図1ないし図11に従って、本発明の第1の実施例を説明する。
(構成)
図1はこの第1の実施例に係る手術用顕微鏡装置の全体の概略的な構成を示している。同図中、符号1は支持装置における支柱であり、この支柱1は支持台4に支持されている。支持台4は底面にキャスターを有した底板4aと立柱4bを備えてなり、その立柱4bの上端部は水平に前方へ屈曲されている。立柱4bの屈曲前方端には前記支柱1が鉛直軸O0 を中心として回転自在に取り付けられている。支柱1の上部には上側の第1の平行四辺形リンク(変位機構)2が接続されており、その支柱1の下部には下側の第2の平行四辺形リンク(変位機構)3が接続されている。
上側に位置する第1の平行四辺形リンク2は平行四辺形を形成するように4本のアーム2a〜2dを配置し、これらを互いに平行な回転軸O1 〜O4 まわりに回動可能に連結してなるものである。そして、この第1の平行四辺形リンク2は前記支柱1の上端部に対し、上方支持部材5を介してその回転軸O1 まわりに回動可能に接続されている。回転軸O1 と鉛直軸O0 とは直交している。
また、下側に位置する第2の平行四辺形リンク3は平行四辺形を形成するように4本のアーム3a〜3dを配置し、これらを互いに平行な回転軸O5 〜O8 まわりに回動可能に連結してなるものである。そして、第2の平行四辺形リンク3は前記支柱1の下端部に下方支持部材6を介し、その回転軸O5 まわりに回動可能に接続されている。回転軸O5 と鉛直軸O0 とは直交し、かつ前記回転軸O1 と平行である。第1の平行四辺形リンク2と第2の平行四辺形リンク3は支柱1の上下の位置に分離して配置されるとともに、相似的に対応関係をもって配置されている。そして、後述する第1の連動機構および第2の連動機構を介して相似的に連繋した変形動作を行うようになっている。
つまり、第1の平行四辺形リンク2のアーム2aは回転軸O1 下側一端から屈曲するアーム部を突き出す全体としてL字形の形状をしており、その突出アーム部の先端部分には前記回転軸O1 と平行な回転軸O13が設けられ、この回転軸O13まわりに回動可能に第1の伝達ロッド7の上端が接続されている。ここで、紙面に平行な面内で回転軸O1 と回転軸O4 を結ぶ線分と、回転軸O1 と回転軸O13を結ぶ線分は直角をなしているが、これに限られるものではない。また、第2の平行四辺形リンク3の対応したアーム3aは回転軸O5 で交差するT字形の形状をしており、その短い中間突出部の先端部分には回転軸O5 と平行な回転軸O14まわりに回動可能に前記第1の伝達ロッド7の下端が接続されている。紙面に平行な面内で回転軸O5 と回転軸O8 を結ぶ線分と、回転軸O5 と回転軸O14を結ぶ線分は前記同様に直角であるが、前述した第1の平行四辺形リンク2のアーム2aの屈曲して突出するアーム部のものと平行ならばこれに限られるものではない。
しかして、紙面に平行な面内で、回転軸O1 と回転軸O4 を結ぶ線分と、回転軸O5 と回転軸O8 を結ぶ線分は常に平行をなすが、回転軸O1 ,05 ,O14,O13を順次結ぶ各線分が常に平行四辺形を形成する。
そして、この実施例ではアーム2a,3aと、これを連結する第1の伝達ロッド7により、回動力を伝達してアーム2a,3aを連動させる第1の連動機構を構成している。
同様にして、第1の平行四辺形リンク2におけるアーム2bの回転軸O2 と、第2の平行四辺形リンク3におけるアーム3bの回転軸O6 とは、それに対して回動可能な第2の伝達ロッド8によって接続されている。つまり、紙面に平行な面内で、回転軸O1 と回転軸O2 を結ぶ線分と、回転軸O5 と回転軸O6 を結ぶ線分とは、常に平行をなす関係にあるように設定されている。そして、この実施例ではアーム2b,3bと、第2の伝達ロッド8により、アーム2b,3bの間に回動力を伝達してアーム2b,3bを連動させる第2の連動機構を構成している。
第1の平行四辺形リンク2におけるアーム2dの一端には、紙面に平行な面内にあり、鉛直軸O0 と交差し、回転軸O3 と回転軸O4 を結ぶ線分上の回転軸O9 まわりにおいて回動可能に支持された接続ブロック9が取着されている。この接続ブロック9には第3の平行四辺形リンク機構10が接続されている。すなわち、第3の平行四辺形リンク機構10は5本のアーム10a〜10eおよび接続ブロック9を紙面に垂直な回転軸O15〜O19、O31、O32まわりにそれぞれ回動可能に接続することにより、2連式の平行四辺形リンク機構を構成している。接続ブロック9と第3の平行四辺形リンク機構10により、互いに直交する2つの回転軸O9 ,O10を中心にそれぞれ傾斜可能な傾斜機構としての第1の傾斜アーム11が構成されている。
前記第3の平行四辺形リンク機構10のアーム10bには、バランスウェイト(平衡用重錘)14が回転軸O15と回転軸032を結ぶ線分と平行に形成されたねじ部18に沿って移動可能に配設されている。バランスウェイト14を設ける場所はそのアーム10bに限定されるものではなく回転軸O15と回転軸O32を結ぶ線分と平行な動きをする他のアーム10a,10eにあっても良い。
ここで、顕微鏡鏡体(以下、鏡体という)12は、アーム10eの下方突出端部に対して回転軸O17と回転軸O18を結ぶ線分を通る前記回転軸O20まわりに回動可能に取り付けられた、バランス調整機構を備えた後述の鏡体支持アーム13を介して支持されている。これにより、鏡体12は回転軸O9 、回転軸O20および回転軸O9 と回転軸O20の交点T1を通る紙面に垂直な仮想の回転軸O10まわりに各軸まわりの回転モーメントがゼロの状態でそれぞれ回動可能である。鏡体12には助手用側視鏡16が接続されている。
次に、第1および第2の平行四辺形リンク2,3のバランス作用について説明する。第2の平行四辺形リンク3のアーム3dにはねじ軸41aが固定され、このねじ軸41aにはカウンターウェイト39aがその軸線方向に移動可能に支持されている。
同様に、第2平行四辺形リンク3の、前記アーム3dに隣接するアーム3aにも回転軸O5 と回転軸O8 を結ぶ線分と平行にねじ軸41bが固定され、このねじ軸41bにはカウンターウェイト39bが軸線方向に移動可能に支持されている。
さらに、前記第2伝達ロッド8にもカウンターウェイト39cが固定されている。前記カウンターウェイト39a,39b,39cは、第1の平行四辺形リンク2、第2の平行四辺形リンク3を連動させたとき、回転軸O0 ,O1 まわりの回転モーメントが、常にゼロになるべく位置および重量配分がなされている。本実施例ではカウンターウェイト39b,39cより補助カウンターウェイトが構成されている。
前記第2の平行四辺形リンク3を構成するT字形の形状をしたアーム3aは回転軸O5 に対して、回転軸O8 とは反対側に延長されている。このアーム3aは回転軸O5 と回転軸O8 を通る直線上にあり、この延長部分の先端には、回転軸O5 に対して回転軸O8 と反対側で回転軸O5 と平行な回転軸O50まわりにアーム3eを回動可能に接続している。アーム3cは回転軸O6 に対して回転軸O7 とは反対側に延長され、この回転軸O6 と回転軸O7 を通る直線上にある延長部先端には、回転軸O6 に対して回転軸O7 とは反対側の位置で前記回転軸O6 と平行な回転軸O51まわりにアーム3eを回動可能に接続している。ここで、紙面に平行な平行四辺形リンクの面内での、回転軸O5 と回転軸O6 を結ぶ線分と、回転軸O50と回転軸O51とを結ぶ線分とは互いに平行である。
前記アーム3eに対して固定的に接続された固定台20には紙面に平行な面内にあり、鉛直軸O0 と交差し、回転軸O9 と平行な回転軸O21まわりに回動可能に支持された回転ブロック21が接続されており、この回転ブロック21には回転軸O10と平行であり、かつ回転軸O21と直交する回転軸O12まわりに回動可能に接続された座22が設けられている。そして、これら固定台20と回転ブロック21および座22により、傾斜機構としての第2の傾斜アーム15を構成している。
前記座22にはスライドロッド23の一端が接続されており、このスライドロッド23の他端部には、前記座22に対して前記回転軸O20を含む紙面に平行な面内で回転軸O12と直交する回転軸O23まわりに回動可能にジョイント24が接続されている。この実施例では、スライドロッド23とジョイント24により傾斜機構としての傾斜ロッド25が構成されている。なお、ここで、回転軸O21、回転軸O12、回転軸O23まわりのそれぞれの自重による回転モーメントは常にゼロになるべく重量配分されている。
前記鏡体12の回転軸O9 ,O10まわりの傾斜運動を直接的に前記傾斜ロッド25の回転軸O21,O12まわりの傾斜運動に同一比で伝達する可撓性の運動伝達部材が設けられている。すなわち、前記第1の傾斜アーム11における接続ブロック9には、回転軸O9 と同軸に配設された回転部材としてのプーリー26aが設けられており、このプーリー26aには、それぞれ反対側から巻き付けたワイヤー27a,27bの巻込み端を固定している。この各ワイヤー27a,27bの導出端側は、それぞれ可撓性のアウターチューブ28a,28bの内部に摺動可能に挿通されて案内されるようになっている。アウターチューブ28a,28bの各一端部は固定金具29aを介してアーム2dに対して固定されている。接続ブロック9は、プーリー26aの回転によって回転させられる。
同様に、第2の傾斜アーム15の回転ブロック21には回転軸O21と同軸に配設された回転部材としてのプーリー26bが設けられており、これには、前記アウターチューブ28a,28bを通じて導かれてきた前記ワイヤー27a,27bの各他端がそれぞれ反対側から巻き付けられるとともに、その周面に固定されている。前記アウターチューブ28a,28bの他端部は固定金具29bを介して前記固定台20に対して固定されている。回転ブロック21は、プーリー26bの回転によって回転する。
前述した第1の傾斜アーム11における接続ブロック9には、これに対するアーム10bに回転軸O32と同軸的に連結して配設された同じく回転部材としてのプーリー26cが設けられており、このプーリー26cには、それぞれ反対側から端部を巻き付け、その先端を固定したワイヤー27c,27dが設けられている。このワイヤー27c,27dはそれぞれ前述したものとは別の可撓性のアウターチューブ28c,28dの内部に摺動可能に挿通されて案内されるようになっている。アウターチューブ28c,28dの各端部は固定金具29cを介して接続ブロック9に対して固定されている。接続ブロック9は、プーリー26cと一体的に回転するようになっている。
同様に、第2の傾斜アーム15の座22には回転軸O12と同軸に配設された回転部材としてのプーリー26dが設けられており、このプーリー26dには前記ワイヤー27c,27dの他端側が反対側から巻き付けられるとともに、その先端がプーリー26dに固定されている。このワイヤー27c,27dをガイドする前記アウターチューブ28c,28dの端部は固定金具29dを介して回転ブロック21に固定されている。第2の傾斜アーム15の座22は、プーリー26dと一体的に回転するようになっている。
ここで、前記プーリー26aとプーリー26bは同一方向から見た場合において、その一方のプーリーを回動させたとき、他方のプーリーが同じ方向に回動すべく向きにワイヤー27a,27bが巻かれているとともに、その回転角度が等しくなるべく、両プーリー26a,26bは、同一の径で形成されている。
同様に、前記プーリー26c,26dは、同一方向から見た場合において、一方のプーリーを回動させたとき、他方のプーリーが同じ方向に回動すべく向きにワイヤー27c,27dが巻かれているとともに、その回転角度が等しくなるべく両プーリー26c,26dは同一の径に形成されている。
そして、この実施例では、これらプーリー26a〜26d、ワイヤー27a〜27d、アウターチューブ28a〜28d、固定金具29a〜29dにより、運動伝達機構57を構成し、その可撓性で単一の長尺な伝達部材からなるワイヤー27a〜27dは、ガイド手段としてのアウターチューブ28a〜28dを通じて、座屈やたわみがなくその軸方向に進退するように案内される構成である。なお、ここで、ワイヤー27a〜27dは、1本の単線であっても、芯線の有無に拘らず、より線等であってもよい。
前記支持台4の台部4aには、鉛直軸O25まわりに回動可能に支持された垂直シャフト30が設けられている。これにはアーム31a〜31dを互いに平行な回転軸O26〜O29まわりに回動可能に接続してなる固定用平行四辺形リンク31が、その回転軸O26まわりに回動可能に連結されている。ここで、回転軸O26は前記鉛直軸O25に対して垂直であり、また、垂直シャフト30にはその鉛直軸O25まわりの回動を規制(制動)する電磁ブレーキが配設され、また、アーム31aとアーム31bには回転軸O26まわりの回動を規制する後述の電磁ブレーキが配設されている。
前記傾斜ロッド25のジョイント24の下端には、ロッド33の一端が連結されている。このロッド33の他端は、前記固定用平行四辺形リンク31のアーム31dの一端に連結されている。そして、この傾斜ロッド25は、鉛直軸O25を含む紙面に平行な面内にあり、回転軸O28と回転軸O29を結ぶ線分を通る線上において各部に対して回動可能に接続されている。
このロッド33の一端は前記傾斜ロッド25のジョイント24に対して、回転軸O23と直交する回転軸O24まわりに回動可能に接続されている。これら垂直シャフト30、固定用平行四辺形リンク31、旋回バー32およびロッド33および後述の電磁ブレーキにより運動規制機構40が構成されている。ここで、前記運動規制機構40の、回転軸O25、O26、O30まわりのそれぞれの自重による回転モーメントが、常にゼロになるべく、重量配分で構成されている。
また、図1で示すように、前述した鉛直軸O0 を含む紙面に平行な面内で、回転軸O1 、O4 、O10をそれぞれ結ぶ三角形が、同一面内で、回転軸O5 、O50,O12をそれぞれ結ぶ三角形と相似形になるべく、各回転軸を配置して構成されている。ここで相似比は、
(△O1 ,O4 ,010)/(△5 ,O50,012)=C
となっている。Cは、定数である。
次に、細部の構成について説明する。図1において、37aは、支持台4に配設され、その支持台4に対する支柱1の回動を電気的に規制可能な電磁ブレーキである。
第1の傾斜アーム11および第1の平行四辺形リンク2のアーム2dとの接続部には、第1の傾斜アーム11の接続ブロック9に突出して形成される第1の回転ロッド38が設けられている。この第1の回転ロッド38は、前記アーム2dの内部に配設されたベアリングに嵌挿されることにより、回転軸O9 まわりに回動可能である。また、アーム2dには、電磁ブレーキ37dが配設され、この電磁ブレーキ37dはアーム2dに対する前記第1の回転ロッド38の回動を電気的に規制する。
接続ブロック9にも電磁ブレーキ37eが配設され、この電磁ブレーキ37eは接続ブロック9に対するアーム10aの回転軸O31まわり回動を電気的に制動可能なものである。
前記アーム10eにも鏡体支持アーム13のアーム10eに対する回転軸O20まわりの回転を規制可能な電磁ブレーキ37fが配設されている。
次に、図2に従い、上方支持部材5の部分の詳細を説明する。この図2は図1の矢印a方向から見た回転軸O1 を含む部分の断面を示すものである。すなわち、上方支持部材5には上方シャフト34がベアリング36aを介して回転軸O1 まわりに回動可能に支持されており、その上方シャフト34は前記上方支持部材5に配設された電磁ブレーキ37bにより電気的に規制可能である。前記アーム2aは前記上方シャフト34の外周にベアリング36bを介して回転軸O1 まわりに回動可能に支持されている。前記アーム2bは上方シャフト34に設けたフランジ部に対してねじにより固定されている。
次に、図3に従い、下方支持部材6の部分の詳細を説明する。この図3は図1の矢印b方向から見た回転軸O5 を含む部分の断面を示すものである。
すなわち、前記下方支持部材6には下方シャフト35が、ベアリング36cを介して回転軸O5 まわりに回動可能に支持されており、その下方シャフト35は、前記下方支持部材6に配設された電磁ブレーキ37cにより電気的に規制可能である。前記アーム3aは前記下方シャフト35のフランジ部に対してねじにより固定されている。また、前記アーム3bは、前記下方シャフト35の外周にベアリング36dを介して回転軸O5 まわりに回動可能に支持されている。
次に、図4に従い、第2の平行リンク3、第2の傾斜アーム15、傾斜ロッド25および運動規制機構40の詳細な構成について説明する。
図4中、T2は回転軸O12と回転軸O21との交点、S2は回転軸O23、回転軸O24、回転軸O30の交点を示している。43は前記座22に配設され傾斜ロッド25のスライドロッド23を回転軸O23の方向に電気的に移動可能な傾斜ロッド駆動部であり、44は傾斜ロッド駆動部43に接続された前記傾斜ロッド駆動部43の駆動量を検出することにより、T2とS2間の直線距離R2を算出する傾斜ロッド位置検出部である。
また、支持台4には支持台4に対する垂直シャフト30の回転軸O25まわりの回動を電気的に規制可能な電磁ブレーキ37gが配設されている。また、固定用平行四辺形リンク31を構成するアーム31a,31bにはアーム31a,31bの旋回バー32に対する回転軸O26まわりの回動を電気的に規制可能な電磁ブレーキ37h,37iがそれぞれ配設されている。
また、アーム31aと旋回バー32のそれぞれには回転軸O26およびO25まわりの回転モーメントを相殺すべく設ける補助ウェイト42が固定されている。
次に、鏡体12および電気回路の構成を図5を参照して説明する。まず、同図中、50は対物レンズであり、これは、図示しないズームレンズ、結像レンズ、接眼レンズよりなる左右観察光路51R,51L上に設置され、そのレンズ間隔を変えることにより物体側の焦点距離が変更可能なものであり、対物レンズ50は対物レンズ駆動部52に対して機械的に接続されていて、それにより焦点距離の調節がなされる。また、53は例えばエンコーダからなる対物レンズ位置検出手段であり、これも前記対物レンズ50に機械的に接続されている。図中T1は、回転軸O9 、回転軸O10、回転軸O20の交点であり、点Pは観察光軸、すなわち回転軸O20と鏡体12の焦点面との交点であり、RfはT1と点Pとの間の直線距離であり、fは前記対物レンズ50の焦点距離を示している。
前記対物レンズ駆動部52および対物レンズ位置検出手段53は、制御部54に接続される。鏡体12にはグリップ55が設けられており、これには全方向フリースイッチSW1、鏡体球面傾斜スイッチSW2、傾斜中心点設定スイッチSW3、焦点距離可変スイッチSW4、焦点距離設定スイッチSW5などを有し、これらのスイッチも前記制御部54に接続されている。また、制御部54には、メモリ手段65、前記傾斜ロッド駆動部43および傾斜ロッド位置検出部44も接続されている。
さらに電磁ブレーキ37a〜37fは支持アーム電磁ブレーキ駆動回路56aを介し、電磁ブレーキ37g,37h,37iは運動規制機構電磁ブレーキ駆動回路56bを介して、それぞれ前記制御部54に接続される。
次に、図6に従い前述の鏡体支持アーム13のバランス調整機構について説明する。
57はアーム10eに対して回転軸O20まわりに回動可能に接続された接続ロッドであり、下方に前記鏡体12を支持している。
58は前記接続ロッド57の外周に形成され凸部59と押さえリング60により回転軸O20の軸線方向の動きを規制され、回転軸O20まわりに回動可能かつノブ61により固定可能な回転リングであり、回転軸O20を中心とする半径方向に突出し接続されたねじ軸62上をバランスウェイト63が移動可能に支持されている。
(作用)
この第1の実施例の手術用顕微鏡装置における作用を説明する。この手術用顕微鏡装置にあっては鏡体12の3次元的な移動および直交する3軸まわりの傾斜(以下6自由度の動き)と観察光軸上の一点を中心とした傾斜動が、手術スタイルに応じて種々選択可能なものである。以下、これらの作用を説明する。
[6自由度の動き]
最初に、グリップ55の全方向フリースイッチSW1を押して操作すると、制御部54にはそれに応じた信号が入力され、支持アーム電磁ブレーキ駆動回路56aと運動規制機構電磁ブレーキ駆動回路56bに対して信号を出力し、全ての電磁ブレーキ37a,37b,37c,37d,37e,37f,37g,37h,37iのブレーキ作用を解除する。
電磁ブレーキ37aのブレーキ作用が解除されると、支柱1が支持台4に対して鉛直軸O0 まわりに回動可能になり、このため、第1の平行四辺形リンク2および第1の傾斜アーム11を介して、鏡体12が支持台4に対して鉛直軸O0 まわりに回動可能になる。
図2に示す電磁ブレーキ37bが解除されると、アーム2bが上方支持部材5に対して回転軸O1 まわりに回動可能になり、アーム2cを介してアーム2dがアーム2aに対して回転軸O4 まわりにアーム2bと平行を保ちながら回動可能となる。従って、鏡体12は第1の傾斜アーム11を介してアーム2aに対して回転軸O4 まわりに回動可能となる。
図3で示す前記電磁ブレーキ37cが解除されると、アーム3aが下方支持部材6に対して回転軸O5 まわりに回動可能になり、第1の伝達ロッド7により接続されたアーム2aが上方支持部材5に対し回転軸O1 まわりに回動可能となる。従って、鏡体12は第1の平行四辺形リンク2および第1の傾斜アーム11を介して全体的に上方支持部材5に対して回転軸O1 まわりに回動可能となる。従って、これらの鏡体12の3方向の回動の組み合わせにより、鏡体12は3次元的に移動可能な状況になる。
一方、電磁ブレーキ37dが解除されると、第1の傾斜アーム11はアーム2dに対して、回転軸O9 まわりに回動可能となる。電磁ブレーキ37eが開放されると、平行四辺形リンク機構10のアーム10aは、接続ブロック9に対して、回転軸O31まわりに回動可能となり、アーム10b〜10dにて接続されるアーム10eはアーム10aと平行に回転軸O10を中心に傾斜動可能となる。また、電磁ブレーキ37fが開放されると、鏡体12は、鏡体支持部材13を介して、アーム10eの回転軸O20まわりに回動可能になる。すなわち、鏡体12は回転軸O9 と回転軸O10との交点T1を中心とした転動が可能となる。
ここで、運動規制機構40の電磁ブレーキ37g,37h,37iのブレーキ作用はすべて解除されているため、垂直シャフト30の支持台4に対する回転軸O25まわり、固定用平行リンク31のアーム31a,31bの旋回バー32に対する回転軸O26まわりの回動が可能となる。アーム31bの旋回バー32に対する回転軸O26まわりの回動はアーム31cによりアーム31dのアーム31aに対する回転軸O29まわりの回動へと伝達される。従って、ロッド33もアーム31aに対して回転軸O29まわりに回動し、かつロッド33はアーム31dに対して回転軸O30まわりに回動可能である。従って、鏡体12の動きを規制するものはない状態である。すなわち、3次元的な移動と直交する3軸まわりの傾斜によって鏡体12は6自由度の動きが可能となる。
次に、前述の鏡体12の6自由度の動きと連動する作用について説明する。アーム2bの、上方支持部材5に対する回転軸O1 まわりの回動により、第2の伝達ロッド8に接続されているアーム3bは下方支持部材6に対し回転軸O5 まわりにアーム2bと常に平行を保ちながら回動する。そして、アーム3cによりアーム3bに対して平行に接続されたアーム3dもアーム3aに対し回転軸O8 まわりに回動する。このとき、アーム3dは常にアーム2dと平行を保っている。
アーム3aの下方支持部材6に対する回転軸O5 まわりの回動により、アーム3dも下方支持部材6に対して回転軸O5 まわりに回動する。また、傾斜ロッド25も第2の傾斜アーム15を介してアーム3dとともに移動する。すなわち、アーム2aとアーム3a、アーム2dとアーム3dは常に平行を保ちながら移動し、鉛直軸O0 を含む紙面に平行な面内で回転軸O1 ,O4 ,O10をそれぞれ結ぶ三角形が、同一面内で回転軸O5 ,O50,O12をそれぞれ結ぶ三角形とは常に相似形を保っている。
図7は、第1の平行四辺形リンク2と第2の平行四辺形リンク3のバランスを説明するためのモデル図である。
G1は回転軸O9 上にある第1の傾斜アーム11から鏡体12側の部材の合成された重心を表す点であり、その重量はW1、回転軸O4 からの距離はL1 である。
前記カウンターウェイト39aの重量はWa、回転軸O8 からの距離はL2 、前記カウンターウェイト39bの重量はWb、回転軸O5 からの距離はr2 、前記カウンターウェイト39cの重量はWcであり、回転軸O1 と回転軸O4 の間の距離はr1 、回転軸O5 ,回転軸O8 間の距離はr3 、回転軸O1 と回転軸O2 の間の距離はL3 である。
ここで、カウンターウェイト39a〜39cは以下の2式を満足する位置に設定されている。
W1 ×L1 =Wa×L2 +Wc×L3
W1 ×r1 =Wa×r3 +Wb×r2
すなわち、鏡体12の3次元的な移動に対して常に第1の平行四辺形リンク2および第2の平行四辺形リンク3の回転モーメントはゼロを保っている。
図8は鏡体12の傾斜に関してのバランスを説明するためのモデル図である。術中、鏡体12に接続された側視鏡16の位置を変更するなどして、鏡体12を含めて回転軸O20まわりに回動する部材の重心が、回転軸O9 ,O10,O20のまわりの回転モーメントがゼロである点Gaから点Gbへ移動してしまった場合、バランスウェイト63をねじ軸62に対して回転させ、矢印1方向に移動させる。そうすると、重心はGbからGcへと移動し、回転軸O20と一致する。重心位置が紙面垂直方向にずれている場合は、ノブ61を緩め、バランスウェイト63を回転リング58と一体に回転軸O20まわりに適正な位置に回転させて固定すれば良い。
しかしながら、GcはGaに対して上方に移動しているため、回転軸O9 および回転軸O10まわりに回転モーメントが生じる。これを相殺するために第1の傾斜アーム11から鏡体12までを含めて回転軸O9 および回転軸O10まわりに回動する部材の重心が、Gaに一致するように第1の傾斜アーム11のアーム10eに配設されたバランスウェイト14をねじ部18に対して回転させ回転軸O15と回転軸O32を結ぶ線分方向に移動させればよい。
これらの作用により、鏡体12は回転モーメントが常にゼロの状態で6自由度の動きが可能となる。実際の手術に際しては鏡体12と術部の間に適正の作業空間を確保する為に、焦点距離を最適な値に設定する必要がある。その作用は焦点距離を伸ばすか縮めるかどちらか必要な方向に合わせて焦点距離可変スイッチSW4を押す。その伸縮の入力の方向により制御部54に信号が入力され、対物レンズ駆動部52は制御部54からの信号により、術者の目的とする方向に対物レンズ50を移動させる。
そして、焦点距離設定スイッチSW5を押すと、対物レンズ位置検出手段53から現在の対物レンズ位置を表す対物レンズ位置情報が制御部54を通してメモリ手段65に対物レンズ基準位置情報として記憶される。このようにして術式に合わせた焦点距離が記憶される。
術中は、観察部位に正確に焦点を合わせる必要があり、そのために前述のように焦点距離可変スイッチSW4を押して、焦点距離を伸縮させる。すなわち対物レンズ基準位置と実際の対物レンズ位置はずれてしまっている。
次に、鏡体12を目的とする位置へと移動させるために、全方向フリースイッチSW1を押すと、制御部54はその信号に従い前述のメモリ手段65に記憶された対物レンズ基準位置情報と、対物レンズ位置検出手段53から入力される現在の対物レンズ位置を表す対物レンズ位置情報の両者を比較し、現在の対物レンズ位置が対物レンズ基準位置情報と一致するように対物レンズ駆動手段52を駆動させる。
この作用により術中に焦点合わせのために対物レンズの焦点距離をいかなる状態に変更しても鏡体12を移動させる為に全方向フリースイッチSW1を押すと、対物レンズの焦点距離はあらかじめ設定しておいた基準位置へと移動する。
[観察光軸上の一点を中心とした傾斜動]
この場合には、グリップ55の鏡体球面傾斜スイッチSW2を押すと、制御部54はその信号を入力し、支持アーム電磁ブレーキ駆動回路56aに信号を出力し、それらの電磁ブレーキ37a,37b,37c,37d,37e,37fのブレーキ作用のみが解除される。これは、前述の6自由度の動きの場合に対して、運動規制機構40の電磁ブレーキ37g,37h,37iのみ固定とした状態である。
従って、図9(a)において、傾斜ロッド25は点S2の移動を拘束され、S2を中心に傾斜のみ可能となる。ここで、点T2はS2とT2の距離R2を半径とした球面上を動く。T2の動きは前述のアームの作用と同様に伝達され、第1の傾斜アーム11の回転軸O9 と回転軸O10の交点T1は交点T2の移動距離に前述の相似な三角形の比の定数であるCを乗した距離だけ反対方向に移動する。
傾斜ロッド25の傾斜は可撓性のワイヤー27a〜27dを用いた運動伝達機構57により、その動きが鏡体12に伝達され、その鏡体12の相似的な動きとなって現れる。以下に、その作用を図1および図4に従い説明する。すなわち、傾斜ロッド25が回転軸O12まわりに回動すると、第2の傾斜アーム15の座22と一体に配設されたプーリー26dも一体になり回動する。その結果、プーリー26dの回動方向によりワイヤー27c,27dのいずれか一方が引っ張られ、そのワイヤーは両端部を固定金具29dおよび固定金具29cにより回転ブロック21dおよび接続ブロック9に固定されることによりワイヤーに沿った方向の移動を規制されたいずれかのアウターチューブ28c,28d内をスライドし、第1の傾斜アーム11のアーム10bと一体に配設されたプーリー26cを前記プーリー26dと同一方向に同一角度で回動させる。一方、引っ張られない側のワイヤーも、それぞれプーリー26d,26cの回動を1対1で遊び無く伝達する働きをする。アーム10bの回動は平行四辺形リンク機構10によりアーム10eの回転軸O10まわりの回動として伝達される。従って,鏡体12はその回転軸O10まわりに座22の回転軸O12まわりの傾斜と同一方向に同一角度で回動する。
また、傾斜ロッド25が回転軸O21まわりに回動すると、第2の傾斜アーム15の回転ブロック21に配設されたプーリー26bも一体になり回動する。回動方向によりワイヤー27a,27bのいずれかが引っ張られ、そのワイヤーは両端部を固定金具29bおよび固定金具29aにより固定台20dおよびアーム2dに固定されることにより、そのワイヤーに沿った方向の移動を規制されたアウターチューブ28aあるいは他のアウターチューブ28b内をスライドし、第1の傾斜アーム11の接続ブロック9と一体に配設されたプーリー26aを前記プーリー26bと同一方向に同一角度で回動させる。一方、引っ張られない側のワイヤーも、それぞれプーリー26b,26aの回動を1対1で遊び無く伝達する働きをする。従って、鏡体12は、第1の傾斜アーム11を介して回転軸O9 まわりに回転ブロック21の回転軸O21まわりの傾斜と同一方向に同一角度で回動する。すなわち、傾斜ロッド25の回転軸O23と、平行四辺形リンク機構10におけるアーム10eの観察光軸と同軸な回転軸O20とが、常に平行に保つ。
このため、図9(a)に示すように、観察光軸と同軸な回転軸O20の上のT1から、R2×C=R1の距離の点S1を中心に鏡体12が傾斜可能となる。図9(b)は、図9(a)に対し鏡体12を右側に傾斜させた場合を示している。
また、グリップ55の傾斜中心点設定スイッチSW3を押すと、対物レンズ位置検出部53からの対物レンズ位置信号および傾斜ロッド位置検出部44からの傾斜ロッド位置信号が制御部54に入力される。そして、制御部54内で対物レンズ位置信号からT1と鏡体12の焦点面における観察光軸上の点Pの距離Rfを算出し、また傾斜ロッド位置信号からT2とS2の距離R2を算出する。そして距離R2を相似三角形の比であるC倍した値R2×C=R1と前記Rfを比較し、両者が等しくなるように、傾斜ロッド25を移動させるべく、駆動信号が傾斜ロッド駆動部43に出力され、傾斜ロッド駆動部43では図示しないモーターが回動し、図示しない減速機を介して、傾斜ロッド25のスライドロッド23を回転軸O23の軸線上を必要な方向に必要な距離移動させる。
この駆動信号が傾斜ロッド駆動部43に出力されている間、その制御部54は運動規制機構電磁ブレーキ駆動回路56bにも起動信号を出力して、電磁ブレーキ37g,37h,37iのブレーキ作用を解除し、かつ、その他の電磁ブレーキ37a〜37fは固定している。
この作用により、術者が鏡体12の傾斜中心点としたい点を鏡体12の観察視野中心に合わせ、かつ焦点距離可変スイッチSW4により対物レンズ50の焦点距離を変化させ、その点に焦点を合わせて(図5中、点P)、グリップ55の傾斜中心点設定スイッチSW5を押せば、S1がPと一致するように移動し、自動的に鏡体12の傾斜中心点が目的とする点に設定される。
この観察光軸上の一点を中心とした傾斜動すなわち鏡体球面傾斜スイッチSW2を押したときは、前述の6自由度の動きの場合の対物レンズの焦点距離のリセット機能は働かない。
本実施例では、対物レンズ駆動部52、対物レンズ位置検出部53、傾斜ロッド駆動部43、傾斜ロッド位置検出部44を備えているので、制御部内の演算処理により、術者が焦点距離設定スイッチSW5を押したときに、鏡体12の傾斜中心点S1がその時の鏡体12の焦点に一致するように制御することも可能である。
(効果)
第1の平行四辺形リンク2と第2の平行四辺形リンク3の動きを連動する第1の連動機構および第2の連動機構が、アーム2a,3aと第1の伝達ロッド7およびアーム2b,3bと第2の伝達ロッド8によりそれぞれ構成されている。このため、その伝達において鏡体12の視野ズレの原因となる遊びがないとともに剛性がある。したがって、第1の平行四辺形リンク2と第2の平行四辺形リンク3の動きを確実に連動させることができる。また、その構成が簡単である。
また、補助カウンターウェイトとしてのカウンターウェイト39bは、アーム3a上に配設されているため鏡体12の移動による後方への突出がない。さらに補助カウンターウェイトとしてのカウンターウェイト39cは、第2伝達ロッド8上に配設されているため鏡体12の移動による突出はほとんどない。
回転軸O1 まわりのアーム2aの回転方向のバランスと、アーム2bの回転方向のバランスは、それぞれカウンターウェイト39b、39aにより独立して調整可能であり、調整作業が容易である。
また、鏡体支持アーム13のバランス調整機構は、バランスウェイト63を移動させる方式であり、形状がシンプルであるとともに、回転軸O20に対する鏡体12の位置は変化しないため、観察焦点を中心とした傾斜機構を備えた手術用顕微鏡においても、傾斜中心点が観察焦点とずれることがなく操作し易い。
鏡体12を移動させる為に全方向フリースイッチSW1を押すと、対物レンズの焦点距離はあらかじめ設定しておいた基準位置へと移動するため、焦点を合わせるための焦点距離の変更と、鏡体12の移動の繰り返しにより、手術における作業空間が著しく広くなったり、狭くなったりすることなく常時適正な作業区間が確保できる。また、鏡体球面傾斜スイッチSW2を押した時の、鏡体12の観察点を中心とした傾斜移動時には、この機能を働かせないため、観察点の焦点が変わることがなく、操作性を損ねない。
(第1の実施例の変形例)
本実施例の鏡体支持アーム13の変形例を図10に従い説明する。本変形例はバランスウェイトを移動させることによりバランス調整を行うものであり、原理的には本実施例に記載のものと同じことである。16aは、助手用側視鏡の設定スタイルA、16bは、助手用側視鏡の設定スタイルBを示している。
130はアーム10eに対して回転軸O20まわりに回動可能に接続された接続ロッドであり下方に鏡体12を一体的に支持している。131は、前記接続ロッド130上に配設されバランスウェイト132を鏡体12に対して、電動で3次元的に移動可能とするためにモータ135a、135b、135cを備えたウェイト駆動手段である。その電気的構成を図11に従い説明する。133は制御部でありメモリ手段134、スタイル選択スイッチSWa、SWb、ウェイト駆動手段131に内蔵された3つのモータ135a、135b、135cが接続されている。
その作用は、術式による助手用側視鏡16の設定スタイル(スタイルA、スタイルB)に合わせてバランスが保たれるバランスウェイト132の位置を予めメモリ手段134に記憶させておき、術中に助手用側視鏡の位置を変更(スタイルAからスタイルB)した際に、スタイル選択スイッチSWbを押すと、制御部は、モータ135a、135b、135cそれぞれに駆動信号を出力しメモリ手段134に予め記憶されたスタイルB時にバランスが保たれる位置にバランスウェイト132を駆動する。
この変形例によれば、手術スタイルを変更するために助手用側視鏡16を鏡体12に対して移動させても、スイッチを押すだけで自動でバランス調整が可能であり、セッティング時間の短縮になり、術者の負担の軽減につながる。
(第2の実施例)
図12ないし図16に従って、本発明の第2の実施例を説明する。
(構成)
図12はこの第2の実施例に係る手術用顕微鏡装置の全体の概略的な構成を示しており、同図中の符号4は、床に設置された支持台であり、これには支柱1が鉛直軸O0 まわりに回動可能に支持されている。また、符号2はアーム2a〜2dを互いに平行な回転軸O1 〜O4 まわりに順次回動可能に接続して連結してなる第1の平行四辺形リンクである。第1の平行四辺形リンク2は前述した第1の実施例と同様の構成をなし、支柱1の下部に設けた上方支持部材5を介して前記鉛直軸O0 と直交した回転軸O1 まわりに回動可能に接続されている。
符号3は、第2の平行四辺形リンクであり、これも前述した第1の実施例と同様にアーム3a〜3dを互いに平行な回転軸O5 〜O8 まわりに回動可能に接続してなり、前記支柱1の上部に設けた下方支持部材6を介して回転軸O5 まわりに回動可能に接続されている。ここでの回転軸O5 は、前記鉛直軸O0 と直交し、かつ前記回転軸O1 とは平行である。
また、第1の平行四辺形リンク2のアーム2aには前記回転軸O1 と同軸上のスプロケット66aが配設されており、アーム3aには、回転軸O5 と同軸上に前記スプロケット66aと同一径のスプロケット66bが配設されている。このスプロケット66a,66bの間には、チェーン67aを掛け渡すことにより、相互に連結されている。このとき、紙面に平行な面内の、回転軸O1 と回転軸O4 を結ぶ線分と回転軸O5 と回転軸O8 を結ぶ線分が、常に平行をなすようにしている。そして、この第2の実施例ではアーム2a,3aと、スプロケット66a,66bと、チェーン67aにより、第1の連動機構を構成している。
同様に、第1の平行四辺形リンク2における他のアーム2bには回転軸O1 と同軸上にスプロケット66cが配設されており、アーム3bには、回転軸O5 と同軸上にスプロケット66cと同一径のスプロケット66dが配設されている。そして、このスプロケット66c,66dの間にはチェーン67bを掛け渡すことにより相互に連結されている。このとき、紙面に平行な面内の回転軸O1 と回転軸O2 を結ぶ線分と、回転軸O5 と回転軸O6 を結ぶ線分が、常に、平行をなしている。そして、この第2の実施例では、アーム2b,3bと、スプロケット66c,66dと、チェーン67bにより、第2の連動機構が構成されている。
符号11は前述した第1の実施例と同様に、アーム10a〜10e及び接続ブロック9を紙面に垂直な回転軸O15〜O19,O31,O32のまわりにそれぞれ回動可能に接続することにより構成してなる第3の平行四辺形リンク機構10による第1の傾斜アームである。その第3の平行四辺形リンク機構10のアーム10bにも同様にバランスウェイト14が配設されている。
ここで、鏡体12は第3の平行四辺形リンク機構10のアーム10eの下方突出端部に対し、回転軸O17と回転軸O18を結ぶ線分と通る回転軸O20まわりに回動可能なバランス調整機構を備えた後述の鏡体支持アーム13を介して支持されている。すなわち、鏡体12は、第1の実施例と同様に回転軸O9 、回転軸O20、及び回転軸O9 、回転軸O20の交点T1 を通る紙面に垂直な仮想の回転軸O10まわりに各回転軸まわりの回転モーメントがゼロの状態で回動可能である。符号16は鏡体12に接続された助手用側視鏡である。
次に、第1及び第2の平行四辺形リンク2,3をバランスさせる機構について説明する。すなわち、第2の平行四辺形リンク3のアーム3dには第1の実施例と同様にねじ軸41aを介してその軸線方向に移動可能にカウンターウェイト39aが支持されている。また、アーム3aにも第1の実施例と同様にねじ軸41bを介してその軸線方向に移動可能にカウンターウェイト39bが支持されている。
第1の平行四辺形リンク2のアーム2aには回転軸O1 に対して回転軸O4 と反対側に接続されたねじ軸41dを介してその軸線方向に移動可能にカウンターウェイト39dが支持されている。アーム2bには回転軸O2 に対して回転軸O1 と反対側に接続されたねじ軸41eを介してその軸線方向に移動可能にカウンターウェイト39eが支持されている。前記カウンターウェイト39a,39b,39d,39eは第1の平行四辺形リンク2、第2の平行四辺形リンク3を連動させたときに、回転軸O0 ,回転軸O1 まわりの回転モーメントが常にゼロなるべく位置及び重量配分がなされている。
本実施例ではカウンターウェイト39b,39d,39eより補助カウンターウェイトが構成されている。15は、第2の平行四辺形リンク3に接続された第1実施例と同一の第2の傾斜アームであり、固定台20、回転ブロック21及び座22より構成され、第1実施例と同一の傾斜ロッド25を回転モーメントがゼロの状態で傾斜可能に支持している。運動規制機構40も第1の実施例と同様であり、その説明を省略する。また、運動伝達機構57も第1の実施例と同じようなプーリー、ワイヤー、アウターチューブおよび固定金具等により構成されている。
第1の実施例と同様、図中T2は回転軸O12と回転軸O21の交点、S2は回転軸O23と回転軸O24、回転軸O30の交点、R2はT2とS2の間の直線距離を示している。また、第1の実施例と同様に鉛直軸O0 を含む紙面に平行な面内で回転軸O1 、O4 、O10をそれぞれ結ぶ三角形が、同一面内で回転軸O5 、O50、O12をそれぞれ結ぶ三角形と相似になるべく、各回転軸を配置して構成されている。ここで相似比は
(△O1 ,O4 ,O10)/(△O5 ,O50,O12)=C
となっている。Cは定数である。
また、回転軸まわりの回動を電気的に規制する電磁ブレーキ37a〜37iは第1の実施例と同一部位に配設されている。なお、運動規制機構40の電磁ブレーキ37a〜37iは第1の実施例での図4に示されている。また、この電気的構成も図5に示されているような第1の実施例のものと同様であり、その説明を省略する。
次に、鏡体支持アーム13のバランス調整機構について説明する。図13は鏡体支持アーム13の正面図であり、図14はその左方からの側面図である。同図中、符号70はアーム10eに対して回転軸O20まわりに回動可能に接続された接続ロッドであり、下方に円弧状ガイド部材71が固定されている。前記円弧状ガイド部材71には、後述の鏡体12の傾斜中心である回転軸O20上の点S1を中心として一定の幅にガイド溝72が形成され、そのガイド溝72内には、移動体73に回転軸Oa、Obまわりに回動可能に接続された2個のコロ74a,74bが挿入され、ガイド溝72に沿って移動可能となっている。
円弧状ガイド部材71の下面にはラック75が形成され、これに噛合すべくピニオンギア76は移動体73に配設されているノブ77と一体に回転軸Ocまわりに回動可能になっている。移動体73下方には鏡体12に固定された支持アーム78がベアリング79を介して鏡体12の観察光軸と同軸の回転軸O40まわりに回動可能に支持されるとともに、前記移動体73にねじ込まれたレバー80により固定可能である。本図に示す状態では、回転軸O20と回転軸O40は同軸である。
(作用)
本実施例の手術用顕微鏡は、第1の実施例と同様の6自由度の動きと、観察光軸上の一点を中心とした傾斜運動が可能である。以下、これらを順に説明する。
[6自由度の動き]
グリップ55の全方向フリースイッチSW1を押すと、制御部54は信号を入力し、支持アーム電気ブレーキ駆動回路56aおよび運動規制機構電磁ブレーキ駆動回路56bに信号を出力し、全ての電磁ブレーキ37a〜37iを解除する。
電磁ブレーキ37aが解除されると、支柱1が支持台4に対して鉛直軸O0 のまわりに回動可能になり、第1の平行四辺形リンク2および第1の傾斜アーム11を介して、鏡体12が支持台4に対して回転軸O0 まわりに回動可能になる。
図2に示す電磁ブレーキ37bが解除されると、アーム2bが上方支持部材5に対して回転軸O1 まわりに回動可能になると、アーム2cを介してアーム2dがアーム2aに対して回転軸O4 まわりにアーム2bと平行を保ち回動可能となる。従って、鏡体12は第1の傾斜アーム11を介してアーム2aに対して回転軸O4 まわりに回動可能となる。
図3に示す電磁ブレーキ37cが解除されると、アーム3aが下方支持部材6に対して回転軸O5 まわりに回動可能になり、アーム3aに配設されたスプロケット66bが回動可能となる。スプロケット66bの回動はチェーン67aにより、アーム2aに配設されたスプロケット66aに伝達され、アーム2aは上方支持部材5に対し回転軸O1 まわりに回動可能となる。従って、鏡体12は第1の傾斜アーム11を介して上方支持部材5に対して回転軸O1 まわりに回動可能となる。このとき、アーム3aとアーム2aは常に平行を保っている。
従って、前述した第1の実施例の場合と同様に、これらの3つの回動の組み合わせにより、鏡体12は3次元的に移動可能となる。
電磁ブレーキ37d〜37fが解除された時の作用は第1の実施例と同様であり、鏡体12は3つの回転軸O9 ,O10,O20の交点T1を中心として転動可能となる。
ここで、運動規制機構40の電磁ブレーキ37g,37h,37iはすべて解除されているため、第1の実施例と同様に、鏡体12の動きを規制するものはない状態である。
すなわち、3次元的な移動と直交する3軸まわりの傾斜によって鏡体12は6自由度の動きが可能となる。
次に、前述の6自由度の動きと連動する作用について説明する。アーム2bの上方支持部材5に対する回転軸O1 まわりの回動により、アーム2bに配設されたスプロケット66cが回動可能となる。スプロケット66cの回動は、チェーン67bにより、アーム3bに配設されたスプロケット66dに伝達され、アーム3bは、下方支持部材6に対し回転軸O5 まわりにアーム2bと常に平行を保ち回動する。そして、アーム3cによりアーム3bに対し平行に接続されたアーム3dもアーム3aに対し回転軸O8 まわりに回動する。このとき、アーム3dは、常にアーム2dと平行を保っている。
アーム3aの下方支持部材6に対する回転軸O5 まわりの回動により、アーム3dも下方支持部材6に対して回転軸O5 まわりに回動する。また、傾斜ロッド25は、第2の傾斜アーム15を介してアーム3dとともに移動する。すなわち、アーム2aとアーム3a、アーム2dとアーム3dは、常に平行を保ち移動し、鉛直軸O0 を含む紙面と平行な面内で回転軸O1 ,O4 ,O10をそれぞれ結ぶ三角形が、同一面内で回転軸O5 ,O50,O12をそれぞれ結ぶ三角形とは常に相似形を保っている。
図15は第1の平行四辺形リンク2、第2の平行四辺形リンク3のバランスを説明するためのモデル図である。G1は回転軸O9 上にある第1の傾斜アーム11から鏡体12側の部材の合成された重心を表す点であり、その重量はW1、回転軸O4 からの距離はL1である。
前記カウンターウェイト39aの重量はWa、回転軸O8 からの距離はL2 、前記カウンターウェイト39bの重量はWb、回転軸O5 からの距離はr2 、前記カウンターウェイト39dの重量はWd、回転軸O1 からの距離はr4 、前記カウンターウェイト39eの重量はWe、回転軸O1 からの距離はL4 であり、回転軸O1 ,O4 間の距離はr1 、回転軸O5 −O8 間の距離はr3 である。ここでカウンターウェイト39a,39b,39d,39eは以下の2式を満足する位置に設定されている。
W1 ×L1 =Wa×L2 +We×L4
W1 ×r1 =Wa×r2 +Wb×r2 +Wd×r4
すなわち、鏡体12の3次元的な移動に対して常に第1の平行四辺形リンク2および第2の平行四辺形リンク3の回転モーメントはゼロを保っている。
次に、鏡体12の傾斜に関してのバランスを説明する。図13、図14において術中、鏡体12に接続された側視鏡16の位置を変更するなどして、鏡体12を含めて回転軸O20まわりに回動する部材の重心が、回転軸O9 、O10、O20まわりの回転モーメントがゼロである点GaからGbへ移動してしまった場合、レバー80を緩めて鏡体12を支持アーム78を介して鏡体12の観察光軸と同軸の回転軸O40まわりに回動させ、重心GbがGaを含む図13と平行な紙面内に一致するようにして、レバー80を締めて固定する。
そして、ノブ77を回転させると、同軸に構成されたピニオンギア76と円弧状ガイド部材71に形成されたラック75の噛み合いにより、図16に示すように移動体73はコロ74a,74bとガイド溝72の摺動により鏡体12の傾斜中心点であるS1を中心とした円弧上を移動する。
すなわち,ノブ77をまわして鏡体12を移動体73と共にS2を中心に傾斜させ、重心Gbを回転軸O20と一致させれば良い。重心Gbが上下方向に移動して、回転軸O9 および回転軸O10まわりに回転モーメントが生じた場合は、これを相殺するために、第1実施例の図8に示すように、アーム10bに配設されたバランスウェイト14をねじ部18に対して回転させ回転軸O15と回転軸O32を結ぶ線分方向に移動させれば良い。
これらの作用により、鏡体12は回転モーメントが常にゼロの状態で6自由度の動きが可能となる。
[観察光軸上の一点を中心とした傾斜動]
グリップ55の鏡体球面傾斜スイッチSW2を押すと、制御部54は、信号を入力し、支持アーム電磁ブレーキ駆動回路56aのみに信号を出力し、電磁ブレーキ37a〜37fのブレーキ作用が解除される。すなわち、運動規制機構40の電磁ブレーキ37g〜37iのみ固定状態である。
従って、第1の実施例と同様に傾斜ロッド25は回転軸O23、O24、O30の交点S2の移動が拘束され、S2を中心に傾斜のみ可能となる。ここで、点T2はS2とT2の距離R2を半径とした球面上を動く。T2の動きは前述のアームの作用と同様に伝達され、第1傾斜アームの回転軸O9 と回転軸O10の交点T1はT2の移動距離に前述の相似な三角形の比であるCを乗した距離だけ反対方向に移動する。
第1の実施例と同様の運動伝達機構57の作用により第1の傾斜アーム11に伝達される。従って、観察光軸と同軸な回転軸O20上のT1からR2×C=R1の距離の点S1を中心に鏡体12が傾斜可能となる。
(効果)
この第2の本実施例での第1および第2連動機構は、アーム2a,3aとスプロケット66a,66bとチェーン67aと、アーム2b、3bとスプロケット66c,66dとチェーン67bより構成されているため、回転軸O1 と回転軸O5 を結ぶ直線に対して突出が少なく小型化が可能である。
また、補助カウンターウェイトとしてのカウンターウェイト39d、39eはそれぞれ回転軸O1 まわりに回動するアーム2a、2b上に配設されており、この位置は術者の腰の高さ近傍であるため、カウンターウェイト39a、39bを移動させてバランス調整を行う場合に比べて、楽な姿勢でバランスが調整できる。
カウンターウェイト39a、39bが下方に配設されているため、当然ながらカウンターウェイト39d、39eは小型でよく、邪魔にならないとともに調整も楽である。
また、鏡体支持アーム13のバランス調整機構は鏡体を円弧状ガイド部材71により、鏡体12の傾斜中心点S1を中心に鏡体12を回転させる方式であるため、観察焦点を中心とした傾斜機構を備えた手術用顕微鏡においても、傾斜中心点が観察焦点とずれることがなく操作し易い。
(第3の実施例)
図17ないし図24に従って、本発明の第3の実施例を説明する。
(構成)
図17はこの第3の実施例に係る手術用顕微鏡装置の全体の概略的な構成を示しており、同図中、100は天井に設置された支持台であり、これには支柱1が鉛直軸O0 まわりに回動可能に支持されている。2はアーム2a〜2dを互いに平行な回転軸O1 〜O4 まわりに順次回動可能に接続して連結してなる第1の平行四辺形リンクである。前述した第1の実施例と同様の構成をなす第1の平行四辺形リンク2は、支柱1の下部に設けた上方支持部材5を介して、前記鉛直軸O0 と直交した回転軸O1 まわりに回動可能に接続されている。
3は、第2の平行四辺形リンクであり、これも前述した第1の実施例と同様にアーム3a〜3dを互いに平行な回転軸O5 〜O8 まわりに回動可能に接続してなり、前記支柱1の上部に設けた下方支持部材6を介して回転軸O5 まわりに回動可能に接続されている。ここでの回転軸O5 は、前記鉛直軸O0 と直交し、かつ前記回転軸O1 とは平行である。
この第3の実施例は、第1の連動機構および第2の連動機構は、第1の実施例と同様に、それぞれアーム2a,3aと、第1の伝達ロッドおよびアーム2b,3bと、第2の伝達ロッド8により構成されている。
符号11は第1の実施例と同様にアーム10a〜10e及び接続ブロック9を紙面に垂直な回転軸O15〜O19、O31、O32まわりにそれぞれ回動可能に接続することによりなる第3の平行四辺形リンク機構10よって構成した第1の傾斜アームである。その第1の傾斜アームのアーム10bにも同様にバランスウェイト14が配設されている。
ここで、鏡体12はアーム10eの下方突出端部に対して、回転軸O17と回転軸O18を結ぶ線分を通る回転軸O20まわりに回動可能なバランス調整機構を備えた後述の鏡体支持アーム13を介して支持されている。
すなわち、鏡体12は第1の実施例と同様に回転軸O9 、回転軸O20、及び回転軸O9 、回転軸O20の交点T1を通る紙面に垂直な仮想の回転軸O10まわりに各回転軸まわりの回転モーメントがゼロの状態で回動可能である。符号16は鏡体12に接続された助手用側視鏡である。
次に、第1及び第2の平行四辺形リンク2,3のバランスについて説明する。第2の平行四辺形リンク3のアーム3dには第1の実施例と同様、ねじ軸41aを介してその軸線方向に移動可能にカウンターウェイト39aが支持されている。アーム3aにも、ねじ軸41bに図示しないモータを内蔵した電動駆動手段101bを介してその軸線方向に移動可能にカウンターウェイト39bが支持されている。アーム3bにも、ねじ軸41fに図示しないモータを内蔵した電動駆動手段101fを介してその軸線方向に移動可能にカウンターウェイト39fが支持されている。
前記カウンターウェイト39a,39b,39fは第1の平行四辺形リンク2、第2の平行四辺形リンク3を連動させたときに回転軸O0 、回転軸O1 まわりの回転モーメントが常にゼロになるべく位置及び重力配分が成されている。本実施例ではカウンターウェイト39b,39fより補助カウンターウェイトが構成されている。
なお、前記電動駆動手段は図示しない駆動回路を介して図示しないバランス調整スイッチと接続されている。
符号15は第2の平行四辺形リンク3に接続された第1の実施例と同一の第2の傾斜アームであるが、第1の実施例に対して、180度反転してアーム3dに接続されている。これに伴い、第1の実施例と同一の傾斜ロッド25も180度反転して回転モーメントがゼロの状態で第2の傾斜アーム15に傾斜可能に支持され、運動規制機構40も第1の実施例に対し180度反転し、天井から第2の傾斜アーム15に接続されている。運動伝達機構57も第1の実施例と同じくプーリー、ワイヤー、アウターチューブ、固定金具より構成されている。
第1の実施例と同様に図中T2は回転軸O12と回転軸O21の交点、S2は回転軸O23と回転軸O24、回転軸O30の交点、R2はT2とS2の間の直線距離を示している。
また、第1の実施例と同様に鉛直軸O0 を含む紙面に平行な面内で回転軸O1 ,O4 ,O10をそれぞれ結ぶ三角形が、同一面内で回転軸O5 ,O8 ,O12をそれぞれ結ぶ三角形と相似になるべく、各回転軸を配置して構成されている。ここで相似比は
(△O1 ,O4 ,O10)/(△O5 ,O8 ,O12)=C
となっている。Cは定数である。
回転軸まわりの回動を電気的に規制する電磁ブレーキ37a〜37iは第1実施例と同一部位に配設されている。なお、運動規制機構40の電磁ブレーキ37a〜37iについては第1の実施例の図4に示されている。また、電気的構成も図5に示されているように第1の実施例と同様であり、その説明を省略する。
次に、鏡体支持アーム13のバランス調整機構について説明する。図18は鏡体支持アーム13の正面図である。符号105はアーム10eに対して回転軸O20まわりに回動可能に接続された接続部材である。前記接続部材105には紙面に垂直で互いに平行な回転軸Oe,Ofまわりに回動可能にアーム106a,106bがそれぞれ接続されている。前記アーム106a,106bの他端はそれぞれ移動体107の紙面に垂直で互いに平行な回転軸Oh,Ogまわりに回動可能に接続されている。
ここで、接続部材105、アーム106a、106bおよび移動体107は台形のリンク機構108を構成している。より詳しくは回転軸Oe,Of,Og,Ohを結ぶ各線分は以下の関係にある(OeOf、OgOh、OeOh、OfOgは各点を結ぶ線分を表す)。
OeOf>OgOh、 OeOh=OfOg
図19は、図18を左側方から見た図であり、接続部材105は回転軸Oeを通る縦断面を表している。符号109はアーム106aに固定され、ベアリング110を介して接続部材105に対して回転軸Oeまわりに回動可能なシャフトである。111は前記シャフト109に回転軸Oeと同軸に固定されたウォームホイール、112は前記ウォームホイールに噛み合うべくウォームギアであり、前記ウォームギアには図18に示すノブ113が同軸に接続部材105に対して回動可能に固定されている。
一方、移動体107下方には第1の実施例と同様、鏡体12に固定された支持アーム78がベアリング79を介して鏡体12の観察光軸と同軸の回転軸O40まわりに回動可能に支持されるとともに、前記移動体107にねじ込まれたレバー80により固定可能である。本図に示す状態では、回転軸O20と回転軸O40は同軸である。
(作用)
本実施例の鏡体12の移動及び傾斜に関する作用は第1の実施例と同様であり、その説明を省略し、本実施例特有のバランスに関して説明する。
図20は第1の平行四辺形リンク2、第2の平行四辺形リンク3のバランスを説明するためのモデル図である。G1は回転軸O9 上にある第1の傾斜アーム11から鏡体12側の部材の合成された重心を表す点であり、その重量はW1、回転軸O4 からの距離はL1 である。前記カウンターウェイト39aの重量はWa、回転軸O8 からの距離はL2 、前記カウンターウェイト39bの重量はWb、回転軸O5 からの距離はr2 、前記カウンターウェイト39dの重量はWf、回転軸O5 からの距離はL5 であり,回転軸O1 ,O4 間の距離はr1 、回転軸O5 ,O8 間の距離はr3 である。
ここで,カウンターウェイト39a,39b,39fは以下の2式を満足する位置に設定されている。
W1 ×L1 =Wa×L2 +Wf×L5
W1 ×r1 =Wa×r3 +Wb×r2
すなわち、鏡体12の3次元的な移動に対して常に第1の平行四辺形リンク2および第2の平行四辺形リンク3の回転モーメントはゼロを保っている。ここで、第1及び第2の平行四辺形リンクのバランス調整は、図示しないバランス調整スイッチを操作することにより図示しない駆動回路を介し、電動駆動手段101b、101fによりカウウターウェイト39b、39fを移動することにより行われる。
次に、鏡体12の傾斜のバランスに関して説明する。図18及び図19において術中鏡体12に接続された側視鏡16の位置を変更するなどして、鏡体12を含めて回転軸O20まわりに回動する部材の重心が、回転軸O20まわりの回転モーメントがゼロである点GaからGbへ移動してしまった場合、レバー80を緩めて鏡体12を支持アーム78を介して鏡体12の観察光軸と同軸の回転軸O40まわりに回動させ、重心GbがGaを含む図18と平行な紙面内に一致するようにして、レバー80を締めて固定する。
そして、ノブ113を回転させると、同軸に構成されたウォームギア112とウォームホイール111の噛み合いにより、アーム106aが回転軸Oeまわりに回動する。ここで台形のリンク機構108の作用により図21に示すように、移動体107及び鏡体12はS1近傍を中心とした円弧上を移動する。そして、Gbが回転軸O20と一致する位置に設定する。すなわちノブ113をまわして鏡体12を移動体107と共にS1近傍を中心に傾斜させ、重心Gbを回転軸O20と一致させれば回転軸O20まわりの回転モーメントはゼロになる。
重心Gb2が上下方向に移動して、回転軸O9 及び回転軸O10まわりに回転モーメントが生じた場合は、これを相殺するために、第1実施例の図8に示すように、アーム10bに配設されたバランスウェイト14をねじ部18に対して回転させ回転軸O15と回転軸O32を結ぶ線分方向に移動させればよい。これらの作用により、鏡体12は回転モーメントが常にゼロの状態で6自由度の動きが可能となる。観察光軸上の一点を中心とした鏡体12の傾斜動も第1の実施例と同様であり、その説明を省略する。
(効果)
本実施例ではカウンターウェイト39b,39fは、天井近傍に位置するため、術者の邪魔にならない。さらにはカウンターウェイト39b,39fは電動駆動手段101b,101fにより電動で移動可能であるため、バランス調整が容易である。当然ながらカウンターウェイト39aが配設されているため、カウンターウェイト39b,39fは軽量でも良く、電動駆動手段101b,101fも小型化が可能である。
また、鏡体支持アーム13のバランス調整機構は台形のリンク機構108により構成されているため、機構部の突出が少なく、術者の邪魔にならないと共に外観上シンプルである。
(その他の変形例)
鏡体支持アーム13のバランス調整機構の変形例は種々考えられ、その1例を説明する。図22は鏡体支持アーム13の正面図、図23は図22の左方からの中心断面図である。
符号120はアーム10eに対して回転軸O20まわりに回動可能に接続されたコの字型をした接続部材である。前記接続部材120には、コの字の突出部間を接続するねじ軸121が、回転軸Oiまわりに回動可能かつ回転軸Oi方向の移動を規制された状態で配設され、その一端部には同軸にノブ124が固定している。
符号122は前記ねじ軸121に螺合するめねじ部材であり回転軸Oiに垂直な回転軸Ojと同軸にシャフト123が固定されている。シャフト123の突出部には傾斜腕125が回転軸Ojまわりに回動可能に接続されている。傾斜腕125の上端部には図23に示すカムピン126が固定され、これに係合すべく接続部材120には、カム溝127が形成されている。
一方、傾斜腕125に下端には第1実施例同様、鏡体12に固定された支持アーム78がベアリング79を介して鏡体12の観察光軸と同軸の回転軸O40まわりに回動可能に支持されると共に、前記傾斜腕125にねじ込まれたレバー80により固定可能であり、本図に示す状態では、回転軸O20と回転軸O40は同軸である。
次に、その作用に関して説明する。図22及び図23において、術中鏡体12に接続された側視鏡16の位置を変更するなどして、鏡体12を含めて回転軸O20まわりに回動する部材の重心が、回転軸O20まわりの回転モーメントがゼロである点GaからGbへ移動してしまった場合、レバー80を緩め鏡体12を支持アーム78を介して鏡体12の観察光軸と同軸の回転軸O40まわりに回動させ、重心GbがGaを含む図22と平行な紙面内に一致するようにして、レバー80を締めて固定する。
そして、ノブ124を回転させると、同軸に構成されたねじ軸121が一体に回転する。傾斜腕125は上端のカムピン126と接続部材のカム溝127の係合の作用により、紙面に平行な面内のみ移動可能であり、これにシャフト123を介して接続されためねじ部材122は回転軸Oiまわりの回動が規制されている。すなわちめねじ部材122は前記ねじ軸121の回転にともない、回転軸Oi上を移動する。それに伴い、傾斜腕125はカムピン126とカム溝127の作用により回転軸Ojを中心として傾斜する。従って、図24に示すように鏡体12は、S1近傍を中心とした略円弧上を移動する。
すなわち、ノブ124をまわして鏡体12を傾斜腕125と共にS1近傍を中心に傾斜させ、重心Gbを回転軸O20と一致させれば回転軸O20まわりの回転モーメントはゼロになる。重心Gbが上下方向に移動して、回転軸O9 及び回転軸O10まわりに回転モーメントが生じた場合は、これを相殺するために、第1実施例の図8に示すように、アーム10bに配設されたバランスウェイト14をねじ部18に対して回転させ、回転軸O15と回転軸O32を結ぶ線分方向に移動させればよい。この変形例も同様に、機構部の突出が少なく、術者の邪魔にならないとともに、外観上シンプルである。
[付記]
1. 顕微鏡の鏡体12を支持し、その鏡体12を3次元的に移動可能な移動機構と、前記鏡体を3軸まわりに傾斜可能な傾斜機構を備えた手術用顕微鏡装置において、
前記移動機構は、臨床室の床や天井等の被設置部位に対して取り付けられ、鉛直軸O0 まわりに回動可能な支柱1と、
前記支柱1に対して、前記鉛直軸O0 と異なる回転軸O1 まわりに回動可能に接続され、複数のアーム2a〜2dを前記回転軸O1 を含む互いに平行な回転軸O1 〜O4 まわりにそれぞれ回動可能に接続してなる第1の平行四辺形リンク2と、
前記第1の平行四辺形リンク2の上方および下方の一方の側に配置され、前記支柱1に対し、前記回転軸O1 と平行な回転軸O5 まわりに回動可能に接続され、複数のアーム3a〜3dを前記回転軸O5 を含む互いに平行な回転軸O5 〜O8 まわりにそれぞれ回動可能に接続してなる第2の平行四辺形リンク3と、
前記アーム3dに接続されたカウンターウェイト39aと、
前記第1の平行四辺形リンク2における面内においてその回転軸O1 とこれに隣接する一方の回転軸O4 とを結ぶ線分に平行な線分と、前記第2の平行四辺形リンク3における面内において前記回転軸O1 と回転軸O4 に対応したその第2の平行四辺形リンク3における前記回転軸O5 とこれに隣接する一方の回転軸O8 とを結ぶ線分に平行な線分とが、常に平行になるべく、前記回転軸O1 を中心として回転する第1の平行四辺形リンク2における一方のアーム2aと前記回転軸O5 を中心とした前記第2の平行四辺形リンク3における一方のアーム3aとの回動を連動させる第1の連動機構と、
前記第1の平行四辺形リンク2における面内においてその回転軸O1 とこれに隣接した他方の回転軸O2 とを結ぶ線分に平行な線分と、前記第2の平行四辺形リンク3における面内においてその回転軸O5 とこれに隣接する他方の回転軸O6 とを結ぶ線分に平行な線分とが、常に平行になるべく前記回転軸O1 を中心として回動する前記第1の平行四辺形リンク2における他方のアーム2bと、前記回転軸O5 を中心として回動する前記第2の平行四辺形リンク3における他方のアーム3bの回動を連動させる第2の連動機構と、
前記第1の連動機構および/または第2の連動機構のそれぞれ一方の移動に連動して動く部材に補助カウンターウェイトを備えたことを特徴とする手術用顕微鏡。
2. 前記第1の連動機構はアーム2aと、アーム3aと、前記アーム2aと前記アーム3aを接続する第1の伝達ロッド7よりなり、前記第2の連動機構はアーム2bと、アーム3bと、前記アーム2bと前記アーム3bを接続する第2の伝達ロッド8よりなることを特徴とする付記1に記載の手術用顕微鏡。
3. 前記第1の連動機構はアーム2aと、アーム3aにそれぞれ接続されたスプロケット66a,66bと、両スプロケット66a,66bを連結するチェーン67aよりなり、前記アーム2aと前記アーム3aを接続する第1の伝達ロッド7よりなり、前記第2の連動機構はアーム2bと、アーム3bにそれぞれ接続されたスプロケット66c,66dと、両スプロケット66c,66dを連結するチェーン67bよりなることを特徴とする付記1に記載の手術用顕微鏡。
4. 前記補助カウンターウェイトはアーム2aおよび/またはアーム3aに接続されていることを特徴とする付記1に記載の手術用顕微鏡。
5. 前記補助カウンターウェイトはアーム2bおよび/またはアーム3bに接続されていることを特徴とする付記1に記載の手術用顕微鏡。
6. 前記補助カウンターウェイトは前記第2の伝達ロッド8に接続されていることを特徴とする付記1に記載の手術用顕微鏡。
7. 顕微鏡鏡体の3次元的に移動可能な鏡体移動機構と、前記鏡体を3軸まわりに傾斜可能な鏡体傾斜機構と、前記鏡体を観察点を回転中心とした傾斜に限定可能な注視点不変傾斜機構を備えた手術用顕微鏡において、
前記3軸のうちの観察光軸と一致あるいは交差する回転軸O20上に、前記観察光軸が回転軸O20と一致あるいは交差した状態を保ち、前記回転軸O20まわりに回動する部材の重心を一致させるべくバランス調整機構を備えたことを特徴とする手術用顕微鏡。
8. 前記バランス調整機構は前記顕微鏡鏡体に対し回転軸O20まわりの回転モーメントを相殺すべく位置に2次元あるいは3次元的に移動可能に配設された調整重りよりなることを特徴とする付記7に記載の手術用顕微鏡。
9. 前記バランス調整機構は、鏡体を前記回転軸O20に対して2次元あるいは3次元的に移動および傾斜可能な鏡***置調整機構よりなることを特徴とする付記7に記載の手術用顕微鏡。
10. 前記鏡***置調整機構は鏡体を光軸まわりに回動および固定可能に支持する接続部材と、前記回転軸O20を中心に回動可能でありかつ観察点を中心とした円弧状ガイドを有し前記接続部材を前記ガイドに摺動すべく接続してなるガイドアームよりなることを特徴とする付記9に記載の手術用顕微鏡。
11. 前記鏡***置調整機構は鏡体を光軸まわりに回動および固定可能に支持する接続部材と、前記接続部材を支持し回転軸O20まわりに回動可能であるとともに台形のリンクより構成された鏡体を垂下する垂下アームよりなることを特徴とする付記9に記載の手術用顕微鏡。
12. 前記鏡***置調整機構は鏡体を直線的に移動可能な移動機構と、前記移動機構と連動し鏡体を傾斜させるカム機構よりなることを特徴とする付記9に記載の手術用顕微鏡。
13. 前記鏡体調整機構は平行四辺形リンク機構10よりなり、前記平行リンク機構を構成し回転軸O20と平行を保ち傾斜するアーム10bにバランスウェイトを配置したことを特徴とする付記7に記載の手術用顕微鏡。
14. 顕微鏡鏡体を3次元的に移動および3軸まわりに傾斜可能な鏡体移動傾斜機構と、前記鏡体を、注視点を傾斜中心として傾斜可能な傾斜中心点不変傾斜機構と、前記鏡体の物体側の焦点位置を観察方向に連続的に変更可能な焦点位置可変手段と、前記鏡体の焦点位置を予め設定された基準位置にリセットさせるリセット機能を備えた手術用顕微鏡において、
前記鏡体移動および傾斜機構を同時に動作させる第1の信号が入力された場合は、前記リセット機能を作動させ、前記傾斜中心点不変傾斜機構を動作させる第2の信号が入力された場合は、前記リセット機能を作動させないよう制御されることを特徴とする手術用顕微鏡。
付記1〜6の従来技術と、その目的および作用効果は本発明のものと同じである。
また、付記7〜13の従来技術は特公平3−18891号公報、特開昭56−20448号公報、EP0433426B1である。そして、特公平3−18891号公報は顕微鏡の観察点(焦点)を中心として、患部を様々な角度から観察可能にするための顕微鏡傾斜機構を備えた手術用顕微鏡において、様々な術式に対して最適な観察角度で使用することができるように、平行リンク機構の鉛直線に対して、顕微鏡を垂直状態、45°傾倒状態、90°傾倒状態に切り替えて接続可能としたものである。顕微鏡の接続状態を変更することにより生じるアンバランスを補正する為に、顕微鏡の回転に連動したバランスを補正する機構が記載されている。このバランスを補正する機構は、平行リンク機構の顕微鏡に対して反対側にカウンターウェイトW1、W2を搭載し、さらに顕微鏡とカウンターウェイトを連動して移動させるためのヘベルギア、リンクバー、円板等が配設されているため、平行リンク機構が非常に大型化してしまい、術中大変邪魔になってしまう。また平行リンク機構が大変重く顕微鏡を移動させるときに必要な操作力(慣性力)が大きくなり、使いづらいものであった。また、顕微鏡にアクセサリーを接続したりその位置を変更するなどによって生じる鉛直線Sまわりの回転モーメントは調整ハンドル等を回転させ、カウンターウェイトを移動させる方式では相殺する事はできない。
顕微鏡の観察点(焦点)を中心とした傾斜機構を備えていない手術用顕微鏡においては特開昭56−20448号公報、EP0433426B1に開示されたバランス調整方式がある。
特開昭56−20448号公報に開示されているものは鏡体の重心を回転軸と一致させるための手段として玉継手を回動自在の状態にして重心を垂下し回転軸と一致させたあと、ピンねじにより固定するものである。これは鏡体の重心を回転軸と一致させた場合には鏡体の観察光軸と回転軸の位置関係を特定の状態に保つことはできない。すなわち、観察焦点位置を中心とした傾斜機構を備えた手術用顕微鏡の傾斜中心点は鏡体を支持する支持架台により定義されているためにこの構成を適応することは不可能である。
EP0433426B1に開示されているものは軸まわりのバランス調整を顕微鏡を軸に対して直交する2方向に移動させて顕微鏡の重心をその軸に一致させるものである。これも特開昭56−20448号公報と同様にバランス調整により観察点と回転軸の位置関係が狂ってしまい、観察焦点位置を中心とした傾斜機構を備えた手術用顕微鏡に適応することは不可能である。
すなわち、従来は観察点を中心とした顕微鏡の傾斜が可能であり、かつ顕微鏡を軽い力で動かせる状態を保ちながら、顕微鏡に接続されるアクセサリー等により生じるアンバランスを容易に調整可能な手術用顕微鏡はなかった。
そこで、付記7〜13の目的は観察点を中心とした顕微鏡の傾斜が可能であり、かつ顕微鏡を軽い力で動かせる状態を保ちながら、顕微鏡に接続されるアクセサリー等により生じるアンバランスを容易に調整可能な手術用顕微鏡を提供することにある。その作用はバランス調整機構により、回転軸O20上の観察点もしくはその近傍を鏡体の旋回中心とした状態を保ちながら、回転軸O20まわりに回動する部材の合成させた重心が回転軸O20上に設定されることである。
また、付記第14の従来技術は特開平2−104349号公報である。この特開平2−104349号公報には鏡体を粗動させたときに照準機構が基準位置にリセットさせるものである。実際の手術中において、術者は粗動後に照準機構を駆動させ観察部位に正確に焦点を合わせて観察している。このため、鏡体の照準機構は基準位置からずれた状態で使用されている。
鏡体の注視点を傾斜中心として傾斜可能な機構を有した手術用顕微鏡に前記リセット機能を組み合わせることにおいて、鏡体を、注視点を傾斜中心に傾斜させるモードで移動させている時に、前記リセット機能を動作させると、観察部位の焦点が狂ってしまい、術者は再度焦点合わせを行う必要があり大変煩わしものとなっている。
そこで、付記14の目的は鏡体を、注視点を傾斜中心として傾斜可能な機能を有した手術用顕微鏡においても観察の妨げとならない焦準のリセット機構を提供することにある。
付記第14のものの作用は鏡体を3次元的に移動および3軸まわりに傾斜可能な状態での操作時には、鏡体の焦点位置が基準位置にリセットされ、鏡体を、注視点を傾斜中心として傾斜可能な状態での操作時には前記リセット機能は働かず、焦点位置は観察位置から変化しない。
1…支柱、2…第1の平行四辺形リンク、2a〜2d…アーム、3…第2の平行四辺形リンク、3a〜3d…アーム、4…支持台、7…第1の伝達ロッド、8…第2の伝達ロッド、10…平行四辺形リンク機構、12…鏡体、25…傾斜ロッド、39a…カウンターウェイト、39b,39c…カウンターウェイト、66a,66b,66c,66d…スプロケット、67a,67b…チェーン、68…接続アーム、69…傾斜ブロック、O1 …回転軸。