JP4107706B2 - ジアセトキシブテンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジアセトキシブテンの製造方法に関する。詳しくは、ブタジエンをアセトキシ化してジアセトキシブテンを製造する方法の改良に関する。
ジアセトキシブテンは、ポリウレタン等の原料である1,4−ブタンジオール及び高性能溶剤であるテトラヒドロフランの重要な中間体である。
【0002】
【従来の技術】
1,4−ブタンジオールの中間体であるジアセトキシブテンは、貴金属触媒の存在下、ブタジエン、酢酸及び酸素を反応させて製造される(特開昭52−7907号公報等)。得られたジアセトキシブテンは、次いでパラジウム触媒又はニッケル触媒等を用いて水添されてジアセトキシブタンとなり、更に加水分解されて1,4−ブタンジオールとなる(特開昭52−133912号公報等)。
【0003】
このブタジエンを原料とする1,4−ブタンジオールの製造方法では、工程中で多量の酢酸及び水が使用され、且つ反応により酢酸及び水が副生する。従って、製品純度を高く保持しながら、これらを回収して再使用する各種の提案がなされている(上記各公報参照)。これらの方法では、通常、目的物と酢酸との分離は蒸留によりなされている。
即ち、ブタジエン、酢酸及び酸素を反応させてジアセトキシブテンを生成させる反応で得られるアセトキシ化反応の生成液は、脱ガス処理して未反応ブタジエン等を除去した後、蒸留塔で蒸留して、水、酢酸を塔頂から留去し、塔底からジアセトキシブテンを含む成分を抜出している。またジアセトキシブタンを加水分解して得られる反応生成物は、蒸留塔で蒸留して水と酢酸及び他の軽沸物を塔頂から留去し、塔底から1,4−ブタンジオールを含む成分を抜出している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、アセトキシ化反応生成液から酢酸を回収する蒸留を、リボイラーとして常用のシェル−チューブ型の多管式熱交換器を備えた蒸留塔で行うと、比較的短期間の運転によりリボイラーチューブ内に重合物の付着がおこり、運転を中断しなければならないことがしばしば起こった。本発明の課題は、アセトキシ化反応生成液からの酢酸の蒸留分離において、長期間の運転をしてもリボイラーチューブ内の重合物の付着を抑制することができる、改良されたアセトキシ化反応生成液の蒸留方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アセトキシ化反応で得られる反応生成液から、酢酸等を蒸留分離する蒸留塔のリボイラーチューブ内の液流速を一定の値以上にすることにより、長期間の運転においてもリボイラーチューブの重合物付着による閉塞を防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明によれば、貴金属触媒の存在下に、ブタジエン、酢酸及び酸素を反応させてジアセトキシブテンを生成させ、生成したジアセトキシブテンを含む反応生成液を蒸留塔で蒸留して、酢酸を含む軽沸成分を塔頂から留出させ、塔底からジアセトキシブテンを含む成分を抜出すに際し、蒸留塔として塔底液を加熱するためのシェル−チューブ式の多管式熱交換器を有するものを用い、且つ塔底液を熱交換器のチューブ入口において0.7m/秒以上の流速で熱交換器を通過させることにより、熱交換器の重合物付着による閉塞を回避して長時間に亘り蒸留を行うことができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の方法においては、アセトキシ化反応生成液より酢酸を分離する蒸留塔において、塔底液のリボイラーチューブ入口における流速を0.7m/秒以上とすることの他は、従来公知の、ブタジエン、酢酸及び酸素を反応させてジアセトキシブテンを得る方法が適宜採用される。
【0008】
アセトキシ化反応は、ブタジエン、酢酸、及び分子状酸素を、貴金属触媒、特にパラジウム系触媒の存在下、反応させる公知の方法により行われる。パラジウム触媒としては、パラジウム金属又はその塩(例えば、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム等の無機又は有機酸塩)を単独で用いることができる。またパラジウム金属又はその塩を助触媒としてのビスマス、セレン、アンチモン、テルル、銅等の金属又はその塩(例えば、酸化ビスマス、セレン酸、酸化テルル、塩化アンチモン、塩化銅等)とを組み合わせて用いることもできる。これらの触媒成分は、シリカ、アルミナ、活性炭等の担体に担持させて用いることが好ましい。
通常はパラジウム化合物及び助触媒成分の化合物を溶解した溶液を担体に含浸させることにより触媒成分を担体に担持させ、次いでこの担体上の触媒成分を水素やメタノール等で還元することにより調製した触媒を用いる。
担持触媒中の触媒成分の量は、通常、金属換算でパラジウムが0.1〜20重量%であり、助触媒成分が0.01〜30重量%の範囲で選定される。
【0009】
アセトキシ化反応は、公知の固定床方式、流動床方式、懸濁床方式等の任意の方法で実施され、反応は40〜180℃、好ましくは60〜150℃の温度範囲で、常圧以上、通常、300kg/cm2 (29.4MPa)以下、好ましくは30〜150kg/cm2 (2.94〜14.7MPa)の圧力下で実施される。
【0010】
このようにして得られるアセトキシ化の反応生成液には、未反応のブタジエン等が含まれているので、通常は脱ガス処理してブタジエン等を除去した後、蒸留してジアセトキシブテンを得る。通常、第1蒸留塔で、水、酢酸、モノアセトキシブテン等を塔頂から留去し、その塔底液を第2蒸留塔に供給する。第2蒸留塔では、塔頂からジアセトキシブテンを得、ジアセトキシオクタジエンを含む副生高沸物を塔底から抜き出す。
【0011】
第1蒸留塔は、通常、理論段数4〜10段で、塔頂圧力30〜300mmHg(4〜40kPa)、塔底温度190℃以下、還流比0〜0.1で操作され、また、第2蒸留塔は、理論段数、通常、10〜15段で、塔頂圧力2〜100mmHg(0.3〜13.3kPa)、塔底温度190℃以下、還流比0〜1で操作される。
【0012】
通常、蒸留塔のリボイラー、すなわち塔底液の加熱装置としては、加熱用の熱媒体がシェル側に供給され、チューブ内を被加熱体である塔底液が通過するシェル−チューブ式の多管式熱交換器が用いられる。熱交換器を通しての塔底液の流れは、チューブ内での加熱により発生する比重差に基づく自然循環によるのが一般的である。蒸留塔底の液粘度が高い場合等には、希に薄膜蒸発器のような加熱方式が採用されることもある。アセトキシ化反応で得られるジアセトキシブテンは沸点が230℃(101kPa)付近であり、粘度も約2.0MPa・秒(50℃)であるので、第1蒸留塔のリボイラーを設計する際には、ジアセトキシブテンが二重結合を持つため、温度上昇による重合を防止する以外は、特段の配慮が必要であるとは考えられなかった。
しかしながら、前記の蒸留条件で、塔底温度を190℃以下に保ち運転を継続したところ、予想外にも、リボイラーチューブの閉塞が起こり、3000乃至4000時間以上の運転の継続は不可能であった。リボイラーチューブの閉塞を防止するために、重合防止剤例えばハイドロキノン等の添加、或いは付着防止剤の添加等を検討したが、有効な添加剤は見い出せなかった。
【0013】
ところが、熱交換器のチューブを通過する塔底液の流速が大きくなると、チューブへの重合物の付着が減少することが見出された。通常はチューブ入口での液速が0.7m/秒以上となると重合物の付着は著しく減少する。一般に流速が大きいほど重合物の付着は減少するが、流速を大きくするとチューブ内での圧力損失が増加し、熱交換器を通して塔底液を循環させるために多量のエネルギーを必要とする。また、流速が過大となるとチューブが振動して熱交換器が破損する危険がある。従って熱交換器を通過する塔底液の流速は、チューブ入口で5.0m/秒以下が好ましく、これより流速を大きくすることは有利ではない。塔底液の最も好ましい流速は、チューブ入口で1.0〜4.0m/秒である。塔底液をこのような流速で熱交換器を通過させるには、蒸留塔の塔底から熱交換器までの塔底液の流路にポンプを設置し、このポンプにより所定の流速となるように塔底液を熱交換器に供給するのが最も簡便である。本発明方法によれば、熱交換器を通過する塔底液の流速をチューブ入口で0.7m/秒以上、特に1.0〜4.0秒とすることにより、第1蒸留塔を約1年間に亘り連続運転することができる。
【0014】
第1蒸留塔の塔頂から回収される水及び酢酸を主成分とする留分は、酢酸精製工程に送られ、精製された上でアセトキシ化反応に再使用される。
塔底液は、第2蒸留塔に送られ、先に開示された方法に従い塔頂からジアセトキシブテンを取出す。このジアセトキシブテンは水素化されたのち加水分解され、1,4−ブタンジオールとされる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明を実施例、比較例を挙げ、更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り実施例に限定されるものではない。
【0016】
実施例1
アセトキシ化反応器に、ブタジエン170重量部/hr、酢酸3000重量部/hr、及び酸素530重量部/hrを供給し、パラジウム3重量%及びテルル0.6重量%を活性炭に担持した触媒の存在下、9MPa、100℃で反応させた。反応器から抜出した液は脱ガス処理して、ジアセトキシブテン14.2重量%を含む反応生成液を得た。
該反応生成液を3100重量部/hrで第1蒸留塔に供給し、蒸留して酢酸を留出させた。蒸留塔としては理論段数で10段の充填物が充填されている充填塔を用い、塔頂から数えて8段目に反応液をフィードした。蒸留塔は塔頂圧力を13.3kPa(100mmHg)、還流比を0.1、塔底温度を150℃で運転し、塔底液は蒸留塔底部とリボイラーとの間に設置したポンプにより、リボイラーチューブの入口で1.5m/秒になるようにリボイラーを経て循環した。水及び酢酸の大部分を塔頂より留去し、ジアセトキシブテン84.5重量%、及びジアセトキシオクタジエン3.2重量%を含む塔底液を580重量部/hrで塔底から抜出した。この条件で運転を1年間(8000時間)継続して実施した後、リボイラーを開放しチューブを点検したところ、多数あるチューブの約2%が閉塞していた。運転開始した時点でのリボイラーの総括伝熱係数は780kcal/hr・m2 ・℃であった。
【0017】
比較例1
ポンプを用いずに自然循環により塔底液がボイラーを通過するようにした以外は、実施例と同じ操作条件により運転を行った。リボイラーは、この操作条件下ではチューブ入口の流速が0.3m/秒となるように設計されている。運転開始後、2000時間付近よりリボイラーのシェル側における蒸気圧力が上昇し、3000時間で運転が出来なくなった。リボイラーを開放し点検したところ、チューブ総数の約40%が重合物で閉塞していた。運転開始した時点におけるリボイラーの総括伝熱係数は380kcal/hr・m2 ・℃であった。
【0018】
比較例2
リボイラーチューブ入口での液流速が0.5m/秒になるようにポンプにより塔底液をリボイラーに供給した以外は、実施例1と同様にして蒸留塔の運転を行った。
運転開始後、3000時間付近よりリボイラーシェル側の蒸気圧力が上昇し、4000時間で運転が出来なくなった。リボイラーを開放し点検したところ、チューブ総数の約40%が重合物で閉塞していた。運転開始した時点におけるリボイラーの総括伝熱係数は450kcal/hr・m2 ・℃であった。
【0019】
【発明の効果】
本発明によれば、貴金属触媒を用いてブタジエンからジアセトキシブテンを生成するアセトキシ化反応生成液からの酢酸分離を、蒸留塔のリボイラーのチューブの閉塞なしに、長期間安定的に運転を行うことができる。
Claims (6)
- 貴金属触媒の存在下に、ブタジエン、酢酸及び酸素を反応させてジアセトキシブテンを生成させ、生成したジアセトキシブテンを含む反応生成液を蒸留塔で蒸留して、酢酸を含む軽沸成分を塔頂から留出させ、塔底からジアセトキシブテンを含む成分を抜出すジアセトキシブテンの製造方法において、蒸留塔として塔底液を加熱するためのシェル−チューブ式の多管式熱交換器を有するものを用い、且つこの熱交換器のチューブ入口において0.7m/秒以上となる流速で塔底液が熱交換器を通過するようにすることを特徴とする方法。
- 熱交換器のチューブ入口において1.0〜4.0m/秒となる流速で塔底液が熱交換器を通過するようにすることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 熱交換器への塔底液の供給をポンプにより行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
- 蒸留塔での蒸留に供する反応生成液が、貴金属を含む触媒の存在下に、ブタジエン、酢酸及び酸素を反応させて得た反応液を脱ガス処理したものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
- 貴金属触媒が、担体にパラジウム並びにビスマス、セレン、アンチモン、テルル及び銅からなる群から選ばれた少くとも一つを担持したものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
- 蒸留塔の塔底における液温を190℃以下に維持することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
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