JP4102004B2 - ハロゲン化銀写真乳剤及びこれを用いたハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高感度かつ圧力性の改良されたハロゲン化銀乳剤と、それを用いたハロゲン化銀写真材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
平板状ハロゲン化銀粒子に関してはすでに米国特許第(以下、「US」とも表記する。)4,434,226号、同4,439,520号、同4,414,310号、同4,433,048号、同4,414,306号、同4,459,353号等にその製法、及び使用技術が開示されており、分光増感色素による色増感効率の向上を含む、感度/粒状性の関係改良等の利点が知られている。
このような利点を持つ平板粒子の性能向上のために様々な研究が進んできた。
【0003】
US5,219,720には、(111)面を主表面とする平板状粒子の双晶面間隔を小さくすることによる感度/粒状比の改良技術が開示されている。
特開平6−273869には平板状粒子形成の核形成工程時に低分子量ゼラチンを用いることによる製造安定性の改良技術が開示されている。
【0004】
一方、ハロゲン化銀乳剤の高感度化に伴い、その圧力耐性に対する要請も従来以上に強くなってきている。一般に、ハロゲン化銀写真感光材料に様々な圧力が加わると写真性能に変化を生じることが知られている。例えばハロゲン化銀写真感光材料の製造時やカメラ内での搬送時に感光材料に圧力が加わったり、あるいは曲げられたりするとかぶりや減感を生じ、実用上問題となっていた。特に、感光材料を折り曲げた時に、円相当直径が大きく粒子厚みの薄い平板粒子ほどかぶりと減感を生じやすく、そうした粒子に対して高感度化と圧力耐性の改良の両立が望まれていた。
【0005】
平板粒子への転位線導入の高密度化及び導入位置の限定、粒子間の沃化銀含有率分布の均一化に関する技術は、例えば特開平6−27564号や同6−258745に開示されている。また、平板粒子側面の(100)面比率を制御する技術に関しては、例えば特開平2−298935号や同8−334850号に開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの特許出願には本発明の円相当直径が大きく粒子厚みが薄い平板粒子であって、側面の(100)面比率が高く、高密度の転位線が粒子フリンジ部に導入され、しかも粒子間の沃化銀含有率分布が均一であることを特徴とする乳剤を使用することに関する記載は無い。
【0007】
また、特開平8−95181には小サイズ領域での高感度化について開示されている。しかし今後デジタルカメラとの競争において重要となる高感度を担う大サイズ領域のハロゲン化銀平板粒子の高感化技術は未だ未熟であり、高感化技術が望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、大サイズ領域の平板粒子を含有する写真感度の高く圧力耐性の改良されたハロゲン化銀写真乳剤及びこれを用いたハロゲン化銀写真感光材料を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は以下の態様1〜態様20に記載されるハロゲン化銀写真乳剤及びこれを用いたハロゲン化銀写真感光材料によって達成される。
【0010】
(態様1) 全粒子の円相当径の変動係数が40%以下であり、かつ全粒子の50%以上(個数)が下記(i)、(ii)および(iii)を満たす平板粒子で占められていることを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
(i)(111)面を主表面とする沃臭化銀または沃塩臭化銀平板粒子
(ii)円相当径3.5μm以上かつ厚み0.25μm以下
(iii)双晶面間隔が0.016μm以下。
【0011】
(態様2) 全粒子の厚さの変動係数が40%以下かつ双晶面間隔の変動係数が40%以下であることを特徴とする態様1に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0012】
(態様3) 前記の平板粒子が前記(i)、(ii)、(iii)の要件に加え、下記(iv)、(v)を満たす態様1に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(iv)特定沃化銀含有率をIモル%(0.3<I<20)とした場合に沃化銀含有率が0.7Iから1.3Iの範囲内
(v)粒子フリンジ部に1粒子当たり10本以上の転位線を含む。
【0013】
(態様4) 前記(iv)の要件が、「沃化銀含有率が0.8Iから1.2Iの範囲内」であることを特徴とする態様3に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0014】
(態様5) 前記の平板粒子が、前記(i)から(v)の要件に加え、(vi)を満たすことを特徴とする態様3に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(vi)実質的に粒子フリンジ部のみに転位線が局在する。
【0015】
(態様6) 前記の平板粒子が、前記(i)から(vi)の要件に加え、(vii)を満たすことを特徴とする態様5に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(vii)電子捕獲ゾーンを有する。
【0016】
(態様7) 全粒子の平均表面ヨード含量が5mol%以下であることを特徴とする態様6に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0017】
(態様8) 前記の平板粒子が、円相当径をDとしたとき、0.05D以上の長さの転位線を10本以上有することを特徴とする態様6または7に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0018】
(態様9) 全粒子の双晶面間隔の変動係数が40%以下であり、核形成工程で低分子量の酸化処理ゼラチンを用いることにより製造されたことを特徴とする態様1に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0019】
(態様10) 下記(viii)の要件を満たすことを特徴とする態様3に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(viii)全粒子の長辺/短辺比の平均値が1.4以下である。
【0020】
(態様11) 前記(v)の要件が、「粒子フリンジ部に1粒子当たり30本以上の転位線を含む」であり、かつ全粒子個数の80%以上が、実質的に粒子フリンジ部のみに転位線が局在する平板粒子であることを特徴としかつ、「粒子側面の(100)面比率が40%以上」あることを特徴とする態様3に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0021】
(態様12) 前記の平板粒子が、前記(i)から(v)の要件に加え、(ix)を満たすことを特徴とする態様3に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(ix)粒子フリンジ部の平均沃化銀含有率が粒子中心部の平均沃化銀含有率よりも2モル%以上高い。
【0022】
(態様13) 粒子形成時に少なくとも3種類のゼラチンを用いて製造されたことを特徴とする態様1から12のいずれか1に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0023】
(態様14) 粒子形成中に晶相制御剤を添加して製造されたことを特徴とする態様1から13のいずれか1に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0024】
(態様15) 全粒子の円相当径の変動係数が25%以下であることを特徴とする態様1から14のいずれか1に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0025】
(態様16) 前記の(ii)の要件が「円相当径3.5μm以上、厚み0.15μm以下」であることを特徴とする態様1から15のいずれか1に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0026】
(態様17) 前記の(ii)の要件が「円相当径4.0μm以上、厚み0.15μm以下」であることを特徴とする態様1から15のいずれか1に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0027】
(態様18) 前記の(ii)の要件が「円相当径4.0μm以上、厚み0.10μm以下であることを特徴とする態様1から15の何れか1に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0028】
(態様19) 支持体上に、態様1から18のいずれか1に記載のハロゲン化銀写真乳剤を含有する感光性層を有するハロゲン化銀写真感光材料。
【0029】
(態様20) 該ハロゲン化銀写真感光材料が、支持体上にそれぞれ少なくとも1層の青感性ハロゲン化銀乳剤層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層及び赤感性ハロゲン化乳剤層を有し、該赤感性ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも1層が、該緑感性ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも1層よりも支持体に関して遠い側に設けられていることを特徴とする態様19に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の乳剤について説明する。
本発明で平板粒子とは2つの対向する平行な(111)主表面を有するハロゲン化銀粒子を言う。本発明の平板粒子は1枚の双晶面あるいは2枚以上の平行な双晶面を有する。双晶面とは(111)面の両側ですべての格子点のイオンが鏡像関係にある場合にこの(111)面のことをいう。
【0031】
この平板粒子は、粒子を主表面に対して垂直方向から見た時、三角形状、六角形状もしくはその中間の切頭三角形の形状をしており、それぞれ互いに平行な外表面を有している。
【0032】
平板粒子の円相当径ならびに厚みは、レプリカ法による透過電子顕微鏡写真を撮影して個々の粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径(円相当径)と厚みを求める。この場合、厚みはレプリカの影(シャドー)の長さから算出する。また全粒子の円相当径およびその変動係数、全粒子の厚さおよびその変動係数は粒子1000個以上について上記の方法で求めた値を用いて決定する。
【0033】
本発明の平板粒子は全粒子個数の50%以上が円相当径3.5μm以上である。より好ましくは4.0μm以上、10μm以下である。3.5μm未満では高感度化が達成できず、また10μmを超えると大サイズ化による高感度化は頭打ちとなってくるので好ましくない。
【0034】
本発明の平板粒子は全粒子個数の50%以上が粒子厚みは0.25μm以下である。より好ましくは0.15μm以下、特に好ましくは0.1μm以下である。
厚みが0.25μmを超えると平板粒子による高感度化のメリットの達成が困難となる。
【0035】
本発明の乳剤は全粒子個数の50%以上がアスペクト比14以上の平板粒子によってしめられる。より好ましくは23以上、特に好ましくは26以上である。ここでアスペクト比とは、円相当径を厚みで割った値である。
【0036】
本発明の乳剤は単分散性であることが好ましい。本発明の全ハロゲン化銀粒子の投影面積の円相当径の変動係数は40%以下であり、より好ましくは30%以下、特に好ましくは25%以下である。ここで円相当径の変動係数とは個々のハロゲン化銀粒子の円相当径の分布の標準偏差を平均円相当径で割った値である。
【0037】
ハロゲン化銀粒子を化学増感する際に、粒子間に不均一があると各粒子を最適に増感することが困難であるため、写真感度の低下を生じる。この点から、平板粒子の厚さは単分散であることが好ましい。
【0038】
また、平板粒子は高アスペクト比化するにつれて、厚さ絶対値が減少する。厚さ絶対値の小さい粒子は、側面部分の溶解が起こりやすい。フリンジ転位型平板粒子を形成する際には、側面の溶解が起こっている粒子では、転位線の密度が減少する。厚さが多分散な平板粒子は、側面の溶解しやすい粒子頻度が増加するため好ましくなく、この点からも、粒子厚さが単分散であることが好ましい。厚さの変動係数は、40%以下であることが好ましく、30%以下であることがさらに好ましく、20%以下であることが最も好ましい。
【0039】
本発明の平板粒子の双晶面間隔は全粒子個数の50%以上が0.016μm以下であり、0.014μm以下であることがさらに好ましく、0.012μm以下であることが最も好ましい。双晶面を3枚以上有する平板粒子については、最も距離の離れた二つの双晶面間距離を双晶面間隔とする。
【0040】
双晶面間隔は、粒子の超薄切片を作成し、それを透過電子顕微鏡で観察することにより得ることができる。全粒子個数の50%以上の双晶面間隔が0.016μm以下であるとは1000個以上の粒子の双晶面間隔を測定したときに、500個以上の粒子が、0.016μm以下であれば良い。また双晶面間隔の変動係数も同様に1000個以上の粒子の双晶面を計測することにより得ることができる。
【0041】
平板粒子の双晶面間隔も粒子間の均一性の観点から、単分散であることによって各粒子を最適に化学増感することがより容易になる。
また、フリンジ転位型粒子を形成する際には側面部分の均一性が粒子間のフリンジ転位の均一性に直結するため重要である。平板粒子の双晶面間隔の変動係数は40%以下であることが好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。
【0042】
(111)面を主表面とする平板状ハロゲン化銀粒子は通常、六角形または三角形またはその中間の切頭三角形の形状をしており、3回対称性を有する。それらの6つの辺のうち、長いほうから3番目までの辺の長さの和と短いほうから3番目までの辺の長さの和の比を長辺/短辺比とする。
平板状粒子は平板粒子の長辺/短辺比も粒子間の均一性の観点から、1に近づけることによって各粒子を最適に化学増感することがより容易になる。
【0043】
また、フリンジ転位型粒子を形成する際に三角形に近い形状の粒子では六角形に近い形状の粒子と比較してフリンジ部分の転位線の密度が著しく低くなることが観察された。この点からも、平板粒子の長辺/短辺比を1に近づけることが好ましい。平板粒子の長辺/短辺比の平均値は1.4以下であることが好ましい。
【0044】
本発明の平板粒子の調製は基本的には核形成、熟成ならびに成長の3工程の組み合わせよりなる。米国特許第4,797,354号及び特開平2−838号に記載の方法は本発明の平板粒子の調製の参考にすることができるが、その諸条件は変更する必要がある。
【0045】
核形成の工程においては米国特許第4,713,320号及び同第4,942,120号に記載のメチオニン含量の少ないゼラチンを用いること、米国特許第4,914,014号に記載の高pBrで核形成を行うこと、特開平2−222940号に記載の短時間で核形成を行うことは本発明のコアの核形成工程において有効である。熟成工程においては米国特許第5,254,453号記載の低濃度のベースの存在下でおこなうこと、米国特許第5,013,641号記載の高いpHでおこなうことは、本発明のコア平板粒子乳剤の熟成工程において有効である場合がある。
【0046】
酵素分解によって低分子量化したゼラチンはハロゲン化銀粒子に対する保護コロイド能が低下しており、酸化処理化によって更に保護コロイド能が低下すると、ハロゲン化銀への吸着力が低下し過ぎ核形成時に用いると双晶発生確率を十分にコントロールできないことが懸念されるが、分子量15000に低分子量化したゼラチンを用いてメチオニン含有率が3.4μmol/gになるまで酸化処理を行っても、必要な保護コロイド能を保持していることが実験により確かめられた。
【0047】
このようなゼラチンを用いることにより、酸化処理ゼラチンを用いてトリプル添加核形成を行うことが可能となり、単分散性と薄板化を両立させた粒子形成の実行がより容易になる。トリプル添加核形成中のゼラチンの添加時期は、銀塩水溶液とハライド水溶液を添加して核形成を行っている間全体にわたり得る。
【0048】
酸化処理した低分子量の酸化処理ゼラチンの分子量は40000以下であることが好ましく、30000以下であることがさらに好ましく、20000以下であることが最も好ましい。
また、該ゼラチンのメチオニン含率は10μmol/g以下であることが好ましく、4μmol/g以下であることがさらに好ましい。
【0049】
米国特許第5,147,771号、同第5,147,772号、同第5,147,773号、同第5,171,659号、同第5,210,013号ならびに同第5,252,453号に記載のポリアルキレンオキサイド化合物を用いた平板粒子の形成法は本発明の平板の調製に好ましく用いられる。
【0050】
本発明における乳剤粒子の好ましい臭化銀含有率の範囲は80モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である。
また、本発明における乳剤粒子の好ましい沃化銀含有率の範囲は1ないし20モル%であり、より好ましくは2ないし15モル%、さらに好ましくは3ないし10モル%である。1モル%未満では色素吸着の強化、固有感度の上昇などの効果が得にくく好ましくない。20モル%を超えると一般に現像速度が遅れるため好ましくない。
【0051】
本発明の好ましい塩化銀含有率の範囲は0〜20モル%であり、より好ましくは0〜15モル%、特に好ましくは0〜7モル%であるが、目的に応じて選んで良い。
【0052】
本発明の乳剤は、特定沃化銀含有率をIモル%(0.3<I<20)とした場合に沃化銀含有率が0.7Iないし1.3Iの範囲にあるハロゲン化銀粒子が全粒子個数の100ないし50%を占めることが好ましく、より好ましくは100ないし80%、さらに好ましくは100ないし90%を占める。これ以外の範囲では本発明の効果が得られにくく好ましくない。
【0053】
さらに、本発明の乳剤は、沃化銀含有率が0.8Iないし1.2Iの範囲にあるハロゲン化銀粒子が全粒子個数の100ないし50%を占めることもまた好ましく、より好ましくは100ないし80%、さらに好ましくは100ないし90%を占める。
上記特定沃化銀含有率Iの値は(0.3<I<20)の範囲の任意の値とし、例えば個々の粒子の沃化銀含有率を測定した時の平均値を選んでもよい。
【0054】
本発明の乳剤に関する「特定沃化銀含有率(Iモル%)」とは、該乳剤の処方上算出される平均沃化銀含有率に近い値をとる特定の沃化銀含有率である。Iは0.3モル%を越え20モル%未満の範囲内の特定値である。ハロゲン化銀写真感光材料の特定の乳剤層から単離された特定の乳剤粒子群に対して沃化銀含有率を測定し、できるだけ多くの粒子が0.7Iないし1.3Iの範囲に入るように特定することができる。一般には上記の特定の乳剤粒子群に対する沃化銀含有率の算術平均値に近い値となる。I値を処方上の平均沃化銀含有率又は実測された平均沃化銀含有率に設定することは実際的である。
【0055】
個々の乳剤粒子の沃化銀含有率は、X線マイクロアナライザーを用いて1個1個の粒子の組成を分析することにより測定できる。
その測定法は例えば欧州特許第147,868号に記載されている。
【0056】
本発明の乳剤の表面ヨード含量は5モル%以下であることが好ましくより好ましくは4モル%以下、さらに好ましくは3モル%以下である。表面ヨード量が5モル%を超えると現像阻害や化学増感の阻害を生じ、好ましくない。表面ヨード含量の測定はESCA(XPSという名称もある)法(X線を照射し粒子表面から出て来る光電子を分光する方法)により確認することができる。
【0057】
本発明の乳剤粒子は主として(111)面と(100)面からなる。本発明の乳剤粒子の全表面に対して(111)面が占める割合は少なくとも70%である。
【0058】
一方、本発明の乳剤粒子において(100)面の出現部位は平板粒子の側面であり、(111)面が乳剤粒子表面を占める面積に対する(100)面が乳剤粒子表面を占める面積の比は、少なくとも3%であり、より好ましくは4%以上、さらに好ましくは5%以上である。これらの範囲外では本発明の効果が得られにくく好ましくない。(100)面比率のコントロールは特開平2−298935号や特開平8−334850号などを参考にすることが出来る。(100)面比率は、増感色素の吸着における(111)面と(100)面との吸着依存性の違いを利用した方法、例えばT. Tani, J. Imaging Sci., 29、165(1985)などに記載の方法を用いて求めることが出来る。
【0059】
本発明の乳剤粒子において、全粒子個数の80%以上が、粒子の側面における(100)面の面積比率が25%以上の平板粒子によって占められることが好ましく、より好ましくは(100)面の面積比率が40%以上、さらに好ましくは(100)面の面積比率が50%以上の平板粒子によって占められる。平板粒子の側面における(100)面の面積比率は、例えば特開平8−334850号に記載の方法から求めることが出来る。
【0060】
すなわち、(111)面が乳剤粒子表面を占める面積に対する(100)面が乳剤粒子表面を占める面積の比をCubとすると、平板粒子の側面における(100)面の面積比率ECudは
Cud×(ECD+2t)/2t である。
ここでECD:平均円相当直径(μm)
t:平均粒子厚み(μm)。
【0061】
より具体的な(100)面比率のコントロールとしてはハロゲン化銀粒子形成時のpAg、ハロゲン組成、ハロゲン化銀溶剤の濃度、pHなどのコントロールや下記一般式(I)の化合物の添加などが好ましく用いられる。
一般式(I):YO(CH2CH2O)m(CH(CH3)CH2O)p(CH2CH2O)nY。
【0062】
一般式(I)において、Yは水素原子、−SO3M又は−COBCOOMを表す。Mは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基又は炭素数5以下のアルキル置換アンモニウム基を表し、Bは有機2塩基性酸を形成する鎖状又は環状基を表す。m及びnは各々0〜50の整数を表し、pは1〜100の整数を表す。
【0063】
本発明における平板粒子は粒子内部に転位線を有することが好ましい。以下に平板粒子内への転位線導入についてに説明する。
【0064】
転位線とは結晶のすべり面上で、すでにすべった領域とまだすべらない領域の境界にある線状の格子欠陥のことである。ハロゲン化銀結晶の転位線に関しては、1)C.R.Berry,J.Appl.Phys.,27,636(1956),2)C.R.Berry,D.C.Skilman,J.Appl.Phys.,35,2165(1964),3)J.F.Hamilton,Phot.Sci.Eng.,11,57(1967),4)T.Shiozawa,J.Soc.Phot.Sci.Jap.,34,16(1971),5)T.Shiozawa,J.Soc.Phot.Sci.Jap.,35,213(1972)等の文献があり、X線回折法または低温透過型電子顕微鏡を用いた直接的観察方法により解析できる。透過型電子顕微鏡を用いて転位線を直接観察する場合、粒子に転位線が発生するほどの圧力をかけないよう注意して乳剤から取り出したハロゲン化銀粒子を電子顕微鏡観察用のメッシュにのせ、電子線による損傷(例えばプリントアウト)を防ぐように試料を冷却した状態で透過法により観察を行う。
【0065】
この場合、粒子の厚みが厚いほど電子線が透過しにくくなるので、高圧型(0.25μmの厚さに対して、200kV以上)の電子顕微鏡を用いたほうがより鮮明に観察することができる。
【0066】
一方、転位線の写真性能に及ぼす影響としては、G.C.Farnell,R.B.Flint,J.B.Chanter,J.Phot.Sci.,13,25(1965)の文献があり、大きいサイズの高アスペクト比平板状ハロゲン化銀粒子において、潜像核が形成される場所と粒子内の欠陥とが密接な関係にあることが示されている。例えば米国特許4,806,461号、5,498,516号、同5,496,694号、同5,476,760号、同5,567,580号、特開平4−149541号、同4−149737号にはハロゲン化銀粒子中に転位線をコントロールして導入する技術に関して記載がある。これらの特許の中で転位線を導入した平板粒子は、転位線のない平板粒子と比較して、感度、圧力性等の写真特性に優れていることが示されている。本発明において、これらの特許等に記載の乳剤を用いることは好ましい。
【0067】
本発明では次のようにして平板粒子内部への転位線導入を行なうことが好ましい。すなわち、基盤となる平板粒子(ホスト粒子とも言う)への沃化銀を含むハロゲン化銀相のエピタキシャル成長とその後のハロゲン化銀シェルの形成による転位線の導入である。
【0068】
ホスト粒子の沃化銀含有率は0〜15モル%であることが好ましく、より好ましくは0〜12モル%、特に好ましくは0〜10モル%であるが、目的に応じて選んで良い。15モル%を超えると一般に現像速度が遅れるため好ましくない。
【0069】
ホスト粒子上にエピタキシャル成長させるハロゲン化銀相の組成は沃化銀含有率の高い方が好ましい。このエピタキシャル成長させるハロゲン化銀相は沃化銀、沃臭化銀、塩沃臭化銀、塩沃化銀のいずれでも良いが、沃化銀または沃臭化銀であることが好ましく、沃化銀であることがさらに好ましい。沃臭化銀である場合の好ましい沃化銀(沃化物イオン)含有率は1〜45モル%でありより好ましくは5〜45モル%、特に好ましくは10〜45モル%である。転位線導入に必要なミスフィットを形成する点で沃化銀含有率は高いほど好ましいが、45モル%は沃臭化銀の固溶限界である。
【0070】
ホスト粒子上にエピタキシャル成長させるこの高沃化銀含有率相を形成するために添加するハロゲン量は、ホスト粒子の銀量の2〜15モル%であることが好ましく、より好ましくは2〜10モル%、特に好ましくは2〜5モル%である。2モル%未満では転位線が導入されにくく好ましくない。15モル%を超えると現像速度が遅れるため好ましくない。
【0071】
この時、この高沃化銀含有率相は粒子形成後から見て全体の粒子銀量の5〜60モル%の範囲内に存在することが好ましく、より好ましくは10〜50モル%、特に好ましくは20〜40モル%の範囲内に存在することである。5モル%未満でも、また60モル%を超えても転位線導入による高感化が得にくく好ましくない。
【0072】
また、この高沃化銀含有率相をホスト粒子上に形成する場所は任意であり、ホスト粒子を覆ったり特定の部位のみに形成させても良いが、特定の部位を選びエピタキシャル成長させることによって粒子内の転位線の位置を制御することは好ましいことである。
【0073】
本発明では高沃化銀含有率相をホスト平板粒子の側面及び/または頂点部に形成することが特に好ましい。その際、添加するハロゲン化物の組成・添加方法、反応液の温度・pAg・溶剤濃度・ゼラチン濃度・イオン強度などを自由に選んで用いても良い。粒子内の沃化銀含有率相は、例えば特開平7−219102号などに記載の分析電顕によって測定し得る。
【0074】
本発明でこの高沃化銀含有率相をホスト粒子上に形成する際は、沃化カリウムのような水溶性沃化物溶液を単独あるいは硝酸銀等の水溶性銀塩溶液と同時に添加する方法、沃化銀を含むハロゲン化銀を微粒子の形で添加する方法あるいは例えば米国特許5,498,516号や同5,527,664号に記載のアルカリや求核剤との反応により沃化物イオン放出剤から沃化物イオンを放出させる方法等を好ましく用いることができる。
【0075】
この高沃化銀含有率相をホスト粒子上にエピタキシャル成長させた後、ホスト平板粒子の外側にハロゲン化銀シェルを形成すると転位線が導入される。このハロゲン化銀シェルの組成は臭化銀、沃臭化銀、塩沃臭化銀のいずれでも良いが、臭化銀または沃臭化銀であることが好ましい。
【0076】
沃臭化銀である場合の好ましい沃化銀含有率は0.1〜12モル%であり、より好ましくは0.1〜10モル%、最も好ましくは0.1〜3モル%である。 0.1モル%未満では色素吸着の強化、現像促進などの効果が得にくく好ましくない。12モル%を超えると現像速度が遅れるため好ましくない。
【0077】
このハロゲン化銀シェル成長に用いる銀量は全体の粒子銀量の10ないし50モル%であることが好ましく、より好ましくは20ないし40モル%である。
【0078】
上述の転位線導入過程における好ましい温度は30〜80℃であり、より好ましくは35〜75℃、特に好ましくは35〜60℃である。30℃未満の低温あるいは80℃を超える高温での温度制御を行うには能力の高い製造装置が必要であり製造上好ましくない。また、上述の転位線導入過程における好ましいpAgは6.4〜10.5である。
【0079】
平板粒子の場合、前述のように電子顕微鏡を用いて撮影した粒子の写真より、主表面に対して垂直方向から見た場合の各粒子についての転位線の位置と本数を求めることができる。本発明の平板粒子に転位線を導入する場合、出来るだけ粒子フリンジ部に限定することが好ましい。本発明で言うフリンジ部とは平板粒子の外周のことを指し、詳しくは平板粒子の辺から中心にかけての沃化銀の分布において、辺側から見て初めてある点の沃化銀含有率が粒子全体の平均沃化銀含有率を超えた点、もしくは下回った点の外側を指す。
【0080】
本発明では平板粒子フリンジ部に高密度の転位線を導入することは好ましく、粒子フリンジ部に10本以上の転位線を有する平板粒子が好ましい。より好ましくは30本以上、さらに好ましくは50本以上の転位線を粒子フリンジ部に有する。転位線が密集して存在する場合、または転位線が互いに交わって観察される場合には、1粒子当たりの転位線の数は明確には数えることができないことがある。しかしながら、これらの場合においてもおおよそ10本、20本、30本という程度には数えることができる。
【0081】
本発明の平板粒子は粒子間の転位線量分布が均一であることが粒子間の均質性の点で好ましい。本発明の乳剤では、粒子フリンジ部に1粒子当たり10本以上の転位線を含むハロゲン化銀平板粒子が全粒子個数の50%以上を占めることが好ましく、より好ましくは80%以上を占める。50%未満では高感化が得られにくく好ましくない。
【0082】
また、本発明では1粒子当たり30本以上の転位線を含むハロゲン化銀平板粒子が全粒子個数の50%以上を占めることが好ましく、より好ましくは80%以上を占める。
【0083】
さらに、本発明の平板銀粒子は粒子内の転位線導入位置が均質であることが望ましい。本発明の乳剤では実質的に粒子フリンジ部のみに転位線が局在するハロゲン化銀平板粒子が全粒子個数の50%以上を占めることが好ましく、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上を占める。
【0084】
本明細書において、「実質的に粒子フリンジ部のみ」とは、粒子フリンジ部以外、すなわち粒子中心部に転位線を5本以上含まないことをいう。粒子中心部とは、粒子を主表面に対して垂直方向から見たときにフリンジ領域に囲まれた内側の領域をいう。
【0085】
本発明において転位線を含む粒子の割合及び転位線の本数を求める場合は、少なくとも100粒子について転位線を直接観察して求めることが好ましく、より好ましくは200粒子以上、特に好ましくは300粒子以上について観察して求める。
【0086】
また、本発明の乳剤では全粒子個数の50%以上が、粒子フリンジ部の平均沃化銀含有率が粒子中心部の平均沃化銀含有率よりも2モル%以上の高い平板粒子によって占められることが好ましく、より好ましくは粒子フリンジ部の平均沃化銀含有率が粒子中心部の平均沃化銀含有率よりも4モル%以上、さらに好ましくはしくは粒子フリンジ部の平均沃化銀含有率が粒子中心部の平均沃化銀含有率よりも5モル%以上高い平板粒子によって占められる。
【0087】
平板粒子内の沃化銀含有率に関しては例えば分析電顕を用いて特開平7−219102号に記載の方法で求められる。
【0088】
さらに本発明の平板粒子は電子捕獲ゾーンを有する。電子捕獲ゾーンとは電子捕獲中心となる化合物(以下、単に「電子捕獲中心」又は「金属錯体」ともいう)含有濃度が1×10-5モル/モル局所銀から1×10-3モル/モル局所銀で、粒子体積の5%以上40%以下を占める部分のことを言う。電子捕獲中心含有濃度が5×10-5モル/モル局所銀から5×10-4モル/モル局所銀であるとより好ましい。ここで、電子捕獲中止の含有濃度の規定で用いた「モル/モル局所銀」とは、電子捕獲中心となる化合物と同時に添加した銀量に対する電子捕獲中心の濃度をいう。
【0089】
電子捕獲ゾーン中の電子捕獲中心濃度は均一であることが必要である。均一であるとは電子捕獲中心の粒子内への導入を単位銀量当たり一定量で行い、かつ粒子形成に用いる硝酸銀と同時期に電子捕獲中心を粒子形成用反応容器に導入することをいう。このときハロゲン溶液も同時に添加されて良い。電子捕獲中心となる化合物を水溶液として添加しても良いし、電子捕獲中心となる化合物をドープまたは吸着させた微粒子を調製し添加しても良い。
【0090】
電子捕獲ゾーンは粒子内のどの部分にあっても良い。また電子捕獲ゾーンが粒子内に2カ所以上あっても良い。
電子捕獲ゾーンを形成するために必要な電子捕獲中心は以下の一般式で表される。
【0091】
一般式I
[M(CN)x1L(6-x1)]n+
一般式II
[M(CN)x2L(4-x2)]n+
一般式III
[ML1x2X(6-2x3)]n+
一般式IV
[ML1(6-3i) × 1/3L2iX(6-3i) × 1/3]n+。
【0092】
式中、Mは任意の金属または金属イオン、Lは鎖式または環状の炭化水素を母体とするか、またはその母体構造の一部の炭素または水素原子が他の原子または原子団によって置き換えられた化合物を表す。ただしLは全て同一の化合物であっても異なる化合物でも良い。L1は金属または金属イオンに2座配位する有機化合物、L2は金属または金属イオンに3座配位する有機化合物を表す。Xは任意の化学種を表す。
x1は0から6の整数、x2は0から4の整数、x3は2または3、iは1または2である。
【0093】
一般式V
[L’nM(L(ML’m)j)k]p
式中Mは任意の金属または金属イオンを表す。Mは全て同一の金属種であっても異なる金属種であっても良い。Lは架橋配位子であり、2つ以上の金属または金属イオンを架橋することができる有機化合物を表す。L’はH2O、NH3、CO、N2、NO2、CO2、SO2、SO3、N2H4、O2、もしくはPH3である無電荷の小分子、任意の有機化合物、または任意の無機陰イオンを表し、これらは全て同一の化学種であっても異なる化学種であっても良い。nは1から5までの整数、mは0から5までの整数、jは1から4までの整数、kは1以上の整数、pは錯体全体の電荷を表す。
【0094】
6配位八面体錯体がドーパントとしてハロゲン化銀粒子に組み込まれる時には、J.Phys.:Condens.Matter9(1997)3227−3240をはじめとする多くの文献や特許公報に記載される様に、ハロゲン化銀粒子中の〔AgX6〕5-(X-=ハロゲンイオン)を一つのユニットとして粒子の一部とドーパントが置き換わるとされている。従って、ドープする錯体の分子サイズが大きくなり過ぎるとドーパントには適さなくなることが予測され、また、ドープする錯体の電荷が−5から離れる程、この置き換えにおいては不利になると考えられる。分子モデルによる考察からは、ドープされる錯体が5員環あるいは6員環の化合物を配位子とする場合には、塩化銀粒子ではハロゲン化銀粒子内の置き換えユニットの大きさを上回ってしまうものと思われるが、臭化銀粒子では格子または錯体分子に僅かな歪みが起こることで粒子内に取り込まれることが可能になると考えられる。
【0095】
配位子として具体的に好ましくは、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾールである様な脱H+により負電荷を持つことが出来る化合物であり、その誘導体を配位子とすることも好ましい。その誘導体中の置換基としては、水素原子、置換もしくは非置換アルキル基(メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、オクチル、2-エチルヘキシル、ドデシル、ヘキサデシル、t-オクチル、イソデシル、イソステアリル、ドデシルオキシプロピル、トリフルオロメチル、メタンスルホニルアミノメチル等)、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、シクロアルキル基(シクロヘキシル、4-t-ブチルシクロヘキシル等)、置換もしくは非置換アリール基(フェニル、p-トリル、p-アニシル、p-クロロフェニル、4-t-ブチルフェニル、2,4-ジ-t-アミノフェニル等)、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(メトキシ、ブトキシ、メトキシエトキシ、ドデシルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ等)、アリールオキシ基(フェノキシ、p-トリルオキシ、p-クロロフェノキシ、4-t-ブチルフェノキシ等)、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、スルホニルオキシ基、置換もしくは非置換アミノ基(アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N-メチルアニリノ等)、アンモニオ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、オキシカルボニルアミノ基、オキシスルホニルアミノ基、置換ウレイド基(3-メチルウレイド、3-フェニルウレイド、3,3-ジブチルウレイド等)、チオウレイド基、アシル基(ホルミル、アセチル等)、オキシカルボニル基、置換もしくは非置換カルバモイル基(エチルカルバモイル、ジブチルカルバモイル、ドデシルオキシプロピルカルバモイル、3-(2,4-ジ-t-アミノフェノキシ)プロピルカルバモイル、ピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル等)、チオカルボニル基、チオカルバモイル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシスルホニル基、スルファモイル基、スルフィノ基、スルファノ基、カルボン酸またはその塩、スルホン酸またはその塩、ホスホン酸またはその塩であることが好ましい。
【0096】
本発明の電子捕獲中心の中心金属としては特に制限はないが、金属周りの配位構造が4配位構造をとるもの、または、6配位構造をとるものが好ましく、金属または金属イオンが不対電子を持たないもの、もしくは、金属のd軌道が配位子場***を起こした時、安定化した軌道には全て電子が満たされているいるものが好ましい。中でも+2価の金属イオンが好ましい。特に好ましくは、アルカリ土類金属、鉄(II)、ルテニウム(II)、オスミウム(II)、亜鉛、カドミウム、水銀の各金属イオンを用いることが好ましく、これらの中でもマグネシウム、鉄(II)、ルテニウム(II)、亜鉛の各金属イオンを用いることが最も好ましい。
【0097】
以下に本発明の金属錯体の具体例を示すが、発明の化合物はこれらに限定されるものではない。
【0098】
〔Fe(CN)6 〕3- 〔Fe(CN)5F〕3-
〔Fe(CN)4F2〕3- 〔Fe(CN)5Cl〕3-
〔Fe(CN)4Cl2〕3- 〔Fe(CN)5Br〕3-
〔Fe(CN)4Br2〕3- 〔Fe(CN)5(SCN)〕3-
〔Fe(CN)5(SCN)〕3- 〔Fe(CN)5(NO)〕3-
〔Fe(CN)5(H2O)〕2- 〔Fe(CN)6〕4-
〔Fe(CN)5F〕4- 〔Fe(CN)4F2〕4-
〔Fe(CN)5Cl〕4- 〔Fe(CN)4Cl2〕4-
〔Fe(CN)5Br〕4- 〔Fe(CN)4Br2〕4-
〔Fe(CN)5(SCN)〕4- 〔Fe(CN)5(SCN)〕4-
〔Fe(CN)5(NO)〕4- 〔Fe(CN)5(H2O)〕3-
〔Fe(CN)5(PZ)〕3- 〔Fe(CN)4(PZ)2〕2-
〔Fe(CN)5(Im)〕3- 〔Fe(CN)4(Im)2〕2-
〔Fe(CN)5(trz)〕3- 〔Fe(CN)4(trz)2〕2-。
【0099】
〔Ru(CN)6 〕4- 〔Ru(CN)5F〕4-
〔Ru(CN)4F2〕4- 〔Ru(CN)5Cl〕4-
〔Ru(CN)4Cl2〕4- 〔Ru(CN)5Br〕4-
〔Ru(CN)4Br2〕4- 〔Ru(CN)5I〕4-
〔Ru(CN)4I2〕4- 〔Ru(CN)5(SCN)〕4-
〔Ru(CN)5(SCN)〕4- 〔Ru(CN)5(NO)〕4-
〔Ru(CN)5(H2O)〕3- 〔Ru(CN)4(PZ)2〕2-
〔Ru(CN)5(PZ)〕3- 〔Ru(CN)4(Im)2〕2-
〔Ru(CN)5(Im)2〕3- 〔Ru(CN)4(trz)2〕2-
〔Ru(CN)5(trz)〕3-。
【0100】
〔Re(CN)5F〕4- 〔Re(CN)6〕4-
〔Re(CN)5Cl〕4- 〔Re(CN)4F2〕4-
〔Re(CN)5Br〕4- 〔Re(CN)4Cl2〕4-
〔Re(CN)5I〕4- 〔Re(CN)4Br2〕4-
〔Re(CN)4I2 〕4- 。
【0101】
〔Os(CN)6 〕4- 〔Os(CN)5F〕4-
〔Os(CN)4F2 〕4- 〔Os(CN)5Cl〕4-
〔Os(CN)4Cl2 〕4- 〔Os(CN)5Br〕4-
〔Os(CN)4Br2 〕4- 〔Os(CN)5I〕4-
〔Os(CN)4I2 〕4- 〔Os(CN)5(SCN)〕4-
〔Os(CN)5(SCN)〕4- 〔Os(CN)5(NO)〕4-
〔Os(CN)5(H2O)〕3- 〔Os(CN)4(PZ)2〕2-
〔Os(CN)5(PZ)〕3- 〔Os(CN)4(Im)2〕3-
〔Os(CN)5(Im)〕3- 〔Os(CN)4(trz)〕2-
〔Os(CN)5(trz)〕3-。
【0102】
〔Ir(CN)5Cl〕3- 〔Ir(CN)6〕3-
〔Ir(CN)5Br〕3- 〔Ir(CN)4Cl2〕3-
〔Ir(CN)5I〕3- 〔Ir(CN)4Br2〕3-
〔Ir(CN)5(NO)〕3- 〔Ir(CN)4I2〕3-
〔Ir(CN)5(H2O)〕2-。
【0103】
〔Pt(CN)4〕2- 〔Pt(CN)4Cl2〕2-
〔Pt(CN)4Br2〕2- 〔Pt(CN)4I2〕2-
〔Au(CN)4〕- 〔Au(CN)2Cl2〕2-。
【0104】
上記金属錯体において、
PZ=ピラゾール、Im=イミダゾール、trz=トリアゾールである。
【0105】
【化1】
【0106】
【化2】
【0107】
【化3】
【0108】
【化4】
【0109】
【化5】
【0110】
【化6】
【0111】
【化7】
【0112】
【化8】
【0113】
【化9】
【0114】
【化10】
【0115】
【化11】
【0116】
【化12】
【0117】
【化13】
【0118】
【化14】
【0119】
【化15】
【0120】
【化16】
【0121】
【化17】
【0122】
【化18】
【0123】
【化19】
【0124】
【化20】
【0125】
本発明において、好ましく用いる各配位子では、H+が付加した状態にあっても、脱H+した状態であってもよい。
【0126】
本発明において錯体分子は水溶液中で対イオンと完全に解離し、陰イオンまたは陽イオンの形態で存在するため、写真性能の上で対イオンは重要ではない。錯体分子が陰イオンとなり陽イオンと塩を成した時、その対陽イオンとしては、水に溶解しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈澱操作に適合しているナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、以下に示す一般式VIで表せるアルキルアンモニウムイオンを用いることが好ましい。
【0127】
一般式VI
[NR1R2R3R4]+
式中、R1、R2、R3およびR4は、メチル基、エチル基、プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基から任意に選んだ置換基を表す。なかでも、R1、R2、R3およびR4がすべて等しい置換基であるテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオンおよびテトラ(n-ブチル)アンモニウムイオンが好ましい。また、配位子中の配位していない窒素原子にH+イオンが付加したピラゾリウムカチオンやイミダゾリウムカチオンを対陽イオンとすることも好ましい。
【0128】
錯体分子が陽イオンとなり陰イオンと塩を成した時、その対陰イオンとしては、水に溶解しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈澱操作に適合しているハロゲンイオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、ヘキサフルオロケイ酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸等を用いることが好ましい。なお、対陰イオンとして、シアノイオン、チオシアノイオン、亜硝酸イオン、シュウ酸イオン等の配位性の強い陰イオンを用いると、錯体の配位子として用いているハロゲンイオンと配位子交換反応を起こし本発明の錯体の組成及び構造を保持出来ない可能性が高いので、これらの陰イオンを用いることは好ましくない。
【0129】
本発明の金属錯体はいくつかの方法によって合成することが出来る。例えば、ピラゾール、イミダゾールを配位子とするマグネシウム錯体、鉄錯体、及び亜鉛錯体は脱水した溶媒中で配位子となるピラゾールまたはイミダゾールを各金属の過塩素酸塩またはテトラフルオロホウ素酸塩と反応させることで得ることが出来る。具体的な合成例として、各錯体の合成方法がRec.Trav.Chim.,1969,88,1451に記載されている。また、ルテニウム−トリアゾール錯体がInorg.Chim.Acta1983,71,155に記載されているルテニウム−トリアゾール錯体の反応を参考にすることで合成できる。
【0130】
本発明の乳剤は全粒子の平均表面ヨード含量は5モル%以下であると好ましい。表面ヨード含量の測定はESCA(XPSという名称もある)法(X線を照射し粒子表面から出て来る光電子を分光する方法)により確認することができる。本発明の表面ヨード含量はより好ましくは4モル%以下、さらに好ましくは3モル%以下である。
【0131】
さらに本発明の平板粒子は円相当径Dに対して0.05D以上の長さの転位線を10本以上有していると好ましい。より好ましくは0.1D以上の長さの転位線を10本以上有する。
【0132】
転位線は例えば特開平3−175440の実施例の記載を参考に導入することができ、フリンジ部に導入されていても良いし、粒子の頂点付近にのみ導入されていても良い。また特開平6−258745号記載のヨード放出剤を使用して転位線を導入することも好ましい。
【0133】
転位線の長さを特に長くする場合には、晶相制御剤を用いることが好ましい。平板粒子において転位線の導入されていない部分をコア、転位線が導入されている部分をシェルと呼ぶときに、シェル部に下記一般式(VII)または(VIII)で示される晶相制御剤を存在させ、転位線の長さをコントロールすることができる。
【0134】
【化21】
【0135】
【化22】
【0136】
一般式(VII)、及び(VIII)に於いて、A1、A2、A3およびA4は含窒素ヘテロ環を完成させるための非金属原子群を表わし、それぞれが同一でも異なってもよい。Bは2価の連結基を表わす。mは0または1をあらわす。R1、R2は各々アルキル基を表わす。X-はアニオンを表わす。nは0または1を表わし、分子内塩のときはnは0である。
【0137】
以下、一般式(VII)及び(VIII)について更に詳しく説明する。
A1、A2、A3およびA4は、含窒素ヘテロ環を完成させるための非金属原子群を表わし、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでもよく、ベンゼン環が縮環してもかまわない。A1、A2、A3およびA4で構成されるヘテロ環は置換基を有してもよく、それぞれが同一でも異っていてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、スルファモイル基、カルバモイル基、ウレイド基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表わす。好ましい例としてはA1、A2、A3およびA4は5〜6員環(例えば、ピリジン環、イミダゾール環、チオゾール環、オキサゾール環、ピラジン環、ピリミジン環など)をあげることができ、さらに好ましい例としてピリジン環をあげることができる。
【0138】
Bは、2価の連結基を表わす。2価の連結基とは、アルキレン、アリーレン、アルケニレン、−SO2−、−SO−、−O−、−S−、−CO−、−N(R3)−(R3はアルキル基、アリール基、水素原子を表わす。)を単独または組合せて構成されるものを表わす。好ましい例としては、Bはアルキレン、アルケニレンをあげることができる。
【0139】
R1とR2は、炭素数1以上20以下のアルキル基を表わす。R1とR2は同一でも異なっていてもよい。アルキル基とは、置換あるいは無置換のアルキル基を表わし、置換基としては、A1、A2、A3およびA4の置換基としてあげた置換基と同様である。好ましい例としては、R1とR2はそれぞれ炭素数4〜10のアルキル基を表わす。さらに好ましい例として置換あるいは無置換のアリール置換アルキル基を表わす。
【0140】
X-はアニオンを表わす。例えば、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、p−トルエンスルホナート、オギザラート、を表わす。
nは0または1を表わし、分子内塩の場合には、nは0である。
【0141】
以下に一般式(VII)または一般式(VIII)で表わされる化合物の具体例を列挙するが、本発明はこれらの化合物のみに限定されるものではない。
【0142】
【化23】
【0143】
一般式(VII)又は(VIII)で表わされる化合物例に関しては特開平2−32号の記載を参考にする事ができる。
【0144】
本発明において、一般式(VII)または(VIII)で表わされる化合物の添加量は、ハロゲン化銀1モル当たり10-5〜3×10-1モルの範囲で用いる事ができ、2×10-4〜1×10-1モルが特に好ましい。
【0145】
さらに下記の一般式(IX)で表わされる晶癖制御剤を用いる事ができる。
【0146】
【化24】
【0147】
式中、R1はアルキル基、アルケニル基、アラルキル基を表わし、R2、R3、R4、R5およびR6は水素原子またはこれを置換可能な基を表わす。
ただしR2とR3、R3とR4、R4とR5、R5とR6は縮環してもよい。X-は対アニオンを表わす。
【0148】
次に一般式(IX)について詳細に説明する。一般式(IX)において、R1は炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル)、炭素数2〜20のアルケニル基(例えば、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル)、炭素数7〜20のアラルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル)を表わす。R1で表わされる各基は置換されていてもよい。置換基としては以下のR2〜R6で表わされる置換可能な基が挙げられる。
【0149】
R2、R3、R4、R5およびR6は同じであっても異なっていてもよく、水素原子またはこれを置換可能な基を表わす。置換可能な基としては、以下のものが挙げられる。
【0150】
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、アルケニル基(例えば、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニル等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル、3−ペンチニル等)、アラルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル等)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル、4−メチルフェニル等)、ヘテロ環基(例えば、ピリジル、フリル、イミダゾリル、ピペリジル、モルホリノ等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−ナフチルオキシ等)、アミノ基(例えば、無置換アミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、アニリノ等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ等)、ウレイド基(例えば、無置換ウレイド、N−メチルウレイド、N−フェニルウレイド等)、ウレタン基(例えば、メトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ等)、スルホニルアミノ基(例えば、メチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ等)、スルファモイル基(例えば、無置換スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル等)、カルバモイル基(例えば、無置換カルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル等)、スルホニル基(例えば、メシル、トシル等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル、フェニルスルフィニル等)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル等)、アシル基(例えば、アセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイル等)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ、ベンゾイルオキシ等)、リン酸アミド基(例えば、N,N−ジエチルリン酸アミド等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ等)、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、ホスホノ基、ニトロ基、スルフィノ基、アンモニオ基(例えばトリメチルアンモニオ等)、ホスホニオ基、ヒドラジノ基等である。これらの基はさらに置換されていてもよい。また置換基が二つ以上あるときは同じでも異なっていてもよい。
【0151】
R2とR3、R3とR4、R4とR5、R5とR6は縮環してキノリン環、イソキノリン環、アクリジン環を形成してもよい。X-は対アニオンを表わす。対アニオンとしては例えば、ハロゲンイオン(クロロイオン、臭素イオン)、硝酸イオン、硫酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、トリフロロメタンスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0152】
一般式(IX)において好ましくは、R1がアラルキル基を表し、R2、R3、R4、R5またはR6の少なくとも一つがアリール基を表す。一般式(IX)においてより好ましくは、R1がアラルキル基を表し、R4がアリール基を表し、X-がハロゲンイオンを表わす。
【0153】
以下に一般式(IX)の化合物の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0154】
【化25】
【0155】
本発明において、一般式(IX)で表わされる化合物の添加量は、ハロゲン化銀1モル当たり10-5〜10-1モルの範囲で用いる事ができ、2×10-4〜1×10-1モルが特に好ましい。
【0156】
さらに下記の一般式(X)で表わされる晶癖制御剤も用いる事ができる。
【0157】
【化26】
【0158】
式中、Xは、硫黄原子または、酸素原子を表わすが、好ましくは、硫黄原子である。Qは、5または6員のヘテロ環を完成するのに必要な原子群を表わし、例えば、チアゾリジン−2−チオン環、4−チアゾリン−2−チオン環、1,3,4−チアジアゾリン−2−チオン環、ベンズチアゾリン−2−チオン環、ベンズオキサゾリン−2−チオン環などが挙げられる。
【0159】
R0は、アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル)、アルケニル基(例えば、アリル)、アラルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル)、アリール基(例えば、フェニル)、またはヘテロ環残基(例えば、ピリジル)を表わす。
【0160】
また、Qで形成されるヘテロ環や、R0は無置換でもまた更に置換されてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホニル基、スルホンアミド基、アミド基、アシル基、スルファモイル基、カルバモイル基、ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリロキシカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノカルボニルチオ基、アルキルカルボニルチオ基、アリールカルボニルチオ基、シアノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環残基などから適宜に選ぶことができる。
【0161】
以下に本発明に用いられる一般式(X)で表わされる化合物の具体例を示すが、本発明の範囲は、これらの化合物に限定されるものではない。
【0162】
【化27】
【0163】
一般式(X)で表わされる化合物としてはこの他に特開平1−155332号に記載された化合物を用いることができる。
【0164】
本発明において、一般式(X)で表わされる化合物の添加量は、ハロゲン化銀1モル当たり2×10-5〜3×10-1モルの範囲で用いる事ができ、2×10-4〜3×10-1モルが特に好ましい。
【0165】
さらに下記一般式(XI)で表わされる晶癖制御剤を用いる事ができる。
【0166】
【化28】
【0167】
ここでZは6ケの原子からなるヘテロ環を形成する原子で、炭素或いは窒素からなる。Rは水素或いは一価のアミノ置換基(例えば炭化水素或いは炭化水素基)或いはZで構成される6員ヘテロ環につく5又は6のヘテロ環である。
【0168】
この一般式(XI)で表わされる化合物の例として下記があげられる。US−4400463号に開示されているアミノアザインデン、US−4713323号及びUS−4804621号に開示されている4−アミノピラゾロ〔3,4−d〕ピリミジン、US−5178998号に開示されているキサンチン、US−5185239号に開示されているトリアミノピリミジン等である。本発明において、一般式(XI)で表わされる化合物の添加量はハロゲン化銀1モル当たり10-5〜3×10-1モルの範囲で使用する事が好ましく特に2×10-4〜10-1モルの範囲で使用する事が好ましい。
【0169】
一般式(VII)〜(XI)で示される化合物は、ハロゲン化銀粒子において、(100)面より(111)面に選択的に吸着し、(111)面を安定化する作用を持つ。シェル形成中にこの晶癖制御剤((111)面選択性を有する)が存在する事により、本発明の平板粒子を得る事ができる。本発明に用いられる制御剤はこの(111)選択吸着性があればよく、使用される化合物は上記の一般式に限定されるものではない。
【0170】
本発明に有用な(111)面選択晶癖制御効果は下記のテスト法で簡単に見いだす事ができる。即ち通常のアルカリ処理骨ゼラチンを分散媒に用い、75℃で硝酸銀と臭化カリウムを銀電極と参照電極に飽和カロメル電極を用いて、+90mVでコントロールダブルジェット法で粒子形成すると、(100)を持った立方体臭化銀粒子が得られる。その際、粒子形成の途中に(111)晶癖制御剤を添加すると、立方体に(111)面が現れ始めて14面体となり(角部が丸くなる場合もある)、さらに全ての面が(111)である八面体に変化する事で、この(111)晶癖制御剤の効果を明確に知る事ができる。
【0171】
上記の(111)選択性晶癖制御剤が存在しないと、コア/シェルの界面で発生した転位線は、平板粒子が横方向に成長する事を妨げ、従って平板粒子は専ら厚さ方向の成長をするようになる。この転位の横方向成長抑制作用の原因は明らかではないが、この効果に為、転位線を有するシェル部分の投影面積はどうしても、小さくなってしまう。シェル部の比率を上げるべくコアが小さいうちから、転位を発生させても、その転位発生部分からもう横方向には成長する事ができなくなり、平板粒子はいたずらに厚さ方向ばかり成長し、結果的には平板粒子のアスペクト比は低下するばかりになってしまう。これでは平板粒子の特性を十分に利用する事ができなくなる。しかし、この問題は本明細書に開示した技術で解決できる。即ちコアで転位を発生させた後、シェル形成で、上記の(111)面吸着選択性のある晶癖制御剤を存在させる事で、転位が存在していても、平板粒子は横方向に成長できるようになる。これは該晶癖制御剤が(111)表面である平板粒子の主表面に選択的に吸着する為、厚さ方向の成長が顕著に抑制され、相対的に横方向の成長速度が厚さ方向のそれより大きくなる為と考えられる。かくして本特許に開示された技術を使う事により、投影面積で転位を含むシェルの比率が高くかつ、アスペクト比の高い転位を含む平板粒子を調製する事が可能になる。
【0172】
さらに本発明では粒子形成中に少なくとも3種類のゼラチンを使用することが好ましい。具体的には核形成時に低分子量の酸化処理ゼラチン、粒子形成初期にフタル化ゼラチン、トリメリットゼラチン等の修飾ゼラチン、シェル形成時に未修飾ゼラチンもしくは高分子量ゼラチンを用いる。
【0173】
通常、コア部に異なる種類のゼラチンを添加することは知られているが、シェル部形成時のゼラチン添加により、驚くべきことに粒状性が大きく改善されることを見いだした。各々のゼラチンの添加量は銀1gに対して0.1gから50gの範囲で適切な量を選べばよい。
【0174】
本発明の乳剤およびこれと併用することができる本発明以外の写真乳剤は、グラフキデ著「写真の物理と化学」、ポールモンテル社刊(P.Glafkides,Chemie et Phisique Photographique,Paul Montel,1967)、ダフィン著「写真乳剤化学」,フォーカルプレス社刊(G.F.Duffin,Photographic Emulsion Chemistry(Focal Press,1966))、ゼリクマン等著「写真乳剤の製造と塗布」、フォーカルプレス社刊(V.L.Zelikman et al.,Making and Coating Photographic Emulsion,Focal Press,1964)などに記載された方法を用いて調製することができる。すなわち、酸性法、中性法、アンモニア法等のいずれでもよく、また可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形式としては片側混合法、同時混合法、それらの組合わせなどのいずれを用いてもよい。粒子を銀イオン過剰の下において形成させる方法(いわゆる逆混合法)を用いることもできる。同時混合法の一つの形式としてハロゲン化銀の生成する液相中のpAgを一定に保つ方法、すなわちいわゆるコントロールド・ダブルジェット法を用いることもできる。この方法によると、結晶形が規則的で粒子サイズが均一に近いハロゲン化銀乳剤が得られる。
【0175】
乳剤調製用の反応容器にあらかじめ沈澱形成したハロゲン化銀粒子を添加する方法、米国特許第4,334,012号、同第4,301,241号、同第4,150,994号に記載の方法は、場合により好ましい。これらは種結晶として用いることもできるし、成長用のハロゲン化銀として供給する場合も有効である。後者の場合、粒子サイズの小さい乳剤を添加するのが好ましく、添加方法として一度に全量添加、複数回に分割して添加あるいは連続的に添加するなどのなかから選んで用いることができる。また表面を改質させるために種々のハロゲン組成の粒子を添加することも場合により有効である。
【0176】
ハロゲン化銀粒子のハロゲン組成の大部分あるいはごく一部分をハロゲン変換法によって変換させる方法は米国特許第3,477,852号、同第4,142,900号、欧州特許(以下、EUともいう)第273,429号、同第273,430号、***公開特許第3,819,241号などに開示されており、有効な粒子形成法である。より難溶性の銀塩に変換するのに可溶性ハロゲンの溶液あるいはハロゲン化銀粒子を添加することができる。一度に変換する、複数回に分割して変換する、あるいは連続的に変換するなどの方法から選ぶことができる。
【0177】
粒子成長の方法として、一定濃度、一定流速で可溶性銀塩とハロゲン塩を添加する方法以外に、英国特許(以下、GBともいう)第1,469,480号、米国特許第3,650,757号、同第4,242,445号に記載されているように濃度を変化させる、あるいは流速を変化させる粒子形成法は好ましい方法である。濃度を増加させる、あるいは流速を増加させることにより、供給するハロゲン化銀量を添加時間の一次関数、二次関数、あるいはより複雑な関数で変化させることができる。また必要により供給ハロゲン化銀量を減量することも場合により好ましい。さらに溶液組成の異なる複数個の可溶性銀塩を添加する、あるいは溶液組成の異なる複数個の可溶性ハロゲン塩を添加する場合に、一方を増加させ、もう一方を減少させるような添加方式も有効な方法である。
【0178】
可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩の溶液を反応させる時の混合器は米国特許第2,996,287号、同第3,342,605号、同第3,415,650号、同第3,785,777号、***公開特許2,556,885号、同第2,555,364号に記載されている方法のなかから選んで用いることができる。
【0179】
熟成を促進する目的に対してハロゲン化銀溶剤が有用である。例えば熟成を促進するのに過剰量のハロゲンイオンを反応器中に存在せしめることが知られている。また他の熟成剤を用いることもできる。これらの熟成剤は銀およびハロゲン化物塩を添加する前に反応器中の分散媒中に全量を配合しておくことができるし、ハロゲン化物塩、銀塩または解膠剤を加えると共に反応器中に導入することもできる。別の変形態様として、熟成剤をハロゲン化物塩および銀塩添加段階で独立して導入することもできる。
【0180】
熟成剤としては、例えば、アンモニア、チオシアン酸塩(例えば、ロダンカリ、ロダンアンモニウム)、有機チオエーテル化合物(例えば、米国特許第3,574,628号、同第3,021,215号、同第3,057,724号、同第3,038,805号、同第4,276,374号、同第4,297,439号、同第3,704,130号、同第4,782,013号、特開昭57−104926号に記載の化合物)、チオン化合物(例えば、特開昭53−82408号、同55−77737号、米国特許第4,221,863号に記載されている四置換チオウレアや、特開昭53−144319号に記載されている化合物)や、特開昭57−202531号に記載されているハロゲン化銀粒子の成長を促進しうるメルカプト化合物、アミン化合物(例えば、特開昭54−100717号)があげられる。
【0181】
本発明の乳剤の調製時に用いられる保護コロイドとして、及びその他の親水性コロイド層のバインダーとしては、ゼラチンを用いるのが有利であるが、それ以外の親水性コロイドも用いることができる。
【0182】
例えば、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼインのような蛋白質;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル類のようなセルロース誘導体;アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体のような糖誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾールのような単一あるいは共重合体の如き多種の合成親水性高分子物質を用いることができる。
【0183】
ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンやBull.Soc.Sci.Photo.Japan.No.16.P30(1966)に記載されたような酵素処理ゼラチンを用いてもよく、また、ゼラチンの加水分解物や酵素分解物も用いることができる。
【0184】
本発明の乳剤は脱塩のために水洗し、新しく用意した保護コロイド分散にすることが好ましい。水洗の温度は目的に応じて選べるが、5℃〜50℃の範囲で選ぶことが好ましい。水洗時のpHも目的に応じて選べるが2〜10の範囲で選ぶことが好ましい。さらに好ましくは3〜8の範囲である。水洗時のpAgも目的に応じて選べるが5〜10の範囲で選ぶことが好ましい。水洗の方法としてヌードル水洗法、半透膜を用いた透析法、遠心分離法、凝析沈降法、イオン交換法のなかから選んで用いることができる。凝析沈降法の場合には硫酸塩を用いる方法、有機溶剤を用いる方法、水溶性ポリマーを用いる方法、ゼラチン誘導体を用いる方法などから選ぶことができる。
【0185】
米国特許第3,772,031号に記載されているようなカルコゲン化合物を乳剤調製中に添加する方法も有用な場合がある。S、Se、Te以外にもシアン塩、チオシアン塩、セレノシアン酸、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩を存在させてもよい。
【0186】
本発明のハロゲン化銀粒子はカルコゲン増感(硫黄増感、セレン増感等)、貴金属増感(金増感、パラジウム増感等)および還元増感の少なくとも1つをハロゲン化銀乳剤の製造工程の任意の工程で施こすことができる。2種以上の増感法を組み合せることは好ましい。どの工程で化学増感するかによって種々のタイプの乳剤を調製することができる。粒子の内部に化学増感核をうめ込むタイプ、粒子表面から浅い位置にうめ込むタイプ、あるいは表面に化学増感核を作るタイプがある。本発明の乳剤は目的に応じて化学増感核の場所を選ぶことができるが、一般に好ましいのは表面近傍に少なくとも一種の化学増感核を作った場合である。
【0187】
本発明で好ましく実施しうる化学増感の一つはカルコゲン増感と貴金属増感の単独又は組合せであり、ジェームス(T.H.James)著、ザ・フォトグラフィック・プロセス、第4版、マクミラン社刊、1977年、(T.H.James、The Theory of the Photographic Process,4th ed,Macmillan,1977)67−76頁に記載されるように活性ゼラチンを用いて行うことができるし、またリサーチ・ディスクロージャー、120巻、1974年4月、12008;リサーチ・ディスクロージャー、34巻、1975年6月、13452、米国特許第2,642,361号、同第3,297,446号、同第3,772,031号、同第3,857,711、同第3,901,714号、同第4,266,018号、および同第3,904,415号、並びに英国特許第1,315,755号に記載されるようにpAg5〜10、pH5〜8および温度30〜80℃において硫黄、セレン、テルル、金、白金、パラジウム、イリジウムまたはこれら増感剤の複数の組合せとすることができる。貴金属増感においては、金、白金、パラジウム、イリジウム等の貴金属塩を用いることができ、中でも特に金増感、パラジウム増感および両者の併用が好ましい。
【0188】
金増感の場合には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイドのような公知の化合物を用いることができる。パラジウム化合物はパラジウム2価塩または4価の塩を意味する。好ましいパラジウム化合物は、R2PdX6またはR2PdX4で表わされる。ここでRは水素原子、アルカリ金属原子またはアンモニウム基を表わす。Xはハロゲン原子を表わし塩素、臭素または沃素原子を表わす。
【0189】
具体的には、K2PdCl4、(NH4)2PdCl6、Na2PdCl4、(NH4)2PdCl4、Li2PdCl4、Na2PdCl6またはK2PdBr4が好ましい。金化合物およびパラジウム化合物はチオシアン酸塩あるいはセレノシアン酸塩と併用することが好ましい。
【0190】
硫黄増感剤として、ハイポ、チオ尿素系化合物、ロダニン系化合物および米国特許第3,857,711号、同第4,266,018号および同第4,054,457号に記載されている硫黄含有化合物を用いることができる。いわゆる化学増感助剤の存在下に化学増感することもできる。有用な化学増感助剤には、アザインデン、アザピリダジン、アザピリミジンのごとき、化学増感の過程でカブリを抑制し、且つ感度を増大するものとして知られた化合物が用いられる。化学増感助剤改質剤の例は、米国特許第2,131,038号、同第3,411,914号、同第3,554,757号、特開昭58−126526号および前述ダフィン著「写真乳剤化学」、138〜143頁に記載されている。
【0191】
本発明の乳剤は金増感を併用することが好ましい。金増感剤の好ましい量としてハロゲン化銀1モル当り1×10-4〜1×10-7モルであり、さらに好ましいのは1×10-5〜5×10-7モルである。パラジウム化合物の好ましい範囲はハロゲン化銀1モル当たり1×10-3から5×10-7モルである。チオシアン化合物あるいはセレノシアン化合物の好ましい範囲はハロゲン化銀1モル当たり5×10-2から1×10-6モルである。
【0192】
本発明のハロゲン化銀粒子に対して使用する好ましい硫黄増感剤量はハロゲン化銀1モル当り1×10-4〜1×10-7モルであり、さらに好ましいのは1×10-5〜5×10-7モルである。
【0193】
本発明の乳剤に対して好ましい増感法としてセレン増感がある。セレン増感においては、公知の不安定セレン化合物を用い、具体的には、コロイド状金属セレニウム、セレノ尿素類(例えば、N,N−ジメチルセレノ尿素、N,N−ジエチルセレノ尿素)、セレノケトン類、セレノアミド類のようなセレン化合物を用いることができる。セレン増感は硫黄増感あるいは貴金属増感あるいはその両方と組み合せて用いた方が好ましい場合がある。
【0194】
本発明のハロゲン化銀乳剤を粒子形成中、粒子形成後でかつ化学増感前あるいは化学増感中、あるいは化学増感後に還元増感することは好ましい。
【0195】
ここで、還元増感とは、ハロゲン化銀乳剤に還元増感剤を添加する方法、銀熟成と呼ばれるpAg1〜7の低pAgの雰囲気で成長あるいは熟成させる方法、高pH熟成と呼ばれるpH8〜11の高pHの雰囲気で成長あるいは熟成させる方法のいずれを選ぶこともできる。また2つ以上の方法を併用することもできる。
【0196】
還元増感剤を添加する方法は還元増感のレベルを微妙に調節できる点で好ましい方法である。還元増感剤としては、例えば、第一錫塩、アスコルビン酸およびその誘導体、アミンおよびポリアミン類、ヒドラジン誘導体、ホルムアミジンスルフィン酸、シラン化合物、ボラン化合物が公知である。本発明の還元増感にはこれら公知の還元増感剤を選んで用いることができ、また2種以上の化合物を併用することもできる。還元増感剤としては塩化第一錫、二酸化チオ尿素、ジメチルアミンボラン、アスコルビン酸およびその誘導体が好ましい化合物である。還元増感剤の添加量は乳剤製造条件に依存するので添加量を選ぶ必要があるが、ハロゲン化銀1モル当り10-7〜10-3モルの範囲が適当である。
【0197】
還元増感剤は、例えば、水あるいはアルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類のような有機溶媒に溶かし粒子成長中に添加される。あらかじめ反応容器に添加するのもよいが、粒子成長の適当な時期に添加する方法が好ましい。また水溶性銀塩あるいは水溶性アルカリハライドの水溶性にあらかじめ還元増感剤を添加しておき、これらの水溶液を用いてハロゲン化銀粒子を沈澱せしめてもよい。また粒子成長に伴って還元増感剤の溶液を何回かに分けて添加しても連続して長時間添加するのも好ましい方法である。
【0198】
本発明の乳剤の製造工程中に銀に対する酸化剤を用いることが好ましい。銀に対する酸化剤とは、金属銀に作用して銀イオンに変換せしめる作用を有する化合物をいう。特にハロゲン化銀粒子の形成過程および化学増感過程において副生するきわめて微小な銀粒子を、銀イオンに変換せしめる化合物が有効である。ここで生成する銀イオンは、例えば、ハロゲン化銀、硫化銀、セレン化銀のような水に難溶の銀塩を形成してもよく、又、硝酸銀のような水に易溶の銀塩を形成してもよい。
【0199】
銀に対する酸化剤は、無機物であっても、有機物であってもよい。無機の酸化剤としては、例えば、オゾン、過酸化水素およびその付加物(例えば、NaBO2・H2O2・3H2O、2NaCO3・3H2O2、Na4P2O7・2H2O2、2Na2SO4・H2O2・2H2O)、ペルオキシ酸塩(例えば、K2S2O8、K2C2O6、K2P2O8)、ペルオキシ錯体化合物(例えば、K2[Ti(O2)C2O4]・3H2O、4K2SO4・Ti(O2)OH・SO4・2H2O、Na3[VO(O2)(C2H4)2]・6H2O)、過マンガン酸塩(例えば、KMnO4)、クロム酸塩(例えば、K2Cr2O7)のような酸素酸塩、沃素や臭素のようなハロゲン元素、過ハロゲン酸塩(例えば、過沃素酸カリウム)、高原子価の金属の塩(例えば、ヘキサシアノ第二鉄酸カリウム)およびチオスルフォン酸塩がある。
【0200】
また、有機の酸化剤としては、p−キノンのようなキノン類、過酢酸や過安息香酸のような有機過酸化物、活性ハロゲンを放出する化合物(例えば、N−ブロムサクシンイミド、クロラミンT、クロラミンB)が例として挙げられる。
【0201】
本発明の好ましい酸化剤は、オゾン、過酸化水素およびその付加物、ハロゲン元素、チオスルフォン酸塩の無機酸化剤及びキノン類の有機酸化剤である。前述の還元増感と銀に対する酸化剤を併用するのは好ましい態様である。酸化剤を用いた後、還元増感を施こす方法、その逆方法あるいは両者を同時に共存させる方法のなかから選んで用いることができる。これらの方法は粒子形成工程でも化学増感工程でも選んで用いることができる。
【0202】
本発明の写真乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のかぶりを防止し、あるいは写真性能を安定化させる目的で、種々の化合物を含有させることができる。すなわちチアゾール類、例えば、ベンゾチアゾリウム塩、ニトロイミダゾール類、ニトロベンズイミダゾール類、クロロベンズイミダゾール類、ブロモベンズイミダゾール類、メルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトチアジアゾール類、アミノトリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ニトロベンゾトリアゾール類、メルカプトテトラゾール類(特に1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール);メルカプトピリミジン類;メルカプトトリアジン類;例えば、オキサドリンチオンのようなチオケト化合物;アザインデン類、例えば、トリアザインデン類、テトラアザインデン類(特に4−ヒドロキシ置換(1,3,3a,7)テトラアザインデン類)、ペンタアザインデン類のようなかぶり防止剤または安定剤として知られた、多くの化合物を加えることができる。
【0203】
例えば、米国特許第3,954,474号、同第3,982,947号、特公昭52−28660号に記載されたものを用いることができる。好ましい化合物の一つに特開昭63−212932号に記載された化合物がある。かぶり防止剤および安定剤は粒子形成前、粒子形成中、粒子形成後、水洗工程、水洗後の分散時、化学増感前、化学増感中、化学増感後、塗布前のいろいろな時期に目的に応じて添加することができる。これらの化合物は、乳剤調製中に添加して本来のかぶり防止および安定化効果を発現する以外に、粒子の晶壁を制御する、粒子サイズを小さくする、粒子の溶解性を減少させる、化学増感を制御する、色素の配列を制御するなど多目的に用いることができる。
【0204】
本発明の写真乳剤は、メチン色素類その他によって分光増感されることが本発明の効果を発揮するのに好ましい。用いられる色素には、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素およびヘミオキソノール色素が包含される。特に有用な色素は、シアニン色素、メロシアニン色素、および複合メロシアニン色素に属する色素である。これらの色素類には、塩基性複素環核としてシアニン色素類に通常利用される核のいずれをも適用できる。すなわち、例えば、ピロリン核、オキサゾリン核、チオゾリン核、ピロール核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核、イミダゾール核、テトラゾール核、ピリジン核、これらの核に脂環式炭化水素環が融合した核、及びこれらの核に芳香族炭化水素環が融合した核、即ち、例えば、インドレニン核、ベンゾインドレニン核、インドール核、ベンゾオキサドール核、ナフトオキサゾール核、ベンゾチアゾール核、ナフトチアゾール核、ベンゾセレナゾール核、ベンゾイミダゾール核、キノリン核が適用できる。これらの核は炭素原子上に置換基を有していてもよい。
【0205】
メロシアニン色素または複合メロシアニン色素にはケトメチレン構造を有する核として、例えば、ピラゾリン−5−オン核、チオヒダントイン核、2−チオオキサゾリジン−2,4−ジオン核、チアゾリジン−2,4−ジオン核、ローダニン核、チオバルビツール酸核の5〜6員複素環核を適用することができる。
【0206】
これらの増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せは特に、強色増感の目的でしばしば用いられる。その代表例は米国特許第2,688,545号、同第2,977,229号、同第3,397,060号、同第3,522,052号、同第3,527,641号、同第3,617,293号、同第3,628,964号、同第3,666,480号、同第3,672,898号、同第3,679,428号、同第3,703,377号、同第3,769,301号、同第3,814,609号、同第3,837,862号、同第4,026,707号、英国特許第1,344,281号、同第1,507,803号、特公昭43−4936号、同53−12375号、特開昭52−110618号、同52−109925号に記載されている。
【0207】
増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質を乳剤中に含んでもよい。
【0208】
増感色素を乳剤中に添加する時期は、これまで有用であると知られている乳剤調製の如何なる段階であってもよい。もっとも一般的には化学増感の完了後塗布前までの時期に行なわれるが、米国特許第3,628,969号、および同第4,225,666号に記載されているように化学増感剤と同時期に添加し分光増感を化学増感と同時に行なうことも、特開昭58−113928号に記載されているように化学増感に先立って行なうことも出来、またハロゲン化銀粒子沈澱生成の完了前に添加し分光増感を開始することも出来る。更にまた米国特許第4,225,666号に教示されているように、前記化合物を分けて添加すること、即ちこれらの化合物の一部を化学増感に先立って添加し、残部を化学増感の後で添加することも可能であり、米国特許第4,183,756号に開示されている方法を始めとしてハロゲン化銀粒子形成中のどの時期であってもよい。
【0209】
添加量は、ハロゲン化銀1モル当り、4×10-6〜8×10-3モルで用いることができるが、より好ましいハロゲン化銀粒子サイズ0.2〜1.2μmの場合は約5×10-5〜2×10-3モルが有効である。
【0210】
本発明の感光材料は、支持体上に少なくとも1層の感光性層が設けられていればよい。典型的な例としては、支持体上に、実質的に感色性は同じであるが感光度の異なる複数のハロゲン化銀乳剤層から成る感光性層を少なくとも1つ有するハロゲン化銀写真感光材料である。該感光性層は青色光、緑色光、および赤色光の何れかに感色性を有する単位感光性層であり、多層ハロゲン化銀カラー写真感光材料においては、一般に単位感光性層の配列が、支持体側から順に赤感色性層、緑感色性層、青感色性層の順に設置される。しかし、目的に応じて上記設置順が逆であっても、また同一感色性層中に異なる感光性層が挟まれたような設置順をもとり得る。
【0211】
上記のハロゲン化銀感光性層の間および最上層、最下層には非感光性層を設けてもよい。これらには、後述のカプラー、DIR化合物、混色防止剤等が含まれていてもよい。各単位感光性層を構成する複数のハロゲン化銀乳剤層は、DE1,121,470あるいはGB923,045に記載されているように高感度乳剤層、低感度乳剤層の2層を、支持体に向かって順次感光度が低くなる様に配列するのが好ましい。また、特開昭57−112751号、同62−200350号、同62−206541号、同62−206543号に記載されているように支持体より離れた側に低感度乳剤層、支持体に近い側に高感度乳剤層を設置してもよい。
【0212】
具体例として支持体から最も遠い側から、低感度青感光性層(BL)/高感度青感光性層(BH)/高感度緑感光性層(GH)/低感度緑感光性層(GL)/高感度赤感光性層(RH)/低感度赤感光性層(RL)の順、またはBH/BL/GL/GH/RH/RLの順、またはBH/BL/GH/GL/RL/RHの順等に設置することができる。
【0213】
また特公昭55−34932号公報に記載されているように、支持体から最も遠い側から青感光性層/GH/RH/GL/RLの順に配列することもできる。また特開昭56−25738号、同62−63936号に記載されているように、支持体から最も遠い側から青感光性層/GL/RL/GH/RHの順に配列することもできる。
【0214】
また特公昭49−15495号公報に記載されているように、上層に最も感光度の高いハロゲン化銀乳剤層、中層にそれよりも低い感光度のハロゲン化銀乳剤層、下層に中層よりも更に感光度の低いハロゲン化銀乳剤層を配置し、支持体に向かって感光度が順次低められた感光度の異なる3層から構成される配列が挙げられる。このような感光度の異なる3層から構成される場合でも、特開昭59−202464号に記載されているように、同一感色性層中において支持体より離れた側から中感度乳剤層/高感度乳剤層/低感度乳剤層の順に配置してもよい。
【0215】
その他、高感度乳剤層/低感度乳剤層/中感度乳剤層、あるいは低感度乳剤層/中感度乳剤層/高感度乳剤層の順に配置してもよい。また、4層以上の場合にも、上記の如く配列を変えてよい。
【0216】
色再現性を改良するために、US4,663,271、同4,705,744、同4,707,436、特開昭62−160448、同63−89850の明細書に記載の、BL,GL,RLなどの主感光層と分光感度分布が異なる重層効果のドナー層(CL)を主感光層に隣接もしくは近接して配置することが好ましい。
【0217】
本発明に用いられる好ましいハロゲン化銀は約30モル%以下の沃化銀を含む、沃臭化銀、沃塩化銀、もしくは沃塩臭化銀である。特に好ましいのは約2モル%から約10モル%までの沃化銀を含む沃臭化銀もしくは沃塩臭化銀である。
【0218】
写真乳剤中のハロゲン化銀粒子は、立方体、八面体、十四面体のような規則的な結晶を有するもの、球状、板状のような変則的な結晶形を有するもの、双晶面などの結晶欠陥を有するもの、あるいはそれらの複合形でもよい。
【0219】
ハロゲン化銀の粒径は、約0.2μm以下の微粒子でも投影面積直径が約10μmに至るまでの大サイズ粒子でもよく、多分散乳剤でも単分散乳剤でもよい。
【0220】
本発明のハロゲン化銀写真乳剤は、例えばリサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)No.17643(1978年12月), 22 〜23頁, “I. 乳剤製造(Emulsion preparation and types)”、および同No.18716(1979年11月),648頁、同No.307105(1989年11月),863〜865頁、およびグラフキデ著「写真の物理と化学」,ポールモンテル社刊(P.Glafkides,Chimieet Phisique Photographiques,Paul Montel,1967)、ダフィン著「写真乳剤化学」,フォーカルプレス社刊(G.F.Duffin,Photographic Emulsion Chemistry,Focal Press,1966)、ゼリクマンら著「写真乳剤の製造と塗布」、フォーカルプレス社刊(V.L.Zelikman,et al.,Making and Coating Photographic Emulsion,Focal Press,1964)などに記載された方法を用いて調製することができる。
【0221】
US3,574,628、同3,655,394およびGB1,413,748に記載された単分散乳剤も好ましい。
【0222】
また、アスペクト比が約3以上であるような平板状粒子も本発明に使用できる。かかる平板状粒子は、ガトフ著、フォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Gutoff,Photographic Scienceand Engineering)、第14巻248〜257頁(1970年);US4,434,226、同4,414,310、同4,433,048、同4,439,520およびGB2,112,157に記載の方法により簡単に調製することができる。
【0223】
結晶構造は一様なものでも、内部と外部とが異質なハロゲン組成からなるものでもよく、層状構造をなしていてもよい。エピタキシャル接合によって組成の異なるハロゲン化銀が接合されていてもよく、例えばロダン銀、酸化鉛などのハロゲン化銀以外の化合物と接合されていてもよい。また種々の結晶形の粒子の混合物を用いてもよい。
【0224】
上記の乳剤は潜像を主として表面に形成する表面潜像型でも、粒子内部に形成する内部潜像型でも表面と内部のいずれにも潜像を有する型のいずれでもよいが、ネガ型の乳剤であることが必要である。内部潜像型のうち、特開昭63−264740に記載のコア/シェル型内部潜像型乳剤であってもよく、この調製方法は特開昭59−133542に記載されている。この乳剤のシェルの厚みは現像処理等によって異なるが、3〜40nmが好ましく、5〜20nmが特に好ましい。
【0225】
ハロゲン化銀乳剤は、通常、物理熟成、化学熟成および分光増感を行ったものを使用する。このような工程で使用される添加剤はRD No.17643、同No.18716および同No.307105に記載されており、その該当箇所を後掲の表にまとめた。
【0226】
本発明の感光材料には、感光性ハロゲン化銀乳剤の粒子サイズ、粒子サイズ分布、ハロゲン組成、粒子の形状、感度の少なくとも1つの特性の異なる2種類以上の乳剤を、同一層中に混合して使用することができる。
【0227】
US4,082,553号に記載の粒子表面をかぶらせたハロゲン化銀粒子、US4,626,498号、特開昭59−214852号に記載の粒子内部をかぶらせたハロゲン化銀粒子、コロイド銀を感光性ハロゲン化銀乳剤層および/または実質的に非感光性の親水性コロイド層に適用することが好ましい。粒子内部または表面をかぶらせたハロゲン化銀粒子とは、感光材料の未露光部および露光部を問わず、一様に(非像様に)現像が可能となるハロゲン化銀粒子のことをいい、その調製法は、US4,626,498号、特開昭59−214852号に記載されている。粒子内部がかぶらされたコア/シェル型ハロゲン化銀粒子の内部核を形成するハロゲン化銀は、ハロゲン組成が異なっていてもよい。粒子内部または表面をかぶらせたハロゲン化銀としては、塩化銀、塩臭化銀、沃臭化銀、塩沃臭化銀のいずれをも用いることができる。これらのかぶらされたハロゲン化銀粒子の平均粒子サイズとしては0.01〜0.75μm、特に0.05〜0.6μmが好ましい。また、粒子形状は規則的な粒子でもよく、多分散乳剤でもよいが、単分散性(ハロゲン化銀粒子の重量または粒子数の少なくとも95%が平均粒子径の±40%以内の粒子径を有するもの)であることが好ましい。
【0228】
本発明には、非感光性微粒子ハロゲン化銀を使用することが好ましい。非感光性微粒子ハロゲン化銀とは、色素画像を得るための像様露光時においては感光せずに、その現像処理において実質的に現像されないハロゲン化銀微粒子であり、あらかじめカブラされていないほうが好ましい。微粒子ハロゲン化銀は、臭化銀の含有率が0〜100モル%であり、必要に応じて塩化銀および/または沃化銀を含有してもよい。好ましくは沃化銀を0.5〜10モル%含有するものである。微粒子ハロゲン化銀は、平均粒径(投影面積の円相当直径の平均値)が0.01〜0.5μmが好ましく、0.02〜0.2μmがより好ましい。
【0229】
非感光性微粒子ハロゲン化銀は、通常の感光性ハロゲン化銀と同様の方法で調製できる。該ハロゲン化銀粒子の表面は、光学的に増感される必要はなく、また分光増感も不要である。ただし、これを塗布液に添加するのに先立ち、あらかじめトリアゾール系、アザインデン系、ベンゾチアゾリウム系、もしくはメルカプト系化合物または亜鉛化合物などの公知の安定剤を添加しておくことが好ましい。この微粒子ハロゲン化銀粒子含有層に、コロイド銀を含有させることができる。
【0230】
本発明の感光材料の塗布銀量は、6.0g/m2以下が好ましく、4.5g/m2以下が最も好ましい。
本発明に使用できる写真用添加剤もRDに記載されており、下記の表に関連する記載箇所を示した。
【0231】
【0232】
本発明の感光材料には種々の色素形成カプラーを使用することができるが、以下のカプラーが特に好ましい。
イエローカプラー:EP502,424Aの式(I),(II)で表わされるカプラー;EP513,496Aの式(1),(2) で表わされるカプラー (特に18頁のY−28);EP568,037Aのクレーム1の式(I) で表わされるカプラー;US5,066,576のカラム1の45〜55行の一般式(I) で表わされるカプラー; 特開平4−274425号の段落0008の一般式(I) で表わされるカプラー;EP498,381A1の40頁のクレーム1に記載のカプラー(特に18頁のD−35);EP447,969A1の4頁の式(Y)で表わされるカプラー(特にY−1(17頁),Y−54(41頁));US4,476,219のカラム7の36〜58行の式(II)〜(IV)で表わされるカプラー(特にII-17,19 ( カラム17),II-24(カラム19))。
【0233】
マゼンタカプラー: 特開平3−39737号(L−57 (11頁右下),L−68 (12頁右下),L−77 (13頁右下);EP456,257の[A−4]-63(134頁),[A−4]-73,-75(139頁); EP486,965のM−4,−6 (26頁),M−7(27頁); EP571,959AのM−45(19頁);特開平5−204106号の(M−1)(6頁);特開平4−362631号の段落0237のM−22。
【0234】
シアンカプラー: 特開平4−204843号のCX−1,3,4,5,11,12,14,15(14〜16頁); 特開平4−43345号のC−7,10(35頁),34,35(37頁),(I−1),(I―17)(42〜43頁); 特開平6−67385の請求項1の一般式(Ia)または(Ib)で表わされるカプラー。
ポリマーカプラー: 特開平2−44345のP−1,P−5(11頁)。
【0235】
発色色素が適度な拡散性を有するカプラーとしては、US4,366,237号、GB2,125,570号、EP96,873B、DE3,234,533号に記載のものが好ましい。発色色素の不要吸収を補正するためのカプラーは、EP456,257A1の5頁に記載の式(CI),(CII),(CIII),(CIV) で表わされるイエローカラードシアンカプラー(特に84頁のYC-86)、該EPに記載のイエローカラードマゼンタカプラーExM-7(202頁) 、EX-1(249頁) 、EX-7(251頁) 、US4,833,069号に記載のマゼンタカラードシアンカプラーCC-9(カラム8)、CC-13(カラム10) 、US4,837,136号の(2)(カラム8)、WO92/11575のクレーム1の式(A)で表わされる無色のマスキングカプラー(特に36〜45頁の例示化合物)が好ましい。
【0236】
現像主薬酸化体と反応して写真的に有用な化合物残基を放出する化合物(カプラーを含む)としては、以下のものが挙げられる。現像抑制剤放出化合物:EP378,236A1の11頁に記載の式(I),(II),(III),(IV) で表わされる化合物(特にT−101(30頁), T−104(31頁), T−113(36頁), T−131(45頁), T−144(51頁), T−158(58頁)), EP436,938A2の7頁に記載の式(I) で表わされる化合物(特にD-49(51頁))、EP568,037Aの式(1) で表わされる化合物(特に(23)(11頁))、EP440,195A2の5〜6頁に記載の式(I),(II),(III)で表わされる化合物(特に29頁のI-(1));漂白促進剤放出化合物:EP310,125A2の5頁の式(I)、(I’)で表わされる化合物(特に61頁の(60),(61)) 及び特開平6−59411の請求項1の式(I) で表わされる化合物(特に(7)(7頁); リガンド放出化合物:US4,555,478のクレーム1に記載のLIG-Xで表わされる化合物(特にカラム12の21〜41行目の化合物)。
【0237】
ロイコ色素放出化合物:US4,749,641のカラム3〜8の化合物1〜6;蛍光色素放出化合物:US4,774,181のクレーム1のCOUP-DYEで表わされる化合物(特にカラム7〜10の化合物1〜11);現像促進剤又はカブラセ剤放出化合物:US4,656,123のカラム3の式(1)、(2)、(3)で表わされる化合物(特にカラム25の(I-22)) 及びEP450,637A2の75頁36〜38行目のExZK-2; 離脱して初めて色素となる基を放出する化合物: US4,857,447のクレーム1の式(I) で表わされる化合物(特にカラム25〜36のY-1〜Y-19) 。
【0238】
カプラー以外の添加剤としては、以下のものが好ましい。
油溶性有機化合物の分散媒: 特開昭62−215272のP-3,5,16,19,25,30,42,49,54,55,66,81,85,86,93(140〜144頁); 油溶性有機化合物の含浸用ラテックス: US4,199,363に記載のラテックス; 現像主薬酸化体スカベンジャー: US4,978,606のカラム2の54〜62行の式(I)で表わされる化合物(特にI-(1),(2),(6),(12)(カラム4〜5)、US4,923,787のカラム2の5〜10行の式(特に化合物1(カラム3); ステイン防止剤: EP298321Aの4頁30〜33行の式(I) 〜(III),特にI-47,72,III-1,27(24〜48頁); 褪色防止剤: EP298321AのA-6,7,20,21,23,24,25,26,30,37,40,42,48,63,90,92,94,164(69〜118頁), US5,122,444のカラム25〜38のII-1〜III-23, 特にIII-10、EP471347Aの8〜12頁のI-1〜III-4、特にII-2、US5,139,931号のカラム32〜40のA-1〜48、特にA-39,42; 発色増強剤または混色防止剤の使用量を低減させる素材: EP411324Aの5〜24頁のI-1〜II-15、特にI-46。
【0239】
ホルマリンスカベンジャー: EP477932Aの24〜29頁のSCV-1〜28, 特にSCV-8; 硬膜剤: 特開平1−214845号の17頁のH-1,4,6,8,14、US4,618,573号のカラム13〜23の式(VII) 〜(XII)で表わされる化合物(H-1〜54),特開平2−214852号の8頁右下の式(6)で表わされる化合物(H-1〜76),特にH-14, US3,325,287号のクレーム1に記載の化合物; 現像抑制剤プレカーサー: 特開昭62−168139号のP-24,37,39(6〜7頁); US5,019,492号のクレーム1に記載の化合物、特にカラム7の28,29; 防腐剤、防黴剤: US4,923,790号のカラム3〜15のI-1〜III-43、特にII-1,9,10,18,III-25; 安定剤、かぶり防止剤: US4,923,793号のカラム6〜16のI-1〜(14)、特にI-1,60,(2),(13), US4,952,483号のカラム25〜32の化合物1〜65、特に36: 化学増感剤: トリフェニルホスフィン セレニド、特開平5−40324号の化合物50。
【0240】
染料: 特開平3−156450号の15〜18頁のa-1〜b-20, 特にa-1,12,18,27,35,36,b-5,27〜29頁のV-1〜23、特にV-1、EP445627Aの33〜55頁のF-I-1〜F-II-43、特にF-I-11,F-II-8, EP457153Aの17〜28頁のIII-1〜36、特にIII-1,3、WO88/04794の8〜26のDye-1〜124の微結晶分散体、NEP319999Aの6〜11頁の化合物1〜22、特に化合物1、EP519306Aの式(1) ないし(3) で表わされる化合物D-1〜87(3〜28頁)、US4,268,622の式(I) で表わされる化合物1〜22(カラム3〜10)、US4,923,788の式(I) で表わされる化合物(1)〜(31) (カラム2〜9); UV吸収剤: 特開昭46−3335の式(1) で表わされる化合物(18b) 〜(18r),101〜427(6〜9頁)、EP520938Aの式(I)で表わされる化合物(3)〜(66)(10〜44頁) 及び式(III) で表わされる化合物HBT-1〜10(14頁)、EP521823Aの式(1)で表わされる化合物(1)〜(31)(カラム2〜9)。
【0241】
本発明は、一般用もしくは映画用のカラーネガフィルム、スライド用もしくはテレビ用のカラー反転フィルム、カラーペーパー、カラーポジフィルムおよびカラー反転ペーパーのような種々のカラー感光材料に適用することができる。また、特公平2−32615号、実公平3−39784号に記載されているレンズ付きフイルムユニット用に好適である。
【0242】
本発明に使用できる適当な支持体としては、例えば、前述のRD.No.17643の28頁、同No.18716の647頁右欄から648頁左欄、および同No.307105の879頁に記載されているものを用いることができる。
【0243】
本発明の感光材料は、乳剤層を有する側の全親水性コロイド層の膜厚の総和が28μm以下であることが好ましく、23μm以下がより好ましく、18μm以下が更に好ましく、16μm以下が特に好ましい。また膜膨潤速度T1/2は30秒以下が好ましく、20秒以下がより好ましい。T1/2は、発色現像液で30℃、3分15秒処理した時に到達する最大膨潤膜厚の90%を飽和膜厚としたとき、膜厚がその1/2に到達するまでの時間と定義する。膜厚は、25℃相対湿度55%調湿下(2日)で測定した膜厚を意味し、T1/2は、エー・グリーン(A.Green)らのフォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング (Photogr.Sci.Eng.)、19卷、2、124〜129頁に記載の型のスエロメーター(膨潤計)を使用することにより測定できる。T1/2は、バインダーとしてのゼラチンに硬膜剤を加えること、あるいは塗布後の経時条件を変えることによって調整することができる。また、膨潤率は150〜400%が好ましい。膨潤率とは、さきに述べた条件下での最大膨潤膜厚から、式:(最大膨潤膜厚−膜厚)/膜厚 により計算できる。
【0244】
本発明の感光材料は、乳剤層を有する側の反対側に、乾燥膜厚の総和が2μm〜20μmの親水性コロイド層(バック層と称す)を設けることが好ましい。このバック層には、前述の光吸収剤、フィルター染料、紫外線吸収剤、スタチック防止剤、硬膜剤、バインダー、可塑剤、潤滑剤、塗布助剤、表面活性剤を含有させることが好ましい。このバック層の膨潤率は150〜500%が好ましい。
【0245】
本発明の感光材料は、前述のRD.No.17643の28〜29頁、同No.18716の651左欄〜右欄、および同No.307105の880〜881頁に記載された通常の方法によって現像処理することができる。
【0246】
次に、本発明に使用されるカラーネガフイルム用の処理液について説明する。本発明に使用される発色現像液には、特開平4−121739の第9頁右上欄1行〜第11頁左下欄4行に記載の化合物を使用することができる。特に迅速な処理を行う場合の発色現像主薬としては、2−メチル−4−〔N−エチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミノ〕アニリン、2−メチル−4−〔N−エチル−N−(3−ヒドロキシプロピル)アミノ〕アニリン、2−メチル−4−〔N−エチル−N−(4−ヒドロキシブチル)アミノ〕アニリンが好ましい。
【0247】
これらの発色現像主薬は発色現像液1リットル(以下、「L」とも表記する)あたり0.01〜0.08モルの範囲で使用することが好ましく、特には0.015〜0.06モル、更には0.02〜0.05モルの範囲で使用することが好ましい。また発色現像液の補充液には、この濃度の1.1〜3倍の発色現像主薬を含有させておくことが好ましく、特に1.3〜2.5倍を含有させておくことが好ましい。
【0248】
発色現像液の保恒剤としては、ヒドロキシルアミンが広範に使用できるが、より高い保恒性が必要な場合は、アルキル基やヒドロキシアルキル基、スルホアルキル基、カルボキシアルキル基などの置換基を有するヒドロキシルアミン誘導体が好ましく、具体的にはN,N−ジ(スルホエチル)ヒドロキルアミン、モノメチルヒドロキシルアミン、ジメチルヒドロキシルアミン、モノエチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキルアミン、N,N−ジ(カルボキシエチル)ヒドロキルアミンが好ましい。上記の中でも、特にN,N−ジ(スルホエチル)ヒドロキルアミンが好ましい。これらはヒドロキシルアミンと併用してもよいが、好ましくはヒドロキシルアミンの代わりに、1種または2種以上使用することが好ましい。
【0249】
保恒剤は発色現像液1Lあたり0.02〜0.2モルの範囲で使用することが好ましく、特に0.03〜0.15モル、更には0.04〜0.1モルの範囲で使用することが好ましい。また補充液においては、発色現像主薬の場合と同様に、母液(処理タンク液)の1.1〜3倍の濃度で保恒剤を含有させておくことが好ましい。
【0250】
発色現像液には、発色現像主薬の酸化物のタ−ル化防止剤として亜硫酸塩が使用される。亜硫酸塩は発色現像液1Lあたり0.01〜0.05モルの範囲で使用するのが好ましく、特には0.02〜0.04モルの範囲が好ましい。補充液においては、これらの1.1〜3倍の濃度で使用することが好ましい。
【0251】
また、発色現像液のpHは9.8〜11.0の範囲が好ましいが、特には10.0〜10.5が好ましく、また補充液においては、これらの値から0.1〜1.0の範囲で高い値に設定しておくことが好ましい。このようなpHを安定して維持するには、炭酸塩、リン酸塩、スルホサリチル酸塩、ホウ酸塩などの公知の緩衝剤が使用される。
【0252】
発色現像液の補充量は、感光材料1m2あたり80〜1300ミリリットル(以下、「mL」とも表記する)が好ましいが、環境汚濁負荷の低減の観点から、より少ない方が好ましく、具体的には80〜600mL、更には80〜400mLが好ましい。
【0253】
発色現像液中の臭化物イオン濃度は、通常、1Lあたり0.01〜0.06モルであるが、感度を保持しつつカブリを抑制してディスクリミネーションを向上させ、かつ、粒状性を良化させる目的からは、1Lあたり0.015〜0.03モルに設定することが好ましい。臭化物イオン濃度をこのような範囲に設定する場合に、補充液には下記の式で算出した臭化物イオンを含有させればよい。ただし、Cが負になる時は、補充液には臭化物イオンを含有させないことが好ましい。
【0254】
C=A−W/V
C:発色現像補充液中の臭化物イオン濃度(モル/L)
A:目標とする発色現像液中の臭化物イオン濃度(モル/L)
W:1m2の感光材料を発色現像した場合に、感光材料から発色現像液に溶出する臭化物イオンの量(モル)
V:1m2の感光材料に対する発色現像補充液の補充量(L)。
【0255】
また、補充量を低減した場合や、高い臭化物イオン濃度に設定した場合、感度を高める方法として、1−フェニル−3−ピラゾリドンや1−フェニル−2−メチル−2−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドンに代表されるピラゾリドン類や3,6−ジチア−1,8−オクタンジオールに代表されるチオエーテル化合物などの現像促進剤を使用することも好ましい。
【0256】
本発明における漂白能を有する処理液には、特開平4−125558号の第4頁左下欄16行〜第7頁左下欄6行に記載された化合物や処理条件を適用することができる。漂白剤は酸化還元電位が150mV以上のものが好ましいが、その具体例としては特開平5−72694号、同5−173312号に記載のものが好ましく、特に1,3−ジアミノプロパン四酢酸、特開平5−173312号第7頁の具体例1の化合物の第二鉄錯塩が好ましい。
【0257】
また、漂白剤の生分解性を向上させるには、特開平4−251845号、同4−268552号、EP588,289号、同591,934号、特開平6−208213号に記載の化合物第二鉄錯塩を漂白剤として使用することが好ましい。これらの漂白剤の濃度は、漂白能を有する液1Lあたり0.05〜0.3モルが好ましく、特に漂白機能の確保と環境への排出量を低減する目的から、0.1〜0.15モルで設計することがより好ましい。また、漂白能を有する液が漂白液の場合は、1Lあたり0.2モル〜1モルの臭化物を含有させることが好ましく、特に0.3〜0.8モルを含有させることが好ましい。
【0258】
漂白能を有する液の補充液には、基本的に以下の式で算出される各成分の濃度を含有させる。これにより、母液中の濃度を一定に維持することができる。
【0259】
CR =CT ×(V1 +V2 )/V1 +CP
CR :補充液中の成分の濃度
CT :母液(処理タンク液)中の成分の濃度
CP :処理中に消費された成分の濃度
V1 :1m2の感光材料に対する漂白能を有する補充液の補充量(mL)
V2 :1m2の感光材料による前浴からの持ち込み量(mL)。
【0260】
その他、漂白液にはpH緩衝剤を含有させることが好ましく、特にコハク酸、マレイン酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸など、臭気の少ないジカルボン酸を含有させることが好ましい。また、特開昭53−95630号、RDNo.17129、US3,893,858号に記載の公知の漂白促進剤を使用することも好ましい。
【0261】
漂白液には、感光材料1m2あたり50〜1000mLの漂白補充液を補充することが好ましく、特には80〜500mL、さらには100〜300mLの補充をすることが好ましい。さらに漂白液にはエアレーションを行なうことが好ましい。
【0262】
定着能を有する処理液については、特開平4−125558号の第7頁左下欄10行〜第8頁右下欄19行に記載の化合物や処理条件を適用することができる。
【0263】
特に、定着速度と保恒性を向上させるために、特開平6−301169号の一般式(I)と(II)で表される化合物を、単独あるいは併用して定着能を有する処理液に含有させることが好ましい。またp−トルエンスルフィン酸塩をはじめ、特開平1-224762号に記載のスルフィン酸を使用することも、保恒性の向上の上で好ましい。漂白能を有する液や定着能を有する液には、脱銀性の向上の観点からカチオンとしてアンモニウムを用いることが好ましいが、環境汚染低減の目的からは、アンモニウムを減少或いはゼロにする方が好ましい。
【0264】
漂白、漂白定着、定着工程においては、特開平1−309059号に記載のジェット攪拌を行なうことが特に好ましい。
漂白定着また定着工程における補充液の補充量は、感光材料1m2あたり100〜1000mLであり、好ましくは150〜700mL、特に好ましくは200〜600mLである。
【0265】
漂白定着や定着工程には、各種の銀回収装置をインラインやオフラインで設置して銀を回収することが好ましい。インラインで設置することにより、液中の銀濃度を低減して処理できる結果、補充量を減少させることができる。また、オフラインで銀回収して残液を補充液として再利用することも好ましい。
【0266】
漂白定着工程や定着工程は複数の処理タンクで構成することができ、各タンクはカスケード配管して多段向流方式にすることが好ましい。現像機の大きさとのバランスから、一般には2タンクカスケード構成が効率的であり、前段のタンクと後段のタンクにおける処理時間の比は、0.5:1〜1:0.5の範囲にすることが好ましく、特には0.8:1〜1:0.8の範囲が好ましい。
【0267】
漂白定着液や定着液には、保恒性の向上の観点から金属錯体になっていない遊離のキレート剤を存在させることが好ましいが、これらのキレート剤としては、漂白液に関して記載した生分解性キレート剤を使用することが好ましい。
【0268】
水洗および安定化工程に関しては、上記の特開平4−125558号、第12頁右下欄6行〜第13頁右下欄第16行に記載の内容を好ましく適用することができる。特に、安定液にはホルムアルデヒドに代わってEP504,609号、同519,190号に記載のアゾリルメチルアミン類や特開平4−362943号に記載のN−メチロールアゾール類を使用することや、マゼンタカプラーを二当量化してホルムアルデヒドなどの画像安定化剤を含まない界面活性剤の液にすることが、作業環境の保全の観点から好ましい。また、感光材料に塗布された磁気記録層へのゴミの付着を軽減するには、特開平6−289559号に記載の安定液が好ましく使用できる。
【0269】
水洗および安定液の補充量は、感光材料1m2あたり80〜1000mLが好ましく、特には100〜500mL、さらには150〜300mLが、水洗または安定化機能の確保と環境保全のための廃液減少の両面から好ましい範囲である。このような補充量で行なう処理においては、バクテリアや黴の繁殖防止のために、チアベンダゾール、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3オン、5−クロロ−2−メチルイソチアゾリン−3−オンのような公知の防黴剤やゲンタマイシンのような抗生物質、イオン交換樹脂等によって脱イオン処理した水を用いることが好ましい。脱イオン水と防菌剤や抗生物質は、併用することがより効果的である。
【0270】
また、水洗または安定液タンク内の液は、特開平3−46652号、同3−53246号、同3−55542号、同3−121448号、同3−126030号に記載の逆浸透膜処理を行なって補充量を減少 させることも好ましく、この場合の逆浸透膜は、低圧逆浸透膜であることが好ましい。
【0271】
本発明における処理においては、発明協会公開技報、公技番号94−4992に開示された処理液の蒸発補正を実施することが特に好ましい。特に第2頁の(式−1)に基づいて、現像機設置環境の温度及び湿度情報を用いて補正する方法が好ましい。蒸発補正に使用する水は、水洗の補充タンクから採取することが好ましく、その場合は水洗補充水として脱イオン水を用いることが好ましい。
【0272】
本発明に用いられる処理剤としては、上記公開技報の第3頁右欄15行から第4頁左欄32行に記載のものが好ましい。また、これに用いる現像機としては、第3頁右欄の第22行から28行に記載のフイルムプロセサーが好ましい。
【0273】
本発明を実施するに好ましい処理剤、自動現像機、蒸発補正方式の具体例については、上記の公開技報の第5頁右欄11行から第7頁右欄最終行までに記載されている。
【0274】
本発明に使用される処理剤の供給形態は、使用液状態の濃度または濃縮された形の液剤、あるいは顆粒、粉末、錠剤、ペースト状、乳液など、いかなる形態でもよい。このような処理剤の例として、特開昭63−17453号には低酸素透過性の容器に収納した液剤、特開平4−19655号、同4−230748号には真空包装した粉末あるいは顆粒、同4−221951号には水溶性ポリマーを含有させた顆粒、特開昭51−61837号、特開平6−102628号には錠剤、特表昭57−500485号にはペースト状の処理剤が開示されており、いずれも好ましく使用できるが、使用時の簡便性の面から、予め使用状態の濃度で調製してある液体を使用することが好ましい。
【0275】
これらの処理剤を収納する容器には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニール、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどが、単独あるいは複合材料として使用される。これらは要求される酸素透過性のレベルに合わせて選択される。発色現像液などの酸化されやすい液に対しては、低酸素透過性の素材が好ましく、具体的にはポリエチレンテレフタレートやポリエチレンとナイロンの複合材料が好ましい。これらの材料は500〜1500μmの厚さで、容器に使用され、酸素透過性を20mL/m2・24hrs・atm以下にすることが好ましい。
【0276】
次に本発明に使用されるカラー反転フィルム用の処理液について説明する。カラー反転フィルム用の処理については、アズテック有限会社発行の公知技術第6号(1991年4月1日)第1頁5行〜第10頁5行、及び第15頁8行〜第24頁2行に詳細に記載されており、その内容はいずれも好ましく適用することができる。 カラー反転フィルムの処理においては、画像安定化剤は調整浴か最終浴に含有される。このような画像安定化剤としては、ホルマリンのほかにホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウム、N−メチロールアゾール類があげられるが、作業環境の観点からホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウムかN−メチロールアゾール類が好ましく、N−メチロールアゾール類としては、特にN−メチロールトリアゾールが好ましい。また、カラーネガフィルムの処理において記載した発色現像液、漂白液、定着液、水洗水などに関する内容は、カラー反転フィルムの処理にも好ましく適用できる。
【0277】
上記の内容を含む好ましいカラー反転フィルムの処理剤として、イーストマンコダック社のE−6処理剤及び富士写真フイルム(株)のCR−56処理剤をあげることができる。
【0278】
本発明のカラー写真感光材料は、アドバンスト・フォト・システム(以下、APSという)用カラーネガフイルムとしても好適であり、富士写真フイルム(株)(以下、富士フイルムという)製NEXIA A、NEXIA F、NEXIA H(順にISO 200/100/400)のようにフィルムをAPSフォーマットに加工し、専用カートリッジに収納したものを挙げることができる。これらのAPS用カートリッジフイルムは、富士フイルム製エピオン300Zに代表されるエピオンシリーズ等のAPS用カメラに装填して用いられる。また、本発明のカラー写真感光材料は、富士フイルム製フジカラー写ルンですスーパースリムのようなレンズ付きフィルムにも好適である。
【0279】
これらにより撮影されたフィルムは、ミニラボシステムでは次のような工程を経てプリントされる。
【0280】
(1) 受付(露光済みカートリッジフイルムをお客様からお預かり)
(2) デタッチ工程(カートリッジから、フィルムを現像工程用の中間カートリッジに移す)
(3) フィルム現像
リアッタッチ工程(現像済みのネガフイルムを、もとのカートリッジに戻す)プリント(C, H, P 3タイプのプリントとインデックスプリントをカラーペ ーパー〔好ましくは富士フイルム製 SUPER FA8〕に連続自動プリント)
(6) 照合・出荷(カートリッジとインデックスプリントをIDナンバーで照合し、プリントとともに出荷)。
【0281】
これらのシステムとしては、富士フイルムのミニラボチャンピオンスーパーFA-298/FA-278/FA-258/FA-238 が好ましい。フイルムプロセサーとしてはFP922AL/FP562B/FP562BL/FP362B/FP3622BLが挙げられ、推奨処理薬品はフジカラージャストイットCN-16Lである。プリンタープロセサーとしては、PP3008AR/PP3008A/PP1828AR/PP1828A/PP1258AR/PP1258A/PP728AR/PP728Aが挙げられ、推奨処理薬品はフジカラージャストイットCP-47Lである。デタッチ工程で用いるデタッチャー、リアタッチ工程で用いるリアタッチャーは、それぞれ富士フイルムのDT200/DT100及びAT200/AT100が好ましい。
【0282】
APSシステムは、富士フイルムのデジタルイメージワークステーションAladdin 1000を中心とするフォトジョイシステムにより楽しむこともできる。例えば、Aladdin 1000に現像済みAPSカートリッジフイルムを直接装填したり、ネガフイルム、ポジフイルム、プリントの画像情報を、35mmフイルムスキャナーFE-550やフラットヘッドスキャナーPE-550を用いて入力し、得られたデジタル画像データを容易に加工・編集することができる。そのデータは、光定着型感熱カラープリント方式によるデジタルカラープリンターNC-550ALやレーザー露光熱現像転写方式のピクトログラフィー3000によって、又はフイルムレコーダーを通して既存のラボ機器によりプリントとして出力することができる。また、Aladdin 1000は、デジタル情報を直接フロッピーディスクやZipディスクに、もしくはCDライターを介してCD-Rに出力することもできる。
【0283】
一方、家庭では、現像済みAPSカートリッジフイルムを富士フイルム製フォトプレイヤーAP-1に装填するだけでTVで写真を楽しむことができるし、富士フイルム製フォトスキャナーAS-1に装填すれば、パソコンに画像情報を高速で連続的に取り込むこともできる。また、フィルム、プリント又は立体物をパソコンに入力するには、富士フイルム製フォトビジョンFV-10/FV-5が利用できる。更に、フロッピーディスク、Zipディスク、CD-Rもしくはハードディスクに記録された画像情報は、富士フイルムのアプリケーションソフト フォトファクトリーを用いてパソコン上で様々に加工して楽しむことができる。パソコンから高画質なプリントを出力するには、光定着型感熱カラープリント方式の富士フイルム製デジタルカラープリンターNC-2/NC-2Dが好適である。
【0284】
現像済みのAPSカートリッジフイルムを収納するには、フジカラーポケットアルバムAP-5ポップL、AP-1ポップL、AP-1ポップKG又はカートリッジファイル16が好ましい。
【0285】
次に、本発明の感光材料に用いられる磁気記録層について説明する。
本発明の感光材料は、支持体を挟んで乳剤層を有する側とは反対側(以下、バック面と称す)に磁気記録層を具備し得る。本発明に用いられる磁気記録層とは、磁性体粒子をバインダー中に分散した水性もしくは有機溶媒系塗布液を支持体上に塗設したものである。
【0286】
本発明で用いられる磁性体粒子は、γFe2O3などの強磁性酸化鉄、Co被着γFe2O3、Co被着マグネタイト、Co含有マグネタイト、強磁性二酸化クロム、強磁性金属、強磁性合金、六方晶系のBaフェライト、Srフェライト、Pbフェライト、Caフェライトなどを使用できる。本発明に用いることができる磁性体粒子としては、Co被着γFe2O3などのCo被着強磁性酸化鉄が好ましい。形状としては針状、米粒状、球状、立方体状、板状等いずれでもよい。比表面積ではSBETで20m2/g以上が好ましく、30m2/g以上が特に好ましい。強磁性体の飽和磁化(σs)は、好ましくは3.0×104〜3.0×105A/mであり、特に好ましくは4.0×104〜2.5×105A/mである。強磁性体粒子を、シリカおよび/またはアルミナや有機素材による表面処理を施してもよい。さらに、磁性体粒子は特開平6−161032号に記載された如くその表面にシランカップリング剤又はチタンカップリング剤で処理してもよい。また、特開平4−259911号、同5−81652号に記載の表面に無機、有機物を被覆した磁性体粒子も使用できる。
【0287】
磁性体粒子に用い得るバインダーとしては、特開平4−219569号に記載の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂、反応型樹脂、酸、アルカリ又は生分解性ポリマー、天然物重合体(セルロース誘導体、糖誘導体など)およびそれらの混合物を使用することができる。上記の樹脂のTgは−40℃〜300℃、重量平均分子量は0.2万〜100万である。例えばビニル系共重合体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルローストリプロピオネートなどのセルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂を挙げることができ、ゼラチンも好ましい。特にセルロースジ(トリ)アセテートが好ましい。バインダーは、エポキシ系、アジリジン系、イソシアネート系の架橋剤を添加して硬化処理することができる。イソシアネート系の架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、などのイソシアネート類、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの反応生成物(例えば、トリレンジイソシアナート3molとトリメチロールプロパン1molの反応生成物)、及びこれらのイソシアネート類の縮合により生成したポリイソシアネートなどがあげられ、例えば特開平6−59357号に記載されている。
【0288】
前述の磁性体を上記バインダ−中に分散する方法は、特開平6−35092号に記載されている方法のように、ニーダー、ピン型ミル、アニュラー型ミルなどが好ましく併用も好ましい。特開平5−088283号に記載の分散剤や、その他の公知の分散剤が使用できる。磁気記録層の厚みは0.1μm〜10μm、好ましくは0.2μm〜5μm、より好ましくは0.3μm〜3μmである。磁性体粒子とバインダーの重量比は好ましくは0.5:100〜60:100からなり、より好ましくは1:100〜30:100である。磁性体粒子の塗布量は0.005〜3g/m2、好ましくは0.01〜2g/m2、さらに好ましくは0.02〜0.5g/m2である。磁気記録層の透過イエロー濃度は、0.01〜0.50が好ましく、0.03〜0.20がより好ましく、0.04〜0.15が特に好ましい。磁気記録層は、写真用支持体の裏面に塗布又は印刷によって全面またはストライプ状に設けることができる。磁気記録層を塗布する方法としてはエアードクター、ブレード、エアナイフ、スクイズ、含浸、リバースロール、トランスファーロール、グラビヤ、キス、キャスト、スプレイ、ディップ、バー、エクストリュージョン等が利用でき、特開平5−341436号等に記載の塗布液が好ましい。
【0289】
磁気記録層に、潤滑性向上、カール調節、帯電防止、接着防止、ヘッド研磨などの機能を合せ持たせてもよいし、別の機能性層を設けて、これらの機能を付与させてもよく、粒子の少なくとも1種以上がモース硬度が5以上の非球形無機粒子の研磨剤であることが好ましい。非球形無機粒子の組成としては、酸化アルミニウム、酸化クロム、二酸化珪素、二酸化チタン、シリコンカーバイト等の酸化物、炭化珪素、炭化チタン等の炭化物、ダイアモンド等の微粉末が好ましい。これらの研磨剤は、その表面をシランカップリング剤又はチタンカップリング剤で処理されてもよい。これらの粒子は磁気記録層に添加してもよく、また磁気記録層上にオーバーコート(例えば保護層、潤滑剤層など)しても良い。この時使用するバインダーは前述のものが使用でき、好ましくは磁気記録層のバインダーと同じものがよい。磁気記録層を有する感材については、US5,336,589号、同5,250,404号、同5,229,259号、同5,215,874号、EP466,130号に記載されている。
【0290】
次に本発明の感光材料に用い得るポリエステル支持体について記すが、後述する感材、処理、カートリッジ及び実施例なども含め詳細については、公開技報、公技番号94−6023 (発明協会;1994.3.15.)に記載されている。支持体に用いられるポリエステルはジオールと芳香族ジカルボン酸を必須成分として形成され、芳香族ジカルボン酸として2,6−、1,5−、1,4−、及び2,7−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ジオールとしてジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールが挙げられる。この重合ポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート等のホモポリマーを挙げることができる。特に好ましいのは2,6−ナフタレンジカルボン酸を50モル%〜100モル%含むポリエステルである。中でも特に好ましいのはポリエチレン2,6−ナフタレートである。重量平均分子量の範囲は約5,000ないし200,000である。本発明のポリエステルのTgは好ましくは50℃以上であり、さらに90℃以上が好ましい。
【0291】
次にポリエステル支持体は、巻き癖をつきにくくするために熱処理温度は40℃以上Tg未満、より好ましくはTg−20℃以上Tg未満で熱処理を行う。熱処理はこの温度範囲内の一定温度で実施してもよく、冷却しながら熱処理してもよい。この熱処理時間は、好ましくは0.1時間以上1500時間以下、さらに好ましくは0.5時間以上200時間以下である。支持体の熱処理は、ロ−ル状で実施してもよく、またウェブ状で搬送しながら実施してもよい。表面に凹凸を付与し(例えばSnO2やSb2O5等の導電性無機微粒子を塗布する)、面状改良を図ってもよい。又端部にロ−レットを付与し端部のみ少し高くすることで巻芯部の切り口写りを防止するなどの工夫を行うことが望ましい。これらの熱処理は支持体製膜後、表面処理後、バック層塗布後(帯電防止剤、滑り剤等)、下塗り塗布後のどこの段階で実施してもよい。好ましいのは帯電防止剤塗布後である。
【0292】
このポリエステルには紫外線吸収剤を練り込んでも良い。又ライトパイピング防止のため、三菱化成製のDiaresin、日本化薬製のKayaset等ポリエステル用として市販されている染料または顔料を練り込むことにより目的を達成することが可能である。
【0293】
次に、本発明では支持体と感材構成層を接着させるために、表面処理することが好ましい。薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸化処理、などの表面活性化処理が挙げられる。表面処理の中でも好ましいのは、紫外線照射処理、火焔処理、コロナ処理、グロー処理である。
【0294】
本発明の感光材料はまた、乳剤面またはバック面の少なくとも一方に下塗層を具備し得る。この下塗層は単層でもよく2層以上でもよい。下塗層用バインダーとしては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの中から選ばれた単量体を出発原料とする共重合体を始めとして、ポリエチレンイミン、エポキシ樹脂、グラフト化ゼラチン、ニトロセルロース、ゼラチンが挙げられる。支持体を膨潤させる化合物としてレゾルシンとp−クロルフェノールがある。下塗層にはゼラチン硬化剤としてはクロム塩(クロム明ばんなど)、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、グルタールアルデヒドなど)、イソシアネート類、活性ハロゲン化合物(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジンなど)、エピクロルヒドリン樹脂、活性ビニルスルホン化合物などを挙げることができる。SiO2、TiO2、無機物微粒子又はポリメチルメタクリレート共重合体微粒子(0.01〜10μm)をマット剤として含有させてもよい。
【0295】
また、本発明の感光材料は、好ましくは帯電防止剤を含有し得る。それらの帯電防止剤としては、カルボン酸及びカルボン酸塩、スルホン酸塩を含む高分子、カチオン性高分子、イオン性界面活性剤化合物を挙げることができる。
【0296】
帯電防止剤として最も好ましいものは、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、SiO2、MgO、BaO、MoO3、V2O5の中から選ばれた少くとも1種の体積抵抗率が107Ω・cm以下、より好ましくは105 Ω・cm以下である粒子サイズ0.001〜1.0μmの結晶性の金属酸化物あるいはこれらの複合酸化物(Sb,P,B,In,S,Si,C など)の微粒子、更にはゾル状の金属酸化物あるいはこれらの複合酸化物の微粒子である。感材への含有量としては、5〜500mg/m2が好ましく特に好ましくは10〜350mg/m2である。導電性の結晶性酸化物又はその複合酸化物とバインダーの重量比(酸化物/バインダー)は1/300〜100/1が好ましく、より好ましくは1/100〜100/5である。
【0297】
本発明の感材には滑り性がある事が好ましい。滑り剤含有層は乳剤層面、バック面ともに用いることが好ましい。好ましい滑り性としては動摩擦係数で0.25以下0.01以上である。この時の測定は直径5mmのステンレス球に対し、60cm/分で搬送した時の値を表す(25℃、60%RH)。この評価において相手材として感光層面に置き換えてももほぼ同レベルの値となる。
【0298】
本発明に使用可能な滑り剤としては、ポリオルガノシロキサン、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸と高級アルコールのエステル等であり、ポリオルガノシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリスチリルメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等を用いることができる。添加層としては乳剤層の最外層やバック層が好ましい。特にポリジメチルシロキサンや長鎖アルキル基を有するエステルが好ましい。
【0299】
本発明の感光材料は、好ましくはマット剤を含有し得る。マット剤としては乳剤面、バック面とどちらでもよいが、乳剤側の最外層に添加するのが特に好ましい。マット剤は処理液可溶性でも処理液不溶性でもよく、好ましくは両者を併用することである。例えばポリメチルメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート/メタクリル酸=9/1又は5/5(モル比))、ポリスチレン粒子などが好ましい。粒径としては0.8〜10μmが好ましく、その粒径分布も狭いほうが好ましく、平均粒径の0.9〜1.1倍の間に全粒子数の90%以上が含有されることが好ましい。また、マット性を高めるために0.8μm以下の微粒子を同時に添加することも好ましく例えばポリメチルメタクリレート(0.2μm)、ポリ(メチルメタクリレート/メタクリル酸=9/1(モル比)、0.3μm))、ポリスチレン粒子(0.25μm)、コロイダルシリカ(0.03μm)が挙げられる。
【0300】
次に本発明の感光材料に用い得るフィルムパトローネについて記す。本発明に使用し得るパトローネの主材料は金属でも合成プラスチックでもよい。
【0301】
好ましいプラスチック材料はポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニルエーテルなどである。更に本発明のパトローネは、各種の帯電防止剤を含有してもよく、カーボンブラック、金属酸化物粒子、ノニオン、アニオン、カチオン及びベタイン系界面活性剤又はポリマー等を好ましく用いることが出来る。これらの帯電防止されたパトローネは特開平1−312537号、同1−312538号に記載されている。特に25℃、25%RHでの抵抗が1012Ω以下のパトローネが好ましい。通常プラスチックパトローネは、遮光性を付与するためにカーボンブラックや顔料などを練り込んだプラスチックを使って製作される。パトローネのサイズは現在 135サイズのままでもよいし、カメラの小型化には、現在の135サイズの25mmのカートリッジの径を22mm以下である。パトローネのケースの容積は、30cm3以下、好ましくは25cm3以下とすることが好ましい。パトローネおよびパトローネケースに使用されるプラスチックの重量は5g〜15gが好ましい。
【0302】
更に本発明で用いることができるパトローネは、スプールを回転してフィルムを送り出すパトローネでもよい。またフィルム先端がパトローネ本体内に収納され、スプール軸をフィルム送り出し方向に回転させることによってフィルム先端をパトローネのポート部から外部に送り出す構造でもよい。これらはUS4,834,306号、同5,226,613号に開示されている。本発明に用いられる写真フィルムは現像前のいわゆる生フイルムでもよいし、現像処理された写真フィルムでもよい。又、生フイルムと現像済みの写真フィルムが同じ新パトローネに収納されていてもよいし、異なるパトローネでもよい。
【0303】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示す。但しこの実施例に限定されるものではない。 以下の乳剤調製で分散媒として用いたゼラチン−1〜5は、以下の属性を持つゼラチンである。
【0304】
ゼラチン−1:牛骨を原料とする、通常のアルカリ処理オセインゼラチン。 ゼラチン中の−NH2基の化学修飾なし。
【0305】
ゼラチン−2:
ゼラチン−1の水溶液に、50℃、pH9.0の条件下で無水フタル酸を加えて化学反応させた後、残留するフタル酸を除去して乾燥させたゼラチン。
ゼラチン中の−NH2基が化学修飾された数の割合95%。
【0306】
ゼラチン−3:
ゼラチン−1の水溶液に、50℃、pH9.0の条件下で無水トリメリット酸を加えて化学反応させた後、残留するトリメリット酸を除去して乾燥させたゼラチン。
ゼラチン中の−NH2基が化学修飾された数の割合95%。
【0307】
ゼラチン−4:
ゼラチン−1に酵素を作用させて低分子量化し、平均分子量を15000にした後、酵素を失活させて乾燥させたゼラチン。
ゼラチン中の−NH2基の化学修飾なし。
【0308】
ゼラチン−5:
ゼラチン−4に過酸化水素水を作用させて、メチオニン残基を酸化処理したゼラチン。メチオン含有率は3.4mol/gである。
分子量はゼラチン−4と等しく15000。ゼラチン中の−NH2基の化学修飾なし。
【0309】
上記のゼラチン−1〜5は、全て脱イオン処理をした後、5%水溶液の35℃におけるpHが6.0となるように調整を行った。
【0310】
<実施例1>
アスペクト比及び厚みの変動係数を変えた転位平板乳剤の調製、原乳塗布、評価の実施例
(乳剤1−Aの調製)
KBrを1.0g、前記のゼラチン−4を1.1g含む水溶液1300mLを35℃に保ち、撹拌した(1st液調製)。
Ag−1水溶液(100mL中にAgNO3を4.9g含有する)18mLと、X−1水溶液(100mL中にKBrを5.2g含有する)13.8mL、及びG−1水溶液(100mL中に前記ゼラチン−4を8.0g含有する)4mLをトリプルジェット法で、一定の流量で30秒間にわたり添加した(添加1)。
【0311】
その後、KBr6.5gを添加し、温度を75℃に昇温した。昇温後12分間の熟成工程を経た後、G−2水溶液(100mL中に前記のゼラチン−3を12.7g含有する)300mLを添加し、次いで、4,5−ジヒドロキシ−1,3−ジスルホン酸ジナトリウム一水和物を2.1g、二酸化チオ尿素0.002gを1分間づつ間隔をあけて順次添加した。
【0312】
次に、Ag−2水溶液(100mL中にAgNO3を22.1g含有する)157mLと、X−2水溶液(100mL中にKBrを15.5g含有する)をダプルジェット法で14分間にわたり添加した。この時、Ag−2水溶液の添加は最終流量が初期流量の3.4倍になるように流量加速を行い、X−2水溶液の添加は反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgが8.30を保つように行った(添加2)。
【0313】
次いで、Ag−3水溶液(100mL中にAgNO3を32.0g含有する)329mLと、X−3水溶液(100mL中にKBrを21.5g、KIを1.2g含有する)をダブルジェット法で27分間にわたり添加した。この時、Ag−3水溶液の添加は最終流量が初期流量の1.6倍になるように流量加速を行い、X−3水溶液の添加は反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgが8.30を保つように行った(添加3)。
【0314】
さらに、Ag−4水溶液(100mL中にAgNO3を32.0g含有する)156mLと、X−4水溶液(100mL中にKBrを22.4g含有する)をダプルジェット法で17分間にわたり添加した。この時、Ag−4水溶液の添加は一定の流量で行い、X−3水溶液の添加は反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgが8.15を保つように行った(添加4)。
【0315】
その後、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウムを0.0025g、G−3水溶液(100mL中に前記のゼラチン−1を12.0g含有する)125mLを、1分間づつ間隔をあけて順次添加した。次いでKBr43.7gを添加し反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを9.00にしてから、AgI微粒子乳剤(100g中に平均粒径0.047μmのAgI微粒子を13.0g含有する)73.9gを添加し、その2分後から、Ag−4水溶液249mLと、X−4水溶液をダブルジェット法で添加した。この時Ag−4水溶液は一定の流量で9分間にわたって添加し、X−4水溶液は最初の3.3分間だけ反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを9.00に保つように添加し、残りの5.7分間は添加をせず、反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgが最終的に8.4になるようにした(添加5)。
【0316】
その後、通常のフロキュレーション法により脱塩を行い、次いで、攪拌しながら水、NaOH、前記のゼラチン−1を添加し、56℃でpH6.4、pAg8.6になるように調整した。
得られた乳剤粒子の特性値を表1に示す。続いて、下記増感色素Exs−1、チオシアン酸カリウム、塩化金酸、チオ硫酸ナトリウム及びN,N−ジメチルセレノ尿素を順次添加し最適に化学増感を施した後、下記の水溶性メルカプト化合物MER−1及びMER−2を4:1の比率で合計でハロゲン化銀1モル当たり3.6×10-4モル添加することにより化学増感を終了させた。
【0317】
本発明の増感色素は、特開平11−52507号に記載の方法で作成した固体微分散物として、使用した。
例えば増感色素Exs−1の固体微分散物を次のようにして作成した。
NaNO30.8重量部及びNa2SO43.2重量部をイオン交換水43部に溶解し、増感色素13重量部を添加し、60℃の条件下でディゾルバー翼を用いて2000rpmで20分間分散することにより、増感色素Exs−1の固体微分散物を得た。
【0318】
【化29】
【0319】
【化30】
【0320】
(乳剤1−Bの調製)
前記の乳剤1−Aの調製条件に対して、以下の変更を行った調製条件で乳剤1−Bを調製した。
▲1▼(添加2)のpAgを8.44に保つ
▲2▼(添加3)のpAgを8.44に保つ。
得られた乳剤粒子の特性値を表1に示す。
この乳剤にも乳剤1−A同様の化学増感を施した。
【0321】
(乳剤1−Cの調製)
前記の乳剤1−Aの調製条件に対して、以下の変更を行った調製条件で乳剤1−Cを調製した。
▲1▼(添加2)のpAgを7.86に保つ
▲2▼(添加3)のpAgを7.86に保つ。
得られた乳剤粒子の特性値を表1に示す。
この乳剤にも乳剤1−A同様の化学増感を施した。
【0322】
(乳剤1−Dの調製)
前記の乳剤1−Aの調製条件に対して、以下の変更を行った調製条件で乳剤1−Dを調製した。
▲1▼(添加2)の添加溶液を特開平10−43570に記載の攪拌装置に添加し、該攪拌装置から吐出される臭化銀超微粒子乳剤を反応容器に添加する。X−2の添加は、吐出される臭化銀超微粒子乳剤のpAgが7.86となるように行う。また、X−1水溶液を反応容器に添加し、反応容器内のpAgを7.50に保つ。
【0323】
▲2▼(添加3)の添加溶液を前記攪拌装置に添加し、該攪拌装置から吐出される臭化銀超微粒子乳剤を反応容器に添加する。X−2の添加は、吐出される臭化銀超微粒子乳剤のpAgが7.86となるように行う。また、X−1水溶液を反応容器に添加し、反応容器内のpAgを7.50に保つ。
得られた乳剤粒子の特性値を表1に示す。
この乳剤にも乳剤1−A同様の化学増感を施した。
【0324】
(乳剤1−Eの調製)
前記の乳剤1−Dの調製条件に対して、以下の変更を行った調製条件で乳剤1−Eを調製した。
▲1▼(添加−1)の添加時間を添加量は変更せずに添加流量を6倍に増加させ、添加時間を5秒間に短縮する。
▲2▼(添加−1)終了から75℃に昇温した後の熟成工程を18分に延長する。
得られた乳剤粒子の特性値を表1に示す。
この乳剤にも乳剤1−A同様の化学増感を施した。
【0325】
(乳剤1−Fの調製)
前記の乳剤1−Eの調製条件に対して、以下の変更を行った調製条件で乳剤1−Fを調製した。
▲1▼(添加2)の時の反応容器のpAgを7.57に保つ
▲2▼(添加3)の時の反応容器のpAgを7.57に保つ。
得られた乳剤粒子の特性値を表1に示す。
この乳剤にも乳剤1−A同様の化学増感を施した。
【0326】
(乳剤1−Gの調製)
前記の乳剤1−Dの調製条件に対して、以下の変更を行った調製条件で乳剤1−Gを調製した。
▲1▼(添加2)の時の反応容器のpAgを7.72に保つ
▲2▼(添加3)の時の反応容器のpAgを7.72に保つ。
得られた乳剤粒子の特性値を表1に示す。この乳剤にも乳剤1−A同様の化学増感を施した。
【0327】
(乳剤1−Hの調製)
前記の乳剤1−Dの調製条件に対して、以下の変更を行った調製条件で乳剤1−Hを調製した。
▲1▼(添加2)の時の反応容器のpAgを7.86に保つ
▲2▼(添加3)の時の反応容器のpAgを7.86に保つ。
得られた乳剤粒子の特性値を表1に示す。
この乳剤にも乳剤1−A同様の化学増感を施した。
【0328】
【表1】
【0329】
前記の乳剤1−A〜Hについて400kVの透過型電子顕微鏡を用いて液体窒素温度で観察したところ、いずれの粒子においても平板粒子のフリンジ部に転位線が10本以上存在していることがわかった。特に乳剤1−Dと乳剤1−Eを比較すると、転位線の平均量は乳剤1−Eの方がやや多く、転位線量の粒子間差は乳剤1−Eの方が小さかった。
【0330】
また、前記の乳剤1−A〜Gは、前記の乳剤調製工程における(添加2)の直前に4,5−ジヒドロキシ−1,3−ジスルホン酸ジナトリウム一水和物及び二酸化チオ尿素を添加したことにより還元増感がなされている。
【0331】
さらに、前記の乳剤1−A〜Hは、前記の乳剤調製における化学増感工程で増感色素Exs−1を添加し分光増感を行ったことにより、分光感度が最大となる波長が550nmである緑色感光性ハロゲン化銀乳剤となっている。
【0332】
下塗り層を設けてある三酢酸セルロースフィルム支持体に下記表2に示すような塗布条件で、前記の乳剤1−A〜Hの塗布を行った。それぞれを試料101〜108とする。
【0333】
【表2】
【0334】
これらの試料を40℃、相対湿度70%の条件下で14時間硬膜処理を施した。その後、富士フイルム(株)製ゼラチンフィルターSC−50(カットオフ波長が500nmである長波長光透過フィルター)と連続ウェッジを通して1/100秒間露光を行い、後述の現像処理を行なった試料を緑色フィルターで濃度測定することにより写真性能の評価を行った。
【0335】
富士写真フイルム(株)製ネガプロセサーFP−350を用い、以下に記載の方法で(液の累積補充量がその母液タンク容量の3倍になるまで)処理した。
【0336】
【0337】
次に、処理液の組成を記す。
【0338】
【0339】
【0340】
(水洗液) タンク液、補充液共通
水道水をH型強酸性カチオン交換樹脂(ロームアンドハース社製アンバーライトIR−120B)と、OH型アニオン交換樹脂(同アンバーライトIR−400)を充填した混床式カラムに通水してカルシウム及びマグネシウムイオン濃度を3mg/L以下に処理し、続いて二塩化イソシアヌール酸ナトリウム20mg/Lと硫酸ナトリウム0.15g/Lを添加した。この液のpHは6.5〜7.5の範囲にあった。
【0341】
(安定液) タンク液、補充液共通(単位 g)
p−トルエンスルフィン酸ナトリウム 0.03
ポリオキシエチレン−p−モノノニルフェニルエーテル
(平均重合度10) 0.2
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.05
1,2,4−トリアゾール 1.3
1,4−ビス(1,2,4−トリアゾール−1−
イルメチル)ピペラジン 0.75
水を加えて 1.0L
pH 8.5。
【0342】
結果を、下記の表3に示す。感度はかぶり濃度プラス0.2の濃度に到達するのに必要な露光量の逆数の相対値で表示した。試料102,104,105の比較から、円相当径の変動係数が40%以下にすることが高感度には重要であることがわかる。また、試料105から108の比較から、円相当径3.5μm以上厚み0.35μm以下の粒子の割合が高いほど、さらに高感度な乳剤が得られることがわかる。(試料101の感度を100とした。)。
【0343】
【表3】
【0344】
<実施例2>
双晶面間隔及びその変動係数を変えた転位平板乳剤の調製、原乳塗布、評価の実施例
(乳剤2−Aの調製)
実施例1の乳剤1−Eの調製条件に対して、以下の変更を行った調製条件で乳剤2−Aを調製した。
▲1▼(1st液)の温度を25℃に保つ。
▲2▼(添加−1)の添加時間は変更せずに、Ag−1、X−1及びG−1の添加量をそれぞれ14.4mL、10.9mL、3.2mLに変更する。
得られた乳剤粒子の特性値を表4に示す。
この乳剤にも乳剤1−A同様の化学増感を施した。
【0345】
(乳剤2−Eの調製)
実施例1の乳剤1−Eの調製条件に対して、以下の変更を行った調製条件で乳剤2−Eを調製した。
▲1▼(1st液)の温度を15℃に保つ。
▲2▼(添加−1)の添加時間は変更せずに、Ag−1、X−1及びG−1の添加量をそれぞれ10.8mL、8.2mL、2.4mLに変更する。
得られた乳剤粒子の特性値を表4に示す。
この乳剤にも乳剤1−A同様の化学増感を施した。
【0346】
(乳剤2−J、Kの調製)
実施例1の乳剤1−Eの調製条件に対して、以下の変更を行った調製条件で乳剤2−Jを調製した。
▲1▼(1st液)の温度を55℃に保つ
得られた乳剤粒子の特性値を表4に示す。
この乳剤にも乳剤1−A同様の化学増感を施した。
【0347】
実施例1の乳剤1−Eの調製条件に対して、以下の変更を行った調製条件で乳剤2−Kを調製した。
▲1▼(1st液)の温度を55℃に保つ
得られた乳剤粒子の特性値を表4に示す。
この乳剤にも乳剤1−A同様の化学増感を施した。
【0348】
【表4】
【0349】
前記の乳剤2−A、E、J、Kについて400kVの透過型電子顕微鏡を用いて液体窒素温度で観察したところ、いずれの粒子においても平板粒子のフリンジ部に転位線が10本以上存在していることがわかった。特に乳剤1−Eと比較して、乳剤2−Aにはより高密度の転位線が観測され、乳剤2−Eにはさらに高密度の転位線が観測された。
【0350】
また、前記の乳剤2−A、E、J、Kは、前記の乳剤調製工程における(添加2)の直前に4,5−ジヒドロキシ−1,3−ジスルホン酸ジナトリウム一水和物及び二酸化チオ尿素を添加したことにより還元増感がなされている。
【0351】
さらに、前記の乳剤2−A、E、J、Kは、前記の乳剤調製における化学増感工程で増感色素Exs−1を添加し分光増感を行ったことにより、分光感度が最大となる波長が550nmである緑色感光性ハロゲン化銀乳剤となっている。
【0352】
実施例1と同様の方法で乳剤1−E、2−A、E、J、Kの塗布を行い、試料201〜205を作成した。さらに、実施例1と同様の方法で写真性能の評価をおこなった。結果を表5に示す。感度はかぶり濃度プラス0.2の濃度に到達するのに必要な露光量の逆数の相対値で表示した(試料205の感度を100とした。)。
【0353】
双晶面間隔が0.016μm以下の粒子の割合が50%を超えると写真感度は非常に上昇することがわかる。
【0354】
【表5】
【0355】
<実施例21>
(乳剤21−Aの調製)
実施例1の乳剤1−Dの調製条件に対して、以下の変更を行った調製条件で乳剤21−Aを調製した。
▲1▼(1st液)にKIを0.3g添加。
▲2▼(添加−1)のAg−1、X−1及びG−1の添加量を適当に減量。
【0356】
(乳剤21−Bの調製)
実施例1の乳剤1−Dの調製条件に対して、以下の変更を行った調製条件で乳剤21−Aを調製した。
▲1▼(1st液)のゼラチン−4をゼラチン−5に替え、量を1.1gから2.5gとする。
▲2▼(添加−1)のG−1のゼラチン−4をゼラチン−5に替える。
【0357】
得られた乳剤粒子の特性値を表6に示す。
この乳剤にも乳剤1−A同様の化学増感を施した。
【0358】
【表6】
【0359】
上記の乳剤21−A、21−Bは、前記の乳剤調製における化学増感工程で増感色素Exs−1を添加し分光増感を行ったことにより、分光感度が最大となる波長が550nmである緑色感光性ハロゲン化銀乳剤となっている。
【0360】
実施例1と同様の方法で乳剤1−D、21−A、21−Bの塗布を行い、試料2101〜2103を作成した。さらに、実施例1と同様の方法で写真性能の評価をおこなった。結果を表7に示す。感度はかぶり濃度プラス0.2の濃度に到達するのに必要な露光量の逆数の相対値で表示した(試料2101の感度を100とした。)。
【0361】
厚さの変動係数、双晶面間隔の変動係数とも40%以下にすることにより、写真感度は大きく向上することがわかる。
【0362】
【表7】
【0363】
<実施例3>
核形成工程で低分子量酸化処理ゼラチンを用いた転位平板乳剤の調製、原乳塗布、評価の実施例
(乳剤3−Aの調製)
実施例の乳剤1−Hの調製条件に対して、以下の変更を行った調製条件で乳剤3−Aを調製した。
▲1▼(添加−2)の時のpAgを8.44に保つ
▲2▼(添加−3)の時のpAgを8.44に保つ。
【0364】
得られた乳剤は、平板粒子厚さが0.10μmであった。pAgを増加させても、厚さの減少は観察されなかった。この乳剤粒子の特性値を表8に示す。
この乳剤にも乳剤1−A同様の化学増感を施した。
【0365】
(乳剤3−Bの調製)
実施例1の乳剤1−Hの調製条件に対して、以下の変更を行った調製条件で乳剤3−Bを調製した。
▲1▼(1st液)のゼラチン−4をゼラチン−5に替え、量を1.1gから2.5gとする。
▲2▼(添加−1)のG−1のゼラチン−4をゼラチン−5に替える。
▲3▼75℃に昇温後の熟成時間を3分とする。
【0366】
得られた平板粒子は厚さが0.09μmであり厚さの減少が観察された。この乳剤粒子の特性値を表8に示す。
この乳剤にも乳剤1−A同様の化学増感を施した。
【0367】
【表8】
【0368】
前記の乳剤3−A〜Bについて400kVの透過型電子顕微鏡を用いて液体窒素温度で観察したところ、いずれの粒子においても平板粒子のフリンジ部に転位線が10本以上存在していることがわかった。
【0369】
また、前記の乳剤3−A〜Bは、前記の乳剤調製工程における(添加2)の直前に4,5−ジヒドロキシ−1,3−ジスルホン酸ジナトリウム一水和物及び二酸化チオ尿素を添加したことにより還元増感がなされている。
【0370】
さらに、前記の乳剤3−A〜Bは、前記の乳剤調製における化学増感工程で増感色素Exs−1を添加し分光増感を行ったことにより、分光感度が最大となる波長が550nmである緑色感光性ハロゲン化銀乳剤となっている。
【0371】
実施例1と同様の方法で乳剤1−H、3−A〜Bの塗布を行い、試料301〜303を作成した。さらに、実施例1と同様の方法で写真性能の評価をおこなった。結果を表9に示す。感度はかぶり濃度プラス0.2の濃度に到達するのに必要な露光量の逆数の相対値で表示した(試料301の感度を100とした。)。
【0372】
【表9】
【0373】
乳剤1−Hの添加2、添加3のpAgを高めても粒子は薄くならず、多分散化する(乳剤3−A)。このため感度は低下する。しかし、低分子量酸化処理ゼラチンを用いることにより、単分散度を保ったまま粒子厚みを薄くすることができ、結果として好感度な乳剤を得ることができる。
【0374】
<実施例4>
長辺/短辺比を変えた転位平板乳剤の調製、原乳塗布、評価の実施例
実施例1の乳剤1−B及び1−Cについて平板粒子の長辺/短辺比を測定した結果、それぞれ1.8及び1.2であった。
【0375】
(乳剤4−Aの調製)
実施例1の乳剤1−Aの調製条件に対して、乳剤1−Dで行った(添加−2)及び(添加−3)の変更を適用した調製条件で乳剤4−Aを調製した。平板粒子の長辺/短辺比は1.2であった。この乳剤は、円相当径の変動係数が26%であり、円相当径3.5μm以上かつ厚み0.25μm以下の平板粒子が全粒子の65%を占め、双晶面間隔が0.016μm以下の平板粒子が全粒子の65%を占めた。
【0376】
(乳剤4−Bの調製)
乳剤4−Aの調製条件に対して、次の変更を適用した調製条件で乳剤4−Bを調製した。
▲1▼(添加−2)の時のpAgを7.57に保つ
▲2▼(添加−3)の時のpAgを7.57に保つ。
得られた平板粒子の長辺/短辺比は1.4であった。
この乳剤の特性値を表10に示す。
この乳剤にも乳剤1−A同様の化学増感を施した。
【0377】
【表10】
【0378】
前記の乳剤4−A〜Bについて400kVの透過型電子顕微鏡を用いて液体窒素温度で観察したところ、いずれの粒子においても平板粒子のフリンジ部に転位線が10本以上存在していることがわかった。
また、前記の乳剤4−A〜Bは、前記の乳剤調製工程における(添加2)の直前に4,5−ジヒドロキシ−1,3−ジスルホン酸ジナトリウム一水和物及び二酸化チオ尿素を添加したことにより還元増感がなされている。
【0379】
さらに、前記の乳剤4−A〜Bは、前記の乳剤調製における化学増感工程で増感色素Exs−1を添加し分光増感を行ったことにより、分光感度が最大となる波長が550nmである緑色感光性ハロゲン化銀乳剤となっている。
【0380】
実施例1と同様の方法で乳剤1−B〜C、4−A〜Bの塗布を行い、試料401〜404を作成した。さらに、実施例1と同様の方法で写真性能の評価をおこなった。結果を表9に示す。感度はかぶり濃度プラス0.2の濃度に到達するのに必要な露光量の逆数の相対値で表示した(試料401の感度を100とした。)。長辺/短辺比が1に近く、かつ本発明の態様を持つ粒子の感度が高いことがわかる。
【0381】
【表11】
【0382】
<実施例5>
以下の製法によりハロゲン化銀乳剤H−5a、H−5b〜hを調製した。
(乳剤H−5aの製法)
実施例1の乳剤1−Aの調製において、化学増感を行う前に、TAZ−1を添加する工程を付加し、また化学増感の最初に添加される増感色素をExs−1、Exs−4及びExs−5の組み合わせに変更した。それ以外は乳剤1−Aとほぼ同様にして調製した。なお、各増感色素の使用量は、ハロゲン化銀1モル当たり、Exs−1が5.50×10-4モル、Exs−4が1.30×10-4モル、Exs−5が4.65×10-5モルである。
【0383】
【化31】
【0384】
【化32】
【0385】
(乳剤H−5b〜hの製法)
実施例1の乳剤1−B〜Hの調製において、化学増感を行う前に、TAZ−1を添加する工程を付加し、また化学増感の最初に添加される増感色素をExs−1、Exs−4及びExs−5の組み合わせに変更した。それ以外は乳剤1−B〜Hとほぼ同様にして調製した。なお、各増感色素の使用量は、前記の乳剤H−5aと同じである。
【0386】
以下の製法によりハロゲン化銀乳剤D〜G、H−a、H−b、I−a、I−b、ならびにJ〜Rを調製した。
(乳剤Dの製法)
フタル化率97%のフタル化した重量平均分子量15000の低分子量ゼラチン31.7g、KBr31.7gを含む水溶液42.2Lを35℃に保ち激しく撹拌した。AgNO3、316.7gを含む水溶液1583mLとKBr、221.5g、実施例1のゼラチン−4を52.7gを含む水溶液1583mLをダブルジェット法で1分間に渡り添加した。添加終了後、直ちにKBr52.8gを加えて、AgNO3398.2gを含む水溶液2485mLとKBr291.1gを含む水溶液2581mLをダブルジェット法で2分間に渡り添加した。添加終了後、直ちにKBr、44.8gを添加した。その後、40℃に昇温し、熟成した。熟成終了後、琥珀化ゼラチン−2を923gとKBr、79.2gを添加し、AgNO3、5103gを含む水溶液15947mLとKBr水溶液をダブルジェット法で最終流量が初期流量の1.4倍になるように流量加速して10分間に渡り添加した。この時、反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを9.90に保った。
【0387】
水洗した後、実施例1のゼラチン−1を加えpH、5.7、pAg、8.8、乳剤1kg当たりの銀換算の重量131.8g、ゼラチン重量64.1gに調整し、種乳剤とした。実施例1のゼラチン−2を46g、KBr1.7gを含む水溶液1211mLを75℃に保ち激しく撹拌した。前述した種乳剤を9.9g加えた後、変成シリコンオイル(日本ユニカ−株式会社製品、L7602)を0.3g添加した。H2SO4を添加してpHを5.5に調整した後、AgNO3を7.0gを含む水溶液67.6mLとKBr水溶液をダブルジェット法で最終流量が初期流量の5.1倍になるように流量加速して6分間に渡り添加した。この時、反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを8.15に保った。
【0388】
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム2mgと二酸化チオ尿素2mgを添加した後、AgNO3を105.6gを含む水溶液、328mLとKBr水溶液をダブルジェット法で最終流量が初期流量の3.7倍になるように流量加速して56分間に渡り添加した。この時、0.037μmの粒子サイズのAgI微粒子乳剤を沃化銀含有率が27mol%になるように同時に流量加速して添加し、かつ反応容器内のバルク乳剤溶液のpAg を8.60に保った。AgNO3を45.6gを含む水溶液121.3mLとKBr水溶液をダブルジェット法で22分間に渡り添加した。この時、反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを7.60に保った。82℃に昇温し、KBrを添加して反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを8.80に調整した後、前述したAgI微粒子乳剤をKI重量換算で6.33g添加した。
【0389】
添加終了後、直ちに、AgNO3を66.4g含む水溶液206.2mLを16分間に渡り添加した。添加初期の5分間はKBr水溶液で反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを8.80に保った。水洗した後、実施例1のゼラチン−1を添加し40℃でpH、5.8、pAg、8.7に調整した。TAZ−1を添加した後、60℃に昇温した。増感色素Exs−2およびExs−3を添加した後に、チオシアン酸カリウム、塩化金酸、チオ硫酸ナトリウム、N,N−ジメチルセレノウレアを添加し最適に化学増感した。化学増感終了時に化合物3および化合物4を添加した。ここで、最適に化学増感するとは、増感色素ならびに各化合物をハロゲン化銀1モルあたり10-1から10-8モルの添加量範囲から選択したことを意味する。
【0390】
【化33】
【0391】
【化34】
【0392】
【化35】
【0393】
(乳剤Eの製法)
実施例1のゼラチン−4を0.96g、KBr、0.9gを含む水溶液1192mLを40℃に保ち、激しく撹拌した。AgNO3、1.49gを含む水溶液37.5mLとKBrを1.05g含む水溶液37.5mLをダブルジェット法で30秒間に渡り添加した。KBrを1.2g添加した後、75℃に昇温し熟成した。熟成終了後、実施例1のゼラチン−3を35g添加し、pHを7に調整した。二酸化チオ尿素6mgを添加した。AgNO3、29gを含む水溶液116mLとKBr水溶液をダブルジェット法で最終流量が初期流量の3倍になるように流量加速して添加した。この時、反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを8.15に保った。AgNO3を110.2g含む水溶液440.6mLとKBr水溶液をダブルジェット法で最終流量が初期流量の5.1倍になるように流量加速して30分間に渡り添加した。この時、乳剤Dの調製で使用したAgI微粒子乳剤を沃化銀含有率が15.8mol%になるように同時に流量加速して添加し、かつ反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを7.85に保った。
【0394】
AgNO3を24.1g含む水溶液96.5mLとKBr水溶液をダブルジェット法で3分間に渡り添加した。この時、反応容器内のバルク乳剤溶液のpAg を7.85に保った。エチルチオスルホン酸ナトリウム26mgを添加した後、55℃に降温し、KBr水溶液を添加し、反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを9.80に調整した。前述したAgI微粒子乳剤をKI重量換算で8.5g添加した。添加終了後、直ちにAgNO3を57g含む水溶液228mLを5分間に渡り添加した。この時、添加終了時の反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgが8.75になるようにKBr水溶液で調整した。乳剤Dとほぼ同様に水洗し、化学増感した。
【0395】
(乳剤Fの製法)
実施例1のゼラチン−2を1.02g、KBr0.9gを含む水溶液1192mLを35℃に保ち、激しく撹拌した。AgNO3、4.47gを含む水溶液、42mLとKBr、3.16g含む水溶液、42mLをダブルジェット法で9秒間に渡り添加した。KBrを2.6g添加した後、63℃に昇温し熟成した。熟成終了後、実施例1のゼラチン−3を41.2gとNaCl、18.5gを添加した。pHを7.2に調整した後、ジメチルアミンボラン、8mgを添加した。AgNO3を26gを含む水溶液203mLとKBr水溶液をダブルジェット法で最終流量が初期流量の3.8倍になるように添加した。この時、反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを8.65に保った。AgNO3を110.2g含む水溶液440.6mLとKBr水溶液をダブルジェット法で最終流量が初期流量の5.1倍になるように流量加速して24分間に渡り添加した。この時、乳剤Dの調製で使用したAgI微粒子乳剤を沃化銀含有率が2.3mol%になるように同時に流量加速して添加し、かつ反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを8.50に保った。
【0396】
1Nのチオシアン酸カリウム水溶液10.7mLを添加した後、AgNO3、24.1gを含む水溶液153.5mLとKBr水溶液をダブルジェット法で2分30秒間に渡り添加した。この時、反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを8.05に保った。KBr水溶液を添加して反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを9.25に調整した。前述したAgI微粒子乳剤をKI重量換算で6.4g添加した。添加終了後、直ちにAgNO3、57gを含む水溶液404mLを45分間に渡り添加した。この時、添加終了時の反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgが8.65になるようにKBr水溶液で調整した。乳剤Dとほぼ同様に水洗し、化学増感した。
【0397】
(乳剤Gの製法)
乳剤Fの調製において核形成時のAgNO3添加量を2.3倍に変更した。そして、最終のAgNO3を57gを含む水溶液404mLの添加終了時の反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgが6.85になるようにKBr水溶液で調整するように変更した。それ以外は乳剤Fとほぼ同様にして調製した。
【0398】
(乳剤H−aの製法)
乳剤Gの調製において核形成の温度を35℃に変更した以外はほぼ同様に調製した。
【0399】
(乳剤I−aの製法)
実施例1のゼラチン−4を0.75g、KBr,0.9gを含む水溶液1200mLを39℃に保ち、pHを1.8に調整し激しく撹拌した。AgNO3を1.85gを含む水溶液と1.5mol%のKIを含むKBr水溶液をダブルジェット法で16秒間に渡り添加した。この時、KBrの過剰濃度を一定に保った。54℃に昇温し熟成した。熟成終了後、実施例1のゼラチン−2を20g添加した。pHを5.9に調整した後、KBr、2.9gを添加した。AgNO3、27.4gを含む水溶液288mLとKBr水溶液をダブルジェット法で53分間に渡り添加した。この時、粒子サイズ0.03μmのAgI微粒子乳剤を沃化銀含有率が4.1mol%になるように同時に添加し、かつ反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを9.40に保った。
【0400】
KBr、2.5gを添加した後、AgNO3、87.7gを含む水溶液とKBr水溶液をダブルジェット法で最終流量が初期流量の1.2倍になるように流量加速して63分間に渡り添加した。この時、上述のAgI微粒子乳剤を沃化銀含有率が10.5mol%になるように同時に流量加速して添加し、かつ反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを9.50に保った。AgNO3、41.8gを含む水溶液132mLとKBr水溶液をダブルジェット法で25分間に渡り添加した。添加終了時の反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgが8.15になるようにKBr水溶液の添加を調整した。pHを7.3に調整し、二酸化チオ尿素、1mgを添加した。
【0401】
KBrを添加して反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを9.50に調整した後、上述のAgI微粒子乳剤をKI重量換算で8.78g添加した。添加終了後、直ちにAgNO3、63.3gを含む水溶液609mLを10分間に渡り添加した。添加初期の6分間はKBr水溶液で反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを9.50に保った。水洗した後、実施例1のゼラチン−1を添加し40℃でpH6.5、pAg、8.2に調整した。乳剤H−aとほぼ同様に化学増感した。なお、増感色素の使用量は、ハロゲン化銀1モル当たり、Exs−1が1.08×10-3モル、Exs−4が2.56×10-4モル、Exs−5が9.16×10-5モルである。
【0402】
(乳剤I−bの製法)
乳剤I−aの調製において、最終のAgNO3を含む水溶液609mLの添加の添加の直前に添加されるAgI微粒子乳剤の量をKI重量換算で5.73gとし、かつ前記のAgNO3を含む水溶液609mL中に含まれるAgNO3の量を66.4gに変更した。それ以外は乳剤I−aとほぼ同様にして調製した。
【0403】
(乳剤Jの製法)
実施例1のゼラチン−4を0.70g、KBr、0.9g、KI、0.175g、乳剤Dの調製で使用した変成シリコンオイル0.2gを含む水溶液1200mLを33℃に保ち、pHを1.8に調製し激しく撹拌した。AgNO3を1.8gを含む水溶液と3.2mol%のKIを含むKBr水溶液をダブルジェット法で9秒間に渡り添加した。この時、KBrの過剰濃度を一定に保った。62℃に昇温し熟成した。熟成終了後、実施例1のゼラチン−3を27.8g添加した。pHを6.3に調製した後、KBr、2.9gを添加した。AgNO3、27.58gを含む水溶液270mLとKBr水溶液をダブルジェット法で37分間に渡り添加した。この時、実施例1のゼラチン−4の水溶液とAgNO3水溶液とKI水溶液を特開平10−43570号に記載の磁気カップリング誘導型撹拌機を有する別のチャンバー内で添加前直前混合して調製した粒子サイズ0.008μmのAgI微粒子乳剤を沃化銀含有率が4.1mol%になるように同時に添加し、かつ反応容器内のバルク乳剤溶液のpAg を9.15に保った。
【0404】
KBr、2.6gを添加した後、AgNO3を87.7gを含む水溶液とKBr水溶液をダブルジェット法で最終流量が初期流量の3.1倍になるように流量加速して49分間に渡り添加した。この時、上述の添加前直前混合して調製したAgI微粒子乳剤を沃化銀含有率が7.9mol%になるように同時に流量加速し、かつ反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを9.30に保った。二酸化チオ尿素、1mgを添加した後、AgNO3、41.8gを含む水溶液132mLとKBr水溶液をダブルジェット法で20分間に渡り添加した。添加終了時の反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgが7.90になるようにKBr水溶液の添加を調整した。
【0405】
78℃に昇温し、pHを9.1に調整した後、KBrを添加して反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを8.70にした。乳剤Dの調製で使用したAgI微粒子乳剤をKI重量換算で5.73g添加した。添加終了後、直ちにAgNO3、66.4gを含む水溶液321mLを4分間に渡り添加した。添加初期の2分間はKBr水溶液で反応容器内のバルク乳剤溶液のpAg を8.70に保った。乳剤H−aとほぼ同様に水洗し、化学増感した。なお、増感色素の使用量は、ハロゲン化銀1モル当たり、Exs−1が1.25×10-3モル、Exs−4が2.85×10-4モル、Exs−5が3.29×10-5モルである。
【0406】
(乳剤Kの製法)
実施例1のゼラチン−1を17.8g、KBr、6.2g、KI、0.46gを含む水溶液を45℃に保ち激しく撹拌した。AgNO3、11.85gを含む水溶液とKBrを3.8g含む水溶液をダブルジェット法で45秒間に渡り添加した。63℃に昇温後、実施例1のゼラチン−1を24.1g添加し、熟成した。熟成終了後、AgNO3、133.4gを含む水溶液とKBr水溶液をダブルジェット法で最終流量が初期流量の2.6倍になるように20分間に渡って添加した。この時、反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを7.60に保った。また添加開始10分後にK2IrCl6を0.1mg添加した。NaClを7g添加した後、AgNO3を45.6g含む水溶液とKBr水溶液をダブルジェット法で12分間に渡って添加した。この時、反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを6.90に保った。また添加開始から6分間に渡って黄血塩を29mg含む水溶液100mLを添加した。
【0407】
KBrを14.4g添加した後、乳剤Dの調製で使用したAgI微粒子乳剤をKI重量換算で6.3g添加した。添加終了後、直ちにAgNO3を42.7gを含む水溶液とKBr水溶液をダブルジェット法で11分間に渡り添加した。この時、反応容器内のバルク乳剤溶液のpAg を6.90に保った。乳剤H−aとほぼ同様に水洗し、化学増感した。なお、増感色素の使用量は、ハロゲン化銀1モル当たり、Exs−1が5.79×10-4モル、Exs−4が1.32×10-4モル、Exs−5が1.52×10-5モルである。
【0408】
(乳剤Lの製法)
乳剤Kの調製において核形成時の温度を35℃に変更した以外はほぼ同様にして調製した。なお、増感色素の使用量は、ハロゲン化銀1モル当たり、Exs−1が9.66×10-4モル、Exs−4が2.20×10-4モル、Exs−5が2.54×10-5モルである。
【0409】
(乳剤Mの製法)
実施例1のゼラチン−4を0.75g、KBr、0.9gを含む水溶液1200mLを39℃に保ち、pHを1.8に調整し激しく撹拌した。AgNO3を0.34g含む水溶液と1.5mol%のKIを含むKBr水溶液をダブルジェット法で16秒間に渡り添加した。この時、KBrの過剰濃度を一定に保った。54℃に昇温し熟成した。熟成終了後、実施例1のゼラチン−2を20g添加した。pHを5.9に調整した後、KBr、2.9gを添加した。二酸化チオ尿素、3mgを添加した後、AgNO3、28.8gを含む水溶液288mLとKBr水溶液をダブルジェット法で58分間に渡り添加した。この時、粒子サイズ0.03μmのAgI微粒子乳剤を沃化銀含有率が4.1mol%になるように同時に添加し、かつ反応容器内のバルク乳剤溶液のpAg を9.40に保った。KBr、2.5gを添加した後、AgNO3、87.7gを含む水溶液とKBr水溶液をダブルジェット法で最終流量が初期流量の1.2倍になるように流量加速して69分間に渡り添加した。この時、上述のAgI微粒子乳剤を沃化銀含有率が10.5mol%になるように同時に流量加速して添加し、かつ反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを9.50に保った。
【0410】
AgNO3、41.8gを含む水溶液132mLとKBr水溶液をダブルジェット法で27分間に渡り添加した。添加終了時の反応容器内のバルク乳剤溶液のpAg を8.15になるようにKBr水溶液の添加を調整した。ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム2mgを添加した後、KBrを添加して反応容器内のバルク乳剤溶液のpAg を9.50に調整した後、上述のAgI微粒子乳剤をKI重量換算で5.73g添加した。添加終了後、直ちにAgNO3、66.4gを含む水溶液609mLを11分間に渡り添加した。添加初期の6分間はKBr水溶液で反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを9.50に保った。水洗した後、ゼラチンを添加し40℃でpH6.5、pAg、8.2に調整した。その後、TAZ−1を添加し、56℃に昇温した。増感色素Exs−1およびExs−6を添加し、その後、チオシアン酸カリウム、塩化金酸、チオ硫酸ナトリウム、N,N−ジメチルセレノウレアを添加し熟成し最適に化学増感した。化学増感終了時にMER−1およびMER−3を添加した。なお、増感色素の使用量は、ハロゲン化銀1モル当たり、Exs−1が3.69×10-4モル、Exs−6が8.19×10-4モルである。
【0411】
【化36】
【0412】
【化37】
【0413】
【化38】
【0414】
(乳剤Nの製法)
実施例1のゼラチン−2を0.38g、KBrを0.9g含む水溶液1200mLを60℃に保ち、pHを2に調整し激しく撹拌した。AgNO3を1.03g含む水溶液とKBrを0.88g、KIを0.09gを含む水溶液をダブルジェット法で30秒間に渡り添加した。熟成終了後、実施例1のゼラチン−3を12.8gを添加した。pHを5.9に調整した後、KBr、2.99g、NaCl、6.2g添加した。AgNO3を27.3g含む水溶液60.7mLとKBr水溶液をダブルジェット法で39分間に渡り添加した。この時、反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを9.05に保った。AgNO3、65.6gを含む水溶液とKBr水溶液をダブルジェット法で最終流量が初期流量の2.1倍になるように流量加速して46分間に渡り添加した。この時、乳剤Dの調製で使用したAgI微粒子乳剤を沃化銀含有量が6.5mol%になるように同時に流量加速して添加し、かつ反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを9.05に保った。
【0415】
二酸化チオ尿素、1.5mgを添加した後、AgNO3、41.8gを含む水溶液132mLとKBr水溶液をダブルジェット法で16分間に渡り添加した。添加終了時の反応容器内のバルク乳剤溶液のpAg が7.70になるようにKBr水溶液の添加を調整した。ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム2mgを添加した後、KBrを添加して反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを9.80に調整した。上述のAgI微粒子乳剤をKI重量換算で6.2g添加した。添加終了後、直ちにAgNO3、88.5gを含む水溶液300mLを10分間に渡り添加した。添加終了時の反応容器内のバルク乳剤溶液のpAg が7.40になるようにKBr水溶液の添加で調整した。水洗した後、実施例1のゼラチン−1を添加し40℃でpH6.5、pAg、8.2に調整した。TAZ−1を添加した後、58℃に昇温した。増感色素Exs−7、Exs−8およびExs−9を添加した後、K2IrCl6、チオシアン酸カリウム、塩化金酸、チオ硫酸ナトリウム、N,N−ジメチルセレノウレアを添加し最適に化学増感した。化学増感終了時にMER−1およびMER−3を添加した。
【0416】
【化39】
【0417】
【化40】
【0418】
【化41】
【0419】
(乳剤Oの製法)
乳剤Nの調製において、核形成時に添加するAgNO3の量を1.96gに、KBrの量を1.67gに、KIの量を0.172gにそれぞれ変更し、また、化学増感時の温度を58℃から61℃に変更した。それ以外は、乳剤Nとほぼ同様にして調製した。
【0420】
(乳剤Pの製法)
実施例1のゼラチン−4を4.9g、KBr、5.3gを含む水溶液1200mLを40℃に保ち激しく撹拌した。AgNO3、8.75gを含む水溶液27mLとKBr、6.45gを含む水溶液36mLを1分間に渡りダブルジェット法で添加した。75℃に昇温した後、AgNO3、6.9gを含む水溶液21mLを2分間に渡り添加した。NH4NO3、26g、1N、NaOH、56mLを順次、添加した後、熟成した。熟成終了後pHを4.8に調製した。AgNO3、141gを含む水溶液438mLとKBrを102.6g含む水溶液458mLをダブルジェット法で最終流量が初期流量の4倍になるように添加した。55℃に降温した後、AgNO3を7.1gを含む水溶液240mLとKIを6.46g含む水溶液をダブルジェット法で5分間に渡り添加した。KBrを7.1g添加した後、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム、4mgとK2IrCl6、0.05mgを添加した。AgNO3、57.2gを含む水溶液177mLとKBr、40.2gを含む水溶液、223mLを8分間に渡ってダブルジェット法で添加した。乳剤Nとほぼ同様に水洗し、化学増感した。
【0421】
(乳剤QおよびRの製法)
乳剤Kおよび乳剤Lとそれぞれほぼ同様にして調製した。但し化学増感は乳剤Oとほぼ同様の方法で行った。
【0422】
前記のハロゲン化銀乳剤の特性値を表12にまとめて示した。表面ヨード含有率はXPSにより下記の如く調べることができる。試料を1.33×10-6Pa以下の真空中で−115℃まで冷却し、プローブX線としてMgKαをX線源電圧8kV、X線電流20mAで照射し、Ag3d5/2、Br3d、I3d5/2電子について測定し、測定されたピークの積分強度を感度因子で補正し、これらの強度比から表面のヨード含有率を求めた。なお、前記の乳剤D〜G、H−a、H−b、I−a、I−b、ならびにJ〜Rのハロゲン化銀粒子には特開平3−237450号に記載されているような転位線が高圧電子顕微鏡を用いて観察されている。
【0423】
【表12】
【0424】
【表13】
【0425】
1)支持体
本実施例で用いた支持体は、下記の方法により作成した。
ポリエチレン−2,6−ナフタレートポリマー100重量部と紫外線吸収剤としてTinuvin P.326(チバ・ガイギーCiba−Geigy社製)2重量部とを乾燥した後、300℃にて溶融後、T型ダイから押し出し、140℃で3.3倍の縦延伸を行い、続いて130℃で3.3倍の横延伸を行い、さらに250℃で6秒間熱固定して厚さ90μmのPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムを得た。なお、このPENフィルムにはブルー染料、マゼンタ染料及びイエロー染料(公開技法:公技番号94−6023号記載のI−1、I−4、I−6、I−24、I−26、I−27、II−5)を適当量添加した。さらに、直径20cmのステンレス巻き芯に巻き付けて、110℃、48時間の熱履歴を与え、巻き癖のつきにくい支持体とした。
【0426】
2)下塗層の塗設
上記支持体は、その両面にコロナ放電処理、UV放電処理、さらにグロー放電処理をした後、それぞれの面にゼラチン0.1g/m2、ソウジウムα−スルホジ−2−エチルヘキシルサクシネート0.01g/m2、サリチル酸0.04g/m2、p−クロロフェノール0.2g/m2、(CH2=CHSO2CH2CH2NHCO)2CH20.012g/m2、ポリアミド−エピクロルヒドリン重縮合物0.02g/m2の下塗液を塗布して(10mL/m2、バーコーター使用)、下塗層を延伸時高温面側に設けた。乾燥は115℃、6分実施した(乾燥ゾーンのローラーや搬送装置はすべて115℃となっている)。
【0427】
3)バック層の塗設
下塗後の上記支持体の片方の面にバック層として下記組成の帯電防止層、磁気記録層さらに滑り層を塗設した。
【0428】
3−1)帯電防止層の塗設
平均粒径0.005μmの酸化スズ−酸化アンチモン複合物の比抵抗は5Ω・cmの微粒子粉末の分散物(2次凝集粒子径約0.08μm)を0.2g/m2、ゼラチン0.05g/m2、(CH2=CHSO2CH2CH2NHCO)2CH2 0.02g/m2、ポリ(重合度10)オキシエチレン−p−ノニルフェノール 0.005g/m2及びレゾルシンを塗布した。
【0429】
3−2)磁気記録層の塗設
3−ポリ(重合度15)オキシエチレン−プロピルオキシトリメトキシシラン(15重量%)で被覆処理されたコバルト−γ−酸化鉄(比表面積43m2/g、長軸0.14μm、単軸0.03μm、飽和磁化89Am2/kg、Fe+2/Fe+3=6/94、表面は酸化アルミ酸化珪素で酸化鉄の2重量%で処理されている)0.06g/m2をジアセチルセルロース1.2g/m2(酸化鉄の分散はオープンニーダーとサンドミルで実施した)、硬化剤としてC2H5C(CH2OCONH−C6H3(CH3)NCO)30.3g/m2を、溶媒としてアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンを用いてバーコーターで塗布し、膜厚1.2μmの磁気記録層を得た。マット剤としてシリカ粒子(0.3μm)と3−ポリ(重合度15)オキシエチレン−プロピルオキシトリメトキシシラン(15重量%)で処理被覆された研磨剤の酸化アルミ(0.15μm)をそれぞれ10mg/m2となるように添加した。乾燥は115℃、6分実施した(乾燥ゾーンのローラーや搬送装置はすべて115℃)。X−ライト(ブルーフィルター)での磁気記録層のDBの色濃度増加分は約0.1、また磁気記録層の飽和磁化モーメントは4.2Am2/kg、保磁力7.3×104A/m、角形比は65%であった。
【0430】
3−3)滑り層の調整
ジアセチルセルロース(25mg/m2)、C6H13CH(OH)C10H20COOC40H81(化合物a,6mg/m2)/C50H101O(CH2CH2O)16H(化合物b,9mg/m2)混合物を塗布した。なお、この混合物は、キシレン/プ ロピレンモノメチルエーテル(1/1)中で105℃で溶融し、常温のプロピレンモノメチルエーテル(10倍量)に注加分散して作製した後、アセトン中で分散物(平均粒径0.01μm)にしてから添加した。マット剤としてシリカ粒子(0.3μm)と研磨剤の3−ポリ(重合度15)オキシエチレンプロピルオキシトリメトキシシラン(15重量%)で被覆された酸化アルミ(0.15μm)をそれぞれ15mg/m2となるように添加した。乾燥は115℃、6分行った(乾燥ゾーンのローラーや搬送装置はすべて115℃)。滑り層は、動摩擦係数0.06(5mmφのステンレス硬球、荷重100g、スピード6cm/分)、静摩擦係数0.07(クリップ法)、また後述する乳剤面と滑り層の動摩擦係数も0.12と優れた特性であった。
【0431】
4)感光層の塗設(試料501)
次に、前記で得られたバック層の反対側に、下記の組成の各層を重層塗布し、カラーネガ感光材料である試料501を作成した。
【0432】
(感光層の組成)
各層に使用する素材の主なものは下記のように分類されている;
ExC:シアンカプラー UV :紫外線吸収剤
ExM:マゼンタカプラー HBS:高沸点有機溶剤
ExY:イエローカプラー H :ゼラチン硬化剤
(具体的な化合物は以下の記載で、記号の次に数値が付けられ、後ろに化学式が挙げられている)
各成分に対応する数字は、g/m2単位で表した塗布量を示し、ハロゲン化銀については銀換算の塗布量を示す。
【0433】
第1層(第1ハレーション防止層)
黒色コロイド銀 銀 0.155
沃臭化銀乳剤T 銀 0.01
ゼラチン 0.87
ExC−1 0.002
ExC−3 0.002
Cpd−2 0.001
HBS−1 0.004
HBS−2 0.002。
【0434】
第2層(第2ハレーション防止層)
黒色コロイド銀 銀 0.066
ゼラチン 0.407
ExM−1 0.050
ExF−1 2.0×10-3
HBS−1 0.074
固体分散染料 ExF−2 0.015
固体分散染料 ExF−3 0.020。
【0435】
第3層(中間層)
沃臭化銀乳剤S 0.020
ExC−2 0.022
ポリエチルアクリレートラテックス 0.085
ゼラチン 0.294。
【0436】
第4層(低感度赤感乳剤層)
沃臭化銀乳剤R 銀 0.065
沃臭化銀乳剤Q 銀 0.258
ExC−1 0.109
ExC−3 0.044
ExC−4 0.072
ExC−5 0.011
ExC−6 0.003
Cpd−2 0.025
Cpd−4 0.025
HBS−1 0.17
ゼラチン 0.80。
【0437】
第5層(中感度赤感乳剤層)
沃臭化銀乳剤P 銀 0.21
沃臭化銀乳剤O 銀 0.62
ExC−1 0.14
ExC−2 0.026
ExC−3 0.020
ExC−4 0.12
ExC−5 0.016
ExC−6 0.007
Cpd−2 0.036
Cpd−4 0.028
HBS−1 0.16
ゼラチン 1.18。
【0438】
第6層(高感度赤感乳剤層)
沃塩臭化銀乳剤N 銀 1.47
ExC−1 0.18
ExC−3 0.07
ExC−6 0.029
ExC−7 0.010
ExY−5 0.008
Cpd−2 0.046
Cpd−4 0.077
HBS−1 0.25
HBS−2 0.12
ゼラチン 2.12。
【0439】
第7層(中間層)
Cpd−1 0.089
固体分散染料ExF−4 0.030
HBS−1 0.050
ポリエチルアクリレートラテックス 0.83
ゼラチン 0.84。
【0440】
第8層(赤感層へ重層効果を与える層)
沃臭化銀乳剤M 銀 0.560
Cpd−4 0.030
ExM−2 0.096
ExM−3 0.028
ExY−1 0.031
ExG−1 0.006
HBS−1 0.085
HBS−3 0.003
ゼラチン 0.58。
【0441】
第9層(低感度緑感乳剤層)
沃臭化銀乳剤L 銀 0.39
沃塩臭化銀乳剤K 銀 0.28
沃臭化銀乳剤J 銀 0.35
ExM−2 0.36
ExM−3 0.045
ExG−1 0.005
HBS−1 0.28
HBS−3 0.01
HBS−4 0.27
ゼラチン 1.39。
【0442】
第10層(中感度緑感乳剤層)
沃臭化銀乳剤I−a 銀 0.45
ExC−6 0.009
ExM−2 0.031
ExM−3 0.029
ExY−1 0.006
ExM−4 0.028
ExG−1 0.005
HBS−1 0.064
HBS−3 2.1×10-3
ゼラチン 0.44。
【0443】
第11層(高感度緑感乳剤層)
沃臭化銀乳剤I−a 銀 0.30
沃臭化銀乳剤H−a 銀 0.69
ExC−6 0.004
ExM−1 0.016
ExM−3 0.036
ExM−4 0.020
ExM−5 0.004
ExY−5 0.003
ExM−2 0.013
ExG−1 0.005
Cpd−4 0.007
HBS−1 0.18
ポリエチルアクリレートラテックス 0.099
ゼラチン 1.11。
【0444】
第12層(イエローフィルター層)
黄色コロイド銀 銀 0.01
Cpd−1 0.16
固体分散染料ExF−6 0.153
油溶性染料ExF−5 0.010
HBS−1 0.082
ゼラチン 1.057。
【0445】
第13層(低感度青感乳剤層)
沃臭化銀乳剤G 銀 0.18
沃臭化銀乳剤E 銀 0.20
沃塩臭化銀乳剤F 銀 0.07
ExC−1 0.041
ExC−8 0.012
ExY−1 0.035
ExY−2 0.71
ExY−3 0.10
ExY−4 0.005
Cpd−2 0.10
Cpd−3 4.0×10-3
HBS−1 0.24
ゼラチン 1.41。
【0446】
第14層(高感度青感乳剤層)
沃臭化銀乳剤D 銀 0.75
ExC−1 0.013
ExY−2 0.31
ExY−3 0.05
ExY−6 0.062
Cpd−2 0.075
Cpd−3 1.0×10-3
HBS−1 0.10
ゼラチン 0.91。
【0447】
第15層(第1保護層)
沃臭化銀乳剤S 銀 0.30
UV−1 0.21
UV−2 0.13
UV−3 0.20
UV−4 0.025
F−18 0.009
F−19 0.005
F−20 0.005
HBS−1 0.12
HBS−4 5.0×10-2
ゼラチン 2.3。
【0448】
第16層(第2保護層)
H−1 0.40
B−1(直径1.7μm) 5.0×10-2
B−2(直径1.7μm) 0.15
B−3 0.05
S−1 0.20
ゼラチン 0.75。
【0449】
更に、各層に適宜、保存性、処理性、圧力耐性、防黴・防菌性、帯電防止性及び塗布性をよくするために、W−1ないしW−5、B−4ないしB−6、F−1ないしF−18及び、鉄塩、鉛塩、金塩、白金塩、パラジウム塩、イリジウム塩、ルテニウム塩、ロジウム塩が含有されている。また、第8層の塗布液にハロゲン化銀1モル当たり8.5×10-3グラム、第11層に7.9×10-3グラムのカルシウムを硝酸カルシウム水溶液で添加し、試料を作製した。
【0450】
(有機固体分散染料の分散物の調製)
下記、ExF−3を次の方法で分散した。即ち、水21.7mL及び5%水溶液のp−オクチルフェノキシエトキシエトキシエタンスルホン酸ソーダ3mL並びに5%水溶液のp−オクチルフェノキシポリオキシエチレンエーテル(重合度10)0.5gとを700mLのポットミルに入れ、染料ExF−3を5.0gと酸化ジルコニウムビーズ(直径1mm)500mLを添加して内容物を2時間分散した。この分散には中央工機製のBO型振動ボールミルを用いた。分散後、内容物を取り出し、12.5%ゼラチン水溶液8gに添加し、ビーズを濾過して除き、染料のゼラチン分散物を得た。染料微粒子の平均粒径は0.44μmであった。
【0451】
同様にして、ExF−4の固体分散物を得た。染料微粒子の平均粒径は、0.45μmであった。ExF−2は欧州特許出願公開(EP)第549,489A号明細書の実施例1に記載の微小析出(Microprecipitation)分散方法により分散した。平均粒径は0.06μmであった。
【0452】
ExF−6の固体分散物を以下の方法で分散した。
水を18%含むExF−6のウェットケーキ2800gに4000gの水及びW−2の3%溶液を376g加えて攪拌し、ExF−6の濃度32%のスラリーとした。次にアイメックス(株)製ウルトラビスコミル(UVM−2)に平均粒径0.5mmのジルコニアビーズを1700mL充填し、スラリーを通して周速約10m/sec、吐出量0.5L/minで8時間粉砕した。
【0453】
(増感色素の固体微分散物の調製)
本発明の増感色素は、特開平11−52507号に記載の方法で作成した固体微分散物として使用した。
例えば増感色素ExC−1の固体微分散物を次のようにして作成した。
NaNO30.8重量部およびNa2SO43.2重量部をイオン交換水43部に溶解し、増感色素13重量部を添加し、60℃の条件下でディゾルバー翼を用い2000rpmで20分間分散することにより、増感色素ExC−1の固体分散物を得た。
【0454】
上記各層の形成に用いた化合物は、以下に示すとおりである。
【化42】
【0455】
【化43】
【0456】
【化44】
【0457】
【化45】
【0458】
【化46】
【0459】
【化47】
【0460】
【化48】
【0461】
【化49】
【0462】
【化50】
【0463】
【化51】
【0464】
【化52】
【0465】
【化53】
【0466】
【化54】
【0467】
【化55】
【0468】
【化56】
【0469】
【化57】
【0470】
(試料502から試料509の作成)
第11層の乳剤I−aおよびH−aに代えて乳剤H−5a〜乳剤H−5hを用いて試料502から試料509を作成した。
【0471】
これらの試料を40℃、相対湿度70%の条件下で14時間硬膜処理を施した。その後、富士フイルム(株)製ゼラチンフィルターSC−39(カットオフ波長が390nmである長波長光透過フィルター)と連続ウェッジを通して1/100秒間露光した。現像は富士写真フイルム社製自動現像機FP−360Bを用いて以下により行った。尚、漂白浴のオーバーフロー液を後浴へ流さず、全て廃液タンクへ排出する様に改造を行った。このFP−360Bは発明協会公開技法94−4992号に記載の蒸発補正手段を搭載している。
【0472】
処理工程及び処理液組成を以下に示す。
【0473】
安定液及び定着液は(2)から(1)への向流方式であり、水洗水のオーバーフロー液は全て定着浴(2)へ導入した。尚、現像液の漂白工程への持ち込み量、漂白液の定着工程への持ち込み量、及び定着液の水洗工程への持ち込み量は感光材料35mm幅1.1m当たりそれぞれ2.5mL、2.0mL、2.0mLであった。また、クロスオーバーの時間はいずれも6秒であり、この時間は前工程の処理時間に包含される。
【0474】
上記処理機の開口面積は発色現像液で100cm2、漂白液で120cm2、その他の処理液は約100cm2であった。
以下に処理液の組成を示す。
【0475】
【0476】
(定着(1)タンク液)
上記漂白タンク液と下記定着タンク液の5対95(容量比)混合液
(pH6.8)。
【0477】
【0478】
(水洗水)
水道水をH型強酸性カチオン交換樹脂(ロームアンドハース社製アンバーライトIR−120B)と、OH型強塩基性アニオン交換樹脂(同アンバーライトIR−400)を充填した混床式カラムに通水してカルシウム及びマグネシウムイオン濃度を3mg/L以下に処理し、続いて二塩化イソシアヌール酸ナトリウム20mg/Lと硫酸ナトリウム150mg/Lを添加した。この液のpHは6.5〜7.5の範囲にあった。
【0479】
【0480】
処理済みの試料を緑色フィルターで濃度測定することにより写真性能の評価を行った。感度はマゼンタ濃度が被り濃度プラス0.2の濃度に到達するのに必要な露光量の逆数の相対値で評価した。結果を表13に示す。単層同様に重層でも効果があることが確かめられた。
【0481】
【表14】
【0482】
<実施例6>
(乳剤H−6Aの製法)
実施例2の乳剤2−Aの調製において、化学増感を行う前に、TAZ−1を添加する工程を付加し、また化学増感の最初に添加される増感色素をExs−1、Exs−4及びExs−5の組み合わせに変更した。それ以外は乳剤2−Aとほぼ同様にして調製した。なお、各増感色素の使用量は、ハロゲン化銀1モル当たり、Exs−1が5.50×10-4モル、Exs−4が1.30×10-4モル、Exs−5が4.65×10-5モルである。
【0483】
(乳剤H−6E、J、Kの製法)
実施例2の乳剤2−E、J、Kの調製において、化学増感を行う前に、TAZ−1を添加する工程を付加し、また化学増感の最初に添加される増感色素をExs−1、Exs−4及びExs−5の組み合わせに変更した。それ以外は乳剤2−E、J、Kとほぼ同様にして調製した。なお、各増感色素の使用量は、前記の乳剤H−6aと同じである。
【0484】
実施例5の乳剤H−5aをH−5e及びH−6A、E、J、Kに置き換えた試料をそれぞれ試料601〜605とし、実施例5と同様にして写真性能の評価を行った。結果を表14に示す。感度はかぶり濃度プラス0.2の濃度に到達するのに必要な露光量の逆数の相対値で表示した(試料601の感度を100とした。)。単層と同様の結果が得られた。
【0485】
【表15】
【0486】
<実施例7>
(乳剤H−7aの製法)
実施例3の乳剤3−Aの調製において、化学増感を行う前に、TAZ−1を添加する工程を付加し、また化学増感の最初に添加される増感色素をExs−1、Exs−4及びExs−5の組み合わせに変更した。それ以外は乳剤3−Aとほぼ同様にして調製した。なお、各増感色素の使用量は、ハロゲン化銀1モル当たり、Exs−1が5.50×10-4モル、Exs−4が1.30×10-4モル、Exs−5が4.65×10-5モルである。
【0487】
(乳剤H−7bの製法)
実施例3の乳剤3−Bの調製において、化学増感を行う前に、TAZ−1を添加する工程を付加し、また化学増感の最初に添加される増感色素をExs−1、Exs−4及びExs−5の組み合わせに変更した。それ以外は乳剤3−Bとほぼ同様にして調製した。なお、各増感色素の使用量は、前記の乳剤H−7aと同じである。
【0488】
実施例5の乳剤H−5aをH−6K及びH−7a〜bに置き換えた試料をそれぞれ試料701〜703とし、実施例5と同様にして写真性能の評価を行った。結果を表15に示す。感度はかぶり濃度プラス0.2の濃度に到達するのに必要な露光量の逆数の相対値で表示した(試料701の感度を100とした。)。
【0489】
【表16】
【0490】
<実施例8>
(乳剤H−8aの製法)
実施例4の乳剤4−Aの調製において、化学増感を行う前に、TAZ−1を添加する工程を付加し、また化学増感の最初に添加される増感色素をExs−1、Exs−4及びExs−5の組み合わせに変更した。それ以外は乳剤4−Aとほぼ同様にして調製した。なお、各増感色素の使用量は、ハロゲン化銀1モル当たり、Exs−1が5.50×10-4モル、Exs−4が1.30×10-4モル、Exs−5が4.65×10-5モルである。
【0491】
(乳剤H−8bの製法)
実施例4の乳剤4−Bの調製において、化学増感を行う前に、TAZ−1を添加する工程を付加し、また化学増感の最初に添加される増感色素をExs−1、Exs−4及びExs−5の組み合わせに変更した。それ以外は乳剤4−Bとほぼ同様にして調製した。なお、各増感色素の使用量は、前記の乳剤H−8aと同じである。
【0492】
実施例5の乳剤H−5aをH−5b〜c及びH−8a〜bに置き換えた試料をそれぞれ試料801〜804とし、実施例5と同様にして写真性能の評価を行った。結果を表16に示す。感度はかぶり濃度プラス0.2の濃度に到達するのに必要な露光量の逆数の相対値で表示した(試料801の感度を100とした。)。
【0493】
【表17】
【0494】
上記の各実施例において、比較される試料は同等の粒状度であった。従って、感度の高い試料は感度/粒状比に優れた試料である。
【0495】
<実施例9>
(乳剤の調製)
乳剤9−A
KBrを0.5g、前記のゼラチン−4を1.1g含む水溶液1300mLを35℃に保ち、撹拌した(1st液調製)。
Ag−1水溶液(100mL中にAgNO3を4.9g含有する)35mLと、X−1水溶液(100mL中にKBrを5.2g含有する)27mL、およびG−1水溶液(100mL中に前記のゼラチン−4を8.0g含有する)8.5mLをトリプルジェット法で、一定の流量で30秒間にわたり添加した(添加1)。
【0496】
その後、KBr6.5gを添加し、温度を75℃に昇温した。昇温後20分間の熟成工程を経た後、G−2水溶液(100mL中に前記のゼラチン−3を12.7g含有する)300mLを添加した。
【0497】
次に、Ag−2水溶液(100mL中にAgNO3を22.1g含有する)157mLと、X−2水溶液(100mL中にKBrを15.5g含有する)をダプルジェット法で14分間にわたり添加した。この時、Ag−2水溶液の添加は最終流量が初期流量の3.4倍になるように流量加速を行い、X−2水溶液の添加は反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgが8.1を保つように行った(添加2)。
【0498】
次いで、Ag−3水溶液(100mL中にAgNO3を32.0g含有する)329mLと、X−3水溶液(100mL中にKBrを21.5g、KIを1.2g含有する)をダプルジェット法で27分間にわたり添加した。この時、Ag−3水溶液の添加は最終流量が初期流量の1.6倍になるように流量加速を行い、X−3水溶液の添加は反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgが8.0を保つように行った(添加3)。
【0499】
さらに、Ag−4水溶液(100mL中にAgNO3を32.0g含有する)156mLと、X−4水溶液(100mL中にKBrを22.4g含有する)をダプルジェット法で17分間にわたり添加した。この時、Ag−4水溶液の添加は一定の流量で行い、X−3水溶液の添加は反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgが7.7を保つように行った(添加4)。
【0500】
その後、G−3水溶液(100mL中に前記のゼラチン−1を12.0g含有する)125mLを添加した。
【0501】
次に55℃に降温し、0.3MのKI水溶液160ccを2分間にわたって添加した(添加5)。その1分後にベンゼンチオスルホン酸ナトリウムとK2IrCl6をそれぞれ粒子の層銀量2×10-6モル/モル銀、5×10-9モル/モル銀だけ溶液で添加してからさらに1分後に、Ag−4水溶液249mLと、X−5(100mL中にKBrを22.4gと[Ru(trz)6]4-(trz=1,2,4-triazole)を1×10-5モル含有する)水溶液をダブルジェット法9分間にわたって添加した。この時Ag−4水溶液の添加は一定の流量で行い、X−5水溶液は反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを8.0に保つように添加し、最後にpAgを7.8に調節した(添加6)。
【0502】
その後、通常のフロキュレーション法により脱塩を行い、次いで、攪拌しながら水、NaOH、前記のゼラチン−1を添加し、56℃でpH6.4、pAg8.6になるように調整した。
得られた乳剤は、全粒子の投影面積の99%以上が平行な主表面が(111)面である沃臭化銀の平板粒子から成る乳剤であった。
【0503】
続いて、下記増感色素Exs−1〜3、チオシアン酸カリウム、塩化金酸、チオ硫酸ナトリウムおよびN,N−ジメチルセレノ尿素を順次添加し最適に化学増感を施した後、下記の水溶性メルカプト化合物MER−1およびMER−2を4:1の比率で合計でハロゲン化銀1モル当たり3.6×10-4モル添加することにより化学増感を終了させた。最適な化学増感とは1/100秒露光時に感度が最高になることである。
【0504】
【化58】
【0505】
【化59】
【0506】
乳剤9−B
乳剤9−Aの(添加5)を下記のように変える以外は乳剤9−Aと同様に調製した。0.3MのKI水溶液160ccを2分間にわたって添加する代わりに、0.048モルのAgIを含む乳剤(AgIの粒子サイズは0.05μm)を添加し、10分間熟成した。
【0507】
乳剤9−C
乳剤9−Aの(添加5)を下記のように変える以外は乳剤9−Aと同様に調製した。55℃に降温してから0.3MのKI水溶液160ccを2分間にわたって添加する代わりに、40℃に降温してから0.048モルの沃化物イオン放出剤であるp−ヨードアセトアミドベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.048モル含む水溶液を添加してから0.8Mの亜硫酸ナトリウム水溶液60mLを1分間定量で添加し、pHを9.0に制御しながら沃化物イオンを生成せしめ、2分後に55℃に15分かけて昇温してからpHを5.5に下げた。
【0508】
乳剤9−D〜9−S
乳剤9−Aにおいて(1st液調製)及び(添加1)から(添加4)までの粒子形成条件を変えることによって(pAg、添加速度、ゼラチン種・量、反応容器外の別の撹拌混合機で同時に調製したハロゲン化銀超極微粒子の反応容器内への連続添加による銀とハライドの供給)、円相当直径及び厚みの異なる基盤粒子乳剤を調製し、その後の(添加5)以降を下記の様に行うことで平板粒子乳剤9−D〜9−Rを調製した。
【0509】
乳剤9−D、H、L、Pについては、(添加5)以降を乳剤9−Aと同様に行い調製した。
乳剤9−E、Iについては、(添加5)以降を乳剤9−Bと同様に行い調製した。
乳剤9−F、J、M、Qについては、(添加5)以降を乳剤9−Cと同様に行い調製した。
【0510】
乳剤9−G、Kについては、(添加6)においてpAgを8.0に保つ代わりに8.9に保って添加する以外は(添加5)以降を乳剤9−Bと同様に行い調製した。
乳剤9−N、Rについては、(添加6)においてpAgを8.0に保つ代わりに7.4に保って添加する以外は(添加5)以降を乳剤9−Cと同様に行い調製した。
【0511】
乳剤9−O、Sについては、(添加2)の前にHO(CH2CH2O)m(CH(CH3)CH2O)19.8(CH2CH2O)nH(m+n=9.77)を添加して粒子成長を行い、その後(添加6)においてpAgを8.0に保つ代わりに7.4に保って添加する以外は(添加5)以降を乳剤9−Cと同様に行い調製した。
【0512】
これらの乳剤調製において、硝酸銀水溶液とハロゲン化物塩水溶液の添加速度はそれぞれハロゲン化銀粒子の臨界成長速度に見合った速度で、再核発生やオストワルド熟成による多分散化を生じないように適切に制御した。
【0513】
得られた乳剤9−A〜9−Sの粒子特性を表17に示す。また、これらの乳剤の全粒子の円相当径の変動係数は、35%、全粒子の厚さの変動係数は34%であった。また、双昌面間隔が0.016μm以下の粒子は全粒子の70%であった。
【0514】
乳剤中の粒子の形状をレプリカ法による透過型電子顕微鏡写真を撮影し、粒子1000個について計測して求めた。また、特開平7−219102号に記載の分析電顕を用いる方法で各乳剤の粒子20個について電子線スポット間隔50nmで粒子内の沃化銀含有率分布を測定したところ、粒子フリンジ部の領域は約0.10〜0.25μmであり、いずれの乳剤も粒子中心部の平均沃化銀含有率より粒子フリンジ部の平均沃化銀含有率の方が2.0モル%以上高かった。
【0515】
さらに、転位線については乳剤中の粒子200個について本文中に記載の方法で高圧型(加速電圧400kV)電子顕微鏡により(導入位置、密度、分布)の観察を行った(各粒子について試料傾斜角度−10゜、−5゜、0゜、+5゜、+10゜の5通りで観察した)。
【0516】
粒子間の沃化銀含有率分布については欧州特許147,868号等に記載のEPMAを用いる方法で粒子200個について測定し求めた(I=平均沃化銀含有率とした)。
平板粒子の側面における{100}面比率については特開平8−334850号及び本文に記載の方法で求めた。
(後記の実施例の乳剤粒子特性についても同様な方法で測定した)。
【0517】
【表18】
【0518】
【表19】
【0519】
(塗布試料の作成、その評価)
塗布試料の作成およびその評価は、実施例1と同様にして行った。
写真性能の結果を、下記の表18に示す。感度はかぶり濃度プラス0.2の濃度に到達するのに必要な露光量の逆数の相対値で表示した(試料901の感度を100とした。)。
【0520】
圧力性については、露光前のフィルム試料のある部分を支点にして乳剤面とは反対側に一定の圧力で角度120度だけ3秒間折り曲げることで強制試験を行った。そして現像後、試料の折り曲げた部分に生じた圧力カブリと圧力減感を目視で評価した(試料901を基準とした)。
【0521】
試料901と試料902〜919の比較から、本発明の円相当直径が大きく、粒子厚みの薄い平板粒子に対して、粒子フリンジ部への高密度転位線の限定導入、粒子間沃化銀含有率分布の均一化及び粒子側面の(100)面積比の向上により高感度かつ圧力性の改良された乳剤が得られることが明らかである。
【0522】
【表20】
【0523】
<実施例10>
乳剤10−A〜乳剤10−Oの調製、評価
前記乳剤9−Cにおいて、(添加3)で添加される沃化物イオンの量、(添加5)で用いる沃化物イオン放出剤と亜硫酸ナトリウムの量及び(添加6)の時に保持するpAgの調節によって、粒子中心部の平均沃化銀含有率に対する粒子フリンジ部の平均沃化銀含有率の関係の異なる乳剤10−A〜10−Cを調製した。
【0524】
前記乳剤9−F、J、O及びSにおいても上記同様の調節により、それぞれ粒子中心部の平均沃化銀含有率に対する粒子フリンジ部の平均沃化銀含有率の関係異なる乳剤10−D〜10−F、乳剤10−G〜10−I、乳剤10−J〜10−L及び乳剤10−M〜10−Oを調製した。
【0525】
なお、これらの乳剤はいずれも、全粒子の50%以上を平均沃化銀含有率をIモル%とした場合に沃化銀含有率が0.7ないし1.3Iの範囲にあり、かつ実質的に粒子フリンジ部のみに1粒子当たり10本以上の転位線を含み、粒子側面の(100)面比率が25%以上の平板粒子によって占められ、かつ全粒子の円相当直径分布の変動係数は40%以下であった。
【0526】
乳剤の粒子特性を表19に示す。これらの乳剤を用いて実施例1と同様に塗布試料1001〜1015を作成し、評価を行った。結果を同時に表19に示す。
【0527】
【表21】
【0528】
表19から分かるように本発明の円相当直径が大きく、粒子厚みの薄い平板粒子に対して、粒子中心部の平均沃化銀含有率に対して粒子フリンジ部の平均沃化銀含有率が2モル%以上高い乳剤ほど高感度かつ圧力耐性が顕著に改良されている。
【0529】
<実施例11>
乳剤11−A〜乳剤11−Oの調製、評価
前記乳剤9−C、F、J、O及びSに対して、粒子形成条件を調節することでそれぞれ粒子の全粒子の円相当直径分布の変動係数の異なる乳剤11−A〜11−Oを調製した。
【0530】
なお、これらの乳剤はいずれも、平均沃化銀含有率をIモル%とした場合に沃化銀含有率が0.7ないし1.3Iの範囲にあり、かつ実質的に粒子フリンジ部のみに1粒子当たり10本以上の転位線を含む平板粒子が全粒子個数の50%以上を占め、かつ平板粒子の側面の(100)面比率が25%以上であり、さらに粒子中心部の平均沃化銀含有率に対してに粒子フリンジ部の平均沃化銀含有率は2モル%以上高い乳剤であった。また双晶面間隔が0.016μm以下の粒子が、全粒子の50%以上を占めていた。
【0531】
乳剤の粒子特性を表20に示す。これらの乳剤を用いて実施例1と同様に塗布試料1101〜1115を作成し、評価を行った。結果を同時に表20に示す。
【0532】
【表22】
【0533】
表20からわかるように本発明の円相当直径が大きく、粒子厚みの薄い平板粒子に対して、全粒子の円相当直径分布の変動係数が40%以下の乳剤ほど高感度で圧力耐性が顕著に改良されている。
【0534】
<実施例12>
実施例5の試料501の第11層の乳剤を実施例9の乳剤9−A、9−F、9−J、9−O、9−Sに変更することにより試料1201から1205を作成した。
さらに露光、処理を実施例5同様に行った。
【0535】
処理済みの試料を緑色フィルターで濃度測定することにより写真性能の評価を行った。感度はマゼンタ濃度が被り濃度プラス0.15の濃度に到達するのに必要な露光量の逆数の相対値で評価した。圧力耐性の評価については実施例9と同様な方法で試験を行い、マゼンタ濃度部分について評価した。
【0536】
結果を表21に示す。
実施例9で示した結果と同様にカラーネガ重層中においても、本発明の効果は顕著であった。
また、実施例9で調製した他の乳剤についても上記と同様の評価を行ったが、カラーネガ重層中においてもその相対関係は同様であった。
【0537】
【表23】
【0538】
<実施例13>
実施例12の試料1201に対して、次のような試料を作成した。
【0539】
(試料1301) 下記の変更以外は試料1201と同じ。
1)高感度緑感乳剤層の乳剤を実施例9の乳剤9−Aに変更
2)高感度赤感乳剤層の乳剤層を実施例9の乳剤9−A(但し増感色素をExs−7、8、9のMIX(40:2:58)したものに変更)。
【0540】
(試料1302) 下記の変更以外は試料1201と同じ。
1)高感度緑感乳剤層の乳剤を実施例9の乳剤9−Sに変更
2)高感度赤感乳剤層の乳剤層を実施例9の乳剤9−S(但し増感色素をExs−7、8、9のMIX(40:2:58)したものに変更)。
【0541】
(試料1303) 下記の変更以外は試料1302と同じ。
1)高感度赤感性乳剤層の位置を高感度緑感層と中感度緑感性層の間に移動。
【0542】
2)1)で移動した高感度赤感性乳剤層の隣接する上層及び下層に中間層(但し染料なし)を挿入。
【0543】
これらの試料1301〜1303の写真性について実施例12同様に処理を行い評価した。(但しシアン発色については赤色フィルターで濃度測定し、感度はシアン濃度が被り濃度プラス0.15の濃度に到達するのに必要な露光量の逆数の相対値で評価した)。
【0544】
結果を表22にまとめた。表からわかるように試料1301の層配列で粒子厚みの薄い平板粒子乳剤を高感度緑感性乳剤層と高感度赤感性乳剤層に同時に用いると高感度赤感性乳剤層の乳剤感度の上昇が不十分であるが、本発明の好ましい層配列(赤感性ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも1層を、緑感性ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも1層よりも支持体に関して遠い側に設置)にすると乳剤感度の上昇を引き出すことが出来、ますます本発明の効果が得られるようになった。
【0545】
また、試料1303のネガで撮影した画像を富士写真フイルム製デジタルラボシステム「フロンティア」を用いてネガをスキャンして取り込み、ワークスステーションにてデジタル画像処理を施し(富士写真フイルム製カラーネガ「スーパー400」の色再現性で、粒状消失・シャープネス強調処理)、レーザープリントで出力すると非常に良好な画質の写真が得られた。
【0546】
【表24】
【0547】
<実施例14>
乳剤(A−1)の調製
KBrを0.5g、前記のゼラチン−4を1.1g含む水溶液1300mLを35℃に保ち、撹拌した(1st液調製)。
Ag−1水溶液(100mL中にAgNO3を4.9g含有する)38mLと、X−1水溶液(100mL中にKBrを5.2g含有する)29mL、およびG−1水溶液(100mL中に前記のゼラチン−4を8.0g含有する)8.5mLをトリプルジェット法で、一定の流量で30秒間にわたり添加した(添加1)。
【0548】
その後、KBr6.5gを添加し、温度を75℃に昇温した。昇温後12分間の熟成工程を経た後、G−2水溶液(100mL中に前記のゼラチン−3を12.7g含有する)300mLを添加し、次いで、4,5−ジヒドロキシ−1,3−ジスルホン酸ジナトリウム一水和物を2.1g、二酸化チオ尿素を0.002gを1分間づつ間隔をあけて順次添加した。
【0549】
次に、Ag−2水溶液(100mL中にAgNO3を22.1g含有する)157mLと、X−2水溶液(100mL中にKBrを15.5g含有する)をダブルジェット法で14分間にわたり添加した。この時、Ag−2水溶液の添加は最終流量が初期流量の3.4倍になるように流量加速を行い、X−2水溶液の添加は反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgが8.3を保つように行った(添加2)。
【0550】
次いで、Ag−3水溶液(100mL中にAgNO3を32.0g含有する)329mLと、X−3水溶液(100mL中にKBrを21.5g、KIを1.2g含有する)をダプルジェット法で27分間にわたり添加した。この時、Ag−3水溶液の添加は最終流量が初期流量の1.6倍になるように流量加速を行い、X−3水溶液の添加は反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgが8.3を保つように行った(添加3)。
【0551】
さらに、Ag−4水溶液(100mL中にAgNO3を32.0g含有する)156mLと、X−4水溶液(100mL中にKBrを22.4g含有する)をダプルジェット法で17分間にわたり添加した。この時、Ag−4水溶液の添加は一定の流量で行い、X−3水溶液の添加は反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgが8.3を保つように行った(添加4)。
【0552】
その後、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウムを0.0025g、G−3水溶液(100mL中に前記のゼラチン−1を12.0g含有する)125mLを、1分間づつ間隔をあけて順次添加した。次いでKBr43.7gを添加し反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを9.00にしてから、AgI微粒子乳剤(100g中に平均粒径0.047μmのAgI微粒子を13.0g含有する)73.9gを添加し、その2分後から、Ag−4水溶液249mLと、X−4水溶液をダブルジェット法で添加した。この時Ag−4水溶液は一定の流量で9分間にわたって添加し、X−4水溶液は最初の3.3分間だけ反応容器内のバルク乳剤溶液のpAgを9.00に保つように添加し、残りの5.7分間は添加をせず、反応容器内のバルク乳剤溶液のpAg が最終的に7.8になるようにした(添加5)。
【0553】
その後、通常のフロキュレーション法により脱塩を行い、次いで、攪拌しながら水、NaOH、前記のゼラチン−1を添加し、56℃でpH6.4、pAg 8.6になるように調整した。
【0554】
得られた乳剤は、全粒子個数の50%以上が円相当径3.5μm以上、粒子厚み0.25μm以下であり、AgI含有量の平均値が3.94モル%、平行な主表面が(111)面である平板状ハロゲン化銀粒子から成り、XPSで測定されたハロゲン化銀粒子表面のAgI含有量は2.1モル%であった。また全粒子の円相当径の変動係数は24%であり、全粒子の厚さの変動係数は33%であった。また双晶面間隔は0.016μm以下の粒子が50%以上を占めていた。また全粒子の80%を占める平板粒子がIを平均沃化銀含有率としたときに、0.8I〜1.2Iの範囲にあった。
【0555】
続いて、下記増感色素Exs−1、チオシアン酸カリウム、塩化金酸、チオ硫酸ナトリウムおよびN,N−ジメチルセレノ尿素を順次添加し最適に化学増感を施した後、下記の水溶性メルカプト化合物MER−1およびMER−2を4:1の比率で合計でハロゲン化銀1モル当たり3.6×10-4モル添加することにより化学増感を終了させた。乳剤(A−1)では、Exs−1の添加量がハロゲン化銀1モル当たり5.3×10-4モルの時に最適に化学増感された。
【0556】
【化60】
【0557】
乳剤(A−2)〜(A−6)の調製
・乳剤(A−2)の調製
乳剤(A−1)の添加5における全消費銀量の90%から95%の部分でその部分の銀量に対して1×10-6モル/モル銀の黄血塩水溶液を添加した。このときpAg は7.3に保った。これ以外は乳剤(A−1)と同様に調製した。
【0558】
・乳剤(A−3)から乳剤(A−6)調製
乳剤(A−2)に対して黄血塩水溶液の添加量を変化させ表23のような乳剤(A−3)から乳剤(A−6)を調製した。
【0559】
前記の乳剤A−1からA−6について400kVの透過型電子顕微鏡を用いて液体窒素温度で観察したところ、いずれの粒子においても平板粒子のフリンジ部に転位線が10本以上存在した。また、円相当径に対する転位線の長さの平均は0.06であった。さらに転位線は実質的にフリンジ部のみに局在していた。
【0560】
また、前記の乳剤(A−1)から(A−6)は、前記の乳剤調製工程における(添加2)の直前に4,5−ジヒドロキシ−1,3−ジスルホン酸ジナトリウム一水和物および二酸化チオ尿素を添加したことにより還元増感がなされている。
【0561】
さらに、前記の乳剤(A−1)から(A−6)は、前記の乳剤調製における化学増感工程で増感色素Exs−1を添加し分光増感を行ったことにより、分光感度が最大となる波長が550nmである緑色感光性ハロゲン化銀乳剤となっている。これらの乳剤を実施例1と同様に塗布し処理を行った。
【0562】
写真性能の結果を、下記の表23に示す。感度はかぶり濃度プラス0.2の濃度に到達するのに必要な露光量の逆数の相対値で表示した。(試料1401の感度を100とした。)
【表25】
【0563】
試料1401と試料1402〜1406の比較から、本発明の電子捕獲ゾーンの付与により高感度な乳剤が得られることが明らかである。ただし、電子捕獲中心濃度依存性があり、大きな高感度化を得るためには適切な電子捕獲中心濃度を選ぶことが重要であることがわかる。
【0564】
<実施例15>
(乳剤B−1イ〜乳剤B−11ロ、乳剤B−21イ〜乳剤B−31ロ)の調製乳剤(A−1)および乳剤(A−4)において、(添加5)の2分前に添加するAgI微粒子乳剤の添加量を変化させ表面ヨード含量を変化させた乳剤を調製した。また、粒子成長条件を変化させることにより、円相当径および厚みの異なる乳剤を調製した。得られた乳剤は全粒子個数の50%以上が円相当径3.5μm以上、粒子厚み0.25μm以下であった。また、これらの乳剤は態様1の要件を満足していた。乳剤の特性を表24および表25に示す。これらの試料を実施例1と同様に評価した。結果を同時に示す。
【0565】
【表26】
【0566】
【表27】
【0567】
最初に表面ヨード含量が低い(2.4mol%)乳剤を用いて調製した試料1501〜試料1511について説明する。
【0568】
表24に示すように、円相当径が本発明外である3.2μm以下の場合(試料1504〜1505)、電子捕獲ゾーン導入による高感度化の効果は観測されるが小さい。しかし本発明の領域である円相当径3.7μm以上の場合(試料1501〜1503)、電子捕獲ゾーン導入による高感度化は極めて大きいことがわかる。また粒子厚みについても同様に、本発明外の領域(試料1506〜1507)では効果は小さいが、本発明の領域内(試料1508〜1511)の厚さ0.25μm以下の領域で効果は特に大きい。
【0569】
一方、表25に示すように、表面ヨード含量が6.1mol%の乳剤で上記と同様の実験を行った試料1521〜試料1531は、試料1501〜試料1511の結果同様、本発明の領域において電子捕獲ゾーンの効果が特に大きく表れることが明らかであった。しかしその高感度化の程度は試料1501〜試料1511の場合と比較すると小さく、本発明のような大サイズ平板領域では表面ヨード含量を5mol%以下に抑制することが非常に重要であると考えられる。
【0570】
<実施例16>
乳剤(A−4)の(添加5)の1分前に下記に示す晶相制御剤を添加した以外は乳剤(A−4)と同様に乳剤を調製した。得られた乳剤をC−1とする。
【0571】
また、晶相制御剤を(添加5)の途中から添加し乳剤C−2からC−4を調製した。
【0572】
さらに粒子成長条件を変化させ、円相当径および厚みの異なる乳剤を調製した。これらの乳剤の円相当径の変動係数は40%以下であり、円相当径3.5μm以上、厚み0.25μm以下の粒子が全粒子個数の50%以上を占めていた。また、これらの乳剤は態様1の要件を満足していた。これらの乳剤を最適に後熟し実施例1と同様に写真性を評価した。結果を表26に示す。
【0573】
【表28】
【0574】
試料1601から1605、もしくは試料1611から1615を比較することにより転位線長さが円相当径に対して0.05以上になると、写真性能は大きく向上することが明らかである。一方試料1621から1625および試料1631から1635の本発明外の粒子では、転位線長さによる性能変化は小さい。すなわち、円相当径3.7μm以上の本発明の領域で転位線長さを長くすることによる写真感度の向上が特異的に大きいことがわかった。
【0575】
<実施例17>
乳剤A−4に対して、粒子形成条件を変化させることにより表27に示すような円相当径の変動係数を変化させた乳剤を調製した。実施例1と同様にして写真性を評価した。結果を表27に示す。
【0576】
【表29】
【0577】
円相当径が本発明外の試料1711〜1716、試料1721〜1726では円相当径の変動係数を変化させても性能変化は小さいが、円相当径が本発明の領域である試料1701〜1706では円相当径の変動係数を40%以下にすることにより、本発明の効果が顕著に表れた。
【0578】
<実施例18>
(試料1802から試料1807の作成)
第11層の乳剤I−aおよびH−aに代えて実施例14で調製した乳剤(A−1)から乳剤(A−6)を用いて試料1802から試料1807を作成した。また、これらの乳剤は態様1の要件を満足していた。
【0579】
この試料を実施例5同様にして評価した。
【0580】
処理済みの試料を緑色フィルターで濃度測定することにより写真性能の評価を行った。感度はマゼンタ濃度が被り濃度プラス0.2の濃度に到達するのに必要な露光量の逆数の相対値で評価した。結果を表28に示す。
【0581】
【表30】
【0582】
実施例14で示した結果と同様にカラーネガ重層中においても、本発明の効果は顕著であった。
【0583】
また、実施例14で調製した他の乳剤についても上記と同様の評価を行ったが、カラーネガ重層中においてもその相対関係は同様であった。
Claims (20)
- 全粒子の円相当径の変動係数が40%以下であり、かつ全粒子の50%以上(個数)が下記(i)、(ii)および(iii)を満たす平板粒子で占められていることを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
(i)(111)面を主表面とする沃臭化銀または沃塩臭化銀平板粒子
(ii)円相当径3.5μm以上かつ厚み0.25μm以下
(iii)双晶面間隔が0.016μm以下 - 全粒子の厚さの変動係数が40%以下かつ双晶面間隔の変動係数が40%以下であることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
- 前記の平板粒子が前記(i)、(ii)、(iii)の要件に加え、下記(iv)、(v)を満たす請求項1に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(iv)特定沃化銀含有率をIモル%(0.3<I<20)とした場合に沃化銀含有率が0.7Iから1.3Iの範囲内
(v)粒子フリンジ部に1粒子当たり10本以上の転位線を含む - 前記(iv)の要件が、「沃化銀含有率が0.8Iから1.2Iの範囲内」であることを特徴とする請求項3に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
- 前記の平板粒子が、前記(i)から(v)の要件に加え、(vi)を満たすことを特徴とする請求項3に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(vi)実質的に粒子フリンジ部のみに転位線が局在する - 前記の平板粒子が、前記(i)から(vi)の要件に加え、(vii)を満たすことを特徴とする請求項5に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(vii)電子捕獲ゾーンを有する - 全粒子の平均表面ヨード含量が5mol%以下であることを特徴とする請求項6に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
- 前記の平板粒子が、円相当径をDとしたとき、0.05D以上の長さの転位線を10本以上有することを特徴とする請求項6または7に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
- 全粒子の双晶面間隔の変動係数が40%以下であり、核形成工程で低分子量の酸化処理ゼラチンを用いることにより製造されたことを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
- 下記(viii)の要件を満たすことを特徴とする請求項3に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(viii)全粒子の長辺/短辺比の平均値が1.4以下である - 前記(v)の要件が、「粒子フリンジ部に1粒子当たり30本以上の転位線を含む」であり、かつ全粒子個数の80%以上が、実質的に粒子フリンジ部のみに転位線が局在する平板粒子であることを特徴としかつ、「粒子側面の(100)面比率が40%以上」あることを特徴とする請求項3に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
- 前記の平板粒子が、前記(i)から(v)の要件に加え、(ix)を満たすことを特徴とする請求項3に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
(ix)粒子フリンジ部の平均沃化銀含有率が粒子中心部の平均沃化銀含有率よりも2モル%以上高い - 粒子形成時に少なくとも3種類のゼラチンを用いて製造されたことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
- 粒子形成中に晶相制御剤を添加して製造されたことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
- 全粒子の円相当径の変動係数が25%以下であることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
- 前記の(ii)の要件が「円相当径3.5μm以上、厚み0.15μm以下」であることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
- 前記の(ii)の要件が「円相当径4.0μm以上、厚み0.15μm以下」であることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
- 前記の(ii)の要件が「円相当径4.0μm以上、厚み0.10μm以下であることを特徴とする請求項1から15の何れか1項に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
- 支持体上に、請求項1から18のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真乳剤を含有する感光性層を有するハロゲン化銀写真感光材料。
- 該ハロゲン化銀写真感光材料が、支持体上にそれぞれ少なくとも1層の青感性ハロゲン化銀乳剤層、緑感性ハロゲン化銀乳剤層及び赤感性ハロゲン化乳剤層を有し、該赤感性ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも1層が、該緑感性ハロゲン化銀乳剤層の少なくとも1層よりも支持体に関して遠い側に設けられていることを特徴とする請求項19に記載のハロゲン化銀カラー写真感光材料。
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