JP4077983B2 - 送風機用のブラシレスモータ - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車用空気調和装置に適する送風機用のブラシレスモータに関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、自動車用空気調和装置に用いられる送風機用のブラシレスモータの概要は、取付部材を兼ねる回路保護ケースからシャフトが立上がり、そのシャフトに送風用のファンが取付けられている。
【０００３】
送風用のファンは、駆動部からの回転動力がシャフトを介して与えられる。駆動部は、前記シャフトに装着されたヨークと、ヨークの内周壁面にＳ極，Ｎ極，Ｓ極の順に設けられた複数の磁石と、磁石と対向し、前記シャフトを回転自在に支持する固定ハウジングに設けられたステータとから成る構造となっている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
ヨークは、前記した如く内周壁面に磁石が設けられると共に、磁石と対向し合うステータを取囲むよう下方が開放された円筒状の形状となっている。
【０００５】
一方、駆動部は、例えば、１回転に１２回ステータのコイルの電流を切替えることで、対向し合う磁石との間で吸引と反発力を繰返しながら駆動力が発生するようになっている。この時、磁石が設けられたヨークは、下方が開放された円筒形状の自由端となるため、吸引、反発力に対応して変形し易く、それが振動エネルギとなってシャフトに伝達される。
【０００６】
シャフトは、回路保護ケースから立上がるため、シャフトに伝達された振動は、回路保護ケース及びモータを取付けるケースの固有の振動数である、例えば、２４０Ｈｚ付近で共振し、それがうなり音（磁気音）として増大し、目立つようになる。
【０００７】
このうなり音は、品質感を著しく損ねる所から、できるだけ小さく抑えることが急務となっている。
【０００８】
そこで、この発明は、簡単な工夫によってうなり音を小さく抑えることができるようにした送風機用のブラシレスモータを提供することを目的としている。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、この発明の請求項１によれば、回路保護ケースから立上がるシャフトに装着された軸受部と、軸受部と一体に連続成形され、下方が開放された垂直筒部とから成るヨークと、前記垂直筒部の内側に設けられた磁石と、磁石と対向し前記シャフトを回転自在に支持する固定ハウジングに設けられたステータと、前記固定ハウジングの取付けフランジ部を上から押え、前記回路保護ケースのアッパーケースに固着するリング状に形成された所定幅の固定支持プレートとを有する送風機用のブラシレスモータにおいて、前記固定支持プレートに、上方に立上がる振動緩和屈曲部を設ける。
【００１８】
これにより、ステータに電流が流れることで、対向し合う磁石との間で吸引・反発力を繰返しながら駆動力が発生する。この時、ヨークにおいて発生した振動は、固定支持プレートにおいて、振動緩和屈曲部が屈曲変形することで、回路保護ケースに伝わる動きが大幅に低減される。この結果、振動緩和屈曲部で振動エネルギーが吸収されたかたちとなるため、回路保護ケースの固有振動数との共振が回避されるようになる。
【００１９】
【発明の効果】
以上のように、この発明の請求項１では、運転中のうなり音の発生源となるヨークで発生した振動を、固定支持プレートに設けられた振動緩和屈曲部による屈曲変形によって、回路保護ケースへの振動伝達を小さく抑えることができる。これにより、回路保護ケースの固有振動数との共振が回避され、うなり音の発生を低減する。
【００２３】
【発明の実施の形態】
以下、図１乃至図８の図面を参照しながらこの発明の第１の実施形態について具体的に説明する。
【００２４】
図１において、１は自動車用空気調和装置に使用されるブラシレスモータ、３はブラシレスモータ１によって回転動力が与えられる送風用のシロッコファンをそれぞれ示している。
【００２５】
シロッコファン３は、シャフト５の先端部に一体に取付けられている。シャフト５は、回転保護ケース７から立上がると共に上下の軸受９，１０を介して固定ハウジング１１に回転自在に支持されている。固定ハウジング１１は、前記シャフト５を支持する上下に長い円筒部１３と水平状の取付けフランジ部１５とで形成されている。取付けフランジ部１５は、ゴム等の材質から成る下位側弾性部材１７及び上位側弾性部材１９によって挟みつけられると共に、さらに、上位側弾性部材１９の上から所定幅のリング状の固定支持プレート２１によって前記回路保護ケース７の取付けボス部２３に取付けねじ２５によって一体に固着されている。
【００２６】
回路保護ケース７は、上下に着脱自在に組合わされたアッパーケース２７と、ロアケース２９とからなり、回路保護ケース７内には、後述するステータ３１を流れる電流の方向を切り換えてシャフト５を回転させる駆動回路部３３が収納されている。
【００２７】
駆動回路部３３は、所定の配線パターンを備えた電気回路基板３５に、電流の方向を切り換えるスイッチング素子３７や、電解コンデンサ３９等の電気回路部品が実装されている。スイッチング素子３７は、アルミ製のヒートシンク４１にビス固定されている。ヒートシンク４１は、放熱フィン４１ａを有し、スイッチング素子３７の熱を放熱するもので、前記放熱フィン４１ａは回路保護ケース７の外に露出され、アッパーケース２７に取り付けられている。
【００２８】
電気回路基板３５は、アッパーケース２７に垂設されたボス部４３に取付けビス４５で固定支持されている。なお、前記駆動回路部３３は、電気回路基板３５を貫通する金属製のジョイントバー４７と、金属製のバスバー４９と、電気回路基板３５を貫通する金属製のターミナルピン５１とを介して前記ステータ３１と電気的に接続している。
【００２９】
ステータ３１は、ヨーク５３の内側に設けられた永久磁石５５と対向し合うと共に、絶縁物５７を介して巻線５９が施されたコア６１が所定間隔で複数設けられた形状となっていて、前記固定ハウジング１１の円筒部１３に一体に固定支持されている。
【００３０】
ヨーク５３は、前記ステータ３１を取囲むと共に、前記シャフト５に固着された軸受部６３と、軸受部６３と一体に連続する水平部６５と、水平部６５と一体に連続し、冷却風取入口６７を有する傾斜部６９と、傾斜部６９と一体に連続する垂直筒部７１とから成る下方が開放された円筒状の形状となっている。
【００３１】
垂直筒部７１から傾斜部６９につながる肩部には、図５に示すように、振動緩和領域７３となる薄肉部７５がリング状に連続して設けられている。これにより、垂直筒部７１は、全領域を含む肩部の薄肉部７５を支点とする振動となり、一番効率のよい位置に設定されている。なお、薄肉部７５は必ずしも連続していなくてもよい。
【００３２】
また、薄肉部７５には、さらに、水平な底面と傾斜した左右の両側壁から成る連続した周溝７７が設けられている。
【００３３】
なお、周溝７７は、左右の両側壁を図６に示すように垂直の形状としたり、あるいは、図７に示すようにＵ字状の形状を採用してもよい。
【００３４】
一方、垂直筒部７１の内壁面に設けられた永久磁石５５は、１８０度対向した位置にＮ極，Ｎ極，Ｓ極，Ｓ極となるように配置されている。
【００３５】
このように構成された送風機用のブラシレスモータ１において、ステータ３１に方向の異なる電流が流れることで対向し合うコア６１と永久磁石５５との間で、Ｓ・ＮあるいはＳ・Ｓ又はＮ・Ｎとなり、吸引・吸発力が発生し、回転駆動力が得られる。この運転中において、垂直筒部７１に発生した振動は、薄肉部７５を支点とする独立した振動となるため、薄肉部７５を境として、軸受部６３への振動は伝わりにくくなり、大幅に低減される。特に、この実施形態にあっては、薄肉部７５に設けられた周溝７７との組合せによって、軸受部６３への振動伝達はさらに小さく低減されるようになる。この結果、振動エネルギーが吸収されたかたちとなるため、シャフト５への振動伝達が抑えられ、回路保護ケース７の固有振動数との共振が回避される。これにより、図８に示す如く、従来に比べてうなり音の発生を小さく抑え、品質感を高めることができる。
【００３６】
図９から図１６はヨーク５３からの振動を回路保護ケース７へ伝わるのを小さく抑えるようにした第２の実施形態を示したものである。
【００３７】
即ち、図１０に示すように、回路保護ケース７のアッパーケース２７側に設けられた組付け凹部７９内に、防振ゴムとなる下位側弾性部材８１をセットし、その上から鎖線で示すように、固定ハウジング１１の取付けフランジ部１５を重ね合せ、さらにその上から図１１に示す防振ゴムとなる上位側弾性部材８３を重ね合せ、前記取付けフランジ部１５を挟みつける。さらに、その上から図１３に示す所定幅に形成されたリング状の固定支持プレート８５を重ね合せ、それらは取付けビス８７により、前記組付け凹部７９内に設けられた円筒状の取付部８９に固定支持されている。
【００３８】
固定支持プレート８５には、上方へ向かって屈曲成形された屈曲部９１ａを有する下向きコ字状の振動緩和屈曲部９１が複数設けられている。振動緩和屈曲部９１の天井部内側には、前記上位側弾性部材８３に設けられた突起体８３ａが弾接し合う形状となっている。
【００３９】
ヨーク５３は、軸受部６３と、水平部６５と、傾斜部６９と垂直筒部７１とから成り、垂直筒部７１の内側は永久磁石５５が配置された構造となっている。
【００４０】
なお、他の構成要素は、第１の実施形態と同一のため、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【００４１】
したがって、この第２の実施形態によれば、ヨーク５３の垂直筒部７１で発生した振動は、固定支持プレート８５において、図１５に鎖線で示すように屈曲部９１ａが屈曲変形することで、回路保護ケース７に伝わる動きが大幅に低減される。また、水平方向の振動に対しても、図１６に示すように屈曲部９１ａが変形することで回路保護ケース７への駆動伝達が低減される。この結果、振動緩和屈曲部９１で振動エネルギーが吸収されたかたちとなるため、回路保護ケース７の固有振動数との共振が回避され、うなり音（磁気音）を小さく抑えることができる。これにより、品質感を高めることができる。
【００４２】
なお、この実施形態の場合には、リング状の振動緩和領域７５をヨーク５３に設ける第１の実施形態と組合せることで、より一層のうなり音（磁気音）を小さくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図１】この発明にかかる送風機用のブラシレスモータを示した概要切断面図。
【図２】送風用のファンの一部分を切断した送風機用のブラシレスモータを示した説明図。
【図３】ヨークの平面図。
【図４】ヨークの切断面図。
【図５】ヨークの肩部に薄肉部を設けた一部分の拡大断面図。
【図６】周溝の溝形状の別の実施形態を示した拡大説明図。
【図７】周溝の溝形状の別の実施形態を示した拡大説明図。
【図８】従来例と本案との測定モード結果を示した説明図。
【図９】第２の実施形態を示した図２と同様の説明図。
【図１０】固定ハウジングの取付けフランジ部の下側にセットされる下位側弾性部材を回路保護ケースの取付け部にセットした平面図。
【図１１】固定ハウジングの取付けフランジ部の上側にセットされる上位側弾性部材の平面図。
【図１２】上位側弾性部材の側面図。
【図１３】上位側弾性部材を介して固定ハウジングの取付けフランジを上から押える固定支持プレートの平面図。
【図１４】固定支持プレートの側面図。
【図１５】固定支持プレートの動作図。
【図１６】固定支持プレートの動作図。
【符号の説明】
５ シャフト
７ 回路保護ケース
１１ 固定ハウジング
３１ ステータ
５３ ヨーク
５５ 磁石
６３ 軸受部
７１ 垂直筒部
７３ 振動緩和領域

Claims (1)

1. 回路保護ケース（７）から立上がるシャフト（５）に装着された軸受部（６３）と、軸受部（６３）と一体に連続成形され、下方が開放された垂直筒部（７１）とから成るヨーク（５３）と、前記垂直筒部（７１）の内側に設けられた磁石（５５）と、磁石（５５）と対向し前記シャフト（５）を回転自在に支持する固定ハウジング（１１）に設けられたステータ（３１）と、前記固定ハウジング（１１）の取付けフランジ部（１５）を上から押え、前記回路保護ケース（７）のアッパーケース（２７）に固着するリング状に形成された所定幅の固定支持プレート（８５）とを有する送風機用のブラシレスモータにおいて、前記固定支持プレート（８５）に、上方に立上がる振動緩和屈曲部（９１）を設けるようにしたことを特徴とする送風機用のブラシレスモータ。

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