JP4083497B2 - 金型及び缶の製造装置並びにその製造方法 - Google Patents
金型及び缶の製造装置並びにその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有底円筒状体の開口部又は底部を保持した状態で、ボトル缶その他の各種缶を成形する金型及び缶の製造装置並びにその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、飲料水等はボトル缶その他の各種缶に充填され広く販売されている。ここで、缶に充填された飲料水等が加熱した状態で販売される場合、缶胴部表面の温度は約60℃に達することがある。従って、需要者がこの飲料水等を購入し、これを開栓する際、缶胴体部表面の温度がある程度冷却するのを待って開栓せざるを得ない場合がある。この対策として、例えば、缶胴体部周面に、その軸線方向に延在する溝部を缶の周方向に複数環状に配置させるとともに、この胴体部にフィルム部材を貼着させる構成のものが考えられる。この場合、缶胴体部との接触面積を削減することができるとともに、フィルム部材を介して間接的に缶を把持することになるため、前記問題は解消できる。
【0003】
このように構成された缶は、一般に次のように形成される。
まず、金属製の有底円筒状体を形成する。その後、この有底円筒状体の内径より小径の第1の回転体と、第1の回転体より大径の第2の回転体とを備える缶の製造装置に前記缶を配置する。すなわち、前記缶を第1の回転体に嵌挿し、前記缶の内周面に第1の回転体の外周面が、前記缶の外周面に第2の回転体の外周面が各々当接するように前記缶を配置する。ここで、第1の回転体の外周面には凹部が、第2の回転体の外周面には凸部がそれぞれ、各軸回りに環状に複数配置されている。
【0004】
この状態で、前記各回転体を各軸回りに回転させ、第2の回転体に設けられた凸部が、缶胴体部周面を第1の回転体に設けられた凹部に順次嵌入することで、前記溝部が形成される。この溝部の形状、寸法は、各回転体に設けられた凸部及び凹部のそれらと対応することになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来の缶の製造方法によれば、缶胴体部周面に前記溝部を形成するに際し、前記各回転体を回転させ、前記溝部を順次一つづつ形成する必要があり、製造工数がかかるという問題があり、結果として、前記缶が高価になるという問題があった。また、前述したように、前記溝部を一つづつ形成するため、形成途中に缶軸のずれが生じ易く、このずれに起因して前記溝部の、缶胴体部周面における配設ピッチがずれる場合があり、美観に優れない缶を製造する場合があるという問題があった。さらに、製造装置が缶を回転させる回転機構を備えることになるため、装置の構造が複雑になり、装置が高価になるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、有底円筒状体の胴体部周面を断面円形状から断面異種形状に形成するに際し、高効率且つ高精度で形成することができる金型及び缶の製造装置並びにその製造方法及び缶を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の金型は、有底円筒状体を各種形状に形成する金型であって、前記金型は、円筒状に形成され有底円筒状体の開口部を縮径する絞り金型と、円筒状に形成され有底円筒状体の胴体部を断面円形状から断面異種形状に形成する異種形状形成金型とを備え、前記絞り金型の一方の端面側における内周面は、前記開口部を縮径するための縮径部付与面を備え、前記異種形状形成金型の内周面は、前記胴体部を断面円形状から断面異種形状に形成するための異種形状付与面を備え、前記絞り金型の一方の端面部に前記異種形状形成金型が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の金型は、前記異種形状付与面は、径方向に突出して設けられた複数の凸部であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の缶の製造装置は、有底円筒状体の底部を保持する保持装置と、該有底円筒状体を各種形状に成形する複数の成形ツールを有するツール保持部とを備え、該ツール保持部に設けられた前記各成形ツールによって順次前記有底円筒状体に対する加工を行うことにより缶を成形する装置であって、前記成形ツールとして、請求項1又は請求項2に記載の金型を備え、該金型は、前記有底円筒状体の開口部に対向し、軸方向に相対的に進退可能に設けられていることを特徴とする。
【0010】
この金型及び缶の製造装置では、保持装置に保持された有底円筒状体の開口部に対向して、軸方向に相対的に進退可能に前記金型が設けられた構成となっているため、有底円筒状体の胴体部を断面円形状から断面異種形状に高効率且つ高精度で形成できる。すなわち、胴体部を断面異種形状に形成する際、前記金型を有底円筒状体の軸方向に相対的に前進させると、金型に設けられた前記異種形状付与面により、有底円筒状体の胴体部周面を、その径方向に対して内方及び軸方向に対して下方に押圧することになり、有底円筒状体に対して前記加工を1回だけ施せば、有底円筒状体の胴体部を断面円形状から断面異種形状に形成することができる。また、有底円筒状体を回転する機構を備えさせる必要がないため、缶の製造装置の高コスト化を抑制することができる。
また、前記金型が、有底円筒状体の軸方向に相対的に進退可能に設けられるとともに、ツール保持部に成形ツールの一つとして設けられた構成となっているため、有底円筒状体を各種形状に成形する工程と、胴体部を断面異種形状に形成する工程とを同一の装置上でなすことができる。例えば、成形ツールとして、ネジ形成用ツール及び前記金型等を設けた場合、ボトル缶の形成と、胴体部の断面異種形状への形成とを同一の装置上でなすことができる。従って、前述した効果と相俟って、さらなる高効率生産を実現できることになる。
【0013】
この金型及び缶の製造装置では、前記金型が、絞り金型と異種形状形成金型とを備えるとともに、軸方向に相対的に進退可能に設けられた構成となっているため、有底円筒状体の胴体部を断面円形状から断面異種形状に形成する工程と、開口部にテーパ部及び口金部を形成する工程とを同時になすことができる。これにより、前述の高精度加工に加え、更なる高効率加工を実現することができる。
【0021】
また、本発明の缶の製造方法は、有底円筒状体を各種形状に形成する缶の製造方法であって、請求項1又は請求項2に記載の金型を、前記異種形状形成金型が、前記有底円筒状体の開口部と対向するように配し、該金型を前記有底円筒状体の軸方向に相対的に前進させ、前記異種形状付与面により前記有底円筒状体の胴体部周面を径方向及び軸方向に押圧して、前記有底円筒状体の胴体部を断面円形状から断面異種形状に形成し、さらに、前記縮径部付与面により前記有底円筒状体の開口部を径方向及び軸方向に押圧して、前記有底円筒状体の開口部を縮径することを特徴とする。
【0022】
この缶の製造方法では、前記金型を、前記異種形状形成金型が、有底円筒状体の開口部に対向するように配置しておき、この金型を有底円筒状体の軸方向に相対的に前進させるとともに、有底円筒状体を異種形状形成金型に嵌挿させ、さらに金型を前進させることにより、前記異種形状付与面が、有底円筒状体の胴体部周面を径方向に対して内方及び軸方向に対して下方に押圧し、有底円筒状体の胴体部を断面円形状から断面異種形状に形成することになる。これと同時に、絞り金型の前記縮径付与面が有底円筒状体の開口部を径方向に対して内方及び軸方向に対して下方に押圧し、テーパ部及び口金部が形成されることになる。以上により、有底円筒状体に対して1回の加工を施すことで、有底円筒状体の胴体部を断面円形状から断面異種形状に形成する工程と、開口部にテーパ部及び口金部を形成する工程とを同時になすことができ、断面異種形状に形成された胴体部と、テーパ部及び口金部を備えた開口部とを備えた有底円筒状体を高効率且つ高精度に形成できる。
【0023】
また、本発明の缶の製造方法は、前記有底円筒状体の開口部を縮径した後、該有底円筒状体の胴体部にフィルム部材を貼着することを特徴とする。
【0024】
この缶の製造方法では、有底円筒状体の開口部を縮径した後に、有底円筒状体の胴体部にフィルム部材を貼着するため、フィルム部材にしわ、破れ等の製造上の不具合を発生させることなく確実に前記貼着をなすことができる。
【0026】
この缶では、胴体部表面に、前記溝部が形成されているため、この缶を把持するに際し、胴体部との接触面積を削減することができる。また、胴体部表面に、フィルム部材が貼着されているため、この缶を把持する際に、胴体部と直接接触することを回避することができるとともに、フィルム部材と前記溝部との間に空間が形成されるため、この空間が断熱効果を備えることになる。以上により、その内容物が加熱状態にある缶を把持する際に、その内容物の熱を把持する部位に伝達することを抑制することができる。具体的には、その内容物が加熱状態にある飲料水等である場合、この缶を人手により容易に把持及び開栓することができる。
さらに、胴体部に前記空間を備えさせることになるため、缶に、その内容物を保温する保温効果を備えさせることができる。従って、例えば、加熱状態にある飲料水等が充填された缶を雰囲気温度下に置いた場合でも、缶の内容物の温度が急激に雰囲気温度に近づくことを抑制することができる。
以上の、内容物の温度伝達抑制効果及び内容物の保温効果は、高い熱伝導性を有するアルミニウム系合金材料で形成された缶において特に著しい効果を奏することになり、内容物が加熱状態にある場合のみならず、冷却状態にある場合においても同様の効果を奏することになる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る缶の製造装置の第一実施形態を、図1から図4を参照しながら説明する。まず、図1に従い、有底円筒状体Wをボトル缶形状に成形するための製造装置10について説明する。
この装置10によって製造されるボトル缶Bは、飲料水等を充填するためのものであって、アルミニウム又はアルミニウム合金の薄板から形成され、缶胴体部より小径でネジ部を有する口金部にキャップが装着されることにより密閉されるものである。
【0028】
製造装置10は、有底円筒状体(ワーク)Wを保持するワーク保持部20と、この有底円筒状体Wを各種成形加工する成形ツール32を保持するツール保持部30と、両保持部20,30を駆動する駆動部12とを備えている。これら保持部20,30は、ワーク保持側とツール保持側とが対向する配置となっており、対向する位置の成形ツール32によってワークWに対する加工が施される構成となっている。
【0029】
ワーク保持部20は、図2に示すように、支持軸11に支持された円盤21の片面に、ワークWを保持する複数の保持装置22が環状に配列された構成となっている。この円盤21が駆動部12によって間欠的に回転されることにより、供給部23からワークWが保持装置22に供給されるとともに、成形されたボトル缶Bが排出部24から順次排出される構成となっている。ここで、保持装置22は、ワークWの底部から胴体部の一部にかけた部分を把持して、ワークWを保持する構成となっている。なお、図2では、円盤21の全周に設けられた複数の保持装置22のうち一部を図示し、残りの保持装置22の図示を省略している。
【0030】
ツール保持部30は、支持軸11に支持された円盤31の片側に、複数の各種成形ツール32が環状に配列され、駆動部12によって円盤31が軸方向に進退するように構成されている。ツール保持部30には、有底円筒状体Wの開口部を縮径してテーパ部及び口金部を成形(ネックイン加工)するための多数の絞り金型や、胴体部に軸方向に延在する溝部(断面異種形状)を形成するための金型、口金部にネジ形状を形成するためのネジ形成用ツール、開口端にカール部を形成するためのカール加工用ツール等の、各加工段階に応じた加工を行うための成形ツール32が備えられており、これらの成形ツール32が工程順に円盤31上に配列されている。これら各成形ツール32は、ツール保持部30が図1の左方に前進した際に、ワーク保持部20に保持された各有底円筒状体Wに対して各別に加工を施す構成となっている。
【0031】
支持軸11を回転中心とするワーク保持部20(円盤21)の回転位置は、開口部をツール保持部30側に向けた各有底円筒状体Wの中心軸が各成形ツール32の中心軸に一致するように設定される。そして、駆動部12による円盤21の間欠的回転によって、各有底円筒状体Wは次工程用の各成形ツール32に対向する位置に回転されて、次の段階の加工が施される構成となっている。
【0032】
すなわち、ツール保持部30が前進してワーク保持部20とツール保持部30とが互いに接近したときに、各成形ツール32が各工程に応じた加工をワークWに対して施し、両保持部20,30が離れたときに各ワークWに対して次工程の成形ツール32が対向するようにワーク保持部20が回転する。このように、両保持部20,30が接近して加工を行い、離れるとともに回転するという動作が繰り返されることにより、有底円筒状体Wにはテーパ部、口金部、溝部、ネジ形状等が順次形成されてボトル缶Bとしての形状が付与される構成となっている。
【0033】
図3、図4に成形ツール32の一つである、有底円筒状体の胴体部に軸方向に延在する溝部を形成する金型40を示す。金型40は、円盤31と当接する円筒状のフランジ部41と、フランジ部41より小径で円筒状の本体部42とから構成され、本体部42とフランジ部41とは同軸に設けられた構成となっている。フランジ部41には、本体部42の配設位置の外方部に、厚さ方向に貫通する4つの貫通孔43が環状に設けられ、これら貫通孔43に図示しないボルトを嵌挿するとともに、円盤31表面に設けられた図示しない雌ネジにねじ込むことで、金型40が円盤31表面に取り付けられる構成となっている。
【0034】
また、図4(a)に示すように、本体部42の内周面において、金型40の本体部42の端面51から所定の距離離間したフランジ部41側の位置には、図3(a)に示すように、本体部42の径方向に対して中心軸側に突出する凸部(異種形状付与面)44が周方向に16個等間隔で環状に設けられている。これら凸部44の突端面はそれぞれ、図3(b)に示すように、本体部42の中心軸と同軸の円形状の一部をなす円弧形状となっている。また、各凸部44同士の間に形成され、本体部42の径方向に対して外周面側に凹となる凹部45の底面はそれぞれ、凸部44と同様に、本体部42の中心軸と同軸の円形状の一部をなす円弧形状となっている。
【0035】
また、凸部44は、図4(b)に示すように、端面51からフランジ部41側へ向かうに従い漸次、本体部42の内径が縮径するとともに、内方に凸となる曲率部52と、曲率部52と接するとともに、本体部42の軸線と平行に設けられた第1の平坦部53と、第1の平坦部53と隣接するとともに、フランジ部41側へ向かうに従い漸次、本体部42の内径が縮径するように設けられた縮径部54と、縮径部54と隣接するとともに、本体部42の軸線と平行に設けられた第2の平坦部55と、第2の平坦部55と隣接するとともに、フランジ部41側へ向かうに従い漸次、本体部42の内径が拡径するように設けられた拡径部56とから構成されている。ここで、第2の平坦部55は、第1の平坦部53の軸方向の長さより長く形成されている。
【0036】
以上のように構成された製造装置10により、有底円筒状体から、胴体部の周面に軸方向に延在する溝部を備えたボトル缶を形成する方法について説明する。
まず、図2に示すように、供給部23によって保持装置22に供給されたワークWは、円盤21の間欠的回転によって、ツール保持部30に備えられた各工程用の成形ツール32に対向する各位置へ順次移動する。
【0037】
そして、円盤21の間欠的回転とツール保持部30の進退とが繰り返されることにより、各回転位置におけるワークWに対して各工程の加工が施される。すなわち、有底円筒状のワークWの開口部が、ネックイン加工により徐々に縮径されて、テーパ部および口金部が形成される。その後、図2に示す位置Aにおいて、ワークWの胴体部周面に、軸方向に延在するとともに、環状に複数配置された溝部を形成する。
【0038】
この溝部の形成は、まず、ツール保持部30を前進させ、図3に示す金型40の本体部42に、ワークWの開口部を嵌挿する。さらに、ツール保持部30を前進させると、図4(B)に示す金型40の凸部44を構成する縮径部54が、ワークWの胴体部とテーパ部との境界部を、ワークWの径方向に対して内方及び軸方向に対して下方に押圧し凹みを形成する。そしてさらに、ツール保持部30を所定の位置まで前進させると、縮径部54が胴体部に凹みを形成しつつ更にこの凹みを第2の平坦部55が径方向に押圧することで、胴体部周面に、軸方向に延在するとともに、環状に複数配置された溝部を形成する。この際、第2の平坦部55の軸方向の長さは、第1の平坦部53の前記長さと比し長く形成されているため、縮径部54により形成された凹みを確実に溝部に形成(塑性変形)することができる。
【0039】
その後、円盤21の間欠的回転等が、前述と同様にして、繰り返されることにより、ワークWに対してネジ形成加工、トリミング加工、カール部加工等が行われ、ボトル缶Bが成形される。そして、このボトル缶Bは、図2に示す排出部24によって製造装置10から排出され、図示しないフィルム部材貼着工程へ搬送される。このフィルム部材貼着工程において、ボトル缶Bの胴体部にフィルム部材が貼着され、図5に示す、胴体部に、軸方向に延在し環状に複数設けられた溝部61と、フィルム部材62とを備えたボトル缶Bが形成される。ここで、フィルム部材62には、例えば、加熱すると収縮する、いわゆる熱収縮フィルムがある。
【0040】
以上説明したように本実施形態による金型及び缶の製造装置並びにその製造方法によれば、保持装置22に保持されたワークWの開口部に対向して、軸方向に進退可能に金型40が設けられた構成となっているため、ワークWの胴体部周面に軸方向に延在する複数の溝部61を高効率且つ高精度に形成できる。すなわち、溝部61を形成する際、金型40を、ワークWの軸方向に前進させると、金型40に複数環状に設けられた各凸部44を構成する縮径部54及び第2の平坦部55がそれぞれ、ワークWの胴体部周面を、径方向に対して内方及び軸方向に対して下方に押圧することになり、ワークWに対して前記加工を1回だけ施せば、ワークWの胴体部周面に複数の溝部61を同時に形成することができる。
【0041】
また、ツール保持部30には、成形ツール32として、ワークWの開口部にネックイン加工を施す絞り金型、胴体部に溝部61を形成する金型40、口金部にネジ形状を形成するネジ形成用ツール、開口端にカール部を形成するカール加工用ツール等が設けられているため、同一の装置で、ボトル缶形状を形成する工程と、ボトル缶の胴体部に溝部61を形成する工程とを経ることができる。従って、前述した効果と相俟って、さらなる高効率生産を実現できることになる。
【0042】
さらに、ワークWに溝部61を形成するに際し、予め、このワークWの開口部にネックイン加工を施し、胴体部上端から上方へ向かうに従い漸次縮径するテーパ部を形成するため、このテーパ部は、胴体部との境界部を含めて、肉厚が増すとともに加工硬化することから、他の部位より高強度になる。特に、胴体部とテーパ部との境界部における径方向の変形に対する剛性が増すことになる。さらに、胴体部に溝部61を形成する際、金型40の凸部44は当初、前記境界部を押圧することと相俟って、前記溝部形成を確実になすことができる。すなわち、前記溝部形成当初のワークWに作用する前記押圧力に起因したワークWの破れ等の発生を抑制することができる。
【0043】
また、前記溝部形成当初、凸部44は前記境界部を押圧するため、ワークWに作用する前記押圧力によりワークWに発生する反力をテーパ部、口金部及び胴体部の各部が分散させて受ける構成となっている。さらに、前述したテーパ部及び口金部の高強度化と相俟って、前記溝部形成時にワークW本体に発生する変形を最小限に抑制することができる。従って、溝部61を備えたボトル缶Bを製造上の不具合を発生させることなく高精度に形成することができる。
また、溝部61を形成した後に、ワークWの胴体部にフィルム部材62を貼着するため、フィルム部材62にしわ、破れ等の不具合を発生させることなく確実に前記貼着をなすことができる。
【0044】
また、以上により形成されたボトル缶Bは、胴体部表面に、溝部61が形成されているため、ボトル缶Bを把持するに際し、胴体部との接触面積を削減することができる。また、胴体部表面にフィルム部材62が貼着されているため、ボトル缶Bを把持するに際し、胴体部と直接接触することを回避することができるとともに、フィルム部材62と溝部61との間に空間が形成されるため、この空間が断熱効果を備えることになる。以上により、その内容物が加熱状態にあるボトル缶Bを把持する際に、その内容物の熱を把持する部位に伝達することを抑制することができる。具体的には、前記内容物が加熱状態にある飲料水等である場合でも、このボトル缶Bを人手により容易に把持及び開栓することができる。
【0045】
さらに、胴体部には、前記空間が形成されることになるため、ボトル缶Bに、その内容物を保温する保温効果を備えさせることができる。従って、例えば、加熱状態にある飲料水等が充填されたボトル缶Bを雰囲気温度下に置いた場合でも、その飲料水等の温度が急激に雰囲気温度に近づくことを抑制することができる。
以上の、内容物の温度伝達抑制効果及び内容物の保温効果は、高い熱伝導性を有するアルミニウム系合金材料で形成されたボトル缶Bにおいて特に著しい効果を奏することになり、内容物が加熱状態にある場合のみならず、冷却状態にある場合においても同様の効果を奏することになる。
なお、フィルム部材62が断熱効果を備えた断熱性フィルム(例えば、PETフィルム、発泡ポリスチレンフィルム、発泡ポリプロピレンフィルム等)の場合には、更なる前記効果を奏することになる。
【0046】
次に、本発明に係る第二実施形態について説明するが、前述の第一実施形態と同様の部位には、同一符号を付し、その説明を省略する。
本第二実施形態による金型70は、図6に示すように、円筒状に形成され有底円筒状体の開口部を縮径する絞り金型71と、円筒状に形成され有底円筒状体の胴体部を断面円形状から断面異種形状に形成する異種形状形成金型72とを備えている。絞り金型71の一方の端面73側における内周面は、有底円筒状体の開口部を縮径するための縮径部付与面74を備えている。また、異種形状形成金型72は、本体部42とフランジ部41とを備え、本体部42の内周面の端面51側は、有底円筒状体の胴体部に軸方向に延在する溝部を形成するための凸部(異種形状付与面)44を備えている。
【0047】
この構成において、絞り金型71の一方の端面73に異種形状形成金型72のフランジ部41が設けられている。以上のように構成された金型70は、絞り金型71の他方の端面75が、ツール保持部30の円盤31表面に保持され、円盤31上に設けられた中子80が絞り金型71に嵌挿された構成となっている。また、金型70は、ワーク保持部20において図2に示す後述する位置Aと対向するように、ツール保持部30の円盤31表面に保持された構成となっている。
【0048】
以上のように構成された金型70により、有底円筒状体に加工を施す方法について説明する。
ワーク保持部20に保持された有底円筒状のワークWの開口部が、前述と同様にして、ネックイン加工により徐々に縮径されるとともにテーパ部及び口金部形状が徐々に形成され、最終段階のネックイン加工を施せば、テーパ部及び口金部が形成されるワークWが図2に示す位置Aに到達する。この際、ツール保持部30がワーク保持部20側に前進し、図6に示す金型70を構成する異種形状形成金型72の本体部42がワークWの開口部に嵌挿される。
【0049】
さらに、ツール保持部30を前進させると、異種形状形成金型72の凸部44が、ワークWの胴体部とテーパ部との境界部を、ワークWの径方向に対して内方及び軸方向に対して下方に押圧する。そしてさらに、ツール保持部30を所定の位置まで前進させると、前述の実施形態と同様に、胴体部周面に、軸方向に延在するとともに、環状に複数配置された溝部が形成される。この際、絞り金型71の縮径部形成面74がワークWの開口部に略形成されたテーパ部及び口金部を更に径方向に対して内方及び軸方向に対して下方に押圧することにより、テーパ部及び口金部が形成される。
【0050】
その後、前述の第一実施形態と同様にして、ワーク保持部20の円盤21が間欠的回転等が繰り返されることにより、ボトル缶Bが成形される。そして、このボトル缶Bは、前述の第一実施形態と同様にして、図5に示す、胴体部に複数の溝部61と、フィルム部材62とを備えたボトル缶Bが形成される。
【0051】
以上説明したように、本実施形態による金型及び缶の製造装置並びにその製造方法によれば、ワークWの開口部に対するネックイン加工と、胴体部に対する溝部形成加工とを同時になすことができ、ボトル缶Bを高効率に形成することができる。また、前記ネックイン加工と前記溝部形成加工とを経てボトル缶Bを形成した後に、ボトル缶Bの胴体部にフィルム部材を貼着するため、フィルム部材にしわ、破れ等の製造上の不具合を発生させることなく確実に前記貼着をなすことができる。
【0052】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、溝部61を形成する際に、一回の加工で形成したが、溝部61の深さ等に応じて、複数回加工を施してもよい。また、ボトル缶に限らず、各種缶にも適応可能である。さらに、胴体部周面に溝部61を形成したが、溝形状に限らず胴体部周面に軸方向に延在する複数の平坦部又は曲面部を形成してもよい。
【0053】
さらにまた、前述した実施形態においては、ボトル缶Bの胴体部に溝部61を形成する際、図2において、金型40及び異種形状形成金型72の凸部44の縮径部54により胴体部に凹みを形成しつつ、この凹みを第2の平坦部55により径方向に押圧することで、軸方向に延在する溝部を形成したが、以下のようにして溝部61を形成しもよい。
すなわち、曲率部52により胴体部に第1の凹みを形成しつつ、この第1の凹みを第1の平坦部53により径方向に押圧することで、第1の溝部を形成する。これに追従して、第1の溝部に、縮径部54により第2の凹みを形成しつつ、この第2の凹みを第2の平坦部55により径方向に押圧することで、第1の溝部をより深さの深い第2の溝部に形成してもよい。この場合、一回の加工で2段階に分けた溝加工をなすため、比較的深さの深い溝部61を高効率に形成することができる。
【0054】
また、金型40の凸部44及び凹部45の個数は、16個に限らず、それ以上でも以下でもよく、前記突端面及び底面の形状も前記形状に限らず、例えば図6、図7に示すような形状であってもよい。
【0055】
図7、図8は、図3(a)に示す金型40の凸部44及び凹部45の一部拡大図を示すものである。
まず、図7において、凸部44は、周方向に32個等間隔で環状に設けられ、これら凸部44の突端面は、本体部42の中心軸と同軸の円形状の一部をなす円弧形状となっている。また、各凸部44同士の間に形成された凹部45の底面は、本体部42の径方向に対して外周面側に凹となる曲面形状をなしている。
【0056】
次に、図8において、凸部44は周方向に32個等間隔で環状に設けられ、これら凸部44の突端面は、本体部42の径方向に対して中心軸側に凸となる曲面形状をなしている。また、各凸部44同士の間に形成された凹部45の底面は、本体部42の中心軸と同軸の円形状の一部をなす円弧形状となっている。
【0057】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る金型及び製造装置並びに製造方法によれば、有底円筒状体に対して前記加工を1回だけ施せば、有底円筒状体の胴体部周面に複数の前記溝部を形成することができる。これにより、前記溝部を備えた有底円筒状体を高効率且つ高精度で形成できる。また、ボトル缶の形成と、胴体部への前記溝部の形成とを同一の装置上でなすことができるため、前記効果と相俟って、さらなる高効率生産を実現できることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態として示した缶の製造装置の側面図である。
【図2】 図1のX1−X1線矢視図である。
【図3】 本発明の第一実施形態として示した金型の平面図及び一部拡大図である。
【図4】 図3のX2−X2線矢視一部断面図及びX2−X2線矢視一部拡大断面図である。
【図5】 本発明の第一実施形態として示した缶の側面図である。
【図6】 本発明の第二実施形態として示した金型の側面断面図である。
【図7】 本発明の第三実施形態として示した金型の一部拡大図である。
【図8】 本発明の第四実施形態として示した金型の一部拡大図である。
【符号の説明】
10 製造装置
22 保持装置
30 ツール保持部
32 成形ツール
40、70 金型
42 本体部
44 凸部(異種形状付与面)
61 溝部
62 フィルム部材
71 絞り金型
72 異種形状形成金型
74 縮径部付与面
B ボトル缶(缶)
W ワーク(有底円筒状体)
Claims (5)
- 有底円筒状体を各種形状に形成する金型であって、前記金型は、円筒状に形成され有底円筒状体の開口部を縮径する絞り金型と、円筒状に形成され有底円筒状体の胴体部を断面円形状から断面異種形状に形成する異種形状形成金型とを備え、前記絞り金型の一方の端面側における内周面は、前記開口部を縮径するための縮径部付与面を備え、前記異種形状形成金型の内周面は、前記胴体部を断面円形状から断面異種形状に形成するための異種形状付与面を備え、前記絞り金型の一方の端面部に前記異種形状形成金型が設けられていることを特徴とする金型。
- 請求項1に記載の金型において、前記異種形状付与面は、径方向に突出して設けられた複数の凸部であることを特徴とする金型。
- 有底円筒状体の底部を保持する保持装置と、該有底円筒状体を各種形状に成形する複数の成形ツールを有するツール保持部とを備え、該ツール保持部に設けられた前記各成形ツールによって順次前記有底円筒状体に対する加工を行うことにより缶を成形する装置であって、前記成形ツールとして、請求項1又は請求項2に記載の金型を備え、該金型は、前記有底円筒状体の開口部に対向し、軸方向に相対的に進退可能に設けられていることを特徴とする缶の製造装置。
- 有底円筒状体を各種形状に形成する缶の製造方法であって、請求項1又は請求項2に記載の金型を、前記異種形状形成金型が、前記有底円筒状体の開口部と対向するように配し、該金型を前記有底円筒状体の軸方向に相対的に前進させ、前記異種形状付与面により前記有底円筒状体の胴体部周面を径方向及び軸方向に押圧して、前記有底円筒状体の胴体部を断面円形状から断面異種形状に形成し、さらに、前記絞り金型の前記縮径部付与面により前記有底円筒状体の開口部を径方向及び軸方向に押圧して、前記有底円筒状体の開口部を縮径することを特徴とする缶の製造方法。
- 請求項4に記載の缶の製造方法において、前記有底円筒状体の開口部を縮径した後、該有底円筒状体の胴体部にフィルム部材を貼着することを特徴とする缶の製造方法。
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