JP4078161B2 - 蛍石とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は蛍石単結晶の製造方法及び蛍石単結晶に関する。KrF、ArF、F2またはAr2等のエキシマレーザからの紫外線を光源とする光学系、該光学系を用いた半導体製造用露光装置、該露光装置を用いたデバイス製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体集積回路の高集積化はとどまるところを知らず、露光装置とりわけ投影光学系に要求される性能も更に高いレベルとなっている。露光装置の解像度は投影光学系の開口数(NA)を大きくすることによって高めることができるが、NAを大きくすることによって焦点深度は浅くなる。したがってある程度以上NAを大きくすることはできず、解像度を高めるためには露光波長を短波長化することが要求されている。
【0003】
このような理由で今後の露光装置用光源としてKrF(波長:248nm)、ArF(波長:193nm)やF2(波長:157nm)等のエキシマレーザが有望視されているが、光源の短波長化に伴い、従来使われてきた硝材のほとんどが使用できない。そのためフッ化物結晶をレンズ材料として使用することになり、これまで蛍石(フッ化カルシウム結晶)等の開発が行われてきた。半導体露光装置に用いられる蛍石としては、結晶粒界や結晶方位の影響を除くために単結晶状のものが用いられ、一般的には単結晶育成炉にて所望の大きさの蛍石単結晶が育成される。
【0004】
露光装置用の蛍石は、光透過性、耐久性、大口径化、屈折率均質性、複屈折性などの面において高い品質を要求されているが、特に最大の課題は複屈折性を低減することにある。露光装置用蛍石の複屈折は、光路長差として1nm/cm以下であることが好ましい。
【0005】
育成した蛍石単結晶の複屈折を低減するためには結晶成長後のアニール処理が有効であることが知られている。この工程では蛍石を1000℃以上の高温に加熱・保持することにより、複屈折率を減少させることが可能である。しかしながらアニール処理後の冷却工程で急激な冷却を行うと再び複屈折率が増加してしまう問題が発生するため、その冷却速度を遅くすることが必要である。しかしながら、一方的に冷却速度を遅くすることは、処理時間を長くすることになり、生産性を著しく損ねてしまう。そのため、最適な冷却速度を求めることが重要となる。
【0006】
最適な冷却速度を求めるために、特開平11−240798号、特開平11−240787号、特開2000−335398号に開示されるように、従来はさまざまな大きさの蛍石に関してそれぞれ経験的な手法により複屈折率の増大を抑制できる冷却速度が開示されている。また、この際、低温では高温時に比べて大きな冷却速度で冷却しても複屈折率の増大を生じないことに着目して、経験的に求められた各温度域での冷却速度を組み合わせて冷却を行い、生産性を向上する手段が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、経験的な手法によりさまざまな大きさを有する蛍石についてそれぞれ複屈折を生じない冷却速度を求める手段によっては、処理を行う蛍石単結晶の大きさ毎に適当な冷却速度を決定する煩雑さに加えて、製造される蛍石の品質の安定性が得られ難く、また生産性が必ずしも最大ではないといった問題が発生する。このため、処理後の複屈折を生じていないかの確証が得られ難く品質が不安定になる可能性と共に、過剰に冷却速度を遅くすることによる生産性の低下などの問題が発生する。
【0008】
また更に、蛍石単結晶育成後のアニール以外の加熱を伴う工程においても、処理の終了後の冷却が適当に行われない場合には、複屈折の発生や生産性の低下が発生した。そのため、これまでの経験的な手法では、安定した低複屈折性と高生産性を兼ね備えた工程設計は困難であった。
【0009】
本発明の目的は、冷却過程で複屈折率が増大する機構に着目することで複屈折を発生しない基本的な冷却条件を明らかにして、以って蛍石の大きさによらずに安定した品質で生産性良く蛍石を製造する製造方法を提供することにある。
【0010】
また、本発明の目的は上記の製造方法により製造された、高品質の蛍石単結晶を提供することにある。
【0011】
また、本発明の目的は、複屈折が増大しやすい大型のサイズであっても高品質且つ生産性良く製造可能な蛍石単結晶を提供することにある。
【0012】
更に、本発明の目的は、上記により提供された蛍石単結晶を用いた高性能の光学系及びそれを用いた半導体製造用露光装置を提供することであり、更に該半導体製造用露光装置を製造工程に用いたデバイスの製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、冷却過程において複屈折率の増大が発生する原因について鋭意検討したところ、冷却過程において蛍石内に生じる温度勾配に起因して発生する熱応力により、蛍石結晶内の一定の結晶面においてすべり変形が生じ、その変形により生じた歪が冷却終了後に残留応力を生じさせる結果、いわゆる応力複屈折が発生していることが明らかとなった。このため、本発明者は蛍石結晶内において冷却中にすべり変形を生じる結晶面とそのすべり方向を明らかにし、更にそのすべり変形を引き起こすために必要なせん断応力である臨界分解せん断応力を冷却過程の各温度において精密に測定した。
【0016】
第一の請求項に係る発明は、蛍石単結晶の冷却を伴う製造方法において、該冷却の過程の全ての温度で該蛍石単結晶内部に生じる熱応力による最大のせん断応力が該蛍石単結晶の{001}面上<110>方向の臨界分解せん断応力(τc)に対して略同一以下であって略一定の比率になるように保ちつつ冷却速度を連続的に変化させて行うことを特徴とする蛍石単結晶の製造方法に係る発明である。
【0017】
この発明により、特に冷却中の各温度で温度により変化する蛍石の上記すべり系の臨界分解せん断応力に対して略同一のせん断応力が蛍石単結晶内に生じるように連続的に冷却速度を変えながら冷却した場合、すべり変形を生じない範囲で最も短い冷却時間で冷却を完了することが可能となり、残留歪に起因する応力複屈折が極小の状態での最高の生産性を得ることが可能となる。更に、製造装置の温度制御の誤差により必ずしも冷却速度を精密に制御できない場合には、上記すべり系の臨界分解せん断応力に対して略同一以下であって略一定比率のせん断応力が生じるように連続的に冷却速度を変えながら冷却することで、すべり変形を生じることなく高い生産性で製造を行うことが可能となる。
【0020】
第二の請求項に係る発明は、蛍石単結晶の冷却を伴う製造方法において、該冷却の過程の全ての温度で該蛍石単結晶内部に生じる熱応力による最大のせん断応力が該蛍石単結晶の{001}面上<110>方向の臨界分解せん断応力(τc)に対して1.2倍以下であって略一定の比率になるように保ちつつ冷却速度を連続的に変化させて行うことを特徴とする蛍石単結晶の製造方法に係る発明である。
【0021】
この発明により、特に各温度で臨界分解せん断応力の1.2倍程度のせん断応力が生じる冷却速度で冷却することにより、実際の使用上には問題の無い複屈折率以下に制御された蛍石単結晶を最高の生産性で製造することが可能となる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0028】
(蛍石のすべり系の検討と生産工程への応用)
蛍石単結晶の冷却中に結晶内のすべり変形が生じる条件を明らかにするために、以下に説明するような検証実験を行った。
【0029】
まず、蛍石のすべり系における臨界分解せん断応力(以下、CRSS と略す)について検討した。すべり系を確認すること、臨界分解せん断応力の温度依存性を求めることが主な目的である。確認に用いた蛍石は別に説明する製造工程により単結晶に育成した後にアニールし、その後の冷却過程において通常品の半分程度の低い冷却速度で冷却して残留歪を抑制した標準試料である。またその蛍石単結晶に含まれる主な不純物元素は、表1に示す通りである。不純物元素の内、ストロンチウムは単結晶の育成時にフッ化ストロンチウムとして添加したものである。
【0030】
【表1】
【0031】
検討の結果、蛍石の1次すべり系が{001}<110>であり、2次すべり系が{110}<110>であることが明らかになった。また、それぞれのすべり系に関して、各温度のCRSSがアレニウスの式の形で整理可能であり、すべり変形が熱活性化過程であることが明らかとなった。詳細な検討結果を以下に示す。
【0032】
すべり面の確認は、室温において一定の結晶方位を持つ直方体状の試料を圧縮し、側面に現れるすべり線を二面観察することにより求めた。この時、実際の冷却時の静的な応力状態に近づけるため、試料の歪速度は十分に低速度である約0.01%/秒で行った。
【0033】
試験の結果、<111>方向に圧縮した場合、すべり線と圧縮軸とがなす角度が、{110}面上では55°、{112}面では39°であった事から、{001}面上のすべり系が活動していることが確認された。同様に{100}方向に圧縮した場合、{110}面上のすべり系が活動していることが確認された。また、それぞれのすべり面上の転位を透過型の電子顕微鏡で観察して、そのバーガーズ・ベクトルを確認したところ、{001}面上と{110}面上で共にすべり方向が<110>方向であったことから、蛍石内で活動可能な主なすべり系は{001}<110>と{110}<110>であることが明らかになった。また、それぞれの圧縮方向での降伏応力、各すべり系に関するシュミットファクターを考慮することでCRSSを求めたところ、前者がより低いせん断応力で活動する1次すべり系であり、後者が二次すべり系であることが明らかになった。
【0034】
また、冷却過程の各温度での各すべり系のCRSSを求めるために、上記圧縮実験を200℃から1200℃までアルゴン雰囲気中で実施した。図1は、上記のすべり系の決定に用いたものと同じ蛍石単結晶について、実験により求めた1次すべり系({001}<110>)に関する各温度でのCRSSを示す。実験により求められたCRSSの温度依存性は、一般的な熱活性化過程の温度依存性を示すアレニウスの式の形として整理可能であり、蛍石の変形が熱活性化過程であることが予想される。図1に示したCRSSの温度依存性は(2)式のように表される。
【0035】
【外3】
【0036】
図2は実験により求めた2次すべり系({110}<110>)に関するCRSSの温度依存性を示す。二次すべり系に関してもCRSSの温度特性から、同様に熱活性化過程であると予想される。図2に示したCRSSの温度依存性は(3)式のように表される。
【0037】
【外4】
【0038】
図1と図2の比較により、蛍石の冷却過程に通過する温度域においては常に{001}<110>すべり系が{110}<110>すべり系よりも低いCRSSを有することから、冷却過程において蛍石内に生じる熱応力によるせん断応力を図1に示す{001}<110>すべり系のCRSSよりも低い値に保つような冷却を行うことで、蛍石のすべり変形を抑制可能であり、以って複屈折の増大を抑制することが可能である。
【0039】
次に、アニール後などの冷却過程における蛍石内部の温度分布を求め、そこからすべり系に掛かるせん断熱応力を計算する方法について説明する。熱応力は、冷却速度を速くするほど、また蛍石結晶の大きさが大きくなるほど増加する。また、計算には蛍石の熱拡散率、比熱、熱膨張率、ヤング率、ポアソン比を考慮する必要があるが、これらの値は温度や結晶方位により変化するために、それぞれの温度依存性と結晶方位依存性も考慮して熱応力を計算することが望ましい。更に、周囲の環境により冷却される蛍石からの放熱の均一性等が変化するため、冷却に用いる装置自体のもつ影響を計算に考慮することが好ましい。
【0040】
本発明に係る実施においては、円筒状の蛍石結晶の全表面が等温であり、蛍石単結晶の熱拡散率、比熱、熱膨張率、ヤング率、ポアソン比の各パラメータを考慮して、蛍石結晶の大きさと冷却速度により決定される熱応力の内で最大のせん断応力を(4)式により近似した。
【0041】
【外5】
【0042】
(4)式で与えられる最大せん断熱応力を考慮して、アニール時の冷却工程に発生する最大せん断熱応力が上記(2)式で示した一次すべり系のCRSSに対して一定の割合を成すように冷却速度を連続的に変化させながら冷却して、その効果を確認した。
【0043】
図3は(4)式から求められる最大せん断応力が、(2)式で示した一次すべり系のCRSSに対して一定の割合となるように冷却した際の、冷却終了後の蛍石が有する複屈折率と転位密度の変化を示す。図3に示されるように、熱応力による最大せん断応力が一次すべり系のCRSSと同等以下である場合には複屈折率30、転位密度31共に低い値で一定値となる。一方、熱応力による最大せん断応力が一次すべり系のCRSSよりも大きい場合には、転位密度31の増加と共に複屈折率30の増加が見られる。この結果は転位に代表される結晶欠陥の増加が応力複屈折の発生と関係していることを示す。
【0044】
以上のように、冷却工程において熱応力による最大せん断応力が被処理物である蛍石のCRSSを越えないようにすることにより、熱処理後の冷却工程での塑性変形を抑制し、複屈折性の良好な蛍石を製造することができる。また、最大せん断熱応力が冷却中の各温度での一次すべり系のCRSSに対して略同一又はそれ以下の一定割合になるように冷却速度を連続的に制御することにより、低複屈折性を保持したまま最短の時間で冷却を完了することができ、生産性を高めることが可能である。更に、(6)式から求められる最大せん断応力が一次すべり系のCRSSの1.2倍程度であれば、実質的に問題となる程度以下に複屈折率を抑制可能であり、且つ冷却時間の短縮により良好な生産性を得ることが可能である。
【0045】
(蛍石の変形耐性向上による効果)
図4は、上記のような熱処理により複屈折を再増加させること無く熱処理を行った純度の異なる蛍石単結晶において、添加したストロンチウムの含有量と600℃での{001}<110>すべり系(一次)のCRSSとの関係を示す図である。それぞれに含まれるストロンチウム以外の主な不純物は表2に示す通りである。ストロンチウムは、適当量のフッ化ストロンチウムを単結晶の育成の際に原料の蛍石に混合することで所定の含有量とした。
【0046】
【表2】
【0047】
図4に示す通り、ストロンチウム添加の基礎とした蛍石原料の内、比較的高純度の材料は線図105のような特性を示し、不純物が若干多い通常純度材料は線図106のような特性を示した。
【0048】
図4に示した蛍石単結晶の{001}<110>すべり系のCRSSの温度依存性を以下の式で示す場合の、各組成における係数Aを表3に示す。
【0049】
【外6】
【0050】
【表3】
【0051】
{001}<110>すべり系のCRSSはストロンチウムの含有量にほぼ比例して向上することが図4から明らかである。また、他の温度においても同様に各濃度のストロンチウムの添加により一定割合だけCRSSが向上した。これは、ストロンチウムが蛍石結晶内に固溶したために、すべり変形に対する抵抗力が高まったためと考えられる。この様な添加元素によるCRSSの向上により、蛍石の耐変形性を向上することが可能である。この様なCRSSの向上効果は他の元素を添加した場合にも生じるが、特にストロンチウムは特開平9−255328などにも開示されるように、他の元素に比べて光学的特性に影響を与え難く、600ppm程度を含む蛍石でも実用に支障を生じないために、光学用の蛍石単結晶の変形耐性の向上に適した添加元素である。また、図4に示した程度のストロンチウムの添加によりすべり系が変化するなどの現象は見られない。
【0052】
この様な蛍石の変形耐性の向上は、複屈折の影響が顕著になる短波長の光源に対して用いる光学素子用の蛍石に有効であり、特に157nm近辺の波長の光であるF2エキシマレーザー光に用いる蛍石レンズの生産に有効である。また、高NA化のためにφ300mm以上の口径を有することとなり、冷却時に極めて低い冷却速度が必要となる大口径蛍石レンズの生産性を向上するためにも有効である。
【0053】
(生産工程への応用例)
以上のような一連の検討結果による知見に基づいて、蛍石のアニール工程を最適化することにより、残留歪みの少ない低複屈折性の蛍石が得られ、且つ生産性の高い製造ラインを構築することが可能となった。加えて、蛍石の加工、洗浄、反射防止膜成膜工程の温度プロセスにも、上記アニール処理と同様の冷却方法を適用することにより、各工程で蛍石の性能を劣化させることなくレンズとして完成させることが可能となる。以上の方法により製造した蛍石製レンズを光学系に用いることにより、コントラストの極めて良好な光学系が得られる。また、この光学系を用いた半導体製造用露光装置を、デバイス製造の露光工程に設けることにより、高精度な露光処理を安定して行うことが可能である。
【0054】
(実施例1)
蛍石の単結晶育成後の熱処理方法に関する第一の実施例を説明する。
【0055】
まずフッ化カルシウムの粉末原料をスカベンジャーと共に溶解して精製し、純度と嵩密度を上げた後、ブリッジマン・ストックバーガー法を用いて、種結晶の結晶方位を調整することで<111>方向に結晶成長を行った。結晶育成の際に、適当量のフッ化ストロンチウムを添加し、育成した単結晶内のストロンチウム含有量を調整した。成長後の蛍石単結晶を、直径330mm、厚さ60mmの円筒状に切断し、アニール炉のカーボン製容器内に設置した。この時、炉材との接触などにより熱処理する蛍石との熱の出入りが不均等になるのを防ぐため、蛍石単結晶を断熱材などで包むことにより、熱処理中及び冷却中の蛍石の表面温度が均一になるようにした。炉内を真空雰囲気にした後、室温から1000℃まで30℃/時で加熱し、1000℃で24時間保持してアニールすることにより結晶内部の歪みを緩和させた。
【0056】
その後の冷却工程に関して、前述の(6)式に対して冷却する結晶のサイズと最大せん断応力として冷却する蛍石の一次すべり系({001}<110>)のCRSSを考慮することで、最大せん断応力が該CRSSを越えない各温度での冷却速度が求められる。本実施例では(2)式で示したCRSSの温度依存性を有する蛍石を例にして、アニール後の蛍石単結晶の冷却について説明する。
【0057】
(4)式に結晶のサイズを代入して得られる最大せん断応力を(2)式のCRSSに等しいとすることで(5)式が与えられる。
【0058】
【外7】
【0059】
(5)式は各温度において、最大せん断応力が一次すべり系のCRSSと等しくなる冷却過程の各温度での冷却速度を示している。(5)式を蛍石単結晶のアニールに用いる熱処理炉の温調器に入力し、熱電対などにより測定される蛍石単結晶の温度に応じて冷却速度を(5)式で与えられる冷却速度によって連続的に変化させてアニール後の冷却を行った。
【0060】
図5は(5)式で与えられる各温度での冷却速度101Aを、従来の経験的な手法で求めた冷却速度の例102Aと共に示した図である。本発明によれば、各温度において変形を生じない範囲で許容される最大せん断応力とそれにより求まる冷却速度が明らかにされているため、図5に示す線図101Aのように冷却速度を連続的に変更することが可能となる。
【0061】
一方、従来は結果的に生じた複屈折量から多大な実験を通して許容される冷却速度を経験的に決定していたために、実際には冷却過程の数点の温度域でのみ冷却速度が求められていた。このため、冷却速度を求めた各温度で理想的な冷却温度が求められたとしても、その冷却速度の線図は図5に示した従来例102Aのように、不連続な階段状にならざるを得なかった。また、各温度毎に経験的に求めた冷却速度が許容される冷却速度以下であることは補償の限りではなく、品質を安定させるためには冷却速度を必要以上に低くしなければならなかった。
【0062】
これに対して、本実施例では熱応力による塑性変形が発生する冷却速度を正確に求められるため、冷却速度を冷却の進行に伴って連続的に増加させることが可能であり、更に必要以上の余裕を設ける必要が無いために、結果として略最短の時間で冷却を完了させることが可能である。
【0063】
図6は図5に示したそれぞれの冷却速度により冷却した場合の、蛍石単結晶の温度と時間の関係を示す図である。線図101Bは図5の線図101Aに従って冷却した場合であって、許容される最大せん断応力の範囲で最短の冷却時間である575時間で冷却することが可能である。一方、線図102Bは冷却速度の変化が理想的でないために、冷却に余分な時間が必要となる。
【0064】
以上説明したように、本発明による冷却を行うことで、冷却中に生じる熱応力による蛍石単結晶の塑性変形を抑制できるために、冷却後の残留歪を最小限に抑制可能であり、これによって複屈折量を低下することが可能である。更に、塑性変形を生じない範囲で最大の冷却速度を得ることが可能であり、高品質の蛍石単結晶を生産性良く且つ再現性良く生産することが可能である。
【0065】
また、温度測定の誤差などで必ずしも精密な温度調整が期待できない場合には、例えば(4)式で与えられる最大せん断応力が(2)式のCRSSの90%程度になる(6)式を(5)式に代えて使用することにより、確実に高品質の蛍石単結晶を再現性良く生産することが可能である。
【0066】
【外8】
【0067】
(5)式または(6)式で示した冷却速度によりアニール後の冷却を行った蛍石単結晶のアニール前後の複屈折量を波長633nmの光で測定した結果、φ330mm内の光軸方向複屈折平均値で、3nm/cmから0.5nm/cmに低下していることが確認された。
【0068】
尚、本実施例を実現するにあたり、アニール装置に強制冷却機構を設けた。特に300℃以下の低温域において、十分な冷却速度を実現するためである。図7に本実施例に用いたアニール装置の概略図を示す。図7において、1はアニール炉のチャンバ、2は断熱材、3はヒーター、4は坩堝、5は蛍石、6は排気系である。強制冷却機構として、7の気体導入系を設け、温調された適切な量の気体をチャンバ内に導入できるようにした。このとき導入する気体としてはアルゴン等の不活性ガスが好ましい。また気体を導入する方法以外であっても、温調された水などの液体を用いて、装置内に設置した冷却管を介して蛍石を冷却する方法もある。以上のような強制冷却機構を設けることにより、特に300℃以下の低温域において、十分な冷却速度が得られる。
【0069】
このような強制冷却機構は、結晶製造の精製工程や成長工程、結晶の加工工程、洗浄工程、成膜工程にも適用可能である。この機構により、低温域の冷却速度を十分速くすることが可能となり、生産性を向上させることができる。
【0070】
(実施例2)
蛍石の熱処理方法に関する第二の実施例を説明する。
【0071】
実施例1においては、アニール後の冷却過程における熱応力による蛍石単結晶の変形を完全に抑制するため、冷却過程の最大せん断応力が1次すべり系のCRSSを越えないような制御を行ったが、実際には若干の変形が生じてもその結果である複屈折の増加量がその使用目的により許容される場合には、一定の割合でCRSSを越えるような最大せん断応力が生じる冷却速度で冷却することが生産性の面からは有効である。
【0072】
許容される複屈折の量は、主に蛍石単結晶をレンズとして使用する半導体露光装置の光源の波長により決定され、ArF光源(波長:193nm)では1nm/cm、F2光源(波長:157nm)では0.7nm/cm以下であることが望ましい。
【0073】
蛍石単結晶の1次すべり系のCRSSに対して、それを越える種々の割合の最大せん断応力が発生した場合の結果として得られる複屈折率の量を求めるには経験的手法によるしかないが、本実施例では種々の検討の結果、CRSSの1.2倍程度の最大せん断応力であれば使用上問題の無い複屈折率に抑制できることが明らかにできた。
【0074】
1次すべり系のCRSSに対して、冷却過程での熱応力による最大せん断応力が1.2倍になるように冷却するためには、例えば実施例1と同じ材質と大きさの蛍石単結晶の冷却過程において、(4)式で与えられる最大せん断応力が(2)式のCRSSの120%として(7)式を求め、(7)式により得られる冷却速度で冷却する。
【0075】
【外9】
【0076】
(7)式で示した冷却速度によりアニール後の冷却を行った蛍石単結晶のアニール前後の複屈折量を波長633nmの光で測定した結果、φ330mm内の光軸方向複屈折平均値で、3nm/cmから0.7nm/cmに低下しており、実際の使用上問題の無い程度の複屈折率を有していることが確認された。また、冷却に要した時間は約473時間であり、実施例1の場合に比べ短縮することができた。
【0077】
(実施例3)
蛍石の熱処理方法に関する第三の実施例を説明する。
【0078】
アニール後の蛍石単結晶をレンズ形状に加工する切断工程において、蛍石の破損を防止するために300℃以上に保持して切断を行う。これは、300℃以下の低温域における蛍石の性質が固く脆いためである。しかしながら、蛍石を300℃以上に加熱して切断後に冷却する工程において、急激に加熱・冷却を行うと、蛍石内の最大せん断応力が1次すべり系のCRSSを越えて塑性変形が生じてしまう。その結果として歪みが増加し、複屈折量が大きくなる。この問題を解決するため、以下のような工程設計を行った。
【0079】
例えば、実施例1でアニールを行った蛍石単結晶を300℃で切断加工して直径320mm、厚さ60mmのサイズとする場合、上記(4)式に結晶のサイズを代入して得られる最大せん断応力を(2)式のCRSSに等しいとすることで(8)式を得る。
【0080】
【外10】
【0081】
(8)式は各温度において、最大せん断応力が一次すべり系のCRSSと等しくなる加熱速度と冷却速度を示している。(8)式を切断装置の温調器に入力し、熱電対などにより測定される蛍石単結晶の温度に応じて切断前の加熱速度と切断後の冷却速度を(8)式で与えられる速度によって連続的に変化させて温度制御を行った。このような温度制御を行うことで、最大せん断応力が1次すべり系のCRSSを越えることなく、切断工程を終えることができる。尚、切断時の蛍石の温度管理も重要であり、蛍石内部に温度分布が生じないように、保持具や加工工具の温調を行った。本実施例における切断工程の前後で、波長633nmの光で複屈折測定した結果、φ320mm内の光軸方向複屈折平均値は0.5nm/cmから変化していないことが確認された。
【0082】
以上の工程管理方法は、切断工程に限らず、研削や研磨工程にも適用することが可能である。
【0083】
(実施例4)
蛍石の熱処理方法に関する第四の実施例を説明する。
【0084】
反射防止膜や増反射膜を製膜する工程の前に、蛍石表面を洗浄する工程がある。特に真空紫外域では、有機系付着物や残留研磨剤、蛍石の表面欠陥等による表面吸収が大きな問題である。この表面吸収を除去するため、蛍石をウェット工程とドライ工程で処理する。特にドライ処理では、オゾン洗浄などの温度変化を伴う処理方法が使用される。よって洗浄工程において、急激に加熱・冷却を行うと、最大せん断応力が1次すべり系のCRSSを越え、塑性変形が生じてしまう。その結果として歪みが増加し、複屈折量が大きくなる。この問題を解決するため、以下のような工程設計を行った。
【0085】
上述の一連の工程で得られた直径300mm、最大肉厚50mmの蛍石をウェット洗浄した後、ドライ洗浄装置に入れて400℃まで加熱してドライ洗浄を実施する場合、上記(4)式に結晶のサイズを代入して得られる最大せん断応力を(2)式のCRSSに等しいとすることで(9)式を得る。
【0086】
【外11】
【0087】
(9)式を蛍石単結晶のドライ洗浄装置の温調器に入力し、熱電対などにより測定される蛍石単結晶の温度に応じて洗浄前の加熱速度と洗浄後の冷却速度を(9)式で与えられる速度によって連続的に変化させて温度制御を行った。このような温度制御を行うことで、最大せん断応力が1次すべり系のCRSSを越えることなく、洗浄工程を終えることができた。尚、洗浄時の蛍石の温度管理も重要であり、蛍石内部に温度分布が生じないように、保持具やドライ洗浄条件等に工夫をしている。本実施例における洗浄工程の前後で、波長633nmの光で複屈折測定した結果、φ300mm内の光軸方向複屈折平均値は0.5nm/cmから変化していないことが確認された。
【0088】
(実施例5)
蛍石の熱処理方法に関する第五の実施例を説明する。
【0089】
蛍石表面に反射防止膜や増反射膜を成膜する工程において、膜の特性を向上させるため、蛍石を200℃から400℃程度の温度に保持し、抵抗加熱による蒸着法や電子ビーム蒸着やスパッタリング法により成膜する。よって成膜工程において、急激に加熱・冷却を行うと、最大せん断応力が1次すべり系のCRSSを越え、塑性変形が生じてしまう。結果として歪みが増加し、複屈折量が大きくなる。この問題を解決するため、以下のような工程設計を行った。
【0090】
上述の一連の工程で得られた直径300mm、最大肉厚50mmの蛍石を成膜装置に入れ、400℃においてフッ化マグネシウムを蒸着法により成膜する場合、上記(9)式が使用できる。
【0091】
(9)式を蛍石単結晶の成膜装置の温調器に入力し、熱電対などにより測定される蛍石単結晶の温度に応じて成膜前の加熱速度と成膜後の冷却速度を(9)式で与えられる速度によって連続的に変化させて温度制御を行った。このような温度制御を行うことで、最大せん断応力が1次すべり系のCRSSを越えることなく、成膜工程を終えることができた。尚、成膜時の蛍石の温度管理も重要であり、蛍石内部に温度分布が生じないように、保持具やヒーター配置等に工夫をしている。本実施例における成膜工程の前後で、波長633nmの光で複屈折測定した結果、φ300mm内の光軸方向複屈折平均値は0.5nm/cmから変化していないことが確認された。
【0092】
(実施例6)
蛍石単結晶の耐変形性向上に関する第六の実施例を説明する。
【0093】
以上説明したように、蛍石単結晶の加熱冷却時において複屈折率の増大を防ぐためには、蛍石単結晶内部の熱応力が実質的にその一次すべり系のCRSSを越えない温度変化速度にすることが有効である。しかしながら、蛍石単結晶を用いた半導体露光器用の光学素子が大型化するに従い、熱応力を一定に保つためには冷却速度を低下する必要がある。また、使用する光源の波長が短くなるに従い複屈折の影響が大きくなるために、温度制御を更に精密に行う必要が生じる。特に、φ300mm以上の大口径の蛍石単結晶の光学素子についてアニール後の冷却を制御する場合、高温域では冷却速度が0.5℃/時以下になり、生産性が著しく悪くなると共に温度制御の精度が問題となり始める問題が発生する。特に波長の短いF2レーザー光源用の光学素子の場合、僅かな温度制御の誤差による複屈折率の変化の影響が大きい。
【0094】
このような問題を改善するためには、蛍石単結晶内のすべり系のCRSSを向上し、以って許容される熱応力を増加することが有効である。以下に、蛍石単結晶の耐変形性を向上させて良好な光学素子を製造する実施例を説明する。
【0095】
図4に示すように、蛍石単結晶内のストロンチウム含有量の増加に伴って一次すべり系である{001}<110>すべり系のCRSSが向上する。(10)式はストロンチウムを600ppm含有する蛍石単結晶の{001}<110>すべり系のCRSSの温度依存性を示す式である。
【0096】
【外12】
【0097】
ストロンチウム含有量が100ppmの場合である(2)式と比較して、(10)式は全温度域で約1.3倍程度のCRSSを示す。ストロンチウムは蛍石に600ppm程度含有しても光学的特性に悪影響を与えないことは特開平9−255328に開示されている通りである。
【0098】
実施例1と同様に製造した直径330mm、厚さ60mmの円筒状の蛍石単結晶であって、ストロンチウム含有量が500ppmである蛍石単結晶のアニール後の冷却について、上記(4)式に結晶のサイズを代入して得られる最大せん断応力を(10)式のCRSSに等しいとすることで(11)式が与えられる。
【0099】
【外13】
【0100】
(11)式を蛍石単結晶のアニールに用いる熱処理炉の温調器に入力し、熱電対などにより測定される蛍石単結晶の温度に応じて冷却速度を(11)式で与えられる冷却速度によって連続的に変化させてアニール後の冷却を行った。
【0101】
(11)式で示した冷却速度によりアニール後の冷却を行った蛍石単結晶のアニール前後の複屈折量を波長633nmの光で測定した結果、φ330mm内の光軸方向複屈折平均値で、3nm/cmから0.5nm/cmに低下していることが確認された。また、冷却に要した時間は実施例1で約575時間であったのに対し、本実施例では約431時間に短縮された。更に、アニール温度である1000℃での冷却開始時の冷却速度を0.38℃/時から0.51℃/時に増加することができた。
【0102】
以上のように、蛍石を形成するフッ素とカルシウム以外の第三元素であるストロンチウムを添加することで蛍石単結晶の一次すべり系のCRSSを向上することが可能であり、これによってアニール後の蛍石単結晶の光学的性能を維持したままでアニール後の冷却時間の短縮と、冷却速度の向上に伴う制御性の向上が可能である。添加する元素の量はCRSS向上の観点からは多い方が望ましく、特に100ppm以上であることが好ましい。また、添加する元素は添加により光学的特性を実質的に害さないものであれば、ストロンチウムに限られることはない。
【0103】
(実施例7)
本発明の蛍石を光学系に用いた半導体製造用露光装置の実施例を説明する。
【0104】
図8に本実施例の半導体露光装置の光学系の概略図を示す。11はKrFやArFやF2やAr2レーザ等の紫外光源で、光源からの光束13はミラー12により照明光学系14に導光され、照明光学系を通過した光束は第1物体であるレチクル15面上を照明する。さらにレチクルの情報をもった光束が縮小投影光学系16を通り感光基板17へ投影される。
【0105】
本実施例に係わる半導体露光装置の照明光学系、投影光学系には、本特許の熱処理方法により作製した蛍石が用いられている。従来の蛍石と比較して複屈折性が低いため、コントラストの高い良好な結像性能を得ることが可能である。したがって、本実施例における半導体製造用露光装置を用いることにより、微細で鮮明なパターンを感光基板上に転写することが可能である。
【0106】
(実施例8)
本発明の半導体製造用露光装置を用いた、半導体装置(半導体素子)の製造方法を説明する。
【0107】
図9は本実施例におけるICの製造のフローチャートである。本実施例において、ステップ1(回路設計)では、ICの回路設計を行った。ステップ2(マスク製作)では設計した回路パターンを形成したマスクを製作した。一方、シリコン等からなるウエハを用意し、ステップ3(ウエハプロセス)において前記用意したマスクとウエハを用いてリソグラフィ技術によってウエハ上に実際の回路を形成した。
【0108】
次のステップ4(組立)において、ステップ3によって製作されたICの回路が形成されたウエハを半導体チップ化し、次いでアッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)を行い、パッケージング(チップ封入)を行った。
【0109】
ステップ5(検査)においてステップ4で製作されたICチップの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行った。
【0110】
図10は本実施例のICチップ製造における上記ステップ3のウエハプロセスの詳細なフローチャートである。まず、ステップ11(酸化)ではウエハの表面を酸化させた。次いでステップ12(CVD)ではウエハ表面に絶縁膜を形成した。
【0111】
ステップ13(電極形成)ではウエハ上に電極を蒸着によって形成した。ステップ14(イオン打ち込み)ではウエハにイオン打ち込みを行った。ステップ15(レジスト処理)ではCMP(化学材機研磨)装置によってウエハ表面を平坦に研磨した。
【0112】
ステップ16(レジスト処理)では、平坦化されたウエハ表面にレジストを塗布した。ステップ17(露光)では本発明の露光装置によってマスクの回路パターンをウエハに焼き付け露光した。はじめにレチクルを搬送し、レチクルチャックにチャッキングし、次にレジストが塗布されたシリコンウエハ基板を露光装置内にローディングした。アライメントユニットでグローバルアライメント用のデータを読みとり、計測結果に基づいてウエハステージを駆動して所定の位置に次々に露光を行った。
【0113】
ステップ18(現像)では露光したウエハを現像する。ステップ19(エッチング)では、現像後にレジストが除去された部分をエッチングした。ステップ20(レジスト剥離)では、レジストを剥離した。これらのステップを繰り返し行うことによってウエハ上に多重に回路パターンを形成した。
【0114】
上記ウエハプロセスに本発明の製造方法を用いれば、従来の製造が難しかった高集積度の半導体デバイスを製造することができる。
【0115】
【発明の効果】
以上説明したように、冷却過程で複屈折率が増大する機構に着目することで複屈折を発生しない基本的な冷却条件を明らかにし、以って蛍石の大きさによらずに安定した品質で生産性良く蛍石を製造する製造方法を提供することが可能となった。
【0116】
また、上記の製造方法により製造することにより、生産性良く生産された高品質且つ品質の安定した蛍石単結晶を提供することが可能となった。
【0117】
また、複屈折が増大しやすい大型のサイズであっても高品質且つ生産性良く製造可能な蛍石単結晶を提供することが可能となった。
【0118】
更に、上記により提供された蛍石単結晶を用いたコントラストの極めて良好な光学系及びそれを用いた半導体製造用露光装置を提供することが可能となり、また更に該半導体製造用露光装置を製造工程に用いたデバイスの製造方法を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で測定した蛍石単結晶の{001}<110>すべり系の各温度での臨界分解せん断応力の一例を示すグラフである。
【図2】本発明で測定した蛍石単結晶の{110}<110>すべり系の各温度での臨界分解せん断応力の一例を示すグラフである。
【図3】本発明で測定した、最大せん断応力が一次すべり系の臨界分解せん断応力に対して一定の割合となるように冷却した後の蛍石単結晶が有する複屈折率と転位密度を示すグラフである。
【図4】本発明で測定した蛍石単結晶にストロンチウムを添加した場合の{001}<110>すべり系の臨界分解せん断応力(600℃)の変化の一例を示すグラフである。
【図5】本発明に係るアニール後の冷却速度の一例を従来例と比較したグラフである。
【図6】本発明に係るアニール後の冷却中の蛍石の温度変化の一例を従来例と比較したグラフである。
【図7】本発明に係るアニール装置を表す概略図である。
【図8】本発明に係る半導体製造用露光装置の光学系を表す概略図である。
【図9】本発明に係る半導体装置の製造方法のフローチャートである。
【図10】本発明に係わる半導体装置の製造方法の別のフローチャートである。
【符号の説明】
1 アニール炉のチャンバ、
2 断熱材、
3 ヒーター、
4 坩堝、
5 蛍石、
6 排気系、
7 気体導入系、
11 光源、
12 ミラー、
13 光束、
14 照明光学系、
15 レチクル、
16 投影光学系、
17 感光基板
30 複屈折率の応力レベル依存性を示す線図
31 転位密度の応力レベル依存性を示す線図
101A 本発明による冷却速度の一例を示す線図
101B 従来の冷却速度の一例を示す線図
102A 本発明による冷却過程での蛍石の温度変化の一例を示す線図
102B 従来の冷却過程での蛍石の温度変化の一例を示す線図
105 高純度の蛍石原料にストロンチウムを添加した場合の{001}<110>すべり系の臨界分解せん断応力を示す線図
106 通常純度の蛍石原料にストロンチウムを添加した場合の{001}<110>すべり系の臨界分解せん断応力を示す線図
Claims (2)
- 蛍石単結晶の冷却を伴う製造方法において、
該冷却の過程の全ての温度で該蛍石単結晶内部に生じる熱応力による最大のせん断応力が該蛍石単結晶の{001}面上<110>方向の臨界分解せん断応力(τc)に対して略同一以下であって略一定の比率になるように保ちつつ冷却速度を連続的に変化させて行うことを特徴とする蛍石単結晶の製造方法。 - 蛍石単結晶の冷却を伴う製造方法において、
該冷却の過程の全ての温度で該蛍石単結晶内部に生じる熱応力による最大のせん断応力が該蛍石単結晶の{001}面上<110>方向の臨界分解せん断応力(τc)に対して1.2倍以下であって略一定の比率になるように保ちつつ冷却速度を連続的に変化させて行うことを特徴とする蛍石単結晶の製造方法。
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