JP4117718B2 - 芳香族ポリカーボネート樹脂、電子写真用感光体および電子写真装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真用感光体材料として有用な芳香族ポリカーボネート樹脂、およびこれを用いた電子写真用感光体、プロセスカートリッジ並び電子写真装置に関し、特に感光層中に電荷輸送能を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を含有した高感度で且つ高耐久の電子写真用感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネート樹脂として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下ビスフェノールAと略称する)にホスゲンやジフェニールカーボネートを反応させて得られるポリカーボネート樹脂がその代表的なものとして知られている。かかるビスフェノールAからのポリカーボネート樹脂は、透明性、耐熱性、寸法精度および機械的強度などの面で優れた性質を有していることから、多くの分野で用いられている。
【0003】
近年、有機感光体(OPC)が複写機、プリンターに多く使用されている。有機感光体の代表的な構成例として、導電性基板上に電荷発生層(CGL)、電荷輸送層(CTL)を順次積層した積層感光体が挙げられる。電荷輸送層は低分子電荷輸送材料(CTM)とバインダー樹脂より形成される。しかしながら、低分子電荷輸送材料の含有により、バインダー樹脂が本来有する機械的強度を低下させ、このことが感光体の摩耗性、傷、クラック等の原因となり、感光体の耐久性を損うものとなっている。
【0004】
光導電性高分子材料としては古くはポリビニルアントラセン、ポリビニルピレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール等のビニル重合体が電荷移動錯体型の感光体として検討されたが、光感度の点で満足できるものではなかった。一方、前述の積層型感光体の欠点を改良すべく、電荷輸送能を有する高分子材料に関する検討がなされている。例えばトリフェニルアミン構造を有するアクリル系樹脂(M.Stolka et al,J.Polym.Sci.,vol 21,969(1983))、ヒドラゾン構造を有するビニル重合体(Japan HardCopy ’89 P.67)及びトリアリールアミン構造を有するポリカーボネート樹脂(米国特許4,801,517号、同4,806,443号、同4,806,444号、同4,937,165号、同4,959,288号、同5,030,532号、同5,034,296号、同5,080,989号各明細書、特開昭64−9964号、特開平3−221522号、特開平2−304456号、特開平4−11627号、特開平4−175337号、特開平4−18371号、特開平4−31404号、特開平4−133065号各公報)等であるが、実用化には至っていない。
【0005】
M.A.Abkowitzらはテトラアリールベンジジン誘導体をモデル化合物として低分散型と高分子化されたポリカーボネートとの比較を行っているが、高分子系はドリフト移動度が一桁低いとの結果を得ている[Physical Review B46 6705(1992)]。この原因については明らかではないが、高分子化することにより機械的強度は改善されるものの、感度、残留電位等電気的特性に課題があることを示唆している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の実情に鑑みてなされたものであって、有機感光体用の電荷輸送性高分子材料として特に有用な特定の末端基を有する芳香族ポリカーボネート樹脂並びにそれを用いた電子写真用感光体を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、トリアリ−ルアミン構造を有する電荷輸送性高分子材料、特に特定の構造を有する末端基を導入した電荷輸送性ポリカーボネート樹脂により上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1は、末端基が高級脂肪族基、フッ素置換脂肪族基あるいは置換シロキシ基を含有することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂にある。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は電荷輸送能をもち、且つ特定の末端基の導入により高い機械的強度を有し、電子写真感光体の電荷輸送層に要求される電気的な性質、光学的な性質、機械的な性質を合わせ持ったものである。
【0008】
本発明の第2は、下記一般式(1)で表わされる請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂にある。
【化4】
【0009】
[式中、Ar1、Ar2、Ar3は置換もしくは無置換のアリレン基、R′、R″は同一又は異なる置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。kは5〜5000の整数、jは5〜5000の整数であり、0<k/(k+j)≦1である。T1およびT2は高級脂肪族基、フッ素置換脂肪族基あるいは置換シロキシ基で置換されたアリール基、高級脂肪族基、フッ素置換脂肪族基あるいは置換シロキシ基で置換されたアルキル基、無置換のアリール基、および無置換のアルキル基よりなる群から選ばれ、T1およびT2のうちの少なくとも一つは高級脂肪族基、フッ素置換脂肪族基あるいは置換シロキシ基で置換されているものである。Xは置換または無置換の脂肪族二価基、置換または無置換環状脂肪族二価基、置換または無置換芳香族二価基あるいはこれらを連結してできる二価基、および下式(2)であらわされる基よりなる群から選ばれた基を意味する。)
【0010】
【化5】
(前式中、R1、R2、R3、R4は独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、またはハロゲン原子である。またa及びbは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数である。R1、R2、R3、R4は、それぞれに複数個存在するときは同一でも異なっていても良い。Yは単結合、炭素原子数2〜12の直鎖状のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素原子数3〜12の分岐状のアルキレン基、一つ以上の炭素数1〜10のアルキレン基と一つ以上の酸素原子及び硫黄原子から構成される二価基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−COO−、および下記(3)式で表される基よりなる群から選ばれ、Z1、Z2は置換もしくは無置換の脂肪族の二価基又は置換もしくは無置換のアリレン基、R5、R6、R12はハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基、R7、R8、R9、R10、R11は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。またR6とR7は結合して炭素数5〜12の炭素環を形成してもよい。R13とR14は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基、R15とR16は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。eとgは0〜4の整数、fは1又は2、hは0〜20の整数、iは0〜2000の整数を表す。]
【0011】
【化6】
【0012】
本発明の第3は、導電性支持体上に、前記芳香族ポリカーボネート樹脂、または前記一般式(1)で表わされる芳香族ポリカーボネート樹脂を有効成分として含有した感光層を設けたことを特徴とする電子写真用感光体にある。
【0013】
本発明の第4は、前記第3の電子写真用感光体、帯電装置、像露光手段、現像手段及び転写手段を装着したことを特徴とする電子写真装置にある。
【0014】
本発明の第5は、前記第3の電子写真用感光体と、帯電装置、像露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも一つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジにある。
【0015】
【発明の実施の形態】
芳香族ポリカーボネート樹脂
先ず、本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法について説明する。
本発明のポリカーボネート樹脂は、従来ポリカーボネート樹脂の製造法として公知の、ビスフェノールと炭酸誘導体との重合で製造できる。すなわち電荷輸送能を有するジオールを少なくとも1種以上使用、或いは、これらと下記一般式(4)で表されるジオールとを併用し、ビスアリールカーボネートとのエステル交換法やホスゲン等のハロゲン化カルボニル化合物との溶液又は界面重合法、あるいはジオールから誘導されるビスクロロホーメート等のクロロホーメートを用いる方法等により製造される。
HO−X−OH (4)
(式中、Xは前記に同じ)
【0016】
前記ハロゲン化カルボニル化合物を用いる方法において、該ハロゲン化カルボニル化合物としては、ホスゲンの代わりにホスゲンの2量体であるトリクロロメチルクロロホーメートやホスゲンの3量体であるビス(トリクロロメチル)カーボネートも有用であり、塩素以外のハロゲンより誘導されるハロゲン化カルボニル化合物、例えば、臭化カルボニル、ヨウ化カルボニル、フッ化カルボニルも有用である。これら公知の製造法については例えばポリカーボネート樹脂ハンドブック(編者:本間精一、発行:日刊工業新聞社)等に記載されている。
【0017】
特に、前記したように電荷輸送能を有するジオール1種以上と併用して前記一般式(4)で表されるジオールを使用し、機械的特性等の改良された共重合体とすることができる。特定の末端基の導入とともに前記一般式(4)で表されるジオールの使用は機械的特性等の改良に重要な役割を果たす。なお、一般式(4)で表されるジオールは1種あるいは複数併用してもよい。電荷輸送能を有するジオールと一般式(2)で表されるジオールとの割合は所望の特性により広い範囲から選択することができる。
【0018】
適当な重合操作を選択することによって共重合体の中でもランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、ランダム交互共重合体、ランダムブロック共重合体等を得ることができる。例えば、電荷輸送能を有するジオールと一般式(4)で表されるジオールをはじめから均一に混合してホスゲンとの縮合反応を行えばランダム共重合体が得られる。又、幾種類かのジオールを反応の途中から加えることによりランダムブロック共重合体が得られる。又、一般式(4)で表されるジオールから誘導されるビスクロロホーメートと電荷輸送能を有するジオールとの縮合反応を行えば交互共重合体が得られる。この場合、逆に電荷輸送能を有するジオールから誘導されるビスクロロホーメートと一般式(4)で表されるジオールとの縮合反応によっても同様に交互共重合体が得られる。又、これらビスクロロホーメートとジオールとの縮合反応の際、ビスクロロホーメート及びジオールを複数使用することによりランダム交互共重合体が得られる。
【0019】
ハロゲン化カルボニル化合物や、クロロホーメートを用いる方法において、界面重合で行う場合には、ジオールのアルカリ水溶液と水に対して実質的に不溶性であり、且つ、ポリカーボネート樹脂を溶解する有機溶媒との2相関で炭酸誘導体及び触媒の存在下に反応を行う。この際、高速攪拌や乳化物質の添加によって反応媒体を乳化させて行うことによって短時間で分子量分布の狭いポリカーボネート樹脂を得ることができる。アルカリ水溶液に用いる塩基としてはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、通常、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩等である。これらの塩基は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。好ましい塩基は、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである。また、使用される水は蒸留水、イオン交換水が好ましい。
【0020】
有機溶媒
有機溶媒は、例えば、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族ハロゲン化炭化水素、又は、それらの混合物である。又、それらにトルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等を混合した有機溶媒でもよい。有機溶媒は、好ましくは、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族ハロゲン化炭化水素であり、より好ましくは、ジクロロメタン又はクロロベンゼンである。
【0021】
ポリカーボネート生成触媒
ポリカーボネート樹脂の製造時に使用されるポリカーボネート生成触媒は、3級アミン、4級アンモニウム塩、3級ホスフィン、4級ホスホニウム塩、含窒素複素環化合物及びその塩、イミノエーテル及びその塩、アミド基を有する化合物等である。ポリカーボネート生成触媒の具体例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−テトラメチレンジアミン、4−ピロリジノピリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−エチルピペリジン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、フェニルトリエチルアンモニウムクロライド、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルブチルホスフィン、テトラ(ヒドロキシメチル)ホスホニウムクロライド、ベンジルトリエチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、4−メチルピリジン、1−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、3−メチルピリダジン、4,6−ジメチルピリミジン、1−シクロヘキシル−3,5−ジメチルピラゾール、2,3,5,6,−テトラメチルピラジン等である。ポリカーボネート生成触媒は、好ましくは、3級アミンであり、より好ましくは、総炭素数3〜30の3級アミンであり、特に好ましくは、トリエチルアミンである。これらのポリカーボネート生成触媒は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。これらの触媒は、ホスゲンやビスクロロホーメート体等の炭酸誘導体を反応系に加える前、及び/又は、加えた後に添加することができる。
また、アルカリ水溶液中でのジオールの酸化を防ぐためにハイドロサルファイト等の酸化防止剤を加えても良い。反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間であり、反応中のpHは通常10以上に保つことが好ましい。
【0022】
脱酸剤
一方、溶液重合で行う場合は、ジオールを溶媒に溶解し、脱酸剤を添加し、これにビスクロロホーメート又は、ホスゲン又は、ホスゲンの多量体を添加することにより得られる。脱酸剤としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンのような第3級アミンおよびピリジンが使用される。また、反応に使用される溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素およびテトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル系の溶媒及びピリジンが好ましい。反応温度は通常0〜40℃、反応時間は数分〜5時間である。
【0023】
エステル交換法
また、エステル交換法によっても製造される。この場合、不活性ガス存在下にジオールとビスアリールカーボネートを混合し、通常減圧下120〜350℃で反応させる。減圧度は段階的に変化させ、最終的には1mmHg以下にして生成するフェノール類を系外に留去させる。反応時間は通常1〜4時間程度である。必要に応じて酸化防止剤を加えてもよい。
ビスアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられる。
【0024】
重合調整剤
以上すべての重合操作において分子量を調節する目的と本発明の主要目的である機械的特性の向上に関わる特定の末端基を導入するために、以下の重合調整剤が用いられる。
炭素数4以上好ましくは6以上の高級脂肪族基で置換されたアルコール類、カルボン酸類またはフェノール類、フッ素置換脂肪族基で置換されたアルコール類、カルボン酸類またはフェノール類、置換シロキシ基で置換されたアルコール類、カルボン酸類またはフェノール類が挙げられる。
また、ポリカーボネートの製造にあたり一般的に用いられる以下に例示される重合調整剤を併用してもよい。例えば一価の芳香族ヒドロキシ化合物、一価の芳香族ヒドロキシ化合物のハロホーメート誘導体、一価のカルボン酸または一価のカルボン酸のハライド誘導体である。一価の芳香族ヒドロキシ化合物は、例えば、フェノール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、p−エチルフェノール、p−イソプロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、2,4−キシレノール、p−メトキシフェノール、p−ヘキシルオキシフェノール、p−デシルオキシフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、ペンタブロモフェノール、ペンタクロロフェノール、p−フェニルフェノール、p−イソプロペニルフェノール、2,4−ジ(1’−メチル−1’−フェニルエチル)フェノール、β−ナフトール、α−ナフトール、p−(2’,4’,4’−トリメチルクロマニル)フェノール、2−(4’−メトキシフェニル)−2−(4”−ヒドロキシフェニル)プロパン等のフェノール類またはそれらのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩である。一価の芳香族ヒドロキシ化合物のハロホーメート誘導体は、上記の一価の芳香族ヒドロキシ化合物のハロホーメート誘導体などである。
【0025】
一価のカルボン酸は、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、2,2−ジメチルプロピオン酸、3−メチル酪酸、3,3−ジメチル酪酸、4−メチル吉草酸、3,3−ジメチル吉草酸、4−メチルカプロン酸、3,5−ジメチルカプロン酸、フェノキシ酢酸等の脂肪酸類またはそれらのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩、安息香酸、p−メチル安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−ブトキシ安息香酸、p−オクチルオキシ安息香酸、p−フェニル安息香酸、p−ベンジル安息香酸、p−クロロ安息香酸等の安息香酸類またはそれらのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩である。一価のカルボン酸のハライド誘導体は、上記の一価のカルボン酸のハライド誘導体である。これらの末端封止剤は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。末端封止剤は、好ましくは、一価の芳香族ヒドロキシ化合物であり、より好ましくは、フェノール、p−tert−ブチルフェノールまたはp−クミルフェノールである。
【0026】
分岐化剤
機械的特性を改良するために重合時に分岐化剤を少量加えることもできる。使用される分岐化剤は、芳香族性ヒドロキシ基、ハロホーメート基、カルボン酸基、カルボン酸ハライド基または活性なハロゲン原子等から選ばれる反応基を3つ以上(同種でも異種でもよい)有する化合物である。分岐化剤の具体例は、フロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、α,α,α’−トリス(4’−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼン、2,4−ビス[α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル]フェノール、2−(4’−ヒドロキシフェニル)−2−(2”,4”−ジヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)ホスフィン、1,1,4,4−テトラキス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス[4’,4’−ビス(4”−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン、α,α,α’,α’−テトラキス(4’−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジエチルベンゼン、2,2,5,5,−テトラキス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1,2,3−テトラキス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(4’,4”−ジヒドロキシトリフェニルメチル)ベンゼン、3,3’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルエーテル、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ビス(クロロカルボニルオキシ)安息香酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、4−クロロカルボニルオキシイソフタル酸、5−ヒドロキシフタル酸、5−クロロカルボニルオキシフタル酸、トリメシン酸トリクロライド、シアヌル酸クロライド等である。これらの分岐化剤は単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。
【0027】
以上のようにして得られたポリカーボネート樹脂は重合中に使用した触媒や酸化防止剤、又、未反応のジオールや末端停止剤、又、重合中に発生した無機塩等の不純物を除去して使用される。これら精製操作も先のポリカーボネート樹脂ハンドブック(編者:本間精一、発行:日刊工業新聞社)等に記載されている従来公知の方法を使用できる。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の好ましい分子量は、ポリスチレン換算数平均分子量で1000〜500000であり、より好ましくは5000〜200000である。分子量が小さすぎると機械的耐久性が損なわれ、また大きすぎると本発明の末端基の効果が得られにくくなる。但し、本発明のポリカーボネート樹脂を高感度化および高耐久化のための添加剤として用いる場合はこの限りではない。すなわちオリゴマーサイズ等の低分子量体であってもよい。又、上記これらの方法にしたがって製造された芳香族ポリカーボネート樹脂には、必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。
【0028】
以下に一般式(1)について詳細に説明する。
前記一般式(1)中、R′およびR″の置換もしくは無置換のアルキル基としては以下のものを挙げることができる。
炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基は更にフッ素原子、シアノ基、フェニル基又はハロゲン原子もしくは炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基で置換されたフェニル基を含有してもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基等が挙げられる。
【0029】
R′およびR″の置換もしくは無置換のアリール基としては以下のものを挙げることができる。
フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、フルオレニリデンフェニル基、5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテニリデンフェニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフラニル基、カルバゾリル基、ピリジニル基、ピロリジル基、オキサゾリル基等が挙げられ、これらは上述した置換もしくは無置換のアルキル基、上述した置換もしくは無置換のアルキル基を有するアルコキシ基、及びフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、下記一般式(5)で表されるアミノ基を置換基として有していてもよい。
【0030】
【化7】
(式中、R17、R18はR15、R16で定義される置換もしくは無置換のアルキル基、R15、R16で定義される置換もしくは無置換のアリール基を表すと共に、R17とR18が共同で環を形成したり、アリール基上の炭素原子と共同で環を形成してもよい。このような具体例としてピペリジノ基、モルホリノ基、ユロリジル基等が挙げられる。)
前記一般式(1)中、Ar1、Ar2およびAr3は置換もしくは無置換のアリレン基を表すが、具体的な例示としてR′およびR″で定義した置換もしくは無置換のアリール基から誘導される二価基を挙げることが出来る。
【0031】
前記一般式(1)で示される芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するための電荷輸送能を有するジオールの製造法は、例えば特開平9−272735号公報に詳細に記載されているが、従来公知のトリアリ−ルアミン構造を有する電荷輸送性ポリマーを製造するための電荷輸送能を有するジオールに関しても本発明の方法を適応出来る。例えばアセトフェノン誘導体(特開平8−269183号公報に記載)、ジスチリルベンゼン誘導体(特開平9−71642号公報に記載)、ジフェネチルベンゼン誘導体(特開平9−104746号公報に記載)、ブタジエン誘導体(特開平9−235367号公報に記載)、水素化ブタジエン誘導体(特開平9−87376号公報に記載)、ジフェニルシクロヘキサン誘導体(特開平9−110976号公報に記載)、ジスチリルトリフェニルアミン誘導体(特開平9−268226号公報に記載)、ジスチリルジアミン誘導体(JP9702434)、ジフェニルジスチリルベンゼン誘導体(特開平9−221544号、同9−227669号公報に記載)、スチルベン誘導体(特開平9−157378号公報、JP9702582に記載)、m−フェニレンジアミン誘導体(特開平9−302084号、同9−302085号公報に記載)、レゾルシン誘導体(特開平9−328539号公報に記載)、フルオレン誘導体(特開平11−5836号公報に記載)、フェノキシスチルベン誘導体(特開平11−71453号公報に記載)など。またトリアリールアミン構造を有するポリカーボネート樹脂(米国特許4,801,517号、同4,806,443号、同4,806,444号、同4,937,165号、同4,959,288号、同5,030,532号、同5,034,296号、同5,080,989号各明細書、特開昭64−9964号、特開平3−221522号、特開平2−304456号、特開平4−11627号、特開平4−175337号、特開平4−18371号、特開平4−31404号、特開平4−133065号各公報)等の電荷輸送性ポリマーを製造するための電荷輸送能を有するジオールに関しても同様に使用できる。
【0032】
前記一般式(2)のXが脂肪族の二価基、環状脂肪族の二価基である場合のジオールの代表的具体例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、キシリレンジオール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,4−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシブチル)ベンゼン、1,4−ビス(5−ヒドロキシペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(6−ヒドロキシヘキシル)ベンゼン、イソホロンジオール等である。
【0033】
Xが芳香族の二価基である場合、前記の定義された置換もしくは無置換のアリール基から誘導される二価基を挙げることができる。また、Xは下式(2)で示される二価基であっても良い。
【化8】
【0034】
(前式中、R1、R2、R3、R4は独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基またはハロゲン原子である。またa及びbは各々独立して0〜4の整数であり、c及びdは各々独立して0〜3の整数であり、R1、R2、R3、R4がそれぞれに複数個存在するときは同一でも異なっていても良い。Yは単結合、炭素原子数2〜12の直鎖状のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素原子数3〜12の分岐状のアルキレン基、一つ以上の炭素数1〜10のアルキレン基と一つ以上の酸素原子及び硫黄原子から構成される二価基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−COO−、または下記式(7)
で表される基よりなる群から選ばれる。
Z1、Z2は置換もしくは無置換の脂肪族の二価基又は置換もしくは無置換のアリレン基を表し、R5、R6、R12はハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、R7、R8、R9、R10、R11は各々独立して水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。またR6とR7は結合して炭素数5〜12の炭素環を形成してもよく、R13とR14は単結合または炭素数1〜4のアルキレン基を表し、R15とR16は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表し、eとgは0〜4の整数、fは1又は2、hは0〜20の整数、iは0〜2000の整数を表す。)を表す。]
【0035】
一つ以上のアルキレン基と一つ以上の酸素原子及び硫黄原子から構成される二価基の具体例としては、OCH2CH2O、OCH2CH2OCH2CH2O、OCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2O、OCH2CH2CH2O、OCH2CH2CH2CH2O、OCH2CH2CH2CH2CH2CH2O、OCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2O、CH2O、CH2CH2O、CHEtOCHEtO、CHCH3O、SCH2OCH2S、CH2OCH2、OCH2OCH2O、SCH2CH2OCH2OCH2CH2S、OCH2CHCH3OCH2CHCH3O、SCH2S、SCH2CH2S、SCH2CH2CH2S、SCH2CH2CH2CH2S、SCH2CH2CH2CH2CH2CH2S、SCH2CH2SCH2CH2S、SCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2S等が挙げられる。
【0036】
また炭素原子数3〜12の分岐状のアルキレン基に修飾する置換基としては置換もしくは無置換のアリール基、またはハロゲン原子が挙げられる。これらの中で、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基は、いずれも本発明中で定義された置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基と同様である。
また、Z1、Z2が置換もしくは無置換の脂肪族の二価基である場合としてはXが脂肪族の二価基、環状脂肪族の二価基である場合のジオールからヒドロキシ基を除いた二価基を挙げることができる。Z1、Z2が置換もしくは無置換のアリレン基である場合としては前記の定義された置換もしくは無置換のアリール基から誘導される二価基を挙げることができる。
【0037】
【化9】
【0038】
Xが芳香族の二価基である場合の好ましいジオールの代表的具体例としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス〈4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−ジメチルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ぺンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルぺンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)へキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)へプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)へキサフルオロプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロぺンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ケトン、3,3,3’,3’−テトラメチル−6,6’−ジヒドロキシスピロ(ビス)インダン、3,3’,4,4’−テトラヒドロ−4,4,4’,4’−テトラメチル−2,2’−スピロビ(2H−1−べンゾピラン)−7,7’−ジオール、トランス−2,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブテン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)キサンテン、1,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,6−へキサンジオン、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−キシレン、2,6−ジヒドロキシジベンゾ−p−ジオキシン、2,6−ジヒドロキシチアントレン、2,7−ジヒドロキシフェノキサチイン、9,10−ジメチル−2,7−ジヒドロキシフェナジン、3,6−ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6−ジヒドロキシジベンゾチオフェン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,4−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシピレン、ハイドロキノン、レゾルシン、4−ヒドロキシフェニル−4−ヒドロキシベンゾエート、エチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、ジエチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、トリエチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、p−フェニレン−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、1,6−ビス(4−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−1H,1H,6H,6H−パーフルオロヘキサン、1,4−ビス(4−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−1H,1H,4H,4H−パーフルオロブタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラメチルジシロキサン、フェノール変性シリコーンオイル等が挙げられる。又、ジオール2モルとイソフタロイルクロライド又はテレフタロイルクロライド1モルとの反応により製造されるエステル結合を含む芳香族ジオール化合物も有用である。
以上一般式(2)について説明したが、同一の符号については他の一般式中でも同じ定義である。
【0039】
本発明の電子写真用感光体に使用される電荷輸送能を有するポリカーボネート樹脂の構造について説明してきたが、該ポリカーボネート樹脂を感光層中に含有させる実施形態について以下に説明する。
【0040】
本発明の感光体の断面図を図1〜図6に示す。
本発明の感光体は前記のような芳香族ポリカーボネート樹脂の1種または2種以上を感光層2(2′,2″,2′′′,2′′′′,2′′′′′)に含有させたものであるが、これらの応用の仕方によって図1、図2、図3、図4、図5あるいは図6に示したごとくに用いることができる。
【0041】
図1における感光体は導電性支持体1上に増感染料及び芳香族ポリカーボネート樹脂、場合により結合剤(結着樹脂)よりなる感光層2が設けられたものである。ここでの芳香族ポリカーボネート樹脂は光導電性物質として作用し、光減衰に必要な電荷担体の生成及び移動は芳香族ポリカーボネート樹脂を介して行われる。しかしながら、芳香族ポリカーボネート樹脂は光の可視領域においてほとんど吸収を有していないので、可視光で画像を形成する目的のためには、可視領域に吸収を有する増感染料を添加して増感する必要がある。
【0042】
図2における感光体は導電性支持体1上に電荷発生物質3を電荷輸送能を有する芳香族ポリカーボネート樹脂単独あるいは結合剤と併用してなる電荷輸送媒体4の中に分散せしめた感光層2′が設けられたものである。ここでの芳香族ポリカーボネート樹脂は単独であるいは結合剤との併用で電荷輸送媒体を形成し、一方、電荷発生物質3(無機又は有機顔料のような電荷発生物質)が電荷担体を発生する。この場合、電荷輸送媒体4は主として電荷発生物質3が発生する電荷担体を受入れ、これを輸送する作用を担当している。そしてこの感光体にあっては電荷発生物質と芳香族ポリカーボネート樹脂とが、互いに主として可視領域において吸収波長領域が重ならないというのが基本的条件である。これは電荷発生物質3に電荷担体を効率よく発生させるためには、電荷発生物質表面まで光を透過させる必要があるからである。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は波長600nm以上にほとんど吸収がなく、一般に可視領域から近赤外領域の光線を吸収し、電荷担体を発生する電荷発生物質3とを組合せた場合、特に有効に電荷輸送物質として働くのがその特長である。なお、上記電荷輸送媒体4中に低分子電荷輸送物質を含有させてもよい。
【0043】
図3における感光体は導電性支持体1上に電荷発生物質3を主体とする電荷発生層5と、電荷輸送能を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を含有する電荷輸送層4との積層からなる感光層2″が設けられたものである。この感光体では電荷輸送層4を透過した光が電荷発生層5に到達し、その領域で電荷担体の発生が起こり、一方電荷輸送層4は電荷担体の注入を受け、その輸送を行うもので、光減衰に必要な電荷担体の発生は電荷発生物質3で行われ、また電荷担体の輸送は電荷輸送層4で行われる。こうした機構は図2に示した感光体においてした説明と同様である。
電荷輸送層4は本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂単独あるいは結合剤との併用で形成される。また電荷発生効率を高めるために、電荷発生層5に本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を含有させてもよい。同様の目的で感光層2’’中に低分子電荷輸送物質を併用してもよい。後述の感光層2′′′′〜2′′′′′についても同様である。
【0044】
図4における感光体は電荷輸送層4上に保護層6を設けたものである。本構成の場合は電荷輸送層4上に本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂あるいは結合剤との併用で保護層が形成される。当然のことながら、従来多く使用されている低分子分散型電荷輸送層上への形成が効果的である。なお図2に示した感光層2’上へ同様に保護層が設けられてもよい。
【0045】
図5における感光体は図3の電荷発生層5と芳香族ポリカーボネート樹脂を含有する電荷輸送層4の積層順を逆にしたものであり、その電荷担体の発生及び輸送の機構は上記の説明と同様にできる。この場合機械的強度を考慮し図6のように電荷発生層5の上に保護層6を設けることもできる。
【0046】
実際に本発明の感光体を作製するには、図1に示した感光体であれば、電荷輸送能を有する芳香族ポリカーボネート樹脂の1種または2種以上あるいはそれと結合剤と併用して溶解し、更にこれに増感染料を加えた液をつくり、これを導電性支持体1上に塗布し乾燥して感光層2を形成すればよい。
感光層の厚さは3〜50μm、好ましくは5〜40μmが適当である。感光層2に占める芳香族ポリカーボネート樹脂の量は30〜100重量%であり、また、感光層2に占める増感染料の量は0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%である。
【0047】
増感染料としてはブリリアントグリーン、ビクトリアブルーB、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アシッドバイオレット6Bのようなトリアリールメタン染料、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミンGエキストラ、エオシンS、エリトロシン、ローズベンガル、フルオレセインのようなキサンテン染料、メチレンブルーのようなチアジン染料、シアニンのようなシアニン染料が挙げられる。
【0048】
図2に示した感光体を作製するには、1種又は2種以上の電荷輸送能を有する芳香族ポリカーボネート樹脂あるいは結合剤を併用し溶解した溶液に電荷発生物質3の微粒子を分散せしめ、これを導電性支持体1上に塗布し乾燥して感光層2′を形成すればよい。感光層2′の厚さは3〜50μm、好ましくは5〜40μmが適当である。感光層2′に占める電荷輸送能を有する芳香族ポリカーボネート樹脂の量は40〜100重量%であり、また、感光層2′に占める電荷発生物質3の量は0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%である。
【0049】
電荷発生物質3としては、例えばセレン、セレン−テルル、硫化カドミウム、硫化カドミウム−セレン、α−シリコンなどの無機材料、有機材料としては例えばシーアイピグメントブルー25(カラーインデックスCI21180)、シーアイピグメントレッド41(CI21200)、シーアイアシッドレッド52(CI45100)、シーアイベーシックレッド3(CI45210)、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−95033号公報に記載)、ジスチリルベンゼン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−133445号公報)、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−132347号公報に記載)、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−21728号公報に記載)、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−12742号公報に記載)、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−22834号公報に記載)、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−17733号公報に記載)、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−2129号公報に記載)、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−14967号公報に記載)などのアゾ顔料、例えばシーアイバットブラウン5(CI73410)、シーアイバットダイ(CI73030)などのインジゴ系顔料、アルゴスカーレットB(バイエル社製)、インダンスレンスカーレットR(バイエル社製)などのペリレン系顔料などが挙げられる。
また、下記式(6)で表されるフタロシアニン顔料も電荷発生物質として有用である。式中M(中心金属)は、金属および無金属(水素)を表わす。
【0050】
【化10】
【0051】
前式において、M(中心金属)は、H、Li、Be、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Th、Pa、U、Np、Am等の単体、もしくは酸化物、塩化物、フッ化物、水酸化物、臭化物などの2種以上の元素からなる。中心金属は、これらの元素に限定されるものではない。
【0052】
本発明におけるフタロシアニン骨格を有する電荷発生物質とは、少なくとも一般式(N)の基本骨格を有していればよく、2量体、3量体など多量体構造を持つもの、さらに高次の高分子構造を持つものでもかまわない。また基本骨格に様々な置換基があるものでもかまわない。
これらの様々なフタロシアニンのうち、中心金属にTiOを有するオキソチタニウムフタロシアニン、Hを有する無金属フタロシアニンは、感光体特性的に、特に好ましい。
またこれらのフタロシアニンは、様々な結晶系を持つことも知られており、例えばオキソチタニウムフタロシアニンの場合、α、β、γ、m、y型等、銅フタロシアニンの場合、α、β、γ等の結晶多系を有している。同じ中心金属を持つフタロシアニンにおいても、結晶系が変わることにより、種々の特性も変化する。その中で、感光体特性も、このような結晶系変化に伴い、変化することが報告されている。(電子写真学会誌 第29巻 第4号(1990))
このことから、各フタロシアニンは、感光体特性的に、最適な結晶系が存在し、特にオキソチタニウムフタロシアニンにおいては、y型の結晶系が望ましい。
また、上記記載の電荷発生物質は2種以上混合していてもかまわない。
【0053】
図3に示した感光体を作製するには、導電性支持体1に電荷発生物質を真空蒸着するか、あるいは電荷発生物質の微粒子3を必要によって結合剤を溶解した適当な溶媒中に分散した分散液を塗布し乾燥して、更に必要であればバフ研磨などの方法によって表面仕上げ、膜厚調整などを行って電荷発生層5を形成し、この上に1種又は2種以上の電荷輸送能を有する芳香族ポリカーボネート樹脂あるいは結合剤と併用し溶解した溶液を塗布し乾燥して電荷輸送層4を形成すればよい。
なお、ここで電荷発生層5の形成に用いられる電荷発生物質は、前記の感光層2′の説明と同じものである。
【0054】
電荷発生層5の厚さは5μm以下、好ましくは2μm以下であり、電荷輸送層4の厚さは3〜50μm、好ましくは5〜40μmが適当である。電荷発生層5が電荷発生層物質の微粒子3を結合剤中に分散させたタイプのものにあっては、電荷発生物質の微粒子3の電荷発生層5に占める割合は10〜100重量%、好ましくは50〜100重量%程度である。又、電荷輸送層4に占める電荷輸送能を有するポリカーボネート樹脂の量は40〜100重量%である。
【0055】
図3における感光層2”に低分子電荷輸送物質を含有してもよいことは前記のとおりであるが、ここに用いられる該電荷輸送物質としては下記のものが挙げられる。
オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体(特開昭52−139065号、同52−139066号公報に記載)、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体(特開平3−285960号公報に記載)、ベンジジン誘導体(特公昭58−32372号公報に記載)、α−フェニルスチルベン誘導体(特開昭57−73075号公報に記載)、ヒドラゾン誘導体(特開昭55−154955号、同55−156954号、同55−52063号、同56−81850号などの公報に記載)、トリフェニルメタン誘導体(特公昭51−10983号公報に記載)、アントラセン誘導体(特開昭51−94829号公報に記載)、スチリル誘導体(特開昭56−29245号、同58−198043号各公報に記載)、カルバゾール誘導体(特開昭58−58552号公報に記載)、ピレン誘導体(特開平2−94812号公報に記載)など。
【0056】
図4に示した感光体を作成するには、図3に示した感光体上に本発明の電荷輸送能を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を単独であるいは結合剤と併用して溶解し塗布し、乾燥して、保護層6が設けられる。保護層の厚さは0.15〜10μmが好ましい。保護層6中に占める本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の量は40〜100重量%である。
【0057】
図5に示した感光体を作成するには導電性支持体1上に電荷輸送能を有する芳香族ポリカーボネート樹脂あるいは結合剤と併用し溶解した溶液を塗布し、乾燥して電荷輸送層4を形成したのち、この電荷輸送層の上に電荷発生層物質の微粒子を必要によって結合剤を溶解した溶媒中に分散した分散液をスプレー塗工等の方法で塗布乾燥して電荷発生層5を形成すればよい。電荷発生層あるいは電荷輸送層の量比は図3で説明した内容と同様である。
このようにして得られた感光体の電荷発生層5の上に前述の保護層6を形成することにより、図6に示す感光体を作成できる。
【0058】
前記いずれの感光体製造においても、導電性支持体1にはアルミニウムなどの金属板又は金属箔、アルミニウムなどの金属を蒸着したプラスチックフィルム、あるいは導電処理を施した紙などが用いられる。
結合剤としてはポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネートなどの縮合樹脂や、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドのようなビニル重合体などが用いられるが、絶縁性で且つ接着性のある樹脂はすべて使用できる。必要により可塑剤が結合剤に加えられているが、そうした可塑剤としてはハロゲン化パラフィン、ジメチルナフタリン、ジブチルフタレートが例示できる。また必要に応じて酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤などの添加剤を加えることができる。
以上のようにして得られる感光体には、導電性支持体と感光層の間に、必要に応じて接着層又はバリヤ層を設けることができる。これらの層に用いられる材料としては、ポリアミド、ニトロセルロース、酸化アルミニウム、酸化チタンなどであり、また膜厚は1μm以下が好ましい。
【0059】
本発明の感光体を用いて複写を行うには、感光面に帯電、露光を施した後、現像を行い必要によって紙などへ転写を行う。
本発明の感光体は感度が高く、また耐久性に優れている。
【0060】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。なお、下記実施例において、部はすべて重量部である。
【0061】
実施例1
4−{2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル}−4’,4”−ジメチルトリフェニルアミン2.15gおよび2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン1.57gを水酸化ナトリウム2.12gとナトリウムハイドロサルファイト26mgを水27mlに溶解した溶液とともに、窒素気流下30分室温撹拌した。これに4−(n−パーフルオロオクチル)フェノール108mgを塩化メチレン8mlに溶解した溶液を加えた。激しく撹拌しながら20℃にてビス(トリクロロメチル)カーボネート1.88gを塩化メチレン20mlに溶解した溶液を一度に加え15分撹拌を行った後、トリエチルアミン1滴を加え室温にて1時間撹拌した。内容物を塩化メチレンで希釈した後、有機層を分液し、これをイオン交換水で2回洗浄した後2%の塩酸水溶液で洗浄し、その後水層の電導度がイオン交換水の電導度とほぼ等しくなるまで洗浄を繰り返した。有機層を多量のメタノール中に滴下し、濾過、乾燥して淡黄色の下式(7)で表されるポリカーボネート樹脂(No.1)3.66gを得た。
【0062】
【化11】
【0063】
前記ポリカーボネート樹脂(No.1)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量は55500、重量平均分子量は144200であった。示差走査熱量測定から求めたガラス転移温度は157.0℃であった。その赤外吸収スペクトル(薄膜法)を図7に示した。元素分析値(%)実測値(計算値;電荷輸送ユニット0.42、共重合ユニット0.58としての計算値)C78.97(79.93) H5.71(5.81) N1.35(1.56)
【0064】
実施例2〜4
実施例1における4−(n−パーフルオロオクチル)フェノールの代わりに表1に示す化合物を重合調整剤として用いる他は実施例1と同様に操作して表2と3に示す末端基を有すポリカーボネート樹脂を得た。なお重合調整剤の使用量は実施例1での4−{2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル}−4’,4”−ジメチルトリフェニルアミンおよび2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンの合計使用量に対するモル比と同量である。
実施例2で得られたポリカーボネート樹脂(No.2)の赤外吸収スペクトル(薄膜法)を図8に示した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
実施例5
4−{2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル}−4’,4”−ジメチルトリフェニルアミン3.23gおよび2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン2.36gおよび4−(n−パーフルオロオクチル)フェノールのナトリウム塩29mgを水酸化ナトリウム3.18gとナトリウムハイドロサルファイト100mgを水40mlに溶解した溶液とともに、窒素気流下30分室温撹拌した。激しく撹拌しながら20℃にてビス(トリクロロメチル)カーボネート1.88gを塩化メチレン34mlに溶解した溶液を一度に加え70分撹拌を行った後、トリエチルアミン1滴を加え室温にて1時間撹拌した。内容物を塩化メチレンで希釈した後、有機層を分液し、これをイオン交換水で2回洗浄した後2%の塩酸水溶液で洗浄し、その後水層の電導度がイオン交換水の電導度とほぼ等しくなるまで洗浄を繰り返した。有機層を多量のメタノール中に滴下し、濾過、乾燥して淡黄色の実施例1で示したポリカーボネート樹脂(No.1)4.93gを得た。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量は74600、重量平均分子量は891000であった。示差走査熱量測定から求めたガラス転移温度は158.0℃であった。
元素分析値(%)実測値(計算値;電荷輸送ユニット0.42、共重合ユニット0.58としての計算値)
C80.33(79.93) H5.65(5.81) N1.82(1.56)
【0069】
実施例6
4−{2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニル}−4’,4”−ジメチルトリフェニルアミン2.15g、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン1.57gおよび1H,1H、2H,2H−パーフルオロ−1−オクタノール39mgを水酸化ナトリウム2.15gとナトリウムハイドロサルファイト66mgを水27mlに溶解した溶液とともに、窒素気流下30分室温撹拌した。激しく撹拌しながら20℃にてビス(トリクロロメチル)カーボネート1.58gを塩化メチレン22mlに溶解した溶液を一度に加え15分撹拌を行った後、トリエチルアミン1滴を加え室温にて1時間撹拌した。内容物を塩化メチレンで希釈した後、有機層を分液し、これをイオン交換水で2回洗浄した後2%の塩酸水溶液で洗浄し、その後水層の電導度がイオン交換水の電導度とほぼ等しくなるまで洗浄を繰り返した。有機層を多量のメタノール中に滴下し、濾過、乾燥して淡黄色の下式で示されるポリカーボネート樹脂(No.5)3.70gを得た。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量は65400、重量平均分子量は262000であった。
元素分析値(%)実測値(計算値;電荷輸送ユニット0.42、共重合ユニット0.58としての計算値)
C80.23(79.93) H5.75(5.81) N1.62(1.56)
【0070】
【化12】
【0071】
実施例7
4−{2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ビニルフェニル}−4’,4”−ジメチルトリフェニルアミン2.80g、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル2.05gおよび3,5−ジトリフルオロメチルフェノール38mgを水酸化ナトリウム3.13gとナトリウムハイドロサルファイト100mgを水41mlに溶解した溶液とともに、窒素気流下30分室温撹拌した。激しく撹拌しながら20℃にてビス(トリクロロメチル)カーボネート2.10gを塩化メチレン34mlに溶解した溶液を一度に加え15分撹拌を行った後、トリエチルアミン1滴を加え室温にて1時間撹拌した。内容物を塩化メチレンで希釈した後、有機層を分液し、これをイオン交換水で2回洗浄した後2%の塩酸水溶液で洗浄し、その後水層の電導度がイオン交換水の電導度とほぼ等しくなるまで洗浄を繰り返した。有機層を多量のメタノール中に滴下し、濾過、乾燥して淡黄色の下式(8)で示されるポリカーボネート樹脂(No.6)4.35gを得た。
【0072】
【化13】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量は62200、重量平均分子量は158300であった。示差走査熱量測定から求めたガラス転移温度は173.2℃であった。
赤外吸収スペクトル(薄膜法)を図9に示した。
元素分析値(%)実測値(計算値;電荷輸送ユニット0.33、共重合ユニット0.67としての計算値)
C77.90(77.15) H4.70(4.55) N1.30(1.30)
【0073】
実施例8
アルミ板上にメタノール/ブタノール混合溶媒に溶解したポリアミド樹脂(CM−8000;東レ社製)溶液をドクターブレードで塗布し、自然乾燥して0.3μmの中間層を設けた。この上に電荷発生物質として下記式で表されるビスアゾ化合物をシクロヘキサノンとメチルエチルケトンの混合溶媒中でボールミルにより粉砕し、得られた分散液をドクターブレードで塗布し、自然乾燥して約0.5μmの電荷発生層を形成した。
【0074】
【化14】
【0075】
次に電荷輸送物質として実施例1で得られたポリカーボネート樹脂No.1をジクロロメタンに溶解し、この溶液を前記電荷発生層上にドクターブレードで塗布し、自然乾燥し、次いで120℃で20分間乾燥して厚さ20μmの電荷輸送層を形成して感光体No.1を作製した。
【0076】
実施例9〜12
実施例8におけるポリカーボネート樹脂を表3に示すものに代えるほかは実施例8と同様に操作して感光体No.2〜5を作成した。かくしてつくられた感光体について市販の静電複写紙試験装置[(株)川口電機製作所製SP428型]を用いて暗所で−6kVのコロナ放電を20秒間行って帯電せしめた後、感光体の表面電位Vm(V)を測定し、更に20秒間暗所に放置した後、表面電位Vo(V)を測定した。次いでタングステンランプ光を感光体表面での照度が4.5luxになるように照射して、Voが1/2になるまでの時間(秒)を求め、露光量E1/2(lux・sec)を算出した。その結果をあわせて表4に示す。
【0077】
【表4】
【0078】
実施例13〜15
実施例8、9及び12で作製した感光体を試料とし、工業規格JIS K 7204(1995)に従ってテーバー摩耗試験機(東洋精機社製)にてCS−5を摩耗輪とし、荷重1Kgで3000回転の摩耗試験をそれぞれ行い摩耗量を測定した。結果を表5に示した。
【0079】
比較例1
実施例8において用いたポリカーボネート樹脂(No.1)の代わりに特開平9−272735に記載される下記式(10)で示されるポリカーボネート樹脂を用いる他は実施例8と同様に操作して比較感光体No.1を作成した。これを試料として実施例13と同様に摩耗試験を実施し表5の結果を得た。
【0080】
【化15】
【0081】
比較例2
実施例8において用いたポリカーボネート樹脂(No.1)の代わりに、電荷輸送物質として4’−ジ−p−トリルアミノ−α−フェニルスチルベン7重量部、結着樹脂としてポリカーボネ−ト樹脂(帝人化成製 TS2050)10重量部をジクロロメタンに溶解し、この溶液を前記電荷発生層上にドクターブレードで塗布し、自然乾燥し、次いで120℃で20分間乾燥して厚さ20μmの電荷輸送層を形成して比較感光体No.2を作製した。これを試料として実施例13と同様に摩耗試験を実施し表5の結果を得た。
【0082】
【表5】
【0083】
また、実施例13〜15で得られた感光体を市販の電子写真複写機を用いて帯電せしめた後、原図を介して光照射を行って静電潜像を形成せしめ、乾式現像剤を用いて現像し、得られた画像(トナー画像)を普通紙上に静電転写し、定着したところ、鮮明な転写画像が得られた。現像剤として湿式現像剤を用いた場合も同様に鮮明な転写画像が得られた。
【0084】
【発明の効果】
1.請求項1〜2
トリアリ−ルアミン構造を有する電荷輸送性高分子材料、特に電荷輸送性ポリカーボネート樹脂において、特定の構造を有する末端基を導入することにより高感度で高耐久な電子写真用感光体用の芳香族ポリカーボネート樹脂が提供された。
2.請求項3〜4
前記第1の芳香族ポリカーボネート樹脂を電荷輸送性材料として用いることにより、高感度で高耐久な電子写真用感光体が提供された。
3.請求項3〜4
前記第2の電子写真用感光体用いることにより、高感度で高耐久な電子写真装置およびプロセスカートリッジが提供された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図である。
【図3】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図である。
【図4】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図である。
【図5】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図である。
【図6】本発明に係わる電子写真用感光体の層構成の他の例を示す断面図である。
【図7】本発明の実施例1のポリカーボネート樹脂No.1の赤外吸収スペクトル図である。
【図8】本発明の実施例2のポリカーボネート樹脂No.2の赤外吸収スペクトル図である。
【図9】本発明の実施例7のポリカーボネート樹脂No.6の赤外吸収スペクトル図である。
【符号の説明】
1 導電性支持体
2,2′,2″,2′′′,2′′′′,2′′′′′感光層
3 電荷発生物質
4 電荷輸送層又は電荷輸送媒体
5 電荷発生層
6 保護層
Claims (4)
- 下記一般式(1)で表わされる芳香族ポリカーボネート樹脂。
- 導電性支持体上に、請求項2記載の一般式(1)で表わされる芳香族ポリカーボネート樹脂を有効成分として含有した感光層を設けたことを特徴とする電子写真用感光体。
- 請求項2記載の電子写真用感光体、帯電装置、像露光手段、現像手段及び転写手段を少なくとも装着したことを特徴とする電子写真装置。
- 請求項2記載の電子写真用感光体と、帯電装置、像露光手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも一つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
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