JP4047443B2 - 吸水性樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸水性樹脂および微粒子を含む吸水性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、使い捨ておむつや生理ナプキン、失禁パット等の衛生材料を始め、土木、農園芸等の各種産業分野にも好ましく用いられる吸水性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、紙オムツや生理用ナプキン、いわゆる失禁パット等の衛生材料等の分野では、体液を吸収させることを目的として吸水性樹脂が幅広く利用されている。
上記の吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、澱粉−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、カチオン性モノマーの架橋体などが知られている。
【0003】
上記の吸水性樹脂が備えるべき特性としては、体液等の水性液体に接した際の優れた吸収倍率や吸収速度、通液性などの諸特性が挙げられる。さらには、近年のトレンドである、吸水性樹脂を多量に使用し薄型化された衛生用品における吸収体では、「装着時により重い荷重がかかっても十分吸収能力を発揮できるような高荷重下(例えば50g/cm2)での優れた吸収倍率(以後加圧下の吸収倍率という場合がある。)」が高いことが求められている。しかしながら、これらの諸特性間の関係は必ずしも正の相関関係を示さず、例えば、吸収倍率の高いものほど通液性や吸収速度等の物性は低下してしまう。
【0004】
このような吸水性樹脂の吸水諸特性をバランス良く改良する方法として、吸水性樹脂の表面近傍を多価アルコール等の架橋剤により表面架橋する技術が提案されている。また前記架橋反応時に、架橋剤を吸水性樹脂表面により均一に分布させ、均一な表面架橋を行う試みとして架橋剤の添加時に、不活性無機粉末を存在させる方法、二価アルコールを存在させる方法、エーテル化合物を存在させる方法、水溶性ポリマーを存在させる方法、1価アルコールのアルキレンオキサイド付加物、有機酸塩、ラクタム等を存在させる方法等も知られている。
【0005】
しかしながら、これらの方法によっても上記諸特性を全て同時に高いレベルで満足する吸水性樹脂は得られておらず、例えば、通液性の向上を目的として無機微粒子を吸水性樹脂に添加した場合には、表面架橋処理の効果は著しく損なわれるため、加圧下の吸収倍率は大きく低下してしまう。つまり、加圧下の吸収倍率と通液性の両方に優れた吸水性樹脂は得られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の課題は、通液性に優れ、且つ加圧下の吸収倍率の高い吸水性樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成をとる。
(1)吸水性樹脂、ならびに、無機質および/または有機質の微粒子を含む吸水性樹脂組成物であって、前記微粒子は、粒径分布指数(d25/d75)が3以下の単分散性の微粒子であり、かつ、下記で規定される真球率が1〜1.1の微粒子でもあることを特徴とする、吸水性樹脂組成物。
微粒子の真球率=(微粒子の最長径の平均値)/(微粒子の最短径の平均値)
(2)前記微粒子は、当該微粒子の50%以上が互いに二次凝集していないものである、前記(1)に記載の吸水性樹脂組成物。
(3)前記吸水性樹脂の平均粒子径が10〜1000μmであり、前記微粒子の平均粒子径が0.01〜10μmである、前記(1)または(2)に記載の吸水性樹脂組成物。
(4)前記吸水性樹脂が表面架橋された吸水性樹脂粉末である、前記(1)から(3)までのいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
(5)20g/cm2の荷重での生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する60分間での加圧下の吸収倍率が30g/g以上である、前記(1)から(4)までのいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
(6)前記微粒子が、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、ゼオライト、カオリン、ハイドロサルタイトから選ばれる少なくとも1種の無機質の微粒子状粉体である、前記(1)から(5)までのいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
(7)吸水性樹脂、ならびに、無機質および/または有機質の微粒子を含む吸水性樹脂組成物の製造方法であって、吸水性樹脂と、粒径分布指数(d25/d75)が3以下の単分散性であるとともに下記で規定される真球率が1〜1.1の微粒子を混合することを特徴とする、吸水性樹脂の製造方法。
微粒子の真球率=(微粒子の最長径の平均値)/(微粒子の最短径の平均値)
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明では、吸水性樹脂組成物に含まれる微粒子は単分散性であるか、真球率が1〜1.1であることが必要であり、単分散性であって、かつ真球率が1〜1.1の微粒子を含むことが好ましい。
本発明において単分散性であるとは、粒度分布がシャープで、互いに凝集していないことを意味する。これらの粒度分布や凝集の程度については、粉体の状態ではなく微粒子を親水性溶媒(水、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、エチレングリコールなど)中に分散したスラリーの状態で測定することができる。したがって、粉体の状態では粒子同士が緩く凝集している場合も本発明に含まれる。吸水性樹脂組成物に含まれた状態の微粒子については、まず電子顕微鏡で吸水性樹脂組成物を観察して形状および粒子径を確認することができ、次に吸水性樹脂組成物を水で飽和膨潤させた後、膨潤したゲルを50μmの金網で多量の水を用いて濾過し、濾液中に含まれる微粒子について上記の遠心沈降型粒度分布測定装置(島津製作所製SA−CP3型)を用いて粒度分布を測定することができる。微粒子の粒度分布としては、具体的には、微粒子の粒径分布指数(d25/d75)が3以下のものが好ましく、より好ましくは2以下、さらに好ましくは1.5以下のものである。粒子が凝集している場合には凝集している粒子の塊を一つの粒子として測定する。また、互いに凝集していないとは、微粒子が実質的に二次粒子を形成しないことをいい、微粒子の50%以上が、二次粒子を形成しないことが好ましい。微粒子として上記のような単分散性の微粒子を含むことで吸水性樹脂表面に微粒子が均一に存在するため、吸水性樹脂同士の凝集が防止されるので通液性が向上し、しかも吸水性樹脂の表面架橋処理の効果が損なわれないため加圧下の吸収倍率にも優れた吸水性樹脂組成物を得ることができる。
【0009】
微粒子の真球率とは、微粒子の最長径/最短径の値であり、これが1〜1.1であるとは、すなわち微粒子がほぼ球形であるということである。微粒子の真球率は、粒子が凝集している場合には凝集している粒子の塊を一つの粒子として測定する。微粒子がほぼ球形であることが好ましい理由は次のとおりである。吸水性樹脂の表面架橋処理効果(加圧下の吸収倍率の向上等)を損なわないためには、吸水性樹脂表面が微粒子によって完全に覆われない方が好ましく、また通液性を向上させるためには、吸水性樹脂表面全体に微粒子が均一に存在して吸水性樹脂同士の凝集を防ぐことが好ましいからである。真球率は1〜1.01であることがより好ましい。
【0010】
上記微粒子の平均粒子径は0.01〜10μmであることが好ましく、0.1〜5μmであることがより好ましく、0.2〜1.5μmであることがさらに好ましい。平均粒子径が0.01μmよりも小さいと吸水性樹脂表面の孔に埋まりやすいためか、表面架橋処理の効果が損なわれ、加圧下の吸収倍率が低下しやすい。10μmよりも大きいと吸水性樹脂表面に均一に存在しにくくなるため通液性の向上効果が少なくなる。あるいは、通液性を向上させるためには相当量の微粒子の添加が必要となるので、吸収倍率の低下が起こる。
【0011】
上記微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、タルク、リン酸カルシウム、燐酸バリウム、粘土、珪藻土、ゼオライト、ベントナイト、カオリン、ハイドロサルタイト、活性白土等の無機質の微粒子状粉体、セルロース粉末、パルプ粉末、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、変性デンプン、キチン、レーヨン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、メラミン樹脂、メラミン−ベンゾグアナミン樹脂、活性炭、茶の葉等の有機質の微粒子状粉体等が例示でき、これらのうちの1種または2種以上を使用することができる。また、これらの微粒子状粉体の中でも無機質の微粒子状粉体が好ましく、その中でも、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、ゼオライト、カオリン、ハイドロサルタイトが好ましい。中でも、(株)日本触媒製のシーホースターKE−P(シリカ微粒子粉末)、シーホースターKE−E(シリカ微粒子のエチレングリコール分散液)(いずれも商品名)が特に好ましい。
【0012】
上記したような単分散性であって、かつ真球率が1〜1.1の微粒子を製造する方法としては特に限定されないが、例えば、水と溶媒を含む微粒子の原料スラリーを、外部加熱し得る管の一端が原料スラリー供給口であり、かつ他端が減圧(20〜500Torr程度)に保持された蒸気と粉体との分離装置であり、該分離装置に粉体捕集室が連結されてなる粉体化装置を用いて粉体化する方法が挙げられる。
【0013】
原料スラリーは、水を含む溶媒中で粗い粒子を湿式粉砕する方法、水を含む溶媒中で微粒子粉体を分級する方法、乾式合成法で得られる粉末を水を含む溶媒によって捕集する方法、水が存在する溶媒中で金属化合物(シリカ等)を加水分解または沈澱剤の添加、イオン交換などにより微粒子スラリーを製造する湿式合成法による方法などによって得ることができる。これらの中でスラリー中の微粒子が高分散し、粒子径が揃ったものが得られやすいという点で湿式合成法によるものが好ましい。
【0014】
原料スラリー中に含まれる溶媒としては、メタノールや、20℃における有機化合物に対する水の溶解度が1.0重量%以上のものであって、更に、水と共沸するもので水と有機化合物との2成分共沸混合物の水の共沸組成が40重量%以上のものである有機化合物が挙げられる。これらの溶媒を用いることで粉体化の時に凝集粒子の生成を抑制することができる。前記有機化合物としては、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等の炭素数2個以上の脂肪族低級アルコール類;脂環式アルコール類;メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等の低級カルボン酸エステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;アセトニトリル等のニトリル類;シクロヘキシルアミン等のアミン類;ギ酸、プロピオン酸等の有機酸等が挙げられる。
【0015】
原料スラリー中の溶媒の量としては、溶媒がメタノールの場合は水の量の1重量倍以上、メタノール以外の溶媒の場合は水の量に対して共沸混合物組成となる量の0.6重量倍以上が好ましい。
上記微粒子の量としては、吸水性樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部用いるのが好ましく、0.1〜5重量部用いるのがより好ましい。0.01重量部より少ないと通液性の向上効果が少ない場合があり、10重量部より多くしても添加量に見合った効果が得られにくいことがあり、吸収倍率が低下する場合がある。
【0016】
本発明の吸水性樹脂組成物に用いられる吸水性樹脂としてはカルボキシル基を有するものが挙げられる。例えば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、澱粉−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、カチオン性モノマーの架橋体などが挙げられる。これらの中でポリアクリル酸部分中和物架橋体が最も好ましい。
【0017】
ポリアクリル酸部分中和物架橋体を得るには、アクリル酸および/またはその塩を主成分とする親水性単量体を重合すればよく、アクリル酸および/またはその塩以外の単量体は単量体成分中30モル%以下とすることが好ましい。中和率としては、酸基の50〜95モル%が中和されていることが好ましく、60〜90モル%が中和されていることがより好ましい。塩としてはアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などを例示することができる。重合方法としては、水溶液重合又は逆相懸濁重合を行うことが好ましい。
【0018】
重合により得られたポリアクリル酸部分中和物を架橋体とするには、架橋剤を使用しない自己架橋型のものを用いてもよいが、一分子中に2個以上の重合性不飽和基や、2個以上の反応性基を有する内部架橋剤を共重合または反応させることが好ましい。
内部架橋剤の具体例としては、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらの内部架橋剤は単独で用いてもよいし、二種以上併用してもよい。
【0019】
内部架橋剤の使用量としては前記単量体成分に対して0.005〜3モル%、より好ましくは0.01〜1.5モル%である。内部架橋剤が少なすぎると、通液性、吸収速度が低下する傾向があり、逆に内部架橋剤が多すぎると、吸収倍率が低下する傾向がある。
上記重合により得られた重合体がゲル状である場合には、該ゲル状重合体を乾燥し、必要により粉砕することで、平均粒径が10〜1000μm程度の吸水性樹脂粉末とすることができる。
【0020】
吸水性樹脂粉末の表面近傍を架橋処理することにより、吸水性樹脂の吸水特性、特に加圧下の吸収倍率をさらに高めることができる。表面架橋剤としては、吸水性樹脂の表面の官能基と反応できる2個以上の官能基を有するものであればよく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサノール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等の多価エポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等の多価アミン化合物や、それらの無機塩ないし有機塩(例えば、アジチニウム塩等);2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物;1,2−エチレンビスオキサゾリン等の多価オキサゾリン化合物;1,3−ジオキソラン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、4−メチル−1,3−ジオキサン−2−オン、4,6−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−オン、1,3−ジオキソパン−2−オン等のアルキレンカーボネート化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物、および、その多価アミン付加物(例えばハーキュレス製カイメン:登録商標);亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、ジルコニウム等の水酸化物及び塩化物等の多価金属化合物等が挙げられる。これらの中でも多価アルコール化合物、多価エポキシ化合物、多価アミン化合物やそれらの塩、アルキレンカーボネート化合物が好ましい。これらの表面架橋剤は単独で用いてもよいし、二種以上併用してもよい。
【0021】
表面架橋剤の量としては、吸水性樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部用いるのが好ましく、0.5〜5重量部用いるのがより好ましい。表面架橋剤の量が0.01重量部未満の場合には、通液性が低下する場合がある。10重量部を越えて使用すると、吸収倍率が極端に低下する場合がある。
加熱処理には通常の乾燥機や加熱炉を用いることができる。例えば、薄型攪拌乾燥機、回転乾燥機、円盤乾燥機、流動層乾燥機、気流乾燥機、赤外線乾燥機等である。その場合、加熱処理温度は好ましくは40〜250℃、より好ましくは90〜230℃、さらに好ましくは120〜220℃である。加熱処理温度が40℃未満の場合には微粉末保持率が低下することがあり、一方加熱処理温度が250℃を越える場合には、使用される吸水性樹脂の種類によっては熱劣化を起こす危険性がある。加熱処理時間としては、通常1〜120分が好ましく、10〜60分がより好ましい。
【0022】
本発明の吸水性樹脂組成物を製造する方法としては、特に限定されず、吸水性樹脂に上記微粒子を添加混合すればよく、例えば、表面架橋処理した吸水性樹脂に上記微粒子を添加混合する方法、吸水性樹脂に上記微粒子を添加した後表面架橋処理を行う方法、上記微粒子をスラリー状態で吸水性樹脂に添加混合する方法等が挙げられる。
【0023】
本発明の吸水性樹脂組成物は、上記したように特定の微粒子を含むため、通液性と加圧下吸収倍率の両方に優れたものである。従来、無機微粒子の添加による加圧下吸収倍率の低下は著しいものであったため、本発明では初めて、無機微粒子を含む吸水性樹脂組成物であって、加圧下吸収倍率の高いものを提供できたものである。具体的には、加圧下吸収倍率が30g/g以上の吸水性樹脂組成物を提供することができる。
【0024】
本発明の吸水性樹脂組成物は、水だけでなく、体液、生理食塩水、尿、血液、セメント水、肥料含有水などの水を含む各種液体を吸収するものであり、使い捨ておむつや生理ナプキン、失禁パット等の衛生材料を始め、土木、農園芸等の各種産業分野においても好適に用いられる。さらに、本発明の吸水性樹脂組成物に消臭剤、香料、薬剤、植物生育助剤、殺菌剤、発泡剤、顔料、染料、親水性短繊維、肥料等を介在させることにより、新たな機能を付与することもできる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、実施例中で「部」とは特にことわりがない限り「重量部」を表すものとする。
吸水性樹脂組成物および微粒子の諸性能は以下の方法で測定した。
(a)常圧下(無荷重下)での吸収倍率
吸水性樹脂組成物0.2gを不織布製の袋(60mm×60mm)に均一に入れ、生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)中に室温で浸漬した。60分後に袋を引き上げ、遠心分離機を用いて250Gで3分間水切りを行った後、袋の重量W1(g)を測定した。同様の操作を吸水性樹脂組成物を用いないで行い、そのときの重量W0(g)を測定した。そして、これらW1、W0から、次式、
常圧下での吸収倍率(g/g)
=(重量W1(g)−重量W0(g))/吸水性樹脂組成物の重量(g)−1
に従って、常圧下での吸収倍率(g/g)を算出した。
(a)加圧下(荷重下)での吸収倍率
先ず、加圧下の吸収倍率の測定に用いる測定装置について、図1を参照しながら、以下に簡単に説明する。
【0026】
図1に示すように、測定装置は、天秤1と、この天秤1上に載置された所定容量の容器2と、外気吸入パイプ3と、導管4と、ガラスフィルタ6と、このガラスフィルタ6上に載置された測定部5とからなっている。
上記の容器2は、その頂部に開口部2aを、その側面部に開口部2bをそれぞれ有しており、開口部2aに外気吸入パイプ3が嵌入される一方、開口部2bに導管4が取り付けられている。尚、容器2には、所定量の生理食塩水12が入っている。
【0027】
また、上記外気吸入パイプ3の下端部は、生理食塩水12中に没している。上記外気吸入パイプ3は、容器2内の圧力をほぼ常圧(大気圧)に保つために設けられている。
上記のガラスフィルタ6は直径70mmに形成されている。そして、容器2およびガラスフィルタ6は、シリコーン樹脂からなる導管4によって互いに連通している。また、ガラスフィルタ6の容器2に対する位置および高さは一定に保たれている。さらに、ガラスフィルタ6は、その上面が、外気吸入パイプ3の下端面3aに対してごく僅かに高い位置になるように固定されている。
【0028】
上記測定部5は、濾紙7と、支持円筒9と、この支持円筒9の底部に貼着された金網10と、重り11とを有している。上記測定部5は、ガラスフィルタ6上に、濾紙7、支持円筒9(つまり、金網10)がこの順に載置されると共に、支持円筒9内部、即ち、金網10上に重り11が載置されてなっている。上記支持円筒9は、内径60mmに形成され、金網10は、ステンレスからなり、400メッシュ(目の大きさ38μm)に形成されている。そして、金網10上に、所定量の吸水性樹脂組成物15が均一に散布されるようになっている。また、重り11は、金網10、即ち、吸水性樹脂組成物15に対して、荷重を均一に加えることができるようになっている。
【0029】
上記構成の測定装置を用いて加圧下の吸収倍率を測定した。測定方法について以下に説明する。
先ず、▲1▼容器2に所定量の生理食塩水12を入れる、▲2▼容器2に外気吸入パイプ3を嵌入する、等の所定の準備動作を行った。次に、ガラスフィルタ6上に濾紙7を載置した。一方、これらの載置動作に並行して、支持円筒9内部、即ち、金網10上に0.9gの吸水性樹脂組成物15を均一に撒布し、この吸水性樹脂組成物15上に重り11を載置した。
【0030】
次いで、濾紙7上に、金網10、つまり、吸水性樹脂組成物15および重り11を載置した上記支持円筒9を、その中心部がガラスフィルタ6の中心部に一致するようにして載置した。
そして、濾紙7上に支持円筒9を載置した時点から、60分間にわたって経時的に、該吸水性樹脂組成物15が吸収した生理食塩水12の重量W2(g)を、天秤1の測定値から求めた。
【0031】
そして、上記の重量W2(g)と、吸水性樹脂組成物15の重量(0.9g)から、次式、
加圧下の吸収倍率(g/g)=重量W2(g)/吸水性樹脂組成物の重量(g)に従って、加圧下における吸水開始から60分後の吸収倍率(g/g)を算出した。尚、測定には、20g/cm2の荷重となる重り11を用いた。
(c)通液性
図2に示すようなコック付きガラスカラム11(「バイオカラムCF−30K」(株)井内盛栄堂カタログコード22−635−07、下部フィルター#G2、内径1インチ、長さ400mm)に、吸水性樹脂組成物0.5gを充填し、過剰の生理食塩水を用い、吸水性樹脂組成物を平衡膨潤させる(約1時間)。次いで、膨潤した吸水性樹脂組成物12が充分沈降したのち、液面を液高200mlのところに合わせてコックを開き、生理食塩水13が2本の標準線C(液高150mlの液面)とD(液高100mlの液面)との間(実測により液量50ml)を通過する時間を測定し、3回の平均値をとって通液性(秒)とする。
【0032】
なお、本装置を使用して、吸水性樹脂組成物のない状態で測定した値は10秒であった。
(d)微粒子の粒度分布
微粒子粉体5gをメチルエチルケトン100ml中に添加した後、超音波ホモジナイザーを用いて20分間分散させたスラリーについて、遠心沈降型粒度分布測定装置(島津製作所製SA−CP3型)を用いて測定した。
(e)微粒子の形状及び平均粒子径
上記(d)の測定に用いたスラリーについて、5万倍の透過型電子顕微鏡の画像より微粒子の形状を観察し、更に100個以上の粒子について個々の粒子径を実測し、その平均値を求めた。ここで、おのおのの粒子径は、粒子の最長径と最短径の平均値をとった。また、粒子が凝集している場合は、凝集している粒子の塊を一つの粒子とみなした。
(f)真球率
上記(e)で測定した微粒子の最長径の平均値と最短径の平均値を求め、以下の式に従って微粒子の真球率を算出した。
【0033】
微粒子の真球率=(微粒子の最長径の平均値)/(微粒子の最短径の平均値)
[参考例1]
カルボキシル基を有する吸水性樹脂の製造に際して、単量体成分としてのアクリル酸ナトリウム(中和率75モル%)の37重量%水溶液4400部に、内部架橋剤としてのトリメチロールプロパントリアクリレート2.72部を溶解させて反応液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。
【0034】
次いで、シグマ型羽根を2本有するジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けた反応器に上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら上記反応器内を窒素ガス置換した。続いて、反応液を攪拌しながら、重合開始剤としての過硫酸ナトリウム1.1部、および重合開始剤の分解を促進する還元剤としての亜硫酸ナトリウム1.1部を添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、30℃〜80℃で重合を行い、重合を開始して40分後に含水ゲル状重合体を取り出した。
【0035】
得られた含水ゲル状重合体を金網上に広げ、150℃で2時間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をハンマーミルを用いて粉砕し、20メッシュの金網(目開き850μm)で分級することで、平均粒子径350μmの不定型破砕状の吸水性樹脂(1)を得た。
次いで、得られた吸水性樹脂(1)100部に対し、第一表面架橋剤としてのプロピレングリコール1部、第二表面架橋剤としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル0.05部、並びに、水3部およびイソプロピルアルコール0.75部からなる水性溶液を添加、混合し、得られた混合物を175℃40分間加熱処理することにより吸水性樹脂(2)を得た。
[実施例1]
得られた吸水性樹脂(2)100部にシーホースターKE−P100((株)日本触媒製:単分散性シリカ球状微粒子、平均粒子径1.00μm、d25/d75<1.5、真球率1.00)1部添加、混合し、吸水性樹脂組成物(1)を得た。この吸水性樹脂組成物(1)の諸性能を上述した方法により測定した結果を表1に示す。
[実施例2]
得られた吸水性樹脂(2)100部にシーホースターKE−P30((株)日本触媒製:単分散性シリカ球状微粒子、平均粒子径0.28μm、d25/d75<1.5、真球率1.01)1部添加、混合し、吸水性樹脂組成物(2)を得た。この吸水性樹脂組成物(2)の諸性能を上述した方法により測定した結果を表1に示す。
[実施例3]
得られた吸水性樹脂(2)100部にシーホースターKE−P50((株)日本触媒製:単分散性シリカ球状微粒子、平均粒子径0.53μm、d25/d75<1.5、真球率1.00)1部添加、混合し、吸水性樹脂組成物(3)を得た。この吸水性樹脂組成物(3)の諸性能を上述した方法により測定した結果を表1に示す。
[実施例4]
得られた吸水性樹脂(2)100部にシーホースターKE−P150((株)日本触媒製:単分散性シリカ球状微粒子、平均粒子径1.50μm、d25/d75<1.5、真球率1.00)1部添加、混合し、吸水性樹脂組成物(4)を得た。この吸水性樹脂組成物(4)の諸性能を上述した方法により測定した結果を表1に示す。
[比較例1]
得られた吸水性樹脂(2)100部にアエロジル200(日本アエロジル(株)製:シリカ微粒子、平均粒子径0.012μm、通常数μmに凝集している、真球率1.89)1部添加、混合し、比較用吸水性樹脂組成物(1)を得た。この比較用吸水性樹脂組成物(1)の諸性能を上述した方法により測定した結果を表1に示す。
[比較例2]
得られた吸水性樹脂(2)100部にカープレックス#100(シオノギ製薬製:シリカ微粒子、単粒子の平均粒子径0.023μm、凝集粒子の平均粒子径2.2μm、d25/d75>4、真球率1.72)1部添加、混合し、比較用吸水性樹脂組成物(2)を得た。この比較用吸水性樹脂組成物(2)の諸性能を上述した方法により測定した結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1から、比較例の比較用吸水性樹脂組成物(1)、(2)を参考例の吸水性樹脂(2)と比較すると、アエロジル200、カープレックス#100を添加混合したことで通液性の向上は見られるものの、常圧下の吸収倍率が低下し、加圧下の吸収倍率は大きく低下していることがわかる。これに対して、実施例の吸水性樹脂組成物(1)〜(4)のように、特定の微粒子を添加混合した場合には、通液性が向上し、しかも常圧下の吸収倍率および加圧下の吸収倍率がほとんど低下しないか、あるいは向上しており、いずれも30g/g以上であることがわかる。
【0038】
【発明の効果】
本発明の吸水性樹脂組成物は、特定の微粒子を含むので、通液性に優れ、しかも常圧下および加圧下の吸収倍率にも優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における加圧下の吸収倍率の測定方法の説明のための図である。
【図2】実施例における通液性の測定方法の説明のための図である。
【符号の説明】
1 天秤
2 容器
3 外気吸入パイプ
4 導管
5 測定部
6 ガラスフィルタ
7 濾紙
9 支持円筒
10 金網
11 重り
12 生理食塩水
Claims (7)
- 吸水性樹脂、ならびに、無機質および/または有機質の微粒子を含む吸水性樹脂組成物であって、前記微粒子は、粒径分布指数(d25/d75)が3以下の単分散性の微粒子であり、かつ、下記で規定される真球率が1〜1.1の微粒子でもあることを特徴とする、吸水性樹脂組成物。
微粒子の真球率=(微粒子の最長径の平均値)/(微粒子の最短径の平均値) - 前記微粒子は、当該微粒子の50%以上が互いに二次凝集していないものである、請求項1に記載の吸水性樹脂組成物。
- 前記吸水性樹脂の平均粒子径が10〜1000μmであり、前記微粒子の平均粒子径が0.01〜10μmである、請求項1または2に記載の吸水性樹脂組成物。
- 前記吸水性樹脂が表面架橋された吸水性樹脂粉末である、請求項1から3までのいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
- 20g/cm2の荷重での生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する60分間での加圧下の吸収倍率が30g/g以上である、請求項1から4までのいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
- 前記微粒子が、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、ゼオライト、カオリン、ハイドロサルタイトから選ばれる少なくとも1種の無機質微粒子状粉体である、請求項1から5までのいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
- 吸水性樹脂、ならびに、無機質および/または有機質の微粒子を含む吸水性樹脂組成物の製造方法であって、吸水性樹脂と、粒径分布指数(d25/d75)が3以下の単分散性であるとともに下記で規定される真球率が1〜1.1の微粒子を混合することを特徴とする、吸水性樹脂の製造方法。
微粒子の真球率=(微粒子の最長径の平均値)/(微粒子の最短径の平均値)
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