JP4067648B2 - 芳香族ポリカーボネート樹脂 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真用感光体材料として有用な新規芳香族ポリカーボネート樹脂に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネート樹脂として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下ビスフェノールAと略称する)にホスゲンやジフェニルカーボネートを反応させて得られるポリカーボネート樹脂がその代表的なものとして知られている。かかるビスフェノールAからのポリカーボネート樹脂は、透明性、耐熱性、寸法精度および機械的強度などの面で優れた性質を有していることから、多くの分野で用いられている。そのひとつの例として、電子写真法において使用される有機感光体用のバインダー樹脂としてさまざまな検討がなされている。有機感光体の代表的な構成例として、導電性基板上に電荷発生層、電荷輸送層を順次積層した積層感光体が挙げられる。電荷輸送層は低分子電荷輸送材料とバインダー樹脂より形成され、このバインダー樹脂として芳香族ポリカーボネート樹脂が多数提案されている。しかしながら、低分子電荷輸送材料の含有により、バインダー樹脂が本来有する機械的強度を低下させ、このことが感光体の摩耗性劣化、傷、クラックなどの原因となり、感光体の耐久性を損なうものとなっている。
【0003】
一方、ポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、トリフェニルアミンを側鎖に有するアクリル系樹脂[M.Stolkaet al,J.Polym.Sci.,21,969(1983)]およびベンジジン構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂(特開昭64−9964号公報)などの光導電性高分子材料が検討されているが、実用化には至っていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の実情に鑑みてなされたものであって、有機感光体用の電荷輸送性高分子材料として特に有用な新規芳香族ポリカーボネート樹脂を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の構成単位を含有する新規芳香族ポリカーボネート樹脂により上記課題が解決されることを見出し、本発明に至った。
【0006】
即ち、本発明は以下の(1)〜(12)である。
【0007】
(1)下記一般式(1)で表される構成単位を含有したポリカーボネート樹脂。
【化21】
(式中、R1は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。Ar1、Ar2、Ar4、Ar5は置換もしくは無置換のアリレン基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Ar3は置換もしくは無置換のアリール基を表す。)
(2)下記一般式(1)及び下記一般式(2)で表される構成単位からなり、一般式(1)で表される構成単位の組成比をk、一般式(2)で表される構成単位の組成比をjとしたときに組成比の割合が0<k/(k+j)≦1であるポリカーボネート樹脂。
【化22】
(式中、R1は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。Ar1、Ar2、Ar4、Ar5は置換もしくは無置換のアリレン基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Ar3は置換もしくは無置換のアリール基を表す。)
【化23】
[式中、Xは脂肪族の2価基、芳香族の2価基、又はこれらを連結してできる2価基、又は、
【化24】
(ここで、R2、R3、R4、R5は独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基またはハロゲン原子であり、a及びbは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数であり、Yは単結合、炭素原子数2〜12の直鎖状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、
【化25】
から選ばれ、Y1、Y2は置換もしくは無置換の脂肪族の2価基又は置換もしくは無置換のアリレン基を表し、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、また、R6とR7は結合して炭素数6〜12の炭素環または複素環を形成してもよく、また、R13、R14は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を表し、eは0〜4の整数を表す。)を表す。]
(3)下記一般式(4)で表される構成単位を含有したポリカーボネート樹脂。
【化26】
(式中、R1は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、R19、R20は水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。Ar3は置換もしくは無置換のアリール基を表す。)
(4)下記一般式(4)及び下記一般式(2)で表される構成単位からなり、一般式(4)で表される構成単位の組成比をk、一般式(2)で表される構成単位の組成比をjとしたときに組成比の割合が0<k/(k+j)≦1であるポリカーボネート樹脂。
【化27】
(式中、R1は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、R19、R20は水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。Ar3は置換もしくは無置換のアリール基を表す。)
【化28】
[式中、Xは脂肪族の2価基、芳香族の2価基、又はこれらを連結してできる2価基、又は、
【化29】
(ここで、R2、R3、R4、R5は独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基またはハロゲン原子であり、a及びbは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数であり、Yは単結合、炭素原子数2〜12の直鎖状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、
【化30】
から選ばれ、Y1、Y2は置換もしくは無置換の脂肪族の2価基又は置換もしくは無置換のアリレン基を表し、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、また、R6とR7は結合して炭素数6〜12の炭素環または複素環を形成してもよく、また、R13、R14は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を表し、eは0〜4の整数を表す。)を表す。]
(5)下記一般式(6)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネート樹脂。
【化31】
(式中、R1は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、R19、R20は水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。Ar3は置換もしくは無置換のアリール基を表す。)
(6)下記一般式(6)及び下記一般式(2)で表される構成単位からなり、一般式(6)で表される構成単位の組成比をk、一般式(2)で表される構成単位の組成比をjとしたときに組成比の割合が0<k/(k+j)≦1であるポリカーボネート樹脂。
【化32】
(式中、R1は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、R19、R20は水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。Ar3は置換もしくは無置換のアリール基を表す。)
【化33】
[式中、Xは脂肪族の2価基、芳香族の2価基、又はこれらを連結してできる2価基、又は、
【化34】
(ここで、R2、R3、R4、R5は独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基またはハロゲン原子であり、a及びbは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数であり、Yは単結合、炭素原子数2〜12の直鎖状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、
【化35】
から選ばれ、Y1、Y2は置換もしくは無置換の脂肪族の2価基又は置換もしくは無置換のアリレン基を表し、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、また、R6とR7は結合して炭素数6〜12の炭素環または複素環を形成してもよく、また、R13、R14は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を表し、eは0〜4の整数を表す。)を表す。]
(7)下記一般式(8)で表される繰り返し単位からなるポリカーボネート樹脂。
【化36】
(式中、R1は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、R19、R20、R21は水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。)
(8)下記一般式(8)及び下記一般式(2)で表される構成単位からなり、一般式(8)で表される構成単位の組成比をk、一般式(2)で表される構成単位の組成比をjとしたときに組成比の割合が0<k/(k+j)≦1であるポリカーボネート樹脂。
【化37】
(式中、R1は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、R19、R20、R21は水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基を表し、それぞれ同一でも異なっていても良い。)
【化38】
[式中、Xは脂肪族の2価基、芳香族の2価基、又はこれらを連結してできる2価基、又は、
【化39】
(ここで、R2、R3、R4、R5は独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基またはハロゲン原子であり、a及びbは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数であり、Yは単結合、炭素原子数2〜12の直鎖状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、
【化40】
から選ばれ、Y1、Y2は置換もしくは無置換の脂肪族の2価基又は置換もしくは無置換のアリレン基を表し、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、また、R6とR7は結合して炭素数6〜12の炭素環または複素環を形成してもよく、また、R13、R14は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を表し、eは0〜4の整数を表す。)を表す。]
【0032】
上記のように本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は電荷輸送能を有する前記一般式(1)、前記一般式(4)、前記一般式(6)及び前記一般式(8)で示される構成単位を少なくとも含有するポリカーボネート樹脂であり、電荷輸送能を有する前記一般式(1)、前記一般式(4)、前記一般式(6)及び前記一般式(8)で示される構成単位のみからなるポリカーボネート樹脂、または電荷輸送能を有する前記一般式(1)、前記一般式(4)、前記一般式(6)及び前記一般式(8)で示される構成単位と電荷輸送能以外の特性を付与するための構成単位として前記一般式(2)で示される構成単位とからなる共重合ポリカーボネート樹脂である。これら芳香族ポリカーボネート樹脂は電荷輸送能をもち、且つ高い機械的強度を有し、電子写真感光体の電荷輸送層に要求される電気的な性質、光学的な性質、機械的な性質を合わせ持ったものである。
【0033】
以下に本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造法について説明する。
【0034】
本発明のポリカーボネート樹脂は従来ポリカーボネート樹脂の製造法として公知の、ビスフェノールと炭酸誘導体との重合と同様の方法で製造できる。すなわち、下記一般式(10)、(11)、(12)、(13)で表される電荷輸送能を有するジオールを少なくとも1種以上使用し、ビスアリールカーボネートとのエステル交換法やホスゲン等のハロゲン化カルボニル化合物との溶液又は界面重合法あるいはジオールから誘導されるビスクロロホーメート等のクロロホーメートを用いる方法等により製造される。ハロゲン化カルボニル化合物としてはホスゲンの代わりにホスゲンの2量体であるトリクロロメチルクロロホーメートやホスゲンの3量体であるビス(トリクロロメチル)カーボネートも有用であり、塩素以外のハロゲンより誘導されるハロゲン化カルボニル化合物、例えば、臭化カルボニル、ヨウ化カルボニル、フッ化カルボニルも有用である。これら公知の製造法については例えばポリカーボネート樹脂ハンドブック(編者:本間精一、発行:日刊工業新聞社)等に記載されている。又、一般式(10)、(11)、(12)、(13)で表される電荷輸送能を有するジオール1種以上と併用して下記一般式(14)で表されるジオールを使用し、機械的特性等の改良された共重合体とすることができる。この場合、一般式(14)で表されるジオールを1種あるいは複数併用してもよい。一般式(10)、(11)、(12)、(13)で表される電荷輸送能を有するジオールと一般式(14)で表されるジオールとの割合は所望の特性により広い範囲から選択することができる。又、適当な重合操作を選択することによって共重合体の中でもランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、ランダム交互共重合体、ランダムブロック共重合体等を得ることができる。例えば、一般式(10)、(11)、(12)、(13)で表される電荷輸送能を有するジオールと一般式(14)で表されるジオールをはじめから均一に混合してホスゲンとの縮合反応を行えば一般式(1)あるいは(4)あるいは(6)あるいは(8)で表される構成単位と一般式(2)で表される構成単位とからなるランダム共重合体が得られる。又、幾種類かのジオールを反応の途中から加えることによりランダムブロック共重合体が得られる。又、一般式(14)で表されるジオールから誘導されるビスクロロホーメートと一般式(10)、(11)、(12)、(13)で表される電荷輸送能を有するジオールとの縮合反応を行えば一般式(3)、(5)、(7)、(9)で表される繰り返し単位からなる交互共重合体が得られる。この場合、逆に一般式(10)、(11)、(12)、(13)で表される電荷輸送能を有するジオールから誘導されるビスクロロホーメートと一般式(14)で表されるジオールとの縮合反応によっても同様に一般式(3)、(5)、(7)、(9)で表される繰り返し単位からなる交互共重合体が得られる。又、これらビスクロロホーメートとジオールとの縮合反応の際、ビスクロロホーメート及びジオールを複数使用することによりランダム交互共重合体が得られる。
【0035】
【化23】
【0036】
(各式中、R1、R19、R20、R21、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4、Ar5、Xは前定義と同一である。)
界面重合においては、ジオールのアルカリ水溶液と水に対して実質的に不溶性であり、且つ、ポリカーボネートを溶解する有機溶媒との2相間で炭酸誘導体及び触媒の存在下に反応を行う。この際、高速撹拌や乳化物質の添加によって反応媒体を乳化させて行うことによって短時間で分子量分布の狭いポリカーボネートを得ることができる。アルカリ水溶液に用いる塩基としてはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、通常、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩等である。これらの塩基は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。好ましい塩基は、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。使用される水は蒸留水、イオン交換水が好ましい。有機溶媒は、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族ハロゲン化炭化水素、又は、それらの混合物である。又、それらにトルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等を混合した有機溶媒でもよい。有機溶媒は、好ましくは、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族ハロゲン化炭化水素であり、より好ましくは、ジクロロメタン又はクロロベンゼンである。
【0037】
ポリカーボネート製造時に使用されるポリカーボネート生成触媒は、3級アミン、4級アンモニウム塩、3級ホスフィン、4級ホスホニウム塩、含窒素複素環化合物及びその塩、イミノエーテル及びその塩、アミド基を有する化合物等である。ポリカーボネート生成触媒の具体例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,4−テトラメチレンジアミン、4−ピロリジノピリジン、N,N′−ジメチルピペラジン、N−エチルピペリジン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、フェニルトリエチルアンモニウムクロライド、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルブチルホスフィン、テトラ(ヒドロキシメチル)ホスホニウムクロライド、ベンジルトリエチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、4−メチルピリジン、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、3−メチルピリダジン、4,6−ジメチルピリミジン、1−シクロヘキシル−3,5−ジメチルピラゾール、2,3,5,6−テトラメチルピラジン等である。これらのポリカーボネート生成触媒は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。ポリカーボネート生成触媒は、好ましくは、3級アミンであり、より好ましくは、総炭素数3〜30の3級アミンであり、特に好ましくは、トリエチルアミンである。
【0038】
これら触媒は、ホスゲンやビスクロロホーメート体等の炭酸誘導体を反応系に加える前、及び又は、加えた後に添加することができる。
【0039】
以上すべての重合操作において分子量を調節するために分子量調節剤として末端停止剤を用いることが望ましく、従って、本発明で使用されるポリカーボネート樹脂の末端には停止剤にもとづく置換基が結合してもよい。使用される末端停止剤は、1価の芳香族ヒドロキシ化合物、1価の芳香族ヒドロキシ化合物のハロホーメート誘導体、1価のカルボン酸または1価のカルボン酸のハライド誘導体等である。1価の芳香族ヒドロキシ化合物は、例えば、フェノール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、p−エチルフェノール、p−イソプロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、2,4−キシレノール、p−メトキシフェノール、p−ヘキシルオキシフェノール、p−デシルオキシフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、ペンタブロモフェノール、ペンタクロロフェノール、p−フェニルフェノール、p−イソプロペニルフェノール、2,4−ジ(1′−メチル−1′−フェニルエチル)フェノール、β−ナフトール、α−ナフトール、p−(2′,4′,4′−トリメチルクロマニル)フェノール、2−(4′−メトキシフェニル)−2−(4″−ヒドロキシフェニル)プロパン等のフェノール類またはそれらのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩である。1価の芳香族ヒドロキシ化合物のハロホーメート誘導体は、上記の1価の芳香族ヒドロキシ化合物のハロホーメート誘導体等である。
【0040】
1価のカルボン酸は、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、2,2−ジメチルプロピオン酸、3−メチル酪酸、3,3−ジメチル酪酸、4−メチル吉草酸、3,3−ジメチル吉草酸、4−メチルカプロン酸、3,5−ジメチルカプロン酸、フェノキシ酢酸等の脂肪酸類またはそれらのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩、安息香酸、p−メチル安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−ブトキシ安息香酸、p−オクチルオキシ安息香酸、p−フェニル安息香酸、p−ベンジル安息香酸、p−クロロ安息香酸等の安息香酸類またはそれらのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩である。1価のカルボン酸のハライド誘導体は、上記の1価のカルボン酸のハライド誘導体等である。これらの末端封止剤は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。末端封止剤は、好ましくは、1価の芳香族ヒドロキシ化合物であり、より好ましくは、フェノール、p−tert−ブチルフェノールまたはp−クミルフェノールである。本発明のポリカーボネート樹脂の好ましい分子量はポリスチレン換算数平均分子量で1000〜500000であり、より好ましくは10000〜200000である。
【0041】
又、機械的特性を改良するために重合時に分岐化剤を少量加えることもできる。使用される分岐化剤は、芳香族性ヒドロキシ基、ハロホーメート基、カルボン酸基、カルボン酸ハライド基または活性なハロゲン原子等から選ばれる反応基を3つ以上(同種でも異種でもよい)有する化合物である。分岐化剤の具体例は、フロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4′−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4′−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4′−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2−トリス(4′−ヒドロキシフェニル)プロパン、α,α,α′−トリス(4′−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン、2,4−ビス[α−メチル−α−(4′−ヒドロキシフェニル)エチル]フェノール、2−(4′−ヒドロキシフェニル)−2−(2″,4″−ジヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)ホスフィン、1,1,4,4−テトラキス(4′−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス[4′,4′−ビス(4″−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、α,α,α′,α′−テトラキス(4′−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジエチルベンゼン、2,2,5,5−テトラキス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1,2,3−テトラキス(4′−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(4′,4″−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、3,3′5,5′−テトラヒドロキシジフェニルエーテル、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ビス(クロロカルボニルオキシ)安息香酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、4−クロロカルボニルオキシイソフタル酸、5−ヒドロキシフタル酸、5−クロロカルボニルオキシフタル酸、トリメシン酸トリクロライド、シアヌル酸クロライド等である。これらの分岐化剤は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。
【0042】
また、アルカリ水溶液中でのジオールの酸化を防ぐためにハイドロサルファイト等の酸化防止剤を加えても良い。
【0043】
反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間であり、反応中のpHは通常10以上に保つことが好ましい。
【0044】
一方、溶液重合においては、ジオールを溶媒に溶解し、脱酸剤を添加し、これにビスクロロホーメート又は、ホスゲン又は、ホスゲンの多量体を添加することにより得られる。脱酸剤としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンのような第3級アミンおよびピリジンが使用される。反応に使用される溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素およびテトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル系の溶媒及びピリジンが好ましい。又、界面重合の場合と同様な分子量調節剤や分岐化剤を用いることができる。反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間である。
【0045】
又、エステル交換法によっても製造される。この場合、不活性ガス存在下にジオールとビスアリールカーボネートを混合し、通常減圧下120〜350℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には1mmHg以下にして生成するフェノール類を系外に留去させる。反応時間は通常1〜4時間程度である。又、必要に応じて分子量調節剤や酸化防止剤を加えてもよい。ビスアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられる。
【0046】
以上のようにして得られたポリカーボネート樹脂は重合中に使用した触媒や酸化防止剤、又、未反応のジオールや末端停止剤、又、重合中に発生した無機塩等の不純物を除去して使用される。これら精製操作も先のポリカーボネート樹脂ハンドブック(編者:本間精一、発行:日本工業新聞社)等に記載されている従来公知の方法を使用できる。
【0047】
又、上記の方法にしたがって製造された芳香族ポリカーボネート樹脂には、必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤、可塑剤などの添加剤を加えることができる。
【0048】
次に本発明の主要な構成単位である前記一般式(1)について具体例を挙げて、さらに詳細に説明する。
【0049】
R1、R19、R20、R21の置換もしくは無置換のアルキル基としては炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基はさらにハロゲン原子、フェニル基、炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基で置換されたフェニル基を含有してもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソープロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、イソ−ブチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基等が挙げられる。
【0050】
R1、Ar3の置換もしくは無置換のアリール基としては、フェニル基が挙げられ、これらは上述した置換もしくは無置換のアルキル基を置換基として有していてもよい。具体的には、フェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基などが挙げられる。
【0051】
Ar1、Ar2,Ar4、Ar5の置換もしくは無置換のアリーレン基としてはR1、Ar3で定義された置換もしくは無置換のアリール基から誘導される2価基を挙げることができる。
【0052】
以上一般式(1)の構成単位について説明したが同一の記号については他の一般式中でも同じ定義である。
【0053】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は電荷輸送能を有する前記一般式(1)の構成単位のみからなるポリカーボネート樹脂及びその構成単位と機械的特性を調節するためのそれ以外の構成単位との共重合体である。それ以外の構成単位としては従来公知のポリカーボネート樹脂の構成単位をそのまま利用することができる。例えば、ポリカーボネート樹脂ハンドブック(編者:本間精一、発行:日本工業新聞社)に記載されている基本単位を利用することができる。このような従来公知の構成単位のうち、好ましい例として前記一般式(2)で表される構成単位を挙げることができる。以下にもう一つの主要な構成単位である一般式(2)についてその原料となる前記一般式(14)の例を挙げて詳細に説明する。
【0054】
一般式(14)のXが脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基である場合のジオールの代表的具体例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、キシリレンジオール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,4−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシブチル)ベンゼン、1,4−ビス(5−ヒドロキシペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(6−ヒドロキシヘキシル)ベンゼン等である。
【0055】
また、Xが芳香族の2価基である場合としてはR1、Ar3に定義された置換もしくは無置換のアリール基から誘導される2価基を挙げることができる。また、Xは以下に示される2価基を表す。
【0056】
【化24】
【0057】
(ここで、R2、R3、R4、R5は独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基またはハロゲン原子であり、a及びbは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数であり、Yは単結合、炭素原子数2〜12の直鎖状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、
【0058】
【化25】
【0059】
から選ばれ、Y1、Y2は置換もしくは無置換の脂肪族の2価基又は置換もしくは無置換のアリレン基を表し、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、また、R6とR7は結合して炭素数6〜12の炭素環または複素環を形成してもよく、また、R6、R7はR2、R3と共同で炭素環または複素環を形成してもよく、R13、R14は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R15、R16は各々独立して炭素数1〜5の置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、eは0〜4の整数、fは0〜20の整数、gは0〜2000の整数を表す。)
これらの中で、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基は、いずれもR1、R19、R20、R21、Ar3で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基と同様である。又、ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を表す。またY1、Y2が置換もしくは無置換の脂肪族の2価基である場合としてはXが脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基である場合のジオールからヒドロキシ基を除いた2価基を挙げることができる。又、Y1、Y2が置換もしくは無置換のアリーレン基である場合としてはR1、R19、R20、Ar3で定義された置換もしくは無置換のアリール基から誘導される2価基を挙げることができる。
【0060】
これらXが芳香族の2価基である場合の好ましいジオールの代表的具体例としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジメチルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)マダマンタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテル、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3′−ジメチル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、3,3′−ジメチル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3′−ジフェニル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ケトン、3,3,3′,3′−テトラメチル−6,6′−ジヒドロキシスピロ(ビス)インダン、3,3′,4,4′−テトラヒドロ−4,4,4′,4′−テトラメチル−2,2′−スピロビ(2H−1−ベンゾピラン)−7,7′−ジオール、トランス−2,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブテン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)キサンテン、1,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,6−ヘキサンジオン、α,α,α′,α′−テトラメチル−α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α′,α′−テトラメチル−α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−キシレン、2,6−ジヒドロキシベンゾ−p−シオキシン、2,6−ジヒドロキシチアントレン、2,7−ジヒドロキシフェノキサチイン、9,10−ジメチル−2,7−ジヒドロキシフェナジン、3,6−ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6−ジヒドロキシジベンゾチオフェン、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、1,4−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシピレン、ハイドロキノン、レゾルシン、エチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート、ジエチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート、トリエチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−テトラメチルジシロキサン、フェノール変性シリコーンオイル等が挙げられる。又、ジオール2モルとイソフタロイルクロライド又はテレフタロイルクロライド1モルとの反応により製造されるエステル結合を含む芳香族ジオール化合物も有用である。
【0061】
以上一般式(2)の構成単位についてその原料となる一般式(14)の例を挙げて説明したが同一の記号については他の一般式中でも同じ定義である。
【0062】
一般式(1)の構成単位と一般式(2)の構成単位との共重合ポリカーボネート樹脂において一般式(1)の構成単位の含有する割合は任意の範囲で選択することができるが、一般式(1)の構成単位の含有率はポリカーボネート樹脂の電荷輸送性に対応しているので、好ましくは全構成単位中5モル%以上、より好ましくは20モル%以上含有することが望ましい。
【0063】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を説明する。しかし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0064】
実施例1
下記式
【0065】
【化26】
【0066】
で表されるヒドロキシスチルベン化合物2.92g(5.6mmol)とビスフェノールZ1.99g(7.4mmol)、t−ブチルフェノール0.050gを反応容器に入れ、アルゴンガス気流下、ハイドロサルファイト0.062gと水酸化ナトリウム2.60gを溶解させたイオン交換水41mlを加え撹拌した。これにトリホスゲン1.54gを溶解させたジクロロメタン35mlを20℃で滴下した後、トリエチルアミン1滴を加え、90分間反応させた。この反応液にクロロギ酸フェニル0.107gを加えて、さらに2時間撹拌した。得られた反応液にジクロロメタン200mlを加え、3%水酸化ナトリウム水溶液、2%塩酸水溶液、イオン交換水の順に洗浄した後、メタノール中に再沈殿させて下記式
【0067】
【化27】
【0068】
で表されるポリカーボネート樹脂4.31g(収率85.7%)を得た。
【0069】
得られたポリカーボネート樹脂の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ、ポリスチレン換算の分子量は以下のとおりであった。
【0070】
数平均分子量 44500
重量平均分子量 90800
ガラス転移温度(Tg)は163.8℃であった。
【0071】
元素分析値はC25.88H21.87N0.43O3として下記の通りであった。
【0072】
また、赤外線吸収スペクトル(キャスト膜)を図1に示す。
【0073】
実施例2〜5
原料であるヒドロキシスチルベン化合物と共重合種を表1に示すものに変えるほかは、実施例1と同様に操作して樹脂No.2〜5のポリカーボネート樹脂を得た。結果を表2にまとめて示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
応用例1
アルミ板上にメタノール/ブタノール混合溶媒に溶解したポリアミド樹脂(CM−8000:東レ社製)溶液をドクターブレードで塗布し、自然乾燥して0.3μmの中間層を設けた。この上に電荷発生物質として下記式で表されるビスアゾ化合物をシクロヘキサノンと2−ブタノンの混合溶媒中でボールミルにより粉砕し、得られた分散液をドクターブレードで塗布し、自然乾燥して0.5μmの電荷発生層を形成した。
【0078】
【化28】
【0079】
次に、電荷輸送物質として実施例1で得られた樹脂No.1のポリカーボネート樹脂をジクロロメタンに溶解し、この溶液を前記電荷発生層上にドクターブレードで塗布し、自然乾燥し、次いで120℃で20分間乾燥して厚さ20μmの電荷輸送層を形成して感光体No.1を作製した。
【0080】
かくしてつくられた感光体No.1について市販の静電複写紙試験装置((株)川口電機製作所製 SP428型)を用いて暗所で−6kVのコロナ放電を20秒間行って帯電せしめた後、感光体の表面電位Vm(V)を測定し、更に20秒間暗所に放置した後、表面電位V0(V)を測定した。次いで、タングステンランプ光を感光体表面での照度が4.5luxになるように照射して、V0が1/2になるまでの時間(秒)を求め、露光量E1/2(lux・sec)を算出した。その結果を、以下に示す。
【0081】
Vm=−1480V
V0=−1269V
E1/2=1.31 lux・sec
また、以上の感光体を市販の電子写真複写機を用いて帯電せしめた後、原図を介して光照射を行って静電潜像を形成せしめ、乾式現像剤を用いて現像し、得られた画像(トナー画像)を普通紙上に静電転写し、定着したところ、鮮明な転写画像が得られた。現像剤として湿式現像剤を用いた場合も同様に鮮明な転写画像が得られた。
【0082】
【発明の効果】
本発明に係わる新規芳香族ポリカーボネート樹脂は、前記したように光導電性素材として有効に機能し、又、染料やルイス酸等の増感剤によって光学的あるいは化学的に増感される。又、電子写真用感光体の感光層の電荷輸送物質等として好適に使用され、特に電荷発生層と電荷輸送層を2層に区分した、いわゆる機能分離型感光層における電荷輸送物質として有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたポリカーボネート樹脂のIRスペクトル。
【図2】実施例2で得られたポリカーボネート樹脂のIRスペクトル。
【図3】実施例3で得られたポリカーボネート樹脂のIRスペクトル。
【図4】実施例4で得られたポリカーボネート樹脂のIRスペクトル。
【図5】実施例5で得られたポリカーボネート樹脂のIRスペクトル。
Claims (8)
- 下記一般式(1)及び下記一般式(2)で表される構成単位からなり、一般式(1)で表される構成単位の組成比をk、一般式(2)で表される構成単位の組成比をjとしたときに組成比の割合が0<k/(k+j)≦1であるポリカーボネート樹脂。
- 下記一般式(4)及び下記一般式(2)で表される構成単位からなり、一般式(4)で表される構成単位の組成比をk、一般式(2)で表される構成単位の組成比をjとしたときに組成比の割合が0<k/(k+j)≦1であるポリカーボネート樹脂。
- 下記一般式(6)及び下記一般式(2)で表される構成単位からなり、一般式(6)で表される構成単位の組成比をk、一般式(2)で表される構成単位の組成比をjとしたときに組成比の割合が0<k/(k+j)≦1であるポリカーボネート樹脂。
- 下記一般式(8)及び下記一般式(2)で表される構成単位からなり、一般式(8)で表される構成単位の組成比をk、一般式(2)で表される構成単位の組成比をjとしたときに組成比の割合が0<k/(k+j)≦1であるポリカーボネート樹脂。
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