JP4027536B2 - 内燃機関の可変動弁装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の吸・排気弁のリフト量(制御軸の作動角)を機関運転状態に応じて可変に制御できる内燃機関の可変動弁制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、機関低速低負荷時における燃費の改善や安定した運転性並びに高速高負荷時における吸気の充填効率の向上による十分な出力を確保する等のために、吸気・排気弁の開閉時期とバルブリフト量を機関運転状態に応じて可変制御する可変動弁装置は従来から種々提供されており、その一例として特開昭55−137305号公報等に記載されているものが知られている。
【0003】
図21に基づきその概略を説明すれば、シリンダヘッド1のアッパデッキの略中央近傍上方位置にカム軸2が設けられていると共に、該カム軸2の外周にカム2aが一体に設けられている。また、カム軸2の側部には制御軸3が平行に配置されており、この制御軸3に偏心カム4を介してロッカアーム5が揺動自在に軸支されている。
【0004】
一方、シリンダヘッド1に摺動自在に設けられた吸気弁6の上端部には、バルブリフター7を介して揺動カム8が配置されている。この揺動カム8は、バルブリフター7の上方にカム軸2と並行に配置された支軸9に揺動自在に軸支され、下端のカム面8aがバルブリフター7の上面に当接している。また、前記ロッカアーム5は、一端部5aがカム2aの外周面に当接していると共に、他端部5bが揺動カム8の上端面8bに当接して、カム2aのリフトを揺動カム8及びバルブリフター7を介して吸気弁6に伝達するようになっている。そして、この吸気弁6は、バルブスプリング6aにより閉弁方向に付勢されている。
【0005】
また、前記制御軸3は、図22に示すように、DCサーボモータ等の電磁アクチュエータにより、減速ギアを介して所定角度範囲で回転駆動されて、偏心カム4の回動位置を制御し、これによってロッカアーム5の揺動支点を変化させるようになっている。
【0006】
そして、図21において、偏心カム4が正逆の所定回動位置に制御されるとロッカアーム5の揺動支点が変化して、他端部5bの揺動カム8の上端面8bに対する当接位置が図中上下方向に変化し、これによって揺動カム8のカム面8aのバルブリフター7上面に対する当接位置の変化に伴い、揺動カム8の揺動軌跡が変化することにより、吸気弁6の開閉時期とバルブリフト量を制御軸3の作動角の変化に伴って可変制御するようになっている。なお、図中の符号10は、揺動カム8の上端面8bを常時ロッカアーム5の他端部5bに弾接付勢するスプリングを示す。
【0007】
また、上記のように、吸気弁6の開閉時期及びバルブリフト量を、ロッカアーム5の揺動支点を変化させることによって可変に制御する構成の可変動弁装置においては、一般的に、図10のシステム図に示すように、前記揺動支点を変化させるための制御軸3の作動角をポテンショメータ等の作動角センサによって検出し、この検出された作動角信号に基づき、制御装置では、位置サーボコントローラ(線形コントローラ)において、検出された作動角信号と目標制御軸作動角とを比較し、差が零になるように、PWM(パルスワイズモジュレーション)出力設定手段を介してDCサーボモータに駆動電流を出力することにより、制御軸3の作動角を目標のバルブ特性に対応する目標制御軸作動角に一致させるようなフィードバック制御が行われるようになっていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来装置では、目標制御軸作動角と検出作動角の情報を基にDCサーボモータに出力する電流を決める位置サーボコントローラが、線形特性であるため、以下に述べるような問題点があった。
即ち、上述のように、制御軸3に偏心カム4を介してロッカアーム5が揺動自在に軸支され、このロッカアーム5は、一端部5aがカム2aの外周面に当接していると共に、他端部5bが揺動カム8の上端面8bに当接して、カム2aのリフトを揺動カム8及びバルブリフター7を介して吸気弁6に伝達するようになっていることから、バルブスプリング6aの反力等に起因する反力トルクが、揺動カム8およびロッカアーム5を介して制御軸3に外乱として伝達される。そして、この反力トルクは、エンジン回転数、作動角毎に変動するため、制御軸3に伝達される反力トルクは非線形特性となる。従って、前述のように、位置サーボコントローラが、線形特性であるため、揺動カム8やロッカアーム5等を通じて制御軸3に伝わるバルブスプリング6aの反力等に起因する非線形な反力トルク入力(エンジン回転数、作動角毎に変動)には対応することができず、エンジン回転数が変化すると、制御応答特性も変化してしまい、一定の制御応答特性が得られない。
【0009】
本発明は、上述の従来の問題点に着目してなされたもので、制御軸作動角制御において、カムやロッカアーム等を通じて制御軸に伝わるバルブスプリング反力等に起因する非線形特性である反力トルク(エンジン回転数、作動角毎に変動)にも対応することで安定した制御応答特性が得られ、制御性の向上が図れる内燃機関の可変動弁制御装置を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明請求項1記載の内燃機関の可変動弁制御装置では、電磁アクチュエータによって回転駆動される制御軸の作動角に相関して機関弁のバルブ作動特性を変更する可変動弁機構を制御する内燃機関の可変動弁制御装置において、前記制御軸の作動角を検出する作動角検出手段と、機関の運転状態に応じた目標制御軸作動角と前記検出された制御軸作動角との制御偏差に応じたフィードバック操作量を演算するフィードバック操作量演算手段と、前記機関弁側から前記制御軸に入力される反力トルクであって、前記検出された制御軸作動角に対して非線形である反力トルクを相殺するフィードフォワード操作量を演算するフィードフォワード操作量演算手段と、前記フィードバック操作量と前記フィードフォワード操作量とに基づき、前記電磁アクチュエータに出力する操作量を演算する出力操作量演算手段と、を設けた手段とした。
【0011】
請求項2記載の内燃機関の可変動弁制御装置では、請求項1記載の内燃機関の可変動弁制御装置において、前記フィードフォワード操作量演算手段が、前記フィードバック操作量演算手段とは分離独立した状態で設けられている手段とした。
【0012】
請求項3記載の内燃機関の可変動弁制御装置では、請求項1または2に記載の内燃機関の可変動弁制御装置において、機関の回転数を検出する機関回転数検出手段と、前記検出された機関回転数と前記検出された制御軸作動角から前記反力トルクを求めるマップとを備え、前記フィードフォワード操作量演算手段が、前記マップに基づいて求めた前記反力トルクを相殺する前記フィードフォワード操作量を演算するように構成されている手段とした。
【0013】
請求項4記載の内燃機関の可変動弁制御装置では、請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の可変動弁制御装置において、前記目標制御軸作動角と前記検出された制御軸作動角との制御偏差が大きい時は小さな積分動作となり、前記制御偏差が小さい時は大きな積分動作となる非線形ゲイン積分補償手段を備えている手段とした。
【0014】
【作用】
本発明請求項1記載の内燃機関の可変動弁制御装置では、上述のように構成されるため、フィードバック操作量演算手段では、作動角検出手段で検出された制御軸の作動角信号に基づいて制御軸を機関の運転状態に応じた目標制御軸作動角位置に回転駆動させるべく線形特性のフィードバック操作量が演算される。
【0015】
一方、フィードフォワード操作量演算手段では、機関弁側からの非線形特性入力による制御軸の作動角変動分を修正すべく非線形特性のフィードフォワード操作量が演算される。また、出力操作量演算手段では、上記フィードバック操作量と上記フィードフォワード操作量とを加算して、電磁アクチュエータに出力する操作量を演算するもので、これにより、制御軸作動角制御において、機関弁側から制御軸に伝わるバルブスプリング反力等に起因する非線形特性である反力トルク(エンジン回転数、作動角毎に変動)にも対応し、安定した制御応答特性が得られ、制御性の向上が図れる。
【0016】
請求項2記載の内燃機関の可変動弁制御装置では、請求項1記載の内燃機関の可変動弁制御装置において、前記フィードフォワード操作量演算手段が、前記フィードバック操作量演算手段とは分離独立した状態で設けられることで、フィードバック制御が行われるフィードバック操作量演算手段の設計が容易になり、また、規範モデルを導入した設計が可能となるから、より安定した制御応答特性が得られるようになる。
【0017】
請求項3記載の内燃機関の可変動弁制御装置では、請求項1または2に記載の内燃機関の可変動弁制御装置において、フィードフォワード操作量演算手段では、機関回転数検出手段で検出された機関回転数と作動角検出手段で検出された制御軸作動角から反力トルクを求めるマップに基づいてフィードフォワード制御が行われるもので、このようにマップを備えたことで、制御を簡略化することができるようになる。
【0018】
請求項4記載の内燃機関の可変動弁制御装置では、請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の可変動弁制御装置において、非線形ゲイン積分補償手段では、前記目標制御軸作動角と作動角検出手段で検出された制御軸作動角との制御偏差が大きい時は個体差等による影響が生じにくいため、小さな積分動作を行うと共に、制御偏差が小さい時は個体差等による影響が生じ易いため、大きな積分動作を行うもので、これにより、目標制御軸作動角への制御においてオーバシュートを防止しつつ、機構における静摩擦や動摩擦等の非線形要素、エンジンの経年変化、個体差による特性のばらつき等によって発生する残留偏差を修正することができるようになる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(発明の実施の形態1)
図1〜図3は、本発明の実施の形態1における内燃機関(エンジン)の可変動弁装置を示すものであり、1気筒あたり2つ備えられる吸気弁の可変動弁機構VEL(以下、VEL機構という)として以下に説明する。但し、機関弁を吸気弁に限定するものではなく、また、吸気弁の数を限定するものでないことは明らかである。
【0020】
図1〜図3に示す可変動弁装置は、シリンダヘッド11にバルブガイド(図示省略)を介して摺動自在に設けられた一対の吸気弁12,12と、シリンダヘッド11上部のカム軸受14に回転自在に支持された中空状のカム軸13と、該カム軸13に、圧入等により固設された回転カムである2つの偏心カム15,15と、前記カム軸13の上方位置に同じカム軸受14に回転自在に支持された制御軸16と、該制御軸16に制御カム17を介して揺動自在に支持された一対のロッカアーム18,18と、各吸気弁12,12の上端部にバルブリフター19,19を介して配置された一対のそれぞれ独立した揺動カム20,20と、各吸気弁12,12を閉弁方向に付勢するバルブスプリング33,33とを備えている。
【0021】
また、前記偏心カム15,15とロッカアーム18,18とはリンクアーム25,25によって連係される一方、ロッカアーム18,18と揺動カム20,20とはリンク部材26,26によって連係されている。
前記カム軸13は、機関前後方向(シリンダ列方向)に沿って配置されていると共に、一端部に設けられた従動スプロケット(図示省略)や該従動スプロケットに巻装されたタイミングチェーン等を介して機関のクランク軸から回転力が伝達される。
【0022】
前記カム軸受14は、シリンダヘッド11の上端部に設けられてカム軸13の上部を支持するメインブラケット14aと、該メインブラケット14aの上端部に設けられて制御軸16を回転自在に支持するサブブラケット14bとを有し、両ブラケット14a,14bが一対のボルト14c,14cによって上方から共締め固定されている。
【0023】
前記両偏心カム15は、図4にも示すように、略リング状を呈し、小径なカム本体15aと、該カム本体15aの外端面に一体に設けられたフランジ部15bとからなり、内部軸方向にカム軸挿通孔15cが貫通形成されていると共に、カム本体15aの軸心Xがカム軸13の軸心Yから径方向へ所定量だけ偏心している。
【0024】
また、この各偏心カム15は、カム軸13に対し前記両バルブリフター19,19に干渉しない両外側にカム軸挿通孔15cを介して圧入固定されていると共に、両方のカム本体15a,15aの外周面15d,15dが同一のカムプロフィールに形成されている。
【0025】
前記各ロッカアーム18は、図3に示すように、平面からみて略クランク状に折曲形成され、中央に有する基部18aが制御カム17に回転自在に支持されている。また、各基部18aの各外端部に突設された一端部18bには、リンクアーム25の先端部と連結するピン21が圧入されるピン孔18dが貫通形成されている一方、各筒状基部18aの各内端部に夫々突設された他端部18cには、各リンク部材26の後述する一端部26aと連結するピン28が圧入されるピン孔18eが形成されている。
【0026】
前記各制御カム17は、夫々円筒状を呈し、制御軸16外周に固定されていると共に、図1に示すように軸心P1位置が制御軸16の軸心P2からαだけ偏心している。
【0027】
前記揺動カム20は、図1及び図6,図7に示すように略横U字形状を呈し、略円環状の基端部22にカム軸13が嵌挿されて回転自在に支持される支持孔22aが貫通形成されていると共に、ロッカアーム18の他端部18c側に位置する端部23にピン孔23aが貫通形成されている。
【0028】
また、揺動カム20の下面には、基端部22側の基円面24aと該基円面24aから端部23端縁側に円弧状に延びるカム面24bとが形成されており、該基円面24aとカム面24bとが、揺動カム20の揺動位置に応じて各バルブリフター19の上面所定位置に当接するようになっている。
【0029】
すなわち、図5に示すバルブリフト特性からみると、図1に示すように基円面24aの所定角度範囲θ1がべースサークル区間になり、カム面24bの前記べースサークル区間θ1から所定角度範囲θ2がいわゆるランプ区間となり、さらにカム面24bのランプ区間θ2から所定角度範囲θ3がリフト区間になるように設定されている。
【0030】
また、前記リンクアーム25は、比較的大径な円環状の基部25aと、該基部25aの外周面所定位置に突設された突出端25bとを備え、基部25aの中央位置には、前記偏心カム15のカム本体15aの外周面に回転自在に嵌合する嵌合穴25cが形成されている一方、突出端25bには、前記ピン21が回転自在に挿通するピン孔25dが貫通形成されている。
なお、前記リンクアーム25と偏心カム15とによって揺動駆動手段が構成される。
【0031】
さらに、前記リンク部材26は、図1にも示すように所定長さの直線状に形成され、円形状の両端部26a,26bには前記ロッカアーム18の他端部18cと揺動カム20の端部23の各ピン孔18d,23aに圧入した各ピン28,29の端部が回転自在に挿通するピン挿通孔26c,26dが貫通形成されている。なお、各ピン21,28,29の一端部には、リンクアーム25やリンク部材26の軸方向の移動を規制するスナップリング30,31,32が設けられている。
【0032】
前記制御軸16は、一端部に設けられた電磁アクチュエータを構成するDCサーボモータ101によって所定回転角度範囲内で回転駆動されるようになっており、図9に示すように、前記DCサーボモータ101は、操作量演算手段としての制御装置CPUからの制御信号によって制御されるようになっている。前記制御装置CPUは、クランク角センサ103,エアフローメータ104,水温センサ105,機関(エンジン)回転数センサ106等の各種のセンサからの検出信号に基づいて現在の機関運転状態を検出して、該検出された機関運転状態に応じて目標のバルブ特性を決定し、該目標のバルブ特性に対応する角度位置に制御軸16を駆動すべく、前記DCサーボモータ101に駆動信号(駆動電流)を出力する。
【0033】
以下、上記可変動弁装置の作用を説明すれば、まず、機関の低速低負荷時には、制御装置CPUからの制御信号によってDCサーボモータ101が一方に回転駆動される。このため、制御カム17は、軸心P1が図6A,Bに示すように制御軸16の軸心P2から左上方の回動位置に保持され、厚肉部17aがカム軸13から上方向に離間移動する。このため、ロッカアーム18は、全体がカム軸13に対して上方向へ移動し、これにより、各揺動カム20は、リンク部材26を介して端部23が強制的に若干引き上げられて全体が左方向へ回動する。
【0034】
従って、図6A,Bに示すように偏心カム15が回転してリンクアーム25を介してロッカアーム18の一端部18bを押し上げると、そのリフト量がリンク部材26を介して揺動カム20及びバルブリフター19に伝達されるが、そのリフト量L1は図6Bに示すように比較的小さくなる。
【0035】
よって、かかる低速低負荷域では、図8の破線で示すようにバルブリフト量が小さくなると共に、各吸気弁12の開時期が遅くなり(作動角が小さくなり)、排気弁とのバルブオーバラップが小さくなる。このため、燃費の向上と機関の安定した回転が得られる。
【0036】
一方、機関の高速高負荷時に移行した揚合は、制御装置CPUからの制御信号によってDCサーボモータ101が反対方向に回転駆動される。従って、図7A,Bに示すように制御軸16が、制御カム17を図6に示す位置から時計方向に回転させ、軸心P1(厚肉部17a)を下方向へ移動させる。このため、ロッカアーム18は、今度は全体がカム軸13方向(下方向)に移動して、他端部18cが揺動カム20の上端部23をリンク部材26を介して下方へ押圧して該揺動カム20全体を所定量だけ時計方向へ回動させる。
【0037】
従って、揺動カム20のバルブリフター19上面に対する下面の当接位置が図7A,Bに示すように左方向位置に移動する。このため、図7に示すように偏心カム15が回転してロッカアーム18の一端部18bをリンクアーム25を介して押し上げると、バルブリフター19に対するそのリフト量L2は図7Bに示すように大きくなる。
【0038】
よって、かかる高速高負荷域では、カムリフト特性が低速低負荷域に比較して大きくなり、図8に実線で示すようにバルブリフト量(作動角)も大きくなると共に、各吸気弁12の開時期が早く、閉時期が遅くなる。この結果、吸気充填効率が向上し、十分な出力が確保できる。
【0039】
ところで、上記可変動弁装置においては、目標のバルブ特性に対応する角度位置に制御軸16を駆動し、実際のバルブ特性を前記目標のバルブ特性に制御するが、前記制御軸16の駆動精度や、前記制御軸16の角度位置とバルブ特性との関係にばらつきがあると、目標のバルブ特性に精度よく実際のバルブ特性を制御することができなくなる。
【0040】
そこで、従来例として示したように、図10のシステム図、および、図11のブロック図に示すように、前記揺動支点を変化させるための制御軸3の作動角(回転位置)をポテンショメータ等の作動角センサによって検出し、この検出された作動角信号に基づき、制御装置に備えた位置サーボコントローラ(線形コントローラ)において、検出結果としての作動角と目標制御軸作動角とを比較し、制御軸3の作動角(回転位置)を目標のバルブ特性に対応する目標制御軸作動角(回転位置)となるようにDCサーボモータに対する駆動制御信号をフィードバック制御するようになっている。なお、前記DCサーボモータと制御軸3との間には減速ギアが介装されている。
【0041】
ところが、可変動弁装置においては、従来例においても述べたように、ロッカアーム18,18と揺動カム20,20とはリンク部材26,26によって連係されていることから、図12のVEL機構ブロック図に示すように、各バルブスプリング33,33の反力や燃焼圧等に起因する反力トルクが、バルブリフター19、揺動カム20,20、リンク部材26,26およびロッカアーム18,18を介し、DCサーボモータ101の制御軸16に伝達される。そして、この反力トルクは、エンジン(機関)回転数、作動角毎に変動するため、制御軸16に伝達される反力トルクは非線形的特性となる。従って、前述のように、位置サーボコントローラ(線形コントローラ)が、線形特性であるため、バルブリフター19、揺動カム20,20、リンク部材26,26およびロッカアーム5を介して制御軸16に伝わるバルブスプリング33,33の反力等に起因する非線形な反力トルク(エンジン回転数、作動角毎に変動)には対応することができず、機関(エンジン)回転数が変化すると、制御応答特性も変化してしまい、一定の制御応答特性が得られない。
【0042】
そこで、この発明の実施の形態1の可変動弁装置では、図12のシステム図および図13のシステムブロック図に示すように、VEL機構におけるDCサーボモータ101にモータ駆動信号を出力する制御装置CPUには、フィードバック操作量演算手段を構成する線形コントローラ(PDコントローラ)F/B.Cの他に、非線形な反力トルクに対応するためのフィードフォワード操作量演算手段を構成する非線形コントローラF/F.Cを備え、両コントローラの出力の和を、PWM出力設定手段PWMにおいてモータ駆動信号に変換し、VEL機構におけるDCサーボモータ101に出力するようになっている。
【0043】
まず、前記線形コントローラ(PDコントローラ)F/B.Cの部分について説明すると、制御軸16(バルブスプリング33)からの反力トルクを外乱と見做し、それを除いたものを制御対象としてシステムを考えると、図14の線形部システムブロック図のようになる。なお、rは目標制御軸作動角、uはモータ駆動電流、yは実際の制御軸作動角、Pは比例分ゲイン、Z-1は一回前の「Z-1」ブロックへの入力データ、Δtはサンプリング時間、Diは微分分ゲイン、Kmはモータトルク定数、Tはモータトルク、Jは慣性モーメント、Dは粘性(回転)抵抗係数を示す。また、DCサーボモータ101の電気的応答は、機械系に比べ十分速いので省略する。
【0044】
このシステム(非線形反力トルクのない場合)の制御対象(VEL機構)は次式で表現できる。
【数1】
この式をラプラス変換すると、
J θ(s)s2+D θ(s)s=Km・I(s)
となる。よって、伝達関数は、
Gm(s)=θ(s)/I(s)=(1/s)・{(Km/J)/(s+(D/J))} (積分+1次遅れ)
である。
【0045】
また、線形コントローラF/B.Cを連続時間表現に書き直し、求めた伝達関数を用いて前記図14のブロック図を書き直すと、図15のようになる。
よって、目標制御軸作動角信号rから実際の制御軸作動角信号yまでの伝達関数G(s)は、次式のようになる。
G(s)=Di(Km/J){s+(P/Di)}/{s(s+(D/J))+Di(Km/J)(s+(P/Di))}
また、D/J=P/Di とおくと、
G(s)=Di(Km/J)/{s+Di(Km/J)}=1/{(J/DiKm)s+1}
となり、1次のローパスフィルタの形となる。
【0046】
ここで、伝達関数:Gr(s)=1/(Trs+1) <Tr:時定数>
という1次の規範モデルとなるローパスフィルタを導入し時定数Trを目標応答時定数と考え、Tr=J/(DiKm) とすると、システムの応答は、Gr(s) と同じ一次遅れとなるはずである。よって、比例分ゲインP 、微分分ゲインDiはそれぞれ次式により算出される。
P =D/J・Di=D/(TrKm)
Di=J/(TrKm)
【0047】
次に、前記非線形コントローラF/F.Cの部分について説明する。
図16は、線形コントローラF/B.Cの部分に非線形コントローラF/F.Cおよび外乱(非線形トルク)入力の部分が付加されたシステムを考えた場合を示すもので、B1が線形コントローラF/B.Cを含む線形部、B2が外乱(非線形トルク)入力部、B3が非線形コントローラF/F.C部を示す。
【0048】
前記外乱(非線形反力トルク)入力部B2は、エンジン回転数Nおよび制御軸16の検出作動角θに応じて制御対象となるVEL機構に入力される外乱トルク(非線形反力トルク)の内容を示すもので、この外乱トルクTd分は、エンジン回転数Nおよび制御軸16の検出作動角θから、所定のマップfにより求めることができ、この外乱トルクTd分が、変換式(1/Km)により変換された外乱トルクTd相当分の電流Itd として制御対象であるDCサーボモータ101に入力されると考える。
【0049】
そこで、非線形コントローラF/F.C部B3において、この外乱トルクTd相当分の電流Itd と同一の補正制御電流uff を前記線形コントローラF/B.Cからの出力電流ufb に減算した電流uを出力することにより、前記外乱トルクTd相当分の電流Itd がキャンセルされた状態の電流を実入力電流u’として制御対象に出力することができる。なお、この非線形コントローラF/F.C部B3には、図17に示すように、エンジン回転数Nと制御軸作動角(検出作動角)θより参照されるマップ(f(θ、N))を備え、このマップは、予め実験で計測された非線形な外乱トルクTdを打ち消すような外乱トルクTdの値が設定されており、このマップで得られた外乱トルクTdを変換式(1/Km)により補正制御電流uff に変換された状態で出力されるようになっている。
【0050】
以上のように、この発明の実施の形態1の内燃機関の可変動弁制御装置では、作動角センサ102で検出された制御軸16の検出作動角θ信号に基づいて制御軸16を機関の運転状態に応じた目標制御軸作動角位置に回転駆動させるべくフィードバック制御する線形コントローラF/B.Cの他に、バルブスプリング33の反力等に起因してカム軸13側からの非線形特性入力による制御軸16の作動角変動分を修正すべくエンジン回転数Nおよび制御軸16の検出作動角θに応じてフィードフォワード制御する非線形コントローラF/F.Cを備えた構成としたことで、制御軸16の作動角制御において、カム軸13やロッカアーム18等を通じて制御軸16に伝わるバルブスプリング33の反力に起因する非線形特性である反力トルク(エンジン回転数N、作動角θ毎に変動)をキャンセルすることで安定した制御応答特性が得られ、これにより、制御性の向上が図れるようになるという効果が得られる。
【0051】
また、非線形コントローラF/F.Cを、線形コントローラF/B.Cとは分離独立した状態で設けた構成としたことで、フィードバック制御が行われる線形コントローラF/B.Cの設計が容易になり、また、前述のように、規範モデルを導入した設計が可能となるから、より安定した制御応答特性が得られるようになるという効果が得られる。
【0052】
また、非線形コントローラF/F.Cでは、エンジン回転数センサ106で検出されたエンジン回転数Nと作動角センサ102で検出された制御軸16の作動角θから外乱トルクTdを求めるマップに基づいてフィードフォワード制御が行われるようにしたことで、制御を簡略化することができるようになる。
【0053】
(発明の実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2の内燃機関の可変動弁装置について説明する。なお、この発明の実施の形態2の説明にあたっては、前記発明の実施の形態1と同様の構成部分はその図示および説明を省略し、もしくは、同一の符号を付けてその説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0054】
この発明の実施の形態2の内燃機関の可変動弁制御装置は、前記発明の実施の形態1の内燃機関の可変動弁制御装置に、非線形ゲイン積分器B4を付加したもので、あり、この非線形ゲイン積分器B4の内容を、図18のシステムブロック図に基づいて説明する。
【0055】
一般に、非線形コントローラF/F.Cは、機械機構のパラメータ、非線形反力トルクを基に制御定数が設定されるが、これらの値はVEL機構における静摩擦や動摩擦等の非線形要素、エンジンの経年変化、個体差による特性のばらつき等があるため、純粋に機械的な特性しか設定してない前述の制御では、目標制御軸作動角に対する実制御軸作動角に差が生じることになる。そこで、この発明の実施の形態2では、この残留偏差を修正するために非線形ゲイン積分器B4を追加した構成としたものである。
【0056】
即ち、通常の積分補償器における積分演算式は、次式のようになるが、
【数2】
このまま使用すると、制御偏差eが大きく、個体差等による影響が少ない部分で余分な積分動作を行うため、図19に示すように、目標制御軸作動角に対する実制御軸作動角の応答でオーバシュートが発生してしまい、元々の制御応答特性を損ねてしまう可能性がある。
【0057】
そこで、この非線形ゲイン積分器B4では、制御偏差eが大きいうちは個体差等による影響が生じにくいため、あまり積分動作を行わず、制御偏差eが小さくなると個体差等による影響が大きくなるため、積分動作が有効となるように、積分ゲインの値を、
積分ゲイン/e(制御偏差)2
と設定することにより、積分演算式を、
【数3】
とした。
【0058】
また、前記積分ゲインと制御偏差eの除算は、制御偏差eの絶対値がある設定値以上(|e|≧設定値)の時のみ実行され、0からある設定値以内(|e|<設定値)の場合には、除算を実行せずに0を出力するように構成されている。
【0059】
その結果、この発明の実施の形態2では、図20に示すように、目標制御軸作動角への制御においてオーバシュートを防止しつつ、機構における静摩擦や動摩擦等の非線形要素、エンジンの経年変化、個体差による特性のばらつき等によって発生する残留偏差を修正することができるようになるという効果が得られる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態を説明してきたが、具体的な構成はこれら発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0061】
例えば、発明の実施の形態では、機関弁として吸気弁を例にとったが、排気弁についても適用することができる。
また、本発明が適用される可変動弁機構としては、この発明の実施の形態で例示した構造のものに限定されるものではなく、従来例に示した構造のものや、その他の可変動弁機構にも全て本発明を適用することができる。
【0062】
【発明の効果】
以上詳細に説明してきたように、本発明請求項1記載の内燃機関の可変動弁制御装置では、上述のように、作動角検出手段で検出された制御軸の作動角信号に基づいて前記制御軸を機関の運転状態に応じた目標制御軸作動角位置に回転駆動させるべく線形特性のフィードバック操作量を演算するフィードバック操作量演算手段と、前記機関弁側からの非線形特性入力による制御軸の作動角変動分を修正すべく非線形特性のフィードフォワード操作量を演算するフィードフォワード操作量演算手段と、前記フィードバック操作量と前記フィードフォワード操作量とを加算して、前記電磁アクチュエータに出力する操作量を演算する出力操作量演算手段と、を備えている構成としたことで、制御軸作動角制御において、カム軸側から制御軸に伝わるバルブスプリング反力等に起因する非線形特性である反力トルク(エンジン回転数、作動角毎に変動)にも対応し、安定した応答特性が得られ、制御性の向上が図れるようになるという効果が得られる。
【0063】
請求項2記載の内燃機関の可変動弁制御装置では、請求項1記載の内燃機関の可変動弁制御装置において、前記フィードフォワード操作量演算手段が、前記フィードバック操作量演算手段とは分離独立した状態で設けられている構成としたことで、フィードバック制御が行われるフィードバック操作量演算手段の設計が容易になり、また、規範モデルを導入した設計が可能となるから、より安定した応答特性が得られるようになる。
【0064】
請求項3記載の内燃機関の可変動弁制御装置では、請求項1または2に記載の内燃機関の可変動弁制御装置において、機関の回転数を検出する機関回転数検出手段と、前記機関回転数検出手段で検出された機関回転数と前記作動角検出手段で検出された制御軸作動角から前記非線形反力トルクを求めるマップとを備え、前記フィードフォワード操作量演算手段が、前記マップに基づいて求めた前記非線形反力トルクを相殺する前記フィードフォワード操作量を演算するように構成されたことで、制御を簡略化することができるようになる。
【0065】
請求項4記載の内燃機関の可変動弁制御装置では、請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の可変動弁制御装置において、前記目標制御軸作動角と前記作動角検出手段で検出された制御軸作動角との制御偏差が大きい時は小さな積分動作となり、偏差が小さい時は大きな積分動作となる非線形ゲイン積分補償手段を備えている構成としたことで、目標制御軸作動角への制御においてオーバシュートを防止しつつ、機構における静摩擦や動摩擦等の非線形要素、エンジンの経年変化、個体差による特性のばらつき等によって発生する残留偏差を修正することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における可変動弁装置を示す断面図(図2のA−A線断面図)。
【図2】上記可変動弁装置の側面図。
【図3】上記可変動弁装置の平面図。
【図4】上記可変動弁装置に使用される偏心カムを示す斜視図。
【図5】上記可変動弁装置における揺動カムの基端面とカム面に対応したバルブリフト特性図。
【図6】上記可変動弁装置の低速低負荷時の作用を示す断面図(図2のB−B線断面図)。
【図7】上記可変動弁装置の高速高負荷時の作用を示す断面図(図2のB−B線断面図)。
【図8】上記可変動弁装置のバルブタイミングとバルブリフトの特性図。
【図9】上記可変動弁装置の作動角制御システムを示すブロック図。
【図10】従来例の可変動弁装置の作動角制御回路の内容を示すシステム図。
【図11】従来例の可変動弁装置の作動角制御回路の内容を示すブロック図。
【図12】発明の実施の形態1の可変動弁装置におけるVEL機構のブロック図。
【図13】上記可変動弁装置のシステムブロック図。
【図14】上記可変動弁装置の線形コントローラ部のシステムブロック図。
【図15】上記可変動弁装置の線形コントローラ部のシステムブロック図。
【図16】上記可変動弁装置の線形コントローラ部に非線形コントローラ部を付加したシステムブロック図。
【図17】上記可変動弁装置において用いられるマップ。
【図18】発明の実施の形態2の可変動弁装置のシステムブロック図。
【図19】従来例の可変動弁装置における作動角制御状態を示すタイムチャート。
【図20】発明の実施の形態2の可変動弁装置における作動角制御状態を示すタイムチャート。
【図21】従来例の可変動弁装置を示す断面図。
【図22】従来例の可変動弁装置の作動角制御システムを示すブロック図。
【符号の説明】
12 吸気弁(機関弁)
13 カム軸
15 偏心カム(揺動駆動手段)
16 制御軸
17 制御カム
18 ロッカアーム
20 揺動カム
25 リンクアーム(揺動駆動手段)
33 バルブスプリング
CPU 制御装置(フィードバック操作量演算手段,フィードフォワード操作量演算手段,非線形ゲイン積分補償手段)
101 DCサーボモータ(電磁アクチュエータ)
102 作動角センサ(作動角検出手段)
106 エンジン回転数センサ(機関回転数検出手段)
Claims (5)
- 電磁アクチュエータによって回転駆動される制御軸の作動角に相関して機関弁のバルブ作動特性を変更する可変動弁機構を制御する内燃機関の可変動弁制御装置において、前記制御軸の作動角を検出する作動角検出手段と、機関の運転状態に応じた目標制御軸作動角と前記検出された制御軸作動角との制御偏差に応じたフィードバック操作量を演算するフィードバック操作量演算手段と、前記機関弁側から前記制御軸に入力される反力トルクであって、前記検出された制御軸作動角に対して非線形である反力トルクを相殺するフィードフォワード操作量を演算するフィードフォワード操作量演算手段と、前記フィードバック操作量と前記フィードフォワード操作量とに基づき、前記電磁アクチュエータに出力する操作量を演算する出力操作量演算手段と、を設けたことを特徴とする内燃機関の可変動弁制御装置。
- 前記フィードフォワード操作量演算手段が、前記フィードバック操作量演算手段とは分離独立した状態で設けられていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の可変動弁制御装置。
- 機関の回転数を検出する機関回転数検出手段と、前記検出された機関回転数と前記検出された制御軸作動角から前記反力トルクを求めるマップとを備え、前記フィードフォワード操作量演算手段が、前記マップに基づいて求めた前記反力トルクを相殺する前記フィードフォワード操作量を演算するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の可変動弁制御装置。
- 前記目標制御軸作動角と前記検出された制御軸作動角との制御偏差が大きい時は小さな積分動作となり、前記制御偏差が小さい時は大きな積分動作となる非線形ゲイン積分補償手段を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の可変動弁制御装置。
- 前記可変動弁機構は、カム軸と平行に配設された前記制御軸と、該制御軸の外周に偏心して固定された制御カムと、該制御カムに揺動自在に軸支されたロッカアームと、前記カム軸の回転に応じて前記ロッカアームの一端部を揺動駆動する揺動駆動手段と、前記ロッカアームの他端部に連係して揺動して機関弁を開作動させる揺動カムと、前記機関弁を閉じる方向に付勢するバルブスプリングと、前記電磁アクチュエータと、を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の可変動弁制御装置。
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