JP4103075B2 - トーションビーム式サスペンション構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は左右のトレーリングアームをトーションビームで連結したサスペンション構造であり、スタビライザーの形状と取付に特徴を有するトーションビーム式サスペンション構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
図9及び図10は、通常のトーションビーム式サスペンションを採用したスタビライザーを示し、図9はその平面図であり、図10は側面図である。
図に示すように、左右(図は左側のみ示す)に設けられているトレーリングアーム51は、車両に対して前端部にトレーリングアームブラケット52を設け、後端部はキャリアー53を介してタイヤを支持するドラム56が取付けられている。そして、左右のトレーリングアーム51を断面が略U字形状のトーションビーム54で連結し、これらの連結部を溶接により接合している。また、トーションビーム54の内側にはスタビライザー55を設け、スタビライザー55はトレーリングアーム51に溶接で取付け、スタビライザー55のロール剛性を高めるという本来の役割を果たしている。
また、図11に示すトレーリングアーム61とトーションビーム62の連結部のように、ガゼット(補強用鉄板)63をトレーリングアーム61とトーションビーム62に溶接し、スタビライザー64を溶着する構造もある。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−171321号(段落[0002]、図4参照)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述のトーションビーム式サスペンションにおいては、このスタビライザーの溶接部付近が最弱部となる。
その理由は、トーションビーム式サスペンションにおいては、スタビライザーはビームの内側を直線的に延び、その両先端部が、ガセットあるいはトレーリングアームの両端部に固定されている。したがって、スタビライザーのトーションビームあるいはトレーリングアームへの連結点は、トーションビームのU字断面の内側(内面)に位置している。一般にU字断面を有する長手部材の剪断中心は、その断面の閉じ側(一般的には外側)に存在する。よって、トーションビーム式サスペンションにおいては、スタビライザーとトーションビームの連結部が、トーションビームの剪断中心から離れた位置に設けられていることになる。
【0005】
このため、トーションビームに捩り変形が生じた場合、トーションビーム両端におけるスタビライザーとの連結部には、剪断中心を中心とする互いに異なる方向へ回転変位が生ずる。この結果、これらの連結部にスタビライザーの引っ張り方向への荷重が作用し、連結部に材料の疲労等が生じて、トーションビームアクスルの耐久性が低下してしまう。また、スタビライザーを溶接しているので、スタビライザーの有無やスタビライザーの径により、応力や応力集中部位が大きく変化してしまうので、その仕様ごとに各強度耐久テストを実施しなければならず、開発工数や確認工数が多くとられてしまう。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、取付剛性の大きなトーションビーム式サスペンション構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明トーションビーム式サスペンション構造は、車体にブッシュを介して揺動自在に支持されている左右一対のトレーリングアームと、車幅方向に延在し前記左右一対のトレーリングアームをそれらの車両前後方向中間部で連結する断面 略U字形状のトーションビームと、前記トーションビームに沿って配設されたスタビライザーとを備えたトーションビーム式サスペンション構造において、
前記スタビライザーは、前記トーションビームの開口部に沿って配置された車幅方向中央部と、該中央部の両側から車両前方に向かって延びる先端部とを有し、前記中央部の両側が、前記トーションビームの両端部内面に固定されたガゼットに取付けられ、かつ、前記スタビライザーの先端部が、前記トレーリングアームの揺動支軸をなすボルトで軸回りの回動を許容した状態で共締めされている。
また、前記スタビライザー先端部の取付孔にゴムブッシュが設けられ、該ゴムブッシュを介して前記ボルトで共締めされていても良い。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態によるトーションビーム式サスペンション構造について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明のトーションビーム式サスペンション構造の平面図であり、図2はその側面図である。なお、図中の前後は車体に対する方向であり、他図も同様である。
図1及び図2に示す符号1は、サスペンションアームとしてのトレーリングアームであり、このトレーリングアーム1は車体の両側部に設けられ、トレーリングアーム1の前端側で車幅方向に延在するトーションビーム2で連結されている。トレーリングアーム1の後端部はキャリアー3を取付け、キャリアー3によりドラム4が支持されている。なお、ドラム4にはタイヤが装着される。
【0009】
また、トレーリングアーム1の内側には、車体の中央側に突出する支持ピン6が設けられ、ショックアブソーバ7の下端部が支持され、ショックアブソーバ7の上端側は車体側を支持する。
トーションビーム2は横断面、すなわち車体の前後方向における形状がU字形(V字形)等の一方に開口8を有する形状であり、本実施の形態では、開口8はほぼ下側に向けて配設されている。トーションビーム2の端部は、図3に示すように、トレーリングアーム1の外周面形状に対応させた半円形状の円弧部9を、溶接によりトレーリングアーム1に取付けている。
【0010】
トーションビーム2の端部側内面にはガゼット12を配設し、ガゼット12はトーションビーム2の内面aとトレーリングアーム1の外周面bに溶接で固定されている。また、内周cにおいても、トーションビーム2とガゼット12が溶接されている。
トレーリングアーム1の前端部は、円断面を有するゴムブッシュ5を設け、自動車の車体側に取付けられるトレーリングブラケット10にボルト11により固定される。
【0011】
トーションビーム2に沿ってスタビライザー13が配設され、スタビライザー13は車両の中央付近ではトーションビームのU字断面の開口部よりも内側をとおる。そして、スタビライザー13の端部側は、トーションビーム2の端部側のトレーリングアーム1の近傍に配設した図3に示すガゼット12部に組み付けられる。すなわち、図2に示すように、スタビライザー13をガゼット12とスタビライザーマウント14との間に挟み込み、断面がハット形状のスタビライザー取付用のブラケット19を介して、図3に示すようにガゼット12に設けた溶接ナット20にボルト15が締結して取付けられる。
【0012】
スタビライザー13の先端部16は、ガゼット12よりも車体の外側でほぼ直角に湾曲形成して曲がり、図4および図5に示すように、トレーリングアーム1に沿って車両前方側へトレーリングアーム1のゴムブッシュ5の側面まで延びており、該先端部16に設けた取付孔17において、トレーリングアーム1のゴムブッシュ5を車体に固定するトレーリングブラケット10に止めるボルト11で共締めされている。実施例では、スタビライザー13の先端部16は、図6のA及びBに示す一対の樹脂製ブッシュ(カラー)18,18で、先端部16を挟み込むようにして車体に組付けられている。なお、スタビライザー13は、ゴムブッシュ5を介してトレーリングブラケット10に共締めされるので、回転方向の自由度を失っていない。
【0013】
図7は、図4に示したスタビライザー13の変形例である。なお、図7中にない部材は、図1と同様の符号を付して説明し、同一部材には同一符号を付して説明する。
図7に示すスタビライザー21は、図4に示すスタビライザー13と同様に、中間部はトーションビーム2の内面側に配設され、トレーリングアーム1まで延び、ガセット12にボルト15で組付けられている。スタビライザー21の先端部22は、ゴムブッシュ5まで延びているが、この先端部22に形成された取付孔23には、ゴムブッシュ24が設けられており、このゴムブッシュ24を介して、トレーリングブラケット10に止めるボルト11により、ゴムブッシュ5と共締めされている。なお、スタビライザー13は、トレーリングアーム1のゴムブッシュ5に、スタビライザー13のゴムブッシュ24を介してトレーリングブラケット10に共締めされるので、回転方向の自由度を失っていない。
【0014】
本実施の形態(スタビライザーの変形例を含む)では、このようなトーションビーム式サスペンション構造を採用したので、下記のようなメリットがある。
スタビライザー13,21をガセット12にボルト15で組付けているので、トーションビーム2の耐久性が影響を受けず耐久強度を大幅に向上できる。スタビライザー13,21の有無や仕様(径)ごとの耐久性の確認が不要なため、開発、確認事項が大幅に削減でき、開発から量産までの時間を短縮できる。
【0015】
スタビライザー13,21の先端部16,22を、トレーリングアーム1をトレーリングブラケット10に組付けるボルト11により、トレーリングアーム1のゴムブッシュ5と共締めしているので、上述した特許文献1と比較して、部品点数、コストを削減できる。すなわち、スタビライザージョイントが不要であり、スタビライザージョイントを止めるナットや車体側のブラケットも不要である。
スタビライザーのトーションビームへの取り付け位置が、平面視でトーションビームの外側よりに取付け、側面視でトーションビーム付近に位置させているので、左右のホイールストロークの差によるスタビライザーの捩れる割合(効率)が良くなる。すなわち、その取付位置がトレーリングアーム1のゴムブッシュ5の外筒付近にないので、スタビライザーの効率が良くなる。
【0016】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることなく本発明の技術的思想に基いて種々の変形及び変更が可能である。
【0017】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のトーションビーム式サスペンション構造によれば、車体にブッシュを介して揺動自在に支持されている左右一対のトレーリングアームと、車幅方向に延在し前記左右一対のトレーリングアームをそれらの車両前後方向中間部で連結する断面略U字形状のトーションビームと、前記トーションビームに沿って配設されたスタビライザーとを備えたトーションビーム式サスペンション構造において、前記スタビライザーは、前記トーションビームの開口部に沿って配置された車幅方向中央部と、該中央部の両側から車両前方に向かって延びる先端部とを有し、前記中央部の両側が、前記トーションビームの両端部内面に固定されたガゼットに取付けられ、かつ、前記スタビライザーの先端部が、前記トレーリングアームの揺動支軸をなすボルトで軸回りの回動を許容した状態で共締めされているので、トーションビームの耐久性にスタビライザーの有無や仕様の違いに影響が少なく、部品点数とコストの軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態によるトーションビーム式サスペンション構造の平面図である。
【図2】図1のトーションビーム式サスペンション構造の側面図である。
【図3】図1のトーションビームとトレーリングアームの接合部の拡大図である。
【図4】図1のトレーリングアームの一端部が、車体側に取付けられる部位のトレーリングアームのブッシュの拡大断面図である。
【図5】図4のトレーリングアームの先端部にトレーリングアームと共締めされるスタビライザーの拡大図である。
【図6】Aは、図5に示すスタビライザーの先端部に取付けられる樹脂ブッシュの平面図であり、Bは樹脂ブッシュの側面図である。
【図7】図4に対応させた、図4のスタビライザーの先端部のみが異なるスタビライザーの変形例の拡大断面図である。
【図8】図7のトレーリングアームの先端部にトレーリングアームと共締めされるスタビライザーの拡大図である。
【図9】従来例によるトーションビーム式サスペンション構造の平面図である。
【図10】図9のトーションビーム式サスペンション構造の側面図である。
【図11】図9のトーションビームとトレーリングアームの接合部の拡大図である。
【符号の説明】
1 トレーリングアーム
2 トーションビーム
5 ゴムブッシュ(トレーリングアーム用)
8 開口
12 ガゼット
13,21 スタビライザー
16,22 先端部
18 樹脂製ブッシュ
24 ゴムブッシュ(スタビライザー用)
Claims (2)
- 車体にブッシュを介して揺動自在に支持されている左右一対のトレーリングアームと、車幅方向に延在し前記左右一対のトレーリングアームをそれらの車両前後方向中間部で連結する断面略U字形状のトーションビームと、前記トーションビームに沿って配設されたスタビライザーとを備えたトーションビーム式サスペンション構造において、
前記スタビライザーは、前記トーションビームの開口部に沿って配置された車幅方向中央部と、該中央部の両側から車両前方に向かって延びる先端部とを有し、前記中央部の両側が、前記トーションビームの両端部内面に固定されたガゼットに取付けられ、かつ、前記スタビライザーの先端部が、前記トレーリングアームの揺動支軸をなすボルトで軸回りの回動を許容した状態で共締めされていることを特徴とするトーションビーム式サスペンション構造。 - 前記スタビライザー先端部の取付孔にゴムブッシュが設けられ、該ゴムブッシュを介して前記ボルトで共締めされていることを特徴とする請求項1に記載のトーションビーム式サスペンション構造。
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