JP4067722B2 - 楕円偏光板の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、透明保護膜、偏光膜、透明支持体および液晶性分子から形成された光学異方性層がこの順に積層されている楕円偏光板、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示装置は、液晶セル、偏光素子および光学補償シート(位相差板)からなる。透過型液晶表示装置では、二枚の偏光素子を液晶セルの両側に取り付け、一枚または二枚の光学補償シートを液晶セルと偏光素子との間に配置する。反射型液晶表示装置では、反射板、液晶セル、一枚の光学補償シート、そして一枚の偏光素子の順に配置する。
液晶セルは、棒状液晶性分子、それを封入するための二枚の基板および棒状液晶性分子に電圧を加えるための電極層からなる。液晶セルは、棒状液晶性分子の配向状態の違いで、透過型については、TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、反射型については、HAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。
偏光素子は、一般に、偏光膜の両側に二枚の透明保護膜を取り付けた構成を有する。
【0003】
光学補償シートは、画像着色を解消したり、視野角を拡大するために、様々な液晶表示装置で用いられている。光学補償シートとしては、延伸複屈折フイルムが従来から使用されていた。
延伸複屈折フイルムからなる光学補償シートに代えて、透明支持体上に液晶性分子(特にディスコティック液晶性分子)から形成された光学異方性層を有する光学補償シートを使用することが提案されている。光学異方性層は、液晶性分子を配向させ、その配向状態を固定することにより形成する。一般に、重合性基を有する液晶性分子を用いて、重合反応によって配向状態を固定する。液晶性分子は、大きな複屈折率を有する。そして、液晶性分子には、多様な配向形態がある。液晶性分子を用いることで、従来の延伸複屈折フイルムでは得ることができない光学的性質を実現することが可能になった。
【0004】
光学補償シートの光学的性質は、液晶セルの光学的性質、具体的には上記のような表示モードの違いに応じて決定する。液晶性分子、特にディスコティック液晶性分子を用いると、液晶セルの様々な表示モードに対応する様々な光学的性質を有する光学補償シートを製造することができる。
ディスコティック液晶性分子を用いた光学補償シートでは、様々な表示モードに対応するものが既に提案されている。例えば、TNモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平6−214116号公報、米国特許5583679号、同5646703号、ドイツ特許公報3911620A1号の各明細書に記載がある。また、IPSモードまたはFLCモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平10−54982号公報に記載がある。さらに、OCBモードまたはHANモードの液晶セル用光学補償シートは、米国特許5805253号および国際特許出願WO96/37804号の各明細書に記載がある。さらにまた、STNモードの液晶セル用光学補償シートは、特開平9−26572号公報に記載がある。そして、VAモードの液晶セル用光学補償シートは、特許番号第2866372号公報に記載がある。
【0005】
液晶性分子を用いた光学補償シートと偏光素子とを積層して楕円偏光板とすれば、光学補償シートの透明支持体を、偏光素子の一方の透明保護膜として機能させることができる。そのような楕円偏光板は、透明保護膜、偏光膜、透明支持体、そして液晶性分子から形成された光学異方性層の順序の層構成を有する。液晶表示装置は薄型で軽量との特徴があり、構成要素の一つを兼用によって削減すれば、装置をさらに薄く軽量にすることができる。また、液晶表示装置の構成要素を一つ削減すれば、構成要素の貼り合わせ工程も一つ削減され、装置を製造する際に故障が生じる可能性が低くなる。液晶性分子を用いた光学補償シートの透明支持体と偏光素子の一方の保護膜を共通化した一体型楕円偏光板については、特開平7−191217号、同8−21996号および同8−94838号の各公報に記載がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
透明保護膜、偏光膜、透明支持体および光学異方性層からなる一体型楕円偏光板を製造する場合、偏光膜(通常は、ポリビニルアルコールフイルム)と透明支持体(通常は、セルロースエステルフイルム)との親和性が問題になる。ポリビニルアルコールフイルムとセルロースエステルフイルムとの双方を強力に接着できる適当な接着剤がない。そのため、接着剤を用いて偏光膜と透明支持体とを接着しても、両者が剥離しやすい。
特開平8−94838号公報記載の発明は、透明支持体をケン化処理(通常はアルカリ処理)することにより、偏光膜と透明支持体との親和性の問題を解決している。透明支持体をケン化処理すると、表面部分のセルロースエステルのエステル結合が部分的に加水分解され、セルロースが本来有していた水酸基に戻る。セルロースとポリビニルアルコールとは、共に水酸基を有するポリマーであって親和性が高い。そのため、ケン化処理した透明支持体と偏光膜とは、容易に接着することができる。
【0007】
発明の目的は、ケン化処理を透明支持体の偏光膜側の面のセルロースエステルに対してのみ機能させることである。
また、本発明の目的は、ケン化処理に使用するアルカリ水溶液が、処理後に変色することのない一体型楕円偏光板の製造方法を提供することでもある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記(1)〜(4)の楕円偏光板の製造方法により達成された。
(1)セルロースエステルフイルムからなる透明支持体上に、重合性液晶性分子を配向させ、さらに空気中の酸素と光学異方性層との接触を抑制した状態で重合性液晶性分子を重合させることにより光学異方性層を設ける工程、光学異方性層を設けた透明支持体を、40乃至70℃でpH10以上のアルカリ水溶液に20乃至300秒浸漬することにより、アルカリ処理する工程、そして、光学異方性層を設けた透明支持体、透明保護膜および偏光膜を、透明保護膜、偏光膜、透明支持体および光学異方性層の順序に積層する工程からなる楕円偏光板の製造方法。
【0009】
(2)セルロースエステルフイルムが芳香族環を少なくとも二つ有し、二つの芳香族環の立体配座を立体障害しない分子構造を有するレターデーション上昇剤を含む(1)に記載の製造方法。
(3)セルロースエステルフイルムからなる透明支持体上に、重合性液晶性分子を配向させ、さらに酸素量を13%以下まで削減して、重合性液晶性分子を重合させることにより光学異方性層を設ける工程、光学異方性層を設けた透明支持体を、40乃至70℃でpH10以上のアルカリ水溶液に20乃至300秒浸漬することにより、アルカリ処理する工程、そして、光学異方性層を設けた透明支持体、透明保護膜および偏光膜を、透明保護膜、偏光膜、透明支持体および光学異方性層の順序に積層する工程からなる楕円偏光板の製造方法。
(4)セルロースエステルフイルムが芳香族環を少なくとも二つ有し、二つの芳香族環の立体配座を立体障害しない分子構造を有するレターデーション上昇剤を含む(3)に記載の製造方法。
【0010】
【発明の効果】
本発明者の研究の結果、ケン化処理において、液晶性分子がアルカリ水溶液に溶出する量を0.03重量%未満に抑制する(好ましくは、さらにレターデーション上昇剤の溶出量を0.35重量%未満に抑制)ことによって、製造工程における光学的機能の変動を実質的に防止することに成功した。
液晶性分子およびレターデーション上昇剤の溶出は、様々な手段で防止できる。ただし、最も簡単な手段は、液晶性分子を重合により完全に固定化することである。液晶性分子を重合させる方法は、既に提案されているが、従来の方法では重合反応が不完全で、一部の分子は重合しないまま光学異方性層に含まれていた。未重合の液晶性分子は、アルカリ水溶液に溶出しやすく、光学的機能が変動する原因になっていた。
本発明者が、さらに研究を進めたところ、空気中の酸素(酸素は、重合禁止作用を有する)の影響により、液晶性分子の重合反応が阻害されていることが判明した。本発明者は、空気中の酸素の光学異方性層内への浸透を抑制した状態で、重合性液晶性分子の重合反応を実施することにより、液晶性分子を重合により完全に固定化することに成功した。
以上の理由により、本発明によれば、製品毎の光学的性質の変動の少ない一体型楕円偏光板を製造することができる。
なお、液晶性分子を重合により完全に固定化すると、レターデーション上昇剤が光学異方性層を通過して溶出することを防止できる。レターデーション上昇剤が透明支持体表面から溶出することは防止できないが、レターデーション上昇剤溶出量を半分程度まで抑制することは可能である。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、楕円偏光板の基本的な構成を示す模式図である。
図1に示す楕円偏光板は、透明保護膜(1)、偏光膜(2)、セルロースエステルフイルムからなる透明支持体(3)、配向膜(0)および液晶性分子から形成された光学異方性層(4)がこの順に積層された層構成を有する。
図1に示す楕円偏光板は、配向膜(0)を有する透明支持体(3)に光学異方性層(4)を設ける工程、光学異方性層(4)、配向膜(0)および透明支持体(3)の積層体をケン化処理(アルカリ処理)する工程、そして、透明保護膜(1)、偏光膜(2)、透明支持体(3)、配向膜(3)および光学異方性層(4)の順序に積層する工程により製造する。
透明支持体(3)の偏光膜側の面(31)および光学異方性層(4)の表面(41)がケン化処理において、アルカリ水溶液に接触する。透明支持体(3)のケン化処理面(31)では、セルロースエステルのエステル結合が部分的に加水分解され、偏光膜(2)との親和性が改善されている。一方、光学異方性層(4)のケン化処理面(41)では、前記のように、液晶性分子がアルカリ水溶液に溶出する問題が生じる。
【0012】
図2は、楕円偏光板の製造における光学異方性層の形成工程を示す断面模式図である。
楕円偏光板の製造では、透明支持体(3)上の配向膜(0)の上に、重合性液晶性分子を塗布し、液晶性分子を配向および重合させて、光学異方性層(4)を形成することが好ましい。液晶性分子の重合反応は、空気中の酸素の光学異方性層内への浸透を抑制した状態で実施することがさらに好ましい。図2に示す工程では、内部の空気を窒素ガス(N2 )に置換した密閉容器内で、光(Light )による光重合反応を実施している。
【0013】
図3は、楕円偏光板の製造におけるケン化処理工程を示す断面模式図である。
図3に示す工程では、透明支持体(3)、配向膜(0)および光学異方性層(4)の積層体を水酸化ナトリウム水溶液(NaOH)に浸漬することにより、ケンか処理を実施している。ケン化処理において、透明支持体(3)の偏光膜側の面(31)および光学異方性層(4)の表面(41)が水酸化ナトリウム水溶液に接触する。
図2に示す処理工程のように、液晶性分子を完全に重合させて形成した光学異方性層では、液晶性分子が光学異方性層(4)の表面(41)から溶出することが防止できる。また、液晶性分子を完全に重合させて形成した光学異方性層では、透明支持体(3)に含まれるレターデーション上昇剤が、配向膜(0)および光学異方性層(4)を通過して溶出することも防止できる。従って、ケン化処理は、透明支持体(3)の偏光膜側の面(31)のセルロースエステルに対してのみ機能する。
【0014】
図4は、透過型液晶表示装置の基本的な構成を示す模式図である。
図4の(a)に示す透過型液晶表示装置は、バックライト(BL)側から順に、透明保護膜(1a)、偏光膜(2a)、透明支持体(3a)、光学異方性層(4a)、液晶セルの下基板(5a)、棒状液晶性分子からなる液晶層(6)、液晶セルの上基板(5b)、光学異方性層(4b)、透明支持体(3b)、偏光膜(2b)、そして透明保護膜(1b)からなる。透明保護膜(1a)〜光学異方性層(4a)および光学異方性層(4b)〜透明保護膜(1b)が、二枚の楕円偏光板を構成している。
図4の(b)に示す透過型液晶表示装置は、バックライト(BL)側から順に、透明保護膜(1a)、偏光膜(2a)、透明支持体(3a)、光学異方性層(4a)、液晶セルの下基板(5a)、棒状液晶性分子からなる液晶層(6)、液晶セルの上基板(5b)、透明保護膜(1b)、偏光膜(2b)、そして透明保護膜(1c)からなる。透明保護膜(1a)〜光学異方性層(4a)が、楕円偏光板を構成している。
図4の(c)に示す透過型液晶表示装置は、バックライト(BL)側から順に、透明保護膜(1a)、偏光膜(2a)、透明保護膜(1b)、液晶セルの下基板(5a)、棒状液晶性分子からなる液晶層(6)、液晶セルの上基板(5b)、光学異方性層(4b)、透明支持体(3b)、偏光膜(2b)、そして透明保護膜(1c)からなる。光学異方性層(4b)〜透明保護膜(1c)が、楕円偏光板を構成している。
【0015】
図5は、反射型液晶表示装置の基本的な構成を示す模式図である。
図5に示す反射型液晶表示装置は、反射板(RP)側から順に、液晶セルの下基板(5a)、棒状液晶性分子からなる液晶層(6)、液晶セルの上基板(5b)、光学異方性層(4b)、透明支持体(3b)、偏光膜(2b)、そして透明保護膜(1b)からなる。光学異方性層(4b)〜透明保護膜(1b)が、楕円偏光板を構成している。
【0016】
[透明保護膜]
透明保護膜としては、光学的等方性のポリマーフイルムが用いられる。保護膜が透明であるとは、光透過率が80%以上であることを意味する。光学的等方性とは、具体的には、面内レターデーション(Re)が10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがさらに好ましい。また、厚み方向のレターデーション(Rth)は、40nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがさらに好ましい。面内レターデーション(Re)と厚み方向のレターデーション(Rth)の定義については、透明支持体について後述する。
透明保護膜としては、一般にセルロースエステルフイルム、好ましくはトリアセチルセルロースフイルムが用いられる。セルロースエステルフイルムは、ソルベントキャスト法により形成することが好ましい。
透明保護膜の厚さは、20乃至500μmであることが好ましく、50乃至200μmであることがさらに好ましい。
【0017】
[偏光膜]
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フイルムを用いて製造する。偏光膜の偏光軸は、フイルムの延伸方向に垂直な方向に相当する。
【0018】
[透明支持体]
本発明では、セルロースエステルフイルムを透明支持体として使用する。
透明支持体の厚さは、20乃至500μmであることが好ましく、50乃至200μmであることがさらに好ましい。
透明支持体が光学的等方性であることが好ましい場合は、上記透明保護膜と同様に、通常のセルロースエステルフイルムを用いることができる。
透明支持体に光学的異方性が要求される場合は、レターデーションが高いセルロースエステルフイルムを製造して使用する。
【0019】
セルロースエステルフイルムの面内レターデーション(Re)は、セルロースエステルフイルムの延伸により高い値とすることができる。セルロースエステルフイルムの厚み方向のレターデーション(Rth)は、(1)レターデーション上昇剤の使用、(2)平均酢化度(アセチル化度)の調整または(3)冷却溶解法によるフイルムの製造により前述した高い値とすることができる。従って、従来は光学的等方性と考えられていたセルロースエステルフイルムを、光学補償機能を有する光学的異方性フイルムとして使用できるようになった。
厚み方向のレターデーション値(Rth)と面内レターデーション値(Re)とは、それぞれ下記式(1)および(2)に従って算出する。
式(1)
厚み方向のレターデーション値(Rth)={(nx+ny)/2−nz}×d式(2)
面内レターデーション値(Re)=(nx−ny)×d
式中、nxはフイルム平面内のx方向の屈折率であり、nyはフイルム平面内のy方向の屈折率であり、nzはフイルム面に垂直な方向の屈折率であり、そしてdはフイルムの厚み(nm)である。
【0020】
光学異方性透明支持体を用いる場合、波長550nmにおける厚み方向のレターデーション値(Rth550 )は、70乃至400nmであることが好ましく、100乃至400nmであることがより好ましく、150乃至400nmであることがさらに好ましく、200乃至400nmであることがさらにまた好ましく、200乃至300nmであることが最も好ましい。
なお、厚み方向の複屈折率{(nx+ny)/2−nz}は、7×10-4乃至4×10-3であることが好ましく、1×10-3乃至4×10-3であることがより好ましく、1.5×10-3乃至4×10-3であることがさらに好ましく、2×10-3乃至4×10-3であることがさらにまた好ましく、2×10-3乃至3×10-3であることが最も好ましく、2×10-3乃至2.5×10-3であることが特に好ましい。
【0021】
以下、レターデーションが高いセルロースエステルフイルムの製造方法について説明する。
セルロースエステルとしては、セルロースの低級脂肪酸エステルを用いることが好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数は、2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)または4(セルロースブチレート)であることが好ましい。セルロースアセテートが特に好ましい。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いてもよい。
セルロースアセテートの平均酢化度(アセチル化度)は、55.0%以上62.5%未満であることが好ましい。フイルムの物性の観点では、平均酢化度は、58.0%以上62.5%未満であることがさらに好ましい。ただし、平均酢化度が55.0%以上58.0%未満(好ましくは57.0%以上58.0%未満)であるセルロースアセテートを用いると、厚み方向のレターデーションが高いフイルムを製造することができる。
【0022】
レターデーション上昇剤を用いて、厚み方向のレターデーションを高い値とすることができる。レターデーション上昇剤としては、芳香族環を少なくとも二つ有し、二つの芳香族環の立体配座を立体障害しない分子構造を有する化合物を使用できる。レターデーション上昇剤は、セルロースエステル100重量部に対して、0.3乃至20重量部の範囲で使用することが好ましい。
少なくとも二つの芳香族環を有する化合物は、炭素原子7個分以上のπ結合性の平面を有する。二つの芳香族環の立体配座を立体障害しなければ、二つの芳香族環は、同一平面を形成する。本発明者の研究によれば、セルロースエステルフイルムのレターデーションを上昇させるためには、複数の芳香族環により同一平面を形成することが重要である。
本明細書において、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
【0023】
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が好ましい。
【0024】
レターデーション上昇剤が有する芳香族環の数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがより好ましく、2乃至8であることがさらに好ましく、2乃至6であることが最も好ましい。3以上の芳香族環を有する場合、少なくとも二つの芳香族環の立体配座を立体障害しなければよい。
二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。レターデーション上昇機能の観点では、(a)〜(c)のいずれでもよい。ただし、(b)または(c)の場合は、二つの芳香族環の立体配座を立体障害しないことが必要である。
【0025】
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環およびチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環およびキノリン環が好ましい。
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環または非芳香族性複素環を形成してもよい。
【0026】
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−またはそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
【0027】
芳香族環および連結基は、置換基を有していてもよい。ただし、置換基は、二つの芳香族環の立体配座を立体障害しないことが必要である。立体障害では、置換基の種類および位置が問題になる。置換基の種類としては、立体的に嵩高い置換基(例えば、3級アルキル基)が立体障害を起こしやすい。置換基の位置としては、芳香族環の結合に隣接する位置(ベンゼン環の場合はオルト位)が置換された場合に、立体障害が生じやすい。
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、スルホ、カルバモイル、スルファモイル、ウレイド、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基および非芳香族性複素環基が含まれる。
【0028】
アルキル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例、ヒドロキシ、カルボキシ、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル、エチル、n−ブチル、n−ヘキシル、2−ヒドロキシエチル、4−カルボキシブチル、2−メトキシエチルおよび2−ジエチルアミノエチルが含まれる。
アルケニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル、アリルおよび1−ヘキセニルが含まれる。
アルキニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル、1−ブチニルおよび1−ヘキシニルが含まれる。
【0029】
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル、プロパノイルおよびブタノイルが含まれる。
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシが含まれる。
アルコキシ基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ、エトキシ、ブトキシおよびメトキシエトキシが含まれる。
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノおよびエトキシカルボニルアミノが含まれる。
【0030】
アルキルチオ基の炭素原子数は、1乃至12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ、エチルチオおよびオクチルチオが含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニルおよびエタンスルホニルが含まれる。
、脂肪族アミド基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミドが含まれる。
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミドおよびn−オクタンスルホンアミドが含まれる。
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ、ジエチルアミノおよび2−カルボキシエチルアミノが含まれる。
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイルおよびジエチルカルバモイルが含まれる。
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイルおよびジエチルスルファモイルが含まれる。
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイドが含まれる。
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノおよびモルホリノが含まれる。
レターデーション上昇剤の分子量は、300乃至800であることが好ましい。レターデーション上昇剤の沸点は、260℃以上であることが好ましい。
【0031】
ソルベントキャスト法によりセルロースエステルフイルムを製造することが好ましい。ソルベントキャスト法では、セルロースエステルを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフイルムを製造する。
有機溶媒は、炭素原子数が3乃至12のエーテル、炭素原子数が3乃至12のケトン、炭素原子数が3乃至12のエステルおよび炭素原子数が1乃至6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
【0032】
炭素原子数が3乃至12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが含まれる。
炭素原子数が3乃至12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3乃至12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1または2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25乃至75モル%であることが好ましく、30乃至70モル%であることがより好ましく、35乃至65モル%であることがさらに好ましく、40乃至60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
【0033】
冷却溶解法を採用せずに、一般的な方法で溶液を調製してもよい。一般的な方法とは、0℃以上の温度(常温または高温)で、処理することを意味する。溶液の調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法および装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特にメチレンクロリド)を用いることが好ましい。
セルロースエステルの量は、得られる溶液中に10乃至40重量%含まれるように調整する。セルロースエステルの量は、10乃至30重量%であることがさらに好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
溶液は、常温(0乃至40℃)でセルロースエステルと有機溶媒とを攪拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧および加熱条件下で攪拌してもよい。具体的には、セルロースエステルと有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌する。加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60乃至200℃であり、さらに好ましくは80乃至110℃である。
【0034】
各成分は予め粗混合してから容器に入れてもよい。また、順次容器に投入してもよい。容器は攪拌できるように構成されている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用してもよい。あるいは、容器を密閉後、各成分を圧力下で添加してもよい。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶剤中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
【0035】
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法では溶解させることが困難な有機溶媒(ハロゲン化炭化水素以外の有機溶媒)中にも、セルロースエステルを溶解させることができる。なお、通常の溶解方法でセルロースエステルを溶解できる溶媒(例えば、ハロゲン化炭化水素)であっても、冷却溶解法によると迅速に均一な溶液が得られるとの効果がある。また、冷却溶解法を用いると、製造するセルロースエステルフイルムのレターデーションが高い値になる。
冷却溶解法では最初に、室温で有機溶媒中にセルロースエステルを撹拌しながら徐々に添加する。
セルロースエステルの量は、この混合物中に10乃至40重量%含まれるように調整することが好ましい。セルロースエステルの量は、10乃至30重量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
【0036】
次に、混合物を−100乃至−10℃(好ましくは−80乃至−10℃、さらに好ましくは−50乃至−20℃、最も好ましくは−50乃至−30℃)に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30乃至−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、セルロースエステルと有機溶媒の混合物は固化する。
冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
【0037】
さらに、これを0乃至200℃(好ましくは0乃至150℃、さらに好ましくは0乃至120℃、最も好ましくは0乃至50℃)に加温すると、有機溶媒中にセルロースエステルが溶解する。昇温は、室温中に放置するだけでもよし、温浴中で加温してもよい。
加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることがさらに好ましく、12℃/分以上であることが最も好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。
以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
【0038】
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時の減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧および減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。
なお、セルロースアセテート(酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20重量%の溶液は、示差走査熱量測定(DSC)によると、33℃近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、この温度以下では均一なゲル状態となる。従って、この溶液は疑似相転移温度以上、好ましくはゲル相転移温度プラス10℃程度の温度で保存する必要がある。ただし、この疑似相転移温度は、セルロースアセテートの平均酢化度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒により異なる。
【0039】
調製したセルロースエステル溶液(ドープ)から、ソルベントキャスト法によりセルロースエステルフイルムを製造する。
ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18乃至35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
ドープは、表面温度が10℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延した2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフイルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。本発明に従い調製した溶液(ドープ)は、この条件を満足する。
製造するフイルムの厚さは、40乃至120μmであることが好ましく、70乃至110μmであることがさらに好ましい。
【0040】
セルロースエステルフイルムには、機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。
可塑剤の添加量は、セルロースエステルの量の0.1乃至25重量%であることが好ましく、1乃至20重量%であることがさらに好ましく、3乃至15重量%であることが最も好ましい。
【0041】
セルロースエステルフイルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)や紫外線防止剤を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、調製する溶液(ドープ)の0.01乃至1重量%であることが好ましく、0.01乃至0.2重量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01重量%未満であると、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量が1重量%を越えると、フイルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が認められる場合がある。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を挙げることができる。紫外線防止剤については、特開平7−11056号公報に記載がある。
透明支持体と配向膜あるいは光学異方性層との接着を改善するためには、ゼラチン下塗り層を設けることが好ましい。ゼラチンの下塗り層の厚さは、0.01乃至1μmであることが好ましく、0.02乃至0.5μmであることがさらに好ましく、0.05乃至0.2μmであることが最も好ましい。
【0042】
[配向膜]
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。ポリマーのラビング処理により形成する配向膜が特に好ましい。ラビング処理は、ポリマー層の表面を、紙や布で一定方向に、数回こすることにより実施する。
配向膜に使用するポリマーの種類は、液晶セルの表示モードの種類に応じて決定する。液晶セル内の棒状液晶性分子の多くが実質的に垂直に配向している表示モード(例、VA、OCB、HAN)では、光学異方性層の液晶性分子を実質的に水平に配向させる機能を有する配向膜を用いる。液晶セル内の棒状液晶性分子の多くが実質的に水平に配向している表示モード(例、STN)では、光学異方性層の液晶性分子を実質的に垂直に配向させる機能を有する配向膜を用いる。液晶セル内の棒状液晶性分子の多くが実質的に斜めに配向している表示モード(例、TN)では、光学異方性層の液晶性分子を実質的に斜めに配向させる機能を有する配向膜を用いる。
【0043】
具体的なポリマーの種類については、前述した様々な表示モードに対応するディスコティック液晶性分子を用いた光学補償シートについての文献に記載がある。
配向膜に使用するポリマーを架橋して、配向膜の強度を強化してもよい。配向膜に使用するポリマーに架橋性基を導入して、架橋性基を反応させることにより、ポリマーを架橋させることができる。なお、配向膜に使用するポリマーの架橋については、特開平8−338913号公報に記載がある。
配向膜の厚さは、0.01乃至5μmであることが好ましく、0.05乃至1μmであることがさらに好ましい。
なお、配向膜を用いて液晶性分子を配向させてから、その配向状態のまま液晶性分子を固定して光学異方性層を形成し、光学異方性層のみを支持体上に転写してもよい。配向状態で固定された液晶性分子は、配向膜がなくても配向状態を維持することができる。
【0044】
[光学異方性層]
光学異方性層は、液晶性分子から形成する。
液晶性分子としては、棒状液晶性分子またはディスコティック液晶性分子が好ましく、ディスコティック液晶性分子が特に好ましい。
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性分子だけではなく、高分子液晶性分子も用いることができる。高分子液晶性分子は、以上のような低分子液晶性分子に相当する側鎖を有するポリマーである。高分子液晶性分子を用いた光学補償シートについては、特開平5−53016号公報に記載がある。
【0045】
ディスコティック液晶性分子は、様々な文献(C. Destrade et al., Mol. Crysr. Liq. Cryst., vol. 71, page 111 (1981) ;日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B. Kohne et al., Angew. Chem. Soc. Chem. Comm., page 1794 (1985);J. Zhang et al., J. Am. Chem. Soc., vol. 116, page 2655 (1994))に記載されている。ディスコティック液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。
ディスコティック液晶性分子を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。従って、ディスコティック液晶性分子は、下記式(I)で表わされる化合物であることが好ましい。
【0046】
(I) D(−L−Q)n
式中、Dは円盤状コアであり;Lは二価の連結基であり;Qは重合性基であり;そして、nは4乃至12の整数である。
式(I)の円盤状コア(D)の例を以下に示す。以下の各例において、LQ(またはQL)は、二価の連結基(L)と重合性基(Q)との組み合わせを意味する。
【0047】
【化1】
Figure 0004067722
【0048】
【化2】
Figure 0004067722
【0049】
【化3】
Figure 0004067722
【0050】
【化4】
Figure 0004067722
【0051】
【化5】
Figure 0004067722
【0052】
【化6】
Figure 0004067722
【0053】
【化7】
Figure 0004067722
【0054】
式(I)において、二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−および−S−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた基であることがさらに好ましい。二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−および−O−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた基であることが最も好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2乃至12であることが好ましい。アリーレン基の炭素原子数は、6乃至10であることが好ましい。アルキレン基、アルケニレン基およびアリーレン基は、置換基(例、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ、アルコキシ基、アシルオキシ基)を有していてもよい。
二価の連結基(L)の例を以下に示す。左側が円盤状コア(D)に結合し、右側が重合性基(Q)に結合する。ALはアルキレン基またはアルケニレン基を意味し、ARはアリーレン基を意味する。
【0055】
L1:−AL−CO−O−AL−
L2:−AL−CO−O−AL−O−
L3:−AL−CO−O−AL−O−AL−
L4:−AL−CO−O−AL−O−CO−
L5:−CO−AR−O−AL−
L6:−CO−AR−O−AL−O−
L7:−CO−AR−O−AL−O−CO−
L8:−CO−NH−AL−
L9:−NH−AL−O−
L10:−NH−AL−O−CO−
L11:−O−AL−
L12:−O−AL−O−
【0056】
L13:−O−AL−O−CO−
L14:−O−AL−O−CO−NH−AL−
L15:−O−AL−S−AL−
L16:−O−CO−AL−AR−O−AL−O−CO−
L17:−O−CO−AR−O−AL−CO−
L18:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−
L19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−
L20:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−
L21:−S−AL−
L22:−S−AL−O−
L23:−S−AL−O−CO−
L24:−S−AL−S−AL−
L25:−S−AR−AL−
【0057】
なお、STNモードのような棒状液晶性分子がねじれ配向している液晶セルを、光学的に補償するためには、ディスコティック液晶性分子もねじれ配向させることが好ましい。上記AL(アルキレン基またはアルケニレン基)に、不斉炭素原子を導入すると、ディスコティック液晶性分子を螺旋状にねじれ配向させることができる。また、不斉炭素原子を含む光学活性を示す化合物(カイラル剤)を光学異方性層に添加しても、ディスコティック液晶性分子を螺旋状にねじれ配向させることができる。
【0058】
式(I)の重合性基(Q)は、重合反応の種類に応じて決定する。重合性基(Q)の例を以下に示す。
【0059】
【化8】
Figure 0004067722
【0060】
重合性基(Q)は、不飽和重合性基(Q1〜Q7)またはエポキシ基(Q8)であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基(Q1〜Q6)であることが最も好ましい。
式(I)において、nは4乃至12の整数である。具体的な数字は、ディスコティックコア(D)の種類に応じて決定される。なお、複数のLとQの組み合わせは、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0061】
二種類以上のディスコティック液晶性分子を併用してもよい。例えば、以上述べたような重合性ディスコティック液晶性分子と非重合性ディスコティック液晶性分子とを併用することができる。
非重合性ディスコティック液晶性分子は、前述した重合性ディスコティック液晶性分子の重合性基(Q)を、水素原子またはアルキル基に変更した化合物であることが好ましい。すなわち、非重合性ディスコティック液晶性分子は、下記式(II)で表わされる化合物であることが好ましい。
(II) D(−L−R)n
式中、Dは円盤状コアであり;Lは二価の連結基であり;Rは水素原子またはアルキル基であり;そして、nは4乃至12の整数である。
式(II)の円盤状コア(D)の例は、LQ(またはQL)をLR(またはRL)に変更する以外は、前記の重合性ディスコティック液晶分子の例と同様である。
また、二価の連結基(L)の例も、前記の重合性ディスコティック液晶分子の例と同様である。
Rのアルキル基は、炭素原子数が1乃至40であることが好ましく、1乃至30であることがさらに好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、分岐を有する鎖状アルキル基よりも直鎖状アルキル基の方が好ましい。Rは、水素原子または炭素原子数が1乃至30の直鎖状アルキル基であることが特に好ましい。
【0062】
光学異方性層の厚さは、一般には、0.1乃至10μmである。厚さは、0.5乃至5μmであることがさらに好ましく、1乃至5μmであることが最も好ましい。ただし、液晶セルのモードによっては、高い光学的異方性を得るために、光学異方性層を厚く(5乃至10μm)する場合もある。
光学異方性層内での液晶性分子の配向状態は、前述したように、液晶セルの表示モードの種類に応じて決定される。液晶性分子の配向状態は、具体的には、液晶性分子の種類、配向膜の種類および光学異方性層内の添加剤(例、可塑剤、バインダー、界面活性剤)の使用によって制御される。
【0063】
[光学異方性層の形成工程]
光学異方性層は、液晶性分子、あるいは下記の重合性開始剤や任意の添加剤(例、可塑剤、モノマー、界面活性剤、セルロースエステル、1,3,5−トリアジン化合物、カイラル剤)を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成する。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
塗布液の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
【0064】
液晶性分子は、実質的に均一に配向していることが好ましく、実質的に均一に配向している状態で固定されていることがさらに好ましく、重合反応により液晶性分子が固定されていることが最も好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01乃至20重量%であることが好ましく、0.5乃至5重量%であることがさらに好ましい。
ディスコティック液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2 乃至50J/cm2 であることが好ましく、100乃至800mJ/cm2 であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0065】
重合反応は、空気中の酸素の光学異方性層内への浸透を抑制した状態で実施する。具体的には、空気中の酸素量を削減するか、空気中と光学異方性層との界面を遮蔽するか、あるいは、酸素捕捉剤を用いて光学異方性層に浸透しようとする酸素を捕捉する。
空気中の酸素量(通常は20%程度)を削減する場合、密閉容器内で重合反応を実施する必要がある。酸素量は、13%以下まで削減することが好ましい。空気を不活性な気体(窒素ガス)で置換してもよい。また、気圧を低下させ、酸素の絶対量を削減した状態で、重合反応を実施することもできる。
空気中と光学異方性層との界面は、カバーシートで光学異方性層の表面を覆うことにより遮蔽できる。
酸素捕捉剤を用いる場合は、光学異方性層に化学的および光学的影響を与えない、酸素捕捉剤を選択して用いる必要がある。
空気中の酸素量を削減する方法が好ましく、空気を窒素ガスで置換する方法が最も好ましい。
【0066】
[ケン化処理処理工程]
透明支持体と光学異方性層との積層体を、アルカリ水溶液に浸漬することによりケン化処理を実施する。
アルカリは、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムのようなアルカリ金属の水酸化物であることが好ましい。水溶液のpHは、10以上であることが好ましい。アルカリ処理は、アルカリの水溶液に透明支持体の偏光膜側の面を浸漬して実施する。浸漬時間は、20乃至300秒であることが好ましい。処理温度は、40乃至70℃であることが好ましい。浸漬終了後、積層体を水で洗浄することが好ましい。
【0067】
[液晶表示装置]
本発明により製造した楕円偏光板は、様々な表示モードの液晶セルに適用できる。前述したように、TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。本発明の楕円偏光板は、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。
【0068】
【実施例】
[実施例1]
(透明支持体の作製)
下記の成分をミキシングタンクに投入し、加熱攪拌して、セルロースアセテート溶液を調製した。
【0069】
Figure 0004067722
【0070】
別のミキシングタンクに、下記の成分をに投入し、加熱攪拌して、レターデーション上昇剤溶液を調製した。
【0071】
Figure 0004067722
【0072】
セルロースアセテート溶液474重量部に、レターデーション上昇剤溶液22重量部を添加し、充分に攪拌して、ドープを調製した。セルロースアセテート100重量部に対するレターデーション上昇剤の量は3重量部である。
ドープを流延口から0℃に冷却したドラム上に流延した。溶媒含有率70重量%の場外で剥ぎ取り、フイルムの巾方向の両端をピンテンターで固定し、溶媒含有率が3乃至5重量%の領域で、幅方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が3%となる間隔を保ちつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、ガラス転移温度が120゜を越える領域で機械方向の延伸率が実質0%、(剥ぎ取り時に機械方向に4%延伸することを考慮して)巾方向の延伸率と機械方向の延伸率との比が0.75となるように調整して、厚さ107μmのセルロースアセテートフイルムを作製した。
セルロースアセテートフイルムの弾性率は、機械方向(MD)で430kg/mm2 、巾方向(TD)で360kg/mm2 であり、MD/TD比は1.19であった。作製したフイルムのレターデーションを測定したところ、厚み方向のレターデーション(Rth)は80nm、面内のレターデーション(Re)は10nmであった。なお、レターデーション上昇剤の析出は、製造直後はもちろん、後述するフイルム製造後の処理においても、全く認められなかった。
【0073】
(第1下塗り層の形成)
作製したセルロースエステルフイルムを透明支持体として用いた。
透明支持体の上に、下記の組成の塗布液を28ml/m2 塗布し、乾燥して第1下塗り層を形成した。
【0074】
Figure 0004067722
【0075】
(第2下塗り層の形成)
第1下塗り層の上に、下記の組成の塗布液を7ml/m2 塗布し、乾燥して第2下塗り層を形成した。
【0076】
Figure 0004067722
【0077】
【化9】
Figure 0004067722
【0078】
(バック層の形成)
透明支持体の反対側の面に、下記の組成の塗布液を25ml/m2 塗布し、乾燥してバック層を形成した。
【0079】
Figure 0004067722
【0080】
(配向膜の形成)
第2下塗り層の上に、長鎖アルキル変性ポリビニルアルコール(MP−203、クラレ(株)製)の水溶液を塗布し、60℃の温風で90秒間乾燥した後、ラビング処理を行い配向膜を形成した。
【0081】
(光学異方性層の形成)
下記のディスコティック液晶性化合物(1)1.8g、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)0.2g、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1.0、イーストマンケミカル社製)0.04g、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)0.06gおよび増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.02gを、メチルエチルケトン8.43gに溶解して塗布液を調製した。塗布液を#3のワイヤーバーで配向膜の上に塗布した。これを金属枠に貼り付けた状態で、130℃の恒温槽中で2分間加熱し、ディスコティック液晶性化合物を配向させた。
透明支持体と光学異方性層との積層体を密閉容器内に入れ、酸素濃度が9%以下になるまで空気を窒素ガスに置換した。130℃の温度で、120W/cmの高圧水銀灯を用いて1分間紫外線を照射し、ディスコティック液晶性化合物のビニル基を重合させ、配向状態を固定した。その後、室温まで放冷した。
【0082】
【化10】
Figure 0004067722
【0083】
光学異方性層の厚さは、1.5μmであった。光学異方性層と透明支持体との積層体のレターデーションを、配向膜のラビング方向に沿って測定したところ、光学軸の平均傾斜角は15゜、厚み方向のレターデーション(Rth)は138nm、面内レターデーション(Re)は23nmであった。
【0084】
(アルカリ処理)
透明支持体と光学異方性層との積層体を、55℃の1.5N水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬してアルカリ処理した。流水で洗浄した後、乾燥した。
アルカリ処理後の面内レターデーション(Re)を測定したところ、22nm(処理前−1nm)であった。ディスコティック液晶性分子の溶出量を調べたところ、溶出した液晶性分子は全体の0重量%であった。また、溶出したレターデーション上昇剤は全体の0.26重量%であった。
【0085】
(透明保護膜の作製)
レターデーション上昇剤を添加しなかった以外は、透明支持体の作製と同様にして、セルロースアセテートフイルム(透明保護膜)を作製した。
透明保護膜も、透明支持体と光学異方性層との積層体と同様にアルカリ処理を実施した。
【0086】
(楕円偏光板の作製)
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて、偏光膜を作製した。偏光膜の片側に、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、光学異方性層と透明支持体との積層体を、光学異方性層が外側となるように貼り付けた。反対側には、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、透明保護膜を貼り付けた。偏光膜の透過軸と、光学異方性層と透明支持体の積層体の遅相軸とは、平行になるように配置した。このようにして、楕円偏光板を作製した。
【0087】
(液晶表示装置の作製)
ITO透明電極が設けられたガラス基板の上に、ポリイミド配向膜を設け、ラビング処理を行った。5μmのスペーサーを介して、二枚の基板を配向膜が向かい合うように重ねた。配向膜のラビング方向が直交するように、基板の向きを調節した。基板の間隙に、棒状液晶性分子(ZL4792、メルク社製)を注入し、液晶層を形成した。液晶性分子のΔnは0.0969であった。
以上のように作製したTN液晶セルの両側に、楕円偏光板を、光学異方性層が基板と対面するように貼り付けて液晶表示装置を作製した。光学異方性層と透明支持体の積層体の遅相軸と、液晶セルのラビング方向は、直交するように配置した。
液晶表示装置の液晶セルに、電圧を印加し、白表示2V、黒表示5Vにおける白表示と黒表示との透過率の比をコントラスト比として、上下左右でコントラスト比が10、かつ階調反転のない領域を視野角として測定した。その結果、上下の視野角は70゜、左右の視野角は126゜であった。また、正面コントラストは、122であった。
【0088】
[比較例1]
(光学異方性層の形成)
ディスコティック液晶性化合物の重合反応(紫外線照射)を空気中で実施した以外は、実施例1と同様に光学異方性層を形成した。
光学異方性層の厚さは、1.0μmであった。光学異方性層と透明支持体との積層体のレターデーションを、配向膜のラビング方向に沿って測定したところ、光学軸の平均傾斜角は15゜、厚み方向のレターデーション(Rth)は138nm、面内レターデーション(Re)は23nmであった。
【0089】
(アルカリ処理)
透明支持体と光学異方性層との積層体を、55℃の1.5N水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬してアルカリ処理した。流水で洗浄した後、乾燥した。
アルカリ処理後の面内レターデーション(Re)を測定したところ、20nm(処理前−3nm)であった。ディスコティック液晶性分子の溶出量を調べたところ、溶出した液晶性分子は全体の0.033重量%であった。また、溶出したレターデーション上昇剤は全体の0.68重量%であった。
【0090】
[実施例2]
(配向膜の形成)
下記の変性ポリイミド(1)をメタノールとアセトンとの混合溶媒(容量比=50/50)に溶解して、5重量%溶液を調製した。この溶液をバーコーターを用いて、実施例1で作製した透明支持体の上に1μmの厚さに塗布した。塗布層を、60℃の温風で2分間乾燥し、その表面をラビング処理して、配向膜を形成した。
【0091】
【化11】
Figure 0004067722
【0092】
(光学異方性層の形成)
配向膜の上に、以下の組成の塗布液をエクストルージョン法により塗布した。
【0093】
Figure 0004067722
【0094】
【化12】
Figure 0004067722
【0095】
【化13】
Figure 0004067722
【0096】
塗布層を130℃で2分間加熱して、ディスコティック液晶性化合物を垂直に配向させた。
透明支持体と光学異方性層との積層体を密閉容器内に入れ、酸素濃度が9%以下になるまで空気を窒素ガスに置換した。130℃の温度で、4秒間紫外線を照射し、ディスコティック液晶性化合物を重合させ、垂直配向状態を固定した。このようにして、ディスコティック液晶性化合物が垂直かつねじれて配向している光学異方性層を形成した。
光学異方性層と透明支持体との積層体のレターデーションを測定したところ、面内レターデーション(Re)は440nmであった。
【0097】
(アルカリ処理)
透明支持体と光学異方性層との積層体を、55℃の1.5N水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬してアルカリ処理した。流水で洗浄した後、乾燥した。
アルカリ処理後の面内レターデーション(Re)を測定したところ、439nm(処理前−1nm)であった。ディスコティック液晶性分子の溶出量を調べたところ、溶出した液晶性分子は全体の0重量%であった。また、溶出したレターデーション上昇剤は全体の0.26重量%であった。
【0098】
(楕円偏光板の作製)
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて、偏光膜を作製した。偏光膜の片側に、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、光学異方性層と透明支持体との積層体を、光学異方性層が外側となるように貼り付けた。反対側には、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、実施例1で作製した透明保護膜を貼り付けた。このようにして、楕円偏光板を作製した。
【0099】
(液晶表示装置の作製)
作製した楕円偏光板を用いて、STN型液晶表示装置を作成した。液晶セルと光学異方性層とが接する面で、液晶セルの棒状液晶性分子の配向方向と光学異方性層のディスコティック液晶性分子の配向方向とを一致させた。出射側偏光板の吸収軸と液晶セルの出射側の棒状液晶性分子の配向方向との角度は、45゜に調節した。入射側偏光板の吸収軸と出射側偏光板の吸収軸とは直交するように配置した。
【0100】
得られたSTN型液晶表示装置に電圧を印加したところ、ノーマリーブラックモードになった。視覚特性を測定したところ、コントラスト比が5以上の角度範囲が左右で120゜以上、上下で150゜以上得られた。
【0101】
[比較例2]
(光学異方性層の形成)
ディスコティック液晶性化合物の重合反応(紫外線照射)を空気中で実施した以外は、実施例2と同様に光学異方性層を形成した。
光学異方性層と透明支持体との積層体のレターデーションを測定したところ、面内レターデーション(Re)は440nmであった。
【0102】
(アルカリ処理)
透明支持体と光学異方性層との積層体を、55℃の1.5N水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬してアルカリ処理した。流水で洗浄した後、乾燥した。
アルカリ処理後の面内レターデーション(Re)を測定したところ、436nm(処理前−4nm)であった。ディスコティック液晶性分子の溶出量を調べたところ、溶出した液晶性分子は全体の0.035重量%であった。また、溶出したレターデーション上昇剤は全体の0.70重量%であった。
【0103】
[実施例3]
(透明支持体の作製)
レターデーション上昇剤の添加量を、透明支持体の18重量%となるように変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ100μmのトリアセチルセルロースフイルムを作製した。トリアセチルセルロースフイルムを延伸倍率3%で一軸延伸して、透明支持体を作製した。
波長546nmで測定した透明支持体の面内レターデーション(Re)は30nm、そして、Rthレターデーション値は280nmであった。
【0104】
(配向膜の形成)
透明支持体の上に実施例1と同様に、第1下塗り層、第2下塗り層およびバック層を形成した。
第2下塗り層の上に、下記の組成の塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28ml/m2 塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
次に、透明支持体の遅相軸(波長632.8nmで測定)と45゜の方向に、形成した膜にラビング処理を実施した。
【0105】
Figure 0004067722
【0106】
【化14】
Figure 0004067722
【0107】
(光学異方性層の形成)
配向膜上に、実施例1で用いたディスコティック液晶性化合物(1)41.01g、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)4.06g、セルロースアセテートブチレート(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製)0.90g、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)0.23g、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)1.35g、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.45gを、102gのメチルエチルケトンに溶解した塗布液を、#3のワイヤーバーで塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、130℃の恒温槽中で2分間加熱し、ディスコティック液晶性化合物を配向させた。
透明支持体と光学異方性層との積層体を密閉容器内に入れ、酸素濃度が9%以下になるまで空気を窒素ガスに置換した。次に、130℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射しディスコティック液晶性化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層を形成した。
波長546nmで測定した光学異方性層の面内レターデーション(Re)は38nmであった。また、ディスコティック液晶性化合物の円盤面と透明支持体面との間の角度(傾斜角)は平均で40゜であった。
【0108】
(アルカリ処理)
透明支持体と光学異方性層との積層体を、55℃の1.5N水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬してアルカリ処理した。流水で洗浄した後、乾燥した。
アルカリ処理後の面内レターデーション(Re)を測定したところ、37nm(処理前−1nm)であった。ディスコティック液晶性分子の溶出量を調べたところ、溶出した液晶性分子は全体の0重量%であった。また、溶出したレターデーション上昇剤は全体の0.26重量%であった。
【0109】
(楕円偏光板の作製)
光学異方性層およびの積層体の透明支持体面に、偏光膜を粘着剤を介して貼り合わて、楕円偏光板を作製した。偏光膜の透過軸は、透明支持体の遅相軸と直交させた。
【0110】
(ベンド配向液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを6μmに設定した。セルギャップにΔnが0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向液晶セルを作製した。
ベンド配向液晶セルに、55Hz矩形波で、5または5.5Vの電圧を印加し、436nm、546nmおよび611.5nmの波長でReレターデーション値を測定した。
【0111】
(液晶表示装置の作製)
作製したベンド配向セルを挟むように、作製した楕円偏光板を二枚貼り付けた。楕円偏光板の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。
【0112】
[比較例3]
(光学異方性層の形成)
ディスコティック液晶性化合物の重合反応(紫外線照射)を空気中で実施した以外は、実施例3と同様に光学異方性層を形成した。
光学異方性層と透明支持体との積層体のレターデーションを測定したところ、面内レターデーション(Re)は38nmであった。
【0113】
(アルカリ処理)
透明支持体と光学異方性層との積層体を、55℃の1.5N水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬してアルカリ処理した。流水で洗浄した後、乾燥した。
アルカリ処理後の面内レターデーション(Re)を測定したところ、35nm(処理前−3nm)であった。ディスコティック液晶性分子の溶出量を調べたところ、溶出した液晶性分子は全体の0.033重量%であった。また、溶出したレターデーション上昇剤は全体の0.68重量%であった。
【0114】
[実施例4]
(配向膜の形成)
実施例1で作製した透明支持体の第2下塗り層の上に、実施例3で用いた変性ポリビニルアルコールを0.5μmの厚さに塗布、乾燥して、配向膜を形成した。
【0115】
(光学異方性層の形成)
配向膜の上に、以下の組成の塗布液を#4のバーコーターを用いて塗布した。
【0116】
Figure 0004067722
【0117】
塗布層を130℃で1分間加熱した。
透明支持体と光学異方性層との積層体を密閉容器内に入れ、酸素濃度が9%以下になるまで空気を窒素ガスに置換した。次に、500mJ/cm2 の紫外線を照射し、ディスコティック液晶性化合物を重合させ、その配向状態を固定した。このようにして光学異方性層を形成した。
光学異方性層の面内レターデーション(Re)は10nmであった。
【0118】
(アルカリ処理)
透明支持体と光学異方性層との積層体を、55℃の1.5N水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬してアルカリ処理した。流水で洗浄した後、乾燥した。
アルカリ処理後の面内レターデーション(Re)を測定したところ、9nm(処理前−1nm)であった。ディスコティック液晶性分子の溶出量を調べたところ、溶出した液晶性分子は全体の0重量%であった。また、溶出したレターデーション上昇剤は全体の0.26重量%であった。
【0119】
(楕円偏光板の作製)
光学異方性層およびの積層体の透明支持体面に、偏光膜を粘着剤を介して貼り合わて、楕円偏光板を作製した。
【0120】
(液晶表示装置の作製)
垂直配向型の液晶セルを使用した液晶モニター(VL−1520T、富士通(株)製)の裏側と表側の偏光板を剥がし、代わりに作製した楕円偏光板を表側に、市販の偏光板(HLC2−5618HCS、(株)サンリッツ製)を裏側に貼り付けて、液晶表示装置を作製した。
【0121】
[比較例4]
(光学異方性層の形成)
ディスコティック液晶性化合物の重合反応(紫外線照射)を空気中で実施した以外は、実施例4と同様に光学異方性層を形成した。
光学異方性層と透明支持体との積層体のレターデーションを測定したところ、面内レターデーション(Re)は10nmであった。
【0122】
(アルカリ処理)
透明支持体と光学異方性層との積層体を、55℃の1.5N水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬してアルカリ処理した。流水で洗浄した後、乾燥した。
アルカリ処理後の面内レターデーション(Re)を測定したところ、7nm(処理前−3nm)であった。ディスコティック液晶性分子の溶出量を調べたところ、溶出した液晶性分子は全体の0.033重量%であった。また、溶出したレターデーション上昇剤は全体の0.65重量%であった。
【0123】
[実施例5]
(配向膜の形成)
実施例1で作製した透明支持体の第2下塗り層の上に、実施例1で用いた変性ポリビニルアルコールを0.5μmの厚さに塗布、乾燥して、配向膜を形成した。配向膜の表面をラビング処理した。
【0124】
(光学異方性層の形成)
実施例1で用いたディスコティック液晶性化合物(1)1.8g、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)0.2g、セルロースアセテートブチレート(CAB551−0.2、イーストマンケミカル社製)0.04g、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1.0、イーストマンケミカル社製)0.01g、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)0.06gおよび増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.02gを、メチルエチルケトン3.3gに溶解して塗布液を調製した。塗布液を#10のワイヤーバーで配向膜の上に塗布した。これを、140℃の恒温槽中で3分間加熱し、ディスコティック液晶性化合物を配向させた。
透明支持体と光学異方性層との積層体を密閉容器内に入れ、酸素濃度が9%以下になるまで空気を窒素ガスに置換した。140℃の温度で、120W/cmの高圧水銀灯を用いて1分間紫外線を照射し、ディスコティック液晶性化合物のビニル基を重合させ、配向状態を固定した。その後、室温まで放冷した。
光学異方性層と透明支持体との積層体のレターデーションを測定したところ、面内レターデーション(Re)が165nmであった。
【0125】
(アルカリ処理)
透明支持体と光学異方性層との積層体を、55℃の1.5N水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬してアルカリ処理した。流水で洗浄した後、乾燥した。
アルカリ処理後の面内レターデーション(Re)を測定したところ、9nm(処理前−1nm)であった。ディスコティック液晶性分子の溶出量を調べたところ、溶出した液晶性分子は全体の0重量%であった。また、溶出したレターデーション上昇剤は全体の0.26重量%であった。
【0126】
(楕円偏光板の作製)
光学異方性層およびの積層体の透明支持体面に、偏光膜を粘着剤を介して貼り合わて、楕円偏光板を作製した。
【0127】
(液晶表示装置の作製)
ITO透明電極が設けられたガラス基板の上に、ポリイミド配向膜を設け、ラビング処理を行った。ITO透明電極が設けられたガラス基板をもう一枚用意し、SiO蒸着膜を設けた。二枚のガラス基板を向き合わせ、セルギャップを4μmに設定した。セルギャップに、棒状液晶性分子(ZLI1132、メルク社製)を注入し、液晶層を形成した。液晶性分子のΔnは0.1396であった。
以上のように作製したHAN型液晶セルの一方の側に、楕円偏光板を一枚、液晶セルのラビング方向と光学異方性層のラビング方向とは反平行となるように配置した。また、偏光膜の透過軸と液晶セルのラビング方向とは、45゜の角度となるように配置した。楕円偏光板とは反対側の面に、鏡を反射板として設けた。
作製した反射型液晶表示装置の表示面の法線方向から20度傾けた方向に光源を置き、光を照射した。液晶セルには、55Hzの矩形波で電圧を印加した。白表示2V、黒表示5Vのノーマリーホワイトモードとして、上下左右でコントラスト比が10の領域を視野角として測定した。その結果、上方向の視野角は49゜、下方向の視野角KH亜60゜、そして左右の視野角は105゜であった。
【0128】
[比較例5]
(光学異方性層の形成)
ディスコティック液晶性化合物の重合反応(紫外線照射)を空気中で実施した以外は、実施例4と同様に光学異方性層を形成した。
光学異方性層と透明支持体との積層体のレターデーションを測定したところ、面内レターデーション(Re)は165nmであった。
【0129】
(アルカリ処理)
透明支持体と光学異方性層との積層体を、55℃の1.5N水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬してアルカリ処理した。流水で洗浄した後、乾燥した。
アルカリ処理後の面内レターデーション(Re)を測定したところ、7nm(処理前−3nm)であった。ディスコティック液晶性分子の溶出量を調べたところ、溶出した液晶性分子は全体の0.033重量%であった。また、溶出したレターデーション上昇剤は全体の0.68重量%であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】楕円偏光板の基本的な構成を示す模式図である。
【図2】楕円偏光板の製造における光学異方性層の形成工程を示す断面模式図である。
【図3】楕円偏光板の製造におけるケン化処理工程を示す断面模式図である。
【図4】透過型液晶表示装置の基本的な構成を示す模式図である。
【図5】反射型液晶表示装置の基本的な構成を示す模式図である。
【符号の説明】
Light 光
2 窒素ガス
NaOH 水酸化ナトリウム水溶液
BL バックライト
RP 反射板
0 配向膜
1、1a、1b、1c 透明保護膜
2、2a、2b 偏光膜
3、3a、3b 透明支持体
31 透明支持体のケン化処理面
4、4a、4b 光学異方性層
41 光学異方性層のケン化処理面
5a 液晶セルの下基板
5b 液晶セルの上基板
6 棒状液晶性分子からなる液晶層

Claims (4)

  1. セルロースエステルフイルムからなる透明支持体上に、重合性液晶性分子を配向させ、さらに空気中の酸素と光学異方性層との接触を抑制した状態で重合性液晶性分子を重合させることにより光学異方性層を設ける工程、光学異方性層を設けた透明支持体を、40乃至70℃でpH10以上のアルカリ水溶液に20乃至300秒浸漬することにより、アルカリ処理する工程、そして、光学異方性層を設けた透明支持体、透明保護膜および偏光膜を、透明保護膜、偏光膜、透明支持体および光学異方性層の順序に積層する工程からなる楕円偏光板の製造方法。
  2. セルロースエステルフイルムが芳香族環を少なくとも二つ有し、二つの芳香族環の立体配座を立体障害しない分子構造を有するレターデーション上昇剤を含む請求項1に記載の製造方法。
  3. セルロースエステルフイルムからなる透明支持体上に、重合性液晶性分子を配向させ、さらに酸素量を13%以下まで削減して、重合性液晶性分子を重合させることにより光学異方性層を設ける工程、光学異方性層を設けた透明支持体を、40乃至70℃でpH10以上のアルカリ水溶液に20乃至300秒浸漬することにより、アルカリ処理する工程、そして、光学異方性層を設けた透明支持体、透明保護膜および偏光膜を、透明保護膜、偏光膜、透明支持体および光学異方性層の順序に積層する工程からなる楕円偏光板の製造方法。
  4. セルロースエステルフイルムが芳香族環を少なくとも二つ有し、二つの芳香族環の立体配座を立体障害しない分子構造を有するレターデーション上昇剤を含む請求項3に記載の製造方法。
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