JP4018251B2 - 高弾性複合モノフィラメントおよびこれを用いた高弾性布帛、並びにその製法 - Google Patents

高弾性複合モノフィラメントおよびこれを用いた高弾性布帛、並びにその製法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、種々の工業用途、例えば各種膜材用補強材やネット・網類、事務用および車両用等として使用される椅子用シート材、あるいはテキスタイル分野などで有効に利用可能な優れた強度と弾性特性を有すると共に、優れた弾性回復特性を有する高弾性複合モノフィラメント、およびこれを用いた高弾性布帛とその製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、弾性に優れたモノフィラメントを布帛の構成素材として用い、適度の弾性を確保しつつ布帛としての特性や意匠性を高めることにより、例えば事務用や車両用の椅子等として汎用されている従来の発泡ウレタンに代替するクッション性と表皮材としての意匠性を兼ね備えた製品を得る技術が開発されている。
【0003】
その様なモノフィラメントの一例として、ポリエステルあるいはポリエーテル等の熱可塑性高分子を主成分とするエラストマーを素材とするものが知られている。しかしながらそれらのモノフィラメントは、ポリウレタンの如き従来のクッション材に比べると、繰り返し変形時の弾性回復性に欠けるという難点があり、こうした難点は、長期使用を前提とする車両等の椅子用素材としての実用化を進める上で大きな障害となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らはこうした従来技術の問題点を改善しようとするものであり、静的荷重を支持する布帛構成素材として十分な力学的特性を有しつつ、且つ繰り返し受ける外力により変形した場合でも力学的特性の低下が少なく、弾性回復特性に優れた高弾性複合モノフィラメントを提供すると共に、該高弾性複合モノフィラメントを用いた高弾性布帛とその製法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明にかかる高弾性複合モノフィラメントとは、融点の異なる2成分のポリエステル系エラストマーを用いた複合モノフィラメントであって、該フィラメントの任意の横断面において、低融点成分の占める面積比率が50%以下で、且つ低融点成分の該フィラメント表面への露出比率が、フィラメント全表面積に対し50%以下であり、破断伸度が80%以上、破断強度が0.5g/d以上、80℃における30%伸長後の伸長回復率が90%以上であるところに特徴を有している。
【0006】
該高弾性複合モノフィラメントにおいて、上記高融点成分としては、融点が150℃以上200℃未満のもので、低融点成分としては、前記高融点成分の融点より20℃以上50℃未満低い融点を有するものが望ましく、また前記高融点成分の構成素材としては、融点が150℃以上のポリエステルからなるハードセグメントと、融点もしくは軟化点が80℃以下の重合体からなるソフトセグメントを含む共重合体からなり、且つソフトセグメントの含有量が20〜50重量%であるものが好ましい。
【0007】
そして、上記構成の高弾性複合モノフィラメントを構成素材として含む織・ 編物もしくは不織布を、前記低融点成分の融点もしくは軟化点を超え且つ前記高融点成分の融点未満の温度に加熱すると、該複合モノフィラメントにおける低融点成分がモノフィラメント交点部で融着し、強度および弾性に優れた布帛を得ることができ、該高弾性布帛およびその製法も本発明の保護対象となる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる高弾性複合モノフィラメントは、融点の異なる2成分のポリエステル系エラストマーを主原料とする複合フィラメントであり、任意の横断面における低融点成分の占める面積比率が50%以下で、且つ低融点成分の該フィラメント表面への露出比率がフィラメント全表面積に対し50%以下であり、しかもフィラメントとしての破断伸度が80%以上、破断強度が0.5g/d以上で且つ80℃における30%伸長後の伸長回復率が90%以上の強度特性を有している。
【0009】
本発明にかかる上記弾性複合モノフィラメントを構成する高融点成分は、融点が150℃以上200℃未満であり、また低融点成分の融点は高融点成分の融点より20℃以上50℃未満低いものが好ましい。更に上記高融点成分および低融点成分のポリマー主成分は、ハードセグメントとしての比較的高融点のポリエステルセグメントと、分子量400〜6000のソフトセグメントとしての低融点重合体セグメントからなる共重合体が挙げられる。
【0010】
上記ハードセグメントとしての比較的高融点のポリエステルセグメントの構成成分は、好ましくは融点が150℃以上のものであり、ソフトセグメントとしての低融点重合体セグメントの構成成分は、融点ないし軟化温度が80℃以下のもので、ソフトセグメントの含有量が20〜50重量%のものが好ましい。
【0011】
本発明の高弾性複合モノフィラメントは、上記の様に高融点成分と低融点成分の2成分のポリマー成分がフィラメントの断面方向に対し異方的に複合されたもので、例えば図1〜4(いずれも複合フィラメントの横断面相当図、図中Aは高融点成分、Bは低融点成分を表わす) に例示する如く、2成分がサイド・バイサイド型や放射状、或いは一つの成分の中に他の成分が幾つかの小さい島状で分散した所謂海島型、更には例えば2つの成分が外周の一部で接合した様な形態等が例示され、その形状や形態は特に限定されない。
【0012】
本発明における他の特徴は、モノフィラメントを長手方向の任意の位置で切断した横断面において、低融点成分の占める面積比率が50%以下であり且つ、フィラメントの表面に露出している低融点成分の露出面積比率が、フィラメントの長さ方向に平均して全表面積に対し50%以下であることである。この点については後で詳述する。
【0013】
次に、フィラメントの主原料であるポリエステルブロック共重合体について詳述すると、
ハードセグメントを構成する高融点(硬)ポリエステルセグメント成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4' −ジフェニルジカルボン酸、ビス(4−カルボキシフェニル)メタン、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン等の芳香族ジカルボン酸又はそのエステルと、
エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2,2−ジメチルトリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、p−キシリレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等のジオール
から製造されるポリエステルあるいはこれら2種類以上のジカルボン酸あるいは2種類以上のジオールを用いたコポリエステル、或いは
p−(β−ヒドロキシエトキシ)安息香酸などのオキシ酸およびそれらのエステルから誘導されるポリエステル、ポリピバロラクトンなどのポリラクトン、1,2−ビス(4,4' −ジカルボキシフェノキシ)エタン等の芳香族エーテルジカルボン酸と前述の如きジオール成分とから製造されるポリエーテルエステル、更には上記ジカルボン酸類、オキシ酸類、ジオール類を適宜組合せたコポリエステル類等が挙げられる。
【0014】
一方、ソフトセグメントとしては、分子量400〜6000の低融点重合体が好ましく、その構成セグメント成分としては、例えばポリ(エチレンオキサイド)グリコール、ポリ(プロピレンオキサイド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコール等のポリアルキレンエーテルグリコール及びこれらの混合物、更にはこれらのポリエーテルグリコール成分を共重合した共重合ポリエーテルグリコール等が例示される。
【0015】
また炭素数2〜12程度の脂肪族ジカルボン酸と炭素数2〜10程度の脂肪族グリコールから製造されるポリエステル、例えばポリエチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリエチレンセバケート、ポリネオペンチルセバケート、ポリテトラメチレンドデカネート、ポリテトラメチレンアゼレート、ポリヘキサメチレンアゼレート、ポリ−ε−カプロラクトン等を示すことができる。更に、上記ポリエステルとポリエーテルを組合せたポリエステルポリエーテル共重合体なども使用できる。
【0016】
上記ポリエステルブロック共重合体中に占めるソフトセグメント成分の割合は5重量%以上、より好ましくは20重量%以上で、80重量%以下、より好ましくは50重量%が望ましい。
【0017】
本発明における最終の目的は、上記高弾性モノフィラメントを主要構成材とすることによって得られる編・織物もしくは不織布として、荷重を支持するための十分な力学的強さと、クッション性およびその繰り返し耐久性を兼ね備えた高弾性布帛を得ることにあり、そのためには、複合モノフィラメントとしての破断伸度が80%以上、より好ましくは100%以上、破断強度が0.5g/d以上、より好ましくは0.8g/d以上、更に好ましくは1.5g/d以上で、且つ80℃における30%伸長後の伸長回復率が90%以上、より好ましくは95%以上であることが必要となる。
【0018】
即ち複合モノフィラメントとしての破断伸度が80%未満では、得られる布帛に十分なエラストマー的特性が与えられなくなる。また破断強度が0.5g/d未満のものでは、得られる布帛の強力が不十分で静的荷重に対して強力不足となる。但し繊維の強度が逆に4.0g/dを超えると、布帛とした時の初期の荷重勾配が急激に立ち上がるので、布帛設計上好ましくない。更に好ましくは80℃における30%伸長回復率は、クッション材料としての耐久性の観点から非常に重要であり、それが90%未満であると繰り返し使用により弾性特性が劣化すると共に布帛に弛みが生じ易くなる。この様な観点から、より好ましい伸長弾性回復率は95%以上である。
【0019】
本発明の高弾性複合フィラメントは、上記の様に融点の異なる2成分のポリエステル系エラストマーを主たる構成素材とする好ましくは400〜5000デニールのものが好ましく、しかも上記2成分が断面方向に対し異方的に配列したものが望ましい。即ち布帛に優れたクッション性を与えるには、高融点成分と低融点成分の両者の主成分としてポリエステル系エラストマーを使用することが必要であり、このうち高融点成分部、フィラメントの基本力学特性と弾性回復特性を高める作用を発揮するもので、こうした作用をより効果的に発揮させるには、融点が200℃未満のものを選択し、且つフィラメントの横断面に占める高融点成分の面積比率を50%以上にすることが必須となる。
【0020】
高融点成分として融点が200℃以上のものを使用すると、得られる布帛のクッション性が乏しくなり、満足のいく弾性回復特性が得られなくなる。好ましくは、高融点成分および低融点成分を構成するポリマーの主成分が、ハードセグメントとして比較的融点の高いポリエステルセグメントと、分子量400〜6000の比較的融点の低いソフトセグメントとからなる共重合体である。より好ましいのは、ハードセグメントとして比較的融点の高いポリエステルセグメント構成成分の融点が150℃以上で、且つ融点ないし軟化温度が80℃以下のソフトセグメント構成成分の組み合わせからなり、ソフトセグメントの含有量が20〜50重量%の範囲のものである。中でも、ソフトセグメントを構成するポリマー単位の融点ないし軟化温度およびその含有率は重要であり、上記融点ないし軟化温度が80℃を超えたり含有率が20%未満になると、十分な弾性回復特性が得られなくなる。但し、含有比率が50%を超えると、クッション材として柔軟になり過ぎて満足な初期弾性特性が確保できなくなる。
【0021】
本発明における他の重要なポイントは、上記高弾性複合モノフィラメントを経・緯の一方または両方に用いて織・織物とし、あるいは不織布とした後、上記2成分中の高融点成分部に実質的影響を与えることなく、低融点成分部を部分融解あるいは融着させ、フィラメント交点部において接合点を形成することにより、布帛としての拘束力を向上せしめることにある。
【0022】
これにより、布帛の繰り返し変形時における編・織構造の変形を阻止して長期耐久性を与え、その結果として、高レベルの弾性回復性を長期的に維持する布帛を提供できるのである。
【0023】
こうしたフィラメント交点部の融着点(接合点)の形成とそれによる弾性回復特性を確保する上でも、複合フィラメントを構成する前記2成分のポリマーの両方がエラストマーであることが重要である。即ち、上記接合点を介して高融点部の有する力学特性、殊にその優れた耐初期歪み特性が布帛全体に伝えられ、布帛全体としての力学特性の設計に重要な役割を果たす。しかも、接合点を形成する部位もエラストマー素材で構成されることになるので、接合点自体が柔軟な弾性構造を示して耐久性を高めるばかりでなく、高融点部の有する優れた強度と弾性特性の複合効果によって、繰り返し変形に対してもより高度の弾性特性を維持し得るものとなる。
【0024】
こうした特性を有効に発揮させるには、上記2成分の融点差を20℃以上50℃未満とすることが望ましい。しかして融点差が50℃を超えると、接合点となる低融点部が柔らかすぎるため熱接着加工時に樹脂が流れ、適当な接合点が形成されにくくなる。しかも、布帛としての使用時においても低融点部にべたつき感が生じ、シート材等としての適性が損なわれる。
【0025】
即ち、本発明の複合モノフィラメントを用いた編・織物もしくは不織布を熱処理することによって得られる布帛の形態としては、低融点部が高融点部の近傍に熱処理後も実質的に残留し、且つフィラメント交差点においてのみ融着部を形成したものが理想的な形態となる。このような形態であれば、接合部を構成する低融点成分自体も布帛全体としての弾性特性向上に寄与する。即ち、高融点部が静的強度特性を発揮し、接合点を構成する低融点部が弾性回復性能に寄与するという、従来の概念にない複合的効果をもたらすのである。
【0026】
一方、高融点部と低融点部との融点差が20℃未満である場合は、接着ないし融着が不十分になるばかりでなく、無理に融着加工しようとすると高融点部が熱的損傷を受ける恐れがでてくる。更に重要なことは、複合モノフィラメントとしての2成分の接着界面強さであり、低融点部と高融点部の温度差が上記好適範囲のどちらに外れても、特に温度差が大き過ぎる場合には、優れた物性の複合モノフィラメントが得られ難くなる。特に、複雑な変形下で曲げなどの外力を受けたときに、両成分が界面剥離を起こし、複合フィラメント自体が疲労劣化を起こす原因になる。その理由は明らかでないが、紡糸時における溶融粘度の差に基づく界面応力が欠陥として残留するためと推定される。
【0027】
この様な2成分複合タイプのフィラメントに関する従来技術としては、例えば図5に示すごとく2成分の高分子材をシース・コア状に複合し、シース部に低融点物を配置し、それを不織布状に加工してから低融点物を溶融し、発泡ウレタンの代替となる様な所謂ホットメルトファイバー(特開平4−27224号公報など)が知られる。
【0028】
しかしながらこの様なシース・コア構造の複合フィラメントでは、満足のいく耐久性と弾性を兼ね備えたモノフィラメントを得ることはできない。しかも、該先行技術にみられる様に通常220℃を超える高融点のポリエステル系エラストマーを使用すると、後記実施例でも明らかにする如く布帛(シート材)として非常に硬いものとなり、ポリウレタン代用品としての実用に耐えないばかりか、繰り返し疲労特性も劣悪となる。
【0029】
更にこの様なシース・ コア構造の複合モノフィラメントは、表面全体あるいはその大部分が低融点成分で構成されているため表面の摩擦係数が非常に高く、織・編工程やその後の工程で各種ガイド等との引っ掛かりや織・編み欠陥を多発するなど、実用上様々の障害を生じることが確認されている。しかも、仕上り布帛自体おも表面にベタツキ感が生じるなど、布帛としての品位、特に風合いが悪くなる。
【0030】
これに対し本発明では、前述の如くフィラメントを融点の異なる2成分のポリエステル系エラストマーによって構成し、フィラメント表面に露出している低融点成分の露出面積比率を長さ方向に平均して50%以下に抑えることにより、上記従来技術の欠点を解消している。即ち、シース・コア形状でなく、実質的に非等方的な断面配置形態とすることにより、表面のベタツキ感や加工時の障害を解消できるのである。しかも、低融点部を融着処理する際にも、布帛の全面に万遍なく接合点を形成することができ、布帛としての柔軟性を損なうことなく優れた形態安定性と耐久性が与えられるのである。
【0031】
ちなみに、フィラメント表面に露出している低融点成分の面積比率が50%を超えると、複合モノフィラメントとして、或いはこれを編・織加工し、更にはこれを熱融着処理することによって得られる布帛の表面がベタツキ感を生じるなど、品位や風合いが劣悪になる。こうした観点から、低融点成分のより好ましい露出面積比率は40%以下である。
【0032】
複合形態は特に限定されないが、フィラメントとしての力学特性や加工性、取扱い性などを総合的に考えて最も好ましいのはサイドバイサイド型である。
【0033】
本発明の複合モノフィラメントは、上記の様に融点の異なる2成分のポリエステル系エラストマーを複合してなり、破断伸度、破断強度および80℃における30%伸長後の伸長回復率の特定された複合モノフィラメントであって、特にその任意の横断面において、低融点成分の占める面積比率を50%以下とし、且つ低融点成分の該フィラメント表面への露出面積比率を、フィラメント全表面積に対し50%以下とすることにより、ベタツキ感のない優れた表面性状と品位・風合いを与えたものであるが、この複合モノフィラメントを使用して布帛を製造するに当たっては、先に延べたように、該複合モノフィラメントを構成素材として用いて織・編もしくは不織布を作製し、複合モノフィラメントを構成する前記低融点成分の融点もしくは軟化点を超え且つ前記高融点成分の融点未満の温度に加熱すると、各フィラメントの交差部において該低融点成分物が相互に融着して接合点を形成し、初期強度特性、弾性と弾性回復性、風合い等の全てに優れた布帛を得ることができ、ポリウレタン代用品としてこれと遜色のない、或いはむしろこれを上回る品位の高弾性布帛を得ることが可能となる。
【0034】
【実施例】
以下、実験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・ 後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0035】
実験例1〜8
低融点部成分として、ハードセグメントとしてジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールからなるポリエステル成分、ソフトセグメント成分として分子量約1000のポリ(テトラメチレンオキサイド)を使用し、それらの組成比を調整することにより、共重合体としての融点が135℃、160℃及び190℃のブロック共重合エラストマーレジンを製造した。
【0036】
又、高融点部成分として、上記と同様のハードセグメント成分とソフトセグメント成分を使用し、それらの組成比を調整することによって、共重合体としての融点が185℃、195℃及び205℃であるエラストマーレジンを作製した。
【0037】
得られた各エラストマーレジンを、それぞれ真空度0.1mmHg、雰囲気温度80℃で4時間予備乾燥した後、同真空条件下に120℃で12時間乾燥した。得られた乾燥レジンを、サイドバイサイド型の複合ノズル部と2対の溶融押出し装置を備えた紡糸機を用いて2成分のレジンを別々に溶解し、会合部において高融点成分と低融点成分の断面積比が80:20となる様に吐出量を調整して両者の合計吐出量がノズル1孔(モノフィラメントの単位)当たり33.3g/minとなる様に調整して複合紡糸を行なった。
【0038】
各エラストマーレジンの組み合わせにおいては、高融点のコア部に配置されるレジンの融点より約10℃高い温度を会合部の温度として設定し、各々の水準で紡糸を行なった。紡出される糸の状態はいずれの組み合わせにおいても安定であった。吐出されたポリマーは50mmのエアーギャップを設けて設置した約30℃の水槽にくぐらせて冷却し、次いで表面温度を90℃、速度を20m/minに調整したネルソン型ローラーと引き取りローラーの間で4倍に延伸し、引き続いて150℃のスリット型ヒーター間で約2%リラックスさせながらもう一対のネルソンローラーによって引き取り、直ちに巻き取った。
【0039】
最終糸のデニールは約3000デニールであり、断面形状はほぼ設計通りの同心状サイドバイサイド型の複合モノフィラメントを得ることができた。各フィラメントの複数箇所で、表面に露出している低融点成分部の露出面積比率を測定したところ何れも約35%であり、低融点成分部が若干高融点成分部に回り込みを生じていたが、ほぼ計算通りの断面形状と表面性状を有する複合モノフィラメントを得ることができた。
【0040】
実験例9
上記実験例1〜8と同様に、ハードセグメント成分としてポリブチレンテレフタレート成分、ソフトセグメントとして分子量約1000のポリ(テトラメチレンオキサイド)を使用し、高融点成分の融点が195℃、低融点成分の融点160℃となる様に、共重合組成比を調整したエラストマーレジンを製造し、該レジンを用いて、横断面形状が図5に示す様なシース・コア状となるように設計された複合ノズルを用いて、条件の微調整を行った他は前記実験例1〜8と同様にしてほぼ完全なシース・コア状の複合モノフィラメントを作成した。
【0041】
実験例10
前記実験例4において、シース・ コアの吐出量比50:50に調整した以外は同様にして、サイドバイサイド型の複合糸を製造した。得られたモノフィラメントは、平均的に全表面の約57%が低融点成分部であった。このモノフィラメントは若干強度不足であり、前記実験例9とほぼ同様に製織性に劣り、操業性よく均一な布帛を得ることは困難であった。
【0042】
[布帛としての性能評価]
得られた各複合モノフィラメントを、経糸として20本/インチの密度および緯糸として同じく平均3000デニールのポリエステルの仮撚加工糸を25本/インチの密度で導入して平織物を製織した。得られた布帛をコア部の融点より20℃低い温度で無張力下に1分間熱処理し、各熱処理布帛について性能評価を行なった。
【0043】
尚、組み合わされるレジンの融点差が20℃以上ない場合、熱融着性の観点からは本発明の特徴を生かすことができないが、布帛の風合いを総合的に判断する目的で全てのサンプルについて性能評価を行なった。実際に、コア部(高融点成分部)の物性を損ねない為には20℃以下の温度で処理することが好ましい。
【0044】
上記で得た各複合モノフィラメントの強伸度特性および80℃、30%伸長時の伸長回復率および屈曲疲労後の残留伸度、更には熱融着処理後の布帛としての耐久性評価の結果を表1 に一括して示す。尚、各性能評価法は下記の通りとした。
【0045】
[評価方法]
(強伸度特性)
オリエンテック社製テンシロンTM測定装置を使用し、温度25%、相対湿度65%雰囲気下に試料長100mmを100%/分の歪み率で測定し、求めた歪み・応力曲線から破断強度と伸度を評価した。測定は各々5回の平均値とした。
【0046】
(伸長回復率)
80℃の温度に調整した加熱槽を上記測定装置に設置し、同じく試料長100mmの各フィラメントをセットし、2分間の加熱後、100%/分の歪み速度で30%まで伸長して直ちに同じ速度で0%まで変形を戻した。変形が戻ってから10秒後に再び同じ速度で30%までの伸長変形を与えた。この時の一連の歪み・応力曲線の記録から、2回目の伸長により応力が発生開始する歪み量(x%)を求め、以下の式によって伸長回復性を評価した。
伸長回復率(%)=100−x
【0047】
(曲げ疲労特性)
40cmの長さのモノフィラメントを採取し、これに0.2g/dの荷重を加えながら、その中央部20cmの位置で半径5mmのステンレス製円筒針金を中心にして、フィラメントの直線方向を0°としてそこから90°の角度になる様に繰り返して曲げる操作を実施した。変形の速度は0.5Hzとし、2000回終了後のフィラメント強度を測定し、試験前の強度に対する保持率により屈曲疲労性を評価した。尚、2000回に至る前に切断したものは強度保持率0%と評価した。
【0048】
(布帛の風合い評価)
各実験例で得た布帛を40cm×40cmの金枠に固定し、上から手による荷重負荷、表面を撫ぜる、融着した接合点を故意に引き剥がす、などの定性試験を行い、シート材としての風合いを総合的に評価した。
【0049】
(製織性)
織り加工時のモノフィラメントの筬・ガイド等での走行摩擦による引っ掛かりや絡み付き、糸巻き形状からの解除不良等による横糸の供糸不良等による停止や断糸回数等を総合的に判断し、(○)良好、(△)やや不良、(×)不良の3段階で評価した。
【0050】
【表1】
Figure 0004018251
【0051】
表1からも明らかな様に、本発明の規定要件を満たす複合モノフィラメント(実験例1,2,4)は製織工程の通過性が良好であり、得られた布帛はいずれも曲げ疲労性及び風合いの優れたものであった。
【0052】
これに対し、実験例3、6は低融点成分部と高融点成分部の融点差が大きすぎるため布帛の風合いが悪く、実験例5、8は逆に融点差が小さすぎるため融着不良で布帛の風合いが悪く、実験例7は高融点成分部の融点がやや高過ぎるため、布帛の風合いは良好であるものの、伸長回復率と曲げ疲労特性が劣っている。実験例9は従来のシース・ コア型複合モノフィラメントであり、低融点成分部が溶融熱処理工程で全体的に融着を起こすため布帛が全体として硬い風合いとなり、しかも工程通過性が非常に悪く、部分的に低速度で織り上げた布帛は力学特性には満足するものの風合いが硬くなった。
【0053】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、静的荷重を支持するための布帛を構成するのに十分の力学特性を有し、かつ繰り返し変形による特性低下が極めて少なくて優れた弾性回復特性を有する高弾性複合モノフィラメントを提供すると共に、該フィラメントを用いて適正な温度条件で熱融着処理を行なうことによって、強度特性、弾性と弾性回復性及び風合いのいずれにおいても非常に優れた布帛を提供し得ることになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる複合モノフィラメントの横断面構造を示す断面模式面である。
【図2】本発明にかかる他の複合モノフィラメントの横断面構造を示す断面模式面である。
【図3】本発明にかかる更に複合モノフィラメントの横断面構造を示す断面模式面である。
【図4】本発明にかかる更に他の複合モノフィラメントの横断面構造を示す断面模式面である。
【図5】従来のシース・ コア型複合モノフィラメントの横断面構造を示す断面模式面である。
【符号の説明】
A 高融点成分
B 低融点成分

Claims (5)

  1. 融点の異なる2成分のポリエステル系エラストマーを用いた複合モノフィラメントであって、破断伸度が80%以上、破断強度が0.5g/d以上、80℃における30%伸長後の伸長回復率が90%以上であり、該フィラメントの任意の横断面において、低融点成分の占める面積比率が50%以下で、且つ低融点成分の該フィラメント表面への露出比率が、フィラメント全表面積に対し50%以下であり、高融点成分は融点が150℃以上200℃未満であり、低融点成分は前記高融点成分の融点より20℃以上50℃未満低い融点を有していることを特徴とする高弾性複合モノフィラメント。
  2. 前記低融点成分のフィラメント表面への露出比率が、フィラメント全表面積に対し40%以下である請求項1に記載の高弾性複合モノフィラメント。
  3. 前記高融点成分は、融点が150℃以上のポリエステルからなるハードセグメントと、融点もしくは軟化点が80℃以下の重合体からなるソフトセグメントを含む共重合体からなり、且つソフトセグメントの含有量が20〜50重量%である請求項1または2に記載の高弾性複合モノフィラメント。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載された高弾性複合モノフィラメントを構成素材として含む織・編物もしくは不織布からなり、該複合モノフィラメントにおける低融点成分がモノフィラメント交点部で融着していることを特徴とする高弾性布帛。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載された高弾性複合モノフィラメントを構成素材として含む織・編物もしくは不織布を、該複合モノフィラメントを構成する前記低融点成分の融点もしくは軟化点を超え且つ前記高融点成分の融点未満の温度に加熱することを特徴とする高弾性布帛の製法。
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