JP4096185B2 - 液体噴射ヘッド及びその製造方法並びに液体噴射装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液滴を噴射する液体噴射ヘッド及びその製造方法並びに液体噴射装置に関し、特に、ノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板の表面に圧電素子を形成して、圧電素子の変位によりインクを吐出するインクジェット式記録ヘッド及びその製造方法並びにインクジェット式記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドには、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦振動モードの圧電アクチュエータを使用したものと、たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものの2種類が実用化されている。
【0003】
そして、たわみ振動モードのアクチュエータを使用したものとしては、例えば、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧電体層を形成し、この圧電体層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて各圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成したものが知られている。
【0004】
また、このような圧電素子を有するインクジェット式記録ヘッドでは、この圧電素子の下電極を圧力発生室に対向する領域にパターニングすることで、振動板の初期撓みを抑え、圧電素子の駆動による振動板の変位量を増加させた構造がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−326503号公報(第7図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、パターニングされた下電極上に圧電体層を形成しようとすると、下電極の端部を覆う部分及び振動板上に形成される圧電体層の膜質が悪く、駆動信頼性に欠けるという問題がある。すなわち、下電極上の圧電体層と、振動板上の圧電体層とで結晶性等の特性が異なってしまい、圧電体層は下電極の端部近傍で実質的に不連続となる。このため、圧電体層に電圧を印加するとクラック等の破壊が生じてしまうという問題がある。特に、下電極の長手方向の端部に対応する領域の圧電体層が破壊されやすい。なお、このような問題は、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッドだけではなく、勿論、インク以外の液滴を吐出する他の液体噴射ヘッドにおいても、同様に存在する。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑み、圧電体層の破壊を防止でき圧電素子の安定した変位特性が得られる液体噴射ヘッド及びその製造方法並びに液体噴射装置を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室が形成される流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側の領域に振動板を介して設けられた下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子とを具備する液体噴射ヘッドであって、前記圧電素子を構成する前記下電極の少なくとも一方の端部が、前記圧力発生室に対向する領域内でパターニングされ、前記圧電体層が複数層の強誘電体膜で構成されていると共にこれら複数層の強誘電体膜のうちの最下層である第1の強誘電体膜が前記下電極上のみに形成され且つ他の強誘電体膜が前記下電極の一方の端面及び第1の強誘電体膜の端面を覆って形成され、前記第1の強誘電体膜及び当該第1の強誘電体膜上に形成される第2の強誘電体膜の結晶密度が、この第2の強誘電体膜上に形成される残りの強誘電体膜のそれぞれの結晶密度よりも高いことを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0009】
かかる第1の態様では、圧電体層の結晶性等の膜質が向上する。特に、下電極の端面及び振動板上の圧電体層の膜質が向上し、良好な圧電特性が得られる。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記第1の強誘電体膜及び当該第1の強誘電体膜上に形成される第2の強誘電体膜の厚さが、この第2の強誘電体膜上に形成される残りの強誘電体膜のそれぞれの厚さよりも薄いことを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0011】
かかる第2の態様では、圧電体層の膜質がより確実に向上する。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記下電極及び前記第1の強誘電体膜の端面が、前記振動板に対して傾斜する傾斜面となっていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0013】
かかる第3の態様では、下電極及び第1の強誘電体膜上に形成される第2の強誘電体膜等の膜質が向上し、電圧印加時にクラック等の発生が防止される。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記圧電体層の結晶の核となる結晶種が前記第1の強誘電体膜上から前記振動板の表面に亘って連続的に形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0015】
かかる第4の態様では、結晶種により第2の強誘電体膜の結晶構造が一方向に配向して略一様に形成されるため、圧電体層の膜質が確実に向上する。
【0016】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記圧電体層の端部近傍の前記振動板上に、前記下電極と電気的に切断された金属層を有することを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0017】
かかる第5の態様では、強誘電体膜を焼成する際に、強誘電体膜が全体的に略均一に加熱される。
【0018】
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
【0019】
かかる第6の態様では、信頼性を向上した液体噴射装置を実現することができる。
【0020】
本発明の第7の態様は、液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室が形成される流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側の領域に振動板を介して設けられた下電極膜と、該下電極膜上に設けられ複数層の強誘電体膜で構成される圧電体層と、該圧電体層上に設けられた上電極膜とからなる圧電素子とを具備し、前記圧電素子を構成する前記下電極膜の少なくとも一方の端部が、前記圧力発生室に対向する領域内でパターニングされ、前記圧電体層が複数の強誘電体膜で構成されていると共にこれら複数の強誘電体膜のうちの最下層である第1の強誘電体膜が前記下電極膜上のみに形成され且つ他の強誘電体膜が前記下電極膜の一方の端面及び第1の強誘電体膜の端面を覆って形成された液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記流路形成基板の表面に前記下電極膜を形成する工程と、当該下電極膜上に強誘電体前駆体膜を所定厚さで形成し、それを脱脂及び焼成することで前記第1の強誘電体膜とする工程と、前記下電極膜及び第1の強誘電体膜を所定形状にパターニングする工程と、前記第1の強誘電体膜上に強誘電体前駆体膜を所定厚さで形成し、それを脱脂及び焼成することで第2の強誘電体膜とする工程と、この第2の強誘電体膜上に強誘電体前駆体膜を所定厚さで形成しそれを脱脂及び焼成して前記強誘電体膜を形成する工程を複数回繰り返すことにより前記第2の強誘電体膜上に残りの強誘電体膜を形成して所定厚さの前記圧電体層を形成する工程と、前記圧電体層上に前記上電極膜を形成後、当該上電極膜及び前記圧電体層をパターニングして前記圧電素子を形成する工程とを有し、且つ前記第1及び第2の強誘電体膜を脱脂する際に、前記残りの強誘電体膜を脱脂する際の昇温レートよりも低い昇温レートで加熱することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
【0021】
かかる第7の態様では、圧電体層の膜質、特に下電極膜の端面及び振動板上の圧電体層の膜質が向上する。
【0022】
本発明の第8の態様は、第7の態様において、前記強誘電体前駆体膜を一層形成後、脱脂及び焼成することで前記第1及び第2の強誘電体膜を形成し、前記強誘電体膜を二層以上形成後、脱脂及び焼成することで残りの強誘電体膜を形成することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
【0023】
かかる第8の態様では、圧電体層の膜質を向上できると共に製造効率を向上することができる。
【0024】
本発明の第9の態様は、第7又は8の態様において、前記下電極膜及び前記第1の強誘電体膜をパターニングする工程の後に、前記圧電体層の結晶の核となる結晶種を、前記第1の強誘電体膜上から前記振動板の表面に亘って連続的に形成する工程を有することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
【0025】
かかる第9の態様では、結晶種により第2の強誘電体膜の結晶構造が一方向に配向して略一様に形成されるため、圧電体層の膜質が確実に向上する。
【0026】
本発明の第10の態様は、第7〜9の何れかの態様において、前記下電極膜及び前記第1の強誘電体膜をイオンミリングによってパターニングすることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
【0027】
かかる第10の態様では、下電極膜及び第1の強誘電体膜を比較的容易に所望の形状にパターニングすることができる。
【0028】
本発明の第11の態様は、第7〜10の何れかの態様において、前記強誘電体前駆体膜ゾル−ゲル法により形成することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法にある。
【0029】
かかる第11の態様では、圧電体層を比較的容易且つ良好な膜質で形成することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を一実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドの概略を示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びA−A’断面図であり、図3は、圧電素子の層構造を示す概略図である。図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化により形成した二酸化シリコンからなる、厚さ1〜2μmの弾性膜50が形成されている。流路形成基板10には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14を介して連通されている。なお、連通部13は、後述する封止基板30のリザーバ部32と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100の一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。
【0031】
このような圧力発生室12等は、弾性膜50とは反対側の面から流路形成基板10を異方性エッチングすることによって形成されている。異方性エッチングは、シリコン単結晶基板のエッチングレートの違いを利用して行われる。例えば、本実施形態では、流路形成基板10が面方位(110)のシリコン単結晶基板からなるため、シリコン単結晶基板の(110)面のエッチングレートと比較して(111)面のエッチングレートが約1/180であるという性質を利用して行われる。すなわち、シリコン単結晶基板をKOH等のアルカリ溶液に浸漬すると、徐々に侵食されて(110)面に垂直な第1の(111)面と、この第1の(111)面と約70度の角度をなし且つ上記(110)面と約35度の角度をなす第2の(111)面とが出現する。かかる異方性エッチングにより、二つの第1の(111)面と斜めの二つの第2の(111)面とで形成される平行四辺形状の深さ加工を基本として精密加工を行うことができ、圧力発生室12を高密度に配列することができる。
【0032】
本実施形態では、各圧力発生室12の長辺を第1の(111)面で、短辺を第2の(111)面で形成している。この圧力発生室12は、流路形成基板10をほぼ貫通して弾性膜50に達するまでエッチングすることにより形成されている。なお、弾性膜50は、シリコン単結晶基板をエッチングするアルカリ溶液に侵される量がきわめて小さい。
【0033】
このような圧力発生室12等が形成される流路形成基板10の厚さは、圧力発生室12を配設する密度に合わせて最適な厚さを選択することが好ましい。例えば、1インチ当たり180個(180dpi)程度に圧力発生室12を配置する場合には、流路形成基板10の厚さは、180〜280μm程度、より望ましくは、220μm程度とするのが好適である。また、例えば、360dpi程度と比較的高密度に圧力発生室12を配置する場合には、流路形成基板10の厚さは、100μm以下とするのが好ましい。これは、隣接する圧力発生室12間の隔壁11の剛性を保ちつつ、配列密度を高くできるからである。
【0034】
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が接着剤や熱溶着フィルム等を介して固着されている。なお、ノズルプレート20は、厚さが例えば、0.1〜1mmで、線膨張係数が300℃以下で、例えば2.5〜4.5[×10-6/℃]であるガラスセラミックス、シリコン単結晶基板又は不錆鋼などからなる。ここで、インク滴吐出圧力をインクに与える圧力発生室12の大きさと、インク滴を吐出するノズル開口21の大きさとは、吐出するインク滴の量、吐出スピード、吐出周波数に応じて最適化される。例えば、1インチ当たり360個のインク滴を記録する場合、ノズル開口21は数十μmの直径で精度よく形成する必要がある。
【0035】
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、厚さが例えば約1.0μmの弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、厚さが例えば、約0.4μmの絶縁体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には、厚さが例えば、約0.2μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約1.0μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、下電極膜60は圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室毎に圧電体能動部が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせて圧電アクチュエータと称する。
【0036】
ここで、圧電素子300を構成する下電極膜60は、圧力発生室12の両端部近傍でそれぞれパターニングされ、圧力発生室12の並設方向に沿って連続的に設けられている。また、本実施形態では、各圧力発生室12に対向する領域の下電極膜60の端面は、絶縁体膜55に対して所定角度で傾斜する傾斜面となっている。
【0037】
また、圧電体層70は、各圧力発生室12毎に独立して設けられ、図3に示すように、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の強誘電材料からなる複数層の強誘電体膜71(71a〜71f)で構成され、それらのうちの最下層である第1の強誘電体膜71aは下電極膜60上のみに設けられている。そして、この第1の強誘電体膜71aの端面は、下電極膜60の端面に連続する傾斜面となっている。また、この第1の強誘電体膜71a上に形成される第2〜6の強誘電体膜71b〜71fは、第1の強誘電体膜71a上から絶縁体膜55上まで、第1の強誘電体膜71a及び下電極膜60の傾斜した端面を覆って設けられている。
【0038】
ここで、第1の強誘電体膜71a及びこの第1の強誘電体膜71a上に形成される第2の強誘電体膜71bは、残りの第3〜第6の強誘電体膜71c〜71fよりも結晶密度が高くなるように形成されている。これにより、各強誘電体膜71の結晶の配向性、緻密性が向上し、圧電体層70の膜質を著しく向上することができる。
また、第1の強誘電体膜71a及び第2の強誘電体膜71bは、他の強誘電体膜71c〜71fよりも薄く形成されていることが好ましい。例えば、本実施形態では、第1及び第2の強誘電体膜71a,71bが、約0.1μmの厚さで形成され、他の第3〜第6の強誘電体膜71c〜71fが、約0.2μmの厚さで形成されている。
【0039】
なお、上電極膜80は、圧電体層70と同様に各圧力発生室12毎に独立して設けられている。そして、各上電極膜80には、例えば、金(Au)等からなる絶縁体膜55上まで延設されるリード電極90がそれぞれ接続されている。
また、このような圧電素子300が形成された流路形成基板10上には、圧電素子300に対向する領域に、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を確保した状態で、その空間を密封可能な圧電素子保持部31を有する封止基板30が接合されている。また、封止基板30には、各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ100の少なくとも一部を構成するリザーバ部32が設けられている。さらに、封止基板30上には、剛性が低く可撓性を有する材料で形成される封止膜41と金属等の硬質の材料で形成される固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。なお、固定板42のリザーバ100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部43となっており、リザーバ100の一方面は封止膜41のみで封止されている。
【0040】
このような本実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、図示しない外部インク供給手段からインクを取り込み、リザーバ100からノズル開口21に至るまで内部をインクで満たした後、図示しない駆動回路からの記録信号に従い、外部配線を介して圧力発生室12に対応するそれぞれの下電極膜60と上電極膜80との間に電圧を印加し、弾性膜50、絶縁体膜55、下電極膜60及び圧電体層70をたわみ変形させることにより、各圧力発生室12内の圧力が高まりノズル開口21からインク滴が吐出する。
【0041】
以下、このような本実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドの製造方法、特に、圧電素子の形成方法について図4〜図8を参照して説明する。まず、図4(a)に示すように、流路形成基板10となるシリコンウェハ110を約1100℃の拡散炉で熱酸化して弾性膜50及びマスク膜51を構成する二酸化シリコン膜52を全面に形成する。次いで、図4(b)に示すように、弾性膜50(二酸化シリコン膜52)上に、ジルコニウム(Zr)層を形成後、例えば、500〜1200℃の拡散炉で熱酸化して酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる絶縁体膜55を形成する。次いで、図4(c)に示すように、例えば、白金とイリジウムとからなる下電極膜60を絶縁体膜55上に形成する。この下電極膜60の材料としては、白金、イリジウム等が好適である。これは、スパッタリング法やゾル−ゲル法で成膜する後述の圧電体層70は、成膜後に大気雰囲気下又は酸素雰囲気下で600〜1000℃程度の温度で焼成して結晶化させる必要があるからである。すなわち、下電極膜60の材料は、このような高温、酸化雰囲気下で導電性を保持できなければならず、本実施形態のように、圧電体層70としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いる場合には、酸化鉛の拡散による導電性の変化が少ないことが望ましく、これらの理由から白金、イリジウム等が好適である。
【0042】
次いで、下電極膜60上に圧電体層70を形成する。圧電体層70は、上述したように複数層の強誘電体膜71a〜71fを積層することによって形成され、本実施形態では、これらの強誘電体膜71をいわゆるゾル−ゲル法を用いて形成している。すなわち、金属有機物を触媒に溶解・分散しゾルを塗布乾燥しゲル化して強誘電体前駆体膜72を形成し、さらにこの強誘電体前駆体膜72を脱脂して有機成分を離脱させた後、焼成して結晶化させることで各強誘電体膜71を得ている。
【0043】
具体的には、まず、図5(a)に示すように、下電極膜60上に、チタン又は酸化チタンからなる結晶種(層)65をスパッタ法により形成する。次いで、図5(b)に示すように、例えば、スピンコート法等の塗布法により未結晶の強誘電体前駆体膜72aを所定の厚さ、本実施形態では、一層当たりの焼成後の厚みが0.1μm程度になるように形成する。なお、強誘電体前駆体膜72aは、一度の塗布によって約0.15μm程度の厚さで形成される。次いで、この強誘電体前駆体膜72aを所定温度で所定時間乾燥させて溶媒を蒸発させる。強誘電体前駆体膜72aを乾燥させる温度は、例えば、150℃以上200℃以下であることが好ましく、好適には180℃程度である。また、乾燥させる時間は、例えば、5分以上15分以下であることが好ましく、好適には10分程度である。
【0044】
そして、乾燥した強誘電体前駆体膜72aを所定温度で脱脂する。なお、ここで言う脱脂とは、強誘電体前駆体膜72aの有機成分、例えば、NO2、CO2、H2O等を離脱させることである。なお、脱脂時のシリコンウェハ110の加熱温度は、300℃以上500℃以下の範囲が好ましい。温度が高すぎると強誘電体前駆体膜72aの結晶化が始まってしまい、温度が低すぎると十分な脱脂が行えないためである。例えば、本実施形態では、ホットプレートによってシリコンウェハ110を400℃程度に加熱して、強誘電体前駆体膜72aの脱脂を行った。また、本発明では、この脱脂時の昇温レートを、後の工程で形成される強誘電体膜71c〜71fの場合よりも低くしている。この脱脂時の昇温レートは、具体的には、例えば、250℃から400℃に上昇する際に1.5〜2℃/秒程度の昇温レートであることが好ましい。これにより、強誘電体前駆体膜72aに結晶核を多く発生させることができるため、後述する焼成工程を経て得られる第1の強誘電体膜71aの緻密性及び配向性が向上する。
このように強誘電体前駆体膜72aの脱脂を行った後、シリコンウェハ110を所定の拡散炉に挿入し、強誘電体前駆体膜72aを約700℃の高温で焼成して結晶化することにより、最下層の強誘電体膜である第1の強誘電体膜71aとする。
【0045】
次に、下電極膜60と第1の強誘電体膜71aとを同時にパターニングする。具体的には、まず図5(c)に示すように、第1の強誘電体膜71a上にレジストを塗布してマスクを用いて露光し現像することにより所定パターンのレジスト膜200を形成する。ここで、レジストは、例えば、ネガレジストをスピンコート法等により塗布して形成し、レジスト膜200は、その後、所定のマスクを用いて露光・現像・ベークを行うことにより形成する。勿論、ネガレジストの代わりにポジレジストを用いてもよい。また、本実施形態では、レジスト膜200の端面201が所定角度で傾斜するように形成している。このレジスト膜200の端面の傾斜角度は、ポストベークの時間が長いほど小さくなる。また、過剰に露光することによっても傾斜角度を調整することができる。
【0046】
そして、図6(a)に示すように、このようなレジスト膜200を介して下電極膜60及び第1の強誘電体膜71aをイオンミリングによってパターニングする。このとき、これら下電極膜60及び第1の強誘電体膜71aは、レジスト膜200の傾斜した端面201に沿ってパターニングされ、これらの端面は、振動板に対して所定角度で傾斜する傾斜面となる。このように下電極膜60及び第1の強誘電体膜71aの端面を傾斜面とすることで、第1の強誘電体膜71a上に他の強誘電体膜を良好な膜質で形成することができる。
【0047】
次に、図6(b)に示すように、第1の強誘電体膜71a上を含むシリコンウェハ110の全面に、再び結晶種(層)65Aを形成後、スピンコート法等により強誘電体前駆体膜72bを所定厚さ、本実施形態では、約0.15μmの厚さで形成する。そして、この強誘電体前駆体膜72bを乾燥・脱脂・焼成することにより第2の強誘電体膜71bを形成する。なお、この第2の強誘電体膜71bとなる強誘電体前駆体膜72bの脱脂時も、第1の強誘電体膜71aの場合と同様に、強誘電体前駆体膜72bの昇温レートは比較的低くすることが好ましい。これにより、強誘電体前駆体膜72bに結晶核を多数良好に発生させることができる。すなわち、下電極膜60に対向する領域から絶縁体膜55に対向する領域まで多数の結晶核が略均等に形成された第2の強誘電体膜71bが得られる。
【0048】
次いで、図6(c)に示すように、この第2の強誘電体膜71b上に強誘電体前駆体膜72cを所定の厚さ、本実施形態では、焼成後で0.2μmの厚さとなるように形成する。一度の塗布による強誘電体前駆体膜72cの厚さは、約0.15μm程度であり、本実施形態では、二度の塗布により所望の厚さの強誘電体前駆体膜72cを得ている。次いで、この強誘電体前駆体膜72cを乾燥・脱脂後、焼成して結晶化させて強誘電体膜71cとする。そして、このように、二度の塗布によって強誘電体前駆体膜72c〜72fを形成する工程と、その強誘電体前駆体膜72c〜72fを乾燥・脱脂後、焼成する工程とを複数回、本実施形態では、4回繰り返すことにより、第3〜第6の強誘電体膜71c〜71fを形成する。これにより、複数層の強誘電体膜71a〜71fからなり、厚さが約1μmの圧電体層70が形成される。
【0049】
ここで、これら第3〜第6の強誘電体膜71c〜71fを構成する強誘電体前駆体膜72c〜72fを脱脂する際、その昇温レートを比較的高く、例えば、第1及び第2の強誘電体膜71a,71bを構成する強誘電体前駆体膜72a,72bを脱脂する際の昇温レートよりも高くしている。これにより、第3〜第6の強誘電体膜71c〜71fとなる強誘電体前駆体膜72c〜72fには結晶核が形成されにくくなる。このため、強誘電体前駆体膜72c〜72fを焼成すると、それ以前に結晶化された強誘電体膜71a,71bの結晶を核として結晶が成長する。すなわち、第3〜第6の強誘電体膜71c〜71fの結晶は、優先配向しており、且つ第2の強誘電体膜71bの結晶から連続して柱状に形成される。また、各強誘電体膜71b〜71fは、下電極膜60に対向する領域から絶縁体膜55に対向するまで連続して良好に結晶化される。
【0050】
なお、優先配向とは、結晶の配向方向が無秩序ではなく、特定の結晶面がほぼ一定の方向に向いている状態をいう。また、結晶が柱状の薄膜とは、略円柱体の結晶が中心軸を厚さ方向に略一致させた状態で面方向に亘って集合して薄膜を形成している状態をいう。
このように形成される圧電体層70(強誘電体膜71)の材料として、本実施形態では、チタン酸ジルコン酸鉛系の材料を用いたが、インクジェット式記録ヘッドに使用する材料としては、良好な変位特性を得られればチタン酸ジルコン酸鉛系の材料に限定されない。
【0051】
そして、このような複数層の強誘電体膜71a〜71fからなる圧電体層70を形成した後は、図7(a)に示すように、例えば、イリジウム(Ir)からなる上電極膜80を積層形成し、圧電体層70及び上電極膜80を各圧力発生室12に対向する領域内にパターニングして圧電素子300を形成する(図7(b))。
【0052】
以上説明したように、本実施形態では、圧電体層70を構成する第1及び第2の強誘電体膜71a,71bを形成する際に比較的低い昇温レートで強誘電体前駆体膜72a,72bを脱脂し、且つ残りの第3〜第6の強誘電体膜71c〜71fを形成する際に、比較的高い昇温レートで強誘電体前駆体膜72c〜72fを脱脂するようにした。これにより、第1及び第2の強誘電体膜71a,71bは、結晶核が多く発生し結晶の緻密性、配向性が大幅に向上する。また、第3〜第6の強誘電体膜71c〜71fの結晶は、第2の強誘電体膜71bの結晶を核として連続的に良好に形成される。したがって、圧電体層70の膜質が向上すると共に、全ての部分の膜質が略均一となる。よって、圧電素子300に電圧を印加した際に良好な変位特性が得られ、また、比較的高い電圧を印加しても圧電体層70が破壊されることがなく、信頼性に優れた圧電素子300が得られる。
【0053】
なお、その後は、図8(a)に示すように、金(Au)からなる金属層を流路形成基板10の全面に亘って形成後、例えば、レジスト等からなるマスクパターン(図示なし)を介してこの金属層を各圧電素子300毎にパターニングすることによってリード電極90を形成する。そして、このようにして膜形成を行った後、図8(b)に示すように、シリコンウェハ110に封止基板30を接合し、所定形状にパターニングしたマスク膜51を介してシリコンウェハ110をエッチングすることにより圧力発生室12等を形成する。なお、実際には、上述した一連の膜形成及び異方性エッチングによって一枚のシリコンウェハ上に多数のチップを同時に形成し、上記プロセス終了後、上述したノズルプレート20及びコンプライアンス基板40を接着して一体化し、その後、図1に示すような一つのチップサイズの流路形成基板10毎に分割することによってインクジェット式記録ヘッドとする。
【0054】
(実施形態2)
図9は、実施形態2に係るインクジェット式記録ヘッドの平面図及び断面図である。
本実施形態は、圧電体層の端部近傍の振動板上に金属層を設けるようにした例である。すなわち、図9に示すように、圧電体層70の長手方向端部近傍に、下電極膜60と同一の層からなるが下電極膜60とは電気的に切断された金属層61が設けられている。そして、圧電体層70は、これらの金属層61上の一部までそれぞれ延設されている。
【0055】
なお、本実施形態では、圧電体層70のリード電極90側の端部近傍に設けられる金属層61Aは、各圧電素子毎に分離して設けられており、リード電極90がこの金属層61A上に延設されている。一方、リード電極90とは反対側の端部近傍に設けられる金属層61Bは、複数の圧電素子300に対応する領域に連続的に設けられている。
【0056】
このような構成では、焼成時に、圧電体層70となる強誘電体膜71を略均一に加熱することができ、均一な圧電特性を有する圧電体層70を形成できる。すなわち、酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜55は、下電極膜60に比べて近赤外線の吸収率が低いため、下電極膜60が形成されていない領域では、焼成時に温度上昇が鈍くなる。このため圧電体層70の下電極膜60に対応する領域とそれ以外の領域とで、圧電特性が均一にならない場合がある。しかしながら、本実施形態では、圧電体層70の両端部に対応する領域に金属層61A,61Bを設けるようにしたので、焼成時に強誘電体膜71を均一に加熱することができ、全体的に均一な圧電特性を有する圧電体層70を形成することができる。
【0057】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では、第2の強誘電体膜71b上に形成する第3〜第6の強誘電体膜71c〜71fは、二度の塗布により第3〜第6の強誘電体前駆体膜72c〜72fを形成後、これら第3〜第6の強誘電体前駆体膜72c〜72fを焼成することによって形成しているが、勿論、一度の塗布により形成した強誘電体前駆体膜を焼成することによって形成してもよい。また、上述の実施形態では、第1の強誘電体膜71a及び下電極膜60の端面が振動板に対して傾斜するように形成したが、勿論、振動板に対して略垂直な端面であってもよい。また、上述の実施形態では、下電極膜60が並設された圧力発生室12に対応する領域に亘って連続的に設けられているが、これに限定されず、例えば、下電極膜60を櫛歯状に形成し、各圧力発生室12に対向する領域の下電極膜60が実質的に独立するようにしてもよい。
【0058】
このような各実施形態のインクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図10は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。図10に示すように、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1A及び1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1A及び1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。そして、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8上に搬送されるようになっている。
【0059】
また、液体噴射ヘッドとしてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッドを一例として説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものである。液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図。
【図2】 実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及び断面図。
【図3】 実施形態1に係る圧電素子の層構造を示す概略図。
【図4】 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図。
【図5】 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図。
【図6】 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図。
【図7】 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図。
【図8】 実施形態1に係る記録ヘッドの製造工程を示す断面図。
【図9】 実施形態2に係る記録ヘッドの平面図及び断面図。
【図10】 本発明の一実施形態に係る記録装置の概略図。
【符号の説明】
10 流路形成基板、 12 圧力発生室、 20 ノズルプレート、 21ノズル開口、 30 封止基板、 40 コンプライアンス基板、 50 弾性膜、 55 絶縁体膜、 60 下電極膜、 70 圧電体層、 71 強誘電体膜、 72 強誘電体前駆体膜、 80 上電極膜、 90 リード電極、
300 圧電素子
Claims (11)
- 液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室が形成される流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側の領域に振動板を介して設けられた下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子とを具備する液体噴射ヘッドであって、
前記圧電素子を構成する前記下電極の少なくとも一方の端部が、前記圧力発生室に対向する領域内でパターニングされ、前記圧電体層が複数層の強誘電体膜で構成されていると共にこれら複数層の強誘電体膜のうちの最下層である第1の強誘電体膜が前記下電極上のみに形成され且つ他の強誘電体膜が前記下電極の一方の端面及び第1の強誘電体膜の端面を覆って形成され、前記第1の強誘電体膜及び当該第1の強誘電体膜上に形成される第2の強誘電体膜の結晶密度が、この第2の強誘電体膜上に形成される残りの強誘電体膜のそれぞれの結晶密度よりも高いことを特徴とする液体噴射ヘッド。 - 請求項1において、前記第1の強誘電体膜及び当該第1の強誘電体膜上に形成される第2の強誘電体膜の厚さが、この第2の強誘電体膜上に形成される残りの強誘電体膜のそれぞれの厚さよりも薄いことを特徴とする液体噴射ヘッド。
- 請求項1又は2において、前記下電極及び前記第1の強誘電体膜の端面が、前記振動板に対して傾斜する傾斜面となっていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
- 請求項1〜3の何れかにおいて、前記圧電体層の結晶の核となる結晶種が前記第1の強誘電体膜上から前記振動板の表面に亘って連続的に形成されていることを特徴とする液体噴射ヘッド。
- 請求項1〜4の何れかにおいて、前記圧電体層の端部近傍の前記振動板上に、前記下電極と電気的に切断された金属層を有することを特徴とする液体噴射ヘッド。
- 請求項1〜5の何れかの液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
- 液体を噴射するノズル開口に連通する圧力発生室が形成される流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側の領域に振動板を介して設けられた下電極膜と、該下電極膜上に設けられ複数層の強誘電体膜で構成される圧電体層と、該圧電体層上に設けられた上電極膜とからなる圧電素子とを具備し、前記圧電素子を構成する前記下電極膜の少なくとも一方の端部が、前記圧力発生室に対向する領域内でパターニングされ、前記圧電体層が複数の強誘電体膜で構成されていると共にこれら複数の強誘電体膜のうちの最下層である第1の強誘電体膜が前記下電極膜上のみに形成され且つ他の強誘電体膜が前記下電極膜の一方の端面及び第1の強誘電体膜の端面を覆って形成された液体噴射ヘッドの製造方法であって、
前記流路形成基板の表面に前記下電極膜を形成する工程と、当該下電極膜上に強誘電体前駆体膜を所定厚さで形成し、それを脱脂及び焼成することで前記第1の強誘電体膜とする工程と、前記下電極膜及び第1の強誘電体膜を所定形状にパターニングする工程と、前記第1の強誘電体膜上に強誘電体前駆体を所定厚さで形成し、それを脱脂及び焼成することで第2の強誘電体膜とする工程と、この第2の強誘電体膜上に強誘電体前駆体膜を所定厚さで形成しそれを脱脂及び焼成して前記強誘電体膜を形成する工程を複数回繰り返すことにより前記第2の強誘電体膜上に残りの強誘電体膜を形成して所定厚さの前記圧電体層を形成する工程と、前記圧電体層上に前記上電極膜を形成後、当該上電極膜及び前記圧電体層をパターニングして前記圧電素子を形成する工程とを有し、且つ前記第1及び第2の強誘電体膜を脱脂する際に、前記残りの強誘電体膜を脱脂する際の昇温レートよりも低い昇温レートで加熱することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。 - 請求項7において、前記強誘電体前駆体膜を一層形成後、脱脂及び焼成することで前記第1及び第2の強誘電体膜を形成し、前記強誘電体膜を二層以上形成後、脱脂及び焼成することで残りの強誘電体膜を形成することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
- 請求項7又は8において、前記下電極膜及び前記第1の強誘電体膜をパターニングする工程の後に、前記圧電体層の結晶の核となる結晶種を、前記第1の強誘電体膜上から前記振動板の表面に亘って連続的に形成する工程を有することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
- 請求項7〜9の何れかにおいて、前記下電極膜及び前記第1の強誘電体膜をイオンミリングによってパターニングすることを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
- 請求項7〜10の何れかにおいて、前記強誘電体前駆体膜をゾル−ゲル法により形成することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
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