JP4085673B2 - プロピレン重合体組成物およびこれを用いて得られた発泡成形体 - Google Patents
プロピレン重合体組成物およびこれを用いて得られた発泡成形体 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4085673B2 JP4085673B2 JP2002096779A JP2002096779A JP4085673B2 JP 4085673 B2 JP4085673 B2 JP 4085673B2 JP 2002096779 A JP2002096779 A JP 2002096779A JP 2002096779 A JP2002096779 A JP 2002096779A JP 4085673 B2 JP4085673 B2 JP 4085673B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- polymer
- olefin
- propylene
- weight
- ethylene
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Lifetime
Links
Landscapes
- Manufacture Of Porous Articles, And Recovery And Treatment Of Waste Products (AREA)
- Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
- Processes Of Treating Macromolecular Substances (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロピレン重合体組成物を用いて得られた発泡成形体に関し、さらに詳しくは、特に発泡成形に好適な溶融特性を有するプロピレン重合体組成物を用いて得られた厚みが均一な発泡成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレンは、機械的性質、耐薬品性等に優れ、また経済性とのバランスにおいて極めて有用なため各成形分野に広く用いられている。しかしながら、溶融張力が小さいために、中空成形、発泡成形、押出成形等の成形性が十分満足できるものではないのが実状である。
【0003】
ポリプロピレンの溶融張力を高める方法として、溶融状態下において、ポリプロピレンに有機過酸化物と架橋助剤を反応させる方法(特開昭59−93711号公報、特開昭61−152754号公報等)、半結晶性ポリプロピレンに分解温度の低い過酸化物を酸素不存在下で反応させて、自由端長鎖分岐を有しゲルを含まないポリプロピレンを製造する方法(特開平2−298536号公報)などが開示されている。しかしながら、一般に、これらの方法では溶融張力の向上は認められるものの、有機過酸化物や架橋助剤により臭気が残留する問題や、リサイクル加工しようとすればその工程でメルトフローレートが上昇するため、それによって熱安定性が低下するなどの点で改善すべき問題を有していた。また、このような方法は、ポリプロピレンの生産効率の点でも十分満足できるものではなかった。
【0004】
溶融張力等の溶融粘弾性を向上させる他の方法としては、ポリプロピレンに、これとは固有粘度もしくは分子量の異なるポリエチレン若しくはポリプロピレンを含む組成物を、配合或いは多段階重合によって製造する方法が提案されている。たとえば、超高分子量ポリプロピレン2〜30重量部を通常のポリプロピレン100重量部に添加し、融点以上210℃以下の温度範囲で押し出す方法(特公昭61−28694号公報)などが知られている。しかしながら、これらの組成物は、所望とされる溶融張力を十分満足するには至っていない。また、組成物に含める斯かる超高分子量ポリプロピレンを製造するためには、かなり低温で反応を行わせる必要があるため、既存プロセスの改造を必要としたり、これによって生産性も低下せざるを得なかったのが実状である。
【0005】
さらに、これらの方法以外に、担持型チタン含有固体触媒成分および有機アルミニウム化合物触媒成分にエチレンとポリエン化合物が予備重合されてなる予備重合触媒を用いてプロピレンを重合することにより、高溶融張力を有するポリプロピレンを製造する方法(特開平5−222122号公報)、および同様の触媒成分を用いて予備重合をエチレンの単独で行って得られる固有粘度が20dl/g以上のポリエチレン含有予備重合触媒を用いて高溶融張力を有するエチレン/αオレフィン共重合体を製造する方法(特開平4−55410号公報)が知られている。しかし、これらの方法では、第3成分としてポリエン化合物を新たに準備する必要があったり、最終的に得られるポリオレフィン組成物への予備重合されたポリエチレン等の分散性が不均一になる結果、ポリオレフィン組成物の品質が不安定になりやすいなどの問題があった。この他に、固有粘度が15dl/g以上のポリエチレンを含有するポリエチレン含有予備重合触媒を用いてプロピレンを重合して得られる、高溶融張力を有するオレフィン(共)重合体組成物およびその製造方法(WO97/14725号公報)も知られている。
【0006】
しかしながら、従来の組成物においては、樹脂温度が250℃以下となる条件で溶融混練して得られたものは、高い溶融張力を奏するものの、これと発泡剤を用いて得られた発泡成形体は、その厚みが不均一となって外観が損なわれやすく、この発泡成形体をさらに熱加工しようとすると、厚みがその薄い箇所から破崩しやすい傾向があった。一方、樹脂温度が250℃より高い条件で溶融混練すれば、発泡成形体の厚みは均一になるものの、溶融張力が低下しやすく、この為、この発泡成形体をさらに熱加工しようとすると、ドローダウンが大きく、その成形が困難となるなどの傾向があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の1つの目的は、高い溶融張力を有し、特に発泡成形体の原料として好適なプロピレン重合体組成物を用いて得られた発泡成形体を提供することである。また、本発明の別の1つの目的は、発泡成形体の原料として好適なメルトフローレートと高い溶融張力を有するプロピレン重合体組成物を用いて得られた厚みが均一な発泡成形体を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究した結果、特定のエチレン重合体と特定のオレフィン多段重合体を含む重合体混合物を溶融混練して得られた特定の溶融特性を有するプロピレン重合体組成物を用いて得られた発泡成形体が、所望の目的を達することができることを知り、本発明を完成するに到った。即ち、本発明は下記の1)〜4)により構成される。
【0009】
1)下記オレフィン多段重合体(B)と、該重合体(B)の100重量部に対して0.01〜5.0重量部の下記エチレン重合体(A)を含む重合体混合物を、その混合物の温度が280〜500℃となるような温度条件下で溶融混練して得られたプロピレン重合体組成物であって、該プロピレン重合体組成物の190℃における溶融張力(「MS」と略記する。単位はcN)とメルトフローレート(「MFR(T)」と略記する。単位はdg/分)が、下記式(1)を充足することを特徴とする、プロピレン重合体組成物と発泡剤を用いて得られた発泡成形体。
Log(MS)>0.91−0.23×Log(MFR(T)) (1)
[1]エチレン重合体(A)
135℃のテトラリン中で測定した固有粘度が15〜100dl/gであるエチレン重合体。
[2]オレフィン多段重合体(B)
オレフィン重合用触媒を用いて、重合工程(I)で、プロピレン単独重合体、もしくは共重合体の重量基準でプロピレン単位を70重量%以上含むプロピレンとプロピレン以外の炭素数2〜12のオレフィンとのプロピレン/オレフィン共重合体からなるプロピレン重合体(I)をオレフィン多段重合体の重量基準で30〜95重量%の範囲で製造したのち、引き続く重合工程(II)で、共重合体の重量基準でエチレン単位を30〜80重量%含むエチレンと炭素数3〜12のオレフィンとのエチレン/オレフィン共重合体からなるオレフィン重合体(II)をオレフィン多段重合体の重量基準で70〜5重量%の範囲で製造して得られる、オレフィン多段重合体。
【0011】
2)重合体混合物が、エチレン重合体(A)をオレフィン重合用触媒に担持させて得られた予備活性化触媒の存在下に、重合工程(I)でプロピレン重合体(I)を製造し、引き続く重合工程(II)でオレフィン重合体(II)を製造することによってオレフィン多段重合体(B)を製造して得られた混合物である、前記1)に記載の発泡成形体。
【0012】
3)重合工程(I)終了後の重合生成物のメルトフローレート(以降、「MFR(i)」と略記する。単位はdg/分)、およびオレフィン重合体(II)のメルトフローレート(以降、「MFR(ii)」と略記する。単位はdg/分)が、下記式(2)および(3)を充足することを特徴とする、前記1)又は2)に記載の発泡成形体。
3≦Log(MFR(i)/MFR(ii))≦7 (2)
MFR(ii)< 1×10−3 dg/分 (3)
【0016】
4)発泡成形体の厚みの変動率が、該発泡成形体の厚みの平均値の±5%以内であることを特徴とする、前記1)〜3)のいずれか1項に記載の発泡成形体。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるプロピレン重合体組成物は、特定のオレフィン多段重合体(B)と、該重合体(B)の100重量部に対して0.01〜5.0重量部の特定のエチレン重合体(A)を含む重合体混合物を溶融混練して得られる、特定の溶融特性を有するプロピレン重合体組成物である。
【0018】
エチレン重合体(A)の含まれる量が、オレフィン多段重合体(B)100重量部に対して0.01重量部未満であると、得られるプロピレン重合体組成物の溶融張力の向上効果が少なくなる恐れがあり、また5.0重量部を超えると、その効果が飽和するほか、エチレン重合体(A)とオレフィン多段重合体(B)の均一分散性が損なわれる恐れがある。本発明に用いられるプロピレン重合体組成物は、オレフィン多段重合体(B)の100重量部に対して、エチレン重合体(A)を0.02〜3.0重量部含むのが好ましい。
【0019】
本発明で使用する重合体混合物を構成するエチレン重合体(A)は、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度が15〜100dl/gの範囲の値を有する。エチレン重合体(A)の固有粘度が15dl/g未満であると、該重合体混合物を溶融混練して得られるプロピレン重合体組成物の溶融張力の向上効果が不十分となる恐れがある。エチレン重合体(A)の固有粘度の上限については特に限定されないが、オレフィン多段重合体(B)との固有粘度の差が大きすぎると、得られる組成物は、オレフィン多段重合体(B)とエチレン重合体(A)の均一分散性が低下したものとなり、その結果、安定した高溶融張力を有するプロピレン重合体組成物が得られにくくなる恐れがある。また、高い固有粘度のエチレン重合体(A)を得ようとすればするほど、その重合温度をより低温に設定しなければならない点を考慮すれば、エチレン重合体(A)の生産性の点からも、そのエチレン重合体(A)の固有粘度の上限は100dl/g程度とするのがよい。エチレン重合体(A)の固有粘度は、好ましくは17〜80dl/g、更に好ましくは17〜50dl/gの範囲である。
【0020】
また、エチレン重合体(A)は、その固有粘度を15dl/g以上とする必要があるため、高分子量化の効率上の理由から、エチレン単独重合体であるか、もしくは、共重合体の重量基準で、エチレン単位を50重量%以上含有するエチレンと炭素数3〜12のオレフィンとのエチレン/オレフィン共重合体であるのが好ましい。さらに好ましいのは、エチレン単独重合体、もしくは、共重合体の重量基準で、エチレン単位を70重量%以上含有するエチレンと炭素数3〜12のオレフィンとのエチレン/オレフィン共重合体である。また、特に好ましいのは、エチレン単独重合体、もしくは、共重合体の重量基準でエチレン単位を90重量%以上含有するエチレンと炭素数3〜12のオレフィンとのエチレン/オレフィン共重合体である。
【0021】
エチレン重合体(A)がエチレン/オレフィン共重合体である場合に、エチレンと共重合させる炭素数3〜12のオレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン,3−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、これらのオレフィンを2種以上使用しても良い。
【0022】
斯かるエチレン重合体(A)は、その1種のみを、オレフィン多段重合体(B)と混合しても良く、また、その組成の異なる2種以上をオレフィン多段重合体(B)と混合しても良い。
【0023】
本発明で使用する重合体混合物を構成する成分の一つであるオレフィン多段重合体(B)は、オレフィン重合用触媒を用いて、重合工程(I)で、プロピレン重合体(I)をオレフィン多段重合体(B)の重量基準で30〜95重量%の範囲で製造したのち、引き続く重合工程(II)で、オレフィン重合体(II)をオレフィン多段重合体(B)の重量基準で70〜5重量%の範囲で製造して得られる。オレフィン多段重合体(B)のメルトフローレートは、好ましくは0.1〜100dg/分、更に好ましくは0.1〜80dg/分である。
【0024】
本発明に用いられるプロピレン重合体組成物は、上記プロピレン重合体混合物を特定の温度条件で溶融混練することによって好適に得ることができる。本発明で規定する「重合体混合物」とは、オレフィン多段重合体(B)とエチレン重合体(A)とが混合されたものであるが、それぞれが互いに対して自由度をもって混在している状態であるか、或いは互いが見かけ上結合されて存在している状態であるかを問わない。また、本発明において、「溶融混練」とは、本発明の重合体混合物を、押出造粒機などを用いて、該混合物が溶融状態となる条件で、加熱しながら混練することを意味する。
【0025】
本発明に用いられるプロピレン重合体組成物は、本発明で規定する重合体混合物を、その混合物の温度が280〜500℃、更に好ましくは280〜450℃となるような温度条件下で溶融混練して得ることが好ましい。溶融混練する際の重合体混合物の温度が280℃未満であるような温度条件では、発泡成形体の厚みの変動率を±5%以内に保つことが困難となる傾向があり、このため、発泡成形体の外観が損なわれ、また該発泡成形体をさらに熱加工したときに、その厚みの薄い箇所から破崩する恐れがある。
【0026】
本発明に用いられるプロピレン重合体組成物のMFR(T)とMSは、下記式(1)を充足する必要がある。
Log(MS)>0.91−0.23×Log(MFR(T)) (1)
【0027】
MFR(T)は、好ましくは0.1〜100dg/分の範囲である。MFR(T)の値が100dg/分より大きいと、得られるプロピレン重合体組成物の溶融張力の向上効果が不十分となり、発泡成形体をさらに熱加工するときに耐ドローダウン性が劣る恐れがある。MFR(T)は、0.1〜80dg/分の範囲であるのが更に好ましい。
【0028】
本発明に用いられるプロピレン重合体組成物は、MFR(T)とMSとの関係において、下記式(4)を充足することが更に好ましい。
1.2−0.23×Log(MFR(T))>Log(MS)>0.91−0.23×Log(MFR(T)) (4)
特に好ましくは、下記式(5)の関係を充足する。
1.15−0.23×Log(MFR(T))>Log(MS)>0.91−0.23×Log(MFR(T)) (5)
最も好ましくは、下記式(6)の関係を充足する。
1.15−0.23×Log(MFR(T))>Log(MS)>0.96−0.23×Log(MFR(T)) (6)
【0029】
ここで言うプロピレン重合体組成物の溶融張力(MS)は、東洋精機製作所製「メルトテンションテスター2型」を用い、装置内にてプロピレン重合体組成物を190℃に加熱し、溶融したプロピレン重合体組成物を直径2.095mmのノズルから20mm/分の速度で23℃の大気中に押し出してストランドとし、このストランドを3.14m/分の速度で引き取る際の糸状プロピレン重合体組成物の張力を測定した値(単位:cN)である。
【0030】
本発明に用いられるプロピレン重合体組成物は、エチレン重合体(A)とオレフィン多段重合体(B)を任意の方法で所定量混合して重合体混合物を得たのち、これを溶融混練することによって好適に製造することができる。
【0031】
特に、エチレン重合体(A)をオレフィン重合用触媒に担持させた予備活性化触媒の存在下に、重合工程(I)でプロピレン重合体(I)を製造し、引き続く重合工程(II)でオレフィン重合体(II)を製造する方法によって、好適に製造することができる。こうして、[1]エチレン重合体(A)と、[2]プロピレン重合体(I)とオレフィン重合体(II)からなるオレフィン多段重合体(B)、を含む重合体混合物が製造され、これを溶融混練することによって、所望のプロピレン重合体組成物を好適に得ることができる。
【0032】
斯かるプロピレン重合体組成物の製造方法において、使用するオレフィン重合用触媒としては、チタン化合物を含む遷移金属化合物触媒成分を主成分とする触媒成分のいずれをも使用することができ、中でも工業生産上、チタン含有固体触媒成分(c)が好適に使用される。
【0033】
チタン含有固体触媒成分(c)としては、三塩化チタン組成物を主成分とするチタン含有固体触媒成分(特公昭56−3356号公報、特公昭59−28573号公報、特公昭63−66323号公報等)、マグネシウム化合物に四塩化チタンを担時させた、チタン、マグネシウム、ハロゲン、および電子供与体を必須成分とするチタン含有担持型触媒成分(特開昭62-104810号公報、特開昭62-104811号公報、特開昭62-104812号公報、特開昭57-63310号公報、特開昭57-63311号公報、特開昭58-83006号公報、特開昭58-138712号公報等)などが提案されており、これらのいずれをも使用することができる。
【0034】
チタン含有固体触媒成分(c)は、更に有機金属化合物(a)と組み合わせて、オレフィン重合用触媒として使用することができる。有機金属化合物(a)としては、周期律表(1991年版)第1族、第2族、第12族および第13族に属する金属よりなる群から選択された金属の有機基を有する化合物、たとえば、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機アルミニウム化合物などを例示できる。特に、下記一般式で表わされる有機アルミニウム化合物を好適に使用することができる。
AlR1 pR2 qX3−(p+q)
なお、式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリ−ル基等の炭化水素基もしくはアルコキシ基を表し、Xはハロゲン原子を表わし、pおよびqは、0<p+q≦3 の関係を充足する整数を表わす。
【0035】
有機金属化合物(a)として好適な有機アルミニウム化合物としては、たとえばWO97/14725号公報に提案されているトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムモノハライド、ジアルキルアルミニウムハイドライド、アルキルアルミニウムセスキハライド、モノアルキルアルミニウムジハライドなどの他、アルコキシアルキルアルミニウム類を挙げることができ、好ましくは、トリアルキルアルミニウムおよびジアルキルアルミニウムモノハライド類を使用できる。これらの有機アルミニウム化合物は、単独であるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0036】
また、チタン含有固体触媒成分(c)と有機金属化合物(a)の組み合わせに、更に、オレフィン重合体の生成速度および/または立体規則性を制御することを目的として電子供与体(e)を必要に応じて組み合わせ、これをオレフィン重合用触媒として使用することもできる。
【0037】
電子供与体(e)として、たとえばWO97/14725号公報に提案されているエーテル類、アルコール類、エステル類、アルデヒド類、脂肪酸類、ケトン類、ニトリル類、アミン類、アミド類、尿素およびチオ尿素類、イソシアネート類、アゾ化合物、ホスフィン類、ホスファイト類、ホスフィナイト類、硫化水素およびチオエーテル類、ネオアルコール類、シラノール類などの、分子中に酸素、窒素、硫黄、燐のいずれかの原子を有する有機化合物、および分子中にSi−O−C結合を有する有機ケイ素化合物などが挙げられる。これらの電子供与体は、単独であるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0038】
本発明のプロピレン重合体組成物は、オレフィン重合用触媒にエチレン重合体(A)を担持させることで予備活性化して得られた予備活性化触媒の存在下で、オレフィン多段重合体(B)を製造することによって好適に得ることができる。
【0039】
予備活性化は、エチレン重合体(A)が、オレフィン重合用触媒に含まれる、例えば、チタン含有固体触媒成分(c)1g当たり0.01〜5,000g、好ましくは0.05〜2,000g、さらに好ましくは0.1〜1,000gの割合で生成するような条件で行う限り、特に制限はないが、通常、−40〜40℃、好ましくは−40〜30℃、さらに好ましくは−40〜20℃程度の比較的低温度下において、0.1〜5MPa、好ましくは0.2〜5MPa、特に好ましくは0.3〜5MPaの圧力下で、1分〜24時間、好ましくは5分〜18時間、特に好ましくは10分〜12時間に渡って実施される。予備活性化は、水素の存在下で実施してもよいが、固有粘度が15〜100dl/gのエチレン重合体(A)を得るためには、水素を用いないほうが好適である。
【0040】
予備活性化の前工程で、ポリプロピレンを担持させる予備重合を行うことが更に好ましい。予備重合は、例えば、チタン含有固体触媒成分(c)中のチタン原子1モルに対して有機金属化合物(a)を0.01〜100モル、好ましくは0.1〜50モル、およびチタン原子1モルに対して電子供与体(e)を0〜50モル、好ましくは0〜20モル組み合わせてなるオレフィン重合用触媒に、固有粘度が15dl/gより小さいポリプロピレンを、チタン含有固体触媒成分(c)1g当たり0.01〜100g担持させることによって行う。
【0041】
また、オレフィン重合用触媒に、先にエチレン重合体(A)を担持させて予備活性化し、後にポリプロピレンを担持して予備重合させてもよい。
【0042】
予備重合および予備活性化において、有機金属化合物(a)の使用量が、少なすぎると重合反応速度が遅くなりすぎる恐れがある。また、その使用量が多すぎると、重合反応速度の改善効果が頭打ちとなるほか、また、最終的に得られるプロピレン重合体組成物中に有機金属化合物(a)の残渣が多くなる恐れがある。また、電子供与体(e)の使用量が多すぎると、重合反応速度が低下する恐れがある。
【0043】
予備重合および予備活性化は、たとえば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、他にガソリン留分や水素化ジーゼル油留分等の不活性溶媒、オレフィン自身を溶媒とした液相中で行うことができ、また溶媒を用いずに気相中で行うことも可能である。溶媒使用量が多すぎると、大きな反応容器を必要とするばかりでなく、効率的な重合反応速度の制御および維持が困難となる。
【0044】
得られた予備活性化触媒は、所望により、新たに有機アルミニウム化合物(a’)および電子供与体(e’)と組み合わせて、オレフィン多段重合体(B)の製造に使用する。所望により新たに加える有機アルミニウム化合物(a’)および電子供与体(e’)は、既述の有機アルミニウム化合物(a)および電子供与体(e)と同様のものを使用することができ、これらの化合物を単独であるいは2種以上を混合して用いることもできる。所望により新たに加える有機アルミニウム化合物(a’)および電子供与体(e’)は、それぞれ独立に、予備活性化に用いた有機アルミニウム化合物(a)および電子供与体(e)と同一のものであってもよい。
【0045】
オレフィン多段重合体(B)の製造プロセスとしては公知のオレフィン重合プロセスが使用可能であり、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、他にガソリン留分や水素化ジーゼル油留分等の不活性溶媒中で、オレフィンの重合を実施するスラリー重合法、オレフィン自身を溶媒として用いるバルク重合法、オレフィンの重合を気相中で実施する気相重合法、さらに重合して生成するポリオレフィンが液状である液相重合法、あるいはこれらのプロセスの2以上を組み合わせた重合プロセスを使用することができる。
【0046】
上記のいずれの重合プロセスを使用する場合にも、オレフィン多段重合体(B)の製造は、重合温度が20〜120℃、好ましくは30〜100℃、特に好ましくは40〜100℃の温度下で、重合圧力が0.1〜5MPa、好ましくは0.3〜5MPaの圧力下で、連続式、半連続式、若しくはバッチ式で、重合時間が5分間〜24時間の条件で実施される。上記の条件を採用することによって、オレフィン多段重合体(B)は、高効率かつ制御された反応速度で好適に製造される。また、公知のオレフィン重合方法と同様に、重合時に水素を用いることにより、得られるオレフィン多段重合体(B)の分子量を調整することができる。
【0047】
本発明に用いられるプロピレン重合体組成物において、重合工程(I)終了後の重合生成物のMFR(i)、およびオレフィン重合体(II)のMFR(ii)は、下記式(2)および(3)を充足するのが好ましい。
3≦Log(MFR(i)/MFR(ii))≦7 (2)
MFR(ii)< 1×10−3 dg/分 (3)
【0048】
MFR(i)は、重合工程(I)終了後の重合生成物についての実測値である。一方、MFR(ii)は、重合工程(II)終了後の重合生成物について実測して得られたメルトフローレート(以降、「MFR(b)」と略記する場合がある。)と、重合工程(I)終了後の重合生成物の含有分率(以降、「W1」と略記する場合がある。)と重合工程(II)で得られたオレフィン重合体(II)の含有分率(以降、「W2」と略記する場合がある。)から、下記式(7)および(8)を用いて計算により求めることができる。
Log(MFR(b))=W1×Log(MFR(i))+W2×Log(MFR(ii)) (7)
W1+W2=1 (8)
【0049】
Log(MFR(i)/MFR(ii))の値が3未満であると、得られるプロピレン重合体組成物の溶融張力の向上効果が不十分となる恐れがある。Log(MFR(i)/MFR(ii))の値が7より大きいと、得られるプロピレン重合体組成物を発泡成形体に成形したときに、発泡体の厚みが不均一になる恐れがある。上記式(2)に関して、MFR(i)とMFR(ii)は、特に下記式(9)の関係を充足するのが好ましい。
4≦Log(MFR(i)/MFR(ii))≦7 (9)
【0050】
また、オレフィン重合体(II)のMFR(ii)の値が1×10−3dg/分以上であると、得られるプロピレン重合体組成物の溶融張力の向上効果が不十分となり、発泡成形体をさらに熱加工するときに耐ドローダウン性が劣る恐れがある。上記式(3)に関して、MFR(ii)は、特に下記式(10)を満たすのが好ましい。
MFR(ii)<5×10−4 dg/分 (10)
【0051】
また、重合工程(I)終了後の重合生成物について、そのMFR(i)の値は、好ましくは0.1〜100dg/分、更に好ましくは0.1〜50dg/分の範囲である。
【0052】
本発明に用いられるプロピレン重合体組成物は、特に、上記式(2)および(3)に関して、同時に、それぞれ下記式(11)および(12)を充足するのが好ましい。
4≦Log(MFR(i)/MFR(ii))≦7 (11)
MFR(ii)<5×10−4 dg/分 (12)
【0053】
本発明に用いられるプロピレン重合体組成物に含まれるプロピレン重合体(I)は、プロピレン単独重合体、もしくは共重合体の重量基準でプロピレン単位を50重量%以上含むプロピレンとプロピレン以外の炭素数2〜12のオレフィンとのプロピレン/オレフィン共重合体であることが好ましい。特に好ましいのは、プロピレン単独重合体、もしくは共重合体の重量基準でプロピレン単位を70重量%以上含むプロピレンとプロピレン以外の炭素数2〜12のオレフィンとのプロピレン/オレフィン共重合体である。プロピレン以外の炭素数2〜12のオレフィンとして好ましいのは、エチレンもしくは1−ブテンである。
【0054】
本発明に用いられるプロピレン重合体組成物に含まれるオレフィン重合体(II)は、炭素数2〜12のオレフィンの単独重合体もしくは共重合体であるのが好ましい。オレフィン重合体(II)として、特に好ましいのは、エチレンと炭素数3〜12のオレフィンとのエチレン/オレフィン共重合体であって、更に、共重合体の重量基準でエチレン単位を30〜80重量%、より好ましくは40〜70重量%の範囲で含有するエチレンと炭素数3〜12のオレフィンとのエチレン/オレフィン共重合体である。特に好適なオレフィン重合体(II)として、具体的には、共重合体の重量基準でエチレン単位を30〜80重量%の範囲で含むエチレン/プロピレン共重合体をあげることができる。最も好ましいオレフィン重合体(II)は、共重合体の重量基準で、エチレン単位を40〜70重量%の範囲で含む、エチレン/プロピレン共重合体である。
【0055】
本発明で使用するオレフィン多段重合体(B)は、プロピレン重合体(I)を30〜95重量%、オレフィン重合体(II)を70〜5重量%の範囲で含有する。プロピレン重合体(I)の含有量が30重量%未満であると、最終的に得られるプロピレン重合体組成物を発泡成形体に成形したときに、発泡成形体の厚みが不均一となり、外観が損なわれる恐れがある。また、プロピレン重合体(I)の含有量が95重量%より多いと、得られるプロピレン重合体組成物の溶融張力の向上効果が不十分となる恐れがある。本発明で使用するオレフィン多段重合体(B)は、プロピレン重合体(I)を40〜95重量%、オレフィン重合体(II)を60〜5重量%の範囲で含有するのが好ましい。
【0056】
尚、本発明で規定するMFR(i)、MFR(ii)、MFR(b)およびMFR(T)は、ともに、JIS K7210の表1の条件14に準じ、温度230℃、荷重21.18Nで測定した値である。
【0057】
エチレン重合体(A)をオレフィン重合用触媒に担持させた予備活性化触媒の存在下に、オレフィン多段重合体(B)を製造する方法を採用して本発明で使用する重合体混合物を製造する際には、オレフィン多段重合体(B)の製造終了後、必要に応じて触媒失活処理工程、触媒残さ除去工程、乾燥工程等の後処理工程を行う。
【0058】
本発明に用いられるプロピレン重合体組成物は、発泡成形体の原料として特に好適に使用できる。このプロピレン重合体組成物を用いて得られる発泡成形体は、その成形体の厚みの変動率が、厚みの平均値の±5%以内に好適に制御されたものとなる。
【0059】
発泡成形体の製造方法としては、プロピレン重合体組成物に発泡剤を添加し、溶融混練したのち、Tダイもしくはサーキュラーダイを通して低圧下に押し出す等の公知の押出発泡法を採用することができる。発泡成形体は、押出機から直接シート状もしくは円筒状に押出した後、押出方向に切断することにより製造することができる。該発泡剤の添加量は、プロピレン重合体組成物100重量部に対して、0.1〜10重量部の割合である。
【0060】
発泡剤としては、公知の揮発性発泡剤や分解型発泡剤がいずれも使用でき、揮発性発泡剤としては、プロパン、ブタン等の脂肪族炭化水素類、シクロブタン等の脂環式炭化水素類、クロロジフルオロメタン、トリフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロトリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素類、炭酸ガス、二酸化炭素、空気等の無機ガス、水等を例示できる。分解型発泡剤としては、アゾジカルボンアミド等のアゾ化合物、N,N’−ジニトロペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、p、p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、クエン酸等を例示できる。更に、分解温度、分解速度、発生ガス量および気泡調節剤として炭酸水素ナトリウム、クエン酸等の発泡助剤を使用することができる。これらの発泡剤は単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0061】
本発明に用いられるプロピレン重合体組成物には、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、造核剤、滑剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、着色剤、無機質もしくは有機質の充填剤等の各種添加剤、更には種々の合成樹脂が配合されていてもよい。
【0062】
【実施例】
以下に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。なお、実施例および比較例において使用する用語の定義および測定方法は以下の通りである。
(1)固有粘度[η]:三井東圧化学製のオストヴァルト粘度計を用い、135℃のテトラリン中で測定した(単位:dl/g)。
(2)MFR: JIS K7210 表1の条件14<温度230℃,荷重21.18N>に準じて測定した(単位:dg/分)。
(3)エチレン単位含有量:赤外線吸収スペクトル法により求めた(単位:重量%)。
【0063】
(4)オレフィン多段重合体(B)中のプロピレン重合体(I)とオレフィン重合体(II)の含有分率(それぞれ、W1,W2):エチレンとプロピレンの反応量比を変化させた共重合体を予め作り、これを標準サンプルとし、PERKINELMER社製のFT−IRを用いて赤外線吸収スペクトルによる700cm−1〜750cm−1の吸収ピークを用いて検量線を作成して、オレフィン重合体(II)の重合工程(重合工程(II))におけるエチレン/プロピレン反応量比を求め、更に重合工程(II)終了後の重合体中のエチレン単位の含有量から計算して求めた。
(5)溶融張力(MS):東洋精機製作所製「メルトテンションテスター2型」を用いて測定した(単位:cN)
(6)発泡成形体の密度:JIS K6767に準じて測定した(単位:g/cm3)
【0064】
(7)発泡倍率:プロピレン重合体組成物の密度と発泡成形体の密度から次式により算出した(単位:倍)。
発泡倍率=(プロピレン重合体組成物の密度)/(発泡成形体の密度)
(8)発泡成形体の平均セル径:発泡成形体の厚み方向と垂直な方向の切片の断面を、カメラ付き顕微鏡を用いて写真撮影して、面積が0.25〜1.0cm2の範囲における全ての発泡セルの長径と短径を測定し、その長径と短径の平均値を発泡セル径とする。こうして測定した全発泡セル径の平均値を平均セル径とした(単位:mm)。
(9)発泡成形体の厚みとその変動率:発泡成形体の厚みを接触式厚み計(山文電気社製「TOF−4R」)にて測定し、平均厚み(単位:mm)と変動率(単位:%)を算出した。
【0065】
実施例1
(1)遷移金属化合物触媒成分の調製
撹拌機付きステンレス製反応器中において、デカン37.5リットル、無水塩化マグネシウム7.14kg、および2−エチル−1−ヘキサノール35.1リットルを混合し、撹拌しながら140℃に4時間加熱して均一な溶液とした。この均一溶液中に無水フタル酸1.67kgを添加し、さらに130℃にて1時間撹拌して、無水フタル酸をこの均一溶液に溶解した。得られた均一溶液を室温(23℃)に冷却した後、この均一溶液を−20℃に保持した四塩化チタン200リットル中に3時間かけて全量滴下した。滴下後、4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジ−i−ブチル5.03リットルを添加し、2時間110℃にて撹拌保持して反応を行った。2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、固体部を275リットルの四塩化チタンにて再懸濁させた後、再び110℃で2時間、反応を持続した。反応終了後、再び熱濾過により固体部を採取し、n−ヘキサンにて、洗浄液中に遊離のチタンが検出されなくなるまで充分洗浄した。続いて、濾過により溶媒を分離し、固体部を減圧乾燥してチタン2.4重量%を含有するチタン含有担持型触媒成分(遷移金属化合物触媒成分)を得た。
【0066】
(2)予備活性化触媒の調製
内容積30リットルの傾斜羽根付きステンレス製反応器を窒素ガスで置換後、n−ヘキサン20リットル、トリエチルアルミニウム40ミリモル、および前項で調製したチタン含有担持型触媒成分80g(チタン原子換算で40ミリモル)を添加した後、15℃でプロピレン420gを120分間供給して予備重合を行った。反応時間終了後、未反応のプロピレンを反応器外に放出し、反応器の気相部を1回、窒素置換した。別途、同一の条件で行った予備重合後に生成したポリマーを分析した結果、チタン含有担持型触媒成分1g当たり、2.1gのポリプロピレン(W01)が生成し、このポリプロピレンの固有粘度[η1]は2.9dl/gであった。
【0067】
次いで反応器内の温度を1℃に保持しながら、反応器内の圧力を0.59MPaに維持するようにエチレンを反応器に連続的に6時間供給して、予備活性化を行った。反応時間終了後、未反応のエチレンを反応器外に放出し、反応器の気相部を1回、窒素置換して、予備活性化触媒スラリーとした。別途、同一の条件で予備重合と予備活性化を行った結果、予備活性化後に生成していた重合体の生成量(W0T)は、チタン含有担持型触媒成分1g当たり55.3gであり、かつこの重合体の固有粘度[η0T]は30.8dl/gであった。
【0068】
エチレンによる予備活性化で得られたチタン含有担持型触媒成分1g当たりに含有されているエチレン重合体(A)の生成量(W02)は、予備活性化処理後に生成していたチタン含有担持型触媒成分1g当たりの重合体の生成量(W0T)と予備重合後のチタン含有担持型触媒成分1g当たりのポリプロピレン(W01)との差として次式で求められる。
W02=W0T−W01
また、エチレンによる予備活性化で生成したエチレン重合体(A)の固有粘度[η2]は、予備重合で生成したポリプロピレンの固有粘度[η1]、および予備重合工程に引き続く予備活性化工程終了後に生成していた重合体の固有粘度[η0T]から次式により求められる。
[η2]=([η0T]× W0T−[η1]× W01)/(W0T−W01)上記の式に従って、エチレンによる予備活性化で生成したエチレン重合体(A)量は、チタン含有担持型触媒成分1g当たり53.2g、その固有粘度[η2]は31.9dl/gと算出された。
【0069】
(3)重合工程(I)
内容積500リットルの撹拌機付き、ステンレス製重合器を窒素置換した後、n−ヘキサン240リットル、トリエチルアルミニウム780ミリモル、ジイソプロピルジメトキシシラン78ミリモル、および上記で得た予備活性化触媒スラリーの1/10量を投入した。引き続いて、水素315リットルを重合器内に導入し、重合温度70℃、重合器内の気相部圧力を1.0MPaに保持しながらプロピレンを連続的に1.5時間供給して、プロピレン重合体(I)の製造(重合工程(I))を実施した。重合終了後、重合器内の温度を30℃まで冷却した後、水素と未反応プロピレンを放出した。次いで、重合スラリーの一部を抜き出して測定した結果、メルトフローレート(MFR(i))は11dg/分であり、予備活性化で生成したエチレン重合体(A)の含有率は0.82重量%であった。
【0070】
(4)重合工程(II)
重合器内温度を60℃に昇温後、水素2リットル、エチレン4.3kg、およびプロピレン12kgを、2時間連続して供給し、オレフィン重合体(II)の製造(重合工程(II))を実施した。重合終了後、重合器内の温度を30℃まで冷却して、水素と未反応のエチレンおよびプロピレンを放出した。次いで、メタノール50リットルを重合器内に導入し、触媒失活反応を60℃にて30分間実施した。更に20重量%の苛性ソーダ水溶液0.7リットルを加え、20分間攪拌した後、純水100リットルを加えて、20分間攪拌した。水層を抜き出した後に、再度300リットルの純水を加え、20分間攪拌して水層を抜き出した。ついでヘキサンスラリーを抜き出し、濾過、乾燥した。そして、重合工程(II)終了後の重合体(本発明でいう「重合体混合物」に該当)、および、重合工程(II)で得られたプロピレン/エチレン共重合体(本発明でいう「オレフィン重合体(II)」に該当)の分析結果を、表1に示した。また、本発明で言う「オレフィン多段重合体(B)」の生成量は、重合工程(II)終了後の重合体の生成量から、予備重合で得られたポリプロピレンと予備活性化で得られたエチレン重合体(A)の生成量を差し引くことにより算出された。
【0071】
得られた重合体混合物100重量部に対して、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.1重量部、およびステアリン酸カルシウム0.1重量部を混合して、該混合物をスクリュー径40mmの押出造粒機を用いて、樹脂温度が300℃にて造粒(溶融混練)し、プロピレン重合体組成物を得た。得られたプロピレン重合体組成物の分析結果を、表1に示した。得られた重合体組成物は、log(MS)の値が0.92であり、(0.91−0.23×log(MFR(T)))の値が0.76である結果、式(1)の関係を充足するものであった。
【0072】
上記で得られた組成物100重量部に、発泡核剤として重炭酸ナトリウム−クエン酸(ベーリンガーインゲルハイム社製「ハイドロセロールHK70」)0.1重量部を添加し、リボンブレンダーを用いて混合したのち、口径90mmの単軸押出機に供給し、押出機内で230℃で溶融し、吐出樹脂量100重量部に対し1重量部の発泡剤(n−ブタンガス)を、バレルの途中より圧入し、押出機出口では樹脂温度が180℃になるよう冷却しながら、口径120mmの円筒ダイから円筒状に押出し、口径300mmの円筒冷却金型を通し、厚さ1.51mmの発泡成形体を得た。得られた発泡成形体を分析し、それらの値を表1に示した。
【0073】
比較例1
実施例1に準拠して得られた重合体混合物100重量部に対して、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールを0.1重量部、およびステアリン酸カルシウムを0.1重量部混合して、該混合物をスクリュー径40mmの押出造粒機を用いて、樹脂温度が250℃にて造粒し、プロピレン重合体組成物を得た。得られたプロピレン重合体組成物を用いて、実施例1に準拠して発泡成形体を得た。これらプロピレン重合体組成物および発泡成形体の分析結果を、表1に示した。
【0074】
比較例2
重合工程(II)において、使用した水素量を20リットルに変更し、MFR(ii)が2×10−2dg/分であるオレフィン重合体(II)を重合した以外は、実施例1に準拠してプロピレン重合体組成物を得た。得られたプロピレン重合体組成物を用いて、実施例1に準拠して発泡成形体を成形した。該プロピレン重合体組成物および得られた発泡成形体の分析値を、表1に示した。得られたプロピレン重合体組成物は、log(MS)の値が0.69であり、(0.91−0.23×log(MFR(T)))の値が0.72である結果、式(1)の関係を充足しないものであった。
【0075】
【0076】
【発明の効果】
本発明に用いられるプロピレン重合体組成物は、溶融張力が高く、特に、発泡成形体の原料として好適な溶融特性を有しており、これを用いて得られる発泡成形体は、厚みの変動率が小さく外観の優れたものとなる。このため、かかる発泡成形体は、更に熱加工しても破損しにくい。
Claims (4)
- 下記オレフィン多段重合体(B)と、該重合体(B)の100重量部に対して0.01〜5.0重量部の下記エチレン重合体(A)を含む重合体混合物を、その混合物の温度が280〜500℃となるような温度条件下で溶融混練して得られたプロピレン重合体組成物であって、該プロピレン重合体組成物の190℃における溶融張力(「MS」と略記する。単位はcN)とメルトフローレート(「MFR(T)」と略記する。単位はdg/分)が、下記式(1)を充足することを特徴とする、プロピレン重合体組成物と発泡剤を用いて得られた発泡成形体。
Log(MS)>0.91−0.23×Log(MFR(T)) (1)
[1]エチレン重合体(A)
135℃のテトラリン中で測定した固有粘度が15〜100dl/gであるエチレン重合体。
[2]オレフィン多段重合体(B)
オレフィン重合用触媒を用いて、重合工程(I)で、プロピレン単独重合体、もしくは共重合体の重量基準でプロピレン単位を70重量%以上含むプロピレンとプロピレン以外の炭素数2〜12のオレフィンとのプロピレン/オレフィン共重合体からなるプロピレン重合体(I)をオレフィン多段重合体の重量基準で30〜95重量%の範囲で製造したのち、引き続く重合工程(II)で、共重合体の重量基準でエチレン単位を30〜80重量%含むエチレンと炭素数3〜12のオレフィンとのエチレン/オレフィン共重合体からなるオレフィン重合体(II)をオレフィン多段重合体の重量基準で70〜5重量%の範囲で製造して得られる、オレフィン多段重合体。 - 重合体混合物が、エチレン重合体(A)をオレフィン重合用触媒に担持させて得られた予備活性化触媒の存在下に、重合工程(I)でプロピレン重合体(I)を製造し、引き続く重合工程(II)でオレフィン重合体(II)を製造することによってオレフィン多段重合体(B)を製造して得られた混合物である、請求項1記載の発泡成形体。
- 重合工程(I)終了後の重合生成物のメルトフローレート(「MFR(i)」と略記する。単位はdg/分)、およびオレフィン重合体(II)のメルトフローレート(「MFR(ii)」と略記する。単位はdg/分)が、下記式(2)および(3)を充足することを特徴とする、請求項1又は2記載の発泡成形体。
3≦Log(MFR(i)/MFR(ii))≦7 (2)
MFR(ii)< 1×10−3 dg/分 (3) - 発泡成形体の厚みの変動率が、該発泡成形体の厚みの平均値の±5%以内であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発泡成形体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002096779A JP4085673B2 (ja) | 2001-03-30 | 2002-03-29 | プロピレン重合体組成物およびこれを用いて得られた発泡成形体 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001-101795 | 2001-03-30 | ||
JP2001101795 | 2001-03-30 | ||
JP2002096779A JP4085673B2 (ja) | 2001-03-30 | 2002-03-29 | プロピレン重合体組成物およびこれを用いて得られた発泡成形体 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002356601A JP2002356601A (ja) | 2002-12-13 |
JP4085673B2 true JP4085673B2 (ja) | 2008-05-14 |
Family
ID=26612876
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002096779A Expired - Lifetime JP4085673B2 (ja) | 2001-03-30 | 2002-03-29 | プロピレン重合体組成物およびこれを用いて得られた発泡成形体 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4085673B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006252820A (ja) * | 2005-03-08 | 2006-09-21 | Fujikura Ltd | 発泡同軸ケーブル |
JP2009149755A (ja) * | 2007-12-20 | 2009-07-09 | Japan Polypropylene Corp | プロピレン系ブロック共重合体樹脂組成物、その製造方法及び発泡成形体 |
JP5298148B2 (ja) * | 2011-02-02 | 2013-09-25 | 株式会社フジクラ | 発泡同軸ケーブル |
-
2002
- 2002-03-29 JP JP2002096779A patent/JP4085673B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2002356601A (ja) | 2002-12-13 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4889483B2 (ja) | プロピレン系多段重合体及びその製造方法、並びにプロピレン系樹脂組成物 | |
KR100503136B1 (ko) | 폴리프로필렌 수지 조성물 및 그 용도 | |
JP4999462B2 (ja) | プロピレン系樹脂押出発泡体 | |
US6110986A (en) | Propylene-based polymer composition and foamed article thereof | |
JP7391516B2 (ja) | プロピレン系重合体組成物およびその製造方法 | |
JP5202942B2 (ja) | プロピレン系樹脂押出発泡体の製造方法 | |
JP5203587B2 (ja) | プロピレン系重合体及び発泡成形体 | |
JP2019137847A (ja) | プロピレン系重合体組成物およびその発泡成形体 | |
JP4836472B2 (ja) | 発泡成形用ポリプロピレン系組成物及びその成形体 | |
JP4085673B2 (ja) | プロピレン重合体組成物およびこれを用いて得られた発泡成形体 | |
JP4103213B2 (ja) | 予備発泡粒子の製造方法 | |
JPH07116251B2 (ja) | 改質されたポリエチレンの製造方法 | |
JP5134810B2 (ja) | ポリプロピレン系ブロック共重合体組成物の製造方法、及びそれから得られるポリプロピレン系ブロック共重合体組成物とその発泡成形体 | |
JP2001316510A (ja) | 発泡用のポリプロピレン系樹脂組成物、該組成物を用いた発泡体、同発泡体の製造方法および同発泡体を用いた発泡成形体 | |
JP5252478B2 (ja) | 空冷インフレーション用発泡樹脂組成物およびそれを用いた空冷インフレーション発泡フィルム | |
JP5270935B2 (ja) | 発泡成形体用プロピレン系樹脂組成物およびその発泡成形体 | |
JP2000290333A (ja) | ポリプロピレンブロック共重合体樹脂および製造方法 | |
JP2009221473A (ja) | ポリプロピレン系押出発泡体およびその製造方法 | |
JP3870523B2 (ja) | ポリプロピレン発泡中空成形品 | |
JP2006045356A (ja) | ポリプロピレン系樹脂筒状発泡体 | |
JP2778085B2 (ja) | ポリエチレン組成物 | |
JP2003327757A (ja) | ポリエチレン樹脂組成物及びその製造方法 | |
JP2009241517A (ja) | ポリプロピレン系押出発泡成形体およびその製造方法 | |
JP3855422B2 (ja) | ポリプロピレン多層発泡中空成形品 | |
JPH07138422A (ja) | ポリプロピレン組成物 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
RD02 | Notification of acceptance of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422 Effective date: 20040422 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050119 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20060719 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060829 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20061027 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20080129 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20080211 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110228 Year of fee payment: 3 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110228 Year of fee payment: 3 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120229 Year of fee payment: 4 |
|
S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120229 Year of fee payment: 4 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120229 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130228 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130228 Year of fee payment: 5 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130228 Year of fee payment: 5 |
|
R360 | Written notification for declining of transfer of rights |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130228 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130228 Year of fee payment: 5 |
|
R370 | Written measure of declining of transfer procedure |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R370 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130228 Year of fee payment: 5 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130228 Year of fee payment: 5 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |