JP4081131B1 - メニエール病治療薬 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 糖アルコール類、及び2種以上の多糖類を糖アルコール類に対し、2〜50重量%含有するメニエール病治療薬とする。2種以上の多糖類をその特質を考慮し、適宜、効果的に組み合わせ、糖アルコール類に配合することで、単独の多糖類を配合した場合と比較して、糖アルコール類固有の瀉下作用、及び腸内異常発酵による消化器症状を、飛躍的に改善又は防止することができ、確実な内リンパ水腫減荷作用の発現を可能とする。
Description
糖及び糖アルコールの多くは、投与後浸透圧作用を発現することから、浸透圧利尿剤、浸透圧下剤として用いられてきた。浸透圧効果による脱水作用を有する薬剤として、瀉下作用を有するソルビトール、マンニトール、浸透圧利尿剤としてのマンニトール、グリセオール等がある。病態が内リンパ水腫であるメニエール病の治療においても、この脱水作用により水腫軽減が可能であると考えられた。すなわち、これらの薬剤は、経口投与後に内外リンパ液の浸透圧勾配を生じることから、内リンパ腔の容積が減少し、内リンパ腔虚脱効果、または内リンパ水腫減荷効果が生じると考えられたのである。
臨床的にはメニエール病患者では、急性期に抗利尿ホルモン(Antidiuretic hormone,ADH)のアルギニンバゾプレシン(arginine vasopressin、以後AVP)の上昇が報告されている(非特許文献8)。AVPはストレスホルモンの1つであり、この結果は、メニエール病はストレス時に発症しやすいとされる疫学的事実によく符合する。また、プライエル反射正常のモルモットの皮下にミニポンプでAVP1mu/kg/分を連続投与したところ、明らかな内リンパ水腫が形成された(非特許文献9)。表1に示すとおり、AVP投与量に比例して血漿AVPが上昇し、組織学的には内リンパ腔の面積が増加(内リンパ水腫の形成)した。AVP1mu/kg連続投与の場合、血清AVPは正常人の血漿AVPの数倍(メニエール病の急性期の血清AVPとほぼ同値)に上昇し、極めて危険な状態になった(非特許文献9)。
このように、現在まで、多くの試行錯誤がなされているにもかかわらず、臨床応用されるだけの成果を得るには到っていない。
メニエール病治療にあたっては、ストレスや脱水などによりAVPが上昇しないよう、特に留意しなくてはならないところである。
また、3単糖であるグリセロールが経口投与後約2時間で効果が発現するのに対し、6単糖であるイソソルビドは作用発現まで約6時間を要する(非特許文献12)ことから、迅速に効果が発現し、且つリバウンド現象のない薬剤の開発を試みた。
大量投与に伴う副作用としては、下痢のほか、腹部の膨満感、ゴロゴロ感などの消化器症状が知られている。これらは投与した糖質が小腸で未消化のまま大腸に送られて、大腸の微生物の働きで発酵し、酪酸やプロピオン酸などの短鎖脂肪酸が生成し、当該酸性物質が腸粘膜を刺激して蠕動運動を亢進させるために生じる。また同時に生成した二酸化炭素、水素、メタンなどが腸内ガスの発生が多くなるため生じるものであり、糖質自体によるものであるから、上記と同様、通常の整腸剤では解決することは出来ない。
さらに、大量投与であるために、服用の容易さ及び携行の便が求められている。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、糖又は糖アルコールを有効成分としながら瀉下作用などの消化器症状を示すことがないか又は緩和されたメニエール病治療薬、そしてさらに、服用と携行が容易なメニエール病治療薬、とりわけさらに速やかに効果を発揮し得るメニエール病治療薬を提供することにある。
(1)単糖類、少糖類、又はそれらの糖アルコール、及び2種の多糖類の含有するメニエール病治療薬であって、2種の多糖類の一方は、キサンタンガム、グァーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、及びタラガムよりなる群から選ばれる多糖類であり、他方の多糖類は、ペクチン、アルジネートナトリウム、寒天、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びカラギーナンよりなる群から選ばれる多糖類であることを特徴とするメニエール病治療薬
(2)単糖類、少糖類、又はそれらの糖アルコール、及び2種の多糖類の含有するメニエール病治療薬であって、2種の多糖類が、キサンタンガム、グァーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、及びタラガムよりなる群から選ばれる多糖類であることを特徴とするメニエール病治療薬
(3)単糖類、少糖類、又はそれらの糖アルコール、及び2種の多糖類の含有するメニエール病治療薬であって、2種の多糖類が、ペクチン、アルジネートナトリウム、寒天、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びカラギーナンよりなる群から選ばれる多糖類であることを特徴とするメニエール病治療薬
(4)単糖類、少糖類、又はそれらの糖アルコール、及び3種の多糖類の含有するメニエール病治療薬であって、3種の多糖類が、キサンタンガム、グァーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、及びタラガムよりなる群から選ばれる2種の多糖類、及びペクチン、アルジネートナトリウム、寒天、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びカラギーナンよりなる群から選ばれる1種の多糖類であることを特徴とするメニエール病治療薬
(5)単糖類、少糖類、又はそれらの糖アルコール、及び3種の多糖類の含有するメニエール病治療薬であって、3種の多糖類が、キサンタンガム、グァーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、及びタラガムよりなる群から選ばれる1種の多糖類、及びペクチン、アルジネートナトリウム、寒天、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びカラギーナンよりなる群から選ばれる2種の多糖類であることを特徴とするメニエール病治療薬
(6)多糖類の総量が、単糖類、少糖類、又はそれらの糖アルコールに対し、2〜50重量%である、(1)ないし(5)のいずれか1に記載のメニエール病治療薬。
(7)多糖類の含有量が、単糖類、少糖類、又はそれらの糖アルコールに対し、3〜50重量%である、(1)ないし(5)のいずれか1に記載のメニエール病治療薬。
(8)多糖類の含有量が、単糖類、少糖類、又はそれらの糖アルコールに対し、5〜50重量%である、(1)ないし(5)のいずれか1に記載のメニエール病治療薬。
(9)多糖類の含有量が、単糖類、少糖類、又はそれらの糖アルコールに対し、10〜50重量%である、(1)ないし(5)のいずれか1に記載のメニエール病治療薬。
該配合物はゲル剤とすることによって容量を圧縮することが可能であるため、保存・携行・服用が容易であり、さらに、ゲル剤を乾燥後、粉砕、造粒などによって粉剤、顆粒剤などの任意の製剤とすれば、保存・携行・服用が一層簡便となる。粉剤又は顆粒剤等の乾燥製剤は、服用時に少量の水を加えれば、直ちに服用のしやすいゲル剤(ゼリー状)とすることが出来る。
多糖類としては、キサンタンガム、グァーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、タラガム、ペクチン、アルジネートナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、寒天、カラギーナンなどが挙げられる。
水溶性多糖類と非水溶性多糖類のどちらが適しているのか、また分子量、構造はどのようなものが好ましいかは、用途に応じて選択できる。一般に非水溶性のものは水分を吸収して便を柔らかくし、消化管を通過する時間を短くすると考えられており、水溶性のものは非水溶性のものより、さらに水を吸収して膨らむうえ、保水力が優れているため、便量や消化管通過時間を正しく保つ効果が強いと考えられている。
これまでの報告から、非水溶性多糖類は消化管を通過する時間を短くし、下痢が生じやすいと考えられてきたが、本発明では、予想に反して親水性の低い多糖類も親水性の高い多糖類と同等の効果を発現することを見出した。
また分子量の大きい多糖類(キサンタンガムなど)の方が少量で強力な止瀉作用を示す傾向が認められた。摂取量が少なくて済むため、摂取が容易で不都合が少ない。キサンタンガムに代表されるグループには、他にグァーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、タラガムなどがあるが、これらは粘度の高いものほど止瀉作用が高い傾向が認められた。しかし、摂取して3〜5時間に便の量が約2分の1〜3分の1に減少し、形態も不整で大きさも小さくなる傾向があり、視診で腹部の膨満感、触診でガスの発生が認められ、ゴロゴロ感があることが推測された。このグループから2種以上を組み合わせると飛躍的に粘度が増すため、止瀉作用も向上した。この現象を利用し、複数種組み合わせることで、より少ない配合量で、十分な止瀉効果を発現させ、投与量を消減することが可能である。実際に複数種組み合わせたところ、少ない添加量でも、止瀉作用を向上させることができ、添加量が少ないため腹部の膨満感、ゴロゴロ感などの消化器症状や排便が減るというような副作用を軽減することが可能となることを見出した。
ペクチンは比較的大量に添加しなくては十分な止瀉作用を現わさなかったが、整腸作用に優れており、便の量は何も投与されていない動物と同程度で、形態や性状も同じであった。大量に添加すると、便の表面はより滑らかになり、排便は容易で腹部の膨満感などの症状も認められなかった。ペクチンに代表されるグループには、アルジネートナトリウム、寒天、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カラギーナンなどがあり、粘度が高いものほど止瀉作用が強い傾向があった。
したがって、これら2つのグループから適宜選択して組み合わせ、添加することにより、止瀉と同時に整腸作用をはかることが可能になることを発見した。また、同じグループの中から複数種組み合わせる等、様々の組み合わせが可能で、添加量を少なくしつつ、場合によっては流れをよくすることもできることから、摂取しやすくするなどの優れた性質を新たに発揮させ、それを生かしつつ、同時に胃腸症状の軽減又は消失を目指すことが可能であることも判った。
糖アルコール類と多糖類の規定量を混合し、混合物に対し約10〜約55重量%、好ましくは約15〜約50%の精製水を加えて、常温又は必要に応じて加熱下に練和すると、練和物はゲル化しゼリー状になる。精製水の量が10重量%より少ないと粘度が上がりすぎ、また、55重量%を超えると希薄になりすぎて良質なゲルが得られないため好ましくない。
このゲル剤を乾燥、粉砕すれば粉剤が得られる。また、上記練和物を押し出し造粒等の方法で造粒し、乾燥後製粒することによって顆粒剤が得られる。
乾燥、粉砕、及び造粒は、慣用の方法が何れも適用できる。
製剤化に際し、必要に応じて、有効成分に加えて、医薬上許容し得る担体、賦形剤、希釈剤、結合剤、防腐剤、安定剤、香味・着色剤などを配合することができる。好ましいゲル化を促進し、且つ離水の生じにくいゲルを得ることの出来る無機塩を添加することも可能である。
本発明のメニエール病治療薬は、糖アルコール類と多糖類とを練和して得たゲル剤をそのまま服用してもよく、また、ゲル剤から定法で製剤化して得られる粉剤又は顆粒剤を服用してもよい。
ゲル剤から得られる粉剤又は顆粒剤は、糖アルコール類原末に比較して容量が約20%以上好ましくは50%以上減少するため、保存、携帯に有利であり、患者にとって服用の負担が軽減される。
また、粉剤又は顆粒剤に用時に約10〜約55重量%の水を加えれば、再ゲル化して一塊のゼリー状となるため、服用がさらに容易となる。
本発明によるゲル剤は、糖アルコール類原末の飽和水溶液に対し容量が約3分の1に激減するため、従来の液状製剤と比較しても服用上格段に有利である。
実験計画をたてるに当たり、動物愛護が叫ばれる社会的事情にも配慮し、大量の動物を灌流固定(と殺)することは避けるよう工夫した。なお、糖アルコール類、または糖アルコール類に多糖類を配合したものを投与した動物は、一度のみの利用にとどめた。
参考例1では糖アルコール類の瀉下作用、多糖類の止瀉効果を便の状態と腹部の視診、触診により観察し、多糖類の効果を調べ、適切な添加量を決める根拠とした。
参考例2では便の状態から腹部の視診、触診により観察し、多糖類の効果を観察した後、設定した時間経過後に灌流固定し消化器官の症状をより詳細に観察し、参考例の結果をさらに詳細に検討した。側頭骨を摘出し、組織学的検討を加えて、内リンパ水腫の大きさを測定して、多糖類の減荷効果を調べた。この結果、多糖類を加えることで、確実な内リンパ水腫減荷効果が発現し、且つグリセロールなどで見られるリバウンド現象も認められないことを見出した。また、断頭して血漿AVPを測定して、組織学的検討結果と総合的に検討し、多糖類が通常増粘剤として用いられる添加量では、下痢によって血漿AVPが上昇し糖アルコール類の内リンパ水腫減荷効果を相殺し、治療効果を現わさないこと、適切な多糖類の添加で止瀉に成功すると、糖アルコール類の内リンパ水腫効果は確実に発現することを見出し、糖アルコール類経口投与の場合にも、血漿AVP値と内リンパ水腫減荷効果の開には密接な関連性があることを確かめた。
参考例3では糖アルコール類と多糖類の組み合わせを様々換えて、その止瀉作用と内リンパ水腫減荷効果を調べた。
参考例4では、参考例1及び2で、下痢と血漿AVP値、さらには内リンパ水腫減荷効果の間には密接な関連性があることを確かめたことから、さらに多くの糖アルコール類と多糖類の組み合わせを換えて、その止瀉作用を確認した。
Ery:エルスリトール
IB:イソソルビトール
P又はPec:ペクチン
XG:キサンタンガム
GG:グァーガム
AG:アラビアガム
Al:アルジネートナトリウム
Gly:グリセロール
CMC:カルボキシメチルセルロースナトリウム
開腹による消化器内部の詳細な観察と、体外に排出された便の観察から、下痢を含め消化器症状を評価、判定するには、***された便の固さのみに拘泥していては、糖アルコール類の瀉下作用、消化器症状の改善又は防止効果の評価はできないことがわかった。すなわち、直腸部分にわずか2〜3cmでも便が形成されていれば、体外に排出された便は軟便程度の固さを有していて、止瀉に成功したと判定することになってしまうが、実際には腸管内は、形のない泥状便で満たされ、泥状便は大量の水分を含んでいて、腹部の圧は高く、膨満感は明らかであったことである。また、便が腸管内で形成されていた動物では、間隔が大きく空いた部分には腸管へ穿刺することによりガスの発生が確認できたものがあった。ガスの発生は、膨満感を相乗的に増悪させるものであろうと思われ、不快な症状があったと推定された。
したがって、本発明の参考例、実施例においては、止瀉を判定するには、便の固さだけではなく、量や形、大きさ、表面の滑らかさ等を評価し、腹部の視診、手指による触診で、腹部の膨満感やガスの発生、ガスの移動、さらに下腹部に圧を加えることで容易に排便するかどうかなど、詳細に検討し、評価した。
投与する糖アルコール類と多糖類の量は表3、表4、表5、表6に示すとおりである。投与薬剤は蒸留水に溶触させ、いずれの場合も水溶液の1回の投与量は8ml/kgとなるようにした。
便の固さ、形状は、経過観察中もっとも症状が重篤になった時点のものをその動物の糖アルコール類による症状として表2により判定し、その結果を表3、表4、表5、表6に記した。
1−a)キシリトール投与の場合
投与前、正常な便をしているモルモット50匹を、5匹ずつ10群に分け、表1に示すようにキシリトール等の水溶液を経口投与した。
ア)キシリトールのみを投与した場合の投与量による影響[比較例1]
キシリトール1.4g/kgでは下痢は起きなかったが、2.1g/kg投与群では3時間後には手指で押さえると便が容易に変形する程度の軟便の動物が1匹いた。2.8g/kgでは投与後1時間では異常は認められなかったが、投与後2時間ですべての動物に程度の差はあったが、明らかな下痢症状があらわれた。投与後3〜4時間で全動物の便が軟化し、うち2匹が泥状便となり、症状がもっとも重篤になったが、6時間後にはほぼ正常な便に戻った。下痢が続く間、腹部には軽度ないし中等度の膨満が触れたが、ガスの移動は認められなかった。
イ)キシリトールにキサンタンガム(XG)を添加
キシリトール2.8g/kgに、各々XGを0.12g/kg、0.15g/kg、0.18g/kg添加し経口投与したところ、2時間目からわずかずつ便が軟化し始め、3〜4時間後に明らかな症状が発現し、ピークに達した。その時点の便の評価を表1に示した。便はXGの量が増加するにつれ正常な便をするものが多くなり、0.18g/kgでは観察時間中に全てが正常便となり、便の固さには比較例1と比べ、有意差が認められた(P<0.01、Mann−Whitney検定)。3群とも便量が減り、視診により腹部の特に異常な膨満は認められなかったが、触診でガスの発生と移動が触れた。
ウ)キシリトールにペクチン(Pec)を添加
キシリトール2.8g/kgに、各々Pecを0.2g/kg、0.3g/kg添加し経口投与すると、0.2g/kgでは、便は2時間目から軟化傾向を示しはじめ、3〜4時間目に3匹が軟便または泥状便となって、便の固さに比較例1と比べ、有意差はなかった。0.3g/kgで軟便は認められず、便の固さには有意差が認められた(P<0.01、Mann−Whitney検定)。視診により両群とも腹部の異常な膨満は認められなかった。触診でもガスの発生と移動などの異常は特に認められなかった。
正常な便をしているモルモット16匹を表3に示すように3群に分けた。XS2.8g/kgのみを投与した5匹(比較例2)のうち4匹は泥状便ないし軟便、XSにXG0.2g/kgを添加した群では、やや軟らかい便の1匹を除いて正常便で、軟便は見られず、便の固さには比較例2と比べ有意差が認められた(P<0.01、Mann−Whitney検定)。下痢が続く間、腹部には軽度ないし中等度の膨満が触れ、ガスの移動をわずかであるが触れた。またはPec0.3g/kgを添加した群では、全て正常便で、便の固さには比較例2と比べ有意差が認められた(P<0.01、Mann−Whitney検定)。
投与前、正常な便をしているモルモット75匹を、5匹ずつ15群に分け、表4に示すようにEry溶液及び添加物を経口投与した。
ア)エリスリトール(Ery)のみ2.8g/kgを投与した場合[比較例3]
2時間後には軟便の動物が多くなり、3時間後には全動物が泥状便となり、6時間後にも3匹は泥状便が続いていた。下痢が続く間、腹部には軽度ないし中等度の膨満が触れたが、ガスの移動は認められなかった。
イ)エリスリトール(Ery)にペクチン(Pec)を添加
Ery2.8g/kgにPecを各々0.1g/kg、0.3g/kg、0.5g/kg、1.0g/kg、1.5g/kg添加し、経口投与した。0.5g添加すると便は過半数が正常になり、1.5g/kg添加すると、便は正常よりむしろやや固くなることが判った。
0.5g/kg以上を投与した3群で有意な止瀉効果が認められた(P<0.01、Mann−Whitney検定)。0.1g/kg、0.3g/kg投与群では、下痢の悪化と共に、触診で腹部の膨隆がわずかに感じられたが、ガスの移動は感じられなかった。1.0g/kg、1.5g/kg投与した群では通常よりいくらか便が固くなる傾向があったが、腹部の異常は感じられず、腹部に圧を加えても動物は苦しがる様子は見られなかった。腸内のガスの移動も感じられず、不快な消化器症状を発生させることなく、下痢を防止できたことが分かった。
ウ)エリスリトール(Ery)にペクチン(Pec)、アドソルビン、炭酸カルシウムを添加
表4に示すようにEry2.8g/kgにPec0.5g/kgさらに天然ケイ酸アルミニウム(アドソルビン)0.17g/kgと炭酸カルシウム50mg/kgを加えた場合、Pec0.5g/kgさらに天然ケイ酸アルミニウム0.17g/kgを加えた場合のいずれも殆どの動物が正常な便であった。
上記イ)のPecを0.5g/kg単独で添加した群と比べ差異はなく、従来の整腸剤を添加することによる好ましい相乗効果は特に認められなかった(Mann−Whitney検定)
エ)エリスリトール(Ery)にキサンタンガム(XG)を添加
Ery2.8g/kgに、各々XGを0.05g/kg、0.10g/kg、0.15g/kg添加し経口投与した。XG0.05g/kgの群では、2時間目からわずかずつ便が軟化し始め、3〜4時間後に明らかな症状が発現し、ピークに達した。その時点の便の評価を表4に示した。便はXGの量が増加するにつれ正常な便をするものが多くなり、0.10g/kgでは観察時間中に軟便となる動物はなく、0.15g/kgでも4匹が正常便で、観察時間中に軟便は認められず、いずれの群も便の固さには比較例3と比べ、有意差が認められた(P<0.01、Mann−Whitney検定)。
3群とも便量が減り、視診により腹部の特に異常な膨満は認められなかったが、触診でガスの発生と移動が触れた。
オ)エリスリトール(Ery)にアドソルビン、炭酸カルシウムを添加
表4に示すようにEry2.8g/kgに従来の整腸剤である天然ケイ酸アルミニウム(アドソルビン)0.17g/kg、2倍量の0.35g/kg、4倍量の0.7g/kg、さらに/または炭酸カルシウム50mg/kg、2倍量の100mg/kgを添加した場合、止瀉効果は認められなかった(Mann−Whitney検定)。
投与前、正常な便をしているモルモット61匹を、表5に示すように12群に分け、イソソルビトールのみ、又はキシリトールなどを添加した水溶液を経口投与した。
ア)イソソルビトールのみを投与した場合の投与量による影響(比較例4)
イソソルビトール1.4g/kgでは1匹のみがやや軟便になった。2.1g/kg投与群では3時間後には手指で押さえると便が容易に変形する程度のやや軟便の動物が2匹、軟便の動物が2匹となった。2.8g/kgでは投与後1時間では異常は認められなかったが、投与後2時間で大部分の動物に下痢症状が現れ始め、投与後3〜4時間で症状が重篤になったが、6時間後にはほぼ正常な便に戻った。IBは臨床で投与された場合にも、比較的下痢など胃腸症状を生じにくい糖アルコールであると言われており、実際に本実施例においてもEryと比べれば症状は軽度であると言える結果であった。
XGをIBに対し0.05g/kg(約1.8重量%)添加すると2時間目まではほとんど異常な便は認められなかったが、3〜4時間後に7匹中2匹の便がやや軟化した。XGは0.15g/kg(約5.4重量%)添加すると、全動物が正常便となり、下痢の防止効果はより確実なものとなった(P<0.05、Mann−Whitney検定)。
ウ)イソソルビトール(IB)にペクチン(Pec)を添加
IB2.8g/kgに、各々Pecを0.15g/kg(約5.4重量%)、0.3g/kg(約10.7%)添加し経口投与した場合、0.15g/kgでは、軟便は認められず、0.3g/kgでは経過観察中、全動物が正常便で、いずれも有意に止瀉効果が認められた(各々、P<0.05、P<0.01、Mann−Whitney検定)。
正常な便をしているモルモット38匹を、対照群(二糖類のアルコールであるマルチトールのみを投与)6匹、残りの32匹を、4匹ずつ8群に分け、マルチトールに多糖類のXGまたはGGを表6のように添加して経口投与し、24時間目まで表1の評価基準に従って便の固さを観察し、下痢の発生状況とXGの改善、防止効果を調べた。消化器症状については、膨満感は腹部の視診、触診により、ゴロゴロ感は触診によりガスを発生しているかどうかで判定した。
結果を表6−1に示す。
二糖類のマルチトール2.8g/kgでは全ての動物で泥状便となった。
下痢の経過は、単糖類又はそのアルコール類(投与後3時間目で下痢のピークに達する)と比較すると、下痢の発症はいくらか遅く、3時間目に、便が軟化し始め、4時間ですべての動物の便が軟化し、うち5匹が泥状便となった。5時間目には全6匹が泥状便となり、12時間目まで続いた。18時間目を過ぎるころから少しずつ回復傾向が認められ、24時間後には半数が正常な便に戻った。
5時間目を過ぎる頃から時間の経過とともに、腹部に圧を加えると動物は苦しむ様子が認められ、放屁があった。腹部は外部から視診でも膨満している様子が確認できた。
マルチトール2.8g/kgに、各々XGを0.07g/kg、0.14g/kg、0.28g/kg、0.56g/kg、1.12g/kg添加し経口投与した。
XGを0.07g/kg投与した群では多糖類による止瀉効果は殆ど認められなかった。0.14g/kg投与した群では、3時間目から便が軟化し始め、症状は増悪して5時間目には2匹が泥状便、残りの2匹が軟便となった。この状態は12時間後にも続いており、18時間後にはいくらか回復傾向が認められ、24時間後には全動物が正常便に復した。XGの下痢防止効果は認められなかった(有意差なし、Mann−Whitney検定)。
XGを0.28g/kg投与した群では、0.14g/kg投与した群と同じく、3時間目から便が軟化するものが認められ、6時間後には正常な便をするものはなかった。うち、軟便は1匹であった、12時間後には正常な便をするものが半数になり、24時間後には全動物が正常に復した。XGによる下痢防止効果は不十分なものであった。
両群とも腹部の視診により腹部の膨満、触診ではガスの発生が認められ、動物は苦しむ様子が見られた。
止瀉作用は確認できたものの、消化器症状はXG添加量の増加に比例して重篤なものとなった。腹部の膨満は視診でも顕著で、動物の活動は低下し、ケージをたたくなどの刺激に対しても殆ど反応しなかった。触診でガスの発生、軽く圧をかけることで腸管内でのガスの移動が音と共に手指に触れ、放屁があった。腹部に強く圧をかけると、動物は激しく鳴き、苦しそうな様子を示した。その苦しみ方はマルチトール単味の群、XGの少量投与群と比べ、明らかに激しかった。
マルチトール2.8g/kgに、GGを0.28g/kg、0.56g/kg、1.12g/kg添加し、経口投与した。
GGを0.28g/kg(10重量%)投与した群では、2時間目から便が軟化するものが認められ、4時間後には軟便の1匹を除き泥状便となった。5時間目には全動物が泥状便となり、12時間目まで続いた。18時間目も、4匹が軟便であったが、24時間目には正常に復した。XGと比較し、下痢防止効果は劣っていた。腹部の視診により腹部の膨満、触診ではガスの発生、移動が認められた。
GGを0.56g/kg(20重量%)投与した群では、3時間目から便が軟化するものが認められ、5〜6時間後には正常便は1匹、やや軟便、軟便が1匹となって、下痢はピークに達した。便の大きさ、形は正常便の1匹を除いて小さく、不整で、量は約2分の1に減った。腹部の視診により腹部の膨満、触診ではガスの発生、移動が認められた。XGを同量添加した場合と比較し、下痢防止効果は劣っていたが、便の量はXGよりもいくらか多く、通常の約2分の1程度の減少で、腹部の膨満も軽かった。
GGを1.12g/kg(40重量%)投与した群では、3時間目から便が少なくなり、形も小さく、不整になった。5時間後には便がやや軟化した。半数の動物がやや軟便となり、その後18時間目まで同様の状態が続いたが、24時間後には全動物が便の固さは正常に復した。GGによる下痢防止効果が認められた(両群ともP<0.05、Mann−Whitney検定)。消化器症状はGG添加量の増加に比例して重篤なものとなった。触診でガスの発生、軽く圧をかけることで腸管内でのガスの移動が音と共に手指に触れ、腹部に強く圧をかけると、動物は激しく鳴き、苦しそうな様子を示した。
XGを同量添加した場合と比較し、下痢防止効果は劣っていた。、便の量は通常の約2分の1程度で、XGと比べ多かった。腹部の膨満は同程度であったが、触診による苦しみは軽かった。
瀉下作用が小さいと言われているイソソルビトール(IB)の場合キサンタンガム(XG)を約1.8%添加することである程度の下痢防止効果が現れ、約5.4%添加することで効果は確実となった。ペクチン(Pec)は約7.1%添加することで下痢は防止された。
エリスリトール(Ery)の場合はXGを約3.6%、Pecを17.9%添加すると下痢は確実に防止できた。糖アルコール類にXG又はPecを適切な量だけ添加することで、止瀉効果を発揮することを確認したが、XGがより少ない量で止瀉効果を発揮する一方で、腹部の膨満感が認められ、Pecは腹部の膨満感は殆ど認められず、排便は規則的で、便の量、形状は正常であった。
糖アルコール類に下痢防止効果発現に十分な量の多糖類を添加し、さらに制酸作用、整腸作用を有する薬物を加えることで、下痢の防止効果はいくらか確実になる傾向も認められはしたが、相乗効果は明らかなものではなく、また従来の胃腸薬は、多糖類の下痢防止効果を相殺することもないことが判った。
二糖類であるマルチトールに、XGを単糖類で止瀉効果を発現する量(1.8〜3.6重量%)を添加した群では止瀉効果はなく、10重量%でも十分な止瀉効果は認められなかった。XGを20重量%または40重量%まで増量して、投与すると止瀉効果は有意に認められるようになったが、腹部の膨満感はXGの添加量に比例して次第に増悪し、腹部の不快な症状である膨満感、ゴロゴロ感はマルチトール単味の場合より重篤であった。
二糖類の消化器症状の軽減には多糖類は単糖類の数倍もの大量を添加しなくては効果を現わさないこと、大量の投与はかえって症状を増悪させるおそれがあることが判った。
このことから、二糖類に多糖類を投与する場合には、投与量、投与法に新たな試みを必要と考え、実施例を行い、十分な効果を得た(実施例7−1、7−2、7−3、7−4)
1ヶ月後、第2−1グループ(第1−6群)60匹、第2−2グループ(第7−10群)40匹、第2−3グループ(第11−15群)の3グループに分け、第2−1グループには、糖アルコール類のみを投与し、糖アルコール投与後の便、消化器症状の変化と内リンパ水腫の状態を調べた。第2−2グループには、糖アルコール類に多糖類を添加した薬剤を経口投与し、同様の観察を行って、内リンパ水腫減荷作用を発現する量と減荷効果の経時的変化、さらに血漿AVPと減荷作用の間には密接な相関関係かあることを見出した。第2−3グループでは、イソソルビトール(IB)にアルジネートナトリウム(Al)を加え、従来品のイソソルビド製剤との比較を行い、Al添加群では止瀉が完全に図れるため、従来品より作用発現が早くなることを見出した。
参考例3では、さらに糖アルコール類と多糖類の組み合わせ(第16−23群)を換えて、内リンパ水腫減荷効果を調べた。その結果、従来の治療薬と比べ早期に作用が発現する。
胃腸症状は灌流固定の際、大腸、結腸、直腸の状態、便の形成状況については、1)便の固さと形、2)形のある便の形成された長さと便の間隔と配列状態の2点について特に観察し、表2の基準により判定した。
各回転毎にライスネル膜の伸展と内リンパ腔の容積変化を計測し、その結果を下記の計算式により積分して、蝸牛毎に膜の伸展率、内リンパ嚢の面積増加率を求めた。術側の左側では内リンパ腔の容積変化から、内リンパ水腫減荷効果を評価した。
組織作成法、計測法、評価法の詳細は既報(非特許文献10)と同様である。
モルモット60匹を各群10匹ずつ6群に分け、各群に次に示すように薬物の投与を行った。Ery水溶液は1回投与量が8ml/kgとなるように調整した。
結果を表7に示す。
便の固さは灌流時点に排出された便と直腸部分の便を観察し、評価した。
対照群はすべて正常便であった。E1H,E2H群は直腸付近では正常な便が形成されていたが、次第に軟便に移行していた。E3H,E6H群はすべて泥状便であった。E6H群の5匹中1匹は泥状便にわずかな軽回が認められたが、形は形成されていなかった。E12H群では全動物でほぼ正常な固さの便が形成されていた。
イ)形のある便の形成された長さと便の間隔と配列状態
対照群では55.0±8.8cmで、便の大きさは一定で、その間隔も一定であったが、E1H群では一部軟便で、大きさは不整、間隔もバラバラになっているなど不定になっており、不快な胃腸症状の発現が推定された。便の形成された長さは22.8±6.9cmであった。E2H−E6H群では一部軟便に近い部分もあったが、腸内はほぼ泥状便で満たされており、便の形成は0cmであった。投与後12時間のE12H群では、ほぼ一定の形をした便が66.0±12.1cm形成されていた。便の間隔は対照群では通常約0.7〜1cmでほぼ一定であるところ、E12H群の一部の動物では8〜10cmの箇所もあり、不定で、便の間隔が開いた箇所には、腸管内への穿刺により、ガスの発生が認められた。
以上から、Ery投与による下痢は2〜3時間で重篤なものとなり、6時間後も継続しているが、12時間後にはおおよそ正常に復することが判った。
術側における膜の伸展と面積の増加の関連
術側における膜の伸展率(IR−L)、面積増加率(IR−S)の平均±標準偏差を表8に示す。なお、対照群は閉鎖術を施行していない右側(対照側)をも計測して、閉鎖術を施行していない、すなわち無処置のライスネル膜の伸展率、内リンパ腔の面積増加率を表8に加えて示した。
図1は横軸に膜の伸展率、縦軸に面積増加率をとり、各動物群毎に術側の2変数の散布図と回帰直線を示したものである。内リンパ水腫が生ずると、内リンパ腔の体積が増加し、ライスネル膜が伸展する。図1から、蒸留水を投与した対照群術側では、この両者の間に統計学的に1次相関が存在すると推計される。薬剤投与により水腫の減荷が起こると、膜が伸展しているにもかかわらず、内リンパ腔の面積増加が少なくなり、回帰直線が下方に移動することになる。
糖アルコール類の内リンパ水腫減荷作用を確実なものとするには、糖アルコール類の瀉下作用を打ち消す方法を考案しなくてはならないことが判った。
左側内リンパ嚢の閉鎮術施行1ヶ月後、モルモット20匹を各群10匹ずつ2群に分け、各群に次に示すように薬物投与を行い、一定時間経過後に灌流固定した。
[2−2−a:ペクチン(Pec)の添加量による効果の違いを観察する]
灌流固定の際、大腸、結腸、直腸の状態、特に便の形成状況を観察した。灌流固定後の脱灰、脱水、包埋、染色、光学顕微鏡での観察、計測は第2−1グループと同様に行った。
なお、薬剤の1回投与量は8ml/kgとした。
便の固さ、間隔の判定と便の形成された長さは上記の2グループに分けて観察した。
[2−2−a:ペクチン(Pec)の添加量による投与後3時間後の効果の違いを観察する]
結果は表9に示す。
第8群(E+P3H群:Pec0.5g/kg添加)では3匹が泥状便、他の7匹のうち軟便、やや軟便が各1匹、3匹は正常な固さで止瀉効果が認められた(P<0.01、Mann−Whitney検定)。しかし、これら7匹の便の間隔はいずれも不定であった。形成された便の長さの平均(10匹)は19.2±21.7であった。
Pecの添加量の差による内リンパ水腫減荷効果の違い、さらに減荷効果の経時変化を検討する場合に、術側においては、各群の膜の伸展率、面積変化率の平均と標準偏差を比較検討しても、効果を明確に判定することは困難である。そこで第1グループでの観察と同様に、図2の直線の傾きとY切片を比較することにより、検討した。
表10に各群の膜の伸展率と面積増加率の平均と標準偏差、図2に散布図と回帰直線を示す。
対象と方法)体重280〜320mgのモルモットで、正常な便をしている12匹を、3グループに分け、第1グループには生理食塩水のみ、第2グループにはEry+Pec0.1g/kg、第3グループにはEry+Pec0.5g/kgを投与した。投与後、3時間でギロチンを用いて断頭、採血し、明細書中の非特許文献9に記載された方法で、血中AVPを測定した。
投与薬剤と検査結果を表11に示す。Ery投与量はいずれも2.8g/kgで、水溶液の1回の投与量は8ml/kgとなるように調整した。
非特許文献9、表1に示したとおり、血漿AVPの値と内リンパ水腫の増加率は比例する。表11(血漿AVPの値)と、先の表10、及び図2に示す組織学検討結果、すなわち、Pec0.1g/kg(約3.6重量%)配合した場合には血漿AVPが高値をとり、水腫減荷効果は認められず、Pec0.5g/kgでは血漿AVPが低く、著明な減荷効果が認められたという事実は、非特許文献9、表1と整合性がある。
多糖類の添加量が少ない場合には下痢が生じ、脱水が続発する。上記の表10の欄外に示すとおり、血漿AVPの上昇は下痢の重篤度に比例する。懸濁剤や増粘剤に使われる程度の低濃度の添加では、血漿AVPの上昇を招き、メニエール病の病態(発作期のAVPと同値の危険な状態)を作り出してしまい、内リンパ水腫を形成する結果となって、糖アルコール類の浸透圧作用を相殺する結果となった。
第2−2−aグループの結果から、Pecを0.5g/kg添加することで、脱水状態に陥るおそれもなく、安全に確実な内リンパ水腫減荷効果が発現することが判ったので、次に左側内リンパ嚢の閉鎖術施行1ヶ月後のモルモット20匹を各群10匹ずつ2群に分け、次に示すように薬物投与を行い、一定時間経過後に灌流固定した。
なお、薬剤の1回投与量は第7群から10群までは8ml/kgとし、灌流固定の際、さらに、灌流固定後の観察は第2−2−aグループと同様に行った。
結果は表12に示す。
第10群(E+P12H:12時間後灌流)では全動物が正常便であった。注目すべきは便の間隔が10匹中9匹で一定であることで、Eryのみの第6群(E12H群:12時間後)と比べ、有意に胃腸症状の改善が認められた(P<0.001、Mann−Whitney検定)。
単糖又はその糖アルコール類摂取による下痢は反復投与をする場合を除いては、投与後数時間経過すると、回復する傾向を示すことは日常の臨床でも、本発明の参考例においても確かめられたとおりであるが、第6群で分かるとおり、多糖類を添加しない群では12時間経過しても便の間隔は一定ではなく、不快な胃腸症状が発生した経過が推測され、さらには継続していたと推定される。しかし、Pecを添加することで、3時間後、6時間後の結果が示すとおり、腸内のガスも認められず、ガス発生も抑制されて、不快な胃腸症状を極力抑えることができ、かつ早期に正常に復していたことが12時間後(第10群)の結果からも確認できた。
形成された便の長さの平均は45.4±11.5cmであった。
表13に各群の伸展率と面積増加率の平均と標準偏差、図3に散布図と回帰直線を示す。
現在我が国で臨床に用いられている治療薬はイソソルビトール(興和創薬(株)製:一般名イソソルビド)で、IB含有率は70%の水溶液である。
内リンパ嚢閉鎖術を施行し、1ヶ月後、正常な便をしているモルモット50匹を5群に分け、第11群にはIB単味、第12群、第13群にはイソソルビド製剤(以下IB従来品)を投与し、第14群、第15群には、Alを0.11g/kg、無機塩0.09g/kgを添加して調整したゲル製剤(IB2.8g/kg)の投与を行なった。投与後3時間目と6時間目(IB従来品の減荷効果が最大となる投与後6時間後(非特許文献12))に灌流固定し、組織を採取して内リンパ減荷効果を観察、評価した。消化器症状は灌流時まで継続して行った。便の固さは灌流時のものである。
いずれの群も、1回の投与量は4ml/kgとなるように調製した。閉鎖術、組織作成などの手順、及び計測は、非特許論文8(Takeda T:Hear Res.183:9−18,(2003))と同様の方法で行った。
便の固さ、形状の観察結果を表14に示す。
術側における膜の伸展率と面積の増加率の関連
各回転毎にライスネル膜の伸展と内リンパ腔の容積変化を計測し、その結果を表15、図4に示す。
第14群(〈IB+Al〉3時間後)、第15群(〈IB+Al〉6時間後)の回帰直線は、さらに下方に移動し、対照群と比較すると有意差が存在した(各々P<0.001、P<0.001、ANCOVA)ことから、減荷効果がより大きいものであると分かった。〈IB+Al〉群を従来品と比較すると、投与後3時間(第14群)の減荷効果はIB従来品(第12群)と比較して、有意に大きく(P<0.01、ANCOVA)、一方、投与後6時間が経過した第15群では、IB従来品(第13群)と比較すると同程度の効果を有した(有意差なし(ANCOVA))。
6時間後では有意差はないが、従来品と比べ回帰直線は下方に移動しており、便の性状と消化管内のガスの発生状況から、瀉下作用を含め、胃腸症状の改善に成功したことが明らかであるので、より少ない量で消化器官に負担をかけることなく、十分な治療効果が期待できることが予想される。
糖アルコール類と多糖類の組み合わせをかえて、止瀉作用を観察し、表2の基準に基づいて評価した。糖アルコール類として、単糖類のキシロース、糖アルコール類のグリセロール、キシリトール、イソソルビトール、多糖類として、キサンタンガム、アルジネートナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムを任意に組み合わせた。
動物は左側内リンパ嚢の閉鎖術施行1ヶ月後、糖アルコール類を経口投与し、糖アルコールの瀉下作用が最大になる投与後、3時間目まで便を含め、消化器症状を観察し、灌流後側頭骨を取り出して、上記(非特許文献10)と同様の方法で標本を作製、内耳の観察と内リンパ水腫減荷効果を計測、評価した。
モルモット12匹を6匹ずつ2群に分け、次に示すように薬物投与を行い、3時間経過後に灌流固定した。
これらの結果のうち、止瀉効果の評価結果を表16に示す。
モルモット15匹を2群に分け、次に示すように薬物投与を行い、3時間経過後に灌流 固定した。
これらの結果のうち、止瀉効果の結果を表18に示す。
モルモット7匹に、次に示すように薬物投与を行い、3時間経過後に灌流固定した。
これらの結果のうち、止瀉効果の結果を表20に示す。
モルモット12匹を2群に分け、次に示すように薬物投与を行い、3時間経過後に灌流固定した。
これらの結果のうち、止瀉効果の結果を表22に示す。
モルモット12匹を2群に分け、次に示すように薬物投与を行い、3時間間経過後に灌流固定した。
これらの結果のうち、止瀉効果の結果を表24に示す。
糖アルコール類と多糖類の組み合わせをさらに換えて止瀉に成功するかどうかを調べた。
糖アルコール類として、エリスリトール、ソルビトール、イソソルビトール、マンニトールに、多糖類として、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、グァーガム、アラビアガムを任意に組み合わせた。
正常な便をしているモルモット8匹を2群に分け、次に示すように薬物投与を行い、その後6時間、便を観察した。
結果を表26に示す。
正常な便をしているモルモット10匹を2群に分け、次に示すように薬物投与を行い、その後6時間、便を観察し、その結果を表27に示した。
正常な便をしているモルモット10匹を2群に分け、次に示すように薬物投与を行い、その後6時間、便を観察し、その結果を表28に示し、E3H群と比較検討した。
正常な便をしているモルモット15匹を2群に分け、次に示すように薬物投与を行い、その後6時間、便を観察し、その結果を表29に示し、E3H群と比較検討した。
AGは40重量%、GGは20重量%添加することにより、止瀉には成功したが、増量に伴って膨満感、ゴロゴロ感などが認められるようになり、不快な胃腸症状の増悪が推測された。
正常な便をしているモルモット7匹に、10.7重量%のカラギーナンを添加したIB水溶液(8ml/kg)を投与し、その後6時間、便を観察した。結果を表30に示す。
〔イ)XGに代表されるグループ(以下、XGグループという)〕について
XGと同様止瀉作用に優れた多糖類としては、GG、AG、ローカストビーンガム、及びタラガムなどがある。
参考例1の1−aグループ、1−bグループ、1−cグループ、1−dグループ、1−eグループの結果、及び参考例3−1、3−5の結果から、著しく粘度の高いXGは止瀉作用に優れるが、添加量が多くなると、場合によっては排便量が一時的に約3分の1に減少し、腹部の膨満が認められるようになる。また4−2、4−3、4−4のGG、AGはどちらもXGと比較すると止瀉作用は弱かったが、XGと同様に、投与後3〜4時間後に便の量が減少し、軽度の腹部膨満が認められた。
止瀉作用の強さは粘性の高さに比例する傾向が認められた。例えばXGの粘度は0.5%水溶液で約300mPa・s、1%水溶液で約1350mPa・sとなる。GG、ローカストビーンガム、タラガムはいずれも、0.5%水溶液で70−80mPa・sで、XGの約20分の1であるが、1%水溶液では約1100mPa・sとなり、濃度の上昇とともに急激に粘度が上がる。
XGは低濃度でも粘性が高い特質があり、強力な止瀉作用を示す。少量の添加で十分な効果が得られることは副作用の面からも好ましく、服用も容易である。また、消化器官では1日に20リットルもの大量の水分が摂取又は分泌され、吸収されるので、低い濃度でも高粘度のものが好ましい効果を発現すると考えられる。粘性の低いAGは40重量%添加して、GGも20重量%添加して、止瀉効果が発現する(参考例4−2、4−3、4−4)事実からも、止瀉を完全にするためには、これらのガムを大量に添加せざるを得ず、粘度、嵩ともに高くなり、摂取が困難になり、且つ味を損なうおそれが生じるため、このままでは食品などの添加剤として適したものとはいい難い。なお、GG、ローカストビーンガム、タラガムの製品は粘度に幅があり、添加の目的により適したものを選択できる。また、GGは、本参考例(4−2、4−4)で止瀉効果を発現する0.28g/8mlでは、50mg/8ml(約0.5%水溶液)と比べ、混和の直後に既に粘度が高いが、懸濁後30分程度経過すると、さらに急激に粘度が増し、XGに次ぐ粘度となることが判った。この性質は添加量を決定する際に考慮を要する。多糖類の添加量を少なくしたい場合には好都合ではあるが、、それでもなお、糖アルコール類の投与量は約60〜90g/日で、GG単独の場合、約12〜18gの添加が必要となる。厚生労働省は特定保健用食品(規格基準型)の一つとしてのGG分解物の一日摂取目安量(5g〜12g)をもうけ、大量摂取に注意を促しているが、それを超える大量である。
一方で、これらは摂取して3〜5時間後には、程度の差こそあれ、便の量が約3分の1に減少し、形態も不整で大きさも小さくなる傾向があり、視診で腹部の膨満感、触診でガスの発生が認められ、ゴロゴロ感があることが推測された。添加量が増すにつれ、これらの症状は増悪する傾向にあった。
一方Pecは参考例2の2−2−aの結果から、止瀉に17.9重量%の大量を要するため、添加量が多くなる欠点がある。また、他の多糖類、オリゴ糖などを重複摂取する場合、何らかの胃腸障害が生じるおそれがあるので、注意を要する。しかし、Pec単独の添加ではその3倍の53.6重量%もの大量を添加しても、便が添加量に比例していくらか固くなる傾向はあるが、便の表面は滑らかで***量も通常かそれ以上で、排便に障害はなかった(参考例1−c)。腸管内での便の配列は規則正しく、整腸作用が優れている。視診、触診でも腹部の膨満感、ゴロゴロ感が生じず、動物も苦しがる様子がなかった。Pecと同様に、好ましい整腸作用を有し、かつ止瀉作用も発現する多糖類として、アルジネートナトリウム、寒天、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、ヒドロキシプロピルセルロースなどがある。CMCはPecとほぼ同程度の止瀉作用を示したが、Pecより粘性の高い寒天、AlはPecより優れた止瀉効果を示した。
XGグループは止瀉作用に優れるが、腸内発酵の増悪、便***量の減少などの胃腸症状が発現する。一方、Pecグループは止瀉には比較的大量を要する傾向があるが、整腸作用に優れている。各々の多糖類の特質を吟味し、異なった特徴を持つXGグループ、Pecグループから各々1種ずつの多糖類を組み合わせることで、より少量で的確な止瀉効果を発現させつつ、胃腸症状を生じずに、形の整った便を通常量***させることを可能にすることを見出した。
ローカストビーンガム+カラギーナンは混合比を7:3にすると、ゲル破断応力が各々単独の場合に比し、およそ数倍〜10倍になる相乗効果が知られている。XGグループ単独の場合は便を形作ることが困難になる傾向があり、便の形は小さく且つ不整になるが、この性質を生かせば、便の形態を整ったものとし、かつ性状を好ましいものにすることが出来る。
さらに、XG+CMC、GG+CMCなど、組み合わせによっては流れを良くすることも見出した。XG1:CMC3の粘度は流れのよいCMC単独添加の場合とほぼ同じ程度の低粘度の溶液で、XGの粘性は全く発現しない。これは嚥下が困難な患者への投与に適しており、経管栄養の患者への投与にも、水溶液にして微小チューブで支障なく投与することが可能である。このように、適宜、その性質を変えて、目的に適した材質にすることも出来る。
なお、服用時に流れが良い材質に変わっても、十分な止瀉効果の発現が認められたことから、消化管内ではXG固有の粘性が発現したと推測される。
XGグループの多糖類は、2種以上を組み合わせると飛躍的に粘度が上昇する。本発明ではこの事実を利用して、複数種組み合わせたところ、添加量を減し、止瀉作用を向上させ、且つ腹部の膨満感、ゴロゴロ感も軽くすることができることを見出した。例えば同じ0.5%の溶液の場合、GG単味の粘度に対し、XG1:GG3の粘度は数倍〜数十倍と、飛躍的に高くなり、0.5%XG溶液とほぼ同じまたはそれ以上に粘調になることが知られている。同様の現象はAGについても見られ、XG+AG,XG+ローカストビーンガム、XG+タラガム、GG+ローカストビーンガムなどというように、複数の多糖類を組み合わせることで、粘性を飛躍的に高めることも知られている。これによって、投与量を削減することが可能である。実際に複数種組み合わせたところ、少ない添加量でも、止瀉作用を向上させることができ、添加量が少ないため腹部の膨満感、ゴロゴロ感も軽くすることを見出した。
Pecを単独に加えた場合の問題点は、止瀉を実現するために大量に添加しなくてはならないことである。Pecグループから2種以上を組み合わせることで各々の特質を生かしながら、添加量も比較的少量で止瀉作用を発現することを見出した。
例えば、AlとPecの混和物は、粘性は両剤の中間的な値となったが、止瀉効果は各々を単独で加えた場合と比較し、少ない添加量で十分な効果を発揮することが判った。また、PecやAl等を糖アルコール溶液に混和するとゲル状になり、添加量が増えるにしたがってパサパサして一体感がなくなり、嚥下が困難になる場合もあるが、CMCを加えることでその問題点が解決することを見出した。CMCをPecまたはAlとを混和したところ、どちらの混和物も非常に流れがよい混和物となり、服用が容易となり、様々な投与法が可能となることを見出した。
[0118]に示したように、XGグループの多糖類は、2種以上を組み合わせると飛躍的に粘度が増すことが出来る。添加量が少ないことから、腹部の膨満感、ゴロゴロ感を軽くすることができたが、さらに好ましい整腸作用を得るため、Pecグループから1種選び混合したところ、より少ない添加量で、滑らかな便を***させることが出来た。***量の減少はごく僅かであった。
多糖類の多様な特質を吟味し、止瀉作用の強いXGグループに、Pecグループから2種加えることで、少ない添加量で止瀉作用と整腸作用を図りつつ、同時に内服も容易にすることが出来た。[0117]のとおり、CMCを加えることで、XGグループの粘性は全く発現しない。これにPecグループからさらに1種以上加えることで、整腸作用を確実にし、内服時に問題になる用量の削減と流れも良好にすることに成功した。
例えば、XG0.06g/kgにPec0.15g/kgとCMC0.2g/kgを混和することによって、止瀉と整腸作用を同時に得た。材質は流れが良く内服が容易なものとなった。嚥下の困難なケースや、微小チューブによる投与に適した形態にもなる。なお、服用時に流れが良い材質に変わっても、十分な止瀉効果の発現が認められた。
先に示した根拠から、止瀉に成功すれば内リンパ減荷効果が発現するのは確実である。すなわち、下痢をすれば血漿AVPが上昇し(非特許文献11)、血漿AVPが上昇すると内リンパ水腫を形成することは、非特許文献9で示したとおりである。本発明の過程で、先の段落[0069][0070]に示したように止瀉に成功すれば血漿AVPは上昇することなく、確実な内リンパ減荷効果が発現した。したがって、止瀉に成功するかどうかを調べることでメニエール病治療効果があるかどうかを知ることが出来るからである。
正常な便をしているモルモット15匹を3群に分け、粘度が非常に高いXGと親水性の高いPerとを表31のように組みあせてEryに投与し、6時間目まで便と消化器症状の観察を行った。
正常な便をしているモルモット15匹を3群に分け、粘度が非常に高いXGと親水性の高いAl(Pecより粘性が高い)とを表32のように組みあせてEryに投与し、6時間目まで便と消化器症状の観察を行った。
正常な便をしているモルモット15匹を3群に分け、粘度が非常に高いXGと親水性の高いCMC(Pecより粘性が低い)とを表33のように組みあせてEryに投与し、6時間目まで便と消化器症状の観察を行った。
この合剤は、粘性が低く、流れがよいことから、特に嚥下が困難な患者には便利な材質となる。
正常な便をしているモルモット10匹を2群に分け、粘度がXGより劣るGGと親水性の高いPerとを表34のように組みあせてEryに投与し、6時間目まで便と消化器症状の観察を行った。
正常な便をしているモルモット5匹に、粘度がXGより劣るGGと親水性の高いAlとを表35のように組みあせてEryに投与し、6時間目まで便と消化器症状の観察を行った。
正常な便をしているモルモット15匹を3群に分け、XGグループで粘度が非常に高いXGと比較的粘度の低いGGを表36のように組みあせてエリスリトールに投与し、6時間目まで便と消化器症状の観察を行った。
正常な便をしているモルモット15匹を3群に分け、Pecグループで整腸作用に優れるPecとCMCを表37のように組みあせてエリスリトールに投与し、6時間目まで便と消化器症状の観察を行った。
正常な便をしているモルモット5匹に不溶性のHPCと水に懸濁するCMCとを表38のように組みあせてエリスリトールに投与し、6時間目まで便と消化器症状の観察を行った。
正常な便をしているモルモット10匹を2群に分け、XGとGGを混和することで、粘度を飛躍的にあげ、そのことで添加量を少なくし、親水性の高いCMCとを表39のように組みあせてEryに投与し、6時間目まで便と消化器症状の観察を行った。
XGとGGを混和することで、どちらも少量で飛躍的に粘性をあげることが出来るが、さらにCMCと混和することで、流れがよい合剤を得ることが出来る。特に嚥下が困難な患者には便利な材質となった。
正常な便をしているモルモット10匹を2群に分け、XGとAGを混和することで、粘度を飛躍的にあげ、そのことで添加量を少なくし、親水性の高いCMCとを表40のように組みあせてEryに投与し、6時間目まで便と消化器症状の観察を行った。
XGとAGを混和することで、どちらも少量で飛躍的に粘性をあげることが出来るが、さらにCMCと混和することで、粘性が低く、流れがよい合剤を得ることが出来る。実施例4−1より、さらに流れがよく、特に嚥下が困難な患者には便利な材質となった。
上記の通り、Eryに3種の多糖類のうち、2種をXGグループから選ぶことによって、多糖類合計で5.7〜10重量%で、止瀉効果が認められると判った。
以下の実施例5では、3種のうち2種をPecグループから選んだ。
正常な便をしているモルモット10匹を2群に分け、XG、Pec、CMCとを表41のように組みあせて添加して、3時間目まで便と消化器症状の観察後、3時間目に灌流、便の配列などと共に、消化器官の観察を行い、側頭骨を取り出して組織学的に検討した。
XG単独を添加した場合には投与後便の量が減少し、腸内でガス発生が認められた(参考例1)が、Pecグループから2種を加えることで、そのような問題点が生じることなく、止瀉に成功した。消化管内の観察においても、便の配列は、6匹中2匹は形成された便の間隔が4〜7cmのところもあり、僅かながらガスの発生も認められたが、全体的には、ほぼ規則的になり、胃腸症状は軽回したものと推測された(P<0.001、Mann−Whitney検定)。形成された便の長さも57.0±19.6cmで、蒸留水のみ投与の55.0±8.8cmに近い値となった。
内リンパ水腫減荷効果の観察と評価は上記と同様に行った。
表42に各群の伸展率と面積増加率の平均と標準偏差、図10に散布図と回帰直線を示す。
また、多糖類としてPec1種のみを0.5g(17.9重量%)添加した第8群と比較するとわずかに上方に移動しているが、有意差はなく、十分な減荷効果を発揮していることが判った。
Pecは整腸作用に優れるが、止瀉を図るには添加量が多くなりがちであり、粘度が高くなることは避けられないが、CMCを添加することで、流れがよくなり、摂取時の口当たり、舌触りなどに優れた材質になった。違和感なく摂取できることから、経口投与や経管投与に優れた材質になった。
下痢など消化器症状は、個体差があり、糖アルコール類に過敏に反応し、重篤な下痢を引き起こす症例がある。メニエール病の治療においては、糖アルコール類を1日3回、2週間以上内服する。点滴等は毎日の通院か、入院の必要があり、困難がある。したがって、可能な限り、糖アルコール類を内服することになるが、糖アルコール類に過敏な症例では服用を中断するか、服用しても下痢をして、血漿AVPが上昇して、効果が望みにくいおそれがある。
そこで、糖アルコール類を増量して、重篤な下痢の状態を作出し、多糖類1種だけの添加では止瀉不可能な症状を、多糖類を2種以上組み合わせることで止瀉できるかどうかを調べた。
正常な便をしているモルモット30匹を6群に分け、Eryを25%、50%増量して、XGとPecとを表43のように組みあせて添加して6時間目まで便と消化器症状の観察を行った。
Eryの量を50%増量すると、さらに下痢は重篤なものとなり、Pec1.2g/kgの添加では、全く止瀉効果は発現しなかった。XG0.2g/kg+Pec1.2g/kg(多糖類合計で33.3重量%)で、一応の止瀉は図れた(P<0.001、Mann−Whitney検定)が、2匹が軟便であった。XG0.3g/kg+Pec1.5g/kg(多糖類合計で42.9%)ではほぼ完全な止瀉を達成できた(P<0.001、Mann−Whitney検定)。
投与後便の量が減少することはなかった。XGを大量に添加することで止瀉は図れるが、単独では便の量が減少し、腹部の膨満感などの症状が発現し、動物が苦しむ様子を見せた。しかし、Pecを混和することで、胃腸症状を発現することなく止瀉がほぼ完全に達成できた。
ただし、最も大量の多糖類を含む混和物(Ery4.2g/kg+XG0.3g/kg+Pec1.5g/kg+蒸留水8ml)は、ゲル状で蒸留水を追加すると粘性の高い溶液となった。
正常な便をしているモルモット10匹を2群に分け、エリスリトールを50%増量して、XG、Pec、CMCとを表44のように組みあせて添加して6時間目まで便と消化器症状の観察を行った。
投与後便の量が減少することはなかった。XGを大量に添加することで止瀉は図れるが、単独では便の量が減少し、また腹部の膨満感などの症状が発現して、動物が苦しむ様子を見せた。しかし、Pecを混和することで、胃腸症状を発現することなく止瀉がほぼ完全に達成できた。
ここで特筆すべきは、CMCを添加することで、流れがよくなり、内服時の口当たり、舌触りなどに優れた材質になることである。最も多糖類を含む混和物(Ery2.8g/kg+XG0.3g/kg+Pec1.0g/kg+CMC0.3g/kg+蒸留水8ml)は[実施例6−1]の混和物と比べ、非常に流れがよく、違和感なく内服できる。また、微小チューブなど経管によって薬剤を投与するときなどに適している。
正常な便をしているモルモット10匹を2群に分け、粘度が非常に高いXGと親水性の高いCMC(Pecより粘性が低い)とを表45のように組みあせてマルチトールに投与し、12時間目まで便と消化器症状の観察を行った。
しかし、XGにCMCを組み合わせることで少量(10.4重量%)で止瀉に成功した(P<0.01、Mann−Whitney検定)。3〜5時間には、便の量が減り、形の不整な便が僅かずつ***されたが、視診、触診によって、XG単独の添加の場合より、明らかにガスの発生は少ないことが確認できた。
マルチトールの場合は糖自体が大腸で発酵し、ガスが大量に発生するため、便***量が減少すると、不快なゴロゴロ感、膨満感など自覚症状をさらに増悪するおそれがあるが、2剤を組み合わせることで便の減少はXGのみの場合より、緩やかでかつ短期間であることから、胃腸症状は軽いものであったと推測された。
正常な便をしているモルモット5匹に、XGとPecを表46のように組みあせてマルチトールに投与し、12時間目まで便と消化器症状の観察を行った。
正常な便をしているモルモット5匹に、粘度が非常に高いXGと親水性の高いAl(Pecより粘性が高い)とを表47のように組みあせてマルチトールに投与し、12時間目まで便と消化器症状の観察を行った。
正常な便をしているモルモット5匹に、XGより粘度が小さいGGと親水性の高いCMC(Pecより粘性がやや低い)とを表48のように組みあせてマルチトールに投与し、12時間目まで便と消化器症状の観察を行った。
〔エリスリトール(Ery)とポリビニルピロリドン(PVP)〕
体重280−350gで、正常な便をしているモルモットの左側のみに内リンパ嚢閉鎖術を施行し、「実験的内リンパ水腫モデル動物」を作成した。術式の詳細は非特許文献10と同様である。
1ヶ月後、エリスリトール2.8g/kgにポリビニルピロリドン0.2g/kg(約5.6重量%)を添加し経口投与し、6時間、便の性状を観察し、3時間後灌流固定して、以後同様に組織観察を行い、減荷効果を判定した(表49)。結果を図11に示し、参考例2の第4群(エリスリトール2.8g/kg単味、投与後3時間で灌流)と比較した。
図10は横軸に膜の伸展率、縦軸に面積増加率をとり、動物群毎に術側の2変数の散布図と回帰直線を示したものである。第4群とのあいだには有意差は認められず、懸濁化剤を添加しても減荷作用は認められないことが判った。
図11は横軸に膜の伸展率、縦軸に面積増加率をとり、動物群毎に術側の2変数の散布図と回帰直線を示したものである。第4群とのあいだには有意差は認められず、単なる懸濁化剤を添加しても減荷作用は認められないことが判った。
〔エリスリトール(Ery)、イソソルビトール(IB)とゼライス〕
同じく、280−350gのモルモット10匹に、表50に示すように糖アルコール類としてEry又はIBにゼライスを添加し、経口投与して、便の性状を観察し、3時間後灌流固定、消化管内の観察を行い、判定した。
IBにゼライスを添加した群では時間経過とともに次第に便が軟らかくなり、3時間目で約半数の動物が泥状便又は軟便となった。この下痢は、IB単味の場合とほぼ同様の程度で、有意差はなく、どちらの組み合わせにおいても、ゼライスの下痢の防止効果は全く認められなかった。
糖アルコール類の消化器症状を改善・防止するためには多糖類の添加が必要であることが判った
多糖類自体に内リンパ水腫減荷効果があるかどうかを組織学的に検討した。まず、5匹のモルモットの左側のみに内リンパ嚢閉鎖術を施行し、1ヶ月後、正常な便をしている事を確認した上で多糖類であるPecを0.5g/kg経口投与し、3時間後灌流固定した。閉鎖術、組織作成などの手順、及び便と組織の観察、計測は上記と同様で行った。
[投与薬剤の容量の減少について]
Eryを成人(体重60kg)に投与する場合、1回量は10−80g、好ましくは20−60gになると考えられる。Ery21gを粉剤として投与すると、その容積は約53mlとなる。また、飽和水溶液として投与するなら、65mlの蒸留水を要し、その容積は78ml、重量は86gとなる。1日3回服用するため、これを携行することはメニエール病の患者にとって大変面倒なことであるのに対し、本発明のゲル剤は、次のとおり、容量、重量ともに顕著に軽減される。
エリスリトール 21g
ペクチン 3.75g
蒸留水 11.25ml
エリスリトール 21g
キザンタンガム 0.25g
蒸留水 3.75ml
現在我が国において一般に用いられているイソソルビド製剤は、体積30ml、重量40.5g(イソソルビトール含有量21g)であるのに対し、本発明のゲル剤は、容量、重量とも約3分の2とすることができる。
また、イソソルビド製剤の利用において患者が最も不便を感じているのは、独特の苦味と並んで、500ml(約700g)のボトル入りの液体での運搬の困難さ、保存の煩雑さであるが、本発明のゲル剤は乾燥粉砕して粉剤とし、また造粒も容易なことから、粉剤、顆粒剤の形で必要な服用回数分だけ携行できるため便利である。また、粉剤、顆粒剤に蒸留水を加えることで瞬間的にゲル剤になり、服用時に患者が希望により水を加えゲル剤にすることで、さらに服用が便利なものとなった。
Claims (6)
- 単糖類、その糖アルコール、又は少糖類アルコール、及び2種の多糖類の含有するメニエール病治療薬であって、2種の多糖類が、キサンタンガム、グァーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、及びタラガムよりなる群から選ばれる多糖類であり、多糖類の総量が、単糖類、その糖アルコール、又は少糖類アルコールに対し、2〜50重量%であることを特徴とするメニエール病治療薬。
- 単糖類、その糖アルコール、又は少糖類アルコール、及び2種の多糖類の含有するメニエール病治療薬であって、2種の多糖類の一方の多糖類は、キサンタンガム、グァーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、及びタラガムよりなる群から選ばれる多糖類であり、他方の多糖類は、ペクチン、アルジネートナトリウム、寒天、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びカラギーナンよりなる群から選ばれる多糖類(2種の多糖類がキサンタンガム及びペクチンの場合を除く)であり、多糖類の総量が、単糖類、その糖アルコール、又は少糖類アルコールに対し、2〜50重量%であることを特徴とするメニエール病治療薬。
- 単糖類、その糖アルコール、又は少糖類アルコール、及び3種の多糖類の含有するメニエール病治療薬であって、3種の多糖類が、キサンタンガム、グァーガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、及びタラガムよりなる群から選ばれる2種の多糖類、及びペクチン、アルジネートナトリウム、寒天、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、及びカラギーナンよりなる群から選ばれる1種の多糖類であり、多糖類の総量が、単糖類、その糖アルコール、又は少糖類アルコールに対し、2〜50重量%であることを特徴とするメニエール病治療薬。
- 多糖類の総量が、単糖類、その糖アルコール、又は少糖類アルコールに対し、3〜50重量%である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のメニエール病治療薬。
- 多糖類の総量が、単糖類、その糖アルコール、又は少糖類アルコールに対し、5〜50重量%である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のメニエール病治療薬。
- 多糖類の総量が、単糖類、その糖アルコール、又は少糖類アルコールに対し、10〜50重量%である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のメニエール病治療薬。
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