JP4058955B2 - 傾斜組成表面層を有するセラミックス及びその製造方法 - Google Patents

傾斜組成表面層を有するセラミックス及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光触媒機能、電気的機能、熱的触媒機能、触媒担持機能等の優れた機能性、又は耐酸化性、耐アルカリ性、耐磨耗性等の耐環境性を有すると共に、優れた力学的特性を併せ持つ傾斜組成表面層を有するセラミックス及びその製造方法に関する。詳しくは、力学的特性を負担する中心部(第1相)と各種機能を負担する表層並びにその近傍層の第2相からなり、なお且つ表層に向かった傾斜組成を有するセラミックス及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光触媒機能、電気的機能、熱的触媒機能、触媒担持機能等の機能性や耐酸化性、耐アルカリ性、耐磨耗性等の耐環境性を有するセラミックス材料について種々提案されている。
例えば、二酸化チタンに代表される半導体の光触媒機能については、チタニア粒子を基板上に固定化させて用いる方法や繊維等にチタニア粒子を担持する方法、チタニア繊維を用いる方法が提案されている。
しかし、チタニア粒子を基板上に固定化させる方法は、接着方法に問題があり、また、繊維等にチタニア粒子を担持する方法も、使用時にチタニア粒子が脱落してしまうという問題があった。一方、ゾル−ゲル法により合成されるチタニア繊維は極めて脆弱であり、強度向上を目的としてシリカ成分を共存させた系では光触媒活性が不十分であるという問題があった。
【0003】
また、環境保全に対する関心の高まりとともに、自動車や工業プラント等から発生する窒素酸化物等の有害物質を浄化する触媒やフィルターが求められており、炭化ケイ素系繊維からなるフィルターが実用化されている。
しかし、炭化珪素系繊維は一般に耐アルカリ性に劣り、排ガス中に含まれる微量のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属により腐食を起こす。さらに、触媒成分としてアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属化合物を繊維に担持した場合、繊維の腐食による劣化は非常に著しくなる。
炭化珪素系繊維の代わりに耐アルカリ性に優れたジルコニア繊維を用いれば上記の腐食劣化は改善できると考えられる。しかしながら、現状のジルコニア繊維は、ゾルゲル法により合成されており、その引張強度は1GPa未満と非常に低強度であり、実用上の強度が不足している。
【0004】
一方、セラミックスを無機繊維で強化したセラミックス基複合材料は、高靭性・高強度であり、耐熱性に優れていることから開発が盛んに行われている。
例えば、セラミックス基複合材料の力学的特性をコントロールする上で、繊維とマトリックスとの界面結合の強さが重要であるため、通常、繊維表面に炭素、窒化ホウ素などのインターフェース層を形成させることが行われている。
【0005】
しかし、強化繊維の表面に窒化ホウ素層を形成させる場合、CVD法は、原料ガスが高価であり、また危険なことから非常に高コストなプロセスである。
また、ホウ酸溶液に繊維を浸漬した後、アンモニア雰囲気中で焼成することにより繊維表面に窒化ホウ素層を形成する方法も行われているが、繊維束中の繊維一本一本の表面に均一な厚みの窒化ホウ素層を形成させることは非常に難しく、多くの場合、繊維同士が窒化ホウ素層で接着するというブリッジングを生じてしまう。
【0006】
また、前記繊維強化セラミックス基複合材料や粒子分散型セラミックス材料では、耐酸化性、耐アルカリ性、耐磨耗性等の耐環境性を付与するために表面をセラミックス材料でコ−ティングすることが行われている。しかしながら、複合材料が単純形状の場合はよいが、複雑形状品では均一な被膜を形成することは困難であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解決し、光触媒機能、電気的機能、熱的触媒機能、触媒担持機能等の優れた機能性、又は耐酸化性、耐アルカリ性、耐磨耗性等の耐環境性を有すると共に、優れた力学的特性を併せ持つ傾斜組成表面層を有するセラミックス及びその製造方法を提供することを目的とる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、有機ケイ素重合体を有機金属化合物で修飾した構造を有する変性有機ケイ素重合体前記変性有機ケイ素重合体と有機金属化合物との混合物を所定の形状に成形した後、所定の熱処理を行うことにより、前記有機金属化合物又は前記有機金属化合物成分を含む低分子量物が、成形体表面へと選択的に移行(ブリードアウト)し、その後所定の雰囲気中で焼成することにより、前記有機金属化合物成分に由来するセラミックス層(目的とする機能又は耐環境性を有する層)が成形体表面に効果的に生成することを見出した。また、この方法により得られた成形体は、極めて緻密で高強度を有していることをも見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、ケイ素系セラミックス成分を主体とする第1相と第1相以外の組成からなるセラミックス成分を主体とする第2相との複合相からなり、形態が、粒子、フィルム又は繊維であるセラミックスであって、第2相を構成する少なくとも1種のセラミックス成分の微細結晶粒子の存在割合が表層に向かって傾斜的に増大していることを特徴とする傾斜組成表面層を有するセラミックスに関するものである。
【0010】
本発明において、ケイ素系セラミックス成分を主体とする第1相は、非晶質であっても結晶質であっても良い。ケイ素系セラミックス成分としては、SiO、SiC、Siの少なくとも1種が挙げられる。
【0011】
例えば、第1相のケイ素系セラミックス成分がSiO(シリカ)である場合には、シリカと固溶体或いは共融点化合物を形成し得る金属元素或いは金属酸化物を含有していても良い。シリカと固溶体を形成し得る金属元素(A)あるいはその酸化物がシリカと特定組成の化合物を形成し得る金属元素(B)としては特に限定されるものではないが、例えば(A)としてチタン、また(B)としてアルミニウム、ジルコニウム、イットリウム、リチウム、ナトリウム、バリウム、カルシウム、ホウ素、亜鉛、ニッケル、マンガン、マグネシウム、鉄等があげられる。
【0012】
この第1相は、本発明で得られるセラミックスの内部相を形成しており、力学的特性を負担する重要な役割を演じている。セラミックス全体に対する第1相の存在割合は99〜40重量%であることが好ましく、目的とする第2相の機能を十分に発現させ、なお且つ高い力学的特性をも発現させるためには、第1相の存在割合を50〜95重量%の範囲内に制御することが好ましい。
【0013】
一方、第2相を構成するセラミックス成分は、本発明では目的とする機能を発現させる上で重要な役割を演じるものであるが、その機能に応じて選択されるものである。第2相を構成するセラミックス成分としては、酸化物、窒化物及び炭化物の少なくとも1種が挙げられ、例えば、TiO、ZrO、BN、Al、TiN、TiC等が挙げられる。例えば、光又は熱的触媒機能が要求される場合には、TiO或いはその共融点化合物やある特定元素により置換型の固溶体を形成したもの等が選択され、耐アルカリ性、耐酸化性、触媒機能、触媒担持機能が要求される場合には、ZrOが選択される。また、Alは耐酸化性の付与、TiNやTiCは耐磨耗性の付与、BNはインターフェース(複合材料の界面層)としての機能付与が得られる。また、圧電特性が期待される場合には、鉛/ジルコニウム/チタン系酸化物等が選択される。
【0014】
第2相を構成するセラミックス成分の微細結晶の粒子径は、通常50nm以下である。光又は熱的触媒機能が要求される場合には、粒子径は15nm以下、特に10nm以下が好ましい。
本発明のセラミックスの表層部を構成する第2相の存在割合は、酸化物の種類により異なるが、1〜60重量%が好ましく、その機能を十分に発現させ、また高強度をも同時に発現させるには5〜50重量%の範囲内に制御することが好ましい。
【0015】
この第2相を構成する少なくとも1種のセラミックス成分の微細結晶粒子の存在割合は、表面に向って傾斜的に増大しており、その組成の傾斜が明らかに認められる領域の厚さは5〜500nmの範囲に制御することが好ましい。尚、本発明において、第1相及び第2相の「存在割合」とは、第1相を構成するケイ素系セラミックス成分と第2相を構成するセラミックス成分全体、即ちセラミックス全体に対する第1相のケイ素系セラミックス成分及び第2相のセラミックス成分の重量%を意味している。
【0017】
次に、本発明の傾斜組成表面層を有するセラミックスの製造方法について説明する。
本発明においては、有機ケイ素重合体を有機金属化合物で修飾した構造を有する変性有機ケイ素重合体、又は、有機ケイ素重合体あるいは前記変性有機ケイ素重合体と有機金属化合物との混合物を所定の形状に成形した後、所定の熱処理を行い、さらに酸化雰囲気中、不活性雰囲気中、又は窒素を含む雰囲気中で焼成することにより、傾斜組成表面層を有するセラミックスが得られる。
【0018】
有機ケイ素重合体としては、特に制限はなく、ポリカルボシラン、ポリシラザン、ポリシラスチレン、メチルクロロポリシラン等が用いられる。有機ケイ素重合体の数平均分子量は200〜10,000の範囲が好ましい。
有機金属化合物としては、一般式、M(OR')n或いはMR''m(Mは金属元素、R'は炭素原子数1〜20個を有するアルキル基またはフェニル基、R"はアセチルアセトナート、mとnは1より大きい整数)を基本構造とする化合物が用いられる。
【0019】
また、変性有機ケイ素重合体は、前記有機ケイ素重合体を前記有機金属化合物で修飾することにより得られる。変性有機ケイ素重合体の数平均分子量は1,000〜50,000の範囲が好ましい。
本発明においては、前記変性有機ケイ素重合体における前記有機金属化合物の修飾状態を注意深く制御する必要がある。
以下に、変性ポリカルボシランの場合を説明する。
変性ポリカルボシランの基本的な製造方法は、特開昭56−74126号に極めて類似している。
【0020】
変性ポリカルボシランは、主として一般式
Figure 0004058955
(但し、式中のRは水素原子、低級アルキル基又はフェニル基を示す。)で表される主査骨格を有する数平均分子量が200〜10,000のポリカルボシランと、一般式、M(OR')n或いはMR''m(Mは金属元素、R'は炭素原子数1〜20個を有するアルキル基またはフェニル基、R"はアセチルアセトナート、mとnは1より大きい整数)を基本構造とする有機金属化合物とから誘導されるものである。
【0021】
ここで、本発明の傾斜組成表面層を有するセラミックスを製造するには、上記有機金属化合物がポリカルボシランと1官能性重合体を形成し、かつ有機金属化合物の一部のみがポリカルボシランと結合を形成する緩慢な反応条件を選択する必要がある。その為には280℃以下、好ましくは250℃以下の温度で不活性ガス中で反応させる必要がある。この反応条件では、上記有機金属化合物はポリカルボシランと反応したとしても、1官能性重合体として結合(即ちペンダント状に結合)しており、大幅な分子量の増大は起こらない。この有機金属化合物が一部に結合した変性ポリカルボシランは、ポリカルボシランと有機金属化合物の相溶性を向上させる上で重要な役割を演じる。
【0022】
尚、2官能以上の多くの官能基が結合した場合は、ポリカルボシランの橋掛け構造が形成されると共に顕著な分子量の増大が認められる。この場合は、反応中に急激な発熱と溶融粘度の上昇が起こる。一方、上記1官能性重合体であり、かつ未反応の有機金属化合物が残存している場合は、逆に溶融粘度の低下が観察される。
【0023】
本発明では、未反応の有機金属化合物を意図的に残存させる条件を選択することが望ましい。本発明では、主として上記変性ポリカルボシランと未反応状態の有機金属化合物或いは2〜3量体程度の有機金属化合物が共存したものを出発原料として用いるが、変性ポリカルボシランのみでも、極めて低分子量の変性ポリカルボシラン成分が含まれる場合は、同様に本発明の出発原料として使用できる。また、ポリカルボシランと有機金属化合物の混合物を用いてもよい。
【0024】
本発明においては、前記有機ケイ素重合体を有機金属化合物で修飾した構造を有する変性有機ケイ素重合体、又は、有機ケイ素重合体あるいは前記変性有機ケイ素重合体と有機金属化合物との混合物(以下前駆体ポリマーという)を所定の形状に成形する。
例えば、粉末形状とするには、前駆体ポリマー(例えばキシレン溶液)から溶媒を除去した後(ポリマーはブロック状となる)、ボールミル等でポリマーを微粉化する。また、フィルム形状とするには、キャスト法等で製膜する。
【0025】
繊維形状とするには、前駆体ポリマーを溶融させて紡糸原液を造り、これを通常用いられる合成繊維紡糸用装置により紡糸する。紡糸する際の紡糸原液の温度は前駆体ポリマーの軟化温度によって異なるが、50〜200℃の温度範囲が有利である。または、前駆体ポリマーを溶媒に溶解させ、紡糸原液を造り、前記紡糸原液を通常用いられる合成繊維紡糸装置により乾式紡糸法により紡糸することもできる。
バルク形状とするには、SiC繊維等のセラミックス繊維の3次元織物のプリフォーム(例えばライナー等の複雑形状物)に前駆体ポリマーを含浸する。また、セラミックス粉末と前駆体ポリマーを混練後、所望形状に成形することもできる。
【0026】
次に、得られた成形体に所定の熱処理を行う。熱処理は後述の焼成雰囲気と同じ雰囲気で、一般に50〜400℃の範囲内で、数時間〜30時間の処理上条件が選択される。この熱処理の際に、前駆体ポリマー中の第2相成分の成形体表面へのブリードアウトが進行し、目的とする傾斜組成の下地が形成される。
【0027】
次いで、前記熱処理後の成形体を、500〜1800℃の温度範囲で酸化雰囲気中、不活性雰囲気中、又は窒素を含む雰囲気中で焼成することにより、目的とするケイ素系セラミックス成分を主体とする第1相と第1相以外の組成からなるセラミックス成分を主体とする第2相との複合相からなるセラミックスであって、第2相を構成する少なくとも1種のセラミックス成分の微細結晶粒子の存在割合が表層に向かって傾斜的に増大しているセラミックスを得る。
【0028】
焼成により生成するケイ素系セラミックス成分を主体とする第1相は、前駆体ポリマーや前記焼成雰囲気の種類により変わってくる。例えば、酸化雰囲気では、SiO、窒素、アルゴン、真空等の不活性雰囲気では、SiC、アンモニア雰囲気では、Siが主として生成する。また、前駆体ポリマーがポリシラザンの場合には、不活性雰囲気でもSiが主として生成する。
【0029】
本発明における傾斜組成表面層を有するセラミックスの生成過程を、図1に模式的に示す。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明する。
参考例1
5リットルの三口フラスコに無水トルエン2.5リットルと金属ナトリウム400gとを入れ窒素ガス気流下でトルエンの沸点まで加熱し、ジメチルジクロロシラン1リットルを1時間かけて滴下した。滴下終了後、10時間加熱還流し沈殿物を生成させた。この沈殿をろ過し、まずメタノールで洗浄した後、水で洗浄して、白色粉末のポリジメチルシラン420gを得た。
ポリジメチルシラン250gを水冷還流器を備えた三口フラスコ中に仕込み、窒素気流下、420℃で30時間加熱反応させて数平均分子量が1200のポリカルボシランを得た。
【0031】
実施例1
参考例1の方法により合成されたポリカルボシラン100gにトルエン100gとアルミニウムトリブチレート100gを加え、100℃で1時間予備加熱させた後、150℃までゆっくり昇温してトルエンを留去させてそのまま5時間反応させ、更に250℃まで昇温して5時間反応して変性ポリカルボシランを合成した。この変性ポリカルボシランに意図的に低分子量の有機金属化合物を共存させる目的で10gのアルミニウムトリブチレートを加えて、変性ポリカルボシランと低分子量有機金属化合物の混合物を得た。
【0032】
参考例1の方法により合成されたポリカルボシランをキシレンに溶解し、50%のキシレン溶液とし、表面に0.2μmのBNをCVD法により蒸着した炭化ケイ素繊維(直径:11μm)製三次元織物(繊維比X:Y:Z=1:1:0.1)に含浸し、乾燥後、窒素ガス中1200℃で一時間焼成した。この含浸−乾燥−焼成の操作を7回繰り返した後、上記の変性ポリカルボシランと低分子量有機金属化合物の混合物の50%キシレン溶液を含浸し、乾燥後、窒素ガス中1200℃で一時間焼成することにより、SiC/SiC複合材料を得た。
【0033】
得られたSiC/SiC複合材料のマトリックス部は主として炭化ケイ素からなり、またTEM観察の結果、材料表面にアルミナ層の形成が確認された。また、オージェにより構成原子の分布状態を調べたところ、最表面から50nmの領域でAl/Si(モル比)=0.85、最表面から100〜200nmの領域でAl/Si(モル比)=0.20、最表面から300〜400nmの領域でAl/Si=0と、表面に向かってアルミニウムが増大する傾斜組成になっていることを確認した。この複合材料の室温での曲げ強度は600MPaであった。この複合材料を空気中、1400℃で100時間熱処理し、室温で引張強度を測定したところ、熱処理前の70%以上の強度を維持していた。熱処理後の試料を観察したところ、試料表面に亀裂等の異常は確認されなかった。また、破面を観察したところ多数の繊維の引き抜けが観察された。
【0034】
比較例1
参考例1の方法により合成されたポリカルボシランをキシレンに溶解し、50%のキシレン溶液とし、表面に0.2μmのBNをCVD法により蒸着した炭化ケイ素繊維(直径:11μm)製三次元織物(繊維比X:Y:Z=1:1:0.1)に含浸し、乾燥後、窒素ガス中1200℃で一時間焼成した。この含浸−乾燥−焼成の操作を8回繰り返すことにより、SiC/SiC複合材料を得た。さらにこのSiC/SiC複合材料表面に溶射法でアルミナをコートした。
【0035】
このSiC/SiC複合材料のマトリックス部は主として炭化ケイ素からなり、またTEM観察の結果、材料表面に約20μmのアルミナ層の形成が確認された。また、この表面のアルミナ層は材料の内側部分との境界が明瞭に観察され、実施例1に示すような傾斜組成とはなっていなかった。この複合材料の室温での曲げ強度は600MPaであった。この複合材料を空気中、1400℃で100時間熱処理し、室温で引張強度を測定したところ、脆性的な破壊挙動を示し、熱処理前の10%以下まで強度が低下していた。熱処理後の試料を観察したところ、試料表面に多くの亀裂と表面のアルミナ層の剥離が確認された。また、破面を観察したところ繊維の引き抜けはほとんど観察されなかった。これは、表面のアルミナ層とSiC/SiC複合材料の熱膨張差を吸収できなかったために、アルミナ層の剥離が生じ、耐酸化コーティングの機能を発現できなかったためであると考えられる。
【0036】
実施例2
参考例1の方法により合成されたポリカルボシラン16gにトルエン100gとテトラブトキシチタン64gを加え、100℃で1時間予備加熱させた後、150℃までゆっくり昇温してトルエンを留去させてそのまま5時間反応させ、更に250℃まで昇温して5時間反応して変性ポリカルボシランを合成した。この変性ポリカルボシランに意図的に低分子量の有機金属化合物を共存させる目的で10gのトリブチルボレートを加えて、変性ポリカルボシランと低分子量有機金属化合物の混合物を得た。
【0037】
この変性ポリカルボシランと低分子量有機金属化合物の混合物をトルエンに溶解させたのちキャスト法で製膜した。得られたフィルムを、空気中、段階的に150℃まで加熱し不融化させた後、1200℃の空気中で1時間焼成を行い、チタニア/シリカフィルムを得た。
【0038】
得られたフィルム(平均厚み:30μm)は、TEM観察の結果、フィルム表面にチタニア層の形成が確認された。また、オージェにより構成原子の分布状態を調べたところ、最表面から50nmの領域でTi/Si(モル比)=0.90、最表面から100〜200nmの領域でTi/Si(モル比)=0.20、中心部でTi/Si=0.05と、表面に向かってチタンが増大する傾斜組成になっていることを確認した。このチタニア/シリカフィルムを直径200mm、長さ300mmの円筒形状として、ステンレス製容器の内側に装着し、o−クロロフェノールを20ppm含んだ水を10リットル/分の流量で循環した。このとき、フィルムの内側から300〜400nmの紫外光を照射した。1時間循環した水をサンプリングし、o−クロロフェノール濃度を測定したところ、1ppm以下であり、o−クロロフェノールをほぼ完全に分解させることができた。また、水に濁りは認められなかった。
【0039】
比較例2
チタンテトライソプロポキシド120gを1000mlのイソプロパノールで希釈し、攪拌しながらジイソプロパノールアミン40gと水10gを添加し、さらに分子量1000のポリエチレングリコール10gを添加して透明なチタニアゾル液を調整した。
【0040】
このチタニアゾル液を直径200mm、長さ300mmの円筒形ガラスの内側に塗布し、乾燥後、大気中600℃で焼成することにより、表面にチタニアがコーティングされた円筒形ガラスを得た。この円筒形ガラスをステンレス製容器の内側に装着し、o−クロロフェノールを20ppm含んだ水を10リットル/分の流量で循環した。このとき、円筒形ガラスの内側から300〜400nmの紫外光を照射した。1時間循環した水をサンプリングし、o−クロロフェノール濃度を測定したところ、15ppmであり、実施例2の場合と比較してo−クロロフェノールの分解効率は劣っていた。また、水には円筒形ガラス表面から脱落したチタニア粒子が多く観察された。
【0041】
実施例3
参考例1の方法により合成されたポリカルボシラン100gにトルエン100gとトリブチルボレート20gを加え、100℃で1時間予備加熱させた後、150℃までゆっくり昇温してトルエンを留去させてそのまま5時間反応させ、更に250℃まで昇温して5時間反応して変性ポリカルボシランを合成した。この変性ポリカルボシランに意図的に低分子量の有機金属化合物を共存させる目的で10gのトリブチルボレートを加えて、変性ポリカルボシランと低分子量有機金属化合物の混合物を得た。
【0042】
この変性ポリカルボシランと低分子量有機金属化合物の混合物をボールミルで微粉にした後、空気中、段階的に150℃まで加熱し不融化させた後、1500℃の窒素中で1時間焼成を行い、炭化ホウ素層を表面に有するセラミック粉末を得た。
【0043】
得られたセラミック粉末(平均粒径:0.5μm)は、TEM観察の結果、表面に炭化ホウ素層の形成が確認され、内部の炭化珪素相は非晶質であった。また、元素分析の結果、粉末中のホウ素含有量は0.1wt%であった。また、オージェにより構成原子の分布状態を調べたところ、最表面から50nmの領域でB/Si(モル比)=0.85、最表面から100〜200nmの領域でB/Si(モル比)=0.20、中心部でB/Si=0と、表面に向かってホウ素が増大する傾斜組成になっていることを確認した。この粉末を1950℃で10時間、常圧で焼結を行った。得られた焼結体の曲げ強度は室温で600MPa、1400℃で500MPaであった。この焼結体をSEMで観察したところ、異常粒成長による組織の不均一は観察されず、粒子径は均一であった。また、TEMの結果、粒界にはガラス相は観察されなかった。
【0044】
比較例3
市販のSiC粉末(平均粒径:0.5μm)に焼結助剤として0.2wt%のホウ素と1wt%の炭素を添加して混合した後、この粉末を1950℃で10時間、常圧で焼結を行った。得られた焼結体の曲げ強度は室温で500MPa、1400℃で250MPaであった。この焼結体をSEMで観察したところ、異常粒成長による組織の不均一が観察された。また、TEMの結果、粒界にはガラス相の偏析が観察された。このような組織の不均一とガラス相の存在が室温での低強度と高温での強度低下を引き起こしたと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明における傾斜組成表面層を有するセラミックスの生成過程を模式的に示す図である。

Claims (9)

  1. ケイ素系セラミックス成分を主体とする第1相と第1相以外の組成からなるセラミックス成分を主体とする第2相との複合相からなり、形態が、粒子、フィルム又は繊維であるセラミックスであって、第2相を構成する少なくとも1種のセラミックス成分の微細結晶粒子の存在割合が表層に向かって傾斜的に増大していることを特徴とする傾斜組成表面層を有するセラミックス。
  2. 第1相の存在割合が99〜40重量%、第2相の存在割合が1〜60重量%である請求項1に記載の傾斜組成表面層を有するセラミックス。
  3. 第2相を構成する少なくとも1種のセラミックス成分の微細結晶粒子の存在割合の傾斜が、表面から5〜500nmの深さで存在する請求項1〜2に記載の傾斜組成表面層を有するセラミックス。
  4. 第2相を構成する少なくとも1種のセラミックス成分の微細結晶の粒子径が50nm以下であることを特徴とする請求項1〜3に記載の傾斜組成表面層を有するセラミックス。
  5. ケイ素系セラミックス成分が、SiO、SiC、Siの少なくとも1種である請求項1〜4記載の傾斜組成表面層を有するセラミックス。
  6. 第2相を構成するセラミックス成分が、酸化物、窒化物及び炭化物の少なくとも1種である請求項1〜記載の傾斜組成表面層を有するセラミックス。
  7. 第2相を構成するセラミックス成分が、TiO、ZrO、BN、Al、TiN、TiCの少なくとも1種である請求項1〜記載の傾斜組成表面層を有するセラミックス。
  8. ケイ素系セラミックス成分を主体とする第1相と第1相以外の組成からなるセラミックス成分を主体とする第2相との複合相からなり、第2相を構成する少なくとも1種のセラミックス成分の微細結晶粒子の存在割合が表層に向かって傾斜的に増大していることを特徴とする傾斜組成表面層を有するセラミックスの製造方法であって、有機ケイ素重合体を有機金属化合物で修飾した構造を有する変性有機ケイ素重合体と有機金属化合物との混合物を成形した後、50〜400℃の範囲内で熱処理を行い、続いて酸化雰囲気中、不活性雰囲気中、又は窒素を含む雰囲気中で500〜1800℃の温度範囲で焼成することを特徴とする傾斜組成表面層を有するセラミックスの製造方法。
  9. 有機金属化合物が、一般式、M(OR')n或いはMR''m(Mは金属元素、R'は炭素原子数1〜20個を有するアルキル基またはフェニル基、R"はアセチルアセトナート、mとnは1より大きい整数)を基本構造とする化合物である請求項記載の傾斜組成表面層を有するセラミックスの製造方法。
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