JP4030058B2 - 車両用空調装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジン等でなる第1駆動源で駆動される第1圧縮機と、モータ等でなる第2駆動源で駆動される第2圧縮機とを備えた車両用空調装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用空調装置は、車両の走行用エンジンを動力源とするエンジン駆動圧縮機や、電気自動車等に搭載されている電動圧縮機や、アイドリングストップ時に使用されるモータ駆動圧縮機を使用したものが知られている。
近年、エンジンの低燃費化が急速に進んでおり、それに伴ないアイドリングストップ機能を備えた車両が増加傾向にある。アイドリングストップ車両では、空調装置の使用中に車両を停止させると、エンジンのアイドリングストップが行われて、エンジンの停止に伴なって圧縮機が作動できなくなる。その結果、外気温度が高い場合や、陽射しが強い場合には、車室内の温度が上昇して乗員が不快に感じることがある。また、外気温度が低い場合には、除湿能力が不足して乗員が呼吸する息によって湿度が上昇し、窓ガラスが曇るという不都合が発生する。
【0003】
そこで、車室内の温度に応じて一時的にエンジンを駆動させることによって圧縮機を作動させて、車室内の温度を適温に調整した後に再びアイドリングストップをさせる空調装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
また、所謂マイルドハイブリッド車両では、エンジンの回転速度がゼロになってから、電動モータで圧縮機を駆動させる空調装置が使用されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000−179374号公報(第4〜5頁、図3および図5)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの従来の空調装置では、圧縮機が起動しても直ぐに空調装置が所要の能力を発揮しない。その結果、空調装置が所要の能力を発揮するまでの間は、送風機のみによって空調を行うことになる。したがって、この間には、温度や湿度が上昇するため、車室内の不快感が解消されないという問題点があった。
【0006】
本発明の課題は、空調装置の冷房能力を低下させることなく、省動力化ができ、車室内を快適に維持することができる機能を備えた車両用空調装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車両用空調装置は、エンジンで駆動され、該エンジンと電磁クラッチを介して接続される第1圧縮機と、モータで駆動される第2圧縮機とを有し、前記エンジンの自動停止および自動再始動を行う車両に備えられる空調装置であって、前記空調装置は、前記エンジンの作動中に、前記第1圧縮機を停止させる要求があるか監視をして、前記第1圧縮機の停止要求を受けた後、前記第2圧縮機のみで駆動するときの目標回転速度が所定値を超える場合は、前記第1圧縮機の停止を禁止して前記第2圧縮機と併せて作動させ、前記目標回転速度が前記所定値以下となるときは、前記第2圧縮機の出力を予め上昇させ、前記第1圧縮機の作動を所定時間継続してから停止させることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、車両用空調装置は、例えば、エンジンによって駆動される第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)を停止する前に、モータによって駆動される第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)の出力を予め上昇させることによって、車室内を冷却させるための冷房能力を高めておくことができる。このため、エンジンをアイドリングストップして第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)が停止された場合であっても、吐出される空調装置の冷気の温度を維持させて、車室内を快適な温度に保つことができる。
また、車両用空調装置は、例えば、アイドリングストップ機能を備えた車両において、第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)が停止する前に、第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)の出力を予め上昇させることにより、アイドリングストップ中に第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)のみによる作動で空調装置の冷房能力が低下して、車室内の気温が上昇することを防止できる。これにより、車室内が、快適な温度に維持される。
【0010】
また、請求項1に記載の発明によれば、車両用空調装置は、例えば、第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)を停止させる前に、第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)の出力が所定値以上になる場合、第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)を作動させて第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)の出力を補助し、2つの圧縮機で空調装置を作動させることができる。このため、第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)は、停止する前に、第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)を補助して冷房能力の余力を与えてから停止するので、第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)が停止したときに第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)の出力の低下によって、車室内の温度が上昇して暑くなることを防止できる。また、冷え過ぎも防止できる。これにより、車室内が、快適な温度に維持される。
【0012】
また、請求項1に記載の発明によれば、車両用空調装置は、第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)を停止させる際に、第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)の出力が所定値以上である場合、第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)を所定時間作動させて所定時間後に停止させることにより、その間第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)の出力を補助することができる。このため、第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)は、停止する前に、第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)を所定時間補助して冷房能力の余力を与えてから停止するので、第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)の出力の低下によって、車室内の温度が上昇して暑くなることを防止できる。これにより、車室内が、快適な温度に維持される。
【0013】
請求項2に記載の車両用空調装置は、第1駆動源で駆動される第1圧縮機と、第2駆動源で駆動される第2圧縮機とを備えた空調装置であって、前記空調装置は、前記第2圧縮機が作動中に、この第2圧縮機の負荷が所定値以上になったときに、前記第1圧縮機を作動させることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、車両用空調装置は、モータ駆動圧縮機(第2圧縮機)が作動中に、この第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)の負荷が所定値以上になったときに、第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)を作動させることにより、第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)が第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)の出力を補助することができる。このため、車室内の温度が上昇することを防止して、車室内を快適な温度に維持することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る車両用空調装置の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を示す概略図である。
図1に示すように、車両の空気調和装置(以下、単に「空調装置」という)1は、車両の駆動源であるエンジン2と、モータ駆動圧縮機7用のモータ3とを駆動源として作動するものである。
空調装置1は、例えば、アイドリングストップ機能を備えた車両に搭載される装置として最適なものであるが、アイドリングストップ機能を備えた車両に搭載しても、アイドリングストップ機能を備えていない車両に搭載してもどちらでもよい。
以下、アイドリングストップ機能を搭載した車両における空調装置1を例にして本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1に示すように、空調装置1は、エンジン2、およびモータ・ジェネレータGと、モータ駆動圧縮機7用のモータ3と、空調装置1の冷凍サイクル装置Aを作動させるためのエンジン駆動圧縮機6およびモータ駆動圧縮機7からなるハイブリッド型コンプレッサ5と、凝縮器9と、受液器10と、膨張弁11と、蒸発器空気温度センサ12bを備えた蒸発器12と、制御装置4とから構成されている。
なお、エンジン2は、特許請求の範囲の「第1駆動源」に相当し、モータ3は「第2駆動源」に相当し、エンジン駆動圧縮機6は「第1圧縮機」に相当し、モータ駆動圧縮機7は「第2圧縮機」にそれぞれ相当する。
【0017】
次に、図1を参照して各機器を説明する。
図1に示すように、エンジン2は、例えば、ガソリン等を燃料とする車両走行用の内燃機関であり、車輪Wを回転させるための役割と、モータ・ジェネレータGを回転させて蓄電装置17に電気エネルギを蓄積させるための役割と、エンジン駆動圧縮機6を駆動させるための役割を備えている。エンジン2とモータ・ジェネレータGとは、回転軸21で直結されることによって、ハイブリッド型を構成している。エンジン2の他端側には、エンジン駆動圧縮機6を連動させるための伝達装置8が設置されている。エンジン2の回転は、変速機Tを介して車輪Wに伝達される。
【0018】
その伝達装置8は、エンジン2に設置されたプーリ82と、エンジン駆動圧縮機6に設置されたプーリ85とにベルト83を巻き掛けてなるベルト伝達機構からなる。伝達装置8は、例えば、エンジン2の他端側に配置されてこのエンジン2によって回転する回転軸81と、この回転軸81の先端に設置されたプーリ82と、エンジン駆動圧縮機6を駆動させるためのプーリ85と、プーリ82とプーリ85とを連動させるためのベルト83と、エンジン駆動圧縮機6に設置された駆動軸84と、この駆動軸84に設置された電磁クラッチ86とから構成されている。
【0019】
モータ・ジェネレータGは、エンジン2を始動させるためのスタータモータの役割と、エンジン2の回転によって発電する機能とを備えている。そのモータ・ジェネレータGは、バッテリ18を充電し、各電気機器に電力を供給する蓄電装置17に電気的に接続されている。
【0020】
モータ3は、制御装置4、エアコンスイッチ15およびイグニッションスイッチ19を介してバッテリ18に電気的に接続されて、このバッテリ18によって回転して、モータ駆動圧縮機7を駆動するための動力源である。そのモータ3の回転は、中間部に電磁クラッチ32を介在した回転軸31によってモータ駆動圧縮機7に断続的に伝達できるように構成されている。
【0021】
冷凍サイクル装置Aは、空調装置1における冷凍サイクルを形成するものである。その冷凍サイクル装置Aは、ハイブリッド型コンプレッサ5と、凝縮器9と、受液器10と、膨張弁11と、蒸発器12とを主要部として構成され、ハイブリッド型コンプレッサ5を上流側、蒸発器12を下流側として、これらを順次、接続して構成されている。冷凍サイクルは、蒸発、圧縮、凝縮、膨張からなる冷媒のサイクルであり、蒸発は蒸発器12で行われ、圧縮はハイブリッド型コンプレッサ5で行われ、凝縮は凝縮器9で行われ、膨張は膨張弁11で行われる。
【0022】
ハイブリッド型コンプレッサ5は、フロン(HFC134a)または二酸化炭素(CO2)等からなる冷媒を圧縮する機器である。ハイブリッド型コンプレッサ5は、圧縮機の省動力のために、エンジン2によって駆動されるエンジン駆動方式のエンジン駆動圧縮機6と、モータ3によって駆動される電動式のモータ駆動圧縮機7との2つの圧縮機から構成されている。ハイブリッド型コンプレッサ5は、この2種類の圧縮機によって構成されていることにより、省動力と車室内の環境の快適性とを適宜に図るように作動する。このハイブリッド型コンプレッサ5で圧縮された冷媒は、配管を介して凝縮器9に圧送される。
なお、ハイブリッド型コンプレッサ5は、エンジン駆動圧縮機6とモータ駆動圧縮機7とを一体にしたものでも、別体にしたものでもどちらであってもよい。
【0023】
エンジン駆動圧縮機6は、例えば、エンジン2の回転軸81の回転を伝達装置8によって伝達されることで駆動する比較的容量の小さい圧縮機からなる。エンジン駆動圧縮機6に設置された駆動軸84の中間部位には、電磁クラッチ86が設置されて、エンジン2の回転が断続的に伝達されるように構成されている。
【0024】
モータ駆動圧縮機7は、電磁クラッチ32を介して回転軸31によってモータ3に接続され、エンジン駆動圧縮機6の補助のためのモータ3によって回転する電動式圧縮機である。モータ駆動圧縮機7は、エンジン2によって駆動されるエンジン駆動圧縮機6と一緒に作動するか、エンジン2をアイドリングストップさせているときに作動するか、若しくはそのエンジン駆動圧縮機6の単独作動に係わらず、作動する。このモータ駆動圧縮機7は、温度設定部16で設定された設定温度と温度、湿度、日射等の環境要素とに基づいて目標温度算出部41bで算出された目標温度と、蒸発器空気温度センサ12bで検出した空気の検出温度との差によって、モータ駆動制御部41aで制御されて駆動する。
このように、モータ駆動圧縮機7は、蒸発器12によって冷却された空気が流れるその蒸発器12の下流側(以下、単に「蒸発器12の出側」という)の空気温度と目標温度によって、その回転が制御されるが、エンジン2の作動時には、その目標温度が2〜3℃程度高く持ち替えられる。
【0025】
凝縮器9は、ハイブリッド型コンプレッサ5で高圧高温になった冷媒を冷却して、熱交換によって液化する機器である。この凝縮器9は、配管によって、受液器10に接続されている。
【0026】
受液器10は、凝縮器9によって液化された冷媒を一時貯えるボンベに相当する機器である。受液器10は、ドライヤ(図示せず)等を介して膨張弁11に接続され、そのドライヤ(図示せず)で冷媒中の水分が除去して膨張弁11に冷媒を供給する。
【0027】
膨張弁11は、蒸発器12の出入り口に取り付けられ、高温高圧の液化冷媒がここを通過すると液体から霧状の気体に変化して噴射する機器である。この膨張弁11は、配管によって蒸発器12に接続されて、電気的に制御装置4に接続されている。膨張弁11には、絞り弁(図示せず)が内設されており、蒸発器12に設置された蒸発器空気温度センサ12bの検出値によって絞り弁を制御装置4がコントロールして蒸発器12に噴射する冷媒の流量(冷媒能力)を調節している。
【0028】
蒸発器12は、冷媒を気化することにより車室内の空気の熱を奪って冷却し、車室内の空気を冷却する熱交換器であり、空調ケース14に内設されている。その蒸発器12には、ファン12aが設置されており、このファン12aによって、冷却された空気を車室内に送り、直射日光や外気温度によって高温になった車室内の空気を吸引して循環が行われる。蒸発器12内の冷媒は、バルブ類(図示せず)を介して圧力調整された気体冷媒を元のハイブリッド型コンプレッサ5に戻るように配管によって接続されている。
【0029】
ファン12aは、蒸発器12の出側等に設置されて、車室内の空気を吸引して蒸発器12に当て、その蒸発器12で冷却された空気を各種ダクト(図示せず)を介してデフロスタ吹出口(図示せず)やフェイス吹出口(図示せず)やフット吹出口(図示せず)から車室内に戻して車室内の空気を循環させるためのものである。ファン12aは、制御装置4のファン制御部41cに電気的に接続されている。ファン12aは、このファン制御部41cによって回転が制御されて、送風量がコントロールされている。
【0030】
蒸発器空気温度センサ12bは、蒸発器12で冷媒を気化することによって冷却された空気の温度を検出する温度検出器であり、蒸発器12内を流れる空気の出側の空調ケース14内に設置されている。
【0031】
温度設定部16は、乗員が車室内の気温を設定するものであり、例えば、インストルメントパネルの中央部に設置された制御器(コントロールパネル)からなる。この温度設定部16は、制御装置4に電気的に接続されている。
【0032】
制御装置4は、電気・電子回路と所定のプログラムとからなるECUであり、空調制御部41やエンジン2をコントロールするエンジン制御部42や蓄電装置17への充放電の切り替えを行う制御部やその他機器の制御部(図示せず)を備えている。
【0033】
次に、図1および図2を参照して空調制御部41を説明する。
図2は、図1の空調装置に使用する制御装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、空調制御部41は、エンジン駆動圧縮機6、モータ駆動圧縮機7、膨張弁11およびファン12aの作動が制御されるように構成されている。その空調制御部41は、モータ駆動制御部41aと、目標温度算出部41bと、ファン制御部41cと、膨張弁制御部41dとから構成されている。
【0034】
そして、空調制御部41は、次のような機能を備えている。
まず、空調制御部41は、蒸発器空気温度センサ12bで検出した検出温度と、目標温度算出部41bで算出した目標温度とを比較して、検出温度が目標温度より低いときに、モータ駆動圧縮機7を駆動するモータ3の出力を低減させる機能を備えている。
空調装置1は、エンジン2によって駆動されるエンジン駆動圧縮機6を停止する前に、モータ3によって駆動されるモータ駆動圧縮機7の出力を予め上昇させて、モータ駆動圧縮機7による冷房能力を高めておく機能を備えている。
空調装置1は、エンジン駆動圧縮機6を停止させる際に、モータ駆動圧縮機7の出力が所定値以下である場合、エンジン駆動圧縮機6を作動させてモータ駆動圧縮機7の出力を補助させる機能を備えている。
また、空調装置1は、エンジン駆動圧縮機6を停止させる際に、モータ駆動圧縮機7の出力が所定値以上である場合、エンジン駆動圧縮機6を所定時間後に停止させて、エンジン駆動圧縮機6を所定時間作動しモータ駆動圧縮機7の出力を補助させる機能を備えている。
さらに、空調装置1は、モータ駆動圧縮機7が作動中に、このモータ駆動圧縮機7の負荷が所定値以上になったときに、エンジン駆動圧縮機6を作動させて、このエンジン駆動圧縮機6がモータ駆動圧縮機7の出力を補助させる機能を備えている。
【0035】
図2に示すように、空調制御部41には、車速信号を出力する車速センサ22と、アクセル開度検知信号を出力するアクセル開度検知センサ23と、エンジン2の回転速度を検出してエンジン回転速度信号Neを出力するエンジン回転速度センサ(ENGNeセンサ24)と、車室内の温度を検出して温度検出信号を出力する車室温度センサ25と、車室外の温度を検出して外気温度検出信号を出力する外気温度センサ26と、太陽の日射量を検出して日射量検出信号を出力する日射量センサ27と、蒸発器12で冷却された空気の温度を検出して蒸発器空気温度検出信号を出力する蒸発器空気温度センサ12bと、目標温度の基準となる乗員によって設定された車室内の設定温度の目標温度設定信号を出力する温度設定部16と、エンジン駆動圧縮機負荷信号を出力するエンジン駆動圧縮機6と、モータ駆動圧縮機負荷信号を出力するモータ駆動圧縮機7と、絞り弁開度信号を出力する膨張弁11とが接続されている。
なお、エンジン駆動圧縮機負荷信号およびモータ駆動圧縮機負荷信号は、例えば、回転速度の指令値である。
【0036】
図1に示すように、空調制御部41は、冷凍サイクル装置Aを作動させるにあたり、エンジン2のみが駆動している場合には、エンジン駆動圧縮機6を作動させる命令信号が出力されるように構成されている。このエンジン駆動圧縮機6の駆動命令信号によって電磁クラッチ86が繋がれてエンジン駆動圧縮機6が、作動されるように構成されている。
また、空調制御部41は、エンジン2が自動停止中(アイドリングストップ中)には、モータ駆動圧縮機7の駆動命令信号を出力して、モータ駆動圧縮機7が作動されるように構成されている。
【0037】
空調制御部41は、エンジン2がアイドリングストップする前に、エンジン2でエンジン駆動圧縮機6を駆動させるとともに、モータ駆動圧縮機7の駆動命令信号を出力することによって、モータ駆動圧縮機7が作動されるように構成されている。
そして、空調制御部41は、モータ駆動圧縮機7を作動させる時期を、車速検出信号、アクセル回動検知信号およびエンジン回転速度信号Neによって演算して予測する機能を備えている。
また、空調制御部41は、エンジン2がアイドリングストップした際に、モータ駆動圧縮機7の負荷状況によって、エンジン駆動圧縮機6の停止および駆動命令信号が出力されるように構成されている。このエンジン駆動圧縮機6の停止命令信号で電磁クラッチ86が切断することによって、エンジン駆動圧縮機6は停止し、モータ駆動圧縮機7のみが作動されるように構成されている。
そして、エンジン2が自動再始動するにあたって、空調制御部41は、モータ・ジェネレータGによってエンジン2が駆動すると同時に、エンジン駆動圧縮機6の駆動命令信号を出力して、エンジン駆動圧縮機6が作動されるように構成されている。そして、自動停止再始動制御部によってモータ・ジェネレータGによりエンジン2が駆動すると、空調制御部41は、エンジン駆動圧縮機6とモータ駆動圧縮機7とが一緒に作動されるように構成されている。
【0038】
モータ駆動制御部41aは、車室内の気温が目標温度算出部41bで算出した目標温度になるように、モータ3を回転させて、モータ駆動圧縮機7をコントロールする制御器である。
【0039】
目標温度算出部41bは、予め設定した外気温度や日射量等の所定の外乱条件により、温度設定部16で乗員が設定した設定温度に車室内の気温が等しくなるように蒸発器12の出側の温度を算出するものである。この目標温度算出部41bで算出される値は、外気温度や日射量等によって適切な値に変更される。
【0040】
ファン制御部41cは、ファン12aを作動させることによって蒸発器12の冷気を車室内に循環させるとともに、蒸発器空気温度センサ12bで温度を検出して、車室内の空気の温度が、目標温度算出部41bで算出された温度になるようにファン12aの回転速度をコントロールする制御器である。なお、ファン12aは、手動的な操作によってON・OFFするようにしてもよい。
【0041】
次に、図1および図2を参照してエンジン制御部42を説明する。
図1に示すように、エンジン制御部42は、エンジン2のアイドリングストップや自動再始動によるアイドリングストップの可否の判断を行う自動停止再始動制御部42aと、この自動停止再始動制御部42aからの信号に基づいてエンジン2への燃料の供給を停止してアイドリングストップを行うための燃料供給停止部42bと、アイドリングストップ中のエンジン2を再始動させるための再始動駆動部42cとから構成されている。
【0042】
自動停止再始動制御部42aは、燃料供給停止部42bと再始動駆動部42cとにエンジン2への燃料の供給や供給の停止の信号を発信してアイドリングストップを行うとともに、バッテリ18への充放電の切り替えを主に行うものである。
【0043】
図2に示すように、自動停止再始動制御部42aは、車速センサ22と、アクセル開度検知センサ23と、バッテリ18(図1参照)に残存する電力量を検出するとともに、その電力量に基づいてバッテリ残容量信号SOC(StatusOf Charge)を出力するバッテリ残容量センサ28とに電気的に接続されている。また、自動停止再始動制御部42aには、燃料供給停止部42bと、再始動駆動部42cとが電気的に接続されている。
【0044】
この自動停止再始動制御部42aは、後記する所定の条件を満たしていることを前提に、アクセル開度検知センサ23からのアクセルを閉じたアクセル開度検知信号を受けてから、予め設定されたタイマ時間経過後に、燃料供給停止部42bに向けて停止許可フラグF1が出力されるように構成されている。そして、停止許可フラグF1を受けた燃料供給停止部42bは、エンジン2(図1参照)への燃料供給を停止して、エンジン2(図1参照)を停止させる。また、自動停止再始動制御手段42aは、エンジン2(図1参照)が停止した際に、空調制御部41に向けてエンジン停止信号CSが出力されるように構成されている。
【0045】
前記した所定条件、すなわち、図1に示すエンジン2のアイドリングストップの条件は、例えば、「車両が予め設定された基準速度以下の低車速になったこと」、「ブレーキスイッチがONになっていること」、「エンジン2の冷却水の温度が所定値以上であること」、「車両のシフトポジションがR(リバース)またはL(ロウ)以外の所定のポジションになっていること」および「バッテリ残容量信号SOCに基づいて自動停止再始動制御部42aが判断した結果、バッテリ18の残存容量が所定値以上であること」からなる要素を少なくとも備えるとともに、これらの要素がすべて満たされていることを要する。
【0046】
ここで、「ブレーキスイッチがON」とは、ブレーキが掛けられている状態をいう。また、「エンジン2の冷却水の温度が所定値以上」とは、水温が低いとエンジン2を再始動できないこともあるため、冷却水がエンジン2を再始動できる温度にあるかをいう。「R(リバース)またはL(ロウ)以外」とは、シフトポジションがそれ以外のD(ドライブ)レンジ等であることを意味する。「バッテリ残存容量所定値以上」とは、バッテリ残容量センサ28で検出したバッテリ18の残容量が所定値、例えばフル充電時の25%以上であることを意味する。
【0047】
ただし、次の条件が満たされる場合、自動停止再始動制御部42aは、停止許可フラグF1を出力せず、エンジン2は停止しない。この条件、すなわち、エンジン2のアイドリングストップの禁止条件は、例えば「モータ駆動圧縮機7用のモータ3が故障していること」、「バッテリ18の残存容量が例えば前記所定値未満であること」、「エンジン2の冷却水の温度が所定値未満であること」等が挙げられ、エンジン2のアイドリングストップの禁止条件は、これらの要素のうち少なくとも一つが満たされればよい。なお、前記した「モータ3の故障」としては、例えば、モータ3に対する過負荷、過電流、過電圧、電圧低下、コンタクトの溶着等が挙げられる。
【0048】
また、この自動停止再始動制御部42aは、アクセルが踏み込まれて作動するルーチンによってモータ・ジェネレータGを駆動させると同時に、再始動駆動部42cに向けて再始動許可フラグF2(図2参照)が出力されるように構成されている。そして、再始動許可フラグF2(図2参照)を受けた再始動駆動部42cは、エンジン2に対する燃料供給および燃料点火を行い、エンジン2が再始動されるように構成されている。
【0049】
このような構成でなる本発明の実施の形態に係る車両用空調装置は、車室内の温度が、制御装置4によって、エンジン駆動圧縮機6とモータ駆動圧縮機7とをコントロールすることにより、エンジン駆動圧縮機6とモータ駆動圧縮機7とが互いに負担を軽減し合って温度設定部16で設定した所定温度に維持されるように調整される。
【0050】
次に、図3〜図6を参照しながら、実施の形態における空調装置1の動作を説明する。
図3は、本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を示す図で、エンジン駆動圧縮機を自動停止させるときの許可制御のフローチャートである。
まず、図3のフローチャートを主に、各図を参照してエンジン駆動圧縮機6を自動停止させるときの許可制御を説明する。
【0051】
まず、図1に示すように、イグニッションスッチ19を回動操作してエンジン2を始動する。すると、各機関や機器に設置した各センサがONしてその情報の読み込みが自動的に行われる。次に、エアコンスイッチ15をONして空調装置1を作動する。エアコンスイッチ15がONすると、ハイブリッド型コンプレッサ5のエンジン駆動圧縮機6とモータ駆動圧縮機7との2つの圧縮機が作動する。ハイブリッド型コンプレッサ5は、冷媒を圧縮して加圧することにより、冷凍サイクル装置Aが動き出し、冷凍サイクルの蒸発、圧縮、凝縮、膨張が行われる。エンジン2は、空調装置1が作動すると、エンジン駆動圧縮機6が駆動される分だけエンジン2の出力を使うことになるので、パワーダウンになる。しかしながら、ハイブリッド型コンプレッサ5をこのエンジン駆動圧縮機6とモータ駆動圧縮機7とで駆動することにより、エンジン駆動圧縮機6のパワーダウンを防止する。
【0052】
そして、ステップS1では、燃料供給停止部42bが、図2に示すように、空調制御部41、車速センサ22、アクセル開度検知センサ23等からエンジン2(図1参照)の負荷低減のために、エンジン駆動圧縮機6を停止させる要求があるか常に監視する。
「エンジン駆動圧縮機OFF要求」がないとき(No)は、ステップS2に進み、エンジン駆動圧縮機6を停止させるための許可をせず、運転を続行させる。そして、「エンジン駆動圧縮機OFF要求」があったとき(Yes)は、ステップS3に進む。
【0053】
ステップS3では、現在のモータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NEC)と、エンジン駆動圧縮機6が停止したときの負荷を考慮したモータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NECPMT)とを比較して、目標回転速度(NEC)が目標回転速度(NECPMT)未満かを判断する。
そして、「NEC<NECPMT」でないとき(No)は、つまり、現在のモータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NEC)が、エンジン駆動圧縮機6を停止したときのモータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NECPMT)以上のときは、ステップS2に進み、モータ駆動圧縮機7に負担がかかっていると判断して、エンジン駆動圧縮機6を停止させるための許可をしない。これにより、空調装置1の冷房能力は、エンジン駆動圧縮機6がモータ駆動圧縮機7を補助して低下することが防止される。
一方、「NEC<NECPMT」であるとき(Yes)は、つまり、現在のモータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NEC)がエンジン駆動圧縮機6を停止したときのモータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NECPMT)未満のときは、ステップS4に進む。
【0054】
ステップS4では、現在のモータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NEC)に所定の加算回転速度(ADNEC)を加算した回転速度をエンジン駆動圧縮機6が停止したときのモータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NECPMT)とする。
【0055】
次に、ステップS5に進み、そのモータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NECPMT)と所定値(NMAX)とを比較し、目標回転速度(NECPMT)が、所定値(NMAX)以下であるかを判断する。
そして、「NECPMT≦NMAX」でないとき(No)は、つまり、モータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NECPMT)が、所定値(NMAX)を超えるときは、ステップS2に進み、モータ駆動圧縮機7がフル回転して冷房しているとみなして、モータ駆動圧縮機7の負担をエンジン駆動圧縮機6で補助するために、エンジン駆動圧縮機6を停止させるための許可をしない。
一方、「NECPMT≦NMAX」であるとき(Yes)は、モータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NECPMT)が、予め設定した所定値(NMAX)以下のときは、ステップS6に進み、タイマを所定時間(TMADNEC)にセットする。
なお、所定値(NMAX)は、特許請求の範囲の「第2圧縮機の所定値」に相当する。
【0056】
次に、ステップS7に進み、タイマを所定時間(TMADNEC)作動させる。このタイマが作動している間、モータ駆動圧縮機7は、作動し続けている。
【0057】
次に、ステップS8に進み、そのタイマ(図示せず)が0になって、所定時間(TMADNEC)経過したかを判断する。
そして、「TMADNEC=0」にならないとき(No)、つまり、所定時間(TMADNEC)が経過しないときは、ステップS2に進み、エンジン駆動圧縮機6を停止させるための許可をせず、運転を続行させる。
一方、「TMADNEC=0」になったとき(Yes)は、所定時間(TMADNEC)が経過したので、ステップS9に進む。
【0058】
ステップS9では、エンジン駆動圧縮機6の停止を許可され、空調装置1はモータ駆動圧縮機7のみによって作動される。このため、駆動中のエンジン2は、エンジン駆動圧縮機6が停止することによって、エンジン駆動圧縮機6による負担が解除される。そして、前記タイマ(図示せず)によって、エンジン駆動圧縮機6を停止させる前に、エンジン駆動圧縮機6を所定時間(TMADNEC)作動させてモータ駆動圧縮機7の負担を軽減させることにより、エンジン駆動圧縮機6が停止した後の空調装置1の冷房能力を維持させることができる。
また、前記モータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NECPMT)が、所定値(NMAX)以上になったときは、モータ駆動圧縮機7の負荷が上昇したとみなし、エンジン駆動圧縮機6を停止させず、作動させることによってモータ駆動圧縮機7を補助する。これにより、車室内の温度が上昇することを防止することができる。
なお、前記タイマが0になる所定時間(TMADNEC)経過後は、特許請求の範囲の「所定時間後」に相当する。
【0059】
さらに、図4のタイムチャートを主に、各図を参照してエンジン駆動圧縮機6を自動停止させるときの許可制御を説明する。
図4は、本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を示す図で、(a)はエンジンの作動状況を示すタイムチャートであり、(b)はエンジン駆動圧縮機の作動状況を示すタイムチャートであり、(c)はタイマの作動状況を示すタイムチャートであり、(d)はモータ駆動圧縮機の作動状況を示すタイムチャートである。
【0060】
図4(a)に示すように、エンジン2は、アイドリングストップがなく、駆動し続けている。
図4(b)に示すように、エンジン駆動圧縮機6は、作動中にエンジン2の負荷低減のために、エンジン駆動圧縮機6を停止させるためのOFF要求があるかが監視されている(図3のステップS1参照)。そして、エンジン駆動圧縮機6は、エンジン駆動圧縮機6のOFF要求があっても、図3のステップS9の停止許可があるまで作動し続けてから停止する。エンジン駆動圧縮機6は、停止中にON要求があるかが監視されている。そして、ON要求があると、エンジン駆動圧縮機6が再始動する。
【0061】
図4(c)に示すように、タイマは、普段OFFしている。タイマは、モータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NECPMT)が、予め設定した所定値(NMAX)以下になったときに、図3に示すステップS6の所定時間(TMADNEC)がセットされる。このタイマが作動している間は、OFF要求の出ているエンジン駆動圧縮機6を作動し続けて、モータ駆動圧縮機7に冷房能力の余力が与えられる。そのタイマが0になって、所定時間(TMADNEC)が経過すると(図3のステップS8)、図3のステップS9のエンジン駆動圧縮機6の停止が許可され、空調装置1はモータ駆動圧縮機7のみによって作動される。
このように、空調装置1は、タイマによって、エンジン駆動圧縮機6を停止させる前に、エンジン駆動圧縮機6を所定時間(TMADNEC)作動させてモータ駆動圧縮機7の負担を軽減させて冷房能力を高めておくことにより、エンジン駆動圧縮機6が停止した後の冷房能力を維持させることができる。
【0062】
図4(d)に示すように、モータ駆動圧縮機7は、空調装置1が作動しているとき、常にONしている。モータ駆動圧縮機7は、目標回転速度(NEC)が監視され、図3のステップS3に示すように、その目標回転速度(NEC)と、エンジン駆動圧縮機6が停止したときの負荷を考慮したモータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NECPMT)とが比較される。
そして、エンジン駆動圧縮機6の停止(OFF)要求があると、図3のステップS5に示すように、モータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NECPMT)と所定値(NMAX)とが比較される。モータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NECPMT)が、予め設定した所定値(NMAX)以下のときは、タイマを所定時間(TMADNEC)にセットして、エンジン駆動圧縮機6の作動を続けさせる。
そのタイマが0になってOFFすると、エンジン駆動圧縮機6が停止してモータ駆動圧縮機7のみで空調装置1が作動されるとともに、モータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NECPMT)と所定値(NMAX)とが比較される。
そして、モータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NECPMT)が、所定値(NMAX)以上になったときは、モータ駆動圧縮機7の負荷が上昇したとみなし、エンジン駆動圧縮機6のON要求をして作動させ、モータ駆動圧縮機7を補助させる。
このように、エンジン駆動圧縮機6を適宜にON・OFFすることにより、エンジン駆動圧縮機6の駆動源であるエンジン2の負担を低減して燃費の向上を図るとともに、モータ駆動圧縮機7のみで作動して低下した冷房能力を補助することができる。
【0063】
次に、図5のフローチャートを主に、各図を参照してエンジン駆動圧縮機6を自動停止中にONさせるときの要求制御を説明する。
図5は、本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を示す図で、エンジン駆動圧縮機を自動停止させるときの許可制御のフローチャートである。
【0064】
まず、ステップS10では、図2に示すように、エンジン駆動圧縮機6が停止しているかを監視し、判断する。
そして、「エンジン駆動圧縮機OFF中」でないとき(No)は、つまり、エンジン駆動圧縮機6が作動しているときは、ステップS11に進んで、このエンジン駆動圧縮機6とモータ駆動圧縮機7をともに作動させる通常の制御を続ける。
一方、「エンジン駆動圧縮機OFF中」のとき(Yes)は、つまり、エンジン駆動圧縮機6が停止しモータ駆動圧縮機7のみが作動しているときは、ステップS12に進む。
【0065】
ステップS12では、現在のモータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NEC)と、予め設定した所定値(NMAX)とを比較して、目標回転速度(NEC)が所定値(NMAX)を超えたかについて判断する。
そして、「NEC>NMAX」であるとき(Yes)は、つまり、現在のモータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NEC)が所定値(NMAX)を超えたときは、ステップS13に進み、モータ駆動圧縮機7の負荷が高いとみなし、エンジン駆動圧縮機6をON要求して駆動させる。これにより、モータ駆動圧縮機7とエンジン駆動圧縮機6とが駆動されて、空調装置1の冷房能力を向上させて、車室内の温度が上昇することを防止することができる。
一方、「NEC>NMAX」でないとき(No)は、つまり、現在のモータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NEC)が所定値(NMAX)以下のときは、ステップS14に進む。
【0066】
ステップS14では、車速センサ22、アクセル開度検知センサ23およびENGNeセンサ24によって、エンジン2(図1参照)がアイドリングストップ中かを判断する。
「アイドリングストップ中」でないとき(No)は、つまり、エンジン2(図1参照)が作動しているときは、ステップS11に進み、エンジン駆動圧縮機6とモータ駆動圧縮機7とがともに作動している現在の制御、またはエンジン駆動圧縮機6が停止し、モータ駆動圧縮機7が作動している現在の制御を継続する。「アイドリングストップ中」のとき(Yes)は、つまり、エンジン2(図1参照)をアイドリングストップしたときは、モータ駆動圧縮機7を作動させることにより空調装置1の駆動を維持して、車室内を快適な温度に維持することができる。そして、エンジン2(図1参照)がアイドリングストップ中の場合は、ステップS15に進む。
【0067】
ステップS+15では、モータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NECIS)と予め設定した所定値(NMAXIS)とを比較して、目標回転速度(NECIS)が所定値(NMAXIS)を超えたかを判断する。
そして、「NECIS>NMAXIS」でないとき(No)は、つまり、モータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NECIS)が所定値(NMAXIS)以下のときは、ステップS11に進み、エンジン2は停止され、エンジン駆動圧縮機6は停止し、モータ駆動圧縮機7のみを作動させる現在のエンジン2の停止時の制御を継続する。
一方、「NECIS>NMAXIS」であるとき(Yes)は、つまり、モータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NECIS)が所定値(NMAXIS)を超えたときは、ステップS16に進む。
なお、所定値(NMAXIS)は特許請求の範囲の「第2圧縮機の所定値」に相当し、目標回転速度(NECIS)は特許請求の範囲の「負荷」に相当する。
【0068】
ステップS16では、モータ駆動圧縮機7の負荷が高いとみなし、エンジン2の再始動要求をしてエンジン2を始動させるとともに、エンジン駆動圧縮機6のON要求をしてエンジン駆動圧縮機6を作動させる。これにより、車室内の気温が上昇することを防止して、快適な温度の状態を維持させることができる。
【0069】
このように空調装置1は、アイドリングストップ中には、モータ駆動圧縮機7を作動させることにより車室内の温度を快適に維持するとともに、そのモータ駆動圧縮機7の負担が高くなったときには、エンジン駆動圧縮機6を作動させ、モータ駆動圧縮機7の負担を軽減させて空調装置1の冷房能力が低下することを防止し、車室内の気温を常に快適に維持することができる。
【0070】
さらに、図6のタイムチャートを主に、各図を参照してエンジン駆動圧縮機6を自動停止中にONさせるときの要求制御を説明する。
図6は、本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を示す図で、(a)はエンジンがアイドリングストップするときの状況を示すタイムチャートであり、(b)はエンジン駆動圧縮機を自動停止させるときの許可制御のタイムチャートであり、(c)はモータ駆動圧縮機の作動状況を示すタイムチャートである。
【0071】
図6(a)に示すように、エンジン2は、図5のステップS14に示すようにアイドリング中かが監視されている。そして、エンジン2は、アイドリングストップ信号を受けて停止し、図5のステップS16に示すように、ON要求が来るとエンジン駆動圧縮機6とともに再始動する。
【0072】
図6(b)に示すように、エンジン駆動圧縮機6は、空調装置1が作動しているときであってもモータ駆動圧縮機7の冷房能力に余力があるときと、アイドリングストップ中のときに停止している。エンジン駆動圧縮機6は、図5のステップS10に示すように、OFF中かが監視されている。エンジン駆動圧縮機6は、図5のステップS13に示すようにON要求があると、始動する。そして、エンジン駆動圧縮機6は、エンジン2がアイドリングストップすると自動的に停止する。エンジン駆動圧縮機6は、図5のステップS16のエンジン駆動圧縮機6のON要求により再度始動する。
【0073】
図6(c)に示すように、モータ駆動圧縮機7は、空調装置1が作動しているとき、常にONしている。そして、モータ駆動圧縮機7は、図5のステップS12に示すように、エンジン駆動圧縮機6が停止(OFF)し、モータ駆動圧縮機7が作動しているとき、現在のモータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NEC)が、予め設定した所定値(NMAX)を超えるかが監視されている。そして、このモータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NEC)が所定値(NMAX)を超えたときは、エンジン駆動圧縮機6のON要求が出されて、エンジン駆動圧縮機6が駆動してモータ駆動圧縮機7を補助する。
そして、アイドリングストップになったときは、モータ駆動圧縮機7のみで空調装置1の駆動を維持する。アイドリングストップ中、モータ駆動圧縮機7は、図5のステップS15に示すように、目標回転速度(NECIS)が予め設定した所定値(NMAXIS)を超えるかが監視されている。
モータ駆動圧縮機7の目標回転速度(NECIS)が所定値(NMAXIS)を超えたときは、図5のステップS16に示すように、モータ駆動圧縮機7の負荷が高いとみなして、エンジン2およびエンジン駆動圧縮機6のON要求をして、エンジン2およびエンジン駆動圧縮機6が作動される。
このように空調装置1は、アイドリングストップ中には、モータ駆動圧縮機7を作動させることにより車室内の温度を快適に維持するとともに、そのモータ駆動圧縮機7の負担が高くなったときには、エンジン2およびエンジン駆動圧縮機6を作動させることで、モータ駆動圧縮機7の負担を軽減させて空調装置1の冷房能力の低下が防止されて、車室内の気温が常に快適に維持される。
【0074】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、その技術思想の範囲内で種々の改造および変更が可能であり、本発明はこれら改造および変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0075】
例えば、空調装置1は、アイドリングストップ機能を備えていない車両においても、エンジン(第1駆動源)2で駆動されるエンジン駆動圧縮機(第1圧縮機)6と、モータ(第2駆動源)3で駆動されるモータ駆動圧縮機(第2圧縮機)7とを備えたものであれば適用することが可能である。そのような車両における空調装置1は、エンジン駆動圧縮機(第1圧縮機)6を停止させる前にモータ駆動圧縮機(第2圧縮機)7を作動させて空調装置1の冷房能力を向上させるとともに、モータ駆動圧縮機(第2圧縮機)7の回転速度が上がってきたときにエンジン(第1駆動源)2を始動させて、その2つの圧縮機6,7を互いに適宜に作動させることにより、車室内の温度を快適に維持することができるとともに、燃費の向上と排気ガスのクリーン化を図ることができる。そして、空調装置1は、その2つの圧縮機6,7の負担を互いに軽減し合うようにさせて空調装置1の冷房能力が低下することを防止して、車室内の気温を快適に維持することができる。
【0076】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項1に記載の車両用空調装置によれば、車両用空調装置は、例えば、エンジンによって駆動される第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)を停止する前に、モータによって駆動される第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)の出力を予め上昇させることによって、車室内を冷却させるための冷房能力を高めておくことができる。このため、エンジンをアイドリングストップして第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)が停止された場合であっても、吐出される空調装置の冷気の温度を維持させて、車室内を快適な温度に保つことができる。
また、車両用空調装置は、例えば、アイドリングストップ機能を備えた車両において、第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)が停止する前に、第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)の出力を予め上昇させることにより、アイドリングストップ中に第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)のみによる作動で空調装置の冷房能力が低下して、車室内の気温が上昇することを防止できる。これにより、車室内が、快適な温度に維持される。
【0077】
また、本発明の請求項1に記載の車両用空調装置によれば、車両用空調装置は、例えば、第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)を停止させる前に、第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)の出力が所定値以上になる場合、第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)を作動させて第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)の出力を補助し、2つの圧縮機で空調装置を作動させることができる。このため、第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)は、停止する前に、第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)を補助して冷房能力の余力を与えてから停止するので、第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)が停止したときに第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)の出力の低下によって、車室内の温度が上昇して暑くなることを防止できる。また、冷え過ぎも防止できる。これにより、車室内が、快適な温度に維持される。
【0078】
さらに、本発明の請求項1に記載の車両用空調装置によれば、車両用空調装置は、第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)を停止させる際に、第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)の出力が所定値以上である場合、第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)を所定時間作動させて所定時間後に停止させることにより、その間第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)の出力を補助することができる。このため、第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)は、停止する前に、第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)を所定時間補助して冷房能力の余力を与えてから停止するので、第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)の出力の低下によって、車室内の温度が上昇して暑くなることを防止できる。これにより、車室内が、快適な温度に維持される。
【0079】
本発明の請求項2に記載の車両用空調装置によれば、車両用空調装置は、モータ駆動圧縮機(第2圧縮機)が作動中に、この第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)の負荷が所定値以上になったときに、第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)を作動させることにより、第1圧縮機(エンジン駆動圧縮機)が第2圧縮機(モータ駆動圧縮機)の出力を補助することができる。このため、車室内の温度が上昇することを防止して、車室内を快適な温度に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を示す概略図である。
【図2】図1の空調装置に使用する制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を示す図で、エンジン駆動圧縮機を自動停止させるときの許可制御のフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を示す図で、(a)はエンジンの作動状況を示すタイムチャートであり、(b)はエンジン駆動圧縮機の作動状況を示すタイムチャートであり、(c)はタイマの作動状況を示すタイムチャートであり、(d)はモータ駆動圧縮機の作動状況を示すタイムチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を示す図で、エンジン駆動圧縮機を自動停止させるときの許可制御のフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を示す図で、(a)はエンジンがアイドリングストップするときの状況を示すタイムチャートであり、(b)はエンジン駆動圧縮機を自動停止させるときの許可制御のタイムチャートであり、(c)はモータ駆動圧縮機の作動状況を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1 空調装置
2 エンジン(第1駆動源)
3 モータ(第2駆動源)
4 制御装置
5 ハイブリッド型コンプレッサ
6 エンジン駆動圧縮機(第1圧縮機)
7 モータ駆動圧縮機(第2圧縮機)
Claims (2)
- エンジンで駆動され、該エンジンと電磁クラッチを介して接続される第1圧縮機と、モータで駆動される第2圧縮機とを有し、前記エンジンの自動停止および自動再始動を行う車両に備えられる空調装置であって、
前記空調装置は、前記エンジンの作動中に、前記第1圧縮機を停止させる要求があるか監視をして、前記第1圧縮機の停止要求を受けた後、前記第2圧縮機のみで駆動するときの目標回転速度が所定値を超える場合は、前記第1圧縮機の停止を禁止して前記第2圧縮機と併せて作動させ、
前記目標回転速度が前記所定値以下となるときは、前記第2圧縮機の出力を予め上昇させ、前記第1圧縮機の作動を所定時間継続してから停止させることを特徴とする車両用空調装置。 - 前記空調装置は、前記エンジンの自動停止に伴い前記第1圧縮機が停止して前記第2圧縮機のみが作動中に、この第2圧縮機の負荷が所定値以上になったときに、前記エンジンを駆動させて前記第1圧縮機を作動させることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
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