JP4103455B2 - 車両の前部車体構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、車体の左右の両側部のドア開口を開閉するドアの前部が支持されるヒンジピラーと、左右のヒンジピラー間に車幅方向に延びて設けられ、インストルメントパネルを支持するインパネメンバと、を備えたような車両の前部車体構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、剛性があるルーフを有さないオープンカー等はその構造上、セダンタイプと比較して剛性が低くなるので、特に剛性を高める必要があった。
従来、オープンカーの剛性を向上させる構造としては、例えば、特開平11−115815号公報に記載の構造がある。
【0003】
すなわち、車体両側部のドア開口を開閉するドアの前部が支持されるヒンジピラーと、左右のヒンジピラー間に車幅方向に延びて設けられ、インストルメントパネルを支持するインパネメンバと、を備えた構造において、フロアパネルに凸設されたトンネル部と、上述のインパネメンバと、をステー部材によって連結して、ボディ剛性の向上を図ったものである。
【0004】
ところで、車両のデザイン的な要件と前方視界を確保するという要件とから、従前の三角窓を省略し、フロントウインドの後部を車室の側方まで回り込ませると、このフロントウインドの後部縦辺部を支持するフロントピラーと上述のヒンジピラーとが車両の前後方向にオフセットされる。
このようなデザインを採用した場合には、上述の公報に開示された程度の剛性向上構造では不充分であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、左右のヒンジピラーより後方にオフセットされ、かつ上方に延びてフロントウインドを支持するフロントピラーを設けると共に、インパネメンバの後方には両フロントピラー間を接続して車幅方向に延びるピラー間メンバを設け、上記フロントピラーの下端部を、ピラー間メンバよりも低い位置で上記ヒンジピラーの後側面に当接させることで、上記インパネメンバと並設されたピラー間メンバにて車体剛性の大幅な向上を図ることができる車両の前部車体構造の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明による車両の前部車体構造は、車体両側部のドア開口を開閉するドアの前部が支持されるヒンジピラーと、左右のヒンジピラー間に車幅方向に延びて設けられ、インストルメントパネルを支持するインパネメンバとを備えた車両の前部車体構造であって、上記ヒンジピラーより後方にオフセットされ、かつ上方に延びてフロントウインドを支持するフロントピラーが設けられ、上記インパネメンバの後方に並設されて上記両フロントピラー間を接続して車幅方向に延びるピラー間メンバを備え、上記フロントピラーの下端部は、上記ピラー間メンバよりも低い位置で上記ヒンジピラーの後側面に当接しているものである。
上記構成によれば、ヒンジピラー間に設けられたインパネメンバと、このインパネメンバに並設されてフロントピラー間に設けられたピラー間メンバとにより、車体剛性の大幅な向上を図ることができ、特に、ヒンジピラーに対して後方にオフセットされた位置にフロントピラーが存在するようなオープンカーの車体剛性向上に有効となる。
【0007】
この発明の一実施態様においては、上記インパネメンバと、上記ピラー間メンバと、を前後方向に接続する前後方向メンバを備えたものである。
上記構成によれば、上述の前後方向メンバにより車体剛性のさらなる向上を図ることができる。
【0008】
この発明の一実施態様においては、上記ピラー間メンバと、車両のフロアパネルに突設されたトンネル部と、を上下方向に接続する第1上下方向メンバを備えたものである。
上記構成の第1上下方向メンバは、トンネル部の上部にフロア剛性、車体剛性の向上を図るトンネルレインフォースメントが設けられた場合には、ピラー間メンバと、トンネルレインフォースメントと、を上下方向に接続してもよい。
上記構成によれば、上述の第1上下方向メンバにより車体剛性のさらなる向上を図ることができる。
【0009】
この発明の一実施態様においては、上記インパネメンバと、車両のフロアパネルに突設されたトンネル部と、を上下方向に接続する第2上下方向メンバを備えたものである。
上記構成の第2上下方向メンバは、トンネル部の上部にフロア剛性、車体剛性の向上を図るトンネルレインフォースメントが設けられた場合には、インパネメンバと、トンネルレインフォースメントと、を上下方向に接続してもよい。
上記構成によれば、上述の第2上下方向メンバにより車体剛性のさらなる向上を図ることができる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、上記前後方向メンバ、第1上下方向メンバおよび第2上下方向メンバのうちの少なくとも1つは車幅方向に所定間隔を隔てて左右一対設けられたものである。
上記構成の所定間隔はトンネル部の車幅方向の間隔、または、トンネルレインフォースメントの車幅方向の間隔に設定してもよい。
上記構成によれば、前後方向メンバ、第1上下方向メンバまたは/および第2上下方向メンバを左右一対設けるので、車体剛性をより一層向上させることができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記インパネメンバはフロントウインドの下辺部を支持する閉断面状のカウルボックス外側面に取付けられたものである。
上記構成によれば、カウルボックスの外側面にインパネメンバを取付けるので、車体剛性の向上を図ることができると共に、インストルメントパネル内のレイアウトの自由度の拡大を図ることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記インパネメンバはフロントウインドの下辺部を支持する閉断面状のカウルボックスと一体化されたものである。
上記構成によれば、インパネメンバとカウルボックスとを一体化したので、車体剛性の向上を図ることができると共に、インストルメントパネル内のレイアウトの自由度の拡大を図ることができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記フロントウインドの後部縦辺部は車室の側方にラウンドして回り込み、上記ドア開口の前辺部より後方に配置されたものである。
【0014】
上記構成によれば、フロントウインドの後部縦辺部を、車室の側方にラウンドして回り込ませたので、従前の三角窓を省略することができ、これにより、前方視界の向上を図ることができ、また車室デザイン要求を満たすことができる。
【0015】
【実施例】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の前部車体構造を示し、この車両は図1、図2に示すようにルーフ部に複数たとえば3分割されたハードルーフ1,2,3から成る可動ルーフ4を備えると共に、この可動ルーフ4を開閉可能かつ取外し可能(図2参照)に構成して、図2に示すように、可動ルーフ4を取外した際には、ルーフのないオープンカー態様で走行可能に構成されている。
【0016】
また、上記車両はその側部に左右のドア5,5(サイドドア)によって開閉される乗員乗降用のドア開口部6,6を備えている。
さらに、車両の乗員着座位置の前方には、車体に形成された連続する単一の開口部から成るフロントウインド開口部7を設け、このフロントウインド開口部7を透光性素材(例えば、ガラスまたは透明の強化プラスチック)から成る一体(非分割)のフロントウインド部材8(以下単にフロントウインドと略記する)で覆っている。
【0017】
上述のフロントウインド8は、乗員着座位置の前方から乗員着座位置の側方つまり車室の側方まで回り込むように一体形成されており、このフロントウインド8で覆われるフロントウインド開口部7の側部の左右両縦辺部9,9は回り込んだフロントウインド8の後端部と対応するように、ドア開口部6の前辺部よりも後方に配置され、しかも、該縦辺部9は可及的垂直に配設されている。
【0018】
図3は図1、図2で示した車両の前部車体構造を示す側面図、図4は要部の斜視図であって、図3において、エンジン11が搭載されたエンジンルーム12と、乗員が乗り込む車室13と、が仕切り手段としてのダッシュロアパネル14を隔てて区画されている。
【0019】
上述の車室13の前方に設けられ、かつダッシュロアパネル14にて区画されたエンジンルーム12の上部はボンネット15で開閉可能に覆われる一方、エンジンルーム12内のエンジン11よりも前部にはインタクーラ16、空調用のクーラコンデンサ17、ラジエータ18が前高後低状に傾斜して配置され、また、ラジエータ18とエンジン11との間には空気浄化手段としてのエアクリーナ19が配置されている。
【0020】
上述のエンジン11はシリンダブロック20、シリンダヘッド21、シリンダヘッドカバー22およびオイルパン23を有し、この実施例では、レシプロエンジン(詳しくは、直列4気筒エンジン)を縦置き配置している。
【0021】
上述のダッシュロアパネル14の後端部には車室のフロアを形成するフロアパネル24が設けられるが、上述のエンジン11はそのエンジン回転軸としてのクランクシャフトの軸芯線25が車室13のフロアパネル24の高さよりも高い位置に配設されている。
【0022】
また、上述のエンジン11の後部には、フロアパネル24のトンネル部26の車外側に位置するようにトランスミッション27が接続され、エンジン11とトランスミッション27とでパワートレイン28を構成し、上述のエンジン11によりトランスミッション27、プロペラシャフトおよびリヤディファレンシャル装置を介して後輪29(図1、図2参照)を駆動すべく構成している。
【0023】
上述のダッシュロアパネル14の上部にはカウルアッパパネル30と、カウルロアパネル31と、を接合して車幅方向に延びる閉断面32構造のカウル部33(車体剛性部材)が設けられており、カウル閉断面32の上部にはフロントウインド8を取付けている。
【0024】
さらに、上述のダッシュロアパネル14とインストルメントパネル34との間には、可及的エンジン11に近接するように空調ユニット35を配設する一方、図3、図4に示すように、上述のカウル部33の車両後方近傍には車幅方向に延びて左右のヒンジピラー36,36を連結し、かつ上述のインストルメントパネル34を支持するインパネメンバ37を設けている。ここで、上述のインパネメンバ37は空調ユニット35と車両前後方向に重複した位置に設けられている。また、上述のヒンジピラー36は車体両側部のドア開口部6を開閉するドア5の前部を支持するための剛性部材である。なお図1、図2、図3において38は前輪である。
【0025】
ところで、上述のダッシュロアパネル14は、図3に示すように、その車幅方向中央部14aが同パネル14の両側部つまり乗員に対応する位置の一般面14bよりも車両後方に凹設されて、この中央部14aの前部にエンジン配設空間39を形成し、このエンジン配設空間39内にエンジン11の後端部11Rを配設して、重量物としてのエンジン11を可及的車両の前後方向の中央部に配設すべく構成し、図3に仮想線βで示す従来のエンジンのレイアウト位置に対して、この実施例のエンジン11のレイアウト位置を実線で示すように、後方にレイアウトして、セントラルミッドシップ化を達成し、ヨー慣性モーメントの低減を図って、操縦安定性を向上させ、かつエンジン11を後退配置したことにより、車両前部にクラッシャブルスペースを確保するように構成している。
【0026】
上述のダッシュロアパネル14のエンジン配設空間39と上下方向に対応するように、カウルアッパパネル30とカウルロアパネル31とを備えたカウル部33の車幅方向の中間部にも図4に示す如く凹部40を形成している。
【0027】
図4、図5において上述のヒンジピラー36の下部には車両側部にあって車両の前後方向に延びるサイドシル41を取付けている。
このサイドシル41は、フロアパネル24の端部が接合されるサイドシルインナ42と、サイドシルアウタ43とを有して、車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面44を備えた剛性部材である。
【0028】
上述のヒンジピラー36の車内側上部には略三角形状のサイドヒンジパネル45を接合し、このサイドヒンジパネル45の後方延出部45aには、インナパネル46とアウタパネル47とから成る閉断面構造のフロントピラー48を接合している。
【0029】
このフロントピラー48は、ヒンジピラー36よりも後方にオフセットされ、かつ上方に延びてフロントウインド8を支持する剛性部材であって、上述のサイドヒンジパネル45より上方に延びた部分により図1、図2で示した縦辺部9が構成されている。
また、上述のフロントピラー48の下端部はヒンジピラー36の後側面に当接されている。
【0030】
図5に示すように、ヒンジピラー36,36間に車幅方向に延びて張架されるインパネメンバ37の左右両端部には取付け用のブラケット49,49が一体的に設けられ、これら左右の各ブラケット49の対向面つまり車内側の面には予め複数のナット50…が溶接固定されている。
【0031】
これらの各ナット50の位置と対応するように上述のサイドヒンジパネル45およびヒンジピラー36には複数のボルト挿通孔51,52が形成され、車両外方から各ボルト挿通孔52,51を介してナット50にボルトを締付けることで、左右のヒンジピラー36,36間にインパネメンバ37を張架すべく構成している。
【0032】
上述のインパネメンバ37の後方に並設されて左右のフロントピラー48,48間を接続して車幅方向に延びるピラー間メンバ53を設けている。
このピラー間メンバ53および上述のインパネメンバ37は金属丸パイプにより構成され、上述のピラー間メンバ53の左右両端部にもインパネメンバ37と同様に取付け用のブラケット54,54が一体的に設けられ、これら左右の各ブラケット54の対向面つまり車内側の面には予め複数のナット55…が溶接固定されている。
【0033】
これらの各ナット55の位置と対応するようにサイドヒンジパネル45の後方延出部45aにおけるフロントピラー48の溶接箇所には該フロントピラー48を隔てたその前後位置に複数のボルト挿通孔56が形成され、車両外方から上述のボルト挿通孔56を介してナット55にボルトを締付けることで、左右のフロントピラー48,48間にピラー間メンバ53を張架すべく構成している。
【0034】
一方、図5に示すように、車両のフロアパネル24に突設されたトンネル部26の上部にはフロア剛性、車体剛性の向上を図るべくトンネルレインフォースメント57(いわゆるハイマウント・バックボーン・フレーム)を設けている。
【0035】
このトンネルレインフォースメント57はトンネル部26に沿って車両の前後方向に延び、このトンネルレインフォースメント57とトンネル部26との間には同方向に延びる2つの閉断面58,58が形成されている。
【0036】
図5に示すように、インパネメンバ37とピラー間メンバ53との間には前後方向に延びて、これら両者37,53を接続する左右一対の前後方向メンバ59,59が設けられている。
【0037】
また、上述のピラー間メンバ53と、トンネル部26上部のトンネルレインフォースメント57と、の間には上下方向に延びて、これら両者53,57を接続する左右一対の第1上下方向メンバ60,60が設けられている。
【0038】
さらに、上述のインパネメンバ37とトンネル部26上部のトンネルレインフォースメント57との間には上下方向に延びて、これら両者37,57を接続する左右一対の第2上下方向メンバ61,61が設けられている。
【0039】
図5に示すように、上述の前後方向メンバ59、第1上下方向メンバ60および第2上下方向メンバ61は、車幅方向にトンネルレインフォースメント57の車幅方向の長さに相当する所定間隔を隔てて、それぞれ左右一対設けられたものである。
【0040】
また、上述の第1および第2の各上下方向メンバ60,61の下端部には図6に示すように、金属パイプ部材を偏平に加工した取付け部60a,61aが一体形成される一方、トンネルレインフォースメント57の裏面には予めナットが溶接固定されており、ボルト62,63を取付け部60a,61aを介して上述のナットに締付けることにより、各上下方向メンバ60,61を車体に対して後付け固定するように構成している。
【0041】
図7、図8、図9は各メンバ37,53,59,60,61が設けられた前部車体構造の中央部断面、運転席側の断面、助手席側の断面を示す。
図7に示す中央部の断面図において、熱交換器としてのエバポレータ64とヒータコア65とを有する空調ユニット35と、インストルメントパネル34におけるフロントウインド8の傾斜下部対向位置に設けられたデフロスタ吹出口66との間を、デフダクト67で連通接続している。
【0042】
また、インストルメントパネル34における乗員対向位置に設けられたセンタベント吹出口68と、空調ユニット35の所定部との間を、センタベントダクト69で連通接続している。
【0043】
さらに、空調ユニット35よりも後方で、かつセンタベントダクト69およびピラー間メンバ53よりも下方位置には、オーディオユニット70を設け、その操作表示部71を車室13側に露呈されている。
【0044】
図8に示す運転席側の断面図において、インストルメントパネル34にはメータフード72を一体形成し、このメータフード72の下部にはメータユニット73を設ける一方、前述のインパネメンバ37を上下から挟持する2つ割り構造のインパネ支持ブラケットとしてのアッパブラケット74およびロアブラケット75を設け、これらブラケット74,75によりステアリング装置76を支持すべく構成している。
【0045】
上述のステアリング装置76はステアリングシャフト77、ステアリングコラム78、ステアリングホイール79およびチルト支点80を有する支持ブラケット81を備え、ステアリングホイール79以外の部分はコラムカバー82で覆われている。
【0046】
上述のロアブラケット75の下部前側にはチルト支点80を介して支持ブラケット81に連結されるフロントブラケット83が取付けられ、ロアブラケット75の下部後側にはステアリングコラム78を支持するリヤブラケット84が取付けられている。
さらに、上述のステアリング装置76の下方部にはサイドベントダクト85が配設されている。
【0047】
図9に示す助手席側の断面図において、インパネメンバ37とビラー間メンバ53との間に対応するインストルメントパネル34の内面側には助手席エアバッグ装置86が配設されている。
【0048】
このエアバッグ装置86はハウジング87内に、バッグ88と、このバッグ88を展開させるためのインフレータ89とを備え、インストルメントパネル34の所定部には脆弱部34aが形成されている。
【0049】
また、上述のエアバッグ装置86の下方部には開閉可能なグローブリッド90を備えたグローブボックス91が配設されている。
そして、前述のデフダクト67はインパネメンバ37とエアバッグ装置86との間に配設され、前述のサイドベントダクト85はピラー間メンバ53とグローブボックス91との間に配設されている。
【0050】
さらに、ダッシュロアパネル14の一般面14bとグローブボックス91との間には、ブロアユニットと空調ユニット35との間を接続するダクトスペースまたはクーラユニットスペースとなるスペース92が形成されている。
【0051】
このように図1〜図9で示した実施例の車両の前部車体構造は、車体両側部のドア開口部6を開閉するドア5の前部が支持されるヒンジピラー36と、左右のヒンジピラー36,36間に車幅方向に延びて設けられ、インストルメントパネル34を支持するインパネメンバ37とを備えた車両の前部車体構造であって、上記ヒンジピラー36より後方にオフセットされ、かつ上方に延びてフロントウインド8を支持するフロントピラー48が設けられ、上記インパネメンバ37の後方に並設されて上記両フロントピラー48,48間を接続して車幅方向に延びるピラー間メンバ53を備えたものである。
この構成によれば、ヒンジピラー36,36間に設けられたインパネメンバ37と、このインパネメンバ37に並設されてフロントピラー48,48間に設けられたピラー間メンバ53とにより、車体剛性の大幅な向上を図ることができ、特に、ヒンジピラー36に対して後方にオフセットされた位置にフロントピラー48が存在するようなオープンカーの車体剛性向上に有効となる。
【0052】
また、上記インパネメンバ37と、上記ピラー間メンバ53と、を前後方向に接続する前後方向メンバ59を備えたものである。
この構成によれば、上述の前後方向メンバ59により車体剛性のさらなる向上を図ることができる。
【0053】
さらに、上記ピラー間メンバ53と車両のフロアパネル24に突設されたトンネル部26とを上下方向に接続する第1上下方向メンバ60を備えたものである。
この構成によれば、上述の第1上下方向メンバ60により車体剛性のさらなる向上を図ることができる。
【0054】
加えて、上記インパネメンバ37と車両のフロアパネル24に突設されたトンネル部26とを上下方向に接続する第2上下方向メンバ61を備えたものである。
この構成によれば、上述の第2上下方向メンバ61により車体剛性のさらなる向上を図ることができる。
【0055】
また、上記前後方向メンバ59、第1上下方向メンバ60および第2上下方向メンバ61のうちの少なくとも1つは車幅方向に所定間隔を隔てて左右一対設けられたものである。
この構成によれば、前後方向メンバ59、第1上下方向メンバ60または/および第2上下方向メンバ61を左右一対設けるので、車体剛性をより一層向上させることができる。
【0056】
しかも、上記フロントウインド8の後部縦辺部は車室13の側方にラウンドして回り込み、上記ドア開口部6の前辺部より後方に配置されたものである。
【0057】
この構成によれば、フロントウインド8の後部縦辺部を車室13の側方にラウンドして回り込ませたので、従前の三角窓を省略することができ、これにより前方視界の向上を図ることができ、また車室デザイン要求を満たすことができる。
【0058】
図10は車両の前部車体構造の他の実施例を示し、第2上下方向メンバ61と、前後方向メンバ59と、の間に偏平に加工された取付け部93を有し、前後方向メンバ59と第1上下方向メンバ60との間に偏平に加工された取付け部94を有する1つの金属パイプ部材95にて各メンバ61,59,60を一体化したものである。
また、インパネメンバ37とピラー間メンバ53とには、予めナット97,97を備えたブラケット96,96が溶接固定されていて、上述の取付け部93,94をボルト98,98を用いて上述のブラケット96,96に固定すべく構成したものである。
このように構成すると、各メンバ59,60,61の一体化が図れ、部品点数の削減を達成することができる。
【0059】
この図10に示す実施例においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様であるから、図10において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0060】
図11〜図14は車両の前部車体構造のさらに他の実施例を示し、カウル閉断面32(図3参照)を形成するカウルロアパネル31の後部縦壁31aに、インパネメンバ37を配置するために車幅方向に延びる凹部31bを形成し、運転席側と助手席側とに設ける支持ブラケット99,100を用いて、上述のインパネメンバ37を、フロントウインド8の下辺部を支持する閉断面状のカウルボックスつまりカウル部33の閉断面外側面に取付けたものである。
【0061】
すなわち、上述の後部縦壁31aのカウル閉断面32内には図13、図14に示すように予めナット101を溶接固定し、カウル閉断面32の外方からボルト102を上述のナット101に締付けることにより支持ブラケット99,100にて、インパネメンバ37をカウル部33の外側面に取付けたものである。
【0062】
ここで、運転席側の支持ブラケット99は、図13に示すようにフロントブラケット83およびリヤブラケット84が一体化された支持部99aと一体に形成され、図8の構成に対して部品点数の低減を図ることができると共に、このブラケット99はカウル閉断面32に直接取付けたので、インパネ支持剛性およびステアリング支持剛性が向上する。
【0063】
しかも、図12、図13、図14と図7、図8、図9との比較からも明らかなように、インパネメンバ37をカウル部33の外側面に取付けると、このインパネメンバ37の配設位置が相対的に前部位置となって、空調ダクトの大きさを含めてインストルメントパネル34内に配置される各種部品のレイアウトの自由度が向上するものである。
【0064】
このように、図11〜図14で示した実施例においては、上記インパネメンバ37はフロントウインド8の下辺部を支持する閉断面状32のカウルボックス(カウル部33参照)外側面に取付けられたものである。
この構成によれば、カウルボックス(カウル部33参照)の外側面にインパネメンバ37を取付けたので、カウル剛性および車体剛性の向上を図ることができると共に、インストルメントパネル34内の各種部品のレイアウトの自由度の拡大を図ることができる。
【0065】
この図11〜図14で示した実施例においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例とほぼ同様であるから、図11〜図14において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0066】
図15〜図19は、車両の前部車体構造のさらに他の実施例を示すものである。
先の各実施例においてはインパネメンバ37として金属丸パイプ製のものを用いたが、図15〜図19に示すこの実施例においては、インパネメンバ37としてパネル状のものを用い、このインパネメンバ37をカウル閉断面32内のカウルロアパネル31における後部縦壁31aに接合し、このインパネメンバ37とカウルロアパネル31との間に車幅方向に延びる閉断面103を形成して、このインパネメンバ37をカウル部33と一体化したものである。
このため、カウル部33には車幅方向に延びる2重の閉断面32,103が形成される。
【0067】
また、前後方向メンバ59および第2上下方向メンバ61のカウル部33に対する取付け端部には、それぞれ接合フランジ104,104を一体的に設け、予めカウル部33内に溶接固定されたナット101(図18参照)に対してボルト102を締付けることで、各メンバ59,61とカウル部33とを固定すべく構成している。
さらに、支持ブラケット99(図18参照)も同様にボルト102、ナット101を用いてカウル部33に直接固定している。
【0068】
しかも、図15に示すカウル部33の凹部40を形成すべく、図16に示す如くカウルアッパパネル30およびカウルロアパネル31には凹部30c,31cを凹設し、これら各凹部30c,31cには複数の取付け部30d,30dを一体形成している。
【0069】
また、上述の凹部40を車幅方向に連結する補強パネル105を設け、この補強パネル105には上述の各取付け部30d,31dを対応する取付け部105dを一体形成している。
【0070】
そして、カウルロアパネル31の取付け部31d下面に予めナットを溶接固定し、補強パネル105の取付け部105d、カウルアッパパネル30の取付け部30d、カウルロアパネル31の取付け部31dに上下方向に一致すべく形成されたボルト挿通孔に対して上方からボルトを挿通させ、このボルトを上述のナットに締付けることで、補強パネル105により凹部40を車幅方向に連結すると共に、該補強パネル105を着脱可能に構成している。
【0071】
上述の補強パネル105を設けることにより、カウル部33の剛性向上を図ることができ、しかも該補強パネル105を着脱構造に成すことにより、エンジン11の点火プラグやエンジンルーム12内の他の補機に対するメンテナンス性、サービス性の向上を図ることができる。
【0072】
このように、図15〜図19で示した実施例においては、上記インパネメンバ37はフロントウインド8の下辺部を支持する閉断面状(カウル閉断面32参照)のカウルボックス(カウル部33参照)と一体化されたものである。特に、この実施例ではインパネメンバ37をカウル閉断面32内に設けたものである。
この構成によれば、インパネメンバ37とカウルボックス(カウル部33参照)とを一体化したので、車体剛性の向上を図ることができると共に、インパネメンバ37の配設位置により、インストルメントパネル34内の空調ダクトや他の部品のレイアウトの自由度をより一層拡大することができる。
【0073】
この図15〜図19で示した実施例においても、その他の構成、作用、効果については先の実施例ほぼ同様であるから、図15〜図19において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0074】
図20は、車両の前部車体構造のさらに他の実施例を示し、カウル閉断面32内におけるカウルロアパネル31の後部縦壁31aにハイドロフォーム成形品によるインパネメンバ106を接合して、このインパネメンバ106を車幅方向に延出させたものである。
また、この実施例では支持ブラケット99取付け用のボルト102を取付けるために、インパネメンバ106には予めナット部材107を固定している。
【0075】
このようにインパネメンバ106としてハイドロフォーム成形によるパイプ部材を用いると、成形性がよく、軽量で、しかも剛性を有するインパネメンバと成すことができるので、カウル剛性および車体剛性の向上を図ることができる。
【0076】
この図20で示した実施例においても、その他の構成、作用、効果については図15〜図19で示した先の実施例とほぼ同様であるから、図20において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0077】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の車両は、実施例のオープンカーに対応し、
以下同様に、
ドア開口は、ドア開口部6に対応し、
カウルボックスは、カウル部33に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0078】
【発明の効果】
この発明によれば、左右のヒンジピラーより後方にオフセットされ、かつ上方に延びてフロントウインドを支持するフロントピラーを設けると共に、インパネメンバの後方には両フロントピラー間を接続して車幅方向に延びるピラー間メンバを設け、上記フロントピラーの下端部は、上記ピラー間メンバよりも低い位置で上記ヒンジピラーの後側面に当接させることで、上記インパネメンバと並設されたピラー間メンバにて車体剛性の大幅な向上を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の前部車体構造を備えた車両の斜視図。
【図2】 可動ルーフを取外した状態で示す車両の斜視図。
【図3】 前部車体構造を示す側面図。
【図4】 図3の要部の斜視図。
【図5】 図4の要部の分解斜視図。
【図6】 図5の部分側面図。
【図7】 中央部の断面図。
【図8】 運転席側の断面図。
【図9】 助手席側の断面図。
【図10】 他の実施例を示す部分側面図。
【図11】 前部車体構造のさらに他の実施例を示す要部の斜視図。
【図12】 中央部の断面図。
【図13】 運転席側の断面図。
【図14】 助手席側の断面図。
【図15】 前部車体構造のさらに他の実施例を示す要部の斜視図。
【図16】 ダッシュパネルとカウル部の分解斜視図。
【図17】 中央部の断面図。
【図18】 運転席側の断面図。
【図19】 助手席側の断面図。
【図20】 前部車体構造のさらに他の実施例を示す運転席側の断面図。
【符号の説明】
5…ドア
6…ドア開口部
8…フロントウインド
13…車室
24…フロアパネル
26…トンネル部
32…カウル閉断面図
33…カウル部(カウルボックス)
34…インストルメントパネル
36…ヒンジピラー
37…インパネメンバ
48…フロントピラー
53…ピラー間メンバ
59…前後方向メンバ
60…第1上下方向メンバ
61…第2上下方向メンバ
106…インパネメンバ
Claims (8)
- 車体両側部のドア開口を開閉するドアの前部が支持されるヒンジピラーと、
左右のヒンジピラー間に車幅方向に延びて設けられ、インストルメントパネルを支持するインパネメンバとを備えた車両の前部車体構造であって、
上記ヒンジピラーより後方にオフセットされ、かつ上方に延びてフロントウインドを支持するフロントピラーが設けられ、
上記インパネメンバの後方に並設されて上記両フロントピラー間を接続して車幅方向に延びるピラー間メンバを備え、
上記フロントピラーの下端部は、上記ピラー間メンバよりも低い位置で上記ヒンジピラーの後側面に当接している
車両の前部車体構造。 - 上記インパネメンバと上記ピラー間メンバとを前後方向に接続する前後方向メンバを備えた
請求項1記載の車両の前部車体構造。 - 上記ピラー間メンバと車両のフロアパネルに突設されたトンネル部とを上下方向に接続する第1上下方向メンバを備えた
請求項1または2記載の車両の前部車体構造。 - 上記インパネメンバと車両のフロアパネルに突設されたトンネル部とを上下方向に接続する第2上下方向メンバを備えた
請求項1〜3の何れか1に記載の車両の前部車体構造。 - 上記前後方向メンバ、第1上下方向メンバおよび第2上下方向メンバのうちの少なくとも1つは車幅方向に所定間隔を隔てて左右一対設けられた
請求項4記載の車両の前部車体構造。 - 上記インパネメンバはフロントウインドの下辺部を支持する閉断面状のカウルボックス外側面に取付けられた
請求項1〜5の何れか1に記載の車両の前部車体構造。 - 上記インパネメンバはフロントウインドの下辺部を支持する閉断面状のカウルボックスと一体化された
請求項1〜5の何れか1に記載の車両の前部車体構造。 - 上記フロントウインドの後部縦辺部は車室の側方にラウンドして回り込み、上記ドア開口の前辺部より後方に配置された
請求項1〜7の何れか1に記載の車両の前部車体構造。
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