JP4102866B2 - 歯車の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車や産業機械などの変速機に用いられる歯車の製造技術に係わり、特に高面圧下の過酷な条件で使用される歯車に好適な歯車の製造方法に関するするものである。
【0002】
【従来の技術】
歯車などの高面圧部材用の材料としては、従来、JIS G4104に規定されるクロム鋼SCr420や、JIS G 4105に規定されるクロムモリブデン鋼SCM420などが用いられており、これら材料に浸炭焼入れ焼戻し処理を施して使用されている。
【0003】
近年、歯車は、適用される機械装置類や自動車などの高性能化、小型化などに伴って使用条件が過酷になってきており、歯車にかかる負荷応力が大きなものとなっている。このため、浸炭焼入れ焼戻し後にショットピーニング処理を施し、歯元疲労強度を高めてから、歯面研削をすることによって面疲労強度を高めるようにしている。
【0004】
しかし、上記のような材料および熱処理によって製造された従来の歯車においては、ヘルツ面圧で2200MPaを超えるような高面圧を受ける過酷な環境下では、噛み合い中に繰り返し加わる面圧およびすべりによって、歯面の表面あるいは表面近傍部より疲労亀裂が発生し、ピット状の剥離が生じるピッティングや、歯面の金属接触による摩耗(スコーリング)や、転動疲労による硬化層内部から剥離するスポーリングなどの歯面損傷が発生することにより、十分な歯車寿命が得られない場合がかなりあった。
【0005】
そして、このような歯面損傷への対応策としては、浸炭処理時のカーボンポテンシャルを高めに設定することによって表面に微細な炭化物を析出分散させる過共析浸炭や、素材鋼の合金成分の調整、あるいは浸炭窒化によるNの浸入などによってMs点を低下させ、表面層に残留オーステナイトを多量に形成し、噛み合い接触時の面圧による残留オーステナイトのマルテンサイト変態に伴う硬化を利用する方法や、二硫化モリブデンなどの個体潤滑被膜の形成により、噛み合いによる接触応力、摩擦力を緩和する方法などがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら従来の方法では、浸炭処理に長時間を要したり、熱処理歪みが増大したり、表面への炭化物分散による靭性の低下や研削加工性の悪化を来たしたり、安定した残留オーステナイト量を確保するための品質管理が難しかったり、処理コストが増大したりする割には、面疲労強度がさほど向上せず、このような問題点を解決することが上記のような高面圧歯車における課題となっていた。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、従来の高面圧歯車における上記課題に鑑みてなされたものであって、ピッティング、スコーリング、スポーリングといった歯面損傷を防止することができ、優れた面疲労強度を備えた歯車を得ることができる歯車の製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係わる歯車の製造方法は、請求項1ないし4に記載しているように、質量比で、C:0.10〜0.30%、Si:0.05〜0.80%、Mn:0.20〜1.50%、Cr:0.85〜2.21%、Al:0.010〜0.040%、N:0.005〜0.030%を含有し、必要に応じて、Mo:0.05〜0.70%,V:0.05〜0.50%,W:0.05〜0.70%から選ばれる少なくとも1種、さらに必要に応じてB:0.0005〜0.005%,Nb:0.01〜0.10%,Ti:0.01〜0.10%から選ばれる少なくとも1種を含有し、残部Fe及び不可避不純物から成る素材鋼に過共析浸炭焼入れ焼戻し処理、すなわち表面C濃度が0.9〜2.0%となるように浸炭したのち、700℃以下に5分以上冷却後、再度800℃以上に加熱する処理を少なくとも1回実施して焼入れ焼戻しを行い、表層における炭化物の平均粒径を0.16〜0.33μm、炭化物の面積率を5.4〜8.1%としたのち、歯面を研削し、さらにショットピーニングを施す構成としたことを特徴としており、歯車の製造方法におけるこのような構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0009】
本発明に係わる歯車の製造方法の実施形態として請求項5に係わる製造方法においては、ショットピーニング処理に際して、エアーノズルを用いると共に、投射エアー圧力を0.3〜0.8MPaとし、平均粒径が150μm以下、硬さが700Hv以上の微粒子をショット粒として用いる構成とし、同じく実施形態として請求項6に係わる歯車の製造方法においては、歯面研削処理に際して、ピッチ点における研削量を0.2mm以下、研削後の歯面粗さをRaで0.5μm以下とするようにしている。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明者は、ピッティングやスコーリングなどといった歯面損傷が歯車素材の表層部における焼戻し軟化抵抗に関係が深いことに着目し、高面圧下、特にヘルツ面圧が2200MPaを超えるような高面圧下では、歯車同士の噛み合いによって歯面の表層部が250℃以上もの高温になることもあることを踏まえて種々の調査を行った結果、材料と共に、熱処理および加工方法を最適化することによって、250℃焼戻し処理後の歯面の最表層硬さを高めることで、ピッティング寿命および耐摩耗性を高めることができることを見出した。
【0012】
しかし、浸炭焼入れ焼戻し後にショットピーニング処理を施した場合には、最表層硬さを高めることができるが、歯面が荒れるために油膜が切れ易く、ピッティング強度が向上しない。一方、ショットピーニング処理後に研削する工程を採用すると、最も硬化した最表層が除去されてしまうために面疲労強度が向上しないことになる。本発明に係わる歯車の製造方法においては、このような問題を製造条件により解消して、優れた面疲労強度を備えると共に、耐摩耗性にも優れた歯車を得るようにしている。
【0013】
以下に、本発明における各種数値範囲、すなわち素材鋼の成分組成、熱処理および加工条件などの限定理由について説明する。
【0014】
C:0.10〜0.30質量%
Cは、歯車の芯部硬さを確保するために必要な元素であり、この芯部硬さを得るためには0.10%以上、望ましくは0.15%以上含有することが必要である。しかし、過剰に添加すると素材の被削性や靭性を低下させるので、その上限を0.30%とする。
【0015】
Si:0.05〜0.80質量%
Siは、素材鋼のマトリックス中に固溶し、パーライト変態を抑制することによって焼戻し軟化抵抗を向上させる元素である。そして、このような効果を発揮させるには、0.05%以上の添加が必要であり、場合によっては0.40%以上とするのが良い。また、0.80%を超えて添加しても得られる効果が飽和するばかりでなく、冷間鍛造性や被削性の低下を招くことから、その上限を0.8%とする。
【0016】
Mn:0.20〜1.5質量%
Mnは、溶鋼の脱酸・脱硫元素として有効であるので、0.2%以上の添加が必要である。しかし、1.5%を超えて含有すると焼入れ性の増加によって素材の被削性を低下させるので、1.5%以下、場合によっては0.90%以下とする。
【0017】
Cr:0.85〜2.21質量%
Crは、炭化物の形成により、Siと同様に焼戻し軟化抵抗を向上させる重要な元素であるが、0.85%未満では十分な効果が得られないので、0.85%以上の添加が必要である。一方、2.21%を超えて含有すると被削性を低下させると共に、経済性も損なわれるため、2.21%以下とする。
【0018】
Al:0.010〜0.040質量%
Alは、脱酸と結晶粒度の微細化に有効な元素であるため、0.010%以上の添加が必要である。しかし、0.040%を超えると結晶粒度微細化効果が飽和するので、0.040%以下とする。
【0019】
N:0.005〜0.030質量%
Nは、Alと結合して窒化物を生成し、結晶粒度を微細化して鋼の強靭化を図るのに有効な元素であり、このためには0.005%以上添加する必要がある。しかし、0.030%以上添加しても効果が飽和することから、0.030%以下とする。
【0020】
本発明の素材鋼には、上記の必須成分に加えて、Mo,V,W,B,Nb及びTiの元素を必要に応じて含有させることができる。
【0021】
Mo:0.05〜0.70質量%,V:0.05〜0.50質量%,W:0.05〜0.70質量%から選ばれる少なくとも1種
これらの元素は、炭化物形成元素であるので焼戻し軟化抵抗を向上させることができる。このような効果を発揮させるためには、各元素ともそれぞれ0.05%以上添加する必要がある。しかし、多量に添加すると被削性が低下すると共に、浸炭時に炭化物が粗大化して面疲労強度が低下するので、Mo及びWについては0.70%以下、Vについては0.50%以下とする。
【0022】
B:0.0005〜0.005質量%,Nb:0.01〜0.10質量%,Ti:0.01〜0.10質量%から選ばれる少なくとも1種
本発明においては、Bを添加することにより、炭化物が微細化することが確認されている。また、Bは、微量の添加で鋼の焼入れ性を著しく高める。このような効果を得るには、0.0005%以上の添加が必要である。しかし0.005%を超えても効果が飽和してしまうので、0.005%をBの上限とする。さらに、B添加鋼では、Nが存在するとBNとなって焼入れ性が改善されなくなるため、Tiを添加することによりBと結合するNを低減する。Tiによるこのような効果を得るには0.01%の添加が必要である。また、TiやNbは、結晶粒微細化元素であり、このような効果を発揮させるには0.01%の添加が必要である。しかし、多量に添加してもその効果が飽和するので、Nb及びTi添加量はそれぞれ0.01〜0.10%の範囲とする。
【0023】
本発明に係わる歯車の製造方法においては、上記した成分組成の素材鋼に過共析浸炭焼入れ焼戻し処理を施した後、歯面を研削し、さらにショットピーニング処理を施すようにしており、過共析浸炭処理によって表面炭素濃度が高められ、微細な炭化物が生成して焼戻し軟化抵抗が向上することになる。そして、歯面を研削することにより熱処理歪が除去されて歯当たりが改善され、さらにショットピーニングによって歯面に圧縮残留応力が付与され、疲労強度が向上することになる。
【0024】
本発明に係わる歯車の製造方法においては、上記ショットピーニング処理に際して、エアーノズルを用いると共に、投射エアー圧力を0.3〜0.8MPaとし、平均粒径が150μm以下、硬さが700Hv以上の微粒子ショットを用いた微粒子ショットピーニングを施すことができる。
【0025】
微粒子ショットピーニングは、従来歯元曲げ疲労強度を高めるために行っていたハードショットピーニングよりも使用するショット粒が細かいので、表面粗さを悪化させることがなく、これによって油膜を保持することができる。また、最表面に大きな圧縮残留応力を付与することができ、これによってピッティングの発生源である初期の亀裂の開口が防止され、面疲労強度が向上することになる。
【0026】
なお、面疲労強度と同時に歯元曲げ疲労強度を高めるために、過共析浸炭焼入れ焼戻し処理と研削の間に、ハードショットピーニングを施すようにしてもよい。
【0027】
この微粒子ショットピーニングに際しては、エアーノズルを用いてショットを投射することにより高速での噴射が可能となることから、エアーノズル式を用いることが望ましい。このときのエアー圧力は、低すぎると十分な圧縮残留応力や、高い最表面硬さが得難くなることから、0.3MPa以上とすることが望ましい。しかし、0.8MPaを超えても空気抵抗によって失速して効果が飽和する傾向があるため、上限を0.8MPaとする。
【0028】
微粒子ショットピーニングに用いるショット粒は、細かいほど表面粗度を悪化させない。しかも平均粒径150μm以下のショット粒を用いると、歯面研削の砥石による凹凸が取れて平滑化されるようになることから、ショット粒としては150μm以下のものを用いることが望ましい。また、ショット粒の硬さが低い場合には、変形を起こして歯車の歯面に付着する傾向があり、これを防ぐためにはショット粒の硬さを700Hv以上とすることが望ましい。
【0029】
微粒子ショットピーニングに先立つ歯面研削工程においては、ピッチ点における研削量を0.2mm以下、研削後の歯面粗さをRa表示で0.5μm以下とすることが望ましい。すなわち、過共析浸炭処理によって、表層ほど多くの炭化物が析出することになるが、研削量が多い場合には、この焼戻し軟化抵抗が高められた表層部が除去されてしまうためピッティング寿命が低下する。したがって、研削量を0.2mm以下として、過剰な研削を防止しピッティング寿命の低下を避けることが望ましい。また、研削後には、上記のような微粒子ショットピーニングを施して使用するために、研削する時点で歯面粗さを小さくしておく必要性がある。そこで仕上研削レベルの粗さであるRaで0.5μm以下の粗さとすることが望ましい。
【0030】
また、過共析浸炭焼入れ焼戻し処理に際しては、表面C濃度が0.9〜2.0%となるように浸炭し、さらに700℃以下に5分以上冷却した後、再度800℃以上に加熱する処理を少なくとも1回、好ましくは2回以上繰り返して焼入れ焼戻しするようになすことが望ましい。
【0031】
すなわち、過共析浸炭処理によって炭化物を形成させ、もって焼戻し軟化抵抗を高めるためには、表面C濃度として0.9%以上のC添加が望ましい。しかし多量に添加すると炭化物が粗大なものとなり、亀裂発生の起点となりやすいため、その上限を2.0%とするのがよい。
【0032】
そして、過共析浸炭時には、オーステナイト中に固溶していたCが、700℃以下に冷却することにより固溶できなくなって微細に析出することになるので、700℃以下に冷却する必要性がある。また、Cを全て析出させるためには、5分以上の冷却が望ましい。その後、再加熱することにより、析出した炭化物の周囲が溶融して炭化物が微細化する。このとき、炭化物の周囲が溶け出すためには800℃以上に加熱する必要性がある。この処理は、繰り返せば繰り返すほど、炭化物が微細になるので、最低でも1回、できれば数回繰り返すことが望ましい。
【0033】
さらに、本発明に係わる歯車の製造方法においては、炭化物が大きすぎると破壊起点となり得るため、その表層における平均粒径を0.16〜0.33μmとすることが望ましい。また、炭化物の量が多いほど焼戻し軟化抵抗が高くなるが、その効果を有効に発揮させるためには、炭化物の面積率を5.4〜8.1%とすることが望ましい。
【0034】
【発明の効果】
本発明の請求項1に係わる歯車の製造方法は、C:0.10〜0.30質量%(以下、同じ)、Si:0.05〜0.80%、Mn:0.20〜1.50%、Cr:0.85〜2.21%、Al:0.010〜0.040%、N:0.005〜0.030%を含有し、残部Fe及び不可避不純物から成る素材鋼に、表面C濃度が0.9〜2.0%となるように浸炭したのち、700℃以下に5分以上冷却後、再度800℃以上に加熱する処理を少なくとも1回実施して焼入れ焼戻しする過共析浸炭焼入れ焼戻し処理を施し、表層における炭化物の平均粒径を0.16〜0.33μm、炭化物の面積率を5.4〜8.1%としたのち、歯面を研削し、さらにショットピーニングを施す構成としたものであるから、過共析浸炭処理によって炭化物を分散析出させたのち、微細化することができ、焼戻し抵抗が向上し、表面硬さが高く、しかも250℃における焼戻し硬さが高くなることによって、優れた歯面疲労強度を備えた歯車を得ることができるという優れた効果をもたらすものである。
【0035】
本発明の請求項2に係わる歯車の製造方法においては、上記基本成分に加えて、炭化物形成元素であるMo:0.05〜0.70質量%(以下、同じ),V:0.05〜0.50%,W:0.05〜0.70%から選ばれる少なくとも1種をさらに含有する素材鋼を用いるようにしているので、焼戻し軟化抵抗をさらに向上させることができ、本発明の請求項3に係わる歯車の製造方法においては、上記基本成分に加えて、焼入れ性向上元素あるいは結晶粒微細化元素でもあるB:0.0005〜0.005質量%(以下、同じ),Nb:0.01〜0.10%,Ti:0.01〜0.10%から選ばれる少なくとも1種を含有する素材鋼を用いるようにしているので、さらに強靭化を図ることができ、本発明の請求項4に係わる歯車の製造方法においては、上記基本成分に加えて、Mo:0.05〜0.70質量%(以下、同じ),V:0.05〜0.50%,W:0.05〜0.70%から選ばれる少なくとも1種と、B:0.0005〜0.005%,Nb:0.01〜0.10%,Ti:0.01〜0.10%から選ばれる少なくとも1種をさらに添加した素材鋼を用いるようにしているので、歯車の靭性と共に焼戻し軟化抵抗をさらに一層向上させることができる。
【0036】
本発明に係わる歯車の製造方法に実施の形態として請求項5に係わる製造方法においては、ショットピーニング処理に際してエアーノズルを用い、投射エアー圧力を0.3〜0.8MPaとし、平均粒径が150μm以下、硬さが700Hv以上の微粒子をショット粒として用いるようにしているので、表面粗さを悪化させることなく高い表面硬さを得ることができ、油膜を保持してピッティング強度を向上させることができ、同じく実施の形態として請求項6に係わる製造方法においては、歯面研削処理に際して、ピッチ点における研削量を0.2mm以下、研削後の歯面粗さをRaで0.5μm以下とするようにしているので、微粒子ショットピーニング後の表面粗さを平滑なものとすることができると共に、過共析浸炭による炭化物析出によって焼戻し軟化抵抗を高めた表層部を失うことなく、ピッティング寿命を保持することができる。
【0038】
【実施例】
まず、表1に示す化学成分を有する各種素材鋼を溶製したのち、造塊し、熱間圧延によって直径90mmの歯車素材を製造した。次いで、得られた各歯車素材を図1に示す工程に従って、焼きならし(920℃×2時間)、旋削および歯切り加工を行ない、過共析浸炭焼入れ焼戻しの後には、表2の製造履歴に示す工程によってそれぞれ歯車を作製した。
【0039】
【表1】
Figure 0004102866
【0040】
図2は、過共析浸炭焼入れ焼戻し処理における700℃以下への冷却および800℃以上への再加熱条件を示すものであって、この図では冷却−再加熱を2回繰り返した例を示す。すなわち、1000℃で120分浸炭および拡散処理したのち、700℃以下に5分以上冷却し、再度870℃に加熱してこの温度に60分間保持したのち、或いは必要に応じて図に示すようにもう一度冷却―加熱を繰り返したのち油中に焼入れるようにしている。なお、比較例においては、再加熱することなく1000℃から直接油中に冷却する条件も採用して比較を行うようにしている。
【0041】
ピッチ点における切削量については、全ての歯車について0.08mmとした。そして、微粒子ショットピーニング二ついては、エアーノズル式のショット機を用いて表2に示す条件で処理した。
【0042】
面疲労強度の評価は、上記製造方法によって作製した、基準ピッチ円直径84.1mm、モジュール3.85、歯数21、圧力角17.5°、ねじれ角15°のはすば歯車試験片を用いて耐ピッティング試験を行った。
【0043】
耐ピッティング試験は、動力循環式歯車疲労試験機を用いて、歯車ピッチ点へのヘルツ面圧を2200MPa、試験歯車回転数を1000rpmとすると共に、潤滑油として自動変速機用オイルを使用して試験を実施した。そして、ピッティング寿命は、試験歯車歯面上のピッティングによって剥離した部分の面積が、試験歯車全歯の噛み合い有効面積の3%に相当する累積回転数によって評価した。
【0044】
炭化物粒径については、歯車ピッチ点の表面から10μmの位置において、走査型電子顕微鏡による写真撮影を行い、画像解析装置を使用して炭化物の円相当平均粒径を求めた。また、炭化物面積率についても、同様に画像解析によって求めた。
【0045】
表面硬さは、歯車ピッチ点の表面から10μmの位置で測定した。また、250℃×3時間焼戻しを実施した歯車についても、同様の位置の硬さを測定した。
【0046】
【表2】
Figure 0004102866
【0047】
表2に示す試験結果から明らかなように、本発明例であるNo.1〜に係わる歯車においては、過共析浸炭焼入れ焼戻し−歯面研削−微粒子ショットピーニングという工程で製造されているので、表面硬さおよび250℃焼戻し硬さが高く、ピッティング寿命が1000万回転以上と長寿命となっていることが確認された。
【0048】
一方、比較例であるNo.8〜10においては、浸炭焼入れ焼戻し−ハードショットピーニング−歯面研削という工程で製造され、ショットピーニングにより硬化した部分を除去してしまっているため、表面硬さが低く、ピッティング寿命が1000万回転以下という低い値に留まっている。また、比較例No.及びにおいては、素材鋼中のCr量が少ないため、250℃焼戻し硬さが低く、ピッティング寿命が低下していることが確認された。
【0049】
過共析浸炭焼入れ焼戻し処理において中間冷却を行なわなかった比較例No.10に係わる歯車試験片においては、炭化物の粗大化が認められ、ピッティング寿命も低下している。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験歯車の製作工程を示すフローチャートである。
【図2】本発明に係わる歯車の製造方法の実施例において採用した過共析浸炭焼入れ条件を示す説明図である。

Claims (6)

  1. 質量比で、C:0.10〜0.30%、Si:0.05〜0.80%、Mn:0.20〜1.50%、Cr:0.85〜2.21%、Al:0.010〜0.040%、N:0.005〜0.030%を含有し、残部Fe及び不可避不純物から成る素材鋼に、表面C濃度が0.9〜2.0%となるように浸炭したのち、700℃以下に5分以上冷却後、再度800℃以上に加熱する処理を少なくとも1回実施して焼入れ焼戻しする過共析浸炭焼入れ焼戻し処理を施し、表層における炭化物の平均粒径を0.16〜0.33μm、炭化物の面積率を5.4〜8.1%としたのち、歯面を研削し、さらにショットピーニングを施すことを特徴とする歯車の製造方法。
  2. 質量比で、C:0.10〜0.30%、Si:0.05〜0.80%、Mn:0.20〜1.50%、Cr:0.85〜2.21%、Al:0.010〜0.040%、N:0.005〜0.030%を含有すると共に、Mo:0.05〜0.70%,V:0.05〜0.50%,W:0.05〜0.70%から選ばれる少なくとも1種を含有し、残部Fe及び不可避不純物から成る素材鋼に、表面C濃度が0.9〜2.0%となるように浸炭したのち、700℃以下に5分以上冷却後、再度800℃以上に加熱する処理を少なくとも1回実施して焼入れ焼戻しする過共析浸炭焼入れ焼戻し処理を施し、表層における炭化物の平均粒径を0.16〜0.33μm、炭化物の面積率を5.4〜8.1%としたのち、歯面を研削し、さらにショットピーニングを施すことを特徴とする歯車の製造方法。
  3. 質量比で、C:0.10〜0.30%、Si:0.05〜0.80%、Mn:0.20〜1.50%、Cr:0.85〜2.21%、Al:0.010〜0.040%、N:0.005〜0.030%を含有すると共に、B:0.0005〜0.005%,Nb:0.01〜0.10%,Ti:0.01〜0.10%から選ばれる少なくとも1種を含有し、残部Fe及び不可避不純物から成る素材鋼に、表面C濃度が0.9〜2.0%となるように浸炭したのち、700℃以下に5分以上冷却後、再度800℃以上に加熱する処理を少なくとも1回実施して焼入れ焼戻しする過共析浸炭焼入れ焼戻し処理を施し、表層における炭化物の平均粒径を0.16〜0.33μm、炭化物の面積率を5.4〜8.1%としたのち、歯面を研削し、さらにショットピーニングを施すことを特徴とする歯車の製造方法。
  4. 質量比で、C:0.10〜0.30%、Si:0.05〜0.80%、Mn:0.20〜1.50%、Cr:0.85〜2.21%、Al:0.010〜0.040%、N:0.005〜0.030%を含有すると共に、Mo:0.05〜0.70%,V:0.05〜0.50%,W:0.05〜0.70%から選ばれる少なくとも1種と、B:0.0005〜0.005%,Nb:0.01〜0.10%,Ti:0.01〜0.10%から選ばれる少なくとも1種を含有し、残部Fe及び不可避不純物から成る素材鋼に、表面C濃度が0.9〜2.0%となるように浸炭したのち、700℃以下に5分以上冷却後、再度800℃以上に加熱する処理を少なくとも1回実施して焼入れ焼戻しする過共析浸炭焼入れ焼戻し処理を施し、表層における炭化物の平均粒径を0.16〜0.33μm、炭化物の面積率を5.4〜8.1%としたのち、歯面を研削し、さらにショットピーニングを施すことを特徴とする歯車の製造方法。
  5. ショットピーニング処理に際して、エアーノズルを用いると共に、投射エアー圧力を0.3〜0.8MPaとし、平均粒径が150μm以下、硬さが700Hv以上の微粒子をショット粒として用いることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の歯車の製造方法。
  6. 歯面研削処理に際して、ピッチ点における研削量を0.2mm以下、研削後の歯面粗さをRaで0.5μm以下とすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の歯車の製造方法。
JP2001117525A 2001-04-16 2001-04-16 歯車の製造方法 Expired - Lifetime JP4102866B2 (ja)

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