JP4072411B2 - 乾式磁性トナー - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真、静電荷像を顕像化するための画像形成方法及びトナージェットに使用される現像用トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真技術を用いた装置は、オリジナル原稿を複写する複写機だけでなく、コンピュータの出力としてのプリンタ、ファクシミリ等の分野でも広く使用されている。
【0003】
近年このような装置には、より小型、より軽量、より高速、そしてより高信頼性等の改良点が厳しく追求されてきており、このような装置は、様々な点でよりシンプルな要素で構成される傾向にある。その結果、トナーに要求される性能はより高度になり、トナーの性能向上が達成できなければ、より優れた装置の成立が困難な傾向にある。
【0004】
また、電子写真の現像方法において、種々の現像方法が実用化されており、中でもシンプルな構造の現像器でトラブルが少なく、寿命も長く、メンテナンスが容易であることから、磁性トナーを用いた一成分現像法が好ましく用いられている。このような現像方法では、磁性トナーの性能により画像形成の品質が大きく左右される。磁性トナーにおいては、磁性酸化鉄を含有させることでトナーに磁性を持たせていることから、磁性酸化鉄は磁性トナーの現像性及び耐久性に影響を与えている。
【0005】
このような技術的背景から、近年では、トナーの性能を向上させようとする様々な技術が提案されている。このような技術としては、トナーをエタノール/水混合溶液に分散させてその時の吸光度を測定し、磁性トナー表面に存在している磁性酸化鉄の量を知ることで、磁性トナーに起因する帯電ローラーの汚れや感光ドラムへの磁性トナーの融着がどの程度発生するかを簡便に知ることのできる技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、表面の磁性酸化鉄の量が少ないトナーは前記したような汚れや融着には効果があっても、磁性トナーの表面における磁性酸化鉄の存在状態が適正であるとは言えず、磁性トナー表面に磁性酸化鉄が少なすぎることによる磁性トナーの帯電不良や磁性トナーの帯電分布が不均一なことによる画質の低下などの問題点を有している。
【0006】
また、トナーに関しては、エタノールに対して一定の濡れ特性を有するトナーに関する技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。この濡れ特性は、トナーが有する疎水特性をエタノール滴下透過率曲線で表したもので、エタノール含有率に対する透過率を測定することにより求められる。このような特性を有するトナーは、ドラム融着防止や画像流れ抑制には効果があるが、トナーの表面における原材料の分散状態を十分には制御しきれておらず、トナーの表面状態に起因するトナーの帯電量の制御に関しては、改善の余地が残されている。
【0007】
また磁性トナー使用される磁性酸化鉄については、Si換算でFeに対して1.7〜4.5原子%のケイ素を含み、鉄以外の金属元素として、Mn、Zn、Ni、Cu、Al、Tiから選ばれる一種又は二種以上の金属元素をFeに対して0〜10原子%含むマグネタイト粒子が知られている(例えば、特許文献3及び4参照。)。このマグネタイト粒子によれば、磁性トナーの磁気特性及び帯電特性が改良されるが、単に上記金属を添加するだけでは、高速現像システムにおける現像性と画質の両立等の点については改善の余地が残されている。
【0008】
また、マグネタイト粒子としては、マグネタイト粒子の中心から表面へ連続的にケイ素成分を含有し、粒子表面にケイ素成分が露出し、かつケイ素成分と結合したZn、Mn、Cu、Ni、Co、Cr、Cd、Al、Sn、Mg、Tiの中から選ばれる少なくとも一種以上の金属成分からなる金属化合物によって粒子外殻を被覆したマグネタイト粒子が知られている(例えば、特許文献5参照。)。しかしこのようなマグネタイト粒子の使用では、特に高速現像システムにおいて、長期の使用に伴う画質や現像性の低下を改善するには至っておらず、さらに改良すべき点を有している。
【0009】
また、磁性酸化鉄としては、鉄元素を基準として、Mn、Zn、Ni、Cu、Co、Cr、Cd、Al、Sn及びMgからなるグループから選択される一種以上の金属元素の含有量、及びケイ素元素含有量、及び鉄元素溶解率20質量%までに存在するケイ素元素の含有比率、及び鉄元素溶解率10%までに存在するケイ素元素の含有比率を規定した磁性酸化鉄が知られている(例えば、特許文献6、7、及び8参照。)。このような磁性酸化鉄によれば、各種金属を磁性酸化鉄中に含有させるとともに、磁性酸化鉄中のSiの分布を規定することで、環境安定性に改善効果は見られるものの、高速現像システムにおける耐久性に関してはさらなる改良が望まれる。
【0010】
また、マグネタイト粒子としては、マグネタイト粒子の中心から表面へ連続的にケイ素成分とアルミニウム成分を含有し、粒子表面にそれら成分が露出し、かつケイ素成分及びアルミニウム成分と結合したZn、Mn、Cu、Ni、Co、Cr、Cd、Al、Sn、Mg、Tiの中から選ばれる少なくとも一種以上の金属成分からなる金属化合物によって粒子外殻を被覆したマグネタイト粒子が知られている(例えば、特許文献9参照。)。しかしながらこのマグネタイト粒子の使用では、未だ十分な帯電安定性を磁性トナーに付与するまでには至っていない。
【0011】
また、トナーの磁気特性については、マグネタイトの2価鉄を亜鉛、銅等の2価の金属に置き換えるなどしてトナーの飽和磁化を低下させる方法が知られている(例えば、特許文献10及び11参照。)。しかしながら、このような方法では、磁性体やトナーの磁気特性を制御するだけでは高速現像システムにおけるトナーの帯電量の制御を達成するには充分でない。
【0012】
【特許文献1】
特開平11−194533号公報
【特許文献2】
特開2000−242027号公報
【特許文献3】
特開平9−59024号公報
【特許文献4】
特開平9−59025号公報
【特許文献5】
特開平11−157843号公報
【特許文献6】
特開平11−316474号公報
【特許文献7】
特開平11−249335号公報
【特許文献8】
特開平11−282201号公報
【特許文献9】
特開平11−189420号公報
【特許文献10】
特開平4−184354号公報
【特許文献11】
特開平4−223487号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点を解消したトナーを提供することにあり、高速現像システムにおいてもトナーの帯電量の立ち上がりが速く、長期の使用においても画質の劣化、画像濃度の低下が生じず、さらに環境安定性に優れたトナーを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも結着樹脂及び磁性酸化鉄を有するトナーにおいて、結着樹脂は、ポリエステル樹脂を主成分として含有し、磁性酸化鉄は、Siと、Mg、Cu、Zn、Ti、及びAlから選ばれる少なくとも一つの元素である元素αとを含有し、磁性酸化鉄におけるSiの含有量は、磁性酸化鉄を基準として0.1〜2.0質量%であり、磁性酸化鉄における元素αの含有量は、磁性酸化鉄を基準として0.1〜4.0質量%であり、X線光電子分光法によって測定される磁性酸化鉄の最表面における元素αの原子濃度が1.00〜7.00%であり、メタノール及び水の混合溶媒に対するトナーの濡れ性を780nmの波長の光の透過率で測定した場合、透過率が80%のときのメタノール濃度が45〜65体積%の範囲内で、また、透過率が10%のときのメタノール濃度が45〜65体積%の範囲内である乾式トナーに関する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、ポリエステル樹脂を有する磁性トナーにおいて、磁性トナーの特定溶媒に対する濡れ性を制御し、かつ磁性酸化鉄の最表面に存在する特定の金属元素の原子濃度を制御することで、現像性、耐久性、流動性に極めて優れ、また高速現像においても優れた現像性が得られることを見出した。
【0016】
本発明の乾式トナーは、メタノール及び水の混合溶媒に対するトナーの濡れ性を780nmの波長の光の透過率で測定した場合、透過率が80%のときのメタノール濃度が45〜65体積%の範囲内で、また、透過率が10%のときのメタノール濃度が45〜65体積%の範囲内であることを特徴とする。このような特徴によれば、帯電特性が安定化し、低温低湿、高温高湿等の各環境下においても優れた現像性を示す乾式トナーが得られる。
【0017】
本発明の後述する実施例1の乾式トナーの、780nmの波長の光の透過率に対するメタノール濃度のグラフを図1に示す。透過率が80%を超える領域は乾式トナーがメタノールにほとんど濡れていないことを表しており、透過率が10%よりも低い領域は乾式トナーがほぼ完全に濡れていることを表している。
【0018】
本発明の乾式トナーのメタノールと水の混合溶媒(以下「メタノール−水混合溶媒」ともいう)に対する濡れ性は、トナー粒子の表面材料組成及びその存在状態により大きな影響を受ける。トナー粒子の表面に磁性酸化鉄の露出が少ないほど、すなわち結着樹脂成分によってトナー粒子表面が覆われている割合が多くなるほど、高いメタノール濃度でトナー粒子が濡れるようになる。トナー粒子表面の結着樹脂成分の比率が多くなるほど乾式トナーの帯電性が向上し、より高い現像性が得られるようになる。しかし逆に磁性酸化鉄の露出が少なすぎると、本発明の乾式トナーが適正な帯電性能を得られなくなり好ましくない。
【0019】
また、磁性酸化鉄の露出が多いほど、すなわち結着樹脂成分によってトナー粒子表面が覆われている割合が少ないほど、低いメタノール濃度でトナー粒子が濡れるようになる。トナー粒子表面の磁性酸化鉄の比率が多くなるほど、本発明の乾式トナーの帯電のリークサイトが増加するため、帯電量を保持しにくくなり良好な現像性が得られにくい。
【0020】
すなわち、図1に示すように、混合溶媒のメタノール濃度が45〜65体積%で透過率が80%に達し、かつメタノール濃度が45〜65体積%で透過率が10%に達することは、トナー粒子がメタノールに対する適度な濡れ性(水に対する疎水特性)を有することを意味し、トナー粒子中の表面材料組成及びその存在状態が均一であることを意味し、さらに帯電特性に優れた乾式トナーであることを意味する。
【0021】
本発明の乾式トナーのメタノール−水混合溶媒に対する濡れ性を780nmの波長の光の透過率で測定した場合、透過率が80%のときのメタノール濃度は45〜65体積%であり、好ましくは50〜65体積%であり、より好ましくは55〜65体積%の範囲内である。混合溶媒のメタノール濃度が上記範囲内にあることは、トナー粒子の表面に露出した結着樹脂と磁性酸化鉄の割合が適正な範囲内であることを示し、本発明の乾式トナーが適正な帯電量を保てることを示している。
【0022】
すなわち、露出した結着樹脂と磁性酸化鉄の割合が適正な範囲にあることは、結着樹脂成分が十分かつ適度にトナー粒子表面に存在して乾式トナーの帯電能力を高め、さらに磁性酸化鉄も適度に露出することで乾式トナーが過剰に帯電することを防ぐということを表している。
【0023】
透過率が80%のときのメタノール濃度が45体積%よりも低いと、磁性酸化鉄が表面に多く露出しているトナー粒子が数多く存在しているということとなり、帯電リークサイトが増加し、乾式トナーの帯電性が不十分となり、現像性に劣るようになる。透過率が80%のときのメタノール濃度が65体積%を超えると、磁性酸化鉄の表面への露出が少ないトナー粒子が数多く存在しているということとなり、乾式トナーが過剰に帯電しやすく、適正な帯電量を保てなくなることで画像濃度が低下しカブリが増加することがある。
【0024】
また、本発明の乾式トナーのメタノール−水混合溶媒に対する濡れ性を780nmの波長の光の透過率で測定した場合、透過率が10%のときのメタノール濃度は45〜65体積%であり、好ましくは50〜65体積%であり、より好ましくは55〜65体積%の範囲内である。混合溶媒のメタノール濃度が上記範囲内にあることは、ほとんどのトナー粒子の表面における結着樹脂と磁性酸化鉄の露出割合が適正な範囲となることを示しており、乾式トナーが適正な帯電量を保てることを示している。
【0025】
透過率が10%のときのメタノール濃度が45体積%よりも低いと、乾式トナー中のほとんどのトナー粒子において、表面に露出している磁性酸化鉄の割合が多いということとなり、乾式トナーの帯電が不十分となり、現像性に劣るようになる。透過率が10%のときのメタノール濃度が65体積%を超えると、表面に適正に磁性酸化鉄が露出したトナー粒子の割合が少ないということであり、乾式トナーが過剰に帯電しやすく、適正な帯電量を保てず、画像濃度が低下しカブリが増加することがある。
【0026】
本発明においては、前記透過率及びメタノール濃度の関係、すなわち乾式トナーの濡れ性、すなわち乾式トナーの疎水特性は、メタノール滴下透過率曲線を用いて測定する。具体的には、その測定装置として、例えば(株)レスカ社製の粉体濡れ性試験機WET−100Pが挙げられ、具体的な測定操作としては、以下に例示する方法が挙げられる。
【0027】
まず、メタノール40体積%と水60体積%とからなる含水メタノール液70mlを容器中に入れ、その測定用サンプル中の気泡等を除去するために超音波分散器で5分間分散を行う。この中に検体である乾式トナーを0.5g精秤して添加し、乾式トナーの疎水特性を測定するためのサンプル液を調製する。
【0028】
次に、この測定用サンプル液を6.67s-1の速度で攪拌しながら、メタノールを1.3ml/min.の滴下速度で連続的に添加し、波長780nmの光で透過率を測定し、図1に示したようなメタノール滴下透過率曲線を作製する。この際にメタノールを滴定溶媒としたのは、トナー粒子に含有される染料、顔料、荷電制御剤等の様々なトナー材料が溶出するおそれが少なく、乾式トナーの表面状態がより正確に観察できるためである。尚、この測定において、容器としては、底面の直径が5cmの円筒形で、厚さ1.75mmのガラス製のビーカーを用い、マグネティックスターラーとしては、長さ25mm、最大径8mmの紡錘形でありフッ素樹脂でコーティングを施されたものを用いた。
【0029】
なお、乾式トナーがメタノール濃度が40体積%未満で濡れる場合は、混合溶媒中に乾式トナーを添加し、攪拌しただけで波長780nmの光での透過率が急激に低下し0%に近づいてしまう。
【0030】
本発明の乾式トナーは、磁性酸化鉄を有する。この磁性酸化鉄は、Siと、Mg、Cu、Zn、Ti、及びAlから選ばれる少なくとも一つの元素である元素αとを含有し、磁性酸化鉄におけるSiの含有量は、磁性酸化鉄を基準として0.1〜2.0質量%であり、磁性酸化鉄における元素αの含有量は、磁性酸化鉄を基準として0.1〜4.0質量%であり、X線光電子分光法(XPS)によって測定される磁性酸化鉄の最表面における元素αの原子濃度が1.00〜7.00%であることを特徴としている。
【0031】
前記元素αは、Mg、Cu、Zn、Ti、及びAlから選ばれる少なくとも一つの元素であり、好ましくはMg、Zn、及びAlから選ばれる元素である。元素αの含有量は、磁性酸化鉄を基準として0.1〜4.0質量%であり、より好ましくは0.1〜2.0質量%である。
【0032】
前記元素αを含有する磁性酸化鉄は、トナー粒子表面への磁性酸化鉄粒子の露出具合等のバランスに優れており、トナーの帯電量を環境によらず高いままで保持することができる。さらにトナーの帯電量の分布が狭くなるようにコントロールする働きをもっている。その結果、現像剤担持体上に細くて短い穂を密に形成することが可能となり、高い画質(ドット再現性等)で高画像濃度の性能が得られる。
【0033】
元素αの含有量が0.1質量%未満であると、磁性酸化鉄自身の電気抵抗が下がり、トナーの帯電量を高温高湿のような環境下で保持しにくくなり、結果として朝一の画像濃度の低下につながることがある。また、元素αの含有量が0.1質量%未満であると、トナー粒子表面に磁性酸化鉄が露出しにくくなり、チャージアップによる濃度の低下やカブリの増加を招くことがある。
【0034】
元素αの含有量が4.0質量%より多いと、磁性酸化鉄自身の電気抵抗が上がりすぎ、カブリが増加することがある。また、トナーの帯電量の立ち上がりの速度が遅くなるため、トナーとしての帯電量の分布がブロードになりやすく、現像剤担持体上においてトナーの穂立ちが不均一になりドット再現性や紙上への飛び散りが悪化しやすい。
【0035】
さらに、本発明に用いられる磁性酸化鉄は、少なくともSiを含有する。磁性酸化鉄におけるSiの含有量は、磁性酸化鉄を基準として0.1〜2.0質量%であり、より好ましくは0.3〜1.8質量%である。
【0036】
Siの含有量が0.1質量%未満であると、トナーが所望の帯電量を得ることができず、また帯電量の立ち上がりも遅くなるため、画像濃度の低下を起こすことがある。Siの含有量が2.0質量%より多いと、トナーの帯電量が高すぎるため、チャージアップによる濃度の低下やカブリの増加を招くことがある。
【0037】
また、本発明に用いられる磁性酸化鉄は、X線光電子分光法(XPS)によって測定される最表面における元素αの原子濃度が1.00〜7.00%であり、より好ましくは1.00〜6.00%である。
【0038】
前記元素αの原子濃度が1.00%未満であると、磁性酸化鉄自身の表面電気抵抗が下がり、高温高湿のような環境下で乾式トナーの帯電量を保持しにくくなり、結果として朝一の画像濃度の低下につながることがある。また、最表面の元素αの原子濃度が1.00%未満であると、トナー粒子表面に磁性酸化鉄が露出しにくくなり、チャージアップによる濃度の低下やカブリの増加を招くことがある。最表面の元素αの濃度が7.00%より多いと、磁性酸化鉄自身の表面電気抵抗が上がりすぎ、カブリが増加することがある。
【0039】
ここで本発明の乾式トナーについて、その帯電量分布の観点から説明する。
高速現像システムにおける連続現像においては、現像剤担持体、いわゆる現像スリーブ上で規制ブレードによって規制された磁性トナーが迅速かつ均一に帯電することが特に求められる。それにより、高速な現像システムにおいても常に良好な画像を提供することができるのだが、磁性トナーが不均一に帯電し、帯電量の分布にばらつきがあると、連続で現像したときに、後の画像を現像する際に現像スリーブ上に供給された磁性トナーの帯電量と、現像スリーブ上の磁性トナーの帯電量とのばらつきが大きくなり、飛び散りの多い画像が発生してしまうことがある。さらに、現像スリーブ上においてトナーの穂立ちが不均一になりドット再現性が悪化する傾向にある。
【0040】
磁性トナーの帯電量分布は、磁性トナーの表面の材料分散性に大きな影響を受け、材料分散性の均一性が増すほど帯電量分布も均一になる。本発明では、乾式トナーの表面の材料分散性は、乾式トナーのメタノール−水混合溶媒に対する濡れ性の挙動を測定することによって知ることができる。表面の材料分散性が均一なほど、乾式トナーがメタノール−水混合溶媒に対して濡れ始めてから濡れ終わるまでのメタノールの濃度差は小さくなる。
【0041】
本発明においては、メタノール及び水の混合溶媒に対するトナーの濡れ性を780nmの波長の光の透過率で測定した場合、透過率が80%のときのメタノール濃度が45〜65体積%の範囲内で、また、透過率が10%のときのメタノール濃度が45〜65体積%の範囲内である。このように本発明の乾式トナーでは、透過率が80%のときのメタノール濃度と透過率が10%のときのメタノール濃度の濃度差が小さく、このことは、乾式トナーの帯電量分布が均一化し、乾式トナーに均一かつ高い帯電性を素早く付与することができることを示している。また本発明に用いられる磁性酸化鉄は、この効果をより促進することができる。
【0042】
なお、高い帯電性を有する磁性トナーは、流動性が悪くなり、現像スリーブ上で磁性トナーが局所的に微粉が凝集し易くなり、現像スリーブのコート状態が結果的に不均一になり、画像濃度の一様性や画質を低下させてしまうことがあるが、本発明においては、少なくとも磁性酸化鉄表面における元素αの原子濃度及び原子の比率をコントロールしているため、乾式トナー表面で磁性酸化鉄が帯電の均一化を促進し、この現象を防ぐことができる。
【0043】
本発明では適度なメタノール濡れ性を有することから、磁性酸化鉄は乾式トナーの表面に均一に露出している状態である。すなわち乾式トナー表面に磁性酸化鉄が露出する割合が少ない状態であるが、その磁性酸化鉄の最表面の鉄、シリカ、亜鉛の原子濃度及び原子比を制御することで、少ない露出量でより効果を発揮できる。また、そのことによりにより、乾式トナーの高くかつ均一な帯電性を損なうことなく乾式トナーに良好な流動性を付与することができ、機内昇温して乾式トナーがストレスにさらされ、トナー劣化が始まった場合にでも、現像性を維持でき画像劣化を効果的に防止することができる。
【0044】
また、そのことにより、乾式トナーの高くかつ均一な帯電性を損なうことなく乾式トナーに良好な流動性を付与することが可能となり、画像形成装置における機内温度が上昇して乾式トナーがストレスにさらされ、トナー劣化が始まった場合にでも、本発明では良好な現像性を維持でき、画像劣化を効果的に防止することができる。
【0045】
本発明においてトナーの帯電量分布に関して言及すると、前記透過率が80%のときのメタノール濃度が45体積%よりも低い、もしくは透過率が10%のときのメタノール濃度が45体積%よりも低いと、乾式トナーの帯電量分布がブロードになり、現像性に劣り、飛び散りや微小部のドット再現性が悪化することがある。透過率が80%のときのメタノール濃度が65体積%を超える、もしくは透過率が10%のときのメタノール濃度が65体積%を超えると、乾式トナーの帯電が過剰になる、もしくは乾式トナーの帯電量分布がブロードになり、不均一に帯電したトナー粒子が存在することとなり、画像濃度の一様性やドット再現性等画質が悪化することがある。
【0046】
本発明においては、磁性酸化鉄の最表面にMg、Cu、Zn、Ti、及びAlから選ばれる少なくとも一つの元素αとSiをある一定の比率で同時に存在させることが、磁性酸化鉄の通電性と電気抵抗のバランスをとり、トナーの帯電量を制御し、その結果、環境によらず高画像濃度、高画質な現像性を得る上で好ましい。
【0047】
すなわち、本発明では、X線光電子分光法(XPS)によって測定される前記磁性酸化鉄の最表面におけるSi原子の原子濃度が12.5〜17.5%(より好ましくは12.50〜17.00%)であり、Fe原子の原子濃度が70.00〜85.00%(より好ましくは75.00〜85.00%)であることが好ましい。
【0048】
また、本発明では、X線光電子分光法(XPS)によって測定される前記磁性酸化鉄の最表面において、Si原子に対する前記元素αの比、すなわち元素α/Siが0.05〜0.5(より好ましくは0.05〜0.40)であることが好ましく、Si原子に対するFe原子の比、すなわちFe/Siが3.00〜7.00(より好ましくは4.00〜7.00)であることが好ましく、元素αに対するFe原子の比、すなわちFe/元素αが10.0〜70.0(より好ましくは10.00〜65.00)であることが好ましい。
【0049】
最表面のSi原子の濃度が12.50%未満であると、乾式トナーが所望の帯電量を得ることができず、また帯電量の立ち上がりも遅くなり、このようなトナーで画像を形成したときに画像濃度の低下を起こすことがある。最表面のSi原子の濃度が17.50%より多いとトナーの帯電量が高すぎるため、チャージアップによる濃度の低下やカブリの増加を招くことがある。
【0050】
また、最表面のFe原子の濃度が70.00%未満であると磁性酸化鉄自身の表面の電気抵抗が下がり、乾式トナーの帯電量を高温高湿のような環境下で保持しにくくなり、結果として朝一の画像濃度の低下につながることがある。最表面のFe原子の濃度が85.00%より多いと乾式トナーの帯電量の立ち上がりの速度が遅くなるため、トナーとしての帯電量の分布がブロードになりやすく、現像剤担持体上においてトナーの穂立ちが不均一になりドット再現性や紙上への飛び散りが悪化することがある。
【0051】
また、前記元素α/Siが0.05未満の場合、乾式トナーの帯電量は高くなるものの、磁性酸化鉄自身の表面電気抵抗が低くなるため、チャージアップによる濃度の低下だけではなく、乾式トナーの帯電量を高温高湿のような環境下で保持しにくくなり、結果として朝一の画像濃度の低下につながることがある。元素α/Siが0.50より大きい場合、乾式トナーの帯電量の立ち上がりも遅くなるだけではなく、磁性酸化鉄自身の表面電気抵抗が上がりすぎ、カブリが増加することがある。
【0052】
また、前記Fe/Siが3.00未満の場合、乾式トナーの帯電量は高くなるものの、磁性酸化鉄自身の表面電気抵抗が低くなるため、チャージアップによる濃度の低下だけではなく、乾式トナーの帯電量を高温高湿のような環境下で保持しにくくなり、結果として朝一の画像濃度の低下につながることがある。Fe/Si比が7.00より大きい場合、乾式トナーが所望の帯電量を得ることができず、また帯電量の立ち上がりも遅くなり、画像濃度の低下を起こすことがある。さらに乾式トナーの帯電量の立ち上がりの速度が遅くなるため、乾式トナーとしての帯電量の分布がブロードになりやすく、現像剤担持体上においてトナーの穂立ちが不均一になりドット再現性や紙上への飛び散りが悪化することがある。
【0053】
また、前記Fe/元素αが10.00未満の場合、磁性酸化鉄自身の表面電気抵抗が上がりすぎ、カブリが増加することがある。Fe/元素αが70.00より大きい場合、磁性酸化鉄自身の電気抵抗が下がり、乾式トナーの帯電量を高温高湿のような環境下で保持しにくくなり、結果として朝一の画像濃度の低下につながることがある。さらに、トナー粒子表面に磁性酸化鉄が露出しにくくなり、チャージアップによる濃度の低下やカブリの増加を招くことがある。
【0054】
このように磁性酸化鉄最表面の原子の構成状態が上記範囲を外れた場合、磁性酸化鉄自身の電気抵抗と帯電性のバランスがとれなくなり、画像濃度の低下、カブリの悪化、ドット再現性や紙上への飛び散りの悪化につながることがあり好ましくない。
【0055】
本発明に用いられる磁性酸化鉄は、Si原子を含む適当な塩、及び元素αを含む適当な塩を用い、通常の磁性酸化鉄を製造する際に反応系内のpHを適切に調整することで製造することが可能である。元素αとして亜鉛を用いる場合を例に、本発明に使用される磁性酸化鉄の製造法について以下に説明する。
【0056】
本発明に係る磁性酸化鉄は、第一鉄塩水溶液に所定量のZnの金属塩及びケイ酸塩等を添加した後に、鉄成分に対して当量以上の水酸化ナトリウムの如きアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHをpH7以上(好ましくはpH8乃至10)に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性酸化鉄粒子の芯となる種晶をまず生成する。
【0057】
次に、種晶を含むスラリー状の液に、前に加えたアルカリの添加量を基準として第1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。その後、液のpHを6乃至10に維持しながら空気を吹き込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄粒子を成長させるわけであるが、本発明におけるような、磁性酸化鉄の最表面の元素の組成比を一定に保つことを特徴とする磁性酸化鉄では、酸化反応の進行をpHの調整と組み合わせて段階を追って進行させる。例えば、反応初期はpHを9から10に、反応中期にはpHを8〜9に、そして反応後期にはpHを6〜8にというように、酸化反応をpHにより段階的に進行させていくことで、磁性酸化鉄の最表面の組成比をより簡便にコントロールすることができる。また、酸化反応がすすむにつれて液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは6未満にしない方が好ましい。
【0058】
添加されるケイ素又は元素αを含む金属塩としては、例えばケイ素又は元素αの硫酸塩、硝酸塩、塩化物が挙げられる。またケイ素に関しては、ケイ酸塩として用いても良く、添加されるケイ酸塩としては、例えばケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムが挙げられる。
【0059】
第一鉄塩としては、一般的に硫酸法チタン製造に副生する硫酸鉄、銅板の表面洗浄に伴って副生する硫酸鉄を利用することが可能であり、さらに塩化鉄等も利用することが可能である。
【0060】
水溶液法による磁性酸化鉄の製造方法では、一般に反応時の粘度の上昇を防ぐこと、及び、硫酸鉄の溶解度から、鉄の塩は、鉄濃度にして0.5乃至2mol/リットル程度で用いられる。なお硫酸鉄の濃度は、一般に薄いほど製品の粒度が細かくなる傾向を有する。反応に際しては、空気量が多い程、そして反応温度が低いほど微粒化しやすい。
【0061】
上述の製造方法によれば、透過電子顕微鏡写真による観察で、磁性酸化鉄粒子が主に板状面を有さない曲面で形成された球形状粒子から構成され、八面体粒子を殆ど含まない磁性酸化鉄を生成することができ、本発明では、このような粒子形状の磁性酸化鉄を使用することが好ましい。
【0062】
さらに本発明において、磁性酸化鉄は、嵩密度が0.3乃至2.0g/cm3であることが好ましく、0.5乃至1.3g/cm3であることがより好ましい。嵩密度が0.3g/cm3未満の場合、トナー製造時におけるトナーの他の構成材料との物理的混合性に悪影響を及ぼしやすく、乾式トナー中の磁性酸化鉄の分散性が悪化する場合がある。
【0063】
さらに本発明において、磁性酸化鉄は、個数平均粒径が0.05乃至1.00μmであることが、結着樹脂中での磁性酸化鉄の分散性及び乾式トナーの帯電の均一性の点で好ましく、0.10乃至0.40であることがより好ましい。
【0064】
さらに本発明において、磁性酸化鉄は、BET比表面積が15.0m2/g以下、さらには12.0m2/g以下を満足することが好ましい。磁性酸化鉄粒子のBET比表面積が15.0m2/gを超える場合、磁性酸化鉄粒子の水分吸着性が増加し、該磁性酸化鉄粒子を含有した乾式トナーの吸湿性、帯電性に影響を及ぼす。
【0065】
さらに本発明において、磁性酸化鉄は、磁気特性としては磁場795.8kA/m下で飽和磁化が10〜200Am2/kg(より好ましくは70〜100Am2/kg)であることが好ましく、残留磁化が1〜100Am2/kg(より好ましくは2〜20Am2/kg)であることが好ましく、抗磁力が1〜30kA/m(より好ましくは2〜15kA/m)であることが好ましい。前記磁性酸化鉄が上記のような磁気特性を有することは、画像濃度とカブリのバランスのとれた良好な現像性を有する乾式トナーを得る上で好ましい。
【0066】
また、本発明の乾式トナーは、磁性酸化鉄を結着樹脂100質量部に対して、30〜150質量部含有していることが好ましい。磁性酸化鉄の含有量が30質量部よりも少ない場合には、現像時における乾式トナーの搬送性が不十分で現像剤担持体上の乾式トナー層にムラが生じ、画像ムラとなる場合がある。さらにトナー表面への磁性酸化鉄の露出度合いが減少するため、乾式トナーが過剰に帯電して適正な帯電量を保てなくなることで、画像濃度が低下しカブリが増加することがある。磁性酸化鉄の含有量が150質量部を超える場合には、表面に磁性酸化鉄が多く露出しているトナー粒子が数多く存在するため、帯電リークサイトが増加し、乾式トナーが十分に帯電できず現像性に劣るようになる。
【0067】
なお本発明において、磁性酸化鉄は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、チタネート、アミノシラン又は有機ケイ素化合物の如き表面処理剤で処理しても良い。
【0068】
本発明に用いられる磁性酸化鉄に関する各種物性データの好ましい測定法を以下に詳述する。
【0069】
(1)磁性酸化鉄最表面のX線光電子分光法(XPS)による分析
本発明において、磁性酸化鉄最表面の金属元素の組成比は、次のような方法によって求めることができる。例えば、磁性酸化鉄粉末を錠剤成型器を用いて9.807MPaで加圧しペレットを成型する。そのペレットを試料ホルダー上のカーボンシート上に固定し、例えば以下に示す測定装置及び測定方法によって測定する。
【0070】
Figure 0004072411
【0071】
磁性酸化鉄における表面の原子濃度は、測定された各元素のピーク強度より表面原子濃度を見積もり、その見積もった原子濃度から各原子の比率を算出することにより求められる。なお、表面原子濃度の計算には、アルバックファイ社提供の相対感度因子を用い、表面金属原子濃度の算出については、上記測定によって検出された全金属原子の原子濃度を100%に換算した後、各金属原子の濃度を算出する方法を用いることができる。
【0072】
(2)磁性酸化鉄中に存在する金属元素量の定量
本発明において、磁性酸化鉄中の鉄以外の金属元素の含有率(磁性酸化鉄を基準とする)は次のような方法によって求めることができる。例えば、5リットルのビーカーに約3リットルの脱イオン水を入れ、45乃至50℃になるようにウォーターバスで加温する。約400mlの脱イオン水でスラリーとした磁性酸化鉄約25gを約300mlの脱イオン水で水洗いしながら、前記脱イオン水と共に5リットルビーカー中に加える。
【0073】
次いで、温度を約50℃、撹拌スピードを約3.33s-1に保ちながら、特級塩酸又は塩酸とフッ化水素酸との混酸を加え、溶解を開始する。このとき塩酸水溶液を約3mol/リットルとする。すべて溶解して透明になった液を約20mlサンプリングし、0.1μmメンブランフィルターでろ過し、ろ液を採取する。ろ液をプラズマ発光分光(ICP)によって測定し、鉄元素及び鉄元素以外の金属元素の定量を行う。磁性酸化鉄を基準としたときの、鉄元素以外の金属元素の含有率は次式によって計算される。
【0074】
【数1】
磁性酸化鉄を基準としたときの金属元素の含有率(質量%)
={(c×d)/(e×1000)}×100
(ただし、式中cは採取したサンプル中の金属元素濃度(mg/l)であり、dは採取したサンプル量(l)であり、eは磁性酸化鉄重量(g)である。)
【0075】
(3)磁性酸化鉄の嵩密度
本発明に用いられる磁性酸化鉄の嵩密度は、JIS K 5101の顔料試験法に準じて測定することができる。
【0076】
(4)磁性酸化鉄の個数平均粒径
本発明に用いられる磁性酸化鉄の個数平均粒径は、透過電子顕微鏡写真(倍率30000倍)より、写真上の粒子を無造作に100個選び、その粒子径を計測し、その平均値から求めることができる。
【0077】
(5)磁性酸化鉄の比表面積
本発明に用いられる磁性酸化鉄の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置オートソープ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて算出することができる。
【0078】
(6)磁性酸化鉄の磁気特性
本発明に用いられる磁性酸化鉄の磁気特性は、例えば「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業社製)を用いて外部磁場795.8kA/mの下で測定することができる。
【0079】
本発明の乾式トナーは、結着樹脂を含有する。本発明では、結着樹脂はポリエステル樹脂を主成分として含有することを特徴とする。ここで「ポリエステル樹脂を主成分として含有する」とは、結着樹脂の60質量%以上にポリエステル樹脂を使用することを言う。副成分としては、結着樹脂として従来より知られている種々の樹脂化合物を用いることができる。
【0080】
ポリエステル樹脂は、公知のように、二価以上の多価アルコールと二価以上の多価有機酸類との縮重合によって得られ、一般的にその末端に極性をもつカルボキシル基を有するが、本発明においてはこのカルボキシル基が磁性酸化鉄中のMg、Cu、Zn、Ti、及びAlから選ばれる少なくとも一つの元素αと相互作用し、乾式トナー中における原材料の分散状態を向上させる。すなわち、本発明において結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いることで、相乗的に原材料の分散性が高められ、帯電量の分布が均一となり、高速現像システムにおいても現像性の優れた乾式トナーを得ることができるのである。
【0081】
以下に本発明で用いられるポリエステル樹脂を具体的に示す。ポリエステル樹脂は、全成分中45〜55mol%がアルコール成分であり、55〜45mol%が酸成分であることが好ましい。
【0082】
アルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、下記(B)式で表されるビスフェノール誘導体;下記(C)式で示されるジオール類;及び、グリセリン、ソルビット、ソルビタン等の三価以上の多価アルコール類等が挙げられる。
【0083】
【化1】
Figure 0004072411
【0084】
【化2】
Figure 0004072411
【0085】
また、酸成分としてはカルボン酸が好ましくは例示することができ、二価のカルボン酸としてはフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸類又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられ、また、三価以上のカルボン酸としてはトリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等が挙げられる。
【0086】
特に好ましいポリエステル樹脂のアルコール成分としては前記(B)式で示されるビスフェノール誘導体であり、酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸又はその無水物、コハク酸、n−ドデセニルコハク酸又はその無水物、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸の如きジカルボン酸類;トリメリット酸又はその無水物のトリカルボン酸類が挙げられる。
【0087】
これらの酸成分及びアルコール成分から得られたポリエステル樹脂を結着樹脂として使用することが、画像の定着において熱ローラ定着を用いる画像形成プロセスに本発明の乾式トナーを用いたときに、良好な定着性と優れた耐オフセット性とを実現する上で好ましい。
【0088】
本発明に用いられるポリエステル樹脂の酸価は10〜50mgKOH/gであることが好ましく、10〜45mgKOH/gであることがより好ましく、10〜40mgKOH/gであることがさらに好ましい。ポリエステル樹脂の酸価が50mgKOH/gより大きい場合、乾式トナーの帯電特性において環境依存性が大きくなり、乾式トナーの流動性、静電付着性、乾式トナーの表面抵抗(吸着水の影響)が変動し、画質の低下を生じる場合がある。樹脂の酸価が10mgKOH/gよりも小さい場合、磁性酸化鉄表面に存在するMg、Cu、Zn、Ti、及びAlから選ばれる少なくとも一つの元素αとの相互作用が弱まるため、乾式トナー中での原材料の分散性が悪化し、乾式トナーの帯電量の分布が広がるため、不均一に帯電したトナー粒子が存在することとなり、画像濃度の一様性やドット再現性等画質が悪化することがある。ポリエステル樹脂の酸価は、JIS K 0070に準じて公知の方法により測定することができる。
【0089】
また、本発明では結着樹脂として、従来より結着樹脂として知られている種々の樹脂化合物をポリエステル樹脂と併用することができ、このような樹脂化合物としては、例えばビニル系樹脂、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロインデン樹脂、石油系樹脂等が挙げられる。
【0090】
また本発明に用いられる結着樹脂のガラス転移温度は、50〜75℃であることが好ましく、55〜65℃であることがより好ましくい。さらに前記結着樹脂の数平均分子量(Mn)は、1,500〜50,000であることが好ましく、2,000〜20,000であることがより好ましくい。また前記結着樹脂の重量平均分子量(Mw)は、6,000〜100,000であることが好ましく、10,000〜90,000であることがより好ましい。
【0091】
結着樹脂のガラス転移温度が上記範囲よりも小さいと乾式トナーの保存安定性が不十分となることがあり、結着樹脂のガラス転移温度が上記範囲よりも大きいと乾式トナーの定着性が不十分となることがある。結着樹脂のガラス転移温度は、後述する示差走査熱量計を用いて測定することができる。
【0092】
また結着樹脂の数平均分子量及び重量平均分子量は、THF(テトラヒドロフラン)を溶媒としたGPC(ゲルパーミエションクロマトグラフィー)によって測定することができる。本発明において、トナー及び結着樹脂のTHF(テトラヒドロフラン)を溶媒としたGPCによる分子量分布は次の条件で測定される。
【0093】
試料は以下のようにして作製する。
まず試料をTHF中に入れ、数時間放置した後、十分振とうしTHFとよく混ぜ(試料の合一体が無くなるまで)、さらに12時間以上静置する。その時THF中への放置時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2〜0.5μm、例えばマイショリディスクH−25−2(東ソー社製)など使用できる。)を通過させたものをGPCの試料とする。又、試料濃度は、樹脂成分が0.5〜5mg/mlとなるように調整する。
【0094】
検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。またカラムとしては市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807、800Pの組み合わせや、東ソー社製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKgurd columnの組み合せを挙げることができる。
【0095】
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を約100μl注入して測定する。
【0096】
試料の分子量測定にあたっては試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント値との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては例えば、東ソー社製あるいは昭和電工社製の分子量が102〜107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。
【0097】
本発明の乾式トナーは、示差走査熱量計(DSC)により測定される昇温時のDSC曲線に少なくとも一つの吸熱ピークが存在し、前記吸熱ピークが60〜120℃に存在することが好ましい。この吸熱ピークは、65〜120℃に存在することがより好ましく、70〜115℃に存在することがさらに好ましい。吸熱ピークは二つ以上存在していてもよいが、その場合は60〜120℃に少なくとも一つの吸熱ピークを有することが好ましい。
【0098】
昇温時のDSC曲線からは、乾式トナーの吸熱に伴う融解挙動を見ることができる。吸熱ピークが60〜120℃に存在すると、乾式トナーを加熱溶融混練したときに十分に粘度が下がり、磁性酸化鉄が良好に分散することができ、乾式トナーの帯電性を安定させる上で好ましい。
【0099】
本発明の乾式トナーの吸熱ピークは、適当なワックスを選択して乾式トナーに含有させることによって所望の吸熱ピークを得ることができる。このような吸熱ピークを乾式トナーに付与することができるワックスは、その溶融特性から、乾式トナー表面において高い疎水性を乾式トナーに付与しやすく、本発明の特徴とする濡れ性を乾式トナーに付与する上で効果的である。
【0100】
本発明においては、乾式トナーのDSC曲線は、示差走査熱量計(DSC測定装置)、例えばDSC−7(パーキンエルマー社製)やDSC2920(TAインスツルメンツジャパン社製)を用い、ASTM D3418−82に準じて測定することができる。DSC曲線は、一回昇温、降温させ、前履歴を取った後、昇温速度10℃/minで昇温させたときに測定されるDSC曲線を用いる。結着樹脂のガラス転移点に伴うピークは、例えば結着樹脂のみを測定するなどして区別することができる。
【0101】
本発明の乾式トナーは、前述した結着樹脂及び磁性酸化鉄以外の材料として種々の材料を含有していても良い。このよう他の材料として、前述したワックスや荷電制御剤等が挙げられる。
【0102】
本発明に用いられるワックスとしては様々なワックスが挙げられ、例えば低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;又は、それらのブロック共重合物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろうの如き植物系ワックス;みつろう、ラノリン、鯨ろうの如き動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムの如き鉱物系ワックス;モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの如き脂肪族エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪族エステルを一部又は全部を脱酸化したものが挙げられる。
【0103】
さらに前記ワックスとしては、例えばパルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、或いはさらに長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルカルボン酸類の如き飽和直鎖脂肪酸;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸;ステアリルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、カウナビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、或いはさらに長鎖のアルキル基を有するアルキルアルコールの如き飽和アルコール;ソルビトールの如き多価アルコール;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪族アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪族ビスアミド;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物等が挙げられる。
【0104】
また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法又は融液晶析法を用いて分子量分布をシャープにしたものや低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものも好ましく用いられる。
【0105】
また、本発明においては、荷電制御剤を添加して使用することが好ましい。本発明では、荷電制御剤として負荷電性及び正荷電性のいずれの荷電制御剤も用いることができる。
【0106】
負荷電制御剤の具体例としては、特公昭41−20153号公報、特公昭42−27596号公報、特公昭44−6397号公報、特公昭45−26478号公報等に記載されているモノアゾ染料の金属錯体、さらには特開昭50−133838号公報に記載されているニトロフミン酸及びその塩或いはC.I.14645等の染顔料、特公昭55−42752号公報、特公昭58−41508号公報、特公昭58−7384号公報、特公昭59−7385号公報等に記載されているサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸のZn、Al、Co、Cr、Fe、及びZr等の金属錯体、スルホン化した銅フタロシアニン顔料、ニトロ基、ハロゲンを導入したスチレンオリゴマー、塩素化パラフィン等を挙げることができる。
【0107】
特に分散性に優れ、画像濃度の安定性やカブリの低減に効果のある、一般式(I)で表されるアゾ系金属錯体や一般式(II)で表される塩基性有機酸金属錯体が好ましい。
【0108】
【化3】
Figure 0004072411
【0109】
【化4】
Figure 0004072411
【0110】
そのうち上記式(I)で表されるアゾ系金属錯体がより好ましく、とりわけ、中心金属がFeである下記式(III)あるいは(IV)で表されるアゾ系鉄錯体が最も好ましい。
【0111】
【化5】
Figure 0004072411
【0112】
【化6】
Figure 0004072411
【0113】
上記式(III)で示されるアゾ系鉄錯体の具体例である下記式(1)〜(6)の化合物を示す。
【0114】
【化7】
Figure 0004072411
【0115】
【化8】
Figure 0004072411
【0116】
【化9】
Figure 0004072411
【0117】
【化10】
Figure 0004072411
【0118】
【化11】
Figure 0004072411
【0119】
【化12】
Figure 0004072411
また、上記式(I)、(II)、(IV)で示される荷電制御剤の具体例である下記式(7)〜(13)の化合物を示す。
【0120】
【化13】
Figure 0004072411
【0121】
【化14】
Figure 0004072411
【0122】
【化15】
Figure 0004072411
【0123】
【化16】
Figure 0004072411
【0124】
【化17】
Figure 0004072411
【0125】
【化18】
Figure 0004072411
【0126】
【化19】
Figure 0004072411
【0127】
これらの金属錯化合物は、単独でも或いは二種以上組み合わせて用いることが可能である。
【0128】
これらの荷電制御剤の使用量は、荷電制御剤の種類によっても異なるが、トナーの帯電量の点から、結着樹脂100質量部当たり0.1〜5.0質量部が一般に好ましい。
【0129】
一方、乾式トナーを正荷電性に制御する荷電制御剤としては、例えばニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料、(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物等)高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート類;これらを単独で或いは二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0130】
また、本発明の乾式トナーには、前述した結着樹脂や磁性酸化鉄等の材料で構成されるトナー粒子に外添剤を添加することが好ましい。このような外添剤としては、例えば無機微粉体及び疎水性無機微粉体等が挙げられ、特に好ましい外添剤としてはシリカ微粉末が挙げられる。
【0131】
本発明に用いられるシリカ微粉体は、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両方が使用可能であるが、表面及び内部にあるシラノール基が少なく、製造残渣のない乾式シリカの方が好ましい。
【0132】
さらに本発明に用いるシリカ微粉体は、疎水化処理されているものが好ましい。疎水化処理には、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物等の疎水性の化合物で化学的に処理する方法が好ましい方法として挙げられる。より好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカ微粉体を、シラン化合物で処理した後、あるいはシラン化合物で処理すると同時に、シリコーンオイルの如き有機ケイ素化合物で処理する方法が挙げられる。
【0133】
疎水化処理に使用されるシラン化合物としては、例えばヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシランメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
【0134】
有機ケイ素化合物としては、シリコーンオイルが挙げられる。シリコーンオイルとしては、25℃における粘度がおよそ3×10-5〜1×10-32/sのものが好ましく、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等が好ましい。
【0135】
シリコーンオイルを用いる外添剤の表面疎水化処理の方法としては、例えばシラン化合物で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合しても良いし、ベースとなるシリカへシリコーンオイルを噴射する方法によっても良い。あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、ベースのシリカ微粉体とを混合し、溶剤を除去する方法であっても良い。
【0136】
前記無機微粉体及び疎水性無機微粉体の添加量は、その種類や所期の機能等によっても異なるが、トナー粒子100質量部に対して0.1〜5質量部(好ましくは、0.1〜3質量部)であることが好ましい。
【0137】
本発明の乾式トナーには、シリカ微粉体等の前記無機微粉体以外の外添剤を必要に応じて添加してもよい。このような他の外添剤としては、例えば帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、滑剤、研磨剤等の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子である。
【0138】
より具体的には、例えばフッ素系樹脂、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデンの如き滑剤、中でもポリフッ化ビニリデンが好ましい。或いは酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、中でもチタン酸ストロンチウムが好ましい。或いは例えば酸化チタン、酸化アルミニウム等の流動性付与剤、中でも特に疎水性のものが好ましい。ケーキング防止剤、或いは例えばカーボンブラック、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化スズ等の導電性付与剤、また逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。
【0139】
本発明の乾式トナーは、静電荷像を現像する為に使用されるトナー粒子を生成する通常の方法を用いて製造することが可能である。本発明の乾式トナーの材料としては、前述した結着樹脂及び磁性酸化鉄を少なくとも用い、さらに必要に応じて着色剤、ワックス、荷電制御剤等の他の材料が用いられる。より具体的には、本発明の乾式トナーは、これらの材料をヘンシェルミキサー又はボールミルの如き混合機により十分混合してから、ロール、ニーダー及びエクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融、捏和及び混練して樹脂類を互いに相溶せしめた中に、顔料又は染料を分散又は溶解せしめ、冷却固化後、粉砕及び分級を行うことにより製造することができる。
【0140】
本発明の乾式トナーの製造には、公知の装置を用いることができ、例えば混合機としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)が挙げられる。
【0141】
また混練機としては、例えばKRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)が挙げられる。
【0142】
また粉砕機としては、例えばカウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング)が挙げられる。
【0143】
また分級機としては、例えばクラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日新エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボプレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)が挙げられる。
【0144】
また粗粒等をふるい分けるために用いられる篩い装置としては、例えばウルトラソニック(晃栄産業社製);レゾナシーブ、ジャイロシフター(徳寿工作所社);バイブラソニックシステム(ダルトン社製);ソニクリーン(新東工業社製);ターボスクリーナー(ターボ工業社製);ミクロシフター(槙野産業社製);円形振動篩い等が挙げられる。
【0145】
本発明の乾式トナーは、前述したような公知の方法及び公知の装置によって製造することができるが、本発明の特徴の一つであるトナーの透過率とメタノール濃度との関係、すなわち濡れ性を達成する製造法としての一つとして、本発明においては、図2、図3及び図4に示したような機械式粉砕機を用いることが、粉体原料の粉砕処理及び表面処理を行い、かつ効率向上を図る観点から好ましい。
【0146】
この粉砕機において、粉砕時の温度を調整し、結着樹脂の主成分としてポリエステル樹脂を用い、かつ本発明の組成を有する磁性酸化鉄を用いることで、乾式トナーの表面の磁性酸化鉄の表面状態を制御できる。
以下、図2、図3及び図4に示す機械式粉砕機について説明する。
【0147】
図2は、本発明の乾式トナーを製造する際に使用される機械式粉砕機の一例の概略断面図を示しており、図3は図2におけるD−D’面での概略的断面図を示しており、図4は図2に示す回転子314の斜視図を示している。前記装置は、図2に示されているように、ケーシング313、ジャケット316、ディストリビュータ220、ケーシング313内にあって中心回転軸312に取り付けられた回転体で表面に多数の溝が設けられている回転子314、表面に多数の溝が設けられており回転子314の外周に一定間隔を保持して配置されている固定子310、さらに、被処理原料を導入するための原料投入口311、処理後の粉体を排出する為の原料排出口302とから構成されている。
【0148】
通常、粉砕原料を機械式粉砕機で粉砕する際には機械式粉砕機の渦巻き室212の温度T1や後室320の温度T2の温度を制御し、樹脂のTg以下で粉砕を行い、表面改質を行わない方法を選択している。しかし、本発明の乾式トナーを製造する場合では、本発明の特徴とする性質の乾式トナーを得るために、原料排出口302の温度をTgに対して−25〜−5℃の範囲となる温度に設定し、実際の粉砕状態ではTgの−20〜±0℃の温度にして、粉砕後乾式トナー表面に存在する磁性酸化鉄の一部を樹脂が覆う状態となるように粉砕を行う。それにより、乾式トナー表面での原材料の存在分布が適正な値となりやすく、このような粉砕を行うことが、本発明の特徴とする疎水特性を乾式トナーに付与する上で好ましい。
【0149】
【実施例】
本発明の基本的な構成と特色について以上に述べたが、実施例に基づき具体的に本発明について以下に説明する。しかしながら本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。実施例中の部数は質量部である。実施例に用いられる結着樹脂を表1に、ワックスを表2に、磁性酸化鉄粒子を表3に記す。表1に記載された結着樹脂としてのポリエステル樹脂は脱水縮合法により合成した。磁性酸化鉄粒子の製造方法については以下のとおりである。
【0150】
【表1】
Figure 0004072411
【0151】
【表2】
Figure 0004072411
【0152】
【表3】
Figure 0004072411
【0153】
<磁性酸化鉄粒子の製造例1>
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄元素に対しケイ素元素の含有量が0.48%となるようにケイ酸ソーダを添加した後、苛性ソーダ溶液を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液のpHを10に調整しながら空気を吹き込み、80乃至90℃で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリー液を調製した。
【0154】
種晶の生成が確認されたら、このスラリー液にさらに硫酸第一鉄水溶液を適宜加え、スラリー液のpHを10に調整しながら空気を吹き込み酸化反応を進めた。その間に、未反応の水酸化第一鉄濃度を調べながら反応の進行率を調べつつ、適宜硫酸亜鉛を加え、さらに水溶液のpHを酸化反応の初期はpHを9に、反応中期にはpHを8に、反応後期にはpHを6にというように段階的に調整することで磁性酸化鉄内での金属元素の分布を制御し、酸化反応を完結させた。生成した磁性酸化鉄粒子を常法により洗浄、ろ過乾燥した。得られた磁性酸化鉄粒子の一次粒子は、凝集して凝集体を形成しているので、ミックスマーラーを使用して磁性酸化鉄粒子の凝集体に圧縮力及びせん断力を付与して、前記凝集体を解砕して磁性酸化鉄粒子を一次粒子にすると共に、磁性酸化鉄粒子の表面を平滑にし、表3に示すような特性を有する磁性酸化鉄1を得た。
【0155】
<磁性酸化鉄粒子の製造例2〜5>
ケイ酸ソーダの添加量、他種元素αの塩の添加量、添加時期、及び種類の少なくともいずれかを変えた以外は製造例1と同様にして、表3に示す物性を有する磁性酸化鉄2〜5を得た。
【0156】
<磁性酸化鉄粒子の製造例6>
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄元素に対しケイ素元素の含有量が0.40%となるようにケイ酸ソーダを添加した後、苛性ソーダ溶液を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液のpHを10に調整しながら空気を吹き込み、80乃至90℃で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリー液を調製した。
【0157】
種晶の生成が確認されたら、このスラリー液にさらに硫酸第一鉄水溶液を適宜加え、スラリー液のpHを10に調整しながら空気を吹き込み酸化反応を進めた。その間に、未反応の水酸化第一鉄濃度を調べながら反応の進行率を調べつつ、適宜硫酸マグネシウムを加え、さらに水溶液のpHを8に調整しながら酸化反応を完結させた。生成した磁性酸化鉄粒子を常法により洗浄、ろ過乾燥した。得られた磁性酸化鉄粒子の一次粒子は、凝集して凝集体を形成しているので、ミックスマーラーを使用して磁性酸化鉄粒子の凝集体に圧縮力及びせん断力を付与して、前記凝集体を解砕して磁性酸化鉄粒子を一次粒子にすると共に、磁性酸化鉄粒子の表面を平滑にし、表3に示すような特性を有する磁性酸化鉄6を得た。
【0158】
<実施例1>
・結着樹脂A 100質量部
・磁性酸化鉄1 90質量部
・ワックスd 4質量部
・下記構造式に示す荷電制御剤A 2質量部
上記混合物を、140℃に加熱された二軸エクストルーダで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕し、得られた粗粉砕物をターボミル(ターボ工業社製)で機械式粉砕により微粉砕し、得られた微粉砕粉を固定壁型風力分級機で分級して分級粉を得た。さらに、得られた分級粉を、コアンダ効果を利用した多分割分級装置(日鉄鉱業社製エルボジェット分級機)で分級し、超微粉及び粗粉を同時に厳密に分級除去して、重量平均粒径(D4)6.5μmの負帯電性トナー粒子を得た。
【0159】
【化20】
Figure 0004072411
【0160】
この得られたトナー粒子100質量部に対し、ヘキサメチルジシラザン15wt%とジメチルシリコーン15wt%で疎水化処理したメタノールウェッタビリティ80%、BET比表面積120m2/gの疎水性シリカ微粉体を1.3質量部とチタン酸ストロンチウム1.0質量部とを外添混合してトナー1を調整した。トナー内添処方及び物性を表4に、トナー1の、780nmの波長の光の透過率に対するメタノール濃度のグラフを図1に示す。
【0161】
このトナー1を、市販のLBPプリンタ(LeserJet 4100、HP社製)を1.5倍のプリントスピードに改造し、これを画出し試験機として、15℃、10%RHの環境、23℃、60%RHの環境と30℃、80%RHの環境で1万枚のプリント試験を行った。この際、ページ内の画像濃度一様性については、高温高湿環境下でのプリントアウト画像内での、画像濃度の最高値と最低値の差によりページ内の画像濃度一様性を判断した。
【0162】
画像濃度は、マクベス濃度計(マクベス社製)でSPIフィルターを使用して、5mm角の画像を反射濃度測定することにより測定した。カブリは、反射濃度計(リフレクトメーター モデル TC−6DS 東京電色社製)を用いて画像形成前後の転写材を測定し、画像形成後の白地部反射濃度最悪値をDs、画像形成前の転写材の反射平均濃度をDrとし、Ds−Drを求め、これをカブリ量として評価した。数値の少ない方がカブリが抑制されていることを示す。これらの評価を、初期、10000枚時、機外に一日放置した後のそれぞれの時期に行った。
【0163】
帯電量の立ち上がりの評価については、上記画出し試験機を用いて15℃、10%RHの環境で4ドットの横ラインを176ドットスペースおきに印字した横ラインパターンを、10秒に1枚の間隔で画出しする間欠プリント試験を行い、1枚目、3枚目、7枚目、15枚目、50枚目、100枚時に5mm角の画像をサンプリングし、画像濃度を測定した。画出し枚数の早いうちから高い画像濃度が得られているものほど帯電量の立ち上がりが早いと言える。
【0164】
画質の評価については、上記画出し試験機を用いて、常温常湿環境(23℃、60%RH)で1200dpiの孤立した1ドットのパターンを画出しし、光学顕微鏡で画像を観察してドット再現性を以下の基準により評価した。
A:潜像からのトナーのはみ出しが全くなく、ドットを完全に再現している
B:潜像からのトナーのはみ出しが少しある
C:潜像からのトナーのはみ出しが多い
【0165】
尾引きについては、上記画出し試験機を用いて、4ドットの横ラインを20ドットスペースに印字したパターンを画出しし、ライン上で尾を引いた数を数え、以下の基準により評価した。
A:発生なし
B:3個未満
C:3〜7個未満
D:7〜15個未満
E:15個以上
【0166】
画像飛び散りについては、上記画出し試験機を用いて、4ドットの横ラインを176ドットスペースおきに印字した横ラインパターンを、10秒に1枚の間隔で画出しする間欠プリント試験を行い、10000枚目の画像飛び散りを以下の基準により評価した。
A:拡大観察によっても画像飛び散りの少ない画像
B:拡大観察により飛び散りが見られるが、目視では見えない
C:飛び散りにより、文字が多少にじむ
D:飛び散りにより、ラインの太さにむらが出る
E:飛び散りにより、細かな文字の一部につぶれが見られる
【0167】
また、得られたトナーを温度40℃、湿度90%RHの環境下に30日間放置し、その後通常環境下(温度23℃、湿度60%RH)で、上記画出し試験機を用いて500枚の画出し試験を行った。そのときの500枚目の画像濃度及びカブリの評価を表6に示す。
【0168】
<実施例2〜7、比較例1>
表4に記載の処方で実施例1と同様にトナー2〜8を作製した。表中の荷電制御剤B及び荷電制御剤Cの構造式を以下に示す。またこれらのトナーを用いて実施例1と同様の試験を行った。結果を表5、6、7、8、9に示す。
【0169】
【化21】
Figure 0004072411
【0170】
【化22】
Figure 0004072411
【0171】
<比較例2>
分級後に得られたトナー粒子を、300℃の熱風中を瞬間的に通過させる処理を行った以外は、表4に記載の処方で実施例1と同様にトナー9を作製した。このトナー9を用いて実施例1と同様の試験を行った。結果を表5、6、7、8、9に示す。
【0172】
<比較例3>
粉砕工程では、衝突式気流粉砕による微粉砕機を用いた以外は、表4に記載の処方で実施例1と同様にトナー10を作製した。このトナー10を用いて実施例1と同様の試験を行った。結果を表5、6、7、8、9に示す。
【0173】
【表4】
Figure 0004072411
【0174】
【表5】
Figure 0004072411
【0175】
【表6】
Figure 0004072411
【0176】
【表7】
Figure 0004072411
【0177】
【表8】
Figure 0004072411
【0178】
【表9】
Figure 0004072411
【0179】
【発明の効果】
本発明によれば、少なくとも結着樹脂及び磁性酸化鉄を有するトナーにおいて、結着樹脂は、ポリエステル樹脂を主成分として含有し、磁性酸化鉄は、Siと、Mg、Cu、Zn、Ti、及びAlから選ばれる少なくとも一つの元素である元素αとを含有し、磁性酸化鉄におけるSiの含有量は、磁性酸化鉄を基準として0.1〜2.0質量%であり、磁性酸化鉄における元素αの含有量は、磁性酸化鉄を基準として0.1〜4.0質量%であり、X線光電子分光法によって測定される磁性酸化鉄の最表面における元素αの原子濃度が1.00〜7.00%であり、メタノール及び水の混合溶媒に対するトナーの濡れ性を780nmの波長の光の透過率で測定した場合、透過率が80%のときのメタノール濃度が45〜65体積%の範囲内で、また、透過率が10%のときのメタノール濃度が45〜65体積%の範囲内であることから、高温高湿、低温低湿のような厳しい環境下における高速現像においても長期の使用において高い現像性を維持し、帯電量の立ち上がりの速い、高画質でありかつ、良好な現像性、環境安定性を持つことができるトナーを得ることができる。
【0180】
また本発明では、メタノール及び水の混合溶媒に対するトナーの濡れ性を780nmの波長の光の透過率で測定した場合、透過率が80%のときのメタノール濃度が50〜65体積%の範囲内で、また、透過率が10%のときのメタノール濃度が50〜65体積%の範囲内であると、乾式トナーの帯電量を適正に保ち、カブリを防止し、かつ画像濃度の高い良好な画像を形成する上でより一層効果的である。
【0181】
また本発明では、示差走査熱量計により測定されるトナーの昇温時のDSC曲線に少なくとも一つの吸熱ピークが存在し、吸熱ピークが60℃〜120℃に存在すると、トナー粒子中に磁性酸化鉄を良好に分散させ、乾式トナーの帯電性を安定させる上でより一層効果的である。
【0182】
また本発明では、ポリエステル樹脂の酸価が10〜50mgKOH/gであると、乾式トナーの帯電性を安定させ、かつ環境変化によらない安定した良好な画像を形成する上でより一層効果的である。
【0183】
また本発明では、磁性酸化鉄におけるSiの含有量は、磁性酸化鉄を基準として0.3〜1.8質量%であると、乾式トナーを適度にかつすばやく帯電させる上でより一層効果的である。
【0184】
また本発明では、磁性酸化鉄における元素αの含有量は、磁性酸化鉄を基準として0.1〜2.0質量%であると、環境変化によらず乾式トナーを十分に帯電させ、高画質及び高画像濃度の良好な画像を形成する上でより一層効果的である。
【0185】
また本発明では、元素αがMg、Al、及びZnから選ばれる元素であると、環境変化によらず乾式トナーを十分に帯電させ、高画質及び高画像濃度の良好な画像を形成する上でより一層効果的である。
【0186】
また本発明では、X線光電子分光法によって測定される磁性酸化鉄の最表面におけるSi原子の原子濃度が12.5〜17.5%であり、Fe原子の原子濃度が70.00〜85.00%であると、磁性酸化鉄の通電性と電気抵抗のバランスをとり、乾式トナーの帯電量を制御し、その結果、環境によらず高画像濃度、高画質な現像性を得る上でより一層効果的である。
【0187】
また本発明では、X線光電子分光法によって測定される磁性酸化鉄の最表面の原子濃度において、Si原子に対する元素αの比が0.05〜0.5であり、Si原子に対するFe原子の比が3.00〜7.00であり、元素αに対するFe原子の比が10.0〜70.0であると、磁性酸化鉄の通電性と電気抵抗のバランスをとり、乾式トナーの帯電量を制御し、その結果、環境によらず高画像濃度、高画質な現像性を得る上でより一層効果的である。
【0188】
また本発明では、磁性酸化鉄を結着樹脂100質量部に対して30〜150質量部含有していると、良好な帯電性と現像性とを両立させ、良好な画像を形成する上でより一層効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1におけるトナー1の、メタノール濃度に対する波長の光780nmの透過率を示したグラフである。
【図2】本発明の乾式トナーを製造する際に使用され得る機械式粉砕機の概略断面図である。
【図3】図2に示す機械式粉砕機をD−D’面に沿って切断して示す概略的断面図である。
【図4】図2に示す回転子の斜視図である。
【符号の説明】
212 渦巻き室
219 パイプ
220 ディストリビュータ
222 バグフィルター
224 吸引ブロワ
229 捕集サイクロン
301 機械式粉砕機
310 固定子
311 原料投入口
312 中心回転軸
313 ケーシング
314 回転子
315 定量供給機
316 ジャケット
320 後室

Claims (7)

  1. 少なくとも結着樹脂及び磁性酸化鉄を有するトナーにおいて、
    前記結着樹脂は、ポリエステル樹脂を主成分として含有し、
    前記磁性酸化鉄は、Siと、Mg、又は、Znとを含有し、
    前記磁性酸化鉄におけるSiの含有量は、磁性酸化鉄を基準として0.1〜2.0質量%であり、
    前記磁性酸化鉄におけるMg、又は、Znの含有量は、磁性酸化鉄を基準として0.1〜4.0質量%であり、
    X線光電子分光法によって測定される前記磁性酸化鉄の最表面におけるMg、又は、Znの原子濃度が1.00〜7.00%であり、
    メタノール及び水の混合溶媒に対するトナーの濡れ性を780nmの波長の光の透過率で測定した場合、透過率が80%のときのメタノール濃度が45〜65体積%の範囲内で、また、透過率が10%のときのメタノール濃度が45〜65体積%の範囲内であり、
    前記磁性酸化鉄を結着樹脂100質量部に対して30〜150質量部含有していることを特徴とする乾式磁性トナー。
  2. メタノール及び水の混合溶媒に対するトナーの濡れ性を780nmの波長の光の透過率で測定した場合、透過率が80%のときのメタノール濃度が50〜65体積%の範囲内で、また、透過率が10%のときのメタノール濃度が50〜65体積%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の乾式磁性トナー。
  3. 前記ポリエステル樹脂の酸価が10〜50mgKOH/gであることを特徴とする請求項1又は2に記載の乾式磁性トナー
  4. 前記磁性酸化鉄におけるSiの含有量は、磁性酸化鉄を基準として0.3〜1.8質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の乾式磁性トナー
  5. 前記磁性酸化鉄におけるMg、又は、Znの含有量は、磁性酸化鉄を基準として0.1〜2.0質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の乾式磁性トナー
  6. X線光電子分光法によって測定される前記磁性酸化鉄の最表面におけるSi原子の原子濃度が12.5〜17.5%であり、Fe原子の原子濃度が70.00〜85.00%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の乾式磁性トナー
  7. X線光電子分光法によって測定される前記磁性酸化鉄の最表面の原子濃度において、Si原子に対するMg、又は、Znの比が0.05〜0.5であり、Si原子に対するFe原子の比が3.00〜7.00であり、Mg、又は、Znに対するFe原子の比が10.0〜70.0であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の乾式磁性トナー
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