JP4029432B2 - 方向性けい素鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、方向性けい素鋼板の製造方法に関し、特に最終冷延前の焼鈍と一次再結晶焼鈍工程の両者を工夫することによって、磁気特性及びフォルステライト質絶縁被膜特性を改善しようとするものである。
【0002】
【従来の技術】
方向性けい素鋼板は軟磁性材料として、主に変圧器あるいは回転器等の鉄心材料として使用されるもので、磁気特性として磁束密度が高く、鉄損及び磁気歪が小さいことが要求される。近年のエネルギー事情の悪化に伴い、磁気特性に優れた方向性けい素鋼板のニーズはますます高まっている。
磁気特性に優れた方向性けい素鋼板を得るには、{110}〈001〉方位、いわゆるゴス方位に高度に集積した二次結晶組織を得ることが必要である。
【0003】
かようなゴス方位に高度に集積した二次再結晶組織を得べく、方向性けい素鋼板は一般に、インヒビターを含む方向性けい素鋼スラブを加熱して熱間圧延を行った後、必要に応じて熱延板焼鈍を行い、1回あるいは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延によって最終製品板厚とし、一次再結晶焼鈍を行った後、鋼板にMgO 等を主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、コイル状に巻取り、高温仕上げ焼鈍を行って製造される。かように複雑な方向性けい素鋼板の製造工程において、製品品質に大きな影響を及ぼす重要なポイントはいくつかあるが、その中のひとつに一次再結晶焼鈍工程があげられる。
【0004】
通常の一次再結晶焼鈍は、H2濃度と露点との調整により雰囲気酸化性を制御された湿水素雰囲気ガス中において、700 〜900 ℃の温度範囲で一定時間の均熱処理を行うことにより実施される。このとき、鋼板内部から鋼板表面に拡散してきたCが、鋼板表面においてH2O と反応してCOガスとなり、鋼板からCが除去される。このときの反応は式1のとおりである。
C+H2O → CO+H2 (式1)
【0005】
この反応が生じるがゆえに一次再結晶焼鈍は脱炭焼鈍とも呼ばれる。上記の反応式に従って脱炭反応が起こるのと同時に、方向性けい素鋼板に含有されるSiがH2O により酸化されて、主としてSiO2及びFe2SiO4 からなるサブスケールが形成される。このときの反応は式2,3のとおりである。
Si+2H2O → SiO2+2H2 (式2)
Si+2Fe +4H2O → Fe2SiO4 +4H2 (式3)
これらの反応のなかでも、式2の反応は極めて低い露点から進行するため、通常の工業用ガスを使用する場合にはサブスケールの生成は避けられない。
【0006】
前述したように、方向性けい素鋼板の一次再結晶焼鈍においてサブスケールの生成は不可避的に起こる現象である。このサブスケールを巧妙に利用したのが製品の鋼板表面に被成させたフォルステライト質絶縁被膜である。このフォルステライト質絶縁被膜は一般に以下のような過程によって形成される。
【0007】
まず所望の最終板厚に冷間圧延した方向性けい素鋼板の最終冷延板に、先に述べたとおりの一次再結晶焼鈍を行う。すなわち湿水素中で700 ℃から900 ℃の温度で連続焼鈍を行って、冷間圧延後の組織を、最終仕上げ焼鈍において適正な二次再結晶が起こるように一次再結晶させると同時に、二次再結晶を完全に行わせるとともに製品の磁気特性の時効劣化を防止するため、鋼中に0.01〜0.10%程度含まれる炭素を、0.003 %以下まで脱炭する。さらに、これと同時に、鋼中Siの酸化によって、SiO2を主成分とするサブスケールを鋼板表層に生成させる。このサブスケールがフォルステライト質絶縁被膜の原材料の一つとなる。
【0008】
その後、MgO を主成分とする焼鈍分離剤を鋼板上に塗布し、コイル状に巻取って、還元あるいは非酸化性雰囲気中において1000℃から1200℃程度の温度で、高温仕上げ焼鈍を行うことにより、式4で示される固相反応によってフォルステライト質絶縁被膜を形成させるのである。
2MgO + SiO2 → Mg2SiO4 (式4)
【0009】
このフォルステライト質絶縁被膜は1μm 程度の微細結晶が緻密に集積したセラミックス被膜であり、上述のごとく、一次再結晶焼鈍において鋼板表層に生成させた、SiO2を主成分とするサブスケールを一方の原料物質として、その鋼板上に生成するもであるから、この酸化物の種類、量、分布等は、フォルステライトの核生成や粒成長挙動に影響を及ぼし、さらにはフォルステライト結晶粒の粒界や粒そのものの強度にも影響を及ぼし、したがって仕上げ焼鈍後の被膜品質にも多大な影響を及ぼすのである。
【0010】
また、他方の原料物質であるMgO を主体とする焼鈍分離剤は、水に懸濁したスラリーとして鋼板に塗布されるため、乾燥させた後も物理的に吸着したH2O を保有する他、一部が水和してMg(OH)2 に変化しているため、仕上げ焼鈍中の800 ℃付近までは少量ながらH2O を放出し続ける。このH2O により、仕上げ焼鈍中に鋼板表面は酸化される。この酸化もフォルステライト質絶縁被膜の生成挙動に影響を及ぼすとともに、インヒビターの酸化や分解につながることから、この酸化が多いと磁気特性の劣化する原因となる。このMgO が放出するH2O による酸化の受け易さも、一次再結晶焼鈍で形成されたサブスケールの物性に大きく影響される。
【0011】
以上述べたように、方向性けい素鋼板の一次再結晶焼鈍において生成するサブスケール品質を適正に制御することは、フォルステライト質絶縁被膜の品質劣化及び磁気特性の劣化を防止するという観点から重要な技術課題である。
【0012】
方向性けい素鋼板の一次再結晶焼鈍に関しては、例えば、特公昭57−1575号公報に開示されているように、雰囲気の酸化度を脱炭の前半では0.15以上とし、鋼板では0.75以下でかつ前半よりも低くする方法、あるいは特開平6−336616号公報に開示されているように、均熱過程における水素分圧に対する水蒸気分圧の比を0.70未満に、かつ昇温過程における水素分圧に対する水蒸気分圧の比を均熱過程よりも低い値に設定する方法などが知られている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の方法は一定の効果は認められるものの、必ずしも十分なものではなく、ストリップの幅方向あるいは長手方向で磁気特性やフォルステライト質絶縁被膜の密着性、厚み、均一性が劣化する場合があり、優れた品質を有する製品の安定生産、更なる歩留まり向上のためには、いまだ改善の余地を残すものであった。
【0014】
この発明は、上記の問題点を有利に解決しようとするものであり、コイルの全幅及び全長にわたって、磁気特性が良好であり、かつ欠陥のない均一で密着性の優れたフォルステライト質絶縁被膜を有する方向性けい素鋼板を安定して得るための製造方法について提案することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、最終冷延板の表面状態が、一次再結晶焼鈍で生成するサブスケール物性に及ぼす影響を詳細に調査した。その結果、最終冷延板の板厚方向に形成されている脱珪層のプロファイルが、コイル内及びコイル間で大きく変動していること、この脱珪層のプロファイルが適正な範囲であった場合に、特に特開平6−336616号公報に開示されている方法の効果が十分に得られること、及び中間焼鈍雰囲気と中間焼鈍に引き続く酸洗条件、あるいは熱延板焼鈍条件と熱延板焼鈍に引き続く酸洗条件が脱珪層のプロファイルに大きな影響を及ぼすことを解明し、この発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、この発明は、方向性けい素鋼用スラブを熱間圧延した後、熱延板焼鈍を施して1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行うか、または熱延板焼鈍を省略して中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行い、次いで脱炭焼鈍を施して鋼板表面にサブスケールを形成させ、更にMgO を主体とする焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上焼鈍を施して鋼板表面にフォルステライト質被膜を形成させる一連の工程からなる方向性けい素鋼板の製造方法において、
熱延板焼鈍および/または中間焼鈍の雰囲気における水素分圧に対する水蒸気分圧の比を制御することにより、脱炭焼鈍前の鋼板表面に脱珪層を形成させ、さらに必要に応じて、最終冷延前に酸洗および/または研削を行うことにより、この脱珪層につき板厚中心部のSi濃度に対するSi濃度の比を、最終冷延板の状態で鋼板表面から厚み方向1μm までの領域では0.90以下に、かつ該Si濃度の比が0.98以下である領域を表面から厚み方向5μm までに調整すること、及び
上記脱炭焼鈍を、その均熱過程における水素分圧に対する水蒸気分圧の比を0.70未満で、かつ昇温過程における水素分圧に対する水蒸気分圧の比を前記の均熱過程よりも低い値で行うこと
を特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法である(第1発明)。
また、この発明は、第1発明において、脱珪層を、脱炭焼鈍より前に施す焼鈍時に、水素分圧に対する水蒸気分圧の比を0.20以上1.00以下の範囲に制御することにより形成することを特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法である(第2発明)。
【0017】
【発明の実施の形態】
発明者らは、最終冷延板の板厚方向に形成されている脱珪層プロァイルが、一次再結晶焼鈍で生成するサブスケール物性に及ぼす影響を詳細に調査した。以下に、この実験結果について述べる。
C含有量が0.04wt%であり、インヒビターとしてMnSe及びSbを含む方向性けい素鋼素材を熱間圧延した後、900 ℃で熱延板焼鈍を行い、次いで中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延によって、板厚0.23mmの最終冷延板とした。このとき、中間焼鈍の時間と中間焼鈍後の酸洗時間を種々に変更することにより、図1に示される板厚方向の脱珪層プロファイルを形成した。なお、熱延板焼鈍時の雰囲気はP(H2O)/P(H2) =0.70であり、中間焼鈍時の雰囲気は、P(H2O)/P(H2) =0.50である。形成された脱珪層について、最終冷延前の試料断面のSi分布をEPMAマッピングによって調べ、これを最終冷延板厚でのプロファイルに換算して評価した。
次いで、これらの冷延板を脱脂して表面を清浄化した後、湿水素中にて830 ℃に2分間保持する一次再結晶焼鈍を施した。このとき、昇温過程及び均熱過程の雰囲気酸化性を表1に示す値に制御した。
【0018】
その後、鋼中のC量と酸素目付量を化学分析によって求めた。また、60℃の5%HCl 中で60秒の酸洗による一次再結晶焼鈍後試料の溶解量(以下、酸洗減量と称する)を求めた。これらの結果を表1に示す。この酸素目付量はサブスケールの量的指標として重要であり、これが不足するとフォルステライト質絶縁被膜の密着性及び外観均一性が劣化し、磁気特性の劣化も併せて生じる。また、酸洗減量はサブスケールの質的指標として重要であり、この値が大きい場合には、表面の化学的活性度が高いため仕上げ焼鈍中の追加酸化を受け易く、フォルステライト質絶縁被膜の品質や磁気特性の劣化を生じる。
【0019】
【表1】
Figure 0004029432
【0020】
表1のNo.1とNo.2は、この発明の範囲の脱珪層を有する試料をこの発明に従う条件にて一次再結晶焼鈍したものであり、C含有量は十分に低く、酸素目付量も確保されており、また酸洗減量も低い値を示している。これに対して、No.3〜No.6は一次再結晶焼鈍条件はこの発明の範囲であるが、脱珪層がこの発明の範囲外の場合である。このうち、No.4のように脱珪層の大きさが過大である場合には、酸素目付量が不十分であり、酸洗減量も高めとなっている。そして、No.3, No.5, No.6のように脱珪層の大きさが過小である場合には、酸素目付量が若干高めであり、また酸洗減量が増大している。
次に、No.7〜No.12 は一次再結晶焼鈍時における昇温過程雰囲気と均熱過程雰囲気とを同一にした場合であり、C含有量が増大し、酸素目付量が不十分となり、酸洗減量が高めとなっている。そして、No.13 〜No.18 は均熱過程のP(H2O)/P(H2) が0.70を超えた場合であり、酸洗減量が著しく増大している。
【0021】
以上に述べたところから、最終冷延板の状態で、表面から板厚方向に1μm の範囲において、板厚中心部でのSi濃度に対するSi濃度の比を0.90以下とし、かつ板厚中心部でのSi濃度に対するSi濃度の比が0.98以下となる板厚方向距離を表面から5μm 以下の範囲とする脱珪層を形成させ、かつ均熱過程のP(H2O)/P(H2) を0.70未満とし昇温過程のP(H2O)/P(H2) を均熱過程のそれよりも低下することによって、良好な物性を有するサブスケールが得られることがわかる。
【0022】
このように一次再結晶焼鈍工程において、昇温過程の雰囲気酸化性を均熱過程のそれよりも低下させることによってサブスケール品質が向上するメカニズムはまだ明らかでないが、昇温過程でのサブスケール形成を均熱過程よりも緩やかに進行させることにより、酸化初期に生成する酸化物の形態や物性が変化し、その後の均熱過程における酸素の鋼中への拡散に影響を及ぼすためと考えられる。また、一次再結晶焼鈍時の均熱過程のP(H2O)/P(H2) が0.70以上になるとサブスケール品質が劣化するのは、図2に示すけい素鋼板の表面に生成する酸化物から考えると、FeO の生成によるものと思われる。このFeO は酸素の内部拡散ではなく、Feの外部拡散によって生成する酸化物であり、このような酸化物が表面にいったん生成すると被膜の形成過程に重大な悪影響を及ぼすものと思われる。
【0023】
更に、脱珪層が過小である場合にサブスケール品質が劣化するのは、表面付近でのSi濃度が高すぎるため昇温過程でのサブスケール生成が過剰に進行する結果、酸化初期に生成する酸化物の形態が均熱過程における酸化の鋼中への拡散に好影響を及ぼす状態にはならないためと考えられる。逆に、脱珪層が過大である場合にサブスケール品質が劣化するのは、表面近傍でのSi濃度が低すぎるためサブスケール形成が遅滞するためと考えられる。
【0024】
次に、発明者らは適正な脱珪層を得るための最終冷延前の焼鈍の条件についても検討した。
C含有量が0.04wt%であり、インヒビターとしてMnSe及びSbを含むけい素鋼冷延板(板厚0.6 mm)を脱脂して表面を清浄化した後、湿水素中にて900 ℃に1分間保持する中間焼鈍を行った。このとき水素濃度と露点との調節によってP(H2O)/P(H2) を0.10から1.20の範囲で変化させた。その後、外部スケールの生成した試料についてはHCl 酸洗を施して外部スケールだけを除去した。このときの板厚方向Si分布をEPMAマッピングによって調べ、最終冷延板厚0.23mmに換算した脱珪層プロファイルを図3に示す。図3によれば、中間焼鈍雰囲気がP(H2O)/P(H2) 0.20未満になると、脱珪層の形成が抑制されている。また、中間焼鈍雰囲気がP(H2O)/P(H2)1.00 を超えると、表面近傍でのSi濃度は大きく低下するが脱珪層の深さが小さくなっている。
【0025】
以上に述べたように、最終冷延板の状態で、表面から板厚方向1μm の範囲において、板厚中心部でのSi濃度に対するSi濃度の比を0.90以下とし、かつ板厚中心でのSi濃度に対するSi濃度の比が0.98以下になる板厚方向の距離を5μm 以下とする脱珪層を形成させるためには、中間焼鈍を、水素分圧に対する水蒸気分圧の比が0.20以上1.00以下の範囲で行えばよいことがわかる。なお、中間焼鈍後の酸洗は外部スケールの除去にとどめることが肝要であり、過剰な酸洗を行った場合には、適正に形成された脱珪層が除去されてしまうので注意が必要である。この他に脱珪層プロファイルを制御する方法として中間焼鈍後に研削する方法があるが、酸洗の場合と同様に、過剰な研削を行った場合には、適正に形成された脱珪層が除去されてしまうので注意が必要である。また、中間焼鈍の時間が長すぎる場合には、雰囲気をP(H2O)/P(H2) で0.20以上1.00以下の範囲に設定しても脱珪層の大きさが過大になり過ぎてサブスケール物性に悪影響を及ぼすうえに、仕上げ焼鈍におけるインヒビターの一次粒成長抑制力の劣化が生じることがあるため、中間焼鈍の均熱時間は30秒〜120 秒程度とするのが適当である。
【0026】
このような中間焼鈍での脱珪層形成メカニズムはまだ十分に明らかになってはいないが、雰囲気のP(H2O)/P(H2) が0.2 未満の場合に脱珪層の生成が抑制されるのは、雰囲気酸化性が低すぎて中間焼鈍での内部酸化の進行が遅滞するためと推定される。逆に、雰囲気のP(H2O)/P(H2) が1.00を超える場合に表面のSi濃度が大きく低下するが脱珪層の深さが小さくなるのは、外部スケールの生成が増大した結果、表面近傍のFe消費量が多くなってSi濃度が高くなるためと推定される。
【0027】
この発明に従う脱珪層を脱炭焼鈍前の鋼板表面に形成させるには、上述した中間焼鈍での雰囲気制御に限られず、熱延板焼鈍の際に、雰囲気制御することによっても可能である。具体的には、冷延1回法において水素分圧に対する水蒸気分圧の比を0.20以上・1.00以下の範囲で熱延板焼鈍を行うことによって所定の脱珪層プロファイルを得ることができる。
さらに、熱延板焼鈍及び中間焼鈍の双方で雰囲気制御を行うことも可能であるが、この場合は、所定の脱珪層を得るために、熱延板焼鈍雰囲気をP(H2O)/P(H2) で0.6 〜1.0 、中間焼鈍雰囲気をP(H2O)/P(H2) で0.2 〜0.7 となるように雰囲気を調整することが好ましい。
【0028】
なお、以上の実験例はインヒビターとして、MnSeとSbを含有する鋼種で示したが、この発明はこれに限らずAlN-MnSe系、AlN-MnS 系、MnS 系等、他のインヒビターを含有する方向性けい素鋼のいずれに対しても適用できる。
【0029】
次に、この発明における方向性けい素鋼用素材の好適成分組成について説明する。
Cは、熱間圧延時のα−γ変態を利用して結晶組織の改善を行うために有効であるが、多すぎると脱炭が困難となるため、0.02〜0.10wt%の範囲が好適である。
Siは、少な過ぎると鋼板の電気抵抗が小さくなって渦電流損が増大するために良好な鉄損特性が得られず、多過ぎると冷間圧延が困難となるので、2.5 〜4.5 wt%程度の範囲が好適である。
Mnは、インヒビター成分として必要であるが、過剰になるとインヒビターの粒子径が粗大化して粒成長抑制力が低下するため、0.03〜0.30wt%の範囲が好適である。
Se及び/又はSはインヒビター成分として必要であるが、過剰になると仕上げ焼鈍での純化が困難となるため、合計で0.01〜0.05wt%の範囲が好適である。
Al及びNはAlN インヒビターを形成するために必要である。Alは少な過ぎると磁束密度が低下し、多過ぎると二次再結晶が安定しなくなるため、酸可溶性Alとして0.01〜0.05wt%の範囲が好適である。一方、Nは少な過ぎるとAlN インヒビターの量が不足して磁束密度が低下し、多過ぎるとスラブ加熱中のふくれに起因する表面欠陥が製品に多発するため、0.004 〜0.012 wt%の範囲が好適である。
【0030】
さらに、粒界偏析型インヒビターとしてSbやSn等の添加が有効である。これらは、添加量が少な過ぎると磁気特性の改善効果が少なく、多過ぎると脆性の低下やフォルステライト質絶縁被膜への悪影響が生じるため、0.01〜0.03wt%の範囲が好適である。また、フォルステライト質絶縁被膜への悪影響を減ずるためには、0.03〜0.20wt%のCuを添加したうえで、この発明に従って一次再結晶焼鈍を行うことが有効である。
また、熱間圧延時の表面脆化に起因する表面欠陥を防止するために、0.10wt%以下のMoを添加することも有効である。
【0031】
【実施例】
〈実施例1〉
C:0.073 wt%, Si:3.30wt%, Mn:0.075 wt%, Se:0.024 wt%, sol.Al:0.024 wt%, N:0.008 wt%及びSb:0.025 wt%を含有する方向性けい素鋼スラブを板厚2.3 mmに熱間圧延した後、1000℃で熱延板焼鈍を行い、1100℃での中間焼鈍を挟む2回の冷間圧延によって0.23mmの最終冷延板厚とした。このとき中間焼鈍時間と中間焼鈍後の酸洗時間の制御によって最終冷延板の状態での脱珪層を図4のように変化させた。これらの冷延板をアルカリ脱脂して表面を清浄化した後、湿水素雰囲気中にて、840 ℃で120 秒の一次再結晶焼鈍を行った。このとき、昇温過程及び均熱過程の雰囲気酸化性をそれぞれ独立に表2に示す値に制御した。次いで、5%のTiO2を含有するMgO 焼鈍分離剤をスラリーとして塗布、乾燥後、H2雰囲気中での1200℃で10時間の二次再結晶、純化焼鈍を行った。この後、リン酸マグネシウムとコロイダルシリカを主成分とするコーティングを施した。
【0032】
このようにして得られた製品の、磁界800 A/m における磁束密度B8 値、1.7 T, 50Hz における鉄損W17/50値、被膜の曲げ密着性、及び被膜外観の均一性について調査した。被膜の曲げ密着性は、5mm間隔の種々の径を有する丸棒に試験片を巻き付け、被膜の剥離が生じない最小径で評価した。また、一次再結晶後の鋼板のC含有量、酸素目付量、酸洗減量についても分析を行った。これらの結果を表2に併記する。
【0033】
表2によれば、脱珪層が過大であるNo.7では酸素目付量が不十分であり、その結果、磁気特性、被膜特性が劣っている。脱珪層が過小であるNo.8では、酸洗減量が高く、磁気特性、被膜特性劣っている。均熱過程のP(H2O)/P(H2) が0.70を超えたNo.9、No.10 は、酸洗減量が著しく高く、磁気特性、被膜特性が劣っている。また、昇温過程のP(H2O)/P(H2) を均熱過程のそれよりも低くしなかったNo.11 、No.12 は脱炭と酸素目付量が不十分であり、かつ磁気特性、被膜特性も劣っている。これらに対して、この発明に従うNo.1〜No.6は、脱炭、酸素目付量、酸洗減量が良好なレベルであり、製品の磁気特性、被膜特性ともに優れている。
【0034】
【表2】
Figure 0004029432
【0035】
〈実施例2〉
C:0.073 wt%, Si:3.30wt%, Mn:0.075 wt%, Se:0.024 wt%, sol.Al:0.024 wt%, N:0.008 wt%及びSb:0.025 wt%を含有する方向性けい素鋼スラブを板厚2.7 mmに熱間圧延した後、1000℃で熱延板焼鈍を行い、次いで湿水素中で1120℃での中間焼鈍及びそれに引き続く外部スケール除去の目的で行う酸洗をはさむ2回の冷間圧延によって0.35mmの最終冷延板厚とした。このとき中間焼鈍の雰囲気酸化性を表3に示す値に制御した。これらの冷延板をアルカリ脱脂して表面を清浄化した後、湿水素雰囲気中にて、840 ℃で150 秒の一次再結晶焼鈍を行った。このとき、昇温過程及び均熱過程の雰囲気酸化性をそれぞれ独立に表3に示す値に制御した。次いで、5%のTiO2を含有するMgO 焼鈍分離剤をスラリーとして塗布、乾燥後、H2雰囲気中での1200℃で10時間の二次再結晶、純化焼鈍を行った。この後、リン酸マグネシウムとコロイダルシリカを主成分とするコーティングを施した。このようにして得られた製品について、実施例1と同様の調査を行った結果を表3に示す。
【0036】
表3によれば、中間焼鈍雰囲気のP(H2O)/P(H2) が0.20未満であるNo.7、及びP(H2O)/P(H2) が1.00を超えているNo.8では酸素目付量が不十分であり、その結果、磁気特性、被膜特性が劣っている。均熱過程のP(H2O)/P(H2) が0.70を超えたNo.9、No.10 は、酸洗減量が著しく高く、磁気特性、被膜特性が劣っている。また、昇温過程のP(H2O)/P(H2) を均熱過程のそれよりも低くしなかったNo.11 、No.12 は脱炭と酸素目付量が不十分であり、かつ磁気特性、被膜特性も劣っている。これらに対して、この発明に従うNo.1〜No.6は、脱炭、酸素目付量、酸洗減量が良好なレベルであり、製品の磁気特性、被膜特性ともに優れている。
【0037】
【表3】
Figure 0004029432
【0038】
〈実施例3〉
C:0.042 wt%, Si:3.32wt%, Mn:0.073 wt%, Se:0.023 wt%及びSb:0.026 wt%を含有する方向性けい素鋼スラブを板厚2.0 mmに熱間圧延した後、950 ℃で熱延板焼鈍を行い、次いで湿水素中で970 ℃での中間焼鈍及びそれに引き続く外部スケール除去の目的で行う酸洗をはさむ2回の冷間圧延によって0.23mmの最終冷延板厚とした。このとき中間焼鈍の雰囲気酸化性を表4に示す値に制御した。これらの冷延板をアルカリ脱脂して表面を清浄化したあと、湿水素雰囲気中にて、820 ℃で120 秒の一次再結晶焼鈍を行った。このとき、昇温過程及び均熱過程の雰囲気酸化性をそれぞれ独立に表4に示す値に制御した。次いで、1%のTiO2及び2%のSrSO4 を含有するMgO 焼鈍分離剤をスラリーとして塗布、乾燥後、H2雰囲気中での1150℃で8時間の二次再結晶、純化焼鈍を行った。この後、リン酸マグネシウムとコロイダルシリカを主成分とするコーティングを施した。このようにして得られた製品について、実施例1と同様の調査を行った結果を表4に示す。
【0039】
表4によれば、中間焼鈍雰囲気のP(H2O)/P(H2) が0.20未満であるNo.5、及びP(H2O)/P(H2) が1.00を超えているNo.6では酸素目付量が不十分であり、その結果、磁気特性、被膜特性が劣っている。均熱過程のP(H2O)/P(H2) が0.70を超えたNo.7では、酸洗減量が著しく高く、磁気特性、被膜特性が劣っている。また、昇温過程のP(H2O)/P(H2) を均熱過程のそれよりも低くしなかったNo.8では、脱炭と酸素目付量が不十分であり、且つ磁気特性、被膜特性も劣っている。これらに対して、この発明例であるNo.1〜No.4は、脱炭、酸素目付量、酸洗減量が良好なレベルであり、製品の磁気特性、被膜特性ともに優れている。
【0040】
【表4】
Figure 0004029432
【0041】
【発明の効果】
この発明によれば、被膜特性に優れ且つ磁気特性も良好な方向性けい素鋼板の安定して生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】最終冷延板の状態での脱珪層プロファイルを示すグラフである。
【図2】3wt%けい素鋼の湿水素中における生成酸化物の平衡状態図である。
【図3】中間焼鈍雰囲気のP(H2O)/P(H2) を変化させたときの、最終冷延板の状態での脱珪層プロファイルを示すグラフである。
【図4】実施例1に供した試料の最終冷延板の状態での脱珪層プロファイルを示すグラフである。

Claims (2)

  1. 方向性けい素鋼用スラブを熱間圧延した後、熱延板焼鈍を施して1回又は中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行うか、または熱延板焼鈍を省略して中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行い、次いで脱炭焼鈍を施して鋼板表面にサブスケールを形成させ、更にMgO を主体とする焼鈍分離剤を塗布してから最終仕上焼鈍を施して鋼板表面にフォルステライト質被膜を形成させる一連の工程からなる方向性けい素鋼板の製造方法において、
    熱延板焼鈍および/または中間焼鈍の雰囲気における水素分圧に対する水蒸気分圧の比を制御することにより、脱炭焼鈍前の鋼板表面に脱珪層を形成させ、さらに必要に応じて、最終冷延前に酸洗および/または研削を行うことにより、この脱珪層につき板厚中心部のSi濃度に対するSi濃度の比を、最終冷延板の状態で鋼板表面から厚み方向1μm までの領域では0.90以下に、かつ該Si濃度の比が0.98以下である領域を表面から厚み方向5μm までに調整すること、及び
    上記脱炭焼鈍を、その均熱過程における水素分圧に対する水蒸気分圧の比を0.70未満で、かつ昇温過程における水素分圧に対する水蒸気分圧の比を前記の均熱過程よりも低い値で行うこと
    を特徴とする方向性けい素鋼板の製造方法。
  2. 脱珪層を、脱炭焼鈍より前に施す焼鈍時に、水素分圧に対する水蒸気分圧の比を0.20以上1.00以下の範囲に制御することにより形成することを特徴とする、請求項1記載の方向性けい素鋼板の製造方法。
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