JP4075648B2 - 電気炊飯器とその炊飯量判定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気炊飯器とその炊飯量判定方法に関し、特に強い火力で加熱する前に弱い火力で加熱しながら米粒の吸水を促進する吸水工程において炊飯量を判定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
制御手段であるマイクロコンピュータが搭載された電気炊飯器では、あらかじめメモリに記憶されたプログラムに従ってマイクロコンピュータが内釜の加熱手段(電熱ヒータ又はIHコイル)の出力を制御することによって、適切な炊飯制御が実行される。この際、内釜の温度を検出する温度センサーの出力信号(検出温度)がマイクロコンピュータにフィードバックされ、マイクロコンピュータは、検出温度に基づいて加熱手段の出力を制御する。
【0003】
このような炊飯制御は例えば、吸水工程、昇温工程、沸騰工程、炊上げ工程及び蒸らし工程を含む。吸水工程では、弱い火力で内釜を加熱しながら米粒の吸水を促進する。昇温工程では、検出温度が大きい勾配で約100℃まで上昇するように強い火力で内釜を加熱する。沸騰工程では、強い火力を維持し、米が沸騰湯の中で炊かれる。沸騰工程では検出温度が約100℃に維持される。やがて内釜内の水分が蒸発して無くなると炊上げ工程に移行する。炊上げ工程では、検出温度が約100℃から急激に上昇し、所定温度に達すれば加熱手段の出力を下げて蒸らし工程に移行する。蒸らし工程では、検出温度があらかじめ定めたむらし温度に所定時間維持されるように加熱手段の出力を制御する。
【0004】
上記のような炊飯制御において、内釜内の米の量である炊飯量(合数ということもある)を昇温工程における温度上昇勾配から判定し、判定結果に基づいてその後の加熱量を調整することが行われている。つまり、加熱手段の出力が一定であれば炊飯量に比例して温度上昇勾配が小さくなるので、単位時間当たりの温度上昇又はそれに相当する量を検出することによって炊飯量を判定する。そして、その後の工程において、炊飯量が多いほど加熱量を大きくするといった制御を行っている。
【0005】
しかしながら、昇温工程で炊飯量の判定を行った場合に、その判定結果に基づいて、その後の加熱量の調整を行うことはできるが、例えば昇温工程の初めから加熱手段の出力を炊飯量に応じて調整するといった制御ができない。加熱手段の出力が同じ場合は、炊飯量が大きく変化すると昇温工程に要する時間が大きく変化する。したがって、炊飯量に応じて加熱手段の出力を調整することが望ましい。
【0006】
そこで、例えば特許文献1に開示されているように、吸水工程(特許文献1では前炊き工程と呼称されている)において炊飯量を判定する方法が提案されている。この判定方法では、吸水工程で内釜の検出温度を所定温度に維持するように加熱手段を制御し、このときの加熱手段の通電度合を計測することによって炊飯量を判定する。
【0007】
【特許文献1】
特開平2−277420号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記の特許文献1に開示された炊飯量の判定方法では、吸水工程で内釜の検出温度を所定温度に維持する必要がある。しかし、発明者らの実験結果によれば、吸水工程で検出温度を一定に維持する場合に比べて、検出温度を徐々に(小さい勾配で)上昇させた方が飯の炊き上がり状態が良くなることが分かった。
【0009】
例えば、吸水温度(検出温度)が約45℃に維持される従来の吸水工程に比べて、吸水温度を50℃より少し高めの温度に設定すれば米の吸水率が増加し、一層おいしい飯が炊けることが分かった。しかし、炊飯量が多い場合は検出温度が50℃に達する前に所定時間(例えば10分)が経過し吸水工程が終わってしまう。また、吸水温度の設定が65℃や70℃の如く高すぎる場合は、炊飯量が少ない場合に米の温度が上昇しすぎて糊化現象が発生する。
【0010】
そこで、吸水工程で検出温度を徐々に上昇させると、炊飯量が少ない場合でも吸水工程で米の温度が上がりすぎて糊化現象が発生することがなくなり、炊飯量が多い場合でも米の吸水率が向上する。その結果、飯の炊き上がり状態が良くなる(おいしい飯が炊ける)。
【0011】
本発明は、上記のような実験結果に基づいて為されたものであり、吸水工程で内釜の検出温度を徐々に上昇させながら炊飯量の判定を行い、その後の加熱量を炊飯量の判定結果に応じて調整できるようにすることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明による電気炊飯器は、内釜の温度を検出するための温度センサーと、該温度センサーの検出温度にしたがって前記内釜の加熱手段を制御することにより炊飯制御を実行する制御手段と、炊飯を開始させる炊飯スイッチを含む操作部とを備え、前記制御手段が実行する炊飯制御は、前記検出温度が第1設定温度に上昇した後所定時間その温度に維持される吸水1工程、及び前記検出温度が前記第1設定温度から第2設定温度まで小さい勾配で上昇する吸水2工程を含むように前記加熱手段を制御する吸水工程と、前記検出温度が前記吸水2工程における勾配よりも大きい勾配で約100℃まで上昇するように前記加熱手段を制御する昇温工程と、前記検出温度が約100℃に維持される沸騰工程と、前記検出温度が約100℃から急激に上昇して所定温度に達すれば前記加熱手段の出力を下げる炊上げ工程とを含み、前記制御手段は、前記吸水2工程において前記検出温度が前記第1設定温度から前記第2設定温度まで所定時間をかけて段階的に上昇するように前記加熱手段のオン・オフ制御を行い、前記所定時間における前記加熱手段のオン時間又はオフ時間の積算値に基づいて、前記加熱手段の出力と温度上昇勾配との関係から前記炊飯量の判定を行い、その後の工程における前記加熱量を前記炊飯量に基づいて調整することを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、吸水工程で内釜の検出温度を徐々に上昇させながら炊飯量の判定を行い、その後の加熱量を炊飯量の判定結果に応じて調整することができる。また、吸水工程で内釜の検出温度を徐々に上昇させるので、炊飯量が多い場合でも米の吸水率が向上し、炊飯量が少ない場合でも吸水工程で米の温度が上がりすぎて糊化現象が発生することが無い。
【0015】
また、前記制御手段は、前記吸水工程において前記検出温度が第1設定温度から第2設定温度まで所定時間をかけて段階的に上昇するように前記加熱手段のオン・オフ制御を行い、前記所定時間における前記加熱手段のオン時間又はオフ時間の積算値に基づいて前記炊飯量の判定を行うことによって、吸水工程において検出温度を徐々に上昇させながら炊飯量の判定をほぼ正確に行うことが可能になる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る電気炊飯器の側面から見た断面図である。この電気炊飯器は、合成樹脂製のケース本体11とその内部空間に着脱自在に装着された金属製の内釜12、そしてケース本体11の上部開口を開閉するようにケース本体11の後部(図1では右側)に軸13で枢支された蓋部材14を備えている。蓋部材14の内側には内釜12の上部開口を密封する内蓋15が設けられている。
【0022】
内釜12は、ステンレス鋼板のような磁性体金属又は磁性体を含有する金属で作られている。内釜12の底部付近には、誘導加熱(IH)によって内釜12を加熱するIHコイル(加熱手段に相当する)16が設けられている。IHコイル16が交流電流で駆動されると、IHコイル16が発生する交番磁界の磁束が内釜12に渦電流を発生させる。内釜12は、この渦電流と自らの電気抵抗によって発熱する。
【0023】
また、内釜12の保持部材17の側部には保温用の側面ヒータ18がリング状に設けられている。更に、蓋部材14の内蓋15を熱伝導によって加熱し結露を防止するための上部ヒータ19がリング状に設けられている。また、内釜12の底部の中心部には、内釜12の温度を検出するための温度センサー20が設けられている。
【0024】
電気炊飯器の前面(図1では左側)の上部には、操作部及び表示部を含む操作パネル21が設けられ、その内側に第1制御基板22aが設けられている。また、第1制御基板22aの下方の空間に第2制御基板22bが設けられている。これらの制御基板22(22a+22b)には、マイクロプロセッサや温度検出回路、ブザー、電源回路等が搭載されている。
【0025】
図2は、制御基板を含む電気炊飯器の電気回路の構成を示すブロック図である。この図に示すように、制御手段としてのマイクロコンピュータ(MPU)29と、その発振回路28及び電源・リセット回路25が設けられている。温度センサー20の検出信号は温度検出回路26を経てマイクロコンピュータ29に入力される。また、後述する各種の押釦スイッチを含む操作部27の信号がマイクロコンピュータ29に入力されている。
【0026】
前述のIHコイル16は、マイクロコンピュータ29によってIH駆動回路24を介して駆動制御される。IH駆動回路24は、IGBTのようなスイッチング素子、ダイオード、共振用コンデンサ等を用いて構成されており、IHコイル16に所定の高周波電流を供給する。側面ヒータ18及び上部ヒータ19は、マイクロコンピュータ29によってヒータ駆動回路30を介してオン・オフ制御される。
【0027】
また、炊き上がりの報知やキー操作音等のためのブザー31が設けられ、これもマイクロコンピュータ29によって制御される。更に、操作パネル21に設けられた表示部32が液晶表示器によって構成され、その表示内容がマイクロコンピュータ29によって設定される。
【0028】
図3は、電気炊飯器の操作パネルの構成例を示す図である。操作パネル21は操作部27と表示部32からなる。操作部27は、炊飯スイッチ37、予約スイッチ38、メニュースイッチ39、時刻設定スイッチ40、取消スイッチ42及び保温スイッチ43を備えている。炊飯スイッチ37を押すと炊飯が開始し、炊飯インジケータ(LED)37aが点灯する。
【0029】
予約スイッチ38は炊飯予約の設定に使用される。この予約スイッチ38を押すと、表示部32の時刻表示部(7セグメント表示部)45と時刻設定スイッチ(時・分スイッチ)40を用いて炊き上がり時刻(予約時刻)の設定を行うことができる。この後、炊飯スイッチ37を押すと、予約時刻がマイクロコンピュータ29の内蔵メモリに記憶され、予約インジケータ(LED)38aが点灯する。この際、予約設定の完了がブザー31の鳴動によって報知される。マイクロコンピュータ29は、予約時刻より炊飯に必要な時間だけ手前の時刻から炊飯を開始し、略予約時刻に飯が炊き上がるように制御する。なお、予約設定は2つの異なる時刻を設定することができ、表示部32において、予約1と予約2のインジケータで区別される。
【0030】
メニュースイッチ39は、炊飯メニューの設定に用いられる。このメニュースイッチ39を押すと、表示部32の上辺で点灯するメニューが白米、早炊き、おかゆと順番に変わり、点灯したメニューが選択される。メニュースイッチ39を押さなければデフォルトとして白米が設定される。
【0031】
時刻設定スイッチ40は上述の炊飯時刻の予約設定と現在時刻の設定に用いられる。時、分の各スイッチを押せば時刻表示部45のうち、上2桁(時)又は下2桁(分)がインクリメントされる。取消スイッチ42は予約設定や保温等の取り消しに用いられる。
【0032】
保温スイッチ43は、飯の保温を開始させるために使用される。通常、炊飯行程が完了すれば自動的に保温行程が始まるが、取消スイッチ42で保温を解除した場合や電源プラグの脱着を行ったような場合に、保温スイッチ43を押下すれば再び保温が始まる。保温中は保温インジケータ(LED)43aが点灯する。
【0033】
図4は、本発明の実施形態に係る電気炊飯器の炊飯制御において内釜温度が変化する様子を例示するグラフである。内釜温度は、前述の温度センサー20の検出信号に基づいてマイクロコンピュータ29が検出する温度である。この炊飯制御では、最初に第1設定温度(例えば50℃)まで内釜温度(検出温度)を一気に上昇させるようにIHコイル16が駆動され、その後に第1設定温度から第2設定温度(例えば60℃)まで徐々に内釜温度を上昇させるようにIHコイル16のオン・オフ制御が行われる(吸水工程45)。この間に米の吸水が促進されると共に、炊飯量(合数)の判定が行われる。この吸水工程45における炊飯量の判定処理については後に詳しく説明する。
【0034】
続く昇温工程46において、所定の電力でIHコイル16が通電され、これによって内釜温度が急激に上昇する。この昇温工程46におけるIHコイル16への供給電力、すなわち加熱出力は、吸水工程45における炊飯量の判定結果に応じて調整される。つまり、炊飯量が多いほど加熱出力が大きくなるように設定される。
【0035】
やがて、内釜12内の水(湯)が沸騰し、米が沸騰湯の中で炊かれる(ボイルされる)沸騰工程47に移行する。沸騰工程47の間は水分が徐々に蒸発し、内釜温度は略100℃に維持される。内釜12内の湯が蒸発して無くなるに伴って、炊上げ工程48に移行する。
【0036】
炊上げ工程48において、内釜温度があらかじめ定めた炊上げ温度(例えば130℃)に達すると、IHコイル16への供給電力を下げ、あらかじめ定めたむらし温度(107℃)に約10分間維持される(むらし工程49)。これで飯が炊き上がり、炊飯制御は完了する。この後、自動的に冷却工程50を経て保温工程51に移行する。
【0037】
冷却工程50では、自然冷却によって保温温度(例えば約70℃)まで内釜温度が下がるのを待つ。この後、側面ヒータ18及び上部ヒータ19を所定のデューティファクタで通電制御しながら、IHコイル16のオン・オフ制御によって内釜温度を保温温度に維持する温度調節が実行される(保温工程51)。
【0038】
なお、保温工程において、初めは低温保温を行い、時間の経過に伴って保温温度を段階的に上げていく保温制御を行っても良い。例えば、冷却工程50で65℃付近まで内釜温度が下がるのを待ち、初めは約65℃での低温保温を行い、数時間後に保温温度を約68℃に上げて中温保温を行い、更に数時間後に保温温度を約72℃に上げて高温保温を行う。こうすることにより、短時間の保温では飯の劣化を抑えながら、保温が長時間になったときには腐敗を抑制することができる。
【0039】
また、上記の三段階保温において、低温保温から中温保温に移行する際、及び中温保温から高温保温に移行する際に、ごく短時間だけ一時的に内釜温度が100℃以上になるようにIHコイル16を制御してもよい。これにより、腐敗菌の繁殖を抑えることができる。
【0040】
図5は、吸水工程における内釜温度の変化を簡略化して例示するグラフである。この例では、吸水工程が吸水1工程、吸水2工程および吸水3工程に分かれ、吸水2工程で炊飯量の判定(合数判定)を実行する。一実施例において、吸水1工程は5分間、吸水2工程は10分間とし、吸水3工程は合数判定の結果に応じて時間を定める。
【0041】
図6は、吸水1工程の処理の例を示すフローチャートである。吸水1工程では、内釜温度を第1設定温度T1(例えば50℃)まで上昇させた後、この温度に維持する。ステップ#101において吸水1タイマ(例えば5分)をスタートさせる。次のステップ#102で内釜温度(検出温度)がT1(例えば50℃)以上か否かをチェックし、T1未満の場合は、IHコイル16をデューティファクタ16/16でオンにする(ステップ#103)。内釜温度がT1以上であればIHコイル16をオフにする(ステップ#104)。なお、IHコイル16への供給電力(加熱出力)は、デューティファクタによる調節に加えて、位相制御による調節も可能である。位相制御による調節量は、例えば70%出力とする。
【0042】
続くステップ#105では上部ヒータ19をデューティファクタ6/16でオンにし、内蓋15の結露を防ぐ。次のステップ#106で吸水1タイマをチェックする。吸水1タイマが終了(タイムアップ)するまで、ステップ#102からステップ#106の処理が繰り返されて、内釜温度が第1設定温度T1に維持される。吸水1タイマ(例えば5分)が終了すれば次の吸水2工程に移行する。
【0043】
図5に戻り、吸水2工程では、内釜温度を第1設定温度T1から第2設定温度T2(例えば60℃)まで徐々に上昇させるようにIHコイル16を制御する。この際、吸水2工程(t1〜t2)をm個の区間(図5ではm=10)に分割する。すなわち、Δt=(t2−t1)/mとする。同様に、第1設定温度T1から第2設定温度T2までの温度差をm個に分割する。すなわち、ΔT=(T2−T1)/mとする。そして、以下のようなIHコイル16のオン・オフ制御とオフ時間の積算によって合数判定を行う。
【0044】
図7は、図5における吸水2工程の内釜温度の変化を拡大して示すグラフである。この図から分かるように、それぞれのΔt区間において、内釜温度が設定温度(T1+kΔT)に達するまでIHコイル16がオンにされ、設定温度(T1+kΔT)に達するとIHコイル16のオン・オフ制御による温調が行われる。但しk=1,2,...,mである。
【0045】
図7に示すように、それぞれのΔt区間におけるIHコイル16のオン・オフ制御による温調時間tc1,tc2,...,tcmのうちのオフ時間(温調時間の略半分)をtoff1,toff2,...,toffmとし、これらオフ時間の合計toffを求める。すなわち、toff=toff1+toff2+...+toffmとする。このオフ時間の合計toffは、炊飯量(合数)が多いほど短くなる。したがって、オフ時間の合計toffから炊飯量(合数)を判定することができる。
【0046】
なお、それぞれのΔt区間におけるIHコイル16のオフ時間の代わりにオン時間の合計を求めてもよい。この場合、オン時間の合計tonは、炊飯量(合数)が多いほど長くなる。
【0047】
図8は、炊飯量の判定を含む吸水2工程の処理の例を示すフローチャートである。ステップ#201において、toffタイマをクリアし、kに1を代入する。toffタイマは、上記のオフ時間の合計toffを積算するためのタイマである。ここで、mの値(例えば10)を設定してもよい。
【0048】
次のステップ#202において、Δtタイマをスタートさせる。Δtタイマは、上述のΔt区間を計時するためのタイマである。Δt=(t2−t1)/mである。例えば、吸水2工程(t1〜t2)の時間が10分であり、m=10とした場合、Δtは1分に設定される。
【0049】
次のステップ#203において、Δt区間ごとの目標温度Tkが設定される。すなわち、T1+kΔTがTkに代入される。図7に示した如く、例えば最初のΔt区間の目標温度はTk=T1+ΔT(例えば51℃)であり、2番目のΔt区間の目標温度はTk=T1+2ΔT(例えば52℃)である。
【0050】
次のステップ#204で内釜温度(検出温度)がTk以上か否かをチェックし、Tk未満の場合は、IHコイル16をデューティファクタ16/16でオンにする(ステップ#205)。IHコイル16の位相制御による調節量は、例えば70%出力とする。内釜温度がTk以上であればIHコイル16をオフにし(ステップ#206)、toffタイマを積算(計時)する(ステップ#207)。
【0051】
次のステップ#208でΔtタイマをチェックする。Δtタイマが終了(タイムアップ)するまで、ステップ#204からステップ#208の処理が繰り返される。その結果、図7に示したように、それぞれのΔt区間の後半部分において、内釜温度がほぼTkに維持される温調時間tc1,tc2,...,tcmが設けられることになる。前述のように、それぞれの温調時間tc1,tc2,...,tcmの一部(約半分ずつの時間)がオフ時間toff1,toff2,...,toffmに相当することになる。
【0052】
図7の変形例として、図9に示すような内釜温度の制御を行ってもよい。すなわち、Δt区間の後半部分においてIHコイル16のオン・オフ制御による温調時間の代わりに、IHコイル16の通電をオフにするオフ時間toff1,toff2,...,toffmを設ける。この場合の制御は、図8のフローチャートにおいて、ステップ#204からステップ#208の処理を少し変えればよい。例えば、内釜温度がTkに達した時点でフラグをセットし、その時点からΔtタイマが終了するまではIHコイル16をオンにしないように制御すればよい。
【0053】
ステップ#208でΔtタイマが終了すれば、次のステップ#209でkの値をインクリメントする。続くステップ#210でkの値をm(例えば10)と比較し、kがmを超えるまでステップ#202からステップ#210の処理を繰り返す。こうして、時間t2−t1=mΔtの間だけ内釜温度を段階的に上昇させながら、IHコイル16をオフにした時間toffの積算値を求める。なお、図8のフローチャートでは、吸水2工程の時間(例えば10分)を計時するタイマを設けていないが、これは、Δtタイマをm回繰り返すことによって同等の機能を果たすことができるからである。但し、安全のために吸水2工程の時間を計時するタイマを設けてもよい。
【0054】
上記のようにして求められたオフ時間の積算値toffは、前述のように炊飯量(合数)に反比例する値である。つまり、炊飯量が多いほどオフ時間の積算値toffは小さくなる。
【0055】
次の吸水3工程では、図5に示すように、内釜温度を第2設定T2より高い第3設定温度T3(例えば70℃)に所定時間(t3−t2)だけ維持するようにIHコイル16の通電制御が行われる。この際、第3設定温度T3と所定時間(t3−t2)が、炊飯量の判定値であるオフ時間の積算値toffに応じて設定される。
【0056】
図10は、炊飯量の判定値に応じて変化する吸水3工程の処理の例を示すフローチャートである。この例では、炊飯量を少、中、多の3段階に判定し、炊飯量が所定量より少ない場合(少の場合)は、吸水3工程を実行しないで、直ちに次の昇温工程へ移行する。炊飯量が所定量以上の場合(中又は多の場合)は、それぞれに応じて第3設定温度T3と吸水3タイマの値を設定する。
【0057】
まず、ステップ#301において、オフ時間の積算値toff(炊飯量の逆数に相当する)を判定する。toffが所定値以上の場合(ステップ#302のYes)は炊飯量が所定量より少ないことを意味するので、直ちに昇温工程に移行する。toffが所定値より小さい場合(ステップ#302のNo)は、toffの値に応じて第3設定温度T3及び吸水3タイマを設定する(ステップ#303)。
【0058】
上述のように、この例ではtoffの値が中か小か(すなわち炊飯量が中か多か)に応じて、2通りの第3設定温度T3及び吸水3タイマが設定される。一般に、toffの値が小さいほど(すなわち炊飯量が多いほど)第3設定温度T3を高く設定し、吸水3タイマを長く設定する。第3設定温度T3及び吸水3タイマのうちのいずれか一方のみをtoffの値に応じて変えるようにしてもよい。
【0059】
次のステップ#304で吸水3タイマをスタートし、続くステップ#305で内釜温度(検出温度)がT3以上か否かをチェックする。内釜温度がT3未満の場合は、IHコイル16をデューティファクタ16/16でオンにする(ステップ#306)。内釜温度がT3以上であればIHコイル16をオフにする(ステップ#307)。なお、IHコイル16の位相制御による調節量は、例えば70%出力とする。
【0060】
続くステップ#308では上部ヒータ19をデューティファクタ6/16でオンにし、内蓋15の結露を防ぐ。次のステップ#309で吸水3タイマをチェックする。吸水3タイマが終了(タイムアップ)するまで、ステップ#305からステップ#309の処理が繰り返されて、内釜温度が第3設定温度T3に維持される。吸水3タイマが終了すれば次の昇温工程に移行する。
【0061】
以上のような制御によって、吸水工程(のうちの吸水2工程)において第1設定温度T1から第2設定温度T2まで徐々に(段階的に)上昇するようにIHコイル16の通電が制御される。そして、この間に、IHコイル16のオフ時間に基づいて炊飯量(合数)が判定され、吸水3工程以後のIHコイル16による加熱量が炊飯量の判定結果に応じて調整される。
【0062】
以上、本発明の実施形態をいくつかの変形例と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態及び変形例の他にも、種々の形態で実施することができる。
【0063】
本発明は、誘導加熱方式の加熱手段(IHコイル)を用いて炊飯制御を行う電気炊飯器(いわゆるIHジャー)に限らず、電熱ヒータを用いて炊飯制御を行う電気炊飯器(いわゆるマイコンジャー)にも適用することができる。
【0064】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の電気炊飯器とその炊飯量判定方法によれば、吸水工程で内釜の検出温度を徐々に上昇させながら炊飯量の判定を行い、その後の加熱手段の出力を炊飯量の判定結果に応じて調整することができる。吸水工程で内釜の検出温度を徐々に上昇させるので、炊飯量が多い場合でも米の吸水率が向上し、炊飯量が少ない場合でも吸水工程で米の温度が上がりすぎて糊化現象が発生することが無い。
【0065】
また、温度上昇勾配の急な昇温工程で炊飯量を判定する方法に比べて、徐々に温度を上昇させる吸水工程で炊飯量を判定するので、炊飯量が少ない場合でも炊飯量の判定精度が良くなる効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る電気炊飯器の側面から見た断面図である。
【図2】制御基板を含む電気炊飯器の電気回路の構成を示すブロック図である。
【図3】電気炊飯器の操作パネルの構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電気炊飯器の炊飯制御において内釜温度が変化する様子を例示するグラフである。
【図5】吸水工程における内釜温度の変化を簡略化して例示するグラフである。
【図6】吸水1工程の処理の例を示すフローチャートである。
【図7】図5における吸水2工程の内釜温度の変化を拡大して示すグラフである。
【図8】炊飯量の判定を含む吸水2工程の処理の例を示すフローチャートである。
【図9】図7の変形例を示すグラフである。
【図10】炊飯量の判定値に応じて変化する吸水3工程の処理の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
12 内釜
16 IHコイル(加熱手段)
18 側面ヒータ
19 上部ヒータ
20 温度センサー
27 操作部
29 マイクロコンピュータ(制御手段)
37 炊飯スイッチ
Claims (1)
- 内釜の温度を検出するための温度センサーと、該温度センサーの検出温度にしたがって前記内釜の加熱手段を制御することにより炊飯制御を実行する制御手段と、炊飯を開始させる炊飯スイッチを含む操作部とを備え、
前記制御手段が実行する炊飯制御は、
前記検出温度が第1設定温度に上昇した後所定時間その温度に維持される吸水1工程、及び前記検出温度が前記第1設定温度から第2設定温度まで小さい勾配で上昇する吸水2工程を含むように前記加熱手段を制御する吸水工程と、
前記検出温度が前記吸水2工程における勾配よりも大きい勾配で約100℃まで上昇するように前記加熱手段を制御する昇温工程と、
前記検出温度が約100℃に維持される沸騰工程と、
前記検出温度が約100℃から急激に上昇して所定温度に達すれば前記加熱手段の出力を下げる炊上げ工程とを含み、
前記制御手段は、前記吸水2工程において前記検出温度が前記第1設定温度から前記第2設定温度まで所定時間をかけて段階的に上昇するように前記加熱手段のオン・オフ制御を行い、前記所定時間における前記加熱手段のオン時間又はオフ時間の積算値に基づいて、前記加熱手段の出力と温度上昇勾配との関係から前記炊飯量の判定を行い、その後の工程における前記加熱量を前記炊飯量に基づいて調整することを特徴とする電気炊飯器。
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