JP4102495B2 - ブラシレスモータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用の送風機ファンの駆動などに好適なアウタロータ形のブラシレスDCモータにおいて、電機子コイルを流れる電流の切り替えタイミングを最適化したブラシレスモータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車などの車両に搭載されるモータ、例えば空調装置に用いられる送風機ファンの回転駆動用モータには、電機子コイルに流れる電流の方向を整流子とブラシを用いて切り替えるDCモータが用いられてきた。
【0003】
この従来の車両搭載のDCモータでは、電源に車両のバッテリーを用い、定電圧電源で駆動する。このためブラシを用いたDCモータの回転制御では、電源電圧を分圧抵抗によって分圧して用いる。例えばバッテリー電圧が12Vで、DCモータを3Vで駆動する場合、残りの9Vは分圧抵抗に印加され、熱となって消費される。このため、分圧抵抗で消費される電力が無駄になってエネルギー効率が良くない。さらにブラシによるしゅう動音が騒音発生の原因となっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、DCモータをブラシレス構造とし、電源電圧のデューティを可変(パルス幅制御)して回転制御した場合、ロータ磁極と電機子コイルの反発力によって固有振動音が生じるという問題があった。この固有振動音は、各相の電機子コイルを流れる電流を切り替える時に、切替前と後の各電機子コイルの接続点に重複して電圧を印加することによって、その大きさが変化する。またその切替タイミングによって、トルクの発生効率も変化する。
【0005】
上記トルクの発生効率が最大となる切替タイミングと、固有振動音が最小となる切替タイミングとは異なり、効率を優先すれば固有振動音が大きくなり、固有振動音を小さくすれば、効率が低下する。
【0006】
また、モータが停止状態からの増速時には固有振動音による加速音が問題となり、回転した状態からの減速時には、固有振動音が他の騒音にマスクされて目立たない。
【0007】
そこで本発明は、送風機ファンなどに用いるDCモータをブラシレス構造とし、電機子コイル電流の切り替えタイミングを最適制御して省エネルギーかつ低騒音なブラシレスモータを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するため、本発明のブラシレスモータは、モータの内周側に電機子を配置したアウタロータ形のブラシレスDCモータにおいて、ステータ(3)に配置され、電源への接続を切り替えて回転磁界を生成する電機子コイル(4)と、この電機子コイル(4)に電圧を印加する電源側接続点と接地側接続点とを順次切り替えることによって、前記電機子コイル(4)を流れる電流を切り替えるスイッチング素子(Q1〜Q6)と、ロータ(1)に取り付けられた界磁用永久磁石(2)に対し、ロータ(1)と一体に取り付けられ、ロータ(1)の回転位置を示すセンサマグネット(5)と、前記ステータ(3)に取り付けられ、前記センサマグネット(5)による磁界の方向を検出する磁気センサ(IC1〜IC3)と、この磁気センサ(IC1〜IC3)からの磁界方向変化検出を受けて、ロータ(1)の回転速度およびその変化量を算出すると共に、前記電機子コイル(4)の電流切り替え時に、切替前と後の各接続点に重複して電圧を印加するオーバーラップ制御のためのオーバーラップ量を、前記回転速度に対応して設定し、前記回転速度の変化量に応じた補正値にてそのオーバーラップ量を補正するオーバーラップ制御手段(12a)と、前記磁気センサ(IC1〜IC3)からの磁界方向変化検出を受けて、前記補正されたオーバーラップ量に応じたオーバーラップ制御を行い、スイッチング素子(Q1〜Q6)の電流切り替えタイミングを制御するタイミング制御手段(12b)とを具備することを特徴とする。
【0009】
以上の構成によって、電機子コイルの電流切り替え時に、切替前と後の各接続点に重複して電圧を印加するオーバーラップ量を、モータの回転速度に対応して設定すると共に、回転速度の変化量に応じてオーバーラップ量を補正して、スイッチング素子の電流切り替えタイミングを制御する。
【0010】
さらに、前記オーバーラップ制御手段(12a)が、前記ロータ(1)の回転速度が減少する時には前記設定されたオーバーラップ量を減少させる補正値にて補正し、増加する時には前記設定されたオーバーラップ量を増加させる補正値にて補正することによって、モータが増速するとき、固有振動音を低減することを優先し、モータが減速するとき、高効率であることを優先する制御を行う。
【0011】
また、前記オーバーラップ制御手段(12a)が、前記ロータ(1)の回転速度の変化量に応じて前記オーバーラップ量の補正値を滑らかに変化させることによって、モータの回転速度の変化量に応じて、スイッチング素子の電流切り替えタイミングを滑らかに変化させる。
【0012】
また、前記オーバーラップ制御手段(12a)が、前記電機子コイル(4)の電源側接続点および接地側接続点それぞれの切り替え時に、切替前と後の各接続点に重複して電圧を印加するオーバーラップ制御を行うことによって、電機子コイルの全ての電流切り替え時に、オーバーラップ制御を行う。
【0013】
【発明の効果】
本発明の請求項1に記載のブラシレスモータは、電機子コイルの電流切り替え時に、切替前と後の各接続点に重複して電圧を印加するオーバーラップ量を、モータの回転速度に対応して設定すると共に、回転速度の変化量に応じてオーバーラップ量を補正して、スイッチング素子の電流切り替えタイミングを制御するので、モータの増速時と減速時とで、固有振動音による騒音やモータ効率を考慮して、電機子コイルを流れる電流の切り替えタイミングを最適制御できる。
【0014】
本発明の請求項2に記載のブラシレスモータは、停止状態からの加速音が問題となるモータの増速時には、高効率であることよりも固有振動音を低減することを優先し、モータの回転状態からの減速時には、固有振動音が他の騒音にマスクされてしまうため、低騒音であることよりも高効率であることを優先する制御を行うので、省エネルギーかつ低騒音なブラシレスモータを提供できる。
【0015】
本発明の請求項3に記載のブラシレスモータは、モータの回転速度の変化量に応じて、スイッチング素子の電流切り替えタイミングを滑らかに変化させるので、回転トルクの変化が穏やかで、滑らかな回転を得られる。
【0016】
本発明の請求項4に記載のブラシレスモータは、電機子コイルの全ての電流切り替え時にオーバーラップ制御を行うので、いっそう固有振動音を小さくすることができる。
【0017】
本発明の請求項5または請求項6に記載のブラシレスモータは、センサマグネットがN極とS極とを複数対有するか、または磁気センサが複数個配置されているので、ロータが1回転する間に複数回磁界方向の変化を検出でき、ロータの回転速度が変化しても、その変化に追随して高速応答で、きめ細かくタイミング制御できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明のブラシレスモータを下側から見た下面図である。本実施の形態のブラシレスモータは、車両用空調装置の送風機ファンの駆動に用いられ、三相2極巻線のアウタロータ形のブラシレスDCモータであり、内周側のステータに電機子コイル、外側のロータに界磁用永久磁石を備えたものである。
【0020】
ステータ3には、各突出部3a〜3fをコアとして、回転磁界を生成する電機子コイル4a〜4fが三相に配置され、その外側には、90度間隔でメインマグネット(界磁用永久磁石)2を備えたロータ1が配置されている。このロータ1の回転位置を示すセンサマグネット5は、N極とS極とが2対、ロータ1の回転中心に対し均等角度に配置され、ロータ1と一体に回転するシャフト6に取り付けられている。このセンサマグネット5による磁界の方向を検出するホールIC1〜3(磁気センサ)が、ステータ3の内周に120度間隔で均等配置されている。
【0021】
ブラシレスDCモータでは、メインマグネット2の検出位置から電機子コイル4a〜4fを流れる電流を切り替えるタイミングによって、発生するトルクが変化する。ロータ1の回転位置を示すセンサマグネット5は、本実施の形態では、メインマグネット2に対し遅れ角42度でシャフト6に取り付けられ、さらに電気的な進角制御を行っている。なお、▲1▼は電流経路が短く、他の電機子コイルに比べ2倍の電流が流れているコイルを示す。▲2▼は電機子コイル3c(3f)とメインマグネット2との反発力による正回転トルク発生位置、▲3▼は電機子コイル3a(3d)とメインマグネット2との反発力による逆トルク発生位置を示す。
【0022】
図2は、本実施の形態のブラシレスモータの制御回路部のブロック図である。センサ信号検出回路11は、ホールIC1〜3からセンサマグネット5の磁界方向変化検出を受けて、それぞれの反転信号を生成し、非反転信号と合わせて六信号からなるセンサ信号としてマイクロコンピュータ12に入力する。これは、本実施の形態で用いるマイクロコンピュータ12が、入力信号の立ち下がりエッジのみを検出するため、立ち上がりエッジを立ち下がりエッジに変換して検出するためである。
【0023】
このマイクロコンピュータ12内の処理では、オーバーラップ制御手段12aにて、センサ信号を受けて、その磁界方向変化検出の周期からモータの回転速度およびその変化量を算出し、この回転速度に対応して、電機子コイル4の電流切り替え時に、切替前と後の各接続点U,V,Wに重複して電圧を印加するオーバーラップ制御のためのオーバーラップ量を設定すると共に、回転速度の変化量に応じた補正値にてそのオーバーラップ量を補正する。次にタイミング制御手段12bにて、センサ信号、オーバーラップ量、および空調制御装置(図示せず)からモータを回転指示する回転指示信号(PWM信号)を受けて、補正されたオーバーラップ量に応じたオーバーラップ制御を行い、モータ駆動回路13を介してMOSFET(スイッチング素子)Q1〜Q6の電流切り替えタイミングを制御する。
【0024】
図3(a)は、本実施の形態のブラシレスモータの制御回路部のオーバーラップ制御を行わない場合のタイミングチャートであり、(b)は、このタイミングで制御されるMOSFET(Q1〜Q6)の接続関係を示す。センサマグネット5は、N極とS極とが90度ごとに配置されるため、ホールICからの磁界方向変化検出信号は、ロータ1が1回転する間に2周期変化する。これによって、ロータの回転を2倍細かくタイミング制御することができる。また、ホールICを均等間隔で3個配置したことによって、ロータの回転を3倍細かくタイミング制御することができる。この均等間隔で配置されたホールIC1〜3からの磁界方向変化検出に基づき、ロータ1が1回転する間にMOSFET(Q1〜Q6)のオン/オフを計12回スイッチングし、オンとなるMOSFETの組み合わせによって電機子コイル4a〜4fに電圧を印加する電源側接続点と接地側接続点とを順次切り替えることによって、電機子コイル4a〜4fを流れる電流の方向を切り替える。その結果、回転磁界が生成される。
【0025】
図4は、(a)がロータ回転位置、(b)がそのときの制御に用いるホールIC信号およびMOSFETの導通状態との対応関係を示す。ロータ回転角0度のときはホールIC3からの信号を用い、MOSFET(Q1),(Q5)が導通状態となる。MOSFET(Q1)が電源側、MOSFET(Q5)が接地側となり、接続点Uと接続点Vとの間に電圧が印加される。
【0026】
図5は、ホールIC3切替時の各コイルの通電状態と、メインマグネット2に対するセンサマグネット5の遅れ角による位置を示す図である。MOSFET(Q1)と(Q5)がオンし、U側(Q1)が電源電圧となり、V側(Q5)が接地される。電流経路S1をU側(+)→コイル4f→コイル4c→V側(GND)とし、電流経路S2をU側(+)→コイル4e→コイル4b→コイル4a→コイル4d→V側(GND)とすると、電流経路S1は抵抗値が半分のため、電流値が2倍となる(図1の▲1▼)。この電流値が2倍となるコイルとメインマグネット2との間には、他のコイルと比べ特に強い反発力を生じ、逆トルクを打ち消す強い回転トルクを生じる。
【0027】
図6は、(a)がロータ回転角30度の場合を示し、(b)がそのときの制御に用いるホールIC信号およびMOSFETの導通状態との対応関係を示す。ロータ回転角30度のときはホールIC1からの信号を用い、MOSFET(Q3),(Q5)が導通状態となる。MOSFET(Q3)が電源側、MOSFET(Q5)が接地側となり、接続点Wと接続点Vとの間に電圧が印加される。
【0028】
図7は、ホールIC1切替時の各コイルの通電状態と、メインマグネット2に対するセンサマグネット5の遅れ角による位置を示す図である。MOSFET(Q3)と(Q5)がオンし、W側(Q3)が電源電圧となり、V側(Q5)が接地される。電流経路S3をU側(+)→コイル4a→コイル4d→V側(GND)とし、電流経路S4をU側(+)→コイル4b→コイル4e→コイル4f→コイル4c→V側(GND)とすると、電流経路S3は抵抗値が半分のため、電流値が2倍となる。
【0029】
図8は、本発明に係るオーバーラップ制御の説明図である。(a)に示すホールIC3からの信号を用いて接続点Uと接続点Vとの間に電圧を印加し、MOSFET(Q1),(Q5)を導通とする状態から、(c)に示すホールIC1からの信号を用いて接続点Wと接続点Vとの間に電圧を印加し、MOSFET(Q3),(Q5)を導通とする状態への切替の際、(b)に示すように接続点UとWを共に電源側、接続点Vを接地側として重複して電圧を印加する。このオーバーラップ制御によって、(b)に示す重複電圧印加状態のとき、接続点U,Wはそれぞれ同電位となって、U,W間には電流が流れない。このため(a)に示す状態から(b)に示す重複電圧印加状態を経て(c)に示す状態へ移行することによって、電流の変化が穏やかとなり、その結果電機子コイル電流による磁束の変化が穏やかとなる。このため、ロータ磁極と電機子コイル間の反発力の変化が穏やかとなり、反発力によって生じる固有振動音も小さくなる。その反面、有効な回転トルクを生じる期間が短くなり、トルクの発生効率が低下する。
【0030】
図9は、オーバーラップ制御によるU相、V相、W相信号の重複電圧印加幅(ラップ代)を示す。電機子コイルの各接続点への電圧印加を切り替える際に、重複して電圧を印加する時間幅を設ける。
【0031】
図10は、回転速度の変化量に応じた補正値にてオーバーラップ量を補正するための制御の流れを示す。まず、回転速度が増加しているか否か判定して(ST1)、増加ならば補正値Xを増加量Aとして(ST2)、補正前のオーバーラップ量C1に補正値Xを加えて新たなオーバーラップ量Cとする(ST3)。回転速度が増加していないならば、さらに減少しているか否か判定して(ST4)、減少ならば補正値Xを減少量Bとして(ST5)、補正前のオーバーラップ量C1に補正値Xを加えて新たなオーバーラップ量Cとする(ST3)。回転速度が減少していないならば、補正値Xを0として(ST6)、すなわちC=C1として、補正を行わない。
【0032】
図11は、補正値Xの回転速度変化量に対する変化を示す。変化量が増加するときは補正値Xを正の値として増加量の増大に伴いしだいに大きな値とし、変化量が減少するときは補正値Xを負の値として減少量の増大に伴いしだいに小さな値(絶対値の大きな負の値)とする。そして変化量の増減に対する補正値Xの変化を滑らかにすることによって、オーバーラップ量の変化を滑らかなものとすることができる。その結果、回転トルクの変化が穏やかで、滑らかな回転を得られる。
【0033】
図12は、ホールICからの信号に基づき、MOSFETの出力切替制御信号を出力するタイミングチャートであり、(a)はセンサ(ホールIC)からの入力信号、(b),(c)はMOSFETのゲート信号を示す。
【0034】
(a)に示すSAH,SALは、それぞれホールIC1からの信号およびその反転信号を示す。同様にSBH,SBLは、それぞれホールIC2からの、SCH,SCLは、それぞれホールIC3からの信号およびその反転信号を示す。以上の6信号によって、ロータの30度回転ごとにきめ細かくタイミングを制御することができる。
【0035】
(b)に示すAT,BT,CTは、オーバーラップ制御時のハイサイド(電源側)のMOSFETに出力するゲート信号を示し、(c)に示すAB,BB,CBは、ローサイド(接地側)のMOSFETに出力するゲート信号を示す。
【0036】
本実施の形態では、上記センサ入力の6信号の立ち下がりによって、MOSFETのゲート信号をタイミング制御する。この場合、各センサ信号の立ち下がりに対応して、次の立ち下がりに相当するタイミング(ロータ1の30度回転相当)を予測して、MOSFETのゲート信号をオン/オフ制御する。その際、センサ信号の立ち下がりエッジ間の時間からロータの回転速度およびその変化量を算出し、この回転速度に対応して、オーバーラップ制御のためのオーバーラップ量を設定すると共に、回転速度の変化量に応じた補正値にてそのオーバーラップ量を補正する。そして、MOSFETのゲート信号をオン/オフ制御する際、補正されたオーバーラップ量に応じたオーバーラップ制御を行い、タイミング制御する。なお、センサ信号の立ち上がりエッジを用いても同様の制御を行うことができる。
【0037】
オーバーラップ制御では、ハイサイド側のMOSFETの出力のみ切替タイミングを制御して出力オフのタイミングを遅らせても、固有振動音を小さくする効果が得られるが、ローサイド側のMOSFETの出力の切替タイミングも遅らせることによって、電機子コイルの全ての電流切り替え時にオーバーラップ制御を行うことになり、よりいっそう固有振動音を小さくすることができる。
【0038】
図13は、モータの回転数とその回転数に対応して設定されるオーバーラップ制御量(オーバーラップ時間)の対応関係を示す。モータの回転数が0〜450rpmおよび450〜1125rpmまではオーバーラップ時間670μsec、1125〜1800rpmまではオーバーラップ時間670〜75μsec、1800rpm以上はオーバーラップ時間75μsecとし、回転数に応じた折れ線制御によりオーバーラップ制御量を設定する。
【0039】
上記のオーバーラップの折れ線制御では、450〜1125rpm間および1125〜1800rpm間でオーバーラップ時間を直線的に滑らかに連続変化させる。オーバーラップ時間を急激に変化させると、回転トルクも急激に変化し、回転むらの原因となるので、これを避けるため、オーバーラップ時間を滑らかに連続変化させる。
【0040】
マイクロコンピュータのソフトウェア制御によって、上記回転数に応じたオーバーラップ時間の設定を行う。例えばモータ回転数が1800rpm(周期:33.3msec)のとき、ロータが30度回転に要する時間は2.78msecなので、センサ信号の立ち下がりエッジからこの30度回転に要する時間経過後に、オーバーラップ時間75μsecのオーバラップ制御を行う設定とする。
【0041】
さらに、回転速度の変化量に応じた補正値にてそのオーバーラップ量を補正する。すなわち、変化量が増加するときは補正値Xを正の値として増加量の増大に伴いしだいに大きな値で補正し、変化量が減少するときは補正値Xを負の値として減少量の増大に伴いしだいに小さな値(絶対値の大きな負の値)で補正する。そして補正後のオーバーラップ量を用いてオーバラップ制御を行い、MOSFETのゲート信号をオン/オフ制御する。
【0042】
図14は、オーバーラップ量と騒音レベルとの関係を示す。オーバーラップ量が150μsec程度までは、オーバーラップ量の増加に伴い、騒音レベルが低下する。そしてさらにオーバーラップ量を増加させるにつれ騒音レベルは緩やかに減少する。
【0043】
図15は、オーバーラップ量とモータ効率との関係を示す。オーバーラップ量が0でモータ効率が最大、すなわち回転トルクが最大となる。そしてオーバーラップ量を増すにつれてモータ効率が低下する。
【0044】
モータが高回転時には、送風音による影響で固有振動音成分がマスクされてしまい、固有振動音による騒音は相対的に問題とならない。一方、モータ回転数が低速時には、送風音が小さくなるので、相対的に固有振動音成分が大きくなる。このことから、特に低回転数領域では、オーバーラップ量を多くすることによる低騒音化の効果が大きい。
【0045】
以上のことから、ロータの回転速度が低速時にはオーバーラップ量を多く制御し、高速時にはオーバーラップ量を少なく制御することによって、回転数によって低騒音と高効率とを最適な割合で両立した制御ができる。
【0046】
さらに、停止状態からの加速音が問題となる回転速度の増速時には固有振動音を低減することを優先して、オーバーラップ量を多く補正し、回転状態からの減速時には効率を優先して、オーバーラップ量を少なく補正する。その結果、低騒音かつ省エネルギーなモータとすることができる。
【0047】
以上述べたように本発明のブラシレスモータを車両用空調装置の送風機ファンの駆動用に用いることによって、増速時すなわち送風量を多くするときは低騒音で、減速時すなわち送風量を少なくするときは高効率で運転することによって、回転数の変更指示に対し、回転数の変化量に応じて低騒音と省エネルギーとを両立した回転力に補正制御して、快適な空調環境を得ることができる。
【0048】
なお、本実施の形態では、車両用空調装置の送風機ファンの駆動用ブラシレスモータとして説明したが、例えば、車両用エンジンのラジエータ冷却ファンにも同様に適用でき、さらに室内用空調装置の送風機ファンなどにも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のブラシレスモータの下面図である。
【図2】本発明のブラシレスモータの制御回路部のブロック図である。
【図3】(a)は、ブラシレスモータの制御回路部のタイミングチャートであり、(b)は、MOSFETの接続関係を示す図である。
【図4】(a)がロータ回転位置、(b)がホールIC信号およびMOSFETの導通状態との対応関係を示す図である。
【図5】ホールIC3切替時の各コイルの通電状態と、メインマグネットに対するセンサマグネットの遅れ角による位置を示す図である。
【図6】(a)がロータ回転角30度の場合を示し、(b)がホールIC信号およびMOSFETの導通状態との対応関係を示す図である。
【図7】ホールIC1切替時の各コイルの通電状態と、メインマグネットに対するセンサマグネットの遅れ角による位置を示す図である。
【図8】本発明に係るオーバーラップ制御の説明図であって、(a)は接続点U,V間に電圧印加、(b)は接続点U,Wを電源側、接続点Vを接地側として重複電圧印加、(c)は接続点W,V間に電圧印加状態を示す図である。
【図9】オーバーラップ制御によるU相、V相、W相信号のラップ代を示す図である。
【図10】オーバーラップ量を補正する制御の流れを示すフローチャートである。
【図11】補正値の回転速度変化量に対する変化を示す図である。
【図12】(a)はセンサ(ホールIC)からの入力信号、(b),(c)はMOSFETのゲート信号を示すタイミングチャートである。
【図13】モータの回転数に対するオーバーラップ時間の対応関係を示す図である。
【図14】オーバーラップ量と騒音レベルとの関係を示す図である。
【図15】オーバーラップ量とモータ効率との関係を示す図である。
【符号の説明】
1…ロータ,2…メインマグネット(界磁用永久磁石),3…ステータ,4a〜f…電機子コイル,5…センサマグネット,6…シャフト,11…センサ信号検出回路,12…マイクロコンピュータ,13…モータ駆動回路,IC1〜3…ホールIC(磁気センサ),▲1▼…2倍の電流が流れているコイル,▲2▼…正回転トルク発生位置,▲3▼…逆トルク発生位置。
Claims (6)
- モータの内周側に電機子を配置したアウタロータ形のブラシレスDCモータにおいて、
ステータ(3)に配置され、電源への接続を切り替えて回転磁界を生成する電機子コイル(4)と、
この電機子コイル(4)に電圧を印加する電源側接続点と接地側接続点とを順次切り替えることによって、前記電機子コイル(4)を流れる電流を切り替えるスイッチング素子(Q1〜Q6)と、
ロータ(1)に取り付けられた界磁用永久磁石(2)に対し、ロータ(1)と一体に取り付けられ、ロータ(1)の回転位置を示すセンサマグネット(5)と、
前記ステータ(3)に取り付けられ、前記センサマグネット(5)による磁界の方向を検出する磁気センサ(IC1〜IC3)と、
この磁気センサ(IC1〜IC3)からの磁界方向変化検出を受けて、ロータ(1)の回転速度およびその変化量を算出すると共に、前記電機子コイル(4)の電流切り替え時に、切替前と後の各接続点に重複して電圧を印加するオーバーラップ制御のためのオーバーラップ量を、前記回転速度に対応して設定し、前記回転速度の変化量に応じた補正値にてそのオーバーラップ量を補正するオーバーラップ制御手段(12a)と、
前記磁気センサ(IC1〜IC3)からの磁界方向変化検出を受けて、前記補正されたオーバーラップ量に応じたオーバーラップ制御を行い、スイッチング素子(Q1〜Q6)の電流切り替えタイミングを制御するタイミング制御手段(12b)とを具備することを特徴とするブラシレスモータ。 - 前記オーバーラップ制御手段(12a)が、前記ロータ(1)の回転速度が減少する時には前記オーバーラップ量を減少させる補正値にて補正し、増加する時には前記オーバーラップ量を増加させる補正値にて補正することを特徴とする請求項1に記載のブラシレスモータ。
- 前記オーバーラップ制御手段(12a)が、前記ロータ(1)の回転速度の変化量に応じて前記オーバーラップ量の補正値を滑らかに変化させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブラシレスモータ。
- 前記オーバーラップ制御手段(12a)が、前記電機子コイル(4)の電源側接続点および接地側接続点それぞれの切り替え時に、切替前と後の各接続点に重複して電圧を印加するオーバーラップ制御を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載のブラシレスモータ。
- 前記センサマグネット(5)は、N極とS極とが複数対、ロータ(1)の回転中心に対し均等角度に配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4に記載のブラシレスモータ。
- 前記磁気センサ(IC1〜IC3)が、前記ステータ(3)周囲に均等角度にて複数個配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5に記載のブラシレスモータ。
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