JP4017548B2 - トナー用バインダー樹脂および電子写真用トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真、静電記録、静電印刷などに於ける静電荷像を現像するための電子写真用トナーバインダーに関する。さらに詳しくは高速複写機に対応でき、しかも高解像度、高画質でかつ粉砕性に優れた電子写真用トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、感光体上に形成したトナー画像を記録紙に転写する(Plain Paper Copy法)PPC複写機やプリンターに於ける電子写真用法は光感光体上に静電気的潜像を形成し、ついで該潜像を、トナーを用いて現像し、紙等の被定着シート上にトナー画像を転写した後、熱ロールで加熱定着する方法が行われている。この方法は加熱加圧下で定着が行うので、迅速でしかも熱効率が極めて良好であり、従って定着効率が非常に良い。しかしながら、この熱ロール方式に於いては熱効率が良い反面、熱ロール表面とトナーが溶融状態で接触するため、トナーが熱ロール表面に付着転移し、次の被定着シートにこれが再転移して汚す(オフセット現象)という問題がある。
【0003】
オフセット防止法として例えば、熱ロールの表面に布や紙でシリコンオイルを塗布する方法がある。しかし、オフセット防止用液体供給装置の設置など、設備が複雑になり、従って補修、管理も複雑になり、コストアップに繋がったり、シリコンオイルなどが熱により蒸発し機内を汚染すると言う新たな問題が生じる。このため、上記のシリコンオイルなどの塗布を必要としない方式(オイルレス定着方式)での高速機用トナー(オイルレス定着方式)の開発が望まれている。
【0004】
一方、オイルレス定着方式用トナーの開発に於けるオフセット防止方法としては高分子量ポリマーや架橋ポリマーを用いたトナーも数多く提案されている。例えば特公昭60−36582号公報(特許文献1)等の、乳化重合法で製造された架橋ポリマーを用いる方法や、USP 4,966,829号公報(特許文献2)の、懸濁重合法で製造された架橋ポリマーを用いる方法が開示されている。これらの方法は、架橋ポリマーや高分子量ポリマーを得やすい利点があるが、製造時に吸湿しやすい分散剤や分散助剤を併用させるので、電気特性、特にチャージ安定性に悪影響を及ぼす問題があり、またそれらの除去も簡単ではない。
【0005】
このため、本発明者等は、分散剤などの必要のない溶液重合法で高分子量樹脂を得る方法(USP 4,963,456号(特許文献3) 、USP 5,084,368号(特許文献4)等)を開発してきた。しかし、オフセット性を完全に克服するには不十分であった。
【0006】
架橋体ポリマーを得る他の方法として、グリシジル基含有単量体とCOOH基を有する樹脂などの反応性基を有する樹脂とを反応させる方法が、特公昭60−38700号公報(特許文献5)、特開平06-011890号公報(特許文献6)、 特開平06-222612号公報(特許文献7)、特開平09-319140号公報(特許文献8)等に、各樹脂の分子量、Tg、反応基量を制御することで、定着性、耐オフセット性、耐ブロッキング性のバランスに優れたトナー用バインダー樹脂が得られることが開示されている。
【0007】
一方、複写機は、高速化の方向を指向しており、必然的に定着ロールのスピードも速くなり、短時間の加熱で定着できるトナーが要求されている。出来るだけ短時間で定着させるためには溶融時高流動であることが必要である。一般的に定着性を向上させるためには、トナーに用いられる樹脂のガラス転移温度(以下、Tgという。)を低下させることが有効だが、そのことにより保存中のトナーがブロッキングする(塊状になる)という好ましくない現象がおきる。
【0008】
加えて、今般、市場の要求は、さらなる高速化と新たに省エネルギー化を指向し、その結果、高速化による加熱の短時間化、省エネルギー化等の観点から、定着温度の一層の低温化が求められているが、これらの要求を満足するトナー用バインダー樹脂は報告されていない。
【0009】
【特許文献1】
特公昭60−36582号公報
【特許文献2】
USP 4,966,829号公報
【特許文献3】
USP 4,963,456号
【特許文献4】
USP 5,084,368号
【特許文献5】
特公昭60−38700号公報
【特許文献6】
特開平6−11890号公報
【特許文献7】
特開平6−222612号公報
【特許文献8】
特開平9−319140号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、上記に示す複写機市場のより一層の高速化と、省エネルギー化と言う要請を満足するため、より一層の低温定着性の改良および、定着性と耐オフセット性のバランスの改善を図ることが本発明の課題である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの要求を満足すべく鋭意検討した結果、架橋性化合物と反応性基を有する樹脂を架橋反応せしめて得られるトナー用バインダー樹脂において、少なくとも分子量、反応性基量の異なる3種のビニル重合体と架橋剤とから得られ、特定量のゲル成分を有するトナー用バインダー樹脂を用いたトナーが、上記の課題を解決することを見出した。
【0012】
即ち、本発明は
(1) 架橋剤(A)と下記の(I)〜(V)の要件を満たすビニル重合体(B)とから得られ、0.1〜50質量%のゲル分を含むことを特徴とするトナー用バインダー樹脂であり、
(I)ビニル重合体(B)は、ビニル重合体(H)とビニル重合体(L)とからなり、
(II)ビニル重合体(H)は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布の重量平均分子量が50000より大きく1000000以下で、OH基、COOH基、酸無水物基、アミノ基、から選ばれる官能基の含有量が樹脂1kg当たり0.02molより小さいビニル系重合体(H1)と
重量平均分子量が50000より大きく1000000以下でOH基、COOH基、アミノ基、酸無水物基、から選ばれる官能基の含有量が樹脂1kg当たり0.1〜2.0molのビニル系重合体(H2)とからなり、
(III)ビニル重合体(L)は重量平均分子量4000以上50000以下でOH基、COOH基、アミノ基、酸無水物基、から選ばれる官能基の含有量が樹脂1kg当たり0.7molより小さく、
(IV)ビニル重合体(H1)/ビニル重合体(H2)の質量比が10/90〜90/10であり、(V)ビニル重合体(H)/ビニル重合体(L)の質量比が5/95〜40/60である。
(2)架橋剤(A)がエポキシ価0.005〜0.1Eq/100gであるグリシジル基含有ビニル樹脂(A1)であることを特徴とするトナー用バインダー樹脂であり、
(3)ビニル重合体(B)がスチレンアクリル系樹脂であるトナー用バインダー樹脂であり、
(4)上記のトナー用バインダー樹脂を使用することを特徴とする電子写真用トナーである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明に於けるトナー用バインダー樹脂は、架橋剤(A)とOH基、COOH基、酸無水物基、アミノ基、から選ばれる官能基を有するビニル重合体(B)とから得られる。尚、本発明において、重合とは共重合の意味を含むことがあり、重合体とは共重合体の意味を含むことがある。
【0014】
本発明に於ける架橋剤(A)は後述するビニル重合体(B)と反応する反応性基を有する物であれば制限はないが、反応性基としては、エポキシ基であることが好ましい。架橋剤(A)として更に好ましくは、グリシジル基含有ビニル樹脂(A1)であり、そのエポキシ価は0.005〜0.1Eq/100gの範囲である。0.005Eq/100gより小さい場合はゲル生成量が少なくオフセット改良は出来ないことがある。0.1Eq/100gより大きい場合は架橋体を合成してもトナー製造工程におけるゲルの切断が激しく、耐久現像性に問題が生じることがある。
【0015】
本発明に於いて使用されるグリシジル基含有ビニル樹脂(A1)は、通常、重合性二重結合を有する単量体と、グリシジル基と重合性二重結合を有する単量体とを、重合させることによって得られる。
【0016】
重合性二重結合を有する単量体として具体的には、スチレン、P-メチルスチレン、αメチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フルフリル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸ジメチルアミノメチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル等のアクリル酸エステル類、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸プロピル、メタアクリル酸ブチル、メタアクリル酸オクチル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸フルフリル、メタアクリル酸ヒドロキシエチル、メタアクリル酸ヒドロキシブチル、メタアクリル酸ジメチルアミノメチル、メタアクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタアクリル酸エステル類、フマール酸ジメチル、フマール酸ジブチル、フマール酸ジオクチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル等の不飽和二塩基酸のジエステル類、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミド、メタアクリルアミド、N置換アクリルアミド、N置換メタアクリルアミド等のアミド類等が挙げられる。これらの中で特に好ましいビニル単量体としてはスチレン類、アクリル酸エステル類、メタアクリル酸エステル類、フマール酸ジアルキルエステル類、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等である。
上記の化合物は2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0017】
一方、グリシジル基と重合性二重結合を有する単量体として具体的には、アクリル酸グリシジル、アクリル酸βメチルグリシジル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸βメチルグリシジルなどが良く、好ましくはメタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸βメチルグリシジルである。
【0018】
これらの化合物を重合させる方法としては特に制限はなく、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、溶液重合などを用いることが出来る。特には、塊状重合、溶液重合法が前述の理由から好ましい。
【0019】
本発明の溶液重合では溶剤としてはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、オルトキシレン、メタキシレン、パラキシレン、キュメン等の芳香族炭化水素の中から単独若しくは組み合わせて使用するが、他の溶剤を選んで分子量の調節を行うことも可能である。
【0020】
重合は、重合開始剤を用いて行っても良いし、重合開始剤を用いない、いわゆる熱重合を行っても良い。重合開始剤としては通常、ラジカル重合開始剤として使用可能なものはすべて使用することができ、例えば2,2'- アゾビスイソブチロニトリル、2,2'- アゾビス( 4-メトキシ-2,4- ジメチルバレロニトリル )、ジメチル-2,2'-アゾビスイソブチレート、1,1'- アゾビス( 1-シクロヘキサンカーボニトリル )、2-( カーバモイルアゾ )- イソブチロニトリル、2,2'- アゾビス( 2,4,4-トリメチルペンタン )、2-フェニルアゾ-2,4- ジメチル-4- メトキシバレロニトリル、2,2'- アゾビス( 2-メチル- プロパン )などのアゾ系開始剤、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、1,1-ビス( t-ブチルパーオキシ )-3,3,5- トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス( ブチルパーオキシ )シクロヘキサン、2-2-ビス( t-ブチルパーオキシ )ブタンなどのパーオキシケタール類、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類、ジ-t- ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ−クミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5−ジ( t-ブチルパーオキシ )ヘキサン、α, α'-ビス( t-ブチルパーオキシイソプロピル )ベンゼンなどのジアルキルパーオキサイド類、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2- エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-n- プロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2- エトキシエチルパーオキシカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ( 3-メチル-3- メトキシブチル )パーオキシカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイドなどのスルフォニルパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエイト、クミルパーオキシネオデカノエイト、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエイト、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシベンゾエイト、t-ブチルパーオキシイソブロピルカーボネート、ジ-t- ブチルジパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステル類等が例示できるが、それらは単独でまたは2種以上混合して使用する。
【0021】
その種類、量は反応温度、単量体濃度等により適宜選んで使用でき、通常仕込単量体 100質量部当たり 0.01〜10質量部使用される。
本発明の架橋剤(A)は、反応制御や物性設計の自由度、コスト等の面から特にスチレンアクリル系樹脂構造を有する架橋剤であることが好ましい。
【0022】
本発明におけるビニル重合体(B)は、後述するビニル重合体(H)とビニル重合体(L)とからなる。さらにビニル重合体(H)は、ビニル重合体(H1)、ビニル重合体(H2)とからなる。
【0023】
本発明におけるビニル重合体(B)は、好ましくは上記の重合性二重結合を有する化合物と、必要に応じてOH基、COOH基、酸無水物基、アミノ基、から選ばれる官能基と重合性二重結合を有する単量体とを重合することによって得られる。重合方法や重合条件は前述の架橋剤(A)の製造方法と同様である。
【0024】
上記のOH基、COOH基、酸無水物基、アミノ基、から選ばれる官能基と重合性二重結合を有する単量体として、具体的には以下のような化合物が挙げられる。
【0025】
即ち、COOH基、酸無水物基を有する単量体としては例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、ケイヒ酸、フマール酸モノメチル、フマール酸モノエチル、フマール酸モノプロピル、フマール酸モノブチル、フマール酸モノオクチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル等の不飽和二塩基酸のモノエステル類等が良く、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、フマール酸、フマール酸モノメチル、フマール酸モノエチル、フマール酸モノプロピル、フマール酸モノブチル、フマール酸モノオクチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0026】
また、OH基含有単量体としては、例えば上記のカルボン酸や酸無水物と以下の多価アルコールとのモノエステルが挙げられる。即ち上記の多価アルコールとは、エチレングリコール、1,2―プロピレングリコール、1,3―プロピレングリコール、1,3―ブチレングリコール、1,4―ブチレングリコール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,5―ペンタンジオール、1,6―ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル-1,3−ヘキサンジオールなどのアルキルジオールや水添ビスフェノールA,シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオール、ビスフェノールF、ビスフェノールS誘導体や、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどとビスフェノールF、ビスフェノールSとの反応物であるアルキレンオキサイドや、ビスヒドロキシブチルテレフタル酸などのシカルボン酸低級アルコールエステルである芳香族ジオールが挙げられる。また、上記のカルボン酸や酸無水物とビスフェノールA・エチレンオキサイド付加物、ビスフェノールA・プロピレンオキサイド付加物などのビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物などのビスフェノールA誘導体とのエステルや付加物も例示できる。更に、上記のカルボン酸や酸無水物と、グリセリン、2-メチルプロパントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ソルビット、ソルビタンなどの三価以上のポリオールとのエステルなどが挙げられる。
【0027】
アミノ基含有単量体としては例えば、N-メチルアミノ(メタ)アクリレート, N-エチルアミノ(メタ)アクリレート,N-プロピノアミノ(メタ)アクリレート、N-ブチルアミノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0028】
本発明に於けるビニル重合体(H1)としては、重量平均分子量が50000より大きく1000000以下、好ましくは100000〜700000、更に好ましくは200000〜500000で且つOH基、COOH基、酸無水物基、アミノ基、から選ばれる官能基の含有量が樹脂1kg当たり0.02molより小さい。即ち架橋剤(A)とは殆ど反応しない成分である。重量平均分子量が50000以下の場合は、実質的に後述するビニル重合体(L)が増加することになり、定着性は高まるが、耐久性が悪化し、粘度が低いため耐オフセット性が悪化する。官能基の含有量が樹脂1kg当たり0.02mol以上だと、実質的に後述するビニル重合体(H2)が増加することになり、架橋体やゲルが増えることによる粘度上昇のため、定着性が悪化することがある。
【0029】
本発明に於けるビニル重合体(H2)は、重量平均分子量が50000より大きく1000000以下、好ましくは100000〜700000、更に好ましくは300000〜600000で且つOH基、COOH基、酸無水物基、アミノ基、から選ばれる官能基の含有量が樹脂1kg当たり0.1〜2.0molで好ましくは0.1〜1.0molである。即ち、主として架橋剤(A)と反応して高分子量化したりゲル化する成分である。重量平均分子量が50000以下だと架橋剤(A)との反応後の高分子量化やゲル化不十分の為機械的強度が不足することから耐久性が悪化する事がある。また、粘度不足による耐オフセット性が悪化することもある。官能基の含有量が樹脂1kg当たり0.1molより小さいと実質的にビニル重合体(H1)の量が増える、即ち架橋する成分が少なくなるため、粘度不足による耐オフセット性悪化が起こることがある。一方、2.0molより大きいと1分子当たりの高分子量化、ゲル化が起こり過ぎて粘度が高くなるため、定着性と粉砕性が悪化する。
【0030】
本発明に於けるビニル重合体(L)としては、重量平均分子量が4000以上50000以下、好ましくは5000以上30000以下、更に好ましくは8000〜20000で且つ、OH基、COOH基、酸無水物基、アミノ基、から選ばれる官能基の含有量が樹脂1kg当たり0.7molより小さく、好ましくは0.5molより小さく、更に好ましくは0.3molよりも小さい。即ち架橋剤(A)とは殆ど反応しない成分である。重量平均分子量が4000より小さいと機械的強度が弱く、耐久性が悪化し、粘度が低いためオフセットが悪化する。重量平均分子量が50000より大きいと実質的にビニル重合体(H1)が増えることになり、定着性、粉砕性が悪化する。官能基の含有量が樹脂1kg当たり0.7mol以上だと1分子当たりの反応量が大きくなり、低分子量成分が減少による定着性悪化が起こることがある。
【0031】
本発明に於けるビニル系重合体(H1)とビニル系重合体(H2)においてH1/H2の質量比としては、10/90〜90/10、好ましくは30/70〜70/30である。ビニル重合体(H1)が上記の比より低くなると架橋剤(A)との反応性が高くなり、粘度が上昇し過ぎるため、定着性が悪化することがある。逆にビニル重合体(H1)の比が上記より大きいと反応性が低く、粘度が不足するため、オフセットが悪化することがある。
【0032】
本発明に於けるビニル系重合体(H)とビニル系重合体(L)においてH/Lの質量比としては、5/95〜40/60、好ましくは15/85〜35/65である。ビニル重合体(H)が上記の比より低くなると粘度が不足するため、オフセットが悪化することがある。逆にビニル重合体(H)の比が上記より大きいと粘度が高いため、定着性が悪化することがある。
【0033】
本発明に於けるビニル重合体(B)と架橋剤(A)においてB/Aの質量比としては99/1〜75/25が好ましい。ビニル重合体(B)の比が上記より大きいと架橋剤(A)との反応性が著しく低くなり、十分に架橋体が生成せず、耐オフセット性の効果が発現しない。逆に架橋剤(A)の比が上記より大きいとビニル重合体(B)との反応性が高くなり、流動性が悪化し、定着性が悪化する。
【0034】
本発明のビニル重合体(B)は、反応制御や物性設計の自由度、コスト等の面から特にスチレンアクリル系樹脂構造を有することが好ましい。
【0035】
本発明における数平均分子量や重量平均分子量はGPC法により求めたもので、単分散標準ポリスチレンで検量線を作成した換算分子量である。測定条件は下記の通り。
GPC装置; JASCO TWINCLE HPLC
DETECTOR ; SHODEX RI SE-31
COLUMN ; SHODEX GPCA-80M*2+KF-802
溶 媒 ; TETRAHYDROFURAN
流 速 ; 1.2ml /min.
【0036】
本発明のトナー用バインダー樹脂は、架橋剤(A)とビニル重合体(B)とから得られる樹脂を含んでいる。架橋剤(A)とビニル重合体(B)とを反応させる方法として、好ましくは架橋剤(A)とビニル重合体(B)とを溶融混錬・反応させる方法である。加熱溶融の方法は、従来公知のいかなる方法も採用できるが、特に2軸混錬機を用いる方法が好ましい。具体的には次に示す方法を例示できる。すなわち、ビニル重合体(B)と架橋剤(A)をヘンシェルミキサー等で混合後、2軸混練機を用いて溶融混練、反応させる。溶融混練、反応時の温度は、架橋剤(A)やビニル重合体の種類によって異なるが、100℃〜240℃、好ましくは150℃〜220℃の範囲である。上記の2軸混練機以外に攪拌機付きの反応容器等を用いることもできる。
【0037】
このようにして得られた樹脂を冷却・粉砕してトナー用バインダー樹脂とする。冷却・粉砕する方法は従来公知のいかなる方法も採用できるが、冷却方法として、スチールベルトクーラー等を使用して急冷することも可能である。
【0038】
上記の方法で得られた樹脂は、ゲル成分を有している。ゲル成分の含有量は0.1%以上50%以下、好ましくは0.1%以上30%以下、更に好ましくは1%以上20%以下。ゲル成分が0.1%より小さいと十分な架橋体が生成しておらず耐オフセット性の効果が発現しない。又50%より大きい場合は流動性が悪化し複写機高速化に対応した低温定着が得られない。
【0039】
本発明におけるゲル成分の含有率は、以下のように測定された値をもって定義する。すなわち、樹脂2.5gと酢酸エチル47.5gを100mlサンプル管に投入、このサンプル管を回転数50rpm、22℃、12時間攪拌後、22℃で12時間静置、静置後、サンプル管の上澄み液5gを150℃、1時間乾燥させた後の重量を秤量し(Xg)、以下の式に従って計算する。
ゲル分(%)=((2.5/50 − X/5)/(2.5/50))×100
本発明の架橋剤(A)は、反応制御や物性設計の自由度、コスト等の面から特にスチレンアクリル系樹脂からなる架橋剤であることが好ましい。
【0040】
本発明におけるトナー用バインダー樹脂は、着色剤、必要に応じて帯電制御剤、離型剤、顔料分散剤と共に、公知の方法でトナーとすることが出来る。着色剤としては、例えばカーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、マグネタイト等の黒色顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、ハンザイエローG、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、モリブデンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレン、ブリリアントオレンジGK、ベンガラ、ブリリアントカーミン6B、フリザリンレーキ、メチルバイオレットレーキ、ファストバイオレットB、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、酸化チタン、亜鉛華等の公知の有機顔料が挙げられる。その量は通常トナー用バインダー樹脂 100質量部に対して5〜 250質量部である。
【0041】
また、必要に応じて本発明の効果を阻害しない範囲に於いて、例えばポリ塩化ビニール、ポリ酢酸ビニール、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニールブチラール、ポリウレタン、ポリアミド、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族石油樹脂、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、脂肪酸アミドワックス、塩ビ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、クロマン−インデン樹脂、メラミン樹脂等を一部添加使用してもよい。その量は通常トナー用バインダー樹脂 100質量部に対して0.1〜 40質量部である。また、ニグロシン、4級アンモニウム塩や含金属アゾ染料をはじめとする公知の荷電調整剤を適宜選択して使用でき、使用量はトナー用バインダー樹脂100質量部に対し、通常用いられる0.1〜10質量部である。
【0042】
本発明に於て、トナーを作る方法としては、従来公知のいかなる方法も採用できる。例えば、トナー用バインダー樹脂、着色剤、荷電調整剤、ワックス等を予めプレミックスした後、2軸混練機を用い加熱溶融状態で混練し、冷却後微粉砕機を用いて微粉砕し、更に空気式分級器により分級し、通常8〜20μの範囲の粒子を集めてトナーとする。ただし、2軸混錬機での加熱溶融条件は2軸混錬機吐出部の樹脂温度は165℃未満で、滞留時間180秒未満であることが好ましい。また、冷却方法はスチールベルトクーラー等を使用して急冷することが好ましい。
【0043】
上記により得られた電子写真用トナー中には本発明のトナー用バインダー樹脂が50重量%以上、好ましくは60重量%を含み、その上限には特に制限はなく、目的に応じて調整され、通常、90〜100重量%まで可能である。
【0044】
【実施例】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。なお、以降「部」は、特にことわらない限り質量部を表わす。
[グリシジル基含有ビニル樹脂(A1)の製造例]
製造例A−1
キシレン75部を窒素置換したフラスコに仕込み昇温し、キシレン還流下において、予め混合溶解しておいたスチレン65部、アクリル酸n-ブチル30部、メタアクリル酸グリシジル5部、ジ-t- ブチルパーオキサイド1部を5時間かけて連続添加し、さらに1時間還流を継続する。その後内温 130℃に保ち、ジ-t- ブチルパーオキサイド0.5部を加えて2時間反応を継続した。その後更にジ-t- ブチルパーオキサイドをスチレン、アクリル酸n-ブチル、メタアクリル酸グリシジルの合計量の0.5質量%加えて2時間保持を行うことにより、反応を完結して、重合液を得た。これを190℃ 10mmHgのベッセル中にフラッシュして溶剤等を留去した。得られたビニル樹脂の物性値を表1,表2に示した。
製造例A−2
製造例A−1においてメタアクリル酸グリシジル5部を0.65部とした以外は製造例A−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
製造例A−3
製造例A−1においてメタアクリル酸グリシジル5部を13部とした以外は製造例A−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
製造例A−4
製造例A−1においてメタアクリル酸グリシジル5部を0.39部とした以外は製造例A−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
製造例A−5
製造例A−1においてメタアクリル酸グリシジル5部を19.5部とした以外は製造例A−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
[COOH基含有ビニル樹脂(B)の製造例]
製造例B−1
スチレン82部、アクリル酸n-ブチル17部、メタアクリル酸1.0 部とキシレン溶媒75部からなる溶液にスチレン100 部当たり3 部のジ-t- ブチルパーオキサイドを均一に溶解したものを、内温190 ℃内圧 6kg/cm2に保持した5l の反応器に750cc/hrで連続的に供給して重合し低分子量重合液(L)を得た。
【0045】
別にビニル単量体として、スチレン76.5部、アクリル酸n-ブチル23.5部を窒素置換したフラスコに仕込み、内温120℃に昇温後同温度に保ち、バルク重合を10時間行った。この時の重合率は51%であった。ついで、キシレン50部を加え、予め混合溶解しておいたジブチルパーオキサイドの0.1部キシレン 50部を130℃に保ちながら8時間かけて連続添加した。更に1,1−ビス(t- ブチルパーオキシ)−3,3,5トリメチルシクロヘキサンを用いたスチレン、アクリル酸n-ブチル、メタアクリル酸の合計量の0.2質量%加えて2時間反応を継続した。その後更に1,1−ビス(t- ブチルパーオキシ)−3,3,5トリメチルシクロヘキサンを用いたスチレン、アクリル酸n-ブチル、メタアクリル酸の合計量の0.5質量%加えて2時間保持を行うことにより、反応を完結し、高分子量重合液(H-1)を得た。
【0046】
又ビニル単量体として、スチレン74.2部、アクリル酸n-ブチル23.5部、メタアクリル酸2.3部を窒素置換したフラスコに仕込み、内温120℃に昇温後同温度に保ち、バルク重合を10時間行った。この時の重合率は51%であった。ついで、キシレン50部を加え、予め混合溶解しておいたジブチルパーオキサイドの0.1部キシレン 50部を130℃に保ちながら8時間かけて連続添加した。更に1,1−ビス(t- ブチルパーオキシ)−3,3,5トリメチルシクロヘキサンを用いたスチレン、アクリル酸n-ブチル、メタアクリル酸の合計量の0.2質量%加えて2時間反応を継続した。その後更に1,1−ビス(t- ブチルパーオキシ)−3,3,5トリメチルシクロヘキサンを用いたスチレン、アクリル酸n-ブチル、メタアクリル酸の合計量の0.5質量%加えて2時間保持を行うことにより、反応完結し、高分子量重合液(H-2)を得た。
【0047】
ついで、上記高分子量重合液(H-1)30部と高分子量重合液(H-2)30部と低分子量重合液(L)119部とを混合した後、これを190℃10mmHgのベッセル中にフラッシュして溶剤等を留去した。得られたビニル樹脂の物性値を表1,表2に示した。
製造例B−2
製造例B−1において低分子量重合液(L)を製造する際に、スチレン100 部当たりジ-t- ブチルパーオキサイドを9.5部とした以外はB−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
製造例B−3
製造例B−1において低分子量重合液(L)を製造する際に、スチレン100 部当たりジ-t- ブチルパーオキサイドを0.5部とした以外はB−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
製造例B−4
製造例B−1において低分子量重合液(L)を製造する際に、スチレン82部、アクリル酸n-ブチル17部、メタアクリル酸1.0 部をスチレン77.6部、アクリル酸n-ブチル17部、メタアクリル酸5.4部とした以外はB−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
製造例B−5
製造例B−1において高分子量重合液(H-1)を製造する際にキシレン75部を窒素置換したフラスコに仕込み昇温し、キシレン還流下において、予め混合溶解しておいたスチレン70部、アクリル酸n-ブチル30部、ジ-t- ブチルパーオキサイド0.4部を5時間かけて連続添加し、さらに1時間還流を継続する。その後、内温 130℃に保ち、1,1−ビス(t- ブチルパーオキシ)−3,3,5トリメチルシクロヘキサンを用いたスチレン、アクリル酸n-ブチルの合計量の0.2質量%加えて2時間反応を継続した。その後更に1,1−ビス(t- ブチルパーオキシ)−3,3,5トリメチルシクロヘキサンを用いたスチレン、アクリル酸n-ブチルの合計量の0.5質量%加えて2時間保持を行うことにより、反応を完結して、重合液を得たとした以外はB−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
製造例B−6
製造例B−1において高分子量重合液(H-2)を製造する際にキシレン75部を窒素置換したフラスコに仕込み昇温し、キシレン還流下において、予め混合溶解しておいたスチレン67.7部、アクリル酸n-ブチル30部、メタアクリル酸2.3 部をジ-t- ブチルパーオキサイド0.4部を5時間かけて連続添加し、さらに1時間還流を継続する。その後内温 130℃に保ち、1,1−ビス(t- ブチルパーオキシ)−3,3,5トリメチルシクロヘキサンを用いたスチレン、アクリル酸n-ブチル、メタアクリル酸の合計量の0.2質量%加えて2時間反応を継続した。その後更に1,1−ビス(t- ブチルパーオキシ)−3,3,5トリメチルシクロヘキサンを用いたスチレン、アクリル酸n-ブチル、メタアクリル酸の合計量の0.5質量%加えて2時間保持を行うことにより、反応を完結して、重合液を得たとした以外はB−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
製造例B−7
製造例B−1において高分子量重合液(H-1)を製造する際に、スチレン76.5部、アクリル酸n-ブチル23.5部をスチレン76.4部、アクリル酸n-ブチル23.5部、メタアクリル酸0.1部とした以外はB−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
製造例B−8
製造例B−1において高分子量重合液(H-2)を製造する際に、スチレン74.2部、アクリル酸n-ブチル23.5部、メタアクリル酸2.3部をスチレン75.5部、アクリル酸n-ブチル23.5部、メタアクリル酸1部とした以外はB−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
製造例B−9
製造例B−1において高分子量重合液(H-2)を製造する際に、スチレン74.2部、アクリル酸n-ブチル23.5部、メタアクリル酸2.3部をスチレン61.5部、アクリル酸n-ブチル23.5部、メタアクリル酸15部とした以外はB−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
製造例B−10
製造例B−1において、高分子量重合液(H-1)6部と高分子量重合液(H-2)54部と低分子量重合液(L)119部とを用いた以外はB−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
製造例B−11
製造例B−1において、高分子量重合液(H-1)54部と高分子量重合液(H-2)6部と低分子量重合液(L)119部とを用いた以外はB−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
製造例B−12
製造例B−1において、高分子量重合液(H-1)5部と高分子量重合液(H-2)5部と低分子量重合液(L1)161.5部とを用いた以外はB−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
製造例B−13
製造例B−1において、高分子量重合液(H-1)40部と高分子量重合液(H-2)40部と低分子量重合液(L1)102部とを用いた以外はB−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
製造例B−14
製造例B−1において低分子量重合液(L)を製造する際に、スチレン100 部当たりジ-t- ブチルパーオキサイドを14.5部とした以外はB−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
製造例B−15
製造例B−1において低分子量重合液(L)を製造する際に、スチレン100 部当たりジ-t- ブチルパーオキサイドを0.3部とした以外はB−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
製造例B−16
製造例B−1において低分子量重合液(L)を製造する際に、スチレン76.8部、アクリル酸n-ブチル17部、メタアクリル酸6.2部を用いた以外はB−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
製造例B−17
製造例B−1においてスチレン76.2部、アクリル酸n-ブチル23.5部、メタアクリル酸0.3部を用いた以外はB−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
製造例B−18
製造例B−1において高分子量重合液(H-2)を製造する際に、スチレン53.5部、アクリル酸n-ブチル23.5部、メタアクリル酸23部を用いた以外はB−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
製造例B−19
製造例B−1において、高分子量重合液(H-1)3部と高分子量重合液(H-2)57部と低分子量重合液(L)119部とを用いた以外はB−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
製造例B−20
製造例B−1において製造例B−1において、高分子量重合液(H-1)57部と高分子量重合液(H-2)3部と低分子量重合液(L)119部とを用いた以外はB−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
製造例B−21
製造例B−1において、高分子量重合液(H-1)3部と高分子量重合液(H-2)3部と低分子量重合液(L1)164部とを用いた以外はB−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した。
製造例B−22
製造例B−1において、高分子量重合液(H-1)45部と高分子量重合液(H-2)45部と低分子量重合液(L1)を93.5部とを用いた以外はB−1と全く同様にしてビニル樹脂を得た。得られたものの物性値を表1,表2に示した
【0048】
実施例1
製造例A−1で得られたビニル樹脂7部、製造例B−1で得られたビニル樹脂93部をヘンシェルミキサーにて混合後、2軸混練機(KEXN S-40型、栗本鉄工所製)にて2軸混錬機吐出部樹脂温度185℃、滞留時間90秒で混練反応させた。その後、冷却・粉砕し、トナーバインダーとした。冷却方法としては、スチールベルトクーラーを使用し、冷却水温10℃、冷却水量は樹脂1kgあたり20L、熱伝導率0.08kcal/mhrsの装置を用いて急冷した(*)。諸条件および得られた樹脂の物性値を表1に示した。この後、カーボンブラックMA100(三菱化成製)8部、ポリプロピレンワックス(ビスコール550P) 5部、荷電調整剤としてアイゼンスピロンブラックTRH1部添加し、再度ヘンシェルミキサーにて混合後、2軸混練機(PCM-30型、池貝機械製)にて 2軸混錬機吐出部樹脂温度150℃、滞留時間30秒で混練させた。ついで冷却・粉砕・分級して約 7ミクロンのトナーを得た。この冷却も(*)同様の方法で急冷させた。このトナー3 部とキャリヤ97部とを混合して現像剤とし、市販の高速複写機を改造して、画像を書かせて評価した結果を表1に示す。
実施例2
実施例1において、製造例B−1を製造例B−2とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す。
実施例3
実施例1において、製造例B−1を製造例B−3とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す。
実施例4
実施例1において、製造例B−1を製造例B−4とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す。
実施例5
実施例1において、製造例B−1を製造例B−5とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す。
実施例6
実施例1において、製造例B−1を製造例B−6とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す。
実施例7
実施例1において、製造例B−1を製造例B−7とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す。
実施例8
実施例1において、製造例B−1を製造例B−8とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す。
実施例9
実施例1において、製造例B−1を製造例B−9とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す。
実施例10
実施例1において、製造例B−1を製造例B−10とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す
実施例11
実施例1において、製造例B−1を製造例B−11とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す
実施例12
実施例1において、製造例B−1を製造例B−12とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す
実施例13
実施例1において、製造例B−1を製造例B−13とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す
実施例14
実施例1において、製造例A−1で得られたビニル樹脂7部、製造例B−1で得られたビニル樹脂93部を、製造例A−1で得られたビニル樹脂1部、製造例B−1で得られたビニル樹脂99部とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す。
実施例15
実施例1において、製造例A−1で得られたビニル樹脂7部、製造例B−1で得られたビニル樹脂93部を、製造例A−1で得られたビニル樹脂25部、製造例B−1で得られたビニル樹脂75部とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す。
実施例16
実施例1において、製造例A−1を製造例A−2とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す
実施例17
実施例1において、製造例A−1を製造例A−3とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表1に示す
【0049】
比較例1
実施例1において、製造例B−1を製造例B−14とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表2に示す。
比較例2
実施例1において、製造例B−1を製造例B−15とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表2に示す。
比較例3
実施例1において、製造例B−1を製造例B−16とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表2に示す。
比較例4
実施例1において、製造例B−1を製造例B−19とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表2に示す。
比較例5
実施例1において、製造例B−1を製造例B−21とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表2に示す。
比較例6
実施例1において、製造例B−1を製造例B−22とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表2に示す。
比較例7
実施例1において、製造例B−1を製造例B−23とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表2に示す。
比較例8
実施例1において、製造例B−1を製造例B−24とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表2に示す。
比較例9
実施例1において、製造例B−1を製造例B−25とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表2に示す。
比較例10
実施例1において、製造例A−1で得られたビニル樹脂7部、製造例B−1で得られたビニル樹脂93部を、製造例B−1で得られたビニル樹脂100部のみとした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表2に示す
比較例11
実施例1において、製造例A−1で得られたビニル樹脂7部、製造例B−1で得られたビニル樹脂93部を、製造例A−1で得られたビニル樹脂30部、製造例B−1で得られたビニル樹脂70部とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表2に示す。
比較例12
実施例1において、製造例A−1を製造例A−4とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表2に示す
比較例13
実施例1において、製造例A−1を製造例A−5とした以外は実施例1と全く同様にした。諸条件、樹脂の物性値および、それらの結果を表2に示す
【0050】
<トナーの評価方法>
1)定着性
5℃刻みで定着ロールの温度を替えて72枚/分のコピースピードでコピーし、このコピーしたベタ黒部分と白地の間を砂消しゴム(トンボ鉛筆社製プラスチック砂消しゴム”MONO”)により、1kgfの力で10回往復させ、ベタ黒部分の黒度をインキ濃度計で測定し、トナーの残存比率を濃度比で表し、60%以上残っている最低温度で評価をした。
◎;150℃以下
○;150℃より高く160℃以下
△;160℃より高く170℃以下
×;170℃よりも高い
2)耐オフセット性
コピーした場合のオフセット発生する温度をそのまま表示した。
◎;230℃以上
○;220℃以上230℃より低い
△;210℃以上220℃より低い
×;210℃よりも低い
3)粉砕性
トナー製造時、2軸混練冷却したものを一部採取して粉砕し、10メッシュアンダー16メッシュオンの粒度に揃えてジェットミルにて粉砕した。コールターカウンターにて粒度分布を測定、5〜20μの粒度の割合を求める。
◎;85%以上
○;70〜85%
△;50〜70%
×;50%以下
4)耐久現像性
上記のトナーを用いて市販の高速複写機(72枚/分のコピースピード)で10000枚連続コピー後、線幅100μmの線が在る原紙をコピーして再現性をチェックした。上記の原紙は、予め紙上にて、マイクロスコープにて観察し線幅を5点測定した。この紙をコピーし、定着させた後のコピー紙も同様に線幅を5点測定した。原紙とコピー紙の線幅の平均をそれぞれ求め、原紙の線幅とコピー紙の線幅の差により以下のように評価した。
線幅増加分δ=コピー紙線幅−原紙線幅
○;δ<5μm
△;5≦δ<10μm
×;δ≧10μm
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【発明の効果】
表1に実施例の結果を、表2に比較例の結果を示す。 本発明者らは、鋭意検討の結果、ビニル系重合体H1、H2、Lのそれぞれの分子量、官能基の含有量、比率を特定し、かつ生成されるゲル量を特定することで、より低温定着に優れ、かつ耐オフセット性に優れたトナーバインダーを得る方法を得た。また本発明のトナーバインダーは表1に示すように、粉砕性、耐久現像性にも優れ、実用上優れた性能を有している。
Claims (3)
- 架橋剤(A)と下記の(I)〜(V)の要件を満たすビニル重合体(B)とから得られ、0.1〜50質量%のゲル分を含み、架橋剤(A)がエポキシ価0.005〜0.1Eq/100gであるグリシジル基含有ビニル樹脂(A1)であることを特徴とするトナー用バインダー樹脂。
(I)ビニル重合体(B)は、ビニル重合体(H)とビニル重合体(L)とからなり、
(II)ビニル重合体(H)は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布の重量平均分子量が50000より大きく1000000以下で、COOH基の含有量が樹脂1kg当たり0.02molより小さいビニル系重合体(H1)と
重量平均分子量が50000より大きく1000000以下で、COOH基の含有量が樹脂1kg当たり0.1〜2.0molのビニル系重合体(H2)とからなり、
(III)ビニル重合体(L)は重量平均分子量4000以上50000以下で、COOH基の含有量が樹脂1kg当たり0.7molより小さく、
(IV)ビニル重合体(H1)/ビニル重合体(H2)の質量比が10/90〜90/10であり、
(V)ビニル重合体(H)/ビニル重合体(L)の質量比が5/95〜40/60である。 - ビニル重合体(B)がスチレンアクリル系樹脂である請求項1記載のトナー用バインダー樹脂。
- 請求項1記載のトナー用バインダー樹脂を使用することを特徴とする電子写真用トナー。
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