JP4035672B2 - 車両の車体構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は車両の車体構造に関し、特に、車両非衝突時の高い剛性を確保し、車両衝突時の車体の変形モードを一定にするようにした車両の車体構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、バンやワゴン等の車両には、車両の前後方向に延設された左右1対のサイドフレームと、これらサイドフレームに架着され車両の車幅方向に延設された複数のクロスメンバーとを含む梯子状の車体フレームを備えた車体構造が広く採用されている。この種の車体構造においては、剛性が非常に高いという点で優れている反面、車両衝突時の衝突エネルギー吸収性能が高くないという欠点がある。
【0003】
そこで、本願出願人は、先の出願(実願平2−15037号)において、非衝突時には高い剛性を確保し、衝突時にはサイドフレームを積極的に変形させて衝突エネルギーを吸収できるようにした車両の車体構造を提案している。
【0004】
この車体構造においては、左右1対のサイドフレームの前部に、両サイドフレーム間の間隔が後方に向かってテーパ状に拡大する拡張部が設けられ、この拡張部の後端近傍に設けたクロスメンバーの両端部が、左右1対のサイドフレームに左右方向に分離可能に連結されている。クロスメンバーとサイドフレームの連結部は、クロスメンバー端部のフランジ部に固着された鉛直の複数のボルトを、サイドフレームに固着のブラケットに形成された内端開放状の複数の切欠き孔に係合締結し、サイドフレームに固着された別の鉛直の複数のボルトを、フランジ部に形成された外端開放状の複数の切欠き孔に係合締結した構造になっている。
【0005】
従って、この車体構造においては、車両非衝突時には高い剛性を確保し、 車両衝突時には、サイドフレームに前後方向に入力される衝突荷重により、クロスメンバーの両端部付近の拡張部を含むサイドフレーム部分が車幅方向外側へ変形する際に、前記複数のボルトが複数の切欠き孔から係合離脱し、クロスメンバーの両端部が左右1対のサイドフレームから分離するため、左右のサイドフレームの車幅方向外側への変形を促進し衝突エネルギーを吸収できるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記車両の車体構造では、特に車両のオフセット衝突時、サイドフレームに前後方向に所定の衝突荷重が入力されたにもかかわらず、その衝突荷重が1対のサイドフレームに一様に作用しないため、クロスメンバーの一端部がサイドフレームから分離するだけで、クロスメンバーの両端部をサイドフレームから確実に分離させることが難しい。つまり、クロスメンバーとサイドフレームが左側で分離する場合と右側で分離する場合があり、車体の変形モードを一定にすることができないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、左右1対のサイドフレームとこれら1対のサイドフレームに架着されたクロスメンバーとを含む車両の車体構造において、衝突時の車体の変形モードを一定にすることである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の車両の車体構造は、車両の前後方向に延設された左右1対のサイドフレームと、これらサイドフレームに架着され車両の車幅方向に延設されたクロスメンバーとを含む車両の車体構造において、前記サイドフレームに対して前後方向に所定荷重が入力された際、クロスメンバーの車幅方向中央部分にそのクロスメンバーを左右に分離させる分離機構を設け、前記分離機構は、クロスメンバーの左右1対のクロスメンバー分割体の相対向する1対の内端部を、前後方向荷重及び上下方向荷重を支持可能に且つ車幅方向へ分離可能に連結する連結部材を備えたものである。
【0009】
非衝突時には、サイドフレームに前後方向に所定荷重が入力されないので、前記クロスメンバーにより左右1対のサイドフレームが強固に連結され、高い車体剛性が確保される。正面衝突やオフセット衝突等の衝突時に、サイドフレームに前後方向に所定荷重が入力されると、1対の又は一方のサイドフレームが車幅方向外側へ変形するが、このとき、分離機構によりクロスメンバーが車幅方向中央部分で常に左右に分離するため、車体の変形モードを一定にすることができる。
そして、非衝突時には、左右1対のクロスメンバー分割体が連結部材を介して前後方向荷重及び上下方向荷重を支持可能に連結され、また、衝突時に1対のサイドフレームが外側へ変形すると、少なくとも一方のクロスメンバー分割体の内端部と連結部材が連結解除して、クロスメンバーの車幅方向中央部分が左右に分離する。
【0010】
請求項2の車両の車体構造は、請求項1の発明において、前記クロスメンバーの両端部分に、サスペンション機構のサスペンション部材を夫々連結したことを特徴とするものである。分離機構によりクロスメンバーを車幅方向中央部分で左右に分離するようにしてあるため、クロスメンバーの両端部分に十分なスペースを確保して、サスペンション部材を連結することができる。
【0011】
請求項3の車両の車体構造は、請求項1又は2の発明において、前記所定荷重により、クロスメンバーの端部付近のサイドフレーム部分を外側へ変形させる変形促進機構を設けたことを特徴とするものである。それ故、衝突時サイドフレームに前後方向に所定荷重が入力されると、変形促進機構によりクロスメンバーの端部付近のサイドフレーム部分を外側へ確実に変形させ、衝突エネルギー吸収性能を高めることができる。
【0012】
【0013】
【0014】
請求項4の車両の車体構造は、請求項1〜3の何れかの発明において、前記連結部材の前後の側壁部に固着された前後方向向きの複数のボルトを、左右1対のクロスメンバー分割体の前後の側壁部に形成された左右に長い複数の切欠き状の係合孔に係合締結させたことを特徴とするものである。
【0015】
それ故、非衝突時、連結部材の側壁部に固着された複数のボルトが、左右1対のクロスメンバー分割体の前後の側壁部に形成された複数の係合孔に係合締結され、左右1対のクロスメンバー分割体が、前後方向荷重及び上下方向荷重を支持可能に且つ車幅方向へ分離可能に連結される。衝突時に1対のサイドフレームが外側へ変形すると、連結部材の複数のボルトが少なくとも一方のクロスメンバー分割体の複数の係合孔から係合離脱し、クロスメンバーの車幅方向中央部分が左右に分離する。
【0016】
請求項5の車両の車体構造は、請求項4の発明において、前記連結部材の上壁部は、前記左右1対のクロスメンバー分割体の上壁部にスポット溶接されたことを特徴とするものである。それ故、左右1対のクロスメンバー分割体の1対の内端部と連結部材の一体性を確保できながら、衝突時にはスポット溶接部分の破断により、左右1対のクロスメンバー分割体を分離させることができ、また、クロスメンバーの組付け時、クロスメンバーの幅方向中央部の一体性を保ったまま、クロスメンバーの両端部を1対のサイドフレームに固定でき、クロスメンバーの組付け作業を簡単化することができる。
【0017】
請求項6の車両の車体構造は、車両の前後方向に延設された左右1対のサイドフレームと、これらサイドフレームに架着され車両の車幅方向に延設されたクロスメンバーとを含む車両の車体構造において、前記サイドフレームに前後方向に所定荷重が入力された際、クロスメンバーの車幅方向中央部分にそのクロスメンバーを左右に所定ストローク伸長させる伸長機構を設けたものである。
【0018】
非衝突時には、サイドフレームに前後方向に所定荷重が入力されないので、前記クロスメンバーにより左右1対のサイドフレームが強固に連結され、高い車体剛性が確保される。正面衝突やオフセット衝突等の衝突時、サイドフレームに前後方向に所定荷重が入力されると、1対の又は一方のサイドフレームが外側へ変形するが、このとき、伸長機構によりクロスメンバーの車幅方向中央部分が常に左右に所定ストローク伸長するため、車体の変形モードを一定にできる。
【0019】
請求項7の車両の車体構造は、請求項6の発明において、前記クロスメンバーに、燃料タンクが支持されたことを特徴とするものである。衝突時、伸長機構によりクロスメンバーの車幅方向中央部分が左右に所定ストローク伸長するが、そのクロスメンバーは連結部材を介して連結された状態が保持されるため、燃料タンクを落下させることなく、衝突時のフレームの変形を許容することができる。
【0020】
請求項8の車両の車体構造は、請求項6又は7の発明において、前記伸長機構は、クロスメンバーの左右1対のクロスメンバー分割体の相対向する1対の内端部を、前後方向荷重及び上下方向荷重を支持可能に且つ車幅方向へ伸長可能に連結する連結部材を備えたことを特徴とするものである。
【0021】
それ故、非衝突時には、左右1対のクロスメンバー分割体が連結部材を介して前後方向荷重及び上下方向荷重を支持可能に連結され、また、衝突時に1対のサイドフレームが外側へ変形すると、左右1対のクロスメンバー分割体の1対の内端部と連結部材が連結された状態で、クロスメンバーの車幅方向中央部分が左右に所定ストローク伸長する。
【0022】
請求項9の車両の車体構造は、請求項8の発明において、前記連結部材の前後の側壁部に固着された前後方向向きの複数のボルトを、左右1対のクロスメンバー分割体の前後の側壁部に形成された左右に長い複数の係合孔に係合締結させたことを特徴とするものである。
【0023】
それ故、非衝突時、連結部材に固着された複数のボルトが、左右1対のクロスメンバー分割体の前後の側壁部に形成された複数の係合孔に係合締結され、左右1対のクロスメンバー分割体が、前後方向荷重及び上下方向荷重を支持可能に且つ車幅方向へ分離可能に連結される。衝突時に1対のサイドフレームが外側へ変形すると、前記複数のボルトが複数の係合孔の内端部に係合し、左右1対のクロスメンバー分割体が連結された状態で、クロスメンバーの車幅方向中央部分が左右に所定ストローク伸長する。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態は、主にバンやワゴン等の車両に採用される梯子状の車体フレームを備えた車体構造に、本発明を適用した場合の例である。図1に示すように、梯子状の車体フレーム1は、前後方向に延設された左右1対のサイドフレーム2と、これらサイドフレーム2に所定の前後間隔をもって架着され車幅方向に延設された第1〜第5クロスメンバー3〜7及びサスペンション支持メンバー8等で構成されている。
【0025】
左右1対のサイドフレーム2の、サスペンション支持メンバー8と第2クロスメンバー4間に、両サイドフレーム2間の間隔が後方に向かってテーパ状に拡大する拡張部2a(これが変形促進機構に相当する)が設けられ、この拡張部2aにより、サイドフレーム2に前後方向に所定荷重が入力されると、先ず、第2クロスメンバー4の両端部付近の拡張部2aを含むサイドフレーム部分が外側へ変形するようにしてある。
【0026】
サスペンション支持メンバー8には、サスペンション機構(図示略)が支持され、このサスペンション機構から後方へ延びる左右1対のトーションバー10の後端部分が、第2クロスメンバー4の両端部分に夫々連結され(図3参照)、第4,第5クロスメンバー6,7には、燃料タンク19が支持されている。
【0027】
そして、この車体フレーム1においては、車両衝突時、サイドフレーム2に前後方向に所定荷重が入力された際、サイドフレーム2を外側へ変形させ易くするように、第2クロスメンバー4の車幅方向中央部分にそのクロスメンバー4を左右に分離させる分離機構30と、第4クロスメンバー6の車幅方向中央部分にそのクロスメンバー6を左右に所定ストローク伸長させる伸長機構40が設けられている。
【0028】
第2クロスメンバー4と分離機構30について説明する。図2、図3に示すように、第2クロスメンバー4は、左右1対のクロスメンバー分割体20からなり、これらクロスメンバー分割体20の相対向する1対の内端部が、分離機構30を介して車幅方向へ分離可能に連結されている。
【0029】
各クロスメンバー分割体20は、外端部分下面に支持部21を、車幅方向中央部の上面に連結部22を、連結部22の中央部分に左右に長い挿通孔23を有し、トーションバー10の後端部分が支持部21に受止められて支持され、トーションバー10に固着のアーム部11の端部が、連結ロッド12と1対のナット部材13,14により連結部22に連結されている。尚、図3に示すように、第2クロスメンバー4の中央部分の下方凹状に湾曲する湾曲部4aの上側に、後輪に駆動力を伝達するプロペラシャフト15が延び、湾曲部4aの左右両側に1対の排気管16が延びている。
【0030】
図4〜図6に示すように、分離機構30は、第2クロスメンバー4の左右1対のクロスメンバー分割体20の相対向する1対の内端部を、前後方向荷重及び上下方向荷重を支持可能に且つ車幅方向へ分離可能に連結する連結部材31を有する。連結部材31は、前後の側壁部31aとこれら側壁部31aを連結する上壁部31bからなり、側壁部31aと上壁部31bの外面は、左右1対のクロスメンバー分割体20の前後の側壁部20aと上壁部20bの内面に摺動可能に接触している。
【0031】
連結部材31の各側壁部31aには左右1対のボルト孔32が形成され、左右1対のクロスメンバー分割体20の前後の側壁部20aの各々には、前記左右1対のボルト孔32に対応する内端開放の切欠き状の係合孔33が形成されている。連結部材31の各側壁部31aのボルト孔32に、左右1対の庇付きのボルト35を夫々挿通させ先端部分にナット36を螺着させることで、左右1対のボルト35が連結部材31の側壁部31aに前後方向向きに固着されている。
【0032】
そして、これら左右1対のボルト35を、クロスメンバー分割体20の側壁部20aの左右1対の係合孔33に夫々係合締結させ、左右1対のクロスメンバー分割体20が、前後方向荷重及び上下方向荷重を支持可能に且つ左右に分離可能に連結されている。連結部材31の上壁部30bは左右1対のクロスメンバー分割体20の上壁部20bに、複数の溶接箇所39でスポット溶接されている。
【0033】
第4クロスメンバー6と伸長機構40について説明する。図7に示すように、第4クロスメンバー6は、左右1対のクロスメンバー分割体29からなり、これらクロスメンバー分割体29の相対向する1対の内端部が、伸長機構40を介して車幅方向へ伸長可能に連結されている。
【0034】
伸長機構40は、第4クロスメンバー6の左右1対のクロスメンバー分割体29の相対向する1対の内端部を、前後方向荷重及び上下方向荷重を支持可能に且つ車幅方向へ伸長可能に連結する連結部材41を有する。連結部材41は、前後の側壁部41aとこれら側壁部41aを連結する上壁部41bからなり、側壁部41aと上壁部41bの外面は、左右1対のクロスメンバー分割体29の前後の側壁部29aと上壁部29bの内面に摺動可能に接触している。
【0035】
連結部材41の各側壁部41aには左右1対のボルト孔42が形成され、左右1対のクロスメンバー分割体29の内端部分の前後の側壁部29aの各々には、前記左右1対のボルト孔42に対応する左右に長い係合孔43が形成されている。連結部材41の各側壁部41aのボルト孔42に、左右1対の庇付きのボルト45を挿通させその先端部分にナット(図示略)を螺着させることで、左右1対のボルト45が連結部材41の側壁部41aに前後方向向きに固着されている。
【0036】
そして、これら左右1対のボルト45を、クロスメンバー分割体29の側壁部29aの左右1対の係合孔43に夫々係合締結させ、左右1対のクロスメンバー分割体29が、前後方向荷重及び上下方向荷重を支持可能に且つ左右に伸長可能に連結されている。車両非衝突時には、連結部材41の複数のボルト45が、左右1対のクロスメンバー分割体29の複数の係合孔43の外端部に係合し、車両衝突時に、1対のサイドフレーム2が外側へ変形すると、前記複数のボルト45が複数の係合孔43の内端部に係合する。連結部材41の上壁部40bは左右1対のクロスメンバー分割体29の上壁部29bに、複数の溶接箇所49でスポット溶接されている。
【0037】
前記車体構造の作用・効果について説明する。非衝突時には、サイドフレーム2に前後方向に所定荷重が入力されないため、第2クロスメンバー4の左右1対のクロスメンバー分割体20が分離機構30を介して連結され、第4クロスメンバー6の左右1対のクロスメンバー分割体29が伸長機構40を介して連結されているため、第2,第4クロスメンバー4,6及びその他のクロスメンバー等により左右1対のサイドフレーム2が強固に連結され、高い車体剛性が確保される。
【0038】
正面衝突やオフセット衝突等の衝突時に、サイドフレーム2に前後方向に所定荷重が入力されると、先ず、1対又は一方のサイドフレーム2の、第2クロスメンバー4の両端部付近の拡張部2aを含むサイドフレーム部分が変形する。このとき、分離機構30により、連結部材31の複数のボルト35が、少なくとも一方のクロスメンバー分割体20の複数の係合孔33から係合離脱し、第2クロスメンバー4の車幅方向中央部分が左右に分離するため、サイドフレーム2の変形が促進され衝突エネルギーが確実に吸収される。
【0039】
一方、衝撃力の大きな衝突時には、更に、1対又は一方のサイドフレーム2の後端部分が外側へ変形するが、このとき伸長機構40により、連結部材41の複数のボルト45が、左右1対のクロスメンバー分割体29の複数の係合孔43の外端部から内端部に相対移動し、左右1対のクロスメンバー分割体29は連結された状態で、第4クロスメンバー6の車幅方向中央部分が左右に所定ストローク伸長することにより、常に安定した車体の変形状態を得ることができる。
【0040】
従って、この車体構造によれば、分離機構30と伸長機構40を設けることで、非衝突時には、第1〜第5クロスメンバー3〜7等により左右1対のサイドフレーム2を強固に連結して、高い車体剛性を確保することができ、衝突時には、分離機構30により第2クロスメンバー4の車幅方向中央部分を確実に左右に分離させ、伸長機構40により第4クロスメンバー6の車幅方向中央部分を確実に左右に所定ストローク伸長させることができるため、常に一定の車体の変形モードを得ることができ、車両の衝突性能を安定したものとすることができる。
【0041】
しかも、第2クロスメンバー4の両端部分に十分なスペースを確保し、サスペンション機構のトーションバー10の後端部分を連結することができ、更に、左右1対のサイドフレーム2の、サスペンション支持メンバー8と第2クロスメンバー4の間に拡張部2aを設けたので、衝突時に、第2クロスメンバー4の端部付近の拡張部2aを含むサイドフレーム部分を外側へ確実に変形させることができる。また、分離機構30と伸長機構40を、夫々連結部材31,41と複数のボルト35,45等からなる簡単に構成することができるため、製作コスト的にも非常に有利になる。
【0042】
分離機構30、伸長機構40において、連結部材30,31の上壁部30b,bを、左右1対のクロスメンバー分割体20,29の上壁部20b,29bにスポット溶接したので、左右1対のクロスメンバー分割体20,29の1対の内端部と連結部材31,41の一体性を確保できながら、衝突時にはスポット溶接部分の破断により、左右1対のクロスメンバー分割体20,29を分離又は伸長させることができ、また、クロスメンバー4,6の組付け時、クロスメンバー4,6の幅方向中央部の一体性を保ったまま、クロスメンバー4,6の両端部を1対のサイドフレーム2に固定でき、クロスメンバー4,6の組付け作業を簡単化することができる。
【0043】
第4クロスメンバー6に、燃料タンク19を支持させたので、衝突時、伸長機構40により第4クロスメンバー6の車幅方向中央部分が左右に所定ストローク伸長するが、第4クロスメンバー6は伸長機構40の連結部材41を介して連結された状態が保持されるため、燃料タンク19を落下させることなく、衝突時のフレームの変形を許容することができる。
【0044】
以下、前記実施形態の変形例について説明する。
1〕第2クロスメンバー4以外のクロスメンバーに、そのクロスメンバーの車幅方向中央部分を左右に分離する分離機構30を設けてもよい。
2〕第4クロスメンバー6以外のクロスメンバーに、そのクロスメンバーの車幅方向中央部分を左右に所定ストローク伸長する伸長機構40を設けてもよい。
【0045】
3〕本発明に係る車両の車体構造は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を付加して、前記実施形態の車体構造に限らず、種々の形式、サイズの車体構造に勿論適用することができる。
【0046】
【発明の効果】
請求項1の車両の車体構造によれば、サイドフレームに対して前後方向に所定荷重が入力された際、クロスメンバーの車幅方向中央部分にそのクロスメンバーを左右に分離させる分離機構を設けることで、構造を複雑化させることなく、非衝突時には、クロスメンバーにより左右1対のサイドフレームを強固に連結して、高い車体剛性を確保することができ、正面衝突やオフセット衝突等の衝突時には、分離機構によりクロスメンバーの車幅方向中央部分を確実に左右に分離させることができるため、一定した車体の変形モードを得ることができる。従って、車体の衝突性能を安定したものとすることができる。前記分離機構は、クロスメンバーの左右1対のクロスメンバー分割体の相対向する1対の内端部を、前後方向荷重及び上下方向荷重を支持可能に且つ車幅方向へ分離可能に連結する連結部材を備えたので、非衝突時に、連結部材を介して左右1対のクロスメンバー分割体を前後方向荷重及び上下方向荷重を支持可能に確実に連結し、衝突時に、左右1対のクロスメンバー分割体の1対の内端部と連結部材との連結解除により、クロスメンバーの車幅方向中央部分を確実に左右に分離することができる。
【0047】
請求項2の車両の車体構造によれば、前記クロスメンバーの両端部分に、サスペンション機構のサスペンション部材を夫々連結したので、クロスメンバーの両端部分にサスペンション部材を十分なスペースを確保し確実に連結することができる。
【0048】
請求項3の車両の車体構造によれば、前記異常な荷重により、クロスメンバーの端部付近のサイドフレーム部分を外側へ変形させる変形促進機構を設けたので、車両衝突時、クロスメンバーの端部付近のサイドフレーム部分を外側へ確実に変形させて、衝突エネルギー吸収性能を高めることができる。
【0049】
【0050】
請求項4の車両の車体構造によれば、前記連結部材の前後の側壁部に固着された前後方向向きの複数のボルトを、左右1対のクロスメンバー分割体の前後の側壁部に形成された左右に長い複数の切欠き状の係合孔に係合締結させたので、簡単な構造で、非衝突時に左右1対のクロスメンバー分割体を前後方向荷重及び上下方向荷重を支持可能に確実に連結し、衝突時に左右1対のクロスメンバー分割体を確実に左右に分離することができる。
【0051】
請求項5の車両の車体構造によれば、前記連結部材の上壁部を、前記左右1対のクロスメンバー分割体の上壁部にスポット溶接したので、左右1対のクロスメンバー分割体の1対の内端部と連結部材の一体性を確保できながら、衝突時にはスポット溶接部分の破断により、左右1対のクロスメンバー分割体を分離させることができ、また、クロスメンバーの組付け時、クロスメンバーの幅方向中央部の一体性を保ったまま、クロスメンバーの両端部を1対のサイドフレームに固定でき、クロスメンバーの組付け作業を簡単化することができる。
【0052】
請求項6の車両の車体構造によれば、サイドフレームに前後方向に所定荷重が入力された際、クロスメンバーの車幅方向中央部分にそのクロスメンバーを左右に所定ストローク伸長させる伸長機構を設けることで、構造を複雑化させることなく、非衝突時には、クロスメンバーにより左右1対のサイドフレームを強固に連結し、高い車体剛性を確保することができ、また、正面衝突やオフセット衝突等の衝突時には、クロスメンバーの車幅方向中央部分を左右に所定ストローク伸長させることができるため、一定の車体の変形モードを得ることができる。従って、車体の衝突性能を安定させたものにすることができる。
【0053】
請求項7の車両の車体構造によれば、クロスメンバーに、燃料タンクを支持させたので、衝突時、伸長機構によりクロスメンバーの車幅方向中央部分が左右に所定ストローク伸長するが、クロスメンバーが連結部材を介して連結した状態が保持されるため、クロスメンバーで燃料タンクを落下させることなく、衝突時のフレームの変形を許容することができる。
【0054】
請求項8の車両の車体構造によれば、前記伸長機構は、クロスメンバーの左右1対のクロスメンバー分割体の相対向する1対の内端部を、前後方向荷重及び上下方向荷重を支持可能に且つ車幅方向へ伸長可能に連結する連結部材を備えたので、車両非衝突時、連結部材を介して左右1対のクロスメンバー分割体を前後方向荷重及び上下方向荷重を支持可能に連結し、非衝突時に、連結部材を介して左右1対のクロスメンバー分割体を前後方向荷重及び上下方向荷重を支持可能に確実に連結し、衝突時、左右1対のクロスメンバー分割体を連結させた状態で、クロスメンバーの車幅方向中央部分を左右に伸長することができる。
【0055】
請求項9の車両の車体構造によれば、前記連結部材の前後の側壁部に固着された前後方向向きの複数のボルトを、左右1対のクロスメンバー分割体の前後の側壁部に形成された左右に長い複数の係合孔に係合締結させたので、簡単な構造で、非衝突時には、左右1対のクロスメンバー分割体を前後方向荷重及び上下方向荷重を支持可能に確実に連結し、衝突時には、左右1対のクロスメンバー分割体を連結させた状態で、クロスメンバーの左右方向中央部分を確実に左右に伸長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る車体フレームの平面図である。
【図2】前記車体フレームの第2クロスメンバーの平面図である。
【図3】第2クロスメンバーの正面図である。
【図4】第2クロスメンバーの要部平面図である。
【図5】第2クロスメンバーの要部正面図である。
【図6】第2クロスメンバーの要部斜視図である。
【図7】第4クロスメンバーの要部斜視図である。
【符号の説明】
1 車体フレーム
2 サイドフレーム
2a 拡張部
3〜7 第1〜第5クロスメンバー
8 サスペンション支持メンバー
10 トーションバー
20,29 クロスメンバー分割体
30 分離機構
31,41 連結部材
33,43 係合孔
35,45 ボルト
40 伸長機構
Claims (9)
- 車両の前後方向に延設された左右1対のサイドフレームと、これらサイドフレームに架着され車両の車幅方向に延設されたクロスメンバーとを含む車両の車体構造において、
前記サイドフレームに対して前後方向に所定荷重が入力された際、クロスメンバーの車幅方向中央部分にそのクロスメンバーを左右に分離させる分離機構を設け、
前記分離機構は、クロスメンバーの左右1対のクロスメンバー分割体の相対向する1対の内端部を、前後方向荷重及び上下方向荷重を支持可能に且つ車幅方向へ分離可能に連結する連結部材を備えたことを特徴とする車両の車体構造。 - 前記クロスメンバーの両端部分に、サスペンション機構のサスペンション部材を夫々連結したことを特徴とする請求項1に記載の車両の車体構造。
- 前記所定荷重により、クロスメンバーの端部付近のサイドフレーム部分を外側へ変形させる変形促進機構を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の車体構造。
- 前記連結部材の前後の側壁部に固着された前後方向向きの複数のボルトを、左右1対のクロスメンバー分割体の前後の側壁部に形成された左右に長い複数の切欠き状の係合孔に係合締結させたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の車両の車体構造。
- 前記連結部材の上壁部は、前記左右1対のクロスメンバー分割体の上壁部にスポット溶接されたことを特徴とする請求項4に記載の車両の車体構造。
- 車両の前後方向に延設された左右1対のサイドフレームと、これらサイドフレームに架着され車両の車幅方向に延設されたクロスメンバーとを含む車両の車体構造において、前記サイドフレームに対して前後方向に所定荷重が入力された際、クロスメンバーの車幅方向中央部分にそのクロスメンバーを左右に所定ストローク伸長させる伸長機構を設けたことを特徴とする車両の車体構造。
- 前記クロスメンバーに、燃料タンクが支持されたことを特徴とする請求項6に記載の車両の車体構造。
- 前記伸長機構は、クロスメンバーの左右1対のクロスメンバー分割体の相対向する1対の内端部を、前後方向荷重及び上下方向荷重を支持可能に且つ車幅方向へ伸長可能に連結する連結部材を備えたことを特徴とする請求項6又は7に記載の車両の車体構造。
- 前記連結部材の前後の側壁部に固着された前後方向向きの複数のボルトを、左右1対のクロスメンバー分割体の前後の側壁部に形成された左右に長い複数の係合孔に係合締結させたことを特徴とする請求項8に記載の車両の車体構造。
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