JP2004317771A - ハロゲン化銀写真乳剤及びこれを用いるハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents
ハロゲン化銀写真乳剤及びこれを用いるハロゲン化銀写真感光材料 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】高感度で保存性が良好でかつ処理依存性の小さいハロゲン化銀写真乳剤及びそのような乳剤を用いた写真感光材料を提供すること。
【解決手段】ハロゲン化銀粒子の全投影面積の70%以上がホスト平板粒子とエピタキシャル部からなり下記(i)、(ii)および(iii)要件を満たすエピタキシャル平板粒子で占められていることを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
(i)(111)面を主表面とする沃塩臭化銀平板粒子
(ii)ホスト粒子の少なくとも一つの頂点部にエピタキシャル部を有する
(iii) 粒子内の少なくとも1つのエピタキシャル部が、ホスト平板粒子から外側に突出した部分において、ホスト平板粒子側の1/3の体積部分をa部分、残りをb部分としたとき、aの部分の平均塩化銀含有率(mol%)(Cla)とbの部分の平均塩化銀含有率(mol%)(Clb)の比(Cla/Clb)が1より小さいという条件を満たす。
【選択図】 図1
【解決手段】ハロゲン化銀粒子の全投影面積の70%以上がホスト平板粒子とエピタキシャル部からなり下記(i)、(ii)および(iii)要件を満たすエピタキシャル平板粒子で占められていることを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
(i)(111)面を主表面とする沃塩臭化銀平板粒子
(ii)ホスト粒子の少なくとも一つの頂点部にエピタキシャル部を有する
(iii) 粒子内の少なくとも1つのエピタキシャル部が、ホスト平板粒子から外側に突出した部分において、ホスト平板粒子側の1/3の体積部分をa部分、残りをb部分としたとき、aの部分の平均塩化銀含有率(mol%)(Cla)とbの部分の平均塩化銀含有率(mol%)(Clb)の比(Cla/Clb)が1より小さいという条件を満たす。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン化銀写真感光材料及びこれに用いるハロゲン化銀写真乳剤に関するものである。さらに詳しくは、保存性ならびに現像処理依存性に優れたハロゲン化銀写真乳剤及びハロゲン化銀写真感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高感度のハロゲン化銀写真感光材料を得るために平板状ハロゲン化銀粒子(以下、「平板粒子という。」)を用いることは一般に良く知られている。これら平板粒子の増感法としてエピタキシャルを用いた増感法が知られており(例えば、特許文献1)、円相当径がより大きい平板粒子への適用(例えば、特許文献2)や、円相当径がより小さい平板粒子への適用(特許文献3)についても知られている。
【0003】
しかしながら、塩化銀を主構成元素として用いるエピタキシャル増感方法は沃臭化銀を基本構成要素として組み立てられた撮影用感光材料においては基本的に保存時の環境変化、処理時の処理液性能変化に対して性能が不安定である。その理由は塩化銀の溶解度積が臭化銀および沃化銀の溶解度積よりも大きく、容易にハロゲン変換を受けることに起因する。そのためにエピタキシャル平板粒子を用いた感光材料は保存時に感度の低下もしくはかぶりの上昇という問題を引き起こす。さらにはエピタキシャル部位の不安定な溶解性のために現像処理時のKBr量の変動により大きく写真性能が動くという問題点を有している。そのために、一般の撮影用感光感材への使用に対して汎用化できなかった。上記問題に対する解決法のひとつとして、エピタキシャル部の転位に注目して解決する手段が提案された(例えば、特許文献4参照)が、エピタキシャル乳剤の一般の撮影用感光感材への使用を考えたときには解決策としては十分ではなかった。
【0004】
【特許文献1】
特開昭58−108526号公報。
【0005】
【特許文献2】
特開平8−69069号公報。
【0006】
【特許文献3】
特開平10−221798号公報。
【0007】
【特許文献4】
特開2002−169241号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は平板粒子の高感度化と一般の撮影用感光感材への使用を考えても十分な程度まで保存時の環境変化、処理時の処理液性能変化に対する性能の安定性を付与する問題の解決を同時に満足させることができる手段を提供しようとするものである。
【0009】
すなわち、本発明の目的は、高感度で保存性が良く、かつ処理依存性の小さなハロゲン化銀写真乳剤及び写真感光材料を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
(1) 分散媒とハロゲン化銀粒子とを含有するハロゲン化銀乳剤において、該ハロゲン化銀粒子の全投影面積の70%以上がホスト平板粒子とエピタキシャル部からなり下記(i)、(ii)および(iii)要件を満たすエピタキシャル平板粒子で占められていることを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
(i)(111)面を主表面とする沃塩臭化銀平板粒子
(ii)ホスト粒子の少なくとも一つの頂点部にエピタキシャル部を有する
(iii) 粒子内の少なくとも1つのエピタキシャル部が、ホスト平板粒子から外側に突出した部分において、ホスト平板粒子側の1/3の体積部分をa部分、残りをb部分としたとき、aの部分の平均塩化銀含有率(mol%)(Cla)とbの部分の平均塩化銀含有率(mol%)(Clb)の比(Cla/Clb)が1より小さいという条件を満たす。
【0011】
(2) 前記Cla、Clbが共に50mol%以下であることを特徴とする(1)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0012】
(3) 全粒子の円相当径の変動係数が30%以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0013】
(4) エピタキシャル部に少なくとも1本の転位線を有することを特徴とする(1)ないし(3)のいずれか一項に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0014】
(5) 分散媒とハロゲン化銀粒子とを含有するハロゲン化銀乳剤において、該ハロゲン化銀粒子の全投影面積の70%以上がホスト平板粒子とエピタキシャル部からなり下記(i)、(ii)および(iii’)要件を満たすエピタキシャル平板粒子で占められていることを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
(i)(111)面を主表面とする沃塩臭化銀平板粒子
(ii)ホスト粒子の少なくとも一つの頂点部にエピタキシャル部を有する
(iii’)前記エピタキシャル部で、ホスト平板粒子からホスト平板粒子の主表面に垂直な方向に突出した部分の最も高い高さ(depi)とホスト平板粒子の厚み(dhost)の比(depi/dhost)が、depi/dhostの平均値に対して±30%以内の範囲にある。
【0015】
(6) 全粒子の円相当径の変動係数が30%以下であることを特徴とする(5)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0016】
(7) エピタキシャル部に少なくとも1本の転位線を有することを特徴とする(5)または(6)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0017】
(8) (1)ないし(7)のいずれか一項に記載のハロゲン化銀写真乳剤を含有するハロゲン化銀写真感光材料。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に本発明のハロゲン化銀写真乳剤について説明する。
本発明で平板粒子とは2つの対向する平行な(111)主表面を有するハロゲン化銀粒子を言う。本発明において用いる平板粒子は1枚の双晶面あるいは2枚以上の平行な双晶面を有する。双晶面とは(111)面の両側ですべての格子点のイオンが鏡像関係にある場合にこの(111)面のことをいう。
【0019】
この平板粒子は、粒子を主表面に対して垂直方向から見た時、三角形状、六角形状もしくはこれらが丸みを帯びた円形状をしており、それぞれ互いに平行な外表面を有している。
【0020】
本発明のハロゲン化銀写真乳剤は、全投影面積の70%以上がホスト平板粒子とエピタキシャル部からなり、(i)、(ii)及び(iii)要件を満たすエピタキシャル平板粒子で占められていることを特徴の一つとする。
【0021】
本発明のエピタキシャル平板粒子を構成するホスト平板粒子は全粒子の投影面積の70%以上が最小の長さを有する辺の長さに対する、最大の長さを有する辺の長さの比が2ないし1である六角形の平板粒子であることが好ましい。より好ましくは全粒子の投影面積の90%以上が最小の長さを有する辺の長さに対する、最大の長さを有する辺の長さの比が2ないし1である六角形の平板粒子である。さらに好ましくは全投影面積の90%以上が最小の長さを有する辺の長さに対する、最大の長さを有する辺の長さの比が1.5ないし1である平板粒子である。平板粒子の主表面の形が丸みを帯びた三角形状や六角形状である場合、主表面の辺の長さは各辺を延長することにより形成される仮想の三角形や六角形の辺の長さとする。上記六角形以外の平板粒子が混入すると本発明のエピタキシャル平板粒子の調製が困難となり保存性、処理依存性の問題が解決できにくい。
【0022】
本発明のエピタキシャル平板粒子を構成するホスト平板粒子のサイズは単分散性であることが好ましい。本発明において用いる全ハロゲン化銀粒子の投影面積の円相当径の変動係数は30%以下であることが好ましく、特に好ましくは25%以下、更に好ましくは20%以下である。ここで円相当径の変動係数とは個々のハロゲン化銀粒子の円相当径の分布の標準偏差を平均円相当径で割った値である。単分散性が悪化するとエピタキシャル部形成が粒子間で不均一となるために本発明のエピタキシャル平板粒子の調製が困難となる。
【0023】
ホスト平板粒子の円相当径は、例えばレプリカ法による透過電子顕微鏡写真を撮影して個々の粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径(円相当径)を求める。ホスト平板粒子の厚みはエピタキシャル部形成のために単純にはレプリカの影(シャドー)の長さからは算出できない。しかしながらエピタキシャル部形成する前のレプリカの影の長さを測定することにより算出できる。もしくはエピタキシャル部形成後でも平板粒子を塗布した試料を切断しその断面の電子顕微鏡写真を撮影して容易にもとめることができる。
【0024】
本発明において用いるホスト平板粒子は全投影面積の70%以上が円相当径0.2μm以上1.5μm以下であることが好ましい。より好ましくは全投影面積の70%以上が円相当径0.3μm以上1.0μm以下である。一般に、円相当径が小さく厚みが薄いほど粒子個数が増加し、1粒子当たりのエピタキシャル部の数の粒子間分布が通常大きくなるところ、本発明の乳剤は、このような円相当径が小さく、厚みが薄い場合においても1粒子当たりのエピタキシャル部の数の粒子間分布が小さい乳剤である。
【0025】
本発明において用いるエピタキシャル平板粒子のハロゲン化銀組成は沃塩臭化銀である。基本的にホスト平板粒子が沃臭化銀もしくは沃塩臭化銀でありエピタキシャル部が塩化銀もしくは塩臭化銀もしくは沃塩臭化銀の組み合わせからなる。塩化銀含有率は1モル%以上10モル%以下が好ましい。より好ましくは塩化銀含有率は2モル%以上6モル%以下である。沃化銀含有率は好ましくは0.5モル%以上である。より好ましくは、沃化銀含有率は0.75モル%以上10モル%以下である。
【0026】
本発明の乳剤は、粒子間の沃化銀含有率分布の相対標準偏差が20%以下が好ましい。より好ましくは10%以下である。粒子間の沃化銀含有率の相対標準偏差はEPMA法(Electron−Probe Micro Analyzer法)を用いることにより容易に求めることができる。この方法は、乳剤粒子を互いに接触しないようによく分散したサンプルを作成し電子ビームを照射する。電子線励起によるX線分析により、極微小な部分の元素分析が行なえる。この方法を用いて、各粒子から放射される銀および沃素の特性X線強度を求めることにより、個々の粒子のハロゲン組成が決定できる。少なくとも100個の粒子についてEPMA法によりハロゲン組成を確認すれば、その乳剤が本発明に係る乳剤であるか否かは判断できる。沃化銀含有率の相対標準偏差とは、少なくとも100個の粒子についての沃化銀含有率の分布の標準偏差を平均沃化銀含有率で割り、100をかけた値である。
【0027】
本発明の乳剤は、粒子間の塩化銀含有率分布の相対標準偏差が20%以下であることが好ましい。より好ましくは10%以下である。測定方法は前記方法と同様である。
【0028】
本発明のハロゲン化銀粒子はホスト平板粒子とエピタキシャル部からなり、エピタキシャル部はホスト平板粒子の少なくとも一つの頂点部から外側に突出して存在する。ここで頂点部とは平板粒子を主表面に対して垂直方向から見た時に1つの頂点を中心とし、この頂点と、この頂点を構成する2つの辺とが形成する扇形であって、これら2辺の内、短い方の辺の長さの1/3を半径とする扇形内の部分を意味する。
【0029】
ホスト平板粒子の主表面の形が丸みを帯びた三角形状や六角形状である場合、主表面の頂点及び辺は、各辺を延長することにより形成される仮想の三角形や六角形のそれぞれ頂点及び辺とする。通常は本発明のエピタキシャル平板粒子が属する以外に平板粒子の主表面もしくは頂点部以外の辺上にエピタキシャル部が形成される。本発明のハロゲン化銀乳剤は、本発明のエピタキシャル平板粒子が、ハロゲン化銀の粒子の全投影面積の70%を占めることを特徴とする。より好ましくは90%以上を占める。
【0030】
本発明のエピタキシャル平板粒子の必要条件を満たしているかは、平板粒子のレプリカによる電子顕微鏡写真から任意に100粒子以上を抽出し、一つ以上の頂点部にエピタキシャル部を有する粒子、頂点部を構成する辺以外の辺上もしくは頂点部以外の主表面上のみにエピタキシャル部を有する粒子ならびにエピタキシャル部を有しない粒子の3つの分類にクラス分けすることにより判断できる。
【0031】
図1に、本発明の一態様であるエピタキシャル平板粒子の、エピタキシャル部を含み、主平面に垂直な方向に切った断面図を示す。図2に、本発明の一態様であるエピタキシャル平板粒子の、部分平面図を示す。図1に示すように、本発明のエピタキシャル平板粒子のエピタキシャル部は、a1部分及びa2部分から構成されるa部分と、b1部分及びb2部分から構成されるb部分と、非a非b部分とから形成される。上記a部分及びb部分は、次のように規定される。すなわち、ホスト平板粒子の主平面およびそれを延長した面より外側に突出した少なくとも一つのエピタキシャル部において、ホスト平板粒子側の1/3の体積部分をa部分、残りをb部分とする。本発明のエピタキシャル平板粒子は、aの部分の平均塩化銀含有率(mol%)(Cla)とbの部分の平均塩化銀含有率(mol%)(Clb)の比(Cla/Clb)が1より小さいことが特徴の一つである。Cla/Clbは0.1以上0.9以下が好ましい範囲である。なお、a部分及びb部分を規定する境界面は、主平面に対して垂直であり、主平面の重心と頂点を結ぶ線に直交する面とする(図1及び2の1点破線で示した。)
【0032】
上記Cla、Clbに関しては50モル%以下であることが好ましく、30モル%以下が更に好ましい。上記Cla、Clbの下限値に特に制限はないが、1モル%以上であることが好ましい。
【0033】
エピタキシャル部のハロゲン組成は、分析電顕により調べられる。本発明では以下の様な方法で平板粒子を主平面に垂直に輪切りにし、断面方向から電子線を照射して測定を行う。すなわち、粒子形成途中でサンプリングした乳剤や粒子形成を終了した最終乳剤あるいは感光材料から遠心分離することにより取り出した粒子をトリアセチルセルロース支持体上に塗布して、さらに樹脂を用いて粒子を包埋する。この試料からウルトラミクロトームで厚さ40nmの切片を切削して支持膜を張った銅メッシュ上に載せる。
【0034】
この粒子の所定の部分を、分析電顕を用いてスポット径(直径)を2nm以下に絞った点分析を行って塩化銀含有率を測定する。塩化銀含有率は、検量線として含有率既知のハロゲン化銀粒子を同様に処理してAg強度とCl強度の比率をあらかじめ求めておくことにより算出できる。分析電顕の分析線源としては熱電子を用いたものより電子密度の高いフィールドエミッション型の電子銃が適しており、スポット径を1nm以下に絞ることにより、微小部分のハロゲン組成を容易に分析できる。特定の部位の平均塩化銀含有率を求めるには、走査範囲を走査することや、走査範囲を細分化し、細分化された範囲を走査し測定値を平均することで求めることができる。
【0035】
本発明では、ハロゲン化銀粒子を上記方法で40nmごとに切片を切り出し、その各切片についてスポット径2nmで、2nm間隔で走査し、エピタキシャル部の3次元塩化銀含有率分布を求める。平均塩化銀含有率は、得られた各測定値を、各部分において平均することによって求める。
【0036】
エピタキシャル部は塩化銀または塩臭化銀または沃塩臭化銀である。好ましくはホスト平板粒子よりも塩化銀含有率は1モル%以上高い。より好ましくはホスト平板粒子よりも塩化銀含有率は10モル%以上高い。但し、エピタキシャル部の塩化銀含有率は70モル%以下が好ましい。エピタキシャル部の臭化銀含有率は30モル%以上が好ましく、50モル%以上が特に好ましい。エピタキシャル部の沃化銀含有率は1モル%以上20モル%以下が好ましい。エピタキシャル部の銀量はホスト平板粒子の銀量の1モル%以上16モル%以下であることが好ましく、2モル%以上11モル%以下が更に好ましい。
【0037】
本発明の乳剤は全投影面積の70%以上がエピタキシャル部に少なくとも1本の転位線を有する平板粒子からなることが好ましい。好ましくは全投影面積の80%以上がエピタキシャル部に少なくとも1本の転位線を有する平板粒子からなる。本発明の乳剤はより好ましくは全投影面積の70%以上がエピタキシャル部に網目状の転位線を有する平板粒子からなる。最も好ましくは全投影面積の80%以上がエピタキシャル部に網目状の転位線を有する平板粒子からなる。ここで網目状の転位線とは、本数として数えられないような複数の転位線が網の目のように交錯した転位線である。二つ以上の頂点部にエピタキシャル部を有する平板粒子において、必ずしも各エピタキシャル部に転位線が存在する必要はない。少なくとも一つの頂点部に接合したエピタキシャル部に1本の転位線、好ましくは網目状の転位線を含んでいれば本発明のエピタキシャル平板粒子に相当する。好ましくは全投影面積の70%以上の粒子が、網目状の転位線を含むエピタキシャル部を有する。
【0038】
本発明のホスト平板粒子はエピタキシャル部以外には転位線が存在しないことが好ましい。ホスト粒子の転位線はエピタキシャル部の優先的な沈着位を提供し本発明のエピタキシャル平板粒子の形成を阻害する。好ましくは全投影面積の70%以上が転位線がゼロである。この場合、エピタキシャル部を除く。最も好ましくは全投影面積の90%以上が転位線がゼロである。平板粒子の転位線は、例えばJ.F.Hamilton,Phot.Sci.Eng.,11、57、(1967)やT.Shiozawa,J.Soc.Phot.Sci.Japan,35、213、(1972)に記載の、低温での透過型電子顕微鏡を用いた直接的な方法により観察することができる。すなわち乳剤から粒子に転位線が発生するほどの圧力をかけないよう注意して取り出したハロゲン化銀粒子を電子顕微鏡観察用のメッシュにのせ、電子線による損傷(プリントアウト等)を防ぐように試料を冷却した状態で透過法により観察を行う。この時粒子の厚みが厚い程、電子線が透過しにくくなるので高圧型(0.25μmの厚さの粒子に対して加速電圧200kV以上)の電子顕微鏡を用いた方がより鮮明に観察することができる。このような方法により得られた粒子の写真より、主表面に対して垂直方向から見た場合の各粒子についての転位線の位置および数を求めることができる。
【0039】
図3に、本発明の一態様であるエピタキシャル平板粒子の主平面に垂直な方向に切った断面図であって、エピタキシャル部のうち、主平面またはその延長面から最も遠い点を含む断面図を示す。図3に示すように、エピタキシャルで、ホスト平板粒子からホスト平板粒子の主表面に垂直な方向に突出した部分の最も高い高さ(depi)とホスト平板粒子の厚み(dhost)の比(depi/dhost)の変動係数が30%以下であることを別の特徴とする。1粒子で2つ以上エピタキシャル部が存在するときは、各エピタキシャル部のdepi/dhostの平均値をその粒子のdepi/dhostとする。なお、図3に示すエピタキシャル部において、ホスト平板粒子の主表面に垂直な方向に突出した部分が2つ(上側及び下側)あるが、上側の突出した部分の最も高い高さと下側の突出した部分の最も高い高さが互いに異なる場合には、高いほうをdepiとする。任意の100個以上の粒子で粒子のdepi/dhostを求め、その平均値と標準偏差より変動係数(=標準偏差/平均値)が求められる。depiとdhostは平板粒子を塗布した試料を切断しその断面の電子顕微鏡写真を撮影して容易にもとめることができる。変動係数は、25%以下が好ましく、更に20%以下が好ましい。
【0040】
以下に上述した本発明のエピタキシャル平板粒子の具体的な調製法についてホスト平板粒子の調製とエピタキシャル部の調製の2つに分けて詳しく説明する。まず本発明のエピタキシャル平板粒子の調製に必要なホスト平板粒子について詳述する。本発明のホスト平板粒子の粒子内沃化銀の分布については2重構造以上の多重構造粒子であることが好ましい。ここで沃化銀の分布に関して構造をもっているとは粒子の調整処方の処方値において、各構造間で沃化銀含有率が0.5mol%以上異なることを意味する。本発明において、ホスト平板粒子の「最外層」とは、沃化銀分布についての多重構造の最も外側にある層状の相をいう。
【0041】
この沃化銀の分布についての構造は、基本的には粒子の調製工程の処方値から計算により求めることができる。各構造間での界面では沃化銀含有率の変化は急激に変化する場合となだらかに変化する場合があり得る。これらの確認のためには、分析上の測定精度を考慮する必要があるが、前述した、EPMA法が有効である。同手法により平板粒子を主表面に垂直方向から見た場合の粒子内沃化銀分布が解析できるが、同試料を固め、ミクロトームで超薄切片にカットした試料を用いることにより平板粒子の断面の粒子内沃化銀分布も解析することができる。
【0042】
本発明においてホスト平板粒子は最外層の沃化銀含有率が3モル%以上であることが好ましい。最外層は全銀量に対して20%以下であることが好ましく、より好ましくは2%以上15%以下である。ここで最外層の比率とはホスト平板粒子調製工程における最終粒子を得るのに使用した銀量に対する最外層の調製に用いた銀量の比率を意味する。沃化銀含有率とは最外層の調製に用いた銀量に対する最外層の調製に用いた沃化銀量のモル比率の%を意味し、その分布については均一でも不均一でも良い。沃化銀含有率の分布が不均一な場合、沃化銀量は、最外層における平均値である。より好ましくは最外層の比率は全銀量に対して、2%以上15%以下であって、その沃化銀含有率が3モル%以上20モル%以下である。この条件を逸脱するとエピタキシャル部が粒子間で不均一となり本発明の効果は得られにくい。
【0043】
ホスト平板粒子の調製は基本的には核形成、熟成ならびに成長の3工程の組み合わせよりなる。
核形成の工程においては米国特許第4,713,320号および同第4,942,120号の各明細書に記載のメチオニン含有率の少ないゼラチンを用いること、米国特許第4,914,014号明細書に記載の高pBrで核形成を行うこと、特開平2−222940号公報に記載の短時間で核形成を行うことは本発明において用いる粒子の核形成工程においてきわめて有効である。本発明において特に好ましくは20℃から40℃の温度で低分子量の酸化処理ゼラチンの存在下で攪拌下、硝酸銀水溶液とハロゲン水溶液と低分子量の酸化処理ゼラチンを一分以内に添加することである。この時、系のpBrは2以上が好ましくpHは7以下が好ましい。硝酸銀水溶液の濃度は0.6モル/リットル以下の濃度が好ましい。以上の核形成法を用いることにより本発明のエピタキシャル平板粒子の形成が容易になる。
【0044】
熟成工程においては米国特許第5,254,453号明細書に記載の低濃度のベースの存在下でおこなうこと、米国特許第5,013,641号明細書に記載の高いpHでおこなうことは、本発明の平板粒子乳剤の熟成工程において用いることが可能である。米国特許第5,147,771号,同第5,147,772号、同第5,147,773号、同第5,171,659号、同第5,210,013号ならびに同第5,252,453号の各明細書に記載のポリアルキレンオキサイド化合物を熟成工程もしくは後の成長工程で添加することが可能である。本発明においては熟成工程は好ましくは50℃以上80℃以下の温度で行われる。核形成直後または熟成途中にpBrは2以下に下げることが好ましい。また核形成直後から熟成終了時までに追加のゼラチンが好ましくは添加される。特に好ましいゼラチンはアミノ基が95%以上コハク化またはトリメリット化に修飾されたものである。
【0045】
本発明の成長工程においては米国特許第4,672,027号および同第4,693,964号の各明細書に記載の硝酸銀水溶液と臭化物を含むハロゲン水溶液と沃化銀微粒子乳剤を同時に添加する方法を用いてもよい。沃化銀微粒子乳剤は実質的に沃化銀であれば良く、混晶となり得る限りにおいて臭化銀および/または塩化銀を含有していても良い。好ましくは100%沃化銀である。沃化銀はその結晶構造においてβ体、γ体ならびに米国特許第4,672,026号明細書に記載されているようにα体もしくはα体類似構造があり得る。本発明においては、その結晶構造の制限は特にはないが、β体とγ体の混合物、さらに好ましくはβ体が用いられる。沃化銀微粒子乳剤は米国特許第5,004,679号明細書等に記載の添加する直前に形成したものでも良いし、通常の水洗工程を経たものでもいずれでも良い。沃化銀微粒子乳剤は、米国特許第4,672,026号明細書等に記載の方法で容易に形成しうる。粒子形成時のpI値を一定にして粒子形成を行う、銀塩水溶液と沃化物塩水溶液のダブルジェット添加法が好ましい。ここでpIは系のI−イオン濃度の逆数の対数である。温度、pI、pH、ゼラチン等の保護コロイド剤の種類、濃度、ハロゲン化銀溶剤の有無、種類、濃度等に、特に制限はないが、粒子のサイズは0.1μm以下、より好ましくは0.07μm以下が本発明に都合が良い。微粒子であるために粒子形状は完全には特定できないが粒子サイズの分布の変動係数は25%以下が好ましい。特に20%以下の場合には、本発明の効果が著しい。ここで沃化銀微粒子乳剤のサイズおよびサイズ分布は、沃化銀微粒子を電子顕微鏡観察用のメッシュにのせ、カーボンレプリカ法ではなく直接、透過法によって観察して求める。これは粒子サイズが小さいために、カーボンレプリカ法による観察では測定誤差が大きくなるためである。粒子サイズは観察された粒子と等しい投影面積を有する円の直径と定義する。粒子サイズの分布についても、この等しい投影面積円直径を用いて求める。本発明において最も有効な沃化銀微粒子は粒子サイズが0.06μm以下0.02μm以上であり、粒子サイズ分布の変動係数が18%以下である。
【0046】
上述の粒子形成後、好ましくは米国特許第2,614,929号明細書等に記載の通常の水洗およびpH、pI、ゼラチン等の保護コロイド剤の濃度調整ならびに含有沃化銀の濃度調整が行われる。pHは5以上7以下が好ましい。pI値は沃化銀の溶解度が最低になるpI値もしくはその値よりも高いpI値に設定することが好ましい。保護コロイド剤としては、平均分子量10万程度の通常のゼラチンが好ましく用いられる。平均分子量2万以下の低分子量ゼラチンも好ましく用いられる。また上記の分子量の異なるゼラチンを混合して用いると都合が良い場合がある。乳剤1kgあたりのゼラチン量は好ましくは10g以上100g以下である。より好ましくは20g以上80g以下である。乳剤1kgあたりの銀原子換算の銀量は好ましくは10g以上100g以下である。より好ましくは20g以上80g以下である。沃化銀微粒子乳剤は、通常あらかじめ溶解して添加するが、添加時には系の撹拌効率を十分に高める必要がある。好ましくは撹拌回転数は、通常よりも高めに設定される。撹拌時の泡の発生を防じるために消泡剤の添加は効果的である。具体的には、米国特許第5,275,929号明細書の実施例等に記述されている消泡剤が用いられる。
【0047】
本発明の成長工程において好ましく用いられるのは特開平2−188741号公報に記載の方法である。添加の直前に調製した臭化銀または沃臭化銀または沃塩臭化銀の超微粒子乳剤を平板粒子の成長時に連続添加し該超微粒子乳剤を溶解させて平板粒子を成長させる。超微粒子乳剤を調製するための外部混合機は強力な攪拌能力を有しており、該混合機に硝酸銀水溶液とハロゲン水溶液とゼラチンが添加される。ゼラチンは硝酸銀水溶液および/またはハロゲン水溶液と事前もしくは直前に混合して添加することができるしゼラチン水溶液単独で添加することもできる。ゼラチンは分子量が通常のものより小さいものが好ましく10000から50000が特に好ましい。アミノ基がフタル化またはコハク化またはトリメリット化に90%以上修飾されたゼラチンおよび/またはメチオニン含有量を低下させた酸化処理ゼラチンは特に好ましく用いられる。この方法を用いることにより本発明のエピタキシャル平板粒子の調製は容易になる。
【0048】
本発明においてはホスト平板粒子の対向する(111)主表面を連結する側面は全側面の75%以下が(111)面から構成されていることが好ましい。
【0049】
ここで全側面の75%以下が(111)面から構成されるとは、全側面の25%よりも高い比率で(111)面以外の結晶学的な面が存在するということである。通常その面は(100)面であるとして理解しうるが、それ以外の面、すなわち(110)面や、より高指数の面である場合も含みうる。本発明においては全側面の70%以下が(111)面から構成されていると効果が顕著である。
【0050】
全側面の75%以下が(111)面から構成されているか否かは、その平板粒子のシャドーをかけたカーボンレプリカ法による電子顕微鏡写真から容易に判断しうる。通常側面の75%以上が(111)面から構成されている場合、6角形平板粒子においては、(111)主表面に直接連結する6つの側面はたがい違いに(111)主表面に対して鋭角と、鈍角で接続する。一方、全側面の75%以下が(111)面から構成されている場合、6角形平板粒子においては、(111)主表面に直接連結する6つの側面は(111)主表面に対してすべて鈍角で接続する。シャドーイングを50℃以下の角度でかけることにより主表面に対する側面の鈍角と鋭角の判断ができる。好ましくは30°以下10°以上の角度でシャドーイングすることにより鈍角と鋭角の判断は容易となる。
【0051】
さらに、(111)面と(100)面の比率を求める方法として増感色素の吸着を用いた方法が有効である。日本化学会誌、1984、6巻、ページ942〜947に記載されている手法を用いて(111)面と(100)面の比率を定量的に求めることができる。該比率と前述した平板粒子の円相当直径と厚みを用いて全側面における(111)面の比率を計算して求めることができる。この場合、平板粒子は該円相当直径と厚みを用いて円柱であると仮定する。この仮定によって総表面積に対する側面の比率を求めることができる。前述の増感色素の吸着を用いて求めた(100)面の比率を上記の側面の比率で割った値に100をかけた値が全側面における(100)面の比率である。100からその値をひけば全側面における(111)面の比率が求まることになる。本発明においては全側面における(111)面の比率が65%以下であると、さらに好ましい。
【0052】
本発明においてホスト平板粒子の全側面の75%以下を(111)面にする手法について説明する。最も一般的には、ホスト平板粒子乳剤の側面の(111)面の比率は平板粒子乳剤の調製時のpBrにて決定しうる。好ましくは最外層形成に要する銀量の30%以上の添加を側面の(111)面の比率が減少、すなわち側面の(100)面の比率が増加するようなpBrに設定する。より好ましくは最外層形成に要する銀量の50%以上の添加を側面の(111)面の比率が減少するようなpBrに設定する。
【0053】
別の方法として全銀量が添加された後に、側面の(100)面の比率が増加するようなpBrに設定し、熟成をすることによって、その比率を増加させることも可能である。
【0054】
側面の(100)面の比率が増加するようなpBrとは、系の温度、pH、ゼラチン等の保護コロイド剤の種類、濃度、ハロゲン化銀溶剤の有無、種類、濃度等によりその値は広範に変化しうる。通常は、好ましくはpBr2.0以上5以下である。さらに好ましくはpBr2.5以上4.5以下である。しかしながら、上述したようにこのpBrの値は例えばハロゲン化銀溶剤等の存在によって容易に変化しうる。
【0055】
本発明で用いることができるハロゲン化銀溶剤としては、米国特許第3,271,157号、同第3,531,286号、同第3,574,628号、特開昭54−1019号、同54−158917号等の明細書及び公報に記載された(a)有機チオエーテル類、特開昭53−82408号、同55−77737号、同55−2982号等の各公報に記載された(b)チオ尿素誘導体、特開昭53−144319号公報に記載された(c)酸素または硫黄原子と窒素原子とにはさまれたチオカルボニル基を有するハロゲン化銀溶剤、特開昭54−100717号公報に記載された(d)イミダゾール類、(e)亜硫酸塩、(f)アンモニア、(g)チオシアネート等があげられる。
【0056】
特に好ましい溶剤としては、チオシアネート、アンモニアおよびテトラメチルチオ尿素がある。また用いられる溶剤の量は種類によっても異なるが、例えばチオシアネートの場合、好ましい量はハロゲン化銀1モル当り1×10−4モル以上1×10−2モル以下である。
【0057】
平板粒子乳剤の側面の面指数を変化させる方法として欧州特許出願公開第515894A1号明細書等を参考にすることができる。また米国特許第5,252,453号明細書等に記載のポリアルキレンオキサイド化合物を用いることもできる。有効な方法として米国特許第4,680,254号、同第4,680,255号、同第4,680,256号ならびに同第4,684,607号の各明細書等に記載の面指数改質剤を用いることができる。通常の写真用分光増感色素も上記と同様な面指数の改質剤として用いることができる。
【0058】
本発明において、ホスト平板粒子は転位線を持たないことが好ましい。以上に詳述した核形成、熟成、成長工程を組み合わせて用いることにより転位線を消失させることができる。
【0059】
本発明のエピタキシャル平板粒子の調製に必要なエピタキシャル部形成について詳述する。エピタキシャル部形成はホスト平板粒子の形成後すぐにおこなっても良いしホスト平板粒子の形成後、通常の脱塩を行った後に行っても良い。エピタキシャル部形成前に、特開平2002−169241公報記載の高分子量ゼラチンを用いてもよい。外高分子量ゼラチンは、エピタキシャル部形成を行う時に好ましくは全ゼラチン量の10質量%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上含有される。塗布前までにこのゼラチンを添加しても有効であるが効果は小さくなる。
【0060】
本発明のエピタキシャル部の部位指示剤には増感色素を利用する。用いる色素の量や種類を選択することによって、エピタキシャルの沈着位置をコントロールすることができる。色素は、飽和被覆量の50%から95%を添加することが好ましい。用いられる色素には、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素およびヘミオキソノール色素が包含される。特に有用な色素は、シアニン色素に属する色素である。これらの色素類には、塩基性複素環核としてシアニン色素類に通常利用される核のいずれをも適用できる。すなわち、例えば、ピロリン核、オキサゾリン核、チオゾリン核、ピロール核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核、イミダゾール核、テトラゾール核、ピリジン核;これらの核に脂環式炭化水素環が融合した核;及びこれらの核に芳香族炭化水素環が融合した核、即ち、例えば、インドレニン核、ベンゾインドレニン核、インドール核、ベンゾオキサドール核、ナフトオキサゾール核、ベンゾチアゾール核、ナフトチアゾール核、ベンゾセレナゾール核、ベンゾイミダゾール核、キノリン核が適用できる。これらの核は炭素原子上に置換基を有していてもよい。
【0061】
これらの増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せは特に、強色増感の目的でしばしば用いられる。その代表例は米国特許第2,688,545号、同第2,977,229号、同第3,397,060号、同第3,522,052号、同第3,527,641号、同第3,617,293号、同第3,628,964号、同第3,666,480号、同第3,672,898号、同第3,679,428号、同第3,703,377号、同第3,769,301号、同第3,814,609号、同第3,837,862号、同第4,026,707号、英国特許第1,344,281号、同第1,507,803号、特公昭43−4936号、同53−12375号、特開昭52−110618号、同52−109925号の各明細書及び公報に記載されている。
【0062】
増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質を同時または別個に添加してもよい。
また、特開2000−250157号公報に記載のビスピリジ二ウム塩を同時また別個に添加してもよい。
【0063】
増感色素の吸着時にホスト平板粒子の最外層の極表面層の沃化銀含有率を最外層よりもさらに高くしておいてもよい。この場合増感色素の添加に先立って沃素イオンを添加することが行われる。前述した沃化銀微粒子乳剤を添加してホスト平板粒子の表面の沃化銀含有率を高くすることが好ましく用いられる。これにより粒子間の沃化銀含有率の分布が均一となり増感色素の吸着も均一になる。これら沃素イオンもしくは沃化銀の添加量はホスト平板粒子の銀量で1モルに対して1×10−4から1×10−2モルの範囲が好ましく1×10−3から5×10−3モルの範囲が特に好ましい。
【0064】
エピタキシャル部の形成法はハロゲンイオンを含む溶液とAgNO3を含む溶液の同時添加でも別々の添加でも良く、ホスト平板粒子よりも粒径の小さな塩化銀微粒子、臭化銀微粒子、沃化銀微粒子の添加、あるいはそれらの混晶粒子の添加等と適宜組み合わせて添加して形成しても良い。微粒子として、本発明の成長工程での説明にある添加直前に調製された塩化銀微粒子、臭化銀微粒子、沃化銀微粒子、あるいはそれらの混晶粒子が好ましく用いられる。AgNO3溶液を添加する場合は、添加時間は15秒以上30分以内であることが好ましく、30秒以上20分以内が特に好ましい。本発明のエピタキシャル平板粒子を形成するためには添加する硝酸銀溶液の濃度は2.5モル/リットル以下の濃度が好ましい。この時系中の攪拌は効率良く行う必要があり、系中の粘度は低い方が好ましい。
【0065】
エピタキシャル部の銀量はホスト平板粒子の銀量の1モル%以上16モル%以下であることが好ましく、2モル%以上11モル%以下が更に好ましい。少なすぎるとエピタキシャル平板粒子の調製ができないし、多すぎても不安定になる。
【0066】
エピタキシャル部の形成時のpBrは2.5以上が好ましく、特に3.0以上が好ましい。温度は35℃以上45℃以下で行うことが好ましい。
【0067】
本発明のエピタキシャル平板粒子は6シアノ金属錯体がドープされているのが好ましい。ドープされる部位は、ホスト部、エピタキシャル部のどちらでも、また両方でもかまわない。
【0068】
6シアノ金属錯体のうち、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム又はクロムを含有するものが好ましい。金属錯体の添加量は、ハロゲン化銀(ホスト部とエピタキシャル部を合わせた全銀量)1モル当たり10−9乃至10−2モルの範囲であることが好ましく、ハロゲン化銀1モル当たり10−8乃至10−4モルの範囲であることがさらに好ましい。金属錯体は、水または有機溶媒に溶かして添加することができる。有機溶媒は水と混和性を有することが好ましい。有機溶媒の例には、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、及びアミド類が含まれる。
【0069】
金属錯体としては、下記式(I)で表される6シアノ金属錯体が特に好ましい。6シアノ金属錯体を使用した乳剤を用いることにより、高感度の感光材料が得られ、しかも感光材料を長期間保存したときでも被りの発生を抑制するという効果が得られる。
(I)[M(CN)6]n−
(式中、Mは鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウムまたはクロムであり、nは3または4である。)
【0070】
6シアノ金属錯体の具体例を以下に示す。
(I−1) [Fe(CN)6]4−
(I−2) [Fe(CN)6]3−
(I−3) [Ru(CN)6]4−
(I−4) [Os(CN)6]4−
(I−5) [Co(CN)6]3−
(I−6) [Rh(CN)6]3−
(I−7) [Ir(CN)6]3−
(I−8) [Cr(CN)6]4−
【0071】
6シアノ錯体の対カチオンは、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈殿操作に適合しているイオンを用いることが好ましい。対イオンの例には、アルカリ金属イオン(例、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、リチウムイオン)、アンモニウムイオンおよびアルキルアンモニウムイオンが含まれる。
【0072】
本発明の乳剤はエピタキシャル部形成後に前述した増感色素および/または後述するかぶり防止剤および/または安定剤を添加することが好ましい。本発明においてはこの後以降にpBrを下げることが好ましい。本発明外のエピタキシャル乳剤はこのpBrの低下によりエピタキシャルの破壊がおこり写真性能が低感度のものとなる。一方、本発明のエピタキシャル平板粒子においてはこのpBrの低下が可能となり、保存性、処理性において顕著な効果を発揮できるようになる。好ましくは40℃でのpBrを3.5以下に下げる。より好ましくは本発明の乳剤は40℃でのpBrが3.5以下であり、特に好ましくは3.0以下である。pBrの低下はKBr、NaBr等の臭素イオンを添加することにより基本的に行われる。
【0073】
エピタキシャル部形成後、通常は水洗を行う。水洗の温度は目的に応じて選べるが、5℃〜50℃の範囲で選ぶことが好ましい。水洗時のpHも目的に応じて選べるが2〜10の間で選ぶことが好ましい。さらに好ましくは3〜8の範囲である。水洗時のpAgも目的に応じて選べるが5〜10の間で選ぶことが好ましい。
水洗の方法としてヌードル水洗法、半透膜を用いた透析法、遠心分離法、凝析沈降法、イオン交換法のなかから選んで用いることができる。凝析沈降法の場合には硫酸塩を用いる方法、有機溶剤を用いる方法、水溶性ポリマーを用いる方法、ゼラチン誘導体を用いる方法などから選ぶことができる。
【0074】
本発明の乳剤はエピタキシャル部形成後に化学増感を行うことが好ましい。本発明で好ましく実施しうる化学増感の一つはカルコゲン増感と貴金属増感の単独又は組合せであり、ジェームス(T.H.James)著、ザ・フォトグラフィック・プロセス、第4版、マクミラン社刊、1977年、(T.H.James、The Theory of the Photographic Process,4th ed,Macmillan,1977)67〜76頁に記載されるように活性ゼラチンを用いて行うことができるし、またリサーチ・ディスクロージャー、120巻、1974年4月、12008;リサーチ・ディスクロージャー、34巻、1975年6月、13452、米国特許第2,642,361号、同第3,297,446号、同第3,772,031号、同第3,857,711、同第3,901,714号、同第4,266,018号、および同第3,904,415号、並びに英国特許第1,315,755号の各明細書に記載されるようにpAg5〜10、pH5〜8および温度30〜80℃において硫黄、セレン、テルル、金、白金、パラジウム、イリジウムまたはこれら増感剤の複数の組み合わせとすることができる。貴金属増感においては、金、白金、パラジウム、イリジウム等の貴金属塩を用いることができ、中でも特に金増感、パラジウム増感および両者の併用が好ましい。金増感の場合には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイドのような公知の化合物を用いることができる。パラジウム化合物はパラジウム2価塩または4価の塩を意味する。好ましいパラジウム化合物は、R2PdX6またはR2PdX4で表わされる。ここでRは水素原子、アルカリ金属原子またはアンモニウム基を表わす。Xはハロゲン原子を表わし塩素、臭素または沃素原子を表わす。
【0075】
具体的には、K2PdCl4、(NH4)2PdCl6、Na2PdCl4、(NH4)2PdCl4、Li2PdCl4、Na2PdCl6またはK2PdBr4が好ましい。金化合物およびパラジウム化合物はチオシアン酸塩あるいはセレノシアン酸塩と併用することが好ましい。
【0076】
硫黄増感剤として、ハイポ、チオ尿素系化合物、ロダニン系化合物および米国特許第3,857,711号、同第4,266,018号および同第4,054,457号の各明細書に記載されている硫黄含有化合物を用いることができる。
いわゆる化学増感助剤の存在下に化学増感することもできる。有用な化学増感助剤には、アザインデン、アザピリダジン、アザピリミジンのごとき、化学増感の過程でカブリを抑制し、且つ感度を増大するものとして知られた化合物が用いられる。化学増感助剤改質剤の例は、米国特許第2,131,038号、同第3,411,914号、同第3,554,757号明細書、特開昭58−126526号公報および前述ダフィン著「写真乳剤化学」、138〜143頁に記載されている。
【0077】
本発明の乳剤は金増感を併用することが好ましい。金増感剤の好ましい量としてハロゲン化銀1モル当り1×10−3〜1×10−7モルであり、さらに好ましいのは1×10−4〜5×10−7モルである。パラジウム化合物の好ましい範囲はハロゲン化銀1モル当たり1×10−3から5×10−7モルである。チオシアン化合物あるいはセレノシアン化合物の好ましい範囲はハロゲン化銀1モル当たり5×10−2から1×10−6モルである。
【0078】
本発明において用いるハロゲン化銀粒子に対して使用する好ましい硫黄増感剤量はハロゲン化銀1モル当り1×10−3〜1×10−7モルであり、さらに好ましいのは1×10−4〜5×10−7モルである。
【0079】
本発明の乳剤に対して好ましい増感法としてセレン増感がある。セレン増感においては、公知の不安定セレン化合物を用い、具体的には、コロイド状金属セレニウム、セレノ尿素類(例えば、N,N−ジメチルセレノ尿素、N,N−ジエチルセレノ尿素)、セレノケトン類、セレノアミド類のようなセレン化合物を用いることができる。セレン増感は硫黄増感あるいは貴金属増感あるいはその両方と組み合わせて用いた方が好ましい場合がある。
【0080】
テルル増感においては、不安定テルル化合物を用い、特開平4−224595号、同4−271341号、同4−333043号、同5−303157号、同6−27573号、同6−175258号、同6−180478号、同6−208184号、同6−208186号、同6−317867号、同7−140579号、同7−301879号、同7−301880号などの各公報に記載されている不安定テルル化合物を用いることができる。
【0081】
具体的には、ホスフィンテルリド類(例えば、ノルマルブチル−ジイソプロピルホスフィンテルリド、トリイソブチルホスフィンテルリド、トリノルマルブトキシホスフィンテルリド、トリイソプロピルホスフィンテルリド)、ジアシル(ジ)テルリド類(例えば、ビス(ジフェニルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)テルリド、ビス(N−フェニル−N−ベンジルカルバモイル)テルリド、ビス(エトキシカルボニル)テルリド)、テルロ尿素類(例えば、N,N’−ジメチルエチレンテルロ尿素)、テルロアミド類、テルロエステル類などを用いればよい。好ましくはホスフィンテルリド類、ジアシル(ジ)テルリド類である。
【0082】
本発明に用いられる写真乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のかぶりを防止し、あるいは写真性能を安定化させる目的で、種々の化合物を含有させることができる。すなわちチアゾール類、例えば、ベンゾチアゾリウム塩、ニトロイミダゾール類、ニトロベンズイミダゾール類、クロロベンズイミダゾール類、ブロモベンズイミダゾール類、メルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトチアジアゾール類、アミノトリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ニトロベンゾトリアゾール類、メルカプトテトラゾール類(特に1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール);メルカプトピリミジン類;メルカプトトリアジン類;例えば、オキサドリンチオンのようなチオケト化合物;アザインデン類、例えば、トリアザインデン類、テトラアザインデン類(特に4−ヒドロキシ置換(1,3,3a,7)テトラアザインデン類)、ペンタアザインデン類のようなかぶり防止剤または安定剤として知られた、多くの化合物を加えることができる。例えば、米国特許第3,954,474号、同第3,982,947号明細書、特公昭52−28660号公報に記載されたものを用いることができる。好ましい化合物の一つに特開昭63−212932号公報に記載された化合物がある。かぶり防止剤および安定剤は粒子形成前、粒子形成中、粒子形成後、水洗工程、水洗後の分散時、エピタキシャル形成時、化学増感前、化学増感中、化学増感後、塗布前のいろいろな時期に目的に応じて添加することができる。乳剤調製中に添加して本来のかぶり防止および安定化効果を発現する以外に、粒子の晶壁を制御する、粒子サイズを小さくする、粒子の溶解性を減少させる、化学増感を制御する、色素の配列を制御するなど多目的に用いることができる。
【0083】
本発明の乳剤調製時、例えば粒子形成時、エピタキシャル形成時、脱塩工程、化学増感時、塗布前に金属イオンの塩を存在させることは目的に応じて好ましい。粒子にドープする場合には粒子形成時、粒子表面の修飾あるいは化学増感剤として用いる時は粒子形成後、化学増感終了前に添加することが好ましい。粒子全体にドープする場合と粒子のコアー部のみ、あるいはシェル部のみにドープする方法も選べる。例えば、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Sc、Y、La、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Au、Cd、Hg、Tl、In、Sn、Pb、Biを用いることができる。これらの金属はアンモニウム塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、水酸塩あるいは6配位錯塩、4配位錯塩など粒子形成時に溶解させることができる塩の形であれば添加できる。例えば、CdBr2、CdCl2、Cd(NO3)2、Pb(NO3)2、Pb(CH3COO)2、K4[Fe(CN)6]、K3[Fe(CN)6]、(NH4)4[Fe(CN)6]、K2IrCl6、K3IrCl6、(NH4)3RhCl6、K4Ru(CN)6があげられる。配位化合物のリガンドとしてハロ、アクア、シアノ、シアネート、チオシアネート、ニトロシル、チオニトロシル、オキソ、カルボニルのなかから選ぶことができる。これらは金属化合物を1種類のみ用いてもよいが2種あるいは3種以上を組み合わせて用いてよい。
【0084】
金属化合物は水またはメタノール、アセトンのような適当な有機溶媒に溶かして添加するのが好ましい。溶液を安定化するためにハロゲン化水素水溶液(例えば、HCl、HBr)あるいはハロゲン化アルカリ(例えば、KCl、NaCl、KBr、NaBr)を添加する方法を用いることができる。また必要に応じ酸・アルカリなどを加えてもよい。金属化合物は粒子形成前の反応容器に添加しても粒子形成の途中で加えることもできる。また水溶性銀塩(例えば、AgNO3)あるいはハロゲン化アルカリ水溶液(例えば、NaCl、KBr、KI)に添加しハロゲン化銀粒子形成中連続して添加することもできる。さらに水溶性銀塩、ハロゲン化アルカリとは独立の溶液を用意し粒子形成中の適切な時期に連続して添加してもよい。さらに種々の添加方法を組み合わせるのも好ましい。
【0085】
本発明のハロゲン化銀写真乳剤を粒子形成中、粒子形成後でかつ化学増感前あるいは化学増感中、あるいは化学増感後に還元増感することは好ましい。ここで、還元増感とは、ハロゲン化銀乳剤に還元増感剤を添加する方法、銀熟成と呼ばれるpAg1〜7の低pAgの雰囲気で成長あるいは熟成させる方法、高pH熟成と呼ばれるpH8〜11の高pHの雰囲気で成長あるいは熟成させる方法のいずれを選ぶこともできる。また2つ以上の方法を併用することもできる。
【0086】
還元増感剤を添加する方法は還元増感のレベルを微妙に調節できる点で好ましい方法である。
還元増感剤としては、例えば、第一錫塩、アスコルビン酸およびその誘導体、アミンおよびポリアミン類、ヒドラジン誘導体、ホルムアミジンスルフィン酸、シラン化合物、ボラン化合物が公知である。本発明において用いる還元増感にはこれら公知の還元増感剤を選んで用いることができ、また2種以上の化合物を併用することもできる。還元増感剤としては塩化第一錫、二酸化チオ尿素、ジメチルアミンボラン、アスコルビン酸およびその誘導体が好ましい化合物である。還元増感剤の添加量は乳剤製造条件に依存するので添加量を選ぶ必要があるが、ハロゲン化銀1モル当り10−7〜10−3モルの範囲が適当である。
【0087】
還元増感剤は、例えば、水あるいはアルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類のような有機溶媒に溶かし粒子成長中に添加される。あらかじめ反応容器に添加するのもよいが、粒子成長の適当な時期に添加する方法が好ましい。また水溶性銀塩あるいは水溶性アルカリハライドの水溶性にあらかじめ還元増感剤を添加しておき、これらの水溶液を用いてハロゲン化銀粒子を沈澱せしめてもよい。また粒子成長に伴って還元増感剤の溶液を何回かに分けて添加しても連続して長時間添加するのも好ましい方法である。
【0088】
本発明の乳剤の製造工程中に銀に対する酸化剤を用いることが好ましい。銀に対する酸化剤とは、金属銀に作用して銀イオンに変換せしめる作用を有する化合物をいう。特にハロゲン化銀粒子の形成過程および化学増感過程において副生するきわめて微小な銀粒子を、銀イオンに変換せしめる化合物が有効である。ここで生成する銀イオンは、例えば、ハロゲン化銀、硫化銀、セレン化銀のような水に難溶の銀塩を形成してもよく、又、硝酸銀のような水に易溶の銀塩を形成してもよい。銀に対する酸化剤は、無機物であっても、有機物であってもよい。無機の酸化剤としては、例えば、オゾン、過酸化水素およびその付加物(例えば、NaBO2・H2O2・3H2O、2NaCO3・3H2O2、Na4P2O7・2H2O2、2Na2SO4・H2O2・2H2O)、ペルオキシ酸塩(例えば、K2S2O8、K2C2O6、K2P2O8)、ペルオキシ錯体化合物(例えば、K2[Ti(O2)C2O4]・3H2O、4K2SO4・Ti(O2)OH・SO4・2H2O、Na3[VO(O2)(C2H4)2]・6H2O)、過マンガン酸塩(例えば、KMnO4)、クロム酸塩(例えば、K2Cr2O7)のような酸素酸塩、沃素や臭素のようなハロゲン元素、過ハロゲン酸塩(例えば、過沃素酸カリウム)、高原子価の金属の塩(例えば、ヘキサシアノ第二鉄酸カリウム)およびチオスルフォン酸塩がある。
【0089】
また、有機の酸化剤としては、p−キノンのようなキノン類、過酢酸や過安息香酸のような有機過酸化物、活性ハロゲンを放出する化合物(例えば、N−ブロムサクシンイミド、クロラミンT、クロラミンB)が例として挙げられる。
【0090】
本発明において用いる好ましい酸化剤は、オゾン、過酸化水素およびその付加物、ハロゲン元素、チオスルフォン酸塩の無機酸化剤及びキノン類の有機酸化剤である。前述の還元増感と銀に対する酸化剤を併用するのは好ましい態様である。酸化剤を用いたのち還元増感を施こす方法、その逆方法あるいは両者を同時に共存させる方法のなかから選んで用いることができる。これらの方法は粒子形成工程でも化学増感工程でも選んで用いることができる。
【0091】
本発明で得られるハロゲン化銀乳剤を用いて製造される感光材料は、少なくとも1層の感光層を備えていればよい。好ましくは、支持体上に青感色性層、緑感色性層、赤感色性層のハロゲン化銀乳剤層を各々少なくとも1層設けられており、青感色性層、緑感色性層及び赤感色性層のうち、少なくとも1つが、感度の互いに異なる2層以上から構成されていればよく、ハロゲン化銀乳剤層および非感光性層の層数および層順に特に制限はない。典型的な例としては、支持体上に、実質的に感色性は同じであるが感光度の異なる複数のハロゲン化銀乳剤層から成る感色性層を少なくとも1つ有するハロゲン化銀写真感光材料であり、該感光性層は青色光、緑色光、および赤色光の何れかに感色性を有する単位感光性層であり、多層ハロゲン化銀カラー写真感光材料においては、一般に単位感光性層の配列が、支持体側から順に赤感色性層、緑感色性層、青感色性層の順に設置される。しかし、目的に応じて上記設置順が逆であっても、また同一感色性層中に異なる感光性層が挾まれたような設置順をもとり得る。
【0092】
上記のハロゲン化銀感光性層の間および最上層、最下層には各層の中間層等の非感光性層を設けてもよい。該中間層には、特開昭61−43748号、同59−113438号、同59−113440号、同61−20037号、同61−20038号の各公報に記載されるようなカプラー、DIR化合物が含まれていてもよく、通常用いられるように混色防止剤を含んでいてもよい。
【0093】
各単位感光性層を構成する複数のハロゲン化銀乳剤層は、***特許第1,121,470号あるいは英国特許第923,045号明細書に記載されるように高感度乳剤層、低感度乳剤層の2層構成を好ましく用いることができる。通常は、支持体に向かって順次感光度が低くなる様に配列するのが好ましく、また各ハロゲン乳剤層の間には非感光性層が設けられていてもよい。また、特開昭57−112751号、同62−200350号、同62−206541号、同62−206543号の各公報に記載されているように支持体より離れた側に低感度乳剤層、支持体に近い側に高感度乳剤層を設置してもよい。
【0094】
具体例として支持体から最も遠い側から、例えば低感度青感光性層(BL)/高感度青感光性層(BH)/高感度緑感光性層(GH)/低感度緑感光性層(GL)/高感度赤感光性層(RH)/低感度赤感光性層(RL)の順、またはBH/BL/GL/GH/RH/RLの順、またはBH/BL/GH/GL/RL/RHの順等に設置することができる。
【0095】
また特公昭55−34932号公報に記載されているように、支持体から最も遠い側から青感光性層/GH/RH/GL/RLの順に配列することもできる。
また特開昭56−25738号、同62−63936号公報に記載されているように、支持体から最も遠い側から青感光性層/GL/RL/GH/RHの順に設置することもできる。
【0096】
また特公昭49−15495号公報に記載されているように上層を最も感光度の高いハロゲン化銀乳剤層、中層をそれよりも低い感光度のハロゲン化銀乳剤層、下層を中層よりも更に感光度の低いハロゲン化銀乳剤層を配置し、支持体に向かって感光度が順次低められた感光度の異なる3層から構成される配列が挙げられる。このような感光度の異なる3層から構成される場合でも、特開昭59−202464号公報に記載されているように、同一感色性層中において支持体より離れた側から中感度乳剤層/高感度乳剤層/低感度乳剤層の順に配置されてもよい。
【0097】
その他、高感度乳剤層/低感度乳剤層/中感度乳剤層、あるいは低感度乳剤層/中感度乳剤層/高感度乳剤層などの順に配置されていてもよい。
また、4層以上の場合にも、上記の如く配列を変えてよい。
【0098】
色再現性を改良するために、米国特許4,663,271号、同4,705,744号、同4,707,436号の各明細書、特開昭62−160448号、同63−89850号の各公報に記載の、BL,GL,RLなどの主感光層と分光感度分布が異なる重層効果のドナー層(CL)を主感光層に隣接もしくは近接して配置することが好ましい。
【0099】
本発明の乳剤を用いる好ましい層は、低感度乳剤層である。低感度乳剤層としては、赤感色性低感度乳剤層、緑感色性低感度乳剤層及び青感色性低感度乳剤層のいずれにも使用することができるが、赤感色性低感度乳剤層が好ましい。本発明の乳剤はエピタキシャル部を有しないハロゲン化銀乳剤と同一感光度乳剤層に混ぜて使用してもいいが、エピタキシャル部を有しない乳剤とは混ぜて使用しない方が好ましい。本発明の乳剤を用いた感光層以外の感光層に含有される乳剤は、エピタキシャル部を有しないハロゲン化銀乳剤でもエピタキシャルを有するハロゲン化銀乳剤でもよい。
上記のように、それぞれの感光材料の目的に応じて種々の層構成、配列を選択することができる。
【0100】
本発明で得られるハロゲン化銀乳剤を用いて製造される感光材料は、非感光性微粒子ハロゲン化銀を使用することが好ましい。非感光性微粒子ハロゲン化銀とは、色素画像を得るための像様露光時においては感光せずに、その現像処理において実質的に現像されないハロゲン化銀微粒子であり、あらかじめカブラされていないほうが好ましい。非感光性微粒子ハロゲン化銀は、臭化銀の含有率が0〜100モル%であり、必要に応じて塩化銀および/または沃化銀を含有してもよい。好ましくは沃化銀を0.5〜10モル%含有するものである。非感光性微粒子ハロゲン化銀は、平均粒径(投影面積の円相当直径の平均値)が0.01〜0.5μmが好ましく、0.02〜0.2μmがより好ましい。
【0101】
非感光性微粒子ハロゲン化銀は、通常の感光性ハロゲン化銀と同様の方法で調製できる。非感光性微粒子ハロゲン化銀の表面は、光学的に増感される必要はなく、また分光増感も不要である。ただし、これを塗布液に添加するのに先立ち、あらかじめトリアゾール系、アザインデン系、ベンゾチアゾリウム系、もしくはメルカプト系化合物または亜鉛化合物などの公知の安定剤を添加しておくことが好ましい。この微粒子ハロゲン化銀粒子含有層に、コロイド銀を含有させることができる。
【0102】
本発明に使用できる写真用添加剤もリサーチ・ディスクロージャー(RD)に記載されており、下記の表に関連する記載箇所を示した。
添加剤の種類 RD17643号 RD18716号 RD307105号
1.化学増感剤 23頁 648 頁右欄 866頁
2.感度上昇剤 648 頁右欄
3.分光増感剤、 23〜24頁 648 頁右欄 866 〜868 頁
強色増感剤 〜649 頁右欄
4.増 白 剤 24頁 647 頁右欄 868頁
5.光吸収剤、 25 〜26頁 649 頁右欄 873頁
フィルター 〜650 頁左欄
染料、紫外
線吸収剤
6.バインダー 26頁 651 頁左欄 873 〜874 頁
7.可塑剤、 27頁 650 頁右欄 876頁
潤滑剤
8.塗布助剤、 26 〜27頁 650 頁右欄 875 〜876 頁
表面活性剤
9.スタチツク 27頁 650 頁右欄 876 〜877 頁
防止剤
10.マット剤 878 〜879 頁
【0103】
本発明で得られるハロゲン化銀を用いて製造される感光材料には種々の色素形成カプラーを使用することができるが、以下のカプラーが特に好ましい。
イエローカプラー: 欧州特許出願公開第502,424A号明細書に記載の式(I),(II)で表わされるカプラー; 欧州特許出願公開第513,496A号明細書に記載の式(1),(2) で表わされるカプラー (特に18頁のY−28); 欧州特許出願公開第568,037A号明細書に記載のクレーム1の式(I) で表わされるカプラー;米国特許第5,066,576号明細書のカラム1の45〜55行目に記載の一般式(I) で表わされるカプラー; 特開平4−274425号公報の段落0008に記載の一般式(I) で表わされるカプラー; 欧州特許出願公開第498,381A1号明細書の40頁のクレーム1に記載のカプラー(特に18頁のD−35); 欧州特許出願公開第447,969A1号明細書の4頁に記載の式(Y) で表わされるカプラー(特にY−1(17頁),Y−54(41 頁)); 米国特許第4,476,219号明細書のカラム7の36〜58行に記載の式(II)〜(IV)で表わされるカプラー(特にII−17,19(カラム17),II−24(カラム19))。
【0104】
マゼンタカプラー; 特開平3−39737号公報(L−57(11 頁右下),L−68(12 頁右下),L−77(13 頁右下); 欧州特許第456,257号明細書に記載の A−4 −63(134頁), A−4 −73,−75(139頁); 欧州特許第486,965号明細書に記載のM−4,−6(26 頁),M−7(27頁); 欧州特許出願公開第571,959A号明細書に記載のM−45(19 頁);特開平5−204106号公報に記載の(M−1)(6 頁);特開平4−362631号公報の段落0237に記載のM−22。
【0105】
シアンカプラー: 特開平4−204843号公報に記載のCX−1, 3, 4, 5, 11, 12, 14, 15(14 〜16頁); 特開平4−43345号公報に記載のC−7,10(35 頁),34,35(37頁),(I−1),(I−17)(42 〜43頁); 特開平6−67385号公報の請求項1に記載の一般式(Ia)または(Ib)で表わされるカプラー。
ポリマーカプラー: 特開平2−44345号公報に記載のP−1,P−5(11頁)。
【0106】
発色色素が適度な拡散性を有するカプラーとしては、米国特許第4,366,237号、英国特許第2,125,570号、欧州特許第96,873B号、独国特許第3,234,533号の各明細書に記載のものが好ましい。
【0107】
発色色素の不要吸収を補正するためのカプラーは、欧州特許出願公開第456,257A1号明細書の5 頁に記載の式(CI),(CII),(CIII),(CIV) で表わされるイエローカラードシアンカプラー(特に84頁のYC−86)、該欧州特許出願公開明細書に記載のイエローカラードマゼンタカプラーExM−7(202 頁) 、 EX−1(249 頁) 、 EX−7(251 頁) 、米国特許第4,833,069号明細書に記載のマゼンタカラードシアンカプラーCC−9 (カラム8)、CC−13(カラム10) 、米国特許第4,837,136号明細書に記載の(2)(カラム8)、国際公開第92/11575号パンフレットのクレーム1に記載の式(A) で表わされる無色のマスキングカプラー(特に36〜45頁の例示化合物)が好ましい。
【0108】
写真性有用基を放出するカプラーとしては、以下のものが挙げられる。現像抑制剤放出化合物:欧州特許出願公開第378,236A1号明細書の11頁に記載の式(I),(II),(III),(IV) で表わされる化合物(特にT−101(30頁),T−104(31頁),T−113(36頁),T−131(45頁),T−144(51頁),T−158(58頁)), 欧州特許出願公開第436,938A2号明細書の 7頁に記載の式(I) で表わされる化合物(特にD−49(51 頁))、欧州特許出願公開第568,037A号明細書に記載の式(1) で表わされる化合物(特に(23)(11 頁))、欧州特許出願公開第440,195A2号明細書の5 〜6 頁に記載の式(I),(II),(III)で表わされる化合物(特に29頁のI−(1) );漂白促進剤放出化合物:欧州特許出願公開第310,125A2号明細書の5 頁に記載の式(I),(I’)で表わされる化合物(特に61頁の(60),(61)) 及び特開平6−59411号公報 の請求項1に記載の式(I) で表わされる化合物(特に(7)(7 頁)); リガンド放出化合物:米国特許第4,555,478号明細書のクレーム1に記載のLIG−X で表わされる化合物(特にカラム12の21〜41行目の化合物);ロイコ色素放出化合物:米国特許第4,749,641号明細書のカラム3〜8に記載の化合物1〜6;蛍光色素放出化合物:米国特許第4,774,181号明細書のクレーム1に記載のCOUP−DYEで表わされる化合物(特にカラム7〜10の化合物1〜11);現像促進剤又はカブラセ剤放出化合物:米国特許第4,656,123号明細書のカラム3に記載の式(1) 、(2) 、(3) で表わされる化合物(特にカラム25の(I−22)) 及び欧州特許出願公開第450,637A2号明細書の75頁36〜38行目に記載のExZK−2; 離脱して初めて色素となる基を放出する化合物: 米国特許第4,857,447号明細書のクレーム1に記載の式(I) で表わされる化合物(特にカラム25〜36のY−1 〜Y−19)。
【0109】
カプラー以外の添加剤としては、以下のものが好ましい。
油溶性有機化合物の分散媒: 特開昭62−215272号公報に記載のP−3, 5, 16, 19, 25, 30, 42, 49, 54, 55, 66, 81, 85, 86, 93(140〜144 頁); 油溶性有機化合物の含浸用ラテックス: 米国特許第4,199,363号明細書に記載のラテックス; 現像主薬酸化体スカベンジャー: 米国特許第4,978,606号明細書のカラム2の54〜62行目に記載の式(I) で表わされる化合物(特にI−,(1),(2),(6),(12) (カラム4〜5)、米国特許第4,923,787号明細書のカラム2の5〜10行目に記載の式(特に化合物1(カラム3); ステイン防止剤: 欧州特許出願公開第298321A号明細書の4頁30〜33行目に記載の式(I) 〜(III),特にI−47,72,III−1,27(24〜48頁); 褪色防止剤: 欧州特許出願公開第298321A号明細書に記載のA−6, 7, 20, 21, 23, 24, 25, 26, 30, 37, 40, 42, 48, 63, 90, 92, 94, 164(69〜118頁), 米国特許第5,122,444号明細書のカラム25〜38に記載のII−1〜III−23, 特にIII−10, 欧州特許出願公開第471347A号明細書の8 〜12頁に記載のI−1 〜III−4,特にII−2, 米国特許第5,139,931号明細書のカラム32〜40に記載のA−1 〜48, 特にA−39,42; 発色増強剤または混色防止剤の使用量を低減させる素材: 欧州特許出願公開第411324A号明細書の5 〜24頁に記載のI−1 〜II−15,特にI−46; ホルマリンスカベンジャー: 欧州特許出願公開第477932A号明細書の24〜29頁に記載のSCV−1 〜28, 特にSCV−8; 硬膜剤: 特開平1−214845号公報の17頁に記載のH−1,4,6,8,14, 米国特許第4,618,573号明細書のカラム13〜23に記載の式(VII) 〜(XII) で表わされる化合物(H−1〜54),特開平2−214852号公報の8頁右下に記載の式(6) で表わされる化合物(H−1〜76),特にH−14, 米国特許第3,325,287号明細書のクレーム1に記載の化合物; 現像抑制剤プレカーサー: 特開昭62−168139号公報に記載のP−24,37,39(6〜7 頁); 米国特許第5,019,492号明細書のクレーム1に記載の化合物,特にカラム7の28,29; 防腐剤、防黴剤: 米国特許第4,923,790号明細書のカラム3 〜15に記載のI−1 〜III−43, 特にII−1,9,10,18,III−25; 安定剤、かぶり防止剤: 米国特許第4,923,793号明細書のカラム6 〜16に記載のI−1 〜(14), 特にI−1,60,(2),(13), 米国特許第4,952,483号明細書のカラム25〜32に記載の化合物1〜65, 特に36: 化学増感剤: トリフェニルホスフィン セレニド, 特開平5−40324号公報に記載の化合物50; 染料: 特開平3−156450号公報の15〜18頁に記載のa−1 〜b−20, 特にa−1,12,18,27,35,36,b−5,27 〜29頁に記載のV−1 〜23, 特にV−1, 欧州特許出願公開第445627A号明細書の33〜55頁に記載のF−I−1 〜F−II−43,特にF−I−11,F−II−8, 欧州特許出願公開第457153A号明細書の17〜28頁に記載のIII−1 〜36, 特にIII−1,3, 国際公開第88/04794号パンフレットに記載の8〜26のDye−1 〜124 の微結晶分散体, 欧州特許出願公開第319999A号明細書の6〜11頁に記載の化合物1〜22, 特に化合物1, 欧州特許出願公開第519306A号明細書に記載の式(1) ないし(3) で表わされる化合物D−1 〜87(3〜28頁),米国特許第4,268,622号明細書に記載の式(I) で表わされる化合物1〜22 (カラム3〜10), 米国特許第4,923,788号明細書に記載の式(I) で表わされる化合物(1) 〜(31) (カラム2〜9); UV吸収剤: 特開昭46−3335号公報に記載の式(1) で表わされる化合物(18b) 〜(18r),101 〜427(6〜9頁),欧州特許出願公開第520938A号明細書に記載の式(I) で表わされる化合物(3) 〜(66)(10 〜44頁) 及び式(III) で表わされる化合物HBT−1 〜10(14 頁), 欧州特許出願公開第521823A号明細書に記載の式(1) で表わされる化合物(1) 〜(31) (カラム2〜9)。
【0110】
本発明は、白黒印画紙、白黒ネガフイルム、レントゲンフイルム、一般用もしくは映画用のカラーネガフイルム、スライド用もしくはテレビ用のカラー反転フイルム、カラーペーパー、カラーポジフイルムおよびカラー反転ペーパーのような種々のカラー感光材料に適用することができる。また、特公平2−32615号、実公平3−39784号公報に記載されているレンズ付きフイルムユニット用に好適である。
【0111】
本発明に使用できる適当な支持体は、例えば、前述のRD No.17643の28頁、同No.18716の647頁右欄から648頁左欄、および同No.307105の879頁に記載されている。
【0112】
本発明の感光材料は、乳剤層を有する側の全親水性コロイド層の膜厚の総和が28μm以下であることが好ましく、23μm以下がより好ましく、18μm以下が更に好ましく、16μm以下が特に好ましい。また膜膨潤速度T1/2は30秒以下が好ましく、20秒以下がより好ましい。T1/2は、発色現像液で30℃、3分15秒処理した時に到達する最大膨潤膜厚の90%を飽和膜厚としたとき、膜厚がその1/2に到達するまでの時間と定義する。膜厚は、室温25℃、相対湿度55%調湿下(2日)で測定した膜厚を意味し、T1/2は、エー・グリーン(A.Green)らのフォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Photogr. Sci. Eng.),19卷、2,124〜129頁に記載の型のスエロメーター(膨潤計)を使用することにより測定できる。T1/2は、バインダーとしてのゼラチンに硬膜剤を加えること、あるいは塗布後の経時条件を変えることによって調整することができる。また、膨潤率は150〜400%が好ましい。膨潤率とは、さきに述べた条件下での最大膨潤膜厚から、式:(最大膨潤膜厚−膜厚)/膜厚 により計算できる。
【0113】
本発明の感光材料は、乳剤層を有する側の反対側に、乾燥膜厚の総和が2μm〜20μmの親水性コロイド層(バック層と称す)を設けることが好ましい。このバック層には、前述の光吸収剤、フィルター染料、紫外線吸収剤、スタチック防止剤、硬膜剤、バインダー、可塑剤、潤滑剤、塗布助剤、表面活性剤を含有させることが好ましい。このバック層の膨潤率は150〜500%が好ましい。
【0114】
本発明の感光材料は、前述のRD.No.17643の28〜29頁、同No.18716の651左欄〜右欄、および同No.307105の880〜881頁に記載された通常の方法によって現像処理することができる。
【0115】
次に、本発明に使用されるカラーネガフイルム用の処理液について説明する。
本発明に使用される発色現像液には、特開平4−121739号公報の第9頁右上欄1行〜第11頁左下欄4行に記載の化合物を使用することができる。特に迅速な処理を行う場合の発色現像主薬としては、2−メチル−4−〔N−エチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミノ〕アニリン、2−メチル−4−〔N−エチル−N−(3−ヒドロキシプロピル)アミノ〕アニリン、2−メチル−4−〔N−エチル−N−(4−ヒドロキシブチル)アミノ〕アニリンが好ましい。
【0116】
これらの発色現像主薬は発色現像液1リットル(以下、「L」とも表記する。
)あたり0.01〜0.08モルの範囲で使用することが好ましく、特には0.015〜0.06モル、更には0.02〜0.05モルの範囲で使用することが好ましい。また発色現像液の補充液には、この濃度の1.1〜3倍の発色現像主薬を含有させておくことが好ましく、特に1.3〜2.5倍を含有させておくことが好ましい。
【0117】
発色現像液の保恒剤としては、ヒドロキシルアミンが広範に使用できるが、より高い保恒性が必要な場合は、アルキル基やヒドロキシアルキル基、スルホアルキル基、カルボキシアルキル基などの置換基を有するヒドロキシルアミン誘導体が好ましく、具体的にはN,N−ジ(スルホエチル)ヒドロキルアミン、モノメチルヒドロキシルアミン、ジメチルヒドロキシルアミン、モノエチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキルアミン、N,N−ジ(カルボキシエチル)ヒドロキルアミンが好ましい。上記の中でも、特にN,N−ジ(スルホエチル)ヒドロキルアミンが好ましい。これらはヒドロキシルアミンと併用してもよいが、好ましくはヒドロキシルアミンの代わりに、1種または2種以上使用することが好ましい。
【0118】
保恒剤は1Lあたり0.02〜0.2モルの範囲で使用することが好ましく、特に0.03〜0.15モル、更には0.04〜0.1モルの範囲で使用することが好ましい。また補充液においては、発色現像主薬の場合と同様に、母液(処理タンク液)の1.1〜3倍の濃度で保恒剤を含有させておくことが好ましい。
【0119】
発色現像液には、発色現像主薬の酸化物のタール化防止剤として亜硫酸塩が使用される。亜硫酸塩は1Lあたり0.01〜0.05モルの範囲で使用するのが好ましく、特には0.02〜0.04モルの範囲が好ましい。補充液においては、これらの1.1〜3倍の濃度で使用することが好ましい。
【0120】
また、発色現像液のpHは9.8〜11.0の範囲が好ましいが、特には10.0〜10.5が好ましく、また補充液においては、これらの値から0.1〜1.0の範囲で高い値に設定しておくことが好ましい。このようなpHを安定して維持するには、炭酸塩、リン酸塩、スルホサリチル酸塩、ホウ酸塩などの公知の緩衝剤が使用される。
【0121】
発色現像液の補充量は、感光材料1m2あたり80〜1300ミリリットル(以下、ミリリットルを「mL」とも表記する。)が好ましいが、環境汚濁負荷の低減の観点から、より少ない方が好ましく、具体的には80〜600mL、更には80〜400mLが好ましい。
【0122】
発色現像液中の臭化物イオン濃度は、通常、1Lあたり0.01〜0.06モルであるが、感度を保持しつつカブリを抑制してディスクリミネーションを向上させ、かつ、粒状性を良化させる目的からは、1Lあたり0.015〜0.03モルに設定することが好ましい。臭化物イオン濃度をこのような範囲に設定する場合に、補充液には下記の式で算出した臭化物イオンを含有させればよい。ただし、下記の式のCが負になる時は、補充液には臭化物イオンを含有させないことが好ましい。
【0123】
C=A−W/V
C:発色現像補充液中の臭化物イオン濃度(モル/L)
A:目標とする発色現像液中の臭化物イオン濃度(モル/L)
W:1m2の感光材料を発色現像した場合に、感光材料から発色現像液に溶出する臭化物イオンの量(モル)
V:1m2の感光材料に対する発色現像補充液の補充量(L)
【0124】
また、補充量を低減した場合や、高い臭化物イオン濃度に設定した場合、感度を高める方法として、1−フェニル−3−ピラゾリドンや1−フェニル−2−メチル−2−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドンに代表されるピラゾリドン類や3,6−ジチア−1,8−オクタンジオールに代表されるチオエーテル化合物などの現像促進剤を使用することも好ましい。
【0125】
本発明における漂白能を有する処理液には、特開平4−125558号公報の第4頁左下欄16行〜第7頁左下欄6行に記載された化合物や処理条件を適用することができる。
【0126】
漂白剤は酸化還元電位が150mV以上のものが好ましいが、その具体例としては特開平5−72694号、同5−173312号の各公報に記載のものが好ましく、特に1,3−ジアミノプロパン四酢酸、特開平5−173312号公報の第7頁に記載の具体例1の化合物である第二鉄錯塩が好ましい。
【0127】
また、漂白剤の生分解性を向上させるには、特開平4−251845号公報、同4−268552号公報、欧州特許588,289号明細書、同591,934号明細書、特開平6−208213号公報に記載の化合物第二鉄錯塩を漂白剤として使用することが好ましい。これらの漂白剤の濃度は、漂白能を有する液1Lあたり0.05〜0.3モルが好ましく、特に環境への排出量を低減する目的から、0.1モル〜0.15モルで設計することが好ましい。また、漂白能を有する液が漂白液の場合は、1Lあたり0.2モル〜1モルの臭化物を含有させることが好ましく、特に0.3〜0.8モルを含有させることが好ましい。
【0128】
漂白能を有する液の補充液には、基本的に以下の式で算出される各成分の濃度を含有させる。これにより、母液中の濃度を一定に維持することができる。
CR=CT(V1+V2)/V1+CP
CR :補充液中の成分の濃度
CT :母液(処理タンク液)中の成分の濃度
CP :処理中に消費された成分の濃度
V1 :1m2の感光材料に対する漂白能を有する補充液の補充量(mL)
V2 :1m2の感光材料による前浴からの持ち込み量(mL)
【0129】
その他、漂白液にはpH緩衝剤を含有させることが好ましく、特にコハク酸、マレイン酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸など、臭気の少ないジカルボン酸を含有させることが好ましい。また、特開昭53−95630号公報、RD No.17129、米国特許第3,893,858号明細書に記載の公知の漂白促進剤を使用することも好ましい。
漂白液には、感光材料1m2あたり50〜1000mLの漂白補充液を補充することが好ましく、特には80〜500mL、さらには100〜300mLの補充をすることが好ましい。さらに漂白液にはエアレーションを行うことが好ましい。
【0130】
定着能を有する処理液については、特開平4−125558号公報の第7頁左下欄10行〜第8頁右下欄19行に記載の化合物や処理条件を適用することができる。
特に、定着速度と保恒性を向上させるために、特開平6−301169号公報に記載の一般式(I)と(II)で表される化合物を、単独あるいは併用して定着能を有する処理液に含有させることが好ましい。またp−トルエンスルフィン酸塩をはじめ、特開平1−224762号公報に記載のスルフィン酸を使用することも、保恒性の向上の上で好ましい。
【0131】
漂白能を有する液や定着能を有する液には、脱銀性の向上の観点からカチオンとしてアンモニウムを用いることが好ましいが、環境汚染低減の目的からは、アンモニウムを減少或いはゼロにする方が好ましい。
【0132】
漂白、漂白定着、定着工程においては、特開平1−309059号公報に記載のジェット撹拌を行なうことが特に好ましい。
漂白定着また定着工程における補充液の補充量は、感光材料1m2あたり100〜1000mLであり、好ましくは150〜700mL、特に好ましくは200〜600mLである。
【0133】
漂白定着や定着工程には、各種の銀回収装置をインラインやオフラインで設置して銀を回収することが好ましい。インラインで設置することにより、液中の銀濃度を低減して処理できる結果、補充量を減少させることができる。また、オフラインで銀回収して残液を補充液として再利用することも好ましい。
【0134】
漂白定着工程や定着工程は複数の処理タンクで構成することができ、各タンクはカスケード配管して多段向流方式にすることが好ましい。現像機の大きさとのバランスから、一般には2タンクカスケード構成が効率的であり、前段のタンクと後段のタンクにおける処理時間の比は、0.5:1〜1:0.5の範囲にすることが好ましく、特には0.8:1〜1:0.8の範囲が好ましい。
【0135】
漂白定着液や定着液には、保恒性の向上の観点から金属錯体になっていない遊離のキレート剤を存在させることが好ましいが、これらのキレート剤としては、漂白液に関して記載した生分解性キレート剤を使用することが好ましい。
【0136】
水洗および安定化工程に関しては、上記の特開平4−12558号公報の第12頁右下欄6行〜第13頁右下欄第16行に記載の内容を好ましく適用することができる。特に、安定液にはホルムアルデヒドに代わって欧州特許第504,609号、同519,190号の各明細書に記載のアゾリルメチルアミン類や特開平4−362943号公報に記載のN−メチロールアゾール類を使用することや、マゼンタカプラーを二当量化してホルムアルデヒドなどの画像安定化剤を含まない界面活性剤の液にすることが、作業環境の保全の観点から好ましい。
【0137】
また、感光材料に塗布された磁気記録層へのゴミの付着を軽減するには、特開平6−289559号公報に記載の安定液が好ましく使用できる。
【0138】
水洗および安定液の補充量は、感光材料1m2あたり80〜1000mLが好ましく、特には100〜500mL、さらには150〜300mLが、水洗または安定化機能の確保と環境保全のための廃液減少の両面から好ましい範囲である。このような補充量で行う処理においては、バクテリアや黴の繁殖防止のために、チアベンダゾール、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3オン、5−クロロ−2−メチルイソチアゾリン−3−オンのような公知の防黴剤やゲンタマイシンのような抗生物質、イオン交換樹脂等によって脱イオン処理した水を用いることが好ましい。脱イオン水と防菌剤や抗生物質は、併用することがより効果的である。
【0139】
また、水洗または安定液タンク内の液は、特開平3−46652号、同3−53246号、同3−55542号、同3−121448号、同3−126030号の各公報に記載の逆浸透膜処理を行って補充量を減少させることも好ましく、この場合の逆浸透膜は、低圧逆浸透膜であることが好ましい。
【0140】
本発明における処理においては、発明協会公開技報、公技番号94−4992に開示された処理液の蒸発補正を実施することが特に好ましい。特に第2頁の(式−1)に基づいて、現像機設置環境の温度及び湿度情報を用いて補正する方法が好ましい。蒸発補正に使用する水は、水洗の補充タンクから採取することが好ましく、その場合は水洗補充水として脱イオン水を用いることが好ましい。
【0141】
本発明に用いられる処理剤としては、上記公開技報の第3頁右欄15行から第4頁左欄32行に記載のものが好ましい。また、これに用いる現像機としては、第3頁右欄の第22行から28行に記載のフイルムプロセサーが好ましい。
【0142】
本発明を実施するに好ましい処理剤、自動現像機、蒸発補正方式の具体例については、上記の公開技報の第5頁右欄11行から第7頁右欄最終行までに記載されている。
【0143】
本発明に使用される処理剤の供給形態は、使用液状態の濃度または濃縮された形の液剤、あるいは顆粒、粉末、錠剤、ペースト状、乳液など、いかなる形態でもよい。このような処理剤の例として、特開昭63−17453号公報には低酸素透過性の容器に収納した液剤、特開平4−19655号公報、同4−230748号公報には真空包装した粉末あるいは顆粒、同4−221951号公報には水溶性ポリマーを含有させた顆粒、特開昭51−61837号公報、特開平6−102628号公報には錠剤、特表昭57−500485号公報にはペースト状の処理剤が開示されており、いずれも好ましく使用できるが、使用時の簡便性の面から、予め使用状態の濃度で調製してある液体を使用することが好ましい。
【0144】
これらの処理剤を収納する容器には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどが、単独あるいは複合材料として使用される。これらは要求される酸素透過性のレベルに合わせて選択される。発色現像液などの酸化されやすい液に対しては、低酸素透過性の素材が好ましく、具体的にはポリエチレンテレフタレートやポリエチレンとナイロンの複合材料が好ましい。これらの材料は500〜1500μmの厚さで、容器に使用され、酸素透過性を20mL/m2・24hrs・atm以下にすることが好ましい。
【0145】
次に本発明に使用されるカラー反転フイルム用の処理液について説明する。
カラー反転フイルム用の処理については、アズテック有限会社発行の公知技術第6号(1991年4月1日)第1頁5行〜第10頁5行、及び第15頁8行〜第24頁2行に詳細に記載されており、その内容はいずれも好ましく適用することができる。
【0146】
カラー反転フイルムの処理においては、画像安定化剤は調整浴か最終浴に含有される。このような画像安定化剤としては、ホルマリンのほかにホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウム、N−メチロールアゾール類があげられるが、作業環境の観点からホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウムかN−メチロールアゾール類が好ましく、N−メチロールアゾール類としては、特にN−メチロールトリアゾールが好ましい。また、カラーネガフイルムの処理において記載した発色現像液、漂白液、定着液、水洗水などに関する内容は、カラー反転フイルムの処理にも好ましく適用できる。
【0147】
上記の内容を含む好ましいカラー反転フイルムの処理剤として、イーストマンコダック社のE−6処理剤及び富士写真フイルム(株)のCR−56処理剤をあげることができる。
【0148】
次に、本発明に好ましく用いられる磁気記録層について説明する。
磁気記録層とは、磁性体粒子をバインダー中に分散した水性もしくは有機溶媒系塗布液を支持体上に塗設したものである。
本発明で用いられる磁性体粒子は、γFe2O3などの強磁性酸化鉄、Co被着γFe2O3、Co被着マグネタイト、Co含有マグネタイト、強磁性二酸化クロム、強磁性金属、強磁性合金、六方晶系のBaフェライト、Srフェライト、Pbフェライト、Caフェライトなどを使用できる。Co被着γFe2O3などのCo被着強磁性酸化鉄が好ましい。形状としては針状、米粒状、球状、立方体状、板状等いずれでもよい。比表面積ではSBETで20m2/g以上が好ましく、30m2/g以上が特に好ましい。強磁性体の保磁力(Hc)は、好ましくは3.0×104〜3.0×105A/mであり、特に好ましくは4.0×104〜2.5×105A/mである。強磁性体粒子を、シリカおよび/またはアルミナや有機素材による表面処理を施してもよい。さらに、磁性体粒子は特開平6−161032に記載された如くその表面にシランカップリング剤又はチタンカップリング剤で処理されてもよい。又特開平4−259911号公報、同5−81652号公報に記載の表面に無機、有機物を被覆した磁性体粒子も使用できる。
【0149】
磁性体粒子に用いられるバインダーは、特開平4−219569号公報に記載の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂、反応型樹脂、酸、アルカリ又は生分解性ポリマー、天然物重合体(セルロース誘導体、糖誘導体など)およびそれらの混合物を使用することができる。上記の樹脂のTgは−40℃〜300℃、質量平均分子量は0.2万〜100万である。例えばビニル系共重合体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルローストリプロピオネートなどのセルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂を挙げることができ、ゼラチンも好ましい。特にセルロースジ(トリ)アセテートが好ましい。バインダーは、エポキシ系、アジリジン系、イソシアネート系の架橋剤を添加して硬化処理することができる。イソシアネート系の架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、などのイソシアネート類、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの反応生成物(例えば、トリレンジイソシアナート3molとトリメチロールプロパン1molの反応生成物)、及びこれらのイソシアネート類の縮合により生成したポリイソシアネートなどがあげられ、例えば特開平6−59357号公報に記載されている。
【0150】
前述の磁性体を上記バインダ−中に分散する方法は、特開平6−35092号公報に記載されているように、ニーダー、ピン型ミル、アニュラー型ミルなどを用いる方法が好ましく、併用も好ましい。特開平5−088283号公報に記載の分散剤や、その他の公知の分散剤が使用できる。磁気記録層の厚みは0.1μm〜10μm、好ましくは0.2μm〜5μm、より好ましくは0.3μm〜3μmである。
磁性体粒子とバインダーの質量比は好ましくは0.5:100〜60:100からなり、より好ましくは1:100〜30:100である。磁性体粒子の塗布量は0.005〜3g/m2、好ましくは0.01〜2g/m2、さらに好ましくは0.02〜0.5g/m2である。磁気記録層の透過イエロー濃度は、0.01〜0.50が好ましく、0.03〜0.20がより好ましく、0.04〜0.15が特に好ましい。磁気記録層は、写真用支持体の裏面に塗布又は印刷によって全面またはストライプ状に設けることができる。磁気記録層を塗布する方法としてはエアードクター、ブレード、エアナイフ、スクイズ、含浸、リバースロール、トランスファーロール、グラビヤ、キス、キャスト、スプレイ、ディップ、バー、エクストリュージョン等が利用でき、特開平5−341436号公報等に記載の塗布液が好ましい。
【0151】
磁気記録層に、潤滑性向上、カール調節、帯電防止、接着防止、ヘッド研磨などの機能を合せ持たせてもよいし、別の機能性層を設けて、これらの機能を付与させてもよく、粒子の少なくとも1種がモース硬度5以上の非球形無機粒子の研磨剤が好ましい。非球形無機粒子の組成としては、酸化アルミニウム、酸化クロム、二酸化珪素、二酸化チタン、シリコンカーバイト等の酸化物、炭化珪素、炭化チタン等の炭化物、ダイアモンド等の微粉末が好ましい。これらの研磨剤は、その表面をシランカップリング剤又はチタンカップリング剤で処理されてもよい。これらの粒子は磁気記録層に添加してもよく、また磁気記録層上にオーバーコート(例えば保護層,潤滑剤層など)しても良い。この時使用するバインダーは前述のものが使用でき、好ましくは磁気記録層のバインダーと同じものがよい。
磁気記録層を有する感材については、米国特許第5,336,589号、同5,250,404号、同5,229,259号、同5,215,874号、欧州特許第466,130号の各明細書に記載されている。
【0152】
次に本発明に用いられるポリエステル支持体について記すが、後述する感材、処理、カートリッジ及び実施例なども含め詳細については、公開技報、公技番号94−6023(発明協会;1994.3.15.)に記載されている。本発明に用いられるポリエステルはジオールと芳香族ジカルボン酸を必須成分として形成され、芳香族ジカルボン酸として2,6−、1,5−、1,4−、及び2,7−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ジオールとしてジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールが挙げられる。この重合ポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート等のホモポリマーを挙げることができる。特に好ましいのは2,6−ナフタレンジカルボン酸を50モル%〜100モル%含むポリエステルである。中でも特に好ましいのはポリエチレン 2,6−ナフタレートである。
平均分子量の範囲は約5,000ないし200,000である。本発明のポリエステルのTgは50℃以上であり、さらに90℃以上が好ましい。
【0153】
次にポリエステル支持体は、巻き癖をつきにくくするために熱処理温度は40℃以上Tg未満、より好ましくは(Tg−20)℃以上Tg未満で熱処理を行う。熱処理はこの温度範囲内の一定温度で実施してもよく、冷却しながら熱処理してもよい。
この熱処理時間は、0.1時間以上1500時間以下、さらに好ましくは0.5時間以上 200時間以下である。支持体の熱処理は、ロール状で実施してもよく、またウェブ状で搬送しながら実施してもよい。表面に凹凸を付与し(例えばSnO2やSb2O5等の導電性無機微粒子を塗布する)、面状改良を図ってもよい。又端部にローレットを付与し端部のみ少し高くすることで巻芯部の切り口写りを防止するなどの工夫を行うことが望ましい。これらの熱処理は支持体製膜後、表面処理後、バック層塗布後(帯電防止剤、滑り剤等)、下塗り塗布後のどこの段階で実施してもよい。好ましいのは帯電防止剤塗布後である。
【0154】
このポリエステルには紫外線吸収剤を練り込んでも良い。又ライトパイピング防止のため、三菱化成製のDiaresin、日本化薬製のKayaset等ポリエステル用として市販されている染料または顔料を練り込むことにより目的を達成することが可能である。
【0155】
次に、本発明では支持体と感材構成層を接着させるために、表面処理することが好ましい。薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸化処理、などの表面活性化処理が挙げられる。表面処理の中でも好ましいのは、紫外線照射処理、火焔処理、コロナ処理、グロー処理である。
【0156】
次に下塗法について述べると、単層でもよく2層以上でもよい。下塗層用バインダーとしては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの中から選ばれた単量体を出発原料とする共重合体を始めとして、ポリエチレンイミン、エポキシ樹脂、グラフト化ゼラチン、ニトロセルロース、ゼラチンが挙げられる。支持体を膨潤させる化合物としてレゾルシンとp−クロルフェノールがある。下塗層にはゼラチン硬化剤としてはクロム塩(クロム明ばんなど)、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、グルタールアルデヒドなど)、イソシアネート類、活性ハロゲン化合物(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジンなど)、エピクロルヒドリン樹脂、活性ビニルスルホン化合物などを挙げることができる。SiO2、TiO2、無機物微粒子又はポリメチルメタクリレート共重合体微粒子(0.01〜10μm)をマット剤として含有させてもよい。
【0157】
また本発明においては、帯電防止剤が好ましく用いられる。それらの帯電防止剤としては、カルボン酸及びカルボン酸塩、スルホン酸塩を含む高分子、カチオン性高分子、イオン性界面活性剤化合物を挙げることができる。
【0158】
帯電防止剤として最も好ましいものは、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、SiO2、MgO、BaO、MoO3、V2O5の中から選ばれた少なくとも1種の体積抵抗率が107Ω・cm以下、より好ましくは105Ω・cm以下である粒子サイズ0.001〜1.0μm結晶性の金属酸化物あるいはこれらの複合酸化物(Sb,P,B,In,S,Si,Cなど)の微粒子、更にはゾル状の金属酸化物あるいはこれらの複合酸化物の微粒子である。感材への含有量としては、5〜500mg/m2が好ましく特に好ましくは10〜350mg/m2である。導電性の結晶性酸化物又はその複合酸化物とバインダーの量の比は1/300〜100/1が好ましく、より好ましくは1/100〜100/5である。
【0159】
本発明の感材には滑り性がある事が好ましい。滑り剤含有層は感光層面、バック面ともに用いることが好ましい。好ましい滑り性としては動摩擦係数で0.25以下0.01以上である。この時の測定は直径5mmのステンレス球に対し、60cm/分で搬送した時の値を表す(25℃、60%RH)。この評価において相手材として感光層面に置き換えてもほぼ同レベルの値となる。
【0160】
本発明に使用可能な滑り剤としては、ポリオルガノシロキサン、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸と高級アルコールのエステル等であり、ポリオルガノシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリスチリルメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等を用いることができる。添加層としては乳剤層の最外層やバック層が好ましい。特にポリジメチルシロキサンや長鎖アルキル基を有するエステルが好ましい。
【0161】
本発明の感材にはマット剤が有る事が好ましい。マット剤としては乳剤面、バック面とどちらでもよいが、乳剤側の最外層に添加するのが特に好ましい。マット剤は処理液可溶性でも処理液不溶性でもよく、好ましくは両者を併用することである。例えばポリメチルメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート/メタクリル酸=9/1又は5/5(モル比))、ポリスチレン粒子などが好ましい。粒径としては0.8〜10μmが好ましく、その粒径分布も狭いほうが好ましく、平均粒径の0.9〜1.1倍の間に全粒子数の90%以上が含有されることが好ましい。又マット性を高めるために0.8μm以下の微粒子を同時に添加することも好ましく例えばポリメチルメタクリレート(0.2μm)、ポリ(メチルメタクリレート/メタクリル酸=9/1(モル比)、0.3μm))、ポリスチレン粒子(0.25μm)、コロイダルシリカ(0.03μm)が挙げられる。
【0162】
次に本発明で用いられるフィルムパトローネについて記す。本発明で使用されるパトローネの主材料は金属でも合成プラスチックでもよい。
好ましいプラスチック材料はポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニルエーテルなどである。更に本発明のパトローネは、各種の帯電防止剤を含有してもよくカーボンブラック、金属酸化物粒子、ノニオン、アニオン、カチオン及びベタイン系界面活性剤又はポリマー等を好ましく用いることが出来る。これらの帯電防止されたパトローネは特開平1−312537号公報、同1−312538号公報に記載されている。特に25℃、25%RHでの抵抗が1012Ω以下が好ましい。通常プラスチックパトローネは、遮光性を付与するためにカーボンブラックや顔料などを練り込んだプラスチックを使って製作される。パトローネのサイズは現在135サイズのままでもよいし、カメラの小型化には、現在の135サイズにおける25mmのカートリッジの径を22mm以下とすることも有効である。パトローネのケースの容積は、30cm3以下好ましくは25cm3以下とすることが好ましい。パトローネおよびパトローネケースに使用されるプラスチックの質量は5g〜15gが好ましい。
【0163】
更に本発明で用いられる、スプールを回転してフイルムを送り出すパトローネでもよい。またフイルム先端がパトローネ本体内に収納され、スプール軸をフイルム送り出し方向に回転させることによってフイルム先端をパトローネのポート部から外部に送り出す構造でもよい。これらは米国特許4,834,306号、同5,226,613号の各明細書に開示されている。本発明に用いられる写真フイルムは現像前のいわゆる生フイルムでもよいし、現像処理された写真フイルムでもよい。又、生フイルムと現像済みの写真フイルムが同じ新パトローネに収納されていてもよいし、異なるパトローネでもよい。
【0164】
本発明のカラー写真感光材料は、アドバンスト・フォト・システム(以下、APシステムという)用ネガフイルムとしても好適であり、富士写真フイルム(株)(以下、富士フイルムという)製NEXIA A 、NEXIA F 、NEXIA H (順にISO 200/100/400 )のようにフイルムをAPシステムフォーマットに加工し、専用カートリッジに収納したものを挙げることができる。これらのAPシステム用カートリッジフイルムは、富士フイルム製エピオンシリーズ(エピオン300Z等)等のAPシステム用カメラに装填して用いられる。また、本発明のカラー写真感光材料は、富士フイルム製フジカラー写ルンですスーパースリムのようなレンズ付きフイルムにも好適である。
【0165】
これらにより撮影されたフイルムは、ミニラボシステムでは次のような工程を経てプリントされる。
(1)受付(露光済みカートリッジフイルムをお客様からお預かり)
(2)デタッチ工程(カートリッジから、フイルムを現像工程用の中間カートリッジに移す)
(3)フイルム現像
(4)リアタッチ工程(現像済みのネガフイルムを、もとのカートリッジに戻す)
(5)プリント(C/H/P3タイプのプリントとインデックスプリントをカラーペーパー〔好ましくは富士フイルム製SUPER FA8 〕に連続自動プリント)
(6)照合・出荷(カートリッジとインデックスプリントをIDナンバーで照合し、プリントとともに出荷)
【0166】
これらのシステムとしては、富士フイルムミニラボチャンピオンスーパーFA−298/FA−278/FA−258/FA−238 及び富士フイルムデジタルラボシステム フロンティアが好ましい。ミニラボチャンピオンのフイルムプロセサーとしてはFP922AL/FP562B /FP562B,AL/FP362B/FP362B,AL が挙げられ、推奨処理薬品はフジカラージャストイットCN−16L及びCN−16Qである。プリンタープロセサーとしては、PP3008AR/PP3008A /PP1828AR/PP1828A/PP1258AR/PP1258A/PP728AR/PP728A が挙げられ、推奨処理薬品はフジカラージャストイットCP−47L及びCP−40FAIIである。フロンティアシステムでは、スキャナー&イメージプロセサー SP−1000及びレーザープリンター&ペーパープロセサー LP−1000Pもしくはレーザープリンター LP−1000Wが用いられる。デタッチ工程で用いるデタッチャー、リアタッチ工程で用いるリアタッチャーは、それぞれ富士フイルムのDT200/DT100 及びAT200/AT100 が好ましい。
【0167】
APシステムは、富士フイルムのデジタルイメージワークステーションAladdin 1000を中心とするフォトジョイシステムにより楽しむこともできる。例えば、Aladdin 1000に現像済みAPシステムカートリッジフイルムを直接装填したり、ネガフイルム、ポジフイルム、プリントの画像情報を、35mmフイルムスキャナーFE−550やフラットヘッドスキャナーPE−550を用いて入力し、得られたデジタル画像データを容易に加工・編集することができる。そのデータは、光定着型感熱カラープリント方式によるデジタルカラープリンターNC−550ALやレーザー露光熱現像転写方式のピクトログラフィー3000によって、又はフイルムレコーダーを通して既存のラボ機器によりプリントとして出力することができる。また、Aladdin 1000は、デジタル情報を直接フロッピー(登録商標)ディスクやZipディスクに、もしくはCDライターを介してCD−Rに出力することもできる。
【0168】
一方、家庭では、現像済みAPシステムカートリッジフイルムを富士フイルム製フォトプレイヤーAP−1に装填するだけでTVで写真を楽しむことができるし、富士フイルム製フォトスキャナーAS−1に装填すれば、パソコンに画像情報を高速で連続的に取り込むこともできる。また、フイルム、プリント又は立体物をパソコンに入力するには、富士フイルム製フォトビジョンFV−10/FV−5が利用できる。更に、フロッピー(登録商標)ディスク、Zipディスク、CD−Rもしくはハードディスクに記録された画像情報は、富士フイルムのアプリケーションソフトフォトファクトリーを用いてパソコン上で様々に加工して楽しむことができる。パソコンから高画質なプリントを出力するには、光定着型感熱カラープリント方式の富士フイルム製デジタルカラープリンターNC−2/NC−2Dが好適である。
【0169】
現像済みのAPシステムカートリッジフイルムを収納するには、フジカラーポケットアルバムAP−5ポップL、AP−1ポップL、AP−1ポップKG又はカートリッジファイル16が好ましい。
【0170】
また、本発明で得られるハロゲン化銀乳剤を用いて製造される感光材料は、米国特許第4,500,626号、特開昭60−133449号、同59−218443号、同61−238056号、欧州特許出願公開第210,660A2号などの明細書および公報に記載されている熱現像感光材料にも適用できる。
【0171】
また、本発明で得られるハロゲン化銀乳剤を用いて製造される感光材料は、特公平2−32615号、実公平3−39784号などの公報に記載されているレンズ付きフィルムユニットに適用した場合に、より効果を発現しやすく有効である。
【0172】
【実施例】
以下に実施例をもって本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
本発明のエピタキシャル平板粒子について詳しく説明する。
【0173】
(乳剤1の調製)
(ホスト粒子)
KBr0.87g、平均分子量20000の低分子量酸化処理ゼラチン0.95gを含む水溶液1100mLを35℃に保ち撹拌した。AgNO3(2.1g)水溶液とKBr(1.5g)と平均分子量20000の低分子量酸化処理ゼラチン(1g)を含む水溶液を30秒間に渡り添加した。KBr2.6gを含む水溶液を添加した後、65℃に昇温した。平均分子量100000の琥珀化ゼラチン41gを含む水溶液を添加した後、カテコールジスルホン酸ナトリウム塩を2.1g含む水溶液を添加した。その後、第1成長としてAgNO3(225g)水溶液とKBr水溶液をダブルジェット法で流量加速して添加した。この時、銀電位を飽和カロメル電極に対して−20mVに保った。途中で6塩化イリジウムカリウム(0.07mg)を含む水溶液を添加した。AgNO3の添加終了時にベンゼンチオスルホン酸ナトリウム(2mg)を含む水溶液を添加した。その後、最外層成長としてAgNO3水溶液(32.1g)とKIを含むKBr水溶液を18分間に渡って添加した。KIの濃度は沃化銀含有率が6.8モル%になるように調整した。この時、銀電位を添加開始後12分間は飽和カロメル電極に対して−20mVに、その後は70mVに保ち、添加開始後14分で黄血塩(7.4mg)を含む水溶液を添加した。
【0174】
この後、ゼラチン14gを添加した。このゼラチンは、牛骨を原料とするアルカリ処理オセイン1番抽出ゼラチン(PAGI法により測定された分子量分布は、高分子量成分が2.5%、低分子量成分が60.0%)を、イオン交換処理を行ったものである。温度を40℃に降温した後、フェノキシエタノール47mLを添加した。増感色素I、II、IIIをそれぞれ69:30:1のモル比で飽和被覆量の80%の比率で添加し、その後硝酸カルシウム(2.5×10−2mol)を添加した。但し増感色素は、特開平11−52507号に記載の方法で作成した固体微分散物として使用した。すなわち硝酸ナトリウム0.8質量部および硫酸ナトリウム3.2質量部をイオン交換水43質量部に溶解し、増感色素13質量部を添加し、60℃の条件下でディゾルバー翼を用い2000rpmで20分間分散することにより、増感色素の固体分散物を得た。
【0175】
(エピタキシャル形成部)
この後、塩化ナトリウム1.5gを含む水溶液を添加した後、AgNO3(6.7g)水溶液とNaCl(2.4g)を含む水溶液を45秒間に渡ってダブルジェット法で添加した。その後、AgNO3(0.35g)水溶液とKI(0.45g)水溶液と平均分子量20000の低分子量ゼラチンの水溶液を特開平10−43570号公報に記載の磁気カップリング誘導型攪拌機を有する別のチャンバー内で添加直前混合して添加した。更にその後AgNO3(5.6g)水溶液とKBr(3.86g)水溶液と平均分子量20000の低分子量酸化処理ゼラチンの水溶液を特開平10−43570号公報に記載の磁気カップリング誘導型攪拌機を有する別のチャンバー内で添加直前混合して添加した。その後エピタキシャル部形態安定化剤(化合物I)(60mg)を添加した。
【0176】
(水洗、後熟部)
続いて、通常の水洗を行なった。この時、温度は35℃に保った。前述のゼラチン85gを添加した後、40℃でpHを6.5に、銀電位をNaCl水溶液を用いて飽和カロメル電極に対して100mVに調整した。エピタキシャル部形態安定化剤兼保存性改良剤(化合物II)(5mg)を添加した後、50℃に昇温し、ハロゲン化銀1モルに対して、チオシアン酸カリウム(1.8×10−4モル)、塩化金酸(1.3×10−5モル)、チオ硫酸ナトリウム(2.1×10−5モル)およびN,N−ジメチルセレノ尿素(8.8×10−6モル)を添加し最適に化学増感を施した。かぶり防止剤(化合物I)(6.9×10−4モル)添加して化学増感を終了した。
【0177】
本発明の乳剤は平均円相当径0.860μm、円相当径の変動係数17%、平均厚み0.086μm、平均アスペクト比10.0の平板粒子であった。また、全投影面積の70%以上が円相当径0.6μm以上1.1μm以下、厚み0.12μm以下の、最小の長さを有する辺の長さに対する最大の長さを有する辺の長さの比が5以下である主表面が(111)面の六角形平板粒子であり、少なくとも1つの頂点部にエピタキシャル部を有するエピタキシャル平板粒子であった。
さらに、エピタキシャル部以外の主表面部には転位線を持たず、かつエピタキシャル部に網目状の転位線を有するエピタキシャル平板粒子も全投影面積の70%以上を占めいることが、低温での透過電子顕微鏡観察によって確認された。
【0178】
前記エピタキシャル平板粒子でホスト平板粒子から外側に突出した部分において、ホスト平板粒子側の1/3の体積部分をa部分、残りをb部分としたとき、aの部分の平均塩化銀含有率(mol%)(Cla)とbの部分の平均塩化銀含有率(mol%)(Clb)の比(Cla/Clb)を求めたところ、この比が1より小さいエピタキシャル平板粒子も全投影面積の70%以上を占めていた。ハロゲン組成は本文記載の分析電顕を用いた手法にて求めた。本粒子は6.8モル%の沃化銀を含有する最外層が銀換算で8%の粒子である。エピタキシャル部は銀換算で7%である。また全投影面積の70%以上が平均塩化銀含有率および平均沃化銀含有率に対して30%以内の範囲に入っていた。
【0179】
【化1】
【0180】
(乳剤2の調製)
乳剤1よりエピタキシャル形成部を以下の如く変更することにより乳剤2を調製した。
塩化ナトリウム1.5gを含む水溶液を添加した後、AgNO3(6.7g)水溶液とNaCl(2.4g)を含む水溶液を45秒間に渡ってダブルジェット法で添加した。その後、AgNO3(0.35g)水溶液とKI(0.45g)水溶液と平均分子量20000の低分子量ゼラチンの水溶液を特開平10−43570号公報に記載の磁気カップリング誘導型攪拌機を有する別のチャンバ−内で添加直前混合して添加した。更にその後AgNO3(5.6g)水溶液とKBr(3.86g)水溶液とをダブルジェットで添加した。その後エピタキシャル部形態安定化剤(化合物I)(60mg)を添加した。
【0181】
(乳剤3の調製)
乳剤1よりエピタキシャル形成部を以下の如く変更することにより乳剤3を調製した。
塩化ナトリウム1.5gを含む水溶液を添加した後、AgNO3(12.7g)水溶液とNaCl(2.4g)とKI(0.45)とKBr(3.9g)を含む水溶液を7分間に渡ってダブルジェット法で添加した。その後エピタキシャル部形態安定化剤(化合物I)(60mg)を添加した。
【0182】
(乳剤4の調製)
乳剤1よりエピタキシャル形成部を以下の如く変更することにより乳剤4を調製した。
塩化ナトリウム1.5gを含む水溶液を添加した後、AgNO3(12.7g)水溶液とNaCl(2.4g)とKI(0.45)とKBr(3.9g)を含む水溶液と平均分子量20000の低分子量ゼラチンの水溶液とを7分間に渡って特開平10−43570号公報に記載の磁気カップリング誘導型攪拌機を有する別のチャンバ−内で添加直前混合して添加した。その後エピタキシャル部形態安定化剤I(60mg)を添加した。
【0183】
(乳剤5の調製)
乳剤1よりエピタキシャル形成部を以下の如く変更することにより乳剤5を調製した。
塩化ナトリウム1.5gを含む水溶液を添加した後、AgNO3(6.7g)水溶液とNaCl(2.4g)を含む水溶液を45秒間に渡ってダブルジェット法で添加した。その後、AgNO3(0.35g)水溶液とKI(0.45g)水溶液と平均分子量20000の低分子量ゼラチンの水溶液を特開平10−43570号公報に記載の磁気カップリング誘導型攪拌機を有する別のチャンバ−内で添加直前混合して添加した。更にその後AgNO3(5.6g)水溶液とハロゲン水溶液(KBr(1.93g)+NaCl(0.95g))と平均分子量20000の低分子量酸化処理ゼラチンの水溶液を特開平10−43570号公報に記載の磁気カップリング誘導型攪拌機を有する別のチャンバ−内で添加直前混合して添加した。その後エピタキシャル部形態安定化剤(化合物I)(60mg)を添加した。
乳剤1から5の特性値を表1にまとめて示した。
【0184】
【表1】
【0185】
下塗り層を設けてある三酢酸セルロースフィルム支持体に下記表2に示すような塗布条件で上記の化学増感を施した乳剤を保護層を設けて塗布し、試料No.101〜105を作成した。
【0186】
【表2】
【0187】
これらの試料を40℃、相対湿度70%の条件下に14時間放置した。その後、富士フィルム(株)製ゼラチンフィルターSC−50と連続ウェッジを通して1/100秒間露光した。
富士写真フィルム(株)製ネガプロセサーFP−350を用い、以下に記載の方法で(液の累積補充量がその母液タンク容量の3倍になるまで)処理した。
【0188】
(処理方法)
【0189】
次に、処理液の組成を記す。
【0190】
(漂白液) タンク液、補充液共通(単位 g)
エチレンジアミン四酢酸第二鉄アンモニウム二水塩 120.0
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 10.0
臭化アンモニウム 100.0
硝酸アンモニウム 10.0
漂白促進剤 0.005モル
(CH3)2N−CH2−CH2−S−S−CH2−CH2−N(CH3)2・2HCl
アンモニア水(27%) 15.0mL
水を加えて 1.0L
pH(アンモニア水と硝酸にて調整) 6.3
【0191】
【0192】
(水洗液) タンク液、補充液共通
水道水をH型強酸性カチオン交換樹脂(ロームアンドハース社製アンバーライトIR−120B)と、OH型アニオン交換樹脂(同アンバーライトIR−400)を充填した混床式カラムに通水してカルシウム及びマグネシウムイオン濃度を3mg/L以下に処理し、続いて二塩化イソシアヌール酸ナトリウム20mg/Lと硫酸ナトリウム0.15g/Lを添加した。この液のpHは6.5〜7.5の範囲にあった。
【0193】
【0194】
処理済みの試料を緑色フィルタ−で濃度測定した。また露光前に50℃、相対湿度60%の条件に21日間保存した試料についても同様の評価を行い保存性について評価した。
【0195】
以上により得られた、かぶりプラス0.2の濃度での感度値(かぶり+0.2の濃度を得るの必要な露光量の逆数の対数値)、かぶり値を表3に示す。
【0196】
【表3】
【0197】
表3の結果から明らかなように、本発明の全投影面積の70%以上が少なくとも一つの頂点部にエピタキシャル部を有し、Cla/Clbが1より小さい平板粒子を用いることにより、高感度で保存後の感度変化が小さい感光材料が得られる。更に、エピタキシャル部に少なくとも1本の転位線を有する平板粒子をもちいることにより高感度な感光材料が得られる。Cla、Clbが共に50mol%以下の場合、保存後の感度変化が小さい感光材料を得ることができる。
【0198】
(実施例2)
多層カラ−写真感光材料における本発明の乳剤の効果を示す。
本実施例で用いた支持体は、下記の方法により作製した。
【0199】
1)第1層及び下塗り層
厚さ90μmのポリエチレンナフタレート支持体について、その各々の両面に、処理雰囲気圧力2.66×10Pa、雰囲気気体中のH2O分圧75%、放電周波数30kHz、出力2500W、処理強度0.5kV・A・分/m2でグロー放電処理を施した。この支持体上に、第1層として下記組成の塗布液を特公昭58−4589号公報に記載のバー塗布法を用いて、5mL/m2の塗布量で塗布した。
【0200】
【0201】
さらに、第1層を塗設後、直径20cmのステンレス巻芯に巻付けて、110℃(PEN支持体のTg:119℃)で48時間加熱処理し熱履歴させてアニール処理をした後、支持体をはさみ第1層側と反対側に乳剤用の下塗り層として下記組成の塗布液をバー塗布法を用いて、10mL/m2の塗布量で塗布した。
【0202】
さらに、後述する第2、第3層を第1層の上に順に塗設し、最後に、後述する組成のカラーネガ感光材料を支持体に対して反対側に重層塗布することによりハロゲン化銀乳剤層付き透明磁気記録媒体を作製した。
【0203】
2)第2層(透明磁気記録層)
▲1▼磁性体の分散
Co被着γ−Fe2O3磁性体(平均長軸長:0.25μm、SBET:39m2/g、Hc:6.56×104A/m、σS :77.1Am2/kg、σr :37.4Am2/kg)1100質量部、水220質量部及びシランカップリング剤〔3−(ポリ(重合度10)オキシエチニル)オキシプロピル トリメトキシシラン〕165質量部を添加して、オープンニーダーで3時間良く混練した。この粗分散した粘性のある液を70℃で1昼夜乾燥し水を除去した後、110℃で1時間加熱処理し、表面処理をした磁気粒子を作製した。
【0204】
さらに以下の処方で、再びオープンニーダーにて4時間混練した。
上記表面処理済み磁気粒子 855 g
ジアセチルセルロース 25.3 g
メチルエチルケトン 136.3 g
シクロヘキサノン 136.3 g
【0205】
さらに、以下の処方で、サンドミル(1/4Gのサンドミル)にて2000rpm、4時間微細分散した。メディアは1mmφのガラスビーズを用いた。
上記混練液 45 g
ジアセチルセルロース 23.7 g
メチルエチルケトン 127.7 g
シクロヘキサノン 127.7 g
【0206】
さらに、以下の処方で、磁性体含有中間液を作製した。
▲2▼磁性体含有中間液の作製
上記磁性体微細分散液 674 g
ジアセチルセルロース溶液 24280 g
(固形分4.34%、溶媒:メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1/1)
シクロヘキサノン 46 g
これらを混合した後、ディスパ−にて撹拌し、「磁性体含有中間液」を作製した。
【0207】
以下の処方で本発明のα−アルミナ研磨材分散液を作製した。
(a)スミコランダムAA−1.5(平均1次粒子径1.5μm, 比表面積1.3m2/g)
粒子分散液の作製
スミコランダムAA−1.5 152g
シランカップリング剤KBM903(信越シリコーン社製) 0.48g
ジアセチルセルロース溶液 227.52g
(固形分4.5%、溶媒:メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1/1)上記処方にて、セラミックコートしたサンドミル(1/4Gのサンドミル)を用いて800rpm、4時間微細分散した。メディアは1mmφのジルコニアビーズを用いた。
【0208】
(b)コロイダルシリカ粒子分散液(微小粒子)
日産化学(株)製の「MEK−ST」を使用した。
これは、メチルエチルケトンを分散媒とした、平均1次粒子径0.015μmのコロイダルシリカの分散液であり、固形分は30%である。
【0209】
▲3▼第2層塗布液の作製
上記磁性体含有中間液 19053 g
ジアセチルセルロース溶液 264 g
(固形分4.5%、溶媒:メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1/1)
コロイダルシリカ分散液「MEK−ST」[分散液b] 128 g
(固形分30%)
AA−1.5分散液[分散液a] 12 g
ミリオネートMR−400(日本ポリウレタン(株)製) 希釈液 203 g
(固形分20%、希釈溶剤:メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1/1)
メチルエチルケトン 170 g
シクロヘキサノン 170 g
上記を混合・撹拌した塗布液をワイヤーバーにて、塗布量29.3mL/m2になるように塗布した。乾燥は110℃で行った。乾燥後の磁性層としての厚みは1.0μmだった。
【0210】
3)第3層(高級脂肪酸エステル滑り剤含有層)
▲1▼滑り剤の分散原液の作製
下記のア液を100℃加温溶解し、イ液に添加後、高圧ホモジナイザーで分散し、滑り剤の分散原液を作製した。
ア液
下記化合物 399 質量部
C6H13CH(OH)(CH2)10COOC50H101
下記化合物 171 質量部
n−C50H101O(CH2CH2O)16H
シクロヘキサノン 830 質量部
イ液
シクロヘキサノン 8600 質量部
【0211】
▲2▼球状無機粒子分散液の作製
【化2】
(非晶質球状シリカ、平均粒子径0.5μm、日本触媒(株)製)
【0212】
上記処方にて10分間撹拌後、更に以下を追添する。
ジアセトンアルコール 252.93 質量部
上記液を氷冷・攪拌しながら、超音波ホモジナイザー「SONIFIER450(BRANSON(株)製)」を用いて3時間分散し、球状無機粒子分散液c1を完成させた。
【0213】
▲3▼球状有機高分子粒子分散液の作製
以下の処方にて、球状有機高分子粒子分散液[c2]を作製した。
XC99−A8808(東芝シリコーン(株)製、球状架橋ポリシロキサン粒子、平均粒径0.9μm) 60 質量部
メチルエチルケトン 120 質量部
シクロヘキサノン 120 質量部
(固形分20%、溶媒:メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1/1)
氷冷・攪拌しながら、超音波ホモジナイザー「SONIFIER450(BRANSON(株)製)」を用いて2時間分散し球状有機高分子粒子分散液c2を完成させた。
【0214】
▲4▼第3層塗布液の作製
前述、滑り剤分散原液542gに下記を加え第3層塗布液とした。
ジアセトンアルコール 5950 g
シクロヘキサノン 176 g
酢酸エチル 1700 g
上記シーホスタKEP50分散液[c1] 53.1 g
上記球状有機高分子粒子分散液[c2] 300 g
FC431 2.65 g
(3M(株)製、固形分50%、溶剤:酢酸エチル)
BYK310 5.3 g
(BYKケミジャパン(株)製、固形分含有率25%)
上記第3層塗布液を第2層の上に10.35mL/m2の塗布量で塗布し、110℃で乾燥後、更に97℃で3分間後乾燥した。
【0215】
4)感光層の塗設
次に、前記で得られたバック層の支持体に対して反対側に、下記の組成の各層を重層塗布し、カラーネガフィルム試料201を作成した。
(感光層の組成)
各成分に対応する数字は、g/m2単位で表した塗布量を示し、ハロゲン化銀については銀換算の塗布量を示す。
【0216】
(試料201)
第1層(第1ハレーション防止層)
黒色コロイド銀 銀 0.080
0.07μmのヨウ臭化銀乳剤 銀 0.012
ゼラチン 0.700
ExM−1 0.064
ExC−1 0.004
ExC−3 0.004
Cpd−2 0.002
F−8 0.002
HBS−1 0.099
HBS−2 0.013
【0217】
第2層(第2ハレーション防止層)
黒色コロイド銀 銀 0.100
ゼラチン 0.767
ExF−1 0.004
F−8 0.001
固体分散染料 ExF−7 0.120
ExY−1 0.041
HBS−1 0.048
【0218】
第3層(中間層)
ExC−2 0.054
Cpd−1 0.092
ポリエチルアクリレートラテックス 0.250
HBS−1 0.074
ゼラチン 0.558
【0219】
第4層(低感度赤感乳剤層)
乳剤1 銀 0.73
ExC−1 0.404
ExC−2 0.024
ExC−3 0.083
ExC−4 0.213
ExC−5 0.044
ExC−6 0.025
ExC−8 0.073
ExC−9 0.010
Cpd−2 0.035
Cpd−4 0.035
Cpd−7 0.010
UV−2 0.022
UV−3 0.042
UV−4 0.009
UV−5 0.075
HBS−1 0.274
HBS−5 0.038
ゼラチン 2.457
【0220】
第5層(中感度赤感乳剤層)
Em−B 銀 1.052
ExM−5 0.021
ExC−1 0.324
ExC−2 0.077
ExC−3 0.010
ExC−4 0.145
ExC−5 0.022
ExC−6 0.029
ExC−8 0.026
ExC−9 0.067
Cpd−2 0.046
Cpd−4 0.025
Cpd−7 0.030
HBS−1 0.290
ゼラチン 1.046
【0221】
第6層(高感度赤感乳剤層)
Em−A 銀 0.732
ExM−5 0.156
ExC−1 0.076
ExC−3 0.025
ExC−6 0.037
ExC−8 0.134
ExC−9 0.109
ExC−10 0.127
ExY−3 0.012
Cpd−2 0.090
Cpd−4 0.099
Cpd−7 0.040
HBS−1 0.254
HBS−2 0.100
ゼラチン 1.006
【0222】
第7層(中間層)
Cpd−1 0.068
Cpd−6 0.309
固体分散染料ExF−4 0.020
HBS−1 0.068
ポリエチルアクリレートラテックス 0.068
ゼラチン 0.539
【0223】
第8層(赤感層へ重層効果を与える層)
Em−E 銀 0.358
Cpd−4 0.030
ExM−2 0.101
ExM−3 0.008
ExM−4 0.040
ExY−1 0.028
ExY−4 0.028
ExC−7 0.046
HBS−1 0.343
HBS−3 0.006
HBS−5 0.030
ゼラチン 0.884
【0224】
第9層(低感度緑感乳剤層)
Em−H 銀 0.206
Em−I 銀 0.208
Em−J 銀 0.255
ExM−2 0.304
ExM−3 0.075
ExY−1 0.028
ExY−3 0.024
ExC−7 0.014
HBS−1 0.505
HBS−3 0.012
HBS−4 0.095
HBS−5 0.055
Cpd−5 0.010
Cpd−7 0.020
ゼラチン 1.282
【0225】
第10層(中感度緑感乳剤層)
Em−G 銀 0.409
ExM−2 0.056
ExM−3 0.043
ExM−5 0.009
ExY−3 0.012
ExC−6 0.008
ExC−7 0.010
ExC−8 0.009
ExC−9 0.007
HBS−1 0.040
HBS−3 0.001
HBS−4 0.030
HBS−5 0.015
Cpd−5 0.002
Cpd−7 0.008
ゼラチン 0.406
【0226】
第11層(高感度緑感乳剤層)
Em−F 銀 0.407
Em−H 銀 0.156
ExC−6 0.009
ExC−8 0.010
ExC−9 0.011
ExM−1 0.015
ExM−2 0.050
ExM−3 0.010
ExM−4 0.030
ExM−5 0.035
ExM−6 0.018
ExY−3 0.007
Cpd−3 0.005
Cpd−4 0.007
Cpd−5 0.010
Cpd−7 0.020
HBS−1 0.248
HBS−3 0.003
HBS−4 0.094
HBS−5 0.037
ポリエチルアクリレートラテックス 0.099
ゼラチン 0.950
【0227】
第12層(イエローフィルター層)
Cpd−1 0.090
固体分散染料ExF−2 0.070
固体分散染料ExF−5 0.010
油溶性染料ExF−6 0.010
HBS−1 0.055
ゼラチン 0.589
【0228】
第13層(低感度青感乳剤層)
Em−M 銀 0.287
Em−N 銀 0.194
Em−O 銀 0.127
ExC−1 0.008
ExC−3 0.023
ExC−7 0.024
ExY−1 0.078
ExY−2 0.354
ExY−4 0.086
ExY−5 0.354
Cpd−2 0.082
Cpd−3 0.010
HBS−1 0.337
HBS−5 0.070
ゼラチン 1.476
【0229】
第14層(高感度青感乳剤層)
Em−L 銀 0.401
Em−K 銀 0.401
ExM−5 0.008
ExC−1 0.013
ExY−1 0.061
ExY−2 0.139
ExY−3 0.010
ExY−4 0.080
ExY−5 0.130
Cpd−2 0.084
Cpd−3 0.002
Cpd−7 0.039
HBS−1 0.142
ゼラチン 0.805
【0230】
第15層(第1保護層)
0.07μmのヨウ臭化銀乳剤 銀 0.208
UV−1 0.167
UV−2 0.066
UV−3 0.099
UV−4 0.013
UV−5 0.160
F−11 0.008
ExF−3 0.003
S−1 0.077
HBS−1 0.175
HBS−4 0.017
ゼラチン 1.007
【0231】
第16層(第2保護層)
H−1 0.400
B−1(直径1.7μm) 0.050
B−2(直径1.7μm) 0.150
B−3 0.029
S−1 0.200
ゼラチン 0.708
【0232】
更に、各層に適宜、保存性、処理性、圧力耐性、防黴・防菌性、帯電防止性及び塗布性をよくするために、W−1ないしW−11、B−4ないしB−6、F−1ないしF−19及び、鉛塩、白金塩、イリジウム塩、ロジウム塩が含有されている。
【0233】
有機固体分散染料の分散物の調製
第12層の固体分散染料ExF−2を次の方法で調製した。
ExF−2のウエットケーキ(17.6質量%の水を含む)2.800kg
オクチルフェニルジエトキシメタンスルホン酸ナトリウム
(31質量%水溶液) 0.376kg
F−15(7%水溶液) 0.011kg
水 4.020kg
計 7.210kg
(NaOHでpH=7.2に調整)
【0234】
上記組成のスラリーをディゾルバーで攪拌して粗分散した後、アジテータミルLMK−4を用い、周速10m/s、吐出量0.6kg/min、0.3mm径のジルコニアビーズ充填率80%で分散液の吸光度比が0.29になるまで分散し、固体微粒子分散物を得た。染料微粒子の平均粒径は0.29μmであった。
【0235】
同様にして、固体分散染料ExF−4およびExF−7を得た。染料微粒子の平均粒径はそれぞれ、0.28μm、0.49μmであった。ExF−5は欧州特許第549,489Aの実施例1に記載の微小析出(Microprecipitation)分散方法により分散した。平均粒径は0.06μmであった。
【0236】
【表4】
【0237】
【表5】
【0238】
【表6】
【0239】
【表7】
【0240】
表7に記載の色素を以下に示す。
【化3】
【0241】
【化4】
【0242】
【化5】
【0243】
【化6】
【0244】
【化7】
【0245】
【化8】
【0246】
【化9】
【0247】
【化10】
【0248】
【化11】
【0249】
【化12】
【0250】
【化13】
【0251】
【化14】
【0252】
【化15】
【0253】
【化16】
【0254】
以下、各層に用いた化合物を示す。
【化17】
【0255】
【化18】
【0256】
【化19】
【0257】
【化20】
【0258】
【化21】
【0259】
【化22】
【0260】
【化23】
【0261】
【化24】
【0262】
【化25】
【0263】
【化26】
【0264】
【化27】
【0265】
【化28】
【0266】
【化29】
【0267】
【化30】
【0268】
上記のハロゲン化銀カラー写真感光材料を試料201とする。
上記試料201より、第4層の乳剤1を乳剤2〜4に変更することにより、試料202〜204を作成した。
【0269】
これらの試料を40℃、相対湿度70%の条件下で14時間硬膜処理を施した。その後、富士フイルム(株)製ゼラチンフィルターSC−39(カットオフ波長が390nmである長波長光透過フィルター)と連続ウェッジを通して1/100秒間露光した。現像は富士写真フイルム社製自動現像機FP−360Bを用いて以下により行った。尚、漂白浴のオーバーフロー液を後浴へ流さず、全て廃液タンクへ排出する様に改造を行った。このFP−360Bは発明協会公開技法94−4992号に記載の蒸発補正手段を搭載している。
【0270】
処理工程及び処理液組成を以下に示す。
【0271】
安定液及び定着液は(2)から(1)への向流方式であり、水洗水のオーバーフロー液は全て定着浴(2)へ導入した。尚、現像液の漂白工程への持ち込み量、漂白液の定着工程への持ち込み量、及び定着液の水洗工程への持ち込み量は感光材料35mm幅1.1m当たりそれぞれ2.5mL、2.0mL、2.0mLであった。また、クロスオーバーの時間はいずれも6秒であり、この時間は前工程の処理時間に包含される。
上記処理機の開口面積は発色現像液で100cm2、漂白液で120cm2、その他の処理液は約100cm2であった。
【0272】
以下に処理液の組成を示す。
【0273】
【0274】
(定着(1)タンク液)
上記漂白タンク液と下記定着タンク液の5対95(容量比)混合液
(pH6.8)
【0275】
【0276】
(水洗水)
水道水をH型強酸性カチオン交換樹脂(ロームアンドハース社製アンバーライトIR−120B)と、OH型強塩基性アニオン交換樹脂(同アンバーライトIR−400)を充填した混床式カラムに通水してカルシウム及びマグネシウムイオン濃度を3mg/L以下に処理し、続いて二塩化イソシアヌール酸ナトリウム20mg/Lと硫酸ナトリウム150mg/Lを添加した。この液のpHは6.5〜7.5の範囲にあった。
【0277】
【0278】
発色現像液の補充量を半分にして同様の処理を行い、現像処理依存性を評価した(処理液変動前後の感度変化)。また、実施例1と同じ方法で、保存性を評価した(経時前後の感度変化)。結果を表8に示す。
【0279】
【表8】
【0280】
表8から明らかなように、本発明の乳剤を低感度層に用いることにより感度が高くかつ保存性が良好でかつ現像処理依存性が改良された感材を得ることができることが判る。
【0281】
(実施例3)
(乳剤31の調製)
(ホスト粒子)
KBr1.00g、平均分子量20000の低分子量酸化処理ゼラチン1.10gを含む水溶液1300mLを35℃に保ち撹拌した。AgNO3(5.6g)水溶液とKBr(4.0g)と平均分子量20000の低分子量酸化処理ゼラチン(1g)を含む水溶液を60秒間に渡り添加した。KBr(2.6g)を含む水溶液を添加した後、55℃に昇温した。平均分子量100000のゼラチン30gを含む水溶液を添加した後、カテコールジスルホン酸ナトリウム塩を5.1g含む水溶液を添加した。ここで使用したゼラチンは、牛骨を原料とするアルカリ処理オセイン1番抽出ゼラチン(PAGI法により測定された分子量分布は、高分子量成分が2.5%、低分子量成分が60.0%)を、イオン交換処理を行ったものである。その後、第1成長としてAgNO3(225g)水溶液とKBr水溶液をダブルジェット法で流量加速して添加した。この時、銀電位を飽和カロメル電極に対して−10mVに保った。途中で6塩化イリジウムカリウム(0.17mg)を含む水溶液を添加した。AgNO3の添加終了時にベンゼンチオスルホン酸ナトリウム(1mg)を含む水溶液を添加した。その後、最外層成長としてAgNO3水溶液(32.1g)とKIを含むKBr水溶液を18分間に渡って添加した。KIの濃度は沃化銀含有率が4.0モル%になるように調整した。この時、銀電位を添加開始後20分間は飽和カロメル電極に対して−10mVに、その後は60mVに保ち、添加開始後10分で黄血塩(2.4mg)を含む水溶液を添加した。
【0282】
この後、ゼラチン10gを添加した。このゼラチンは、牛骨を原料とするアルカリ処理オセイン1番抽出ゼラチン(PAGI法により測定された分子量分布は、高分子量成分が2.5%、低分子量成分が60.0%)を特開2002−169241公報記載の詳細な説明に記載の架橋剤H−VI−3で架橋したゼラチンである。PAGI法により測定された分子量分布は、高分子量成分が12.4%、低分子量成分が48.3%である。
【0283】
温度を35℃に降温した後、フェノキシエタノール47mLを添加した。増感色素I、II、IIIをそれぞれ60:39:1のモル比で飽和被覆量の75%の比率で添加し、その後硝酸カルシウム(5.0×10−2mol)を添加した。但し増感色素は、特開平11−52507号公報に記載の方法で作成した固体微分散物として使用した。すなわち硝酸ナトリウム0.8質量部および硫酸ナトリウム3.2質量部をイオン交換水43質量部に溶解し、増感色素13質量部を添加し、60℃の条件下でディゾルバー翼を用い2000rpmで20分間分散することにより、増感色素の固体分散物を得た。
【0284】
(エピタキシャル形成部)
この後、塩化ナトリウム2.0gを含む水溶液を添加した後、AgNO3(8.0g)水溶液とNaCl(2.8g)を含む水溶液を45秒間に渡ってダブルジェット法で添加した。その後、AgNO3(0.37g)水溶液とKI(0.48g)水溶液と平均分子量20000の低分子量ゼラチンの水溶液を特開平10−43570号公報に記載の磁気カップリング誘導型攪拌機を有する別のチャンバ−内で添加直前混合して添加した。更にその後AgNO3(5.9g)水溶液とKBr(4.00g)水溶液と平均分子量20000の低分子量酸化処理ゼラチンの水溶液を特開平10−43570号公報に記載の磁気カップリング誘導型攪拌機を有する別のチャンバ−内で添加直前混合して添加した。その後エピタキシャル部形態安定化剤(化合物I)(40mg)を添加した。
【0285】
(水洗、後熟部)
続いて、通常の水洗を行なった。この時、温度は35℃に保った。前述のゼラチン45gを添加した後、40℃でpHを6.5に、銀電位をNaCl水溶液を用いて飽和カロメル電極に対して90mVに調整した。エピタキシャル部形態安定化剤兼保存性改良剤(化合物II)(7mg)を添加した後、54℃に昇温し、ハロゲン化銀1モルに対して、チオシアン酸カリウム(1.0×10−4モル)、塩化金酸(1.6×10−5モル)、チオ硫酸ナトリウム(4.0×10−5モル)およびN,N−ジメチルセレノ尿素(3.0×10−6モル)を添加し最適に化学増感を施した。エピタキシャル部形態安定化剤(化合物I)(10.0×10−4モル)添加して化学増感を終了した。
【0286】
本発明の乳剤は平均円相当径0.32μm、円相当径の変動係数15%、平均厚み0.096μm、平均アスペクト比5.0の平板粒子であった。また、全投影面積の70%以上が円相当径0.2μm以上0.6μm以下、厚み0.15μm以下の、最小の長さを有する辺の長さに対する最大の長さを有する辺の長さの比が5以下である主表面が(111)面の六角形平板粒子であり、少なくとも1つの頂点部にエピタキシャル部を有していた。さらに、エピタキシャル部以外の主表面部には転位線を持たず、かつエピタキシャル部に網目状の転位線を有するエピタキシャル平板粒子も全投影面積の70%以上を占めいることが、低温での透過電子顕微鏡観察によって確認された。
【0287】
また、全投影面積の85%がホスト平板粒子から外側に突出した部分の最も高い高さ(depi)とホスト平板粒子の厚み(dhost)の比(depi/dhost)が、depi/dhostの平均値に対して±30%以内の範囲にある前記エピタキシャル平板粒子で占められていた。この値は本文記載の分析電顕を用いた手法にて求めた。本粒子は4.0モル%の沃化銀を含有する最外層が銀換算で18%の粒子である。
エピタキシャル部は銀換算で10%である。また全投影面積の70%以上が平均塩化銀含有率および平均沃化銀含有率に対して30%以内の範囲に入っていた。
【0288】
(乳剤32の調製)
乳剤31よりエピタキシャル形成部を以下の如く変更することにより乳剤32を調製した。
この後、塩化ナトリウム2.0gを含む水溶液を添加した後、AgNO3(8.0g)水溶液とNaCl(2.8g)を含む水溶液を45秒間に渡ってダブルジェット法で添加した。その後、AgNO3(0.37g)水溶液とKI(0.48g)水溶液と平均分子量20000の低分子量ゼラチンの水溶液を特開平10−43570号公報に記載の磁気カップリング誘導型攪拌機を有する別のチャンバ−内で添加直前混合して添加した。更にその後AgNO3(5.9g)水溶液とKBr(4.00g)水溶液とをダブルジェットで添加した。その後エピタキシャル部形態安定化剤(化合物I)(40mg)を添加した。
【0289】
(乳剤33の調製)
乳剤31よりエピタキシャル形成部を以下の如く変更することにより乳剤33を調製した。
塩化ナトリウム2.0gを含む水溶液を添加した後、AgNO3(14.3g)水溶液とNaCl(2.8g)とKI(0.48g)とKBr(4.00g)を含む水溶液を15分間に渡ってダブルジェット法で添加した。その後エピタキシャル部形態安定化剤I(40mg)を添加した。
【0290】
(乳剤34の調製)
乳剤33よりエピタキシャル形成部を以下の如く変更することにより乳剤34を調製した。
塩化ナトリウム2.0gを含む水溶液を添加した後、AgNO3(14.3)水溶液とNaCl(2.8g)とKI(0.48g)とKBr(4.00g)を含む水溶液と平均分子量20000の低分子量ゼラチンの水溶液を特開平10−43570号公報に記載の磁気カップリング誘導型攪拌機を有する別のチャンバ−内で添加直前混合して添加した。その後エピタキシャル部形態安定化剤I(40mg)を添加した。
【0291】
乳剤31から34の特性値を表9にまとめて示した。
【0292】
【表9】
【0293】
下塗り層を設けてある三酢酸セルロースフィルム支持体に前述実施例1の表2に示すような塗布条件で上記の化学増感を施した乳剤を保護層を設けて塗布し、試料No.301〜304を作成し、実施例1と同じ実験をおこなった。
【0294】
【表10】
【0295】
表10の結果から明らかなように、本発明の全投影面積の70%以上が少なくとも一つの頂点部にエピタキシャル部を有し、depi/dhostが平均値の±30%の範囲内にある平板粒子を用いることにより、高感度で保存後の感度変化が小さい感光材料が得られる。更に、エピタキシャル部に少なくとも1本の転位線を有する平板粒子をもちいることにより高感度な感光材料が得られる。
【0296】
(実施例4)
実施例2の試料201より、第4層の乳剤1を乳剤31〜34に置き換えることにより、試料301〜304を作成し、実施例2と同様の実験を行った。結果を表11に示す。
【0297】
【表11】
【0298】
表11から明らかなように、本発明の乳剤を低感度層に用いることにより感度が高くかつ保存性が良好でかつ現像処理依存性が改良された感材を得ることができることが判る。
【0299】
(実施例5)
実施例1の乳剤1〜4より、増感色素種を表6記載の増感色素5,6,9に変更して、乳剤51〜54を調製した。増感色素のモル比率は、増感色素5:増感色素6:増感色素7=26:30:44とし、色素による被覆率は同等にした。
乳剤51〜55を使用して、実施例1の試料101〜104と同様に試料を作成して評価した結果、試料101と同等の結果が得られた。
【0300】
(実施例6)
実施例2の試料201より、表12の如く乳剤を変更して試料601〜604を作成し、試料201〜204と同等の評価を行った結果、表13の結果が得られた。
【0301】
【表12】
【0302】
【表13】
【0303】
表13から明らかなように、本発明の乳剤を低感度層に用いることにより感度が高くかつ保存性が良好でかつ現像処理依存性が改良された感材を得ることができることが判る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、エピタキシャル平板粒子の一態様の断面図
【図2】図2は、エピタキシャル平板粒子の一態様の部分平面図
【図3】図3は、エピタキシャル平板粒子の一態様の断面図
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン化銀写真感光材料及びこれに用いるハロゲン化銀写真乳剤に関するものである。さらに詳しくは、保存性ならびに現像処理依存性に優れたハロゲン化銀写真乳剤及びハロゲン化銀写真感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高感度のハロゲン化銀写真感光材料を得るために平板状ハロゲン化銀粒子(以下、「平板粒子という。」)を用いることは一般に良く知られている。これら平板粒子の増感法としてエピタキシャルを用いた増感法が知られており(例えば、特許文献1)、円相当径がより大きい平板粒子への適用(例えば、特許文献2)や、円相当径がより小さい平板粒子への適用(特許文献3)についても知られている。
【0003】
しかしながら、塩化銀を主構成元素として用いるエピタキシャル増感方法は沃臭化銀を基本構成要素として組み立てられた撮影用感光材料においては基本的に保存時の環境変化、処理時の処理液性能変化に対して性能が不安定である。その理由は塩化銀の溶解度積が臭化銀および沃化銀の溶解度積よりも大きく、容易にハロゲン変換を受けることに起因する。そのためにエピタキシャル平板粒子を用いた感光材料は保存時に感度の低下もしくはかぶりの上昇という問題を引き起こす。さらにはエピタキシャル部位の不安定な溶解性のために現像処理時のKBr量の変動により大きく写真性能が動くという問題点を有している。そのために、一般の撮影用感光感材への使用に対して汎用化できなかった。上記問題に対する解決法のひとつとして、エピタキシャル部の転位に注目して解決する手段が提案された(例えば、特許文献4参照)が、エピタキシャル乳剤の一般の撮影用感光感材への使用を考えたときには解決策としては十分ではなかった。
【0004】
【特許文献1】
特開昭58−108526号公報。
【0005】
【特許文献2】
特開平8−69069号公報。
【0006】
【特許文献3】
特開平10−221798号公報。
【0007】
【特許文献4】
特開2002−169241号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は平板粒子の高感度化と一般の撮影用感光感材への使用を考えても十分な程度まで保存時の環境変化、処理時の処理液性能変化に対する性能の安定性を付与する問題の解決を同時に満足させることができる手段を提供しようとするものである。
【0009】
すなわち、本発明の目的は、高感度で保存性が良く、かつ処理依存性の小さなハロゲン化銀写真乳剤及び写真感光材料を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
(1) 分散媒とハロゲン化銀粒子とを含有するハロゲン化銀乳剤において、該ハロゲン化銀粒子の全投影面積の70%以上がホスト平板粒子とエピタキシャル部からなり下記(i)、(ii)および(iii)要件を満たすエピタキシャル平板粒子で占められていることを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
(i)(111)面を主表面とする沃塩臭化銀平板粒子
(ii)ホスト粒子の少なくとも一つの頂点部にエピタキシャル部を有する
(iii) 粒子内の少なくとも1つのエピタキシャル部が、ホスト平板粒子から外側に突出した部分において、ホスト平板粒子側の1/3の体積部分をa部分、残りをb部分としたとき、aの部分の平均塩化銀含有率(mol%)(Cla)とbの部分の平均塩化銀含有率(mol%)(Clb)の比(Cla/Clb)が1より小さいという条件を満たす。
【0011】
(2) 前記Cla、Clbが共に50mol%以下であることを特徴とする(1)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0012】
(3) 全粒子の円相当径の変動係数が30%以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0013】
(4) エピタキシャル部に少なくとも1本の転位線を有することを特徴とする(1)ないし(3)のいずれか一項に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0014】
(5) 分散媒とハロゲン化銀粒子とを含有するハロゲン化銀乳剤において、該ハロゲン化銀粒子の全投影面積の70%以上がホスト平板粒子とエピタキシャル部からなり下記(i)、(ii)および(iii’)要件を満たすエピタキシャル平板粒子で占められていることを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
(i)(111)面を主表面とする沃塩臭化銀平板粒子
(ii)ホスト粒子の少なくとも一つの頂点部にエピタキシャル部を有する
(iii’)前記エピタキシャル部で、ホスト平板粒子からホスト平板粒子の主表面に垂直な方向に突出した部分の最も高い高さ(depi)とホスト平板粒子の厚み(dhost)の比(depi/dhost)が、depi/dhostの平均値に対して±30%以内の範囲にある。
【0015】
(6) 全粒子の円相当径の変動係数が30%以下であることを特徴とする(5)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0016】
(7) エピタキシャル部に少なくとも1本の転位線を有することを特徴とする(5)または(6)に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
【0017】
(8) (1)ないし(7)のいずれか一項に記載のハロゲン化銀写真乳剤を含有するハロゲン化銀写真感光材料。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に本発明のハロゲン化銀写真乳剤について説明する。
本発明で平板粒子とは2つの対向する平行な(111)主表面を有するハロゲン化銀粒子を言う。本発明において用いる平板粒子は1枚の双晶面あるいは2枚以上の平行な双晶面を有する。双晶面とは(111)面の両側ですべての格子点のイオンが鏡像関係にある場合にこの(111)面のことをいう。
【0019】
この平板粒子は、粒子を主表面に対して垂直方向から見た時、三角形状、六角形状もしくはこれらが丸みを帯びた円形状をしており、それぞれ互いに平行な外表面を有している。
【0020】
本発明のハロゲン化銀写真乳剤は、全投影面積の70%以上がホスト平板粒子とエピタキシャル部からなり、(i)、(ii)及び(iii)要件を満たすエピタキシャル平板粒子で占められていることを特徴の一つとする。
【0021】
本発明のエピタキシャル平板粒子を構成するホスト平板粒子は全粒子の投影面積の70%以上が最小の長さを有する辺の長さに対する、最大の長さを有する辺の長さの比が2ないし1である六角形の平板粒子であることが好ましい。より好ましくは全粒子の投影面積の90%以上が最小の長さを有する辺の長さに対する、最大の長さを有する辺の長さの比が2ないし1である六角形の平板粒子である。さらに好ましくは全投影面積の90%以上が最小の長さを有する辺の長さに対する、最大の長さを有する辺の長さの比が1.5ないし1である平板粒子である。平板粒子の主表面の形が丸みを帯びた三角形状や六角形状である場合、主表面の辺の長さは各辺を延長することにより形成される仮想の三角形や六角形の辺の長さとする。上記六角形以外の平板粒子が混入すると本発明のエピタキシャル平板粒子の調製が困難となり保存性、処理依存性の問題が解決できにくい。
【0022】
本発明のエピタキシャル平板粒子を構成するホスト平板粒子のサイズは単分散性であることが好ましい。本発明において用いる全ハロゲン化銀粒子の投影面積の円相当径の変動係数は30%以下であることが好ましく、特に好ましくは25%以下、更に好ましくは20%以下である。ここで円相当径の変動係数とは個々のハロゲン化銀粒子の円相当径の分布の標準偏差を平均円相当径で割った値である。単分散性が悪化するとエピタキシャル部形成が粒子間で不均一となるために本発明のエピタキシャル平板粒子の調製が困難となる。
【0023】
ホスト平板粒子の円相当径は、例えばレプリカ法による透過電子顕微鏡写真を撮影して個々の粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径(円相当径)を求める。ホスト平板粒子の厚みはエピタキシャル部形成のために単純にはレプリカの影(シャドー)の長さからは算出できない。しかしながらエピタキシャル部形成する前のレプリカの影の長さを測定することにより算出できる。もしくはエピタキシャル部形成後でも平板粒子を塗布した試料を切断しその断面の電子顕微鏡写真を撮影して容易にもとめることができる。
【0024】
本発明において用いるホスト平板粒子は全投影面積の70%以上が円相当径0.2μm以上1.5μm以下であることが好ましい。より好ましくは全投影面積の70%以上が円相当径0.3μm以上1.0μm以下である。一般に、円相当径が小さく厚みが薄いほど粒子個数が増加し、1粒子当たりのエピタキシャル部の数の粒子間分布が通常大きくなるところ、本発明の乳剤は、このような円相当径が小さく、厚みが薄い場合においても1粒子当たりのエピタキシャル部の数の粒子間分布が小さい乳剤である。
【0025】
本発明において用いるエピタキシャル平板粒子のハロゲン化銀組成は沃塩臭化銀である。基本的にホスト平板粒子が沃臭化銀もしくは沃塩臭化銀でありエピタキシャル部が塩化銀もしくは塩臭化銀もしくは沃塩臭化銀の組み合わせからなる。塩化銀含有率は1モル%以上10モル%以下が好ましい。より好ましくは塩化銀含有率は2モル%以上6モル%以下である。沃化銀含有率は好ましくは0.5モル%以上である。より好ましくは、沃化銀含有率は0.75モル%以上10モル%以下である。
【0026】
本発明の乳剤は、粒子間の沃化銀含有率分布の相対標準偏差が20%以下が好ましい。より好ましくは10%以下である。粒子間の沃化銀含有率の相対標準偏差はEPMA法(Electron−Probe Micro Analyzer法)を用いることにより容易に求めることができる。この方法は、乳剤粒子を互いに接触しないようによく分散したサンプルを作成し電子ビームを照射する。電子線励起によるX線分析により、極微小な部分の元素分析が行なえる。この方法を用いて、各粒子から放射される銀および沃素の特性X線強度を求めることにより、個々の粒子のハロゲン組成が決定できる。少なくとも100個の粒子についてEPMA法によりハロゲン組成を確認すれば、その乳剤が本発明に係る乳剤であるか否かは判断できる。沃化銀含有率の相対標準偏差とは、少なくとも100個の粒子についての沃化銀含有率の分布の標準偏差を平均沃化銀含有率で割り、100をかけた値である。
【0027】
本発明の乳剤は、粒子間の塩化銀含有率分布の相対標準偏差が20%以下であることが好ましい。より好ましくは10%以下である。測定方法は前記方法と同様である。
【0028】
本発明のハロゲン化銀粒子はホスト平板粒子とエピタキシャル部からなり、エピタキシャル部はホスト平板粒子の少なくとも一つの頂点部から外側に突出して存在する。ここで頂点部とは平板粒子を主表面に対して垂直方向から見た時に1つの頂点を中心とし、この頂点と、この頂点を構成する2つの辺とが形成する扇形であって、これら2辺の内、短い方の辺の長さの1/3を半径とする扇形内の部分を意味する。
【0029】
ホスト平板粒子の主表面の形が丸みを帯びた三角形状や六角形状である場合、主表面の頂点及び辺は、各辺を延長することにより形成される仮想の三角形や六角形のそれぞれ頂点及び辺とする。通常は本発明のエピタキシャル平板粒子が属する以外に平板粒子の主表面もしくは頂点部以外の辺上にエピタキシャル部が形成される。本発明のハロゲン化銀乳剤は、本発明のエピタキシャル平板粒子が、ハロゲン化銀の粒子の全投影面積の70%を占めることを特徴とする。より好ましくは90%以上を占める。
【0030】
本発明のエピタキシャル平板粒子の必要条件を満たしているかは、平板粒子のレプリカによる電子顕微鏡写真から任意に100粒子以上を抽出し、一つ以上の頂点部にエピタキシャル部を有する粒子、頂点部を構成する辺以外の辺上もしくは頂点部以外の主表面上のみにエピタキシャル部を有する粒子ならびにエピタキシャル部を有しない粒子の3つの分類にクラス分けすることにより判断できる。
【0031】
図1に、本発明の一態様であるエピタキシャル平板粒子の、エピタキシャル部を含み、主平面に垂直な方向に切った断面図を示す。図2に、本発明の一態様であるエピタキシャル平板粒子の、部分平面図を示す。図1に示すように、本発明のエピタキシャル平板粒子のエピタキシャル部は、a1部分及びa2部分から構成されるa部分と、b1部分及びb2部分から構成されるb部分と、非a非b部分とから形成される。上記a部分及びb部分は、次のように規定される。すなわち、ホスト平板粒子の主平面およびそれを延長した面より外側に突出した少なくとも一つのエピタキシャル部において、ホスト平板粒子側の1/3の体積部分をa部分、残りをb部分とする。本発明のエピタキシャル平板粒子は、aの部分の平均塩化銀含有率(mol%)(Cla)とbの部分の平均塩化銀含有率(mol%)(Clb)の比(Cla/Clb)が1より小さいことが特徴の一つである。Cla/Clbは0.1以上0.9以下が好ましい範囲である。なお、a部分及びb部分を規定する境界面は、主平面に対して垂直であり、主平面の重心と頂点を結ぶ線に直交する面とする(図1及び2の1点破線で示した。)
【0032】
上記Cla、Clbに関しては50モル%以下であることが好ましく、30モル%以下が更に好ましい。上記Cla、Clbの下限値に特に制限はないが、1モル%以上であることが好ましい。
【0033】
エピタキシャル部のハロゲン組成は、分析電顕により調べられる。本発明では以下の様な方法で平板粒子を主平面に垂直に輪切りにし、断面方向から電子線を照射して測定を行う。すなわち、粒子形成途中でサンプリングした乳剤や粒子形成を終了した最終乳剤あるいは感光材料から遠心分離することにより取り出した粒子をトリアセチルセルロース支持体上に塗布して、さらに樹脂を用いて粒子を包埋する。この試料からウルトラミクロトームで厚さ40nmの切片を切削して支持膜を張った銅メッシュ上に載せる。
【0034】
この粒子の所定の部分を、分析電顕を用いてスポット径(直径)を2nm以下に絞った点分析を行って塩化銀含有率を測定する。塩化銀含有率は、検量線として含有率既知のハロゲン化銀粒子を同様に処理してAg強度とCl強度の比率をあらかじめ求めておくことにより算出できる。分析電顕の分析線源としては熱電子を用いたものより電子密度の高いフィールドエミッション型の電子銃が適しており、スポット径を1nm以下に絞ることにより、微小部分のハロゲン組成を容易に分析できる。特定の部位の平均塩化銀含有率を求めるには、走査範囲を走査することや、走査範囲を細分化し、細分化された範囲を走査し測定値を平均することで求めることができる。
【0035】
本発明では、ハロゲン化銀粒子を上記方法で40nmごとに切片を切り出し、その各切片についてスポット径2nmで、2nm間隔で走査し、エピタキシャル部の3次元塩化銀含有率分布を求める。平均塩化銀含有率は、得られた各測定値を、各部分において平均することによって求める。
【0036】
エピタキシャル部は塩化銀または塩臭化銀または沃塩臭化銀である。好ましくはホスト平板粒子よりも塩化銀含有率は1モル%以上高い。より好ましくはホスト平板粒子よりも塩化銀含有率は10モル%以上高い。但し、エピタキシャル部の塩化銀含有率は70モル%以下が好ましい。エピタキシャル部の臭化銀含有率は30モル%以上が好ましく、50モル%以上が特に好ましい。エピタキシャル部の沃化銀含有率は1モル%以上20モル%以下が好ましい。エピタキシャル部の銀量はホスト平板粒子の銀量の1モル%以上16モル%以下であることが好ましく、2モル%以上11モル%以下が更に好ましい。
【0037】
本発明の乳剤は全投影面積の70%以上がエピタキシャル部に少なくとも1本の転位線を有する平板粒子からなることが好ましい。好ましくは全投影面積の80%以上がエピタキシャル部に少なくとも1本の転位線を有する平板粒子からなる。本発明の乳剤はより好ましくは全投影面積の70%以上がエピタキシャル部に網目状の転位線を有する平板粒子からなる。最も好ましくは全投影面積の80%以上がエピタキシャル部に網目状の転位線を有する平板粒子からなる。ここで網目状の転位線とは、本数として数えられないような複数の転位線が網の目のように交錯した転位線である。二つ以上の頂点部にエピタキシャル部を有する平板粒子において、必ずしも各エピタキシャル部に転位線が存在する必要はない。少なくとも一つの頂点部に接合したエピタキシャル部に1本の転位線、好ましくは網目状の転位線を含んでいれば本発明のエピタキシャル平板粒子に相当する。好ましくは全投影面積の70%以上の粒子が、網目状の転位線を含むエピタキシャル部を有する。
【0038】
本発明のホスト平板粒子はエピタキシャル部以外には転位線が存在しないことが好ましい。ホスト粒子の転位線はエピタキシャル部の優先的な沈着位を提供し本発明のエピタキシャル平板粒子の形成を阻害する。好ましくは全投影面積の70%以上が転位線がゼロである。この場合、エピタキシャル部を除く。最も好ましくは全投影面積の90%以上が転位線がゼロである。平板粒子の転位線は、例えばJ.F.Hamilton,Phot.Sci.Eng.,11、57、(1967)やT.Shiozawa,J.Soc.Phot.Sci.Japan,35、213、(1972)に記載の、低温での透過型電子顕微鏡を用いた直接的な方法により観察することができる。すなわち乳剤から粒子に転位線が発生するほどの圧力をかけないよう注意して取り出したハロゲン化銀粒子を電子顕微鏡観察用のメッシュにのせ、電子線による損傷(プリントアウト等)を防ぐように試料を冷却した状態で透過法により観察を行う。この時粒子の厚みが厚い程、電子線が透過しにくくなるので高圧型(0.25μmの厚さの粒子に対して加速電圧200kV以上)の電子顕微鏡を用いた方がより鮮明に観察することができる。このような方法により得られた粒子の写真より、主表面に対して垂直方向から見た場合の各粒子についての転位線の位置および数を求めることができる。
【0039】
図3に、本発明の一態様であるエピタキシャル平板粒子の主平面に垂直な方向に切った断面図であって、エピタキシャル部のうち、主平面またはその延長面から最も遠い点を含む断面図を示す。図3に示すように、エピタキシャルで、ホスト平板粒子からホスト平板粒子の主表面に垂直な方向に突出した部分の最も高い高さ(depi)とホスト平板粒子の厚み(dhost)の比(depi/dhost)の変動係数が30%以下であることを別の特徴とする。1粒子で2つ以上エピタキシャル部が存在するときは、各エピタキシャル部のdepi/dhostの平均値をその粒子のdepi/dhostとする。なお、図3に示すエピタキシャル部において、ホスト平板粒子の主表面に垂直な方向に突出した部分が2つ(上側及び下側)あるが、上側の突出した部分の最も高い高さと下側の突出した部分の最も高い高さが互いに異なる場合には、高いほうをdepiとする。任意の100個以上の粒子で粒子のdepi/dhostを求め、その平均値と標準偏差より変動係数(=標準偏差/平均値)が求められる。depiとdhostは平板粒子を塗布した試料を切断しその断面の電子顕微鏡写真を撮影して容易にもとめることができる。変動係数は、25%以下が好ましく、更に20%以下が好ましい。
【0040】
以下に上述した本発明のエピタキシャル平板粒子の具体的な調製法についてホスト平板粒子の調製とエピタキシャル部の調製の2つに分けて詳しく説明する。まず本発明のエピタキシャル平板粒子の調製に必要なホスト平板粒子について詳述する。本発明のホスト平板粒子の粒子内沃化銀の分布については2重構造以上の多重構造粒子であることが好ましい。ここで沃化銀の分布に関して構造をもっているとは粒子の調整処方の処方値において、各構造間で沃化銀含有率が0.5mol%以上異なることを意味する。本発明において、ホスト平板粒子の「最外層」とは、沃化銀分布についての多重構造の最も外側にある層状の相をいう。
【0041】
この沃化銀の分布についての構造は、基本的には粒子の調製工程の処方値から計算により求めることができる。各構造間での界面では沃化銀含有率の変化は急激に変化する場合となだらかに変化する場合があり得る。これらの確認のためには、分析上の測定精度を考慮する必要があるが、前述した、EPMA法が有効である。同手法により平板粒子を主表面に垂直方向から見た場合の粒子内沃化銀分布が解析できるが、同試料を固め、ミクロトームで超薄切片にカットした試料を用いることにより平板粒子の断面の粒子内沃化銀分布も解析することができる。
【0042】
本発明においてホスト平板粒子は最外層の沃化銀含有率が3モル%以上であることが好ましい。最外層は全銀量に対して20%以下であることが好ましく、より好ましくは2%以上15%以下である。ここで最外層の比率とはホスト平板粒子調製工程における最終粒子を得るのに使用した銀量に対する最外層の調製に用いた銀量の比率を意味する。沃化銀含有率とは最外層の調製に用いた銀量に対する最外層の調製に用いた沃化銀量のモル比率の%を意味し、その分布については均一でも不均一でも良い。沃化銀含有率の分布が不均一な場合、沃化銀量は、最外層における平均値である。より好ましくは最外層の比率は全銀量に対して、2%以上15%以下であって、その沃化銀含有率が3モル%以上20モル%以下である。この条件を逸脱するとエピタキシャル部が粒子間で不均一となり本発明の効果は得られにくい。
【0043】
ホスト平板粒子の調製は基本的には核形成、熟成ならびに成長の3工程の組み合わせよりなる。
核形成の工程においては米国特許第4,713,320号および同第4,942,120号の各明細書に記載のメチオニン含有率の少ないゼラチンを用いること、米国特許第4,914,014号明細書に記載の高pBrで核形成を行うこと、特開平2−222940号公報に記載の短時間で核形成を行うことは本発明において用いる粒子の核形成工程においてきわめて有効である。本発明において特に好ましくは20℃から40℃の温度で低分子量の酸化処理ゼラチンの存在下で攪拌下、硝酸銀水溶液とハロゲン水溶液と低分子量の酸化処理ゼラチンを一分以内に添加することである。この時、系のpBrは2以上が好ましくpHは7以下が好ましい。硝酸銀水溶液の濃度は0.6モル/リットル以下の濃度が好ましい。以上の核形成法を用いることにより本発明のエピタキシャル平板粒子の形成が容易になる。
【0044】
熟成工程においては米国特許第5,254,453号明細書に記載の低濃度のベースの存在下でおこなうこと、米国特許第5,013,641号明細書に記載の高いpHでおこなうことは、本発明の平板粒子乳剤の熟成工程において用いることが可能である。米国特許第5,147,771号,同第5,147,772号、同第5,147,773号、同第5,171,659号、同第5,210,013号ならびに同第5,252,453号の各明細書に記載のポリアルキレンオキサイド化合物を熟成工程もしくは後の成長工程で添加することが可能である。本発明においては熟成工程は好ましくは50℃以上80℃以下の温度で行われる。核形成直後または熟成途中にpBrは2以下に下げることが好ましい。また核形成直後から熟成終了時までに追加のゼラチンが好ましくは添加される。特に好ましいゼラチンはアミノ基が95%以上コハク化またはトリメリット化に修飾されたものである。
【0045】
本発明の成長工程においては米国特許第4,672,027号および同第4,693,964号の各明細書に記載の硝酸銀水溶液と臭化物を含むハロゲン水溶液と沃化銀微粒子乳剤を同時に添加する方法を用いてもよい。沃化銀微粒子乳剤は実質的に沃化銀であれば良く、混晶となり得る限りにおいて臭化銀および/または塩化銀を含有していても良い。好ましくは100%沃化銀である。沃化銀はその結晶構造においてβ体、γ体ならびに米国特許第4,672,026号明細書に記載されているようにα体もしくはα体類似構造があり得る。本発明においては、その結晶構造の制限は特にはないが、β体とγ体の混合物、さらに好ましくはβ体が用いられる。沃化銀微粒子乳剤は米国特許第5,004,679号明細書等に記載の添加する直前に形成したものでも良いし、通常の水洗工程を経たものでもいずれでも良い。沃化銀微粒子乳剤は、米国特許第4,672,026号明細書等に記載の方法で容易に形成しうる。粒子形成時のpI値を一定にして粒子形成を行う、銀塩水溶液と沃化物塩水溶液のダブルジェット添加法が好ましい。ここでpIは系のI−イオン濃度の逆数の対数である。温度、pI、pH、ゼラチン等の保護コロイド剤の種類、濃度、ハロゲン化銀溶剤の有無、種類、濃度等に、特に制限はないが、粒子のサイズは0.1μm以下、より好ましくは0.07μm以下が本発明に都合が良い。微粒子であるために粒子形状は完全には特定できないが粒子サイズの分布の変動係数は25%以下が好ましい。特に20%以下の場合には、本発明の効果が著しい。ここで沃化銀微粒子乳剤のサイズおよびサイズ分布は、沃化銀微粒子を電子顕微鏡観察用のメッシュにのせ、カーボンレプリカ法ではなく直接、透過法によって観察して求める。これは粒子サイズが小さいために、カーボンレプリカ法による観察では測定誤差が大きくなるためである。粒子サイズは観察された粒子と等しい投影面積を有する円の直径と定義する。粒子サイズの分布についても、この等しい投影面積円直径を用いて求める。本発明において最も有効な沃化銀微粒子は粒子サイズが0.06μm以下0.02μm以上であり、粒子サイズ分布の変動係数が18%以下である。
【0046】
上述の粒子形成後、好ましくは米国特許第2,614,929号明細書等に記載の通常の水洗およびpH、pI、ゼラチン等の保護コロイド剤の濃度調整ならびに含有沃化銀の濃度調整が行われる。pHは5以上7以下が好ましい。pI値は沃化銀の溶解度が最低になるpI値もしくはその値よりも高いpI値に設定することが好ましい。保護コロイド剤としては、平均分子量10万程度の通常のゼラチンが好ましく用いられる。平均分子量2万以下の低分子量ゼラチンも好ましく用いられる。また上記の分子量の異なるゼラチンを混合して用いると都合が良い場合がある。乳剤1kgあたりのゼラチン量は好ましくは10g以上100g以下である。より好ましくは20g以上80g以下である。乳剤1kgあたりの銀原子換算の銀量は好ましくは10g以上100g以下である。より好ましくは20g以上80g以下である。沃化銀微粒子乳剤は、通常あらかじめ溶解して添加するが、添加時には系の撹拌効率を十分に高める必要がある。好ましくは撹拌回転数は、通常よりも高めに設定される。撹拌時の泡の発生を防じるために消泡剤の添加は効果的である。具体的には、米国特許第5,275,929号明細書の実施例等に記述されている消泡剤が用いられる。
【0047】
本発明の成長工程において好ましく用いられるのは特開平2−188741号公報に記載の方法である。添加の直前に調製した臭化銀または沃臭化銀または沃塩臭化銀の超微粒子乳剤を平板粒子の成長時に連続添加し該超微粒子乳剤を溶解させて平板粒子を成長させる。超微粒子乳剤を調製するための外部混合機は強力な攪拌能力を有しており、該混合機に硝酸銀水溶液とハロゲン水溶液とゼラチンが添加される。ゼラチンは硝酸銀水溶液および/またはハロゲン水溶液と事前もしくは直前に混合して添加することができるしゼラチン水溶液単独で添加することもできる。ゼラチンは分子量が通常のものより小さいものが好ましく10000から50000が特に好ましい。アミノ基がフタル化またはコハク化またはトリメリット化に90%以上修飾されたゼラチンおよび/またはメチオニン含有量を低下させた酸化処理ゼラチンは特に好ましく用いられる。この方法を用いることにより本発明のエピタキシャル平板粒子の調製は容易になる。
【0048】
本発明においてはホスト平板粒子の対向する(111)主表面を連結する側面は全側面の75%以下が(111)面から構成されていることが好ましい。
【0049】
ここで全側面の75%以下が(111)面から構成されるとは、全側面の25%よりも高い比率で(111)面以外の結晶学的な面が存在するということである。通常その面は(100)面であるとして理解しうるが、それ以外の面、すなわち(110)面や、より高指数の面である場合も含みうる。本発明においては全側面の70%以下が(111)面から構成されていると効果が顕著である。
【0050】
全側面の75%以下が(111)面から構成されているか否かは、その平板粒子のシャドーをかけたカーボンレプリカ法による電子顕微鏡写真から容易に判断しうる。通常側面の75%以上が(111)面から構成されている場合、6角形平板粒子においては、(111)主表面に直接連結する6つの側面はたがい違いに(111)主表面に対して鋭角と、鈍角で接続する。一方、全側面の75%以下が(111)面から構成されている場合、6角形平板粒子においては、(111)主表面に直接連結する6つの側面は(111)主表面に対してすべて鈍角で接続する。シャドーイングを50℃以下の角度でかけることにより主表面に対する側面の鈍角と鋭角の判断ができる。好ましくは30°以下10°以上の角度でシャドーイングすることにより鈍角と鋭角の判断は容易となる。
【0051】
さらに、(111)面と(100)面の比率を求める方法として増感色素の吸着を用いた方法が有効である。日本化学会誌、1984、6巻、ページ942〜947に記載されている手法を用いて(111)面と(100)面の比率を定量的に求めることができる。該比率と前述した平板粒子の円相当直径と厚みを用いて全側面における(111)面の比率を計算して求めることができる。この場合、平板粒子は該円相当直径と厚みを用いて円柱であると仮定する。この仮定によって総表面積に対する側面の比率を求めることができる。前述の増感色素の吸着を用いて求めた(100)面の比率を上記の側面の比率で割った値に100をかけた値が全側面における(100)面の比率である。100からその値をひけば全側面における(111)面の比率が求まることになる。本発明においては全側面における(111)面の比率が65%以下であると、さらに好ましい。
【0052】
本発明においてホスト平板粒子の全側面の75%以下を(111)面にする手法について説明する。最も一般的には、ホスト平板粒子乳剤の側面の(111)面の比率は平板粒子乳剤の調製時のpBrにて決定しうる。好ましくは最外層形成に要する銀量の30%以上の添加を側面の(111)面の比率が減少、すなわち側面の(100)面の比率が増加するようなpBrに設定する。より好ましくは最外層形成に要する銀量の50%以上の添加を側面の(111)面の比率が減少するようなpBrに設定する。
【0053】
別の方法として全銀量が添加された後に、側面の(100)面の比率が増加するようなpBrに設定し、熟成をすることによって、その比率を増加させることも可能である。
【0054】
側面の(100)面の比率が増加するようなpBrとは、系の温度、pH、ゼラチン等の保護コロイド剤の種類、濃度、ハロゲン化銀溶剤の有無、種類、濃度等によりその値は広範に変化しうる。通常は、好ましくはpBr2.0以上5以下である。さらに好ましくはpBr2.5以上4.5以下である。しかしながら、上述したようにこのpBrの値は例えばハロゲン化銀溶剤等の存在によって容易に変化しうる。
【0055】
本発明で用いることができるハロゲン化銀溶剤としては、米国特許第3,271,157号、同第3,531,286号、同第3,574,628号、特開昭54−1019号、同54−158917号等の明細書及び公報に記載された(a)有機チオエーテル類、特開昭53−82408号、同55−77737号、同55−2982号等の各公報に記載された(b)チオ尿素誘導体、特開昭53−144319号公報に記載された(c)酸素または硫黄原子と窒素原子とにはさまれたチオカルボニル基を有するハロゲン化銀溶剤、特開昭54−100717号公報に記載された(d)イミダゾール類、(e)亜硫酸塩、(f)アンモニア、(g)チオシアネート等があげられる。
【0056】
特に好ましい溶剤としては、チオシアネート、アンモニアおよびテトラメチルチオ尿素がある。また用いられる溶剤の量は種類によっても異なるが、例えばチオシアネートの場合、好ましい量はハロゲン化銀1モル当り1×10−4モル以上1×10−2モル以下である。
【0057】
平板粒子乳剤の側面の面指数を変化させる方法として欧州特許出願公開第515894A1号明細書等を参考にすることができる。また米国特許第5,252,453号明細書等に記載のポリアルキレンオキサイド化合物を用いることもできる。有効な方法として米国特許第4,680,254号、同第4,680,255号、同第4,680,256号ならびに同第4,684,607号の各明細書等に記載の面指数改質剤を用いることができる。通常の写真用分光増感色素も上記と同様な面指数の改質剤として用いることができる。
【0058】
本発明において、ホスト平板粒子は転位線を持たないことが好ましい。以上に詳述した核形成、熟成、成長工程を組み合わせて用いることにより転位線を消失させることができる。
【0059】
本発明のエピタキシャル平板粒子の調製に必要なエピタキシャル部形成について詳述する。エピタキシャル部形成はホスト平板粒子の形成後すぐにおこなっても良いしホスト平板粒子の形成後、通常の脱塩を行った後に行っても良い。エピタキシャル部形成前に、特開平2002−169241公報記載の高分子量ゼラチンを用いてもよい。外高分子量ゼラチンは、エピタキシャル部形成を行う時に好ましくは全ゼラチン量の10質量%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは50%以上含有される。塗布前までにこのゼラチンを添加しても有効であるが効果は小さくなる。
【0060】
本発明のエピタキシャル部の部位指示剤には増感色素を利用する。用いる色素の量や種類を選択することによって、エピタキシャルの沈着位置をコントロールすることができる。色素は、飽和被覆量の50%から95%を添加することが好ましい。用いられる色素には、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素およびヘミオキソノール色素が包含される。特に有用な色素は、シアニン色素に属する色素である。これらの色素類には、塩基性複素環核としてシアニン色素類に通常利用される核のいずれをも適用できる。すなわち、例えば、ピロリン核、オキサゾリン核、チオゾリン核、ピロール核、オキサゾール核、チアゾール核、セレナゾール核、イミダゾール核、テトラゾール核、ピリジン核;これらの核に脂環式炭化水素環が融合した核;及びこれらの核に芳香族炭化水素環が融合した核、即ち、例えば、インドレニン核、ベンゾインドレニン核、インドール核、ベンゾオキサドール核、ナフトオキサゾール核、ベンゾチアゾール核、ナフトチアゾール核、ベンゾセレナゾール核、ベンゾイミダゾール核、キノリン核が適用できる。これらの核は炭素原子上に置換基を有していてもよい。
【0061】
これらの増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せは特に、強色増感の目的でしばしば用いられる。その代表例は米国特許第2,688,545号、同第2,977,229号、同第3,397,060号、同第3,522,052号、同第3,527,641号、同第3,617,293号、同第3,628,964号、同第3,666,480号、同第3,672,898号、同第3,679,428号、同第3,703,377号、同第3,769,301号、同第3,814,609号、同第3,837,862号、同第4,026,707号、英国特許第1,344,281号、同第1,507,803号、特公昭43−4936号、同53−12375号、特開昭52−110618号、同52−109925号の各明細書及び公報に記載されている。
【0062】
増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質を同時または別個に添加してもよい。
また、特開2000−250157号公報に記載のビスピリジ二ウム塩を同時また別個に添加してもよい。
【0063】
増感色素の吸着時にホスト平板粒子の最外層の極表面層の沃化銀含有率を最外層よりもさらに高くしておいてもよい。この場合増感色素の添加に先立って沃素イオンを添加することが行われる。前述した沃化銀微粒子乳剤を添加してホスト平板粒子の表面の沃化銀含有率を高くすることが好ましく用いられる。これにより粒子間の沃化銀含有率の分布が均一となり増感色素の吸着も均一になる。これら沃素イオンもしくは沃化銀の添加量はホスト平板粒子の銀量で1モルに対して1×10−4から1×10−2モルの範囲が好ましく1×10−3から5×10−3モルの範囲が特に好ましい。
【0064】
エピタキシャル部の形成法はハロゲンイオンを含む溶液とAgNO3を含む溶液の同時添加でも別々の添加でも良く、ホスト平板粒子よりも粒径の小さな塩化銀微粒子、臭化銀微粒子、沃化銀微粒子の添加、あるいはそれらの混晶粒子の添加等と適宜組み合わせて添加して形成しても良い。微粒子として、本発明の成長工程での説明にある添加直前に調製された塩化銀微粒子、臭化銀微粒子、沃化銀微粒子、あるいはそれらの混晶粒子が好ましく用いられる。AgNO3溶液を添加する場合は、添加時間は15秒以上30分以内であることが好ましく、30秒以上20分以内が特に好ましい。本発明のエピタキシャル平板粒子を形成するためには添加する硝酸銀溶液の濃度は2.5モル/リットル以下の濃度が好ましい。この時系中の攪拌は効率良く行う必要があり、系中の粘度は低い方が好ましい。
【0065】
エピタキシャル部の銀量はホスト平板粒子の銀量の1モル%以上16モル%以下であることが好ましく、2モル%以上11モル%以下が更に好ましい。少なすぎるとエピタキシャル平板粒子の調製ができないし、多すぎても不安定になる。
【0066】
エピタキシャル部の形成時のpBrは2.5以上が好ましく、特に3.0以上が好ましい。温度は35℃以上45℃以下で行うことが好ましい。
【0067】
本発明のエピタキシャル平板粒子は6シアノ金属錯体がドープされているのが好ましい。ドープされる部位は、ホスト部、エピタキシャル部のどちらでも、また両方でもかまわない。
【0068】
6シアノ金属錯体のうち、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム又はクロムを含有するものが好ましい。金属錯体の添加量は、ハロゲン化銀(ホスト部とエピタキシャル部を合わせた全銀量)1モル当たり10−9乃至10−2モルの範囲であることが好ましく、ハロゲン化銀1モル当たり10−8乃至10−4モルの範囲であることがさらに好ましい。金属錯体は、水または有機溶媒に溶かして添加することができる。有機溶媒は水と混和性を有することが好ましい。有機溶媒の例には、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、及びアミド類が含まれる。
【0069】
金属錯体としては、下記式(I)で表される6シアノ金属錯体が特に好ましい。6シアノ金属錯体を使用した乳剤を用いることにより、高感度の感光材料が得られ、しかも感光材料を長期間保存したときでも被りの発生を抑制するという効果が得られる。
(I)[M(CN)6]n−
(式中、Mは鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウムまたはクロムであり、nは3または4である。)
【0070】
6シアノ金属錯体の具体例を以下に示す。
(I−1) [Fe(CN)6]4−
(I−2) [Fe(CN)6]3−
(I−3) [Ru(CN)6]4−
(I−4) [Os(CN)6]4−
(I−5) [Co(CN)6]3−
(I−6) [Rh(CN)6]3−
(I−7) [Ir(CN)6]3−
(I−8) [Cr(CN)6]4−
【0071】
6シアノ錯体の対カチオンは、水と混和しやすく、ハロゲン化銀乳剤の沈殿操作に適合しているイオンを用いることが好ましい。対イオンの例には、アルカリ金属イオン(例、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、リチウムイオン)、アンモニウムイオンおよびアルキルアンモニウムイオンが含まれる。
【0072】
本発明の乳剤はエピタキシャル部形成後に前述した増感色素および/または後述するかぶり防止剤および/または安定剤を添加することが好ましい。本発明においてはこの後以降にpBrを下げることが好ましい。本発明外のエピタキシャル乳剤はこのpBrの低下によりエピタキシャルの破壊がおこり写真性能が低感度のものとなる。一方、本発明のエピタキシャル平板粒子においてはこのpBrの低下が可能となり、保存性、処理性において顕著な効果を発揮できるようになる。好ましくは40℃でのpBrを3.5以下に下げる。より好ましくは本発明の乳剤は40℃でのpBrが3.5以下であり、特に好ましくは3.0以下である。pBrの低下はKBr、NaBr等の臭素イオンを添加することにより基本的に行われる。
【0073】
エピタキシャル部形成後、通常は水洗を行う。水洗の温度は目的に応じて選べるが、5℃〜50℃の範囲で選ぶことが好ましい。水洗時のpHも目的に応じて選べるが2〜10の間で選ぶことが好ましい。さらに好ましくは3〜8の範囲である。水洗時のpAgも目的に応じて選べるが5〜10の間で選ぶことが好ましい。
水洗の方法としてヌードル水洗法、半透膜を用いた透析法、遠心分離法、凝析沈降法、イオン交換法のなかから選んで用いることができる。凝析沈降法の場合には硫酸塩を用いる方法、有機溶剤を用いる方法、水溶性ポリマーを用いる方法、ゼラチン誘導体を用いる方法などから選ぶことができる。
【0074】
本発明の乳剤はエピタキシャル部形成後に化学増感を行うことが好ましい。本発明で好ましく実施しうる化学増感の一つはカルコゲン増感と貴金属増感の単独又は組合せであり、ジェームス(T.H.James)著、ザ・フォトグラフィック・プロセス、第4版、マクミラン社刊、1977年、(T.H.James、The Theory of the Photographic Process,4th ed,Macmillan,1977)67〜76頁に記載されるように活性ゼラチンを用いて行うことができるし、またリサーチ・ディスクロージャー、120巻、1974年4月、12008;リサーチ・ディスクロージャー、34巻、1975年6月、13452、米国特許第2,642,361号、同第3,297,446号、同第3,772,031号、同第3,857,711、同第3,901,714号、同第4,266,018号、および同第3,904,415号、並びに英国特許第1,315,755号の各明細書に記載されるようにpAg5〜10、pH5〜8および温度30〜80℃において硫黄、セレン、テルル、金、白金、パラジウム、イリジウムまたはこれら増感剤の複数の組み合わせとすることができる。貴金属増感においては、金、白金、パラジウム、イリジウム等の貴金属塩を用いることができ、中でも特に金増感、パラジウム増感および両者の併用が好ましい。金増感の場合には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイドのような公知の化合物を用いることができる。パラジウム化合物はパラジウム2価塩または4価の塩を意味する。好ましいパラジウム化合物は、R2PdX6またはR2PdX4で表わされる。ここでRは水素原子、アルカリ金属原子またはアンモニウム基を表わす。Xはハロゲン原子を表わし塩素、臭素または沃素原子を表わす。
【0075】
具体的には、K2PdCl4、(NH4)2PdCl6、Na2PdCl4、(NH4)2PdCl4、Li2PdCl4、Na2PdCl6またはK2PdBr4が好ましい。金化合物およびパラジウム化合物はチオシアン酸塩あるいはセレノシアン酸塩と併用することが好ましい。
【0076】
硫黄増感剤として、ハイポ、チオ尿素系化合物、ロダニン系化合物および米国特許第3,857,711号、同第4,266,018号および同第4,054,457号の各明細書に記載されている硫黄含有化合物を用いることができる。
いわゆる化学増感助剤の存在下に化学増感することもできる。有用な化学増感助剤には、アザインデン、アザピリダジン、アザピリミジンのごとき、化学増感の過程でカブリを抑制し、且つ感度を増大するものとして知られた化合物が用いられる。化学増感助剤改質剤の例は、米国特許第2,131,038号、同第3,411,914号、同第3,554,757号明細書、特開昭58−126526号公報および前述ダフィン著「写真乳剤化学」、138〜143頁に記載されている。
【0077】
本発明の乳剤は金増感を併用することが好ましい。金増感剤の好ましい量としてハロゲン化銀1モル当り1×10−3〜1×10−7モルであり、さらに好ましいのは1×10−4〜5×10−7モルである。パラジウム化合物の好ましい範囲はハロゲン化銀1モル当たり1×10−3から5×10−7モルである。チオシアン化合物あるいはセレノシアン化合物の好ましい範囲はハロゲン化銀1モル当たり5×10−2から1×10−6モルである。
【0078】
本発明において用いるハロゲン化銀粒子に対して使用する好ましい硫黄増感剤量はハロゲン化銀1モル当り1×10−3〜1×10−7モルであり、さらに好ましいのは1×10−4〜5×10−7モルである。
【0079】
本発明の乳剤に対して好ましい増感法としてセレン増感がある。セレン増感においては、公知の不安定セレン化合物を用い、具体的には、コロイド状金属セレニウム、セレノ尿素類(例えば、N,N−ジメチルセレノ尿素、N,N−ジエチルセレノ尿素)、セレノケトン類、セレノアミド類のようなセレン化合物を用いることができる。セレン増感は硫黄増感あるいは貴金属増感あるいはその両方と組み合わせて用いた方が好ましい場合がある。
【0080】
テルル増感においては、不安定テルル化合物を用い、特開平4−224595号、同4−271341号、同4−333043号、同5−303157号、同6−27573号、同6−175258号、同6−180478号、同6−208184号、同6−208186号、同6−317867号、同7−140579号、同7−301879号、同7−301880号などの各公報に記載されている不安定テルル化合物を用いることができる。
【0081】
具体的には、ホスフィンテルリド類(例えば、ノルマルブチル−ジイソプロピルホスフィンテルリド、トリイソブチルホスフィンテルリド、トリノルマルブトキシホスフィンテルリド、トリイソプロピルホスフィンテルリド)、ジアシル(ジ)テルリド類(例えば、ビス(ジフェニルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)テルリド、ビス(N−フェニル−N−ベンジルカルバモイル)テルリド、ビス(エトキシカルボニル)テルリド)、テルロ尿素類(例えば、N,N’−ジメチルエチレンテルロ尿素)、テルロアミド類、テルロエステル類などを用いればよい。好ましくはホスフィンテルリド類、ジアシル(ジ)テルリド類である。
【0082】
本発明に用いられる写真乳剤には、感光材料の製造工程、保存中あるいは写真処理中のかぶりを防止し、あるいは写真性能を安定化させる目的で、種々の化合物を含有させることができる。すなわちチアゾール類、例えば、ベンゾチアゾリウム塩、ニトロイミダゾール類、ニトロベンズイミダゾール類、クロロベンズイミダゾール類、ブロモベンズイミダゾール類、メルカプトチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンズイミダゾール類、メルカプトチアジアゾール類、アミノトリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ニトロベンゾトリアゾール類、メルカプトテトラゾール類(特に1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール);メルカプトピリミジン類;メルカプトトリアジン類;例えば、オキサドリンチオンのようなチオケト化合物;アザインデン類、例えば、トリアザインデン類、テトラアザインデン類(特に4−ヒドロキシ置換(1,3,3a,7)テトラアザインデン類)、ペンタアザインデン類のようなかぶり防止剤または安定剤として知られた、多くの化合物を加えることができる。例えば、米国特許第3,954,474号、同第3,982,947号明細書、特公昭52−28660号公報に記載されたものを用いることができる。好ましい化合物の一つに特開昭63−212932号公報に記載された化合物がある。かぶり防止剤および安定剤は粒子形成前、粒子形成中、粒子形成後、水洗工程、水洗後の分散時、エピタキシャル形成時、化学増感前、化学増感中、化学増感後、塗布前のいろいろな時期に目的に応じて添加することができる。乳剤調製中に添加して本来のかぶり防止および安定化効果を発現する以外に、粒子の晶壁を制御する、粒子サイズを小さくする、粒子の溶解性を減少させる、化学増感を制御する、色素の配列を制御するなど多目的に用いることができる。
【0083】
本発明の乳剤調製時、例えば粒子形成時、エピタキシャル形成時、脱塩工程、化学増感時、塗布前に金属イオンの塩を存在させることは目的に応じて好ましい。粒子にドープする場合には粒子形成時、粒子表面の修飾あるいは化学増感剤として用いる時は粒子形成後、化学増感終了前に添加することが好ましい。粒子全体にドープする場合と粒子のコアー部のみ、あるいはシェル部のみにドープする方法も選べる。例えば、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Sc、Y、La、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Au、Cd、Hg、Tl、In、Sn、Pb、Biを用いることができる。これらの金属はアンモニウム塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、燐酸塩、水酸塩あるいは6配位錯塩、4配位錯塩など粒子形成時に溶解させることができる塩の形であれば添加できる。例えば、CdBr2、CdCl2、Cd(NO3)2、Pb(NO3)2、Pb(CH3COO)2、K4[Fe(CN)6]、K3[Fe(CN)6]、(NH4)4[Fe(CN)6]、K2IrCl6、K3IrCl6、(NH4)3RhCl6、K4Ru(CN)6があげられる。配位化合物のリガンドとしてハロ、アクア、シアノ、シアネート、チオシアネート、ニトロシル、チオニトロシル、オキソ、カルボニルのなかから選ぶことができる。これらは金属化合物を1種類のみ用いてもよいが2種あるいは3種以上を組み合わせて用いてよい。
【0084】
金属化合物は水またはメタノール、アセトンのような適当な有機溶媒に溶かして添加するのが好ましい。溶液を安定化するためにハロゲン化水素水溶液(例えば、HCl、HBr)あるいはハロゲン化アルカリ(例えば、KCl、NaCl、KBr、NaBr)を添加する方法を用いることができる。また必要に応じ酸・アルカリなどを加えてもよい。金属化合物は粒子形成前の反応容器に添加しても粒子形成の途中で加えることもできる。また水溶性銀塩(例えば、AgNO3)あるいはハロゲン化アルカリ水溶液(例えば、NaCl、KBr、KI)に添加しハロゲン化銀粒子形成中連続して添加することもできる。さらに水溶性銀塩、ハロゲン化アルカリとは独立の溶液を用意し粒子形成中の適切な時期に連続して添加してもよい。さらに種々の添加方法を組み合わせるのも好ましい。
【0085】
本発明のハロゲン化銀写真乳剤を粒子形成中、粒子形成後でかつ化学増感前あるいは化学増感中、あるいは化学増感後に還元増感することは好ましい。ここで、還元増感とは、ハロゲン化銀乳剤に還元増感剤を添加する方法、銀熟成と呼ばれるpAg1〜7の低pAgの雰囲気で成長あるいは熟成させる方法、高pH熟成と呼ばれるpH8〜11の高pHの雰囲気で成長あるいは熟成させる方法のいずれを選ぶこともできる。また2つ以上の方法を併用することもできる。
【0086】
還元増感剤を添加する方法は還元増感のレベルを微妙に調節できる点で好ましい方法である。
還元増感剤としては、例えば、第一錫塩、アスコルビン酸およびその誘導体、アミンおよびポリアミン類、ヒドラジン誘導体、ホルムアミジンスルフィン酸、シラン化合物、ボラン化合物が公知である。本発明において用いる還元増感にはこれら公知の還元増感剤を選んで用いることができ、また2種以上の化合物を併用することもできる。還元増感剤としては塩化第一錫、二酸化チオ尿素、ジメチルアミンボラン、アスコルビン酸およびその誘導体が好ましい化合物である。還元増感剤の添加量は乳剤製造条件に依存するので添加量を選ぶ必要があるが、ハロゲン化銀1モル当り10−7〜10−3モルの範囲が適当である。
【0087】
還元増感剤は、例えば、水あるいはアルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類のような有機溶媒に溶かし粒子成長中に添加される。あらかじめ反応容器に添加するのもよいが、粒子成長の適当な時期に添加する方法が好ましい。また水溶性銀塩あるいは水溶性アルカリハライドの水溶性にあらかじめ還元増感剤を添加しておき、これらの水溶液を用いてハロゲン化銀粒子を沈澱せしめてもよい。また粒子成長に伴って還元増感剤の溶液を何回かに分けて添加しても連続して長時間添加するのも好ましい方法である。
【0088】
本発明の乳剤の製造工程中に銀に対する酸化剤を用いることが好ましい。銀に対する酸化剤とは、金属銀に作用して銀イオンに変換せしめる作用を有する化合物をいう。特にハロゲン化銀粒子の形成過程および化学増感過程において副生するきわめて微小な銀粒子を、銀イオンに変換せしめる化合物が有効である。ここで生成する銀イオンは、例えば、ハロゲン化銀、硫化銀、セレン化銀のような水に難溶の銀塩を形成してもよく、又、硝酸銀のような水に易溶の銀塩を形成してもよい。銀に対する酸化剤は、無機物であっても、有機物であってもよい。無機の酸化剤としては、例えば、オゾン、過酸化水素およびその付加物(例えば、NaBO2・H2O2・3H2O、2NaCO3・3H2O2、Na4P2O7・2H2O2、2Na2SO4・H2O2・2H2O)、ペルオキシ酸塩(例えば、K2S2O8、K2C2O6、K2P2O8)、ペルオキシ錯体化合物(例えば、K2[Ti(O2)C2O4]・3H2O、4K2SO4・Ti(O2)OH・SO4・2H2O、Na3[VO(O2)(C2H4)2]・6H2O)、過マンガン酸塩(例えば、KMnO4)、クロム酸塩(例えば、K2Cr2O7)のような酸素酸塩、沃素や臭素のようなハロゲン元素、過ハロゲン酸塩(例えば、過沃素酸カリウム)、高原子価の金属の塩(例えば、ヘキサシアノ第二鉄酸カリウム)およびチオスルフォン酸塩がある。
【0089】
また、有機の酸化剤としては、p−キノンのようなキノン類、過酢酸や過安息香酸のような有機過酸化物、活性ハロゲンを放出する化合物(例えば、N−ブロムサクシンイミド、クロラミンT、クロラミンB)が例として挙げられる。
【0090】
本発明において用いる好ましい酸化剤は、オゾン、過酸化水素およびその付加物、ハロゲン元素、チオスルフォン酸塩の無機酸化剤及びキノン類の有機酸化剤である。前述の還元増感と銀に対する酸化剤を併用するのは好ましい態様である。酸化剤を用いたのち還元増感を施こす方法、その逆方法あるいは両者を同時に共存させる方法のなかから選んで用いることができる。これらの方法は粒子形成工程でも化学増感工程でも選んで用いることができる。
【0091】
本発明で得られるハロゲン化銀乳剤を用いて製造される感光材料は、少なくとも1層の感光層を備えていればよい。好ましくは、支持体上に青感色性層、緑感色性層、赤感色性層のハロゲン化銀乳剤層を各々少なくとも1層設けられており、青感色性層、緑感色性層及び赤感色性層のうち、少なくとも1つが、感度の互いに異なる2層以上から構成されていればよく、ハロゲン化銀乳剤層および非感光性層の層数および層順に特に制限はない。典型的な例としては、支持体上に、実質的に感色性は同じであるが感光度の異なる複数のハロゲン化銀乳剤層から成る感色性層を少なくとも1つ有するハロゲン化銀写真感光材料であり、該感光性層は青色光、緑色光、および赤色光の何れかに感色性を有する単位感光性層であり、多層ハロゲン化銀カラー写真感光材料においては、一般に単位感光性層の配列が、支持体側から順に赤感色性層、緑感色性層、青感色性層の順に設置される。しかし、目的に応じて上記設置順が逆であっても、また同一感色性層中に異なる感光性層が挾まれたような設置順をもとり得る。
【0092】
上記のハロゲン化銀感光性層の間および最上層、最下層には各層の中間層等の非感光性層を設けてもよい。該中間層には、特開昭61−43748号、同59−113438号、同59−113440号、同61−20037号、同61−20038号の各公報に記載されるようなカプラー、DIR化合物が含まれていてもよく、通常用いられるように混色防止剤を含んでいてもよい。
【0093】
各単位感光性層を構成する複数のハロゲン化銀乳剤層は、***特許第1,121,470号あるいは英国特許第923,045号明細書に記載されるように高感度乳剤層、低感度乳剤層の2層構成を好ましく用いることができる。通常は、支持体に向かって順次感光度が低くなる様に配列するのが好ましく、また各ハロゲン乳剤層の間には非感光性層が設けられていてもよい。また、特開昭57−112751号、同62−200350号、同62−206541号、同62−206543号の各公報に記載されているように支持体より離れた側に低感度乳剤層、支持体に近い側に高感度乳剤層を設置してもよい。
【0094】
具体例として支持体から最も遠い側から、例えば低感度青感光性層(BL)/高感度青感光性層(BH)/高感度緑感光性層(GH)/低感度緑感光性層(GL)/高感度赤感光性層(RH)/低感度赤感光性層(RL)の順、またはBH/BL/GL/GH/RH/RLの順、またはBH/BL/GH/GL/RL/RHの順等に設置することができる。
【0095】
また特公昭55−34932号公報に記載されているように、支持体から最も遠い側から青感光性層/GH/RH/GL/RLの順に配列することもできる。
また特開昭56−25738号、同62−63936号公報に記載されているように、支持体から最も遠い側から青感光性層/GL/RL/GH/RHの順に設置することもできる。
【0096】
また特公昭49−15495号公報に記載されているように上層を最も感光度の高いハロゲン化銀乳剤層、中層をそれよりも低い感光度のハロゲン化銀乳剤層、下層を中層よりも更に感光度の低いハロゲン化銀乳剤層を配置し、支持体に向かって感光度が順次低められた感光度の異なる3層から構成される配列が挙げられる。このような感光度の異なる3層から構成される場合でも、特開昭59−202464号公報に記載されているように、同一感色性層中において支持体より離れた側から中感度乳剤層/高感度乳剤層/低感度乳剤層の順に配置されてもよい。
【0097】
その他、高感度乳剤層/低感度乳剤層/中感度乳剤層、あるいは低感度乳剤層/中感度乳剤層/高感度乳剤層などの順に配置されていてもよい。
また、4層以上の場合にも、上記の如く配列を変えてよい。
【0098】
色再現性を改良するために、米国特許4,663,271号、同4,705,744号、同4,707,436号の各明細書、特開昭62−160448号、同63−89850号の各公報に記載の、BL,GL,RLなどの主感光層と分光感度分布が異なる重層効果のドナー層(CL)を主感光層に隣接もしくは近接して配置することが好ましい。
【0099】
本発明の乳剤を用いる好ましい層は、低感度乳剤層である。低感度乳剤層としては、赤感色性低感度乳剤層、緑感色性低感度乳剤層及び青感色性低感度乳剤層のいずれにも使用することができるが、赤感色性低感度乳剤層が好ましい。本発明の乳剤はエピタキシャル部を有しないハロゲン化銀乳剤と同一感光度乳剤層に混ぜて使用してもいいが、エピタキシャル部を有しない乳剤とは混ぜて使用しない方が好ましい。本発明の乳剤を用いた感光層以外の感光層に含有される乳剤は、エピタキシャル部を有しないハロゲン化銀乳剤でもエピタキシャルを有するハロゲン化銀乳剤でもよい。
上記のように、それぞれの感光材料の目的に応じて種々の層構成、配列を選択することができる。
【0100】
本発明で得られるハロゲン化銀乳剤を用いて製造される感光材料は、非感光性微粒子ハロゲン化銀を使用することが好ましい。非感光性微粒子ハロゲン化銀とは、色素画像を得るための像様露光時においては感光せずに、その現像処理において実質的に現像されないハロゲン化銀微粒子であり、あらかじめカブラされていないほうが好ましい。非感光性微粒子ハロゲン化銀は、臭化銀の含有率が0〜100モル%であり、必要に応じて塩化銀および/または沃化銀を含有してもよい。好ましくは沃化銀を0.5〜10モル%含有するものである。非感光性微粒子ハロゲン化銀は、平均粒径(投影面積の円相当直径の平均値)が0.01〜0.5μmが好ましく、0.02〜0.2μmがより好ましい。
【0101】
非感光性微粒子ハロゲン化銀は、通常の感光性ハロゲン化銀と同様の方法で調製できる。非感光性微粒子ハロゲン化銀の表面は、光学的に増感される必要はなく、また分光増感も不要である。ただし、これを塗布液に添加するのに先立ち、あらかじめトリアゾール系、アザインデン系、ベンゾチアゾリウム系、もしくはメルカプト系化合物または亜鉛化合物などの公知の安定剤を添加しておくことが好ましい。この微粒子ハロゲン化銀粒子含有層に、コロイド銀を含有させることができる。
【0102】
本発明に使用できる写真用添加剤もリサーチ・ディスクロージャー(RD)に記載されており、下記の表に関連する記載箇所を示した。
添加剤の種類 RD17643号 RD18716号 RD307105号
1.化学増感剤 23頁 648 頁右欄 866頁
2.感度上昇剤 648 頁右欄
3.分光増感剤、 23〜24頁 648 頁右欄 866 〜868 頁
強色増感剤 〜649 頁右欄
4.増 白 剤 24頁 647 頁右欄 868頁
5.光吸収剤、 25 〜26頁 649 頁右欄 873頁
フィルター 〜650 頁左欄
染料、紫外
線吸収剤
6.バインダー 26頁 651 頁左欄 873 〜874 頁
7.可塑剤、 27頁 650 頁右欄 876頁
潤滑剤
8.塗布助剤、 26 〜27頁 650 頁右欄 875 〜876 頁
表面活性剤
9.スタチツク 27頁 650 頁右欄 876 〜877 頁
防止剤
10.マット剤 878 〜879 頁
【0103】
本発明で得られるハロゲン化銀を用いて製造される感光材料には種々の色素形成カプラーを使用することができるが、以下のカプラーが特に好ましい。
イエローカプラー: 欧州特許出願公開第502,424A号明細書に記載の式(I),(II)で表わされるカプラー; 欧州特許出願公開第513,496A号明細書に記載の式(1),(2) で表わされるカプラー (特に18頁のY−28); 欧州特許出願公開第568,037A号明細書に記載のクレーム1の式(I) で表わされるカプラー;米国特許第5,066,576号明細書のカラム1の45〜55行目に記載の一般式(I) で表わされるカプラー; 特開平4−274425号公報の段落0008に記載の一般式(I) で表わされるカプラー; 欧州特許出願公開第498,381A1号明細書の40頁のクレーム1に記載のカプラー(特に18頁のD−35); 欧州特許出願公開第447,969A1号明細書の4頁に記載の式(Y) で表わされるカプラー(特にY−1(17頁),Y−54(41 頁)); 米国特許第4,476,219号明細書のカラム7の36〜58行に記載の式(II)〜(IV)で表わされるカプラー(特にII−17,19(カラム17),II−24(カラム19))。
【0104】
マゼンタカプラー; 特開平3−39737号公報(L−57(11 頁右下),L−68(12 頁右下),L−77(13 頁右下); 欧州特許第456,257号明細書に記載の A−4 −63(134頁), A−4 −73,−75(139頁); 欧州特許第486,965号明細書に記載のM−4,−6(26 頁),M−7(27頁); 欧州特許出願公開第571,959A号明細書に記載のM−45(19 頁);特開平5−204106号公報に記載の(M−1)(6 頁);特開平4−362631号公報の段落0237に記載のM−22。
【0105】
シアンカプラー: 特開平4−204843号公報に記載のCX−1, 3, 4, 5, 11, 12, 14, 15(14 〜16頁); 特開平4−43345号公報に記載のC−7,10(35 頁),34,35(37頁),(I−1),(I−17)(42 〜43頁); 特開平6−67385号公報の請求項1に記載の一般式(Ia)または(Ib)で表わされるカプラー。
ポリマーカプラー: 特開平2−44345号公報に記載のP−1,P−5(11頁)。
【0106】
発色色素が適度な拡散性を有するカプラーとしては、米国特許第4,366,237号、英国特許第2,125,570号、欧州特許第96,873B号、独国特許第3,234,533号の各明細書に記載のものが好ましい。
【0107】
発色色素の不要吸収を補正するためのカプラーは、欧州特許出願公開第456,257A1号明細書の5 頁に記載の式(CI),(CII),(CIII),(CIV) で表わされるイエローカラードシアンカプラー(特に84頁のYC−86)、該欧州特許出願公開明細書に記載のイエローカラードマゼンタカプラーExM−7(202 頁) 、 EX−1(249 頁) 、 EX−7(251 頁) 、米国特許第4,833,069号明細書に記載のマゼンタカラードシアンカプラーCC−9 (カラム8)、CC−13(カラム10) 、米国特許第4,837,136号明細書に記載の(2)(カラム8)、国際公開第92/11575号パンフレットのクレーム1に記載の式(A) で表わされる無色のマスキングカプラー(特に36〜45頁の例示化合物)が好ましい。
【0108】
写真性有用基を放出するカプラーとしては、以下のものが挙げられる。現像抑制剤放出化合物:欧州特許出願公開第378,236A1号明細書の11頁に記載の式(I),(II),(III),(IV) で表わされる化合物(特にT−101(30頁),T−104(31頁),T−113(36頁),T−131(45頁),T−144(51頁),T−158(58頁)), 欧州特許出願公開第436,938A2号明細書の 7頁に記載の式(I) で表わされる化合物(特にD−49(51 頁))、欧州特許出願公開第568,037A号明細書に記載の式(1) で表わされる化合物(特に(23)(11 頁))、欧州特許出願公開第440,195A2号明細書の5 〜6 頁に記載の式(I),(II),(III)で表わされる化合物(特に29頁のI−(1) );漂白促進剤放出化合物:欧州特許出願公開第310,125A2号明細書の5 頁に記載の式(I),(I’)で表わされる化合物(特に61頁の(60),(61)) 及び特開平6−59411号公報 の請求項1に記載の式(I) で表わされる化合物(特に(7)(7 頁)); リガンド放出化合物:米国特許第4,555,478号明細書のクレーム1に記載のLIG−X で表わされる化合物(特にカラム12の21〜41行目の化合物);ロイコ色素放出化合物:米国特許第4,749,641号明細書のカラム3〜8に記載の化合物1〜6;蛍光色素放出化合物:米国特許第4,774,181号明細書のクレーム1に記載のCOUP−DYEで表わされる化合物(特にカラム7〜10の化合物1〜11);現像促進剤又はカブラセ剤放出化合物:米国特許第4,656,123号明細書のカラム3に記載の式(1) 、(2) 、(3) で表わされる化合物(特にカラム25の(I−22)) 及び欧州特許出願公開第450,637A2号明細書の75頁36〜38行目に記載のExZK−2; 離脱して初めて色素となる基を放出する化合物: 米国特許第4,857,447号明細書のクレーム1に記載の式(I) で表わされる化合物(特にカラム25〜36のY−1 〜Y−19)。
【0109】
カプラー以外の添加剤としては、以下のものが好ましい。
油溶性有機化合物の分散媒: 特開昭62−215272号公報に記載のP−3, 5, 16, 19, 25, 30, 42, 49, 54, 55, 66, 81, 85, 86, 93(140〜144 頁); 油溶性有機化合物の含浸用ラテックス: 米国特許第4,199,363号明細書に記載のラテックス; 現像主薬酸化体スカベンジャー: 米国特許第4,978,606号明細書のカラム2の54〜62行目に記載の式(I) で表わされる化合物(特にI−,(1),(2),(6),(12) (カラム4〜5)、米国特許第4,923,787号明細書のカラム2の5〜10行目に記載の式(特に化合物1(カラム3); ステイン防止剤: 欧州特許出願公開第298321A号明細書の4頁30〜33行目に記載の式(I) 〜(III),特にI−47,72,III−1,27(24〜48頁); 褪色防止剤: 欧州特許出願公開第298321A号明細書に記載のA−6, 7, 20, 21, 23, 24, 25, 26, 30, 37, 40, 42, 48, 63, 90, 92, 94, 164(69〜118頁), 米国特許第5,122,444号明細書のカラム25〜38に記載のII−1〜III−23, 特にIII−10, 欧州特許出願公開第471347A号明細書の8 〜12頁に記載のI−1 〜III−4,特にII−2, 米国特許第5,139,931号明細書のカラム32〜40に記載のA−1 〜48, 特にA−39,42; 発色増強剤または混色防止剤の使用量を低減させる素材: 欧州特許出願公開第411324A号明細書の5 〜24頁に記載のI−1 〜II−15,特にI−46; ホルマリンスカベンジャー: 欧州特許出願公開第477932A号明細書の24〜29頁に記載のSCV−1 〜28, 特にSCV−8; 硬膜剤: 特開平1−214845号公報の17頁に記載のH−1,4,6,8,14, 米国特許第4,618,573号明細書のカラム13〜23に記載の式(VII) 〜(XII) で表わされる化合物(H−1〜54),特開平2−214852号公報の8頁右下に記載の式(6) で表わされる化合物(H−1〜76),特にH−14, 米国特許第3,325,287号明細書のクレーム1に記載の化合物; 現像抑制剤プレカーサー: 特開昭62−168139号公報に記載のP−24,37,39(6〜7 頁); 米国特許第5,019,492号明細書のクレーム1に記載の化合物,特にカラム7の28,29; 防腐剤、防黴剤: 米国特許第4,923,790号明細書のカラム3 〜15に記載のI−1 〜III−43, 特にII−1,9,10,18,III−25; 安定剤、かぶり防止剤: 米国特許第4,923,793号明細書のカラム6 〜16に記載のI−1 〜(14), 特にI−1,60,(2),(13), 米国特許第4,952,483号明細書のカラム25〜32に記載の化合物1〜65, 特に36: 化学増感剤: トリフェニルホスフィン セレニド, 特開平5−40324号公報に記載の化合物50; 染料: 特開平3−156450号公報の15〜18頁に記載のa−1 〜b−20, 特にa−1,12,18,27,35,36,b−5,27 〜29頁に記載のV−1 〜23, 特にV−1, 欧州特許出願公開第445627A号明細書の33〜55頁に記載のF−I−1 〜F−II−43,特にF−I−11,F−II−8, 欧州特許出願公開第457153A号明細書の17〜28頁に記載のIII−1 〜36, 特にIII−1,3, 国際公開第88/04794号パンフレットに記載の8〜26のDye−1 〜124 の微結晶分散体, 欧州特許出願公開第319999A号明細書の6〜11頁に記載の化合物1〜22, 特に化合物1, 欧州特許出願公開第519306A号明細書に記載の式(1) ないし(3) で表わされる化合物D−1 〜87(3〜28頁),米国特許第4,268,622号明細書に記載の式(I) で表わされる化合物1〜22 (カラム3〜10), 米国特許第4,923,788号明細書に記載の式(I) で表わされる化合物(1) 〜(31) (カラム2〜9); UV吸収剤: 特開昭46−3335号公報に記載の式(1) で表わされる化合物(18b) 〜(18r),101 〜427(6〜9頁),欧州特許出願公開第520938A号明細書に記載の式(I) で表わされる化合物(3) 〜(66)(10 〜44頁) 及び式(III) で表わされる化合物HBT−1 〜10(14 頁), 欧州特許出願公開第521823A号明細書に記載の式(1) で表わされる化合物(1) 〜(31) (カラム2〜9)。
【0110】
本発明は、白黒印画紙、白黒ネガフイルム、レントゲンフイルム、一般用もしくは映画用のカラーネガフイルム、スライド用もしくはテレビ用のカラー反転フイルム、カラーペーパー、カラーポジフイルムおよびカラー反転ペーパーのような種々のカラー感光材料に適用することができる。また、特公平2−32615号、実公平3−39784号公報に記載されているレンズ付きフイルムユニット用に好適である。
【0111】
本発明に使用できる適当な支持体は、例えば、前述のRD No.17643の28頁、同No.18716の647頁右欄から648頁左欄、および同No.307105の879頁に記載されている。
【0112】
本発明の感光材料は、乳剤層を有する側の全親水性コロイド層の膜厚の総和が28μm以下であることが好ましく、23μm以下がより好ましく、18μm以下が更に好ましく、16μm以下が特に好ましい。また膜膨潤速度T1/2は30秒以下が好ましく、20秒以下がより好ましい。T1/2は、発色現像液で30℃、3分15秒処理した時に到達する最大膨潤膜厚の90%を飽和膜厚としたとき、膜厚がその1/2に到達するまでの時間と定義する。膜厚は、室温25℃、相対湿度55%調湿下(2日)で測定した膜厚を意味し、T1/2は、エー・グリーン(A.Green)らのフォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Photogr. Sci. Eng.),19卷、2,124〜129頁に記載の型のスエロメーター(膨潤計)を使用することにより測定できる。T1/2は、バインダーとしてのゼラチンに硬膜剤を加えること、あるいは塗布後の経時条件を変えることによって調整することができる。また、膨潤率は150〜400%が好ましい。膨潤率とは、さきに述べた条件下での最大膨潤膜厚から、式:(最大膨潤膜厚−膜厚)/膜厚 により計算できる。
【0113】
本発明の感光材料は、乳剤層を有する側の反対側に、乾燥膜厚の総和が2μm〜20μmの親水性コロイド層(バック層と称す)を設けることが好ましい。このバック層には、前述の光吸収剤、フィルター染料、紫外線吸収剤、スタチック防止剤、硬膜剤、バインダー、可塑剤、潤滑剤、塗布助剤、表面活性剤を含有させることが好ましい。このバック層の膨潤率は150〜500%が好ましい。
【0114】
本発明の感光材料は、前述のRD.No.17643の28〜29頁、同No.18716の651左欄〜右欄、および同No.307105の880〜881頁に記載された通常の方法によって現像処理することができる。
【0115】
次に、本発明に使用されるカラーネガフイルム用の処理液について説明する。
本発明に使用される発色現像液には、特開平4−121739号公報の第9頁右上欄1行〜第11頁左下欄4行に記載の化合物を使用することができる。特に迅速な処理を行う場合の発色現像主薬としては、2−メチル−4−〔N−エチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミノ〕アニリン、2−メチル−4−〔N−エチル−N−(3−ヒドロキシプロピル)アミノ〕アニリン、2−メチル−4−〔N−エチル−N−(4−ヒドロキシブチル)アミノ〕アニリンが好ましい。
【0116】
これらの発色現像主薬は発色現像液1リットル(以下、「L」とも表記する。
)あたり0.01〜0.08モルの範囲で使用することが好ましく、特には0.015〜0.06モル、更には0.02〜0.05モルの範囲で使用することが好ましい。また発色現像液の補充液には、この濃度の1.1〜3倍の発色現像主薬を含有させておくことが好ましく、特に1.3〜2.5倍を含有させておくことが好ましい。
【0117】
発色現像液の保恒剤としては、ヒドロキシルアミンが広範に使用できるが、より高い保恒性が必要な場合は、アルキル基やヒドロキシアルキル基、スルホアルキル基、カルボキシアルキル基などの置換基を有するヒドロキシルアミン誘導体が好ましく、具体的にはN,N−ジ(スルホエチル)ヒドロキルアミン、モノメチルヒドロキシルアミン、ジメチルヒドロキシルアミン、モノエチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキルアミン、N,N−ジ(カルボキシエチル)ヒドロキルアミンが好ましい。上記の中でも、特にN,N−ジ(スルホエチル)ヒドロキルアミンが好ましい。これらはヒドロキシルアミンと併用してもよいが、好ましくはヒドロキシルアミンの代わりに、1種または2種以上使用することが好ましい。
【0118】
保恒剤は1Lあたり0.02〜0.2モルの範囲で使用することが好ましく、特に0.03〜0.15モル、更には0.04〜0.1モルの範囲で使用することが好ましい。また補充液においては、発色現像主薬の場合と同様に、母液(処理タンク液)の1.1〜3倍の濃度で保恒剤を含有させておくことが好ましい。
【0119】
発色現像液には、発色現像主薬の酸化物のタール化防止剤として亜硫酸塩が使用される。亜硫酸塩は1Lあたり0.01〜0.05モルの範囲で使用するのが好ましく、特には0.02〜0.04モルの範囲が好ましい。補充液においては、これらの1.1〜3倍の濃度で使用することが好ましい。
【0120】
また、発色現像液のpHは9.8〜11.0の範囲が好ましいが、特には10.0〜10.5が好ましく、また補充液においては、これらの値から0.1〜1.0の範囲で高い値に設定しておくことが好ましい。このようなpHを安定して維持するには、炭酸塩、リン酸塩、スルホサリチル酸塩、ホウ酸塩などの公知の緩衝剤が使用される。
【0121】
発色現像液の補充量は、感光材料1m2あたり80〜1300ミリリットル(以下、ミリリットルを「mL」とも表記する。)が好ましいが、環境汚濁負荷の低減の観点から、より少ない方が好ましく、具体的には80〜600mL、更には80〜400mLが好ましい。
【0122】
発色現像液中の臭化物イオン濃度は、通常、1Lあたり0.01〜0.06モルであるが、感度を保持しつつカブリを抑制してディスクリミネーションを向上させ、かつ、粒状性を良化させる目的からは、1Lあたり0.015〜0.03モルに設定することが好ましい。臭化物イオン濃度をこのような範囲に設定する場合に、補充液には下記の式で算出した臭化物イオンを含有させればよい。ただし、下記の式のCが負になる時は、補充液には臭化物イオンを含有させないことが好ましい。
【0123】
C=A−W/V
C:発色現像補充液中の臭化物イオン濃度(モル/L)
A:目標とする発色現像液中の臭化物イオン濃度(モル/L)
W:1m2の感光材料を発色現像した場合に、感光材料から発色現像液に溶出する臭化物イオンの量(モル)
V:1m2の感光材料に対する発色現像補充液の補充量(L)
【0124】
また、補充量を低減した場合や、高い臭化物イオン濃度に設定した場合、感度を高める方法として、1−フェニル−3−ピラゾリドンや1−フェニル−2−メチル−2−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドンに代表されるピラゾリドン類や3,6−ジチア−1,8−オクタンジオールに代表されるチオエーテル化合物などの現像促進剤を使用することも好ましい。
【0125】
本発明における漂白能を有する処理液には、特開平4−125558号公報の第4頁左下欄16行〜第7頁左下欄6行に記載された化合物や処理条件を適用することができる。
【0126】
漂白剤は酸化還元電位が150mV以上のものが好ましいが、その具体例としては特開平5−72694号、同5−173312号の各公報に記載のものが好ましく、特に1,3−ジアミノプロパン四酢酸、特開平5−173312号公報の第7頁に記載の具体例1の化合物である第二鉄錯塩が好ましい。
【0127】
また、漂白剤の生分解性を向上させるには、特開平4−251845号公報、同4−268552号公報、欧州特許588,289号明細書、同591,934号明細書、特開平6−208213号公報に記載の化合物第二鉄錯塩を漂白剤として使用することが好ましい。これらの漂白剤の濃度は、漂白能を有する液1Lあたり0.05〜0.3モルが好ましく、特に環境への排出量を低減する目的から、0.1モル〜0.15モルで設計することが好ましい。また、漂白能を有する液が漂白液の場合は、1Lあたり0.2モル〜1モルの臭化物を含有させることが好ましく、特に0.3〜0.8モルを含有させることが好ましい。
【0128】
漂白能を有する液の補充液には、基本的に以下の式で算出される各成分の濃度を含有させる。これにより、母液中の濃度を一定に維持することができる。
CR=CT(V1+V2)/V1+CP
CR :補充液中の成分の濃度
CT :母液(処理タンク液)中の成分の濃度
CP :処理中に消費された成分の濃度
V1 :1m2の感光材料に対する漂白能を有する補充液の補充量(mL)
V2 :1m2の感光材料による前浴からの持ち込み量(mL)
【0129】
その他、漂白液にはpH緩衝剤を含有させることが好ましく、特にコハク酸、マレイン酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸など、臭気の少ないジカルボン酸を含有させることが好ましい。また、特開昭53−95630号公報、RD No.17129、米国特許第3,893,858号明細書に記載の公知の漂白促進剤を使用することも好ましい。
漂白液には、感光材料1m2あたり50〜1000mLの漂白補充液を補充することが好ましく、特には80〜500mL、さらには100〜300mLの補充をすることが好ましい。さらに漂白液にはエアレーションを行うことが好ましい。
【0130】
定着能を有する処理液については、特開平4−125558号公報の第7頁左下欄10行〜第8頁右下欄19行に記載の化合物や処理条件を適用することができる。
特に、定着速度と保恒性を向上させるために、特開平6−301169号公報に記載の一般式(I)と(II)で表される化合物を、単独あるいは併用して定着能を有する処理液に含有させることが好ましい。またp−トルエンスルフィン酸塩をはじめ、特開平1−224762号公報に記載のスルフィン酸を使用することも、保恒性の向上の上で好ましい。
【0131】
漂白能を有する液や定着能を有する液には、脱銀性の向上の観点からカチオンとしてアンモニウムを用いることが好ましいが、環境汚染低減の目的からは、アンモニウムを減少或いはゼロにする方が好ましい。
【0132】
漂白、漂白定着、定着工程においては、特開平1−309059号公報に記載のジェット撹拌を行なうことが特に好ましい。
漂白定着また定着工程における補充液の補充量は、感光材料1m2あたり100〜1000mLであり、好ましくは150〜700mL、特に好ましくは200〜600mLである。
【0133】
漂白定着や定着工程には、各種の銀回収装置をインラインやオフラインで設置して銀を回収することが好ましい。インラインで設置することにより、液中の銀濃度を低減して処理できる結果、補充量を減少させることができる。また、オフラインで銀回収して残液を補充液として再利用することも好ましい。
【0134】
漂白定着工程や定着工程は複数の処理タンクで構成することができ、各タンクはカスケード配管して多段向流方式にすることが好ましい。現像機の大きさとのバランスから、一般には2タンクカスケード構成が効率的であり、前段のタンクと後段のタンクにおける処理時間の比は、0.5:1〜1:0.5の範囲にすることが好ましく、特には0.8:1〜1:0.8の範囲が好ましい。
【0135】
漂白定着液や定着液には、保恒性の向上の観点から金属錯体になっていない遊離のキレート剤を存在させることが好ましいが、これらのキレート剤としては、漂白液に関して記載した生分解性キレート剤を使用することが好ましい。
【0136】
水洗および安定化工程に関しては、上記の特開平4−12558号公報の第12頁右下欄6行〜第13頁右下欄第16行に記載の内容を好ましく適用することができる。特に、安定液にはホルムアルデヒドに代わって欧州特許第504,609号、同519,190号の各明細書に記載のアゾリルメチルアミン類や特開平4−362943号公報に記載のN−メチロールアゾール類を使用することや、マゼンタカプラーを二当量化してホルムアルデヒドなどの画像安定化剤を含まない界面活性剤の液にすることが、作業環境の保全の観点から好ましい。
【0137】
また、感光材料に塗布された磁気記録層へのゴミの付着を軽減するには、特開平6−289559号公報に記載の安定液が好ましく使用できる。
【0138】
水洗および安定液の補充量は、感光材料1m2あたり80〜1000mLが好ましく、特には100〜500mL、さらには150〜300mLが、水洗または安定化機能の確保と環境保全のための廃液減少の両面から好ましい範囲である。このような補充量で行う処理においては、バクテリアや黴の繁殖防止のために、チアベンダゾール、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3オン、5−クロロ−2−メチルイソチアゾリン−3−オンのような公知の防黴剤やゲンタマイシンのような抗生物質、イオン交換樹脂等によって脱イオン処理した水を用いることが好ましい。脱イオン水と防菌剤や抗生物質は、併用することがより効果的である。
【0139】
また、水洗または安定液タンク内の液は、特開平3−46652号、同3−53246号、同3−55542号、同3−121448号、同3−126030号の各公報に記載の逆浸透膜処理を行って補充量を減少させることも好ましく、この場合の逆浸透膜は、低圧逆浸透膜であることが好ましい。
【0140】
本発明における処理においては、発明協会公開技報、公技番号94−4992に開示された処理液の蒸発補正を実施することが特に好ましい。特に第2頁の(式−1)に基づいて、現像機設置環境の温度及び湿度情報を用いて補正する方法が好ましい。蒸発補正に使用する水は、水洗の補充タンクから採取することが好ましく、その場合は水洗補充水として脱イオン水を用いることが好ましい。
【0141】
本発明に用いられる処理剤としては、上記公開技報の第3頁右欄15行から第4頁左欄32行に記載のものが好ましい。また、これに用いる現像機としては、第3頁右欄の第22行から28行に記載のフイルムプロセサーが好ましい。
【0142】
本発明を実施するに好ましい処理剤、自動現像機、蒸発補正方式の具体例については、上記の公開技報の第5頁右欄11行から第7頁右欄最終行までに記載されている。
【0143】
本発明に使用される処理剤の供給形態は、使用液状態の濃度または濃縮された形の液剤、あるいは顆粒、粉末、錠剤、ペースト状、乳液など、いかなる形態でもよい。このような処理剤の例として、特開昭63−17453号公報には低酸素透過性の容器に収納した液剤、特開平4−19655号公報、同4−230748号公報には真空包装した粉末あるいは顆粒、同4−221951号公報には水溶性ポリマーを含有させた顆粒、特開昭51−61837号公報、特開平6−102628号公報には錠剤、特表昭57−500485号公報にはペースト状の処理剤が開示されており、いずれも好ましく使用できるが、使用時の簡便性の面から、予め使用状態の濃度で調製してある液体を使用することが好ましい。
【0144】
これらの処理剤を収納する容器には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどが、単独あるいは複合材料として使用される。これらは要求される酸素透過性のレベルに合わせて選択される。発色現像液などの酸化されやすい液に対しては、低酸素透過性の素材が好ましく、具体的にはポリエチレンテレフタレートやポリエチレンとナイロンの複合材料が好ましい。これらの材料は500〜1500μmの厚さで、容器に使用され、酸素透過性を20mL/m2・24hrs・atm以下にすることが好ましい。
【0145】
次に本発明に使用されるカラー反転フイルム用の処理液について説明する。
カラー反転フイルム用の処理については、アズテック有限会社発行の公知技術第6号(1991年4月1日)第1頁5行〜第10頁5行、及び第15頁8行〜第24頁2行に詳細に記載されており、その内容はいずれも好ましく適用することができる。
【0146】
カラー反転フイルムの処理においては、画像安定化剤は調整浴か最終浴に含有される。このような画像安定化剤としては、ホルマリンのほかにホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウム、N−メチロールアゾール類があげられるが、作業環境の観点からホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウムかN−メチロールアゾール類が好ましく、N−メチロールアゾール類としては、特にN−メチロールトリアゾールが好ましい。また、カラーネガフイルムの処理において記載した発色現像液、漂白液、定着液、水洗水などに関する内容は、カラー反転フイルムの処理にも好ましく適用できる。
【0147】
上記の内容を含む好ましいカラー反転フイルムの処理剤として、イーストマンコダック社のE−6処理剤及び富士写真フイルム(株)のCR−56処理剤をあげることができる。
【0148】
次に、本発明に好ましく用いられる磁気記録層について説明する。
磁気記録層とは、磁性体粒子をバインダー中に分散した水性もしくは有機溶媒系塗布液を支持体上に塗設したものである。
本発明で用いられる磁性体粒子は、γFe2O3などの強磁性酸化鉄、Co被着γFe2O3、Co被着マグネタイト、Co含有マグネタイト、強磁性二酸化クロム、強磁性金属、強磁性合金、六方晶系のBaフェライト、Srフェライト、Pbフェライト、Caフェライトなどを使用できる。Co被着γFe2O3などのCo被着強磁性酸化鉄が好ましい。形状としては針状、米粒状、球状、立方体状、板状等いずれでもよい。比表面積ではSBETで20m2/g以上が好ましく、30m2/g以上が特に好ましい。強磁性体の保磁力(Hc)は、好ましくは3.0×104〜3.0×105A/mであり、特に好ましくは4.0×104〜2.5×105A/mである。強磁性体粒子を、シリカおよび/またはアルミナや有機素材による表面処理を施してもよい。さらに、磁性体粒子は特開平6−161032に記載された如くその表面にシランカップリング剤又はチタンカップリング剤で処理されてもよい。又特開平4−259911号公報、同5−81652号公報に記載の表面に無機、有機物を被覆した磁性体粒子も使用できる。
【0149】
磁性体粒子に用いられるバインダーは、特開平4−219569号公報に記載の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂、反応型樹脂、酸、アルカリ又は生分解性ポリマー、天然物重合体(セルロース誘導体、糖誘導体など)およびそれらの混合物を使用することができる。上記の樹脂のTgは−40℃〜300℃、質量平均分子量は0.2万〜100万である。例えばビニル系共重合体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルローストリプロピオネートなどのセルロース誘導体、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂を挙げることができ、ゼラチンも好ましい。特にセルロースジ(トリ)アセテートが好ましい。バインダーは、エポキシ系、アジリジン系、イソシアネート系の架橋剤を添加して硬化処理することができる。イソシアネート系の架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、などのイソシアネート類、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの反応生成物(例えば、トリレンジイソシアナート3molとトリメチロールプロパン1molの反応生成物)、及びこれらのイソシアネート類の縮合により生成したポリイソシアネートなどがあげられ、例えば特開平6−59357号公報に記載されている。
【0150】
前述の磁性体を上記バインダ−中に分散する方法は、特開平6−35092号公報に記載されているように、ニーダー、ピン型ミル、アニュラー型ミルなどを用いる方法が好ましく、併用も好ましい。特開平5−088283号公報に記載の分散剤や、その他の公知の分散剤が使用できる。磁気記録層の厚みは0.1μm〜10μm、好ましくは0.2μm〜5μm、より好ましくは0.3μm〜3μmである。
磁性体粒子とバインダーの質量比は好ましくは0.5:100〜60:100からなり、より好ましくは1:100〜30:100である。磁性体粒子の塗布量は0.005〜3g/m2、好ましくは0.01〜2g/m2、さらに好ましくは0.02〜0.5g/m2である。磁気記録層の透過イエロー濃度は、0.01〜0.50が好ましく、0.03〜0.20がより好ましく、0.04〜0.15が特に好ましい。磁気記録層は、写真用支持体の裏面に塗布又は印刷によって全面またはストライプ状に設けることができる。磁気記録層を塗布する方法としてはエアードクター、ブレード、エアナイフ、スクイズ、含浸、リバースロール、トランスファーロール、グラビヤ、キス、キャスト、スプレイ、ディップ、バー、エクストリュージョン等が利用でき、特開平5−341436号公報等に記載の塗布液が好ましい。
【0151】
磁気記録層に、潤滑性向上、カール調節、帯電防止、接着防止、ヘッド研磨などの機能を合せ持たせてもよいし、別の機能性層を設けて、これらの機能を付与させてもよく、粒子の少なくとも1種がモース硬度5以上の非球形無機粒子の研磨剤が好ましい。非球形無機粒子の組成としては、酸化アルミニウム、酸化クロム、二酸化珪素、二酸化チタン、シリコンカーバイト等の酸化物、炭化珪素、炭化チタン等の炭化物、ダイアモンド等の微粉末が好ましい。これらの研磨剤は、その表面をシランカップリング剤又はチタンカップリング剤で処理されてもよい。これらの粒子は磁気記録層に添加してもよく、また磁気記録層上にオーバーコート(例えば保護層,潤滑剤層など)しても良い。この時使用するバインダーは前述のものが使用でき、好ましくは磁気記録層のバインダーと同じものがよい。
磁気記録層を有する感材については、米国特許第5,336,589号、同5,250,404号、同5,229,259号、同5,215,874号、欧州特許第466,130号の各明細書に記載されている。
【0152】
次に本発明に用いられるポリエステル支持体について記すが、後述する感材、処理、カートリッジ及び実施例なども含め詳細については、公開技報、公技番号94−6023(発明協会;1994.3.15.)に記載されている。本発明に用いられるポリエステルはジオールと芳香族ジカルボン酸を必須成分として形成され、芳香族ジカルボン酸として2,6−、1,5−、1,4−、及び2,7−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ジオールとしてジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールが挙げられる。この重合ポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート等のホモポリマーを挙げることができる。特に好ましいのは2,6−ナフタレンジカルボン酸を50モル%〜100モル%含むポリエステルである。中でも特に好ましいのはポリエチレン 2,6−ナフタレートである。
平均分子量の範囲は約5,000ないし200,000である。本発明のポリエステルのTgは50℃以上であり、さらに90℃以上が好ましい。
【0153】
次にポリエステル支持体は、巻き癖をつきにくくするために熱処理温度は40℃以上Tg未満、より好ましくは(Tg−20)℃以上Tg未満で熱処理を行う。熱処理はこの温度範囲内の一定温度で実施してもよく、冷却しながら熱処理してもよい。
この熱処理時間は、0.1時間以上1500時間以下、さらに好ましくは0.5時間以上 200時間以下である。支持体の熱処理は、ロール状で実施してもよく、またウェブ状で搬送しながら実施してもよい。表面に凹凸を付与し(例えばSnO2やSb2O5等の導電性無機微粒子を塗布する)、面状改良を図ってもよい。又端部にローレットを付与し端部のみ少し高くすることで巻芯部の切り口写りを防止するなどの工夫を行うことが望ましい。これらの熱処理は支持体製膜後、表面処理後、バック層塗布後(帯電防止剤、滑り剤等)、下塗り塗布後のどこの段階で実施してもよい。好ましいのは帯電防止剤塗布後である。
【0154】
このポリエステルには紫外線吸収剤を練り込んでも良い。又ライトパイピング防止のため、三菱化成製のDiaresin、日本化薬製のKayaset等ポリエステル用として市販されている染料または顔料を練り込むことにより目的を達成することが可能である。
【0155】
次に、本発明では支持体と感材構成層を接着させるために、表面処理することが好ましい。薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸化処理、などの表面活性化処理が挙げられる。表面処理の中でも好ましいのは、紫外線照射処理、火焔処理、コロナ処理、グロー処理である。
【0156】
次に下塗法について述べると、単層でもよく2層以上でもよい。下塗層用バインダーとしては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの中から選ばれた単量体を出発原料とする共重合体を始めとして、ポリエチレンイミン、エポキシ樹脂、グラフト化ゼラチン、ニトロセルロース、ゼラチンが挙げられる。支持体を膨潤させる化合物としてレゾルシンとp−クロルフェノールがある。下塗層にはゼラチン硬化剤としてはクロム塩(クロム明ばんなど)、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、グルタールアルデヒドなど)、イソシアネート類、活性ハロゲン化合物(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−S−トリアジンなど)、エピクロルヒドリン樹脂、活性ビニルスルホン化合物などを挙げることができる。SiO2、TiO2、無機物微粒子又はポリメチルメタクリレート共重合体微粒子(0.01〜10μm)をマット剤として含有させてもよい。
【0157】
また本発明においては、帯電防止剤が好ましく用いられる。それらの帯電防止剤としては、カルボン酸及びカルボン酸塩、スルホン酸塩を含む高分子、カチオン性高分子、イオン性界面活性剤化合物を挙げることができる。
【0158】
帯電防止剤として最も好ましいものは、ZnO、TiO2、SnO2、Al2O3、In2O3、SiO2、MgO、BaO、MoO3、V2O5の中から選ばれた少なくとも1種の体積抵抗率が107Ω・cm以下、より好ましくは105Ω・cm以下である粒子サイズ0.001〜1.0μm結晶性の金属酸化物あるいはこれらの複合酸化物(Sb,P,B,In,S,Si,Cなど)の微粒子、更にはゾル状の金属酸化物あるいはこれらの複合酸化物の微粒子である。感材への含有量としては、5〜500mg/m2が好ましく特に好ましくは10〜350mg/m2である。導電性の結晶性酸化物又はその複合酸化物とバインダーの量の比は1/300〜100/1が好ましく、より好ましくは1/100〜100/5である。
【0159】
本発明の感材には滑り性がある事が好ましい。滑り剤含有層は感光層面、バック面ともに用いることが好ましい。好ましい滑り性としては動摩擦係数で0.25以下0.01以上である。この時の測定は直径5mmのステンレス球に対し、60cm/分で搬送した時の値を表す(25℃、60%RH)。この評価において相手材として感光層面に置き換えてもほぼ同レベルの値となる。
【0160】
本発明に使用可能な滑り剤としては、ポリオルガノシロキサン、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸と高級アルコールのエステル等であり、ポリオルガノシロキサンとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリスチリルメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等を用いることができる。添加層としては乳剤層の最外層やバック層が好ましい。特にポリジメチルシロキサンや長鎖アルキル基を有するエステルが好ましい。
【0161】
本発明の感材にはマット剤が有る事が好ましい。マット剤としては乳剤面、バック面とどちらでもよいが、乳剤側の最外層に添加するのが特に好ましい。マット剤は処理液可溶性でも処理液不溶性でもよく、好ましくは両者を併用することである。例えばポリメチルメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート/メタクリル酸=9/1又は5/5(モル比))、ポリスチレン粒子などが好ましい。粒径としては0.8〜10μmが好ましく、その粒径分布も狭いほうが好ましく、平均粒径の0.9〜1.1倍の間に全粒子数の90%以上が含有されることが好ましい。又マット性を高めるために0.8μm以下の微粒子を同時に添加することも好ましく例えばポリメチルメタクリレート(0.2μm)、ポリ(メチルメタクリレート/メタクリル酸=9/1(モル比)、0.3μm))、ポリスチレン粒子(0.25μm)、コロイダルシリカ(0.03μm)が挙げられる。
【0162】
次に本発明で用いられるフィルムパトローネについて記す。本発明で使用されるパトローネの主材料は金属でも合成プラスチックでもよい。
好ましいプラスチック材料はポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニルエーテルなどである。更に本発明のパトローネは、各種の帯電防止剤を含有してもよくカーボンブラック、金属酸化物粒子、ノニオン、アニオン、カチオン及びベタイン系界面活性剤又はポリマー等を好ましく用いることが出来る。これらの帯電防止されたパトローネは特開平1−312537号公報、同1−312538号公報に記載されている。特に25℃、25%RHでの抵抗が1012Ω以下が好ましい。通常プラスチックパトローネは、遮光性を付与するためにカーボンブラックや顔料などを練り込んだプラスチックを使って製作される。パトローネのサイズは現在135サイズのままでもよいし、カメラの小型化には、現在の135サイズにおける25mmのカートリッジの径を22mm以下とすることも有効である。パトローネのケースの容積は、30cm3以下好ましくは25cm3以下とすることが好ましい。パトローネおよびパトローネケースに使用されるプラスチックの質量は5g〜15gが好ましい。
【0163】
更に本発明で用いられる、スプールを回転してフイルムを送り出すパトローネでもよい。またフイルム先端がパトローネ本体内に収納され、スプール軸をフイルム送り出し方向に回転させることによってフイルム先端をパトローネのポート部から外部に送り出す構造でもよい。これらは米国特許4,834,306号、同5,226,613号の各明細書に開示されている。本発明に用いられる写真フイルムは現像前のいわゆる生フイルムでもよいし、現像処理された写真フイルムでもよい。又、生フイルムと現像済みの写真フイルムが同じ新パトローネに収納されていてもよいし、異なるパトローネでもよい。
【0164】
本発明のカラー写真感光材料は、アドバンスト・フォト・システム(以下、APシステムという)用ネガフイルムとしても好適であり、富士写真フイルム(株)(以下、富士フイルムという)製NEXIA A 、NEXIA F 、NEXIA H (順にISO 200/100/400 )のようにフイルムをAPシステムフォーマットに加工し、専用カートリッジに収納したものを挙げることができる。これらのAPシステム用カートリッジフイルムは、富士フイルム製エピオンシリーズ(エピオン300Z等)等のAPシステム用カメラに装填して用いられる。また、本発明のカラー写真感光材料は、富士フイルム製フジカラー写ルンですスーパースリムのようなレンズ付きフイルムにも好適である。
【0165】
これらにより撮影されたフイルムは、ミニラボシステムでは次のような工程を経てプリントされる。
(1)受付(露光済みカートリッジフイルムをお客様からお預かり)
(2)デタッチ工程(カートリッジから、フイルムを現像工程用の中間カートリッジに移す)
(3)フイルム現像
(4)リアタッチ工程(現像済みのネガフイルムを、もとのカートリッジに戻す)
(5)プリント(C/H/P3タイプのプリントとインデックスプリントをカラーペーパー〔好ましくは富士フイルム製SUPER FA8 〕に連続自動プリント)
(6)照合・出荷(カートリッジとインデックスプリントをIDナンバーで照合し、プリントとともに出荷)
【0166】
これらのシステムとしては、富士フイルムミニラボチャンピオンスーパーFA−298/FA−278/FA−258/FA−238 及び富士フイルムデジタルラボシステム フロンティアが好ましい。ミニラボチャンピオンのフイルムプロセサーとしてはFP922AL/FP562B /FP562B,AL/FP362B/FP362B,AL が挙げられ、推奨処理薬品はフジカラージャストイットCN−16L及びCN−16Qである。プリンタープロセサーとしては、PP3008AR/PP3008A /PP1828AR/PP1828A/PP1258AR/PP1258A/PP728AR/PP728A が挙げられ、推奨処理薬品はフジカラージャストイットCP−47L及びCP−40FAIIである。フロンティアシステムでは、スキャナー&イメージプロセサー SP−1000及びレーザープリンター&ペーパープロセサー LP−1000Pもしくはレーザープリンター LP−1000Wが用いられる。デタッチ工程で用いるデタッチャー、リアタッチ工程で用いるリアタッチャーは、それぞれ富士フイルムのDT200/DT100 及びAT200/AT100 が好ましい。
【0167】
APシステムは、富士フイルムのデジタルイメージワークステーションAladdin 1000を中心とするフォトジョイシステムにより楽しむこともできる。例えば、Aladdin 1000に現像済みAPシステムカートリッジフイルムを直接装填したり、ネガフイルム、ポジフイルム、プリントの画像情報を、35mmフイルムスキャナーFE−550やフラットヘッドスキャナーPE−550を用いて入力し、得られたデジタル画像データを容易に加工・編集することができる。そのデータは、光定着型感熱カラープリント方式によるデジタルカラープリンターNC−550ALやレーザー露光熱現像転写方式のピクトログラフィー3000によって、又はフイルムレコーダーを通して既存のラボ機器によりプリントとして出力することができる。また、Aladdin 1000は、デジタル情報を直接フロッピー(登録商標)ディスクやZipディスクに、もしくはCDライターを介してCD−Rに出力することもできる。
【0168】
一方、家庭では、現像済みAPシステムカートリッジフイルムを富士フイルム製フォトプレイヤーAP−1に装填するだけでTVで写真を楽しむことができるし、富士フイルム製フォトスキャナーAS−1に装填すれば、パソコンに画像情報を高速で連続的に取り込むこともできる。また、フイルム、プリント又は立体物をパソコンに入力するには、富士フイルム製フォトビジョンFV−10/FV−5が利用できる。更に、フロッピー(登録商標)ディスク、Zipディスク、CD−Rもしくはハードディスクに記録された画像情報は、富士フイルムのアプリケーションソフトフォトファクトリーを用いてパソコン上で様々に加工して楽しむことができる。パソコンから高画質なプリントを出力するには、光定着型感熱カラープリント方式の富士フイルム製デジタルカラープリンターNC−2/NC−2Dが好適である。
【0169】
現像済みのAPシステムカートリッジフイルムを収納するには、フジカラーポケットアルバムAP−5ポップL、AP−1ポップL、AP−1ポップKG又はカートリッジファイル16が好ましい。
【0170】
また、本発明で得られるハロゲン化銀乳剤を用いて製造される感光材料は、米国特許第4,500,626号、特開昭60−133449号、同59−218443号、同61−238056号、欧州特許出願公開第210,660A2号などの明細書および公報に記載されている熱現像感光材料にも適用できる。
【0171】
また、本発明で得られるハロゲン化銀乳剤を用いて製造される感光材料は、特公平2−32615号、実公平3−39784号などの公報に記載されているレンズ付きフィルムユニットに適用した場合に、より効果を発現しやすく有効である。
【0172】
【実施例】
以下に実施例をもって本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
本発明のエピタキシャル平板粒子について詳しく説明する。
【0173】
(乳剤1の調製)
(ホスト粒子)
KBr0.87g、平均分子量20000の低分子量酸化処理ゼラチン0.95gを含む水溶液1100mLを35℃に保ち撹拌した。AgNO3(2.1g)水溶液とKBr(1.5g)と平均分子量20000の低分子量酸化処理ゼラチン(1g)を含む水溶液を30秒間に渡り添加した。KBr2.6gを含む水溶液を添加した後、65℃に昇温した。平均分子量100000の琥珀化ゼラチン41gを含む水溶液を添加した後、カテコールジスルホン酸ナトリウム塩を2.1g含む水溶液を添加した。その後、第1成長としてAgNO3(225g)水溶液とKBr水溶液をダブルジェット法で流量加速して添加した。この時、銀電位を飽和カロメル電極に対して−20mVに保った。途中で6塩化イリジウムカリウム(0.07mg)を含む水溶液を添加した。AgNO3の添加終了時にベンゼンチオスルホン酸ナトリウム(2mg)を含む水溶液を添加した。その後、最外層成長としてAgNO3水溶液(32.1g)とKIを含むKBr水溶液を18分間に渡って添加した。KIの濃度は沃化銀含有率が6.8モル%になるように調整した。この時、銀電位を添加開始後12分間は飽和カロメル電極に対して−20mVに、その後は70mVに保ち、添加開始後14分で黄血塩(7.4mg)を含む水溶液を添加した。
【0174】
この後、ゼラチン14gを添加した。このゼラチンは、牛骨を原料とするアルカリ処理オセイン1番抽出ゼラチン(PAGI法により測定された分子量分布は、高分子量成分が2.5%、低分子量成分が60.0%)を、イオン交換処理を行ったものである。温度を40℃に降温した後、フェノキシエタノール47mLを添加した。増感色素I、II、IIIをそれぞれ69:30:1のモル比で飽和被覆量の80%の比率で添加し、その後硝酸カルシウム(2.5×10−2mol)を添加した。但し増感色素は、特開平11−52507号に記載の方法で作成した固体微分散物として使用した。すなわち硝酸ナトリウム0.8質量部および硫酸ナトリウム3.2質量部をイオン交換水43質量部に溶解し、増感色素13質量部を添加し、60℃の条件下でディゾルバー翼を用い2000rpmで20分間分散することにより、増感色素の固体分散物を得た。
【0175】
(エピタキシャル形成部)
この後、塩化ナトリウム1.5gを含む水溶液を添加した後、AgNO3(6.7g)水溶液とNaCl(2.4g)を含む水溶液を45秒間に渡ってダブルジェット法で添加した。その後、AgNO3(0.35g)水溶液とKI(0.45g)水溶液と平均分子量20000の低分子量ゼラチンの水溶液を特開平10−43570号公報に記載の磁気カップリング誘導型攪拌機を有する別のチャンバー内で添加直前混合して添加した。更にその後AgNO3(5.6g)水溶液とKBr(3.86g)水溶液と平均分子量20000の低分子量酸化処理ゼラチンの水溶液を特開平10−43570号公報に記載の磁気カップリング誘導型攪拌機を有する別のチャンバー内で添加直前混合して添加した。その後エピタキシャル部形態安定化剤(化合物I)(60mg)を添加した。
【0176】
(水洗、後熟部)
続いて、通常の水洗を行なった。この時、温度は35℃に保った。前述のゼラチン85gを添加した後、40℃でpHを6.5に、銀電位をNaCl水溶液を用いて飽和カロメル電極に対して100mVに調整した。エピタキシャル部形態安定化剤兼保存性改良剤(化合物II)(5mg)を添加した後、50℃に昇温し、ハロゲン化銀1モルに対して、チオシアン酸カリウム(1.8×10−4モル)、塩化金酸(1.3×10−5モル)、チオ硫酸ナトリウム(2.1×10−5モル)およびN,N−ジメチルセレノ尿素(8.8×10−6モル)を添加し最適に化学増感を施した。かぶり防止剤(化合物I)(6.9×10−4モル)添加して化学増感を終了した。
【0177】
本発明の乳剤は平均円相当径0.860μm、円相当径の変動係数17%、平均厚み0.086μm、平均アスペクト比10.0の平板粒子であった。また、全投影面積の70%以上が円相当径0.6μm以上1.1μm以下、厚み0.12μm以下の、最小の長さを有する辺の長さに対する最大の長さを有する辺の長さの比が5以下である主表面が(111)面の六角形平板粒子であり、少なくとも1つの頂点部にエピタキシャル部を有するエピタキシャル平板粒子であった。
さらに、エピタキシャル部以外の主表面部には転位線を持たず、かつエピタキシャル部に網目状の転位線を有するエピタキシャル平板粒子も全投影面積の70%以上を占めいることが、低温での透過電子顕微鏡観察によって確認された。
【0178】
前記エピタキシャル平板粒子でホスト平板粒子から外側に突出した部分において、ホスト平板粒子側の1/3の体積部分をa部分、残りをb部分としたとき、aの部分の平均塩化銀含有率(mol%)(Cla)とbの部分の平均塩化銀含有率(mol%)(Clb)の比(Cla/Clb)を求めたところ、この比が1より小さいエピタキシャル平板粒子も全投影面積の70%以上を占めていた。ハロゲン組成は本文記載の分析電顕を用いた手法にて求めた。本粒子は6.8モル%の沃化銀を含有する最外層が銀換算で8%の粒子である。エピタキシャル部は銀換算で7%である。また全投影面積の70%以上が平均塩化銀含有率および平均沃化銀含有率に対して30%以内の範囲に入っていた。
【0179】
【化1】
【0180】
(乳剤2の調製)
乳剤1よりエピタキシャル形成部を以下の如く変更することにより乳剤2を調製した。
塩化ナトリウム1.5gを含む水溶液を添加した後、AgNO3(6.7g)水溶液とNaCl(2.4g)を含む水溶液を45秒間に渡ってダブルジェット法で添加した。その後、AgNO3(0.35g)水溶液とKI(0.45g)水溶液と平均分子量20000の低分子量ゼラチンの水溶液を特開平10−43570号公報に記載の磁気カップリング誘導型攪拌機を有する別のチャンバ−内で添加直前混合して添加した。更にその後AgNO3(5.6g)水溶液とKBr(3.86g)水溶液とをダブルジェットで添加した。その後エピタキシャル部形態安定化剤(化合物I)(60mg)を添加した。
【0181】
(乳剤3の調製)
乳剤1よりエピタキシャル形成部を以下の如く変更することにより乳剤3を調製した。
塩化ナトリウム1.5gを含む水溶液を添加した後、AgNO3(12.7g)水溶液とNaCl(2.4g)とKI(0.45)とKBr(3.9g)を含む水溶液を7分間に渡ってダブルジェット法で添加した。その後エピタキシャル部形態安定化剤(化合物I)(60mg)を添加した。
【0182】
(乳剤4の調製)
乳剤1よりエピタキシャル形成部を以下の如く変更することにより乳剤4を調製した。
塩化ナトリウム1.5gを含む水溶液を添加した後、AgNO3(12.7g)水溶液とNaCl(2.4g)とKI(0.45)とKBr(3.9g)を含む水溶液と平均分子量20000の低分子量ゼラチンの水溶液とを7分間に渡って特開平10−43570号公報に記載の磁気カップリング誘導型攪拌機を有する別のチャンバ−内で添加直前混合して添加した。その後エピタキシャル部形態安定化剤I(60mg)を添加した。
【0183】
(乳剤5の調製)
乳剤1よりエピタキシャル形成部を以下の如く変更することにより乳剤5を調製した。
塩化ナトリウム1.5gを含む水溶液を添加した後、AgNO3(6.7g)水溶液とNaCl(2.4g)を含む水溶液を45秒間に渡ってダブルジェット法で添加した。その後、AgNO3(0.35g)水溶液とKI(0.45g)水溶液と平均分子量20000の低分子量ゼラチンの水溶液を特開平10−43570号公報に記載の磁気カップリング誘導型攪拌機を有する別のチャンバ−内で添加直前混合して添加した。更にその後AgNO3(5.6g)水溶液とハロゲン水溶液(KBr(1.93g)+NaCl(0.95g))と平均分子量20000の低分子量酸化処理ゼラチンの水溶液を特開平10−43570号公報に記載の磁気カップリング誘導型攪拌機を有する別のチャンバ−内で添加直前混合して添加した。その後エピタキシャル部形態安定化剤(化合物I)(60mg)を添加した。
乳剤1から5の特性値を表1にまとめて示した。
【0184】
【表1】
【0185】
下塗り層を設けてある三酢酸セルロースフィルム支持体に下記表2に示すような塗布条件で上記の化学増感を施した乳剤を保護層を設けて塗布し、試料No.101〜105を作成した。
【0186】
【表2】
【0187】
これらの試料を40℃、相対湿度70%の条件下に14時間放置した。その後、富士フィルム(株)製ゼラチンフィルターSC−50と連続ウェッジを通して1/100秒間露光した。
富士写真フィルム(株)製ネガプロセサーFP−350を用い、以下に記載の方法で(液の累積補充量がその母液タンク容量の3倍になるまで)処理した。
【0188】
(処理方法)
【0189】
次に、処理液の組成を記す。
【0190】
(漂白液) タンク液、補充液共通(単位 g)
エチレンジアミン四酢酸第二鉄アンモニウム二水塩 120.0
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 10.0
臭化アンモニウム 100.0
硝酸アンモニウム 10.0
漂白促進剤 0.005モル
(CH3)2N−CH2−CH2−S−S−CH2−CH2−N(CH3)2・2HCl
アンモニア水(27%) 15.0mL
水を加えて 1.0L
pH(アンモニア水と硝酸にて調整) 6.3
【0191】
【0192】
(水洗液) タンク液、補充液共通
水道水をH型強酸性カチオン交換樹脂(ロームアンドハース社製アンバーライトIR−120B)と、OH型アニオン交換樹脂(同アンバーライトIR−400)を充填した混床式カラムに通水してカルシウム及びマグネシウムイオン濃度を3mg/L以下に処理し、続いて二塩化イソシアヌール酸ナトリウム20mg/Lと硫酸ナトリウム0.15g/Lを添加した。この液のpHは6.5〜7.5の範囲にあった。
【0193】
【0194】
処理済みの試料を緑色フィルタ−で濃度測定した。また露光前に50℃、相対湿度60%の条件に21日間保存した試料についても同様の評価を行い保存性について評価した。
【0195】
以上により得られた、かぶりプラス0.2の濃度での感度値(かぶり+0.2の濃度を得るの必要な露光量の逆数の対数値)、かぶり値を表3に示す。
【0196】
【表3】
【0197】
表3の結果から明らかなように、本発明の全投影面積の70%以上が少なくとも一つの頂点部にエピタキシャル部を有し、Cla/Clbが1より小さい平板粒子を用いることにより、高感度で保存後の感度変化が小さい感光材料が得られる。更に、エピタキシャル部に少なくとも1本の転位線を有する平板粒子をもちいることにより高感度な感光材料が得られる。Cla、Clbが共に50mol%以下の場合、保存後の感度変化が小さい感光材料を得ることができる。
【0198】
(実施例2)
多層カラ−写真感光材料における本発明の乳剤の効果を示す。
本実施例で用いた支持体は、下記の方法により作製した。
【0199】
1)第1層及び下塗り層
厚さ90μmのポリエチレンナフタレート支持体について、その各々の両面に、処理雰囲気圧力2.66×10Pa、雰囲気気体中のH2O分圧75%、放電周波数30kHz、出力2500W、処理強度0.5kV・A・分/m2でグロー放電処理を施した。この支持体上に、第1層として下記組成の塗布液を特公昭58−4589号公報に記載のバー塗布法を用いて、5mL/m2の塗布量で塗布した。
【0200】
【0201】
さらに、第1層を塗設後、直径20cmのステンレス巻芯に巻付けて、110℃(PEN支持体のTg:119℃)で48時間加熱処理し熱履歴させてアニール処理をした後、支持体をはさみ第1層側と反対側に乳剤用の下塗り層として下記組成の塗布液をバー塗布法を用いて、10mL/m2の塗布量で塗布した。
【0202】
さらに、後述する第2、第3層を第1層の上に順に塗設し、最後に、後述する組成のカラーネガ感光材料を支持体に対して反対側に重層塗布することによりハロゲン化銀乳剤層付き透明磁気記録媒体を作製した。
【0203】
2)第2層(透明磁気記録層)
▲1▼磁性体の分散
Co被着γ−Fe2O3磁性体(平均長軸長:0.25μm、SBET:39m2/g、Hc:6.56×104A/m、σS :77.1Am2/kg、σr :37.4Am2/kg)1100質量部、水220質量部及びシランカップリング剤〔3−(ポリ(重合度10)オキシエチニル)オキシプロピル トリメトキシシラン〕165質量部を添加して、オープンニーダーで3時間良く混練した。この粗分散した粘性のある液を70℃で1昼夜乾燥し水を除去した後、110℃で1時間加熱処理し、表面処理をした磁気粒子を作製した。
【0204】
さらに以下の処方で、再びオープンニーダーにて4時間混練した。
上記表面処理済み磁気粒子 855 g
ジアセチルセルロース 25.3 g
メチルエチルケトン 136.3 g
シクロヘキサノン 136.3 g
【0205】
さらに、以下の処方で、サンドミル(1/4Gのサンドミル)にて2000rpm、4時間微細分散した。メディアは1mmφのガラスビーズを用いた。
上記混練液 45 g
ジアセチルセルロース 23.7 g
メチルエチルケトン 127.7 g
シクロヘキサノン 127.7 g
【0206】
さらに、以下の処方で、磁性体含有中間液を作製した。
▲2▼磁性体含有中間液の作製
上記磁性体微細分散液 674 g
ジアセチルセルロース溶液 24280 g
(固形分4.34%、溶媒:メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1/1)
シクロヘキサノン 46 g
これらを混合した後、ディスパ−にて撹拌し、「磁性体含有中間液」を作製した。
【0207】
以下の処方で本発明のα−アルミナ研磨材分散液を作製した。
(a)スミコランダムAA−1.5(平均1次粒子径1.5μm, 比表面積1.3m2/g)
粒子分散液の作製
スミコランダムAA−1.5 152g
シランカップリング剤KBM903(信越シリコーン社製) 0.48g
ジアセチルセルロース溶液 227.52g
(固形分4.5%、溶媒:メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1/1)上記処方にて、セラミックコートしたサンドミル(1/4Gのサンドミル)を用いて800rpm、4時間微細分散した。メディアは1mmφのジルコニアビーズを用いた。
【0208】
(b)コロイダルシリカ粒子分散液(微小粒子)
日産化学(株)製の「MEK−ST」を使用した。
これは、メチルエチルケトンを分散媒とした、平均1次粒子径0.015μmのコロイダルシリカの分散液であり、固形分は30%である。
【0209】
▲3▼第2層塗布液の作製
上記磁性体含有中間液 19053 g
ジアセチルセルロース溶液 264 g
(固形分4.5%、溶媒:メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1/1)
コロイダルシリカ分散液「MEK−ST」[分散液b] 128 g
(固形分30%)
AA−1.5分散液[分散液a] 12 g
ミリオネートMR−400(日本ポリウレタン(株)製) 希釈液 203 g
(固形分20%、希釈溶剤:メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1/1)
メチルエチルケトン 170 g
シクロヘキサノン 170 g
上記を混合・撹拌した塗布液をワイヤーバーにて、塗布量29.3mL/m2になるように塗布した。乾燥は110℃で行った。乾燥後の磁性層としての厚みは1.0μmだった。
【0210】
3)第3層(高級脂肪酸エステル滑り剤含有層)
▲1▼滑り剤の分散原液の作製
下記のア液を100℃加温溶解し、イ液に添加後、高圧ホモジナイザーで分散し、滑り剤の分散原液を作製した。
ア液
下記化合物 399 質量部
C6H13CH(OH)(CH2)10COOC50H101
下記化合物 171 質量部
n−C50H101O(CH2CH2O)16H
シクロヘキサノン 830 質量部
イ液
シクロヘキサノン 8600 質量部
【0211】
▲2▼球状無機粒子分散液の作製
【化2】
(非晶質球状シリカ、平均粒子径0.5μm、日本触媒(株)製)
【0212】
上記処方にて10分間撹拌後、更に以下を追添する。
ジアセトンアルコール 252.93 質量部
上記液を氷冷・攪拌しながら、超音波ホモジナイザー「SONIFIER450(BRANSON(株)製)」を用いて3時間分散し、球状無機粒子分散液c1を完成させた。
【0213】
▲3▼球状有機高分子粒子分散液の作製
以下の処方にて、球状有機高分子粒子分散液[c2]を作製した。
XC99−A8808(東芝シリコーン(株)製、球状架橋ポリシロキサン粒子、平均粒径0.9μm) 60 質量部
メチルエチルケトン 120 質量部
シクロヘキサノン 120 質量部
(固形分20%、溶媒:メチルエチルケトン/シクロヘキサノン=1/1)
氷冷・攪拌しながら、超音波ホモジナイザー「SONIFIER450(BRANSON(株)製)」を用いて2時間分散し球状有機高分子粒子分散液c2を完成させた。
【0214】
▲4▼第3層塗布液の作製
前述、滑り剤分散原液542gに下記を加え第3層塗布液とした。
ジアセトンアルコール 5950 g
シクロヘキサノン 176 g
酢酸エチル 1700 g
上記シーホスタKEP50分散液[c1] 53.1 g
上記球状有機高分子粒子分散液[c2] 300 g
FC431 2.65 g
(3M(株)製、固形分50%、溶剤:酢酸エチル)
BYK310 5.3 g
(BYKケミジャパン(株)製、固形分含有率25%)
上記第3層塗布液を第2層の上に10.35mL/m2の塗布量で塗布し、110℃で乾燥後、更に97℃で3分間後乾燥した。
【0215】
4)感光層の塗設
次に、前記で得られたバック層の支持体に対して反対側に、下記の組成の各層を重層塗布し、カラーネガフィルム試料201を作成した。
(感光層の組成)
各成分に対応する数字は、g/m2単位で表した塗布量を示し、ハロゲン化銀については銀換算の塗布量を示す。
【0216】
(試料201)
第1層(第1ハレーション防止層)
黒色コロイド銀 銀 0.080
0.07μmのヨウ臭化銀乳剤 銀 0.012
ゼラチン 0.700
ExM−1 0.064
ExC−1 0.004
ExC−3 0.004
Cpd−2 0.002
F−8 0.002
HBS−1 0.099
HBS−2 0.013
【0217】
第2層(第2ハレーション防止層)
黒色コロイド銀 銀 0.100
ゼラチン 0.767
ExF−1 0.004
F−8 0.001
固体分散染料 ExF−7 0.120
ExY−1 0.041
HBS−1 0.048
【0218】
第3層(中間層)
ExC−2 0.054
Cpd−1 0.092
ポリエチルアクリレートラテックス 0.250
HBS−1 0.074
ゼラチン 0.558
【0219】
第4層(低感度赤感乳剤層)
乳剤1 銀 0.73
ExC−1 0.404
ExC−2 0.024
ExC−3 0.083
ExC−4 0.213
ExC−5 0.044
ExC−6 0.025
ExC−8 0.073
ExC−9 0.010
Cpd−2 0.035
Cpd−4 0.035
Cpd−7 0.010
UV−2 0.022
UV−3 0.042
UV−4 0.009
UV−5 0.075
HBS−1 0.274
HBS−5 0.038
ゼラチン 2.457
【0220】
第5層(中感度赤感乳剤層)
Em−B 銀 1.052
ExM−5 0.021
ExC−1 0.324
ExC−2 0.077
ExC−3 0.010
ExC−4 0.145
ExC−5 0.022
ExC−6 0.029
ExC−8 0.026
ExC−9 0.067
Cpd−2 0.046
Cpd−4 0.025
Cpd−7 0.030
HBS−1 0.290
ゼラチン 1.046
【0221】
第6層(高感度赤感乳剤層)
Em−A 銀 0.732
ExM−5 0.156
ExC−1 0.076
ExC−3 0.025
ExC−6 0.037
ExC−8 0.134
ExC−9 0.109
ExC−10 0.127
ExY−3 0.012
Cpd−2 0.090
Cpd−4 0.099
Cpd−7 0.040
HBS−1 0.254
HBS−2 0.100
ゼラチン 1.006
【0222】
第7層(中間層)
Cpd−1 0.068
Cpd−6 0.309
固体分散染料ExF−4 0.020
HBS−1 0.068
ポリエチルアクリレートラテックス 0.068
ゼラチン 0.539
【0223】
第8層(赤感層へ重層効果を与える層)
Em−E 銀 0.358
Cpd−4 0.030
ExM−2 0.101
ExM−3 0.008
ExM−4 0.040
ExY−1 0.028
ExY−4 0.028
ExC−7 0.046
HBS−1 0.343
HBS−3 0.006
HBS−5 0.030
ゼラチン 0.884
【0224】
第9層(低感度緑感乳剤層)
Em−H 銀 0.206
Em−I 銀 0.208
Em−J 銀 0.255
ExM−2 0.304
ExM−3 0.075
ExY−1 0.028
ExY−3 0.024
ExC−7 0.014
HBS−1 0.505
HBS−3 0.012
HBS−4 0.095
HBS−5 0.055
Cpd−5 0.010
Cpd−7 0.020
ゼラチン 1.282
【0225】
第10層(中感度緑感乳剤層)
Em−G 銀 0.409
ExM−2 0.056
ExM−3 0.043
ExM−5 0.009
ExY−3 0.012
ExC−6 0.008
ExC−7 0.010
ExC−8 0.009
ExC−9 0.007
HBS−1 0.040
HBS−3 0.001
HBS−4 0.030
HBS−5 0.015
Cpd−5 0.002
Cpd−7 0.008
ゼラチン 0.406
【0226】
第11層(高感度緑感乳剤層)
Em−F 銀 0.407
Em−H 銀 0.156
ExC−6 0.009
ExC−8 0.010
ExC−9 0.011
ExM−1 0.015
ExM−2 0.050
ExM−3 0.010
ExM−4 0.030
ExM−5 0.035
ExM−6 0.018
ExY−3 0.007
Cpd−3 0.005
Cpd−4 0.007
Cpd−5 0.010
Cpd−7 0.020
HBS−1 0.248
HBS−3 0.003
HBS−4 0.094
HBS−5 0.037
ポリエチルアクリレートラテックス 0.099
ゼラチン 0.950
【0227】
第12層(イエローフィルター層)
Cpd−1 0.090
固体分散染料ExF−2 0.070
固体分散染料ExF−5 0.010
油溶性染料ExF−6 0.010
HBS−1 0.055
ゼラチン 0.589
【0228】
第13層(低感度青感乳剤層)
Em−M 銀 0.287
Em−N 銀 0.194
Em−O 銀 0.127
ExC−1 0.008
ExC−3 0.023
ExC−7 0.024
ExY−1 0.078
ExY−2 0.354
ExY−4 0.086
ExY−5 0.354
Cpd−2 0.082
Cpd−3 0.010
HBS−1 0.337
HBS−5 0.070
ゼラチン 1.476
【0229】
第14層(高感度青感乳剤層)
Em−L 銀 0.401
Em−K 銀 0.401
ExM−5 0.008
ExC−1 0.013
ExY−1 0.061
ExY−2 0.139
ExY−3 0.010
ExY−4 0.080
ExY−5 0.130
Cpd−2 0.084
Cpd−3 0.002
Cpd−7 0.039
HBS−1 0.142
ゼラチン 0.805
【0230】
第15層(第1保護層)
0.07μmのヨウ臭化銀乳剤 銀 0.208
UV−1 0.167
UV−2 0.066
UV−3 0.099
UV−4 0.013
UV−5 0.160
F−11 0.008
ExF−3 0.003
S−1 0.077
HBS−1 0.175
HBS−4 0.017
ゼラチン 1.007
【0231】
第16層(第2保護層)
H−1 0.400
B−1(直径1.7μm) 0.050
B−2(直径1.7μm) 0.150
B−3 0.029
S−1 0.200
ゼラチン 0.708
【0232】
更に、各層に適宜、保存性、処理性、圧力耐性、防黴・防菌性、帯電防止性及び塗布性をよくするために、W−1ないしW−11、B−4ないしB−6、F−1ないしF−19及び、鉛塩、白金塩、イリジウム塩、ロジウム塩が含有されている。
【0233】
有機固体分散染料の分散物の調製
第12層の固体分散染料ExF−2を次の方法で調製した。
ExF−2のウエットケーキ(17.6質量%の水を含む)2.800kg
オクチルフェニルジエトキシメタンスルホン酸ナトリウム
(31質量%水溶液) 0.376kg
F−15(7%水溶液) 0.011kg
水 4.020kg
計 7.210kg
(NaOHでpH=7.2に調整)
【0234】
上記組成のスラリーをディゾルバーで攪拌して粗分散した後、アジテータミルLMK−4を用い、周速10m/s、吐出量0.6kg/min、0.3mm径のジルコニアビーズ充填率80%で分散液の吸光度比が0.29になるまで分散し、固体微粒子分散物を得た。染料微粒子の平均粒径は0.29μmであった。
【0235】
同様にして、固体分散染料ExF−4およびExF−7を得た。染料微粒子の平均粒径はそれぞれ、0.28μm、0.49μmであった。ExF−5は欧州特許第549,489Aの実施例1に記載の微小析出(Microprecipitation)分散方法により分散した。平均粒径は0.06μmであった。
【0236】
【表4】
【0237】
【表5】
【0238】
【表6】
【0239】
【表7】
【0240】
表7に記載の色素を以下に示す。
【化3】
【0241】
【化4】
【0242】
【化5】
【0243】
【化6】
【0244】
【化7】
【0245】
【化8】
【0246】
【化9】
【0247】
【化10】
【0248】
【化11】
【0249】
【化12】
【0250】
【化13】
【0251】
【化14】
【0252】
【化15】
【0253】
【化16】
【0254】
以下、各層に用いた化合物を示す。
【化17】
【0255】
【化18】
【0256】
【化19】
【0257】
【化20】
【0258】
【化21】
【0259】
【化22】
【0260】
【化23】
【0261】
【化24】
【0262】
【化25】
【0263】
【化26】
【0264】
【化27】
【0265】
【化28】
【0266】
【化29】
【0267】
【化30】
【0268】
上記のハロゲン化銀カラー写真感光材料を試料201とする。
上記試料201より、第4層の乳剤1を乳剤2〜4に変更することにより、試料202〜204を作成した。
【0269】
これらの試料を40℃、相対湿度70%の条件下で14時間硬膜処理を施した。その後、富士フイルム(株)製ゼラチンフィルターSC−39(カットオフ波長が390nmである長波長光透過フィルター)と連続ウェッジを通して1/100秒間露光した。現像は富士写真フイルム社製自動現像機FP−360Bを用いて以下により行った。尚、漂白浴のオーバーフロー液を後浴へ流さず、全て廃液タンクへ排出する様に改造を行った。このFP−360Bは発明協会公開技法94−4992号に記載の蒸発補正手段を搭載している。
【0270】
処理工程及び処理液組成を以下に示す。
【0271】
安定液及び定着液は(2)から(1)への向流方式であり、水洗水のオーバーフロー液は全て定着浴(2)へ導入した。尚、現像液の漂白工程への持ち込み量、漂白液の定着工程への持ち込み量、及び定着液の水洗工程への持ち込み量は感光材料35mm幅1.1m当たりそれぞれ2.5mL、2.0mL、2.0mLであった。また、クロスオーバーの時間はいずれも6秒であり、この時間は前工程の処理時間に包含される。
上記処理機の開口面積は発色現像液で100cm2、漂白液で120cm2、その他の処理液は約100cm2であった。
【0272】
以下に処理液の組成を示す。
【0273】
【0274】
(定着(1)タンク液)
上記漂白タンク液と下記定着タンク液の5対95(容量比)混合液
(pH6.8)
【0275】
【0276】
(水洗水)
水道水をH型強酸性カチオン交換樹脂(ロームアンドハース社製アンバーライトIR−120B)と、OH型強塩基性アニオン交換樹脂(同アンバーライトIR−400)を充填した混床式カラムに通水してカルシウム及びマグネシウムイオン濃度を3mg/L以下に処理し、続いて二塩化イソシアヌール酸ナトリウム20mg/Lと硫酸ナトリウム150mg/Lを添加した。この液のpHは6.5〜7.5の範囲にあった。
【0277】
【0278】
発色現像液の補充量を半分にして同様の処理を行い、現像処理依存性を評価した(処理液変動前後の感度変化)。また、実施例1と同じ方法で、保存性を評価した(経時前後の感度変化)。結果を表8に示す。
【0279】
【表8】
【0280】
表8から明らかなように、本発明の乳剤を低感度層に用いることにより感度が高くかつ保存性が良好でかつ現像処理依存性が改良された感材を得ることができることが判る。
【0281】
(実施例3)
(乳剤31の調製)
(ホスト粒子)
KBr1.00g、平均分子量20000の低分子量酸化処理ゼラチン1.10gを含む水溶液1300mLを35℃に保ち撹拌した。AgNO3(5.6g)水溶液とKBr(4.0g)と平均分子量20000の低分子量酸化処理ゼラチン(1g)を含む水溶液を60秒間に渡り添加した。KBr(2.6g)を含む水溶液を添加した後、55℃に昇温した。平均分子量100000のゼラチン30gを含む水溶液を添加した後、カテコールジスルホン酸ナトリウム塩を5.1g含む水溶液を添加した。ここで使用したゼラチンは、牛骨を原料とするアルカリ処理オセイン1番抽出ゼラチン(PAGI法により測定された分子量分布は、高分子量成分が2.5%、低分子量成分が60.0%)を、イオン交換処理を行ったものである。その後、第1成長としてAgNO3(225g)水溶液とKBr水溶液をダブルジェット法で流量加速して添加した。この時、銀電位を飽和カロメル電極に対して−10mVに保った。途中で6塩化イリジウムカリウム(0.17mg)を含む水溶液を添加した。AgNO3の添加終了時にベンゼンチオスルホン酸ナトリウム(1mg)を含む水溶液を添加した。その後、最外層成長としてAgNO3水溶液(32.1g)とKIを含むKBr水溶液を18分間に渡って添加した。KIの濃度は沃化銀含有率が4.0モル%になるように調整した。この時、銀電位を添加開始後20分間は飽和カロメル電極に対して−10mVに、その後は60mVに保ち、添加開始後10分で黄血塩(2.4mg)を含む水溶液を添加した。
【0282】
この後、ゼラチン10gを添加した。このゼラチンは、牛骨を原料とするアルカリ処理オセイン1番抽出ゼラチン(PAGI法により測定された分子量分布は、高分子量成分が2.5%、低分子量成分が60.0%)を特開2002−169241公報記載の詳細な説明に記載の架橋剤H−VI−3で架橋したゼラチンである。PAGI法により測定された分子量分布は、高分子量成分が12.4%、低分子量成分が48.3%である。
【0283】
温度を35℃に降温した後、フェノキシエタノール47mLを添加した。増感色素I、II、IIIをそれぞれ60:39:1のモル比で飽和被覆量の75%の比率で添加し、その後硝酸カルシウム(5.0×10−2mol)を添加した。但し増感色素は、特開平11−52507号公報に記載の方法で作成した固体微分散物として使用した。すなわち硝酸ナトリウム0.8質量部および硫酸ナトリウム3.2質量部をイオン交換水43質量部に溶解し、増感色素13質量部を添加し、60℃の条件下でディゾルバー翼を用い2000rpmで20分間分散することにより、増感色素の固体分散物を得た。
【0284】
(エピタキシャル形成部)
この後、塩化ナトリウム2.0gを含む水溶液を添加した後、AgNO3(8.0g)水溶液とNaCl(2.8g)を含む水溶液を45秒間に渡ってダブルジェット法で添加した。その後、AgNO3(0.37g)水溶液とKI(0.48g)水溶液と平均分子量20000の低分子量ゼラチンの水溶液を特開平10−43570号公報に記載の磁気カップリング誘導型攪拌機を有する別のチャンバ−内で添加直前混合して添加した。更にその後AgNO3(5.9g)水溶液とKBr(4.00g)水溶液と平均分子量20000の低分子量酸化処理ゼラチンの水溶液を特開平10−43570号公報に記載の磁気カップリング誘導型攪拌機を有する別のチャンバ−内で添加直前混合して添加した。その後エピタキシャル部形態安定化剤(化合物I)(40mg)を添加した。
【0285】
(水洗、後熟部)
続いて、通常の水洗を行なった。この時、温度は35℃に保った。前述のゼラチン45gを添加した後、40℃でpHを6.5に、銀電位をNaCl水溶液を用いて飽和カロメル電極に対して90mVに調整した。エピタキシャル部形態安定化剤兼保存性改良剤(化合物II)(7mg)を添加した後、54℃に昇温し、ハロゲン化銀1モルに対して、チオシアン酸カリウム(1.0×10−4モル)、塩化金酸(1.6×10−5モル)、チオ硫酸ナトリウム(4.0×10−5モル)およびN,N−ジメチルセレノ尿素(3.0×10−6モル)を添加し最適に化学増感を施した。エピタキシャル部形態安定化剤(化合物I)(10.0×10−4モル)添加して化学増感を終了した。
【0286】
本発明の乳剤は平均円相当径0.32μm、円相当径の変動係数15%、平均厚み0.096μm、平均アスペクト比5.0の平板粒子であった。また、全投影面積の70%以上が円相当径0.2μm以上0.6μm以下、厚み0.15μm以下の、最小の長さを有する辺の長さに対する最大の長さを有する辺の長さの比が5以下である主表面が(111)面の六角形平板粒子であり、少なくとも1つの頂点部にエピタキシャル部を有していた。さらに、エピタキシャル部以外の主表面部には転位線を持たず、かつエピタキシャル部に網目状の転位線を有するエピタキシャル平板粒子も全投影面積の70%以上を占めいることが、低温での透過電子顕微鏡観察によって確認された。
【0287】
また、全投影面積の85%がホスト平板粒子から外側に突出した部分の最も高い高さ(depi)とホスト平板粒子の厚み(dhost)の比(depi/dhost)が、depi/dhostの平均値に対して±30%以内の範囲にある前記エピタキシャル平板粒子で占められていた。この値は本文記載の分析電顕を用いた手法にて求めた。本粒子は4.0モル%の沃化銀を含有する最外層が銀換算で18%の粒子である。
エピタキシャル部は銀換算で10%である。また全投影面積の70%以上が平均塩化銀含有率および平均沃化銀含有率に対して30%以内の範囲に入っていた。
【0288】
(乳剤32の調製)
乳剤31よりエピタキシャル形成部を以下の如く変更することにより乳剤32を調製した。
この後、塩化ナトリウム2.0gを含む水溶液を添加した後、AgNO3(8.0g)水溶液とNaCl(2.8g)を含む水溶液を45秒間に渡ってダブルジェット法で添加した。その後、AgNO3(0.37g)水溶液とKI(0.48g)水溶液と平均分子量20000の低分子量ゼラチンの水溶液を特開平10−43570号公報に記載の磁気カップリング誘導型攪拌機を有する別のチャンバ−内で添加直前混合して添加した。更にその後AgNO3(5.9g)水溶液とKBr(4.00g)水溶液とをダブルジェットで添加した。その後エピタキシャル部形態安定化剤(化合物I)(40mg)を添加した。
【0289】
(乳剤33の調製)
乳剤31よりエピタキシャル形成部を以下の如く変更することにより乳剤33を調製した。
塩化ナトリウム2.0gを含む水溶液を添加した後、AgNO3(14.3g)水溶液とNaCl(2.8g)とKI(0.48g)とKBr(4.00g)を含む水溶液を15分間に渡ってダブルジェット法で添加した。その後エピタキシャル部形態安定化剤I(40mg)を添加した。
【0290】
(乳剤34の調製)
乳剤33よりエピタキシャル形成部を以下の如く変更することにより乳剤34を調製した。
塩化ナトリウム2.0gを含む水溶液を添加した後、AgNO3(14.3)水溶液とNaCl(2.8g)とKI(0.48g)とKBr(4.00g)を含む水溶液と平均分子量20000の低分子量ゼラチンの水溶液を特開平10−43570号公報に記載の磁気カップリング誘導型攪拌機を有する別のチャンバ−内で添加直前混合して添加した。その後エピタキシャル部形態安定化剤I(40mg)を添加した。
【0291】
乳剤31から34の特性値を表9にまとめて示した。
【0292】
【表9】
【0293】
下塗り層を設けてある三酢酸セルロースフィルム支持体に前述実施例1の表2に示すような塗布条件で上記の化学増感を施した乳剤を保護層を設けて塗布し、試料No.301〜304を作成し、実施例1と同じ実験をおこなった。
【0294】
【表10】
【0295】
表10の結果から明らかなように、本発明の全投影面積の70%以上が少なくとも一つの頂点部にエピタキシャル部を有し、depi/dhostが平均値の±30%の範囲内にある平板粒子を用いることにより、高感度で保存後の感度変化が小さい感光材料が得られる。更に、エピタキシャル部に少なくとも1本の転位線を有する平板粒子をもちいることにより高感度な感光材料が得られる。
【0296】
(実施例4)
実施例2の試料201より、第4層の乳剤1を乳剤31〜34に置き換えることにより、試料301〜304を作成し、実施例2と同様の実験を行った。結果を表11に示す。
【0297】
【表11】
【0298】
表11から明らかなように、本発明の乳剤を低感度層に用いることにより感度が高くかつ保存性が良好でかつ現像処理依存性が改良された感材を得ることができることが判る。
【0299】
(実施例5)
実施例1の乳剤1〜4より、増感色素種を表6記載の増感色素5,6,9に変更して、乳剤51〜54を調製した。増感色素のモル比率は、増感色素5:増感色素6:増感色素7=26:30:44とし、色素による被覆率は同等にした。
乳剤51〜55を使用して、実施例1の試料101〜104と同様に試料を作成して評価した結果、試料101と同等の結果が得られた。
【0300】
(実施例6)
実施例2の試料201より、表12の如く乳剤を変更して試料601〜604を作成し、試料201〜204と同等の評価を行った結果、表13の結果が得られた。
【0301】
【表12】
【0302】
【表13】
【0303】
表13から明らかなように、本発明の乳剤を低感度層に用いることにより感度が高くかつ保存性が良好でかつ現像処理依存性が改良された感材を得ることができることが判る。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、エピタキシャル平板粒子の一態様の断面図
【図2】図2は、エピタキシャル平板粒子の一態様の部分平面図
【図3】図3は、エピタキシャル平板粒子の一態様の断面図
Claims (8)
- 分散媒とハロゲン化銀粒子とを含有するハロゲン化銀乳剤において、該ハロゲン化銀粒子の全投影面積の70%以上がホスト平板粒子とエピタキシャル部からなり下記(i)、(ii)および(iii)要件を満たすエピタキシャル平板粒子で占められていることを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
(i)(111)面を主表面とする沃塩臭化銀平板粒子
(ii)ホスト粒子の少なくとも一つの頂点部にエピタキシャル部を有する
(iii) 粒子内の少なくとも1つのエピタキシャル部が、ホスト平板粒子から外側に突出した部分において、ホスト平板粒子側の1/3の体積部分をa部分、残りをb部分としたとき、aの部分の平均塩化銀含有率(mol%)(Cla)とbの部分の平均塩化銀含有率(mol%)(Clb)の比(Cla/Clb)が1より小さいという条件を満たす。 - 前記Cla、Clbが共に50mol%以下であることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
- 全粒子の円相当径の変動係数が30%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
- 前記エピタキシャル部に少なくとも1本の転位線を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
- 分散媒とハロゲン化銀粒子とを含有するハロゲン化銀乳剤において、該ハロゲン化銀粒子の全投影面積の70%以上がホスト平板粒子とエピタキシャル部からなり下記(i)、(ii)および(iii’)要件を満たすエピタキシャル平板粒子で占められていることを特徴とするハロゲン化銀写真乳剤。
(i)(111)面を主表面とする沃塩臭化銀平板粒子
(ii)ホスト粒子の少なくとも一つの頂点部にエピタキシャル部を有する
(iii’)前記エピタキシャル部で、ホスト平板粒子からホスト平板粒子の主表面に垂直な方向に突出した部分の最も高い高さ(depi)とホスト平板粒子の厚み(dhost)の比(depi/dhost)が、depi/dhostの平均値に対して±30%以内の範囲にある - 全粒子の円相当径の変動係数が30%以下であることを特徴とする請求項5に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
- エピタキシャル部に少なくとも1本の転位線を有することを特徴とする請求項5または6に記載のハロゲン化銀写真乳剤。
- 請求項1ないし7のいずれか一項に記載のハロゲン化銀写真乳剤を含有するハロゲン化銀写真感光材料。
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