JP4018799B2 - 散乱吸収体の吸収成分の濃度計測方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は散乱吸収体の吸収成分の濃度計測方法及び装置に関する。より詳しくは、本発明は、種々の形状をした生体などである散乱吸収体に対して、散乱係数が相違しかつそれらの比率が既知である2種類以上の所定波長の光を入射し、散乱吸収体の内部を拡散伝搬して表面に出てくる所定波長の光を検出して、検出位置での光量及び平均飛行距離(average flight pathlength / average optical pathlength)を求め、この光量と平均飛行距離から散乱吸収体内部の特定吸収成分の濃度やその絶対値、ヘモグロビンの酸素飽和度、さらにはそれらの時間変化や空間分布などを、散乱吸収体の形状に影響されることなく、高精度かつ非侵襲で計測することができる散乱吸収体の吸収成分の濃度計測方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
生体のような散乱吸収体内部の特定吸収成分の濃度やその絶対量、さらにはこれらの時間変化や空間分布などを、非侵襲で精密に測定したいという要請は非常に強く、現在までに連続光(CW光)や変調光(例えばパルス光、方形波光、正弦波変調光など)を用いる方法、さらに波長の異なる光を利用する方法など、種々の方法や試みがなされてきた。
【0003】
ところが、これらの従来技術では、生体のように種々の形をした部位、或は同じ部位でも形状に個体差がある対象物などについて、内部の特定吸収成分の濃度を十分正確に計測する方法や装置は未だ開発されていなかった。このことは、光を利用した生体の非侵襲計測の大きな問題であり、その改善が強く望まれていた。
【0004】
生体などの散乱吸収体に入射された光は、散乱吸収されながら内部を拡散伝搬し、その一部が表面に出てくる。そして、散乱吸収体の外部は、普通、空気であるため、表面に出た光は自由空間を散逸する。
【0005】
散乱吸収体の内部情報計測では、上記のようにして表面に出てくる光を検出する。このとき、散乱吸収体の境界条件(形状)が異なると、例えば球であるか直方体であるかなどによって、表面の所定の位置に出てくる光の量や挙動が大きく異なる。
【0006】
したがって、このような計測の精度を高めるには、散乱吸収体内部の光の挙動をよく理解する必要がある。最近では、散乱吸収体内部の光の挙動はコンピュータによるモンテカルロシミュレーションで解析、実験、検討、または光拡散理論(Photon Diffusion Theory) によってある程度正確に記述、解析できることが知られている。
【0007】
このように、従来は、散乱吸収体内部の光の挙動を理解するために、モンテカルロシミュレーションや光拡散理論を用いていた。ところが、モンテカルロシミュレーションは極めて長い計算時間が必要であり、かつ、その結果から散乱吸収体内部の特定吸収成分の濃度などを算出することができなかった。
【0008】
また、光拡散理論を利用する場合には、光拡散方程式を実際に解く際に、境界条件を設定する必要がある。しかし、境界条件は散乱吸収体の形状に大きく依存するため、正確な計測を行うためには、散乱吸収体の形状が異なるたびに、新たな境界条件を設定して光拡散方程式を解くことが必要になる。また、境界条件をある程度正確に設定できる散乱吸収体の形状は、無限空間、半無限空間、無限円柱、無限にひろがる有限厚さのスラブなど、極めて単純なものに限定される。この結果、光拡散理論を利用して形状が単純でない生体などを計測する場合には、近似境界条件を用いることが不可欠となり、これが大きな計測誤差を生じる原因となっていた。
【0009】
そこで、これらの課題を解決する方法として、マイクロベアランバート則に基づいて散乱体の吸収係数や吸収体の濃度を測定する方法を本発明の発明者が開発し、既に特許出願している(特開平8−94517号)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平8−94517号公報に記載の方法は、被測定物の境界条件(形状)に依存せずに吸収係数の定量を行うことができる優れたものであるが、測定対象である散乱吸収体に対して散乱特性が等しいか又は等しいと見做せる複数の波長の光を用いていた。そのため、特開平8−94517号公報に記載の方法においては、使用可能な波長が極めて制限され、また、使用している光の複数の波長間における散乱特性の差が大きくなると計測誤差が増大し、前記の差がさらに大きくなると計測不能になるといった点で未だ十分なものではなかった。
【0011】
以上のように、散乱特性が波長に依存しかつ境界条件の異なる散乱吸収体に対して、使用可能な波長が制限されることなく統一的に適用できる拡散光の取り扱い方法は従来は未開発であり、使用する波長を制限することなくこのような散乱吸収体に対して統一的に内部の特定吸収成分濃度などを正確に計測することは従来は不可能であった。
【0012】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するため、散乱特性が波長に依存しかつ境界条件の異なる散乱吸収体内部の光の挙動に関する基本的関係を新たに開示し、この関係を利用して、散乱特性が波長に依存する場合であっても、使用する波長が制限されることなくかつかかる散乱特性の波長依存性の影響を受けることなく、種々の形状の散乱吸収体内部の特定吸収成分濃度や絶対値などを精度よく計測することが可能であり、さらにはそれらの時間変化や空間分布をも散乱特性の波長依存性の影響を受けることなく精度よく計測することが可能な散乱吸収体内部の吸収成分の濃度計測方法と装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、種々の境界条件(形状)をもつ散乱吸収体に、輸送散乱係数の比率が既知である2種類以上の所定波長の光を入射し、光検出位置における所定波長の光の光量と平均飛行距離を求め、これらの値から、散乱吸収体の境界条件及び散乱特性の波長依存性に影響されることなく、特定吸収成分の濃度やその絶対値を演算処理によって求めるものである。
【0014】
すなわち、本発明の散乱吸収体の吸収成分の濃度計測方法は、(a)ヒトを除く測定対象である散乱吸収体に対して輸送散乱係数が互いに相違しかつこれらの輸送散乱係数の比率が既知である2種類以上の所定波長の光を発生する光発生ステップと、(b)前記光を光入射位置から前記散乱吸収体に入射する光入射ステップと、(c)前記散乱吸収体の内部を伝搬した前記光を、前記光入射位置と異なる1以上の光検出位置で検出して、1以上の光検出信号を取得する光検出ステップと、(d)前記光検出信号に基づいて、前記2種類以上の所定波長の光の各々に対する前記光検出位置での光量及び平均飛行距離をそれぞれ検出するパラメータ検出ステップと、(e)前記輸送散乱係数の比率と、前記光量と、前記平均飛行距離と、前記2種類以上の所定波長の光に対する吸収成分の単位濃度当たりの吸収係数の差との間の所定の関係に基づいて、前記吸収成分の濃度を演算する演算処理ステップと、を含むことを特徴とする方法である。
【0015】
また、本発明の散乱吸収体の吸収成分の濃度計測装置は、(a)測定対象である散乱吸収体に対して輸送散乱係数が互いに相違しかつ該輸送散乱係数の比率が既知である2種類以上の所定波長の光を発生する光源と、(b)前記光を光入射位置から前記散乱吸収体に入射する光入射手段と、(c)前記散乱吸収体の内部を伝搬した前記光を、前記光入射位置と異なる1以上の光検出位置で検出して、1以上の光検出信号を取得する光検出手段と、(d)前記光検出信号に基づいて、前記2種類以上の所定波長の光の各々に対する前記光検出位置での光量及び平均飛行距離をそれぞれ検出するパラメータ検出手段と、(e)前記輸送散乱係数の比率と、前記光量と、前記平均飛行距離と、前記2種類以上の所定波長の光に対する吸収成分の単位濃度当たりの吸収係数の差との間の所定の関係に基づいて、前記吸収成分の濃度を演算する演算処理手段と、を含むことを特徴とする装置である。
【0016】
本発明の方法及び装置において、前記2種類以上の所定波長の光はパルス光としてもよい。
【0017】
また、前記2種類以上の所定波長の光を所定変調周波数成分を有する正弦波変調光とし、前記光量は(i)前記光検出信号の直流成分あるいは(ii)前記光検出信号に含まれる前記所定変調周波数成分の信号の振幅から算出し、前記平均飛行距離は前記所定変調周波数成分の信号の位相遅れから算出してもよい。
【0018】
さらに、前記2種類以上の所定波長の光を所定の繰り返し変調周波数成分を有する変調光とし、前記光量は(i)前記光検出信号の直流成分あるいは(ii)前記光検出信号に含まれる前記所定の繰り返し変調周波数成分もしくはその整数倍の周波数成分の信号の振幅から算出し、前記平均飛行距離は前記所定の繰り返し変調周波数成分もしくはその整数倍の周波数成分の信号の位相遅れから算出してもよい。
【0019】
また、前記輸送散乱係数の比率と、前記光量と、前記平均飛行距離と、前記2種類以上の所定波長の光に対する吸収成分の単位濃度当たりの吸収係数の差との間の所定の関係は、検出された光量の自然対数を吸収係数で偏微分したものが平均飛行距離に等しいことに基づいてかつ散乱係数の相違に起因する平均飛行距離の相違を無視することなく導出された関係である。
【0020】
本発明の方法及び装置の一態様においては、前記演算処理ステップ(演算処理手段)において、下記式:
【数5】
[式中、
Vは吸収成分の濃度、
ε1 は吸収成分の波長λ1 の光に対する単位濃度当たりの吸収係数、
ε2 は吸収成分の波長λ2 の光に対する単位濃度当たりの吸収係数、
<L1 (λ1 )>は波長λ1 の光に対する平均飛行距離、
<L1 (λ2 )>は波長λ2 の光に対する平均飛行距離、
I1 (λ1 )は入射光強度B1 、波長λ1 の光に対する検出光量、
I1 (λ2 )は入射光強度B2 、波長λ2 の光に対する検出光量、
kは波長λ1の光に対する輸送散乱係数μs1'に対する波長λ2の光に対する輸送散乱係数μs2'の比(μs2'/μs1')、
pは0≦p≦1なる所定の値、
をそれぞれ示す]
で表される関係に基づいて前記散乱吸収体の吸収成分の濃度が演算されることが好ましい。
【0021】
また、本発明の方法及び装置の他の態様においては、前記演算処理ステップ(演算処理手段)において、下記式:
【数6】
[式中、
Vは吸収成分の濃度、
ε1 は吸収成分の波長λ1 の光に対する単位濃度当たりの吸収係数、
ε2 は吸収成分の波長λ2 の光に対する単位濃度当たりの吸収係数、
<L1 (λ1 )>は波長λ1 の光に対する光検出位置r1での平均飛行距離、
<L1 (λ2 )>は波長λ2 の光に対する光検出位置r1での平均飛行距離、
<L2 (λ1 )>は波長λ1 の光に対する光検出位置r2での平均飛行距離、
<L2 (λ2 )>は波長λ2 の光に対する光検出位置r2での平均飛行距離、
I1 (λ1 )は入射光強度B1 、波長λ1 の光に対する光検出位置r1での検出光量、
I1 (λ2 )は入射光強度B2 、波長λ2 の光に対する光検出位置r1での検出光量、
I2 (λ1 )は入射光強度B1 、波長λ1 の光に対する光検出位置r2での検出光量、
I2 (λ2 )は入射光強度B2 、波長λ2 の光に対する光検出位置r2での検出光量、
kは波長λ1の光に対する輸送散乱係数μs1'に対する波長λ2の光に対する輸送散乱係数μs2'の比(μs2'/μs1')、
pは0≦p≦1なる所定の値、
qは0≦q≦1なる所定の値、
をそれぞれ示す]
で表される関係に基づいて前記散乱吸収体の吸収成分の濃度が演算されることが好ましい。
【0022】
なお、本発明において「輸送散乱係数が互いに相違する」とは、測定対象である散乱吸収体に対する2種類以上の所定波長の光それぞれに対する輸送散乱係数の差が無視できない程度に大きいことをいう。
【0023】
本発明は、散乱特性が波長に依存しかつ境界条件の異なる種々の散乱吸収体に対して成立する基本的関係、つまり検出位置での光量と、平均飛行距離と、2種類以上の所定波長の光に対する吸収成分の単位濃度当たりの吸収係数の差または比率と、2種類以上の所定波長の光に対する散乱成分の輸送散乱係数の値または比率との関係に基づいて特定吸収成分の濃度を演算処理するため、使用する波長が制限されることなくかつ散乱吸収体の境界条件(形状)に影響されずに、特定吸収成分の濃度をより正確に計測することができる。また、特定吸収成分の濃度の時間変化や空間分布を計測することも可能になる。
【0024】
また、本発明では、特定吸収成分の濃度を演算処理する際のパラメータとして、実測値から得られる光量および平均飛行距離を用いている。これらのパラメータは、光検出位置で得られるほとんど全ての光を利用して求められるもの、つまり積分形の値であるため、高い信号対雑音比が得られ、その結果として高い計測精度が得られる。
【0025】
なお、本発明は、散乱吸収体に対して輸送散乱係数が互いに相違しかつそれらの比率が既知である2種類以上の所定波長の光を入射して計測するものであり、計測値から所定の波長における吸収成分の吸収係数の差が導出され、これから特定吸収成分の濃度が求められる。
【0026】
【発明の実施の形態】
(本発明の原理)
先ず、本発明の原理について説明する。なお、以下に述べる知見は本発明者らによって初めて開示されるものである。
【0027】
均一な散乱吸収体を考え、散乱吸収体の表面に配置した光源から発した光が散乱吸収体の内部を伝搬して、表面に置かれた光検出器で検出されるものとする。この場合、散乱吸収体の形状は、拡散光の再入射が不可能な面からなるものであれば、任意でよい。
【0028】
図1は、検出された光(または光子)が散乱吸収体の内部を伝搬した飛跡の例を示す。
【0029】
光は散乱粒子で散乱され、その光路はジグザグに折れ曲がる。この時、ジグザグな飛行距離lに対してランバード・ベア則が成立し、伝搬光の強度はジグザグな飛行距離(累積距離)lに対して指数関数的に減衰する。このとき、媒体中の光速度をc、飛行時間(time-of-flight)をtとすれば、飛行距離はl=ctとなる。
【0030】
他方、時間分解計測で得られる光検出信号の時間波形J(ct)を考えると、図2に示すように、飛行距離lは光検出信号の時間波形J(ct)の横軸ct=lに対応する。
【0031】
以上から、時刻tに検出されたジグザグ光の飛行距離と吸収に関する下記のような重要な関係式が得られ、吸収の度合いは飛行距離lと吸収係数μa のみに関係することがわかる。つまり、
【数7】
ここで、
ls は平均自由飛行距離ls =1/μs 、
nは散乱粒子との衝突回数、
μa は吸収係数、
μs は散乱係数、
B0 は散乱吸収体に入射される光の入射強度、
B0 A(μs,t)は吸収がない場合(μa =0のとき)の光検出信号、
である。またここで、l>>ls であり、A(μs,t)は散乱の影響を表す。
【0032】
つぎに、上記の関係から散乱吸収体内部の光の挙動に関する基本関係式を導出する。まず、時間波形(時間分解計測に対応)に関するものは、
【数8】
である。ただし、(3)式は(2)式を書き換えたものである。
【0033】
以上の4個の式のうち、生体内のヘモグロビン濃度の定量などには、(3)式又は(4)式が便利である。
【0034】
また、検出光量Iは上記のJ(μs,μa,t)を時間積分したものであるから、検出光量I(時間積分値、CW計測に対応)に関する次の基本関係式が得られる。ただし、以下では、A(μs,t)のラプラス変換(s=cμa )をF[A(μs,t)]で表す。
【0035】
【数9】
上記の(10)式に示す<L(μs,μa)>は(3)式に示すJ(μs,μa ,t)の分布の加重平均c<t>に等しく、重心、平均飛行距離または平均光路長とよばれる。
【0036】
この平均飛行距離<L(μs,μa)>は、検出信号の時間分解波形J(μs,μa,t)を演算して算出することができる。また、別の方法、例えば変調光入射に対する光検出信号の位相遅れから計算することもできる。この平均飛行距離<L(μs,μa)>は、光検出信号全体を利用して求められる量、つまり積分形の量であるから、高い信号対雑音比(S/N)が得られる。なお、一般に平均飛行距離<L(μs,μa)>はμa に依存する。
【0037】
以上のことは、モンテカルロシミュレーションでも確認されている。また、以上のことから、光拡散方程式を利用する場合には、従来の拡散定数から吸収係数を取り除いた新たな拡散定数Dを定義して用いるのが妥当であることが示される。つまり、
【数10】
である。なお、μs'は相似原理による輸送散乱係数μs '=(1−g)μs (ただし、gは散乱角の余弦の平均値である)である。
【0038】
本発明では、散乱係数の波長依存性を考慮して更に以下の解析を行う。先ず(10)式の両辺を0からμaまで積分することにより、
【数11】
が得られる。なお、上式中、
【数12】
である。
【0039】
いま、散乱吸収体に1種類の吸収成分が含まれ、波長λ1 とλ2 の光に対する吸収成分の単位濃度当たりの吸収係数を、それぞれε1 、ε2 とすれば、吸収成分の濃度Vは、
【数13】
となる。ただし、μa1とμa2は、波長λ1 とλ2 における吸収成分の吸収係数である。
【0040】
したがって、波長λ1(入射光強度B1)と波長λ2(入射光強度B2)の入射光に対して、平均飛行距離<L1(λ1)>=<L1(μs1,μa1)>と<L1(λ2)>=<L1(μs2,μa2)>、および、光量I1(λ1)=I1(μs1,μa1)とI1(λ2)=I1(μs2,μa2)を検出するものとすれば、
【数14】
となる。ただし、上式中、
【数15】
とする。したがって、(15)式を変形して、
【数16】
となる。本発明者らは、本発明者らによる先の出願(特開平8−94517号公報)に記載の方法においては上式中右辺第2項の散乱係数の違いの影響を無視していたため、これが解析誤差を生じる一因になっていたことを見出した。散乱係数が波長依存性を有する場合において、吸収係数(μa)と平均光路長(L:平均飛行距離)との関係を実験的に調べた結果を図3に示す。散乱体としてイントラリピッド溶液1%、吸収体としてグリーニッシュブラウンインクを用いて測定した。このようにして平均光路長に関する(16)式の様子を図に書くと、図3に示すようになる。すなわち、同じ吸収係数の状態を測定していても、散乱係数が異なることにより平均光路長が異なっていることがわかる。
【0041】
本発明においては、この点を補正しつつ解析を行う以下の諸式を導出する。
【0042】
平均光路長は光拡散方程式からも求めることができる。そこで、光拡散方程式を用いて、上記平均光路長の関係を求める。このような平均光路長は、半空間反射型および、スラブ透過型に対して、
【数17】
(式中、μs'は相似原理による輸送散乱係数であり、μeffは、
【数18】
である)となる。ここで、<L(μs,μa)>と<L(μs',μa)>はμs '=(1−g)μs (ただし、gは散乱角の余弦の平均値である)の変換のもとにそれぞれ等しいものとする。
【0043】
従って、λ1とλ2に対して、
【数19】
が成り立ち、よって、
【数20】
となり、以下のいずれかの近似式、
【数21】
が成り立つ。ここで、通常はr>5mmであり、生体のパラメータを考えると(22)式を満足している。よって、以下では(22)式について考える。すなわち、(22)式の成立する範囲では、
【数22】
となり、(24)式を(16)式に代入すると、
【数23】
が成り立つ。(25)式中の右辺第―項においては、平均値の定理を用いると、
【数24】
なる条件を満たすμaxが存在する。ただし、μa1≦μax≦μa2またはμa2≦μax≦μa1である。また0≦p≦1の条件を満たす適宜のpを用いて、
【数25】
と表すことができる。
【0044】
また、(25)式中の右辺第二項は、μa=0まで(24)式が成立するとすれば、
【数26】
となる。従って、(25)式に(27)式及び(28)式を代入し、
【数27】
が導かれる。ここで、(29)式に
【数28】
を代入すれば、
【数29】
となり、よって、
【数30】
が導かれる。
【0045】
従って、吸収成分の濃度Vは、下記式、
【数31】
に従って演算することができることを本発明者らは見出した。
【0046】
すなわち、ε1 、ε2 、B1、B2、並びにk(輸送散乱係数の比率)は既知数であるから、計測によって得られる値、つまり平均飛行距離<L1(λ1)>と<L1(λ2)>、光量lnI1(λ1)とlnI1(λ2)、および経験的に定めることができるpの値から、特定吸収成分の濃度Vを演算することができる。
【0048】
さらに一般的に、波長λ1(入射光強度B1)と波長λ2(入射光強度B2)の入射光に対して、光検出位置r1とr2で、それぞれ平均飛行距離<L1(λ1)>,<L1(λ2)>,<L2(λ1)>,<L2(λ2)>、及び光量I1(λ1),I1(λ2),I2(λ1),I2(λ2)を検出するものとすれば、下記(35)式
【数33】
と、下記(36)式
【数34】
との差分をとると、左辺は
【数35】
となり、右辺は
【数36】
となる。これより
【数37】
が導かれる。
【0049】
従って、吸収成分の濃度Vは、下記式、
【数38】
に従って演算することができることを本発明者らは見出した。ただし、pは0≦p≦1、qは0≦q≦1を満足する適宜の値である。
【0050】
この場合にも、前記と同様にして、ε2 、ε1 、並びにk(輸送散乱係数の比率)は既知数であるから、計測によって得られる値、つまり平均飛行距離<L1 (λ1 )>,<L1 (λ2 )>,<L2 (λ1 )>,<L2 (λ2 )>、光量lnI1 (λ1 ),lnI1 (λ2 ),lnI2 (λ1 ),lnI2 (λ2 )、および経験的に定めることができるp、qの値から、特定吸収成分の濃度Vを算出することができる。
【0051】
さらに、この場合にも、p=q=1/2とすれば、(39)式は
【数39】
となり、十分な計測精度を得ることができる。
【0052】
なお、散乱吸収体に2種類の吸収成分が含まれる場合には、3種類の波長の光を使用すればよい。つまり、2種類の散乱吸収体の吸収成分濃度をV1 、V2 とすれば、(33)式または(39)式と同様にして、V1 とV2 に関する2連の式が成立する。したがって、この連立方程式を解いてV1 とV2 を求めることができる。さらに一般的に、散乱吸収体にm種類の吸収成分が含まれる場合には、(m+1)種類の波長の光を使用すれば、m種類の吸収成分の濃度を計測することができる。
【0053】
例えば、図4は酸素化型、脱酸素化型ヘモグロビンと酸素化型、脱酸素化型ミオグロビンの吸収スペクトルを示す。脳の中のヘモグロビンでは、酸素化型、脱酸素化型成分の比率などを計測することが重要である。この場合には、酸素化型、脱酸素化型成分に対して吸収係数の差が大きい波長の光、つまり700nmから1.2μmの波長の光を利用して、上述の原理による計測を行うことができる。
【0054】
なお、本発明においては、異なる波長の光に対する散乱成分の散乱係数が相違する場合であっても散乱吸収体内の吸収成分濃度を精度よく計測することが可能であるため、実際の生体試料などのように散乱係数の波長依存性が無視できない場合であっても使用する波長が制限されることなく種々の境界条件(形状)の散乱吸収体についての計測が可能となる。
【0055】
以上から、境界条件の異なる種々の散乱吸収体に対して、特定吸収成分の濃度を計測する方法が明らかになった。なお、上記の実施形態においてはパルス光を用いてインパルスレスポンスを測定する場合について説明しているが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、例えば、以下に説明するように変調光を用いてもよい。
【0056】
変調光を用いる場合、インパルス応答h(t)のフーリエ変換はシステム関数を表す。インパルス応答h(t)が時間因果関数であることを考慮し、前記(3)式のフーリエ変換を考えると、次のようなシステム関数H(ω)が導出される。
【0057】
【数40】
ここで、R(μs,cμa,ω)とX(μs,cμa,ω)はそれぞれ実部と虚部、またA(μs,cμa,ω)とφ(μs,cμa,ω)はそれぞれ振幅と位相を表す。なお、位相遅れは位相の符号を変えたものである。
【0058】
次に、(3)式を(41)式に代入して整理すると、複素関数論でコーシー−リーマン(Cauchy-Riemann)の関係式とよばれる次の関係式が成立することがわかる。
【0059】
【数41】
更に、(42.1)式及び(42.2)式が成立する場合、次の関係が成立することが証明される。
【0060】
【数42】
従って、吸収係数μaの算出は、(42.1)式、(42.2)式、(43.1)式及び(43.2)式の中のいずれの式を利用してもよく、具体的には、これらの式をμaで積分したもの、つまり上記の諸式から得られる次式を利用することが好ましい。
【0061】
【数43】
ただし、(44.1)式〜(44.4)式中の右辺第2項は積分定数であり、それぞれμa=0のときの値を示す。そして、上記(44.1)式〜(44.4)式を用いて前述と同様に解析することによって、(33)式又は(39)式のような散乱吸収体の吸収成分濃度に関する式を導出することができる。すなわち、例えば(44.3)式は前述の(12)式に対応しており、従って積分強度Iを振幅Aに、平均光路長<L>を位相φにそれぞれ置き換えることによって変調光を用いる場合についても前述と同様の解析が可能となる。なお、強度変調光を使用している場合には、前記式中のB1及びB2はそれぞれ強度変調光の変調周波数成分の振幅である。
【0062】
また、上記の実施形態においては、検出光量Iとして時間分解波形を時間0から無限大まで(計測における現実的な方法としては、観測光波形が十分減衰するまで)の範囲で積分した値を採用しているが(例えば(7)式)、本発明はこれに限定されない。すなわち、例えば、任意の時刻t1からt2を設定し、その範囲において光波形を積分して前述と同様の解析を行なってもよい。その場合には、被測定物である散乱吸収体内部を通過する光子の光路長を限定できるため、計測領域を限定できるという効果がある。
【0063】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例を説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0064】
(第1実施例)
図5は本発明の第1実施例を示すもので、散乱吸収体20の内部の吸収成分の濃度を計測する方法及び装置の構成を示す。この構成では、2種類の波長の光(λ1 、λ2 )と2種類の光検出距離(r1 、r2 )に対応して8個のパラメータ値が得られるから、先に述べた(39)式によって、吸収成分の濃度を計測することができる。
【0065】
光源2はレーザーダイオードなどを使用し、異なる波長λ1 とλ2 のパルス光を発生する。このパルス光の時間幅は、光検出信号から平均飛行距離が導出できる程度に短いものであればよく、普通は10ps〜100ns程度の範囲で自由に選べる。また、光の波長は計測対象に応じて適宜に選ぶ必要がある。一般に生体では、ヘモグロビンなどの吸収の関係から700nm以上の光がよく使用される。光源には、レーザーダイオードの他に、発光ダイオード、HeNeレーザー、チタンサファイアレーザーなどを使用することができる。
【0066】
光源2からのパルス光は波長選択器4で波長選択され、光ガイド6を通して計測対象である散乱吸収体20の表面に入射する。この場合、2種類の波長のパルス光を同時に入射する方法としてもよく、このときには波長選択器4は省略される。
【0067】
光ガイド6と散乱吸収体20の間の空間は、図5の実施例では微小になっている。しかし実際にはこれを大きくして、この空間に散乱吸収体20とほぼ等しい屈折率と散乱係数をもつ液状体やゼリー状物体(以下、インターフェイス材と呼ぶ)を満たしておいてもよい。つまり、光はこのインターフェイス材の中を拡散伝搬して計測対象に入射するから何ら問題は生じない。また散乱吸収体の表面反射が問題になるときは、インターフェイス材を適宜に選択することによって、表面反射などの影響を低減することができる。
【0068】
散乱吸収体の内部を拡散伝搬した光は、前記光入射位置から距離r1 およびr2 の位置に置いた光ガイド8および9で受光される。ここでも前記と同様の理由によって、インターフェイス材を使用してもよい。
【0069】
第1の光検出器12および第2の光検出器13は、前記光信号を電気信号に変換し、必要に応じて増幅し、それぞれ光検出信号を出力する。光検出器12および13は、光電子増倍管の他に、光電管、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、PINフォトダイオードなどを使用することができる。光検出器の選択に際しては、所定波長の光を検出する分光感度特性と必要な時間応答速度を持っていればよい。また、光信号が微弱であるときは、高利得の光検出器を使用する。さらには、光子を計数する時間相関光子計数法を用いてもよい。光検出器の受光面以外の場所は、光を吸収あるいは遮光する構造にしておくことが望ましい。また、前述したように散乱吸収体に2種類の波長のパルス光を同時に入射する場合には、光検出器12と散乱吸収体20との間、および光検出器13と散乱吸収体20との間に適宜の波長選択フィルタ(図示せず)を入れることが好ましい。
【0070】
パラメータ検出部15は、前記のそれぞれの光検出信号から、光量と平均飛行距離を検出する。光量は光検出信号の時間積分値であるから、光検出信号を積分することによって容易に得られる。また、平均飛行距離は、十分時間幅の短いパルス光入射に対する光検出信号の時間波形の加重平均であるから、光検出信号の時間波形から、例えば、前出の(10)式、あるいはこれと等価な演算を実行することによって容易に得られる。この場合、パラメータ検出部は必要に応じて、光源2の光パルス発生に同期した信号を利用する。
【0071】
演算処理部16は、前記パラメータ検出部で得られた8個のパラメータ値、つまり波長λ1 とλ2 のパルス光入射に対する位置r1 での光量I1 (λ1 ),I1 (λ2 )と平均飛行距離,<L1 (λ1 )>と<L1 (λ2 )>,および位置r2 での光量I2 (λ1 ),I2 (λ2 )と平均飛行距離<L2 (λ1 )>、<L2 (λ2 )>を用いて、前出の(39)式に基づいて、吸収成分の濃度Vを演算する。このとき、経験的に定めることができる定数pとqを用いる。また実際の計測では、p=q=1/2として、十分な精度が得られる。これらの演算処理は、演算処理部に組み込んだマイクロコンピュータなどで高速に実行される。
【0072】
なお、波長λ1 とλ2 のパルス光の散乱吸収体20への入射光強度が等しいか、又はこれらが等しくなるように制御できる場合には、第2の光検出器13を省略することができる。この場合、パラメータ検出部15で得られるパラメータは4個、つまり波長がλ1 とλ2 のパルス光入射に対する位置r1 での光量I1 (λ1 ),I1 (λ2 )と平均飛行距離<L1 (λ1 )>、<L1 (λ2 )>である。したがって、演算処理部16では、これらのパラメータ値を用いて、前出の(33)式に基づいて吸収成分の濃度Vを演算する。このとき、経験的に定めることができる定数pを用いるが、実際の計測では、p=1/2として、十分な精度が得られる。これらの演算処理は、演算処理部に組み込んだマイクロコンピュータなどで高速に実行される。
【0073】
上記では、一箇所から光を入射し、他の2箇所で光検出する方法について説明した。しかし実際には、2箇所から波長の異なる光を入射し、他の点でこれらの光を並列あるいは時分割で検出してもよいことは明らかである。
【0074】
また、前述したように、上記の実施例では、異なる波長の光を含む光を入射する方法と、異なる波長の光を時分割で入射させて使用する方法とがある。前者の場合には、異なる波長の光を同軸状のビームにして、光入射位置の直前に設けた波長選択フィルタで波長選択する方法、あるいはそのまま散乱吸収体に入射して、光検出器の直前に設けた波長選択フィルタで波長選択する方法、さらにはそれぞれの検出光を2つに分岐して波長選択して合計4個の光検出器で並列に検出する方法などがある。また後者では、光源側にミラーを用いた光ビーム切り換え器、ファルターを用いた波長切り換え器、光スイッチを用いた光切り換え器などを利用することができる。
【0075】
散乱吸収体に光を入射する手段は、図5に示した光ガイドの代わりに、集光レンズによる方法(図6(a))、光ファイバーを用いる方法(図6(b))、ピンホールを利用する方法(図6(c))、胃カメラのように体内から光を入射する方法(図6(d))などがある。また、太いビーム状の光を散乱吸収体に入射してもよい。この場合には、複数のスポット状光源が並んでいると考えればよい。
【0076】
散乱吸収体の内部を拡散伝搬した光を検出する手段しては、図5に示した光ガイドを用いる方法以外に、直接検出する方法(図7(a))、光ファイバーを用いる方法(図7(b))、レンズを用いる方法(図7((c))などがある。
【0077】
以上の第1実施例で、3種類の波長の光を使用すれば、2種類の吸収成分が含まれた散乱吸収体のそれぞれの吸収成分の濃度、あるいは多種の吸収成分が含まれた散乱吸収体の1種類の吸収成分の濃度と、他の吸収成分の合計の濃度などを計測することができる。例えば、酸素化型ヘモグロビンと脱酸素化型ヘモグロビンは、前出の図4に示したように、波長によって吸収係数が異なる。したがって、適宜に選択した3種類の波長の光を使用することによって、これらの濃度、さらには酸素飽和度などを計測することができる。一般的には、(m+1)種類の波長の光を使用して、m種類の吸収成分のそれぞれの濃度を計測することができる。また、(m+1)種類より多くの波長の光を使用して、計測精度を向上させることもできる。
【0078】
また、異なる時間に上記の計測を行なえば、吸収成分の濃度の時間変化を計測することができる。さらに、散乱吸収体に対する光の入射位置と光検出位置とを同期して走査(図示せず)させて、散乱吸収体の各部の吸収成分の濃度を計測すれば、濃度の空間分布の計測ができる。前記演算処理部16は、このようにして得た吸収成分の濃度情報を記憶する機能をもち、表示記録手段18はこれらを表示あるいは記録するものである。
【0079】
これらの演算処理は、メモリ、ディスプレイなどを備えるコンピュータ装置によって高速に実行することができる。
【0080】
(第2実施例)
図8は、本発明の第2実施例を示すもので、人体頭部などの散乱吸収体30の内部の酸素化型ヘモグロビンの濃度あるいはヘモグロビンの酸素飽和度(酸素化型ヘモグロビンの濃度とヘモグロビン全体の濃度との比)を計測、あるいはモニタリングする方法及び装置構成を示す。この実施例では、3種類の波長(λ1 、λ2 、λ3 )の光と、2種類の光検出距離(r1 、r2 )を用いて、得られる12個のパラメータ値を、先に述べた(20)式に基づく3連の式からなる連立方程式に代入し、酸素化型ヘモグロビン濃度およびヘモグロビンの酸素飽和度などを計測することができる。
【0081】
取り付け用のバンドをもつ容器26は、鉢巻きのように頭部30に装着される。この実施例に示す装置は、3種類の所定波長λ1 、λ2 およびλ3 の光を使用し、その動作は第1の実施例の装置とほぼ同じである。また、図9は、前出の図8に示した装置構成の一部分、つまり容器26の内部の詳細を示す。
【0082】
図9で、光源2から発せられた所定波長λ1 ,λ2 およびλ3 のパルス光は、波長選択器4で波長選択され、光ガイド6を通して頭部30に入射される。この際、3種類の波長は、前出の図4に示したヘモグロビンの吸収スペクトルを参照して、適宜に選ばれる。
【0083】
頭部内を拡散伝搬した光は、前記光入射位置から距離r1 とr2 の位置に置いた光ガイド8と9で受光され、第1の光検出器12と第2の光検出器13で電気信号に変換、また必要に応じて増幅される。ここで得られる信号は、3種類の波長と2種類の光検出距離に対する信号である。電源や種々の信号などは、容器26に付けたコネクタ28を介して、信号ケーブル32で外部機器34に接続される。外部機器34の中のパラメータ検出部(図示せず)では、3種類の波長と2種類の光検出距離に対するそれぞれの光量と平均飛行距離、つまり12個のパラメータが得られる。
【0084】
このとき、波長λ1 とλ2 に関して得られる信号、波長λ1 とλ3 に関して得られる信号に対して、前出の(39)式と同様の2連の関係が成立する。したがって、第1の実施例と同様にして、酸素化型ヘモグロビンの濃度V1 、脱酸素化型ヘモグロビンの濃度V2 およびヘモグロビンの酸素飽和度V1 /(V1 +V2 )を演算処理部(図示せず)で演算処理することができ、必要に応じて出力、表示することもできる。なお、これらの演算処理は、演算処理部に内蔵された、コンピュータなどで高速に実行される。また上記で、容器26の中で、信号を電波や光信号に変換して、信号ケーブルを介さないで外部機器34に伝送することもできる。
【0085】
以上の場合、光源、光入射部、光検出手段などは、第1の実施例で説明したものが利用できる。また、人体頭部などでは、表面反射や光ガイドと頭部間の隙間などが問題になることがある。この場合には、前述したインターフェース材を利用するとよい。この場合には、図9に示した光ガイドを省略して、頭部と波長選択器4との間、および頭部と光検出器12および13との間に、計測対象とほぼ同一の散乱係数と吸収係数をもつインターフェース材を使用する。
【0086】
このような装置は、脳内の計測以外に、例えばマラソン中の人の脚の筋肉中の酸素化型ヘモグロビン濃度の計測あるいはモニタリングなどに使用することができる。
【0087】
(第3実施例)
図10は、本発明の第3実施例を示すもので、正弦波変調光を用いて散乱吸収体20の内部の吸収成分の濃度を計測する方法及び装置の構成を示す。この実施例では、透過型の配置を計測に利用し、2種類の波長(λ1 ,λ2 )の変調光を入射し、2種類の光検出距離(r1 とr2 )の位置で光検出し、得られるパラメータ値を、先に述べた(39)式に代入して、吸収成分の濃度を計測する。
【0088】
変調光源21で発生した波長(光波長)λ1 とλ2 、所定角周波数(変調角周波数)ωの正弦波変調光は、波長選択器4を介して、光入射部5に導かれ、散乱吸収体20に入射される。ここで、光入射部は前出の図6(a)に示した方法、つまりレンズを利用しているが、他の方法を用いてもよい。
【0089】
所定角周波数の正弦波変調光は、図11(a)に示すようにレーザーダイオードの電流変調によって発生させる。また、正弦波変調光は、図11(b)又は図11(c)に示すように、2台のCWレーザーのビートあるいは光変調器を利用して発生させることもできる。
【0090】
光入射部5を介して散乱吸収体20に入射された正弦波変調光は、内部を拡散伝搬し、その一部が第1の受光部10および第2の受光部11に入射する。ここでは、受光部として前出の図7(c)に示す方法を用いている。受光部10および11に入射した光は、それぞれ光検出器12と13で電気信号に変換され、その信号は必要に応じて増幅される。この場合、光入射点と受光点の距離はr1 とr2 である。
【0091】
信号処理制御部36は、光源の制御および前記光検出信号の演算処理などを行い、散乱吸収体20の内部の吸収成分の濃度Vを出力するとともに、必要に応じてそれらを表示・記録する。
【0092】
図12は、前記光検出信号に対する演算処理を実行する部分の具体的な構成例を示す。光検出器12と13からの光検出信号は、信号抽出部14に導かれ、それぞれの光検出信号から角周波数成分が所定の値ωである信号のみが抽出される。この所定の角周波数ωの信号は、散乱吸収体20の内部を拡散伝搬した所定角周波数ωの光子密度波である。つぎに、パラメータ検出部15は、所定角周波数ωの信号の振幅Mと位相遅れφを検出する。
【0093】
以上のような散乱吸収体内部の変調光の挙動は、(3)式〜(10)式をフーリエ変換したもので表される。このとき、所定波長λ1 とλ2 に対して検出距離r1 で検出した上記所定角周波数ωの信号の振幅の比、つまりM1 (λ1 )/M1 (λ2 )は、前出の(39)式に用いられる光量I1 (λ1 )とI1 (λ2 )を用いて、
【数44】
と表される。したがって、(33)式や(39)式の光量比は、上記振幅の比に等しい。
【0094】
また、角周波数ωが媒体中の光速度と吸収係数の積に比べて十分に小さいとき、つまりω<<cμa のとき、位相遅れφは前述した平均飛行距離<L(μs,μa )>に比例する。
【0095】
例えば、図10に示した透過型の計測の場合の位相遅れφは、
φ(μs,r,ω)=ωc-1<L(μs,μa )>
である、したがって、平均飛行距離<L(μs,μa )>は、既知の値であるωとc、および計測値φから簡単に求めることができる。なお、このような関係は、半空間反射型計測の場合にも成立する。また、角周波数が高い場合には、
<L(μs,μa )>=c φ(μs,r,ω)/ω
の代わりに、
<L(μs,μa )>=c dφ(μs,r,ω)/dω
とする。すなわち、変調角周波数をわずかに変えて位相変化を計測すればよい。
【0096】
以上から、前出の(33)式または(39)式を用いて吸収成分の濃度Vを計算するのに必要な計測値パラメータ、すなわち波長λ1 とλ2 の入射光に対する光検出距離r1 とr2 での光量比I1 (λ1 )/I1 (λ2 ),I2 (λ1 )/I2 (λ2 )、および、平均飛行距離<L1 (λ1 )>と<L1 (λ2 )>,<L2 (λ1 )>と<L2 (λ2 )>が求められる。このとき、第1実施例と同様に、経験的に定めることができる定数pとqを用いるが、実際の計測では、p=q=1/2として、十分な精度が得られる。
【0097】
演算処理部16は、上記で求めたパラメータを用いて、前出の(33)式または(39)式で表される演算を実行して、吸収成分の濃度Vを出力する。また、必要に応じて、この濃度値は表示、記録される。なお、以上のような演算は、通常、メモリ、ディスプレイなどを備えたコンピュータ装置によって高速に実行される。
【0098】
なお、信号抽出部14とパラメータ検出部15には、市販のロックインアンプを利用することもできる。ロックインアンプでは、光検出信号から所定の周波数成分(変調周波数成分)ωの信号を抽出して、その信号の振幅Mと位相遅れφを検出することができる。このとき、前記変調光に同期した角周波数ωの信号を参照信号として利用する。なお、市販のロックインアンプは通常は変調周波数については200kHz程度までが計測範囲であるため、例えば変調周波数が100MHz程度の場合はそのままではロックインアンプで計測することはできない。そのため、光源の変調周波数とわずかに異なる周波数の局発発信器をもう1つ使用し、ヘテロダイン法で周波数変換を行なうとよい。例えば、光源の変調周波数が100MHzの場合には、局発発信器の周波数を100MHz+1kHzとして、両者の信号をミキサに入力すると、出力信号として1kHzが得られる。この1kHzは入力された100MHzの信号の振幅情報、位相情報を保持しているので、これをロックインアンプで計測すればよい。
【0099】
また上記の場合、光検出器12および13からの光検出信号の直流成分mdcは、ω=0としたときの値であり、(33)式および(39)式の光量Iに相当する。このような、直流成分mdcは、低域通過フィルターを用いて簡単に抽出することができる。したがって、上記の第3実施例では、所定の角周波数ωの信号の振幅の代わりに、所定の波長に対して検出距離r1 とr2 の位置で検出した直流成分mdcを用いてもよい。
【0100】
さらに、当然ではあるが上記の計測を異なる時間に行えば、吸収成分の濃度の時間変化を計測することができる。また、上記の構成で、散乱吸収体20に対して光入射位置と光検出位置を同期して相対的に走査させれば(図示せず)、吸収成分の濃度の空間分布を計測することができる。このとき、複数チャンネルの光検出系を利用することもできる。
【0101】
また、3種類の所定波長の光を利用すれば、2種類の吸収成分が含まれた散乱吸収体のそれぞれの吸収成分の濃度、あるいは多種の吸収成分が含まれた散乱吸収体の1種類の吸収成分の濃度と、他の吸収成分の合計の濃度などを計測することができる。より一般的には、(m+1)種類の波長の光を使用して、m種類の吸収成分のそれぞれの濃度を計測することができる。また、(m+1)種類より多くの波長の光を使用して、計測精度を向上させることもできる。
【0102】
以上のような演算は、通常、メモリ、ディスプレイなどを備えたコンピュータ装置によって高速に実行される。
【0103】
(第4実施例)
本実施例は、第3実施例で光源が発生する波長λ1 とλ2 の所定の周波数の正弦波変調光を、任意の波形の所定の繰り返し周波数(変調周波数)の変調光としたものである。つまり、第3実施例では、所定角周波数の正弦波変調光を利用したが、変調光は所定の周波数成分を含むものであれば、どんな波形のものであっても、その中に含まれる特定の周波数成分に対して、第3実施例の手法をそのまま適用することができる。例えば、繰り返しパルス光では、繰り返し周波数と同一、およびその整数倍の周波数成分が存在するので、いずれかの周波数成分に対して第3実施例の手法をそのまま適用することができる。所定の繰り返し周波数の変調光に要求される性能は、安定な繰り返し周波数と安定な光強度である。
【0104】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明による散乱吸収体内部の吸収成分の濃度計測方法及び装置によれば、散乱特性が波長に依存する場合であっても、使用する波長が制限されることなくかつかかる散乱特性の波長依存性の影響を受けることなく、種々の境界条件(形状)の散乱吸収体内部の特定吸収成分の濃度や絶対値などを計測することが可能となり、従ってその計測精度が大幅に改善される。さらに、本発明によれば、それら特定吸収成分の濃度や絶対値の時間変化や空間分布をも散乱特性の波長依存性の影響を受けることなく精度よく計測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】散乱吸収体内部を伝搬した光の飛跡の説明図である。
【図2】時間分解計測波形の例を示す説明図である。
【図3】散乱特性が波長依存性を有する場合における吸収係数と平均光路長との関係を示すグラフである。
【図4】各種生体物質の吸収スペクトルを示すグラフである。
【図5】第1実施例の装置の構成図である。
【図6】(a)〜(d)はそれぞれ、散乱吸収体への光入射方法を示す説明図である。
【図7】(a)〜(c)はそれぞれ、受光方法を示す説明図である。
【図8】第2実施例の装置の構成図である。
【図9】第2実施例の装置の光入射・検出部の構成図である。
【図10】第3実施例の装置の構成図である。
【図11】(a)〜(c)はそれぞれ、変調光の発生方法を示す説明図である。
【図12】光検出信号演算処理部の構成図である。
【符号の説明】
2…光源、4…波長選択器、5…光入射部、6,8,9…光ガイド、10,11…受光部、12,13…光検出器、14…信号抽出部、15…パラメータ検出部、16…演算処理部、18…表示記録部、20…散乱吸収体、21…変調光源、26…容器、28…コネクタ、30…人体頭部、32…ケーブル、34…外部機器、36…信号処理制御部、38…発振器。
Claims (16)
- ヒトを除く測定対象である散乱吸収体に対して輸送散乱係数が互いに相違しかつ該輸送散乱係数の比率が既知である2種類以上の所定波長の光を発生する光発生ステップと、
前記光を光入射位置から前記散乱吸収体に入射する光入射ステップと、
前記散乱吸収体の内部を伝搬した前記光を、前記光入射位置と異なる1以上の光検出位置で検出して、1以上の光検出信号を取得する光検出ステップと、
前記光検出信号に基づいて、前記2種類以上の所定波長の光の各々に対する前記光検出位置での光量及び平均飛行距離をそれぞれ検出するパラメータ検出ステップと、
前記輸送散乱係数の比率と、前記光量と、前記平均飛行距離と、前記2種類以上の所定波長の光に対する吸収成分の単位濃度当たりの吸収係数の差との間の所定の関係に基づいて、前記吸収成分の濃度を演算する演算処理ステップと、を含み、
前記輸送散乱係数の比率と、前記光量と、前記平均飛行距離と、前記2種類以上の所定波長の光に対する吸収成分の単位濃度当たりの吸収係数の差との間の所定の関係は、検出された光量の自然対数を吸収係数で偏微分したものが平均飛行距離に等しいことに基づいてかつ散乱係数の相違に起因する平均飛行距離の相違を無視することなく導出された関係である、
ことを特徴とする散乱吸収体の吸収成分の濃度計測方法。 - 前記2種類以上の所定波長の光はパルス光である、ことを特徴とする請求項1記載の散乱吸収体の吸収成分の濃度計測方法。
- 前記2種類以上の所定波長の光は所定変調周波数成分を有する正弦波変調光であり、
前記光量は、前記光検出信号に含まれる前記所定変調周波数成分の信号の振幅から算出され、かつ
前記平均飛行距離は、前記所定変調周波数成分の信号の位相遅れから算出される、
ことを特徴とする請求項1記載の散乱吸収体の吸収成分の濃度計測方法。 - 前記2種類以上の所定波長の光は所定変調周波数成分を有する正弦波変調光であり、
前記光量は、前記光検出信号の直流成分から算出され、かつ
前記平均飛行距離は、前記光検出信号に含まれる前記所定周波数成分の信号の位相遅れから算出される、
ことを特徴とする請求項1記載の散乱吸収体の吸収成分の濃度計測方法。 - 前記2種類以上の所定波長の光は所定の繰り返し変調周波数成分を有する変調光であり、
前記光量は、前記光検出信号に含まれる前記所定の繰り返し変調周波数成分あるいはその整数倍の周波数成分の信号の振幅から算出され、かつ
前記平均飛行距離は、前記所定の繰り返し変調周波数成分あるいはその整数倍の周波数成分の信号の位相遅れから算出される、
ことを特徴とする請求項1記載の散乱吸収体の吸収成分の濃度計測方法。 - 前記2種類以上の所定波長の光は所定の繰り返し変調周波数成分を有する変調光であり、
前記光量は、前記光検出信号の直流成分から算出され、かつ
前記平均飛行距離は、前記光検出信号に含まれる前記所定の繰り返し変調周波数成分あるいはその整数倍の周波数成分の信号の位相遅れから算出される、
ことを特徴とする請求項1記載の散乱吸収体の吸収成分の濃度計測方法。 - 前記演算処理ステップにおいて、下記式:
Vは吸収成分の濃度、
ε1 は吸収成分の波長λ1 の光に対する単位濃度当たりの吸収係数、
ε2 は吸収成分の波長λ2 の光に対する単位濃度当たりの吸収係数、
<L1 (λ1 )>は波長λ1 の光に対する平均飛行距離、
<L1 (λ2 )>は波長λ2 の光に対する平均飛行距離、
I1 (λ1 )は入射光強度B1 、波長λ1 の光に対する検出光量、
I1 (λ2 )は入射光強度B2 、波長λ2 の光に対する検出光量、
kは波長λ1の光に対する輸送散乱係数μs1'に対する波長λ2の光に対する輸送散乱係数μs2'の比(μs2'/μs1')、
pは0≦p≦1なる所定の値、
をそれぞれ示す]
で表される関係に基づいて前記散乱吸収体の吸収成分の濃度を演算する、ことを特徴とする請求項1記載の散乱吸収体の吸収成分の濃度計測方法。 - 前記演算処理ステップにおいて、下記式:
Vは吸収成分の濃度、
ε1 は吸収成分の波長λ1 の光に対する単位濃度当たりの吸収係数、
ε2 は吸収成分の波長λ2 の光に対する単位濃度当たりの吸収係数、
<L1 (λ1 )>は波長λ1 の光に対する光検出位置r1での平均飛行距離、
<L1 (λ2 )>は波長λ2 の光に対する光検出位置r1での平均飛行距離、
<L2 (λ1 )>は波長λ1 の光に対する光検出位置r2での平均飛行距離、
<L2 (λ2 )>は波長λ2 の光に対する光検出位置r2での平均飛行距離、
I1 (λ1 )は入射光強度B1 、波長λ1 の光に対する光検出位置r1での検出光量、
I1 (λ2 )は入射光強度B2 、波長λ2 の光に対する光検出位置r1での検出光量、
I2 (λ1 )は入射光強度B1 、波長λ1 の光に対する光検出位置r2での検出光量、
I2 (λ2 )は入射光強度B2 、波長λ2 の光に対する光検出位置r2での検出光量、
kは波長λ1の光に対する輸送散乱係数μs1'に対する波長λ2の光に対する輸送散乱係数μs2'の比(μs2'/μs1')、
pは0≦p≦1なる所定の値、
qは0≦q≦1なる所定の値、
をそれぞれ示す]
で表される関係に基づいて前記散乱吸収体の吸収成分の濃度を演算する、ことを特徴とする請求項1記載の散乱吸収体の吸収成分の濃度計測方法。 - 測定対象である散乱吸収体に対して輸送散乱係数が互いに相違しかつ該輸送散乱係数の比率が既知である2種類以上の所定波長の光を発生する光源と、
前記光を光入射位置から前記散乱吸収体に入射する光入射手段と、
前記散乱吸収体の内部を伝搬した前記光を、前記光入射位置と異なる1以上の光検出位置で検出して、1以上の光検出信号を取得する光検出手段と、
前記光検出信号に基づいて、前記2種類以上の所定波長の光の各々に対する前記光検出位置での光量及び平均飛行距離をそれぞれ検出するパラメータ検出手段と、
前記輸送散乱係数の比率と、前記光量と、前記平均飛行距離と、前記2種類以上の所定波長の光に対する吸収成分の単位濃度当たりの吸収係数の差との間の所定の関係に基づいて、前記吸収成分の濃度を演算する演算処理手段と、を含み、
前記輸送散乱係数の比率と、前記光量と、前記平均飛行距離と、前記2種類以上の所定波長の光に対する吸収成分の単位濃度当たりの吸収係数の差との間の所定の関係は、検出された光量の自然対数を吸収係数で偏微分したものが平均飛行距離に等しいことに基づいてかつ散乱係数の相違に起因する平均飛行距離の相違を無視することなく導出された関係である、
ことを特徴とする散乱吸収体の吸収成分の濃度計測装置。 - 前記2種類以上の所定波長の光はパルス光である、ことを特徴とする請求項9記載の散乱吸収体の吸収成分の濃度計測装置。
- 前記2種類以上の所定波長の光は所定変調周波数成分を有する正弦波変調光であり、
前記光量は、前記光検出信号に含まれる前記所定変調周波数成分の信号の振幅から算出され、かつ
前記平均飛行距離は、前記所定変調周波数成分の信号の位相遅れから算出される、
ことを特徴とする請求項9記載の散乱吸収体の吸収成分の濃度計測装置。 - 前記2種類以上の所定波長の光は所定変調周波数成分を有する正弦波変調光であり、
前記光量は、前記光検出信号の直流成分から算出され、かつ
前記平均飛行距離は、前記光検出信号に含まれる前記所定周波数成分の信号の位相遅れから算出される、
ことを特徴とする請求項9記載の散乱吸収体の吸収成分の濃度計測装置。 - 前記2種類以上の所定波長の光は所定の繰り返し変調周波数成分を有する変調光であり、
前記光量は、前記光検出信号に含まれる前記所定の繰り返し変調周波数成分あるいはその整数倍の周波数成分の信号の振幅から算出され、かつ
前記平均飛行距離は、前記所定の繰り返し変調周波数成分あるいはその整数倍の周波数成分の信号の位相遅れから算出される、
ことを特徴とする請求項9記載の散乱吸収体の吸収成分の濃度計測装置。 - 前記2種類以上の所定波長の光は所定の繰り返し変調周波数成分を有する変調光であり、
前記光量は、前記光検出信号の直流成分から算出され、かつ
前記平均飛行距離は、前記光検出信号に含まれる前記所定の繰り返し変調周波数成分あるいはその整数倍の周波数成分の信号の位相遅れから算出される、
ことを特徴とする請求項9記載の散乱吸収体の吸収成分の濃度計測装置。 - 前記演算処理手段において、下記式:
Vは吸収成分の濃度、
ε1 は吸収成分の波長λ1 の光に対する単位濃度当たりの吸収係数、
ε2 は吸収成分の波長λ2 の光に対する単位濃度当たりの吸収係数、
<L1 (λ1 )>は波長λ1 の光に対する平均飛行距離、
<L1 (λ2 )>は波長λ2 の光に対する平均飛行距離、
I1 (λ1 )は入射光強度B1 、波長λ1 の光に対する検出光量、
I1 (λ2 )は入射光強度B2 、波長λ2 の光に対する検出光量、
kは波長λ1の光に対する輸送散乱係数μs1'に対する波長λ2の光に対する輸送散乱係数μs2'の比(μs2'/μs1')、
pは0≦p≦1なる所定の値、
をそれぞれ示す]
で表される関係に基づいて前記散乱吸収体の吸収成分の濃度を演算する、ことを特徴とする請求項9記載の散乱吸収体の吸収成分の濃度計測装置。 - 前記演算処理手段において、下記式:
Vは吸収成分の濃度、
ε1 は吸収成分の波長λ1 の光に対する単位濃度当たりの吸収係数、
ε2 は吸収成分の波長λ2 の光に対する単位濃度当たりの吸収係数、
<L1 (λ1 )>は波長λ1 の光に対する光検出位置r1での平均飛行距離、
<L1 (λ2 )>は波長λ2 の光に対する光検出位置r1での平均飛行距離、
<L2 (λ1 )>は波長λ1 の光に対する光検出位置r2での平均飛行距離、
<L2 (λ2 )>は波長λ2 の光に対する光検出位置r2での平均飛行距離、
I1 (λ1 )は入射光強度B1 、波長λ1 の光に対する光検出位置r1での検出光量、
I1 (λ2 )は入射光強度B2 、波長λ2 の光に対する光検出位置r1での検出光量、
I2 (λ1 )は入射光強度B1 、波長λ1 の光に対する光検出位置r2での検出光量、
I2 (λ2 )は入射光強度B2 、波長λ2 の光に対する光検出位置r2での検出光量、
kは波長λ1の光に対する輸送散乱係数μs1'に対する波長λ2の光に対する輸送散乱係数μs2'の比(μs2'/μs1')、
pは0≦p≦1なる所定の値、
qは0≦q≦1なる所定の値、
をそれぞれ示す]
で表される関係に基づいて前記散乱吸収体の吸収成分の濃度を演算する、ことを特徴とする請求項9記載の散乱吸収体の吸収成分の濃度計測装置。
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