JP4043598B2 - ガスバリア性多層ヒートシールフィルムとそれを用いた袋体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
プラスチックフィルムから形成される、バリア性をもつと同時にヒートシールができるフィルムに関し、ヒートシールができる袋体用積層フィルムにおいて水蒸気、特に酸素などのガスバリア層を構成するエチレン・ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと記載する。)を含むガスバリア性ヒートシール多層フィルム(以下、バリア性多層HSフィルムと記載する。)を用いた耐屈曲性に優れた多層共押出しフィルム及びそれを用いた袋体に属する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックフィルムを基材とする軟包装フィルムは、ヒートシール性に優れた、密封性を要求される袋体に多用されてきた。そして、水蒸気バリア性(以下、防湿性と記載する。)や酸素などのガスバリア性(以下、単にバリア性と記載する。)に優れた袋体は、水分が袋体を透過して吸脱湿や、酸素などの活性ガスによる酸化に伴う内容物の変質を避けることは困難であった。水分による変質を防ぐには、延伸プラスチックフィルムとポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンをヒートシーラント層(以下、HS層と記載する。)とからなる多層フィルムが使用されていた。そして、より優れた防湿性を必要とするときは、防湿性に優れたフィルム、例えばアルミニウム箔、金属アルミニウムや酸化ケイ素を蒸着したプラスチックフィルム、塩化ビニリデンを塗工したフィルムを貼合した積層フィルムからなる袋体が使用されていた。そして、更に水分を避けたい内容物の場合は、シリカや酸化カルシウムの吸湿剤を袋体に同封することも行われ、防湿性をもつ袋体としては一応満足されるものであった。
【0003】
内容物がガス特に酸素ガスにより変質をうける場合は、上記のポリオレフィンをHS層とし、バリア層としてバリア性に優れたフィルム、例えばEVOH、変性ポリアミド、アルミニウム箔、金属アルミニウムや酸化ケイ素を蒸着したプラスチックフィルム、ポリビニルアルコールや塩化ビニリデンを塗工したフィルムを貼合した積層フィルムからなる袋体が使用されていた。そして、袋体に残存する酸素ガスによる変質を防止する目的で、ガスを取り除いた『真空包装』や、酸素を炭酸ガスなどの不活性ガスで置換した『ガス置換包装』、あるいは酸素ガスを吸収する所謂『脱酸素剤』を袋体に同封したりしてされていた。
【0004】
しかしながら、バリア層を構成する塩化ビニリデンは、包材を焼却廃棄をするとき、塩素化合物による大気汚染の懸念があり、汚染物質を除去するコストの問題もあり必ずしも好ましい包装材料とはいえないものである。
また、アルミニウム箔、金属アルミニウムや酸化ケイ素を蒸着したプラスチックフィルムを貼合した積層体は、プラスチックフィルムと比較して展延性に劣るため、上記の材料は、折曲げ部や屈曲部においてピンホールを発生し、初期状態のバリア性を維持できないばかりでなく、内容物が見えないという問題があった。また、蒸着フィルムは、比較的ピンホールは発生し難いとはいうものの、プラスチックフィルムと比較した場合には劣るものであり、また、蒸着適性を要求される薄膜のフィルムは、熱安定性、厚薄の精度、寸法安定性などの制約があった。特にピロータイプのガセット袋や、ひねり部分をもつ巾着状の包装袋においては蒸着膜にピンホールが発生し易いという問題点があった。
【0005】
ポリビニルアルコールのフィルムを含む積層フィルムは、乾燥時には優れたバリア性を奏するが、耐屈曲性に劣りピンホールを発生し易く、また多湿下においては水分の影響でバリア性を著しく低下するという問題点があった。また、EVOHは、ポリビニルアルコールフィルムと比較して水分の影響をうけ難い材料である。しかしながら、エチエレンの共重合比率によって酸素透過度が著しく影響される。例えば、エチエレンの共重合比率が32モル%のEVOHの20℃における酸素透過度は、0.3〜0.5cc・20μm/m2 ・24h・atmであり、エチエレンの共重合比率が47モル%のEVOHは、4.5〜5.3cc・20μm/m2 ・24h・atmである。したがって、ガスバリア性に優れたグレードであるエチレン含有量の少ないEVOHを使用するときは、ポリビニルアルコールと同様に屈曲やヒートシール部の加熱・圧によるピンホールを発生し、それに伴いバリア性が低下し易いという問題点を避けることは困難であった。
【0006】
上記のEVOHは、熱分解を起こしやすい樹脂であり、例えば、Tダイス法で他の樹脂と共押出し成膜した場合、高温になると、分解して炭化物を形成したり、ゲル状物のために外観不良を起こし易い。また、EVOHの成膜温度では、HS層となる線状ポリエチレン(以下、LLDPEと記載する。)の粘度低下が著しく成膜が安定しなかった。また、逆に、HS層の樹脂の加工適性に合わせた低温では樹脂の流れにムラが発生し成膜の流れ方向に筋状の厚みムラを発生するという問題点があった。
また、サーキュラダイス法(インフレーション法)で成膜する場合もEVOHの加工に適した200〜235℃の加工温度で、ヒートシール性に優れたLLDPEをHS層とした多層成膜を行ったときにはLLDPEの粘度低下が著しく、またLLDPEの成膜温度で加工するとEVOHの溶融粘度が不足し、フィルム形成に必要なバルーン(インフレーションで成膜する時に溶融樹脂が形成するチューブ)の形状が変動するため、膜の厚みや巾が変動し成膜不良を生ずるという問題点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、バリア性に優れるが、フィルムとして耐屈曲性が劣るエチレン含有比率が少ないEVOHを用いた場合、屈曲や、ヒートシール部、特にガセット袋などにおける折込みシール部にみられるピンホールの発生、及びそれに伴うバリア性の低下を防止したバリア性多層HSフィルムを、成膜時の熱分解や、厚みの変動がなく生産したフィルムの提供を課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明のバリア性多層HSフィルムは、密度が0.915g/cm 3 、メルトフローレートが4gの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂と、密度が0.915g/cm 3 、メルトフローレートが10gの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂との1:1の組成物からなるLLDPE、及び密度が0.880〜0.895g/cm3のポリエチレン樹脂からなるプラストマ層との少なくとも2層からなる厚み合計が15〜30μmのHS層、接着性樹脂層、厚みが3〜5μmのエチレン含有率が25〜50モル%、ケン化率が90%以上のEVOHからなるガスバリア層、接着性樹脂層、及びメルトフローレートが2.5g以下の低密度ポリエチレンからなる成膜キャリア層とからなるバリア性多層HSフィルムである。そして、前記成膜キャリア層が、ポリエチレン系樹脂又はポリアミドから構成されるバリア性多層HSフィルムである。
【0009】
前記のバリア性多層HSフィルムの成膜キャリア層と、基材フィルムとを貼合した積層フィルムから形成された袋体である。
また、前記の基材フィルムが、一軸又は二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる積層フィルムで形成された袋体である。
そして、前記の袋体が、一方及び他方に折り曲げ部(ガセット部)をもつ袋体である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のバリア性多層フィルムルムは図1に示すように、本発明のバリア性多層HSフィルム10は、JIS K7122 6.2 B法(ピクノメーター法)に準じて測定した密度が0.900〜0.920g/cm3 のLLDPE2及び密度が0.880〜0.895g/cm3 のプラストマ層3との少なくとも2層からなる厚み合計が15〜30μmのHS層1、接着性樹脂層22、厚みが3〜5μmのエチレン含有率が25〜50モル%、ケン化率が90%以上のEVOHからなるバリア層4、接着性樹脂層21、及び成膜キャリア層5とからなるバリア性多層HSフィルム10である。
そして、前記成膜キャリア層5が、ポリエチレン系樹脂又はポリアミドから構成されるバリア性多層HSフィルム10である。
【0011】
図2に示すように、前記のバリア性多層HSフィルム10の成膜キャリア層5と、印刷による絵柄層7を施した基材フィルム8又は未印刷の基材フィルムとを接着剤層6を設けて貼合した積層フィルム15や、図3に示すように必要に応じて設けるプライマー層61と接着樹脂62とからなる接着剤層6に相当する層を設けてサンドイッチラミネーションした積層フィルム16である。
また、図4に示すように積層フィルム15又は積層フィルム16に内部折込み部91及び外部折曲げ部92を設けてヒートシール部95を形成した袋体90である。
【0012】
本発明の成膜キャリア層は、多層フィルム全体の成膜工程を安定化できるキャリア層なるものが好ましい熱可塑性樹脂から選択できる。例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマーや、ナイロン6、共重合ナイロン(ナイロン6/ナイロン66、ナイロン6/ナイロン12)、共重合ポリエステルのなどから、235℃以下で成膜できるものから選択する。好ましくは、JIS K7210 A法の表1に規定する試験条件4に基づいて測定したメルトフローレート(MFR)が2.5g以下の低密度ポリエチレンである。MFRが3g以上となると成膜時のバルーンが変動し易い。
ヒートシール性が安定したLLDPEからなるHS層が最内層として成膜する場合、空気によりHS層が酸化され悪臭の原因となったり、ヒートシールを阻害する酸化物を生成したりすることがある。これを抑制するため不活性ガス(炭酸ガス及び/又は窒素ガス)を封入して成膜のバルーンを形成する。そして、成膜を完了後の成膜キャリア層は、接着剤層との適性を与えるためのコロナ放電処理は成膜直後に行うことが処理効果を安定できる。
【0013】
LLDPEには、製袋機の走行性を安定化する目的で滑剤を加える、滑剤は、炭素数が16以上のセチルアルコール、ステアリルアルコールのアルコール系のものや、炭素数が12以上の脂肪酸の金属石鹸、オレイン酸アミドなどの脂肪酸アミド、流動パラフィン、ワセリンなどから選択することができる。
また、無機の微粒子である、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウムなどがある。その他、内容物が粉体である場合など所望に応じて帯電防止剤である界面活性剤を加えることもできる。
【0014】
接着性樹脂層は、成膜キャリア層とバリア層との樹脂を共押出し成膜を行うときに双方の樹脂を接着するために設ける層である。本発明のようにバリア層がEVOHである場合は、酸無水物を含むグラフト重合、もしくは共重合ポリエチレン、変性エチレン・酢酸ビニル共重合体、変性ナイロンなどから適宜選択できるが、好ましくは、EVOH及び低密度ポリエチレンと同様の流動特性をもつ酸無水物を含むグラフト重合ポリエチレンである。
【0015】
EVOHは、ビニルアルコールの比率が高いものがバリア性に優れるが、曲げ強度、降伏点伸度が劣る傾向にある。したがって、バリア性に優れるものが耐ピンホール性に劣るという問題点がある。したがって、エチレン含有率が25〜50モル%(EVOHが75〜50モル%)の比較的ビニルアルコール成分の多いのものがバリア性を維持する意味からも好ましい。エチレン含有率が25モル%に満たないものは、バリア層の可撓性が劣り、ピンホールの発生によるバリア性の低下を避けがたい。
【0016】
本発明のプラストマ層は、バリア層のピンホールの発生を防止する作用をもつと同時にバリア性多層HSフィルムから構成された袋体がヒートシールで密封・構成されるとき、折曲げ部やヒートシール部の端部に発生する積層フィルムのピンホール発生をも防止する効果を奏するものである。
したがって、構成する高分子が屈曲性に優れること、そしてその屈曲性を実現するためにガラス転移点が使用温度より高く、かつHS層の温度より軟化温度が低いものが好ましい。したがって、密度が0.895g/cm3 以下のポリエチレンが好ましく使用できるが、その他エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマーなどの他にポリブタジエン、ポリイソブチレン、エチレン・プロピレン共重合ゴム、ブチルゴムなど軟化温度の低いものを密度とは関係なく選択して、ポリオレフィンにブレンドしたり単独でプラストマ層として使用できる。
【0017】
バリア性多層HSフィルムの総厚みは、通常の溶融押出し成膜ができる15〜100μmを目処とはするが、特に問うものではない。
そして、成膜キャリア層は、成膜を安定する目的で多層フィルムの総厚みの10%以上が好ましい。接着性樹脂層は成膜できる最低厚みの2μm以上、ガスバリア層は所望されるバリア性から規定されるものであり3〜8μmであり、3μm以下ではバリア性が不足し、8μmを超えるとヒートシール時に密封性を阻害し、かつ、コスト面からも不利である。HS層は15μm以上が好ましく、LLDPEとプラストマ層との相乗効果で密封性とヒートシール性とが安定したものとなる。15μm以下であるとLLDPEのもつヒートシール強度と、プラストマ層がもつ密封性を発揮し難くなり、HS層としての機能を満足できない。
そして、プラストマ層はその効果を奏するためにも可及的厚く10〜40μmに設定することが好ましい。
【0018】
成膜は、共押出し多層成膜機であるならば、サーキュラダイス型、Tダイス型のいずれでも構わないが、総厚みの変動を巻上げ軸の回転で吸収できるサーキュラダイス型が好ましい。また、製造した多層フィルムの冷却は、空冷、水冷のいずれをも使用できる。空冷のものは加工温度を低く設定でき、ゲル化物の生成を少なく、また、ダイス内での膜状態の樹脂の接触滞留時間が長いため層間の接着強度を強くできる。また、フィルムの結晶化度を抑制できる水冷式は、成膜キャリア層にポリアミドを用いるなど使用樹脂によっては有効な方法である。
そして、各層の形成と接着は、フィードブロック方式や、マルチマニホールド方式のいずれでもよく、またダイ内接着であっても、ダイ外接着のいずれの方式でも構わないが、薄膜成膜に有効であるダイ内接着の方法が好ましい。
【0019】
前記のバリア性多層HSフィルムと貼合して積層フィルムを構成する基材フィルムは、通常のフィルム状の袋体の基材となるものから、1〜3種のフィルムを使用する。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、セルロスアセテートなどの延伸又は非延伸フィルム、紙、セロハンなどから適宜に選択できる。好ましくは、耐屈曲性に優れ、コスト面からも有利な二軸延伸ポリプロピレンフィルムである。
【0020】
積層フィルムを形成するための、バリア性多層HSフィルムと上記のフィルムとの貼合は、エマルジョン系接着剤を使用するウエットラミネーション、反応硬化型接着剤を使用するドライラミネーション(溶剤を含む接着剤を使用したラッカーラミネーション、溶剤を含まないノンソルラミを含む)、石油系ワックス、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、合成ゴム、粘着付与剤などから構成されるホットメルト型接着剤(溶剤を加えて、加熱状態で使用するホットラッカーも含む)によるホットメルトラミネーションや、必要に応じてプライマー層を設けて溶融押出しした接着樹脂を介して積層するサンドイッチラミネーションなどの通常の方法を材料や用途によって適宜に選択して使用する。
【0021】
積層フィルムから、袋体を構成するには、上記の基材フィルムを外側にし、そしてHS層を内面にして、適宜の形状に製袋あるいは、自動充填包装を行う。袋体の形態は、ピロー袋、折込みのガゼット部をもつガセット袋など特に問うものでなく、また、積層フィルムの製袋機における走行も縦型、横型の関係がなく製袋に供給できる。
【0022】
以下、実験例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
【0023】
(実施例1〜3及び比較例1〜4)
次に示す組成の樹脂組成物(A〜F及びN)を、各層が50mmの溶融押出機からフィードブロック方式の6種6層のサーキュラダイス型成膜機を用いて、表1に示す厚みになるように加工温度を230℃で総厚み50μmのバリア性多層HSフィルムを作成し、表1のように成膜キャリア層の側にコロナ放電処理を施した実施例1〜2及び比較例1〜4の試料を作成した。
【0024】
【表1】
各層の樹脂組成物とその厚み 単位 μm
【0025】
表1に示したA〜Fの各層の樹脂組成物は次のとおりである。
・A 密度0.915g/cm3 MFR4.0gのLLDPE:密度0.915g/cm3 、MFR10.0gのLLDPE=1:1の組成物
・B 密度0.895g/cm3 、MFR1.6gのLLDPE
・C 密度0.915g/cm3 MFR4.0gのLLDPE
・D MFR1.6gの酸無水物グラフト重合ポリエチレン
・E エチレン含有率 38モル%、MFR1.6gのEVOH
・F 密度0.920g/cm3 、MFR1.6gのLDPE
・N 密度1.140g/cm3 、ナイロン6とナイロン66の共重合体
また、ドライは、ドライラミネーションを、そしてサンドは、LDPEを接着性樹脂層としたサンドイッチラミネーションによる貼合である。
【0026】
実施例1〜3及び比較例1〜4で作成したバリア性多層HSフィルム10の成膜キャリア層6と、厚みが20μmの二軸延伸延伸ポリプロピレン(基材フィルム8)にウレタン系2液反応接着剤6を塗工した面(接着剤層6)とを貼合して、図2に示す積層フィルム15、又は図3に示すようにプライマー層61を介して低密度ポリエチレンを接着樹脂62としたサンドイッチラミネーションによる積層フィルム16を作成した。
【0027】
実施例及び比較例の成膜適性、成膜の安定性や、酸素透過度、ヒートシール開始温度、はく離強度、製袋適性の評価となるHS層の滑りを評価した。
次いで、積層フィルム15を用いて、図4に示すように内部折込み部91、外部折曲げ部92及びヒートシール部95、折込み巾93が15mmの縦×横=300×150mm2 、ヒートシール巾10mmのガセット袋(袋体90)を作成し、製袋適性(及び折込み部のピンホール発生の有無)を評価した。その評価結果を表2に示す。
【0028】
【表2】
評価結果
【0029】
表2に示す各測定項目の評価法は、以下に示すとおりである。
(評価方法)
・成膜適性
成膜時における流れムラの発生頻度及びバルーンの安定性を目視により総合的に評価した。
・酸素透過度
JIS K7126 B法(等圧法)に準拠してMODERN CONTROL INC.社製 OX−TRAN2/20を用いて、23℃、相対湿度65%の条件で酸素透過量(cc/atm・m2 24h)を測定した。
・ヒートシール(HS)開始温度
積層フィルムのHS層を相対して、圧力1kg/cm2 ×1secの条件で10mm巾にヒートシールした後、15mm巾でヒートシール方向に垂直に断裁し、そのはく離強度を、はく離速度300mm/minで測定し、その強度が2Kg/15mmとなるときの温度をヒートシール(HS)開始温度とした。
・はく離強度
上記の条件で150℃で測定したときの15mm巾においてはく離強度を測定した。
・フィルムの外観
上記の樹脂組成物で10時間の成膜を続け、ゲルの発生頻度、及びフィルムの透明性(JIS K7105ー1981)から総合的に評価した。
・動摩擦係数
積層フィルムのHS層のステンレス面に対する滑りをJIS K7214ー1987に準じて測定した。
・製袋適性(密封性)
積層フィルムを縦型のピロータイプの製袋機で製袋を行った後、袋体中にピンホールチェック液(アルコール可溶性染料をオクチルアルコールに溶解し、着色した試験液)を注入し、シール部への滲透の有無を確認した。
評価基準
◎ 非常に良好である。
○ 良好であり、実用性に全く問題なし。
△ 若干の問題はあるが、用途を選択して実用できる。
× 欠点が多く実用性はない。
【0030】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明のバリア性多層HSフィルムは、ヒートシールに安定した性能をもつLLDPEとプラストマ層とからなるHS層を15μm以上に構成している。そして、安定した成膜性をもつ成膜キャリア層とエチレン含有率が少ないEVOHとからなる多層共押出しフィルムの成膜を安定して行えるようにしたものである。そして、ヒートシールに安定した性能をもつLLDPEをHS面として、更にプラストマ層を含んで15μm以上の厚みに構成した、バリア性多層HSフィルムは、比較例のものと比較して成膜適性、バリア性、密封性及び製袋適性のバランスがとれた共押出しフィルムを提供できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】バリア性多層HSフィルムの断面の概念を示す図である。
【図2】バリア性多層HSフィルムを用いて貼合した積層フィルムの断面の概念を示す図である。
【図3】バリア性多層HSフィルムを用いて貼合した他の形態の積層フィルムの断面の概念を示す図である。
【図4】バリア性多層HSフィルムの積層フィルムから形成したピロー袋体の概念を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 HS層
2 LLDPE
3 プラストマ層
4 バリア層
5 成膜キャリア層
6 接着剤層
7 絵柄層
8 基材フィルム
10 バリア性多層HSフィルム
15、16 積層フィルム
21、22 接着性樹脂層
61 プライマー層
62 接着樹脂
90 袋体
91 内部折込み部
92 外部折曲げ部
93 折込み巾
95 ヒートシール部
Claims (5)
- 密度が0.915g/cm 3 、メルトフローレートが4gの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂と、密度が0.915g/cm 3 、メルトフローレートが10gの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂との1:1の組成物からなる線状ポリエチレン及び密度が0.880〜0.895g/cm3のポリエチレン樹脂からなるプラストマ層との少なくとも2層からなる厚み合計が15〜30μmのヒートシーラント層、接着性樹脂層、厚みが3〜5μmのエチレン含有率が25〜50モル%、ケン化率が90%以上の酢酸ビニルケン化物の共重合体からなるガスバリアー層、接着性樹脂層、及びメルトフローレートが2.5g以下の低密度ポリエチレンからなる成膜キャリア層とからなることを特徴とするガスバリア性多層ヒートシールフィルム。
- 前記成膜キャリア層が、ポリエチレン系樹脂又はポリアミドからなることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性多層ヒートシールフィルム。
- 請求項1乃至2に記載のガスバリア性多層ヒートシールフィルムの成膜キャリア層と、基材フィルムとを貼合した積層フィルムからなることを特徴とする袋体。
- 請求項3に記載の基材フィルムが、一軸又は二軸延伸ポリプロピレンフィルムであることを特徴とする請求項1乃至3に記載の袋体。
- 前記袋体が、一方及び他方に折り曲げ部をもつことを特徴とする請求項1乃至4に記載の袋体。
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