JP4062570B2 - 信号処理装置および方法、並びに記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、信号処理装置および方法、並びに記録媒体に関し、特に、高い周波数の振動を、提示可能な低い周波数に変換し、揺動信号を生成するようにした信号処理装置および方法、並びに記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、振動や音声を兼ね備えた擬似体験装置が普及し、例えば、ドライビングシミュレータにおいては、ユーザは、あたかも自動車に乗っているような擬似体験をすることができる。すなわち、これにより、ユーザは、走行時の加速感や減速感、カーブを曲がるときの遠心力、あるいは、道路の傾斜などを体感することができる。
【0003】
臨場感を出すために、振動を提示する手法として、「揺動装置が微動することによって振動を提示する方法」、あるいは「揺動装置とは別途に用意した揺動提示用の専用装置(例えば、ボディソニック(商標))によって振動を提示する方法」の2種類が提案されている。
【0004】
ドライビングシミュレータやアミューズメント用体感ドライブゲームなどは、人間や、人間が乗っている筐体を動かす必要があるため、その装置が大規模になり、その結果、応答特性は、図1に示すように高域が減衰した特性となる。同図において、横軸は周波数を表わし、縦軸はゲインを表わしている。例えば、ゲインの値の1は、「擬似体験装置を1cm動かす」という信号に対して、実際に擬似体験装置を1cm動かすことを意味し、ゲインの値の0.6は、0.6cmしか動かせないことを意味する。
【0005】
図1(A)においては、0Hz乃至15Hzまでの周波数帯域では、振動のパワーが完全に再現されており(擬似体験装置を1cm動かすことができ)、15Hz乃至40Hzの周波数帯域では、ゲインの値が徐々に減衰している(徐々に応答特性が悪くなっている)。さらに、40Hz以上の周波数では、振動は全く再現されていない(ゲインの値が0である)。
【0006】
また、ドライビングシミュレータやアミューズメント用体感ドライブゲームなどは、所定の映像をユーザに見せながら筐体を駆動するものであるため、映像信号に同期して筐体を駆動する。すなわち、この場合、筐体を駆動する制御信号の周期は、映像信号の周期と同じく、1/30秒(NTSC(National Television Systems Committee)信号の1フレームに相当)、または1/60秒(NTSC信号の1フィールドに相当)とするのが一般的である。しかしながら、このような制御周期にすると、提示可能な振動の周波数は、標本化定理から、最高でも15Hz(フレーム周期駆動の場合)、または30Hz(フィールド周期駆動の場合)となる。多くの場合、図1(B)は、後者の場合の擬似体験装置の応答特性を示しており、30HZ以上の周波数帯域では、振動は全く再現されていない。
【0007】
実際に擬似体験装置において、振動を再現するにあたっては、図1(A)および図1(B)の双方の特性が重なり合うため、結局、高い周波数帯域の振動は全く再現されない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の擬似体験装置は、高い周波数の振動を再現しようとしても、高域周波数の応答特性が低いため、筐体をその周波数で駆動することができず、臨場感に欠ける課題があった。
【0009】
従って、高い周波数を含むような振動を再現しようとする場合、コスト的に高くなるが、高域周波数の提示が可能な特別な構成を採用するようにしていた。
【0010】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、それ程コストを増加させることなく、臨場感を出すことができるようにするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の信号処理装置は、高い周波数の振動を含む揺動信号を、高速フーリエ変換し、周波数成分のうち、最高周波数を算出する算出手段と、算出手段により算出された最高周波数から、変換定数を決定する決定手段と、決定手段により決定された変換定数に基づいて、周波数成分を、より低い所定の周波数帯域に変換する周波数変換手段と、周波数変換手段により所定の周波数帯域に変換された周波数成分を、逆高速フーリエ変換し、提示可能な低い周波数の揺動信号を生成する生成手段と、生成手段により生成された揺動信号に基づき、振動を提示する提示手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の信号処理方法は、高い周波数の振動を含む揺動信号を、高速フーリエ変換し、周波数成分のうち、最高周波数を算出する算出ステップと、算出ステップの処理により算出された最高周波数成分から、変換定数を決定する決定ステップと、決定ステップの処理により決定された変換定数に基づいて、周波数成分を、より低い所定の周波数帯域に変換する周波数変換ステップと、周波数変換ステップの処理により所定の周波数帯域に変換された周波数成分を、逆高速フーリエ変換し、提示可能な低い周波数の揺動信号を生成する生成ステップと、生成ステップの処理により生成された揺動信号に基づき、振動を提示する提示ステップとを含むことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の記録媒体のプログラムは、高い周波数の振動を含む揺動信号を、高速フーリエ変換し、周波数成分のうち、最高周波数を算出する算出ステップと、算出ステップの処理により算出された最高周波数から、変換定数を決定する決定ステップと、決定ステップの処理により決定された変換定数に基づいて、周波数成分を、より低い所定の周波数帯域に変換する周波数変換ステップと、周波数変換ステップの処理により所定の周波数帯域に変換された周波数成分を、逆高速フーリエ変換し、提示可能な低い周波数の揺動信号を生成する生成ステップと、生成ステップの処理により生成された揺動信号に基づき、振動を提示する提示ステップとを実行させることを特徴とする。
【0014】
請求項1に記載の信号処理装置、請求項4に記載の信号処理方法、および請求項5に記載の記録媒体においては、最高周波数に基づいて、変換定数が決定され、変換定数に基づいて、高い周波数の振動を含む揺動信号がより提示可能な低い周波数の揺動信号に変換される。
【0015】
【発明の実施の形態】
図2は、本発明を適用したドライビングシミュレータの構成例を表わしている。例えば、パーソナルコンピュータにより構成される揺動制御装置1は、記録媒体としてのハードディスク(図示せず)を内蔵しており、そこに揺動(制御)信号が記録されていている。また、揺動制御装置1は、揺動信号を、例えば、VTR(Video Tape Recorder)などよりなる映像記録装置2、および揺動提示装置6へ出力し、それらを制御している。ここで、揺動制御装置1の出力する揺動信号は、映像信号と同じ1/60秒の周期で、映像記録装置2と揺動提示装置6を同期して制御している。
【0016】
映像記録装置2は、映像信号と、映像信号に同期した音声信号を、内部の磁気テープ(図示せず)に記録しており、磁気テープから再生された映像信号は、映像投影装置3に出力され、音声信号は、左右のスピーカ5R,5Lに出力される。映像投影装置3は、入力された映像信号に対応する映像を映像投影用スクリーン4に投影する。また、スピーカ5R,5Lは、入力された音声を再生する。揺動提示装置6は、揺動制御装置1より入力された揺動信号に基づき、内蔵する6軸パラレルマニピュレータ(図示せず)を介して座席7を振動させる。
【0017】
揺動制御装置1は、例えば、図3に示すように構成される。データ記録部11には、映像記録装置2の磁気テープに記録されている全ての映像信号に対応する全ての原信号(揺動データ)が記録されている。この原信号は、対応する映像を撮影したとき、座席に実際に付加された振動を測定することで得たものである。その原信号は、変換定数決定部12、およびデータ変換部13に供給される。変換定数決定部12は、データ記録部11より供給された原信号に基づき、変換定数を決定し、データ変換部13に出力する。データ変換部13は、データ記録部11より入力された原信号を、変換定数決定部12で決定された変換定数に基づき、提示可能な揺動信号に変換し、揺動提示装置6へ送出する。そして、揺動提示装置6は、揺動信号に基づき、6軸パラレルマニピュレータを介して座席7を振動させる。
【0018】
次に、図4のフローチャートを参照して、揺動を提示する処理について説明する。ステップS1において、揺動制御装置1の変換定数決定部12は、データ記録部11に記録されている揺動データ(原信号)に基づき、変換定数決定処理を行う。
【0019】
ここで、図5のフローチャートを参照して、変換定数決定処理の詳細について説明する。ステップS11において、変換定数決定部12は、データ記録部11に記録されている揺動データの中から、映像記録装置2が出力する映像信号に対応する揺動データxを全て(始めから終わりまで)読み出す。ステップS12において、変換定数決定部12は、読み出した揺動データxを、次式(1)に従って高速フーリエ(以下、FFT(Fast Fourier Transform)と称する)処理する。
【0020】
f=FFT(x) ・・・(1)
これにより、時間軸上の揺動データxが、周波数軸上の値(周波数成分)fに変換される。
【0021】
ステップS13において、変換定数決定部12は、式(1)に従って変換された周波数成分fの中から、振動のパワーが最大になる最高周波数fsを算出する。そして、ステップS14において、変換定数決定部12は、ステップS13で算出された最高周波数fsに基づいて、後述する周波数変換処理で必要とされる変換定数を決定する(その具体例については後述する)。
【0022】
図4に戻って、データ変換部13は、ステップS2において、図5のステップS14の処理で決定された変換定数に基づき、提示可能な揺動データ(揺動信号)を生成する処理を行う。
【0023】
ここで、図6のフローチャートを参照して、揺動データ生成処理の詳細について説明する。ステップS21において、データ変換部13は、データ記録部11に記録されている揺動データのうち、処理対象とされている映像に対応するものを全て読み出す。ステップS22において、データ変換部13は、読み出した全ての揺動データを上記式(1)に従ってFFT処理する。なお、以上のステップS21,S22の処理は、図5のステップS11,S12における変換定数決定部12の処理と同様の処理であるので、変換定数決定部12の処理結果を、データ変換部13に供給するようにしてもよい。
【0024】
ステップS23において、データ変換部13は、ステップS14で、変換定数決定部12により決定された変換定数に基づいて、ステップS22(またはステップS12)によりFFT処理された周波数成分fを周波数変換処理する(その具体例については後述する)。さらに、ステップS24において、データ変換部13は、周波数変換された周波数成分f´を、次式(2)に従って逆FFT処理し、周波数軸から時間軸に戻し、提示可能な揺動データx´(揺動信号)を生成する。
【0025】
x´=IFFT(f´) ・・・(2)
図4に戻って、ステップS3において、データ変換部13は、ステップS2の処理で生成された提示可能な揺動信号を、揺動提示装置6に送出する。そして、揺動提示装置6は、入力された揺動信号に基づき、6軸パラレルマニピュレータを介して座席7を振動させる。
【0026】
映像記録装置2は、座席7を振動させる揺動データに対応する映像信号を、映像投影装置3に供給し、対応する映像を映像投影用スクリーン4に表示させる。また、この映像に対応する音声信号がスピーカ5R,5Lに供給され、音として出力される。従って、座席7に座って、この映像と音声を視聴するユーザは、擬似的に体験をすることがきでる。
【0027】
次に、上述したステップS14の変換定数決定処理と、ステップS23の周波数変換処理の具体例について説明する。これらの処理では、式(1)に従ってFFT処理された周波数成分fが、以下に説明する6種類の周波数変換処理の式(3)乃至式(8)のいずれかを用いることにより、提示可能な周波数fdに変換される。
【0028】
まず、第1番目の例では、ステップS12で、上記式(1)に従ってFFT処理された周波数成分fのうち、ステップS13で算出された最も高い周波数成分fsが、提示可能な最高周波数fd1(ここでは、揺動提示装置6で提示可能な周波数は、30Hzとする)に収まるような定数C1が,ステップS14で設定される。そして、ステップS23では、式(3)に示すように、周波数成分fsは、その定数C1で除算されることで、提示可能な周波数fd1に変換される。換言すれば、この例の場合、ステップS14では、ステップS13で算出された最高周波数fsを、提示可能な最高周波数(30Hz)で除算することで、定数C1が決定される。従って、ステップS23で、式(3)を演算することで、揺動データの最高周波数fsが、1/C1の低い周波数(30Hz)に変換される。
【0029】
fd1=fs/C1 ・・・(3)
第2番目の例では、上記式(1)に従ってFFT処理された周波数成分f(ステップS12)のうち、最も高い周波数成分fs(ステップS13)が提示可能な周波数fd2(30Hz)に収まるような定数fC2(ステップS14)が設定され、周波数fsは、式(4)に従って、定数fC2が減算される(ステップS23)。
【0030】
fd2=fs−fC2 ・・・(4)
第3番目の例では、上記式(1)に従ってFFT処理された周波数成分f(ステップS12)のうち、臨場感提示の上で有意と判断される最も高い周波数成分fs(ステップS13)が提示可能な周波数fd3(30Hz)に収まるような定数C3(ステップS14)が設定され、周波数fsは、式(5)に従って、定数C3で除算される(ステップS23)。
【0031】
fd3=fs/C3 ・・・(5)
第4番目の例では、上記式(1)に従ってFFT処理された周波数成分f(ステップS12)のうち、臨場感提示の上で有意と判断される最も高い周波数成分fs(ステップS13)が提示可能な周波数fd4(30Hz)に収まるような定数fC4(ステップS14)が設定され、周波数fsは、式(6)に従って、定数fC4が減算される(ステップS23)。
【0032】
fd4=fs−fC4 ・・・(6)
第5番目の例では、上記式(1)に従ってFFT処理された周波数成分f(ステップS12)のうち、着目している時点付近のデータの中から、最も高い周波数成分fs(ステップS13)が提示可能な周波数fd5(30Hz)に収まるような定数C5(ステップS14)が設定され、周波数fsは、式(7)に従って、定数C5で除算される(ステップS23)。
【0033】
fd5=fs/C5 ・・・(7)
第6番目の例では、上記式(1)に従ってFFT処理された周波数成分f(ステップS12)のうち、着目している時点付近のデータの中から、最も高い周波数成分fs(ステップS13)が提示可能な周波数fd6(30Hz)に収まるような定数fC6(ステップS14)が設定され、周波数fsは、式(8)に従って、定数fC6が減算される(ステップS23)。
【0034】
fd6=fs−fC6 ・・・(8)
上述した例では、上記式(3)乃至式(8)のいずれかを用いるようにしたが、それらを組み合わせても良い。
【0035】
上記式(3)を用いた場合の周波数変換処理の動作についてさらに説明すると、この場合の動作は、図7に示すようになる。すなわち、全ての揺動データ(図7(A))は、変換定数決定部12により、上記式(1)に従ってFFT処理され、周波数成分に変換される(図7(B))。そして、変換定数決定部12は、FFT処理された周波数成分fの中から、そのレベルが最大になる周波数を最高周波数fs(図7(B)においては、100Hz)として算出する。さらに、変換定数決定部12は、最高周波数(100Hz)が、提示可能な最高周波数成分fd1(30Hz)になるような変換定数C1(100/30=3.33)を決定し、データ変換部13に出力する。
【0036】
データ変換部13は、変換定数決定部12で決定された変換定数C1(3.33)で、周波数成分fを除算して、最高周波数が提示可能な最高周波数fd1(30Hz)になるように、周波数変換する(図7(C))。さらに、データ変換部13は、周波数変換された周波数成分f´を、上記式(2)に従って逆FFT処理し、元の時間軸上の提示可能な揺動データを生成する(図7(D))。
【0037】
図8は、以上の式(3)を用いた処理により、高い周波数成分を含む原信号が、低い周波数成分の揺動信号に変換された例を示している。図8(A)の原信号において、最も高い周波数成分fsは120Hzである。いま、例えば、式(3)を用いて周波数変換処理を行うとすると、fd1=fs/C1=120/C1=30となることから、変換定数C1=4と決定される。
【0038】
すなわち、式(3)を用いた周波数変換処理の結果、図8(A)において、120Hz、または80Hzであった周波数は、図8(B)に示すように、30(=120/4)Hz、または20(=80/4)Hzの周波数に変換されることになる。
【0039】
また、図9は、式(5)を用いた処理により、高い周波数成分を含む原信号が、低い周波数成分の揺動信号に変換された例を示している。図9(A)の原信号において、物理的に最も高い周波数は120Hzであるが、臨場感の上で有意と判断される最も高い周波数成分fsは40Hzとする。式(5)を用いて周波数変換処理を行う場合、fd3=fs/C3=40/C3=30となることから、変換定数C3=4/3と決定される。
【0040】
すなわち、式(5)を用いて周波数変換処理された結果、図9(A)において、40Hz、または20Hzであった周波数は、図9(B)に示すように、30(=40・3/4)Hz、または15(=20・3/4)Hzの周波数に変換されることになる。図9(A)における120Hzの周波数は、周波数変換処理では、90(=120・3/4)となるが、揺動提示装置6が提示可能(応答可能)な最高周波数は、30Hzであるから、この周波数成分も、揺動信号においては、実質的に30Hzの成分となる。
【0041】
この図9の例において、もし、式(3)を用いた周波数変換処理が行われるのであれば、最も高い周波数成分fsは120Hzとなり、変換定数C1=4と決定される。そして、その値に基づいて、周波数変換処理されると、図9(A)において、40Hz、または20Hzであった周波数は、10(=40/4)Hz、または5(=20/4)Hzの周波数に変換され、臨場感が損なわれてしまう。そこで、この例の場合、ステップS13で算出する最高周波数を、臨場感提示の上で有意と判断される最も高い周波数成分fsとし、上記式(5)に従って、周波数変換処理を行うのが好ましい。
【0042】
さらにまた、図10は、式(7)を用いた処理により、高い周波数成分を含む原信号が、低い周波数成分の揺動信号に変換された例を示している。図10(A)の原信号において、着目している時点(時刻t1または時刻t2)付近で最も高い周波数成分fsは、120Hz、または90Hzである。式(7)を用いて周波数変換処理を行う場合、時刻t1においては、fd5=fs/C5=120/C5=30となり、時刻t2においては、fd5=fs/C5=90/C5=30となることから、時刻t1付近においては、変換定数C5=4とされ、時刻t2付近においては、変換定数C5=3と決定される。
【0043】
すなわち、式(7)を用いた周波数変換処理の結果、図10(A)において、120Hz、または80Hzであった周波数は、図10(B)に示すように、それぞれ、30(=120/4、または=90/3)Hzの周波数に変換されたことになる。
【0044】
一般的に、人間は、次のような生理的特性を有している。
【0045】
(1) 高い周波数の振動の場合、周波数の絶対的な値には鈍い(例えば、時刻t11のとき80Hzであったものが、それから充分に離れた時刻t12のとき120Hzに変化しても、人間はその変化に気付かないことが多い)が、周波数の相対的な変化には鋭い(例えば、80Hzから120Hzへ連続的におきる変化は気付くことが多い)。
【0046】
(2) 高い周波数の振動の場合、各周波数におけるパワーが変化しなければ、振動の位相の変化には鈍い。すなわち、波形パターンの変化には鈍い。
【0047】
従って、高い周波数の変化を、低い周波数の変化として提示しても、人間は、それを、高い周波数の変化として感受することができ、臨場感を損なわずに実質的に高い周波数の振動を提示することができる。
【0048】
次に、本発明による揺動データ生成処理の結果を示す。図11(A)は、60秒乃至140秒の間に原信号に基づいて発生させた振動を、3次元座標で表わしている。その縦軸は、振動のパワー(レベル)を表わし、その横軸は、周波数または時刻を表わしている。この原信号を、式(3)を用いて周波数変換処理し、生成された揺動データに基づく振動が、図11(B)に示されている。また、図11(C)は、同じく原信号による振動を、2次元座標(等パワー線プロット)で表わしている。縦軸は周波数を表わし、横軸は時刻を表わしている。この原信号を、同様に、式(3)を用いて周波数変換処理し、生成された揺動データに基づく振動が、図11(D)に示されている。これらの図からも判るように、高周波数における振動の周波数変化は、周波数変換された後も同じように再現されており、臨場感を損なうことなく、揺動データを生成できたことが確認できた。
なお、式(4)乃至式(8)を用いた変数変換処理による揺動データ生成処理の結果は、上述した場合と同様であったため、その説明は省略する。
【0049】
以上においては、本発明をドライビングシミュレータに用いる場合を例として説明したが、本発明は、その他の揺動データを生成する任意の擬似体験装置にも応用することが可能である。このように、実際に発生する高い周波数の振動を、低い周波数に変換して提示するようにすることで、高い周波数を提示可能にでき、複雑かつ高価な構成の装置を用いずに、臨場感に富んだ擬似体験を実現することができる。
【0050】
なお、上述したように、人間の生理的特性を利用しているため、本発明は、高い周波数の振動を提示可能な装置に適用して、より誇張した擬似体験を実現することもできる。
【0051】
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行させることもできるが、ソフトウエアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアとしての揺動制御装置1に組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどにインストールされる。
【0052】
次に、図12を参照して、上述した一連の処理を実行するプログラムをコンピュータにインストールし、コンピュータによって実行可能な状態とするために用いられる媒体について、そのコンピュータが汎用のパーソナルコンピュータである場合を例として説明する。
【0053】
プログラムは、図12(A)に示すように、パーソナルコンピュータ21に内蔵されている記録媒体としてのハードディスク22(図2の揺動制御装置1に内蔵されている図示せぬハードディスクに対応する)や半導体メモリ23に予めインストールした状態でユーザに提供することができる。
【0054】
あるいはまた、プログラムは、図12(B)に示すように、フロッピーディスク31、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)32、MO(Magneto-Optical)ディスク33、DVD(Digital Versatile Disc)34、磁気ディスク35、または半導体メモリ36などの記録媒体に、一時的あるいは永続的に格納し、パッケージソフトウエアとして提供することができる。
【0055】
さらに、プログラムは、図12(C)に示すように、ダウンロードサイト41から、デジタル衛星放送用の人工衛星42を介して、パーソナルコンピュータ21に無線で転送したり、ローカルエリアネットワーク、インターネットといったネットワーク51を介して、パーソナルコンピュータ21に有線で転送し、パーソナルコンピュータ21おいて、内蔵するハードディスク22などに格納させることができる。
【0056】
本明細書における媒体とは、これら全ての媒体を含む広義の概念を意味するものである。
【0057】
パーソナルコンピュータ21は、例えば、図13に示すように、CPU62を内蔵している。CPU62にはバス61を介して入出力インタフェース65が接続されており、CPU62は、入出力インタフェース65を介して、ユーザから、キーボード、マウスなどよりなる入力部67から指令が入力されると、それに対応して、図12(A)の半導体メモリ23に対応するROM63に格納されているプログラムを実行する。あるいはまた、CPU62は、ハードディスク22に予め格納されているプログラム、人工衛星42もしくはネットワーク51から転送され、通信部68により受信され、さらにハードディスク22にインストールされたプログラム、またはドライブ69に装着されたフロッピーディスク31、CD-ROM32、MOディスク33、DVD34、もしくは磁気ディスク35から読み出され、ハードディスク22にインストールされたプログラムを、RAM64にロードして実行する。さらに、CPU62は、その処理結果を、例えば、入出力インタフェース65を介して、LCD(Liquid Crystal Display)などよりなる表示部66に必要に応じて出力する。
【0058】
なお、本明細書において、媒体により提供されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0059】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に記載の信号処理装置、請求項4に記載の信号処理方法、および請求項5に記載の記録媒体によれば、最高周波数に基づいて変換定数を決定し、変換定数に基づいて、高い周波数の振動を含む揺動信号を、提示可能な低い周波数の揺動信号に変換するようにしたので、簡単かつ低コストの装置で、臨場感を損なうことなく、実質的に高い周波数の振動を擬似的に提示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】応答特性を説明する図である。
【図2】本発明を適用したドライビングシミュレータの構成例を示す図である。
【図3】図2の揺動制御装置1の構成を示すブロック図である。
【図4】揺動提示処理を説明するフローチャートである。
【図5】図4のステップS1の変換定数決定処理の詳細を説明するフローチャートである。
【図6】図4のステップS2の揺動データ生成処理の詳細を説明するフローチャートである。
【図7】周波数変換処理を説明する図である。
【図8】揺動信号が生成される例を説明する図である。
【図9】揺動信号が生成される他の例を説明する図である。
【図10】揺動信号が生成されるさらに他の例を説明する図である。
【図11】本発明を適用した揺動データ生成処理結果を示す図である。
【図12】媒体を説明する図である。
【図13】図12のパーソナルコンピュータ21の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 揺動制御装置, 2 映像記録装置, 3 影像投影装置, 4 影像投影用スクリーン, 5R,5L スピーカ, 6 揺動提示装置, 7 座席,11データ記録部, 12 変換定数決定部, 13 データ変換部
Claims (5)
- 高い周波数の振動を含む揺動信号を、提示可能な低い周波数の揺動信号に変換する信号処理装置において、
前記高い周波数の振動を含む揺動信号を、高速フーリエ変換し、周波数成分のうち、最高周波数を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された前記最高周波数から、変換定数を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された前記変換定数に基づいて、前記周波数成分を、より低い所定の周波数帯域に変換する周波数変換手段と、
前記周波数変換手段により所定の周波数帯域に変換された前記周波数成分を、逆高速フーリエ変換し、前記提示可能な低い周波数の揺動信号を生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された前記揺動信号に基づき、振動を提示する提示手段と
を備えることを特徴とする信号処理装置。 - 前記算出手段は、前記周波数成分のうち、臨場感を与える上で有意な最高周波数、または着目時点付近での最高周波数を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。 - 前記変換定数は、算出した前記最高周波数が提示可能な周波数に収まるような定数であり、
前記提示可能な周波数は、30Hzである
ことを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。 - 高い周波数の振動を含む揺動信号を、提示可能な低い周波数の揺動信号に変換する信号処理方法において、
前記高い周波数の振動を含む揺動信号を、高速フーリエ変換し、周波数成分のうち、最高周波数を算出する算出ステップと、
前記算出ステップの処理により算出された前記最高周波数から、変換定数を決定する決定ステップと、
前記決定ステップの処理により決定された前記変換定数に基づいて、前記周波数成分を、より低い所定の周波数帯域に変換する周波数変換ステップと、
前記周波数変換ステップの処理により所定の周波数帯域に変換された前記周波数成分を、逆高速フーリエ変換し、前記提示可能な低い周波数の揺動信号を生成する生成ステップと、
前記生成ステップの処理により生成された前記揺動信号に基づき、振動を提示する提示ステップと
を含むことを特徴とする信号処理方法。 - 高い周波数の振動を含む揺動信号を、提示可能な低い周波数の揺動信号に変換する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記高い周波数の振動を含む揺動信号を、高速フーリエ変換し、周波数成分のうち、最高周波数成分を算出する算出ステップと、
前記算出ステップの処理により算出された前記最高周波数成分から、変換定数を決定する決定ステップと、
前記決定ステップの処理により決定された前記変換定数に基づいて、前記周波数成分を、より低い所定の周波数帯域に変換する周波数変換ステップと、
前記周波数変換ステップの処理により所定の周波数帯域に変換された前記周波数成分を、逆高速フーリエ変換し、前記提示可能な低い周波数の揺動信号を生成する生成ステップと、
前記生成ステップの処理により生成された前記揺動信号に基づき、振動を提示する提示ステップと
を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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