JP4073227B2 - 水素含有ガス生成装置の運転方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、原燃料を改質処理することにより生成された水素含有ガスに対して酸素を添加して、その水素含有ガスに含まれる一酸化炭素を選択酸化させ、前記水素含有ガス中の一酸化炭素の濃度を所定濃度以下にまで低減させる一酸化炭素除去器を備えてなる水素含有ガス生成装置の運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は水素と酸素とを化学反応させて電気を発生させる装置だが、通常、その酸素は空気から得ることができ、水素はアルコールや炭化水素を含むガスから得ることができる。ここで、アルコールや炭化水素を含むガスから水素を得る場合、水素含有ガス生成装置を使用して、その炭化水素を水素含有ガスに改質する必要がある。
【0003】
代表的な水素含有ガス生成装置においては、炭化水素を含む原燃料の供給から水素含有ガス生成に至る主経路上に、原燃料の供給を行う原燃料供給部、原燃料の脱硫を行う脱硫を行う脱硫器、脱硫された後の原燃料と水とを反応させて水素含有ガスを生成する改質器、水素含有ガスに含まれる一酸化炭素を一酸化炭素変成触媒を用いて水素と二酸化炭素とに変成する変成器、および変成器を通過した水素含有ガスに微量に存在する一酸化炭素を選択的に酸化させて、水素含有ガスに含まれる一酸化炭素濃度を更に低減させるための一酸化炭素除去器が設けられている。
【0004】
ここで、原燃料供給部から、メタン(CH4)を主成分とする都市ガスが原燃料ガスとして供給される場合、改質器において行われる改質反応は下記の化学反応式で表される。
【0005】
【化1】
CH4+H2O→3H2+CO
CH4+2H2O→4H2+CO2
【0006】
詳細には、改質器内に設けられた改質触媒を、上記改質反応が活性化される温度にまで加熱し、原燃料ガスと水蒸気とを上記改質触媒表面において反応させる工程が行われる。その後、変成器に設けられた銅−亜鉛系や鉄−クロム系の一酸化炭素変成触媒を用いて、一酸化炭素と水とを反応させて二酸化炭素と水素とに変成する変成処理が行われる。
【0007】
更に、固体高分子型燃料電池においては、一酸化炭素の存在によって、燃料電池の電極触媒が被毒されることが知られていることから、それを避けるために、生成した水素含有ガス中に微量に含まれる一酸化炭素の濃度を所定濃度以下にまで低減させる一酸化炭素除去器を変成器の後段に設けることが行われていた。
【0008】
具体的には、一酸化炭素除去器には、ルテニウム、ロジウム、白金、パラジウムなどの貴金属をアルミナ等の担体に担持してなる一酸化炭素除去触媒を備えた触媒層が収容されており、その触媒層に水素含有ガスと酸素(空気)とが供給されて下記の化学反応式に示す反応が活性化されることにより、水素含有ガスに含まれる一酸化炭素が下記の化学反応式に示すように選択的に酸化され、水素含有ガス中に含まれる一酸化炭素の濃度が十数ppm以下にまで低減される。
【0009】
【化2】
2CO+O2→2CO2
【0010】
上記の化学反応式においては、一酸化炭素を選択的に酸化させる際に要する酸素のモル数の理論値は一酸化炭素のモル数の1/2であるが、水素含有ガスに含まれる一酸化炭素の酸化を十分に行うために、実際には一酸化炭素のモル数の約2倍のモル数の酸素を添加することが行われていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
燃料電池では、燃料電池の出力電力に応じて改質処理に供される原燃料の供給量を増減させるのだが、燃料電池の出力電力を増加するために、改質処理に供される原燃料の供給流量を増加する変更が行われた場合、変更開始から所定期間を経過するまではその改質反応および変成反応が安定せず、一酸化炭素除去器へ供給される水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が上昇し、一酸化炭素を選択的に酸化させるために使用される酸素の量が不足するという問題が生じる。その結果、燃料電池の電極触媒が被毒されるという問題に至る。
【0012】
更に、上記問題に鑑みて、添加する酸素の量を更に増大させた場合には、一酸化炭素を酸化させるだけでなく、改質処理によって発生された水素まで酸化されるため、結果として、燃料電池で発電に必要な水素量が減少するという問題に至る。
【0013】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、改質処理に供される原燃料の供給流量の変更が行われた場合であっても、一酸化炭素を選択的に酸化除去可能な水素含有ガス生成装置の運転方法を提供する点にある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明に係る水素含有ガス生成装置の運転方法の第一の特徴構成は、原燃料を改質処理することにより生成された水素含有ガスに対して酸素を添加して、前記水素含有ガスに含まれる一酸化炭素を選択酸化させ、前記水素含有ガス中の一酸化炭素の濃度を所定濃度以下にまで低減させる一酸化炭素除去器を備えてなる水素含有ガス生成装置の運転方法であって、改質処理に供される前記原燃料の供給流量が増加する変更が所定の変更期間を要して行われた場合、変更開始前の酸素添加量に対する、前記変更期間中および前記変更期間後の所定期間中における所定時刻での酸素添加量の比率が、変更開始前の前記原燃料の供給流量に対する、前記所定時刻での前記原燃料の供給流量の比率よりも大きくなるように、前記変更期間中および前記所定期間中での酸素添加量が調整され、前記所定期間を経過した後の酸素添加量は、変更開始前の酸素添加量に対する前記所定期間を経過した後の酸素添加量の比率が、変更開始前の前記原燃料の供給流量に対する、前記変更期間後の前記原燃料の供給流量の比率と等しくなる量に調整される点にある。
上記課題を解決するための本発明に係る水素含有ガス生成装置の運転方法の第二の特徴構成は、原燃料を改質処理することにより生成された水素含有ガスに対して酸素を添加して、前記水素含有ガスに含まれる一酸化炭素を選択酸化させ、前記水素含有ガス中の一酸化炭素の濃度を所定濃度以下にまで低減させる一酸化炭素除去器を備えてなる水素含有ガス生成装置の運転方法であって、改質処理に供される前記原燃料の供給流量が増加する変更が所定の変更期間を要して行われた場合、変更開始前の酸素添加量に対する、前記変更期間中および前記変更期間後の所定期間中における所定時刻での酸素添加量の比率が、変更開始前の前記原燃料の供給流量に対する、前記所定時刻での前記原燃料の供給流量の比率よりも大きくなるように、前記変更期間中および前記所定期間中での酸素添加量が調整され、前記所定期間の長さは、変更開始前の前記原燃料の供給流量に対する、前記変更期間の終端時点での前記原燃料の供給流量の比率またはその等価量の関数として表される長さに調整される点にある。
【0015】
上記課題を解決するための本発明に係る水素含有ガス生成装置の運転方法の第三の特徴構成は、上記第一又は第二の特徴構成に加えて、前記変更期間中および前記所定期間中の酸素添加量は、変更開始前の前記原燃料の供給流量に対する、前記所定時刻での前記原燃料の供給流量の比率またはその等価量の関数として表される量に調整される点にある。
【0018】
以下に作用並びに効果を説明する。
本発明に係る水素含有ガス生成装置の運転方法の第一の特徴構成によれば、改質処理に供される原燃料の供給流量が増加する変更が行われた場合、変更開始前の酸素添加量に対する、変更期間中および変更期間後の所定期間中における所定時刻での酸素添加量の比率が、変更開始前の原燃料の供給流量に対する、上記所定時刻での原燃料の供給流量の比率よりも大きくなるように、供給流量の変更期間中および前記変更期間後の所定期間中(改質反応が安定しない間)の酸素添加量が調整されるので、水素含有ガス中の一酸化炭素の濃度が変更開始前に比べて上昇した場合であっても、その一酸化炭素を選択的に酸化させるために使用される酸素の量が不足するといった問題が発生しない。
しかも、改質処理に供される原燃料の供給流量が増加する変更が行われた場合、前記変更期間後の所定期間を経過した後、つまり、改質反応が安定し、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が安定した後は、変更開始前の酸素添加量に対する上記所定期間後の酸素添加量の比率が、変更開始前の原燃料の供給流量に対する上記変更期間後の原燃料の供給流量の比率と等しくなる量に酸素添加量が調整されるため、水素含有ガス中の一酸化炭素を選択酸化させるために適切な量の酸素の添加を行うことができる。
また、本発明に係る水素含有ガス生成装置の運転方法の第二の特徴構成によれば、第一の特徴構成で述べた如く、水素含有ガス中の一酸化炭素の濃度が変更開始前に比べて上昇した場合であっても、その一酸化炭素を選択的に酸化させるために使用される酸素の量が不足するといった問題が発生しないことに加えて、改質処理に供される原燃料の供給流量が増加する変更が行われた場合、上記所定期間の長さが、変更開始前の上記原燃料の供給流量に対する、上記変更期間の終端時点での上記原燃料の供給流量の比率またはその等価量の関数として表される量に基づいて調整されるので、一酸化炭素の選択酸化工程において、変更開始前よりも水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が上昇した状態が持続する期間に相応しい期間、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度の上昇量に相応しい量の酸素を添加することができる。その結果、水素含有ガス中の一酸化炭素を選択的に酸化させるために使用される酸素の量が不足するといった問題が発生しない。更に、改質処理によって発生された水素まで酸化されるといった問題も発生しない。
【0019】
本発明に係る水素含有ガス生成装置の運転方法の第三の特徴構成によれば、改質処理に供される原燃料の供給流量が増加する変更が行われた場合、上記変更期間中および上記所定期間中の酸素添加量が、変更開始前の前記原燃料の供給流量に対する、前記所定時刻での前記原燃料の供給流量の比率またはその等価量の関数として表される量に基づいて調整されるので、一酸化炭素の選択酸化工程において、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度の上昇度合に相応しい量の酸素を添加することができる。その結果、水素含有ガス中の一酸化炭素を選択的に酸化させるために使用される酸素の量が不足するといった問題が発生しない。更に、改質処理によって発生された水素まで酸化されるといった問題も発生しない。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、まず、本発明に係る運転方法が実施される水素含有ガス生成装置の構成について説明する。
図1に例示する水素含有ガス生成装置は、原燃料ガスの供給を受けて水素含有ガスを生成し、その水素含有ガスを燃料電池に供給する装置である。従って、水素含有ガス生成装置は、炭化水素を含む原燃料(原燃料ガス)の脱硫を行う脱硫器1と、水加熱手段(図示せず)によって水を気化して水蒸気を生成する水蒸気生成器2と、脱硫された原燃料ガスと水蒸気とを反応させて水素含有ガスを発生させる改質器3と、水素含有ガスに含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に変成する変成器4と、変成器4を通過した水素含有ガスに微量に存在する一酸化炭素を酸化させて、水素含有ガスに含まれる一酸化炭素濃度を更に低減させるための一酸化炭素除去器5とを備えて構成される。
【0023】
脱硫器1は、メタンガス(CH4)を主成分とし、着臭剤として硫黄化合物が添加されている都市ガスを原燃料ガスとして使用する場合に、まず、その原燃料ガスの脱硫を行って上記硫黄化合物を除去する装置として使用される。この脱硫処理においては、原燃料ガスに水素を添加し、触媒を用いて両者を反応させることで得られた水素化物を酸化亜鉛などに吸着させる脱硫方法が用いられる。脱硫用として原燃料ガスに添加される水素は、別途設けられた水素タンクから直接供給する方法や、改質器3において発生された水素含有ガスを帰還させて使用する方法がある。
【0024】
改質器3は、脱硫された原燃料ガス(メタンガス)と水蒸気生成器2から供給される水蒸気とを改質触媒の触媒作用により反応させて、水素と一酸化炭素とを含む水素含有ガスを発生させる装置である。この反応時において改質触媒は、改質触媒加熱手段(図示せず)によって、例えば650℃〜750℃の温度に保たれ、メタンガスと水蒸気とが下記の化学反応式に従って改質されて、水素含有ガスが生成される。
【0025】
【化3】
CH4+H2O→3H2+CO
CH4+2H2O→4H2+CO2
【0026】
尚、原燃料ガスはメタンを主成分とする都市ガスに限定されるものではなく、プロパンやブタンなどの様々な炭化水素を含むガスを用いることができる。
【0027】
変成器4は、改質器3から供給される水素含有ガスに含まれる一酸化炭素を二酸化炭素に変成する装置である。一酸化炭素を二酸化炭素に変成するのは、一酸化炭素が燃料電池6に供給された場合に生じる電極被毒を防止するためである。この時、一酸化炭素を二酸化炭素に変成する一酸化炭素変成触媒は、その触媒の温度を調節するための温度調節手段(図示せず)によって、例えば150℃〜250℃の温度に保持され、一酸化炭素と水蒸気とが一酸化炭素変成触媒の触媒作用によって下記の化学反応式に従って変成される。
【0028】
【化4】
CO+H2O→CO2+H2
【0029】
一酸化炭素除去器5は、変成器4において変成処理が施された後の水素含有ガスに酸素を添加し、その水素含有ガスに微量に含まれる一酸化炭素を下記の化学反応式に示すように選択的に酸化させて、含まれる一酸化炭素の濃度を所定濃度以下にまで低減させる装置である。この酸化工程で添加される酸素は空気を利用することができる。
【0030】
【化5】
2CO+O2→2CO2
【0031】
以上のような水素含有ガス生成装置を使用することで、一酸化炭素濃度が十数ppm以下にまで低減された水素含有ガスが燃料電池6に供給されるため、燃料電池6の電極触媒の被毒が抑制される。その結果、燃料電池6における発電効率が低下する事無しに、燃料電池6の運転を継続することができる。
【0032】
以下に、本発明に係る水素含有ガス生成装置の運転方法、特に、一酸化炭素除去器5における一酸化炭素の酸化工程について図面を参照して詳細に説明する。
【0033】
上述したように、改質器3に供給される原燃料の供給流量、水蒸気の供給流量、および水素含有ガスに含まれる一酸化炭素を選択的に酸化させるための酸素添加量はそれぞれ調整される必要があるのだが、それは制御部7によってバルブV1、バルブV2、およびバルブV3の開度を調整することで行われる。また、制御部7は、燃料電池6から出力される直流電流を監視可能な構成とされている。尚、燃料電池6から出力される直流電流を知るためには、通常の直流用電流計を用いて測定すればよい。
【0034】
一酸化炭素除去器5において実施される酸化工程においては、変成処理後の水素含有ガスに含まれる一酸化炭素のモル数に対して一定比率の第1モル数の酸素を一酸化炭素除去器5に供給して、一酸化炭素の選択酸化反応が実施される。ここで、バルブV1およびバルブV2の開度が一定の状態で水素含有ガス生成装置の運転が行われている場合には、上記化学反応式3および化学反応式4に示した改質器3および変成器4での反応も安定して行われているため、変成処理後の水素含有ガスに含まれる一酸化炭素の濃度も一定の状態である。従って、制御部7はバルブV3の開度(酸素の添加量)についても一定の状態を保つように制御する。
【0035】
ここで、燃料電池6では燃料電池の出力電力に応じて改質処理に供される原燃料の供給流量を増減させるのだが、燃料電池6の出力電力を増加させる(直流電流を上昇させる)ために、改質処理に供される原燃料の供給流量を増加させる制御が制御部7によって行われる。
【0036】
燃料電池6の出力電力を変更する場合、制御部7はバルブV1およびバルブV2の開度を調整して、変更後の出力電力に応じた量の原燃料および水蒸気を改質器3に供給する。ここで、変更開始前の原燃料の供給流量に対する、変更期間中の所定時刻tでの原燃料の供給流量の比率がa(t)=a×tとなるような変更を行った場合、変成器4において変成処理された後の水素含有ガスに含まれる一酸化炭素の濃度も変化するため、制御部7はバルブV3の開度を新たに調整して、一酸化炭素の選択酸化に使用される酸素の供給流量もyからY(t)に変更する必要がある。
【0037】
図2に例示するのは燃料電池6の出力電力を増加させるために、改質処理に供される原燃料の供給流量を時刻t1から時刻t2の間(変更期間)に2倍に増加させる変更を行った場合(図2(a))の、変成処理後の水素含有ガスに含まれる一酸化炭素のモル数と添加される酸素のモル数との変化(図2(b))を示すグラフである。図2中では、酸素添加量をモル数で表しているが、他の単位で表した場合であっても同様である。図2(b)に示すように、本実施形態では、原燃料の供給流量の変更が行われる時刻t1までは添加される酸素のモル数を、一酸化炭素のモル数の2倍に設定している。
【0038】
このように、改質処理に供される原燃料の供給流量が増加する変更が行われた場合、図2(b)に示すように、水素含有ガスに含まれる一酸化炭素の量も増大する。しかし、変更開始前の原燃料の供給流量に対する、変更期間中(時刻t1から時刻t2の間)の所定時刻tでの原燃料の供給流量の比率:a(t)=a×tにおいて係数aが大きい(つまり、単位時間当たりの原燃料の供給流量が大きい)変更が行われた場合には、変更期間中における水素含有ガス中の一酸化炭素の量、および変更期間後の所定期間(時刻t2から時刻t3の間)における水素含有ガス中の一酸化炭素の量は、図2(b)に例示したような原燃料の増加に追従して変化する状態(言い換えると、一酸化炭素の発生量は増大するが水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が変化しない状態)にあるのではなく、図3に例示するように、水素含有ガス中の一酸化炭素濃度が一時的に上昇するように一酸化炭素の発生量が増加した後、所定期間を経て、変更開始前における水素含有ガス中の一酸化炭素濃度に戻って安定するような変化を示す。
【0039】
詳細には、図3では、改質器3に供給される原燃料の供給流量を単位時間当たりに最高出力の50%の運転状態から75%の運転状態に変更(1.5倍に変更)した場合(その際に、変更開始前の原燃料の供給流量に対する、単位時間後での原燃料の供給流量の比率:a(t)=1.5×tとなる)に発生する一酸化炭素の水素含有ガス中の濃度(%)と、単位時間当たりに最高出力の50%の運転から100%の運転に変更(2倍に変更)した場合(その際に、変更開始前の原燃料の供給流量に対する、単位時間後での原燃料の供給流量の比率:a(t)=2×tとなる)に発生する一酸化炭素の水素含有ガス中の濃度(%)との時間変化のグラフを示している。図3からは、原燃料の供給流量の単位時間当たりの増加量が大きい程、変更開始前の水素含有ガスに含まれる一酸化炭素の濃度(%)が上昇し、その濃度が変更開始前の濃度に戻るまでの期間が長くなることが分かる。
【0040】
従って、変更期間中(時刻t1から時刻t2の間)および変更期間後の所定期間中(時刻t2から時刻t3の間)での酸素添加量は、図2(b)に示すように、変更開始前の酸素添加量に対する、変更期間中(時刻t1から時刻t2の間)および変更期間後の所定期間中(時刻t2から時刻t3の間)における所定時刻tでの酸素添加量の比率が、変更開始前の原燃料の供給流量に対する、上記所定時刻tでの原燃料の供給流量の比率よりも大きくなる(波形A)ように、制御部7によって調整する必要がある。つまり、図2(b)の波形Bに示すように、変更開始前の酸素添加量に対する、変更期間中および変更期間後の所定期間中における所定時刻tでの酸素添加量の比率が、変更開始前の原燃料の供給流量に対する、上記所定時刻tでの原燃料の供給流量の比率と等量になるような酸素添加量は、一酸化炭素の選択酸化に十分な量ではないと言える。
【0041】
ここで、変更期間中(時刻t1から時刻t2の間)、および変更期間後の所定期間(時刻t2から時刻t3の間)中の所定時刻tでの酸素添加量Y(t)は、変更開始前の原燃料の供給流量に対する、所定時刻tでの原燃料の供給流量の比率:a(t)=a×tの関数として以下の数式で表すことができる。尚、燃料電池6の出力電力を低下させる運転を行う場合には、酸素の供給量を変更することは行わず、変更開始前の酸素添加量に対する変更開始後の酸素添加量の比率が、変更開始前の原燃料の供給流量に対する変更開始後の原燃料の供給流量の比率と等しくなる量の酸素が添加される。
【0042】
【数1】
Y=y(1+K×a(t)) (Kは比例定数)
a(t)=a×(t−t1) (t1≦t≦t2)
a(t)=a (t2<t≦t3)
【0043】
また、原燃料の供給流量の変更期間後の所定期間(時刻t2から時刻t3までの間)は、原燃料の供給流量が変更された後に改質処理反応が安定するまでの過渡状態期間であり、この期間中にも上記のように、時刻t2(変更期間の終端時点)での酸素添加量と等量の酸素が添加されることで、一酸化炭素の選択酸化工程中に、一酸化炭素を選択的に酸化させるために使用される酸素の添加量が不足するといった問題の発生を抑制することができる。
【0044】
更に、時刻t3は、改質処理に供される原燃料の供給流量の変更が行われた後の改質処理反応が安定した時刻であり、この後、一酸化炭素除去器5で行われる一酸化炭素の選択酸化工程には、変更開始前の酸素添加量に対する変更期間後の所定期間を経過した後(時刻t3以後)の酸素添加量の比率が、変更開始前の原燃料の供給流量に対する、変更期間の終端時点での原燃料の供給流量の比率:aと等しくなるような酸素添加量Y(ここで、Y/y=a)が供給される。
【0045】
また、時刻t2から時刻t3の期間(変更期間後の所定期間)の長さ:Tについても変更開始前の原燃料の供給流量に対する、変更期間の終端時点での原燃料の供給流量の比率:aを用いて以下の数式で表すことができる。
【0046】
【数2】
T=k×a (kは比例定数)
【0047】
図4に示すのは、原燃料の単位時間当たりの増加量が互いに異なる2つの場合を例として、時刻t1から時刻t2の期間(変更期間)および時刻t2から時刻t3の期間(変更期間後の所定期間)の酸素添加量、および時刻t2から時刻t3の期間(変更期間後の所定期間)の長さTについて説明する図である。
【0048】
図4(a)に示すのは、変更開始前(時刻t1)の原燃料の供給流量に対する、時刻t2での原燃料の供給流量の比率がbである場合の例であり、時刻t2から時刻t3の期間の長さはTbで表される。また、図4(b)に示すのは変更開始前(時刻t1)の原燃料の供給流量に対する、時刻t2での原燃料の供給流量の比率がb’である場合の例であり、時刻t2から時刻t3の期間の長さはTb'で表される。但し、b<b’である。
【0049】
この場合、図3を参照して説明したように、変更開始前の原燃料の供給流量に対する、変更期間後の原燃料の供給流量の比率が大きい程、改質処理反応が安定するまでの期間が長くなるのだが、本発明に係る水素含有ガス生成装置の運転方法では、数2に従って、変更開始前の原燃料の供給流量に対する、変更期間後の原燃料の供給流量の比率が大きい程、時刻t2から時刻t3の期間:Tが長くなるような設定が行われることで、改質処理反応が不安定な期間に過剰な量の酸素を供給して、上記水素含有ガス中の一酸化炭素を選択的に酸化させるために使用される酸素の量が不足するといった問題の発生を抑制することができる。
【0050】
尚、上述の数1および数2において、変更開始前の原燃料の供給流量に対する、変更後の原燃料の供給流量の比率:a(t)の関数としての酸素添加量:Yと、時刻t2から時刻t3の間の長さ:Tとの導出を行ったが、数1および数2に適用可能な上記比率:a(t)の等価量としては、変更前開始前の燃料電池6の直流電流出力に対する、変更期間後の燃料電池6の直流電流出力の比率がある。具体的には、燃料電池6の運転状態を、単位時間当たりに直流電流の最高出力量の50%の運転状態から75%の運転状態に変更する場合(1.5倍に変更する場合)、制御部7は、原燃料の供給流量を単位時間当たりに1.5倍に変更させる制御を行うことから、両者は等価であると言える。但し、原燃料の単位時間当たりの増加量:a以外の等価量を数1および数2に適用する場合には、数1および数2の係数K、kの値を適切に変更する必要がある。
【0051】
(実施例)
経過時間1秒の間(変更期間)に燃料電池6の直流電流出力を最高出力量の50%の運転から75%の運転(1.5倍)に変更する場合を例に具体例の説明を行う。つまり、数1および数2においてa=1.5とすることができる。尚、上述の実施形態と同様に、時刻t1から時刻t2の間を変更期間とし、時刻t2から時刻t3の間を変更期間後の所定期間とする。従って、上述の実施形態に基づくと、酸素添加量:Yと、変更期間後の所定期間の長さ:Tとは以下の数3で表すことができる。
【0052】
【数3】
Y=y×(1+K×1.5×(t−t1)) (t1≦t≦t2)
Y=y×(1+K×1.5) (t2<t≦t3)
Y=y×1.5 (t3<t)
T=t3−t2
【0053】
この場合、比例係数K、k、変更開始前の酸素添加量y、および変更開始後の所定期間の長さ:Tは既知であり、変更期間後の時刻tにおける酸素添加量Yを導出することができる。
【0054】
<別実施形態>
<1>
以上の実施形態では、原燃料の供給流量の変更が行われる変更期間中およびその変更期間後の所定期間中での酸素添加量が、変更開始前の原燃料の供給流量に対する、変更後の所定時刻での原燃料の供給流量の比率またはその等価量の関数として表される場合の例として、数1および図2の場合のように、酸素添加量が線形に変化される場合の例を説明したが、本発明における酸素添加量は上記の場合に限定されない。例えば、酸素添加量が、変更開始前の原燃料の供給流量に対する、変更後の所定時刻での原燃料の供給流量の比率またはその等価量の二次関数などに従って非線形に変化されるような場合でも構わない。
【0055】
<2>
時刻t3においてそれ以後の酸素添加量を、上述の実施形態で説明したように瞬時に減少させるのではなく、徐々に減少させても構わない。例えば、図5(c)に示すような酸素添加量の減少方法がある。尚、図5(a)および図5(b)は、図2(a)および図2(b)を参照して説明した酸素添加量の減少方法と同じグラフであるが図5(c)との違いを明確にするために図示している。ここで説明する図5(c)の場合、改質反応が安定した後の時刻t3ではなく、改質反応が安定し始める時刻t3’(t3’<t3)から徐々に酸素添加量を減少させている。ここで、時刻t3’以後のグラフの傾きで表される酸素添加量の減少割合は、改質反応の安定度合で調整される。
【0056】
その結果、図5(b)に示した場合と、図5(c)に示した場合の、時刻t1から時刻t4までの酸素添加量のそれぞれの合計値は、図5(c)に示した場合の方が少なくなる。従って、改質器3で生成された水素の余分な酸化反応が抑えられるため、一酸化炭素除去器5出口における水素含有ガス中の水素量を確保して、燃料電池での発電を安定に行うことができる。
【0057】
<3>
以上の実施形態では、一酸化炭素除去器5にのみ酸素を供給して一酸化炭素の選択酸化を行う場合について説明したが、他の装置に対して別途一酸化炭素除去触媒を設置し、それぞれで一酸化炭素の選択酸化を実施してもよい。例えば、燃料電池6に一酸化炭素除去器5と同様の設備を追加し、上述の実施形態において説明した一酸化炭素の選択酸化が燃料電池6においても実施されるような形態とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】水素含有ガス生成装置の構成図である。
【図2】(a)は原燃料の時間変化のグラフであり、(b)は一酸化炭素のモル数と供給される酸素のモル数の時間変化のグラフである。
【図3】原燃料の供給流量を変化させた場合の一酸化炭素の発生量の変化を示すグラフである。
【図4】(a)および(b)は、原燃料の単位時間当たりの増加量が異なる場合の、一酸化炭素のモル数と供給される酸素のモル数の時間変化のグラフである。
【図5】(a)は原燃料の時間変化のグラフであり、(b)は一酸化炭素のモル数と供給される酸素のモル数の時間変化のグラフであり、(c)は一酸化炭素のモル数と供給される酸素のモル数の別の時間変化のグラフである。
【符号の説明】
1 脱硫器
2 水蒸気生成器
3 改質器
4 変成器
5 一酸化炭素除去器
6 燃料電池
7 制御部
Claims (3)
- 原燃料を改質処理することにより生成された水素含有ガスに対して酸素を添加して、前記水素含有ガスに含まれる一酸化炭素を選択酸化させ、前記水素含有ガス中の一酸化炭素の濃度を所定濃度以下にまで低減させる一酸化炭素除去器を備えてなる水素含有ガス生成装置の運転方法であって、
改質処理に供される前記原燃料の供給流量が増加する変更が所定の変更期間を要して行われた場合、
変更開始前の酸素添加量に対する、前記変更期間中および前記変更期間後の所定期間中における所定時刻での酸素添加量の比率が、変更開始前の前記原燃料の供給流量に対する、前記所定時刻での前記原燃料の供給流量の比率よりも大きくなるように、前記変更期間中および前記所定期間中での酸素添加量が調整され、
前記所定期間を経過した後の酸素添加量は、変更開始前の酸素添加量に対する前記所定期間を経過した後の酸素添加量の比率が、変更開始前の前記原燃料の供給流量に対する、前記変更期間後の前記原燃料の供給流量の比率と等しくなる量に調整される水素含有ガス生成装置の運転方法。 - 原燃料を改質処理することにより生成された水素含有ガスに対して酸素を添加して、前記水素含有ガスに含まれる一酸化炭素を選択酸化させ、前記水素含有ガス中の一酸化炭素の濃度を所定濃度以下にまで低減させる一酸化炭素除去器を備えてなる水素含有ガス生成装置の運転方法であって、
改質処理に供される前記原燃料の供給流量が増加する変更が所定の変更期間を要して行われた場合、
変更開始前の酸素添加量に対する、前記変更期間中および前記変更期間後の所定期間中における所定時刻での酸素添加量の比率が、変更開始前の前記原燃料の供給流量に対する、前記所定時刻での前記原燃料の供給流量の比率よりも大きくなるように、前記変更期間中および前記所定期間中での酸素添加量が調整され、
前記所定期間の長さは、変更開始前の前記原燃料の供給流量に対する、前記変更期間の終端時点での前記原燃料の供給流量の比率またはその等価量の関数として表される長さに調整される水素含有ガス生成装置の運転方法。 - 前記変更期間中および前記所定期間中の酸素添加量は、変更開始前の前記原燃料の供給流量に対する、前記所定時刻での前記原燃料の供給流量の比率またはその等価量の関数として表される量に調整される請求項1又は2に記載の水素含有ガス生成装置の運転方法。
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