プローブとの間に、前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧とこの制御電圧とは独立したバイアス電圧とを重畳して印加する電圧印加手段とを備え、
    前記バイアス電圧の電圧値が、このバイアス電圧を印加しない場合に前記プローブが所望の力を受けるために必要な制御電圧の電圧値の1/4より大きな値に設定されている、
    ことを特徴とする情報再生装置。
  12. プローブと記録媒体との間に働くシアフォースにより前記記録媒体に対する情報の再生を行う情報再生装置において、
    前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、
    これらの電極に、前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧と、この制御電圧とは独立したバイアス電圧と、前記プローブを前記記録媒体に接近させるための接近用電圧とを重畳して印加する重畳電圧印加手段と、
    前記プローブを前記記録媒体に接近させる時のみ前記プローブに前記接近用電圧を印加する接近用電圧印加手段と、
    を備えることを特徴とする情報再生装置。
  13. プローブから記録媒体に与えるエネルギーにより前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、
    前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、
    前記プローブを前記記録媒体に接近させる時には、前記プローブには前記接近用電圧を印加し前記電極には接地電圧又は前記接近用電圧を印加する接近時電圧印加手段と、
    前記プローブを前記記録媒体に接近させた後には、前記プローブと前記電極との間の電位差が前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧と、この制御電圧とは独立したバイアス電圧とが重畳された電圧になるように電圧を印加する接近後電圧印加手段と、
    を備えることを特徴とする情報記録再生装置。
  14. プローブと記録媒体との間での一方から他方への作用により前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、
    前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、
    前記プローブを前記記録媒体に接近させる時には、前記プローブには前記接近用電圧を印加し前記電極には接地電圧又は前記接近用電圧を印加する接近時電圧印加手段と、
    前記プローブを前記記録媒体に接近させた後には、前記プローブと前記電極との間の電位差が前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧と、この制御電圧とは独立したバイアス電圧とが重畳された電圧になるように電圧を印加する接近後電圧印加手段と、
    を備えることを特徴とする情報記録再生装置。
  15. プローブと記録媒体との間に流れるトンネル電流により前記記録媒体に対する情報の記録又は再生を行う情報記録再生装置において、
    前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、
    前記プローブを前記記録媒体に接近させる時には、前記プローブには前記接近用電圧を印加し前記電極には接地電圧又は前記接近用電圧を印加する接近時電圧印加手段と、
    前記プローブを前記記録媒体に接近させた後には、前記プローブと前記電極との間の電位差が前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧と、この制御電圧とは独立したバイアス電圧とが重畳された電圧になるように電圧を印加する接近後電圧印加手段と、
    を備えることを特徴とする情報記録再生装置。
  16. プローブと記録媒体との間に働くシアフォースにより前記記録媒体に対する情報の再生を行う情報再生装置において、
    前記記録媒体上のデータ列が並ぶトラック方向と直交するトラッキング方向に前記プローブを挟むように設けられた一対の電極と、
    前記プローブを前記記録媒体に接近させる時には、前記プローブには前記接近用電圧を印加し前記電極には接地電圧又は前記接近用電圧を印加する接近時電圧印加手段と、
    前記プローブを前記記録媒体に接近させた後には、前記プローブと前記電極との間の電位差が前記プローブ先端を前記トラッキング方向に変位させるための制御電圧と、この制御電圧とは独立したバイアス電圧とが重畳された電圧になるように電圧を印加する接近後電圧印加手段と、
    を備えることを特徴とする情報再生装置。
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