JP4051874B2 - 偏光板用保護フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロースエステルフィルムに関し、詳しくは液晶表示装置の偏光板に使用されているセルロースエステルフィルム自体の耐久性及び、液晶物質の保護のために紫外線(UV)吸収能を付与した偏光板用保護フィルムに関するものである。又、本発明は、光学用途に利用される光学フィルム及びその製造方法に関するものであり、特に液晶表示装置等に用いられる偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルムなどの各種機能フィルム、又、有機ELディスプレイ等で使用される各種機能フィルム等にも利用することができる光学フィルム及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来からセルロースエステルフィルムは、透明性に優れ、かつ屈折率の異方性の小さな膜を容易に作製できるため偏光板用保護フィルムなどの光学的用途に広く使用されてきた。
【0003】
特に近年では、ノートパソコン等の普及によりセルロースエステルフィルムの薄型軽量化の開発が進んでいる。それに伴って、液晶用偏光板の保護フィルムもますます薄膜化の要求が強くなってきている。
【0004】
偏光板用保護フィルムには、一般的にトリアセチルセルロースフィルムが広く使用されている。しかしながら、トリアセチルセルロースフィルムは紫外線に長時間暴露されると黄変するという該フィルム固有の欠点を有している。このため、従来より、予めトリアセチルセルロースフィルム中に紫外線吸収化合物を混入する方法等により紫外線による悪影響を防止してきた。また、偏光板用保護フィルムに使用されるトリアセチルセルロースフィルムには、偏光子や液晶を紫外線から守る目的でも紫外線吸収化合物が使用されている。
【0005】
上記のように偏光板用保護フィルムの薄膜化が進むにつれて、トリアセチルセルロースフィルムも薄膜化されてきているが、単純にトリアセチルセルロースフィルムを薄膜化するといろいろな問題が発生することが我々の研究で明らかになった。
【0006】
それは、このトリアセチルセルロースフィルムを単純に薄膜化してしまうと、十分に紫外線をカットすることができず、薄膜化された分だけ、紫外線吸収化合物を増量することが必要となる。
【0007】
しかしながら、紫外線吸収化合物を単純に増量するだけでは、接着性向上のために行うアルカリ鹸化処理時に紫外線吸収化合物が溶出し、生産性を大きく低下させてしまうという新たな問題を引き起こすことが判明した。
【0008】
偏光板用保護フィルムには、前述のように、一般的にセルロースエステルフィルムが広く使用されているが、高精細化に伴い、セルロースエステルフィルムの異物などの故障、面品質に対する要求が厳しくなっている。
【0009】
異物故障の改良に関しては、特開平4−85011号、同5−185443号、同8−25459号明細書などに、プロセスによって異物を改良する手段が提案されている。しかしながら、これらの方法では異物故障のレベルとしては不十分であった。
【0010】
また、近年の高精細化された液晶方式や視野角拡大方式で若干黄色く見えるものがあり、セルロースエステルフィルムも若干黄色であるため、これらを組み合わせて液晶パネルを作製すると、液晶パネルが若干黄色く見えてしまうという問題があった。セルロースエステルフィルムの黄色みには紫外線吸収剤が大きく影響している。紫外線吸収剤に関しては、特開平6−130226号、同7−11056号明細書などに異なった構造を有する紫外線吸収剤が提案されている。しかしながら、これらの提案においても、黄色みに関してはあまり考慮されておらず、不十分であった。また、異物故障や面品質については、まったく考慮されていなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、紫外線吸収能に優れ、且つ、アルカリ鹸化処理持に紫外線吸収化合物の溶出が少ないセルロースエステルフィルム及びその製造方法を提供することにあり、異物故障が少なく、生産性にも優れ、且つ、黄色みも少ない光学フィルム及びその製造方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は以下の手段により達成される。
【0013】
1.融点が20℃以下である紫外線吸収化合物を含有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【0014】
2.分子内にエステル基を有する紫外線吸収化合物を含有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【0015】
3.融点が20℃以下である紫外線吸収化合物と融点が20℃より高い紫外線吸収化合物とを含有することを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【0016】
4.酸化防止化合物を含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0017】
5.酸化防止化合物がヒンダードアミン系化合物であることを特徴とする前記4に記載のセルロースエステルフィルム。
【0018】
6.セルロースエステルが低級脂肪酸エステルであることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0019】
7.セルロースエステルフィルムが偏光板用保護フィルムであることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルム。
【0020】
8.9.2以上の分配係数を有する紫外線吸収剤を含有することを特徴とする光学フィルム。
【0021】
9.380nmにおける透過率が8%以下であることを特徴とする前記8に記載の光学フィルム。
【0022】
10.紫外線吸収剤がフィルムを構成する樹脂に対し、質量で0.5%以上含有されていることを特徴とする前記8または9に記載の光学フィルム。
【0023】
11.融点20℃以下の可塑剤が含有されていることを特徴とする前記8〜10のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0024】
12.膜厚が20〜50μmであることを特徴とする前記8〜11のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0025】
13.前記一般式1で示される紫外線吸収剤を含有することを特徴とする光学フィルム。
【0026】
14.前記一般式2で示される紫外線吸収剤を含有することを特徴とする光学フィルム。
【0027】
15.0.1g/リットルの濃度で溶媒に溶解し1cm角のセルで溶媒のみの試料を比較として分光吸収スペクトルを測定したときの透過率が50%となる波長が、392〜420nmの範囲にある分光吸収スペクトルを有する紫外線吸収剤および該波長が360〜390nmの範囲にある分光吸収スペクトルを有する紫外線吸収剤を含有することを特徴とする光学フィルム。
【0028】
16.前記一般式1(で表される化合物)において、R4、R5のうち少なくとも1つの置換基がハロゲン原子である紫外線吸収剤と、R4、R5の置換基のいずれもがハロゲン原子でない紫外線吸収剤が含有され、該ハロゲン原子を有する紫外線吸収剤とハロゲン原子を有しない紫外線吸収剤との比率が、20:80〜80:20の範囲であることを特徴とする光学フィルム。
【0029】
17.3種類以上の紫外線吸収剤を含有することを特徴とする光学フィルム。
【0030】
18.3種類以上の紫外線吸収剤を含有することを特徴とする前記8〜16のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0031】
19.前記8〜18の光学フィルムを、樹脂を含有する紫外線吸収剤溶液と樹脂が溶解しているドープ液をインラインで混合、攪拌し、ベルトまたはドラム支持体上に流延、製膜して得ることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【0032】
20.前記19に記載の製造方法を用いて作製されたことを特徴とする光学フィルム。
【0033】
21.セルロースエステルフィルムであることを特徴とする前記8〜18、20のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【0034】
22.光学フィルムがセルロースエステルフィルムであることを特徴とする前記19に記載の光学フィルムの製造方法。
【0035】
23.セルロースエステルがセルロースの低級脂肪酸エステルであることを特徴とする前記21に記載の光学フィルム。
【0036】
以下に詳細に説明する。
【0037】
本発明請求項1〜9のセルロースエステルフィルムについて説明する。
【0038】
本発明請求項1〜9に用いられるセルロースエステルとしては、セルロースエステルが低級脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0039】
セルロースエステルの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味し、例えばセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートなどがセルロース低級脂肪酸エステルの好ましい例として挙げることができる。
【0040】
また、上記以外にも、特開平10−45804号、同8−231761号、米国特許第2,319,052号等に記載のセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどの混合脂肪酸エステルを用いることができる。用いられる混合脂肪酸エステルの総アシル基置換度は2.3〜3.0のものが好ましく、2.0以下であることが特に好ましい。総アシル置換度としては、2.5〜2.8であることがより好ましい。
【0041】
上記記載の中でも、特に好ましく用いられるセルロース低級脂肪酸エステルはセルロースアセテートである。
【0042】
更に、フィルムの強度の観点から、特に重合度250〜400、結合酢酸量が54〜62.5%が好ましく用いられ、更に好ましくは結合酢酸量が58〜62.5%のセルローストリアセテートである。特に58〜59%であることが好ましい。 セルロースエステルは綿花リンターから合成されたセルロースエステルと木材パルプから合成されたセルロースエステルのどちらかを単独で、或いはそれらを混合して用いることができる。セルロースエステルフィルムの製造において、ベルト上にまたはドラム上に流延して製膜する際の支持体からの剥離性の観点で綿花リンターから合成されたセルロースエステルを多く混合することが生産性向上の点で好ましい。木材パルプから合成されたセルロースエステルを混合して用いた場合、綿花リンターから合成されたセルロースエステルの比率が40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることが更に好ましい。最も好ましいのは綿花リンターから合成されたセルロースエステルを単独で用いることである。
【0043】
次に、請求項1〜9で表される発明のセルロースエステルフィルムに含有される紫外線吸収化合物(以下、紫外線吸収剤ということもある)について説明する。
【0044】
本発明には、融点が20℃以下である紫外線吸収化合物を用いることができる。
【0045】
また、本発明には分子内にエステル基を有する紫外線吸収化合物を用いることができる。
【0046】
本発明において、融点が20℃以下である紫外線吸収化合物又は分子内にエステル基を有する化合物を用いることにより、アルカリ鹸化工程における上記紫外線吸収化合物のセルロースエステルフィルムからの溶出が抑えられる。
【0047】
本発明において、融点が20℃以下である紫外線吸収化合物は、融点が20℃よりも高い紫外線吸収化合物を併用することもできる。同様に分子内にエステル基を有する紫外線吸収化合物と分子内にエステル基を有しない紫外線吸収化合物とを併用することもできる。
【0048】
本発明に用いられる紫外線吸収化合物は融点が20℃以下であればよいが、具体例としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物が挙げられ、ベンゾトリアゾール系化合物が特に好ましい。更に、本発明の紫外線吸収化合物は、セルロースエステルとの相溶性の点から炭素数8以上のアルキル鎖、アルケニル鎖、アルキレン鎖又はアルキレンオキシド鎖を有することが好ましい。また、本発明の紫外線吸収化合物は、分子量3000以下であることが好ましく、特に2000以下であることが好ましい。
【0049】
また、本発明の紫外線吸収化合物と併用できる紫外線吸収化合物としては、一般的に使用されている紫外線吸収化合物を用いることができるが、具体的には例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物が挙げられる。中でも好ましいのはベンゾトリアゾール系化合物である。
【0050】
本発明の紫外線吸収化合物の使用量は、セルロースエステルフィルムに対して0.01〜10質量%であり、好ましくは0.1〜5質量%である。本発明の紫外線吸収化合物と併用できる紫外線吸収化合物の量は、本発明の紫外線吸収化合物に対して0.05〜10倍であることが好ましく、更には0.1〜5倍であることが好ましい。
【0051】
以下に本発明に用いられる紫外線吸収化合物の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0052】
【化3】
Figure 0004051874
【0053】
本発明において、セルロースエステルフィルム中に酸化防止化合物を含有することができる。酸化防止化合物として特に制限はないが、ヒンダードアミン系化合物が好ましく用いられる。ヒンダードアミン系化合物を用いることで光に対する安定性向上、偏光板用保護フィルムの耐久性を向上させることができる。
【0054】
該ヒンダードアミン系化合物は、セルロースエステルとの相溶性の観点でヒンダードアミン構造単位あたりの分子量が500よりも小さいものが好ましく用いられる。
【0055】
上記ヒンダードアミン系化合物の使用量は、セルロースエステルフィルムに対して0.01〜10質量%であることが好ましく、特に0.1〜5質量%であることが好ましい。
【0056】
以下にヒンダードアミン系化合物の具体例を記載するが、これに限定されるものではない。
【0057】
【化4】
Figure 0004051874
【0058】
【化5】
Figure 0004051874
【0059】
本発明のセルロースエステルフィルムは、高い寸法安定性、良好な紫外線吸収性能から液晶表示部材に用いられるのが好ましい。液晶表示部材とは液晶表示装置に使用される部材のことで、例えば偏光板、偏光板用保護フィルム、位相差板、反射板、視野角向上フィルム、防眩フィルム、無反射フィルム、帯電防止フィルムなどが挙げられる。上記の中でも寸法安定性に対して厳しい要求のある偏光板、偏光板用保護フィルムにおいて本発明のセルロースエステルフィルムを好ましく用いることができる。
【0060】
偏光板は一般的な方法で作製することができる。例えば、本発明のセルロースエステルフィルムをアルカリ鹸化処理し、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の両面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ鹸化処理とは、このときの水系接着剤の濡れ性を良くし、接着性を向上させるために、セルロースエステルフィルムを高温の強アルカリ溶液に浸ける処理のことを言う。
【0061】
アルカリ鹸化処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号に記載されているような接着性を高める方法を使用しても良い。
【0062】
本発明に用いられる偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜はポリビニルアルコール系偏光膜で、これはポリビニル系偏光フィルムに沃素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。これらはポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくは硼素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられる。該偏光膜の面上に本発明の偏光板用保護フィルムである透明なフィルムが貼り合わされて偏光板を形成する。
【0063】
特に、最近のノートパソコンなどの偏光板用保護フィルムとしては従来よりも薄膜化したセルロースエステルフィルムが要望される。薄膜化を行っても紫外線に対する保護を十分に行うためには従来よりも紫外線吸収化合物の単位質量あたりの使用量を多くする必要がある。そのため、上記のようなアルカリ鹸化処理時においては紫外線吸収化合物が増量され、かつ、薄膜化された従来の偏光板用保護フィルムは、紫外線吸収化合物の溶出、析出が起こりやすくなる。
【0064】
しかしながら、本発明に係る紫外線吸収化合物を用いることで、アルカリ鹸化処理時の紫外線吸収化合物の溶出が極めて少なく、生産工程上のメリットが極めて高いことが明らかとなり、また本発明に係る紫外線吸収化合物を含有するセルロースエステルフィルムは薄膜化、十分な紫外線吸収性を示すことが分かった。
【0065】
本発明に係るセルロースエステルフィルムの製造方法について説明する。
【0066】
本発明に係るセルロースエステルフィルムの製造は、本発明に係る紫外線吸収化合物をセルロースエステルを溶剤に溶解させたドープ液に直接添加してもよいが、セルロースエステルを溶剤に溶解させたドープ液と、本発明の紫外線吸収化合物と少量のセルロースエステルとを溶解させた溶液とがインラインで添加、混合、撹拌され、ついで混合液が塗布、製膜されることが好ましい。
【0067】
前記セルロースエステルを溶剤に溶解させたドープ液とは、セルロースエステルが溶剤(溶媒)に溶解している状態であり、前記ドープ液には可塑剤などの添加剤を加えても良く、もちろん、必要に応じてその他の添加剤を加えることもできる。ドープ液中のセルロースエステルの濃度としては、10〜30質量%が好ましく、更に好ましくは18〜20質量%である。
【0068】
前記溶媒は、単独でも併用でも良いが、良溶媒と貧溶媒を混合して用いることが生産性効率の点で好ましく、更に好ましくは良溶媒と貧溶媒の混合比率が良溶媒が70〜95質量%であり、貧溶媒が30〜5質量%である。
【0069】
上記、良溶媒、貧溶媒とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶媒、単独で膨潤するか又は溶解しないものを貧溶媒と定義している。そのため、セルロースエステルの結合酢酸量によっては、良溶媒、貧溶媒が変わり、例えばアセトンを溶媒として用いる場合にはセルロースエステルの結合酢酸量55%では良溶媒になり、結合酢酸量60%では貧溶媒となってしまう。
【0070】
上記良溶媒としては、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化物やジオキソラン類が挙げられる。
【0071】
また、貧溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサンなどが好ましく用いられる。
【0072】
上記記載のドープ液を調製するときのセルロースエステルの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができるが、好ましい方法としては、セルロースエステルを貧溶媒と混合し、湿潤あるいは膨潤させ、更に良溶媒と混合する方法が好ましく用いられる。このとき、加圧下で、溶媒の常圧での沸点以上でかつ溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱し、撹拌しながら溶解する方法が、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため、より好ましい。
【0073】
前記セルロースエステルを溶剤に溶解させたドープ液と、本発明の紫外線吸収化合物とを少量のセルロースエステルとを溶解させた溶液をインライン添加、混合を行うためには、例えば、スタチックミキサー(東レエンジニアリング製)、SWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer)等のインラインミキサーなどが好ましく用いられる。インラインミキサーを用いる場合は、高圧下で濃縮溶解することが好ましく、加圧容器の種類は特に問うところではなく、所定の圧力に耐えることができ、加圧下で加熱、撹拌ができればよい。加圧容器はその他圧力計、温度計などの計器類を適宜配設する。
【0074】
加圧は窒素ガスなどの不活性気体を圧入する方法や、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇によって行っても良い。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
【0075】
溶媒を添加しての加熱温度は、使用溶媒の沸点以上で、且つ該溶媒が沸騰しない範囲の温度が好ましく、例えば60℃以上、70〜110℃の範囲に設定するのが好適である。又、圧力は設定温度で、溶媒が沸騰しないように調整される。
【0076】
溶解後は冷却しながら容器から取り出すか、又は容器からポンプなどで抜き出して熱交換機などで冷却し、これを製膜に共することが好ましい。このときの冷却温度は常温まで冷却しても良いが、沸点より5〜10℃低い温度まで冷却し、その温度のままキャスティングを行う方がドープ液の粘度を低減できるためより好ましい。
【0077】
前記セルロースエステル溶剤を溶解させたドープ液と、紫外線吸収化合物と少量のセルロースエステルが溶解している溶液がインラインで添加、混合され、ついで支持体上に流延(キャスト工程)し、加熱して溶媒の一部を除去(支持体上の乾燥工程)した後、支持体から剥離し、剥離したフィルムを乾燥(フィルム乾燥工程)し、セルロースエステルフィルムが得られる。
【0078】
キャスト工程における支持体は、ベルト状、もしくはドラム状のステンレス鏡面仕上げした支持体が好ましく用いられる。キャスト工程の支持体の温度は一般的な温度範囲0℃〜溶媒の沸点未満の温度で流延することができ、0〜30℃の支持体上に流延するほうがドープ液をゲル化させ、剥離限界時間を上げられるため好ましく、5〜15℃の支持体上に流延することが更に好ましい。ここで、剥離限界時間とは、透明で平面製の良好なフィルムを連続的に得られる流延速度の限界において、流延されたドープ液が支持体上にある時間を言う。剥離限界時間は短い方が生産性に優れ好ましい。
【0079】
また、剥離する際の支持体の温度は10〜40℃、更には15〜30℃にすることでフィルムと支持体の密着力を低減でき好ましい。
【0080】
製造時のセルロースエステルフィルムが良好な平面性を示すためには、支持体から剥離する際の残留溶媒量は、10〜80%が好ましく、更には20〜40%または60〜80%であり、特に好ましくは20〜30%である。
【0081】
上記残留溶媒量は下記式で定義できる。
【0082】
残留溶媒量(%)=((加熱処理前質量−加熱処理後質量)/加熱処理後質量)×100
尚、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、フィルムを115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
【0083】
支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、通常196〜245Newton/mで剥離が行われるが、セルロースエステル単位質量当たりの紫外線吸収化合物の含有量が多く、且つ従来よりも薄膜化される場合は剥離の際にしわが入りやすいため、剥離できる最低張力〜167Newton/mで剥離することが好ましく、更に好ましくは剥離できる最低張力〜137Newton/mで剥離することである。
【0084】
また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、支持体より剥離したフィルムを更に乾燥し、残留溶媒量を3質量%以下にすることが好ましく、更に好ましくは0.5質量%以下である。
【0085】
上記残留溶媒量のほかに以下に示す方法によって溶媒の種類別に残留溶媒量を測定することができる。
【0086】
フィルム面積として46.3cm2を切り出し、これを5mm程度に細かく刻み専用バイアル瓶に収納し、セプタムとアルミキャップで密閉した後、ヒューレット・パッカード社製ヘッドスペースサンプラーHP7694型にセットする。ヘッドスペースサンプラーと接続したガスクロマトグラフィー(GC)は検出器として水素炎イオン化検出器(FID)を装着したヒューレット・パッカード社製5971型を使用する。測定条件は以下の通りである。
【0087】
ヘッドスペースサンプラー加熱条件:120℃、20分
GC導入温度150℃
カラム:J&W社製 DB−624
昇温:45℃、3分保持→100℃(8℃/分)
上記の測定条件を用いてガスクロマトグラムを得る。測定対象溶媒の各々ブタノールにて希釈された一定量をバイアル瓶に収納した後、上記と同様に測定して得られたクロマトグラムのピーク面積を用いて作製した検量線を使用してフィルム中の残留溶媒量を得る。
【0088】
フィルム乾燥工程では、一般にロール懸垂方式か、ピンまたはクリップによるテンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式を採用することが多いが、液晶表示部材用としては、ピンまたはクリップによるテンター方式で幅を保持しながら乾燥させることが、寸法安定性を向上させるために好ましい。特に、支持体より剥離した直後の残留溶媒量の多いところで幅保持を行うことが寸法安定性向上効果をより発揮し、また漏光率を良くできるために特に好ましい。
【0089】
フィルムを乾燥させる手段には特に制限はなく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波などで行うことができる。簡便さの点で熱風で行うことが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、徐々に高くしていくことが好ましく、80〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性を良くするために、より好ましい。
【0090】
セルロースエステルフィルムの膜厚は、通常5〜500μmのものが用いられるが偏光板用保護フィルムとしての強度、偏光板の寸法安定性や湿熱下における保存性の観点で20〜120μmであるものが好ましく用いられる。
【0091】
本発明のセルロースエステルフィルムには、可塑剤を含有することが好ましい。用いることのできる可塑剤としては特に限定はないが、リン酸エステル系ではトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系ではジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート等を単独あるいは併用してして用いることができる。
【0092】
リン酸エステル系の可塑剤の使用比率は、セルロースエステルフィルムの加水分解を引き起こしにくく、耐久性に優れるため、全可塑剤量の50質量%以下が好ましく、30質量%以下が更に好ましく、特にはリン酸エステル系可塑剤を用いずフタル酸エステル系やグリコール酸エステル系の可塑剤のみを使用することが好ましい。
【0093】
上記可塑剤の使用量は、フィルムの性能、加工性等の点でセルロースエステルに対して1〜15質量%が好ましく、寸法安定性の点で液晶表示部材用としては1〜10質量%であることが更に好ましく、特に好ましくは3〜7質量%である。
【0094】
本発明のセルロースエステルフィルムには、必要に応じてマット剤を加えても良く、例えば酸化ケイ素等の微粒子を加えることができる。該微粒子は、有機物によって表面処理されていることがフィルムのヘイズを低下できるため好ましい。
【0095】
表面処理に用いられる有機物としてはハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサン等が挙げられる。前記微粒子は、マット効果、フィルムの透明性などの点から一次粒子の平均粒径が5〜50nmが好ましく、更には7〜14nmであることが好ましい。
【0096】
次いで請求項10〜25の発明について詳細に説明する。偏光板用保護フィルム等の光学フィルムに一般的に用いられる、例えばセルロースエステルフィルムの異物故障には、通常の異物故障と押され故障の2種類がある。通常の異物故障と言われるものは、ベース表面にゴミなどが付着して発生するもので、故障部分を拡大して見ると核となる異物が発見される。押され故障とは、ベース表面が微小に凹んでいる故障で、通常の異物故障と異なり、故障部分を拡大して見ても核となる異物がないことが特徴である。通常の異物故障の原因は、製膜工程中のゴミがベース表面に付着して起こるものと推定されるが、押され故障の原因は搬送ロール上に強く付着している異物がフィルム表面を押すことによって変形が発生するものと推定している。
【0097】
セルロースエステルフィルムは、ベルトまたはドラム支持体上にドープを流延し、剥離可能になるまで乾燥させ、支持体から剥離し、ロールで搬送しながらさらに乾燥させ、端部を1回あるいは2回スリットし、所望の幅になるように調整しながら作製するのが普通である。
【0098】
通常の異物故障を詳しく解析したところ、中央部よりも両端部に多く発生し、スリット後に多く発生することがわかった。これらの解析結果から、通常の異物故障はスリット時に発生するフィルムの切り粉が主な原因と推定される。
【0099】
押され故障は幅方向の分布はなく、剥離直後から発生していることがわかった。支持体から剥離した直後のフィルムは残留溶剤量が多く、やわらかいため、搬送するロールに汚れがあると押され故障が発生するのではないかと推定される。
【0100】
我々は鋭意検討の結果、セルロースエステルフィルムに含有されている紫外線吸収剤が異物故障、面品質に多大な影響を与えていることを見いだした。すなわち、このロールを汚す物質の一つが紫外線吸収剤であることを見いだした。従来技術として、例えば、特開平6−130226号、同7−11056号等には、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤を用いる事が提案されている。又、前記発明においても前述の様な紫外線吸収化合物を用いることを提案している。しかしながら異物故障という観点で検討した結果では、これら紫外線吸収剤の中でもロールを汚すものと、汚さないものがあることがわかり、また、使用する紫外線吸収剤の組み合わせによって、スリット時の切り粉を減らせることもわかった。
【0101】
セルロースエステルフィルムの様な光学フィルムに用いられる理想的な紫外線吸収剤は380nm未満の紫外線をすべて吸収し、380nm以上の可視光の吸収がないものであるが、これは現実的には困難なので、実質的には液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点から波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものを使用することができる。実際的には、380nmにおける透過率が8%以下である光学フィルムを用いる事が良好な液晶表示性の点から必要である。
【0102】
一般に用いられる紫外線吸収剤としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。
【0103】
本発明の1つの態様では、上記の紫外線吸収剤において、分配係数が9.2以上の紫外線吸収剤を含有していることが好ましく、10.0以上がさらに好ましく、10.1以上がさらに好ましく、10.3以上が最も好ましい。分配係数が大きい程ロール汚れが発生しにくく、異物や押され故障が減少するため好ましい。
【0104】
分配係数が大きいほど、ロール汚れが発生しにくく、異物や押され故障が減少する理由は完全に明らかではないが、分配係数が大きくなることにより、結晶化しにくくなる効果が効いていると考えられる。このために硬い異物にならず、上記故障が減少することが考えられる。
【0105】
分配係数とは以下の式で定義できるオクタノールと水の分配率を表す。
【0106】
logPo/w Po/w=So/Sw
So:25℃でn−オクタノール中での該有機化合物の溶解度
Sw:25℃で純水中での該有機化合物の溶解度
これらはこの通りにn−オクタノールと水を用いて測定することも出来るが、本発明においては、これら分配係数は、HPLCによる計算法を用いた。これは高速クロマトグラフィーを用いる方法であり、OECDガイドライン117分配係数(n−オクタノール/水)高速クロマトグラフィー法(1989年3月30日採択)に記載されているもので、HPLCの測定条件を以下に示す。
【0107】
装置:LCモジュール(ウォーターズ社製)
カラム:イナートシルODS−2 250mm×4.6mm(GLサイエンス社製)
温度:40℃
溶離液:メタノール:1%リン酸水溶液=90:10
流量:1.0ml/min
検出波長:210nm
注入サンプル:約50ppmのメタノール溶液
又、光学フィルムは380nmにおける透過率が8%以下であることが好ましく、5%以下がさらに好ましい。380nmにおける透過率の低い光学フィルムが偏光板を作製したときの耐光性に優れるため好ましい。
【0108】
上記、紫外線吸収剤は樹脂フィルムに対し質量で0.5%以上含有されていることが好ましい。これ以下では、紫外線吸収効果が小さく、余りに多すぎるとブリーディングを起こし、又、フィルム強度も損なうので、総量で10%以下が好ましい。
【0109】
これらの紫外線吸収剤のうち、本発明に用いられる好ましい紫外線吸収剤は、以下に示す一般式1で表されるものである。
【0110】
【化6】
Figure 0004051874
【0111】
式中、R1、R2、R3、R4、R5は一価の有機基であり、R1、R2、R3、R4、R5はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。但し、R1、R2、R3の少なくとも1つは総炭素数10〜20の無置換の分岐または直鎖のアルキル基である。
【0112】
ここで、一価の有機基としては、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、モノ又はジアルキルアミノ基、アシルアミノ基又は5〜6員の複素環基等を表す。
【0113】
1、R2、R3の少なくとも1つは総炭素数10〜20の無置換の分岐または直鎖のアルキル基であるが、更に好ましいのは総炭素数11〜18であり、最も好ましいのは総炭素数12〜15である。この範囲にあるとき、分配係数が上記の好ましい範囲となり、ロール汚れが減少すると同時に樹脂との相溶性にも優れる。総炭素数の多い方がロール汚れが減少する点で優れ、総炭素数の少ない方が樹脂との相溶性に優れる。余り炭素数が多くなると樹脂との相溶性が損なわれる。これらの紫外線吸収剤の具体的な化合物例を以下にあげるが、これらに限定されるものではない。
【0114】
【化7】
Figure 0004051874
【0115】
又、好ましい紫外線吸収剤は、以下の一般式2で表される。
【0116】
【化8】
Figure 0004051874
【0117】
式中、R1、R2、R4、R5は一価の有機基であり、一般式1におけるR1〜R5と同じものを表す。又、R6は分岐のアルキル基である。
【0118】
分岐のアルキル基としてはイソプロピル基、イソブチル基等の炭素数3〜20迄の分岐のアルキル基であり、好ましくは炭素数3〜18、更に好ましくは3〜15である。
【0119】
これらの具体例としては、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
【化9】
Figure 0004051874
【0121】
本発明においては又、紫外線吸収剤を0.1g/リットルの濃度で溶媒に希釈し、1cm角のセルで溶媒をブランクとして、Spectrophotometer U−3200(日立製作所製)で分光吸収スペクトルを測定したときの透過率50%における波長T1(以下T1と省略)が、392〜420nmの範囲にある紫外線吸収剤と360〜390nmの範囲にある紫外線吸収剤の両方を含有している場合、加工性が良化して、両端部付近の異物が少なく、好ましいことがわかった。T1は396〜410nmの範囲にある紫外線吸収剤と370〜390nmの範囲にある紫外線吸収剤を組み合わせる場合がさらに好ましい。T1が392〜420nmの範囲にある紫外線吸収剤と360〜390nmの範囲にある紫外線吸収剤の比率は20:80〜80:20が好ましく、30:70〜70:30がさらに好ましい。本発明の測定において、溶媒は塩化メチレン:エタノール=92:8(質量で)の混合溶媒を用いた。
【0122】
1が長波側、390〜410nmの範囲にある紫外線吸収剤はフィルムに添加したときの紫外線吸収能が高い反面余り多く添加するとフィルムの黄色の着色の原因となる。従って、これらの欠点を補うため、T1が長波側の390〜410nmの範囲にある紫外線吸収剤を、この様な着色のないT1が短波側の360〜387nmの範囲にある紫外線吸収剤と併用することにより紫外線吸収効果が大きく、かつ着色の少ない紫外線吸収剤を含有する光学フィルムを得ることが出来る。又、紫外線吸収剤を2種以上含有することにより融点低下を生ぜしめる事から、ロール上へ付着しにくく、異物故障や押され故障の生じにくい紫外線吸収剤混合物が得られるという2重の効果がある。
【0123】
これらの紫外線吸収剤の例としては、例えば以下の様な化合物が挙げられる。
【0124】
【化10】
Figure 0004051874
【0125】
又、光学フィルム中にこの様な紫外線吸収剤の組み合わせを適用する、好ましい方法としては、紫外線吸収剤が、前記一般式1で示される化合物において、R4、R5の少なくとも1つの置換基がハロゲン原子である紫外線吸収剤と、R4、R5の置換基のいずれもがハロゲン原子でない紫外線吸収剤を光学フィルム中に含有させ、これらの比を20:80〜80:20にすることが好ましく、30:70〜70:30がさらに好ましい。ハロゲン原子を含む紫外線吸収剤の比率の多い方が紫外線吸収性能に優れ、ハロゲン原子を含まない紫外線吸収剤の比率が多い方が黄色みが少なく好ましい。
【0126】
又、本発明のもう一つの態様においては、3種類以上の紫外線吸収剤を含有していることが好ましく、4種類以上の紫外線吸収剤を含有していることがさらに好ましい。多くの紫外線吸収剤を組み合わせることで、紫外線吸収剤380nm未満の紫外線をすべて吸収し、380nm以上の可視光の吸収がないという理想的な分光吸収スペクトルにより近づけることができるため好ましい。
【0127】
又、融点降下による溶解性の向上や析出の防止によると思われるが、異物故障、押され故障の低減を果たすことができ好ましい。
【0128】
好ましい紫外線吸収剤の組み合わせは、一般式1および2の中から選ばれるのが更に好ましく、又、上記のうち、ハロゲン原子を有する紫外線吸収剤およびハロゲン原子を有しない紫外線吸収剤と組み合わせる場合に、ハロゲン原子を有する紫外線吸収剤を複数、又、ハロゲン原子を有しない紫外線吸収剤を複数使用することは、ハロゲン原子を有する紫外線吸収能の高い紫外線吸収剤と、ハロゲン原子を含まない紫外線吸収剤とを併用するメリットに加え、3種以上の紫外線吸収剤を含有させるという上記のメリット両方をもたらすことができ好ましい。
【0129】
これらの紫外線吸収剤の使用量は化合物の種類、使用条件などにより一様ではないが、通常はセルロースエステルのような光学フィルム1m2当り、0.2g〜10.0gが好ましく、0.5g〜5.0gがさらに好ましく、0.8g〜2.0gが特に好ましい。
【0130】
樹脂に対する比率で表すと、質量で0.5%以上、10%以下、更に好ましくは0.8%以上5%以下、特に好ましくは、0.8%以上2.0%以下である。
【0131】
本発明の樹脂フィルムとしてはセルロースエステルフィルムが好ましいが、セルロースエステルフィルムの膜厚が薄すぎると、偏光板の保護フィルムとしての強度が不足し、偏光板の寸法安定性や湿熱での保存安定性が悪化する。膜厚が厚いと偏光板が厚くなり、液晶ディスプレイの薄膜化が困難になる。
【0132】
これらの紫外線吸収剤の添加方法としては、直接添加してもよいが、前述のように、生産性の優れるインライン添加が好ましい。インライン添加は、予め有機溶剤(例えばメタノール、メチレンクロライドなど)に溶解したものに、少量のトリアセチルセルロースを添加、溶解した後、インラインのミキサーでドープ組成中に添加するのがよい。好ましいトリアセチルセルロースの量は、溶剤100質量部に対して1〜10質量部で、より好ましくは、3〜5質量部である。トリアセチルセルロースを添加すると、紫外線吸収剤含有液の粘度が高くなり、インラインで多く添加することが容易になる。
【0133】
請求項8〜23の光学フィルムが用いられる偏光膜、偏光板については請求項1〜7の発明について述べたものと同様であり、既に記載した。又、請求項8〜23の光学フィルムとしても、透明性に優れる点、又屈折率の異方性の小さな膜を容易に作製できるためセルロースエステルフィルムが好ましく、該セルロースエステルフィルムについては、好ましいセルロースエステル、ドープ液をエンドレスの支持体(ベルト状もしくはドラム状のステンレスを鏡面仕上げした支持体)上にキャスティング(流延)することで製造するセルロースエステルの製造方法、支持体からの剥離の条件、剥離時の残留溶剤、乾燥条件等、好ましい製造条件は請求項1〜7の発明について述べた通りである。
【0134】
本発明においても前述の可塑剤を含有することにより、寸法安定性、耐水性に優れたフィルムが得られるため特に好ましい。
【0135】
特にこれらの可塑剤のうちでも、融点20℃以下の可塑剤が含有されていることが好ましい。光学フィルムに含まれる全可塑剤の内、10質量%以上が20℃以下の可塑剤であることが好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。分配係数9.2以上の紫外線吸収剤と20℃以下の可塑剤を組み合わせて使うと、ロール汚れがさらに良化するため好ましい。融点20℃以下の可塑剤比率の多い方がロール汚れが良化するため好ましい。
【0136】
請求項8〜23に係わる発明においては前述の(9.2以上の分配係数を有する)紫外線吸収剤とこれらの可塑剤のうち融点20℃以下の可塑剤を併用することが加工性に優れ、前記異物故障や面品質の上で好ましい。融点20℃以下の可塑剤としては、融点が20℃以下であれば特に限定されず、前記可塑剤の中から選ぶことができる。例えば、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、トリアセチン、エチルフタリルエチルグリコレート等をあげることができる。これらの可塑剤を単独あるいは併用するのも好ましい。
【0137】
本発明中の融点とは、共立出版株式会社出版の化学大辞典に記載されている真の融点を融点としている。
【0138】
これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、セルロースエステルに対して1〜15質量%が好ましい。液晶表示部材用としては、寸法安定性の観点から5〜15質量%が更に好ましく、特に好ましくは、7〜12質量%である。
【0139】
またセルロースエステルに対して融点が20℃以下の可塑剤の含有量は1質量%〜10質量%が好ましく、更に好ましくは、3質量%〜7質量%である。
【0140】
加工性とはベースフィルムや液晶表示部材をスリット加工や打ち抜き加工する際の加工のしやすさのことで、加工性が悪いと切断面がノコギリ状になり切り屑が発生し、製品に付着して異物故障となるため好ましくない。
【0141】
請求項8〜23に係わる発明に用いられる光学フィルムには、他に必要ならマット剤として微粒子を加えてもよい。前記のマット剤について更に詳細に述べると、無機化合物の例として、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0142】
ポリマーの例として、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂を挙げることができる。シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0143】
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0144】
本発明の光学フィルム(セルロースエステルフィルムが好ましい)は、高い寸法安定性、良好な紫外線カット性能から液晶表示用部材に用いられるのが好ましい。液晶表示用部材とは液晶表示装置に使用される部材のことで、例えば、偏光板、偏光板用保護フィルム、位相差板、反射板、視野角向上フィルム、防眩フィルム、無反射フィルム、帯電防止フィルム等があげられる。上記記載の中でも、寸法安定性に対しても厳しい要求のある偏光板、偏光板用保護フィルムにおいて、本発明のセルロースエステルフィルムは更に好ましく用いられる。
【0145】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明の態様を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0146】
実施例1
試料1
トリアセチルセルロース 100質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 5質量部
メチレンクロライド 475質量部
エタノール 50質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、濾過してドープ液を調製した。これとは別に
紫外線吸収化合物 L−2 10質量部
トリアセチルセルロース 4質量部
メチレンクロライド 100質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱、撹拌しながら完全に溶解し、濾過し、紫外線吸収化合物含有溶液を調製した。
【0147】
上記のドープ液100質量部に対して紫外線吸収化合物含有溶液4質量部の割合で加えてインラインミキサーで十分に混合した。次いで、ベルト流延装置を用い、ドープ液と紫外線吸収化合物含有溶液を温度33℃、1500mm幅でステンレスバンド支持体上に均一に流延した。ステンレスバンド支持体上で流延したトリアセチルセルロースフィルム中の残留溶媒量が25%になるまで溶媒を蒸発させた後、剥離張力127Newton/mでステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離したセルローストリアセテート1300mmにスリットし、その後乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1100mm幅にスリットして膜厚40μmのトリアセチルセルロースフィルムの試料1を得た。
【0148】
試料2〜11
試料1の紫外線吸収化合物の種類と添加量を表1に記載のように変えた以外は同様にして試料2〜11を作製した。
【0149】
試料12〜14
試料1の紫外線吸収化合物の種類と添加量を表1に記載のように変え、試料12の膜厚を80μmにした以外は同様にして試料12〜14を得た。尚、試料12は単位面積当たりの紫外線吸収化合物量が試料1と同じになるように調製した。
【0150】
アルカリ鹸化処理
鹸化工程:2mol/l−NaOH 60℃ 90秒
水洗工程:水 30℃ 45秒
中和工程:10質量%HCl 30℃ 45秒
水洗工程:水 30℃ 45秒
上記の条件でトリアセチルセルロースフィルムを鹸化→水洗→中和→水洗の順に行い、次いで80℃で乾燥を行った。
【0151】
(紫外線吸収化合物の溶出)
前記アルカリ鹸化処理条件において、アルカリ鹸化液3リットルに対して35m2のトリアセチルセルロースフィルム試料1〜14を処理したときのアルカリ鹸化液をそれぞれ採取し目視評価した。
【0152】
◎ 液中に紫外線吸収化合物が浮遊しているのが分からない
○ 液中に紫外線吸収化合物が浮遊しているのがかすかに分かる
× 液中に紫外線吸収化合物が浮遊しているのが容易に分かる
×× 液中に紫外線吸収化合物が大量に浮遊している
(色相変化)
試料1〜14について80℃、RH90%の雰囲気下で1000時間の耐久性試験を行い、耐久性試験前後での色相の変化をJIS Z 8720に規定する標準光の下で、JIS Z 8729の方法に従って10度視野XYZ系における三刺激値から求められるa値、b値の変化量をそれぞれ測定した。
【0153】
○ a値変化量0.1未満、b値変化量0.3未満
× a値変化量0.1以上、b値変化量0.3以上
偏光板の作製
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で4倍に延伸して偏光膜を作製した。この偏光膜の両面にアルカリ鹸化処理を行ったトリアセチルセルロースフィルム試料1〜14を完全鹸化型ポリビニルアルコール5%水溶液を粘着剤として各々貼り合わせて偏光板を作製した。
【0154】
(偏光度変化)
上記のようにして作製した偏光板についてまず平行透過率と直行透過率を測定し、下記式に従って偏光度を算出したその後、各偏光板をキセノンロングライフウェザーメーターで照度7万ルクス、60℃で500時間放置(強制劣化)後、再度平行透過率と直行透過率を測定し測定し、下記式に従って偏光度を算出した。
【0155】
偏光度P=((H0−H90)/(H0+H90))1/2×100
偏光度変化量=P0−P500
0:平行透過率
90:直行透過率
0:強制劣化前の偏光度
500:強制劣化500時間後の偏光度
◎ 偏光度変化量1%未満
○ 偏光度変化量1〜2%未満
△ 偏光度変化量2〜5%未満
× 偏光度変化量5%以上
【0156】
【表1】
Figure 0004051874
【0157】
※1 DHBP:イーストマンケミカル社製 2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン
【0158】
【化11】
Figure 0004051874
【0159】
【表2】
Figure 0004051874
【0160】
以上のように、本発明の紫外線吸収化合物を用いることでアルカリ鹸化中での紫外線吸収化合物の溶出が抑制され、また、セルロースエステルフィルムの色相変化が低減できかつ偏光度の変化の小さいセルロースエステルフィルムを提供することができた。
【0161】
実施例2
〈試料201〜213〉
(酸化珪素分散液)
アエロジル200V(日本アエロジル(株)製)
(一次粒子の平均径12nm、見掛け比重100g/リットル)10質量部
エタノール 90質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。分散後の液濁度は93ppmであった。
(添加液Aの作製)
紫外線吸収剤(例示化合物8) 10質量部
リンター綿から合成されたトリアセチルセルロース 4質量部
メチレンクロライド 100質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、濾過した。
【0162】
これに酸化珪素分散液10質量部を撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、濾過し、添加液Aを調製した。
(ドープ液Aの調製)
リンター綿から合成されたトリアセチルセルロース 85質量部
木材パルプから合成されたトリアセチルセルロース 15質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2質量部
トリフェニルホスフェート 8.5質量部
メチレンクロライド 475質量部
エタノール 50質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、濾過し、ドープ液を調製した。
【0163】
ドープ液100質量部に対して添加液を表1に示す質量部を加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分混合し、濾過した。次いで、ベルト流延装置を用い、温度33℃、1500mm幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶媒量が25%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力127Newton/mでステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離したセルローストリアセテートフィルムを1300mm幅にスリットし、その後、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1100mm幅にスリットし、セルローストリアセテートフィルム試料201を得た。このときのセルローストリアセテートフィルムの膜厚は40μmであった。
【0164】
試料201の添加液Aにかえて、表3に示すように下記の添加液と添加量及びドープ液もかえた以外は同様にして試料202〜213を作製した。
(添加液B) 添加液Aの紫外線吸収剤例示化合物8の10質量部を紫外線吸収剤例示化合物4の10質量部にかえた以外は同様にして添加液Bを作製した。
(添加液C) 添加液Aの紫外線吸収剤例示化合物8の10質量部を紫外線吸収剤例示化合物7の10質量部にかえた以外は同様にして添加液Cを作製した。
(添加液D) 添加液Aの紫外線吸収剤例示化合物8の10質量部を紫外線吸収剤例示化合物9の3質量部及び紫外線吸収剤例示化合物3の9質量部にかえた以外は同様にして添加液Dを作製した。
(添加液E) 添加液Aの紫外線吸収剤例示化合物8の10質量部を紫外線吸収剤例示化合物9の10質量部及び紫外線吸収剤例示化合物7の5質量部と紫外線吸収剤例示化合物5の5質量部にかえた以外は同様にして添加液Eを作製した。
(添加液F) 添加液Aの紫外線吸収剤例示化合物8の10質量部を紫外線吸収剤例示化合物9の1.5質量部と紫外線吸収剤例示化合物4の8.5質量部にかえた以外は同様にして添加液Fを作製した。
(添加液G) 添加液Aの紫外線吸収剤例示化合物8の10質量部を紫外線吸収剤例示化合物9の10質量部にかえた以外は同様にして添加液Gを作製した。
(添加液H) 添加液Aの紫外線吸収剤例示化合物8の10質量部を紫外線吸収剤例示化合物10の10質量部にかえた以外は同様にして添加液Hを作製した。
(ドープ液Bの作製)
リンター綿から合成されたトリアセチルセルロース 85質量部
木材パルプから合成されたトリアセチルセルロース 15質量部
トリフェニルホスフェート 11.5質量部
メチレンクロライド 475質量部
エタノール 50質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、濾過し、ドープ液を調製した。
【0165】
上記で得られた試料201〜213について、各々、評価した。測定および評価法については実施例4のあとに纏めて示した。
【0166】
【表3】
Figure 0004051874
【0167】
実施例3
〈試料214〜217〉
試料201の添加液Aにかえて、表4に記載されたように、以下の添加液と添加量を、及びドープ液も表4の様にかえた以外は同様にして試料214〜217を作製した。
(添加液I) 添加液Aの紫外線吸収剤例示化合物8の10質量部を紫外線吸収剤例示化合物4の5質量部と紫外線吸収剤例示化合物7の7質量部にかえた以外は同様にして添加液Iを作製した。
(添加液J) 添加液Aの紫外線吸収剤例示化合物8の10質量部を紫外線吸収剤例示化合物9の5質量部と紫外線吸収剤例示化合物10の5質量部にかえた以外は同様にして添加液Jを作製した。
【0168】
上記で得られた試料214〜217について、各々、評価した。結果を表4に示す。測定および評価法については以下に纏めて示した。
【0169】
【表4】
Figure 0004051874
【0170】
実施例4
(添加液Kの作製)
紫外線吸収剤(例示化合物1) 5質量部
紫外線吸収剤(例示化合物5) 5質量部
リンター綿から合成された酢化度61.0%のトリアセチルセルロース
4質量部
メチレンクロライド 100質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、濾過した。これに実施例2の酸化珪素分散液10重量部を撹拌しながら加えて、さらに30分間撹拌した後、濾過し、添加液Kを調製した。
実施例2のドープ液100質量部に対して添加液を表5に示す重量部を加えて、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分混合し、濾過した。次いで、ベルト流延装置を用い、温度33℃、1500mm幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶媒量が25%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力127Newton(13kgf)/mでステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離したセルローストリアセテートフィルムを1300mm幅にスリットし、その後テンターで幅方向に1.05倍延伸し、その後、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させ、1100mm幅にスリットし、セルローストリアセテートフィルム試料301を得た。このときのセルローストリアセテートフィルムの膜厚は40μmであった。
【0171】
試料301の添加液Kにかえて、表5に示すように下記の添加液と添加量をかえた以外は同様にして試料301〜308を作製した。
【0172】
(添加液L) 添加液Kの紫外線吸収剤例示化合物を紫外線吸収剤例示化合物1の10質量部にかえた以外は同様にして添加液Lを作製した。
【0173】
(添加液M) 添加液Kの紫外線吸収剤例示化合物を紫外線吸収剤例示化合物1の5質量部と紫外線吸収剤例示化合物2の5質量部にかえた以外は同様にして添加液Mを作製した。
【0174】
(添加液N) 添加液Kの紫外線吸収剤例示化合物を紫外線吸収剤例示化合物2の5質量部と紫外線吸収剤例示化合物3の5質量部にかえた以外は同様にして添加液Nを作製した。
【0175】
(添加液O) 添加液Kの紫外線吸収剤例示化合物を紫外線吸収剤例示化合物2の10質量部にかえた以外は同様にして添加液Oを作製した。
【0176】
(添加液P) 添加液Kの紫外線吸収剤例示化合物を紫外線吸収剤例示化合物5の10質量部にかえた以外は同様にして添加液Pを作製した。
【0177】
(添加液Q) 添加液Kの紫外線吸収剤例示化合物を紫外線吸収剤例示化合物1の5質量部と紫外線吸収剤例示化合物6の5質量部にかえた以外は同様にして添加液Qを作製した。
【0178】
(添加液R) 添加液Kの紫外線吸収剤例示化合物を紫外線吸収剤例示化合物9の10質量部にかえた以外は同様にして添加液Rを作製した。
【0179】
上記で得られた試料301〜308について、各々評価した。結果を表5に示す。
【0180】
【表5】
Figure 0004051874
【0181】
《測定方法》
(分配係数)
分配率とはオクタノールと水の分配率を表し以下の式で定義できる。
【0182】
logPo/w Po/w=So/Sw
So:25℃でn−オクタノール中での該有機化合物の溶解度
Sw:25℃で純水中での該有機化合物の溶解度
これらの分配率を測定する方法として、本発明においてはHPLCによる計算法を用いた。この方法はOECDガイドライン117分配係数(n−オクタノール/水)高速クロマトグラフィー法(1989年3月30日採択)に記載されている。HPLCの測定条件を以下に示す。
【0183】
装置:LCモジュール(ウォーターズ社製)
カラム:イナートシルODS−2 250mm×4.6mm(GLサイエンス社製)
温度:40℃
溶離液:メタノール:1%リン酸水=90:10
流量:1.0ml/min
検出波長:210nm
注入サンプル:約50ppmのメタノール溶液
(ロール汚れ)
10000mのセルロースエステルフィルムを作製した後、ステンレスバンド支持体から剥離したフィルムが接する一本目のロールの汚れ具合を目視で観察し、以下のランクに分けて評価した。
【0184】
A…ロールが汚れているのが全くわからない
B…ロールが部分的に汚れているのがかすかにわかる
C…ロールが全面的に汚れているのがかすかにわかる
D…ロールが全面的に汚れているのがはっきりわかる
A〜Cは生産が続けられるレベル。Dは生産を中断してロールを清掃するレベル。
(押され故障)
10000mセルロースエステルフィルムを作製した所で、フィルムをサンプリングし、得られたフィルム1m2上に存在する30μm以上の押され故障の数を数えて求めた。
(異物故障)
セルロースエステルフィルムをサンプリングし、得られたフィルムの両端部30cm幅、長さ1m上に存在する30μm以上の異物の数を数えて求めた。
(380nm透過率)
Spectrophotometer U−3200(日立製作所製)を用い、フィルムの分光吸収スペクトルを測定し、380nmにおける透過率を求めた。
【0185】
A 透過率8%未満
B 透過率8%以上25%未満
C 透過率25%以上
(加工性)
20cm×20cmの大きさに裁断したセルロースエステルフィルム試料を、10等分に折り畳んで20cm×2.0cmにし、押し切り式のペーパーカッターDN−3(コクヨ株式会社製)で10cm×2.0cmに切断し、その断面を評価し、下記のレベルに分けた。△以上であれば、実用上使用できるレベルである。
【0186】
◎:切断面が透明で、指で触ってもざらつき感がない
○:切断面は透明だが、指で触るとややざらつき感がある
△:切断面が白く不透明で、指で触るとざらついている
×:切断面が白い粉を吹いたようになり、指で触るとひどくざらついている。(耐光性)
作製した偏光板について先ず平行透過率と直行透過率を測定し、下記処方にしたがって偏光度を算出した。その後各々の偏光板をサンシャインウェザーメーター200時間、UVカットフィルター無しでの条件で強制劣化後、再度平行透過率と直行透過率を測定し、下記式に従って偏光度を算出した。偏光度変化量を下記式により求めた。
【0187】
偏光度P=((H0−H90)/(H0+H90))1/2×100
偏光度変化量=P0−P500
0 :平行透過率
90 :直行透過率
0 :強制劣化前の偏光度
500:強制劣化500時間後の偏光度
◎:偏光度変化率10%未満
○:偏光度変化率10%以上25%未満
△:偏光度変化率25%以上40%未満
×:偏光度変化率40%以上。
(ブリードアウト)
80℃、90%RHの高温高湿雰囲気下に1000時間放置後、フィルムの表面を観察することによりブリードアウトの有無を評価した。
【0188】
◎:フィルム表面にブリードアウトが全くない
○:フィルム表面に部分的なブリードアウトがかすかにわかる
△:フィルム表面に全面的なブリードアウトがかすかにわかる
×:フィルム表面に全面的なブリードアウトがハッキリわかる。
(YI)
Spectrophotometer U−3200(日立製作所製)を用い、JIS K7103に定められるフィルムのYI(Yellowness Index:黄色みの指数)を下記式により求める。
【0189】
YI=100(1.28X−1.06Z)/Y
ここで、X、Y、ZはJIS Z8701に定められた光源色の三刺激値。
(漏光率P) 自動複屈折率計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて試料を23℃、55%RHの環境下で、590nmの波長に於いて3次元屈折率測定を行い、遅相軸角θ及び屈折率Nx、Ny、Nzを求める。下記式(1)に従って面内方向のレターデーション値R0を算出し、式(2)に従ってPを算出し、以下のランクに分けて評価した。
【0190】
○・・・0.00005未満
△・・・0.00005以上 0.0001未満
×・・・0.0001以上
式(1) R0値=(Nx−Ny)×d
式中、Nxはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、Nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、Nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚み(nm)をそれぞれ表す。
【0191】
式(2) P=sin2(2πθ/180)・sin2(πR0/λ)
λはR0及びθ(°)を求めるための三次元屈折率測定の際の光の波長590nmである。また、πは円周率である。
【0192】
【発明の効果】
液晶表示装置、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の各種表示装置に偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、反射防止フィルム等として用いられる黄色みや異物故障の少ない高品質の光学フィルムが得られる。

Claims (4)

  1. 下記紫外線吸収剤種から選択される少なくとも1つを含有することを特徴とする偏光板用保護フィルム。
    Figure 0004051874
  2. 請求項1の偏光板用保護フィルムを、樹脂を含有する紫外線吸収剤溶液と樹脂が溶解しているドープ液をインラインで混合、攪拌し、ベルトまたはドラム支持体上に流延、製膜して得ることを特徴とする偏光板用保護フィルムの製造方法。
  3. 前記偏光板用保護フィルムが、セルロースエステルフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の偏光板用保護フィルム。
  4. 前記偏光板用保護フィルムが、セルロースエステルフィルムであることを特徴とする請求項2に記載の偏光板用保護フィルムの製造方法。
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